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明日への扉を探す子等

#アリスラビリンス


●洋館とアリス
 暗い嵐の海の断崖絶壁に聳え立つ『不思議の国』がありました。その国は一つの巨大な洋館であり、それ以外は存在しませんでした。そこから見える景色は、雷鳴と分厚い雲と雨、そして大きな波しか見えません。
 そんな景色に囲まれた洋館の中で、複数の少年少女の声が聞こえてきました。一人の少年が、同じ歳の少女に語りかけました。
「おい、どうやら此処もトランプのヤツに見つかったみたいだぜ!」
 小さな声だが、はっきりとした口調の少年が、そう伝えると、気弱な少女はこう返しました。
「……また、逃げるの? もう、疲れたよ……」
「ばかな事をいっちゃだめだ! アンナも見ただろ? アイツが……喰われる所」
「……うん」
 震える少女アンナは、レイモンドの言葉を聞いて、少し涙を浮かべながら頷きました。ついこの前まで一緒だった少女のメアリーは、目の前でオウガに食い殺されたのです。
 その時、ついこの間知り合ったばかりのカーシーが、二人の元へ音も立てずに現れました。
「あ、やっぱりまだ此処にいたんだね? そろそろ、やばいかもよ?」
 アンナとレイモンドは、小さな部屋の小さな机。そしてそのまた更に奥の壁の向こうに隠れていました。カーシーや他の友達くらいしかこの場所は知らない、取って置きの場所。そんな自信のある場所でも、きっとオウガはやってくる。だって、前もそうだったもの。
 いつもは屈託の無い表情のカーシーが、この時ばかりは真剣な顔です。
「次のアジトを探さなきゃな。よし、行こう。きっとまた、不思議で愉快なお仲間さん達も、助けてくれるさ!」
 少年少女たちは『アリス』という存在です。レイモンドの言う『不思議で愉快なお仲間さん』とは、洋館に飾られた甲冑や箒、絵画が命を持ち、心優しく、ちょっぴりふざけた生物でした。
「うん。あのひとたちは、やさしいから。好き」
 アンナはこの場所を教えてくれたカカシを思い出して、頷きました。
「俺たちの扉は、まだ何処にあるのかわからないし、みんなの場所はそれぞれ違う。でも、きっと。いつか辿り着いてみせる。そうだろ?」
 レイモンドはそう言うと、三人は立ち上がって、この場所をあとにしていきました。
 そのうち、他の幾つかの集団とも合流し、情報交換をしては、動いて行きました。
 少しの間暮らせた場所に別れを。
 そして次の場所へと。
 彼等の身長より高い場所にある小さな窓からは、稲光が差し込むばかりでした。

●グリモアベース
 所変わって、グリモアベース。
「ちょっと、手伝ってくれへんか?」
 如月・鬼怒(羅刹のバーバリアン・f04871)が唐突に話を切り出した。
「新しい世界『アリスラビリンス』の事は知ってるな?」
 鬼怒は腰から下げたどぶろくの入った瓢箪の栓を口であけ、少し口に含んで話し出した。
「その世界の一つで、アリスがトランプ兵から追われているという情報が入ったんや」
 アリスラビリンスは、それぞれが独立した世界の連なりで出来ている。情報をいち早く仕入れていた猟兵の一人が、軽い説明を行った。
「で、今回みんなに向かってもらう世界は、洋館だけの世界みたいでな。何処まであるか分からない巨大な迷宮らしい。皆にはその中で、トランプ兵に追われている『アリス』と呼ばれる人々を保護する事が目的になる。一つの事件ではあるんやけど、分かった事件を放ってもおかれへんからな。頼むな」
 鬼怒の話を聞いて、猟兵達は頷いた。
「まずはそのアリス達を、トランプ兵が見つける前に、見つけて保護して欲しい。彼らは隠れながら移動をしているから、何らかの行動が必要やろう。トランプ兵達を足止めする為の罠なんかも、有効かもしれんな。それだけ、時間を稼げることになる。
 あとはそうだな、この世界には『愉快な中間達』という不思議な生物がいるらしい。彼らに情報を聞いてもいいだろう。ただ彼らは、好意的だが、おかしな所もあるらしから、正攻法では本当の事には辿り着けないかもしれんな」
 その言葉に頷く猟兵達。最後に鬼怒は猟兵達をその場所に送り込むべく、準備をしながら言った。
「アリス達をある程度保護したら、トランプ兵を駆逐し、最後に出てくるボスを倒して欲しい。終わったら酒でも一杯やろう」


沙羅衝
 皆さん。如何お過ごしでしょうか。沙羅衝です。

 今回は新しい世界『アリスラビリンス』の一つの世界の一つの事件を解決していただきます。

●作戦概要
『第一章』
 トランプ兵より先に、アリスを見つけて保護してください。
 アリスなどの世界観は、アリスラビリンスの世界設定を参照してくださいね。
 ↓に記載されている行動は、ほんの一つの例ですので、それ以外を書いてもらっても全然問題ないです。基本的に採用します。
 但し大失敗になると、描写はされるかどうか分からないですが、何処かで一人以上が食い殺されることになります。

『第二章』
 集団戦になります。襲い掛かってくる巨大なトランプ兵を倒してください。

『第三章』
 ある程度巨大なトランプ兵を倒せば、ボスが現れますので、倒してください。

●その他
 地の文は、冒頭のような感じになります。

 それでは、プレイングをお願いします。
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第1章 冒険 『命がけのかくれんぼ』

POW   :    隠れやすそうな場所をくまなく探す

SPD   :    オウガを足止めする為の罠を仕掛けながらアリスを探す

WIZ   :    愉快な仲間達にアリスの居場所をこっそり尋ねる

👑11
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紅狼・ノア
「トラップ兵に追われている『アリス』達を探し出し保護する」って言ってだけど…こんな右も左もわからん所で探し出すなんで…骨が折れそうだなぁ

んじゃあ、トラップ兵どもに先を越される前に見つけないとね。
まずは、隠れられる場所をくまなく探しますか。
何が痕跡とかあれば【追跡】で追えるかな?

それでも見つからなかったら、愉快な仲間達に聞いてみよう。
確か普通に行ってもダメらしいから…僕の好きなギャンブル系でも賭けで見ようかな?(時間が無いからさっさと終わらせないとね)

それでも情報が足りなかったら最終手段…動物たちに聞いたり、力を借りで探してもらおう!

(何人、保護できるかな?無事でいるといいけど…)


阿紫花・スミコ
「ふぁあ・・・すごいところにきたなぁ・・・」

はじめて降り立つ世界に目を白黒しながら・・・。

「さて・・・やりますか!」

自作ガジェット「サーマルスキャナ」を装着。視界上に表示される熱源分布を見ながら捜索を行う。
移動はガジェット「ワイヤーギア」からフック付きワイヤーを射出、フックを周囲の木などに引っ掛け、その巻取りと、内燃機関から射出した蒸気の力で進んでいく。

なるべく、接敵をさけるように進むが、止むえない場合は、黄金に輝く精霊銃「アヴェンジングフレイム」で行う。

「とにかく、時間との勝負だ・・・どんどん行くよ!」

UC:スリーディメンジョンモビリティ
技能:情報収集、失せ物探し、ダッシュ、ジャンプ



●痕跡
「ふぁあ……。すごいところにきたなぁ……」
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、周りの景色を見て、思わずそう呟きました。無理もありません。周囲が切り出された石が積み上げられた壁で出来た廊下と、ひんやりと冷たい空気。それに、とても暗く、静かだったからです。
 とても高い所にある窓からは、時折稲光が反射して光っていました。
「でも、ちょっとワクワクしない?」
 人狼の少女、紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は、スミコの言葉に少し同意しながらも、好奇心を抑えられないようです。とは言うものの、情報はまだ何もありません。ノアは、でもやっぱり骨は折れそうだなぁと、心の中で思いました。
 二人は少し廊下を歩いて、『アリス』が隠れやすそうな所は無いかと調べました。でも、行けども行けども壁ばかり。
(「時間が無いから、さっさと終わらせないといけないんだけど……」)
 ノアは、少し緊張した面持ちでそう思います。するとその時、スミコがうんと頷いて、一つのゴーグルを取り出しました。『サーマルスキャナー』と彼女が呼んだその自作のゴーグルは、熱源を探知できる機能を持つのです。
「さて……やりますか!」
 そう張り切って、ゴーグルのスイッチを押します。すると、彼女の視界には今まで見えてこなかった景色が見えてきたのです。
「何かが見えるのかな?」
 ノアはスミコのゴーグルが、様々な模様を映し出しているのをみて、やっぱりワクワクしながらじっと彼女を見ました。
「あそこ……」
 と、スミコは曲がり角の少し手前を指差しました。
「少し前まで、誰かが居たみたいだね」
 ノアは彼女の言葉を聞くと、一目散にその指差した箇所に近づきました。そして、地面に手を当てます。
「……あったかい」
 ノアの手からは、冷たい石の感触だけではなく、ほのかに温もりが伝わってきました。そのまま手で温かな感触を辿って行きます。
「あ! ここ、動くよ!?」
 すると、一つの石の位置でその温もりが止まっていました。
「押して……みようか!」
 スミコに促されたノアは、思いっきりその石を押し込みました。
 ガコン!
 すると、何という事でしょう! その場の石の壁は見る見るうちに消えて、ぽっかりと新しい道が出来たのです。
「……誰か、いるよ?」
 しかし、少し奥のほうで、何かが動いた事を、ノアは見逃しませんでした。彼女はその動いたモノを確かめる事が大事だと感じ取ったのです。
「捕まえた! ……あれ?」
 ノアの捕まえたモノは、ただの花瓶でした。
「おかしいなあ……確かに今動いたと……」
「ワタクシめに何か御用ですかな? お嬢さん?」
「わわっ!? 喋ったよ!!」
 くびれた胴体の上から、目と口が現れて、そう喋ったのでした。
「シツレイな! これでもワタクシは、由緒正しき花瓶ですぞ!?」
 そう、その花瓶が鬼怒の話にあった、『愉快な中間達』だったのです。
「何か、知ってそうだね」
 スミコはピンと来て、花瓶にそう問いかけました。
「ワタクシはなーんにも知りませんぞ。お嬢さん?」
 そう言って花瓶は顔を反対側にして、そっぽを向きます。確かに情報源のはずですが、一筋縄では行きそうにありませんでした。
「そうだ、花瓶のお兄さん。僕と勝負してみないかい?」
「勝負、ですと!?」
 花瓶はその言葉に、顔を再び二人に向けました。
「うん。このコインの裏と表をあてっこするんだよ。簡単でしょ?」
 ノアはそう言うと、一つのコインを取り出しました。
「成る程。それはそれは単純で面白そうですな!」
 ノアの提案に、花瓶は相当乗り気のようでした。
「いいかい? 1、2、3……それ!」
 キン、と良い音が響き、ノアが左の掌に受け止め、右の掌で蓋をしました。
「僕が先に言おうかな?」
「いえいえ、ワタクシが先ですぞ……。表! いや、裏です!!」
 得意げな花瓶の声。
「じゃあ僕が表だね。開くよ! 1、2、3!」
 ノアが開いた面は、どうやら表のようでした。
「がーん!」
「僕の勝ちだね! じゃあ、知っていること、教えて欲しいなぁ」
「仕方がありませんね。ワタクシは由緒正しき花瓶です。何が知りたいのだね?」

 花瓶の情報から、『アリス』達はこの先にある四つ目の角を曲がった所の壁にある扉の中の小部屋、そしてその中の小さな机の壁の向こうに住んでいたという情報を手に入れました。それから先の事は知らないと言っていました。
 スミコはフック付きの『ワイヤーギア』を取り出してからノアを抱きかかえると、フックを蒸気の力で射出して飛ばしました。
「え! ええええ!!」
 すると、そのワイヤーが急に引っ張られ二人は一気に飛び出しました。
「とにかく、時間との勝負だ……どんどん行くよ!」
「まま……待って! 早い! ……でも! 楽しいね!!!」
 こうして、アリス達の無事の為にも、二人は急いで移動したのでした。アリスの残した痕跡が、きっと道を示してくれると信じて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

阿紫花・スミコ
得られた情報を元に、ワイヤーギアからワイヤーを射出し、その巻取りの力と内燃機関より射出する蒸気の力で前進していく。

サーマルスキャナを使って、熱源の観察も忘れずに、どこに敵が潜んでいるかわからないし、何より、「敵」もアリスを追っているのだから。

「・・・ところで、トランプの兵って熱を発してるのかな。」

まいいか、細かいところは気にしない。最短距離でアリスの元へ駆けつけよう。

もしもトランプの兵と鉢合わせになってしまった場合には、ユーベルコード「スリーディメンジョンモビリティ」で、敵の攻撃を回避、黄金に輝く精霊銃「アヴェンジングフレイム」の炎の弾丸で攻撃だ。

「ボクは学園の生徒だぜ、迷宮は得意なんだよ!」


クララマリー・アイゼンバウム
猟兵になって以来、初めてアリスラビリンスに戻ってきたけれど……。
この世界の残酷さは、全く変わっていないみたい。
……うん、絶対に助けてあげなきゃいけませんね。

おもちゃの猟犬『執念深きベルガンツァ』を召喚。
この洋館にいる猟兵以外の人間はアリスだけのはずですから、「人間の匂い」を追跡させれば探し出せるはずです。
でもトランプ兵より早く見つけないといけませんから、追跡と並行して、私自身は愉快な仲間を探して話を聞いてみます。
予知によれば甲冑や箒、絵画などでしたっけ。そのうち廊下や階段など、アリスが通りそうな場所にいる方に話しかけてみましょう。
既に他の猟兵さんが調べた情報も加えて、捜索範囲を絞りたいです。


ユウイ・アイルヴェーム
私のすること。アリスを見つけて、守ること
私のできること。この足で、みんなのところまでたどり着くこと

隠れやすそうな場所を探します。まずは、奥の方へ
周りを見て、気になるところは触ってみます
何かあっても、多少の損傷なら問題ないですから
急ぎつつ、音を立てないように
トランプ兵に出会わないように、気を付けて

もしも愉快な方々に出会ったなら、尋ねてみましょう
「どこかに、迷っていらっしゃる方はいらっしゃいませんでしたか?」
対価を求められたなら…じゃんけん。負けたなら潔く次へ

アリスの方々に会えたなら、まずは笑顔でご挨拶
次に、ここにいる方で全員かを尋ねましょう
違うなら、みんなで探しに行かなければ。注意して、行きます


空廼・柩
腐ってもエージェント
人探しは得意な方さ
幾ら広かろうと其処に居るなら
必ず足取りを掴んでやる

洋館内を探索、オウガ足止め用に咎力封じで罠を作成
アリス達が引っかからないよう注意
鈴なり何なり音が出る仕掛けにしておけば
足止め序でに敵の居場所も分り易い
後は子ども達の情報収集
聞き耳で彼等の足音を
追跡で彼等の痕跡を元に現在の居場所を推定
極力足音を立てず注意深く移動を試みれば
俺の目立たなさも役立つと思う
それでも見つからなければ…最後は第六感が頼り
運も実力の内ってやつ、うん

で、見つけた時はどうしよう
怯えさせる訳にもいかないし
コミュ力を使って落ち着かせよう
…子どもはあまり得意じゃないけれど
一寸触れただけで壊れそうだし



●遭遇
「さて……と。どうしようかな……」
 スミコはそう呟き、周囲をゆっくりと眺めました。この場所は先ほどの花瓶が言っていた『四つ目の角を曲がった所の壁にある扉の中の小部屋』のようでした。
 辺りはやはり薄暗く、人の気配はありません。
「あれ? 誰か来る?」
 スミコはそう感じ、少し身構え、ハンドガン型ガジェットに手を伸ばして息を殺します。
(「……熱源!?」)
 スミコの『サーマルスキャナ』が、ピピと何かを探知しました。
(「人型……、トランプの兵って熱を発しているのかは分からないし、大きさも、それっぽくはないか。という事は……」)
 そう言って、少し緊張を解きました。導き出された答えは、他の猟兵、もしくはアリスだからです。
「大丈夫だよ」
 相手に警戒心を与えない声で呼びかけます。少し曲がり角で立ち止まった熱源が、彼女の言葉を聞いてゆっくりと顔を出しました。
「ボクは阿紫花・スミコ。キミ達は?」
「私は、クララマリーです。アリスの適合者です」
「アリス……。そうか、新しい仲間だね。助かるよ、宜しくね」
 スミコは今回の状況を素早く把握し、彼女、クララマリー・アイゼンバウム(巡るメルヒェンの旅人・f19627)が仲間である事をすばやく理解しました。そしてその後ろから、白い髪と肌、そしてオレンジの瞳を持つ少女も言葉を発します。
「私はユウイ。アリスを見つけて、守りに来ました」
 ひょっとすると、言葉は少し拙いかもしれません。ですが、ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)は、はっきりとそう言いました。その言葉には明るく、確かな熱がありました。
 そして最後に、長身の男性が少し背後に注意を払いながら現れます。
「ちょうどそこで一緒になった。空廼・柩だよ。俺は腐ってもエージェント、人探しは得意な方さ。一緒に行動しないか?」
「良いね。じゃあ、まずお互いに状況を出し合うのが、手っ取り早いかな?」
 スミコは空廼・柩(からのひつぎ・f00796)に頷きながらそう提案しました。

 クララマリー、ユウイは二人でこの洋館に来た所であったが、まだ二人は猟兵としての経験が無く、少しどうすれば良いか分からない状態でした。そんな時、柩と合流したとの事でした。柩は経験が豊富な猟兵でした。
 初めての場所でも、敵の行動を予測し、罠を張り巡らせたところで、二人に出会ったという説明をスミコに行いました。
「まあ、オウガ用の罠だけどね。うまく行けば、敵が何処にいるか位は分かるものだよ」
「罠か、成る程。そういう手もあるんだね」
 スミコは柩の説明に、本当に感心したようでした。スミコは続けて、この場所の事に関して説明を行いました。
 三人は、アリスの手がかりまでは掴めていなかったので、「ここが……」と感心しました。
「でも、此処から先は、これからなんだ……」
 スミコはそう言って、少し困った顔をしました。すると、柩はそれなら……、と言って、壁に右耳をつけました。
「何か、聞えるのですか?」
 クララマリーの言葉に、柩は自分の口元に人差し指をつけて、少し静かに……というジェスチャーをします。そしてその漆黒の瞳を閉じ、集中を開始しました。
 ほんの少しの時間がたったでしょうか。柩は目を開けて、机の下を探ります。
「分かったよ」
 柩はそう言いながら、顔を上げました。
「どうやら、この机の奥に通路があるみたいだね。で、仕掛けはこの辺りにあると思うんだけど……」
 と、机の置くに入り込もうとします。
「!?」
「この辺りでしょうか?」
 柩が顔を屈めた時でした。ユウイの真直ぐな顔が、柩の前に現れたのです。驚く柩に構わず、ユウイはその机の奥にずんずんと四つんばいになって進みます。
「気をつけて。まだ何か罠があるかも分かってないから」
「大丈夫です。何かあっても、多少の損傷なら問題ないですから」
 ユウイはその机の奥にある壁まで、辿り着きます。
「私のすること。アリスを見つけて、守ること。
 私のできること。この足で、みんなのところまでたどり着くこと」
 そう呪文のように呟き、ぺたぺたと壁を触り始めました。その動作には一切の躊躇いはありません。
「ここ、動きます」
 ユウイがそう言って、一つの壁の一部をガコンと押し込んだ時、机の横にぽっかりと通路が現れたのでした。

「やるもんだね。じゃあ、行こうか……。おっと?」
 そう言った柩が、何かを感じ取りました。
「どうかしましたか!?」
 クララマリーは、緊張の面持ちで後ろを振り返った柩に問いかけました。
「どうやら、敵が来たようだね。急がないと……」
 柩の罠に、オウガがかかったようでした。その事が分かったスミコは、頷いて来た道に向かいます。
「スミコさん。どうされるのですか?」
「うん。こういう時は、適材適所っていうんだったかな? 僕は学園の生徒だからね、迷宮は得意なんだよ」
 クララマリーの言葉に、スミコはワイヤーギアを取り出し、黄金に輝く精霊銃を構えます。
「そういう事だったら、俺も同行したほうが良さそうだね」
 柩もそう言って、スミコの傍に向かいます。
「じゃあ、場所を教えてくれるかな?」
「指示するよ。時間を稼ぐ事が目的だね」
「了解。いけそう?」
「いつでも?」
 そんな二人のやり取りに、クララマリーとユウイは思わず『凄いなあ』と見とれてしまいました。
「後はあんた達に任せるよ。出来るだけ引き付けるから、先にアリスを見つけるんだよ。大丈夫、さっき聞えた足音も、まだそんなに遠くじゃない。じゃあ、頼んだよ」
 柩がそう言った時、スミコのガジェットから蒸気が噴き出し、彼女は一気に飛んでいきました。そして、その蒸気が晴れる頃には、柩もまた消えていました。
「私達に、できること。それは……」
「……うん、絶対に助けてあげなきゃいけませんね」
 ユウイとクララマリーはそう決意して、出てきた通路に飛び込んだのでした。

●アリス
 クララマリーはおもちゃの猟犬『執念深きベルガンツァ』を召喚し、匂いを追跡して行きます。そのおかげで、迷路のような廊下も、確実に進むことが出来るのです。
 暫く進むと、一つの甲冑がありました。アリスラビリンスの出身であるクララマリーは、その甲冑が愉快な仲間である事を核心し、話しかけました。
「おっと、中々に鋭いお嬢さんのようですな? 此方が驚かせようと思ったのに、こっちが驚いてしまったようで」
「どこかに、迷っていらっしゃる方はいらっしゃいませんでしたか?」
 その甲冑が喋り終わる前に、ユウイが話しかけます。
「まったく、人が話しているのに遮るとは……。なんですかな?」
 憤慨している様子の甲冑でしたが、ユウイの迫力に怖気づいたのか、素直に話を促しました。
「アリスの方々を保護したいのです。何か情報をお持ちでは無いでしょうか? お願いします」
 クララマリーも必死です。何せ後方ではスミコや柩がオウガを撒いているはずだからです。しかし、それ程時間は残されていないという事も、はっきりと感じ取ることができました。
「……迷っている、アリス。確かに知っています。ですが、それ相応の物が戴きたいですな!」
 怖気づいても、甲冑は頑固に何かを求めてきます。
「では、じゃんけんをしませんか?」
「じゃんけんですと? ほほう、私に勝てる気で……」
「時間がありません、行きます。えっと、最初はぐー!」
「ま、また遮ると、えっと、最初は……ちょっと待つのですよ、こういう事はもう少し戦略を練ってか……」
「じゃんけん……」
「ええ、ええッ! 最初はぐー」
『じゃんけんぽん!』
「……ぐ、不意打ちとは卑怯ですぞ……!」
 ユウイの勢いに押されたのか、甲冑はそのままグーを出し、ユウイはパーを出したのです。
「私の勝ちです」
 ユウイは勝利の宣言をしました。甲冑は暫くの間、また憤慨した様子を見せますが、やはり負けは負けと、コンコンと壁を叩いたのです。
「あ!」
 すると、その壁にぽっかりとした扉が出てきたのです。
「有難う御座います、甲冑さん!」
 クララマリーはそう言うと、何の疑問も無く扉を開けました。と言うのも、愉快な仲間は意地悪な生物だったりもしますが、基本的に心優しいと知っているからです。
「私は猟兵です! 皆さんを保護しに来ました!!」
 クララマリーはそう叫びます。
「わわ!」
「え? りょうへい!?」
「だ、だれ?」
 そしてその扉の奥には三人のアリスの姿があったのでした。
 しかし、その時同時に後ろのほうから、良く知った声も聞えてきました。
「良くやったね!」
 そう言って現れたのは、ワイヤーの勢いそのままに着地したスミコでした。
「でも敵が来たよ! 準備は良い?」
 そう、彼女の後方からは、沢山の大きな影があったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『トランプの巨人』

POW   :    巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●トランプ兵
 間一髪アリスの保護に間に合った猟兵達は、すぐに戦闘体制を取りました。
 何体ものトランプ兵が、この場に迫ってきていました。
 でも、猟兵は捜索だけでなく、戦闘にも長けています。今度はその『力』を見せる時です。
 この一団を率いているボスがいるはずです。まずは、この沢山のトランプ兵を倒すこと。
 猟兵達は、お互いに頷きました。

 彼らの後ろでは、保護したアリス達も見守っています。
 アリス達に、絶望ではなく、希望を与える為。猟兵達は攻撃を開始したのでした。
阿紫花・スミコ
「じゃあ、行こうか相棒。」

身の丈ほどある巨大なスーツケースの錠を解き放つと、中から現れたのはからくり人形、名をダグザという。
巨大な棍棒を持った人形は、スミコの十指からのびたからくり糸によって、鈍く動き出した。

棍棒によるなぎ払い、リーチを活かし、敵を懐に飛び込ませないように気をつけながら、からくり人形を操る。
仲間の猟兵たちと協力し、攻撃の好機を待つ。

「ここだ!」

両手を引き上げるようにからくり糸を強く引くと、人形の腰部の歯車は軋みをあげて回転を始め、それに伴い、人形の上半身も回転を始める。

スピニングスイープ!

回転する人形により、遠心力を得た超重量の棍棒が、敵に連打を加える!



●剣と棍棒
 目の前に迫ってくる巨大なトランプ柄を胸にあしらった兵隊は、おもちゃで遊ぶように大きな剣を片手に持ってじりじりと距離を詰めて来ました。
「その咎人を渡せ……」
「アリスは我らの餌なんだなあ」
「我らから逃げる時点で罪」
「もういいだろう! 俺は腹が減った。喰おうぜ!」
 そんな勝手な事を叫びます。なんて理不尽な要求でしょうか。この世界では、アリス達はオウガに搾取される存在なのです。アリスという存在がオウガの食欲を満たし、征服することで永遠に満たされることがない満足感に酔うのです。
 それでも、淡々と自らの仕事をこなそうと、スミコは自分の体の大きさと同じくらいのスーツケースを呼び出しました。
 スミコは慣れた手つきでカリャリとその錠を解き放ちます。
 音も無く開かれたそのスーツケースから出てきたのは、からくり人形でした。この人形は、スミコの全ての指と糸でつながれているようでした。
「じゃあ、行こうか相棒」
 スミコが相棒といった人形の名前は『ダグザ』と言いました。ダグザはまるで命を持っているかの様に滑らかに動き出し、スーツケースから出て気ました。ダグザの手には巨大な棍棒が握られています。
 ぶんという風を切る音と共に、ダグザはまず先頭に立っているトランプ兵に牽制をするように棍棒を薙ぎました。すると、その攻撃の早さにトランプ兵が驚いたような声を出しました。
「コイツ、俺たちの邪魔をするつもりなんだな!」
「我らに立ち向かう事もまた罪」
「喰っちまおう! 沢山いるし!」
 すると、トランプ兵の1体がスミコに剣を振りかぶって、叩き付けました。とても重く、素早い動きでした。
「まだまだ遅いね」
 スミコはダグザを操り、自らは一定の距離を保つと、素早い両手の操作でダグザが動きます。すると、ダグザもそのトランプ兵のスピードを凌駕します。
 そして、一定の距離から放たれた棍棒でその剣をいなしたのです。
 するとその時、後方から誰かがトランプ兵の顎を弾きました。
「なんだあ!?」
 スミコとダグザに対しての攻撃が、思い通りにならない事と、思ってもいない場所からの攻撃に、トランプ兵は明らかに苛々した声を出しました。
「ここだ!」
 スミコはその隙を逃しません。
 左腕と右腕をクロスさせるように構え、ダグザの動力を作動させるべく、腕を引き上げました。
 そのスミコの動作は、ダグザの腰の歯車にスイッチを入れます。最初はギシギシと軋みを上げて動き始めた歯車は、徐々に勢いを増して回転をしました。
『これで決まりだ!!』
 ダグザは歯車の回転を、自らの旋回力に変換して回転すると、手に持った巨大な棍棒でトランプ兵を殴り続けました。
 何度も何度も、殴り続けてもその回転は衰えません。
「ぐあ……」
 そしてとうとう、トランプ兵の1体は呻き声を上げて崩れ落ちたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大神・狼煙
子ども探しに美女が呼んでると聞いて!!

……終わった?そんなー


子ども達を背に肩を落とし、隙を見せて敵に攻撃させる

が、ここは建物の中

どれだけ数が多くとも、壁に阻まれて広く展開する事はできないはず

壁をぶち抜いた奇襲?

奇襲に慣れてれば、逆に対処も容易いのです
【暗殺】

UC封じなら躱してから、それ以外なら敵が攻撃する為に足を止めた瞬間に機械龍を召喚

今回は頭一つのヨルムンガンド!

攻撃特化の大蛇めいた龍でまとめて喰い殺す

何故連撃じゃないか?

ハハハ、狭い戦場で一人に群がった今、再度展開して躱す余裕があるとでも?


一網打尽に皆殺しだオラァ!!

あ、いや、おじさんは怖い人じゃないんだよ……
(子どもに泣かれてオロオロ)



 1体のトランプ兵が倒れると、他のトランプ兵がざわつき始めました。
「邪魔をするとは……。汝らも咎人という事になるが……」
「良いじゃねえか! もうコイツらも喰っちまおう!」
「そうだそうだ!! 俺は我慢できねえ!」
 そんな様子のトランプ兵の前に、颯爽と一人の猟兵が姿を現しました。
「ふふ……。少女の声がする。私を美女が呼んでいる! さあ、探して見せましょう! 美少女はどこですか!?」
 伸ばした右手を壁にあて、左手で髪をかきあげるポーズを決めていたのは、大神・狼煙(コーヒー味・f06108)と言う名の猟兵でした。
「……」
 明らかに場違いな様子のそぶりに、周囲の猟兵とアリス達は唖然とします。
「え……。ひょっとして……終わった? そんなー」
 そして、肩を落として、床に突っ伏すのでした。狼煙は鬼怒の情報から、アリスが美少女であれば、ちょっと悪戯……おっと。楽しく遊んであげよう等と考えていたのかもしれません。ですが、既に探索は終わり、目の前にはトランプ兵が待ち構えている状況だったのです。
「あ……あの……」
 しかし、その様子が気になったアリスの少女が声をかけてくれました。
「あ、これはこれは可愛いお嬢さんですね。お名前は?」
 狼煙はその肩を落とした状態から、首だけを上げて少女に尋ねます。
「アンナ、です」
「アンナさんですね。これはこれはとてもおいし……おっと。可愛らしい方ですね」
 そう言ってニッコリと微笑みました。その笑顔に少しほっとしたのでしょう。アンナは少しほっとした表情をしました。
「私達……。もう、逃げるのは疲れました。ですから……助けください!」
「ふふ……勿論そのつもりですよ。何、気にする必要はありません。後でちゃんとお礼を……おっと。それがお仕事ですから」
 狼煙はそのままトランプ兵に背を向けたままゆっくりと立ち上がります。
「ハハァ! コイツも喰っちまっても良いよなあ!!」
 その時でした。狼煙の後ろから大きな剣を振り上げました。
『転移門解放……転送。さて、今回はどいつが来るかな!?』
 どごぉおおお!!
 狼煙の声が終わったと思った時、壁を破壊しながら現れたのは機械龍と呼ばれる怪物でした。
「今回は、頭一つのヨルムンガンドでしたね」
 冷静に見るその視線の先には、大蛇めいた龍が大きな口でトランプ兵を喰らう様子でした。
「グ……ガアアア!!」
 そして、トランプ兵の一体が、機械龍の攻撃によってそのまま消滅します。なんと言う出鱈目な力でしょうか。そして機械龍は、続けて廊下を突き進み、後ろに続くもう一体も噛み千切ったのでした。
「一網打尽に皆殺しだオラァ!!」
 先ほどの少女に見せた顔とは全く違う表情で、盛り上がる狼煙。
「……あ」
 しかし、その表情が曇って振り返りました。アンナが彼の力に怯えた表情で、涙を浮かべて少し後ずさり、尻餅をついています。
「あ、いや、おじさんは怖い人じゃないんだよ……」
 狼煙は慌てて、アンナにニッコリと笑いかけますが、端から見るととてもいやらしい……おっと。とても変態チックな……おっと。
 ……不憫なシーンに映っていたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿紫花・スミコ
「く・・・ずいぶん丈夫だな!」

敵の固さに辟易しながら、からくり人形ダグザを巧みに操り、その棍棒で一撃一撃を、確実に重ねていく。

「・・・い・・・いい加減に壊れろー!!」

人形は棍棒を大きく振りかぶり、その超重量の一撃を叩き込む。

ヘヴィストライク・・・!

「これでどうだぁ!」

人形の操り糸を持ったまま、叫ぶ!

怪力、フェイント、視力、ダッシュ、見切り



●繋がり
「さあ、次はキミだな!」
 ダグザがトランプ兵を旋回力によってなぎ倒した事を確認したスミコが、前方に待ち構えているトランプ兵の1体に対して、笑みを浮かべながら言いました。
「……咎人どもが」
 少しの間を開けて、トランプ兵の1体はその様に答えて、ゆっくりとスミコの前に進みました。
「いけ、ダグザ!」
 スミコのからくり人形であるダグザは、主の言葉に答えるように、全身から蒸気を発してトランプ兵と対峙しました。ダグザとスミコは操り糸によって繋がっているのですが、その動きはまるで生きているかの様に動きます。
 タグザは無言で棍棒を振り上げ、振り下ろしました。
 どっ!
 鈍器がオブリビオンに打ち付けられます。
 どっ!
 そして、もう一度。
 しかし、そのトランプ兵は、ダグザの棍棒を腕によって受け止めます。
「……先ほどの者の様には行かぬぞ。さあ、此方の攻撃だ」
 トランプ兵は巨大な剣を右斜め後ろに構えます。
「ぬぅん!!」
 そして、轟音を上げて剣がダグザに向かいます。
 ごっ!
「ダグザ!!」
 するとダグザは自らの棍棒で剣を受け止めました。しかし、その棍棒はトランプ兵の剣によって弾かれます。
「……大丈夫。まだ、動けるね」
 スミコはその傷の様子を確認し、ダグザが行動出来る事を確かめて言いました。そして、もう一度棍棒を打ち込みます。
 ですが、その棍棒はやはり弾かれてしまいました。
(「く……ずいぶん丈夫だな!」)
 トランプ兵の堅さは、今までのトランプ兵とは明らかに違いました。しかし、スミコは諦めません。
(「堅さには……重さだ」)
 スミコはダグザに違う指示を出します。自らの腕、つまりダグザと繋がっている糸を素早く動かし、同時に走ります。するとそのスミコの意思を感じ取ったのか、ダグザのスピードも上がります。
「ぬうん!!」
 当然トランプ兵も迎え撃ちますが、その巨大な剣は空を切りました。ダグザが飛びあがったのです。
「……い……いい加減に壊れろー!!」
 棍棒に必殺の力を注ぎ込むダグザ。スミコの動きが加速し、空中のダグザを操ると、トランプ兵の懐に降り立ちます。
『ヘヴィ……』
 ダグザはトランプ兵の目の前で、大きく棍棒を振りかぶりました。そして、力のままに叩き込みます。
『ストライク……!』
 どぉぉ!!
 その棍棒の一撃は、トランプ兵の固い装甲を砕ききります。振り下ろした棍棒が床をも叩き割った時、同時にトランプ兵は消滅していったのでした。
「これでどうだぁ!」
 操り糸で繋がっているスミコとダグザが、勝利の叫びを上げたのでした。それは、彼女達の絆を象徴する叫びだったのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

九重・灯
「オマエも何か力があるんだろ? できる範囲で良いから援護頼んだぞ」
近くのアリスに言葉を投げる。
「周りを見て利用できるものを見逃すな。考えて工夫しろ。でも無茶は禁止だ」
アリスとはオウガ倒したらサヨナラだろ。その前に少し手ほどきしてやるよ。

「よお、デカブツ。ずいぶん楽しそうじゃねぇか?」
UC【剣劇】(攻撃回数重視)。剣、アザレアを抜く。
『鎧砕き6』の重剣で『なぎ払い3』や『串刺し3』で攻撃。移動力を殺ぐためにも、脚の『部位破壊2』を狙う。
別のヤツが迫ってきたら、『敵を盾にする2』ようにして立ち回る。

敵の地形破壊だって利用すれば良い。床が抜けそうなら、さらにブッ壊してヤツらを落としてしまうのも手だ。



●アリスと猟兵
「凄い……」
 追ってきたトランプ兵を、ものの見事に打ち倒して行く猟兵達の姿を見て、狼煙と言葉をかわしたアリスの少女アンナがそう感嘆の言葉を漏らしました。
 すると、隣で同じアリスのレイモンドもその言葉に頷きました。
「そうだな、この人たちがいれば……、俺たちの扉を探すことも出来るかもしれない……」
 そんなレイモンドが猟兵に向ける視線は、少し戸惑いがちであり、安堵したものでもありました。
「駄目だな……」
「え!?」
 その二人に突然、声がかかりました。
「オレ達を頼ってくれるは、拒否はしない。だが、それだけじゃあ、駄目だろうな」
 九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)が、二人の横でトランプ兵の様子を窺いつつ顔だけをむけて、そう話かけたのです。
「……それ『だけ』じゃ駄目って事は、足りないって事ですよね?」
 怪訝な表情で聞くレイモンドに対し、灯は強く、それでいて優しく微笑みながら言いました。
「そうだ。いつでもオレ達がこの場所にいるとも限らない。何しろ、各地を転々としているからな。それは、他のヤツも同じだろう。だから、自分で対処する方法も必要なんだ。わかるな?」
 灯の言葉に二人は、はっとした表情で目を開きました。今まで逃げる事で精一杯で、此方から立ち向かっていく事など、考えもつかなかったからです。
「あっちのヤツは、もうその事が分かってきたのかもしれないな……」
 灯はもう一人のアリスであるカーシーが、見たことがない真剣な表情で、トランプ兵を睨んでいます。彼の手には、石が握られ、何かに姿を変えようとしていました。
「カーシー……」
 アンナは知らない顔をしているレイモンドを見て、驚きと、勇気を貰ったようでした。
「さっき、アイツはもうその一歩を踏み出していた。オマエも何か力があるんだろ? できる範囲で良いから援護頼んだぞ」
 アンナとレイモンドは灯の言葉を聞き、頷きあい、そして真剣な表情でトランプ兵を凝視しました。
「周りを見て利用できるものを見逃すな。考えて工夫しろ。でも無茶は禁止だ」
 灯はそれだけ二人に言い残し、一瞬のうちに一体のトランプ兵の前に立ちはだかりました。
「よお、デカブツ。ずいぶん楽しそうじゃねぇか?」
 灯は少し赤い刃の剣を鞘から抜き、切っ先をトランプ兵に向けます。
「うぬらも咎人と認識したぞ……」
 トランプ兵は灯にそう言って、大きな剣を水平に動かし、大きく腰をねじって真横に動かします。その大きな動作は、その大剣で周りの壁をも破壊する事が出来るかもしれないと思える程でした。
 ギィン!!
 それは瞬き程の瞬間でした。周囲に金属音が鳴り響きます。トランプ兵は壁を破壊しながら大きな水平の一撃を薙ぎ、それを灯が斬鎧剣『アザレア』で己の力をもって押さえこんだのです。
「……なかなかの力のようだ。だが、そこまでか?」
「さあな」
 力と力が、その剣を通してぶつかり合います。共に極限までの力を一瞬にして打ち放っている。だが灯は『その時』を待った。
 ばぎん!
 どっ!!
 そして『その時』は、灯の想いを現実のものとしてくれました。アンナとレイモンドが、自らの力の出来る限りを使って、トランプ兵の両肩に攻撃を仕掛けたのです。
「……咎人が」
 その攻撃に、トランプ兵は意識を二人に向けました。視線を感じた二人は、少し後ずさりますが、それでも立ち向かおうと、精一杯の心でその場に立ちました。
「良くやった」
 灯はふっと口角をあげたあと、剣の力を抜き、即座に真横に動きます。すると、今までかかっていた力がいきなり抜かれた事により、トランプ兵はバランスを崩します。
「そうだ、それが力だ。何も真正面から立ち向かう必要はないさ……」
 灯はそう言って、トランプ兵の足を切りつけました。その剣はトランプ兵の足の動力を奪ったのでしょうか、その斬撃により、膝がガクリと落とされたのです。
「例えばコイツがさっき壊した壁の一部だって使うことが出来る。もし床が抜けそうなら、さらにブッ壊してヤツらを落としてしまうのも手だ」
 ガクリと膝を落としたトランプ兵が灯を睨みます。ですが、もうこうなってしまえば、灯の敵ではありません。
『ここからは“オレ”のターンだ!』
 斬鎧剣『アザレア』を何度も振るい、終にはそのトランプ兵は崩れ落ちたのでした。
「でも最後には力が要る。これは、これからだな」
 灯はそう言って、アリスに頷いたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『切り裂き魔』

POW   :    マッドリッパー
無敵の【殺人道具】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    インビジブルアサシン
自身が装備する【血塗られた刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    殺人衝動
自身が【殺人衝動】を感じると、レベル×1体の【無数の血塗られた刃】が召喚される。無数の血塗られた刃は殺人衝動を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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●そして現れた者
 猟兵達の活躍により、トランプ兵を倒しきった時、不気味な声がその場に響きました。
「まさか……。こんな事になるとは……」
 甲高く、聞くだけでも耳障りな声。その声は人の心を蝕んでいくかもしれない。それ程の恐怖感でした。
 ひたりひたりと通路の奥からその者は現れました。この者こそが、トランプ兵を指揮していた者であり、この巨大迷宮でアリスを喰らう者なのです。
 その者の雰囲気はトランプ兵とは、全く異なるものでした。そして猟兵達は同時に強さも感じ取る事が出来ました。
 先ほど一緒にアリスは戦ってくれたのですが、流石にひとたまりも無い事が分かったのでしょう。一人の猟兵が、すぐに後ろに下がるように指示をだします。
「せっかくの餌を、このようにされてしまっては、堪りませんね」
 猟兵達の目の前で対峙したそのオブリビオンは、自らの周囲に、返り血に染まった刃を浮かび上がらせ、こう言うのでした。
「殺す……しか、ありませんな」
 こうして、アリスを護る猟兵と、アリスを喰らう目的である『切り裂き魔』との戦いが始まったのでした。
九重・灯
(『想像からの創造。あの武器は危険です』)
もう一人の自分の声が頭の中で響く。
(『どうにかして精神を揺さぶることができれば、弱体化できるはず』)
「つまり、ビビらせりゃ良いんだな?」

UC【朱の王】。自分の腕を切り裂き、血を代償に魔の炎を喚んで剣と四肢に纏う。
「行くぞバケモノ。ご自慢の得物が壊れたり焼かれたりしないように気合い入れておけよ?」
牙を剥くように笑み、勢いで圧倒するように打ち掛かる。

不意打ちで黒縄・カゲツムギを影から伸ばして一瞬でも動きを阻害『だまし討ち2』。
赤熱する剣・アザレアで斬って砕いて『鎧砕き6』『部位破壊3』、
纏う魔炎『属性攻撃7』『呪詛3』に呑み込んでやる『生命力吸収2』。



●攻防
 『切り裂き魔』はゆっくりと歩みを進めます。そして、一歩進むたびに、血の付いた小さなナイフが一つずつ出現し、彼の周囲に浮かんでは獲物を狙うように踊ります。そのナイフを呼び起す動作の瞬間、切り裂き魔は首をかしげたような動作を行いました。
(『想像からの創造。あの武器は危険です』)
 それを見ていた九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)の頭から、もう一人の声がそう呼びかけました。
 灯は無言のまま頷き、アザレアを構えます。
(「……どうすりゃいい?」)
(『どうにかして精神を揺さぶることができれば、弱体化できるはず』)
 すると灯の問いかけに、もう一人の自分が、そう答えを出してくれます。
「つまり、ビビらせりゃ良いんだな?」
 そう言ってニヤリと口角を上げた灯は、右腕のアザレアを逆手で持つと、その刃を素早く動かしました。
『骸の海に沈み眠る朱の王よ、その力の一端を顕現せよ。――“我ら”、狂気を以って狂気を討つ!』
 刃を切り裂いたのは灯の両腕でした。そこから鮮血が体に伝わると、血が炎に包まれます。
「行くぞバケモノ。ご自慢の得物が壊れたり焼かれたりしないように気合い入れておけよ?」
 血の炎を纏って、灯は切り裂き魔との間を一気に詰めました。
「愚かな……」
 ですが、切り裂き魔はその炎に驚いた様子も無く、ナイフを舞い躍らせます。
 ザクッ!
 その無数のナイフは、灯の肌を切り裂いていきます。しかし、灯はおくびにも恐怖した様子はありません。それどころか、更に口角を上げて立ち向かうのです。
「さあ、此処からだぜ!!」
 灯は一本のナイフの軌道を見切って、アザレアで弾き、砕くと、そのナイフは炎によって燃え尽きて行きました。
「たいした腕ですな。……ですが、ナイフはまだまだ数多くありますよ?」
 それを見た切り裂き魔は、更に複数のナイフを躍らせ、灯を襲わせます。
「さあ、加速するぜ……」
 すると、更に灯の動きが鋭く、正確になっていきます。襲い掛かるナイフを、また叩き落して、燃やします。その動きには一切の無駄がありません。そして遂には、切り裂き魔目掛けて猛攻を仕掛けるようになりました。
 狂気の如く斬りかかる灯の太刀筋は、既に常人ではその動きの全てを確認する事は出来ないと思われる程です。
 ギギギギギン!
 今度は舞い踊るナイフで、灯の攻撃を防戦する切り裂き魔という構図となっていきます。
「中々……やりますね」
 そして灯は、左手を開き、一気に握りました。
 ギンッ!!
「な……!?」
 それは灯のもう一つの武器、黒縄『カゲツムギ』だったのです。影に忍ばせたワイヤーが、切り裂き魔を縛ったのです。
「そこだ!」
 ボッ!!
 その隙を付いた灯の、渾身のアザレアによる一刀が、切り裂き魔の腹部を切り裂いて、其処から炎を上げさせたのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

大神・狼煙
切り裂き魔、ねぇ

美女の服を切り裂く魔人なら仲良くなれた気もしますが

いや、ほら、美女の肌って眺めたいでしょ!?

軽口叩いて呼び出すのは巨大な機械の右拳

廊下一面を埋め尽くすサイズの鉄拳なら、無敵の殺人道具だろうと関係ない

問答無用で真正面から叩き潰す……が、『無敵』と言うからにはすり抜けてくる可能性もある

鉄拳を切り崩すなり、僅かな隙間をすり抜けるなりした瞬間左拳を召喚、敵の背後から直撃させる

が、周りに浮遊させているところを見るに、防御用のナイフもあるやもしれない

両拳を塞がれるのなら、あるいはどちらかが命中してダウンをとれるなら、更に片脚を具現してストンプ

下の階まで叩き落としながら次の猟兵へと繋ぐ



●無敵
「っち……」
 腹部に残る灯の炎を確認しながら、切り裂き魔はそう舌打ちをしました。どうやら、これ程までのダメージを猟兵が繰り出すとは思っていなかったのでしょう。その声は忌々しげに聞こえました。
「美女の服を切り裂く魔人なら仲良くなれた気もしますが……」
 すると、一人の猟兵がそう言います。大神・狼煙(コーヒー味・f06108)でした。
「あ……」
 彼の姿を見てアンナは、ついさっき助けてくれた事を思い出します。
「いや、ほら、美女の肌って眺めたいでしょ!?」
 狼煙はそんなアンナに、ウィンクしながら軽口を叩いて何かを呼び出し始めました。
「……」
 アンナは彼の事を掴みかねているようです。何処まで冗談なのか、本気なのか。しかし彼女は彼がとてつもない力をもってトランプ兵を倒したのを見ました。
「大丈夫ですよ。すぐに、終わらせますからね……」
 そんな表情の彼女に語りながら、狼煙が呼び出したのは巨大な機械の右拳でした。
『転移門解放……転送。文字通り、鉄拳制裁をくれてやる……』
 その右拳が、廊下に一本、そしてまた一本と現れます。
「……それがどうした」
 切り裂き魔は、そんな狼煙の拳の召喚を見ながら、自分自身もまた、武器を呼び出します。それは、無数のギロチンでした。
「その拳、切ってしまえば良いだけですね……。他愛も無い……」
 両者の間に、一時の静寂が訪れます。無数の武器と武器が睨み合い、少しの動きでも見逃さんとしているのです。
「どうやら、その武器に自信があるようですが、問題ありませんよ。すべて……叩き潰せばよいこと!」
 真っ先に動いたのは狼煙の巨大な右拳。
 ブン! という音と共に、切り裂き魔に襲い掛かりました。
 しかしその右拳は、切り裂き魔のギロチンによって寸断されてしまいました。
「まだまだ行きますよ!」
 狼煙は廊下一面に呼び出した右拳を、次々に切り裂き魔にぶつけていきます。
 その右拳は、切り裂き魔に向かって飛びます。ですが、切り裂き魔のギロチンもまた、正確なものでした。
 右拳を一つ残らず切り落としていくのです。
「なかなか……良い武器なのかもしれませんねぇ」
 狼煙はそう呟きながらも、拳を召喚しては、飛ばしていくのです。
「危ない!」
 そんな時、アリスのアンナが叫びました。狼煙の背後に、ギラリとした光が見えたからです。
「貰いました……」
 それは切り裂き魔が隠し持っていた、暗殺用の毒剣でした。アンナからはその剣が、狼煙の背中に突き刺さった。……かの様にみえました。
「それも、予想済みですよ……」
 その剣を受けたのは、狼煙の右拳。
「どうです? あなたの無敵の武器は、まだ無敵でしょうか?」
 ドッ!
 次の瞬間、切り裂き魔が吹き飛びました。狼煙が切り裂き魔の背後から召喚した『左拳』で殴りつけたのです。
「……馬鹿な!」
 ギロチンが次々に消滅していきます。切り裂き魔の殺人道具は、彼が無敵と考えた創造物でした。そしてその想像が揺らいだ時、力を失うのです。
「そして、た・あ・い・も・な・い」
 最後に狼煙はそう言うと、天井から、巨大な『右脚』を召喚して、その廊下ごとぶち抜いたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源・ヨーコ
こういう分かり易い悪党はいいっすね。
……躊躇なくぶん殴れるって意味で!

さぁ、覚悟するっすよ!!

〇POW
いかに想像から生み出された初見の武器とは言え、これまでの戦闘経験が無駄になるとは思えないっすね。
[野生の勘]を駆使し、攻撃を潜り抜けつつ肉薄し近接戦闘に持ち込むっす。ピタリと張り付けば、自ずと攻撃手段は限られる筈。
[2回攻撃]で手数を増やして、反撃のタイミングを与えないっすよ!



●肉薄
 狼煙の巨大な右脚が廊下をぶち抜いた後、すぐに切り裂き魔は飛び出してきました。大きなダメージを負っているようですが、まだ倒れる事は無いようでした。
「これが、猟兵……」
 そう言って、廊下にゆるりと立つ。
「へへっ。こういう分かり易い悪党はいいっすね」
 源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)は、切り裂き魔に向かってそう言うと、拳を広げて構えを取りました。
「……躊躇なくぶん殴れるって意味で! さぁ、覚悟するっすよ!!」
 ヨーコの拳には、鉄板が入った格闘用のサポーターがはめられていました。彼女が得意とするのは格闘です。
「そんな拳で、私が倒せるとでも?」
 切り裂き魔は、ヨーコの構えを見て、そう呟きました。
(「いかに想像から生み出された初見の武器とは言え、これまでの戦闘経験が無駄になるとは思えないっすね」)
 ヨーコの頼りは、己の経験だけ。それに伴う動きをすればよい。そう考えたのです。
「さぁ、覚悟するっすよ!!」
 ヨーコは駆け、一気に距離を詰めます。距離をつぶすことで、武器の行動を制限する作戦です。
 ひゅっ……。
 ヨーコは拳を握りこみ、一撃を放ちました。
「舐められたものです……」
 しかしその拳を切り裂き魔は、上半身から首を後ろに倒すだけで、避けます。
「まだまだっす!」
 そのヨーコの体から炎が噴き出し始めました。彼女のユーベルコード『ブレイズフレイム』です。地獄の炎は彼女の体全体に伝わり、拳は燃え盛っていきます。
 ボッ!
 そして立て続けに、もう一撃を放ちました。
「勢いは中々のものです……。ですが!」
 切り裂き魔はその炎の拳の動きを見切ったのでしょうか、今度は消えるように飛びあがって避けました。
「あ……!?」
 すると、ヨーコは首に痛みを感じます。いつの間にか、細長い針が彼女の首に突き刺さっていました。ヨーコは自分の勘を頼りにしていましたが、その勘も分からないくらいの、一瞬の動きだったのです。
 ヨーコの膝がガクリと落ち、息が荒くなっていきます。。
「ふふ……。この毒は、良く効くでしょう?」
 切り裂き魔は、そう言ってヨーコに、ゆっくりと近づきました。彼の指の間には、きらりと光る針が挟み込まれています。
「ま、まだ。終わってないっすよ……」
 ヨーコはそう言って、何とか立とうともがきます。ですが、その毒が体に回ってきたのでしょうか、徐々に力が入らなくなっていきます。
「終わりです!」
 切り裂き魔がそう言った時、最後にヨーコは何かを閃き、動きました。
「ほう!?」
 それは、切り裂き魔が毒針を刺そうとした瞬間でした。ヨーコがしゃがみこんで、そのまま立ち上がったのです。
 簡単な動きです。しかし、予想も付かない動きは、相手の虚を突くことが出来ます。それが、彼女がこれまでに経験してきた戦闘の記憶です。
 頭突きを喰らうような格好で、切り裂き魔は後ろに飛び退り、空中で反転しました。見ると、ヨーコの炎が切り裂き魔の方を燃やしています。
「自分は、ここまでっす。先輩がた、後は……頼むっすよ……」
 彼女にとって、その一撃を加えることが精一杯だったのです。しかし、確実にダメージは与えました。
 ヨーコはその切り裂き魔に与えた炎を見ながら、意識を失ったのでした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

阿紫花・スミコ
「あの武器は正直やっかいだな。」

ダグザは頑丈にできているから心配はない。だが、ダグザとボクを結ぶ操り糸、もちろん、特殊繊維で作られてるけど、それにしたって限界はある。

長いリーチと棍棒を利用しながら、敵を懐に入れないように攻撃を行う。敵の武器はなるべく、棍棒でなぎはらう。隙を見て攻撃も行う。

万が一操り糸を狙われるようなら、奥の手を使うしかない。

残された操り糸を駆使し人形による捨て身の攻撃を仕掛ける一方、ボクは腰に手を回す。迷彩が解かれたガンハイダー(ガンベルト)が現れ、黄金に輝く精霊銃を抜き放つ。
右手で引き金を引きながら、左手で撃鉄を高速に弾く!

ファニングショット!

「・・・これでもくらえ!!」



●ファニングショット!
「あの武器は正直やっかいだな」
 スミコは倒れるヨーコをみて、そう呟きました。
「彼女の事は私が……」
 スミコは、狼煙が警戒しながらヨーコを安全な場所に運んでいく様子を見て、前に出ました。
「ダグザ、行こう」
 からくり人形のダグザが、スミコの背後から一緒になって動きます。ダグザの右手には棍棒が握られていました。
「なかなか……面白い武器、ですねえ」
 切り裂き魔は、ヨーコの炎を気にしつつそう言います。
「そうだね。確かに面白いかもしれないね」
 スミコは目をすっと細くして、右腕を動かします。すると、ダグザの右腕が同じように動きます。
 ドッ!!
 ダグザがその棍棒を振り回し、叩き付けました。
 しかし、その棍棒を切り裂き魔はひらりと横に移動して避けます。
「わかりましたよ、その仕組みが。それは、私には好都合なのですが……」
 ヒュン!
 風を切る音と共に、切り裂き魔の周囲に血塗られた刃が幾つも踊り狂い始めました。
 切り裂き魔の狙いは明確でした。スミコとダグザを結ぶ操り糸を切ることでした。
 確かに、糸を切られてしまえば、ダグザは沈黙してしまうでしょう。
「ボクとダグザの絆。簡単に、切らせはしない!」
 スミコはそれでも、ダグザの勢いを止めません。
 ギギギ、ギン
 ダグザの棍棒が、切り裂き魔の刃を弾き、大きな一撃を繰り出します。
「そんな一つの武器で、全て防げるとでも?」
 ダグザの一撃を避けつつ、更にスピードを上げた刃が、操り糸を何本か切り裂きました。
 すると、まずダグザの左腕が止まってしまいます。
「どうやら、そう簡単にはいかせてくれないみたいだね!」
 ならばと、スミコはダグザと共に一気に突っ込みました。巨大な棍棒にスピードを加え、反撃の刃を防ごう動きます。
「見えていますよ!」
 ドゴッ!!!
 その攻撃を切り裂き魔がダグザを避けると、ダグザは廊下の壁に突っ込んで、それらを破壊しました。
「これで、その人形も沈黙するでしょう!」
 壁に突っ込んだダグザを見て切り裂き魔は高らかにそう言うと、ダグザの操り糸を全て断ち切ってしまいました。
「どうで……!?」
 切り裂き魔が振り向いた瞬間でした、彼が見たものは右手を腰に回したスミコの姿でした。スミコの腰には光学迷彩によって隠されていたガンベルトが現れています。
「……これでもくらえ!!」
 腰に携えられているのは、黄金に輝く精霊銃です。
 ダ、ダン!!
 そう二回銃声が響きました。しかし、実際に放ったのは、0.1秒ほどの間に6発が撃ち放たれたのです。
 スミコの左手の撃鉄を弾く動きと、引き金の引くスピードが可能にする早撃ちでした。
「ぐ……!!」
 その銃弾は、見事に切り裂き魔の腹部を撃ち抜いていたのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
向こうに落ちていたティーポットにティーカップ。
あれらにはたっぷりと血が注がれていたのかしら?
まったく、この世界のオブリビオンは度し難いわね。

・2層の力場を情報収集用に展開し、敵の動きや敵が生み出す刃の位置を把握。
・残りの力場と念動力、さらにUCで発生させた強力な磁場で敵の身体や刃に干渉し、動きを阻害する。
・三重の力で敵の脆弱な可動部を逆関節に力を掛けて破壊したり、ネジを外したりして動けないようにする。

本当なら、同じように貴方の血を絞り出したいところだけど……あら、手足はからくりみたいだけど、頭は生き物っぽいわね。
ゆっくりじっくり捻り上げた後、貴方の刃物で切り刻んであげるわ。



●血のりのティーポット
「が……!?」
 スミコの銃弾を受け、切り裂き魔が呻いて腹の傷を確かめます。
「こんな……こんな事が……!?」
 猟兵達は、知っています。その傷が致命傷である事を。
「……ねえ。向こうに落ちていたティーポットにティーカップ……。あれらには、たっぷりと血が注がれていたのかしら?」
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)が、静かにそう尋ねます。彼女は切り裂き魔が持っていた所有物を、確かに見たのです。
「……」
 その問いに切り裂き魔は答えませんでした。いや、正確には答えられないのでしょう。
 初めて襲われる、喰らう側からの転換という情況に、ひょっとしたら人間であれば恐怖という感情を覚えていたかもしれません。
「まったく、この世界のオブリビオンは度し難いわね」
 アレクシアは、左右の腕から『力』を展開し、切り裂き魔の目の前に立ちました。その2層の力場は、空間を把握する力。
 そして向ける視線は、殺意そのものでした。
 逃がすという選択肢はありません。何故なら、彼等『オウガ』は『アリス』を喰らって来たのですから。
「ぐおおぉぉおおぉぉ……!!」
 切り裂き魔は、左右の大きな掌に力集中し始めました。すると、その指先から血塗られた刃が伸び始めます。
 それは切り裂き魔自身が無敵と思う中でも、より残忍に獲物を握りつぶし、切り裂く為の刃なのです。
「う……あああ!!!!!」
 切り裂き魔は叫びます。己の力を、『創造』に変換する為です。
 しかし、一向にその刃が完成する様子はありません。叫び声に、焦りの色が混ざります。
「……残念ね。あなたに、もうその力は使えないわ」
 アレクシアは冷たく言い放ちました。
 バキ!!!
 途端に切り裂き魔の指が反対方向に折れ曲がり、ボロボロと部品が高速で渦を巻いて宙を舞います。
「本当なら、同じように貴方の血を絞り出したいところだけど……」
 反対方向に曲がった指先から伸びた刃が、切り裂き魔自身の頭に突き刺さります。
「……あぐ……あ!?」
 すでに切り裂き魔は、正式に発声できないでいます。
「あら、手足はからくりみたいだけど、頭は生き物っぽいわね」
 バギッ!!!
 切り裂き魔の膝が折れ曲がり、また部品が飛び散りました。
 アレクシアはそれでも力を止める事はありません。強力な磁場が空間を捻じ曲げます。
「……さようならよ」
 そして、アレクシアが最後にそう声をかけると、とうとう切り裂き魔は二つに捻じ切れ、渦を巻きながら消えていったのでした。

●終章
 猟兵達は、ある者はそのまま静かにその場を後にし、またある者は生き残ったアリス達に、少しの助言をした後で、やはりこの場を後にして行きました。
 アリス達の『自分の扉』は自分達で見つけるしかないのですから。

 しかし、確かに猟兵達は今までとは違う世界を見せることが出来たかもしれません。

 自らの力をもってすれば、運命にも抵抗出来る事を。

 そして、血塗られた世界に、一筋の希望という扉への道筋を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月04日


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#アリスラビリンス


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト