おおかみさんよりこわいもの
●アリスは食卓の上に
「新しい世界、アリスラビリンスが見つかったって話、お前らはもう聞いてるか?」
梯・剛士(ヴァリウードの随伴者・f12919)は悩ましい表情をしながら、そう猟兵たちに切り出した。
異世界「アサイラム」から召喚された人間(アリス)達が、人肉を喰らうオウガから逃げ惑う、無数の不思議の国によって構成された世界、アリスラビリンス。
世界が見つかった今日この時においても、アリスはオウガによって召喚され、オウガに追い立てられた末に、無残にも食い散らかされてしまう。
元の世界の記憶も失われ、ただただ迷宮を逃げ惑うアリスの為にも、猟兵たちが力を尽くさないわけにはいかない。
「今回、俺の方で一つの不思議の国を捕捉できた。簡単に言うと、そうだな……小動物に溢れた世界、って言えばいーかな。
愉快な仲間がどれも犬とか猫とか鼠とか、そういうのなんだよ。ケットシーみたいのがわらわらいると思えばいい」
そんな世界を逃げ惑うアリスは、勿論のこといるわけだ。名前はララ・アンダーウッド。年齢16歳。人間の女性。恐らくはヨーロッパ系。
元の世界の記憶もなくしたララは、訳も分からずにこの小動物溢れる世界に放り込まれ、オウガに追いかけられて逃げ続けている。
「このララなんだが、ぶっちゃけお前らが現場に到着する頃にはオウガに捕まっている。
そのままオウガに料理されて食われそうになっているんで、何とかして取り返して逃げるのを手伝ってくれ」
現場は不思議の国の一ヶ所、長テーブルにカトラリーの並べられた食堂のような場所。
この長テーブルの上、大皿に載せられる形でララが拘束されている。勿論、放置していればオウガの腹の中、一巻の終わりだ。
拘束されたままのララを抱えて逃げるのでも、ララの拘束を解くのでも、オウガの食事を妨害するのでもいい。とにかくララがオウガに喰われることを阻止する必要がある。
「食事を妨害されたオウガは、まぁ当然だな、怒ってお前らを攻撃してくる。
ララの安全を確保できたら、そいつらをぶちのめしてくれ」
今回ララを喰らおうとしているのは、人間の二倍ほどの体躯を持つトランプの巨人だ。理不尽な掟をアリスに強いて、それを破ったアリスを追跡して殺害しようとする。
ララが拘束されていたことを見るに、彼女はその「掟」を破ってしまったのだろう。
攻撃手段はその手に持つ剣による一撃。また、1の数字が刻印されたトランプを胴体に持つトランプ兵団を召喚する能力と、巨大なトランプカードで対象を縛り上げ、ユーベルコードを封じる能力も持つ。
このトランプ兵が、おおよそ10体。これを全て倒さないと、ララの安全は担保されないだろう。
「このトランプ兵達をやっつけると、そいつらをけしかけてララを狙っていたオウガが出てくる。そいつを倒せば、一先ず事件は解決だ」
トランプ兵はあくまで実働部隊。それらに指示を出すオウガを倒さない限りは、次々にララを喰らわんとするオウガが出現するわけだ。それでは彼女が元の世界に戻るための扉を見つけることも叶わない。
首魁となるオウガはチェシャ猫。童話でイメージされるチェシャ猫とは似ても似つかない、凶悪なオブリビオンだ。
その攻撃手段は主に両手の鋭い爪だ。飛びかかっての掻き毟り攻撃に加え、ニヤニヤ笑いを向けた対象にその相手にしか聞こえない笑い声を聞かせてくる。
また、殺戮形態に変身することで、理性を失う代わりに自身の能力を大きく強化することも可能だ。
「見つかったばかりの世界、見つかったばかりの事件だ。勝手が掴めないことがあるとは思うけど……お前らなら、きっとなんとかなるはずだ。
よろしく頼むぜ!」
そう力強く告げて、剛士はグリモアを起動させてポータルを開く。
その向こう、まだ見ぬ世界の彩り鮮やかな風景が、微かに見える気がした。
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
新しい世界が出てきましたね。
メルヘンな殺伐とした世界わあい。
●目標
チェシャ猫×1体の撃破。
●舞台
(第1章)
不思議の国のとある場所、長テーブルと椅子の置かれた食堂です。
長テーブルの上に、拘束されたララがいます。
トランプ兵がララを食べるために料理の準備を進めています。
(第2章)
不思議の国の迷宮内です。
トランプ兵が10体ほど、ララを奪われたことに腹を立てて猟兵を攻撃してきます。
(第3章)
不思議の国の迷宮内です。
部下を倒されたことによって、チェシャ猫が姿を現し攻撃してきます。
●アリス
ララ・アンダーウッド(アリス適合者・女・16歳)。
異世界から召喚された少女。見た目はイギリス系の西洋人。
扱えるユーベルコードはトリニティ・エンハンス相当。
それでは、皆様の力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『オウガ迎撃作戦』
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POW : バリケードを張り、襲来するオウガを食い止める
SPD : ブービートラップを仕掛け、襲来するオウガにダメージを与える
WIZ : 鳴子やアラームを仕掛け、オウガの襲来にいち早く気付けるようにする
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●時の静寂に微睡んで
薔薇の庭園の中に拵えられた広間。
大きな長テーブルの上に整列したカトラリーに真っ白なお皿達。
熱々の紅茶を収めたティーポットを片手に、二足歩行するネズミさんが行ったり来たり。
テーブルの上を覗き込むネコさんが、テーブルの脇に控える巨人に摘み上げられてはテーブルから離れたところへ。
いつからここにいて、どうしてここにいるのかすら、私は覚えていないけれど。
これが現実なら、なんて素敵なお茶会だろう。
巨大なトランプに身体をぐるぐる巻きにされた私が、テーブルの上、一等大きなお皿の上に横たえられていなければ。
「むぐー!うぐー!」
「やかましいメインディッシュだ。料理はお上品でいなくてはなるまい」
口まで塞がれ、ばたばたと皿の上で藻掻く私に、シェフナイフを片手に握った巨人が兜の奥の瞳を細めた。
その瞳が、ひどく醜悪なものに見えて、私、ララ・アンダーウッドは息を呑むほかなかった。
ああ。
誰か。
誰でもいいから助けてほしい。
榛色の瞳から、涙が一筋零れ落ちた。
砂城・真紅
【SPD】
アリスの匂いにつられて来ましたが…
これはこれは…どうやらお茶会のご様子。
ならば参加しない理由はありませんね。何故ならウサギですから。
「おや、メインディッシュにしては少々スパイスが足りないご様子…こちらをどうぞ」
などと言いつつ、オウガの脳天に【殺戮刃物】をバラバラと落としてみましょう。
お気に召さない模様?
でしたら紅茶をどうぞ。
おや…それどころでは…ない?
ふむ、ふむ。それでしたら、予定が狂ってしまいますね…
この場合の予定とは、貴方様の時間のことですが。
おやすみいただけるように、足の健でも切って差し上げましょう。
どうぞごゆっくり。
※アドリブ連携歓迎
●夢うつつ、長い夜
ふらり。ゆらり。
そうしてゆったりした足取りで、やって来るのは一人のウサギ。
この迷宮となりつつある庭園の中に、来たる猟兵は各々おって、その内一人、砂城・真紅(嗤う遡行時計・f19328)はまるで導かれるようにしてその場に踏み込んだ。
「アリスの匂いにつられて来ましたが……これはこれは……」
ゆらりと嫋やかにまろび出る真紅を、トランプ兵と呼ぶには随分巨躯なそれらがねめつけた。
「闖入者は歓迎されざる。何用だ、そこな時計ウサギ」
「何用?これは異なことを申されますやら。
どうやらこれはお茶会のご様子。ならば参加しない理由はありませんね」
何故ならウサギですから。そう嘯きながら、にぃ、と口角を三日月に作ってみせる真紅が、す、と右手を持ち上げる。
その手のうちに、現れるは紅茶を満たしたティーポット。それを手近なカップに注ぎながら、ちら、と視線が向くのはトランプ兵の頭上だ。
紅茶がそのカップの底を叩くと同時に、トランプ兵の頭上から殺戮刃物がバラバラ、まるで金平糖を零すかのように落とされてくる。
無論、並のトランプ兵なら反応することも出来たであろうが、今は紅茶の給仕中。給仕中は大人しく、待っていなければならないとは誰が言ったか。
そうして動けないままでいるその頭上から、ザックザックと突き刺さる殺戮刃物。
「ぎゃ
……!!」
「おや……紅茶を召し上がるどころでは……ない?ふむ、ふむ。それでしたら、予定が狂ってしまいますね……」
予定が狂うと言いながら、狂うのはトランプ兵の予定ばかり。
二つ目のカップに紅茶を注ぐ真紅。無論、未だ給仕は終わらない。トランプ兵の時間は5分の1になったままである。
そうして、程々に紅茶の給仕を行って時間を遅らせたところで。
真紅はティーポットから手を放して一挙に駆けた。
すぅ、と潜り込むようにしてトランプ兵の足元へ。彼らの頭上から降らせ、穿たずに地面に落ちた殺戮刃物を一つ手に取るや。
スパっとその足、踵の付け根。腱を容赦なく断ち切ってみせる。
「どうぞ、ごゆっくり」
体勢を整えつつ一礼した真紅の言葉を、トランプ兵の悲鳴が覆い尽くした。
成功
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アネット・シェルティ
すごい、すごい!
お花に顔がある!
お話しできるのかなぁ?
この世界は楽しいなー!!
◆行動
あっ、そんな事よりララって人を助けるんだったね!
忘れてないよ。本当だよ!
巨人の背後からおもいっきりバトルアックスを投げつけるよ。
狙いは首だけど ダメージ入るかな?
入らなくてもいいか!
自在に動くバトルアックスは巨人の周囲を回りながら巨動きを牽制させるよ。
その隙にわたしはララを担いでこの場から離脱するよ!
わたしの怪力なら人ひとり軽い軽い!
少し距離をとったら拘束を解いてあげる。
キミがララだね!
オオカミさんが助けに来たよー!
わたしのそばから離れないでね!!
バトルアックスを回収して叫ぶ。
ララを狙うヤツはわたしが相手だー!
●指鳴らし波紋広げて
そうして幾らか、混乱がお茶会に広がったところで。
アネット・シェルティ(いのち短し恋せよ人狼・f15871)は慌てふためくトランプ兵の背後に降り立った。
「すごい、すごい!お花に顔がある!お話しできるのかなぁ?」
周りの風景に瞳をキラキラさせながらも、彼女は自らの仕事を忘れない。手にしたバトルアックスをぐっと振りかぶった。
「あっ、そんな事よりララって人を助けるんだったね!忘れてないよ。本当だよ!」
「むっ!?おのれ、いつの間に我らの背後を!」
アネットの側に振り向いたトランプ兵が武器を構えるのと、アネットの手からバトルアックスが離れるのは、まさしく同時だった。
「ララを狙うヤツはわたしが相手だー!」
「ぐっ、ぐぁぁぁ!!」
アネットの手から離れたバトルアックスが、まるで狙いすましたかのように一体の首に突き刺さる。頸動脈を断たれたトランプ兵の首から、まるで噴水のように赤々と鮮血が噴き出す。
そんな血飛沫のシャワーの中を、アネットのバトルアックスはまるで使い手が手で握って振るっているかのように舞い踊った。
あるいは鎧を叩いて動きを阻害し。
あるいは指先を叩き切るように手元に落ち。
トランプ兵が自在に動く斧の攻撃に翻弄されている中で、アネットはトランプに拘束されたままのララの身体を持ち上げた。
「キミがララだね!オオカミさんが助けに来たよー!」
「むっ、むぐぐ
……!?」
ララの身体をその怪力で持ち上げながら、すたこらさっさとアネットは駆けていく。
メインディッシュを逃がしてなるものか、と追いかけてくるトランプ兵を、かわし、すり抜け、ある程度距離を取ったところで。
アネットはララの身体を縛るトランプの拘束を剥がしにかかる。
しばらく悪戦苦闘して、ようやくその身体から巻き付いたトランプを引き離したところで。
「あ、貴女は……」
ようやく口を動かせるようになったララに、アネットはにっこりと微笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
イヴ・シュプリーム
戦術①:転送と同時に【先制攻撃】で【魔導ノ鉄槌】を使用
【空中戦】で飛び上がってから巨人の頭部に飛び蹴りを叩き込み、兜内部に魔力を放射します
その後、ララの近くに着地
心情:間に合ったみたいね……
……私が何者か、ですって? 貴女(ララ)には……後でお話するわ……
でも……貴方(オブリビオン)には今言っておくわ……どうせ、もうお話する機会も無いでしょうから……
「『魔導士』……貴方に教えるのはそれだけよ……」
戦術②:ララを【念動力】で保護しつつ、巨人に<魔導レーザー>で攻撃
兜の隙間を狙っての【鎧無視攻撃】、眼を【スナイパー】で狙撃する
可能なら、その後にララを連れてより安全な位置に避難
(アドリブ・連携可)
●淡く、戦場のノイズ
そして、その折にトランプ兵がララが跪くそこに躍り出てくる。
「そこか、アリス!」
こちらの姿を認めて、手に手に武器を構えるトランプ兵の頭上、高い位置。
イヴ・シュプリーム(かつて滅んだ星の希望・f13592)がその足裏を兜の後ろ側にしっかと向けて飛び込んできていた。
刹那、金属音が音高く鳴り響く。
後頭部に一撃を咥えられ、同時に魔力を浴びせかけられた一人のトランプ兵が昏倒する中で、反動を利用してくるりと空中で身体を回転させたイヴは、呆気に取られるララの側へとスタイリッシュに降り立った。
「間に合ったみたいね……」
「えっ、貴女は……先程の彼女といい、いったい……」
目を大きく見開くララの顔をちらりと見やって、イヴは表情を動かすことなく静かに告げてみせる。
「……私が何者か、ですって?貴女には……後でお話するわ」
「え……」
ララの榛色の瞳が一等大きく見開かれる。
それを見やって僅かに目を細めたイヴは、視線を正面へと向けた。そこにいるのは、それぞれの武器を構えなおしたトランプ兵たち。
3名はいようか、油断ならぬ体勢でこちらを見据える彼らを臆することなく正面から見て、イヴはくい、と顎を持ち上げる。
「でも……貴方たちには今言っておくわ……どうせ、もうお話する機会も無いでしょうから……
『魔導士』……貴方に教えるのはそれだけよ……」
その言葉と共に、イヴが片手に握った魔導レーザーから青白い光条が迸った。
伸び往く光条がしっかと、トランプ兵の頭部に炸裂し、その頭部を後方へと振れさせる。その隙を突いてイヴはララの身体を抱きかかえるようにして他の猟兵と共にその場から離脱した。ララの肉体を念動力で保護することも忘れない。
「まだまだ、安全には程遠いかしら……もう少し、我慢して頂戴……」
「は、はい……!」
困惑の色が抜けないララの顔を見ながら、イヴはたたらを踏むトランプ兵のいる方へと視線を向けるのだった。
安全確保には、もう少々の手数が必要だ。
成功
🔵🔵🔴
高柳・零
POW
いきなり大変な事になってますねえ…。
さて、どうしますか。
先ずはララさんの近くまで行かないとですね。
幸い直立した動物がたくさん居ますし、自分もそれに紛れこみましょう。
緑の体色に盾を背負って「亀っぽい」と良く言われるので、亀の頭の着ぐるみを被ります。
手には包丁を持って、料理の下準備をするふりをしてテーブルに近付きますよ。
「下ごしらえに参りました。それでは行きますよ!」
陽気に宣言すると、天斬りで拘束を斬ります。
「ララさん、逃げますよ!」
ララさんを起こしたらオーラで包み、自身は盾受けで身を守りながら逃げます。
アドリブ歓迎です。
●曇りの価値に 気付けない彼ら
「いきなり大変な事になってますねえ……さて、どうしますか」
ララ・アンダーウッドが猟兵たちに庇いだてされているその反対側の入り口。
トランプ兵が背を向けているそちらの入り口から、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)はそうっと、そうっと入り込んだ。
この世界はアリスラビリンス。そこかしこに存在する愉快な仲間。彼らは童話的でコミカルな動物、道具やアイテムの姿をして、オウガに隷属しながら世界を整えて暮らしている。
それは勿論、このお茶会の場でも。料理を運んだり、テーブルに食器を運んだり、料理人を務める者もいる。
そして、零はうまくそれに紛れ込んでいた。亀の頭の着ぐるみを被り、盾を背中に背負って、見た目はすっかり亀のシェフである。
誰に違和感を覚えられることもなく、テーブルに向かって食材の下ごしらえ――かと思いきや、方向転換。
ララを取り囲むトランプ兵の背中をまっすぐに斬りつけた。
「下ごしらえに参りました。それでは行きますよ!」
「ぬうっ!?この愉快な仲間め、不愉快なことを!」
手に手に武器を振り上げて、零へと向かってくるトランプ兵たち。その巨躯の隙間を小さい身体ですり抜けるようにして、零は呆気に取られるララの足元へとたどり着いた。
「もう大丈夫です。逃げられますか?」
「は、はい……!」
ララの前に立ちふさがって盾を構えながら、零は頭に被っていた亀の頭を、一思いに脱ぎ捨てた。
成功
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ロアー・アレグリアス
アドリブなど歓迎なのだ
新世界なのだな!
ふーむ、世界の見た目はキレイキレイなのに、事件の内容に血の香が漂うのは……だいたいオウガのせいなのだな!
であれば激しく鮮烈に打ち破ってしまおうではないか!
……とと、その前にララの救出なのだ。
では新ワザの披露といこう!
ライトニングステップでララや、先立ってやってきた猟兵の近くに飛び込むのだ!
そうして発生した雷撃波でオウガ連中を痺れさせたその隙に、ララを逃がすもよし、オウガをばったばったと斬り伏せるもよし!
てか、茶会だのと言ってるがオウガよ、貴様らは元より世界に招かれざる客。
愉快な仲間を差し置いて主役を気取る、その分厚い面の皮をべりっべりに剥がしてくれよう!
●世界は続く 空詠みの模倣だ
刹那。
雷撃のような音と衝撃を伴って、地面に降り立つ小さな影があった。
「ぐぉぉっ、何事だ!?」
「ふーむ、世界の見た目はキレイキレイなのに、事件の内容に血の香が漂うのは……だいたいオウガのせいなのだな!」
ロアー・アレグリアス(ケットシーのマジックナイト・f02956)は地面から手をゆっくり離すと、携えた愛用の剣をすらりと抜き放った。
ライトニングステップ、と名付けられた新たな力。それは任意の味方の周囲にテレポートすると同時に、雷を伴う衝撃波を発生させる。
長距離短距離自由自在、そこに仲間がいればいいのだから。
そうして雷撃波でトランプ兵たちを怯ませたロアーは、一挙にトランプ兵に肉薄した。
「茶会だのと言ってるがオウガよ、貴様らは元より世界に招かれざる客。
愉快な仲間を差し置いて主役を気取る、その分厚い面の皮をべりっべりに剥がしてくれよう!」
「くっ、愉快な仲間のような風体をしながらにして、小癪な真似を!」
縦横無尽に跳び回りながら、時に切り結び、時に斬り払うロアーの戦いを、ララは呆然としたまま見つめているのだった。
成功
🔵🔵🔴
摩訶鉢特摩・蓮華
せっかくメルヘンチックな世界に来たのに、ゆっくりしてる余裕はないね!まずはララちゃんの安全を確保しなきゃ!
POW
体内の地獄の炎を活性化させて炎迅(命中重視)を始動!全速力で敵へ走るよ!
まだ距離がある状態で上空にジャンプ!さらに念動力で足場を作り2段ジャンプ!体を大きく反らした状態から敵に両手の鉄塊剣を投げつけるよ!
「いくよ!ハイジャンプエビ反り大車輪!」
投げた後は念動力で鉄塊剣を回収してから、炎迅(攻撃回数重視)に切り換えて竜巻のように回転しながら斬りつけまくるね!
できればララちゃんから敵を引き離すように、反対方向にふっ飛ばしたいね!
「蓮華の目が黒いうちは好き勝手させないよ!」(赤だけど)
山梨・玄信
本当に連れて来られた人間にとっては、悪夢以外の何者でもない世界じゃのう。
じゃから…オウガには悪夢を見せてやるぞい。
【SPDを使用】
ララ殿は味方が確保したようじゃし、退路を確保してやるのじゃ。
愉快な仲間たちには危険の無いように逃げるように言い、混乱を避けるのじゃ。
トランプ兵は気の放出で纏めて弾き飛ばし、ボスは気弾で牽制するぞい。
ララ殿を追いかけて行くトランプ兵にも気弾を撃ち込んでやるのじゃ。
トランプ兵の攻撃はオーラで弾き、ボスの動きには注意して見切りと第六感で躱しに行くぞい。避け損なったら、オーラと激痛耐性で耐えるのじゃ
「敵意の無い者は逃げるのじゃ。向かって来る奴は容赦せんぞい」
アドリブ歓迎じゃ
リューズ・キックヘッド
アドリブ歓迎なのさ
またまたアリスなのさ、しかもお食事の手前。
自分の扉はまだまだ見つけてないみたいだけど、それは追々。
とりあえずトランプ兵にぱんぱん発砲しながらララに近づいて、助けに来たことは言っとくのさ。
で、後のトランプ兵はお仲間に任せてうさぎさんはお茶の支度。
とまぁ、ララに「とりあえず落ち着いて」って意味も込めてお茶を一杯飲んでもらうのさ。
一応お仲間もお茶に誘うけど、トランプ兵はもちろん誘わないのさ。
トランプ兵の早さが下がってる内にうさぎさんはララをつれてたったか逃げちゃうよ。
隙あらば追って来そうなトランプ兵を撃ちながら下がるけど、硝煙と紅茶の香りあんまり合わないのさ、やーだもー。
●うわばみも夢なら飛べた!
愉快な仲間のような、といえば。
ララはその視界の中に、熱線を吐き出す銃を片手にこちらに駆け寄る巨大なウサギの姿を認めていた。
人間とさして体格の変わらない、茶色のウサギの名前はリューズ・キックヘッド(時計ウサギの殺人鬼・f19872)。
アリスを助けたい気持ちと、アリスを殺したい気持ちの狭間で藻掻きながら、アリスを元の世界に帰さんと彼は駆けた。
「ぬぅっ、次から次へと!」
「お食事の最中に失礼するけど、横槍を入れさせてもらうのさ」
駆けるリューズへと振るわれる剣。比較的戦闘経験の浅いリューズが、接近するその刃に僅かに目を細めて見やると。
そこに飛び込む影が一つ。
「ハイジャンプエビ反り大車輪!」
「いや全く大車輪になっておらんのだがな!?」
リューズに振り下ろされんとした剣を弾き飛ばしたのは、摩訶鉢特摩・蓮華(紅蓮眼・f09007)の投擲した鉄塊剣だった。
念動力で放った鉄塊剣を回収する蓮華に、山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)が鋭いツッコミを入れる。
確かに海老反りになって飛び上がってはいた蓮華だが、回転はしていないので大車輪ではない。
しかしてリューズを援護するように、蓮華と玄信が彼の前に出る。
「本当に連れて来られた人間にとっては、悪夢以外の何者でもない世界じゃのう」
「まずはララちゃんの安全を確保しなきゃ!」
「ありがとうお二人さん、うさぎさんは彼女の元に向かいたい。力を貸してもらうのさ」
リューズの言葉に頷くや、蓮華と玄信は互いの武器を如何なく振るった。
剣は受け止め。盾は弾き。猛攻によってぐいぐいと、トランプ兵が押し戻されていく。
そうして蓮華と玄信がこじ開けた道を通り抜け、リューズは一気にララの傍へと駆け寄った。
「大丈夫かい、お嬢さん?うさぎさんたちが助けに来たのさ」
「あ、ありがとう……」
片膝をついて恭しくその手を取るリューズに、ララは元から丸い目をさらに丸くしている。
そして徐に、リューズの手の中に現れるティーセット。ポットからは湯気がホカホカと。
そうしてこぽぽ、と紅茶が注がれ始めるや、トランプ兵の動きが格段に遅くなる。
「まずは一杯、お茶をどうぞなのさ」
「あ……」
「チャーンス!蓮華の目が黒いうちは好き勝手させないよ!」
「愉快な仲間たちは安全な場所に逃げるのじゃ!」
トランプ兵の動きが鈍るや、そのスキを逃すまいと振るわれた蓮華の鉄塊剣が、まとめてトランプ兵の身体を薙ぎ倒して吹き飛ばす。
玄信の放つ気弾も、トランプ兵の身体が動いていなければ面白いように当たっていった。
どんどん、ララから引き離されていくトランプ兵たち。そうして二人の獅子奮迅の働きにより、広間から繋がる道への退路が拓かれる。
湯気を立てるティーカップを差し出しながら、リューズがララへと微笑んだ。
「さぁ、これを飲んで気持ちを落ち着けたら、急いで帰るのさ、お嬢さん。どっちに行けばいいか、分かるかな?」
「は、はい……」
そうして淹れたての紅茶に、口をつけたララが頷く。どうやらこの小世界のどこかに、ララの「扉」はあるらしい。
そしてララの視線が向いた先。玄信の背中の向こう、ちょうど道が開けている通路の方。
それを確認した蓮華が、玄信が、より一層その攻撃を激しくしていく。この世界に帰るための扉があるなら、なんとしてでもララの安全を確保しなくてはならない。
程なくして、紅茶を飲み終わったララが立ち上がった。
「皆さん……ありがとうございます!」
そう告げて、眦を決するララが駆け出す通路。
ネズミやネコやイヌやウサギが、その道へと導かんと立ち並んだ間を駆け抜けて。
ララ・アンダーウッドの身体は、通路の向こうへと消えていった。
成功
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第2章 集団戦
『グリードキャタピラー』
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POW : キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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●安上がりな絶望
「おのれ、おのれ、おのれ!」
獲物であるララを逃されたトランプ兵は地を踏んだ。
せっかく捕らえたアリスを逃されたのだ、その怒りも無理からぬ所。
そのトランプ兵の身体、鎧に覆われたその隙間から、「何か」が聞こえるのを猟兵たちは聞いた。
それは、きしり、きしりと硬いものが擦れる音。
歯ぎしりのような、葉擦れのような。
そして。
「ガァァァァァ!!」
雄叫びを上げたトランプ兵の鎧が崩れるや、その中から這い出してきたのは。
巨大な、とても巨大な芋虫だ。
「シャァァァァァァ!!」
耳障りな声を上げ、その口にずらりと並ぶ鋭い歯をカチカチと鳴らしながら、芋虫たちが猟兵たちをねめつける。
戦いの本番は、これからだ。
●WARNING!
グリモア猟兵が予知した内容と異なる敵が出現しました。
第二章、第三章について、当初の予知とは異なる状況になることがあり得ます。
フラグメントの内容をよく確認し、プレイングをご送付ください。
ロアー・アレグリアス
アドリブ歓迎なのだ
なんと、新手か?!
オウガがオウガの皮を被るとか、騙し討ちのつもりかぐぬぬ……驚いてないのだからな!
っていうか顔怖いな! よしボコる!
ララに向かって突進されては困るし、頭からぱっくりされるのはもーっと困るぞぅ!
そんな訳なんでビリッビリのバッチバチに痺れさせてしまった方が良さそうだな!
オウガの攻撃射程外から、ホールドスラッシュの初手である電撃を放つぞ。
ある程度のオウガを痺れさせたら、一匹ぐらい前に出っ張ってそうなヤツがいるだろうからソイツを思いっきり切り落とすのだ!
はっはっはー、こいつはトランプ兵でもいも虫でも避けれまーい!
……てかほんとに顔怖いなコイツ、何回か追加で切っとこう。
高柳・零
POW
トランプ兵、正体見たり、キャタピラー…って何ですかそれは!
まあ、この程度のアクシデントは猟兵にとってなんて事はありませんよ…別件でもありましたし。
この手の敵の弱点は攻撃手段が頭(口含む)のみな事です。
ならば後ろに…こいつ結構素早い!(零が遅いとも言います)
ならば手を変えましょう。
正面から攻撃を全開のオーラと盾で受け止め、噛み付いて来る瞬間に無敵城塞を発動。噛めないので、離れる瞬間にカウンターでメイスの鎧砕き付き2回攻撃で歯を折ってやります。
「これで噛み辛くなったでしょう」
アドリブ歓迎です。
●暴く いかさまのブラフ
鎧を突き破り、四肢を崩し去り、巨大で邪悪な芋虫は封じられたそれからまろび出る。
「ギガァァァッァァァァ!!」
その鋭い歯の並んだ口から、耳障りな、聞くに堪えない奇声を迸らせて、芋虫は歯の隙からだらだらと涎を垂らして猟兵をねめつける。
はらぺこなあおむし。何でも食べて、大きくなって、きっと正しい世界ならば美しい蝶になるのだろうけれど。この芋虫はただ喰らって、喰らって、喰らい尽くすだけ。
「なんと、新手か?!オウガがオウガの皮を被るとか、騙し討ちのつもりか!」
「トランプ兵、正体見たり、キャタピラー……って何ですかそれは!」
ロアーも零も、互いにその手に剣を握りしめて、目を見張っていた。
無理からぬ話である。先程まで饒舌に喋ってララを追いかけていたトランプ兵が。突如物言わぬ芋虫へと変貌したのである。
グリモア猟兵の予知と異なる状況に事態が動くアクシデントは珍しい話ではないが、これはなんとも、変貌が激しすぎる。
「まあ、この程度のアクシデントは猟兵にとってなんて事はありませんよ」
「確かに!我、別に驚いてないのだからな!っていうか顔怖いな!よしボコる!」
状況を整理し、心持ちを切り替えて、零とロアーは目の前に立ち並ぶグリードキャタピラーの集団に向き直った。
身体をくねらせ、一体のグリードキャタピラーが接近してくるところを、零がその手に握った盾を構えながらぶつかっていく。
「この手の敵の弱点は攻撃手段が頭のみな事です。ならば後ろに……!」
正面に構えた盾でキャタピラーの頭を弾いた零が、ぐっと盾を押し込むようにして体を側面へと入れ込む。そのまま後頭部の側へと身を入れて、そのまま殴りかかろう、という算段だった零だが。
ぐりん、と音がするように芋虫の頭部が自身の後方へと向いては、メイスを振りかぶる零へとその口を大きく開いて躍りかかる。
零の動きを予期していたとか、戦略的な要素はない。ただただ純粋に、グリードキャタピラーの俊敏さによるものである。
「こいつ結構素早い!」
「零殿、下がるのだ!」
芋虫の動作の速さに慄く零に、届くのは後方に留まったままだったロアーの声。
その鋭い声に零が振り下ろそうとしていたメイスを眼前に構えるようにして防御の姿勢を取るや、自身の視界、芋虫の後頭部を撃つようにして、電撃が迸った。
ロアーのホールドスラッシュに伴う雷撃だ。
射程外からの攻撃、グリードキャタピラーには防御の術はなく。雷撃に打たれてその身体がびしり、と硬直する。
数瞬だけ無敵城塞を発動させて自身へのダメージを回避した零が、改めてメイスを振りかぶると。その視界の内、芋虫の後頭部目掛けて剣を振りかぶるロアーの姿が見えて。
「その歯、砕いてやります!」
「はっはっはー、こいつはトランプ兵でもいも虫でも避けれまーい!」
各々の武器を振り抜くのは同時だった。
零のメイスが芋虫のずらりと並んだ鋭い歯を砕き折って、ロアーの剣が芋虫の頭部の下、首に当たるであろう関節部を斬り払う。
「……てかほんとに顔怖いなコイツ、何回か追加で切っとこう」
「あ、じゃあ僕ももう一撃」
そして二人によるダメ押しの攻撃。
すっかり致命傷を負わされた芋虫が倒れ伏す前に消滅していくのを。ロアーと零は地面に降り立ちながら笑みを浮かべて見ていたのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
摩訶鉢特摩・蓮華
なんなのあれ!ちょーキモイんだけど!あんなのが出てくるなんて聞いてないよ~!うぅ~剛士さん、恨むからね~!(滂沱)
SPD
姿はキモイけど、あれだけ大きかったら目を瞑ってたって攻撃が当たるね!
…ってあれ?なんか動きがめっちゃ速いんだけど!? 剣も当てにくいし、それどころか避けるので精一杯なんだけど!? っていうかまだ速くなってるし!もしかして蓮華ってば…ピンチ?(汗)
う~ん、こうなったらアレをやるしかないかな…痛いからあんまり使いたくないんだけど…
敵を引き付けつつ仲間を巻き込まないように距離をとるね!
そしたら自分の体中に傷をつけて準備完了!
「速い相手には点じゃなく面で攻撃だよ!いくよ、朱華散華!」
●晒す 邪まなフェロー
「なんなのあれ!ちょーキモイんだけど!」
蓮華は泣いていた。その閉じた瞳から涙を溢れさせて泣いていた。
無理もない。巨人の兵士であればまだ見た目にも恐ろしいだけで済んだというのに、それが一気に芋虫である。それも巨大な、鋭い歯を口いっぱいに生やした。
蓮華の言葉を借りるなら、これぞ正しく「キモイ」である。
「あんなのが出てくるなんて聞いてないよ~!うぅ~剛士さん、恨むからね~!」
そう、グリモア猟兵への恨み言を吐きながら、蓮華はその両手に鉄塊剣を握りしめる。
姿こそ醜悪だがその巨体、攻撃を当てるのは容易だろう、と誰もが思うだろうが。
しかし振り落とされた蓮華の鉄塊剣の一振りはグリードキャタピラーの巨体を受け止めることはなく、ただ足元の草地を抉るのみだった。
「……ってあれ?なんか動きがめっちゃ速いんだけど!?わわっ!?」
攻撃を易々と避けられたことに驚愕した蓮華が、すぐさまに飛び退いた数瞬後、蓮華のいた場所を猛スピードで芋虫の巨体が通過していく。
その速度は、とてもではないが芋虫が出していい速度ではない。
しかもその身に纏った甲殻が、ボロボロと剥がれ落ちていくにつれ、みるみるその速度が増していく。
「ギアアアアアアア!!」
最早絶叫にも等しいその奇声が、近づいては遠のき、また近づいてくる。
今や蓮華は回避するだけで精一杯の状況だった。否、既にその身に幾本もの切り傷が刻まれている。全ての攻撃を回避しきれていないことは彼女自身がようく分かっていた。
「う~ん、こうなったらアレをやるしかないかな……痛いからあんまり使いたくないんだけど……」
冷や汗を垂らした蓮華が、一度強く地面を蹴った。
なるべく遠くへ。味方がいる場所よりも遠くへ。ララが逃げた方向とは逆方向ならもっといい。
そして壁際まで身を寄せ、自分の周囲をグリードキャタピラーが取り囲む状況を作ったところで、蓮華はぐっと自身の身体に鉄塊剣を引き寄せた。
そのまま、強く腕を引く。
無数の傷がその身体に走るや否や、血の代わりに溢れ出すは紅蓮の炎。
「速い相手には点じゃなく面で攻撃だよ!いくよ、朱華散華!」
蓮華の声が響いた次の瞬間、まるで爆発が起こったかのように炎が周囲へ飛び散った。
高密度の紅蓮の炎に晒された芋虫の身体が、パチリパチリと小さく爆ぜる音を立てていく。
「ギガガガガガ!!」
身を焼かれる苦痛に声を上げてのたうち回るグリードキャタピラーの間を通り抜け、味方のいる場所まで舞い戻った蓮華は、そこでようやく息を吐きだした。
成功
🔵🔵🔴
イヴ・シュプリーム
心情:こんな風に変化するだなんて……イレギュラー発生、ね……?
貴女(ララ)とゆっくりお話しできるようになるには……まだ時間がかかりそうね……
ひとまずは……私たちの後ろに隠れていて……!
戦術:まず、ララに危害が及ぶのを防ぐため、<魔導弾>を軽く撃ち込むことで芋虫の注意を引き、こちらに【おびき寄せ】ます。
芋虫がこちらに向かってきたならば、突進のタイミングを【見切り】、<魔法:エネルギー操作>を併用しつつ【残影ノ軌跡】を発動させて芋虫の背後に回ります。
その後に<魔導レーザー>の【一斉発射】を叩き込みます。
(アドリブ歓迎)
●愁いの意味も 知らないで僕ら
炎に巻かれ、のたうち回るグリードキャタピラーを、イヴは
「こんな風に変化するだなんて……イレギュラー発生、ね……?」
そう、これぞ正しくイレギュラー。本来ならば起こるはずの無かった常ならぬもの。
いや、もしかしたらこの不確定性も、世界にとっては織り込み済みの事態なのかもしれないが。
ともかく事態は今、現在イヴを含む猟兵たちの目の前に展開しているこれこそが現実である。
「ララ、貴女とゆっくりお話しできるようになるには……まだ時間がかかりそうね……」
既に逃げ去り、この場を離れているアリスを想うようにそう独り言ちて、イヴはその手に菫色の魔力を集約した。
「オオオオオオオ!!」
イヴの集めた魔力に反応してか、数体のグリードキャタピラーが顔をこちらへと向けた。そのまままっしぐらに、テーブルもカトラリーも全てなぎ倒す勢いでイヴ目掛けて突進してくる。
その芋虫の顔面めがけて魔導弾を数発。しかし芋虫の突進が鈍る様子はない。速度を殺しきれていないのか、あるいは怯むほどの知能が無いのか。
どちらの場合であろうと、イヴの狙いは変わらなかった。
芋虫の牙が自身に届くかと思われたその瞬間。
ガキリ、と噛み合わさった芋虫の鋭い歯がイヴの華奢なからだを捉えることはなく。
一瞬のうちにイヴのからだは、グリードキャタピラーの背後にいた。
「残念、私はこっちよ……」
刹那、幾重にも放たれるバイオレットブルー。
凝縮された光芒が、次々とグリードキャタピラーの身体に穴を穿っていく。
「ギャァァァァ……」
そんな断末魔の叫びを残しながら消えていく巨大な芋虫を、イヴは変わらずその青の瞳で見つめていたのだった。
成功
🔵🔵🔴
山梨・玄信
トランプ兵が芋虫とはのう。まあ、擬態する怪物なぞいくらでも居るのじゃ。正体を現したなら、その形態に対応するまでじゃ。
【SPDを使用】
誰かさんの言う通り、奴の攻撃手段は頭に集中しておるのう。
ならば、UCのスピードを活かして敵の背後を取りながら攻撃じゃ。
トランプ兵に化けるくらいじゃから知性は高いじゃろう。それなら、第六感と見切りで動きを読み、効率良く後ろに回れるような動きをするぞい。
予想外の動きで攻撃を受けたら、オーラでガードじゃ。
UCに2回攻撃を合わせて手数で押し、素早く相手を倒して行くぞい。
目的はララ殿の救出じゃからな。
アドリブ歓迎じゃ。
高柳・零
POW
まだ、出て来ますか。これは方針変更した方が良さそうですねえ。
しっかり足を踏ん張ってオーラを被せた盾を構え、複数の敵を引き付けます。
1、2匹になら噛まれても激痛耐性で耐えます。
「これぐらい耐えられなければ、聖騎士なんて勤まりません」
敵がある程度集まったところで、天斬りを範囲攻撃にして一気に仕留めます。
打ち漏らしがあれば、2回攻撃の天斬りで追撃します。
「攻撃は最大の防御です!」
アドリブ歓迎です。
●独りのうたを鼓膜にとばして
グリードキャタピラーの数は減れど、まだまだ全滅には至っていない。
うぞうぞと蠢く巨大な芋虫数匹を前に、零と玄信はお互いに身体を寄せ合いながら表情を険しくする。
「まだ、出て来ますか。これは方針変更した方が良さそうですねえ」
「トランプ兵が芋虫とはのう。まあ、擬態する怪物なぞいくらでも居るのじゃ。正体を現したなら、その形態に対応するまでじゃ」
「ギシャァァァ!!」
威嚇するようにその歯をカチカチと鳴らす芋虫に、各々の武器をしっかと構える二人。
そして。
「ギガァァァァッ!!」
一匹の芋虫が大きく体をくねらせながら零と玄信に突撃する。その速度は相も変わらず巨体に見合わぬ速さだ。
その巨体を真正面に見据えて、玄信が突っ込むように大地を蹴る。
「ふっ!」
小さく息を吐いて、手にしたダガーを前方に構えた玄信の身体が、突っ込んでくる芋虫の身体を鋭く蹴った。
ほんの僅か、顔の向きを逸らされた芋虫が玄信を捉え損ねると、既に身体を芋虫の背後に入れ込んだ彼がダガーを一瞬のうちに振るっている。それを二度も。
後頭部をざくりと斬られ、悲鳴を上げる間もなくどうと大地に倒れ伏す芋虫一匹。身体が塵となって消えていくそこに降り立った玄信が、すぐさまに残る芋虫へと視線を向ける。
「誰かさんの言う通り、奴の攻撃手段は頭に集中しておるのう」
「そういうことです。頭さえ何とかすれば、対処もしやすいです」
視線を向けられた先では零が盾を構えて芋虫の群れに突貫していた。
盾を真正面に構えて身体を隠しながら突っ込む零へと、芋虫が次々に殺到していく。
そして、零がしっかと地面を踏みしめてグリードキャタピラーの身体を受け止めると、そこに何匹ものグリードキャタピラーが攻撃を加え始めた。
盾を構える前方からだけではない、側方からも加えられる攻撃。零の身体を芋虫の鋭い歯がずぶりと貫く。
「零殿!」
すぐに玄信がそちらに駆け付け、噛みつく芋虫の身体にダガーを振るっていく。芋虫が零の身体に牙を突き立てたままで消滅していった後も、しかし零は痛みに冷や汗をかきつつも笑顔を見せていた。
「大丈夫です、これぐらい耐えられなければ、聖騎士なんて勤まりません!」
玄信にそう力強く告げながら、零が視線を向けるのは前方にいるグリードキャタピラー3匹。
残る敵はこれらだけだ。この敵を片づけられれば、ひとまずの安全は確保できる。
そこで零は自身の剣を再び抜き放った。目の前の芋虫たち目掛け、鋭く振り抜く。
「攻撃は最大の防御です!」
横一線、振り抜かれた剣が芋虫の胴体を深く切り裂いた。鋭い痛みに、押し寄せる芋虫の身体が硬直する。
「一撃で仕留めるには足りませんでしたか、ならもう一度!」
「零殿、そこじゃ!」
零を援護しながらダガーを振るい続ける玄信が声を飛ばして一点を見た。その一点とは、すなわち芋虫の首だ。
「弱点ということですね、了解です!天に変わって悪を斬る!」
続けざまに零が横薙ぎに振るった剣が、狙うのは芋虫の首、赤い頭のすぐ下の関節部。
丸い頭を切り離すように振るわれたその剣が、グリードキャタピラーの身体と頭を切り離していく。
「ガァァァァァ……」
力ない断末魔を上げながら、さらさらと塵に帰っていく3匹のグリードキャタピラー。
そして、広間にようやくの静寂が訪れた。
成功
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第3章 ボス戦
『切り裂き魔』
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POW : マッドリッパー
無敵の【殺人道具】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : インビジブルアサシン
自身が装備する【血塗られた刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 殺人衝動
自身が【殺人衝動】を感じると、レベル×1体の【無数の血塗られた刃】が召喚される。無数の血塗られた刃は殺人衝動を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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●魔法は解けた!
「キヒヒ、お見事お見事。随分と手練れのアリスが迷い込んできたものだ」
パン、パン、と手を打ち鳴らす音と主に、どこからか声が聞こえてくる。
猟兵たちがその声のする方に視線を向けると、広間の壁を構成する木立の一等高い木の上。上側の枝に何者かが立っている。
一見すれば、背の高い帽子をかぶった男のようにも見えるそれだが、人間でないことは明白だった。
帽子にはいくつもの目が開かれて猟兵たちをねめつけ、コートの襟元と帽子のつばには尖った牙がずらり。打ち鳴らされている赤い両手の指全てには、鋭い刃が生えている。
そして、全身が血で塗れた男から立ち上る、濃密な殺気と、血の匂い。
細くひょろっとした体躯と同様にひょろっとした金属製の足で枝を蹴り、男は猟兵たちの前に降り立つ。
その指先の刃をジャキ、と鳴らしたその次の瞬間には、男の立っていた大木が膾切りにされて地面に次々落下していた。
その音に紛れるようにして、ひ、と小さな悲鳴が猟兵の耳に届く。
猟兵の発した悲鳴ではない。音のした方を振り返ると、そこには榛色の瞳をした、一人の少女。
「ララ!」
ララ・アンダーウッドの名を呼んだのは誰だったか。逃げていったはずのララが、いぬやねこやねずみに守られるようにして、通路から顔を覗かせていた。
「すみません、帰らなきゃとは思っていたんですが、皆さんのことがどうしても気にかかって……!」
そう申し訳なさそうに話すララの視線は猟兵たちに向けられている。血まみれの男には目もくれない。
当然だ、彼女はユーベルコードこそ使えるものの、一般人。こんな濃密な殺気と血の臭いを撒き散らす存在など、直視できないのは無理もない。
だが、しかし。彼女は逃げなかった。
「皆さん……頑張って!そいつを倒してください!」
「この『切り裂き魔』を前にして、生きて帰ろうというのかい?アリス。随分と見縊られたものだ。
私に立ち向かう勇敢なアリスを血祭りに上げる私の姿を、目に焼き付けるて震えるといい!」
ララに嘲笑するような声を飛ばした切り裂き魔が、その指の刃を猟兵たちに向ける。
刃の先から垂れた血の一滴が、ぽたりと下草に染みを作る。
その音と共に、猟兵たちは武器を構えて駆けだした。こいつを倒して、ララ・アンダーウッドを今度こそ、無事に家まで帰すのだ。
●WARNING!
グリモア猟兵が予知した内容と異なる敵が出現しました。
フラグメントの内容をよく確認し、プレイングをご送付ください。
ロアー・アレグリアス
アドリブ歓迎なのだ
と、真の姿で行くのだ!
にゃ、にゃんとぉ?!
大ボスはチェシャ猫ではなかったのか……予知の内容がこうも違うとは、なんともびっくりだ!
……我も予知するときは気を付けよーっと。
それはさておき、では貴様をチェシャ猫の代わりにボッコボコにしてくれるわ!
トリニティ・エンハンスの水の型、我が剣に力を示せ!
殺人道具だかどうとか言うが、水泡纏う我が雷剣でまるっと包んでバチッとぶっ壊してやるわ!
それがうまく行ったら声高々に言ってやるのだ。
「猫妖精もろくに傷つけられぬモノが殺人道具などとは、ちゃんちゃら可笑しいわ!」
これも上手くいけば、奴の戦闘力を下げれるやも……その隙に雷剣で追い討ちを仕掛けるぞ!
火土金水・明
「どんな姿のチェシャ猫さんか見に来たのですが、切り裂き魔だとがっかりですね?。」「にゃん。」切り裂き魔に視線を向けたまま、使い魔の黒猫に言います。
【WIZ】で攻撃です。攻撃は【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『切り裂き魔』がどこに移動しても巻き込めるようにして纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「ララさんの為にも、あなたを倒しますね。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
高柳・零
POW
おや、随分な自信ですね。自分が居る限り、ララさんに手は出させませんよ。
殺人道具を正面から受け止めます。
見切りで打点をずらし、オーラ付きの盾で勢いを殺しつつ、無敵城塞で弾き返します。
「おや、どこが殺人道具ですか?こちらはピンピンしてますが」
無敵城塞で動けない隙を突いてララさんを攻撃しようとしたら、オーラ全開で体を包みララさんをかばいます。ダメージは激痛耐性で耐えます。
「ララさんに手は出させないと言いましたよね。序でに言うと、自分も死んでませんよ?」
敵が道具に疑念を持ったらメイスで叩き壊し、返すメイスで本体もぶっ飛ばします。
「ガラクタは必要ありませんよね。あなたも含めて!」
アドリブ歓迎です
●きっといまの僕は夢で ふっとそれに気づけたとして
何の事故か。何の必然か。
グリモア猟兵の予知した敵とは、異なる敵。異なる状況。
それがまたしても、猟兵たちの前に厳然たる事実として現れた。
誤解の無いように予め言うが、グリモア猟兵の予知の精度は、決して低くはない。概ね見えた通りの状況が発生するし、見えた通りの敵が猟兵たちの前に現れる。そういう風に出来ている。
しかし精度が高いとは言えるが、完全にと言えるものではないのもまた事実。全てを見通せるわけではないのも、また事実なのである。
故に、同じグリモア猟兵であるロアーは殊更に驚いた。
「にゃ、にゃんとぉ?!大ボスはチェシャ猫ではなかったのか……予知の内容がこうも違うとは、なんともびっくりだ!」
「どんな姿のチェシャ猫さんか見に来たのですが、切り裂き魔だとがっかりですね?」
「にゃん」
火土金水・明(人間のウィザード・f01561)もロアーの横に並んで、切り裂き魔をまっすぐに見据えたまま、肩に乗った使い魔の黒猫に言葉を投げる。主人と同じ方向を向きながら、黒猫が短く一声鳴いた。
明の横で、零がメイスを正面に構えながらちらりとロアーに視線を向けた。
「こういう状況に実際に直面すると、グリモア猟兵の人は怖くなるかもしれませんね。自分の見た予知を頼りに皆さんを送り出すんですから」
「うむ……我も予知するときは気を付けよーっと」
予知する側にも回ることが多いロアーが気を引き締めつつ冷や汗を垂らすと、その耳に聞こえてくるのは刃の擦れるキシキシという音。そして、喉を鳴らすような笑い声。
誰が彼らを笑ったか。その答えは明白、常に彼らの前にいる。
「くっく……ここは不思議の国、不思議に満ち溢れた世界。かつて見たものと今見えるもの、そこにズレがあることなんて、何もおかしなことじゃあない。
さて、アリスが私の刃にかかるという行く末まで、アリス達の目は見ていただろうかね?」
「おや、随分な自信ですね。自分が居る限り、ララさんに手は出させませんよ」
「予知の正否の如何はさておき、では貴様をチェシャ猫の代わりにボッコボコにしてくれるわ!」
切り裂き魔の揶揄するような声色に、零とロアーがそれぞれ手に握った武器を構える。
その姿に、切り裂き魔は今一度、手の指から生えた鋭き刃をキン、と打ち鳴らすと。
「血に沈むアリスは力無き彼女ではない、お前達だ……言っただろう?その様を、力無きアリスの両の眼に焼き付けねばならないのだから!」
血の臭いを撒き散らしながら、だんと強く地を蹴ったのだ。
●生み出した全部 どこにあるのだろう
切り裂き魔が前に踏み出たのと合わせて、前方に飛び出したのはロアーと零の二人。
明は使い魔の黒猫と共に後方に留まっている。
チームワークと呼ぶには随分と即席で、しかし役割分担と呼ぶにはあまりにも出来過ぎなそれ。三人の行動のそれぞれは、お手本のように仕事が分担されていた。
前方に飛び出した二名のうち、零は切り裂き魔の正面へ。
ロアーは零の後ろにつくようにしながら同じく正面へ。
後方の明は動かないで魔法の詠唱。
この立ち回りの意味するものが何か。分からないほど切り裂き魔は愚鈍ではない。
「ハッ、実に見事、実に明朗な戦術だ、アリス達!まるでトランプ兵の修練のようだ。
しかし、明朗であるということは同時に弱点でもある。そうだろう!?」
高らかに笑いながら、トランプ兵は駆ける。駆けて駆けて、零と真正面からぶつかるかと思いきや。その頭上を飛び越えるように高くジャンプした。
「なっ!?」
突然に頭上から落とされる影にロアーは目を見張った。同時にぐっと足を踏ん張り急ブレーキをかける。しかしその時には既に、切り裂き魔の身体は頭の上を飛び越えている。
その行動の意味するものは何か。この場に立つ三人だけではない。後方で通路の角から震えて見守るララにも分かった。
魔法の詠唱を終わらせ、いざ魔法を発動させようとしていた明が小さく歯噛みする。
だが逡巡するほどの余裕は勿論ない。するつもりもない。
杖を前方に向けて、鋭く告げた。
「我、求めるは、冷たき力!」
刹那の間を置いて横方向にずらりと展開した魔法陣から、多数の氷の矢が一斉に放たれた。まるで壁を作るように、切り裂き魔を押し返すように。
しかし範囲が広い攻撃はその分だけ密度が薄い。氷に打たれながらも、切り裂き魔の駆ける速度は鈍らない。
「壁役を抜け、魔法使いから叩く。常道だ!」
「しまっ――」
その手の血塗られた刃を振りかざしながら、いよいよ明に切り裂き魔が迫らんとする。
だが。
明がその目をうっすら細めた瞬間。
「おや、どこが殺人道具ですか?こちらはピンピンしてますが」
「何っ
……!?」
切り裂き魔の手に届いたのは肉を貫く柔らかな感触ではなく、硬いものにぶつかって強く震動する感触だった。
鋭い刃の切っ先が、明に届く寸前。
突き出されたその刃を受け止めるようにして、盾を構えた零が割り込んでいたのだ。
それもただ防いだだけではない。突き出された切り裂き魔の刃が、砕けるように壊れている。
「くっ……だが、その守りが如何に堅かろうと、私の殺人道具の前には手も足も出まい!」
手を一度ひっこめた切り裂き魔がその手を高く掲げるや、次の瞬間にはその手の中に一振りのナイフが握られていた。
大振りな、それでいて刀身の細長いナイフだ。それはまるで肉を斬ることにのみ特化している牛刀のようで。
「斬る」という一点において、なんの躊躇も疑念も介在しないような形状をしたそれを、切り裂き魔は高く振りかぶった。
そしてそれが零に向かって振り下ろされる。零は動かない、否、動けない。
何故なら彼は無敵だから。無敵である代わりに、動けずにいるから。
故にこれは無敵と無敵のぶつかり合い。
そうなるはずだった。だが、そうではないのが現実というもの。
「死ね――なっ!?」
ナイフの刃が零に届こうか、というところで切り裂き魔は瞠目した。
刃が、自分の手が、ぷよぷよとした水の球に包まれているではないか。これでは零を斬りつけるどころの話ではない。
姿勢を整えつつすぐさまに後ろを振り返る。そこには。
「妖精も猫妖精もろくに傷つけられぬモノが殺人道具などとは、ちゃんちゃら可笑しいわ!」
ロアーが雷剣を振り抜きながら、力強く言い放っているのであり。
そしてその言葉がまさしく、絶対無敵の刃を砕く楔となった。
生じた隙を見逃さずに、無敵城塞を解いた零がその手のメイスをナイフ目掛けて振り抜く。
「ガラクタは必要ありませんよね。あなたも含めて!」
「ぐ、がっ
……!!」
一度目のメイスはナイフを水球ごと粉々に打ち砕いた。
返す二度目は、切り裂き魔の胴体を薙いだ。
叩きつけられぐらりと傾いだ切り裂き魔の身体に、ぐんと迫るロアーの雷剣。
「貴様の殺人道具など、我が雷剣でバチッとぶっ壊してやるわ!」
切り裂き魔が右手を差し込んで防御しようとするが、数瞬遅い。
振り抜かれた刃に打たれて、右手に生えた刃の幾本かが粉々に砕かれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
山梨・玄信
こやつ、殺しを楽しむタイプじゃな。一番許せんタイプじゃ。
【SPDを使用】
全身にオーラを纏い、見切り、聞き耳、第六感で刃の攻撃を読みつつUCのスピードを活かして敵に接近するぞい。多少のダメージは激痛耐性で我慢じゃ。
接敵したら上着を脱ぎ捨て更に加速。死角に回り込んで鎧無視の2回攻撃とUCを組み合わせ、一気に切り刻んでやるわい。
「今度は道具の数で勝負かの?」
「この程度の傷で怯むとでも思っておるのか?」
「手数は技術でも稼げるのじゃ。道具頼みのお主との決定的な違いじゃ!」
アドリブ歓迎じゃ。
イヴ・シュプリーム
心情:(ララを視界の端に捉え)……僅かな時間だったけど……強くなったわね……
私も……彼女の勇気に答えないとね……
そして、最初に言ったことを……今果たすわ……
「私は『魔導士:The supreme one』……名前はイヴ……。そこの貴方(切り裂き魔)も覚えておいて……5分後には、無意味なものになるかもしれないけど、ね……」
戦術:まず真の姿の【封印を解く】(制限時間5分)、そして<魔法:精神感応>による【催眠術、精神攻撃】により殺人衝動を抑制させます。
それでも反撃が来た場合は<日傘>を使った【盾受け】と【オーラ防御】を使用
そして最後に選択UCで刃を分解(可能ならば本体も)します
(アドリブ等歓迎)
リューズ・キックヘッド
アドリブ歓迎なのさ
ララとまったり紅茶楽しもうかと思ったのに、なんか騒がしいのさ。
兵隊が虫になったぁとか、猫が殺人鬼になったぁとか……流石は我らが不思議の国。
けどオーガの不思議はおなかいっぱいなのさ。
ただまぁ、戦いにおいてうさぎさんはまだまだなのさ、敵の武器をぱんぱん撃ち落として援護射撃をしておくのさ。
あとは万一、ララに危害いきそうになったときに庇いに行くくらいかなぁ、うさぎさんまだほんな強くないから仕方ないね。
接近してこようものなら、もう本気のクイックドロウで暴れ撃ちして退けてしまうのさ。
……あと、今回のアリスは扉の場所、わかってるんだっけ。
ならさっさと帰してしまうのさ、夢から醒める時間だよ。
●歌ってた全部どこに残るだろう
ぐら、と傾ぐ切り裂き魔の身体が伸ばした足を支えに踏ん張る。細い金属製の足が軋む中、玄信は追撃を加えんと切り裂き魔に突進した。
「こやつ、殺しを楽しむタイプじゃな。一番許せんタイプじゃ」
吐き捨てながらまた一歩、強く地を蹴った玄信を、切り裂き魔のシルクハットに浮かんだいくつもの瞳がぎょろりとねめつける。
そして顔の見えない、帽子のつばとコートの襟に生えた歯を、カチカチと鳴らす。恐らく、嗤っているのだろう。
「異なことを言うアリスだ。殺しを楽しむか?当然だろう!
アリスを殺すことは我々オウガの存在意義!生きるためには殺さねばならないというのなら、より楽しく、より充実した殺しを追求することに、なんのおかしなことがある!」
「殺しを料理のように言うでないわ……!」
ぎりと歯噛みした玄信の前方で、切り裂き魔がこちらに向かって左手の刃をまっすぐに向けてくる。
その周囲、まるで指が増えたかのように同じ形の血塗られた刃がずらり。十、二十、五十、いや、それよりももっと。
そしてその多数の刃が、同時に玄信へと向かって行く。
上空から雨のように降り注ぐ血に塗れた刃。それが降り注ぎ、地面に突き立てられていく中を、時にオーラで弾き、時に見切って躱し、玄信は進む。
しかしこれらの刃はただ降り注ぐだけのものではない。しゃらりと音を立てて地面から抜かれては、再び玄信へと向かって行く。
背後から高速で飛来した刃が一閃、玄信の肩や足の肉を貫いていく。だが刃を身体から生やしながらも玄信は止まらない。
「そこまで傷ついていながら足を止めないだと
……!?」
「この程度の傷で怯むとでも思っておるのか?」
シルクハットの瞳を大きく見開いた切り裂き魔に、玄信が鋭い声で言ってのけると。
いよいよまずいかと認識した切り裂き魔が自身の目前に迫る玄信へと、自由になる刃を全て使って一挙に振り落としていく。
ほぼ全方位からの攻撃。それにも構わずに突撃してくる玄信。
そして刃同士がぶつかる、硬質な音がしたかと思うと。
「……何っ!?」
切り裂き魔は瞠目した。真正面で刃に貫かれているのは、玄信が身に纏っていた道着の上衣だけ。それを身に纏っていたはずの玄信の姿がない。
「甘いのう」
そんな声が聞こえたのは後方から。切り裂き魔が振り向くよりも早く、玄信のダガーナイフが切り裂き魔のコートを深く切り裂いていった。
ザクリ、ザクリと布地を裂くには随分と生々しい音が二度。噴き出す鮮血、飛び散る肉片。
後方に大きく身体をのけぞらせる切り裂き魔から離れた玄信が、無造作に自分の身体に突き刺さったままだった刃を抜いては無造作に投げ捨てる。
「手数は技術でも稼げるのじゃ。道具頼みのお主との決定的な違いじゃ!」
そう強い口調で言ってのけた玄信だったが。すぐにその口をきつく閉じることになる。
地面に投げ捨てた刃が、ふわりと浮かび上がったのだ。どうやら念力操作はまだ有効らしい。
「まだ諦めておらんのか、いい加減に――」
「ああ、諦めてはいないとも」
仰け反ったままの体勢で、切り裂き魔がその牙の端からたらりと血の混じった涎を垂らす。
そして、二本の刃が飛んだ。
玄信の頭上を越え、切り裂き魔の頭上を抜け、刃がまっすぐに向かうのは猟兵のいずれにでもない。
俄かに愉快な仲間たちが慌てだす。今まで矛先は向くことが無かった、そこには。
「ララ!!」
玄信が声をかけた先に、今まさにぐっとしゃがみ込んで刃を躱そうとする、ララ・アンダーウッドの姿があったのである。
●届けよ見えない未来のうた
刃が目前十数センチまで迫りくるまさにその時。
ララの前に割り込んでくる、大きな影があった。
そのままざくり、と肉を貫く音がする。
「やれやれ、流石は我らが不思議の国。けどオーガの不思議はおなかいっぱいなのさ」
「ウサギさん……!」
ララの前に立ちはだかったリューズが、身を挺してその身を刃の前に晒したのだ。
痛みに顔をしかめ、片方の膝を地面につきながらも、リューズは不敵に笑ってみせる。
突き刺さった刃をぐいと抜き、改めて地面に深く突き刺した。
「うさぎさんが出来るのはこのくらいなのさ。まだそんな強くないから仕方ないね」
「そんな……そんなことないです!私なんかより、ずっと……!」
「いいえ、貴女も強くなったわ……ほんの僅かな時間だったけどね……」
そう、静かな声色でリューズの隣に立ちながら、ララを視界の端に捉えるのはイヴだ。
その青い瞳に柔らかな光を湛えながら、彼女は呆気に取られるララを見る。そして、それがすぅ、と僅かに細められた。
「私も……貴女の勇気に答えないとね……そして、最初に言ったことを……今果たすわ……」
「え……」
地面にへたり込むようにしたララが目を見張る。何故なら、イヴの背に光の翼が現れたからだ。青白い光を溢れさせた、三対六枚の翼が。
「私は『魔導士:The supreme one』……名前はイヴ……。そこの貴方も覚えておいて……5分後には、無意味なものになるかもしれないけど、ね……」
「くっ、この力の高まりは……!だがまだだ、まだ終わりではない!」
真の姿を解放し、胸元の薔薇のコサージュが青色になったところで、イヴはまっすぐに切り裂き魔を見やった。
同時に切り裂き魔が無数の刃を召喚するも。何割かの刃が像を結べずにさらさらと崩れて消えていく。
「刃が生み出せない……何故だ!?」
「貴方の刃は殺人衝動を起点にして生み出す……なら、そこを抑えてしまえばいい……」
一瞬のうちに精神攻撃と催眠術を施したイヴは、切り裂き魔の殺人衝動を抑えにかかったのである。
しかし全てを抑えきるには至らなかったようで、十何本かの刃がイヴを追いかけるように飛んでいく。
その刃を、キンキンと次々に穿つものがあった。
「せっかく、ララとまったり紅茶を楽しもうかと思ったのに、騒がしくてかなわないのさ」
ララを守るように位置どったリューズが熱線銃の引き金を引いては、熱線で飛び回る刃を焼いては落としていく。
次々に落とされ、数を減らしていく刃を見て、切り裂き魔は瞠目した。殺人衝動を抑えられている現状、新たに刃を召喚することも叶わない。今ある刃は次々に落とされていっている。
これでは、殺せない。
そうして歯と歯をぎり、とぶつけて鳴らしながら、切り裂き魔は地を蹴った。走る度に背中に受けた傷からぼたぼたと血が垂れていく。
そうしてまっすぐ自分に向かってくる、どんどんその姿を大きくしていく切り裂き魔を真正面に見据えて。
「来たわね……制限解除。少しだけ……本気を出すわ……」
攻め急いでくれたことに感謝をしながら、イヴがまっすぐに指を突き出す。
途端に、切り裂き魔の指先の刃が消えた。砕けたのではない。まるで見えない塵になって崩れていくように消えた。
「は
……!?」
困惑の色を隠せずにいる切り裂き魔。そうする間にも指先の刃も、手も、どんどんとその身体が『消えて』いく。
任意の対象を原子レベルに強制分解する、名も無き魔法。それが切り裂き魔の刃を、肉体を、文字通り塵へと還していた。
「う……うわぁぁぁぁぁ!!」
狂乱の悲鳴を上げながら、切り裂き魔の肉体は原子に分解され。
やがて、跡形もなくこの世界から消え去った。
●どんな顔で君とまた出会えるだろう
そして、この小世界のとある場所、大きな両開きの扉がある前で。
ララと猟兵たちは、互いに顔を見合わせながら微笑んでいた。
この扉がララの探していた扉。「アサイラム」と呼ばれる元の世界に帰るための扉だ。
「皆さん、本当にありがとうございました。お陰様で、無事に帰れます」
「すぐに扉が見つかってよかったのう。わしらも無事にお主を帰すことが出来て何よりなのじゃ」
頭を下げるララに、玄信が笑いながら胸を張ってみせる。
オブリビオンとして蘇ったオウガを退治した後は、至極スムーズにララの探す扉を見つけることが出来た。猟兵たちのサポートと、愉快な仲間たちの先導もあってのことだ。
真の姿から戻ったイヴが、柔らかな笑みを浮かべながらこくりと頷く。
「私達は、ちょっと貴女のお手伝いをしただけ……帰ることが出来るのは……貴女が頑張ったからよ……」
「そうそう。そもそもララが頑張らなければ、扉を見つけることは叶わなかったのさ」
「イヴさん……ウサギさんも……ありがとうございます……」
イヴの隣で腕組みしながら笑うリューズにも、お礼と笑みを返しながら。
ララは両開きの扉の取っ手に手をかけた。
「それでは、私は帰ります……また、どこかでお会いしたら、よろしくお願いします!」
「さっさと帰ってしまうのさ、夢から醒める時間だよ」
「出来れば、今度会う時はこの世界でないことを願うのじゃ」
リューズと玄信の声に背中を押され、ララは扉の取っ手に力を籠める。
扉の隙間から光が漏れるや、その中に吸い込まれるようにして、ララの身体は不思議な世界から消えていった。
●伝えきれぬ思いに朝焼けまだ遠く
はっと目を見開く。
窓際で揺れるカーテン。背中に当たるマットレスの感触。枕元に置かれたお気に入りのウサギのぬいぐるみ。
窓の外は未だ暗い。手探りで目覚まし時計を手に取り、時間を確認すると夜中の3時ちょうど。朝までにはだいぶ時間がある。
時計を元の場所に戻して、掛け布団をもう一度首元まで引き上げながら、ララ・アンダーウッドは満足げに微笑みながら目を閉じる。
私は、確かに帰ってきた。
血生臭い不思議の国から。不思議な生き物たちと、勇敢な人たちに救われて。
そうして、またいつも通りの日常に向けて、彼女の一日が始まるのだった。
大成功
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