●マーメイド・パレス
ねぇ、ミテ。
キラキラ光ってキレイでショ?
コレはワタシのだいじなタカラモノ。
どんな貝殻ヨリ、サンゴ礁ヨリ、王子様ヨリすてきなモノ。
だからね、ダレにも――そう、ダレにだってコワさせたりなんてしない。
●人魚の伝説
「やぁ、よく来てくれたね」
待っていたよと、ライオット・シヴァルレガリア(ファランクス・f16281)が人好きのする笑みと共に猟兵たちを出迎えた。
「突然だけれど、皆は人魚のお話に興味はあるかい?」
人魚といえば、胸踊る物語の題材としてはこの上ない存在だろう。世界を股にかけた大航海に海賊、そして人魚姫。海にはいつだってロマンが溢れているものだ。
もしかすると、猟兵の中には実際に人魚と会ったことのある者もいるかもしれない。
「皆には人魚に会いに行って欲しいんだ。ただし、人魚といってもオブリビオンの人魚だけれど」
つまり、今回は人魚と友好関係を結ぶのではなく、倒すべき敵として戦わなければならないらしい。
そうする必要があるのにはもちろん理由があると、ライオットは説明を続ける。
「勇者の伝説と群竜大陸、そしてクラウドオベリスクについてはきっと聞いているだろうね。結論から言うと、人魚たちがそのクラウドオベリスクのうち一つを守っているようなんだ」
猟兵たちの活躍により勇者の伝説を紐解いていった結果、群竜大陸が噂レベルで未だ見つかっていない理由が明らかになった。
その理由というのが件のクラウドオベリスク。世界各地に存在するこの邪悪な柱が、群竜大陸の所在地を隠しているのだという。
人魚たちが守る一本を破壊すれば、群竜大陸発見の足がかりになるという訳だ。
「けれど相手は人魚。彼らが暮らすのは海の底だ。クラウドオベリスクがよっぽど気に入ったのかな、その柱を中心に宮殿を築いているようだよ」
宮殿の真上までは船で向かうことが出来るが、その後は海に潜って宮殿内を探索しなければならない。
海中で行動するため、何らかの対策を各自で用意する必要があるだろう。
「人魚たちが大事な宝物を素直に破壊させてくれるとは思えない。戦闘の準備もしておいた方がいいだろうね」
けれど――そこで一旦言葉を区切ったライオットは、どこか楽しげな様子で。
「人魚の宮殿で宝探しをするんだ。どうかな? 聞いただけでわくわくしてこないかい」
同行できなくて残念だと彼は言う。そして戻ってきたら土産話を聞かせて欲しいとも。
「冒険には危険がつきもの。どうか怪我には気を付けて。行ってらっしゃい」
かくして猟兵たちの冒険は幕を開けた。
太陽の下で煌めくオーシャンブルーが君たちを待っている。
茶バシラ
こんにちは、茶バシラです。
夏ですね!海……はまだ早いでしょうか?
ともかく、水着コンテストの前に海での冒険はいかがでしょう。
いつもの如く、プレイングはなるべく好意的に判定したいと思っていますので、気軽に楽しんでいただけると嬉しいです。
(ただし、公序良俗に反するプレイングは不採用となります)
●おおまかな流れ
第1章:『ボス戦』
船での移動中、領域の守護者に襲われます。
この章での戦闘は基本的に船の上で行うことになりますが、あえて水中で戦うのもアリです。
ざっくりとガレオン船のような船をイメージしていただけるといいかと思います。
第2章:『集団戦』
宮殿を守る人魚たちと戦闘を行います。
彼らを倒し、クラウドオベリスクのある場所を目指しましょう。
この章から水中で行動する必要がありますので、何らかの対策をご用意ください。
プレイングに対策を記載していれば、特にそれ用の装備アイテムやUCを用意しなくても問題ありません。
(もちろん用意してくださっても構いません)
第3章:『ボス戦』
クラウドオベリスクのある広間で、人魚の女王と戦闘を行います。
2章同様、水中で行動する必要がありますので、何らかの対策をご用意ください。
(2章から引き続きご参加の方は省略してくださって構いません。自動的に2章と同じ対策をとったていで描写します)
●第1章の受付開始について
都合により、第1章のプレイングは『6月23日(日曜日) 午前8時30分』より受付を開始します。
プレイングの送信はこの時間よりも後にお願いします。
期間外に送っていただいたプレイングは一旦お返しさせていただきます。
(再送はもちろん大歓迎です)
それでは、どうぞよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『深海に住まう悪魔』
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POW : 空中まで届く突進
自身の肉体を【水中に沈め、急上昇で攻撃する際、より軟体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD : 海中へと引きずり込む
【水中に一旦潜り、相手の死角より伸びた触手】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 高速移動
【毒を内包した10本の触手】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【(海)を高速で移動し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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●限りなく青い海の上で
アックス&ウィザーズの海を1隻の船が行く。羅針盤を頼りに、ある方角を目指して進むそれは猟兵たちを乗せた船だ。
海を移動する手段は、転送先の港町で容易に見つけることができた。
どうやらその町では冒険者に船を貸し出し銀貨を稼ぐことが1つの商売として成り立っているらしく、全員が乗り込めるだけの船を見繕うとすぐに海へ出してくれた。
3本のマストを有するその船は、人魚を模した船首像を先頭に頼もしく波をかき分けていく。
空では太陽が導くように行き先を照らし、潮風は優しく頬を撫でる。まさに絶好の航海日和だった。
ある猟兵が海図を広げれば、そろそろ目的の場所へ到着する頃合いだと気が付くだろう。
しかし海は相変わらず平穏なままで、敵襲を警戒していた者は拍子抜けしたかもしれない。
これだけ近付けば、後は海に入って直接探した方が効率的だろう。何人かの猟兵が海に飛び込む準備を始めたその時だった。
いつの間にか船の下に巨大な影が現れたのを、猟兵たちは見た。不気味な影から逃れようと、舵を切った時にはもう遅い。
海中から轟音と共に迫り出した10本足が船を取り囲むと、そのままがっしりと船体を掴んで固定する。
板が軋み、破れる音が響くも、何とか転覆は免れたようだ。
船上の獲物を確認するように、最後に現れたのは大きな頭。ギョロリと動いた目玉が迷いなく猟兵たちの姿を捉えていた。
奴は海の悪魔――クラーケンだ。恐らく宮殿に外敵を近付けぬようこの領域を守っているのだろう。
ならば猟兵としてはこの巨大なイカを倒さない手はない。
何よりこのままでは船ごと海中に引きずり込まれ、いきなり広い海の真ん中に投げ出されかねないのだ。それだけは避けなければならない。
冒険に危険はつきもの。そしてこの危険を乗り越えることもまた冒険だ。
それぞれの想いに背を押され、猟兵たちは武器を取った。
エスパルダ・メア
おわ、でけえイカだな
アレ、焼いたら美味いと思うか?白雪(f09233)
…って何だどうした
あー、成程ね
背中に隠れた白雪を隠してやって笑う
それじゃ後ろ、任せていいな
気にしなさんな、ちょうどウチの王子は守りたがりでね
ガーディアに守らせたRiotを構え
盾受けで触手から守る
安心しろ、お前にゃゲソ一本触らせねえよ
王子も大事にするに決まってら
そいつのこと頼むぜ
白雪の腕にペンギーを押し付ける
海だって聞いたら着いて来ちまったんだよな
隙を見て前に飛び出せば
地形の利用で船の死角から飛び降りて
UCで足を切り落とす
氷の属性攻撃を乗せて動きを封じ
白雪に触手が伸びれば凍らせる
触らせねえって言っただろ
こっちも助かったぜ、白雪
鶴澤・白雪
ゲッ…デカイ上ににょろにょろ……
ススス、と思わずエスパルダ(f16282)の後ろに隠れて
スルメは好きだけどけどあれは、嫌…
今回は後ろ任せてもらえると非常に有難いわ
背中だけは守ってあげるから安心なさい
あと王子の本体の酷使はしないでよ?
あら男前ね、お手並み拝見といこうかしら?
は?何でペンギーがいるの!?
あぁ、もう!任されてあげるわ、可愛いから!
他の足で妨害も考えられるからスナイパーで足先を撃って援護する
エスパルダが危なくなったら高速詠唱とUCで足を貫くわ
脳天焼かれたくなかったら頭下げなさい
全く自分のことも気にしなさい、お馬鹿
でも助かったわ
アンタの背中守る代わりにあたしが危ない時は引き続き頼んだわよ
●氷刃焔華
「おわ、でけえイカだな」
現れたクラーケンを見上げての第一声は、そんな暢気にも思える感想だった。
自分の身の丈の何倍もあるイカの化け物を前にしても、エスパルダ・メア(ラピエル・f16282)は欠片も臆することなく。
「アレ、焼いたら美味いと思うか? 白雪……って何だどうした」
言って振り返った時には、いつの間にか鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)はエスパルダの背中に身を隠していた。
何か様子がおかしいとエスパルダは思う。普段の白雪であれば「あんなの美味しいわけないでしょ、馬鹿ね」くらいのことは言い返してきそうなものだが、そんな彼女が今はやけに大人しい。
「スルメは好きだけどあれは、嫌……」
白雪は心なしか青ざめた顔でイカから目を逸らしている。ははーんと、合点がいったようにエスパルダは笑った。
恐らく彼女はクラーケンに生理的な嫌悪感を示しているのだろう。確かにあのギョロリと動く目やニョロニョロと蠢く足にはどこか気持ち悪いものがある。
ならば、彼女を前衛に出すのは酷というもの。
「それじゃ後ろ、任せていいな」
準備運動がてら片腕をぐるぐると回し進み出たエスパルダの背中を、驚いたように見つめる白雪。
「気にしなさんな、ちょうどウチの王子は守りたがりでね」
にっと歯を見せた彼の意図は、どうやら白雪にも伝わったらしい。有難うと小さく呟いた言葉はエスパルダの耳に届いただろうか。
「背中だけは守ってあげるから安心なさい」
王子の本体を酷使しないように釘を刺せば、エスパルダはひらひら手を振ってそれに答える。
2人を遮るように、びっしりと吸盤で埋め尽くされた足が水中から現れれば、小さな獲物を叩き潰そうと襲い掛かる。
すかさずエスパルダが前に出た。小型の盾に重ねた蒼銀の大きな盾を構え、大足の一撃を受け止める。
打撃の重さにたたらを踏みかけるも、両足で踏ん張ることでそれに耐えた。自分がここで抑えねば、代わりに攻撃を食らうのは後ろの白雪だ。
「安心しろ、お前にゃゲソ一本触らせねえよ」
余裕ぶって吐いた台詞で己を鼓舞すれば、すぐに盾を構えなおす。彼女は勿論、預かった盾も奴にくれてやるつもりなどなかった。
「あら男前ね、お手並み拝見といこうかしら?」
軽口を叩きはしたが、白雪もただ守られるだけのお姫様になる気はない。美しき狙撃手に宿るレッドスピネルの輝きは、いつだって攻撃の隙を窺っている。
足が伸びればエスパルダが受ける。船の上の攻防が幾度か続けば、そのたび押し出されるようにじりじりと後退していく。
「チッ……このままだと埒が明かねぇな」
巧みに攻撃を弾いているものの、消耗はゼロではない。業を煮やしたように独り言つと、振り返って彼の精霊を強引に白雪に押し付けた。
海に行くと知ってついて来てしまったのだが、さすがに『この先』にまで付き合わせる訳にはいかない。
愛らしいペンギンは白雪の腕の中でキュウとひと鳴きする。白雪はそんなペンギンとエスパルダを交互に見て。
「は? 何でペンギーがいるの!?」
「そいつのこと頼むぜ」
それだけ伝えると、エスパルダは一目散に駆け出した。虚を衝かれ、一瞬遅れてクラーケンの足が迎撃に向かう。
「あぁ、もう! 任されてあげるわ、可愛いから!」
ペンギーを肩に乗せると、反対側の肩でライフルを構える。狙うはあの邪魔な足。照準を標的に重ね、引鉄を引くまでは一瞬のこと。
銃口から撃ち出された尖晶石の弾丸は、エスパルダを狙う足先に向かって真っ直ぐ飛んだ。
敵がひるんだ隙に、エスパルダは駆ける勢いのまま船の死角から飛び降りていった。
エスパルダの姿を見失ったクラーケンが次に狙うのは、船上に残された白雪だ。獲物の姿を捉えた大きな目玉を睨み返す彼女へ、鋭い足の一撃が伸びる。
「触らせねえって言っただろ」
守るようにペンギーを抱きしめた白雪は、すぐに不思議な光景を見た。ぱきぱきと音を立てながら、イカの足が根元から凍り付いていく光景を。
クラーケンが状況を把握するより早く、氷漬けの足はそのまま切り落とされる。
エスパルダの居場所を見つけたクラーケンは、忌々しげに別の足を彼目掛けて振り下ろした。これだけ不安定な場所だと、防御するにはさすがに分が悪い。
「脳天焼かれたくなかったら頭下げなさい」
白雪の放った業火の棘がエスパルダの頭上を掠めていく。危うく焼きイカになりかけたクラーケンは、逃げるように海中に足を引っ込めた。
「全く自分のことも気にしなさい、お馬鹿」
エスパルダが飛び降りた辺りに駆け寄ると、敵が一時退散した隙に彼を引き上げる。エスパルダが再び甲板を踏みしめた頃、でも助かったわ、と付け足して。
「こっちも助かったぜ、白雪」
いつもとちっとも変わらない笑い顔を見ると何だか悔しいけれど、それでも彼を守れたことは嬉しい。
ペンギーも白雪の腕の中で嬉しそうにぴょこぴょこと飛び跳ねている。
「アンタの背中守る代わりにあたしが危ない時は引き続き頼んだわよ」
どこか素直になりきれない物言いに、エスパルダもしたり顔でへいへいと手を振り答えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エウトティア・ナトゥア
チーム【依頼掲示板前広場】で参加
※連携・アドリブ歓迎 レニー殿(f00693)と連携するのじゃ。
気持ちの良い潮風じゃ、やはり海はよいのう。(イカを眺めつつ)そして海といえば海産物じゃな。
【秘伝の篠笛】でクジラの群れを呼び出して彼らを足場に海上を跳ね回り、風を纏わせた矢でレニー殿を援護射撃じゃ。(動物使い+騎乗+属性攻撃+援護射撃)
ついでじゃ、呼び出したクジラをイカに嗾けつつ、レニー殿がかじった足を重点的に削るとするか。(天穹貫く緋色の光条使用)
折角の機会じゃし足の一本くらいは貰っていくかの。皆に良い土産ができそうじゃわい。
琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】
エウトティアと。
他に来るかは未定なのでお任せする。
海底の冒険、とてもわくわくする響きだ。
さぞかし美しい場所なんだろう美しい人魚との出会いも楽しみだよ。
ああ、敵なんだっけね。
その前に、あのイカで腹ごしらえといこうか。
【ブラッドガイスト】で【捨て身の一撃】、
やっかいな足を重点的にかじっていこう。
【吸血】である程度は体力が持つ
海に落ちそうならブラッドガイストでかじったのと剣でざくざく登る。
刺したエウトティアの矢を足場に
優位な位置を保持するよ。
頃合いを見て上から一気に奇襲だ。【鎧無視攻撃】
足は旅団への土産にすれば料理してもらえるかな?
※アドリブ大好き。追加省略ご自由に。
●潮風と共に
風は潮の香りを運んで海を吹き抜ける。青い空と相まって、それはとても爽やかに感じられた。
「気持ちの良い潮風じゃ、やはり海はよいのう」
褐色の肌に張り付いた金髪を指で弄びながら、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)が隣に立つ彼――否、彼女に言う。
「そうだね。それに海底の冒険、とてもわくわくする響きだ」
王子様然とした佇まいの琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)が、海風に負けぬほどの爽やかな笑顔を浮かべる。
折角の冒険なのだ。美しい人魚や彼らの宮殿に思いを馳せながら、気ままな船旅も心行くまで堪能したい。
――そう、こんな状況でさえなければ。
「ああ、敵なんだっけね」
船ごと捕らわれてしまえば、ゆっくりと景色を楽しむ暇もない。これはとんだ邪魔が入ってしまった。
「海といえば海産物じゃな」
目配せをするように、ちらりと横目でれにを見るエウトティア。視線に気が付けば、れにも瞳をそちらへ向けて。
「人魚に会う前に、あのイカで腹ごしらえといこうか」
頷き合えば、それが行動開始の合図となる。
クラーケンが1本の足を振り上げると、まずはれにが動いた。まるで防御など選択肢にないかのように、容赦なくクラーケンに肉薄すればそのまま足に食らい付く。そう、比喩などではなく何かが捕食するように食らい付いたのだ。
これがれにのユーベルコード。体中を巡る血の封印を解き放つことで、今や彼女の左腕は異形の『殺戮捕食態』に変貌していた。
イカの足が咄嗟に振りほどくと、れには食い千切った足と共にはじかれる。そのまま優雅な身のこなしで受身をとれば、捕食した肉からの吸血で体力を回復した。
しかし、クラーケンの反撃もこれだけでは終わらない。捕食者から解放された足を海中に引っ込めたかと思えば、またすぐに別の足を海上へ突き上げた。しかもどういう訳か、目の前に現れた足は先ほどの足よりも強い伸縮性と弾力性を有しているようだった。
パワーアップした足が、れにを仕留めようと瞬時に伸ばされた。
目にも留まらぬ一撃は、体勢を立て直す前の身では避けきることは困難だろう。やむなく一撃もらうことをれにが覚悟した、その時だった。
「レニー殿、伏せよ!」
一陣の風がクラーケンの攻撃を遮った。エウトティアの放った風纏う矢が、動く標的を見事に射ったのだ。
巫女姫が使役する獣を召喚するための横笛、秘伝の篠笛。その笛でクジラの群れを呼び出したエウトティアは、自由自在に泳ぐ彼らを足場に海上を跳ね回りながら、攻撃の機会を窺っていた。
ここからであれば、船上に立つよりも全体像がよく見える。巨大な標的に矢を当てることなど、彼女にとっては狩りよりも容易い。
続けてエウトティアが数本の矢を放てば、その矢は全てイカ足を通り過ぎばらばらにマストに刺さっていった。
「ありがとう、エウトティア」
的を外したのではない。あれは彼女が自分のために作ってくれた道だと、れにには分かっていた。
マストに向けて駆けたれには、そのまま木製の柱を上っていく。しっかりと突き立てられたエウトティアの矢を足場にして。
クラーケンの足がれにを払い落とそうと動けば、すかさずエウトティアの矢がそれを阻む。
示し合わせずとも、2人のコンビネーションは見事なものだった。
気が付けば眼下に奴の足が見える。ここまで上れば十分だろう。身を翻せば異形の左腕を振りかぶり、マントを靡かせながら足目掛けて飛び降りた。
それと同時、エウトティアはクジラたちをイカに嗾けると、その隙に自分も真っ直ぐに標的を見据え、紅く輝く破壊の力を凝縮させる。
「血に刻まれた印よ」
「天地に満ちる精霊よ」
「「我が敵を討ち滅ぼせ!」」
れにの腕が食らい、エウトティアが精霊光を集束させた砲撃を放つ。同時に撃ち込まれた怒涛の攻撃に、クラーケンの足は根元から成すすべもなく吸盤ごと千切れ、木の板に打ち上げられた。
「これはこれは、皆に良い土産ができたのう」
「持って帰れば料理してもらえるかな?」
ぴちぴちと板の上で跳ねる大足を前に、そう冗談混じりに笑いあう。
本当に食べてしまうかどうかはともかく、れにとエウトティアはひとまずの勝利を得たのだ。
戦いはまだ続いている。きっと2人は他の猟兵のもとへ加勢に向かうのだろう。
宮殿を守る美しい人魚たちに、皆で一緒に会うために。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ウィルバー・グリーズマン
イカは嫌いじゃありませんけど……これは勘弁願いたいですねぇ
おっと……船上が揺れているので、空中で戦うとしましょう
そっちの方が戦い易いでしょうし
魔術『フラッシュボール』で周囲に四つほど光球を呼び出します
SPD、【フラッシュカッター】を発動
全ての光球を光速回転させて、光の刃を作り出します
三つを海の中に放って、船を傷付けないように滅茶苦茶な動きでクラーケンを切り刻みましょう
残ったカッターは僕の周囲で回転させて、死角より伸びた触手を吹き飛ばすバリアとして扱います
多少、魔力は使いますが……ま、この程度なら問題はないでしょう
●種も仕掛けも
足を数本断たれようと、クラーケンの勢いは尚衰えず。まだ足の残りは十分にあると言わんばかりに船を締め付け続けていた。
「イカは嫌いじゃありませんけど……これは勘弁願いたいですねぇ」
何事にも丁度いいサイズというものはあるもので。更にそれがこちらに襲い掛かってくるとなれば、迷惑なことこの上ない。
ウィルバー・グリーズマン(ウィザードもどき・f18719)が思わずぼやいた直後、悪魔が威嚇するように吼えたかと思えば、猟兵たちを乗せた船がぐらりと傾いた。
おっと……とバランスを崩しかけるウィルバーだが、傍にあった積荷へ咄嗟に手をかけ転倒は免れた。
「やれやれ、仕方ありませんね。ここは空中で戦うとしましょう」
体勢を立て直しスーツの埃を払えば、おもむろにアルゴ・スタリオンを開く。叡智の書とも呼ばれるその幻の魔本には、所有者のあらゆる知識がページとして表されている。
これはウィルバーの魔法か、はたまた本が意思を持っているのか。パラパラとページが捲れていくと、あるページでぴたりと止まる。
『エアウォーク』と書かれたそのページが光を放てば、ウィルバーの身体はふわりと宙に浮き上がっていた。
これなら揺れる足場を気にすることなく存分に戦うことができるだろう。
続いて開かれたのは『フラッシュボール』のページ。ウィルバーがページの上に手をかざすと、そこから4つの光球が現れる。
人差し指でくるくる円を描いてやれば、つられるように光速回転を始めた光球はそれぞれ光の刃に姿を変えた。
「光の刃は、あらゆる物を斬り裂きますよ」
例えそれがクラーケンでもね――不敵に笑えば、切れ味鋭い刃を海の中へ放った。
光の刃たちは予測不能の動きで飛来し、クラーケンの身体を切り刻んでいく。
これにはさすがの海の悪魔もたまらず、痛みの正体を確認しようというのか、苦悶の声をあげながら頭を海中に沈めていった。
クラーケンが沈んだ先。海面にじわりと浮かぶイカの体液と泡を、空中から見下ろすウィルバー。
しかし次の瞬間、異様な殺気と気配を背後から感じた。
瞬時に振り向けば、こちらを捕縛しようと襲い来る足がそこにあった。
どうやら注意を引くために頭部を囮に使ったらしい。まさか人間を出し抜く知能がイカにあるとは。
触手状の足はウィルバーの死角を的確に狙って伸ばされる。
しかし、頭脳戦においてはウィルバーの方が一枚上手だったようだ。
伸ばされた足は彼に届くことなく、光の刃によって断ち切られた。
実はウィルバーは全ての刃を海に放ったのではなかった。4つの刃のうち3つを海に放ち、残り1つは自分の周囲で回転させていたのだ。そう、死角からの攻撃を吹き飛ばすバリアとして扱うために。
「多少、魔力は使いますが……ま、この程度なら問題はないでしょう」
いい加減に見えて、やる時はやるのがウィルバーという男。
魔本の悪魔に海の悪魔が屠られるのも、恐らく時間の問題だろう。
大成功
🔵🔵🔵
シシル・ロッツェル
「人魚の宮殿で宝探し……。いく」
その前の話は全く聞いてなかったけど、今ここにいる人たちに付いていけば、きっと大丈夫。
人魚の宝物、どんなのかなー?
人魚たちだけが知ってる、キラキラしたのだといいなー。
おー、何あれ? おっきい! くらーけん? いか?
でも、このままじゃ船が壊れちゃう。
そしたら宝物持って帰るのが大変。
それは、困る。
怖いけど、お手伝いはしないとダメだよね。
とりあえず、【逃げ足】でおっきいイカから死角になる場所に隠れてようっと。
一先ず安全になったら、矢じりに【毒を付け】て、【目立たない】ように気配を消しながら、【スナイパー】を生かして【援護射撃】。目とかの柔らかそうなところが狙い目かなー。
●毒を以って悪魔を制する
「人魚の宮殿で宝探し……。いく」
グリモアベースの某所にて、常日頃ぼんやりしたシシル・ロッツェル(妖狐の狩人・f16367)の瞳が、少しだけ輝いたような気がした。
『人魚の宮殿』そして『宝探し』――必要なのはたった2つのワードだけ。それだけで、珍しいものや奇麗な物に目が無い彼女の好奇心を掻き立てるには十分だった。
実を言うとそれまでのグリモア猟兵の説明は全く聞いていなかったのだが、溢れる冒険心の前には瑣末な問題だろう。
今ここにいる人たちに付いていけば、きっと大丈夫。そう信じて、彼女は大海原に繰り出したのだった。
「人魚の宝物、どんなのかなー? 人魚たちだけが知ってる、キラキラしたのだといいなー」
そして今、シシルはまさに巨大な海の悪魔と対峙している。紫色に光る大きな目玉が、ギロリと彼女を見下ろしているように思えた。
しかし、そんな絶体絶命にも見える状況下においても尚、シシルは彼女のペースを崩すことなく。
「おー、何あれ? おっきい! くらーけん? いか?」
まるで水族館で珍しいイカと出会ったかのように、平和な感想が飛び出した。
しかしその間にもクラーケンの足に捕らえられた船体はみしみしと、苦しげに悲鳴をあげ続けている。
「このままじゃ船が壊れちゃう」
それは、困る。
せっかくお宝を手に入れても持ち帰る手段を失ってしまうのだ。シシルにとっては由々しき問題だろう。
「怖いけど、お手伝いはしないとダメだよね」
船上では既に剣戟も始まっている。滑った目玉を見上げ、シシルは得物の弓を握り締めた。
巨大なイカが反応するよりも早く、シシルは駆けた。船の積荷の一部だろうか。大きなタルの陰に身を隠せば、彼女の姿は相手の視界から完全に消えた。
胸打つ鼓動を抑えながら、シシルは息を潜めて待つ。勝負はたった一瞬。その一瞬をものにするために。
シシルを見失ったクラーケンはしばらくあちこち目玉を動かしていたが、そのうち諦めたように別の猟兵へと意識を移した。
そう、これこそまさにシシルの待っていた一瞬。
甲板を蹴ってタルの陰から飛び出せば、その大きな目玉めがけて引き絞った弓から矢を放つ。毒を塗った特製の矢は、忌々しい紫の的のど真ん中に突き刺さった。
グオォォォ……
悪魔の低い唸りが響く。
柔らかそうな部位を狙うというシシルの作戦は上手くいったようだ。
痛みにもがき続ける間、クラーケンには隙が生まれるだろう。猟兵たちが決定打を与えるのには十分なほどの、大きな隙が。
大成功
🔵🔵🔵
●契機
半数近くの足を失い、軟い粘膜を毒矢で貫かれたクラーケンは、そこでようやく猟兵たちを乗せた船を解放した。
傷口から沁みる毒に混乱しているのか、その動きはむやみやたらと暴れまわるように、すっかり理性を失っている。
奴を仕留めるならば今がチャンスだろう。
暴れイカの猛攻を掻い潜り、空と海の狭間に一時の平穏を取り戻すのだ。
アルマニア・シングリッド
【ヤド箱】
滅多にないだろう海上・水中戦
巨大イカには踊ってもらいましょうか
ところで
大物は大味なので
食事には向かないようですよ
変身召喚
本体に変身後
ステラさんとカガリさんも空中で地上と変わりない動きができる様子を空想し魔術で具現化・実行
船から飛んで敵の元に行きますよ
私は迷彩で目立たなくし
空中戦・空中浮遊・念動力で回避力を高めます
我ハ古キ書ノ一遍ナリは100枚(武器改造)ほど展開
情報収集・視力・地形の利用で敵の動きを索敵
随時お二人に情報共有
水中に潜っても逃しません
やられる前にその攻め手を潰します
高速詠唱・全力魔法・早業・スナイパー・力溜めで
敵に水圧カッターや電撃、氷漬けをお見舞い(属性攻撃
アドリブ歓迎
出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、手帳の(アルマニア)と
海での戦いはこれが2度目だが
今回は潜るのか…ちょっと心配、と、向こうから来てくれたか
出迎えご苦労、僥倖、というやつだな
足場は手帳のが、攻め手はステラが務めてくれる
何せ大きなイカだ、海を氷漬けにしても力任せに砕いてくるやもしれん
第一、すばしっこく海中を移動されるのはとても面倒だ
イカが船の近くにいる内に、【泉門変生】で周囲を囲ってしまおう
あ、もちろん船を巻き込まんようにはする
周囲を囲ったら、徐々に壁を狭めて、海中から出現する場所を限定させる
そこを叩いてもらうようにするな
黄金城壁は海中にも伸ばすぞ
氷の下を潜って脱出、などという間抜けはさせんとも
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】カガリ、アルマニア殿と
海ですか。我が国は海沿いの国なのでとても馴染みがありますが私は苦手なんですよね
泳げないわけではないのですがなんとなく……いえ、なんでも
今はとにかく目の前の敵を倒さないといけませんね
クラーケン、海の魔物の中でも厄介な魔物。油断なきよう行きましょう!
アルマニア殿の力で浮遊し海上を【ダッシュ】で駆け、敵の攻撃をかわしつつ近づく
【全力魔法】【高速詠唱】で【凍星の剣】を発動させ、氷【属性攻撃】で敵を海ごと凍らせ斬ろうか!
海を凍らせればこちらの足場にもなるし、敵は海を泳げなくなるはずだ
しかしこれを冷凍イカとして持って帰れないでしょうか?
食べてみないことには味は分かりませんし
●それは3つの矛か盾か
「僥倖、というやつだな」
元通り海上に落とされた船。一度大きく沈み込むような衝撃に耐えながら、出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)はこの戦いに活路を見出していた。
ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)も彼に同意するよう頷くが、海中で尚も暴れ回る巨体を一瞥すれば、まだ敵に戦意が残っていることを痛感する。
「手負いとはいえ相手はクラーケン、海の魔物の中でも厄介な魔物。油断なきよう行きましょう!」
「なに、カガリには頼もしい仲間が2人もついている。臆することはない。そうだろう、手帳の」
カガリが『手帳の』と呼んだ相手。古びたルーズリーフの手帳から生まれたヤドリガミであるアルマニア・シングリッド(世界≪全て≫の私≪アルマニア≫を継承せし空想召喚師・f03794)は、着水の衝撃でずれた眼鏡をくいと直す。
「ええ、巨大イカにはもっと踊ってもらいましょうか」
黄金都市の城門に流星剣、そして手帳。本体である器物や出自は違えど、目の前の敵を討ち滅ぼさんという想いは皆同じ。
頼もしき3人のヤドリガミたちは、ここにクラーケンの追撃を開始した。
まず地上で活動する身として問題となるのは、やはり相手が海中を移動しているということだろう。無策で海に飛び込んではクラーケンの独壇場、あっという間に餌食にもなりかねない。
しかし、彼らには策があった。海を泳ぐ悪魔に対抗し得る策が。
「ここは私にお任せを」
落ち着き払った言葉と共に、アルマニアが詠唱を開始する。
瞬きする間もなく、小柄な女性は本体である手帳『我ハ古キ識者ノ記憶ナリ』に姿を変えた。B5サイズの古びた魔法のルーズリーフ手帳には、アルマニアの膨大な記録が記されている。
そしてこの姿になった時、アルマニアは自身の空想したものを具現化する魔術を行使できるようになる。
彼女が空想したのは『空中でも地上と変わりない動きができるカガリとステラ』の様子。虹色の紙が眩い光を放てば、空想がそのまま具現化するように2人の身体がふわりと浮かぶ。
「これはいい」
カガリが試しに足踏みをし、武器を振るってみると、確かに何の障害もなく地上と変わらぬ動きをとることができた。
「アルマニア殿、感謝します。お陰で敵に接近戦を挑むことができる」
移動手段の心配がなくなればこちらのもの。3人はそれぞれの役割を全うすべく行動を始める。
攻め手を担うのはステラ。騎士は凛々しく魔剣を構え、勇ましく宙を蹴る。
クラーケンに向かい空中を行けば、その姿はまるで水面を駆け抜けるようにも見えた。
彼女が苦手とする海の上であっても、これなら思う存分戦うことができる。
頼もしく進む騎士の背を見送りながら、カガリとアルマニアはクラーケンの挙動を冷静に観察する。
己の本体の一部を100枚ほど展開して得た索敵能力により、仲間にクラーケンの動きを伝えるのがアルマニアの役目だ。
「どうやら、敵はこの船から距離をとろうとしているようですね」
アルマニアから伝えられた情報を頼りに、カガリも敵の動きを目視で確認した。確かに、巨大な影は船とは反対方向に泳ぎ始めているようだ。
「すばしっこく海中を移動されるのはとても面倒だ」
海という限りなく広いフィールドを最大限活用されては厄介。敵の行動範囲はなるべく狭い方がいい。
「なら、囲ってしまおう」
『閉じ、隔て、守る』もの――それがカガリの本質だ。ならばこの広い海も『隔て』てしまえばいい。彼の紫の瞳が柘榴に変わる。
一旦船を離れようと泳ぐクラーケンの行く手を遮るものがあった。本来ではそこにあるはずのないもの。変形したカガリの黄金城壁が、既に船の周囲をぐるりと取り囲むように築かれていた。
カガリは黄金の輝きを変換した霊力を代償に、壁の内側へ対象を閉じ込め封印する力を強化している。並の攻撃ではこの壁が破られることはないだろう。
壁にしたたかに頭を打ち付けると、そのままクラーケンは向きを変え泳ぎ続ける。しかし、いくら泳いでもそこは船の傍。出口を鉄門扉によって塞がれた壁は、実に海底近くまで伸ばされているため、クラーケンに逃げ場などあるはずもなかった。
更にカガリは徐々に壁を狭めているというのだから、海を泳ぐクラーケンの行動範囲は刻一刻と狭まり続けることになる。
そして何より、進行方向を変えたイカの行く先では彼女が待ち構えているのだ。
「これぞ好機! クラーケン、覚悟!」
正義を映した青の剣を手に、ステラがクラーケンの懐へ飛び込んだ。すれ違いざまに一太刀浴びせれば、切り捨てられた足が海の底に沈んでいく。
逆上したクラーケンは残った足をステラに向け我武者羅に振るうも、理性を欠いた攻撃であればかわすことは容易。
形勢不利と見たのか、クラーケンは海の中へと深く潜って姿を隠した。
しかし、敵が遠くへ逃げることはないだろう。カガリがその堅固な壁でしっかりと海を閉じてくれていると、ステラは信じていた。
「とはいえ、やはり海中を移動されると厄介ですね」
水の中だから自由に移動できるのだ。なら、水を他のものに変えてやれば――
ステラの思考が結ばれた時、ちょうどアルマニアが彼女の元へ飛来した。
「気をつけて。下から来ます」
アルマニアの忠告とほぼ同時、ステラの足元に揺らめくどす黒い影が現れる。恐らく、次の一撃が勝負だ。
海中から急上昇したクラーケンが海面に飛び出す刹那、空中で飛び退いたステラは剣に魔力を集めていく。
「凍てつき輝け、我が星よ」
海ごと凍らせ、斬る! ――ステラの剣身が凍てつく冷気を放つのに合わせ、アルマニアが氷の属性攻撃を見舞う。
重なり合った氷の力は、周囲の海ごとクラーケンを氷漬けにしてしまった。
白い息を吐きながら、ステラが優雅に氷の足場に降り立つ。ありがとうと、船の周囲にそびえる壁を見上げ、忘れずに礼を告げた。直後にカガリから返った返事を彼女が聞いたかどうかは定かではない。
身体の上半分を氷に包まれたイカは、凍てついた拘束から逃れようと必死に足をばたつかせているようだ。
そんな巨大イカを前にして、つい思ってしまうこと。
「これを冷凍イカとして持って帰れないでしょうか?」
純粋さを帯びた呟きをアルマニアも聞き逃さず、
「大物は大味なので食事には向かないようですよ」
至って冷静に見解を述べた。
「食べてみないことには味は分かりませんよ、きっと」
だが、持ち帰るにしても止めを刺してからの方がいいかもしれないと彼女たちは思う。
手帳が援護し、城門が閉じ込め、流星剣が凍てつかせる。
3人のヤドリガミたちの活躍により、猟兵は見事クラーケンの動きを鈍らせるまでに至った。
大成功
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イーファ・リャナンシー
いかにも何か守ってるって感じね
とにかく、こんなとこで海に放り出されても困るし、手堅く行かせてもらうわ
それにしても海中のクラウド・オベリスクって言うのは初めて聞いたわ
片っ端から壊さなきゃいけないって言うのを考えると、こういう所の見落としが響いてくるのかも
こうして見つけた時にはきっちり壊しておかないとね
【サイキックブラスト】で敵の動きを止めつつ【全力魔法420】で攻撃するわ
ただ、仲間が水中にいるときは注意が必要そうね…
普通の【サイキックブラスト】で効果が薄い時には、【全力魔法420】を使った発動も検討するわ
敵からの攻撃は小さな体を活かして目立たないようにしたり、死角に入ったりしてできるだけ避けるわ
●フェアリーテイル
足をもがれ、毒を撃ち込まれ、氷漬けにされても尚、クラーケンが戦意を失うことはなかった。その姿は決して単なる野生のそれではない。
「いかにも何か守ってるって感じね」
それは人魚の宮殿か、隠されたお宝か、はたまた別のものか。ともかくこの巨大なイカがこの場に近付く輩を排除せよと命じられているのは間違いないだろう。
そしてこの海のどこかに件のクラウドオベリスクが存在していることもまた確か。
「こうして見つけた時にはきっちり壊しておかないとね」
それが例え海の底にあろうとも。
イーファ・リャナンシー(忘都の妖精・f18649)は小さな体のフェアリーだったが、猟兵としての使命感は皆に負けないほどに大きかった。
「とにかく、こんなとこで海に放り出されても困るし、手堅く行かせてもらうわ」
イカ足から解放された船を、またいつクラーケンが破壊しようと試みるか分からない。この先の海中探検に万全の状態で臨むためには、敵を倒すのは勿論のこと船も無事に守らなければならないだろう。
イーファが透明な翅でふわりと舞えば、後には足跡のように燐光が続く。目指すはクラーケンがイーファの射程距離に入る場所。
ちょうどその頃、クラーケンは己の動きを阻害する氷を内側から砕き始めていた。足が力任せに氷を打てば、徐々に身体を覆う氷にヒビが入り、そしてついに突き破る。
数分ぶりに太陽の下に現れたクラーケンは、氷を破るためにいくらか体力を消耗したようだ。
辿りついたイーファが周囲を見たところ、海中に猟兵の姿はない。
「チャンスね」
小さな両掌から放たれた強力な高圧電流が、一瞬巨大イカの動きを止める。海水に全身浸かったクラーケンにとって、電流による攻撃は手痛いものらしい。
お返しとばかりに毒を内包した足を振り回すも、宙を自由自在に飛び回るフェアリーを目で捉え続けることは難しく、そのほとんどが見当違いの場所を打つこととなった。
イーファは攻撃を避けながらも繰り返しサイキックブラストを撃ち込む。すると撃ち込むたびにクラーケンの動きも鈍っていくように見えた。
「そろそろいくわよ」
イーファの内に眠る膨大な魔力、その全てをこの手に集めて。
「黒コゲになっちゃいなさい!」
凝縮された魔力の球が直撃する。耐え難い衝撃にぐらりと巨体をよろめかせながら、クラーケンは黒煙をあげて海に沈んでいった。
敵の負傷はもはや限界に近いだろう。
後は奴の息の根を止め、波の狭間へ返すのみ。
成功
🔵🔵🔴
ザハール・ルゥナー
ルカ(f14895)と
……海だな。
こんな大海原を見たのは初めてだ。
もの珍しそうに色々眺めつつ。
イカだな。
こんなに巨大なイカを見るのは初めてだ。
さっきと同じ事をいっている? うむ、珍しいからな。
さて仕事に移ろうか。
錬成カミヤドリで遠距離攻撃を。
自分の死角をなくすように巡らせ、鏡のように触手を確認。
同時に角度を変え、雷も利用し、光らせて誘導を試みる。
切り落としは容赦なく。
ルカに背を任せ、触手ともども潜り抜けつつ、道を作ろう。
指示には従うさ。焦げるのは御免だ。
雷の結界に笑みを浮かべ――全く荒ぶる航海になりそうだな。
思えばこの先、水中だったな……錆止めの霊符、宜しく頼む。
髪?
……そうだな、頼む。
ルカ・アンビエント
ザハール(f14896)と
確かに、俺も大海原を船で移動なんて初めてですね。
ーー…まぁイカですけど。
それさっきと同じ事言ってますよね? ザハール。
全く。えぇ、仕事に移しましょう
まぁあちらが海の生き物であれば
効きますよね? 雷
霊符に雷の属性を乗せ、全力の魔法で攻撃を
他の猟兵で海に入るものがいれば調整を
もしもザハールが触手に捕まるようなことがあれば、こちらも攻撃させてもらいましょう
ーーザハール、動かないよう
紫苑の楔、雷の鎖による結界を。動きが止まればその手、落とさせてもらいます
航海に雷は付き物ですよ
えぇ、錆止めの霊符であれば用意は此処に
…それより、ザハール。こっちに。髪、結んだ方が良いでしょう?
●雷鳴 轟く刻
「……海だな」
単純明快な感想を口にして、ザハール・ルゥナー(赫月・f14896)が大海原をもの珍しげに眺めていたのも、もう四半刻近く前のこと。
その時も、ルカ・アンビエント(マグノリア・f14895)は今と同じように彼の隣にいた。「こんな大海原を見たのは初めてだ」と、言葉少なに続けたザハールの瞳に、僅かばかり好奇の色が浮かんだのを、ルカは見たのかもしれない。
――そして今。その時と違っているのは、海神の怒りを買ったように波打つ海と、荒々しく海を揺らす悪魔の影。
「イカだな。……こんなに巨大なイカを見るのは初めてだ」
大海原を見たのと変わらぬ口ぶりに、思わずルカも彼の端麗な横顔へ目線をやって。
「……まぁイカですけど。それさっきと同じ事言ってますよね? ザハール」
しかし当の本人に自覚はないのか、返ったのは不思議そうな眼差し。それから。
「うむ、珍しいからな」
何でもないことのような頷きだった。
そう迷いなく言われては返す言葉もなく、「全く」とだけ零して、ルカは遠方のクラーケンに視線を戻すのだった。なんだかすっかり彼のペースだ。
しかしすぐに隣の彼の纏う空気が研ぎ澄まされたのを、目で見ずともルカは感じ取る。
「さて仕事に移ろうか」
「えぇ、仕事に移しましょう」
つばを持ち制帽を被り直したザハールに、ルカも迷いなく答える。
同じく戦場に縁のある者同士だ。背中を預けあうには申し分ない相手だろう。
クラーケンは残された力を振り絞り、船に向かって突進を開始する。
焦げ付いた身体には碌に感覚も残っていない筈だが、それでもクラーケンの勢いは止まらない。
このまま尽きる命ならば、最後に船を沈めて道連れにでもしようというのだろうか。もしそうであるならば、恐らくこれが持たざる者の強さに違いない。
猟兵たちが自らの拠点を守り通すことができるかどうか。それは今この時、奴を迎撃できるか否かにかかっている。
幸い、先の戦いで海上には流氷に似た足場がいくつか出来ている。奴が船に到達するより早く討つべく、2人はその足場の1つに降り立った。
「さて、どう出るか」
その言葉はとるべき作戦に悩んでいるというよりも、寧ろ戦友の頭に浮かんでいる策を引き出そうとしているようだった。まるで相手が自分と同じ策を考えていると確信しているかのように。
「まぁあちらが海の生き物であれば効きますよね? 雷」
ザハールがそれに答えるより早く、ルカは退魔士の霊符に雷の力を宿し始めた。
それに呼応するように、ザハールもまた己の本体である軍用ナイフを複製し、場に展開していく。ナイフは鏡のように像を映し出し、クラーケンの居場所や触手の挙動を伝えるだろう。
ルカが手始めに雷の魔法を飛ばしてやれば、クラーケンの頭部にヒットし一瞬だけ怯ませる。その隙にザハールがナイフの角度を調節すると、ルカが放った2発目の雷がそれに反射し、眩い光を生んだ。
すると船に向かっていたクラーケンは急に進路を変え、2人のいる方へ突き進んでくる。彼らは光に集まるというイカの習性を利用したのだ。巨大なクラーケンといえども、どうやら本能的なものには抗えなかったらしい。
まんまと誘導されたクラーケンを迎え撃つのはルカの全力の雷。それが耳の一部を吹き飛ばせば、毒を含んだ触手で反撃を試みる。規則性なく暴れ回る触手をナイフに映して確認しながら、動きに合わせて2人とも巧みに避けた。
しかしその内、力強く振り下ろされた1本が、偶然にもルカのすぐ側の足場を粉砕する。それによってバランスを崩したルカを、続けざまに別の足が襲った。
しかし、その攻撃はルカには届かない。咄嗟に彼の前に出たザハールが、代わりにイカの足に絡め取られていた。
「ザハール!」
反射的に飛び出そうとしたルカを、ザハールが手で制する。心配ないと、そう伝えるように。
しかしながら、状況は決していいものではないだろう。脱け出そうともがいてみるも、吸盤がそう簡単には解放してくれない。更にクラーケンは裏側にある口を向けると、歯を開いて捕食の体勢に入った。
「――ザハール、動かないよう」
心なしか普段よりも低く聞こえた声に、ザハールは少しも冷静さを欠いた様子なく頷く。
「指示には従うさ。焦げるのは御免だ」
紫苑の楔――雷の鎖によって編まれた結界。この結界に囚われた者は触手の1本も動かすことはできない。
結界に囚われたクラーケンの足を、ルカは刃状に仕立てた雷で切り捨てた。足が海に落ちるより早く脱出したザハールは、受身を取ると涼しい顔で再び氷に立つ。
「全く荒ぶる航海になりそうだな」
雷の結界を見れば、その口元に笑みを浮かべて。
「航海に雷は付き物ですよ」
鳶色のオラトリオも猫目がちの瞳を細める。
再び霊符を構えれば、最後は全身全霊の雷が網にかかったクラーケンを討ち滅ぼした。
あるべき姿を取り戻した海に、きまぐれな波の音が響く。
一通り船の損傷具合を確認すれば、猟兵たちは船上で思い思いに過ごしていた。
あちこち板が剥がれはしたものの、どうやら幸いにも航行には影響ないようだ。
甲板の一角では、ザハールとルカの2人も準備を進めているようだ。
「思えばこの先、水中だったな……錆止めの霊符、宜しく頼む」
「えぇ、錆止めの霊符であれば用意は此処に」
それより――と一旦言葉を切れば、ルカの目はザハールの長い髪に向いて。
「ザハール、こっちに。髪、結んだ方が良いでしょう?」
「髪?」
やはり不思議そうに聞き返したものの、己の銀の髪を1房摘んで見れば納得したようで。
「……そうだな、頼む。」
船上には帽子を取り、ルカに髪結いを委ねるザハールの姿があっただろう。
海中にどんな光景が広がり、何が待ち構えているのか。猟兵たちはまだ知らない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『魅惑のマーメイド』
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POW : 人魚の槍
【トライデント 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 水を得た魚
【水の中に入る。または大量の水を召還し 】【自由自在に泳ぎまわり奇襲をかける。】【水の中で活性化されること】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 魅了する歌声
【同士討ちを誘発させる歌声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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●青色に棲まう者たち
この海域を守っていた番人はもういない。今なら気兼ねなく海中を探索することができるだろう。
だが忘れてはならない。海中を探索するということは、そのための対策を各自で用意しなくてはならないということを。
幸いにも海中には日の光が淡く届いており、光源の心配はない。海の中で長時間活動するための手段さえ忘れなければ、人魚の宮殿に辿り着くことは難しくはないだろう。
例え無事に人魚に会えたとしても、彼らが猟兵たちに対し友好的であるという保証はないのだが。
イーファ・リャナンシー
海中のクラウド・オベリスク…確かに綺麗だっていうのは否定しないわ
ただ…これが私達の行く手を妨げるって言うのなら、全力で壊すしかないの
水の抵抗を減らすために水着に着替えるわ
あとは、呼吸が出来ないことを見越して、呼吸を補助する装備も必要ね
この世界の文明相当のもので良いのがあればそれを使うけれど、無さそうなら、事前に調べて酸素ボンベを外世界から持ち込んで船に乗せてあったことにするわ
考えてみれば水中戦って初めてね
動きにくいったら…羽を動かしたら空を飛ぶみたいに動けるかしら?
小さな体を活かして敵の死角に入りつつ、【フェアリー・リング】で歌を打ち消すつもりよ
敵が射程に入ったら【全力魔法432】で攻撃するわ
●小さな海の妖精
海中は木漏れ日のように優しい陽光に見守られている。透き通ったブルーの中をイーファは行く。
水の中で活動するにあたり、イーファはまず抵抗を減らすため水着に着替えた。水着は多量の水を吸うこともなく、更に身体のラインに沿った素材であるため、彼女の狙い通り動きをほとんど阻害されずに済むだろう。
更にイーファは水中で酸素を確保する手段も考えていた。この世界へ転送される際に持ち込み、船の荷として積んでおいたダイビング用のボンベを背負うことにしたのだ。
イーファにピッタリ合うボンベはやはりフェアリーらしい可愛らしいサイズで、他の種族であれば手の平にも乗せられるかもしれない。
周囲では色とりどりの海草やイソギンチャクが揺らめき、まるで海中で咲く花畑のようにも見えた。魚たちもイーファを仲間だと思っているのか、すぐ横を悠然と通り過ぎていく。
まるでオブリビオンの影などないかのように、海の中は平和に見えた。
「(こんなに美しい海の中にあるなら、クラウドオベリスクもきっと綺麗なんでしょうね)」
それは否定しない。けれども。
「(それが私達の行く手を妨げるって言うのなら、全力で壊すしかないの)」
猟兵としての決意を胸に、透き通った翅をぱたぱた動かして彼女は進み続けた。
やがて、イーファは話に聞いた宮殿を発見する。まるで巨大な白い巻貝にも見える宮殿の周囲には、美しいサンゴ礁やフジツボが壁のように群生していた。
しかし美しい外観を楽しんでいる余裕もないようだ。辺りに法螺貝の音色が響いたかと思えば、人魚たちがどこからともなくイーファの元へ集まってくる。その手に武器を携えて。
「侵入者だナ、ココから先へは行かせナイ」
体格のいい男の人魚が「イケ」と指差せば、人魚たちが一斉に戦闘態勢に入る。
そのまま手にした槍を突き出してくるかと思いきや、あろうことか人魚たちは歌い始めた。
惑わすような美しい歌声が響くと同時、他の人魚は何やらくすくすと笑いあっている。まるで哀れな獲物が絡め取られる様を楽しむように。
自らに迫る危険をイーファは感じ取った。歌を聞いてはいけないと直感すれば、すかさずフェアリー・リングを発動する。
間一髪、歌を遮るように放たれた光のゲートが、魔性の歌声を亜空間へ送り込んでいった。
忌々しげに歯を食いしばった人魚は歌を中断すると、武器を構える。しかしそれが振るわれるより早く、イーファが小さな体を活かして敵の死角に入った。
そして――
「(お返しよ!)」
全力で撃ち込んだ魔法を避け切れなかった数体が呑み込まれ、そのまま水泡となり消えていった。
驚いた人魚は、慌てて増援を呼ぶよう伝令に命じる。
しかしいくら数が集まったところで、彼女の絶大な魔力の前には恐らく無力であろう。
大成功
🔵🔵🔵
出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、手帳の(アルマニア)と
(水中、人魚。ステラは大丈夫だろうかと心配はするが口にはせず(彼女が思い出せない内容に心当たりあり))
手帳のの援護で海中へ
あの人魚がいる、とすると…オベリスクの番人という人魚も、察しがつくが
その前に、あれを潰さねば
【籠絡の鉄柵】を大型化して、手帳のと共に周囲を囲わせる
我らの要が手帳のと知れれば、必ず狙ってこよう
【鉄門扉の盾】を前に構え、【駕砲城壁】を
カガリが脅威と認めるならば、この扉は音も通さんのだ
この【不落の傷跡】が刻まれている限り!
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】カガリ、アルマニア殿と
泳げないわけではないので水中もいけますが何かを思い出しそうで
しかも人魚……前に何か良くないことがあったような?
いや、大丈夫。カガリもいる。アルマニア殿もいる。一人ではありません
(苦しそうに頭を抑えるもすぐに収まる)
アルマニア殿の支援を受けて水中へ
そこの人魚のお嬢さん。私と水中ダンスでもしませんか?
【存在感】と【誘惑】にて敵の注意を引き
水【属性攻撃】で周囲の水を操作して自分や仲間の動きをよりサポートする
人魚の周りには渦を作り出し動きを邪魔をする
本体たる【流星剣】を構え【流星一閃】にて攻撃しましょうか
アルマニア・シングリッド
【ヤド箱】
変身召喚
潜水前に変身し
『それぞれの本体を含めた装備や全身は完全防水し、水中の呼吸を確保された状態で自分・ステラさん・カガリさんが水中でも陸と同じ動きをしている様子』を空想し魔術で実行
水中も空中とは違えど
足が付く場所がないのは一緒です
歌声は千枚ほど展開した我ハ古キ書ノ一遍ナリを使い
自分を仲間の周りで相殺(衝撃波+全力魔法+高速詠唱+力溜め+オーラ&拠点防御
水も火も主たちのおかげで(本体は)平気ですが
被弾は流石に勘弁……おや
カガリさん、すみません
ありがとうございます
虹色の紙は私の一部
それは私の眼でもあります(視力
歌声を相殺した術を応用して
音の属性攻撃で範囲攻撃
ステラさんを援護
アドリブ歓迎
●三位一体の光
海は静かに気まぐれに、猟兵たちを乗せた船を揺らしている。
この下に人魚たちがいるのだと、底知れぬ青を船上から覗きこんだステラは、途端に奇妙な感覚を覚えた。水が苦手という訳でも泳げない訳でもない。それなのに、頭の中でざわつくこれは一体なんだろう。前に何か良くないことがあったような。
人魚―― 何か、思い出しそうな気がする。
苦しげに頭を押さえるステラをカガリは見守っていた。
「(水中、人魚。ステラは大丈夫だろうか)」
彼女が思い出せそうで思い出せないこと、その内容にカガリは心当たりがあった。
しかし何か事情があるのだろう。ステラが喪失した『何か』について彼が口にすることはなく、ただ婚約者を案じるように眼差しを向けるのみ。
そしてステラの異変に心配の色を浮かべるのはアルマニアも同じ。
そんな2人の視線にステラが気が付けば、大丈夫と気丈に笑んで見せて。
「カガリもいる。アルマニア殿もいる。一人ではありません」
自分にはこんなにも頼もしい仲間がついている。それを思えば、頭の不快感も不思議と消えてなくなってしまった。
ステラが元の調子を取り戻したのを確認すれば、カガリがひとつ大きく頷いて。
「では頼めるか、手帳の」
「ええ、お任せを」
元よりそのつもりだったかのように、アルマニアはすぐさま本体である魔法のルーズリーフ手帳に変身する。
そして魔術の行使のために彼女が空想したのは、『それぞれの本体を含めた装備や全身は完全防水し、水中の呼吸を確保された状態でアルマニア、ステラ、カガリが水中でも陸と同じ動きをしている様子』だ。
自分の空想通りに具現化するのがアルマニアのこのユーベルコード。虹色のページが舞って3人を包み込めば、魔術はたちまち完了する。
これで既に3人は水中でも地上と同じように動くことができ、呼吸ができ、更にそれぞれの本体も海水によって変質する心配はなくなった。
「水中も空中とは違えど、足が付く場所がないのは一緒です」
なのでオマケしておきましたと、そう言いながら元通りの人間体に戻ったアルマニア。
外見的には変化がないように見えるが、先程とは確実に何かが違っているのをカガリもステラも感じているだろう。
「アルマニア殿のサポートがあれば百人力ですね」
ステラもすっかり調子が戻ったようだ。準備が終わり3人で頷き合えば、順番に海へと飛び込んでいく。
まずはカガリが飛び込み、次にアルマニアが続く。そして殿はステラが務めた。
勢いよく海水に沈んだ3人の視界を、ぶくぶくと昇ってゆく泡が覆う。やがて視界が晴れれば、そこには美しい海の世界が広がっていた。
白い砂に彫刻にも似たサンゴ礁、極彩色の魚たち。どれも船の上からは見られなかったものだ。思わず目を奪われる3人の前を、カニの親子が横切っていった。
アルマニアの魔術のお陰で、どうやら水中でも会話による意思疎通が可能らしい。
土地勘のない海中ではぐれてしまわないように気を付けながらも、3人はある程度手分けして怪しい場所を探すことにする。念のため、身に危険が迫った時の合図も相談して決めておいた。
やがて、自然界にはおよそ似つかわしくない『それ』が発見される。巨大な巻貝に似たその宮殿は、明らかに自然に形成されたものではなく人工的な建築物だった。3人はサンゴの茂みに身を隠しながら更に偵察を続ける。
どうやら3人がいるのは宮殿の裏側らしい。恐らく警備役なのだろう、三叉の槍を携えた人魚たちがフジツボの城壁の前を巡回している。ここから目視で確認できるだけでも、5体は警備がいるようだ。
「(あの人魚がいる、とすると……オベリスクの番人という人魚も、察しがつくが)」
カガリは視線の先にいる人魚たちに見覚えがあった。そして恐らく宮殿内にいるであろう人魚のことも。
「……カガリ?」
窺うように覗き込んだステラを安心させるように、心配ないと伝えた。
「中へ入るにはあれを潰さねば」
あれとはもちろん警備の人魚たちのこと。しかしこちらは裏側、恐らく警備も手薄だろうと推測する。
「でしたら、ここはやはりアレが得策では」
アルマニアが2人へちらりと横目を向けた。アレとはつまり、最も単純で最も手っ取り早い作戦。
すなわち――
「そこの人魚のお嬢さん。私と水中ダンスでもしませんか?」
優雅な所作で現れたステラは華々しい存在感を放っており、人魚の目も思わず釘付けになるほどだ。ぽーっと夢見心地の女人魚たちに男の人魚が喝を入れれば、ようやく目の前にいるのが侵入者だと気が付いたらしい。5体の武器が一斉にステラへと向けられる。
「そこまでだ」
静止の声と共に、カガリとアルマニアも姿を現した。しかし人魚は仲間の登場に驚くどころかニヤリとほくそ笑んで。
「なるほど。ニンゲン、きさまラは3人か。ならバ、きさまラにふさわシイ末路を与えてやロウ」
言うと、3体の人魚が歌い始めた。3つに重なり合った歌声は妙なるハーモニーを生み出し、聴いているだけで惹き込まれてしまいそうだ。
しかし守りは既に完成していた。ステラが人魚たちの注意を引きつけている間にアルマニアは1000枚の『我ハ古キ書ノ一遍ナリ』を、カガリは『籠絡の鉄柵』を周囲に展開していたのだ。
2重の守りは歌声が3人の耳に届くより早くそれを遮り、相殺してしまった。
自分たちを完全に『狩る側』だと認識していた人魚は激昂する。
最も手近なステラへ槍を突き出すも、彼女は剣でそれをいなし、軽快な身のこなしでかわしていく。
何かがおかしいと人魚たちの誰もが思っただろう。人間たちは海の中でこうも身軽に動くことができる生き物だったろうか。
否、愚かにも今までやってきた人間たちはもっと鈍臭い奴らだった。海の中で我らが人間に遅れを取ったことなど一度もないと。
同時に彼らは魔力の匂いを感じてもいた。匂いがするのは後方のアルマニアからだ。厄介な魔術は先に潰しておかねばなるまい。
1体の人魚がステラの正面から槍を振りかぶれば、彼女は剣でそれを受け止めた。互いに押し返す力が拮抗すると鍔迫り合いの形になる。
その時だった。1体がステラの動きを封じている隙に、残りの4体が彼女の横をすり抜け泳いでいった。
2体はカガリの抑えに向かい、そして別の2体はアルマニアを仕留めにかかる。海中での呼吸や行動のサポートに加え、魅了する歌声の防御にも魔力を割いたアルマニアには、咄嗟に己の身を守るだけの余裕はない。
「被弾は流石に勘弁……」
自分が倒れては海中で満足に活動することは難しく、最悪の場合全滅することにもなりかねない。それだけは避けなければ。
「カガリ! アルマニア殿!」
すぐに助太刀に向かいたいが、目の前の人魚がそれを許してくれそうにない。ステラは渾身の力で槍ごと敵を押し出し一太刀見舞うと、そのまま振り返って片手を掲げた。
カガリとアルマニアに接近する人魚たちの周囲の水を操作し、渦を作り出すと、その動きを阻害する。
しかし接近が難しくなれば敵も柔軟に作戦を変更してくる。槍を片手で持ち替えると、アルマニアに向けてそれを投擲した。
しかし、すんでのところでカガリが阻む。構えた鉄門扉の盾が槍を光弾として反射すれば、渦で身動きのとれない2体を撃ち抜いた。
「カガリが脅威と認めるならば、この扉は音も通さんのだ。この不落の傷跡が刻まれている限り!」
2人の無事を確認し、ほっと胸を撫で下ろすステラ。しかしまだ終わりではない。残った2体を視界に捉え、海中を駆けた。
渦の包囲から脱け出そうと動いた人魚たちへ、アルマニアが先程展開したページで咄嗟に音属性の攻撃をしかける。耳を劈く不協和音に耳を塞ぎ、人魚は再度その動きを止めた。
ステラの本体たる流星剣。星空の刃が繰り出す一筋の流星の如き斬撃が、2体の人魚を水泡に帰した。
この付近を守る人魚たちは片付いたようだ。しかし、いつ他の人魚が異変を嗅ぎ付けるか分からない。今のうちに城壁を越えて侵入を試みるのが賢明だろう。
互いに手を取り、補い合う心を知るヤドリガミたちは、無事に3人揃って宮殿へ足を踏み入れたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィルバー・グリーズマン
海ですかぁ、実を言うと濡れるの嫌なんですよねぇ
なので魔術『ブラスト』で周囲に風を発生させて、身長の三倍程度の大きさの、球形の風の空間を作り出します。これで息もできますね
使用魔力は僅かですが、継続して使うのでなるべく消費は抑えます
……うわぁ、凄く攻撃的だ。まあ適当に相手しますかね
【ダブルテクニカル】で魔法攻撃をするとしましょう。魔力控えめでね
基本的に、風の魔弾で攻撃します
ただし、此方を攻めて来たらカウンターの魔本でぶっ叩きましょう
ついでに風属性も絡めて、大打撃です
同時に襲われてヤバくなったら、魔術『タイムクリエイト』で相手の動きを遅くしてから魔本カウンターです
後は臨機応変に行きましょう
●魔術師は海を行く
クラーケンを滅ぼし穏やかさを取り戻した海を、ウィルバーは見下ろしていた。
「海ですかぁ、実を言うと濡れるの嫌なんですよねぇ」
水の中に入ればもちろん濡れてしまう。しかしそれは嫌だ。さて、どうしたものか。
確かこのような時に最適なページがあったと、叡智の書アルゴ・スタリオンを開く。
探し当てたページは『ブラスト』、火、水、風、土の四大元素を扱う魔術のページだ。
四大元素のうち風を喚び出せば、周囲に身長の3倍程度の大きさの球形の風の空間を作り出した。これで海に入っても濡れることなく、呼吸ができずに溺れる心配もないだろう。
使用魔力は僅かではあるものの、継続して使用する必要があるため、なるべく消費は抑えることにした。
「さて、では行きましょうか」
準備さえ整えば躊躇する必要はない。閉じた魔本を小脇に抱えれば、ハットを押さえて海中世界へ飛び込んだ。
風のお陰か、飛び込みの衝撃はほとんど感じなかった。空気で満たされた球体に包まれながらの海中探索は、なかなか気ままで快適だ。
平和な海の景色を楽しむ余裕も見せながら、ウィルバーは進む。すると、やがて視線の先に大きな建築物が現れた。明らかに何者かの手が加わっているこの宮殿が、例の人魚の根城なのだろう。
宮殿周辺の様子が窺える位置まで近付こうかと考えた、その時。
「ニンゲン! ここにもイタゾ!」
トライデントを手にした人魚たちが、こちらに向かって泳いでくる。その剣幕は、とてもこちらを歓迎してくれているようには見えない。
「……うわぁ、凄く攻撃的だ。まあ適当に相手しますかね」
戦いの気配を察知し、ウィルバーは叡智の書を構えた。
人魚たちの敵意と槍先は既にこちらに向けられている。ならばここは先手必勝、やられる前にやれだ。
「まずは挨拶代わりに」
軽く風の魔弾を撃ち出せば、人魚たちの1体に見事命中した。それを確認し、今度は全力の魔弾を放つと、先程命中した人魚に引き寄せられるように命中し爆ぜる。
泡となった仲間には目もくれず、残り2体がウィルバーに向かってきた。
「おっと」
1体が突き出した槍は、風の球体を空しく貫いた。そして空振りの隙をつきウィルバーが魔本を振りかぶると、その頑丈な装丁で思い切り頭を叩く。風属性を乗せた一撃は見た目よりも余程重く、トドメには十分だった。
その間に背後に回りこんでいたらしい最後の1体が槍の一撃を放つも、直撃する前に異変が起きた。槍の動きが、いや人魚自身の動きがスローになっているのだ。
これがウィルバーの魔術『タイムクリエイト』の効果。あくびが出るほどのろまな相手であれば、煮るも焼くも容易いこと。
至近距離から放たれた風の魔弾を避けられるはずもなく、最後の1体も泡となって海に帰っていった。
本は槍より強し。そして魔術もまた強しだ。
無傷でこの場を乗り切ったウィルバーは、気を取り直して宮殿へ向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】エウトティアと
マニトゥって水中で活動できるの?
僕はアイテム【虹色の鱗】で海中対策。【水泳】もついているよ
準備体操をしていざ目的の人魚に会いに
人魚が来たっ
美しい彼女をこの手で手折らないといけないなんて…悲劇だ
だけど敵は敵、手加減しないよ
(本当は口説きたかったけれど、海の中ではかっこよく動けなかっただけだなんだ)
ここはUC【クィニティエンハンス】で攻撃力を重視して風を操る
水中で風を操るとスクリューみたいになるよ
エウトティアと連携で
海を竜巻みたいにこじ開けて、空中にその身を晒してやろう
※アドリブ大好き。追加省略ご自由に。
エウトティア・ナトゥア
チーム【依頼掲示板前広場】で参加。
水中の行動は、マニトゥの全力犬かきと精霊術の力技で対策じゃな!水と風の精霊の力を借りて、水中移動の補助と恒常的な酸素供給で呼吸の確保を行うとするかの。それはそうと、レニー殿にも人魚を口説かないだけの節度があったようで安心したのじゃ。
(属性攻撃)おぉ、海を割りおったわ。流石レニー殿じゃの。レニー殿の【クィニティエンハンス】に続いて、わしも【風の鉄槌】を人魚に叩きつけて竜巻でこじ開けられた海水をさらに跳ね除けるのじゃ。
(マニトゥをレニー殿の足場に提供し攻撃を促す)レニー殿、人魚は空中で死に体じゃ!止めを!
●人魚とワルツを
波間に揺れる船の上、何やら体を動かす人影があった。体を捻り、念入りに筋を伸ばして激しい運動に備える。彼女たちはいわゆる準備体操をしているらしい。
海中に入るための準備に励んでいるのは2人、いや正確には2人と1匹だ。エウトティアの傍らに座っているのは巨狼マニトゥ。エウトティアの故郷の部族で聖獣とされる巨大な白狼だ。
海を探索するにあたり、マニトゥには大事な役目がある。全力犬かきで海中を進むという役目が。
「マニトゥって水中で活動できるの?」
狼とは本来陸の生き物。れにが思わず疑問を口にするのも無理はないだろう。しかし当のマニトゥとエウトティアは全く問題ないといった様子で。
「無論。わしの精霊術で補助も行うからの」
のう、と白狼へ視線を向ければ、マニトゥも同意するようにフンと鼻を鳴らす。1人と1匹の説得力ある返事にれにも納得したようで、彼女もまた海中へ入る準備を進めていく。
れには所持品から虹色の鱗を取り出せば、それを服の上から擦った。するとたちまち体を静電気のようなものが覆い、それが適度に水を弾く膜となる。
水中での呼吸対策はエウトティアの領分だ。彼女は風の精霊の力を借りると、恒常的な酸素供給の準備を整えた。これで海の中でも地上とほとんど変わりなく呼吸ができるだろう。
「では参ろうか、レニー殿」
「いざ目的の人魚に会いに」
2人がしがみつけばマニトゥは4本の脚で立ち上がり、そして海に向け跳躍した。
2人と1匹がダイブすると、驚いた小魚たちがあちこちに散っていく。いきなり巨大な白狼が現れたのだから、驚くのも無理はない。
しかしその後は海も至って穏やかな姿を見せ、まるで彼らを歓迎してくれているようだった。
エウトティアが水の精霊の力を借りると、周囲に局所的な水流が発生し推進力が加わる。マニトゥが脚で交互に水をかけば、水の流れに乗ってすいすいと前に進み始めた。
巨狼の背に掴まって進みながら、れにはすぐ側の岩場にイソギンチャクを見つける。カラフルで可愛らしいそれに思わず手を伸ばせば、うねうねと動く触手がはにかむように引っ込んだ。
れにとエウトティアが海中の旅を楽しんでいると、マニトゥがグルル……と低く唸り始めた。何ごとかと辺りを見回せば、視界に入る建築物。
巨大な白い巻貝に似たその宮殿は、サンゴ礁とフジツボの城壁に守られるように築かれていた。あれこそが恐らく人魚の宮殿なのだろう。2人と1匹は無事に目的地へと辿りつくことができたのだ。
まるで芸術品のような美しさも持つその宮殿に目を奪われていると、突如何かが飛来して白い砂に突き刺さった。
威嚇と忠告のために投げられたのだろう。砂に刺さった三叉の槍を投げた人魚が数体、視線の先に現れた。
「野蛮なニンゲンめ、今すぐに立ちさレ!」
待ちに待った人魚にれにが瞳を輝かせるも、どうやら彼らとの邂逅を喜ぶ暇はないようだ。忠告に従わなければすぐにでもこちらを始末にかかるに違いない。
「美しい彼女をこの手で手折らないといけないなんて……悲劇だ」
凛とした美しさを持つ女の人魚に、れにが悲しげな仕草とともに視線を向ける。その様子にエウトティアはもしやと思ったのだが。
「だけど敵は敵、手加減しないよ」
彼女がすぐさま武器に手をかけたのを見て、少しだけ目を丸くするエウトティア。
退く気がないと分かれば、人魚たちは問答無用で襲い掛かってきた。
「レニー殿にも人魚を口説かないだけの節度があったようで安心したのじゃ」
くすりと笑って零された言葉に、れにも笑顔を返して。
「もちろん、僕だって時と場合は考えるよ」
なんだかエウトティアが自分を見直してくれたようで嬉しい。だから。
「(本当は口説きたかったけれど、海の中ではかっこよく動けなかっただけなんだ)」
そんな本音はそっと心の中にしまっておくことにした。
人魚たちはそれぞれ槍を手に攻撃を仕掛けてくる。海中は人魚たちのフィールド。やはりこの場での戦闘においても利は彼らの方にあった。
「やっぱり海の中では分が悪いね」
鋭い突きを何とかかわして、れにが言う。
「そうじゃな。だがそれも水があればこそよ」
同じく攻撃を避けたエウトティアの言葉が意味するところを、れには感じとった。一か八かの賭けにはなるが、試してみる価値はある。
クィニティ・エンハンス――属性を付与した魔力で自身を強化するユーベルコード。れにが攻撃力を強化し風を操ると、渦巻く風がスクリューのように螺旋の力を生んだ。
暴れる風は竜巻のように力強く海をこじ開け、人魚たちを水のない空間に晒してやった。
「おぉ、海を割りおったわ。流石レニー殿じゃの」
れにの豪快な攻撃にエウトティアも続く。風の鉄槌で下降気流の一撃を叩きつけてやれば、海底を破壊しながられにの作り出した『空中』を更に拡げ、場の全ての人魚たちを強制的に水の外へ追いやった。
「レニー殿、人魚は空中で死に体じゃ! 止めを!」
エウトティアの合図に従いマニトゥが伏せる。まるで自分を足場にしろと言うように。巨狼を足場にして跳べば、空中に投げ出された人魚たちがよく見える。
「さよなら、美しい人魚たち。叶うなら――」
やっぱり戦いたくはなかったけれど。せめて苦しまないように、全力を乗せた竜巻で人魚たちを呑み込んだ。
元通りに閉じた海を泡となって昇っていく彼らは、尚も美しかっただろう。
敵の本拠地は目前だ。行かなければ、宝を守る姫君のもとへ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鶴澤・白雪
エスパルダ(f16282)と
イカも消えたし竜宮城探しに行けそうね
スキューバダイビングのつもりで酸素ボンベ背負って頑張りましょ
魅惑より邪悪って感じの人魚が出てきたわね
オーラ防御とエスパルダが作ってくれた氷を足場を利用して何とか奇襲と人魚の槍から身を守るわ
歌が聞こえたら咄嗟に自分の右手を黒剣で砕く
惑わされて同士討ちなんて御免よ
攻撃された時は咄嗟にオーラ防御を使って
…クソ半魚人余計な事してくれたわね
エスパルダのせいじゃないんだから気にすんな
そんな顔する必要ないわ
あら、あたしが守られるお姫様に見えるかしら?
謝らせた事、絶対許せないから倍で返すわ
エスパルダ、足止めてくれる?
全力魔法のUCで串刺しにするわ
エスパルダ・メア
白雪(f09233)と
酸素ボンベでダイビングってのも面白そうだ
苦しかろうが死にゃしねえが
そういう問題じゃねえって言うんだろ
思ってた人魚と違やしねえか
慣れねえ水中だ
氷の属性攻撃で氷塊を作ってバリケードと足場代わりに奇襲対策
地形の利用だな
他の猟兵の邪魔にならねえよう気をつけてUCで流氷の渦を叩きつけ
もし魅了で白雪を攻撃しちまったら、白雪が自身を砕く音で我に返る
何して…!
言いかけて、毒づき
悔しさに顔を歪めて
すまない、オレのせいだ
くそ、お前がそういう奴だって知ってたのに
…次は、守る
白雪の欠片を海で失くさないよう氷に集めて
ああ、守られる姫さんじゃなくてもだ
足止め上等
一生、その氷から出てくんな、クソ半魚!
●この身 砕けても
脅威の去った海の上、ところどころ傷んだ甲板にエスパルダは2人分の大きなボンベを置いた。その拍子にみしりと船板が音を立てるも、穴が開くことは免れたらしい。
海中を移動する必要があると聞いて予め準備しておいたダイビング用のボンベだ。2人はそれぞれこのボンベを背負って泳ぐことにした。
「苦しかろうが死にゃしねえが、そういう問題じゃねえって言うんだろ」
当然よと彼女は言う。周囲の人間の無茶を彼女は許してはくれないのだ。それをエスパルダはよく心得ているし、特に反発する気もなかった。
重量のあるボンベを片手で軽々と背負ったところで、エスパルダは白雪の様子を確認する。細く白い彼女のことだ、重さで折れでもしないかつい心配になる。
案の定、彼女はボンベの扱いに少々苦戦しているようだ。両手で持ち上げるも、ぐらりと不安定に身体が傾いた。
「おいおい。ひっくり返るなよ、お姫さん。一人で背負えるか?」
「平気よ。子供じゃないんだから」
口を尖らせ強がってみせるも、やはり一人でボンベを背負うのは難儀するようで。エスパルダが後ろから手伝ってやれば、素直にそれを受け入れ礼を言った。
顔全体を覆うマスクを装着すると、誰だか分からなくなった顔が何だか面白くて。互いに顔を見合わせては、思わず吹き出し笑いあう。
ひとしきり笑えば、見知らぬ世界へ飛び込む緊張感もすっかりどこかへ行ってしまった。
「それじゃあ、竜宮城を探しに行くわよ」
勇ましく手すりに片足をかけ、白雪が言う。
「おう、途中ではぐれんなよ?」
そんな軽口には「そっちこそ」と隣から。にやりとマスク越しに口の端を持ち上げれば、2人はほぼ同時に海の中へ突入した。
海の中には光なんて届かないと思っていた。けれど目の前の景色はキラキラと陽の光に照らされていて、不思議と安心感を覚えてしまう。
海上からの光を受けた白雪の髪や瞳がプリズムのように煌めくのを見れば、彼女の身体が本当に宝石であるのをエスパルダは実感した。
ある程度水の中の環境に順応した2人は、すいすいと競走するようにバタ足で進んでいく。
そして彼らが目的の宮殿を見つけ出すのに、そう時間はかからなかった。
大きな巻貝に似た宮殿は、その白さ故に海の中でよく映えた。その周囲にはサンゴ礁とフジツボの壁が築かれており、中へ入るのはなかなか骨が折れそうだ。
その時、すぐ先で動く影を見つけると、咄嗟に物陰に身を隠す。上半身は人、そして下半身は魚のヒレ。間違いない、人魚がそこにいる。
「魅惑より邪悪って感じの人魚が出てきたわね」
白雪の呟き通り、目をギラつかせて外敵を探す人魚たちの姿は、おとぎ話で語られるようなイメージからはかけ離れているだろう。
「思ってた人魚と違やしねえか」
少々複雑な気分ではあるが、仮に愛らしい人魚が相手だったとすると非常にやりにくかったろうから、これでよかったのかもしれない。
「さて、そんじゃあとっとと片付けるかね」
「ええ、いつでもいいわ」
このまま隠れていても始まらない。何より喧嘩で解決するのが性に合っている。
とは言え、海の中ではやはりこちらが圧倒的に不利。最低限の手は打っておかなければ。
エスパルダが力強く拳を突き合わせると、拡散した氷の力が海底からいくつもの氷塊を生やす。人魚たちが2人の姿を認めた時には、既に辺りには無骨な氷のバリケードが出来上がっていた。
狙い澄まして投擲された槍を、白雪は氷の陰に隠れることで防ぐ。エスパルダも同じく氷の陰に滑り込めば、攻撃の止んだ隙に顔を出して流氷の渦を叩きつけてやった。
氷の間を縫うように移動し戦っていると、やがてぴたりと攻撃が止む。それに、近くに人魚たちの姿が見当たらない。何か奇妙だ。
警戒を強める2人の耳に歌声が届いた。それはとても甘くどす黒く、そして酷く誘惑的な歌。
すぐに脳を揺すられ溶かされていくような、危うい感覚が襲うだろう。聴いてはいけないと理解した頃には、既に己の体は制御を失い始めていた。
くるりと体が味方の方へ向き直る。まさかこのまま同士討ちでもさせるつもりか。目の前でエスパルダの腕が操り人形のように振り上げられたのを、白雪は見た。
惑わされて同士討ちなんて御免だと、彼女は歯を食いしばる。覚悟はとうに出来ていた。
――……
透明なブルーに煌く破片が散る。
白雪が黒剣で砕いたのだ。宝石のように脆い、自分の右手を。
「ッ……白雪、何して……!」
何かが砕ける音で我に返ったエスパルダは、痛々しい白雪の姿を見る。言いかけた言葉を呑み込み、項垂れ、馬鹿野郎とだけやっと絞り出して。
「すまない、オレのせいだ。くそ、お前がそういう奴だって知ってたのに」
悔しさに顔を歪め、詫びることしかできない己が恨めしい。やり場のない拳を強く強く握り締める。
見かねた白雪は、残った方の手でエスパルダの胸を小突いてやった。
「エスパルダのせいじゃないんだから気にすんな。そんな顔する必要ないわ」
白雪はいつも通りだ。自分よりも周囲の人間を優先する彼女を、他に誰が守ってやるというのか。
「……次は、守る」
彼女の欠片を海で失くさぬよう、大切に氷の中に集めて。
「あら、あたしが守られるお姫様に見えるかしら?」
「守られる姫さんじゃなくてもだ」
そうでなければ、とても自分が納得できそうにない。
「エスパルダ、足止めてくれる?」
おう、と短く返事がある。足止め上等。氷のバリケードを融かして除けば、その先に見えた人魚を睨め付ける。ムカムカと煮えくり返る怒りに任せ、最大威力の氷の檻に纏めて閉じ込めてやった。
「一生、その氷から出てくんな、クソ半魚!」
エスパルダが吼えると、白雪が爪を出す。周囲の岩を尖晶石の剣林に変えると、人魚たちはスピネルの棘で氷の檻ごと串刺しになった。
歪なオブジェの出来上がった海に、2人の獣だけが立っている。
その内に焔を宿して。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ザハール・ルゥナー
ルカ(f14895)と
マントを置き、髪はくくり、ひとまず邪魔にはならないだろう。
刃嵐で風を纏い、空気の層を纏い行動する。
これで呼吸も何とかなるだろう……寿命は減るが。
水中はあちらが得手、地上とは勝手が異なるゆえ慎重に応戦。
水の動きなどから危険予測をしつつ、相手が仕掛けてくるのに合わせナイフで反撃。
ルカの霊符に誘導できたらいいが。
やれやれ、天使が人魚の歌声で惑う、か。
適当に受け流し腕を掴み声を掛ける。
起きろ、君はそんな柔な精神はしていないだろう。
悪いがいつまでも歓待を受けているわけにはいかぬ。
水中の行動に慣れてくれば、雷を怖れず仕掛け、隙を逃さず斬り込む。
さて、どんな宮殿が待つか、楽しみだな。
ルカ・アンビエント
ザハール(f14896)と
錆止めの霊符はこれで良いとして、上着は置いて行きましょうか
鳥羽の契で風の結界を張って空気を確保しましょう
霊符には雷の属性を載せ、幻を残像に使い、中遠距離からザハールの援護を
さすがは人魚、素早いですね
下手に狙うよりは空間に霊符を仕掛けましょうか
人魚の歌声に体がザハールへと向く
一撃、叩き込む寸前に声がした
ーー柔な精神って、言ってくれますねザハール
ですが、えぇ助かりました
俺で遊ぶとかやってくれましたね
全力魔法で雷光鳥の群れを人魚に向ける
天使の本気見せてあげましょう?
俺で遊ぶとか百年早い
そちらが早いなら一帯ごと潰すだけのこと
えぇ。この先でどんな景色が見れるか楽しみです
●どんな呪いの言葉より
同乗の猟兵たちが海に飛び込んでいく音を聞きながら、ザハールはゆっくりと立ち上がる。ルカに結ってもらった銀の髪が、さらりと風に揺れて煌いた。
我ながらなかなか上出来だと、ルカもどこか満足げで。続けて霊符で錆止めを行えば、海水からの保護も手早く完了した。
「錆止めの霊符はこれで良いとして、上着は置いて行きましょうか」
彼の提案に、ザハールも頷いて同意を見せる。上着やマントを脱げば、2人とも先程よりだいぶ身軽になった。
「これでひとまず邪魔にはならないだろう」
畳んだ上着を隅に並べて置くルカを見守りながら、ザハールは呟きを落とす。身が軽くなれば、あとは呼吸のための空気が必要だ。
ザハールは刃嵐で風を纏い、ルカは鳥羽の契で風の結界を張ることで、それぞれ水中での空気の確保に成功する。同時に、両者共に寿命という代償を払うことになってしまったのだが。
ルカはひっそりと眉をひそめる。ザハールを守りたいと、そんな思いを胸に抱いた彼にとって、この代償は喜ばしいものではなかったかもしれない。せめて彼がこれ以上の無茶をしなければいいが。
一通りの準備を終えると、2人は海中世界に突入した。
淡い光に照らされた海は、思わずオブリビオンの存在を忘れてしまいそうになるほどに穏やかだ。こんな状況でなければ、きっと優雅な海中散歩を楽しめたに違いない。
ゆらゆらと気侭に揺れるイソギンチャクたちに見送られながら、船から離れて泳いでいく。いつでも戻って来られるように、所々で目印を残しておいた。
やがて、ザハールとルカはそれを目の当たりにするだろう。白い巻貝に似た、巨大な人魚の宮殿を。
遠目に観察してみれば、宮殿の周囲にはサンゴ礁とフジツボの壁、そして警備と思われる人魚が何体か。どの人魚もトライデントで武装しているようだ。
「水中はあちらが得手、地上とは勝手が異なるゆえ慎重に応戦せねば」
「同感です。……ザハール、あれを」
ルカの指差す方へ視線を移せば、正面よりも警備の手薄な場所がある。警備に割くだけの数が足りていないのか、人魚の多くは正門に配備されているようだ。
「落とすとすれば、あの一点か」
敵の数は少ない方が都合がいい。2人はなるべく警備の薄い位置へ回り込むことにする。
正面を避けたある地点には3体の人魚が配備され、外敵からの襲撃に備えていた。付近を往復するように泳ぎ回り、何度目かのターンをしたその時、いつの間にか目の前に迫っていた雷光鳥を避けることができず、1体が消えた。
何事かと残りの2体がより警戒を強めると、先程まではなかった長身の男の姿がそこにある。
ザハールが指をくいと動かせば、2体ともに彼へ向かって泳ぎだした。すれ違いざまに突き出された槍を避け、そのまま流れるようにナイフで反撃する。刃の厚いナイフは1体の腕を掠めるも、その素早い動き故に急所を捉えることはできなかった。
直後、背後の水が動いたのをザハールは感じる。背後に回りこんだもう1体が、奇襲を仕掛けてきたのだろう。
槍が振るわれる前にルカの雷光鳥が人魚に向かって飛ぶも、やはり俊敏な泳ぎで避けられてしまった。
「さすがは人魚、素早いですね」
それに、気のせいか泳ぎ始めた頃よりもより素早さを増しているように見える。下手に狙うのは得策ではないと、ルカは空間に罠を張るように霊符を仕掛けていった。
一方のザハールは尚も人魚たちの攻撃をかわし続けている。しかし、このままでは何れ危うくなるだろうということも理解していた。
海中を自由自在に泳ぎ回る人魚たちを目だけで捉えるのは困難。そのため、彼は聴覚や触覚を頼りに人魚の動きを巧みに察知していた。
人魚たちに圧されるように、じりじりと後退していくザハール。それを好機と見たか、人魚たちも泳ぎながら攻撃を繰り返す。
そして次の一撃で仕留めてやろうと、片方の人魚が勢いをつけて突進してきたその時だった。この瞬間を待っていたかのように、ザハールが身を屈める。彼の頭上を通り過ぎていった人魚は、勢い余ってその先に仕掛けられた霊符の罠に突っ込んでいった。
激しい雷撃により泡となった人魚を見届け、ひと時の安堵を得たのも束の間。場を歌声が包み込んだ。
最後に残った1体が歌っているのだ。甘美に理性を破壊してゆく魅了の歌を。
突然、ザハールは背後に気配を感じる。残りの人魚はあの1体のみの筈だが。
振り返ったザハールの目の前にいたのは、背中を預けたルカ。しかしどこか様子がおかしい。まるで中身がないかのような空虚な瞳で、ザハールに向け霊符を構えている。
今のが魅了の歌だったのだろうとザハールは悟る。霊符に雷が集まり始めたのを見れば、静かに息を吐いた。
「やれやれ、天使が人魚の歌声で惑う、か」
術が放たれるより早く、ルカの腕を掴めば彼を見据えて。
「起きろ、君はそんな柔な精神はしていないだろう」
呪いを解く鍵は何だったのだろう。いや、何であれそれはきっと彼にとって大切なものだったのだ。
「――柔な精神って、言ってくれますねザハール」
緑の瞳に元通り生気が戻る。
「ですが、えぇ助かりました」
自らの手で傷つけてしまう前に戻ることができてよかった。あとは視線の先の人魚に一泡吹かせてやらねば気が収まりそうにないが。
「俺で遊ぶとかやってくれましたね」
持てる限りの力を霊符に込めると、ルカの周囲に雷光鳥の群れが現れた。俊敏な動きで避けられてしまうのなら、一帯ごと潰すだけのこと。
「悪いがいつまでも歓待を受けているわけにはいかぬ」
言って先行したザハールに続くように、雷光鳥が飛ぶ。追尾しながら次々に飛来する雷光鳥を避けきることは難しく、被弾して動きを止めた隙にザハールが斬り込んだ。
斬撃による衝撃波が人魚を断てば、後にはただ泡だけが儚く残っていた。
互いの無事を確認すれば、目の前にそびえる宮殿を見上げ、その内部に思いを馳せる。
「さて、どんな宮殿が待つか、楽しみだな」
「えぇ。この先でどんな景色が見れるか楽しみです」
進み続ける2人を待ち受けるものは、果たして。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シシル・ロッツェル
目的地の上に着いたみたい?
ここからは水の中って聞いた。
だから、水中呼吸の効果がある魔法薬を買って来てある。
長時間効果があるのは金貨がたくさん必要だったけど、金貨は珍しくないから別に惜しくない。
それより未知のお宝がちゃんとあるといいなー。
ポーションポーチから魔法薬を取り出して、使用してから海へ突入ー!
【目立たない】【地形の利用】【聞き耳】【視力】【迷彩】を駆使して、出来るだけ敵対生物に見つからないように宮殿を探そう。
戦闘が避けられなそうなら、【目立たない】からの【先制攻撃】でUC【シーブズ・ギャンビット】を中てに行く。
水中を自由に動かれると厄介だし、予め【罠使い】として網を敷設しておこうかなー。
●蒼海のトレジャーハンター
クラーケンの襲撃を乗り越えた船の上。陽の光を浴びていたら何だか気持ちよくて、シシルはマイペースに伸びをする。
「目的地の上に着いたみたい?」
気が付けば、周りの猟兵たちは次々に海へダイブし始めていた。出遅れてシシルの分のお宝が無くなってしまっては一大事だ。ぴょんと軽い身のこなしで立ち上がると、そろそろ彼女も出発することにする。
ここからは水の中って聞いた。だから、とっておきの魔法薬を使おうとシシルは考えた。
たくさんの金貨と引き換えに手に入れた魔法薬は、長時間に渡って水中呼吸の効果を得られる優れものだ。
金貨は珍しくないもの。だからシシルにとっては惜しくない。
「それより未知のお宝がちゃんとあるといいなー」
人魚のお宝はいったいどんなお宝なんだろう。まだ見ぬお宝をあれこれ夢想しながら、ポーションポーチから取り出した瓶の中身を使う。
これで準備は万端だ。軽く助走をつけて、お宝の待つ海へ意気揚々と飛び込んでいった。
どぼん、と派手な音とともにやって来た海の中には、キラキラしたものがたくさんだ。
半透明の石にパステルカラーの二枚貝。道中で見つけた綺麗なものに手を伸ばしはするが、やはりシシルの心は人魚のお宝の虜のようだ。
綺麗なものに目移りしながらも、シシルは不思議な宮殿の見える場所に辿りついた。きっとあの真っ白で大きな巻貝の中に人魚姫はいるのだろう。
目立たないように岩陰に身を隠しながら、五感をフルに活用して宮殿までのルートを探る。
見たところ宮殿の周囲に警備の人魚たちが配置されている上、それとは別に巡回の人魚もいるようだ。中へ入るために戦闘は避けられないだろう。
なるべくなら見つからずに潜入したかったが、仕方がない。せめて比較的警備の手薄な場所を狙って入り込むことにした。
巡回する人魚をやり過ごせば、城壁前で辺りを見張る2体の人魚を視界に捉える。
狐耳の向きを変えて声を拾えば、どうやらシシル以外にもニンゲンがやってきたらしく、その対応で警備の数が足りていないらしい。
この絶好のチャンスをものにすべく、物陰を移動しながら見極める。死角から相手の急所を確実に狙える位置を。
やがてそれを見つければ奇襲を仕掛けた。1体の背後から近付き、素早いダガーの一撃が頚椎を貫けば、人魚は泡となって散る。
もう1体が突き出した槍を身を捻ってかわせば、そのまま後ろに下がって距離を取る。すると、相手も自身の攻撃力を高めながらシシルを追ってきた。
だが、それも狩猟を生業にするシシルの計算のうち。
砂の中に隠すように敷設されていた網が、すぐ上を通過した人魚を捕らえる。水中を自由に動かれると厄介だと思い、予め設置しておいた罠へ上手く誘導したのだった。
「作戦成功ー」
網にかかった魚を見下ろし、最後は手にしたダガーで一撃の下に仕留めた。
これでお宝への道がまたひとつ開かれた。
冒険心と好奇心に背を押され、シシルは進む。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『貝塚の女王』
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POW : おいしいおいしい、モットチョウダイ
自身からレベルm半径内の無機物を【肉を溶解する水流】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : 痛いトお腹ガへっちゃうモン
自身の身体部位ひとつを【無数の貝殻でできたドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : アナタもトッテモおいしソウ!
対象のユーベルコードに対し【精神力を弱らせる邪光】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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●半人半魚の姫君
各々の手段で人魚の宮殿へ辿り着いた猟兵たちは、警備の人魚たちを相手取りながらも、その内部への侵入に成功した。
入ってみれば、外観と同じく内装も眩い白で染められている。壁に飾られた絵画やヒトデ以外に目印になりそうな物もなく、下手を打てば迷路のように方向感覚を狂わされかねない。
しかしどうやら内部の警備は外ほど厚くはないようで、物陰に隠れるなどしながら簡単にやり過ごすことができた。
やがて、廊下を抜けた猟兵たちは大広間に出るだろう。天井に開いた穴からは光が射し、その光の下に人魚の姿がある。
広い部屋の真ん中に、ただ1人。魚のヒレに加え、コウモリの翼に似た両腕と獣の耳を持つ彼女は、うっとりと禍々しい柱に寄り添っている。
恐らくあれこそがクラウドオベリスク、猟兵たちが破壊すべき対象だろう。
人魚の姫は猟兵たちの姿に気が付くと、驚くでも恐れるでもなく、ただ微笑みかけた。
「アナタたち、ワタシの大事な宝物を奪いに来たヒト? 人魚のお肉を食べに来たヒト?」
それとも――
「ワタシに、食べられに来たヒト?」
ニヤリと口の端を持ち上げた姫の周囲には、食事の残骸のような貝殻と、何かの頭部の骨が転がっている。
戦いの時だ。
目の前の人魚を屠るか、さもなくば食われるか。
オベリスクを賭けたオブリビオンとの最終決戦が、今始まる。
ウィルバー・グリーズマン
どれにも興味ないです(バッサリ)
その宝物とやらをブチ壊しに来たんですが、別に要らないです、そんな気味の悪い物……あれ、怒ってます?
まだ魔力は十分ありますね。では【オーバーリミット】
戦況を見ながら、魔術を強化して全力で使いましょう
先程と同様に『ブラスト』で風の魔弾
弱い弾で女王を追い込んで、『タイムクリエイト』で動きを鈍らせて、強い弾を撃ち込みましょう
まだオベリスクに寄り添ってますね……
『マッドネスソーン』で粘着化させてしまいましょうか
そこに強い弾を撃てばオベリスクも傷付けられて、一石二鳥です
貝殻のドラゴンの影に『シャドウプラン』で逃げ込んで、カウンターするのも良いでしょう
さて、魔本の力をご覧あれ
●哂う影法師
人魚の宝かその肉か。
はたまた人魚の腹に収まるか――
「どれにも興味ないです」
羅列された誘惑を、黒衣の魔術師はバッサリと切り捨てた。
「その宝物とやらをブチ壊しに来たんですが、別に要らないです、そんな気味の悪い物」
ウィルバーにとって、クラウドオベリスクは破壊すべき対象である以外に意味を持たないらしい。
禍々しい柱に一瞥をくれてやれば、指で口元を拭った人魚の両目がギラリと光る。
「壊ス? ……そんナノ駄目、これはワタシのなんだカラ」
彼女を取り巻く水が、煮えるように揺らめいて見えた。
「……あれ、怒ってます?」
やれやれと零しながらもアルゴ・スタリオンを開く。
どうやら己の魔力はまだ十分残っているようだ。ならばあの手で行こう。
「魔力放出、極限発動」
消費した魔力に応じて魔術を強化するユーベルコード、オーバーリミット。それを発動したことにより、ウィルバーの魔術は今や平常の倍以上にまで高められている。
片手を突き出し、手始めに風の魔弾を撃ち込んでやれば、それを避けた人魚はオベリスクを守るように立ち塞がる。
足元に転がった貝殻が浮かび上がったかと思えば、次々と磁石に引き寄せられるかのように彼女の右腕に貼り付いていき、みるみる内に腕を獰猛なドラゴンに変えた。
ドラゴンは大口を開け、放たれる魔弾を食べては消していく。
「なかなかやりますね」
しかし、ウィルバーもまだ手の内を全て見せている訳ではない。うろたえることなく次なる魔本のページを捲れば、今度は更に強力な風の魔弾を撃った。
いくら威力が上がろうと、食べてしまえば同じこと。人魚は先程のように右腕を盾にしようとするが。
「!?」
動かそうとしているのに、右腕が思うように動かない。まるで動きが鈍ってしまったかのような――
そう、ウィルバーはタイムクリエイトによる時間操作で人魚の動きを鈍らせていた。
鈍った腕では魔弾の動きを捉えられる筈もなく、半人半魚の体に直撃すれば、そのまま彼女を背後のオベリスクに叩き付ける。
ボロッ……
オベリスクの欠けた一部が、海の水に溶けるように崩れて消えた。
「……とってモ、とってモ痛いワ」
お腹へっちゃっタ、そう呟いてウィルバーを見た。
時間操作を振り切り、獲物に肉薄する人魚を魔術師も迎え撃つ。ここで大人しく食われてやるつもりは微塵もない。
肉に食らい付かんと腕が振るわれた瞬間、ウィルバーの姿が消えた。食った手応えもなく、逃げ出す姿も見えなかったのに。
きょろきょろと辺りを見回す人魚の足元。貝殻のドラゴンの影から、悪戯な魔術師が頭を出す。
「さて、魔本の力をご覧あれ」
最大威力の魔弾が、至近距離から人魚を捉えた。腕から剥がされた貝殻がばらばらと散っていく。
追撃を受けまいと距離を取った人魚は、元に戻った右手で吐血を拭った。
「アナタの本は、おいしくなさソウ」
手近な魚を鷲掴めば、鋭い牙でその肉を食らう。人間の肉ほどではないものの、多少は空腹も傷も癒されたらしい。
やはりこんな所で人魚の栄養になるのはご免だと、ウィルバーは思った。
大成功
🔵🔵🔵
琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】エウトティアと
貝にちょこんと座る姿…綺麗だ…
「はじめまして、僕はレニー」と、つい近づいてしまう【礼儀作法】
っと、危ない。敵だった。
UC【突き食む求愛】
うかつに近づけない君に僕からの贈り物だ。
小鳥を出現させる技…水中でも使えるだろうか?
(UC技だし特別な小鳥だろうけど、水中でも平気な鳥…運良くペンギンが出たらびっくりしたいね)
WIZ技で相殺されても何匹かはそちらへたどり着くだろう。
それに、同時に出る花びらでかく乱しながら向かわせるよ【目立たない】
さあ陸のお姫様(お姫様=口説き文句)エウトティア
上にエスコートするよ
※アドリブ大好き。追加省略ご自由に。
エウトティア・ナトゥア
チーム【依頼掲示板前広場】で参加。
レニー殿(f00693)と協力するのじゃ。
(『貝塚の女王』を口説くレニー殿を眺めつつ)うむ、やはりレニー殿はレニー殿だったのじゃ。先程見直したのは気の迷いであったな。趣味に走るのは良いが抜かるでないぞ?
(属性攻撃+目立たない)さて、敵はレニー殿の小鳥や花びらに気を取られているようじゃの。これは好機じゃ、レニー殿の攻撃に紛れる様に見えない風の精霊を呼び出して死角から奇襲するのじゃ。
同時に【巨狼マニトゥ】を嗾けて追撃してくれるわ。さあマニトゥ、お主の鋭い牙でがぶりと噛み付いてやるのじゃ!
●白黒ペンギン大行進
辿りついた宮殿の奥で待っていたのは人魚姫。その美しさに、れには息を呑んだ。
立てばクマノミ座ればキンギョ、泳ぐ姿はミノカサゴ。
ざっくりと編まれた長い髪は、見る角度によって真珠のようにその色を変える。彼女の持つヒレは淡いブルーとグリーンが混ざり合い、まるで南国の白い浜辺に寄せる波のようで。そのヒレを折りたたみ貝殻の山の上にちょこんと座る姿は、愛らしくも綺麗だ。
おとぎ話の人魚と比べると少しばかり物騒な見た目をしているような気もするが、れににとっては些細なこと。
どこからともなく真っ赤な薔薇を一輪取り出し、前髪を掻き上げる。
「はじめまして、僕はレニー」
優雅な所作とともに爽やかスマイルを浮かべれば、その姿はまるでおとぎ話の王子様。
残念ながら、オブリビオンの人魚姫が彼女に抱いた感想は『美味しそうなお肉』だったようだが。
そして、れにの後ろにはエウトティアとマニトゥの姿が。
「うむ、やはりレニー殿はレニー殿だったのじゃ。先程見直したのは気の迷いであったな」
見張りの人魚たちは口説かなかったというのに。何やら深いため息とお小言が聞こえてきそうだ。
心なしかマニトゥもじとーっとした視線を向けているような気がする。
しかしながら、この方が『れにらしい』といえばそうなのかもしれない。
「趣味に走るのは良いが抜かるでないぞ?」
釘を刺すようなエウトティアの言葉に、れにもはっとする。
「っと、危ない。敵だった」
そして同時に思い出す。何故自分たちがここまで来たのか、猟兵としての使命が何だったかを。
猟兵とオブリビオンという関係でなければ、戦わずに済む道もあったのだろうか。もしもを考えても仕方がないかもしれないけれど。
「うかつに近づけない君に僕からの贈り物だ」
手にしていた愛情の花にふっと息を吹きかければ、舞った花びらを纏うようにして魔法の小鳥たちが現れる。
しかし召喚された鳥を見た瞬間、れにからは驚きの声があがることとなる。
「なんと、これは愛らしいことよ」
言ってエウトティアも目を細めた。
彼女たちの視線の先にいたのは小鳥ではなく、ペンギンだったのだ。
「びっくりした。まさかペンギンが出るなんて。……でも、君たちなら水中でも自由に泳げるだろうね」
れにに答えるように、キュイ! とひと鳴きするペンギンたち。海の中を飛ぶ鳥である彼らはとても頼もしい味方になってくれるだろう。
彼女が調教師のように合図を送れば、それに合わせてペンギンたちが人魚に向かって泳いでいく。
「なァに、アレ。お肉がイッパイ!」
トッテモおいしソウ! 興味津々に見開かれた薄紫色の瞳が邪光を放つ。
邪光がペンギンを撃ち抜けば、ユーベルコードを相殺するようにその姿を消してしまった。ペンギンの姿が消えたのを見ると、肉じゃないと分かったのか人魚もどこかがっかりした様子で。
ペンギンたちは次々とロケットのように泳いで来る。その全てを相殺しきることは不可能に近いだろう。
勢いよく突撃してきたペンギンを避けるも、続けて数羽の襲撃を受ければ避けきれず。二の腕をかすめたクチバシが肌を切れば、じわりと人魚の血が海水に滲む。
ペンギンたちの統率の取れた素早い動きも厄介だが、それに加えて厄介なのがかく乱するように舞う薔薇の花びらだ。真っ赤な花びらが視界を遮り、煙幕のような効果をもたらしていた。
「さて、これは好機じゃ」
今なら人魚はペンギンと花びら相手に躍起になっている。奇襲を仕掛けるには絶好のチャンスだ。
エウトティアが小さく呼びかけると、応えるように見えない風の精霊が現れる。
精霊はペンギンと花びらの隙間を縫って、人魚の死角となるルートを教えてくれた。
「さあ陸のお姫様エウトティア、エスコートするよ」
言って彼女にウィンクを贈ったれには、エウトティアが気付かれずに移動できるように、ペンギンたちへかく乱続行の指示を出す。
れにのアシストのお陰で、エウトティアは隠密に目的のポイントまで辿りつくことができた。
視線の真っ直ぐ先に、人魚の無防備な後ろ姿が見える。精霊の力を借り、両手に風の力を集めると、それを人魚めがけて一気に撃ち出した。
「!?」
エウトティアの風の一撃が見事背中に命中する。そして人魚が状況を把握するより早く、更なる追撃を加えていく。
「さあマニトゥ、お主の鋭い牙でがぶりと噛み付いてやるのじゃ!」
伏せをして身を潜めていた白狼が気高く吼え、人魚の腕に食らい付いた。声にならない悲鳴が海中に響く。振りほどこうとすれば、そのまま腕ごと食い千切られていただろう。
しかし人魚も退かずに反撃を仕掛ける。その怪力で巨狼の肉を引き裂こうと、もう片方の腕を振り上げたのを見て、マニトゥは噛み付いていた腕を解放する。
間一髪、人魚の爪を避けた巨狼は巫女姫の元へ戻っていった。
大きな歯形の残った腕を押さえ、肉食の人魚はうわ言のように繰り返す。
オナカヘッタ、オニク、モットチョウダイ――
弱肉強食の戦いの中、猟兵たちは確実にオブリビオンへ損傷を与えつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イーファ・リャナンシー
真の姿:イラスト参照
身長6倍、人間大に変化
妖精姫のような姿
いいわ…クラウドオベリスクの破壊を邪魔するって言うなら、自分が過去の存在だってこと、嫌って言うほど思い出させてあげる
あんたの餌だなんて真っ平ごめんよ
小さな体を活かして敵の隙をうかがいつつ、【全力魔法456】を込めて【フェアリー・ランド】を発動するわ
2回目以降はどうなるか分からないし、最初で決めるくらいのつもりで
魔力干渉も物理干渉も受け付けないこの迷宮…その気持ち悪い光で打ち消せるかしら?
迷宮に敵を閉じ込めて仲間がクラウドオベリスクを攻撃するための時間を稼いだり、真の姿を開放して出口の前で【全力魔法456】をぶつけるための待ち伏せをするわ
●幻惑のラビリンス
猟兵たちとの交戦を開始した人魚の姫。どうやら彼女も大事なクラウドオベリスクを破壊させるつもりはないらしい。
多勢に無勢と臆することもなく、爪で裂き、牙をむいて食らい付いてくる人魚をイーファは見据えた。
「いいわ……クラウドオベリスクの破壊を邪魔するって言うなら、自分が過去の存在だってこと、嫌って言うほど思い出させてあげる」
その言葉が耳に届いたのだろうか。たった今、貝殻を纏わせることでオベリスクを保護した人魚の双眸が、妖精を捉える。どうやらイーファを次なる標的として認識したようだ。
「あんたの餌だなんて真っ平ごめんよ」
海は相手の得意なフィールドだ。自慢のヒレであっという間に距離をつめてくる人魚から逃れながらも、その隙を窺う。
何しろ大掛かりな魔法の行使にはある程度の時間が必要なのだから。
やがて、イーファを捕らえようと一目散に泳ぐ人魚が、突き出たサンゴのオブジェに勢い余ってぶつかり、動きを止めた。
その僅かな隙をイーファは見逃さない。すかさず小さな体に内包する魔力の全てを集めた。
2度目がある保証はない。だから1度で決める――
練り上げられた魔力は記憶の渦に形を変え、人魚をその内側に閉じ込めてしまった。
『フェアリー・ランド』 イーファの作り出した大きな迷路だ。
「いや、出しテ!」
人魚はすぐにユーベルコードを打ち消そうと邪光を放つが、びくともしない。
それもそのはず、イーファ特製の迷路は魔力干渉も物理干渉も受け付けない。外へ脱け出す唯一の方法は、どこかにある出口を見つけ出すこと。
「そんなこと言わないで、しばらく遊んできなさいよ」
どこかで見ているのだろうか。イーファの声が迷路内に響いた。
人魚は泳ぎだした。時折荒々しく壁にぶつかりながらも、ただ出口を求めて泳ぐ。
ひたすら同じような景色の続く迷路内において、視覚によって得られる情報は役には立たない。それを野性的な勘で悟ったのか、道の先から感じる肉の臭いを頼りに進んでいく。
程なくして、人魚は外へ繋がる道を見つけるだろう。
迷路を突破した人魚は必ず出口を通る。だからイーファは狙った、この瞬間を。
小さな妖精は人間大に変化し、流れるような青い髪は眩い金髪に塗り変わっていた。これがイーファの真の姿。愛らしくも神秘的なその姿は、まさに妖精姫と呼ぶに相応しい。
出口を見つけたことで気を緩めた人魚姫が、出し抜けに撃ち込まれた魔力の塊を避けることは困難。
直撃を受けると、耐え難い衝撃と苦痛がオブリビオンを襲った。
黄金色の妖精姫が見下ろす先、手負いの人魚の姿がそこにあったろう。
大成功
🔵🔵🔵
出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、手帳の(アルマニア)と
やはり、オベリスクの護り手はあれだったか、はらぺこ女王
食べる他にも、大事なものがあるようだが
元気なままだと厄介この上ないので、まずはその意思、閉じさせてもらうぞ
元気だと邪魔なのは、向こうから見ても同じだろうが
オベリスクへの執心は、守護よりも憧憬、自慢、それらによる顕示欲
食への執心は、本能だろう
こういうものとして生まれ落ちたものが、持たずにはいられないものだ
その明確な意思、確かにこの眼に捉えた
【大神の神眼】を発動し、【死都之塞】を
その欲望を、執心を閉ざす
お前が動く理由を、閉ざす
動かなければ、腹は減らないだろう?
アルマニア・シングリッド
【ヤド箱】
変身召喚
2章と同じ水中対策の魔術を引き続き展開
解除された対策として
数枚の虹色の紙をステラさんとカガリさんの傍に目立たないように迷彩で透明化(物を隠す)させ
オーラ防御を付与しつつ
酸素補給と水中浮遊(空中浮遊・水泳)の状態を維持できるようにする
我ハ古キ書ノ一遍ナリも引き続き千枚展開(武器改造
援護射撃はお任せを
虹色の紙を最大限に使い
邪光は盗んで溶解させる水流にぶつけさせましょう(盗む攻撃・早業
その貝殻のドラゴンも氷魔法で凍てつかせます(スナイパー・全力魔法・力溜め・高速詠唱・早業
そして砕けなさいっ!(カウンター・衝撃波・部位破壊・鎧無視攻撃
ステラさん、カガリさん
今ですっ!
アドリブ歓迎
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】カガリ、アルマニア殿と
不老不死を求め人魚の肉を求める人の話はよく聞いたが、人食い人魚の話は初めて聞いたかも知れないですね
なんであれ、奥にあるあの柱を壊さなければいけません
そして……オブリビオンたるお前の存在も倒さないとな
敵の技の範囲に入らないよう距離を保ちつつ、水流を水【属性攻撃】で流れを操り、私達に被害が来ないようにする
【流星剣】に【祈り】と【呪詛耐性】の【オーラ防御】を施し敵の技の効果を受けないようさせてから、カガリが敵の動きを止めたらその隙を突くように【凶つ星】を放とうか!
●流星のごとし
「やはり、オベリスクの護り手はあれだったか、はらぺこ女王」
最奥で待っていたオブリビオンの姿を確認するや否や、カガリが零す。
手負いとなった人魚は、魚を掴み取っては肉を裂き、一心不乱に食らって回復を図っている。
いや、彼女にとって問題なのは傷ではなく底なしの空腹感なのかもしれないが。
カガリが知るあの人魚は、肉を食らうことを異常なまでに好むオブリビオンだ。しかも食らうのは肉だけではない。その魂さえも、魔法で貝の形に具現化させて喰い尽くしてしまう。
そんなはらぺこ女王だが、どうやらこの個体には食べることの他にも大事なものがあるらしい。
その大事な『たからもの』であるクラウドオベリスクは、今や人魚によって貼り付けられた貝殻でびっちりと覆われ、表面を保護されていた。
人魚は傷を負うたびに手近な魚を食らうことで回復し、なかなか致命傷には至らない。しかしいくら肉を食おうとも急速に傷を癒しきることは難しく、猟兵たちの攻撃によるダメージは着実に蓄積されているようだ。
「不老不死を求め人魚の肉を求める人の話はよく聞いたが、人食い人魚の話は初めて聞いたかも知れないですね」
思わずステラが呟いた。もしかすると、話を伝える人間は皆あの人魚の腹に収まってしまったのかもしれない。あまり考えたくはないことだが。
「なんであれ、奥にあるあの柱を壊さなければいけません」
そして……オブリビオンたるお前の存在も倒さないとな。優しさを帯びたステラの瞳が、強く、真っ直ぐにオベリスクとオブリビオンを捉えた。
「援護は私にお任せを。カガリさんとステラさんは戦いに集中してください」
邪光によって酸素補給と水中浮遊が解除されては成すすべもない。3人のライフラインはアルマニアの手に委ねられていると言っても過言ではないだろう。
「有難うございます、アルマニア殿。安心してください、アルマニア殿まで攻撃は届かせません」
「ああ、カガリたちが守るからな」
カガリとステラが前で敵と交戦し、アルマニアが後ろでそれを援護する。3人であることを活かした完璧な布陣が出来上がっていた。
まずはアルマニアが下準備を始める。ライフラインを絶たれぬよう、対策として数枚の虹色の紙を迷彩で透明化させ、ステラとカガリの傍に目立たないように配した。更にそこへオーラ防御を付与してやれば、酸素補給と水中浮遊の状態を維持できる態勢は整った。
アルマニアが準備完了の合図を送ると、他の2人も行動を開始する。
「嬉しいワ、楽しいワ。だって美味しソウなお肉がみっつモあるんだモノ」
3人の姿を見つけ、人魚がころころと笑う。
「こんなご馳走、一口で食べキレルかしラ」
なら口が2つあれば問題ないワネと、足元に転がる貝殻を右腕に纏わせ異形に変えた。飢えたドラゴンの頭部は、紅く光る目で獲物を狙っている。
そのすぐ側では、同じくらいに飢えた人魚が爛々と目を光らせているのだが。
「生憎ですが、口は1つも要りませんよ。誰も食べられるつもりはありませんから」
眉ひとつ動かさずにアルマニアが言った。
そんなことは知ったことかとでも返すように、ガチガチと音を立てて歯を合わせるドラゴンの頭をカガリは見る。
「元気なままだと厄介この上ないので、まずはその意思、閉じさせてもらうぞ」
元気だと邪魔なのは、向こうから見ても同じだろうが――
ならばこちらが元気を奪われてしまう前に、相手の元気を削がなければ。
しかし、カガリが力を行使するには、まず相手の怨念や意志を明確に認識しなければならない。そしてステラとアルマニアもそれを分かっている。
「私が相手になろう!」
だから、ステラはまず自分の方へ注意を向けるように動いた。カガリが邪魔をされずに集中できるように。
しかし不用意に敵へ近付くことはしない。人魚が怪しい水流を起こしていることに気が付いていたから。
獲物が罠にかかるのを網を張って待つように、ステラを見つめながら人魚はくすくすと笑っていた。
ともかくあの水流を無力化しないことには接近すら叶わない。ならば水流には水流だ。
流星の剣を構えると、その剣身に刻まれた魔術の刻印が輝きだした。喚び出すは水の魔法。ステラが新たに作り出した水流で人魚の水流を追いやれば、その驚異はもはや味方には及ばない。
それを見た人魚は、アラと意外そうな声を漏らした。簡単に見破られる相手だとは思っていなかったのだろう。
ならお返しとばかりに、ステラの水流を打ち消そうと邪光を放つ。
「私を忘れてもらっては困りますね」
すかさずアルマニアの援護が入る。既に場には彼女の我ハ古キ書ノ一遍ナリがあちこちに張り巡らされているのだから。
迷彩によって巧妙に隠されていた虹色の紙が現れれば、放たれた邪光をすっかり盗み取ってしまった。
そして、光をぶつけてやるのはステラの水流ではなく、人魚の作り出した水流。鏡に光が反射されるようにページを次々と跳ね返っていった邪光は、水流に直撃するとユーベルコードを相殺し、消してしまった。
これで気兼ねなく攻め手に回ることができる。しかし今まさに目の当たりにした邪光への対策は行っておくべきだろう。
ステラは己の流星剣に祈りと守りのオーラを施せば、果敢に人魚へ向かって行った。
ステラとアルマニアが人魚を引き付けている頃、カガリは静かに人魚を『視て』いた。彼女の意思を捉えるために。
かの人魚のオベリスクへの執心は、守護よりも憧憬、自慢、それらによる顕示欲。
食への執心は、本能だろう。
こういうものとして生まれ落ちたものが、持たずにはいられないものだ。
ならば――
「その明確な意思、確かにこの眼に捉えた」
それを明確に認識した瞬間、カガリの紫の瞳が柘榴に変わる。大神の神眼を発動した彼は、内なる神性を部分解放した。
その欲望を、執心を閉ざす。
お前が動く理由を、閉ざす。
動かなければ、腹は減らないだろう?
食らい付く人魚の腕を、ステラが剣で受け止める。そんな攻防が幾度も繰り返されていた、その時。
「!?」
突如人魚が動きを止めた。
覚醒したカガリの視線が人魚の自由意志を奪い、自発的行動の続行・開始を封じたのだ。
カガリの作った隙をアルマニアも見逃さない。右腕のドラゴンを氷魔法で凍て付かせれば、そのまま魔力で握り潰すように砕いてしまった。
「ステラさん、カガリさん。今ですっ!」
今こそ絶好の好機。目配せし頷き合えば、カガリが『大神の神眼』の力でより強く人魚の動きを封じる。
ステラを送り出すように、アルマニアの魔法が、カガリの神眼が、そっとその背を押した。
本体の流星剣を投擲すれば、真っ直ぐ人魚に命中する。次の瞬間には、ステラの姿は人魚の目の前に。
「我が身は彗星。この剣、受けてみよ!」
3人の想いを乗せた星の刃が、オブリビオンを斬った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルカ・アンビエント
ザハール(f14896)と
えぇ、そうですね
では片付けと行きましょう。ザハール
ーーザハール(あんたはだから、という目をしつつ
切れ味、とかじゃないんですか?
ま、その切れ味は鈍った時には救急箱でも霊符でも投げつけてるんで覚悟しといてください?
ザハールが前に出る分、全力で雷を乗せた霊符を使い援護を
信頼してますからね
ザハールに向かう敵の技をズラすよう攻撃を
ドラゴンには仕置の霊符を
は、相殺なんかさせませんよ
紫苑の楔を発動
貴方の行動、奪わせていただきましょう?
敵が来るようであれば翼を広げ
ザハールより俺の方が好みですか?
生憎、食べたところで腹を下しますよ
ふは、まぁ俺もあんたも美味しいだけのもんじゃないでしょう
ザハール・ルゥナー
ルカ(f14895)と
……さて、少なくとも三番目ではないな。
掃除の時間だ。行くぞ、ルカ。
刃嵐を発動、酸素の確保と動作の補助を。
ふと思うのだが、私の寿命というのは何だろうな?
耐久年数か?
……なまくらになるのは、確かに困る。
攻撃は極力引きつけ、最短の動作で直線的に躱す。
多少の傷は気にせず、致命傷を避けるよう心掛ける。
生命を喰らわれるのは面倒だ。
ドラゴンの首となれば動作が大きくなろう。
水流の動きを感じ取り、ルカの霊符の力も借りつつ、先んじて動きたい。
ルカが狙われたならば奇襲を仕掛ける。
彼は自分で対処できると信をおいているゆえ。
ああ、金属よりは美味いだろうな。
しかし悪いが、不味い刃、喰らって貰おう。
●風雷の刃
出会い頭、人魚から提示された選択肢はどれも物騒なものだったが。
「……さて、少なくとも三番目ではないな」
とはいえ、他の2つにもそれほど魅力はない。ザハールが選択を拒むように首を振ると、束ねた銀の髪が水に揺れた。
「掃除の時間だ。行くぞ、ルカ」
彼が視線を向けた先には、船上からここまで背中を預けあった頼もしい相棒の姿。
「えぇ、そうですね。では片付けと行きましょう。ザハール」
まるでいつものことだと言うかのように、ルカは答えた。この最終局面においても、彼らは恐らく互いに心強い味方となるだろう。
海中での戦闘はまだ続く。酸素の確保と動作の補助のため、刃嵐を重ねがけして備えたザハールはふと思う。
「私の寿命というのは何だろうな? 耐久年数か?」
このユーベルコードは使用者の寿命を削るという。ならば、軍用ナイフのヤドリガミである彼にとって、寿命にあたるものは何なのだろう。
あまりにも唐突に、純粋に疑問を投げかけられたものだから、ルカも思わず面食らってしまう。
「――ザハール」
あんたはだから、とルカの目が言っていた。何だかため息まで聞こえてきそうだ。切れ味、とかじゃないんですか? と口では返して。
「ま、その切れ味は鈍った時には救急箱でも霊符でも投げつけてるんで覚悟しといてください?」
「……なまくらになるのは、確かに困る」
分かったと、ザハールも素直に頷いた。
そんな2人のやりとりを見ていた人魚は、拍手をしながらくすくすと楽しそうに笑んで。
「お兄さんタチ、とっても仲良しなのネ」
咄嗟に抗議の構えに入ったルカが口を開くより早く、人魚の両目が妖しく光る。
「それに、カラダが大きくて食べ応えありソウ」
完全に獲物を品定めする目付きだった。その目が彼女が友好的な人魚などではなく、まさしくオブリビオンであることを思い出させてくれる。
手負いの人魚は肉を欲していた。空腹を満たし傷を癒すため、魚の肉よりももっと大きくて味わい深い、人間の肉を。
「いただきマス!」
狩るようにザハールへ飛び掛った人魚。それを引き付けると、彼は最短の動作で直線的に攻撃を躱していく。
時折人魚の爪が掠めて小さな傷を付けるも、ザハールはそれを些事として気にしない。深手でなければ問題ない。それよりも致命傷を避けなければ。
そのうち、砂の上に散らばった貝殻が人魚の右腕に集まり始めると、荒ぶる貝殻のドラゴンに姿を変えた。
ドラゴンはそれ自体が意思を持つように、生命力を奪おうと大口を開けて噛み付いてくる。
「生命を喰らわれるのは面倒だ」
ドラゴンの首は一つ一つの動作が大きく、同時に一度の攻撃の威力も大きかった。先ほどよりも避けやすくはなったが、その分一撃食らっただけで被害も大きい。
相手の動きによって生じる水流を感じ取ることで、攻撃の軌道を読む。そうしながら攻撃をいなすザハールの元へ、ルカの援護が届いた。
霊符から放たれた蒼き雷がドラゴンに直撃し、その攻撃の軌道をザハールからずらす。まるで行儀の悪い獣へ仕置きをするかのように。
「もう、邪魔しナイデ!」
どうやら人魚姫の機嫌を損ねたようだ。薄紫の瞳を見開けば、ユーベルコードを打ち消す邪光が放たれた。
「は、相殺なんかさせませんよ」
光が届くより早く、ルカが紫苑の楔を発動する。雷の鎖によって編まれた結界が人魚を捕捉すると、逆に相手の邪光を打ち消してやった。
二度も邪魔をされ、人魚はすっかりルカに夢中のようだ。
「アナタは絶対に食べてアゲル!」
標的をザハールからルカに移したらしい。自分の方へ向かってくる人魚を見て、ルカは六枚の羽を広げた。神秘の証だという、その翼を。
「ザハールより俺の方が好みですか? 生憎、食べたところで腹を下しますよ」
不敵に笑って挑発するルカ。その隙にザハールは奇襲の準備を進めていく。
それは、ルカならば自分で対処できるとザハールが信をおいているからこそ。彼が彼のすべきことを成すならば、自分は自分のすべきことを。
ドラゴンがルカの喉に食らい付こうと口を開けた、その瞬間。衝撃波がドラゴンを捉え、人魚の右腕に纏わりついた貝殻を弾き飛ばした。
腹は下すかもしれないがと、斬撃を放った構えを解きながらザハールが呟く。
「金属よりは美味いだろうな」
衝撃波に驚く様子も喜ぶ様子もルカにはない。恐らく、彼の方もまたザハールを信じていたのだろう。
「ふは、まぁ俺もあんたも美味しいだけのもんじゃないでしょう」
違いない。それだけ返して、ザハールは体勢を立て直す人魚へと向き直った。
「しかし悪いが、不味い刃、喰らって貰おう」
風の刃と雷の刃を。
ザハールとルカが攻撃を繰り出したのはほぼ同時。二重の刃が、オブリビオンの人魚に食らい付いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シシル・ロッツェル
「あれが人魚の宝物……?」
大きいし、なんか不気味で思ってたのと違う。
でも、珍しいから持って帰りたいなー。
うーん、うーん……。
そのままは無理だから、分解して一部だけ持って帰れないかな?
そのためにも、怖い事言ってる人魚さんは何とかしないとね。
まずは【地形を利用】して身を隠して、【目立たない】【迷彩】を駆使しながら、【忍び足】で背後に回ってみよう。もし、バレちゃっても気は引けるよね?
上手く行きそうなら、そのままUC【シーブズ・ギャンビット】で攻撃!
致命傷になりそうな急所か、機動力が奪えそうな尾びれ辺りを狙おうかなー。
戦いが終わったら、人魚の宝物を分解して、一部を持って帰ろうっと。
●宝探しのその先に
「あれが人魚の宝物……?」
広間に鎮座する禍々しい柱を見上げ、シシルは首を傾げていた。
「大きいし、なんか不気味で思ってたのと違う」
目の前にあるクラウドオベリスクは『綺麗』という印象からはかけ離れていた。しかし珍しい物ならやはり持って帰りたい。
うーん、うーんとシシルは唸る。
そして、辿りついた答えが。
「そのままは無理だから、分解して一部だけ持って帰れないかな?」
とりあえず試してみようと決めた。そのためにも、まずはオベリスクに魅せられた人魚姫を何とかしなければ。
狩人であるシシルは、正面を切っての戦いよりは奇襲を得意としていた。そのため、まずは相手の背後に回りこむことにする。
人魚が他の猟兵に気を取られている隙に、広間に飾られた大きなオブジェの陰へ滑り込んだ。
目立たないように周囲の景色に溶け込みながら、忍び足で音も無く移動する。狩猟によって培われた技だ。
どうやら相手はまだシシルの存在に気が付いていないらしい。今なら奇襲のチャンスだ。
物陰から素早く飛び出せば、得物のダガーで切りつけた。
狙うはその尾びれ。水中での移動はやはり相手に利がある。だから、機動力を奪ってやる。
シシルのダガーが尾びれを捉えれば、人魚姫は驚いたように飛び上がった。慌てて振り返ったところで、初めてシシルの存在を認識する。
「チョット、いきなりなにするノ!」
振り向きざまに、貝殻のドラゴンと化した右腕を振るう。しかし尾びれのダメージが響いているのか、バランスを崩して空振りに終わった。
「あらら、バレちゃったー」
しかし今頃気付いたところでもう遅い。機動力を封じてしまえば、海の中でもいくらか渡り合えるだろう。
撹乱するように移動し続けながら、ダガーで切り刻んでいく。人魚も防御や回避はするものの、次第に傷が増えていく。
ダメージや疲労が蓄積してきたのだろう。やがて、動きの鈍った人魚姫に大きな隙が生まれた。
「隙だらけだよ」
その一瞬をシシルは見逃さない。確かなナイフ捌きで刃を突き出せば、海が人魚の血で染まり始めることとなる。
クラウドオベリスクの代わりに、シシルが貝殻の残骸の中から錆付いた宝箱を見つけ出すのは、もう少し先のこと。
大成功
🔵🔵🔵
鶴澤・白雪
エスパルダと(f16282)
やっとラスボスね
さっきの面倒な人魚の落とし前つけましょ
どうせ一方的に守られる気はないんだから分業しましょ
肉を溶かす水流は任せて。その代り貝殻のドラゴンは任せるわ
ユベコは相殺されなかった方が殴るって流れでどう?
水流に気づいたら高速詠唱とUCで周りに壁を作るわ
エスパルダ、今のうちに叩き込んで!
その時剣林が溶けないかも確認しておくわ
それならあたしの身体も溶けないだろうから堂々と庇えるもの
エスパルダが攻撃を受けた時はあたしが叩きこむ番よ
治療されても面倒だしそのヤンキーに傷つけられるのも気に食わないの
痛い目見たくなかったらさっさと離しなさい
全力魔法と2回攻撃のUCを叩きこむわ
エスパルダ・メア
白雪(f09233)と
落とし前上等
倍返ししてやらねえと御礼参りにならねえよな
そこは素直に守られといて欲しいモンだが、まあオレもただ守られてやる気はねえし
分業な、了解
…ただし万一お前の体が溶けそうなら、氷割り込ませるからな
目の前で溶けるのだけは勘弁しろよ
UCで叩き込むのは氷津波
敵が起こした水流をそのまま飲み込んで
よう、食いしん坊人魚姫
お前さんの海に還りな
さもなきゃここで氷海に沈め
白雪に攻撃が向いたら
そのままUCと一緒に突っ込んで殴り飛ばしてやる
あいつの手が砕けた時点で頭に来てんだ
悪いな、女に手加減する騎士道はオレの手持ちじゃねえんだよ
白雪の体が溶けそうなら氷の壁を作って庇いに出る
アドリブ歓迎
●不機嫌な無法者
「やっとラスボスね。さっきの面倒な人魚の落とし前つけましょ」
暴食の人魚を前に苛立ちを滲ませる白雪。痛々しく砕け散った彼女の右手を、エスパルダは見やる。
まったくむかっ腹が立つ。もしかすると砕かれた本人以上にはらわたが煮えくり返っているのではないか。とにかく敵を一発ぶん殴ってやらないと気が済まない。
今は集めた右手の欠片を堅固な氷のケージに保管して、治してやるのは全部終わった後。人魚の親玉と決着をつけてからだ。
「落とし前上等。倍返ししてやらねえと御礼参りにならねえよな」
バキバキと拳を鳴らし気合十分なエスパルダへ、白雪も強気な笑みを向けた。
本来ならあたしが前に出るなんて言いたいところ。だが、それをこの男が許してくれないことも知っている。それはそうだ、白雪だって守ってやると言われて大人しく守られるつもりなどない。お互い似た者同士だということは悔しいくらいによく分かっていた。
だから、彼女は代わりに提案する。
「どうせ一方的に守られる気はないんだから分業しましょ」
血気盛んな細剣は思わぬ妥協案にくつくつ笑い。
「そこは素直に守られといて欲しいモンだが、まあオレもただ守られてやる気はねえし」
何より彼女は決して聞き分けのいいお姫様などではない。
「分業な、了解」
ただし――と言葉は続く。万一彼女の体が溶けそうなら、氷を割り込ませると。
「目の前で溶けるのだけは勘弁しろよ」
あんな胸糞悪い光景はもうたくさんだ。
それを断る理由は白雪にもなく、ただ頷きで了承を示した。
白雪の提案はこうだ。肉を溶かす水流は白雪が引き受け、代わりに貝殻のドラゴンはエスパルダに任せる。そしてユーベルコードが相殺されなかった方が殴ると。
その作戦にエスパルダも二つ返事で乗った。
10人もの手練れの猟兵たちによる猛攻のお陰で、既に人魚にはかなりのダメージが蓄積されている。恐らくあともう一息だろう。
しかし手負いの獣というのは恐ろしいもの。生き延びるため、空腹を満たすため、オベリスクを死守するためがむしゃらに向かってくるだろう。
最期を迎えるその時まで、2人は決して気を抜くつもりはなかった。
「肉、肉、ニク……お腹ヘッタ、ヘッタ……アアアアアアアア」
耳障りな金切り声と共に流水が生まれる。そこらに転がる岩を変換させた、肉を溶解する水流だ。どうやら周囲の生物を見境なく溶かしてしまうつもりらしい。
不自然な水の流れにいち早く気付いた白雪は、瞬時にユーベルコードの詠唱を完了させる。作り出した尖晶石は剣のように鋭く、海底に次々と突き刺さって壁を築けば、防波堤のように海をせき止めた。
「エスパルダ、今のうちに叩き込んで!」
任せとけ、と気持ちのいい返事が返る。
「よう、食いしん坊人魚姫。お前さんの海に還りな。さもなきゃここで氷海に沈め」
水流を押し返すように叩き込まれたのは氷津波。溶解の力など物ともせずに、やわな水流を丸ごと飲み込んでやった。
人魚と目が合えば、「ご馳走さん」と不敵に笑って。
その隙に白雪はちらりと視線を遣り、観察する。どうやら白雪の尖晶石の剣林は無傷。肉を溶かす水流に呑まれてもだ。
それはつまり、剣林と同じく鉱石でできた白雪の体も、肉を溶かす水流の影響を受けないということ。彼女にとっては紛れもなく朗報だったろう。
水流が潰されたと人魚が理解すれば、すぐに別の攻撃がくる。貝殻で作ったドラゴンは、その焦りからか酷く不恰好だ。
しかし唯一、食に対する執着だけは一向に衰えることなく、視界に入った白雪に襲い掛かる。
「間違えんなよ、お前の相手は俺」
手筈通り、貝殻のドラゴンをエスパルダは見逃さない。氷津波に乗って突っ込み、勢い任せに人魚の頬を殴り飛ばした。
「悪いな、女に手加減する騎士道はオレの手持ちじゃねえんだよ」
友の手を砕かれた鬱憤を晴らすように、ドスの利いた声でそう吐き捨てた。
「やるじゃない、エスパルダ。あんたはそれくらいの方が見てて気持ちいいわ」
たまらなく腹が立っているのは白雪も同じ。一発キツいのをお見舞いしてやらねば気が済まない。
「巻き込まれたくなかったらさっさと離れて」
また捕食で回復されても面倒だし、あのヤンキーが人魚に傷つけられるのも気に食わない。だから、このまま止めを刺す。
氷津波だけをその場に残してエスパルダは退いた。白雪の繰り出そうとしているものは、相手を選べるほど細かな制御がきく代物ではないと分かっているから。
「懺悔は針山に抱かれてなさい」
二度目のエラー・スラッジ――全身を巡る憤怒の焔を乗せたそれは、威力も規模も先程の比ではない。
大量の尖晶石が人魚姫のいる一帯に次々と突き刺さっていけば、あっという間に小さな地獄が出来上がった。
幾重にも負傷を重ねた人魚が棘の雨から逃れる術はなく、針山の隙間からぷくり、ぷくりと水泡が昇っては、陽の光まで届かぬ内にぱちんと儚く割れていくのだった。
●人魚と柱の物語
寂しげな水泡を見送った猟兵たちは、当初の目的通りクラウドオベリスクの破壊に取り掛かった。
一度砕けた柱は、まるで角砂糖のようにあっけなく溶けていく。
ともあれクラウドオベリスクの破壊は完遂した。これで群竜大陸の発見にまた一歩近付いたことだろう。
こうして大海原での宝探しは幕を閉じることとなる。
あの人魚にとっての宝物はオベリスクだった。しかし猟兵たちにとってはどうだろう。
形ある物であれ、そうでない物であれ。猟兵たちは冒険の中でそれぞれの宝物を見つけることが出来たのかもしれない。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年07月20日
宿敵
『深海に住まう悪魔』
を撃破!
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