その夢は一体なんだったのか
噂話、というのは、往々にして尾びれのつくものだ。
語られるほどに余計なものがこびりつき、虚像と化す。
"それ"もまた、そんな虚像の一つなのかもしれない。
ーーーーーグリモアベースにて。
「ーー猿夢、というものを知っている人はいますか?」
そう猟兵たちに声をかけるのは、一人の少女…赤凪・風珀(人間のシーフ・f19216)だった。大きすぎる袖で口元を覆い、反応を示す猟兵の顔をみやる。
「猿夢。…都市伝説のひとつです。まぁ、しらないかたも聞くだけ聞いてください。その都市伝説にまつわる、予知を見たのです」
『猿夢』とは。
気が付くと電車の中のような場所で座っていて、動けない。後ろから、残酷な方法で乗客が殺されていく。
これは夢だ、覚めろと暗示をかけることで逃れることができるが……三度みると、自分の番が来て、目覚めることもできずに殺されてしまうという。
そんな都市伝説だ。
元は、ただこわい夢を見たと語られていたにすぎないのに、いつからかそれは死を招く呪いと化していた。
それは近年生まれた呪いではない。しかしながら、それを利用せんとするならず者がいた。
それこそが、オブリビオンだったのだ。
その呪いを利用し、邪神復活の糧にしようと目論んでいる。
「事件が起きているのは、UDCアースのある街。相次いで謎の死を遂げるとこちらに話が回ってきたのです。…夢を見た本人から、まるで呪いのように語り継がれ、その中で何人かが眠ったまま、心不全で亡くなるそうです」
赤凪は、ゆっくりと瞳を細めると、改めて耳を傾けている猟兵たちの顔を見回す。
それから袖口からそっと手をまさぐり出すと、持っていたものーー何かの写し紙を、手渡していく。
「それは、既に二度夢を見た方のリストです。……現地に向かい、現状の把握と事件の真相を…そして、邪神の復活を止めていただきたいのです」
そこまで言うと、赤凪はどうかお願いします、と深く深く頭を下げる。
予知を見た己には、なにもできないからと。ここで、助けを求める他、ないからと。
依頼を受けてくれるものには、心からの感謝と無事を祈り、見送ろう。
時巡聖夜
どうも、初めまして。時巡ともうします。
初シナリオなので至らぬ点はあるかと思いますが、よろしくお願い致します。
さて、今回の題材は『猿夢』です。
第一章では、猿夢について掘り下げるもよし、亡くなったかたの調査をするもよし、ターゲットと思われる方々に接触するもよし。
各々、猿夢の真実に向かうようなプレイングをよろしくお願いします。
なお、一章での進展により二章の目的が多少変わります。それについては一章を突破した際に。
それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。
第1章 冒険
『怪奇の影に邪神あり。謎を解明せよ。』
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POW : 科学的見解。全てプラズマです。
SPD : オカルト的見解。宇宙人の仕業です。
WIZ : 自分が犯人です。
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小鳥田・古都子
えっと……。オブリビオンが来る前にもう、夢に纏わる呪いはあったのね。
それ自体がUDNの仕業なのかな?
その辺りからまず調べてみようかな。
いつ頃から発生したのか、元になる話や事例があるのか、噂の広まってる地域や年齢層、それから呪いで実際に亡くなった人の情報……。
あと、どうして猿の夢って呼ばれてるのか、とか?
【情報収集】で、まずネットや雑誌のバックナンバーで大まかに調べてみます。
ある程度あたりをつけたら、呪いの噂について知ってそうな人達に会いに行って聞き込み調査します。
……どんな口実で聞こうかな。学校のレポートの為とか?
被害者の身内とか、不謹慎そうなら自分の友達も夢を見てて不安、とか言ってみます。
「まずは、情報収集から、だね」
小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)はそう呟くと、考えるように顎に手を当てた。
…猿夢の呪いは元からあったようだ。しかし、それはUDCの仕業なのか。はたまた別の要因なのか。それを調べるべく、彼女はネットを操り始める。
始まりはUDCでも、なにかの要因があったわけでもない。ただ単に"怖い夢"の話だった。遊園地にある子供用の電車に乗り込むと乗客が後ろから順番に…というだけ。それが、最初に見た本人から別の人へ、さらにそれがまた別の人に伝わり、いつからか三度目には死んでしまう、という尾びれがついていた。
その夢は話を聞いた人の心に住み着き、他人でありながら同じ夢を見せる。そしてまた別の人に伝わる。
「…地域も年齢も関係ない。詳細を知った夢を見る生き物ならみてしまうんだね」
しかし、調べるうちにわかったことがある。死を迎えるのは多感な思春期が多いようだ。そして、思春期かつ女性は少なからず噂話を好む。それは夢の話が拡散していく原因かもしれない。
それならば、聞き込みは――事件の起きている街にある、学校の近くでするのがいいだろう。
彼女はそう当たりをつけて、現地へ向かった。どう聞き込みをするべきか。学校のレポートを称してみようか。いや、それよりも、オカルト研究部とでも名乗ってみようか。
現地にたどり着けば、彼女はゆっくりと人の顔を見回し、人当たりのよさそうな女学生に声をかける。
「ねぇ、知っていたら聞きたいのだけど」
問うてみれば、女学生たちは各々に語りだす。
猿の人形が襲ってくる。いや小人が殺しに来る。いやいや、魘されてしまいに死んでしまう。
この学校の前だけでも、飛び交う噂は統一性があるようでわからない。
まだまだあやふやなあいまいな"噂"だけど、少しだけ、猿夢に近づけたような気がした。…あいにく、被害者の身内には会うことはできなかったけれど。
成功
🔵🔵🔴
箱守・瑠々子
呪いは……私の得意分野。猿夢が現実を侵食する呪いと化している……なんて、話を聞くだけならぞくぞくするわ。
でも、被害が出ているなら。まして邪心復活の糧にされようとしているなら取り除くだけ。
リストをもとに、実際に夢を見た人物に接触する。一度目と二度目の夢がどんな夢だったのか、詳細を確認するわ。都市伝説の猿夢と差異があるのかないのか
……。……そして夢を見た人物にどのような【呪詛】が掛かっているのか。
何人かに話を聞いて、共通点を洗い出したい。
……話を聞くのに理由が必要なら、研究のフィールドワークとでも。話すだけで楽になることもあるでしょうし、……噂話が媒体の呪いだとしたら私自身で呪詛を検分できるかも。
得意分野かつ心の沸き立つ依頼に、箱守・瑠々子(呪本の器・f19299)はくすくすと笑った。
しかし、それもすぐになりをひそめ、冷たく目を細めると渡されていたリストを見る。リストには数名の名前と、よくいる場所が記載されている。目を通しながら、菫のような紫色の瞳に感情を乗せることなく囁いた。
「…被害が――邪神復活の糧にされようとしている呪いなら、取り除くだけ」
そうして向かうのは、リストにあった女性二人組のよくいるという喫茶店。店の外から店内を見れば、ひどく顔色の悪い女性二人組をすぐに見つけることができた。彼女は場所を確認すると店内へ入り、二人組のもとへ向かう。
「…顔色がずいぶん悪いようだけど、大丈夫?」
声をかけられた二人は、最初戸惑うようなそぶりを見せるも、紫の瞳に魅入られたように彼女を受け入れた。
すぐさま本題である"猿夢"について問えば、暗い表情で重い口を開いて詳細を語ってくれる。
――一度目は、正直よく覚えていない。なんとなく、怖い夢をみたなぁ、とい程度。
二度目は、はっきりと覚えていた。いつの間にか乗り込んでいる電車に響き渡るアナウンス。後方に感じる狂気の気配に、人間の悲鳴。必死に夢だと思いながら、覚めろと思いながら震えていたら、アナウンスの声が言った。
『逃がしませんよ~』
それを最後に目が覚めてから、恐怖でしっかりと眠ることができなくなってしまった。
二人の口から語られる猿夢は言い回しや表現が違うだけで、ほぼ同じ内容だった。
話を聞きながら、じっと二人の気配を探っていた彼女は、どちらにも類似の呪詛の気配を感じ取れた。
しばらく恐怖におびえる二人から話を聞いた後、つたなく安心させるような言葉を告げてその場を立ち去ると、リストを再確認して次の対象者に声をかけ、また話を聞いて――繰り返すこと、3,4回。彼女は確証をもって結論付ける。
語られる実際の夢と、都市伝説の猿夢。その大きな差異は『アナウンスにて告げられる、一種の"死刑宣告”』だ。都市伝説ではあくまで次はない、というが、二度夢を見た人に告げられるのは、明確な詰みの宣告。
そして、それにより起きる弊害こそが呪詛であり、人々から生気を奪っている。おそらく、奪った生気を邪神への糧にしているのだろう。
情報をまとめた紙を見つめ、彼女はため息をつく。
悪意のこもった呪詛。自身で検分しようにも、どうやら対象にすらなれないのか、検分できず。
「…夢をみて、直にその悪意・殺意・恐怖を与えられることが、呪詛を受ける最低条件、なのね」
呪いにまつわる依頼と、すこし楽しみにしていたのだが、少々手を焼きそうだ。彼女は一人、そうぼやいた。
大成功
🔵🔵🔵
ジード・フラミア
メリア『フーム、実際のユメを見れたら、早そうデスカネ……ジード、悪いデスガ、スマホで調べたいノデ、腕借りてイイデスカ?』
ジード「いや、いいけど……実際に見て死んだりしないでね…」
メリア『ハハッ、1回ぐらいなら死なないのデショウ。大丈夫デスヨ…』
(メリアの手はスマホ反応しないので)ジードがスマホを使って、その夢自体を見る方法をインターネットで調べてみます。
できるなら、メリアがその方法を実行して寝てみます。
依頼の内容を聞いて、ジード・フラミア(人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933)は共にいる人形に宿る〈メリア〉と目を合わせる。
数秒の間、〈メリア〉がふわりとそのスカートを揺らして口元にその指をあて、考えるように呟いた。
『フーム、実際のユメを見れたら、早そうデスカネ……ジード、悪いデスガ、スマホで調べたいノデ、腕借りてイイデスカ?』
「いや、いいけど……実際に見て死んだりしないでね…」
『ハハッ、1回ぐらいなら死なないのデショウ。大丈夫デスヨ…』
彼はそう返しながらスマホを取り出す。そんな彼に〈メリア〉は明るく笑って見せた。
慣れた手つきでスマホを操作し、猿夢について――猿夢を見る方法についてを洗い出していく。
猿夢を見る"特殊な方法"については、見つけることができなかった。
そもそも猿夢とは、その話を直に聞いたり、詳細を聞いたりした際に≪恐怖を抱く≫あるいは≪その夢を鮮明にイメージする≫ことが夢を見る方法だった。
――いや、もしかしたら、イメージを深くしたら、見る確率は上がるのだろうか?
彼と〈メリア〉は、うんうん頭を捻らせ、思考を巡らせる。
『エェット?最初は、駅のホームにいる場合ト…イヤ、電車にいる場合の方が今回は多いようデスネ』
「…それから…アナウンスが聞こえる…」
『まァ、始まりサエ分かればイイデショウ。寝てみまショウカ』
あっさりと言って〈メリア〉は寝る準備に入った。彼も止めるつもりはないようで、ため息交じりに肩をすくめてその後を追う。
繰り返し猿夢の始まりを思い浮かべて、眠りについた。
結論から言えば、猿夢を見ることは叶わなかった。というより、弾かれたというのが正しいかもしれない。
〈メリア〉は電車のホームではたと気が付いた。
おそらくこれが猿夢だろう、と思いながらホームを探索する。無人のさびれたホーム。何も情報を得られず、電車が来るのをまとうとしたときに異変は起きた。
『“異物”はおかえりください~』
本来電車の到着を伝える間延びしたアナウンスが、拒絶の言葉をホームに響かせる。パァーッとホームに侵入してきた電車は、減速することなく〈メリア〉へ突っ込み、その視界を暗転させた。
次に目を開けた時には夢は終わっており、ただ不穏な気配を残すのみだった。
成功
🔵🔵🔴
波狼・拓哉
猿夢…よくある怪談話ってやつですな。電車という事から大正以降の説が…っと今はこの辺はあんまり関係ないか。まあ、元があった方がUDCとしてもやりやすいんだろうなぁ。
さて調査。猿夢なんて一応日本中どこでもあるけどこの街だけと…怪しいね。そして人に話は聞いてると…じゃあ、視点を変えるか。何故この街で猿夢がという点から探ってみよう。
この街の図書館や歴史民俗資料館を回ってみて猿夢の話が無いか調査。UDC組織の力を借りて地下倉庫とかまでお邪魔して回るとしよう。後は根気よく…かな。
後は…遊園地跡地と廃線跡も調べておくか。元ネタでは遊園地って話と電車という線から呪いの礎でもあるかもしれんし
(アドリブ絡み歓迎)
調査に伴い、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は始め、猿夢自体について思考を巡らした。しかし、すぐにはたと気付く。
それ自体については、もう散々調べている。重要なのはそれではない。ーーこの街だけなのだ、事件が発生しているのは。
「…怪しいね」
そう呟き、彼は歪に口端を吊り上げる。腕を組み顎に手を当てると、ゆっくりと目を閉じた。
ーー視点を変えよう。
この街についてを調べたら、ヒントがあるのではないだろうか。
思い至り、彼は調査しに足を動かす。探偵として、調査は自分の足で、だ。
図書館や歴史民俗資料館、そして地下倉庫にも足を伸ばし、資料を漁る。
しかし、猿夢はおろか、それに纏わる話もない。異常なほどに。
「おかしいな……」
この街には"夢"に纏わる話が何一つ見つからなかった。まるで意図的に隠されているかのように、何一つ。
ふむ、と彼はまた視点を変えてみることにした。UDC職員に礼をいい、その場を離れる。"夢"についてがみつからないのなら"場所"について探ってみよう。話の元である場所になにか隠されているかもしれない。
そうして遊園地跡地や廃線跡を回ったところで、彼はまたしても違和感を抱く。
なにかが胸のなかに燻り、訴えかけてきている。なにか、なにが?
考えて考えて…唐突に彼は踵を返した。まさか、いやでも、と絶えず思考を続ける。
目指したのは、一度訪れた歴史民俗資料館。再び訪れた彼に驚く職員に、この街の"古い地図"の複製を出すよう求める。
かくして手渡された地図を広げ、彼は額に汗を滲ませながらペンを走らせた。
「ーーやっぱり」
彼は、探索者としての性質か、それに気がついた。苛まれる狂気で、気がついた。
「この街ごと、【陣になっている】んじゃないですか……」
彼の書き込みした地図は。
すでになくなっている遊園地や廃線を含め、いくつもの遊園地や線路によって、巨大な【陣】が描かれていた。
大成功
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ジード・フラミア
良ければ追加でプレイングを
メリア『イヤー、ホームまでは行けたノデスケドネェ……』
ジード「……それって寂れていたんだよね?廃線か手入れのされていない無人駅……少なくとも古い駅なのかな?」
メリア『オオット、ユメではなく現で猿夢を探してミマスカ!?』
ジード「まぁ、夢の中じゃあ戦えないしね……」
という訳で、メリアが夢で行った駅があるのか現実で駅に行ってみて探します。
所変わって、先ほどまで実際に猿夢を見ようとしていたジード・フラミア(人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933)と〈メリア〉は考え込んでいた。
「……見れた、けど……」
『イヤー、ホームまでは行けたノデスケドネェ……』
門前払いを食らったような微妙な声音で〈メリア〉が呟き、うんうん唸る。イメージが足りなかったのか?否、あれは外野からの明らかな拒絶だった。
ふと、彼は一つ、疑問を抱いた。夢にしては、ずいぶんハッキリと記憶に残っている。最後の電車以外、まるで本当にそこに行ったかのようにーー夢ならば、もう少しあやふやになるのではないだろうか。
「……それって寂れていたんだよね?廃線か手入れのされていない無人駅……少なくとも古い駅なのかな?」
それは夢ではなく【現実にある】場所?ぽつりと彼が呟くと、〈メリア〉がパッと顔をあげる。
〈メリア〉の抱いていた違和感が、カチリとはまったような気がした。
『オオット、ユメではなく現で猿夢を探してミマスカ!?』
「まぁ、夢の中じゃあ戦えないしね……」
ゆるく言葉を交わし、彼らは街へと向かった。
いくつか地図を見ながら回ってみていると、〈メリア〉が唐突にすっとんきょうな声をあげる。驚いて彼が〈メリア〉を見ると、その目は一点を見つめていた。
「……?なにが……」
問いを口にしかけて、彼は口を閉じた。視線の先、二人の目に写ったのは。
ーー地図にない、けれど夢と相違ない、まさしく【猿夢の駅】だった。
大成功
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第2章 冒険
『鍵となる秘密の言葉』
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POW : 体力と根気を使って、聞き込みや資料あさりに尽力する
SPD : 知っていそうな人や、情報を得られそうな場所に目星をつける
WIZ : 事件の内容や魔法の知識などを基に考察を深め、推測する
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カンカンカンと、使われていないはずの猿夢の駅の遮断機が鳴り響く。
耳をつんざく音は、あるものには恐怖を、あるものには救いを、あるものには嫌悪を抱かせる。壊れたおもちゃのように、下がった遮断機は警告音を響かせ続け、なりやむ気配を見せない。
陣の中心、あるいは猿夢で見た存在しないはずの駅。
これをどうにかすれば、危惧されし邪神の復活を止められるかもしれない。
どこからかアナウンスのノイズが響き始める。何かを言っているようで、ノイズと警告音に掻き消される。不協和音。
思考を乱す音は、やまない。
波狼・拓哉
ここが噂の駅だね(ババーン)
…何か普通に入れて拍子抜けなんだが。まあ、手間が掛からないと考えりゃラッキーか。
さて調査…何処から調べよう…現実にあってアナウンスあるってことは誰か放送してるのか…?取り敢えず駅舎を中心に調べてみよう。
地形の利用状況から使われた跡とか失せ物探しの応用で何かないかとか第六感で気になるとことか手辺り次第にいこうか。
後何も分からない状況続くなら強制的じゃー!化け転がしな、ミミック!
『幸運』と『目星』辺りを期待しますか。『聞き耳』?いや聞いちゃダメなの聞きそうじゃん?
(アドリブ絡み歓迎)
ざり、と音を立てて陣の中心ーー噂の"駅"に足を踏み入れ、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は渾身のどや顔を浮かべる。
(ババーン)
心の中でおふざけ混じりに叫ぶも、彼のどや顔はつまらなそうな、気の抜けたような表情に変わる。
もっと複雑な可能性も考えていただけに、あまりに普通に入れてしまったものだから、拍子抜けである。
しかしそれをラッキーだと前向きに考えて、彼は調査を始めようかと騒々しい警告音とアナウンスのノイズに片耳を塞ぎながら駅に立ち入り始めた。
カンカンカンざりザザザざり、
不協和音の中、駅舎を探索し始める。寂れた無人駅には奇妙なほどになにも感じられない。それでも何かあるだろうかと目を凝らしていると、一つの柱になにかが刻まれているのに気がついた。それは、まるでなにかを数えるかのように刻まれた線。
「……犠牲者の数、とかじゃない、よ…な?」
不穏な考えがよぎり、かぶりをふって考えを振り払う。他にないかと足を動かしても、やはり不気味なほどになにもない。
ため息一つ、なにか確定したものがほしくなり、共にいるミミックに目を向ける。にやり、不敵な笑みを浮かべた。
「強制的じゃー!化け転がしな、ミミック!」
だって、刻まれた線以外なにも見つからないから。だけれども、なにかはあるはずだから。
心なしいたずらっ子のような笑みで彼はミミックへ、それに答えてミミックはサイコロに化ける。次なる彼の行動が失敗することのないように。
とたん、寒気。鋭く睨み付けられたかのような気配に、全身の血の気がざっと引いていく。
反射的に振り返ると、なぜ先ほどまで気がつかなかったのかーー黒ずんだ"なにか"で小さく、描かれたなにかの姿。
「……『うたを
』……?」
彼は描かれたなにかに掻き潰された、文字の断片を口にのせた。
大成功
🔵🔵🔵
ジード・フラミア
耳を塞ぎつつ、駅に近づきながら大声で喋り出す。
『ナンテ言ってるんデスカネェ!うるさくて聞こえないデスヨ!』
「……!誰かが放送しているのかな。」
『ナルホドー!誰かいるのかちょっと人形に偵察にいかせマスカ!!』
ということで、喋っている人、もしくは原稿を探しに、予備の人形にカメラを持たせながら駅内部を偵察させます。
ジードとメリアは不協和音から逃げるように少し離れて、できるならカメラの映像をリアルタイムで見てみます。
ようやく糸口となりそうな猿夢の駅を見つけたジード・フラミア(人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933)と〈メリア〉に、まるで拒絶のような警告音がーーそして、頭を割らんばかりのノイズのアナウンスが、圧をかける。
しかし、そんなことでびびったりする様子はなく、〈メリア〉は怒ったように駅に近づいていく。
『ナンテ言ってるんデスカネェ!うるさくて聞こえないデスヨ!』
「……!」
騒音に負けぬ大声で言い返すのを見て、彼はハッとしたように〈メリア〉に駆け寄った。
アナウンスが、現実でも流れている。それは、一つの仮説を導き出す。
「誰かが放送しているのかな。」
彼に言われて一度口を閉じた〈メリア〉は、瞬きを数回してからその言葉の意味を理解した。
右の手をグッと握ると、明るく声をあげる。
『ナルホドー!誰かいるのかちょっと人形に偵察にいかせマスカ!!』
そうと決まればなす事は一つ。予備の人形を操り、カメラをもたせると、人形はカタカタと小さな音を立てて駅に入っていく。
「……ぼくらは離れていよう。」
『そうデスネェ、うるさくて敵わないデスシ』
そんな会話の後、その場を離れる。
不協和音があまり聞こえない場所まで離れてカメラ映像を遠隔で映し出してるモニターに目を向けると、その画面は何故かひどくノイズが走っていた。
おかしい。このカメラはここまでノイズが入ったりしないはずなのに。
あからさまな妨害に、彼が僅かに表情を歪めるのと、〈メリア〉が声をあげたのはほぼ同時だった。
『ジード、ジード。音がおかしいデスヨ』
「え……?」
言われて、耳をすます。微かに聴こえるのみの不協和音が、ノイズが、小さくなっているように感じた。
それは、画面のノイズがひどくなると小さくなり、画面のノイズが収まると大きくなるようだ。〈メリア〉が音を聞いているのを視界の端におさめながら、彼は目を細め、画面のノイズがひどい場所で目を凝らす。人影は見付からないが、なにか書かれた紙を映しているようだ。
『……コレ、うた、デスカネェ……?』
「こっちは、文字かな」
不安を煽るような歌と、ノイズの奥の文字。〈メリア〉も音から意識を画面に移すと、じっと見つめる。
『…とめ、な、け……読めないデスネェ』
「……最期の、言葉を……?」
断片的な言葉にそろって首をかしげた時、パンッと弾けるような音と共に、画面が暗転した。ーー壊されたと悟るのに時間はかからない。
もとより、猿夢で拒絶をされているのだ。確信をもって異物だと、敵対するものだととられているのだろう。
「……ぼくらでは、これ以上情報を集めるのは難しそうだ。」
『……しかたないデスネェ、一旦待機シマスカ』
成果は、彼らの集めた幾つかの断片だった。
大成功
🔵🔵🔵
箱守・瑠々子
……電車は来ないのね?遮断機が鳴っているのに。この線路はどこへ繋がっているのかしら……。
まあいいわ、とにかく。
魔法陣の内容を読み解く。今までにわかっている事件の内容も手がかりにして、どこを壊せば……あるいは解けば、呪いが作用しなくなるのか、考えてみましょう。
アナウンスの内容は何かの詠唱か、それとも……。
……手がかりを集めてくるほうは体力のある人にお願いしたいわ。
で、……お願いするからには、頭脳労働で結果を出さなくてはね。
――猿夢の駅に現れた別の猟兵、箱守・瑠々子(呪本の器・f19299)は、警告音にわずかに首を傾げた。
鳴り続ける警告音、訪れる気配を見せない電車、どこからきてどこへ繋がっているのかわからない線路…疑問は尽きないが、彼女はそれよりも優先させることがあると思考を切り替えた。
ここに来る前に確認した【魔法陣】を読み解くべく、手がかりを頭の中で展開する。この陣の目的はわかっている。必要なのはその先だ、この陣の解除だ。
思考はめぐり、巡り、廻る。陣、猿夢、来ない電車、うた、最期の言葉。一つ一つ並べて置き換えて、答えを探る。
「…アナウンスの内容…、…うたを、とめ、な…」
まとめた思考の欠片を口にする。断片を繋げる。陣を読み解いて、断片を繋げた先にあったのは。
「うたを、とめなければ。どうか、最期の言葉を…」
うたを、止める。そして"言葉"を紡ぐ。――無力化に必要なのは世界の綻びを完全に崩すこと。綻びはどこか?最初に考えたじゃないか。
この線路は、どこに繋がっているのか。
地図に記されることのない、存在しているのに存在のない駅。そもそも、今いるこの駅が【ゆがんだ世界の綻び】なのだとしたら?
答えに至った彼女の行動は早かった。最初の疑問を解消すれば、解除への一歩だ。
線路に沿って、歩みを進めていく。警報音が遠くなり、遠くなり――片方は、廃線へ。もう片方は、音の切れ目と、不自然な線路の途切れ。
「ここね」
見つけた綻び。この綻びをどう崩す?"知覚した上でこの世界を揺らしてやればいい"のだ。あとは、誰かがうたをとめ、言葉を紡げばいい。そうすれば、すべてを止めることができる。
大成功
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小鳥田・古都子
夢の中で戦う訳じゃないのかな。
だったらいいな。ロジックが通用しない世界って苦手なの。
あのアナウンスとかが気になるね。調べてみようかな。
UC【エキスパートシステム】を使います。
頭蓋内に仕込まれた量子コンピュータとバイオコンピュータの機能を解放し【聞き耳】【情報収集】で機械の耳から入ってくるあらゆる音を解析。【暗号解析】してノイズキャンセリング。更に、超能力者としての生身の脳の遠知、過去知能力で【世界知識】を収集。この駅についての知識を得て、統合解析。あなたは何を言ってるの?
ついでに思いつきで、意味のある音を全てキャンセリングしてノイズだけを抽出、分析とかしてみます。ノイズにも意味があるのかも。
現実に猿夢の駅を見つけられ、小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)は内心で胸をなでおろした。否定するわけではない、単純にロジックが通用しない世界が苦手なのだ。だから現実にあることにほっとしたのだ。
苦手なものでないと分かれば、張り切って対応に向かえる。ふむと顎に手を当てて、彼女は気になるものに意識を向けた。
「…アナウンスとか、調べてみようかな」
あれはノイズがひどいけれど、無意味なノイズだけじゃない。解析できれば、きっと何かのキーになる。どこか確信をもって、彼女はユーベルコードを使った。脳裏で量子コンピュータが、バイオコンピュータが激しく稼働を始める。
耳をすませば、ありとあらゆる音がデータに送り込まれ、リミッター解除された電子が解析を始める。同時進行で唯一超能力を保持していた脳みそで【世界知識】を集めて統合すれば、導き出せるはず。
「…あなたは何を言ってるの?」
"それ"は呪歌だった。生気を吸い取り、夢を見せ、底の底まで吸い取る。吸い取ったものは、この地にあるという陣に届き、邪神に捧げられる。血肉は必ずしも必要ではない。必要なのは呪歌によって集められた贄。
ならば、集められた贄を届けるポンプの役割であるこのアナウンスを壊してしまえば、うたを止めてしまえば、阻止することができる。
同時に、一つ気が付いた。
「――壊れる」
急に、いくつもの"生気"が集ったから、一人分のパイプである呪歌が処理しきれないことに。もう、持たない。きぃん、と彼女のなかのコンピュータがその瞬間を捉えた。
とたんノイズが激しくなる。ふと思いついて、ノイズだけを抽出してみる。本当にただの思い付きだった。しかし、それが【答え】だった。
「――あなたを、望まない…」
分析するまでもない、激しくなったノイズは、最期にそう叫んだ。
思わず彼女がその言葉を復唱した瞬間。
パリン、となにかが割れる音が一帯に響き渡った。
大成功
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第3章 ボス戦
『かみさま』
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POW : ここにいようよ
全身を【対象にとって最も傷つけたくないものの姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : やくそくしよう
【指切りげんまん。絡める小指】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ : きみがだいすきだ
【対象が望む『理想のかみさま』の姿と思想を】【己に投影する。対象が神に望むあらゆる感情】【を受信し、敵愾心を失わせる数多の言葉】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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――どうして、どうして、どうして?
歪んだ世界の綻びの中で、そういう何かの声がする。
復活を果たせなかった半端な≪かみさま≫は、ひどく悲しそうな声をしていた。
――どうして?ここにいようよ、ずっと、ずっと、ずっと。
ここにいれば、いいのに。
そう心に囁きかけてくる≪かみさま≫の姿を、猟兵たちは目視する。
それは、黒ずんだなにかで描かれた姿だった。されど、その姿は不確定でぼやけて、真実の姿を見せることはない。
ここにいるわけにはいかないのだ。半端に蘇ってしまった≪かみさま≫を、この手で再び眠りにつかせなければならないのだから。
ジード・フラミア
「なんだろう…あのかみさま、とても悲しんでる……」
『さァ?実際どうナンデショウネ。ホントに悲しんでるのか、ソレトモワタシたちを騙そうとしてるのか。 …タダまア、どんな生い立ちデどんな性格でも、あのかみさまはオブリビオンデス。コッチの世界にいてもらったら困るのデスヨ。』
『……デモ、ソウデスネ。悲しそうなかみさまにワタシも贄を捧げマショウカ。起きる為デハナク、一緒に眠る為の贄ヲ』
【共に寝るぬいぐるみ】を使用してかみさまに共に眠る為のぬいぐるみを捧げます。眠る先で寂しくないように……
イヤまァ、戦闘の際に多少デモ動きが鈍ればイイなトモ考えてマスガ
声がする。
その声があまりに悲しそうだから、ジード・フラミア(人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933)は思わず目を細めて≪かみさま≫を見つめた。
「なんだろう…あのかみさま、とても悲しんでる……」
そう口にすると、まるで滑り込むように心の隅が悲しく軋む。悲しい。わけもなく悲しみが押し寄せてくる。それは何だろうか、この≪かみさま≫の心だろうか。
『さァ?実際どうナンデショウネ。ホントに悲しんでるのか、ソレトモワタシたちを騙そうとしてるのか』
その不可解な悲しみを打ち消すように〈メリア〉は肩をすくめて切り捨てる。それでも、悲しみに満ちた声は消えることはなく、彼の心に、そして〈メリア〉の心に忍び込もうとしてくる。
あるいは、何かを盗み取ろうとするかのように。
――ねぇ、きみがだいすきなんだ。
――どうして、ここにいてくれないの?
ささやき、侵し、その心の陰にあるものに成り代わり、まるで捨てられないよう必死に縋り付く子供のように。ぐにゃぐにゃとその姿は歪み、なにかに成り代わろうとする。
じっとそれを見ていた〈メリア〉が、小さく息をつく。
『…タダまア、どんな生い立ちデどんな性格でも、あのかみさまはオブリビオンデス。コッチの世界にいてもらったら困るのデスヨ。』
どんなに悲しくても、どんなにここにいてほしいと願っても。ナニカに成らなければいられないオブリビオンがこの世界にいることは許されない。かわいそうな未完成の≪かみさま≫に、手のひらを握りこみ瑠璃の瞳を閉ざした彼。一瞬だけそんな彼をみて、紅玉の瞳を≪かみさま≫に向ける〈メリア〉。
いろいろ考えることはある。いまなお成り代わらんと歪み続ける姿は、見ているだけでなにか自分を締め上げて、動きをとれなくなりそうだ。どうにかして、対処しなければ――。
『……デモ、ソウデスネ。悲しそうなかみさまにワタシも贄を捧げマショウカ。起きる為デハナク、一緒に眠る為の贄ヲ』
ふむふむと顎に手を当てて、そんなことを言ってみる。やさしく、両の手を開いて〈メリア〉はそっとユーベルコードを発動させた。〈メリア〉の意思に従い、柔らかくふわふわとしたちいさな【ぬいぐるみ】たちが≪かみさま≫の周囲に現れる。悲しみに寄り添うように――その身を束縛するように――数十ものぬいぐるみは≪かみさま≫を包み込む。
――どうして。どう、し…て……。
≪かみさま≫の声は、心なし小さくかすれた。
大成功
🔵🔵🔵
小鳥田・古都子
幻覚を見せてくる様な相手なのかな?
だったらUC【電探装置】使用。レーダーシステムを作動させます。
眼を閉じて、電磁波の反射だけで周囲を把握。敵の位置を探ります。
神様を否定はしないの。存在しない事を証明するのは難しいもん。
でも、意思を持った超越者が世の中に干渉してると考えると、ちょっと嫌だな。法則と認識だけでうまく動いてる世界が好き。
だから、いてもいなくてもどっちでもいい、見守ってくれてるだけの神様がいいな。
相手に対して、レーダー波を集束させたメーザー光線で攻撃。周囲の地形を分析して、反射による多方向からの包囲攻撃を仕掛けます。
これ以上、あなたの世界に誰も送る訳にはいかないの。ごめんね?
小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)
――どうして、どうして、どうして、どうして。
繰り返される≪かみさま≫の声。白い眼を小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)に向けると、その姿がぐにゃりとひずむ。
それを見上げていた彼女は、ゆっくりと眼を閉じた。小さく装置の起動音がする。レーダーが発する電波を元に≪かみさま≫を捉え、彼女は口のはしに笑みをのせた。
「否定はしないの」
泣くように繰り返していた声が、どこか呆然とおさまる。
否定はしない。きっと存在しているのだろう。≪かみさま≫がいないことの証明はまさに『悪魔の証明』だから。
あぁ、でも。そんな不確かなものに干渉されているよりも、法則と認識のなかでいたい。
だからこそ、彼女の抱く理想の≪かみさま≫は。
いてもいなくてもどっちでもいい、見守ってくれてるだけの神様。
――きみがだいすきだ。きみたちが、だいすきなんだ。
彼女の望みを投影した≪かみさま≫は定形することなく歪み続ける。彼女のなかに、定形の神様はいない、望む言葉はないから。
ゆっくりと集束されるレーダー波は、変わらずに≪かみさま≫を捉えながらメーザー光線へとかわる。
周囲の地形の分析は既に済み、あとは放つだけ。眼を閉じたまま、彼女は少しだけ首を傾ける。かわいそうな、哀れな≪かみさま≫へ。
「これ以上、あなたの世界に誰も送る訳にはいかないの。ごめんね?」
その言葉を餞に、放たれる幾つのも光線は乱反射を繰り返し≪かみさま≫へ撃ち込まれる。
≪かみさま≫は避けることなく、それらをその身に受けた。なぜなら、いまそこにいるのは『干渉することを望まない』彼女の思いを投影した≪神様≫だったのだから。
大成功
🔵🔵🔵
波狼・拓哉
んー…まあ、色々あったんでしょうね?全くもって興味もわかんけど。
じゃ、噛み/咬み/神/守/皇/神 殺そうか。化け喰らいなミミック。かみさまだろうが何だろうが目の前にいるのなら殺せないどうりはないね。つーかまず理想の神様が特にねーわ。…ミミックに喰らい尽くされたら一応かみさまにはなるのか?存在を証明するためにその存在を削れるのかね。
自分は衝撃波込めた弾で撃って牽制しておこう。動き止まれば傷口抉るように連射しとくか。
すまんね、少なくともここは俺にとっちゃあ狂気が足りないわ。それだけでも俺はあんたを否定するのには十分なのさ。
(アドリブ絡み歓迎)
歪む≪かみさま≫は、己を確立させんと標的を変える。その真白き眼は、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)を捉えた。ボロボロと涙のような何かをこぼしながら、彼の中から何かを模倣しようと顔をわずかに寄せ――引く。
そこには、つまらなそうな、表情の変化はないのにひずんだような彼がいた。ざり、と一歩彼が近づくと、≪かみさま≫もすっと滑るように距離をとる。
――なんで、どうして?
そんな≪かみさま≫の声に、彼が揺れるはずもなく。細められた目は心の底からの"無関心"を宿していた。
「んー…」
こきりと軽く肩を鳴らして、彼は首を傾ける。悲しそうな声に向ける同情もなにもない。ただただ無関心な、空虚な言葉を口にする。
「まあ、色々あったんでしょうね?全くもって興味もわかんけど」
あまりに空虚なそれは、≪かみさま≫をさらにゆがめた。存在を、否定すらされない。在るとも無いとも定義されることはない。
それは、他者の理想に生きる≪かみさま≫の力を根こそぎ奪うような"空虚"だった。
突き付けられる指先すら、捉えているようで≪かみさま≫を捉えることもない。
「カミ【噛み/咬み/神/守/皇/神】殺そうか。化け喰らいなミミック」
反響する一つの音にして数多の意味を含む彼の声に、ミミックがその姿を変える。
それは狼に見えた。しかし、狼の姿から放たれる黒く染まった影の顎は一つではなく、あまりに巨大だった。
反射か≪かみさま≫がそれを避けるように身をよじるとほぼ同時に、彼自身の手から衝撃波が打ち放たれる。数発の弾は≪かみさま≫が動くことはおろか、そこにあることすら許さず。
――どうして、どうして、どうして うしてどう てどうし 。
悲鳴のように繰り返される言葉は影の顎に喰らわれ存在の欠片とともに消える。
「すまんね、少なくともここは俺にとっちゃあ狂気が足りないわ」
狂気が足りない。それだけで、彼が≪かみさま≫を否定するのに十分な理由。
そんな欠片ほども肯定されることのない無慈悲な弾と牙は、≪かみさま≫を穿った。
大成功
🔵🔵🔵
アレクシア・アークライト
・UDCからの応援。
残念だけど、貴方といつまでも一緒にいるわけにはいかないわね。
だって、貴方は単に呼び出されただけの存在。
予知によれば、都市伝説を利用して貴方を呼び出した奴が他にいる筈だもの。
さっさと倒して、そいつを探しに行かせてもらうわ。
・力場を展開し、敵の存在位置を正確に把握。
・念動力により相手の動きを制限し、光属性を付与した攻撃を叩きつける。
私にとって最も傷つけたくないものっていうと……この世界そのものかしらね。
うん、世界そのものになれるなら、≪かみさま≫って認めてあげてもいいわ。
でもそうなったら、私達も貴方の一部になるわけだから、“ここにいようよ”って台詞に意味がなくなっちゃうかしら?
「残念だけど、貴方といつまでも一緒にいるわけにはいかないわね」
こつり、と足音を立ててそう声を上げたのは、先ほどまではいなかった存在――アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)、UDCからの応援で訪れた彼女だった。
白い眼と赤い瞳が絡み合い、互いを互いの視界に収める。トントンとつま先で地を打ち、彼女の目がゆっくりと細められた。
――どうして?
「だって、貴方は単に呼び出されただけの存在」
用があるのは貴方≪かみさま≫ではない、その背後で糸を引いているモノだ。地を打つつま先で力場を展開していた彼女は、≪かみさま≫の位置を正確に把握し、その存在を捉える。細められていた赤が光り、力をためていく。
一歩、距離を詰める。
――いやだ。やくそく、やくそくしよう。
きみののぞむりそうになるから、きみをちょうだい。
闇を固めたような体から伸びて出た腕が、その小指を立てて彼女に突き付けるように寄せられた。されど、彼女がその小指を取ることはない。
まっすぐに≪かみさま≫を捉える赤い目が揺らぐことはない。
「…世界そのものになれるなら、≪かみさま≫って認めてあげてもいいわ」
この世界こそが、彼女にとって最も傷つけがたきもの。そうなれないのなら、≪かみさま≫を≪かみさま≫と認めることもない。
しかし、それは≪かみさま≫の存在自体を揺るがすモノ。ノイズが走ったように歪んだその姿に、彼女がまっすぐに腕を伸ばし、その右手を指でっぽうのように握りこみ、人差し指を突き付ける。
瞬間、彼女の目に囚われた≪かみさま≫は動きを止めた。ため込んだ力が指先へ集まり、激しい光を走らせる。
「私の全てを込めた一撃、貴方なんかに防げる代物じゃないわ」
――いやだ、いやだいやだいやだ あ。
「…BANG(バン)」
その声とともに打ち出される光属性を纏った攻撃は、あたりを光で眩ませるほど強く。その光は闇をも掻き消すほどの勢いで広がった。
眩んだ視界があたりを正常に映し始めたころ、その地に呼び出されていた存在の姿はない。
。
。。
。。。
――――――そして。
その街を蝕んでいた≪かみさま≫も、猿夢の闇も、強い光で掻き消された。
街に、平和が訪れたのだった。
失われた命は戻らずとも、奪われていた生気は戻り、喪失に咽ぶ夜を超えた街は、前を向いていく。
―――fin.
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年07月21日
宿敵
『かみさま』
を撃破!
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