男は、実にふらふらと歩いていた。
先程呑み屋であけたのは五合ほどだっただろうか。千鳥足で家路を辿る最中、見つけたのは見慣れない道であった。
「こんなぁとこにぃ、道なんてぇ、あったかなぁ」
男は鼻歌交じりに、そして好奇心に負けてそちらへと入っていく。抜けたのは大門。そしてその奥に広がっていたのは、弁柄格子の並ぶ花街だった。
「ひょー、なんてぇ、いいとこだぁ」
酒で高揚していた気分がさらに急上昇する。男がさらにふらふらと歩んだその先で、美しい花魁が手招いていた。
男は意気揚々と手招きのままに、その遊郭へと吸い込まれていく。
それから後、街でその男の姿を見たものはいないという。
●グリモアベースにて
ざわめくグリモアベースに、一人のケットシーがやってくる。
彼は羽織を靡かせその場にあった椅子にぴょんと飛び乗ると、目前に集まった猟兵達へ説明を始めた。
「皆の衆、よく集まってくれた。それがしはケットシーの剣豪、久遠寺・篠だ。早速だが、皆の衆にはサムライエンパイア世界に向かってもらい、オブリビオンの根城となった花街を壊滅してもらいたい」
そう言うなり、篠は机の上に地図を広げた。
地図に主に記されているのは三つ。街から繋がる、竹林の間にある細めの道と、そこに構えられた大門。さらにその大門を抜けた先にある、遊郭五建分の花街だ。
「この街で、最近男の失踪事件が多発している。その年齢は若者から年寄りまで幅広く、身分なども問わない。今まで原因がわからない連続失踪とされていたが、この度の予知によって、それがオブリビオンの仕業であることが分かった」
篠はまず、地図上の大門を、丸い手でトントンと叩く。
「皆の衆にはまず、オブリビオンの根城である花街へ向かうため、警備が配置されているこの大門を抜けてもらいたい。花街には結界でもあるのか直接転送が出来ず、大門は猟兵と藩主の兵を退けるために設置されているようだ」
そう言ってケットシーは腕組みをする。
「大門を正面から抜けるには、猟兵や力ある者であるとバレてはいけない。さらに、女性は男装する必要があるだろう。身のこなしに自信がある者は、裏をかいての侵入を試みても構わない。ようは抜けられればそれでいい」
しかし、と、篠は間を開けて強調する。
「この大門で警備にあたっている者は、オブリビオンではなく、騙され、雇われた人間だ。命を奪ったり、怪我をさせたりしないでやって欲しい」
篠がそれから提示したのは、小さな花魁の姿絵だった。ただし普通の花魁ではなく、頭に猫の耳が、臀部あたりからは二本の尻尾が伸びている。
「花街に数多巣食っているのは、この『猫又花魁』だ。大門を抜けたらこいつらを倒しながら進み、花街のどこかにいる首魁を倒してくれ」
篠は広げていた資料を全て回収すると、それらをまとめて文にし、表に『依頼状』と認める。
「これ以上、被害に遭う者を生んではならない。皆の衆、よろしく頼んだぞ」
三橋成
皆様こんにちは、三橋成(みはし・せい)です。
今回は大門突破の後にオブリビオンが巣食う花街を壊滅していただくシナリオになります。
花魁というだけあって色っぽい技を使ってくる敵ですが、色っぽいを越える描写をすることはございませんのでご了承ください。
第1章では大門の警備を突破していただきます。
対応の例が能力ごとに提示されておりますが、例は気にせず自由に行動いただければと思います。成功判定は、プレイングが妥当かどうかで判定いたします。
皆様と共に格好良い物語を紡いで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『オブリビオン城への潜入』
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POW : 門を破るなどして無理やり潜入する
SPD : 潜入口を探す、夜陰に紛れ城壁を越える
WIZ : 門番など働かされた人々を説得・買収する
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春乃・菊生
アドリブ等々歓迎じゃ。
[WIZ]
やれやれ。男を誑かす猫又、のう。
まあ、妖怪(オブリビオン)が相手とあっては誑かされるのも仕方がないかの。
さて。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
何はともあれ、先ずは中に入らねばの。
……ふむ。
とは言え、男を誑かす手管なぞ知らぬしのう。
うむ。此処は誠意を示し、正直に事情を打ち明けて入れて貰うとしよう。
御免。
この大門は花街に繋がるとは真で御座いまするか。
我は菊生。見ての通りのしがなき白拍子の身に御座いますれば、此方に芸を売りに参った次第。
どうかお通し願えませぬか。
(門番と正面から目と目をを合わせ、殊勝な態度で懇願する)
まあ、売りに来た芸は猟兵としての業のほうじゃがの。
アルファ・ユニ
まぁユニ見目がこれだし男装は訳ないけどさ
男好きなオブリビオン?気持ち悪いったらありゃしないね
服は今着てるものと同じもの、スラックスにだけ履き替えた感じ
潰すほどないけど胸も潰して
会話してバレたらおしまいだから声の周波数帯も少しいじっておく。
外向けの気さくな話術で介入するのが1番いいのかもしれないけど話す程きっとボロが出るからそこ(信頼感等)はUCで少し補って
聞かれた最低限だけ答えてしれっと通るダウナー系美青年でいこうか?
…自分で言うのもあれだけどユニ結構美形の部類に入ると思うし
もしUCが深くかかって(かからなかったとしても)
変な趣味(ホモ)に目覚めさせたらごめんね?ユニ男じゃないけどさ
鈴木・志乃
UC発動
……ガチで【変装】するよ
胸はサラシで巻いて、線の細さもひょろい男として【目立たない】ように着飾ろう
声音も【歌唱】の要領で変える
私の役者としての技がどこまで通用するか
【言いくるめ、礼儀作法、コミュ力】
すこーしばかり、酒でも持ってサ
こう……くいっと
ははは、旨いなァ
しっかし、旨くても独りじゃあ寂しくて敵わねェよ
なぁ、兄さん
俺は夢が見たい
俺は生まれてこの方、恋というのしたことが無ェ
それは落ちるとぼおっと体が熱くなり
頭はゆでダコみてぇになって
すっかり虜になっちまうらしいじゃねえか
いいねえ、恋
してみたいねェ
俺のことを惚れさせてくれるヒト
会ってみてぇな
嗚呼
寂しくてたまんねえや
見張りの【優しさ】を煽る
天方・菫子
編笠に髪を一束にして隠し、顔も隠れるように深くかぶります
着物は男性用の着物を着用 羽根も髪の花も隠します
武器は【戻り花】は懐へ隠し
【花散里】は女性用の着物でくるみ、その上からさらに布でくるみます
【目立たない】ように注意を払いながら大門へ
声をかけられれば、できるだけ低い声で
「花街の皆様へ新しいお着物をお持ちしました」
綺麗な着物は喜ばれるでしょう、などと商人風に
布を検査されても一見すれば女性用の着物が詰まっているように見えるはず
【第六感】を働かせながら相手が不審に思いはじめる前に侵入
中にさえ入っちゃえばなんとかなる!
アドリブ歓迎です
●芸を売りに
太陽は、天辺を過ぎ西に傾き始めていた。
堅牢強固な高き大門の前に立っていた警備の男二人は、前方から歩いてくる女の姿に、手にしていた槍をお互いに交差させた。
「女、止まれ、この先には女人の立ち入りは禁止されておる」
そう声をかけながら、しかし、警備の二人の視線は自然と女の姿に釘付けになった。
女は美しき長い紫の髪を持ち、その髪は太陽に映える浅黒い肌によく似合っていた。顔立ちは整っており、女性にしてはすらりと背が高い。
警備を担っているだけあって体格の良い二人だからこそ、ようやく見下ろしている様子である。
女は足を止め、真っ直ぐに二人を見据えた。その、髪と同じ紫の瞳の妖しさが、僅かに二人を圧倒する。
「御免」
そう口を開いた女の名を、春乃・菊生といった。
「この大門は、花街に繋がるとは真で御座いまするか」
右側に立つ男を、仮にここでは右近と称そう。右近は頷き答えた。
「その通りだ。だからこそ、この先に女を通す訳には行かぬ、引き返すが良い」
ああ、と、菊生は自身の胸元に手を当てる。
「それは良かった。我は菊生。見ての通りのしがなき白拍子の身に御座いますれば、此方に芸を売りに参った次第。どうかお通し願えませぬか」
菊生が自称した通り、彼女は簡素な水干を身に纏い、立烏帽子を被っている。確かに誰がどう見ても白拍子には違いない、が。
警備の二人はお互いに目を見合わせる。そして、今度は左近が口を開く。
「芸を売りに、とは……このさきで芸を売るというのは、ただ舞をすれば良いというだけの話ではないぞ」
「承知の上で御座いまする。どこへも行く先のない身の上故、どうか……」
菊生は左近と視線を合わせ、懇願と言って差し支えない様相で訴えかける。
そんな彼女の様子に、警備の二人は改めて顔を見合わせた。
「女は通すなと言われてはいるが……花街に働きに来たという女を追い返すのも可笑しな話ではないか」
「うむ、雇う雇わぬは中の者に決めてもらえば良い話」
お互いの合意が取れたようで、二人は交差させていた槍を引くと、大門を開いた。
「通るが良い」
「有難う御座います」
菊生は深く頭を下げると、足音の立たぬ身のこなしで門を越え、花街へと入っていく。
その伏せた顔に、僅かな笑みが浮かんでいた。
「……まあ、売りに来た芸は猟兵としての業のほうじゃがの」
●新しきお着物を
編笠を目深に被り近づいてくる男物の着物を纏った小柄な姿に、警備の二人は無言で槍を交差させた。
編笠に無難な男物の着物、背に風呂敷で背負う荷物、という格好はありふれているが、だからこそ、その姿はあまりにも怪しかったからである。
「そこの者、止まれ、顔と荷を改める」
変わらず下を向きながら、編笠の下でその者、天方・菫子は澄んだ蒼き目を瞬かせ必死に頭を巡らせていた。
何しろ菫子の顔立ちは愛らしく、どう見ても男には見えないのだから、顔を見られる訳にはいかぬのである。
「おれは、商家の小僧でして……花街の皆様へ新しいお着物をお持ちしました」
菫子は極力声を低めそう言いながら風呂敷をおろし、中を開いて見せる。
風呂敷の中には言葉の通り美しい女性物の着物が詰まっていた。
「なるほど、確かに着物だが……そなたは誰の招きで来たのだ」
「ただ着物を売りに来た小僧です故、残念ながら招きはございませんが、綺麗な着物は皆様に喜ばれるでしょう」
その問いの答えを聞きながら、左近が身を屈めて菫子の顔を覗き込もうとした。
が、咄嗟に荷物を再び担ぐふりをして顔を隠すことに成功する。
「そなた、顔を見せぬか」
「おれの顔には醜き傷がありますので、見ないほうがよろしいかと」
「我らは武士である。傷などなんの障りもない」
最早進退窮まる。
菫子はぎゅっと目を瞑ってから、アッ!! と大声を立てた。指さしたのは、自身の後からやってきた目立つ人の姿。
警備二人の目が思わずそちらへと向いた、その瞬間、菫子は脱兎のごとく駆け出すと、入ってしまえばこっちのものだとばかりに大門を開けくぐる。隙を突いたその行動は、勘の良さの賜物だった。
「おい、待て!」
警備は制止の声を上げた。が、追いかけて来なかったのは、次に歩いてくる者の姿が、どこか目を引く存在だったからだろうか。
●美しき男
菫子の次に道の先からやってきたのは、小柄で華奢な姿だった。
昼過ぎの太陽の下、白い肌が眩しい。陽に透ければこちらも藍の色を濃くする髪に覗く金の瞳が、右近を見ていた。
その者の顔立ちは男とも女ともつかずに中性的。ほっそりとした体つきと、背や華奢な加減は女のようだが、女特有の膨らみはなく、如何とも判断がつきにくい。
警備の二人は槍を交差させ道を閉ざした。
「そこの者、止まれ。身元を改めさせてもらう」
女、とも男、とも断定しなかったのは、二人の判断のつかなさの証明のようである。
「おや、ここは警備が厳しいんだね。ユニは遊びに来ただけだよ」
其の者、アルファ・ユニは実のところ女であった。
しかし、ミレナリィドールである彼女は今この瞬間、自身の声の周波数を弄り、男の声を発した。
その、見た目の中性具合から言えば随分と低かった声は警備の困惑と警戒を和らげた。端的に言えば、『あなたは男ですか? 女ですか?』という無礼なことを聞く前に『ああ、男か』と納得できた安堵である。
「この先に何があるか知っているのか」
「花街だろう」
「何をしに?」
「花街に遊びに来たと言ったら目的は一つにきまっているよね」
左近とアルファが問答をしている最中、右近はまじまじとアルファを見ていた。声で男だろうとある程度納得出来たものの、この容姿の中性的な具合がどうも気になる。真で男であれば、これだけ華奢であれば危険は少なそうだが……と。
「そなた本当に……」
右近がそう疑惑の声を上げかけた瞬間、アルファの金の瞳が再び右近を捉えた。
そして、そのどこかアンニュイな眼差しから送り込まれる感覚に、右近の感情が揺さぶられる。
それは、根拠のないアルファへの信頼。まるで彼に運命の相手に出会ったかのような衝撃を与えたその物の正体は、実のところアルファが放ったユーベルコードである。
「い、いや、もう良い」
右近が慌てて首を振り、槍を引くと大門が開かれた。
「どうも」
アルファが足早に門を潜ろうとしたその時、右近が彼女の手首を握った。
バレたか。一瞬の焦燥が沸いた次の瞬間、アルファは右近の顔を見て目を細めた。
「ごめんね、ユニそっちの趣味はないんだ」
手を振り払い、アルファは振り返ることなく歩みを進める。右近は恋する男の顔をしていたもので。
●俺は夢が見たい
禁忌の香りのする恋に落ちかけ、一瞬でフラれた傷心の男、警備の右近は、こちらへ向かってくる人影の、体の線の細さにため息をついた。
背の高さも体つきもあまりにも先程の青年と似ている。
当たり前だろう。今こちらへ向かってきている鈴木・志乃もまた、男装した女性であるのだから。
男女の区別がはっきりとつかず、警備の二人は槍を交差させて行く手を阻んだ。二連続で女とも見える男が偶然来るとは思えない。
「そこの者、止まれ。身元を改めさせてもらう」
いつものようにそう声をかけたのは左近。
しかし、志乃は歩みを止めずに左近にふらふらと近寄り、笑った。
「なんだぁ、兄さん鯱張ってさ。兄さんもすこーしばかり、酒でも持ってサ。こう……くいっと。ははは、旨いなァ」
その声は低く腹から出されている。そして、何より志乃の酔っ払いの演技は完璧だった。
酒の匂いがしようはずもないのに、左近が顔を横にそむけた程に。
「……しっかし、旨くても独りじゃあ寂しくて敵わねェよ」
酒を煽って上機嫌な様子だった志乃の声が、急に潤む。そして、左近が制止する前に、志乃は左近の胸ぐらを掴んだ。
「なぁ、兄さん。俺は夢が見たい、俺は生まれてこの方、恋というのしたことが無ェ……それは落ちるとぼおっと体が熱くなり、頭はゆでダコみてぇになって、すっかり虜になっちまうらしいじゃねえか」
胸ぐらを掴んで、ガクガクと揺さぶる。その熱弁ぶりは見る者の哀愁を誘う。
「に、兄さん分かったから……」
左近が志乃の手を離させようとそう声を上げかけた瞬間。
「俺も分かるぞおっ」
傷心の男、右近が共鳴した。
「俺も夢が見たいいいぃぃっ」
「いいよねえ、恋、してみたいねェ。俺のことを惚れさせてくれるヒト、会ってみてぇな」
「俺は会ったけど、違ったんだよぉおおっ」
酔っぱらいと傷心の男の交互の謎の共鳴を果たした管巻きに、たまらず左近が門を開く。
「もういいからお前通れ」
その左近の眼差しは哀れみに満ちている。
「嗚呼、寂しくてたまんねえや……」
志乃はぽつりと呟きながら門をくぐり、花街への侵入を果たした。
そして背後で門が閉じた時、彼女はふっと息を吐くと、思わず振り返りながら目を細める。
「……良い方達でしたね」
大成功
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第2章 集団戦
『猫又花魁』
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POW : ウチらとイイコトするニャ♪
対象の攻撃を軽減する【お色気モード】に変身しつつ、【欲望のままに相手を襲うこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : さあ、いい夢見せてあげるニャ♪
【キセル】から【催眠効果を持つ桃色の煙】を放ち、【昏睡させて意識を失わせること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 秘儀、「ねこまたぎ」だニャ♪
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【頭に乗るか跨ぐかすることで、自分の下僕】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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一般人が警備していた大門を通ってしまえば、最早遠慮することはなかった。
猟兵達が花街にある遊郭の中へと入れば、そこは花魁の姿で溢れている。
勿論、ただの花魁ではない。耳と尻尾を持つ妖怪、猫又花魁。そして彼女達もまた、侵入者が猟兵であるということを瞬時に理解したようであった。
「ウチらと、イイコトするニャ♪」
猫又花魁はしかし楽しそうに笑い、猟兵達へと駆け寄ってくる。無論、言葉通りの意味ではないことは明白だ。
春乃・菊生
アドリブ、共闘等々歓迎じゃ。
[WIZ]
ほう。これはこれは。
随分とまあ、群れに群れたものじゃ。
……しかし、こうも群れておっては喧しくて敵わぬの。
秘術ノ壱。遊郭の内を進みながら歌舞を演じて、
(呼べる限りの)鎧武者の霊を呼び出し、その武具に【破魔】の力を宿らせる。
呼び出した武者らには【なぎ払い】【串刺し】【鎧砕き】で攻撃させ、
広い座敷などで多数を相手取る際には、こちらも数に飽かせた【範囲攻撃】で応戦。
猫又花魁の攻撃によってやられる者が居れば、即座に還し、再召喚を行う。
また味方が居れば、此方がその守護や陽動となるよう立ち回ろう。
天方・菫子
侵入に手間取った分、お仕事はしっかりしないとね
花散里、出ておいで
可愛い花が向こうから走ってくるよ
花魁衣装は可愛いけど、残念ながらそういう趣味はないな
「…一気に行く!」
【殺気】を放って【花散里】を構えて
UC【天方流・蘇芳】を発動
遠方より、まずは一撃
そのまま一気に駆け、猫又へと距離を詰め
【2回攻撃】を織り交ぜながら切り込むよ
数が多ければ、【衝撃波】で薙ぎ払う
ごめんね、あんたたちみたいな部屋持クラスにかまってられないの
悔しかったら籬から誘うくらいの艶は見せてほしいな
アドリブ歓迎です
アルファ・ユニ
あれ、シノ?依頼中に酒飲み?(さっきの演技を見て茶化す)
低い声はお互い様だから
ねぇ、どうせなら最後まで男で通そう
性格もさっきのままでさ
声戻すの面倒臭いし
さっきも変な男釣ったけど今度はガチで誘惑しようか
向こうも欲求不満みたいだし丁度いいんじゃない
UC
相手が接近して攻撃してきたらトンファーで受け流しつつ甘い言葉を耳元で囁いて
落ちた猫又に次々と
『他の猫又を討て』と告げよう
最後に残った者を愛してあげる
そういう特典も付けて、ね
まぁ多いと手が回らないけどシノがなんとかしてくれるでしょ
甘酸っぱい感情の裏、それは醜い醜い愛憎劇。
最高に面白いね
最後の一匹まで行けば遠慮はいらない。
精一杯の愛を込めて葬ってあげるよ
鈴木・志乃
げえっ、ユニ!f07535
なんだってこんなとこに!
はァ、共闘するしかねェな
男装続行
精神攻撃のスペシャリストが二人もいんだ
やることは一つだろ?
今度はお前らが誑かされる番サ
UC発動
強い祈り(想い)を籠めた手紙だ
その無感動な心に一撃ぶちかましてやらァ
【失せ物探し、マヒ攻撃、精神攻撃、衝撃波】
歌唱の催眠術も試してみるか
だんだん心地よくなってきたろ?
いんや、苦しいかもなァ
だって恋って、相手に囚われちまうんだぜ?
抗う心もなぎ払わせてもらう
敵攻撃は第六感見切り回避
オーラ防御ではじき
光の鎖でなぎ払う
手紙に籠めたのは狂おしい程の純愛
自分の心を殺してでも愛すと決めた
大切な人への恋慕
…ま、読まれる日は来ないけどネ
「あれ、シノ? 依頼中に酒飲み?」
遊郭の戸をくぐり、正面に大階段が見える広い吹き抜けの玄関口で、背後からかかったそんな声に鈴木・志乃は振り向いた。
そこに立っていたのは、友人であるアルファ・ユニ。ただしここに居合わせたのは全くの偶然である。
すぐさま、志乃の表情が激変する。先程まで大門をくぐるためにしていた渾身の演技を思えば、知り合いに見られたくなかったのが正直なところだろうか。
「げえっ、ユニ! なんだってこんなとこに!」
腹の底から出た驚きの声に、アルファがくすくすと笑って横に並んだ。
志乃の声に引き寄せられた訳ではなかろうが、遊郭のあちこちから猫又花魁が姿を現し、こちらへ向かってきていた。
「ねぇ、どうせなら最後まで男で通そう。性格もさっきのままでさ。声戻すの面倒臭いし」
男装し、声の周波数を低めたままアルファはトンファーを握り込み、そう楽しげに提案する。
一瞬逡巡した志乃はしかし、こちらへ向かってくる敵の姿に嘆息し、身構えながら覚悟を決めた。
「はァ、共闘するしかねェな……精神攻撃のスペシャリストが二人もいんだ。やることは一つだろ?」
二階からもわらわらと階段を降りてくる猫又の姿を見上げ、二人に合流した春乃・菊生もまた軽いため息をつく。
「ほう。これはこれは。随分とまあ、群れに群れたものじゃ」
「ウチと遊ぶニャー!」
言葉が終わらぬままに、板張りの床を裸足で蹴り、猫又は菊生へと飛びかかった。あちこちで元気にそう声を発するものだから、遊郭の中は妙な女性だけの賑わいになっている。
「……しかし、こうも群れておっては喧しくて敵わぬの」
咄嗟に後ろへと飛び退きその引っかきを回避した菊生は、僅か眉を寄せながら呟き、ドンと板間を踏みしめた。
「来たれ。古の武士共よ」
形の良い唇から放たれた呼ばう声は、調べに乗って。菊生は歌い、舞いながら遊郭の奥の方へと進んでいく。
声に応え、溶けた煙が具現化するように現れたのは屈強な鎧武者の霊だった。彼は手にした大薙刀で、舞う菊生を守るように猫又を払う。
その召喚は一度に多くの霊を呼び寄せる訳ではないが、彼女は舞い踊り続けることで、一体一体着実に数を増やしていく。
しかし、迫りくる猫又の数は菊生の召喚した武士の数よりも多い。
「秘儀、『ねこまたぎ』だニャ」
呼び出した初めの霊の一体が、猫又の爪に堕ちた。引き倒された武士の顔面に、白き太腿を晒して猫又が跨がろうとした瞬間。
「我の男に手出しは無用じゃ」
菊生は目を細め、どこか冗談交じりに話すと即座に霊を還す。
「何するニャ!」
下僕を増やす寸前でそれを阻まれた猫又は憤る、が、その背を別の武士の霊が薙刀で貫いた。
悲鳴と、鮮血が溢れ出す。
「我の方が格上、というだけの話よ」
菊生に血がかからぬよう、また別の武士に庇われて。菊生は口元を隠した袖の奥で、そっと笑った。
「侵入に手間取った分、お仕事はしっかりしないとね」
菊生に続けとばかりに、天方・菫子も遊郭の奥へと進む。
だが、一階へ向かった菊生とは別れ、菫子は大階段を上がり二階へ。
「ウチらと遊んでいくニャ?」
二階で待ち構えていた猫又の一匹が、問いかけながら菫子へ飛びかかる。元々しっかり着ているとも言えないはだけた着物がいっそう乱れ、その柔肌が覗いていた。
「花散里、出ておいで。可愛い花が向こうから走ってくるよ」
その姿に菫子は立ち止まると、手にした刀の柄をそっと撫でた。猫又の鋭い爪が菫子の頬へ届く、その時。
足を開き低く体勢を整え、菫子は妖刀『花散里』を抜き放つと同時に猫又を斬りつける。
敵の向かってくる威力を利用した鮮やかな一刀を皮切りに、菫子の瞳に殺気が宿った。
「……一気に行く!」
刀を切っ先を向けたのは、その奥にかまえていた猫又。そこへ放たれるのは呪いを帯びた衝撃波。
「く、苦しいニャ……!」
呪いに巻かれ動きを止めた猫又へ、床を蹴り一気に詰め寄ると返す刀で二度斬りつける。
「花魁衣装は可愛いけど、残念ながらそういう趣味はないな」
美しき花魁着物を身にまとった猫又は倒れ伏し、その動きを止めた。だが、菫子が彼女に向けるのは倒したことを確認する一瞥のみ。
一匹倒し、歩みを進めるごとに、まるで湧いて出るように猫又が行く手を阻む。
「ごめんね、あんたたちみたいな、部屋持ちクラスにかまってられないの」
尚も刃を振るいながら、菫子は、己が握り込んでいる愛刀が、いつもよりも力に満ちていることを感じていた。それは、やはり相対する敵との相性の良さだろうか。
そして刀に冴えある時、その使い手の動きもまた、洗練されていく。
切っ先から放つ花散らす衝撃波と斬撃を織り交ぜ、単騎で二階の廊下を駆けながら。
また一匹、猫又の白き肌を朱に染める。
「悔しかったら、籬から誘うくらいの艶は見せてほしいな」
一方玄関口では、アルファと志乃の二人が通りから侵入しやって来る猫又の対応をしている。
そしてその二人の戦いは、遊郭の玄関口に異様な空気を作り上げていた。
「ウチらとイイコトするニャ♪」
猫又の一体が、その赤き着物をいっそう乱れさせる。肩からずり落ちた襟元を片手で抑えてはいるが、今にも豊満な胸元が溢れ出してしまいそうな程に。
だが、彼女の身に纏う空気はそれによって強化され、力も素早さも増しているようである。
猫又がアルファへと欲望のままに襲いかかる。が。
「あいして」
猫又の腕を掴み、引き寄せながらアルファがその耳元で低く囁いた。
甘く鼓膜を揺らすその声に混ざるのは、彼女に強制的に狂愛を抱かせる呪い。
「ユニのために、他の猫又を殺して。最後に残った者を、愛してあげる」
呪いは猫又を縛り、囁かれた猫又は他の仲間へと狂わんばかりに向かっていく。その呪いは、全ての個体にかかる訳ではない。しかしその呪いを破った者は、罰を受ける。
尚もアルファへ爪を立てようとした猫又は、身の内から裂けて倒れた。
「甘酸っぱい感情の裏、それは醜い醜い愛憎劇……最高に面白いね」
地獄の様相を呈してきた辺りの様子を眺め、アルファは金の瞳を輝かせ笑う。だが、彼女の能力には限界があった。
それは物量。一体を捕まえ囁いている間、他の個体には対応出来ないのである。
アルファの背目掛け、襲いかかる猫又。
「今度はお前らが誑かされる番サ」
だが、この場にはもう一人。
志乃は掌に乗せた手紙から光の鳩を猫又に向け放つ。すると光の鳩に包まれ、まるで痺れたかのように猫又の動きがピタリと止まった。
「これは強い祈りを籠めた手紙だ。その無感動な心に一撃ぶちかましてやらァ」
低めた声、荒っぽい口調のまま、志乃は昏く笑う。
手紙に籠めたのは、狂おしい程の純愛。己が心を殺してでも愛すと決めた、大切な人への恋慕。
渡すこともないその恋文から数多の鳩を飛ばして、アルファが対応しきれない分の猫又の動きを封じ込めていく。
「歌唱の催眠術も試してみるか」
志乃はその唇に、聞く者の精神を狂わせる歌をのせる。それはこの場に一層の混沌を齎して。
「だんだん心地よくなってきたろ? いんや、苦しいかもなァ……だって恋って、相手に囚われちまうんだぜ?」
歌の締めくくりに志乃が囁いた時。その場に、まともな状態の猫又はいなかった。
その時、二階から菫子の声が響いた。
「皆、首魁がこの部屋に!」
目当てのものを、見つけ出せたようである。
大成功
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第3章 ボス戦
『傾国の白仙狐』
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POW : その精、喰ろうてやろうぞ
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり
【自身に従属する妖狐】の霊を召喚する。これは【剣】や【電撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 妾の炎に焼かれて死ぬがよい
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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「無粋よのう……」
二階最奥の部屋に、その女はいた。
真銀の長き髪を揺らし、傾国の白仙狐は踏み入った猟兵へ振り向く。
その部屋のあちこちには血飛沫がとび、そしてこの遊郭で果てた男達の残骸が、転がっていた。
春乃・菊生
アドリブ・共闘等々、歓迎じゃ。
[WIZ]
……舞う(【ダンス】【歌唱】)には良いが、多勢を呼ぶには少々手狭じゃの。
来れ―――三浦義明、千葉常胤、上総広常。
狐狩りじゃ。
秘術ノ壱により3人の武者の霊を呼び出し、その武具に【破魔】【呪詛耐性】の力を宿らせる。
呼び出した武者らには、ひとりには後ろから弓で射させ、残るふたりには太刀と薙刀で切りかからせよう。
(【援護射撃】+【串刺し】、【なぎ払い】+【鎧砕き】)
相手は強力な妖怪。
死人に鞭打つは心苦しいが…、――許せ。
武者の霊が相手の攻撃によって戦闘不能となれば都度、再召喚を行う。
また自身への攻撃に対しては、周囲に【残像】を生み出して狙いを逸らそう。
天方・菫子
うわ…まさに遊女と言わんばかりの美女
そして、この悪行の証拠
猟兵として、同じ女として許しておけないよね
花散里、極上の花だ
遠慮なく食らっていいよ
妖刀に心の中で語りかけて、刀を構えます
屋敷を焼かれるのは困るからUCはSPD系
現れた霊に対し、剣は【武器受け】で、雷は【オーラ防御】で対抗
敵に一気に斬り込んで行くつもりだけど
ご同行の皆様、力のある方だし、最後のトドメはお任せするつもり
あたしは脇から敵の隙を作り、削っていく役
こんな美味しそうな花なのに、って花散里、文句は言わないの!
戦闘が終わったら、せめて亡骸を弔ってあげたいな
それができなければ手を合わせるだけでも
アドリブ歓迎です
アルファ・ユニ
そのままシノと連携
あんたが黒幕?
男を連れ込んで騙して殺して
…不快なんだよね 消えてくれない
UCで周囲にあるオブジェクトを全て支配下に置き、操って敵へぶつける。
敵の動きや反応をよく見て、必要に応じてトンファーで近接戦闘。操っている物でガードをしたり目を眩ませ死角を作ったりしつつ
狐火は白くて大きな口と牙を持った精霊[サムヒギン]達が喰らって消火。
UCと精霊と近接。この3つでシノが動きやすいように、上手く敵の動きを誘導できたらいいな
視力、戦闘知識、情報収集、見切り、学習力、第六感
敵の情報収集や行動予測は大得意。フルで活用して戦いつつリアルタイムで戦術を組み立てるよ
アドリブ歓迎
鈴木・志乃
アド歓迎
ユニ・アルファと連携
悪いが、お代は命なんて聞いてないぜ
ここの仏さんらもそうだっただろう
許せよ女狐 俺はお前みたいな女がいっちゃん(一番)嫌いなんだ
人の意志を踏みにじってェからなァ!
【呪詛耐性、破魔、祈り、催眠術】の【オーラ防御】張っておく
本当の心を見失わないように【失せ物探し】
【精神攻撃】のやり口は一応分かってるつもりだ
【第六感、見切り】で諸々の知識含めて対抗出来るようにしておく
UC発動
焼き尽くされるのはお前だよ
自身の周囲も守るように炎を張っておく
何が無粋だ
あんちゃんらも命まで取られるたぁ
思ってなかったろうぜ
必要に応じて光の鎖で【武器受けからのカウンター】で【なぎ払いの衝撃波】
「うわ……まさに遊女と言わんばかりの美女」
真っ先に部屋に踏み込んだ天方・菫子は、眼の前に現れた白仙狐の姿を見て、そんな感想を思わず漏らした。
彼女とて自慢の美貌を誉められるのはやぶさかではないらしく、着物の袂を口元にあて、そっと笑う。
だが菫子は次に視線を部屋の惨状へと向ける。いくら彼女が美しかったとて、死臭漂う部屋にいれば、そしてその元凶が彼女自身にあるのだとすれば、美もへったくれもない。
「猟兵として、同じ女として許しておけないよね」
「あんたが黒幕?」
菫子の呼びかけに玄関口から駆けつけたアルファ・ユニが、部屋に踏み込むなり問いかける。そのすぐ後ろから鈴木・志乃もやってくると、思わず嘆くように息を漏らした。
アルファの視線が部屋の隅で事切れている遺体を捉え、問いかけが、答えを得る前に確信へと変わる。
「男を連れ込んで騙して殺して……不快なんだよね。消えてくれない?」
その金の瞳が怒りに煌めいた時、白仙狐が楽しげに、高らかに笑い声を漏らした。
「男どもは喜んで妾に従っておったぞ。それを、小娘にとやかく言われる筋合いはないわ」
アルファと志乃は共に、大門を突破してきた時のまま男装を続けていたが、どうやら白仙狐には通用しなかったようである。小娘、と、彼女は一瞥しただけでそう告げた。
「悪いが、お代は命なんて聞いてないぜ。ここの仏さんらもそうだっただろう」
だが、志乃とて意地がある。やると決めたからには最後まで演技を貫き通す覚悟だ。
白仙狐を睨みつけながら、どすの利いた低い声音で吼える。
「許せよ女狐。俺はお前みたいな女がいっちゃん嫌いなんだ。人の意志を踏みにじってェからなァ!」
怒りを乗せるよう、志乃は左足で床を一歩踏みしめた。瞬間、その左太腿から炎が噴出する。彼女の放つ炎はただの炎ではない。対象の精神をも焼き尽くす、断罪の炎。
「っ……!」
炎にまかれ、白仙狐が自身の身を守るように腕で顔を抑え身をくねらせる。
「……何が無粋だ。あんちゃんらも命まで取られるたぁ、思ってなかったろうぜ 」
炎に照らされて、影の落ちる志乃の顔に表情はない。ただ、そこに押し込めた感情が、揺らめいているようである。
だが、白仙狐もまた炎の中、縮こまっていた身を広げた。
「その精、喰ろうてやろうぞ」
精神を狂わされる程の焔の中、妖艶に笑う彼女は美しい。大きく開いた胸元には汗がしたり、まるで宝石を散りばめたかのように輝いている。左右で違う瞳が志乃を捉えた。
と、志乃は自身の身動きが一切取れなくなったことを感じる。予め幾重にも自衛策を取っていて尚、抗いきれない魅了の術。
「ここはユニ達の舞台。勝手に動くことは許さない」
そこに、志乃をフォローするようアルファが動いた。彼女の構えた、スピーカーを搭載するトンファーから超振動の音波が放たれ、白仙狐の珠のような肌を切り裂いていく。
「っぁああああ! 妾に傷をつけたな……! 妾の炎に焼かれて死ぬがよい」
白仙狐の怒号に合わせ出現したのは、部屋の中を埋め尽くす程の数の狐火であった。
四方八方から飛び交う狐火を身軽に避け、アルファが腰をかがめた瞬間、彼女の服の中から飛び出したのは、白く大きな口と牙を持つ精霊だった。
彼らの名はサムヒギン。それらは口を大きく開け、アルファの周囲の炎を食らっていく。
「いいよ、シノ」
相棒へ声をかけながら、アルファがトンファーで白仙狐へ殴りかかる。
「焼き尽くされるのはお前だよ」
魅了から開放された志乃が再び火力を強め、その身を焼き尽くしていく。
白仙狐は苦悶の声を上げる、が、しかし彼女の放った狐火もまた、威力を増していた。部屋の中が、異常な熱気に包まれる。
「来れ――三浦義明、千葉常胤、上総広常。狐狩りじゃ」
その狂乱の最中、凛とした声が響いた。
声の主は、急ぎ駆けつけた春乃・菊生。部屋に入らず廊下に陣取り、蝙蝠扇を翻し古の鎧武者を呼び覚ます。薄く閉じた眼からかすかに輝く紫の瞳が、まるで菩薩の如く。
現れた猛者の霊は弓、太刀、薙刀をそれぞれに担ぎ、白仙狐へと向かっていく。
「死人に鞭打つは心苦しいが……、許せ」
菊生のその言葉は、決して攻撃を仕掛けている対象である白仙狐へ向けられたものではない。彼女の使役するその三体の霊を起こしたことへの謝罪である。
自身に向かってくる手勢が増えたことで、白仙狐もまた身を翻す。
「出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり」
伸ばした掌から現れたのは、彼女の髪と同じ輝きを持つ、大きな妖狐であった。
それらは九尾を持ち、口に刃を構えてアルファのトンファー、菊生の放つ鎧武者と拮抗する。
さらに彼らは周囲に雷を纏い、触れる者への強烈な雷撃まで放っていた。
ふっと、空気の切れ目を縫うように菫子が一歩前へと進み出る。
両手に構えるは妖刀『花散里』。刃に意識を通わせ、目を開く。鋭き刃の切っ先は、妖狐と組み合う鎧武者の間へと滑り込み、その相手を買って出る。
冴える刃が妖狐の脇を差し、毛皮を切り裂いて生を開放する。それでも、彼らから血が流れることはない。彼らはあくまで、使役されている霊に他ならない。
「菊生さん!」
菫子が仲間の名を呼びかける。それは、攻勢の合図。
「殺れ」
菊生が下したのは、たった一言の命。
その言に従う鎧武者の太刀、薙刀の切っ先が、追い込まれた白仙狐の身を、左右から貫いていた。
白仙狐は、骸の海へと還った。彼女の体から血は溢れたが、それも風が吹けば、塵のように消えていく。
しかし、部屋に転がる被害者たちの亡骸は、消えることがない。
菫子は仲間たちの強力を得て、その遺体を、遊郭の裏の庭へと葬った。遺族の元に返してやるには、変わり果てすぎていた。
遊郭の庭には、まるで花街という名を表すかのように、色とりどりの美しい花々が咲いている。その一角に腰を下ろして手をあわせ、猟兵たちは祈る。
どうかこの花が、彼らの魂を迷うことなく、天へと連れて行ってくれるようにと。
大成功
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