よろしい、ならばカレーライスだ!
「諸君、銀のスプーンを掲げよ!」
ドミノマスクを装着した紳士が声を発する。すると、周囲から割れんばかりの喝采が湧き上がる。
「カレー! カレー! カレー!」
そう、カレーライスだ。いい年した大人たちがカレーライスを目の前にしてはしゃいでいた。
一見、ここだけ聞いた話ではカレー好きの変人集団に思えるだろう。
だが、彼らの目の前のカレーのルゥは、やたら赤い。血の池地獄めいて赤い。つまり超激辛。食べたら悶絶どころか憤死してしまいかねない。それでも紳士たちは美味しそうにカレーを頬張ると、途端に泡を吹いてバタバタと倒れてゆく。そもそもカレーのルゥの中にヤバイものが入っていたのだ。当然、食ったら死ぬ。
そして、それを傍観していた者たちが息絶えたものたちに布を被せると、たちまち遺体はUDCモンスターへ変貌を遂げてゆく。
ここは要注意団体『黄昏秘密倶楽部』が運営する会員制カレーサロン。信じられないけど、これって邪神復活の儀式なんだぜ……?
「……正直、あたいもどうかしていると思うんだよ、これ」
真顔で猟兵たちへ漏らす蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。
彼女は集まってくれた猟兵たちに資料を渡し終えると、事件の概要を説明し始めた。
「UDCアースの、この会員制カレーサロンで行われる邪神復活の儀式を阻止してもらうのが今回のみんなの仕事なんだけど、ちょっと気をつけてほしいことがあるんだよっ」
それは、今回の祭具について。かなり特殊なケースらしい。
「信者は無類のカレー好きでねっ? 当然、祭具もカレーなんだよ……。うん、みんなの言いたいことはよーっく分かるけど、あの大人たち、カレーの凄まじい激辛さと死の苦悶が合わさることで最強の邪神を呼び寄せられるって本気で信じてるっぽい……」
既にこの時点で、もう訳がわからないって顔付きのレモン。深く大きな息を吐いた後、説明を続ける。
「だから、みんなにはこのカレーサロンに潜り込む、もしくは乗り込んでもらって、問題のカレーを信者から強引に奪うなり、隙を見て掠め取るなり、言葉巧みに騙し取るなりしてほしいんだよっ! あ、食べちゃダメだよ!? 絶対に体に害のあるヤバイものが入ってるはずだからねっ!」
また、充分な量のカレーを奪い取ると、猟兵たちに邪魔が入ることが予見されている。事件の内容はアレだが、油断は禁物だ。
「みんなの大好きなカレーを悪用するなんて許せないよねっ! ちなみに、あたいはポークカレーが好きっ! それじゃ、現場まで転送するよ~っ!!」
心なしか、レモンのグリモアの輝きがカレーの色に見えてくる猟兵たちであった。
七転 十五起
七転十五起(なぎてんはねおき)です!
みなさん、カレーライスは好きですか?
はい、UDCアースでネタを詰め込んだ結果、こうなりました!
カレーだ、一心不乱のカレーネタをぶん投げるんだ!
ということで、皆様のご参加、お待ちしております!!
第1章 冒険
『祭具を確保せよ』
|
POW : 力を生かして祭具を奪い取る、または敵対者を排除する。
SPD : 技を生かして祭具を掠め取る、または敵対者を排除する。
WIZ : 知恵を生かして祭具を騙し取る、または敵対者を排除する。
👑11
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火奈本・火花
「カレーは確かに美味しいですが、要注意団体が何をやっているのでしょう。……黄昏、タソガレ、タソガレー、タソカレー秘密倶楽部……はっ、まさか
……!?」
■行動
などと言う冗談は置いておきます
とにかく信者からカレーを騙し取りましょう(WIZ)
売り出し中の激辛大食いアイドル、という事で「変装」してサロンに潜り込みます。カレー好きなゲスト、という形で名刺や架空の宣伝チラシも配りましょう
「辛さも量もまだまだ足りませんね。皆さん、私の所にもっとカレーを持って来て下さい! スパイスや唐辛子があれば、それもです」
集まったカレーを食べるかのように期待させて、鍋や皿ごと倒すか、隠してしまいしょう。少々心が痛みますが
カリー・ボーン
心情:カレーを悪用するとは何たる邪悪、許すわけにはいかん!
方針【WIZ】:力ずくは主義に反する。ここは……ふむ、このサロンの前でカレーの屋台を行い、「そちらのカレーと俺のカレー、どちらが美味いか比べてみないか」と…まあだまし討ちのようだが、そういう感じでカレーを回収してみよう。彼らの持つカレーに似た色の激辛カレーはウチでも扱っているからな。連中がウチのを食べている間にこっそりと鍋に入れ替えるなりすればいけるだろうか。
ただ辛いだけのカレーはカレーにあらず。辛さの奥に旨味や甘味、様々な深みがあってこその激辛カレー。それを知ってもらいたいものだ。UCは暴力を振るわれた時の脅しに使うことにしよう。
波狼・拓哉
カレーて。カレーて。
…そこはカレースプーンがとか、カレーのルー入れとく奴…名前分からん、とかが祭具じゃねーのかよ。
さてとんー…ミミックに力任せに奪い取って回って貰うか。最悪囲まれた時にミミックに食してもらって物理的になくせるし…多分消えるからちょっとミミックには申し訳ないけど。
俺は奪いまわるミミックを横目に、信者の邪魔に回るか…ロープで足ひっかけたり縛ったり、衝撃波で吹き飛ばしたり…その前にミミックがカレーを奪い取るのはカレー力を高めてるとか、カレーを一か所に集めるといいとか適当なこと言って少しでも邪魔されるのが遅くなるように言葉巧みに頑張ってみようかな。
ライ・アインス
WIZを使用します。
ライのその手に握られた美しい銀のスプーンを見て、信者達はどよめいた。
「こっ、これはまさか、神のカレー専用スプーン
....!?」
ライが持っているスプーンは最近カレー好きの間で密かに噂になっていた。
神がカレーを美味しくする為に生み出した賜物だと。
そう、ライも無類のカレー好き....に見える様だが、ライにはその価値はさっぱりである。
ライは『このスプーンを試してみたくはないか?』と書いた紙を見せる。
歓声の中、ライはカレーを作った。儀式のカレー顔負けのダークマターを。
信者達は神のスプーンでカレーを頬張り、失神。
ライは祭具のカレーの入った鍋を見つける。その鍋を透明化させ、持ち帰った。
クレア・フォースフェンサー
目標
教団員を全て捕らえる。
理由
一人でも逃がした場合、他で同じことをされるおそれがある。
手段
事前にカレー店に赴いてみたが、あの匂いにはまだ慣れないため、外部班として行動する。
建物の監視設備にアクセスし、また、周囲に監視カメラを設置し、その情報を内部班に送る(ハッキング、情報収集)。
逃亡者がいたら捕らえるとともに、他の教団員の情報を集める(視力、追跡、サイコキネシス、範囲攻撃、気絶攻撃、催眠術)。
なお、化物や邪神が出てきた場合は建物内部に入ることになるため、匂いに慣れようとカレーパンを食べながら行う。
台詞
「カレーはまだ食べられませんが、きっと慣れます」
シシィ・オクトニーア
カレーライス、美味しいですよね。そんなカレーライスを邪神復活に利用するなんて許せません!頑張って邪神復活を阻止しましょう!
まずは信者さんから祭具のカレーを別のカレーと交換して騙し取りたいです。
祭具のカレーに似た真っ赤な激辛カレーを用意して、信者さんに祭具の交換を交渉したいですね。
とっても辛いという祭具を用意したのですが、私には辛すぎて儀式に支障が出るかもしれないので……といった風に。
私では一瞬で終わるかもしれない死の苦悶も、あなたならより長く味わえるかも?とかですね。
もちろん、用意するカレーは辛いだけの普通のカレーです。
カレーはちゃんと美味しく食べましょう!
ちなみに私はビーフカレーが好きです!
火奈本・火花(エージェント・f00795)は要注意団体『黄昏秘密倶楽部』を警戒するUDCエージェントである。今日とて、かの団体に関する情報を得た彼女は、現場に急行した。
「カレーは確かに美味しいですが、要注意団体が何をやっているのでしょう? ……黄昏、タソガレ、タソガレー、タソカレー秘密倶楽部……はっ、まさか
……!?」
火奈本がインドの真理に到達しそうになった傍らで、すかさずツッコミを入れる猟兵がいた。探偵の波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)である。
「カレーて。カレーて。そこはカレースプーンがとか、カレーのルー入れとく奴……名前分からんアレ、とかが祭具じゃねーのかよ」
「あ、その名称はグレイビーボートです」
「お、おう……」
火奈本の言葉に波狼は真顔で頷いた。
「と、まぁ、冗談は置いておきまして、とにかく信者からカレーを騙し取りましょう」
「ああ、そうだな。カレーを悪用するとは何たる邪悪!」
キリッと爽やかな辛さを豊富とさせる笑顔が眩しいカリー・ボーン(戦うカレー屋・f06236)が彼女の意見に賛同。
「これはカレー屋として見過ごせないな。許すわけにはいかん!」
カレー色もとい赤茶色の肌と筋骨隆々のボディ、そして輝く白い歯は猟兵たちの中でも特に目を引く存在だ。
カリーの真横には、身長差約30cm差のクリスタリアンのシシィ・オクトニーア(金剛石は宝石箱から旅立つ・f03316)がこくこくと頷いた。頷くたびに、ダイアモンドの髪がキラキラと輝く。
「カレーライス、美味しいですよね。そんなカレーライスを邪神復活に利用するなんて許せません! 頑張って邪神復活を阻止しましょう!」
これにカリーが同志を見つけたとばかりに顔がほころぶ。
「シシィもカレーライスが好きなんだな? よかったら、この仕事のあと、俺の営むカレー屋に来るか?」
「いいんですか!? ちなみに私はビーフカレーが好きです!」
「……みなさん、目的を忘れてませんよね?」
クレア・フォースフェンサー(光剣士・f09175)は目の前のカオスに呆然としている。というか、彼女はカレーの刺激的な香りが苦手であった。
(やっぱりあの匂いにはまだ慣れないです)
しかし、その手元にはカレーパンが握られていた。クレアなりにカレーへの耐性を身に付けようという魂胆らしい。
「私は外部班としてここに待機しています。……カリーさん、ところで何をしているのですか?」
「見ればわかるだろう? カレーを作ってるんだ!」
いつの間にか、カレーを作るための材料と器材を現場に持ち込んでいたカリーは、敵の本拠地の間で堂々とカレーを作っているのだ。
もう訳がわからないよ。
「力ずくは主義に反する。ここは……ふむ、このサロンの前でカレーの屋台を行い、『そちらのカレーと俺のカレー、どちらが美味いか比べてみないか』と……まあ、騙し討ちのようだが、そういう感じでカレーを回収してみよう」
餅は餅屋というが、カレーはカレー屋に任せた結果がこれである。猟兵といえども、誰かが止めに入るかと思いきや、既に手遅れだと思い知らされる。
「カリーさん、ナイスアイデアです! 私も信者さんから祭具のカレーを別のカレーと交換して騙し取りたいです」
まさかの賛同者がいた。図らずして、シシィの作戦もカリーと似たような内容だったのだ。
「よし、だったら俺がシシィの分のカレーも作ろうじゃないか」
「ありがとうございます! わたしの作戦は……」
「ふうむ、カレーとしては邪道だが、イケるかもしれないな」
カレーの絆で一致団結しつつある多重人格者とクリスタリンが醸し出すカオスに、クレアは目を逸らし、波狼は頭を抱えていた。そして火奈本に問うた。
「あれ、止めなくていいのか、って、いつの間に着替えた!?」
火奈本の姿が何処ぞのグループの制服っぽい衣装に着替え終わっていたのだ。
「これは変装です。設定は『売り出し中の激辛大食いアイドル』です。これから私はサロンに乗り込んで、カレーを奪取してきます。そのために、ニセのチラシや名刺も用意してきました」
なんだか火奈本の力の入れどころがおかしい。いや、力を入れるにはいいのだが、そこまでやるかよ感が半端ない。
目の前のカオス3人に対して、奇をてらわず真っ向からカレーを奪い取ろうと考えていた波狼はクレアに無言の助けを求める。だが、クレアは無言で『諦めましょう』と訴えてきたので彼は深くため息を吐いた。
当然、問題のサロンの前でカレーを作っていれば、そりゃ怒られるわけで。
「誰の許可得てここでカレーを作ってるんだ!?」
ただいま、サロンの関係者が出てきて、火奈本・カリー・シシィを尋問中。
波狼とクレアは一旦サロンの前から退避して様子を伺っている。
だが、問い詰められた3人は尋問に屈しないどころか、カオスパワーで押し切っていく!
「俺のカレーと勝負しろ!」
「火奈本・火花、19歳! 売り出し中の激辛大食いアイドルです!」
「とっても辛い祭具(カレー)を用意したのですが……!」
いっぺんに話しかけられた関係者は圧倒され、狼狽している!
そこへサロンから顔を出したのは、ドミノマスクの紳士だった。
「ふむ、お三方、どうやらこのサロンの秘密をご存知のようですね?」
ヤバイ、勘付かれたか? 猟兵たちに緊張が走る。
紳士は3人の顔をじっくり見詰めると、踵を返してこう告げた。
「付いてきなさい。今しがた『欠員』が出たばかりです。それに祭具のカレーの調達もしないといけないタイミングでした。事情を知った上でカレーを持参してくれるというのならば、拒む理由はありません」
猟兵たちは『欠員』という言葉に戦慄する。既に犠牲者は出ていたのだ。
彼らはミイラ取りがミイラにならぬよう、最新の注意を払いつつサロンへの潜入を開始した。
3人がサロンの内部へ足を踏み入れると、何故か彼らよりも先にひとりの猟兵が信者たちの注目を浴びていた。
その手には、銀色に輝くスプーンが握られていた。
「こっ、これはまさか、神のカレー専用スプーン……!? 実在したのか
……!?」
信者たちがどよめくのも無理はない。
ライが持っているスプーンは最近カレー好きの間で密かに噂になっていた。曰く、神がカレーを美味しくする為に生み出した賜物だと。
彼女はなんと、このスプーンを信者たちに見せたことで、あっさりサロンへ潜り込むことができたようだ。
類まれなスプーンを入手できたライも無類のカレー好き……ではなく、むしろその価値を理解できないでいた。
そんな時、ライは『このスプーンを試してみたくはないか?』と書いた紙を信者に見せる。
当然、信者たちのボルテージは急上昇!
「神のカレー専用スプーンか。なら、俺のカレーが相応しいはずだ」
ここでカリーが寸胴を抱えて登場。中身は彼の作った特製激辛カレーだ。勿論、安心安全の美味しいカレーである。
「ただ辛いだけのカレーはカレーにあらず。辛さの奥に旨味や甘味、様々な深みがあってこその激辛カレー。それを知ってもらいたいものだ」
芳醇なスパイスの香り漂うカリーのカレーは、たちまち信者たちの心を揺り動かす。
純粋に美味しそう、という理由で既に手を伸ばして食している信者もいるくらいだ。
折を見て、シシィが追撃を図る。
「あの、持参したカレーなんですが、私には辛すぎて儀式に支障が出るかもしれないので……。それに、私では一瞬で終わるかもしれない死の苦悶も、あなたならより長く味わえるかも?」
どうしますか、と言わんばかりのシシィの表情に、信者たちの挑戦心に火が付いた。
「俺はこっちのカレーを食べるぞ!」
「あたしはお兄さんのカレーにするわ!」
信者たちのカレー好きが功を奏して、もはや儀式用のカレーに見向きもしない。
ドミノマスクの紳士はこの状況を静観してるが、いつ何時妨害してくるかわからない。なぜなら、紳士はサロンに備え付けられた厨房に立っているからだ。恐らく儀式用のカレーを守っているだろう。あれでは回収をしたくても阻まれてしまう。
どうするべきかカリーとシシィが思案にくれていると、真打が登場した。
「2人のカレーは辛さも量もまだまだ足りませんね。皆さん、私の所にもっとカレーを持って来て下さい! スパイスや唐辛子があれば、それもです!」
火奈本行ったーっ! 守っているなら持ってこさせればいいと言わんばかりに、紳士の鍋を指差して寄越せと要求! これには紳士も応じる他ない!
こうして、火奈本の目の前に儀式用のカレーが運ばれてくる。見た目は完全に唐辛子の赤いそれ。マグマといっても差し支えない赤だ。
さて、ここで火奈本が「あ、手が滑った!」などとドジっ子演出でカレーを床にぶちまけるようかと考えていたその時、波狼がサロンの中へ乱入してきた!
「さていつも通りお願いしますよ……っと!」
現れるやいなや、波狼はユーベルコード『偽正・偽箱基態(ミミクリー・スタンダート)』を発動させると、箱型生命体の霊であるミミックを召喚する。ミミックは手近なカレーを片っ端から飲み込み始め、火奈本に配膳された儀式用カレーさえも飲み込んでしまった!
「いいか! このミミックは今やすべてのカレーを飲み込んだスーパーカレーミミックだ! カレーを一点に集中させることで更なる強力な祭具(カレー)が誕生するんだ!」
「「な、なんだって!?」」
信者たちがミミックに注目している間、シシィとカリーは厨房へ忍び込み、残りの儀式用カレーを持ち出すことに成功する。
だが、厨房を守っているドミノマスクの紳士が黙っていない!
「カレーを返せ!」
紳士がおよそ人間業ではない怪力でカリーに掴みかかってくる!
暴力は嫌いなカリーだが、自衛のためにユーベルコード『マサラアグニ』を発動!
「激辛炎を受けてみよ!」
口から噴き出す『怒りの炎』が紳士を威嚇すると、飛び退いた紳士の手がカリーを放した。
「今だ、シシィ! 逃げるぞ!」
「はい、カリーさん!」
まず2人が儀式用カレーの持ち出しに成功。
続いて、ライがユーベルコード『Siegfrieds Tarn Cappe(ジークフリーズ・タルンカッペ)』で儀式用カレー鍋を透明化。こちらも持ち出しに成功する。代わりにカレーとは似てもにつかぬ暗黒物質が厨房に鎮座していた。ライがカレーを作ろうとして生成されてしまった成れの果てである。
火奈本も混乱に乗じ、配膳されたすべてのカレーを床にぶちまけて逃走。
頃合を見て、波狼もミミックを消し去って逃亡していった。ミミックは消失する間際、物悲しそうに波狼を見詰めている素振りを見せていた。
外ではクレアが待機中。勿論、他の猟兵たちがどっかんどっかん暴れているのを、お得意のハッキング技術によってサロン内のカメラから観察をしていた。
「他の教団員の情報は出なかったですね……。おや?」
クレアが監視カメラの映像に変化が現れたことに気が付く。
信者たちが一斉に布を被り、何かを呷っているのだ。
「まさか、自決用のカレー!?」
そんな物まで用意していたのか。というかもうここまで来ると何でもカレーで説明が付いてしまっていた。
当然、死んだ彼らは次々とUDCモンスターとして復活してしまう。このままサロンの外へ野放しにするわけにはいかない。
猟兵たちは邪神の眷属と化した信者たちが蠢くサロン内部への再突入を敢行することとなった。
成功
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第2章 集団戦
『黄昏の信徒』
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POW : 堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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ライ・アインス
POWで攻撃回数重視です。
前に突入した時に置いてきた自分の作ったカレー(ダークマター)を信徒にぶちまけます。
ただ、厨房の方から異臭がしただけだったのだ。『邪神復活の神具がまだ残っていたのか!?』と仲間と共に厨房に入ると、異常な臭いを発する鍋が。恐る恐る蓋を取ると、中の液体が、火をつけていないのに何故か煮え滾るようにボコボコと泡を吹いている。
ドン引きする仲間達をよそ目に、ライは何を思いついたのか、その鍋を持ち上げ信徒達の所まで走ると、中身をおたまですくい上げバシャバシャと信徒達にぶっかけはじめた。
ジュワッという音と共に信徒達が溶け始め、悲鳴をあげる。
信じられないだろ。カレーなんだぜ
......
火奈本・火花
「まさか自決用のカレーまで用意しているとはな。しかし最後までカレーとは、流石はカレー倶楽部――では無かった、黄昏秘密倶楽部か」
■戦闘
眷属共に構っている暇はないし、手早く倒してしまいたいな
私から狙って近付くのも良いが、無策で眷属に近づけばただでは済まないだろう
彼らの習性を利用して「誘き寄せ」、カウンターを食らわせられないか試そう
レトルトカレーの箱を持って
「見ろ、此処にカレーがある。近くのスーパーに急いで買いに行った。レトルトだが……ジェロキアやハバネロ入り、辛さは邪神級(お子様には絶対食べさせないで下さい)と書いてある。欲しいか?」
近寄ってきたら一撃を、興味がありそうなら上にでも投げて隙を作ろう
久世浦・穗積
カリーさんに聞いてやって来ました
カレーを悪用している輩がいると…許せないね!
悪を倒せと、私の中のカレーが囁く
あとカリーさんの作ったカレーが食べたい
もう限界だね!押すね!(何を?)【カレー・ジャスティス】発動!
カレーを悪用する輩に、正義の鉄槌を!
「インド人」を右に切って信徒のモーニングスターを「盾受け」する
「オーラ防御」も張って全然効かないぜ感を出して「挑発」しよう
くくく、お前たちのカレーはその程度のものだったのか
まだまだ甘いな(カレー的侮辱)
波狼・拓哉
最早何でもありじゃねーか、カレー・・・自決用て。え?何?こんな事もあろうかととか言ってカレー出すん?
ふぅ(落ち着いた)さてと、どうしよかな?ミミックは・・・そのなんか申し訳ないし。うん。
んーあの姿になってもカレーへの執着心あるのかな・・・えーとそう、グレイビーボードとか何か信者が盛り上がってたスプーン辺りを仕掛け罠として作成すれば引っかかかるかな?味方に注意喚起だけしておいてばらまいておこう。
後は味方がピンチそうなら衝撃波でモーニングスター弾いたり、フックロープで邪魔したりとサポートに徹するかな。
クレア・フォースフェンサー
カレーの臭いで入れない……せや!
目標
信徒がサロンの外に出る前に倒す。
判断
カレー粉が充満していては、粉塵爆発のおそれがある。
また、魔空間では怪獣は3倍にパワーアップするとの資料を見たことがある(世界知識)。
手段
信徒に利するカレー空間を消滅させるため、スプリンクラーと空調でカレー粉を排出し、さらに念動で近場の洋菓子店の甘い香りを大量に引き込む(ハッキング、地形の利用、サイコキネシス)。
これで中に入れる。
後は皆と連携して信徒を倒すのみ。カレー分不足で弱っている間に、最大出力のフォースセイバーで両断する(なぎ払い、剣刃一閃)。先の資料を元に名付けるならば、クレア・ダイナミック。
カリー・ボーン
・心情:まさか自決用カレーまで用意していたとは……ことこうなってしまっては仕方がない。邪まなカレーの犠牲になってしまった信者には申し訳ないが、安らかに眠ってもらおう。
・技能の「だまし討ち」「暗殺」は惜しみなく。物陰ややられた振りも総動員して、手早く、元信者が苦しまないように仕留めていく。離れては「衝撃波」と忍者手裏剣。近づけばグルメツール(先割れスプーン)と【マサラアグニ】を用いる。
・敵のPOW攻撃は出来る限り回避。SPD攻撃は…我慢して堪えるしかないか。WIZ攻撃には発動者を優先的に攻撃していく。
・責任者出てこい! カレーを冒涜しおって……ただで済むと思うなよ!
シシィ・オクトニーア
カレーを、食べ物を自決に使うなんて許せません!UDCモンスターになった信者さんたちを外に出さないためにも頑張ります!
フードファイト・ワイルドモードでお肉を食べてパワーアップしつつ戦います。食べ物は美味しく食べてこそ、です!
美味しい料理は身も心も満たすもの。自決に使うなんて以ての外ですよ!
とにかく、敵を倒すためにも、味方の方々と協力して戦いたいですね。
なるべく最も弱っている敵や、集中攻撃を受けている敵を狙って攻撃して確実に倒していきたいです。
それと、黄昏への導きで復活した敵ではない敵を狙いますよ。
モーニングスターの攻撃は要注意です。予備動作などを確認したら避けられるようにしたいですね。
残念だが、カレーサロンの会員たちは全員が自死してしまった。カレーで。
その代わり、彼らは揃ってUDCモンスターとして復活。カレーサロン内を彷徨っていた。
一連の流れをハッキングした監視カメラで観察するのは、カレー臭が苦手なクレア・フォースフェンサー(光剣士・f09175)。
UDCモンスターを外に放つわけにはいかない。だが、カレー臭が充満する密室の中には入りたくない……。
しばし、彼女はどうすればよいか悩むことになる。
その傍らで、無事に祭具(カレー)を奪取することに成功した面々が、この状況について話し合っていた。
「最早何でもありじゃねーか!」
開口一番、ツッコミワードを叫ぶ波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。
「カレー……自決用て。え? 何? こんな事もあろうかととか言ってカレー出すん?」
波狼のツッコミの精度は正確無比だ。今回の話の根本に突き刺さるツッコミだ。
だが、この異常事態を居合わせた多くの猟兵たちはすんなり受け入れていた。
「まさか自決用のカレーまで用意しているとはな。しかし最後までカレーとは、流石はカレー倶楽部――では無かった、黄昏秘密倶楽部か。恐るべし……」
妙にシリアスな雰囲気を演出する火奈本・火花(エージェント・f00795)。だが語っている内容は残念なことにカレーの事だ。
「そうだな、まさか自決用カレーまで用意していたとは……」
沈痛な面持ちで肩を落とすのはカリー・ボーン(戦うカレー屋・f06236)。カレー屋としての矜持が、防げなかったカレーの悲劇を嘆かせているのだろう。
「カレーを、食べ物を自決に使うなんて許せません!」
クリスタリアンのシシィ・オクトニーア(金剛石は宝石箱から旅立つ・f03316)も一緒になって憤慨していた。フードファイターとして食べ物(カレー)で死を選ぶなんてことは、あってはならない事だと主張する。
前回同様、奇しくも同じような想いを抱いていたカリーとシシィ。今回も互いにめっちゃシンパシーを感じているようだ。
「シシィもそう思うか。さすがビーフカレー好きは話が早い。ことこうなってしまっては仕方がない。邪悪なカレーの犠牲になってしまった信者には申し訳ないが、安らかに眠ってもらおう。手を貸してくれ」
「もちろんです! 食べ物は美味しく食べてこそ、です! 美味しい料理は身も心も満たすもの。自決に使うなんて以ての外ですよ!」
ガシィッとふたりは固い握手を交わした。前回もそうだけど、なんだか君たちめっちゃ仲いいよね???
と、そこへ割って入る赤い髪の女が登場! 久世浦・穗積(戦争論・f01538)、ヒーローマスクのフードファイターである。って、えっ? 君、マスクじゃないじゃん眼鏡じゃん。というか身長30cm満たないフェアリーじゃん。まさか、その眼鏡が本体なのか?? 実在したのか、眼鏡が本体の人……!
「カリーさんに聞いてやって来ました!」
こいつもカレー好きだーッ! なんとなく分かってたけど!! 眼鏡が本体のカレーの人ってどういうことなの? あと防具が防弾カレールー(中辛)って、完全にカレーの人じゃないですか……! めっちゃオーラ防御がカレー色に染まってそうなんですけど……!
「カレーを悪用している輩がいると……、許せないね! 悪を倒せと、私の中のカレーが囁く! あとカリーさんの作ったカレーが食べたい」
やべぇ、完全にカオスが加速する未来しか見えないんだぜ! なんかかっこいいこと言ってるっぽいけど、内容はほとんどカレーの事しか言ってないぜ! ヒャッハーッ!!
ライ・アインス(愛を知った心優しき操り人形・f07320)に至っては無言でサロンの入り口を見つめたまま微動だにせず、何を考えているかさっぱりだ。
このカレーの如く煮えたぎったカオスな状況を目の当たりにした波狼は、大きく深呼吸。
「ふう……」
波狼はツッコミを入れることを諦め、むしろ清々しいほど冷静になったのだった。
と、ここでクレアが叫んだ。
「あんな密室でカレー粉が充満していては、粉塵爆発のおそれがあります! また、魔空間では怪獣は3倍にパワーアップするとの資料を見たことがあります。つまり、サロンの中はUDCモンスターのホームグラウンド、地の利はあちらにあります!」
なんだとっ、と動揺するカレー好き猟兵たち。ただの邪神の眷属だと侮ってはいけないと戦慄が走る。
しかし、クレアは自信たっぷりに告げる。
「ですから、サロン内部のカレー臭を洗い流せば……、これで、こうやって、こうです!」
ポチーッとエンターキーを押すと、サロン内部のスプリンクラーが強制作動! 更に空調をON! カレー臭を外気へ排出させ、サロン内部を清浄な空気へ換気する。
ついでに偶然にも隣のケーキ屋から漂う甘い香りが換気扇から紛れ込み、サロン内部はスイーツ臭が充満。
(よし、作戦にかこつけて私が内部に入れる状況を揃えることが出来ました)
めっちゃ私欲からの行動だった。だが、実際にカレー臭がなくなり甘い匂いに悶絶する元信者たちの光景を察するに、なんやかんやで有効打だったらしい。
「なるほど、化物になってからもカレーへの執着心は変わらずか……」
クレアが映し出すサロン内部の光景を眺めていた波狼は、ひとつの策を講じることにした。
「そこの祭具(カレー)が入ったえーとそう、グレイビーボードとか何か信者が盛り上がってたスプーン辺りを仕掛け罠として作成すれば引っかかかるかな?」
「「なんだってー!?」」
カレー好き猟兵たちに青天の霹靂が走る。その顔つきはお前マジかよ天才だなと、目の前にお釈迦様か何かが現れたといわんばかりの感銘を受けていた。
「って、お前たちが反応するのかよ!? 引っかかるなよ、忠告はしたからな!?」
早速、彼はカレーの器材をユーベルコードのレプリカクラフトで大量偽造。その場にいる猟兵たちに持たせ、突入と同時にサロン内へばら撒くように指示した。
だが、1セットだけ余ってしまった。
「そういえば、火奈本さんがいないな? どこ行った?」
「お待たせしました、私は此処です」
めっちゃぜーぜーと肩で息を切る火奈本。レジ袋を手に提げていることから、どこかに買い出しに行っていたようだ。
「火奈本さん、何を買ってきたんだ?」
「カレーのルゥです。これで信者の気を惹いてカウンターを狙います」
火奈本の返答に波狼はですよねーと無言で納得した。
メンツが揃ったところで、猟兵たちはいよいよサロンへ突入を試みる。ここで久世浦が気合の入った声を上げた。
「さぁ、突入よ! もう限界だね! 押すね!」
待って、何を押すの!? さすがにツッコミ疲れたんだけど!?
「ユーベルコード! カレー・ジャスティス、発動!」
あ、ユーベルコードね、オーケーオーケー! うん、どんどんやっちゃって!!
さて、彼女のユーベルコードについて解説しよう。
「この体はなんやかんやでカレーで出来ている」
つまりそういう事だ。自身の一晩煮込んだめちゃくちゃ美味しいカレーの為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する効果を有している。
久世浦はこれから、一晩煮込んだめちゃくちゃ美味しいカレーの為に邪神を滅ぼしにゆくのだ!
かくして、スパイスの香り高い邪神討伐の前哨戦がようやく幕明けとなった。
サロン内に突入した猟兵たち。水浸しかつ、甘い香りが充満した密室内でもがき苦しむ元会員の黄昏の信徒たちは、彼らを見るやいなや機械的に襲い掛かってきた!
まず動いたのは波狼だ。偽装したカレー器材を黄昏の信徒たちに向けてぶん投げた! 続いて他の猟兵たちも彼にならってぶん投げた。
(ミミックは……、その、なんか申し訳ないし。前回のことがあるし、うん)
あの去り行く際のミミックの様子が脳裏から離れない波狼だった。
信徒たちは目の前の器材を慌てて拾おうとその場でまごまごとしている。まさかの効果覿面だ!
だが信者たちの耳障りなカレーの大合唱が室内に響き渡る。このままでは猟兵たちの精神に被害が及び、信徒たちは高速移動を可能にしてしまう!
これを阻止すべく、まずはクレアが大出力のフォースセイバーで突出した信徒の一体を両断!
「先の資料を元に名付けるならば、クレア・ダイナミックです」
これに乗じて猟兵たちが畳み掛ける。
火奈本は買ってきたカレールゥを信徒たちの前で掲げてみせた。
「見ろ、此処にカレーがある。近くのスーパーに急いで買いに行った。レトルトだが……ジェロキアやハバネロ入り、辛さは邪神級(お子様には絶対食べさせないで下さい)と書いてある。欲しいか?」
アギ、アギギ、アギギギギ!
カレーの歌をやめ、奇怪な鳴き声を挙げながら信徒たちは火奈本(の掲げるカレールゥ)に殺到!
「そうか、欲しいか。ならくれてやる」
彼女はそのルゥを信徒たちの頭上へ放り投げた。
「ただし、それを味わうのは骸の海で、だがな」
火奈本の間近まで迫った信徒たちは急ブレーキ! 放物線を描くカレールゥを目で追っていった。
すかさず彼女はユーベルコードを発動!
「使いたくない技ではあるが、止むを得ない場合もあると言う事だ」
活性化させたヤドリギの根で覆われた拳が、信徒へ超高速かつ大威力の一撃を放つ! 直撃した信徒の身体は爆散!
「お肉を食べてパワーアップです!」
これに続かんとシシィがカレー用の肉を完食すれば、彼女の全身の細胞が活性化し戦闘力が跳ね上がる!
「流石カレー用のお肉です! 力が湧いてきます!」
シシィは迫りくるモーニングスターの一撃を回避する。足元が陥没! だが、お返しとばかりに、素早くお気に入りのカトラリーで豪快に信徒の仮面をカチ割った!
だが数が多い。シシィや猟兵たちに鉄球攻撃の連打が襲い掛かる!
ここにいる猟兵たちの殆どのユーベルコードがPOWを使用していた。
鉄球の一撃こそ危険だが、信徒のユーベルコードで敵が復活されることは阻止されたのは図らずして優位に立ち回れる展開だ。
あとは足場に気を付けて敵を片っ端から討てばいいだけだ。
この鉄球の雨を掻い潜り、信徒を確実に背後から打ち倒すのはカリーだ。あえて負傷したように見せかけ攻撃を自身に向かせると、グルメツールの先割れスプーンとユーベルコード『マサラアグニ』の火炎で一瞬で信徒たちを葬り去ってゆく。反撃の鉄球を回避しながら、今度は忍者手裏剣に衝撃波を纏わせて一瞬で撃破していった。
(一撃で終わらせる……! カレー好きの元会員たちへの、せめてものの弔いだ!)
心優しきカレー店主の、苛烈な攻撃によって信徒たちの数が目減りしてゆく。
一方、仲間を守らんと奮戦する傭兵の活躍があった。
「うおおおおっ! ここでインド人を右に!!」
注釈すると、久世浦が呼称するインド人とはハンドル、つまりステアリングホイールの事だ。それを思いっきり右に切ると、なんやかんやでモーニングスターの一撃を受け切ってしまった。インド人すげぇ。
彼女の発するオーラ防御も併用してか、久世浦はにたりと余裕を見せる。
「くくく、お前たちのカレーはその程度のものだったのか。まだまだ甘いな、カレー的にな!」
なんたるカレー的侮辱! 信徒たちは更なる攻撃を加えんと鉄球を振り上げる。しかし、その一撃は届くことなく、波狼の放つ衝撃波で信徒ごと吹き飛ばされたのだった。
「大丈夫か、久世浦さん!?」
「ありがとう、お礼に一晩煮込んだめちゃくちゃ美味しいカレーを御馳走しよう」
「お、おう!」
波狼はフックロープで信徒の脚を絡ませて転ばせながら、曖昧に頷いてみせた。
さて、密室内での大乱戦が繰り広げられる中、ライ・アインスは厨房に佇んでいた。
彼女の前には、脱出前に生成したカレーになれなかったダークマターこと『かわいそうなカレー』の入った鍋。
蓋を開けると、とんでもない異臭が立ち込め、火にかけていないのにぶくぶくを泡立っているではないか。
思わず猟兵たちと信徒は戦闘を中断。祭具(カレー)の残りがあったのか、と厨房を注視した。
すると、ユーベルコード『ヴァリアブル・ウェポン』を発動させたライの身体から内臓武器……武器ではなく、カレーを掬うお玉が出てきた。その場にいた一同の頭に?マークが浮かび上がる。
ライは暗黒物質『かわいそうなカレー』の入った鍋を抱えると、内臓されたお玉で近くの信徒にバシャバシャとぶっかけた!
ジュッ!
強酸性の刺激臭が密室に広がり、途端に信徒が溶解する音が聞こえた。信じられるか? これがカレーなんだって。
もはや、ただの劇薬と化した鍋の中身を信徒に何度もぶちまけるライに猟兵たちはドン引き。
一体、彼女は何を鍋に入れたのだろうか? 絶対に塩酸か硫酸の類はは突っ込んでるはずである。とうかお玉が酸で溶解してるし、鍋の底に穴が開きそうなんだが大丈夫か!?
もうこうなったら猟兵たちはカオスパワーで押し切るほかない。
密室内で逃げ場を失った信徒たちを、彼らは次々と片っ端から打ち取ったのだった。
信徒たちの身体がただの布切れへと変化して消滅してゆく。
カリーはこの悲しいカレーの事件に終止符を打つべく、サロンの奥の暗闇へ向けて叫んだ。
「責任者出てこい! カレーを冒涜しおって……、ただで済むと思うなよ!」
その声に反応したナニカが、ゆらり、と猟兵たちの前へ姿を現した……!
大成功
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第3章 ボス戦
『『黄昏色の信心』祈谷・希』
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POW : 偉大なる先駆者からの加護
自身の身長の2倍の【強化された眷属『黄昏の信徒』】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 神からの愛と赦しを貴方に
【麻袋を被り巨大な鋏を携えた屈強な拷問者】の霊を召喚する。これは【人切り用の巨大な鋏】や【手足や首を縛って吊るし上げにする鎖】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 肉と魂が死んだ時、貴方は『黄昏の救済』に召される
レベル×5体の、小型の戦闘用【拷問具を装備した歪な人形】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
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「なぜ、邪魔をするのですか……?」
儚げな表情のまま、猟兵たちの前へ進み出るシスターの姿があった。
「大好きな食べ物を最期に食べ、邪神様とひとつになれることがどれほど素晴らしいことか。猟兵の皆様にはご理解が戴けないようですね……」
悲しそうに、至極真面目にシスター服の女――『黄昏色の信心』祈谷・希が語り掛ける。
当然、猟兵諸君はこの女の言葉に耳を貸す必要は全くない。
要注意団体『黄昏秘密倶楽部』の目論む邪神復活の儀式を完全に食い止め、この事件に終止符を打て!!
ライ・アインス
カリーさんの言葉を聴いた猟兵達は皆同じ心境になっただろう。
カレーを一番冒涜しているのはライではないかと。
しかしライにその気は微塵もない。それ所かかなりの親切心と配慮の元で作られたカレーなのだ。普通の睡眠薬入りのカレーを作る筈が信者達が「刺激的なカレーが好き」と言うから、様々な【自主規制】を投入しただけである。信者達の為に。
『大好物を最期に食べて死ねたら幸せだろう』という考えの元。
つまりナチュラルにライもシスター並にヤバい子なのである。
うんうんとライはシスターの言葉に同調し、溶解したお玉の代わりに神のスプーンであの暗黒物質を掬うと無理やりシスターの口に突っ込んだ。凄いこのスプーン、全然溶けねぇ!
カレーを一番冒涜しているのは誰か?
その問いに対して、敵以外に該当する猟兵が存在した。ライ・アインス(愛を知った心優しき操り人形・f07320)である。よもやカレーを強酸性の劇薬にしてしまうほどの壊滅的な料理センス。もはや女将を呼べってレベルを遥かに超越してしまっている次元だ。だが、ライは決して悪意をもってあの暗黒物質を作ったわけではないのだ。じゃあ、なんで敵にぶっかけたんだって話になるんだが、それはそれである!
言ってみれば、かなりの親切心と配慮の元で作られた暗黒物質(カレー)なのだ。本当は制圧用として睡眠薬入りのカレーをこしらえる予定であったライ。だが、会員たちは「刺激的なカレーが好き」と言うので、ライは“もっと美味しくしよう”と頑張ったのだ。頑張った結果、様々な【ケミカルな自主規制をせざるを得ない品々】をカレーに投入し、誕生したのがあの暗黒物質なのだ。
それは『大好物を最期に食べて死ねたら幸せだろう』という考えの元で、奇しくも目の前の『黄昏色の信心』祈谷・希に近い考え方であった。ナチュラルにヤバイ奴、それがライ・アインスという女だ。そんな親切心で暗黒物質を作っちゃうライを心から愛してくれるという主様は、きっと凄く心の広い御仁なのかもしれない。
そんな憶測は一旦脇へ置いておいて、ライは無言でシスター祈谷に暗黒物質をスプーンで掬って口元へ。
「まぁ、ありがとうございます!」
シスター、自ら行ったぁ~っ!!
口に入れた瞬間にシスター祈谷は白眼を剥き、恍惚の表情を浮かべて歓喜した。
「びやぁぁぁあ~っ!? まずいぃいぃぃ!? 快感んんんんんんっ!!」
あっ、この人、被虐系の趣味がある人だ。絶対にそうだ!
「ひゅ、ひゅばらしいれす……っ! この世に、こんにゃ絶望的な味覚ぎゃ、存在、ひたの、れすね
……!?」
しかも、痙攣しながらめっちゃ感謝されてるぅ!? さすがボス級オブリビオン。強酸性の暗黒物質を体内に取り込んで快感で見悶える程度で済まされるとは!
ライは更に鍋の中の暗黒物質をシスター祈谷の口の中にねじ込み始めた。だが、シスターは拒絶するどころか喜びに打ち震え、どんどん暗黒物質を咀嚼してゆく! そのうちに鍋の中身は底を尽き、2人は何故か向かい合ってお辞儀。
「ごちそうさまでした……! 結構なお手前で……」
レイは奇妙な敗北感を胸に抱きながら、すごすごと後退してゆく。
ユーベルコードを使用した戦闘ではなく、カレーという名の精神的な戦いにレイは敗北したのだ。
だが、彼女はふと、手元の神のスプーンを見て驚愕する。
凄いこのスプーン、全然溶けねぇ!
至極、どうでもいい事実だけが残った。
苦戦
🔵🔴🔴
久世浦・穗積
出てきたなラスボス!…おっと予想とは違ってかわいこちゃんだった
だけど、カレーを悪用して邪神召喚とか笑えないんだよね
絶対に許さない!!
私の体を通して湧き出る偉大なるカレーパワーよ
極限まで高めるんだああああ!
さあ、勝負よ
似たような力使うようだからガチンコでぶつかれるわね
どっちが喚んだものの方が強いか、決めようじゃないか
【召喚・華麗魔神】!!
ムキムキマッチョなナイスインド華麗魔神が現れて
敵を殴り倒してくれるぞ
シスターには服の白い部分にカレーの染みが撥ねて落ちなくなる呪いを
かけてやるう
あと、早く帰ってカリーさんのカレーが食べたい
波狼・拓哉
急募・ツッコミ。…いやマジで。ところで、ここまでの流れ見てて思ったけど別にカレーじゃなくてよかったよね???ただの辛いものというか食っててダメージ受けそうなのが好きなだけだよねこれ!?…あ、答えは聞いてないし聞く気もないです…うるせぇ(ミミックin)カレーぶつけんぞ。
というわけで二度目の召喚。あれがカレーを食わせた元凶だ。ぶっ潰してこい。(命令した事実からは目を反らす)大好きな食べ物は毎日食べるから意味があるということを分からせて来い。
ミミックが真っ直ぐ突っ込めるように召喚されたモノに対して衝撃波やロープを使っての撃破や邪魔等のサポートを。そのまま本体は他の人に任せ周りの掃討に移行する。
カリー・ボーン
心情:(ライとシスターの1戦を見て)ああ…確かにこれではあのようなカレーになるか……が、それと今回の一件はまた別だ。きっちり責任を取らせて退場願おう。
作戦:SPD、オルタナティブ・ダブルで撹乱戦法を取る。「衝撃波」で威嚇してからUCで移動。死角からの「だまし討ち」「暗殺」で攻撃。俺の別人格のカリー・ブラックは情け容赦ないからな……覚悟してほしい。いざとなればシスターを羽交い締めにしてでも動きを止め、仲間たちに託そう。
そろそろ店で煮込んでるカレーがいい感じに仕上がる頃だ。ここで決めさせてもらおう!
火奈本・火花
「大好きな物を最期に食べたい、という信条は理解出来るが……違う、そうじゃない。美味しいカレーで死にたいんじゃない、美味しいカレーは美味しいカレーで味わってから、覚悟を決めたい――そういう話ではないのか?」
■戦闘
カレーを食べさせるという名目を作れば、あのシスターを捕獲・収容する事が出来そうだな
毎食のカレーをプロトコルに組み込めば、案外従ったりするのだろうか……?
とにかく、彼女の動きを止めてしまおう
「クイックドロウ」で先程のカレールゥを見せつける。拾っておいたのだ、後でUDC組織の同僚に美味しく食べて貰うものだしな
それで「誘き寄せ」、キャプチャーで縛り上げて……彼女は固形のルゥでも食べるのだろうか
シシィ・オクトニーア
いよいよ責任者、もとい敵のボスの登場ですね。
食べ物を使っての邪神復活の儀式なんて狼藉、阻止させていただきますよ!
その野望、一切合切平らげます!
ここが正念場、他の猟兵の皆さんと協力して戦いたいですね。
今回は先程までの信者さんたちよりも難敵だと予想されるので、生まれながらの光で仲間の皆さんのサポートを中心に頑張りますよ。
対象は最も傷付いている味方、次に前線で戦っている味方を優先して回復いたします。
回復の必要が無くて、かつ疲労が蓄積している状態でなければ攻撃に参加します。
歪な人形を召喚されたらそちらへの攻撃に専念し、黄昏の信徒を召喚されたらボス本体の動きに注意して攻撃を避けるようにしたいです。
クレア・フォースフェンサー
儀式に使われるカレーを回収し、無理矢理信徒を増やさんとする邪神は骸の海に返してあげる。これみんな、猟兵の仕事なんです。
心情
祈谷はカレー好きな人達を利用していたに過ぎない。
もしスイーツを使われていたら、自分は抗えただろうか。
「どんなカレーな邪神が出てくるのかと思っていたら……ガッカリです!」(好きな食べ物を利用するなんて許せません!)
手段
狭い空間を利用して、四方から光剣で攻撃。
強化眷属は、超近接戦。「これでその武器は使えないでしょう、祈谷!」
あれ? これ沢山出てきたら、動けるスペースなくなる?
拷問者には念動でカレーで目潰し。人形には暗黒カレーをぶつけ……あれ? ない!?
「出てきたなラスボス!」
久世浦・穗積(戦争論・f01538)がシスター祈谷を指差して叫んだ。
だが、久世浦は内心、少し驚いていた。
(おっと予想とは違ってかわいこちゃんだった)
だが、目の前の女はカレーを使って幾多の命を弄んできた元凶である。
「だけど、カレーを悪用して邪神召喚とか笑えないんだよね! 絶対に許さない!!」
その傍ら、熾烈な精神バトルの一部始終を目の当たりにしたカリー・ボーン(戦うカレー屋・f06236)は、あの暗黒物質カレーのなんたるやを知り、複雑な想いを胸中に抱いていた。
(ああ……、確かにこれではあのようなカレーになるか……。だが!)
彼はシスター祈谷を毅然と睨み付けた。
「今回の一件は暗黒カレーとはまた別だ。シスター祈谷、お前にはきっちり責任を取ってもらって御退場願おう」
シスター祈谷はカリーの態度に失望の色を露わにする。
「残念です。カレーを好む同士、話し合える相手かと思っておりましたが」
「お前と俺を一緒にするな……!」
「そうです! 食べ物を使っての邪神復活の儀式なんて狼藉、阻止させていただきますよ!」
シシィ・オクトニーア(金剛石は宝石箱から旅立つ・f03316)も、フードファイターとして今回の事件を見過ごすわけにはいかない。
「あなたが責任者、ではなかった、今回の事件の元凶ならば、その野望、私が一切合切平らげます!」
「ちょっと待った!」
なにやら物言いたげな波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)が会話に割って入る。そして真剣な表情で叫んだ。
「この場にツッコミ役はいないのか!? 急募・ツッコミ!! いやマジで!! だって冷静に考えてみてくれ。別に今回の事件、カレーでなくてもよかったよね???」
彼の発言に、密室内の空気が凍り付く。
「えっ? なんでみんな固まるんだよ? だって目の前の元凶は食べ物でダメージを受ければいいっていうドMで、それがたまたまカレーなだけだったってだけだろう? 極論、ハバネロやジョロキアでも良かったんじゃ……」
波狼の顔へシスター祈谷はおろか、カレー好き猟兵たちの視線が一点に突き刺さる。居た堪れなくなった波狼はすぐに折れた。
「あ、答えは聞いてないし聞く気もないです……」
「それでは、少し黙ってもらえないでしょうか? 今、カレー好きの猟兵の方たちと大事な話をしていますので……」
「うるせぇ、シスター祈谷! ミミックに詰まったカレーぶつけるぞ!? あと俺も猟兵だからな!?」
「えっ、ぶつけてくれるんですか!? 内角高めでお願いします!!」
「わくわくすんじゃねぇよ、この変態シスターめっ! あと要求するコースが危険球じゃねぇか、いい加減にしろ!!」
波狼、ステイ! まだステイだ!! あと何でこんなにツッコミがいないかはこちらも分かんないや!!
このやり取りを黙って見守るのはクレア・フォースフェンサー(光剣士・f09175)だ。彼女は考える。
(祈谷はカレー好きな人達を利用していたに過ぎない。もしスイーツを使われていたら、自分は抗えただろうか)
実はお菓子大好きガールのクレアは、お菓子で邪神を復活させる儀式を想像してみた。ふつふつと怒りが込み上げ、彼女はシスター祈谷に向かって怒鳴った。
「どんなカレーな邪神が出てくるのかと思っていたら……ガッカリです!」
他人の好きな食べ物で邪神を呼ぶとは不届き千万。ならばやることは決まっている。
「儀式に使われるカレーを全て回収し、無理矢理信徒を増やさんとする邪神は骸の海に返してあげる。これみんな、猟兵の仕事なんです」
「そうですか……。あくまでも、あなたたちは私と戦うつもりなのですね」
硬い表情で猟兵たちの顔を見詰めるシスター祈谷。そんな彼女を、じっと見据える猟兵がいた。
「祈谷・希……。確か、随分と昔に同姓同名の女性が死亡している。調べは付いているんだ、過去からの亡霊(オブリビオン)め……!」
火奈本・火花(エージェント・f00795)が吐き捨てるように言葉をシスター祈谷へぶつける。
「お前は、私たちが止めてみせる。覚悟しろ」
「その言葉、そのままお返しします」
シスター祈谷は慈悲深い笑顔を猟兵たちへ見せて告げた。
「先に言っておきますけど……、私、自分で言うのも恥ずかしいのですが……」
おずおずと照れるシスター祈谷の足元から、頭から麻袋を被った小さな生き物がポコポコと湧き出てくるではないか!
「とっても、強いのですよ?」
猟兵たちは今まで感じた事のない覇気と威圧感に圧倒されそうになる!
これが、ボス級オブリビオンの力なのか!
猟兵たちが武器を構える。いよいよ決戦が始まった!
先手を取ったのは波狼だ。ユーベルコード『偽正・偽箱基態(ミミクリー・スタンダート)』を使用し、箱型生命体の霊ミミックを召喚する。
「あれがカレーを食わせた元凶だ。ぶっ潰してこい。大好きな食べ物は毎日食べるから意味があるということを分からせてやれ!」
呼び出されたミミックは、カレー食わせたのお前じゃね、って感じで詰め寄ってきたが、波狼が目を逸らして無視を決め込むと、ハイハイやりますよやればいいんでしょと言わんばかりにシスター祈谷へ突撃を開始。
波狼はミミックが一直線に攻撃をしやすいように、障害物を衝撃波で吹っ飛ばして道を作ってゆく!
だがシスター祈谷もこれに対して手をこまねいて見ているだけではない。
「肉と魂が死んだ時、貴方は『黄昏の救済』に召される……」
不吉な予言めいた言霊を吐くと、一気に200体の小型の戦闘用拷問具を装備した歪な人形を召喚してきたではないか!
「なにっ!? めちゃくちゃ多いぞ!?」
ミミックは人形に押し寄せられてタコ殴りにされてしまう! ひるむミミック!
「負けるな、ミミック! 俺も援護するぞ!」
波狼がミミックの後ろから衝撃波を放つと、人形が一撃で粉砕されてゆく。どうやら人形の耐久力は皆無に等しいらしい。
だが、このままではいずれジリ貧だ。波狼を救うべく、クレアが最前列へ飛び込んでいった。
密室の壁を蹴って三角飛び! そのまま本体のシスター祈谷に光剣で攻撃!
「ガラ空きだ!」
光の一閃がシスター祈谷の腹を真一文字に切り裂く!
「あぁんっ♪」
傷を受け、その痛みに快感を覚えて身を捩るシスター祈谷。だが散らばっていた拷問ミニ人形たちが一斉に消えてなくなったのは、攻撃によって意識が乱された証拠だ。
更にクレアは壁を蹴って三次元殺法! ヴァリアブル・ウェポンを発動させると、右手にエネルギーが集中して輝きだす!
ヴァリアブル・ウェポンを受けて、シスター祈谷は再び呪言を唱えた。
「偉大なる先駆者からの加護よ、どうか私をお守りくださいませ」
すると、シスター祈谷の身長の2倍の強化された眷属『黄昏の信徒』を召喚! シスター祈谷の動きに合わせて、巨大モーニングスターを振り上げる! だが、密室内は正直狭かった。
振り上げたところで、モーニングスターが天井にぶつかってクレアに届かない!
「これでその武器は使えないでしょう、祈谷!」
シスター祈谷の心臓に向けて、光輝く掌底が直撃!
「ごはっ……!? けふっ、けふっ! ……うふふ♪」
だが、クレアの一撃では倒れることがなく、もっとやってと言わんばかりに恍惚の表情を浮かべるシスター祈谷。
なんという耐久力! 自身がドMすぎて、生半可な攻撃では『プレイ』の一環と認識されてしまうのだろうか!?
「だったらこれはどうよ? 私の体を通して湧き出る偉大なるカレーパワーよ、極限まで高めるんだああああ!」
久世浦のカレーオーラが爆発的に膨張!
ユーベルコード『召喚・華麗魔神(サモン・カーレーザカリー)』によって、ムキムキマッチョなナイスインド華麗魔神が召喚された!
「さあ、勝負よ。似たような力使うようだからガチンコでぶつかれるわね。どっちが喚んだものの方が強いか、決めようじゃないか」
「ふふふ、望むところです!」
強化巨大信徒と華麗魔神が真っ向からぶつかり合う!
狭い部屋の中で互いに一歩も引かずに殴り会うので、部屋の内装はことごとく破壊され、壁は粉砕され、床は陥没してゆく!
「涅槃より現れ出ずるは淘汰の魔神。即ち是れ、勝ったも同然! ああ、今日もカレーが美味しい!」
久世浦のカレーへの魂の声が、華麗魔神の拳に宿る! その灼熱のカレーパンチは、強化信徒の顔面にめり込み、力任せに吹っ飛ばした!
「どうよ! あとシスターには服の白い部分にカレーの染みが撥ねて落ちなくなる呪いをかけてやるう!」
「それはちょっと困ります! やめてください!」
初めてシスター祈谷が弱音を吐いた。というか単なる抗議かもしれないが、カレー好きにとって服にカレー染みが付くのは呪い同然なのだ。精神的ダメージは大きい!
その隙にカリーはシスター祈谷へ衝撃波を撃ち込み撹乱! シスター祈谷が不意を突かれて床を転がってゆく!
次の瞬間、彼は『オルタナティブ・ダブル』を発動させ、もうひとりの自分である“カリー・ブラック”を呼び寄せる。
2人のカリーはそれぞれ密室の異なるインテリアの死角に隠れ、だまし討ちからの暗殺を狙う。
(俺の別人格のブラックは情け容赦ないからな……。シスター祈谷、覚悟してほしい)
「びっくりしました……。まさか、こんな狭い場所で衝撃波を連発するなんて」
瓦礫から這い出てきたシスター祈谷の姿を視認したカリーたちは、一斉に左右から挟撃を試みる。
「そろそろ店で煮込んでるカレーがいい感じに仕上がる頃だ。ここで決めさせてもらおう!」
しかし、シスター祈谷は落ち着き払った口調で呪言を唱えた。
「神からの愛と赦しを、貴方に」
すると、麻袋を被り巨大な鋏を携えた屈強な拷問者の霊が彼女の前に突如として出現! その手に握られた人切り用の巨大な鋏と手足と首枷が付いた鎖が、2人のカリーに襲い掛かる!
「なにっ!? ぐわぁぁーっ!?」
「ぐっ、ぎ、ぎぎ……っ?」
主人格のカリーは全身に切り傷を負い、ブラックの方は鎖で雁字搦めにされて天井に吊るされてしまう!
もう少しで本体へグルメツールが届くはずだったが、間一髪のところで阻まれてしまったのだ!
「まずはひとり、邪神様の元へ送って差し上げましょう」
ブラックの首元に鋏が添えられた。
「ブラック、戻れ!」
カリーがユーベルコードを解除して人格を統合させ、後ろへすかさず下がる。
「大丈夫ですか、カリーさん!? っ!? 酷い傷……! 今、癒しますから!」
慌てて『生まれながらの光』を発動させ、カリーの傷を癒してゆくシシィ。
「誰一人として、倒れさせませんよ!」
「すまない、シシィ。おかげで戦線復帰できそうだ」
「あら、聖者さんがいらしたのですか。これは厄介ですね?」
シスター祈谷は再び200体の拷問ミニ人形を呼び出すと、今度はシシィへ向けて大群を放った!
「でしたら、まずはあなたを壊せば、他の猟兵たちは何とでもなりますよね?」
「まずい! ミミック! シシィを守れ!」
波狼が指示を出すと、ミミックがシシィの前に立ちはだかって人形を破壊し始めた! 波狼とカリーも衝撃波で人形を破壊するも、一部がシシィに到達して交戦状態に。
「大丈夫です! 私はダイアモンドですから! この程度では砕けません!」
お気に入りのカトラリーをカレースプーンに変化させて振り回して応戦するシシィ。
そして勿論、火奈本も自動式9mm拳銃で人形を撃ち抜いてゆく!
だが、彼女の視線はシスター祈谷へ注がれていた。
(カレーを食べさせるという名目を作れば、あのシスターを捕獲・収容する事が出来そうだな)
火奈本はUDCエージェントである。彼女の目的は『UDCモンスターの捕獲・収容』である。彼女はシスター祈谷をどうにか自分たちの管轄下で捕獲・収容できないか、戦闘中に考えていたのだ。
(収容プロトコルにカレーを組み込めば、案外、素直に従うのだろうか……?)
物は試しだ、と火奈本は買ってきた超激辛カレールゥをクイックドロウの要領でシスター祈谷に見せ付ける。
すると、案の定、シスター祈谷の意識がカレーに向き、人形たちに動作が止まった!
「実は、さっき放り投げた奴を拾っておいたんだ。後でUDC組織の同僚に美味しく食べて貰うものだしな。だが、シスター祈谷。お前が本当に超激辛カレー好きだというのなら、このカレールゥに興味を惹かれないか? イマドキ、この程度の代物はスーパーやコンビニでも買えるぞ?」
「ま、まさか、今の時代はご家庭で簡単に激辛カレーが食べられるのですか!?」
衝撃を受けたシスター祈谷が、その現物を確かめようと数歩前へ歩み寄らんとした、その時!
火奈本が叫んだ!
「皆さん、今です! 総攻撃です!」
「しまっ……!」
誘き寄せられた、とシスター祈谷が気付いたときにはもう時すでに遅し。
「カリーさんの作ったカレーが食べたい!」
華麗魔神の鉄拳がシスター祈谷の鳩尾に突き刺さる!
「ミミック、今度こそお前の中身のカレーをぶつけてやれ!」
波狼の声に合わせてミミックが飛び掛かり、貯めこんでいた邪神用カレーをシスター祈谷へ浴びせ倒す!
「私も攻撃します! カレーは楽しく美味しく食べるのが一番です!」
巨大化したシシィのカレースプーンがシスター祈谷の脳天に直撃!
「これより、フルパワーで目標へ攻撃します」
クレアの両掌が眩く輝いたかと思えば、彼女は床を蹴り弾丸めいて爆ぜる。そのまま輝く両掌をシスター祈谷の胸部へ押し当てた。圧縮されたエネルギーが、UDCモンスターの体内で反響・増幅して内部破壊を引き起こす!
「ごぷっ!? うふ、うふふふ! すごい、すごいです! こんな、きもちいいの、はじめて……っ♪」
「「ならもっと気持ち良くしてやろう」」
オルタナティブ・ダブルで2人に増えたカリーが、今度こそ挟撃に成功! シスター祈谷の両サイドから突き刺さる無数のマシンガンめいた忍者手裏剣!
そして再び人格を統合させると、カリーはシスター祈谷の背後に回って羽交い絞めにした!
「火花! 今だ、決着を!」
「ありがとうございます、カリーさん。さて……」
火奈本はエージェントグローブを装着した。これは艶消しにより視認性を下げた強靭な鋼糸の射出・巻き取りが可能な手袋だ。
「捕獲任務はエージェントの得意分野だ――舐めるなよ」
グローブからUDC捕獲用特殊鋼糸を放出! カリーが拘束を解いて離脱した次の瞬間、鋼糸がまるで生き物のようにシスター祈谷の身体に巻き付いてゆく!
更に! 火奈本がグローブから伸びる鋼糸を怪力でもって手繰り寄せ、目の前のUDCモンスターを締め上げてゆく!
砕ける肋骨、大腿骨、頸椎、その他諸々の骨と筋線維をズタズタにしながら目標を絡め取っていった!
「はぁ……はぁ……。もう、らめぇ……♪」
快楽で痙攣しながら顔を赤らめ、鋼糸でぐるぐる巻きにされたシスター祈谷が床に転がった。
火奈本はスマートフォンを取り出し、どこかに連絡を取りだした。
「火奈本です。目標『黄昏色の信心』祈谷・希の捕獲任務を完了。現時刻をもって、本件の終息を確認。至急、捕獲対象の移送の準備をお願いします」
こうして、猟兵たちは邪悪なカレーによる邪神復活の儀式を完全阻止することに成功したのだった!
火奈本は床に転がるシスター祈谷に問い掛けた。
「大好きな物を最期に食べたい、という信条は理解出来るが……違う、そうじゃない。美味しいカレーで死にたいんじゃない。美味しいカレーは美味しいカレーで味わってから、覚悟を決めたい――そういう話ではないのか?」
その問いに、シスター祈谷が慈しみの表情を湛えて答えた。
「そうですね。死んでいった信者たちも、何故かその事に気が付いてもらえませんでした。まさか、猟兵のあなたが真っ先にその考えに至るなんて……。笑えませんね」
「笑えて堪るか。お前がそれを教えないせいで、一体、何人が死んだ?」
「……さぁ?」
その答えに、火奈本は思わず舌打ちをした。そして、再び彼女は目の前の怪物に告げる。
「お前はもう、骸の海へは帰れない。これから未来永劫、私の管轄部署の収容所(ハコ)の中だ。どうだ、今の気分は?」
それにシスター祈谷はうっとりと目を輝かせていた。
「悪くありませんね……。いつ何時、命を奪われるか判らない状況で、永遠に強制収容されるなんて……。これって究極の放置プレイじゃないですか。ああ……わくわくしてきました……」
「駄目だこりゃ……」
火奈本は自身の所属する部署の応援が来るまでの間、今回戦った仲間でカリーの店で祝勝会をやろうという相談に交じる事にした。
なお、カレー臭の苦手なクレアはひとり、ケーキバイキングをエンジョイしていた。
「戦いの後のケーキは美味しいです
……!!」
オチがカレーじゃないんかぁーい!?
大成功
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最終結果:成功
完成日:2018年12月31日
宿敵
『『黄昏色の信心』祈谷・希』
を撃破!
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