あなたとわたしのものがたり
●まわれ、まわれ
『~~♪』
ぽん、ぽろろん。ぽろん、ぽろん。
金属が弾かれ音を奏でる。音の主は怪人なる異形のものにして、しかし優雅で美しかった。
メリーゴーランドの頭部にバレエの舞姫の身体をした「それ」は、先日起きた戦争「バトルオブフラワーズ」に於いて平和が訪れたと思われた、ここキマイラフューチャーにいまだ息を潜めていた。
それは、本能のままに。己の居場所とも言える遊園地で、キラキラ煌めく思い出を与えんとする。
だが、それはどこまで行ってもオブリビオン。過去で未来を侵し、滅ぼすもの。
それは――『ギヴ』なる者は、今まさに甘い誘惑で人々を籠絡しようとしていた。
●ゆうえんちへいこう
ある日、猟兵たちをグリモアベースの一角に呼び集めたニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は、その指先に何かのチケットのようなものを挟んでかざして見せながら口を開いた。
「皆は、遊園地なる所に興味はあるかな?」
このグリモア猟兵、またろくでもない予知をしたのか。そう身構える猟兵たちを見やって何となく己が置かれた状況を察したのか、即座に補足の説明に入る。
「……いや、先日晴れて戦争で勝利を収めたキマイラフューチャーなのだが。それでもまだ怪人の残党が存在するようでな。ひと騒動起こそうとしている気配を察知したのだ」
そう言ってニコがスッと猟兵たちに向けて差し出したチケットのようなものには――。
『わくわくキマイラランド』
――略して、WCL。キマイラの綴りは「CHIMAIRA」なので真ん中はCなのだ。いやそういう問題じゃない、もう少しこのネーミングはどうにかならなかったのか。
「……ターゲットとなる客層は基本的に子供連れのファミリー層のようだが、カップルがデートで利用したり、熱烈なファンともなればお一人様での来園も余裕らしい」
なので、例え相手が居らずとも心配は無いと言外に告げつつ、ニコは続ける。
「丁度皆に現場に向かって貰う日は、飛び入り歓迎の芸を披露するショーの時間も設けられている。普通にアトラクションで楽しんでも良いし、自分が他の来園者であるキマイラ達を楽しませる側に回っても良いだろう。先ずは各々、思い切り日常を謳歌してきて欲しい」
そうして過ごしていれば、怪人たちの残党がまずは集団で現れるという。それらを蹴散らせば、いよいよ残党の親玉が現れるので、やっつけて事件を解決して欲しいということだ。
「チケットの用意は此方で引き受けよう、気兼ねなく楽しんだ上で……油断無く怪人を倒して来て欲しい。良き土産話を待っている、どうかお気を付けて」
用意した遊園地のチケットを猟兵たちに手渡すと、空いたその手で虹色の星型のグリモアを起動させるニコ。
さあいざ征かん、わくわくキマイラランドへ――!
かやぬま
●ごあいさつ
初めまして、もしくはお世話になっております、かやぬまです。
先の戦争では皆様お疲れ様でした、平和が訪れたはずのキマイラフューチャーにていまだ潜む怪人の魔の手から遊園地を守って頂きたく思います。
第1章:日常パート
舞台は遊園地「わくわくキマイラランド」です、一般的な遊園地でできることは大体できるとお考え頂いて大丈夫です。
PSW各項目は参考程度に、皆様思いのままに遊園地でのひと時を楽しんで下さい。
ご参考までに、舞台となる時刻は一律日中として描写する予定です。
(イルミネーションおデートなどのご要望にそえず申し訳ありません……!)
おデートでも団体様でも、お一人様でもドンと来いです! こちらで何とかします!
※特に複数名でご一緒の予定がお有りの方は、MS個人ページも一読頂けますと幸いです
第2章:集団戦
>>突然の襲撃<<
となる予定です。脈絡もなくオラついてくる予定なので、サクッと蹴散らして下さい。
第3章:ボス戦
ちょっと変わった敵の親玉が登場します。
無粋ながら、皆様のお心の裡をお伺いすることになるかも知れません。
●ごあんない
第1章はOPが公開され次第の受付となります、断章の投稿がない状態でもプレイングが出来上がりましたらPL様のご都合の良いタイミングで是非お越し下さい。
第2章以降は、スケジュールを立てながら都度ご連絡致しますので、恐れ入りますがMS個人ページやTwitterなどをご確認頂けますと幸いです。
あと、試験的にですが、今回は状況次第でプレイングの受付に〆切を設けるかも知れません。現時点ではあくまでも可能性なので、ひとまずお気になさらずお願いします。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 日常
『巨大遊園地でエンジョイしよう!』
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POW : 絶叫マシンやお化け屋敷などスリルいっぱいにエンジョイ
SPD : 観覧車やショーなどのんびりエンジョイ
WIZ : ショップやレストランなどアトラクション以外でもエンジョイ
イラスト:pico
👑5
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●おしらせ
早速のプレイング、誠にありがとうございます!
詳細はMS個人ページに記しましたが、
恐れ入りますがプレイング受付期間を
ひとまず「6/10(月)18時まで」と
させて頂きたく思います。
複数名様でのご参加を頂ける場合などで
今まさにご相談の最中かとは存じますが
恐れ入りますがご理解とご協力をお願いできますと幸いです。
夢いっぱい詰め込んで頑張りますね、
よろしくお願い致します!!
トリトニア・リトルフィールド
◎【WIZ】
遊園地に来るのははじめてですねぇ。遊園地……どんな美味しいものがあるんでしょうか。
むむ、この香りは揚げたてのフライドポテト。それにこの甘い香りは……なんでしょうか。とにかく行ってみましょう。
なるほどー、遊園地ではところどころに売店があるんですねぇ。お腹が空いた時にすぐに手近な売店に寄れるのは素敵です。
この甘い香りは……チュロスって言うんですね。それにキャラメル味のポップコーンも。それじゃあ、チュロスとこのポップコーンの一番大きいサイズをください。
ポップコーンの入れ物は紐がついてて食べ歩きしやすいようになってますし、便利ですねぇ。
不思議な建物が多いですし、のんびり見て回りましょう。
●わくわくぽっぷこーん
猟兵たちが転送されたのは「わくわくキマイラランド」、通称「WCL」の入場ゲート前であった。ある者は連れ立ってワイワイと、またある者は一人で自由気ままに楽しむべく、あらかじめ用意されたチケットを手に次々とゲートを通過していく。
(「遊園地に来るのははじめてですねぇ」)
WCLがお一人様にも優しいテーマパークであるとはいえ、ソロで遊園地デビューとはなかなか肝が据わっているトリトニア・リトルフィールド(私の食欲は海のごとく・f09248)である。これは将来大物になるぞ! いやもう既に立派な大物だよ!
「遊園地……どんな美味しいものがあるんでしょうか」
入場ゲート付近に用意されていた園内案内のパンフレットで自分の現在位置を確認しながら、トリトニアは特にパンフレット内の食事に関する項目を注視していた。
WCL内はいくつかの異なる世界観に応じたエリアごとに関連するアトラクションやレストランなどが設けられており、そのエリア限定のフードというものももちろん存在する。
トリトニアのお目当てはズバリ、遊園地でのグルメを満喫することにあった! これならむしろお一人様の方が気兼ねなく好きなお店に行けて良いかも知れない。
「なるほどー、遊園地ではところどころに売店があるんですねぇ」
お腹が空いたなと思った時、ちょうど眼前に美味しそうなフードを販売しているお店があったとしたら? 誰だって直行する、おれもそーする。誰だお前!
(「お腹が空いた時にすぐに手近な売店に寄れるのは素敵です」)
食べるの大好きトリトニアさん、これにはニッコリ。遊園地サイドもニッコリ。win-winの関係ですね!
パンフレットとにらめっこすることしばし、トリトニアはWCLのお食事処のシステムを大体把握したのか顔を上げると、ドラゴニアンたる所以である薄桃色と水色が混じり合った幻想的な色合いの尾を揺らしつつ、園内に歩を進めていった。
パンフレットの記載通り、建物を構えたレストラン以外にも園内の至るところにフードを販売するワゴンが点在しており、そばを通りかかるたびに美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
(「むむ、この香りは揚げたてのフライドポテト」)
あるワゴンの前を通りかかったトリトニアを惹きつけたのは、作りおきではない、揚げたてアツアツいい匂いのフライドポテトを提供してくれるワゴンだった。
思わず立ち止まりそうになるも、トリトニアの(特に食に関して)鋭い嗅覚が、園内のさらに奥からただよう「ある匂い」を捉える。
(「この甘い香りは……なんでしょうか」)
とにかく行ってみましょう、ということで内心泣く泣くフライドポテトに別れを告げ、漂ってくる甘い匂いの元を探る。
――そうしてトリトニアがたどり着いた場所は、チュロスとポップコーンを取り扱うワゴンであった。甘い匂いの出処は、どうやらこのワゴンで間違いなさそうだ。
ふんふんと軽く鼻を鳴らし、ワゴンで販売されている食べ物を見るトリトニア。ポップコーンはひと目見てそれだと分かったが――この棒状のドーナツのような食べ物は一体何だろう? 自分が感じ取った匂いの正体は恐らくポップコーンではなくこの食べ物のようなのだが……。
トリトニアは、意を決してワゴンの店員に尋ねてみることにした。
「すみません、この細長いドーナツみたいなものは、何ですか……?」
「ああ、こちらはチュロスという揚げ菓子です! 食べながらお気軽に園内を散策できますしオススメですよ」
なるほど、トリトニアを魅了した甘い香りの正体はチュロスなる食べ物だったのか。
しかし、隣に山と用意されているポップコーン……薄茶を纏っている外見からして恐らくキャラメル味なのだろう、そちらも非常に気になる。
どうしたものか。いや何を迷うのか、迷ったら両方食べればいいんだよォーッ!!
「それじゃあ、チュロスとこのポップコーンの一番大きいサイズをください」
「ポップコーンは紙の容器と専用ケースの二種類がありまして、たくさん入るのは専用ケースの方ですが……」
「はい、専用ケースに入れてお願いします……!」
ポップコーン専用ケース。その正体は「エリアごとのイメージキャラクターをモチーフにしたポップコーンを何度でも詰め替えられる専用の容器」のことであった。
ちなみにトリトニアが入手した容器は、どうやらウサギのキャラクターがモチーフになっているようだった。ぴょこんと飛び出たお耳で若干中身が取り出しづらいが、そこはそれ。
専用容器にこれでもかとポップコーンを詰め込んでもらいチュロスと共に受け取ったトリトニアは、容器に取り付けられていた紐を肩から斜めがけにすると、チュロスを片手に再び園内を散策し始める。
食べ歩きがはかどりますね、と上機嫌で園内の不思議な建物をのんびり見て回るトリトニア。今日はいっぱいいろんなものを食べていって下さいね!
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加。【アドリブ歓迎】
ふむ、遊園地か旅暮らしで遊園地は無縁だったねえ。今からでも親子連れで楽しむのもいいね。奏、食べ物は逃げて行かないから一つずつ買おう。勿論望みの物は全部買ってあげよう。今日は特別だ。瞬も欲しいものあったら遠慮なくいうんだよ。
え?食べ物の前に絶叫マシン制覇?アタシにそれに付き合えって?全く。まあ、スピードあるものは好きだ。若者に紛れてはしゃぐのも悪くない。制覇といったからには成し遂げるんだよ?とことん付き合うさ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。【アドリブ歓迎】
家族3人で遊園地!!今まで無縁だったので凄く楽しみにしてました!!勿論遊園地フードも!!ポップコーン、チュロス、アイス、チーズドック、テリヤキチキンレッグ・・・(響の言葉に)あ、一度に一杯言ったら、戸惑っちゃいますよね。え、何でも買ってくれるんですか(目をキラキラ)
あ、一杯食べる前に、絶叫マシン制覇です!!遊園地の醍醐味といったらこれでしょう!!響母さん、瞬兄さん、行きますよ!!いざ参る!!(半ば強引に引っ張っていく)
神城・瞬
【真宮家】で参加。【アドリブ歓迎】
遊園地ですか。確かに旅暮らしでは遊園地は無縁ですよね。ええ、今からでも遅くありません。3人で楽しみましょう。・・・奏、相変わらずの食欲で。(響の言葉に)いえ、奏の話だけでお腹一杯なので、気持ちだけ受け取っておきます。
え?食事の前に絶叫マシン制覇?(溜息)女性2人が乗り気になったら止められないのは知っていますので、付き合いましょう。こういう時間も貴重ですからね。(奏に引っ張られていく)
●かぞくさんにんみずいらず
――思えば、流浪の身である自分たちにとってみれば、「遊園地」なるものはとんと無縁のものだった。
そんな【真宮家】の母子三名は、猟兵の仕事の一環として堂々と「遊園地」を堪能できるという今日のこの日をそれはもう心待ちにしていた。
「家族三人で遊園地!! 今まで無縁だったので凄く楽しみにしてました!」
紫水晶を思わせる瞳を文字通りキラキラと輝かせ、声を弾ませるのは真宮・奏(絢爛の星・f03210)。緩いウェーブがかかった茶色の髪が、喜びに任せて動く身体に合わせて揺れる。
「ふむ、遊園地か。旅暮らしで遊園地とは無縁だったねえ」
娘も息子も立派に成長し、自身もそれなりの年齢を重ねてきた。しかし、今からでも決して遅いなどということはない。親子三人水入らず、楽しむのも良いだろうと母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)は思う。
「遊園地ですか……確かに旅暮らしでは遊園地は無縁ですよね」
母――正確には義母であるが、それは些末な話だ――の言葉を受けて、しみじみと同意の言を返すのは神城・瞬(清光の月・f06558)。
「ええ、今からでも遅くありません。三人で楽しみましょう」
怜悧な容貌を親愛なる家族に向ける優しいものにして、瞬は母の意を汲んだかのように今日は存分に楽しもうと声をかけた。
「そうですね! 遊園地と言えば食べ物です! ええと、ポップコーン、チュロス、アイス、チーズドッグ、テリヤキチキンレッグ……」
「奏、奏。いいかい、食べ物は逃げて行かないから一つずつ買おう」
(「……奏、相変わらずの食欲で」)
最初からテンションが振り切れんばかりの勢いな奏が、今日堪能したいとあらかじめ下調べをしてきたここ「わくわくキマイラランド」で提供されているフードメニューを指折り列挙していくのを、ウェイトウェイトという感じで響がやんわりと制する横で瞬が内心そっと嘆息していた。
そうですね、よほど閉店ギリギリとかでない限り売り切れ御免ということはないですからね、焦らず行きましょうね!
「……あ、一度に一杯言ったら、戸惑っちゃいますよね」
ごめんなさいが素直に言える子は良い子だってばっちゃが言ってたんですが奏さん実際良いお嬢さんだからね、俺は詳しいんだ。だから誰だお前!
「いいさ、勿論望みの物は全部買ってあげよう。今日は特別だ」
「え、何でも買ってくれるんですか!」
太っ腹な母ちゃんの発言に、先程からキラキラしっぱなしの奏の瞳がめっちゃキラキラする。もちろん忘れてはいないとばかりに瞬にも声をかける響。
「瞬も欲しいものあったら、遠慮なくいうんだよ」
「……いえ、奏の話だけでお腹一杯なので、気持ちだけ受け取っておきます」
両の手のひらをそっと響に向ける仕草で申し出をやんわりと辞退する瞬だった。
じゃあ早速食い倒れツアーと洒落込もうか、と思われたその時だった。
「あ、一杯食べる前に、絶叫マシン制覇です!! 遊園地の醍醐味といったらこれでしょう!!」
「「え?」」
拳を天高く突き上げて宣言した奏に、響と瞬が思わず同時に同じ声を上げた。見事なハモりであった。
確かに、遊園地の花形アトラクションといえば絶叫マシンに違いない。ここわくわくキマイラランドことWCLにも、高々度から一気に落下するとかぐるんぐるん回転するとか、そういう類の絶叫マシンが数多く取り揃えてあるのだが。
「奏、アタシにそれに付き合えって?」
「もちろんです! 一人じゃさびしいじゃないですか!」
「……全く。まあ、スピードあるものは好きだ」
遊園地が初めてならば、当然絶叫マシンも初めてな訳で。そのスリルと興奮は風の噂で耳にしたものでしかないが。
「じゃあ決まりです! 響母さん、瞬兄さん、行きますよ!!」
がっし。
奏がその見た目からは想像もつかぬ程の強い力で、母・響と義兄・瞬の腕を片方ずつ掴み、半ば強引に手近な所にあったあからさまに最高到達点がヤベーやつに向かってズンズンと進み始めたのだ。
(「女性二人が乗り気になったら止められないのは知っていますので、付き合いましょう」)
――こういう時間も貴重ですからね。そんな事を思いながら、ほぼ無抵抗で奏に引っ張られていく瞬。大丈夫? 将来尻に敷かれたりしません?
(「若者に紛れてはしゃぐのも悪くない」)
いやいや言うて響さんもまだ充分お若いですよ! 特に見た目! どうぞ存分にはしゃいじゃって下さい!
そうしてアトラクション(ヤベーやつ)の待機列に並んだ真宮家御一行様、順番が来て座席に通された時の座り方で若干譲り合いが発生したのだが、なんやかんやで奏と瞬が隣同士で座り、そのすぐ後ろで響が見守るような形で着席したとか。
「いざ参る!!」
ガタンと発車したその時に、奏が元気良く声を上げた。そう、それはまるで戦いに挑む戦士がごとく――。
~数時間後~
「ひ、響母さん……私、そろそろ限界です……」
「何言ってるんだい、制覇と言ったからには成し遂げるんだよ? とことん付き合うさ」
「ええっ……!」
「それに、その後は遊園地フードを堪能するんですよね? 奏?」
WCL園内に設けられた絶叫マシンのおよそ三分の二は乗った。頑張った方である。そこで遂にはしゃぎまくった反動が来たのか、それとも想像を超えた刺激であったのか、奏が母にギブアップを申し出るも。
響母さんはスパルタンだった。そして、義兄の瞬も平然とした顔をしていた。奏としてはもう絶叫マシンはお腹いっぱいなので早々にフードツアーに移りたかったのだが、そうは問屋が卸さないといったところか。
「ううっ……が、頑張ります……」
よろよろと未踏破の絶叫マシンに向かう足取りは重いが、いざ乗ってしまえばなんやかんやで楽しいのは確かだ。
真宮家のエンジョイ遊園地タイムは、まだまだ続く――。
大成功
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榎・うさみっち
【こんとんのやきゅみっちファイターズ】で参加だ!
これはグループ参加だ、いいね?※ソロ
ここがわくわくキマイラランドかー!
心なしか俺のゆめのくにうさみっちランドと似ているような?
さーて何から制覇していこうかな!
目についたのは超おどろおどろしい雰囲気漂うお化け屋敷
……いや、初っ端からこれに入らなくても…
\へいへーい、監督ビビってるー/
ビ、ビビってねーし!やってやろーじゃねーかよコノヤロー!
というわけでやきゅみっち達で周りを固めてGO!
少女のすすり泣きが聞こえたり
壁から突然骸骨が出てきたり
頬に冷たいこんにゃくが当たったり…
\ぴゃああああ!!/
もうやだ帰るー!!
やきゅみっち!俺より先に行くんじゃねぇぇ!
●うさみとゆかいななかまたち
「これはグループ参加だ、いいね?」
開口一番カメラ目線で言い放った榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の背後には、一軍メンバーのみならず二軍からコーチ陣まで、ずらり勢揃いした【こんとんのやきゅみっちファイターズ】の所属選手たちの姿が! アッハイこれはグループ参加です。間違いない。ユーベルコードってすごい。
何というか、こう、少年野球チームのレクリエーションかな? という雰囲気をかもし出しながら、うさみっち監督は可愛いチームメンバーを引き連れて入場ゲートを通過していく。
監督であるうさみっち自身は羽があるのでぶーんぶーんと悠々飛んでいくが、やきゅみっちたちにはそれがない。グラウンドを駆け回る選手たちだからなのか、とてとてとちっちゃい歩幅で次々とゲートを……これほぼくぐり抜けてますね……。
「ここがわくわくキマイラランドかー! 心なしか俺のゆめのくにうさみっちランドと似ているような……?」
うさみっちさん、それは多分既視感という現象です。もしくは親近感というか。わくわくキマイラランドは決して入園料をツケ払いにしたり、滞納した人の所にグラサン黒スーツのワルそうなフェアリーが取り立てに来るとか、そういった闇はございません。
さておき、うさみっちはたくさんのやきゅみっちたちを引率する立場にある。ご丁寧に用意されていたフェアリーサイズのパンフレットを片手に、広い園内を見回した。
「さーて、何から制覇していこうかな!」
ぐるりと目線を巡らせて、ふと視界に飛び込んできたのは――それはもうものごっつくおどろおどろしい雰囲気が漂う、お化け屋敷であった。
\監督ー! あそこ行こうぜー!/
後ろに付いて来ていたやきゅみっちたちがわいのわいのとお化け屋敷を指差して要求するが、これにうさみっち監督が難色を示す。
「……いや、初っ端からこれに入らなくても……」
\へいへーい、監督ビビってるー/
まさかの身内からの煽りである。これはひどい。チームワークに不安を感じます。
「ビ、ビビってねーし! やってやろーじゃねーかよコノヤロー! 半端ないとこ見せてやるよお前ら!!」
これは……! 野球の上手い芸人ムーブだ……! キャッキャと喜び勇んでお化け屋敷に飛び込んで行こうとするやきゅみっちたちをぶーんと先回りして一旦制すると。
「いいか、ここは前進守備で行く! という訳でお前ら、俺の周りをがっちりガードしろー!」
えー、とやきゅみっちたちから不満の声が上がるが、監督の指示は絶対である。しょーがねーなー的な雰囲気でぞろぞろとやきゅみっちたちがうさみっちを取り囲んだところで、いよいよお化け屋敷に突撃である。
『……く、しくしく……(スンッ)』
入り口から少し歩いた所には枯井戸があった。早速嫌な予感を察知したうさみっちご一行様がちょうどそんな枯井戸の横をいそいそと通過しようとしたタイミングで、まるで見計らったかのようにやたらリアリティにあふれる少女のすすり泣く声が聞こえてきたではないか。
「ぴゃっ!?」
うさみっちのピンクのたれ耳が思わず跳ね上がる。ご丁寧に鼻をすする音まで入れてくるとは、この泣き声の主の演技たるや鬼気迫るものがある。いや、もしかしたら演技ではなく……?
「止め止め、次行くぞ次!」
えー、というやきゅみっちたちの本日何度目かも分からぬ抗議の声も知らぬふりで、うさみっちは進軍指示を出して今度こそ不穏な枯井戸を後にした。
「ぴゃあっ!!?」
いかにも怪しげな曲がり角だなあとは思っていた。いたのだが、一方通行なので通らざるを得なかった。その結果がこれだよ! 何が起きたかと言えば、向かって左方向に直角に曲がる通路を曲がった瞬間、何の変哲もないはずの壁から突然ガイコツが飛び出してきたのだ。これにはうさみっち監督ご自慢のやきゅみっち守備シフトも通用しない。そら鳴き声も上げますわ状態である。
このあたりから、最初こそキャッキャとはしゃいでいたやきゅみっちたちも一人また一人と口数が減っていっていた。恐怖の感情は伝播する、ましてや集団ともなればあっという間だ。
そこへ遂に決定打が飛び出してきた。具体的には「べちゃっ」っという音と共に。
\ぴゃああああ!!/
それはうさみっちのものだったか、それともやきゅみっちたちのものだったか。
薄暗いどころかほぼ一寸先は闇状態のお化け屋敷内で、誰かの頬に冷たくて、ぬめっとした、嫌な感じのするものが当たったのだ。まあ正体はこんにゃくなんですけどね!
「もうやだ帰るー!!」
ぴいいと鳴き声を上げながら、うさみっちが通路の壁にさりげなく設けられているリタイア者のための非常口に向かって一直線に飛んでいく――その前を、本塁帰還の勢いさながらに猛ダッシュで駆けていき、次々と泣きながらお化け屋敷を飛び出していくやきゅみっちたちがいた。
「やきゅみっち! 俺より先に行くんじゃねぇぇ!」
監督、まずいですよ! あとできちんとお説教して下さいね!
大成功
🔵🔵🔵
城島・冬青
壱季・深青(f01300)くんと一緒
深青くんのことはくん付けで呼んでるよ
弟みたいな子かな
は〜るばる来たぜWCL〜♪
キマイラフューチャーでは戦争で戦ってばかりだったからこうして行楽施設で遊ぶのって初めて!
改めてこの世界を守れてよかった
んじゃ手始めに絶叫マシン行こー!
深青くんはジェットコースター初めて?めっちゃ風来てぐるんぐるんして面白いよ!
私?昔は家族で来ていたけど兄さんは家を出ちゃったし弟はクラブで忙しいし
お父さんは仕事で多忙なことも増えたから遊園地とか全然行かなくなっちゃったな
さぁ椅子に座って
安全バーを下げて
これがあるから回っても落ちないの
さぁ動くよ
っうきゃーー!(ひたすら叫ぶ)
す、凄かった
壱季・深青
お姉さん(城島・冬青/f00669)と一緒
姉弟じゃないけど…いつも「お姉さん」呼び
WCLに…来た。
何に乗る…って、もう決まってたんだ。
うん、ジェットコースター…だね。
俺…遊園地が…初めてだよ。
お姉さんは…来たことあるの?
そっか…家族できたこと…あるんだ…いいね。
ぐるんぐるん…回るの?よく…落ちないよね…どうなってるんだろ?
重力…は?とりあえず…乗ってみる
(乗っても表情筋は動かない。無表情)
うん、凄く楽しい…凄く面白かった。
でも、一番は…悲鳴が…凄かった。
●ふたりはなかよし
「は~るばる来たぜWCL(だーぶるしーえーる)♪」
演歌かな? という勢いでこぶしを利かせながらご機嫌で歌うのは城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)。そんな冬青の様子を眠たげながらもどこか暖かく見守るのは壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)。
「WCLに……来た」
「うん、キマイラフューチャーでは戦争で戦ってばかりだったから、こうして行楽施設で遊ぶのって初めて!」
改めて、自分たちは遊園地に来たのだと感慨深げに呟く深青に、冬青が「改めてこの世界を守れて良かった」と喜びを噛みしめながら返す。
せっかく守ったこの世界、たとえ残党であろうと平和を乱すものが現れるとあっては捨て置けないのが猟兵というもの。そう、これは大事なお仕事なのだ。
そんな冬青と深青の最初の「お仕事」は――。
「んじゃ手始めに絶叫マシン行こー!」
「何に乗る……って、もう決まってたんだ」
やはり遊園地と来たら絶叫マシンでしょう! どどん、と二人の眼前にそびえ立つのは、数ある絶叫マシンの中でも比較的ヤバさが軽いものだった。ものごっついGもかからなければ鬼畜の所業のような回転要素もない、初心者でも安心な設計である。
まあちょっと速度は速めの部類で、ループも一回入りますけど……。
「うん、ジェットコースター……だね」
「深青くんはジェットコースター初めて? めっちゃ風来てぐるんぐるんして面白いよ!」
「俺……遊園地が……初めてだよ」
これがジェットコースター、お噂はかねがね。そんな様子で巨大なレールや時折悲鳴やら歓声やらと共に通過していく車両を見上げる深青に冬青がウキウキと解説をすると、ジェットコースターどころか遊園地自体が初体験だと告げる深青。
「お姉さんは……来たことあるの?」
ちなみに深青が言うところの「お姉さん」とはズバリ冬青のことを指すが、この二人本当の姉弟という訳ではない。しかしそれと見紛うまでの仲良しさんであることは間違いなかった。相関図を書くと「親分」とか「かわいい」とかの感情が交差する模様。
「私? 昔は家族で来ていたけど、兄さんは家を出ちゃったし弟はクラブで忙しいし、お父さんは仕事で多忙なことも増えたから……遊園地とか全然行かなくなっちゃったな」
そう言いながら冬青が見上げたのはジェットコースターなのか、それとももっと高い青空か。まだ幼かった頃の思い出を脳裏に浮かべながら冬青は遊園地にまつわる自身の話を深青に告げる。
決してそれが悲しいとかそういう訳ではない、よくある話のひとつに過ぎない。なればこそこうして久々に遊園地に、しかも弟のようにかわいがっている深青と共に来られたことを嬉しく思うばかりなのだ。
「そっか……家族できたこと……あるんだ……いいね」
深青は目線を冬青に向けて、ほんのりと微笑みながらそう返す。冬青も深青に向き直ると、その手を取ってジェットコースターの搭乗口へと向かった。
待つことしばし、いよいよ二人の乗車の順番がやって来た。
「さぁ、椅子に座って」
冬青の促しで二人一組で座る座席に仲良くスタンバイしたところで、深青がこんな問いを投げかける。
「さっき、お姉さん……ぐるんぐるん……回る、って……。よく……落ちないよね……」
どうなってるんだろ? という真剣な顔をする深青に、冬青は自分の座席の上にあるUの字状の何かをおもむろに引き下ろしながら説明する。
「安全バーを下げて、っと……これがあるから回っても落ちないの。深青くんもやってみて? そうそう、それで自分を椅子に押さえつける感じで」
カカカカ、と小気味良い音を立てて下りてくる安全バーは、一度下ろすと固定されて動かない。なるほど、これなら回っても大丈夫ということかと納得する深青。
念のためにと係員が一人一人の安全バーの最終チェックをしていくのを見やりながら、合図のように冬青が口を開いた。
「さぁ、動くよ」
――ガタン!
短いブザーの音のようなものが聞こえたと思うや、車両が一度派手に揺れて動き出す。
(「重力……は? でも、もう動き出したし……とりあえず、このままで……」)
搭乗前から一定間隔で聞こえていた「カンカンカンカン」という規則正しい音の正体はこれだったのか、などと思いながら深青は焦らすようにゆっくりと高みを目指す車両に身を委ねていた。
ちらりと隣を見れば、目をキラキラさせている冬青の姿がそこにはあった。そんなにワクワクするようなことがこれから――。
「っうきゃーーーーーーーーーーーーーーーーー
!!!!!!!」
「……っ」
ジェットコースターは最初の高々度からの落下が一番エキサイティングなポイントと言えよう。ここで安全バーから手を離してバンザイできるようにもなれば熟練者と言っても過言ではない。
そんな最初の落下ポイントで、冬青は盛大に歓声を上げ、逆に深青は言葉を失う。重力は……そうですね、今の所が一番かかったんじゃないですかね……椅子に貼り付けられてる感とかしませんでしたか……?
その後も立て続けに襲い来るアップダウンに、その波が落ち着いたかと思わせたところに唐突にぶっ込まれる盛大なループ! 要所要所で絶叫マシンの名に違わぬ叫びを上げる冬青と、表情筋がほぼほぼ動かないので無表情状態の深青がそこにはいた。
最初の登りはすごく長い時間に感じられたのに、いざ落下してからはあっという間。
ジェットコースターを降りた二人は、互いの顔を見合わせて感想を言い合う。
「す、凄かった……!」
「うん、すごく楽しい……凄く面白かった」
それは良かった! という表情になる冬青に、付け加えるように深青は言った。
「でも、一番は……悲鳴が……凄かった」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真守・有栖
遊園地。孤狼には縁がない場所だと思っていたけれどもっ
えぇ、依頼ならばしょうがないわね?依頼ならばしょうがないわ!
せっっっかく、ちけっとも用意してもらったし?(尻尾ぶんぶん)
えぇ、まずは思いっきり遊園地を満喫するわ!
あとらくしょん。
狼に相応しいのは……やーっっっぱり、じぇっとこーすたー!なる乗り物よね!!!
この勇狼たる私の胆力を以てすればどうってことはないわ。えぇ、これは戦に挑む狼の武者震いよ……!(がくがく)
出発してしまったわ。
……ちょっと?進むのがゆっくり過ぎない?
どんどん高くまで昇っていくのだけれども!?え、此処からぐわーっていくの!!?
え無理よ無理だわ無理やっぱり降りるわ降ろして――ぁ、
山路・紅葉
🐰わぁー…遊園地、楽しそう…お姉様と来たかったなぁ…
🐺都合が合わないんじゃ仕方ないでしょ。ま、オブリビオンが出るまでアタシ達で楽しみましょ
🐰…うんっ、そうだね!
🐺…で、早速その手の物は何よ
🐰ふぇっ!?…おいしそうだったから、つい…?
🐺…アンタ、大分食欲に正直になったわよね…
🐰さぁ、とにかくやれる事を色々と楽しむよー!
…困ってる人を助けてるかもしれないけど…
他に一緒に遊ぶ人が居るなら大歓迎だよーっ
※協力・アドリブ歓迎
●うさぎさんわんこさん&おおかみさん
「わくわくキマイラランド」は本日貸し切り……などということはなく、当然のことながら一般客のキマイラたちで賑わっていた。
友達同士だろうか、女の子たちが楽しげに言葉を交わしながら連れ立って歩いていくのを見送りながら、山路・紅葉(白い兎と黒い犬・f14466)は呟いた。
「わぁー……遊園地、楽しそう……。お姉様と来たかったなぁ……」
『都合が合わないんじゃ仕方ないでしょ。ま、オブリビオンが出るまでアタシ「達」で楽しみましょ』
「……うんっ、そうだね!」
紅葉さんの名誉にかけて説明しますと、今の会話の相手は紅葉さんの体内に埋め込まれた人格を持つ人工刻印兵器「織子」さんであり、決して一人芝居をかましていた訳ではないんです! アッでも多重人格者さんでもこういうパターンがあり得るから特に弁明しなくても良かったヤツでは……?
さておき、自身の恩人にして敬愛する「お姉様」との都合がつかず、残念ながらお一人様参加と相成った紅葉(と織子)。
基本的にどんな姿形をしていようと一般人から不審がられないという特性を持つ猟兵たちだが、特にここキマイラフューチャーならへーきへーきの精神で、紅葉の腕からにょっきりと黒犬の姿をした織子がその姿を顕にする。
『……で、早速その手の物は何よ』
「ふぇっ!? ……おいしそうだったから、つい……?」
入園早々、さまざまなお土産を販売するショップが並ぶ大通りを抜けたすぐそばにあったワゴンで、誰かさんと同じように甘い匂いにつられてつい買ってしまったチュロス。
それを即座に見咎めた織子に、てへぺろの精神で正直に答える紅葉。
『……アンタ、大分食欲に正直になったわよね……』
そうですね……確か初めてお会いした頃とか、孤児院の子供さんのことを思って自分一人が美味しい思いをするなんてそんな的な……こう、ためらいがありましたっけ……。
紅葉がチュロスうめえ状態にいる頃、少し遅れて入園してきた真守・有栖(月喰の巫女・f15177)は「わくわくキマイラランド」の正面エントランスガーデンで凛々しく仁王立ちを決めていた。
「遊園地。孤狼には縁がない場所だと思っていたけれどもっ」
ぐっ、と拳を握る。
「えぇ、依頼ならばしょうがないわね? 依頼ならばしょうがないわ!」
ははぁ、ツンデレムーブですね? 続けて下さいお願いします。
有栖は今しがた通り抜けた入園ゲートをチラリと振り返り、半券となったチケットをじっと見つめる。
「せっっっかく、ちけっとも用意してもらったし?」
尻尾がぶんぶん揺れております。もしかしてご機嫌ですかーッ!?
「えぇ、まずは思いっきり遊園地を満喫するわ!」
おー! 有栖の拳が勢いよく天を衝いた。
園内のガイドに役立つパンフレットとにらめっこすることしばし、有栖はある場所を目指してずんずんと突き進み始めた。
「あとらくしょん。狼に相応しいのは……」
そうしてたどり着いたその場所は――。
「やーっっっぱり、じぇっとこーすたー! なる乗り物よね!!!」
アッこれ園内にいっぱいある絶叫マシンの中でもオーソドックスな作りながら原点回帰をテーマにスリルをどちゃくそ詰め込んじゃったヤベーやつだ。有栖さん大丈夫かな……?
「この勇狼たる私の胆力を以てすればどうってことはないわ。えぇ、これは戦に挑む狼の武者震いよ……!」
膝どころか全身むっちゃがくがくしてるんですけどコレ絶対大丈夫じゃなさそう!
誰か、誰か何とかしてくれないか……!
その時、ちょうどチュロスを食べ終わり園内を散策していた紅葉が、見るからにヤバいジェットコースターの前で打ち震える有栖を発見した。
一目見て同業者だと判別できたが、どうも様子がおかしい。元々「困っている人がいたら助けよう」という心づもりでいた紅葉だが、迷子がいるとか落とし物を見つけたとかなら想定内だったものの、まさか猟兵のピンチに遭遇するとは。
「えっと、猟兵さん……だよね? 大丈夫? もしかして具合が」
「良きところに来てくれたわっっっ!!!」
がっし。
尻尾をぶわっとさせていた有栖が、そっと声をかけてきた紅葉の手を両手で掴むとぶんぶん上下に振った。勢いでがっくんがっくんする紅葉と、同じく余波で揺さぶられてしまう織子。
「お、落ち着いて。わたしたちで力になれることがあれば……」
「ええ、ええ、その言葉を待っていたわ! これに! 一緒に! 乗って欲しいの!」
ズビシ。
有栖が指し示した先には、見るからにヤベーやつの風格を漂わせるジェットコースターがそびえ立っていた。一定周期でほんのり聞こえる悲鳴の正体はこれかと紅葉(と織子)はそれを見上げる。
「……いいよ、一緒に乗ろう!」
他に一緒に遊ぶ人がいればそれはそれで大歓迎。そう思っていた紅葉にとって、これも何かの縁だろうということで、突然の絶叫体験への誘いにも快く応じることにした。
パァァとわかりやすく喜色満面になる有栖と共に、いざ搭乗口へ――。
「……出発してしまったわ」
特に念入りに身体を固定してくる安全バーをしっかと握りしめる手には汗が。有栖は震える声で隣に座る紅葉に目線を向けることもできずにそう呟く。
「この、最初の登りが焦らしてくるんだよね……」
いっそ一思いにアレソレしてくれとさえ思わせてくる、長い長い上り坂を行く車両に身を委ねながら紅葉が返す。
「……ちょっと? 進むのがゆっくり過ぎない? どんどん高くまで昇っていくのだけれども!?」
「多分もうちょっと昇るかな……で、ぐわーって」
「え、此処からぐわーっていくの!!?」
カンカンカンカン……ぴたり。
遂に車両は頂へと到達する。何故か一時停止する車両。来るぞ来るぞ……!
「え無理よ無理だわ無理やっぱり降りるわ降ろして――ぁ」
同乗の紅葉さん、有栖さんはどうでしたか? 後でよければ教えて下さい!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と
ここが遊園地かぁ!
みんなが首から下げてるのは何だろう?
ポップコーンケース!?綾華、まずあれから買おう!
ポップコーンを一緒に食べつつ、まずはお目当のジェットコースターへ
高いところは好きだし、回るのも落ちるのも楽しい
わぁーっ!!あははは!
手を挙げて叫んで笑って、終わった後は満足気
綾華、もっかい、もっかい乗りたい!
ふわって感覚がとっても面白かったのだ
…綾華、顔色悪いけど大丈夫か?
最後は観覧車!
向かい合わせでゴンドラに乗って、景色を楽しむ
な、すごい景色!人が豆粒みたいだ
綾華といるといつも楽しい
そう思えるのはきっと綾華だから
隣にそっと座って、少し寄り添って
今だけ、こうしてもいいか?
浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と
あーなんかあの店並んでる人が持って――
ふ、安定。いいよ、買お買お
(え、ヴァーリャちゃんなんでそんな笑って)
(お、終わった…なんか凄かった)
乗り物が止まって硬直していると名を呼ばれ
面白かったと言われマジかと思いつつ口元を抑える
――そして軈て覚悟を決めた
何時ものように飄々と笑い
ん、へーき、行こ
(だって楽しそうな彼女の笑顔をもっとみたいと思うから)
(凄く苦手なわけでもないので次第に馴れる)
景色、見渡せてきれー
これ夜だったらもっと凄いんだろうな
――ヴァーリャちゃん?
はしゃぎ疲れちゃった?
(今だけ、でいーの?)
なんて、尋ねる権利はないから
肯定の代わりに柔く髪を撫でるだけ
●きらめきのひととき
「わくわくキマイラランド」公式ホームページでは、その日の天候や営業時間、各アトラクションの運行状況などが一目で分かるようになっている。
転送を受けて現地に降り立つ当日は、日本の四季で例えるならば――梅雨入り前の初夏のような、程よい陽気を示すお日さまマークが踊っていた。
(「ヴァーリャちゃんが過ごしやすい陽気で良かった」)
浮世・綾華(美しき晴天・f01194)は共に園内に足を踏み入れたヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)の方にちらと目線を向け、人知れず安堵の息をつく。
氷の精がひとの姿を得たならばきっとこういう姿になるのだろう、あるいは本当にそんな存在やも知れぬヴァーリャは、こと暑さにめっぽう弱い。
その点、今日は非常に過ごしやすい。まさに行楽日和と言うにふさわしいこの天気は、もしかすると綾華の二つ名がもたらした奇跡なのかも知れない。
そんな綾華の胸中を知ってか知らずか、隣のヴァーリャは片方だけ覗くすみれ色の瞳をキラキラと輝かせて辺りを見回す。
「ここが遊園地かぁ! みんなが首から下げてるのは何だろう?」
ヴァーリャの視線が園内を行き交う人々に向けて行ったり来たり。はて何のことかと綾華がそれを追ってみれば、そこにはちょっとした行列ができたフードワゴンが。
「あーなんかあの店並んでる人が持って――」
そこまで言ってなるほどと理解する綾華。ワゴンで売られているのはポップコーン、ならばそこで買い物をした来園客がご機嫌で首から下げるそれは。
程なくしてヴァーリャもワゴンでの店員と客との一連のやりとりを確認する。ワゴン横に吊るされた販売用の在庫であろうキャラクターモチーフの「それ」の上部のフタらしき部分をパカリと開けると、中にどかどかとポップコーンを詰め込んでいるではないか。
「……ポップコーンケース!? 綾華、まずあれから買おう!」
「――ふ、安定。いいよ、買お買お」
綾華の服の裾を軽く引き、もう片方の手でワゴンを指差しながら意気揚々と歩を進めるヴァーリャに、遊園地と言えばこれは鉄板だなと深く頷きながら歩調を合わせる綾華。
行列の最後尾につき待つことしばし、二人は遂に念願のポップコーン(ケース付き)を手に入れる時を迎えた。
実はこのポップコーンケース、ワゴンごとに売っている種類が異なる。お目当てのケースがあるならば特定のワゴンを狙って攻める必要がある。
いかなる偶然か、ヴァーリャと綾華が並んだワゴンで販売されているケースは、最近WCLに新登場したばかりで一大ブームを起こしていた「氷の世界の少女」をモチーフとしたデザインのものだった。
行列ができるほどの盛況ぶりを見せていたのは、皆がこぞってこのデザインのケースを求めてのことであったのだが、まさかそんなことになっていたなんて。
ケースには想像以上の量のポップコーンが収められていた。これならしばらく食べ歩きには困らなさそうだ。
その分お値段もそこそこしたが、猟兵としてのお仕事の一環なのでその辺は後で補填してもらえそうな気がする。多分。きっと。なので気兼ねなく楽しんで下さいね!
さて、早速素敵な記念品をゲットしたヴァーリャと綾華は、他の客にならってポップコーンケースを首から下げつつ時折中身をつまんだりしながら、連れ立ってある場所を目指していた。
「あった、ここだ!」
ヴァーリャが足を止め、目の前の巨大な建造物を指し示す。一定の間隔で轟音と悲鳴めいた声が聞こえてくるそれこそは――ジェットコースター!
(「マジか」)
まあ確かに遊園地のアトラクションの鉄板と言えばジェットコースターだ。だがしかしこれはどうだ、最高到達点が……控えめに言って、高すぎて、見えない。しかも、えげつないツイストやループも完備されている。大丈夫? これ人類にはちょっと早すぎない?
そりゃあ綾華さんも内心エッとなりますよね。でも、ヴァーリャさんの方はむっちゃ乗り気ですよ! 獣耳を思わせる撥ねた髪がぴこぴこしてますよ!
――そんな訳で。
今二人は、地上から見上げた時率直に言って見えないレベルの最高到達点に至った車両に着座していた。
手荷物は預けてきた、ヴァーリャに至ってはトレードマークのゴーグルも「吹き飛んでしまうから」と置いてきた。
(「俺、知ってるぞ。落ちたり回ったりする絶叫ポイントでは――」)
ガタン。
ゴオオォォーーーーーーーーーーーーーーーー……ッ!!!
「わぁーーーーーーーーーーっ
!!!!」
「……!!!!」
車両がものすごい勢いで落ちていく、かかる重力が半端ない。だがヴァーリャはどうだ、安全バーをがっしり掴み必死に耐える人々の中、嬉々として両手を上げているではないか。
思いっきり叫ぶその表情は笑顔。完全に楽しんでいる。隣の座席でそんなヴァーリャの様子をちらと見た綾華は思わずぎょっとなる。
(「え、ヴァーリャちゃんなんでそんな笑って」)
しかし思考はおもむろに遮られた。おっとここでえげつない大ループだ!
「あはははは!!!」
ここでも手を放し、完全にエキサイティング状態のヴァーリャは歓声を上げる。ジェットコースターの申し子かな?
落っこちたり回ったりひねられたり色々あったが、気がつけばあっという間に二人を乗せた車両は元の昇降ゲートに戻ってきていた。
「(お、終わった……なんか凄かった」)
車両が完全に停止し、安全バーのロックが解除されてからも、綾華はしばし硬直したままだった。
「――綾華?」
そんな綾華の顔を覗き込みつつヴァーリャが声をかける。ハッと我に返りいそいそと降車すると、足元がおぼつかぬ感覚に襲われながらも出口の階段を下り終える。
「綾華、もっかい、もっかい乗りたい!」
(「マジか」)
思わず口元を抑える綾華。本日二回目のマジかいただきました。
大きく両手を振って、全身で興奮を表現するヴァーリャは続ける。
「あの、落ちる時の『ふわっ』って感覚がとっても面白かったのだ」
わかりみが深い。あの現象、重力の低下で身体が動かないのに内蔵が浮こうとするために発生するそうなんですが、アレが病みつきになるんですよね。
ニッコニコでおかわりを要求したヴァーリャだが、ふと綾華の様子を見て心配げな声を上げる。
「……綾華、顔色悪いけど大丈夫か?」
問いかけられた綾華は、しばしの葛藤の後――やがて、覚悟を決めた。
「……ん、へーき、行こ」
平時よりの飄々とした笑みをヴァーリャに向け、大丈夫だと言わんばかりに入口の方へと一歩踏み出す。
(「だって、楽しそうなあの笑顔を、もっとみたいと思うから」)
一度目はひたすら驚くばかりだったが、無理という程でもない。きっと慣れていくだろう。それに、ヴァーリャのあの楽しそうな姿が見られるならば――。
えげつないジェットコースターに、何度繰り返し乗ったことだろうか。そろそろ三半規管によろしくないと判断した二人が締めくくりにと向かった先は、巨大な観覧車。
全面スケルトン仕様のゴンドラもあったのだが、幸か不幸か二人が案内されたのは通常仕様の赤いゴンドラだった。向かい合わせに座ると、じょじょに小さくなっていく地上の景色を眺める。
「な、すごい景色! 人が豆粒みたいだ」
「ね。景色、見渡せてきれー」
これが夜だったらもっと凄いんだろうなと綾華は思う。実際園内は夜になると照明だけでなくイルミネーションに彩られ、観覧車自体も七色の輝きを見せてくれるのだ。
外界を見下ろしながらしみじみと呟く綾華の横顔に視線を向けるヴァーリャ。
(「綾華といるといつも楽しい、そう思えるのは、きっと綾華だから」)
この感情に、何という名をつければ良いか。
答えが出ない代わりに、ゴンドラを揺らさぬようにそっと席を立つと、ヴァーリャは綾華の隣に静かに腰掛けた。
そして、少しだけ。少しだけ寄り添うと。
「――ヴァーリャちゃん?」
はしゃぎ疲れちゃった? そう尋ねようと思った所に。
「……今だけ、こうしてもいいか?」
ぽそり、声がした。
触れ合う身体がほんのり熱を帯びる気がしたのは、いかなることだろうか。
(「今だけ、でいーの?」)
そう、口に出せたらどんなに良いか。
しかし、そう尋ねる権利は己にはないとする綾華は。
答えの代わりに、ヴァーリャの薄氷の髪を柔らかく撫でて返した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
気になっていた遊園地にこうしてカガリと行けるとは嬉しいな
あの大きな機械を動かしているのは魔法ではないのだよな?
本当に不思議だ、すごい(初めて見るものばかりで興奮している)
ジェットコースターとかフリーフォールが気になる
絶叫系のスピード感溢れるスリルを味わいたいんだ!
二人とも髪が長いから風に流されて邪魔になるな
カガリのは私がだんご状に綺麗に結んでおく
私のはカガリにやってもらおう
彼が結んでくれる、それだけでとても嬉しい
その後は観覧車へ
乗ったらカガリの隣に座る……2人しかいないし体を寄せておいてもいいよな?
高い所から見下ろす遊園地もいいものだな……キス?
…………していいよ
出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
遊園地が気になると、前から聞いていたので
一緒に来れてよかった
あの、速さが出るのは、髪が長いと他のものに良くないから
互いの髪を団子に結っておくな
カガリはそれほど器用ではないのだが…頑張る
ステラのは箒星の尾のようで、カガリはこのままが好きなのだが
絶叫系は…とても、びっくりする
驚いている間に終わってしまった
これに、乗りたかったのか
…流星とは、こんな心持ちなのかな
観覧車では、隣り合って座る
のんびりするのは、やはり落ち着くな
…視点は少し高いが。門として独り見下ろしていた頃を思い出す
今は…隣りにステラがいる
その事実が、言葉では表せない心地で
…名を呼んで、キスをしてもいいかな
●ひととしてのよろこび
唐突な紹介だが、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は鉄隕石から作られた流星剣の、出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は城門を閉ざす鉄門扉のヤドリガミである。
元となった器物こそ違えど、永い時を経て人間の身体を得るに至った二人が、奇しくもめぐり逢い、仲良く連れ立って、こうして遊園地でのひと時を満喫することになろうとは。
グリモアベースで受け取ったチケットを手に入園ゲートの前に立ち、感慨深げにステラが口を開く。
「気になっていた遊園地にこうしてカガリと行けるとは嬉しいな」
「遊園地が気になると、前から聞いていたので」
一緒に来れてよかった、と返すカガリ。今日は思い切り楽しもう、そう心に決めると、ステラの手を取っていざ入園ゲートへと向かう。
半券となったチケットを記念にと懐にしまって顔を上げると、眼前に広がるのは数々の迫力満点のアトラクションやフードワゴンに、それらを思い思いに満喫する来園者たちの姿。
絶叫マシンや大人数が一度に楽しめるアトラクションは驚くほど大きくて、一体いかなる仕組みで動いているのかとステラの興味を惹いて止まない。
「……あの大きな機械を動かしているのは、魔法ではないのだよな? 本当に不思議だ、すごい」
船を模した左右に大きくスイングするもの、空中ブランコを遠心力で大きく回すもの、そびえ立つ巨大な柱を垂直落下するもの……。
何しろ見るものすべてが初めてなものだから、ステラは思わず感嘆の声を上げてしまう。そしてそんなステラを愛おしげに見守るカガリもまた、想像以上の非日常の世界にさてどうしたものかと思案する。
「ステラは、何に乗りたい?」
「ああ、ジェットコースターとかフリーフォールが気になる」
カガリの問いに、絶叫系のスピード感溢れるスリルを味わいたいんだ! と拳をグッと握りしめて主張するステラ。
幸いなことにカガリの側にも全く異論はなく、すんなりと絶叫マシンへの挑戦が決定した。
ほら、あの、たまにあるじゃないですか、お連れさんが絶叫系絶対無理マンで、一人で乗る訳にもいかないから泣く泣くあきらめるとか……そういうのがなくて本当に良かったです……。
園内パンフレットで目星をつけた「最大時速世界最大級!」と銘打たれた、ループこそないがひたすら速度に特化したジェットコースターを目指して園内を行く二人。
その道中、ふと思い立ったようにカガリが提案をした。
「あの、速さが出るのは、髪が長いと他のものに良くないから」
「……そうか、二人とも髪が長いから風に流されて邪魔になるな」
という訳で、ステラとカガリは互いの髪を団子に結ってあげることにした。ちょうど良い所に設けられていたベンチに腰掛けると、手荷物から櫛や髪ゴム、ヘアピンを取り出して、まずはステラがカガリの髪を結ってあげることとなった。
サラサラとした、普段から良く手入れされているのだなと一目で分かるカガリの金髪は、ステラ自身と同じく元々一つに結わえられている。
それを一度丁寧に梳くと、毛束を器用に結び目に巻きつけていく。そうして数ヶ所ピンで留めてしっかり固定すれば、綺麗なお団子ヘアの完成である。
「ありがとう、ステラは……器用だな」
しっかりと編み上がった髪にそっと触れて感心しきりのカガリに。
「では、私のはカガリにやってもらおう」
スッ……と道具を手渡しながら、髪をカガリの方に向けてちょーんと座るステラ。
若干のプレッシャーを感じるのは気のせいだろうか、カガリはステラの白雪の髪に触れながら、自らも姿勢を正す。
「カガリはそれほど器用ではないのだが……頑張る」
ピン留めが難しければヘアクリップにしよう、などと思いながらいざお団子ヘアに挑戦である。
(「ステラのは箒星の尾のようで、カガリはこのままが好きなのだが」)
手にしたステラの長髪は、夜空を流れる星の輝きにも似て。本当はこのままの方が良いのだけれどと惜しみながら、カガリなりに頑張ってステラの髪を結い上げていく。
(「彼が結んでくれる、それだけでとても嬉しい」)
髪を結って貰っている位置関係の都合上、ステラの表情はカガリには見えない。見えない所で、ステラは愛しい人に髪を結ってもらうという喜びを噛みしめていた。
一般的に、よほど親しい間柄でなければ髪に触れさせるということ自体まずないだろう。そして、互いに髪を結わってあげるとなれば、この二人のつながりがいかに深いものかがうかがい知れるというもの。クッ……これはリア充ですね……今更ですね……!
ちょっとだけ悪戦苦闘したものの、無事ステラさんの髪を結い上げたカガリさん。準備万端ということで、いざお目当ての超高速ジェットコースターへ!
回転が入らないタイプなので、安全バーは二人で共有するタイプのものになる。仲良く並んで着座するとしっかりバーで身体を固定し、いざ出発の時を待つ。
「「――っ
!!?」」
一般的なジェットコースターのイメージは、最初にゆっくりと高みに連れて行かれてから一気に落とす所から始まるという感じだろう。だが、これは違った。最初からフルスロットルだ!
まさかの急加速スタートに目を白黒させる他ないカガリと、急降下のタイミングで安全バーから手を離してバンザイで思い切りエンジョイするステラ。
余談ですが、あまりにも速度が過ぎると垂直タワーでは加速力を受け止めきれないので、ばかでっかいループにコース変更をしないといけないそうですね……変態かな……?
(「驚いている間に終わってしまった」)
本当に、あっという間だった。これに乗りたかったのか、と隣で満足気にしているステラを見る。そして、こんな言葉が口をついた。
「……流星とは、こんな心持ちなのかな」
「えっ?」
「いや、何でもない」
ちょうどお団子にしていた髪を元のひとくくりの状態に整えていたステラは、カガリの言葉を聞き逃してしまい問い直すも、カガリはそれをやんわりと流す。
――メテオライトの君は、この感覚を知っていたのだろうかと。
せっかく結った髪を元に戻したのにはきちんと理由があった。二人には次なる目的地があったのだ。それは、とても大きな――観覧車。
お約束のように限定数台の透明ゴンドラも用意されていたが、順番が回ってきてみれば普通の緑色のゴンドラだった。今回観覧車に求めるところはスリルではなかったので、二人にとってはむしろ好都合だったかも知れない。
係員のキマイラに誘導されてゴンドラに乗った時こそ向かい合わせだったが、扉が閉まり地上を離れると、ステラが席を立つ。そしてそれに合わせて、自分の隣を空けるカガリ。
先程の絶叫マシン体験とは打って変わっての平和なひと時に、自然と二人の距離も縮まる――そう、物理的に。
(「二人しかいないし、体を寄せておいてもいいよな?」)
そう思ったステラはそっとカガリに身体を寄せ、カガリもそれを受け入れる。ゴンドラはかすかな機械音だけを立てて、二人を高みへと誘っていく。
「高い所から見下ろす遊園地もいいものだな……」
そう言うステラの温もりを感じながら、カガリは呟く。
「……視点は少し高いが、門として独り見下ろしていた頃を思い出す」
独り、という言葉はもはや過去のもの。今は……隣にステラがいる。
その事実が、言葉では表せない心地で。
「……ステラ」
傍らにいる愛しい人の名を呼び、正面からその顔を見つめる。
「キスを、してもいいかな」
「……キス?」
その言葉を、予想していなかった訳ではない。だが、いざ面と向かって言われると。
「……」
しばしの沈黙。先走ったかとカガリの顔に焦りが浮かんだその時だった。
「……していいよ」
頬を染めたステラが、とても小さな声でそう言うと、瞳を閉じる。
ゴンドラは、一番高いところに。
二人の影が重なったことに、誰が気付こうか。
――そう、これは二人だけの秘密。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロエ・ウィンタース
ヴォルフ(f09192)と
む、ヴォルフの力量をして深刻な案件か。気を引き締めねば…
(転送された後華やかな遊園地みてぽかん)
…一杯食わされたか。
確かに戦争も終えた事だし息抜きも悪くない。が、
(一寸だけ騙された事を腹に据えかね)
…貸しだ。これは貸しひとつだからな(手を取り)
遊園地と言うものは聞いた事はあるが初めてだ
お化け屋敷(ふむ、と頷き)肝試しか
所詮作り物、たいした事は無いだろう。
………。いや、なんだ、雰囲気はあるな
あるよな?(一寸腰が引け)
(お化けに驚かされ)わぅ!?
(吃驚の後、赤面。拳を上げた所をがっきとヴォルフに止められ)
…すまん。吃驚してつい。いや可愛くはない。頭を撫でるな(赤面のまま)
ヴォルフガング・ディーツェ
クロエ(f15418)と
力を貸して欲しいんだ…とキメ顔で拉致したのがオレです。反省はちょこっとしてる!
ま、たまには息抜きも良いものだよ。一緒に遊んでくれますか、お嬢さん(茶目っ気たっぷりに恭しく手を差し出し)
ふは、了解!オレは嘘吐きだけど、約束は守る男だ
アトラクションも色々あって悩むけれど…あ、オレ、あれ行ってみたいんだよね、お化け屋敷!(にっこにこ)
わ、こんな感じになってるんだね…暗くておどろおどろしい雰囲気だ
でも家族向けだけあってそんなに怖くな…ちょ、クロエ!ストップ!それオブリビオンじゃない、従業員さんだから!その拳は降ろして!?
…ふ、ふふ、可愛いなあ、キミは(わしゃりと頭を撫でて)
●おおかみたちのおたのしみ
――唐突だが、時を遡ること少々。神妙な面持ちをしたヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)に呼び出されたクロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)は、こう訴えかけられたという。
『お願いだ、オレ一人じゃどうにも手に負えない依頼で――』
だから、力を貸して欲しいんだ。
そう、キリリとした顔で頼まれてしまったものだから。クロエはつい二つ返事で応じてしまった。
グリモアベースで予知をした猟兵による世界間転送を受けて、やって来たのはいかなる強敵が待ち受ける修羅の世界か。
(「……ヴォルフの力量をしてなお深刻な案件か、気を引き締めねば……」)
転送の終了を悟って目を開き、いつでも佩いた刀を抜けるようにと油断なく。どれと周囲の様子を見渡してみればどうだろう、眼前に広がる光景はあまりにも――そう、華やかで。深刻な事情など正直少しも見受けられない。
クロエはしばしぽかんと口を半開きにして呆然とし、やがてそんな自分を人の悪い顔でニヤニヤ見ているヴォルフガングの方に向き直ると、それはもう盛大なため息をついた。
「……一杯食わされたか」
「ま、たまには息抜きも良いものだよ」
だまし討ち、というほどではないが、人の言葉に雑な返事をしがちなクロエの性格を知り尽くしたヴォルフガングの作戦勝ちと言ってよいだろう。
何しろ、もう「来てしまった」のだから。
「という訳で。一緒に遊んでくれますか、お嬢さん」
喜色を浮かべる赤い瞳を長めの前髪から覗かせて、ヴォルフガングがやや芝居がかった体で、うやうやしくクロエに向けて手を差し出す。
(「確かに戦争も終えた事だし、息抜きも悪くない。が――」)
このまますんなりと申し出を受け入れるのは、ちと納得が行かぬ。ちょっとだけ、騙されたことを腹に据えかねたクロエは、少しだけ頬をふくらませてこう返した。
「……貸しだ。これは貸しひとつだからな」
ぶんむくれた顔のまま、しかし己に差し出された手を取って応じると。
藍と琥珀が半分この髪から覗く狼の耳をぴこっと揺らし、ヴォルフガングは破顔一笑。
「――ふは、了解! オレは嘘吐きだけど、約束は守る男だ」
こうして、キメ顔で女の子をだまくらかして遊園地に拉致した悪いおおかみさんは、銀色のおおかみさんと連れ立って「わくわくキマイラランド」の中を散策する。
(「遊園地、と言うものは聞いたことはあるが初めてだ」)
通りかかるや悲鳴が聞こえるこの大きな建造物は何だろうか、事件性はないのか。そう思っているとどこからともなく美味しそうな匂いが漂ってきたり、クロエの頭の中は何かと忙しい。
パンフレットを片手にどこから堪能しようかと思案するヴォルフガングは、ここWCLに「それ」はあるだろうかとアトラクション一覧の文字を確認する。
(「アトラクションも色々あって悩むけれど……あ」)
あった。しかも、地図によれば現在地から程ない場所だ。これは勝ち確ですわ。
今までも幾多の猟兵たちを魅了してきたポップコーンのワゴンを見つめていたクロエの肩に軽く手を置くと、ヴォルフガングはある場所を指さしてこう言った。
「あ、オレ、あれ行ってみたいんだよね、お化け屋敷!」
ヴォルフさん、めっちゃニッコニコ。クロエさん、ほうと目線を向ける。
「お化け屋敷……そうか、肝試しか」
クロエはヴォルフガングの言葉を反芻し、ふむと一度頷いて、なるほどとアトラクションの趣旨を理解する。
「いいぞ、所詮は作り物。大したことはないだろう」
「やった! じゃあ早速行こう、今ならそう並ばなくても入れそうだし」
こうして、クロエの遊園地アトラクションデビューはお化け屋敷に決定した。建物に近づくにつれ、地味に――いや、相当にこのお化け屋敷が本格的に作り込まれていることに気付き、しかし今更前言撤回という訳にも行かず、遂に二人の挑戦の順番が来てしまった。
入口で、猟兵たちの共通認識で言うならばサムライエンパイアで用いられる提灯によく似た手提げの照明を手渡される二人。
ほぼ真っ暗に近い屋敷の中を、この微かな明かりひとつを頼りに進んでいくのだ。
「わ、こんな感じになってるんだね……暗くておどろおどろしい雰囲気だ」
「……。いや、なんだ、雰囲気はあるな」
ぼうっと照らされた視界の先には、ヒビが入り赤黒い血の跡のようなシミがついた壁やら、明らかに何かが怪しい古井戸やらが見受けられる。
「(雰囲気)あるよな?」
ちょっとだけ、ちょっとだけだけど腰が引けてしまうクロエに、照明を下げたヴォルフガングが余裕の笑みで声をかける。
「まあ、でも家族向けだけあってそんなに怖くな」
「わぅ!!?」
言葉を交わしながらも少しずつ歩を進めていた二人が、例の古井戸のそばを通りかかったその時だった。突然井戸の中から飛び出してきた白い死に装束の幽霊めいたものが、二人の前に躍り出てきたではないか!
これにはクロエも思わずびっくり、ヴォルフガングの言葉を遮ってしまう。でもまあそれはしょうがない。問題は、自分でも驚くほどの声を上げてしまったことだ。
――恥ずかしい。おのれ。よくも。さては貴様オブリビオンだな!?
「ちょ、クロエ! ストップ!」
皆様は既にお気づきのことと思いますが、井戸から出てきたのはリアルな恐怖を追求した結果爆誕した「機械仕掛けではない本物のキマイラ従業員さん扮する幽霊役」です。
ヴォルフガングはそういうものだとあらかじめ理解していたが、お化け屋敷初体験のクロエの方はそうは行かない。明らかに本気で振り上げられた拳を、これはヤバいとヴォルフガングががっきと止める。
「それオブリビオンじゃない、従業員さんだから! その拳は降ろして!?」
「そ……そうなのか
……!?」
よっしゃいい仕事したわとばかりに悠々と闇へと溶け込み消えていく幽霊こと従業員さんを見送りながら、クロエの鉄拳をどうにか鎮めたヴォルフガング。
「……すまん。吃驚してつい」
「……」
目線を下に落として、狼耳を少ししょんもりとさせるクロエの様子を見ていたヴォルフガングは一瞬、言葉を失う。
相変わらず心もとない手元の明かりだが、それがかえって雰囲気を強調するのだろうか。赤らんだ顔がおさまらない様子のクロエが、そう。
「……ふ、ふふ、可愛いなあ、キミは」
空いていたもう片方の手をおもむろに伸ばし、ヴォルフガングはクロエの頭をわしゃりと撫でる。
「……いや、可愛くはない。頭を撫でるな」
口に出すのは否定と拒否、しかし、やろうと思えばできるであろう「実際に行動に移す」ことを、クロエはあえてしなかった。赤面したまま、されるがままである。
――可愛い。たまらなく可愛い。
この感情が果たしてどんな意味を持つのかは、二人だけが知るものなのだろう。
なのでここでは、ファミリー層向けの比較的マイルドな作りのこのお化け屋敷を、二人は無事踏破できたとだけ記しておこう。
おめでとう! まだまだ楽しんでいってね!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大神・狼煙
【満月双葉】
こらこら、爆発したら修理費いくらかかると……(震え声)
レストランはダメだよ、こう言う所はコスパ重視で味より価格優先だからね(偏見)
どうせならお土産見に行こうか
荷物になるから買うのは帰りだけど、早目に目星つけとくのも、悪くないと思うよ
脅かす役だから、怖がられてナンボだと思うけどね……ちなみに、お化け屋敷にはちょっとした裏話が……おっと、誰か呼んでいるようだ
それ借りパクじゃないの?ていうかそれ武器じゃないよね!?振るったら不味い気がするから今度返してきなさい!!
えぇ……?
(困惑)
ほぼ台詞のみのプレです
行動はアドリブで!
満月・双葉
【大神狼煙】遊園地…狼煙、爆発しそうなものが沢山あるよ。
触っていーい?(棒)
爆発しないところに行こう。
レストランとか行ってメニューの研究してもいいし…お土産屋さん?
お化け屋敷とは。
ふむ…こういう仕事は楽しそうだけど、相対する子供に泣かれたりしたらやだなぁ…うん、大変なお仕事だ。
どこで敵が出ても大丈夫。僕がこの置物(渾天儀を取り出し)で退治するから(明らかに鈍器と勘違いしている)…キラキラ光ってて綺麗なオブジェでしょ。パパの書斎から……無断で借りた。
帰りたくない。大きくなったらあげるって言われてたからいいもん(むぅー)
メイド服は着ねーぞ
アドリブ歓迎
※狼煙とは恋人ではなく、親子のような関係
●へんたいさんとてんさいさん
もうお分かりかと思いますが「天災」の方ですからね! よろしくお願いしますね満月・双葉(星のカケラ・f01681)さん! 大神・狼煙(コーヒー味・f06108)さんもようこそ「わくわくキマイラパーク」へ! ステシでポリスメン呼ばれてる人は初めて見ました……どう見ても変態です本当にありがとうございました……。
さておき。機械の類に触れると何故か片っ端から爆発させてしまう難儀な体質を持つ双葉にとって、機械じかけの塊であるアトラクションを楽しむことはできるのか。
「遊園地……狼煙、爆発しそうなものが沢山あるよ」
アトラクションの数々を指差し、それはもうものすごい棒読みで双葉は狼煙に問う。
「触っていーい?」
「こらこら、爆発したら修理費いくらかかると……」
想像するだけで目眩がする、そら震え声にもなりますわ。機械系のアトラクションはこの際潔くあきらめようと決意する狼煙。
正直、爆発しても原因が双葉さんだとはなんやかんやでバレなさそうな気もするんですが、その辺はきちんと考えていらっしゃって……すみません認識を改めます……。
「わかった、爆発しないところに行こう。レストランとか行ってメニューの研究してもいいし……」
「いや、レストランはダメだよ。こう言う所はコスパ重視で、味より価格優先だからね」
双葉が言うところの「メニュー」とは、狼煙が経営する喫茶店で提供する品揃えのことを指す。双葉はそこの居候兼店員でもあるので、必然思考がそちらに向くのだ。
しかし狼煙はその提案を却下する。確かに、遊園地で提供される飲食物は基本的に価格が街中で普通に購入するそれと比べてかなり高めに設定されていることが多い。
ここWCLでも、たとえば先に来園した猟兵たちにも大人気だったポップコーン。おみやげにもなるケースと同時に購入するとなると、実は相当な額が吹っ飛んでいく。
ましてやレストランともなれば……後はわかるな? という状態である。お祭り気分で色々な感覚が麻痺する半分、大好きな遊園地へのお布施半分という気持ちで購入する流れまでがワンセットであるが、狼煙さんは流されない。
「どうせなら、お土産見に行こうか」
「……お土産屋さん?」
そういえば、先程は通り過ぎてしまったが、チケットを見せて入園してすぐの建物がちょうど様々な種類のお土産を取り扱うショップ群だった気がする。
「荷物になるから買うのは帰りだけど、早目に目星つけとくのも、悪くないと思うよ」
賢い……! 来園者が帰路につく頃合いから、お土産屋さんはどこもごった返してゆっくり選ぶどころではなくなるものなのだ。余裕がある間に下調べをしておくのは、実に賢い選択と言えよう。
せっかくだから店の皆にお菓子でも買っていこうかと、主にクッキーやキャンディーが入った缶を眺める二人。中身を食べ終わったら、缶は何かを入れるのに使えそうだ。
これにしよう、いやあっちの方が。
(「時間に余裕があるうちに見に来て正解だった……」)
下見の時点でことごとく意見がすれ違い、なかなか目星をつけるのに難儀する状況に、狼煙は内心自分グッジョブという心境だった。
(「……迷ったら両方買えばいいや」)
その一方で、お金を出すのは自分ではないからの精神で、思考を放棄する双葉がいた。大丈夫? あとで揉めません?
まあまあとりあえず下見はこの辺にしておこう、ということで。
爆発の心配がないアトラクションと言えば――。
「……お化け屋敷、とは」
「文字通り、お化けが出てきて驚かしてくる所だよ」
いくつかの区画ごとに毛色の違うテーマで構成されているものの、全体的にファンシーな雰囲気で統一されている印象のここWCLにおいて、こと異彩を放つ、見るからにおどろおどろしい屋敷。
不自然さを隠蔽するためなのか、それとも配置の時点で既に恐怖心を煽ろうという目論見なのか、園内の本当に片隅にそれは存在していた。
黒いカーテンが引かれた入口の手前で提灯のような照明をひとつ手渡された二人は、いざ怪奇渦巻くお化け屋敷へと足を踏み入れる。
ほんのりとした照明にぼんやりと照らされた景色は不気味そのもので、ああこれは程よいタイミングでお化けが飛び出してきて驚かせてくるのだろうな――と思っていたら。
『ヴァアアアアアアアアアアアア』
「うわあ後ろから来たー!?」
あからさまに怪しいと踏んで警戒していた眼前の古井戸に、完全に気を取られていた。そんな双葉と狼煙の背後から、怨嗟の声と共に幽霊(役の従業員さん)が!
またいい仕事しちまったぜと、颯爽と闇の向こうへと消えていく幽霊さんを呆然と見送りながら、双葉が呟いた。
「ふむ……こういう仕事は楽しそうだけど、相対する子供に泣かれたりしたらやだなぁ……」
「いや、脅かす役だから、怖がられてナンボだと思うけどね……」
「大変なお仕事だ……」
「人の話、聞いてる?」
狼煙が至極真っ当な意見を述べるも、思いを馳せる双葉の妄想は止まらない。
よーしパパそっちがそのつもりなら、こっちも勝手に話しちゃうぞー。
「ちなみに、お化け屋敷にはちょっとした裏話が……」
アッそれちょっとガチめのヤツだ。これには思わず待機中のスタッフさんがそっと狼煙さんの肩を叩き、制止に入る。
~しばらくお待ちください~
「狼煙、次からはどこで敵が出ても大丈夫。僕がこの置物で退治するから」
スタッフさんにちょっと別室で個人指導されちゃった狼煙がお化け屋敷の本編に戻ると、待ってましたとばかりに双葉が「渾天儀」なる不思議なオブジェを取り出した。
その正体はコズミックリングなのだが、双葉の認識は完全に――鈍器のそれである。
「待って!? 相手は従業員さんだからね!?」
「……キラキラ光ってて綺麗なオブジェでしょ。パパの書斎から……無断で借りた」
「それって借りパクじゃないの? ていうかそれ武器じゃないよね!?」
大変だ! ツッコミが追いつかない! アイテムのカテゴリ的には一応武器……なんですけど……でも借りパクはギルティですね……。
「色々な意味で振るったら不味い気がするから今度返してきなさい!!」
「帰りたくない。それに『大きくなったらあげる』って言われてたからいいもん」
「むぅーしても駄目!! ちゃんと譲ってもらってきなさい!!」
ああ……これ完全に保護者ムーブですね……続けて下さいお願いします……。
ちなみに、結局双葉さんの物騒なブツが魔除けになったのか、お化け屋敷はそれからすんなりとクリアできたそうです。良い子はマネしないでね!
お化け屋敷を後にして、久々に感じる陽の光を浴びながら、双葉はおもむろに口を開いた。
「メイド服は着ねーぞ」
「えぇ……?」
これには狼煙さんも色々な意味で困惑だ! 何故最後にメイド服の話ぶっ込んできたの!? いや面白いから全然構わないんですが! お土産買って帰るのだけは忘れずにね!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
狭筵・桜人
ここがキマイラフューチャーですか。
はじめて来ましたけど栄えてますねえ。
さてさて私が所在なげに一ヶ所に留まっていては
キマイラ女子にキャーキャー言われたり逆ナンとかされまくって困っちゃいそうなので。
おひとりさまってつらいですねえ。
屋外で食べ歩きグルメを廻ります。
屋台スナックってやつですね。
ちなみに私はいくら食べても太らないという女子を敵に回すスキル持ちです。
まあまあ、これもお仕事ですから?
経費で落ちるんですよね?
経費で。落ちるんですよね。ね?
見つけた屋台から順に制覇して行きましょうね。
やたらと甘い虹色のプレッツェル……
やたらと甘い発光するチュロス……
やたらと甘い謎のピタサンド……
バグかな?
五百雀・斗真
◎
わくわくキマイラランド
名前からして、楽しそうな雰囲気だね
お一人様でも楽しめるみたいだし、行ってみよう
えっと、まずは…アトラクションに行こうと思ってたのに
いい感じのお土産屋さんがあちこちにあって
思わずいっぱいお土産を買ってしまいました
こ、これからどうs…って、あぁ…っ
さっきお土産屋さんで買ったキャラがパレードに出てる
見に行こう
…気が付いたら夢中になって写真撮ってた
えっと、今度こそ何かアトラクションに…と思ったら
美味しそうな屋台やお店が目に入って…お腹が…
……。またアトラクションに行かずに
チュロスを頬張ってる僕はいったい…
あ…!あのポップコーンバケット、デザインがすごくいい
買いに行こう
ヘスティア・イクテュス
◎
ニコのお金で遊園地!!さぁどこから回ろうかしら!
それにしても平和ね、絶叫系じゃない感じの悲鳴が聞こえてこないなんて…
わたしはあれね
ジェットコースターとかフリーフォールとか絶叫系回りたいわね
お化け屋敷…?知らないわねそんなアトラクション
あと、あれは絶対!この時期ぴったりな
水系のアトラクション、あれも乗るわよ!
へくし!まさかの見事に水被ったわね…着替えないかしら?
●おひとりさまでもたのしめます
(「『わくわくキマイラランド』。名前からして、楽しそうな雰囲気だね」)
もぎられて半券となったチケットに記された遊園地の名前を見ながら、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は園内へと足を踏み入れた。
「お一人様でも楽しめるみたいだし、行ってみよう」
強いて言うなら斗真さん、大田さんがいるからお二人様扱いでもオッケーだったんですけど、わかりました今日はお一人様ということで!
チケットの半券をしまうと、代わりに手にしたのは園内ガイドのパンフレット。せっかく遊園地に来たのだから、やはりアトラクションは押さえておきたいと諸々の場所を確認する。
「えっと、まずは……この建物を抜けた先に……」
お目当てのアトラクションをいくつかピックアップし、場所を頭に叩き込んでいざ出陣。そのはずだった。
本来ならば目もくれず通り抜けなければならない建物の正体は、様々なお土産が並ぶ魅惑のショッピングモールだったのだ!
何ということでしょう、最初は横目でチラと見るだけだったのが、だんだん興味を惹かれて、気がつけばああっ、足が勝手に店の中へ!
友人知人へとお菓子を買ったり、チケットの半券がそのままフリーパスとなるのでそれを首から下げておくためのパスケースや、ちょっと浮かれてうさぎの耳が生えるカチューシャなんかも買っちゃったりして。
「……思わず、いっぱいお土産を買ってしまいました」
気がつけばすごい量になってしまったお土産の袋を両手に持って呆然と立ち尽くす斗真を見て、声をかけてきた人影があった。
「あら、すごい荷物! 向こうにコインロッカーがあるから、帰りに忘れないようにして、一度預けてきたらどうかしら?」
「あっ、ありがとうございます……って、あなたは……」
一目見て分かった、この少女――ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は「同業者」だと。
「ふふっ、グリモア猟兵のお金で遊園地!! さぁどこから回ろうかしら」
人の金で遊ぶアトラクションは楽しいか
……!?(楽しいに決まってます)やってやろうじゃねえかねえかよこの野郎! 後でちゃんと領収書持って来いよ!
……失礼しました。そんなこんなで困り果てていた斗真さんにアドバイスをしたヘスティアさん、颯爽と園内を闊歩するの巻。
(「それにしても平和ね、絶叫系じゃない感じの悲鳴が聞こえてこないなんて……」)
キマイラフューチャーという世界柄、基本的には深刻な危機に見舞われるということがほぼないのは分かっていたが、先の戦争を乗り越えたこともあって、ますますその平穏ぶりが際立つようだった。
ヘスティアが目指すは絶叫系アトラクションの数々。ジェットコースターやフリーフォールといった、先に来園した猟兵たちの多くが堪能した人気のアトラクションだ。
そんな中でも初夏の陽気にも似た今日にぴったりな、いわゆるウォーターライド系のアトラクションを目指して、ヘスティアはパンフレットを片手に突き進む。
途中、これまた幾多の猟兵たちが挑戦したお化け屋敷へと続く道が見えたが。
(「お化け屋敷……? 知らないわねそんなアトラクション」)
ははーん……へえー……ヘスティアさん……そう……よくわかりました! 今度是非ご一緒しましょう! ていうか誰だお前!(三回目)
ウォーターライドは、基本的にはジェットコースターのようなアップダウンを繰り返しながら疾走する車両に乗って楽しむのだが、普通のコースターとの決定的な違いは、最大の落下ポイントがコースの最後の方に設けられており、ちょうど張られた水の中に飛び込んでいく形となるのだ。
必然、多少なりとも水がかかる。よって、入口では有料で雨ガッパが売られているのだが――まあ平気でしょとそれを無視して身一つで挑んだヘスティアは。
「……へくし! まさかの見事に水被ったわね……」
運が悪かったのか、それともネタの神様が降臨したのか。ものの見事に盛大に水をひっかぶってしまったヘスティアは、さすがにこれはと辺りを見回す。
「着替えとか……ないかしら……?」
果たして、ヘスティアの運命やいかに――!?
●たべあるきはゆうえんちのだいごみ
「ここがキマイラフューチャーですか。はじめて来ましたけど栄えてますねえ」
主に活動の拠点をUDCアースとしている狭筵・桜人(不実の標・f15055)にとって、初めて訪れたキマイラフューチャーは、まるでゲームの中の世界のようだと思われた。
ここ「わくわくキマイラランド」は今日も大盛況、さりげなく猟兵たちも思い思いに園内を満喫していたが、さて桜人はどうするのか。
(「さてさて私が所在なげに一ヶ所に留まっていては、キマイラ女子にキャーキャー言われたり逆ナンとかされまくって困っちゃいそうなので」)
おひとりさまってつらいですねぇ、そう独りごちながら桜人は歩き出す。目指すは園内の各所に配置されたフードワゴンだ。
遊園地に来たなら食べ歩いてなんぼというもの、そう思いながら目に留まったとあるワゴンに向かおうとした時だった。
「……っくし!」
何故か全身ずぶ濡れの少女が、あたりを見回しながらよろよろと歩いているのを目撃してしまった。どう見てもヘスティアさんです本当にありがとうございました。
「あの、入口すぐそばのショップで衣料品の取り扱いがあるそうですよ」
「本当!? ありがとう、着替えもできると助かるわ……!」
たまらず声をかける桜人に、パアァと希望を取り戻したかのような顔になったヘスティアがお礼を告げて、まっすぐ駆けていく。
(「まあ、そのお店、ほぼコスプレショップみたいなものなんですが」)
WCLのキャラクターモチーフの衣装ばかりがずらりと並ぶその店で、ヘスティアが呆然となったのはまた別のお話として。
「「あっ」」
今度こそお目当てのワゴンでさあ買うぞ食べるぞと列の最後尾に並ぼうとした時、桜は見知った顔と偶然にも鉢合わせた。――頭にうさみみのカチューシャを乗せた、斗真である。
「五百雀さんじゃないですか」
「桜人君……!」
一度は共闘もしたことがあるとはいえ、今日の予定については完全に想定外。せっかくだからと列に二人で並びながら、他愛もない会話を交わす。
「五百雀さんは、もうアトラクションには乗られたんです?」
「いや、それがね……本当はその予定だったんだけど、ついお土産をいっぱい買っちゃって」
そこで助け舟を出してもらい、手荷物は一時保管してもらったのだが、今度はお土産屋さんで一目惚れしたキャラクターが道中でパレードに参加してるのを目撃してしまい、気がつけばスマホの写真リストがめっちゃパレードの風景で埋め尽くされるまで写真を撮りまくってしまっていたという。
「……それで、今度こそ何かアトラクションに……って思ったら、美味しそうな屋台が目に入って……」
よくよく見れば、斗真の手には半分食べかけのチュロスが握られていた。それでもなおこの行列に並んだのは何故か。
「もしかして、お目当てはここのポップコーンケースですか?」
「! そ、そうなんだ。デザインがすごくいいなって思って……」
園内屈指の人気を誇るデザインのポップコーンケースを求めて、来園者の多くが列をなす。そんなこんなで二人の順番が無事回ってきた。
それぞれお目当てのものを買い求めると、お互い楽しもうと手を振り再び別行動に。
ちゃっかり自分も大人気デザインのポップコーンケースに中身を詰めてもらい、ぱくぱく口に運びながら桜人は次なるワゴンを目指す。
(「ちなみに私はいくら食べても太らないという、女子を敵に回すスキル持ちです」)
ああーいますよねそういうメンズ! いやメンズに限らず女子にもそういう体質の人いますけど! ホント……マジで……どうなってんの的な……。
「まあまあ、これもお仕事ですから?」
アッ何か嫌な予感がします。具体的には、こう、圧がかかりそうな。
「経費で落ちるんですよね? 経費で。落ちるんですよね。ね?」
そういうとこやぞお前ェ! 落ちるけどさぁ! お宛名は『グリモアベース』って書いてもらってね!!
そんなこんなで、いわゆる屋台スナックを次々制覇していく桜人だった。
が。
「やたらと甘い虹色のプレッツェル……」
すごい色をしていた。
「やたらと甘い発光するチュロス……」
サイリウムかな?
「やたらと甘い謎のピタサンド……」
待って、ピタサンドが激烈に甘いってそれは。
「……バグかな?」
コンコンコン、もしかしてまだ故障してるのかな……?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小林・夏輝
【狼犬豚兎】
ふふん、学生の頃は遊園地常連だったからな
世界が違うだけで同じっしょ
っつーわけで遊園地の決まりその1
全員このカチューシャを付けるように!
俺は猫ちゃんで
澪きゅん小動物みたいで可愛いにゃー♪
ジェットコースターはジャンケンの結果諒太と一緒に
え、ちょ、お前の脂肪邪魔でバー若干ユルいんスけど!?
んにゃあぁぁ腰が浮く怖えぇぇぇぇ!!
し、死ぬかと思った…
エッ、れ、澪ー!1人で行くなって危ねぇから…!(追)
\うぉわあぁ!?/(お化け屋敷から響く悲鳴)
れ、澪きゅん元気ね…
はいはいなんでも付き合うよー
紫崎……沈むなよ
ん、このオムライスうっめー
あ、澪ずりぃ
諒太俺にも一口ちょーだい
※絶叫は得意だった筈が…
金子・諒太
【狼犬豚兎】
遊園地、面白いよな
僕も好きだよー
ちょっと窮屈なの、多いけどな
(子豚カチューシャ着用)
最初は、夏輝と一緒
これ、隣と安全バー、一体のやつなんだな
今時珍しいなー
大丈夫だって夏輝ぃ
チェック通る程度だし、飛ぶ事は無いからさ
ほらもう落ちるぞー
ちょ、走るなってぇ…!(お腹たゆんたゆんダッシュ)
夏輝は怖がりだなぁ
澪の方が、男らしいぞー
失礼だな、僕はそんなに、太ってないぞ
ただのぽっちゃりだぞ
宗田と乗ったら、筋肉の重さで偏りそうだけどなー
飯の時は【大食い】の本領発揮
カレーも肉もサラダもスープも美味いな
澪も、ちょっと食べる?
夏輝もかよー…ちょっとだけだぞ?
なぁ宗田ー、お代わりしていいー?
※なんでも平気
栗花落・澪
【狼犬豚兎】
わぁ、これが遊園地かー!
すごーい賑やかでお祭りみたい!
ねっねっ、あれはなに?どうやって動いてるの?
あれ楽しそう!どんな乗り物なの?
初めての遊園地にぴょんぴょこ跳び跳ねつつ
今回はUDCが地元組に任せる
え、これ被るの?
うぅ、まぁそういう決まりがあるなら…
(たれうさ耳カチューシャ装着)
乗り物のペアは
大人数が無理な場合は都度ジャンケンで決める
じゃんけんぽん!
紫崎君見て見て、凄い景色!
きゃー速いー!楽しいー!
あははっ、夏輝君は怖がりだなぁ
あっ、あの水に落ちるやつも面白そう!
次あれ乗ろ!
諒太君あんまり食べ過ぎないようにね?
えっ、くれるの?わーいありがとう!
※絶叫もホラーも全然平気
紫崎・宗田
【狼犬豚兎】
おいチビ
はしゃぎ過ぎて迷子になんなよ
と言っても普段こんな場所来る事無ェから
俺は俺で別の意味で落ち着かねぇっつーか…
小林に言われるがまま狼カチューシャを装着しつつ
似合ってんぜ?子兎ちゃん(からかい笑い)
最初の乗り物は小林の希望でジェットコースターに
ジャンケンの結果俺と澪で前の席へ
はいはい、危ねぇからちゃんと安全バー掴まっとけよ
おい大丈夫か小林…
チビならもうお化け屋敷向かったぞ
ほら次だとよ
ビビってる余裕も無ェな
で、また絶叫か…
チビと金子一緒にすんのは危ねぇから
今回はお前チビと乗ってやれ
金子、お代わりすんならまず手元のそれ食い終わらせてからな
テーブル乗らねぇから
※絶叫もホラーも余裕
●だんたいさまごあんないでーす
例えば、仲の良い友人同士が予定を合わせてそこそこの大所帯で遊園地にやってくる、ということも当然ある訳で。
「わぁ、これが遊園地かー! すごーい、賑やかでお祭りみたい!」
「おいチビ、はしゃぎ過ぎて迷子になんなよ」
入園ゲートを通り抜けた先に広がる非日常の風景に思わず歓声を上げる栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)が注意を促す。
口調こそぶっきらぼうだが、明らかに澪の身を案じている様から、宗田の面倒見の良さが伝わってくるというもの。
(「と言っても普段こんな場所来る事無ェから、俺は俺で落ち着かねぇっつーか……」)
ああ、こんな時に場慣れしている存在がいてくれたなら。
「ねっねっ、あれはなに? どうやって動いてるの?」
とか。
「あれ楽しそう! どんな乗り物なの?」
とか。
初めての遊園地にぴょんぴょこ跳びはねつつ、澪が問いかける先は――。
「――ふふん、学生の頃は遊園地常連だったからな。世界が違うだけで同じっしょ」
遊園地の存在が一般的であるUDCアース出身の小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)だった。もしかして年パス持ってたりしませんでした? ガチ勢ですか?
「遊園地、面白いよな。僕も好きだよー。ちょっと窮屈なの、多いけどな」
その隣でゆったりとした独特の口調で相槌を打つのは金子・諒太(戦える肉団子・f12789)。ワガママボディが特徴的な、人の良さそうな顔立ちの少年だ。
今日はこのUDCアース出身者に案内を一任して、遊園地なるものを満喫しようという計画であった。ちなみにチーム名、【狼犬豚兎】。直球すぎて変な笑いが出ました。
さっそく人差し指をピンと立て、夏輝がガイダンスを始める。
「っつーわけで遊園地の決まりその1、全員このカチューシャを付けるように!」
ズビシと夏輝が指さした先には、入口からすぐのショッピングモールのような建物の、とあるショーウインドウ。
そこに飾られていたのは、様々な動物の耳がついたカチューシャだった。それを装着すれば、まるで動物の耳が頭から生えているように見えるという。
「え、これ被るの?」
「うん、義務だよ♪」
「僕は、これかなー」
本当に? 何も知らないからって嘘吹き込んでない? という感じで問いかける澪に、さも当然とばかりに嘘をぶちかましていく夏輝と、その横でさっそく子豚のカチューシャを手に取る諒太。
カチューシャや帽子の被りものは、あるとむっちゃテンション上がりますけど義務ではないですからね! 無理しないでね!
「……うぅ、まぁそういう決まりがあるなら……」
そう言いながら迷うことしばし、意を決して澪が手に取ったのは、垂れ耳うさぎのカチューシャだった。
「はは、似合ってんぜ? 子兎ちゃん」
「澪きゅん、小動物みたいで可愛いにゃー♪」
平然と、堂々と。狼耳のカチューシャを着けた宗田と、ネコ耳カチューシャを着けた夏輝がそんな澪の姿をからかうように、あるいは率直な感想として声をかける。
これで全員にカチューシャが行き渡った、いざ「わくわくキマイラランド」のアトラクションへ!
最初にやってきたのは、比較的速度も高低差も緩めのジェットコースター。肩慣らしにはちょうど良いだろうということでやってきたのだ。
「二人一組で乗るんだ、じゃあ組み合わせはじゃんけんで決めよっか!」
澪の提案で、一斉にぐーぱーじゃす(※かけ声には地域差があります)が始まる。
その結果、澪は宗田と、夏輝は諒太と組んで搭乗することとなった。
「これ、隣と安全バー、一体のやつなんだな」
今時珍しいなー、などと感慨深げに安全バーを下げる諒太の隣で、変な汗をかく夏輝がいた。
「え、ちょ、お前の脂肪邪魔でバー若干ユルいんスけど!?」
「大丈夫だって夏輝ぃ。チェック通る程度だし、飛ぶ事は無いからさ」
安全バー一体型のあるあるだった。体格差があると小柄な方が若干怖い思いをするヤツだ。
夏輝は今まさにその状況に置かれており、俺今日死ぬんじゃないかなレベルの顔色の悪さを見せていたが、安全バーの最終確認をするスタッフさんは無慈悲にもゴーサインを出す。
そんな二人の様子を澪と宗田がすぐ後ろの席で温かく見守っていた。
「チビ、危ねぇからちゃんと安全バー掴まっとけよ」
もちろん、澪の身を案じることも忘れない。イケメンかな?
ガタン。
車両が音を立てて、じりじりと斜面を昇っていく。安全バーをいまだに気にかけている夏輝に、諒太がのんびりと声をかけた。
「ほらもう落ちるぞー」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーー……ッ!!
「んにゃあぁぁ腰が浮く怖えぇぇぇぇ!!!」
「紫崎君見て見てーーっ、凄い景色ーーっ! きゃー速いー! 楽しいー!!」
悲鳴と歓声が入り交じる、これぞジェットコースター。あっという間のライドが終わり、次の客と入れ替わるように次々と車両から降りて出口へと向かう人々。
その中には、げっそりとした夏輝の姿があった。
「し、死ぬかと思った……」
絶叫系は得意だったつもりが、だいたい諒太のせいで予想外のスリルマシマシ状態に陥り、開幕早々グロッキー状態になってしまったのだ。
その一方で、今のジェットコースターが良い準備運動になったのか、澪はものすごく元気いっぱいだった。
「あー楽しかった! 絶叫系続けると疲れちゃうと思うから、次はあそこに行こ!」
そう言うなり、皆がついて来るのがさも当然とばかりにお化け屋敷の方へ走っていく澪。迷子にならないかが非常に心配です、そりゃあ宗田さんも心配しますわ……。
「ちょ、走るなってぇ……!」
諒太が慌てて後を追う。お腹のお肉がたゆんたゆんするが、意外と足が速い。これは……動けるデブ!(失礼)
「おい大丈夫か小林……チビならもうお化け屋敷向かったぞ」
「エッ、れ、澪ー! 一人で行くなって危ねぇから……!」
宗田に軽く背中を叩かれた夏輝も、よろめいてる場合じゃねえと急いで澪の後を追った。
「うぉわあぁ!!?」
既に幾人もの猟兵たちが挑戦したお化け屋敷から、ひときわ大きい夏輝の悲鳴が響き渡ったとか何とか。
「夏輝は怖がりだなぁ。澪の方が、男らしいぞー」
ここで澪さんのステシを見てみましょう。……男らしい、とは。
「あははっ、夏輝君は怖がりだなぁ」
諒太と澪から念入りに怖がりの烙印を押され、もうやだおうちかえりたい的な顔をする夏輝。あれ? 遊園地余裕です発言はどちらへ……?
「れ、澪きゅん元気ね……」
「うん! ……あっ、あの水に落ちるやつも面白そう! 次あれ乗ろ!」
「ほら次だとよ、ビビってる余裕も無ェな」
夏輝に向かって立てるかと手を差し伸べながら宗田が言う。絶叫系もホラーもどんと来いなのだろうか、宗田はずっと余裕のままだ。
「はいはい、なんでも付き合うよー……」
宗田の手をありがたく掴んで立ち上がると、夏輝もよろよろとウォーターライドの方へと向かうのだった。
「で、また絶叫か……」
ウォーターライドはジェットコースターの落下に水しぶきが盛大に上がる要素を付け加えたもので、一応絶叫系のカテゴリに入る。
「チビと金子一緒にすんのは危ねぇから、小林、今回はお前チビと乗ってやれ」
ぐーぱーじゃすではなく体重のバランスを考えて例外措置を取る宗田に、諒太がええーと抗議の声を上げた。
「失礼だな、僕はそんなに、太ってないぞ」
そうですね、ただのぽっちゃりですね。言葉の言い回しって大事ですね……!
「宗田と乗ったら、筋肉の重さで偏りそうだけどなー」
「紫崎……沈むなよ」
「沈むか!」
――この後、盛大に服を濡らした四人が互いに笑いあったのは言うまでもない。
ひとしきりアトラクションを楽しんだ後は、もうひとつの醍醐味でもあるレストランでのお食事タイム!
ここで諒太の大食い技能が火を吹いた。知ってた。待ってた。
「カレーも肉もサラダもスープも美味いな。澪も、ちょっと食べる?」
「えっ、くれるの? わーいありがとう! ……諒太君、あんまり食べ過ぎないようにね?」
元々少食の澪は、一つの料理を食べ切るのにも難儀する。そんな所に小分けで色々なものを食べさせてくれる諒太の申し出は切実にありがたく。
「ん、このオムライスうっめー……あ、澪ずりぃ! 諒太、俺にも一口ちょーだい」
「夏輝もかよー…ちょっとだけだぞ?」
んん? 諒太さん、夏輝さんにはちょっと当たりがキツくないです? 愛情表現かな? おっと失礼!
「なぁ宗田ー、お代わりしていいー?」
「……金子。お代わりすんならまず手元のそれ食い終わらせてからな」
決して、ケチで言っている訳ではない。
単純な話――テーブルに乗り切らないからだ。
さあ、食べ終わって一息ついたら、次は何に乗ろうか?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マリアドール・シュシュ
【星華】
アドリブ◎
初めての遊園地にカデル達と来れてマリアとっても幸せなのよ!
今は怪人の事は忘れて楽しむのだわ
絶叫系を満喫後、セリオスとカデルの姿が見えず首傾げ
あら…置いてかれてしまったのよ(悲しげ
ええ何処か…ならマリアはメリーゴーランドに乗りたいわ!
行きましょう、アレクシス(手を引いて笑顔で小走り
アレクシスの気遣いに感謝し馬に二人乗り
雰囲気はメルヘンちっく
まぁ!ありがとう騎士様(くす
二人を見送りカデルと二周目へ
休憩がてらジェラート食べ
セリオス達を見て仲良しさんね、と微笑
セリオスから少し貰いつつカデルと半分こ
最後は観覧車へ
高所から見る風景に興奮
本当に、素敵なのよ
此処にはキラキラが沢山あるのだわ!
セリオス・アリス
【星華】
アドリブ◎
遊園地行った事ねぇの?
ふふん俺は観覧車に乗ったことあるぞ
他は…
目を反らす
色々のってみればいいだろ
絶叫から降りて目を輝かせ
何だこれすっげぇ
カデルどっちがでかく叫べるか勝負しようぜ
張り合ってたら…アレス達どこいった?
あー!ズルいぞ二人だけ!
柵に噛りつき
カデルが負け認めねーから置いてかれたんだぞ!
アレス、マリア
もっかいだもっかい!
アレスの腕を掴み並んだ馬にのる
はー遊んだら腹減ったなぁ
ジェラート…あれ食おうぜ
目を輝かせて駆け寄り
すっげぇうまい
ほらアレス
食ってみろよ
仲良し…まぁな
マリアも食うか?
食ったら本命の観覧車だ
最高の眺めだろとカデルにドヤっと
アレスをつついて覗きこみ
なあ、楽しい?
アレクシス・ミラ
【星華】
アドリブ◎
遊園地は初めてだが
観覧車なら僕も乗ったことあるな
そうだね、色々乗ろうか
でも、はしゃぎすぎないように
いいね?
絶叫系に満足するも
セリオスとカデルさんに置いていかれ
…何処かで待っていようか。マリアさん
メリーゴーランドに気づき
うん、あれに乗ろう
2人乗りだね
お任せを
乗る時も降ろす時もマリアさんに手を貸す
どうぞ、お姫様
足元には気をつけて
出てきた途端、腕を引っ張られ2周目へ
はあ…手助けは必要かい?親友殿
流石に少し疲れたね…休憩にしようか
ん、くれるのかい?
差し出されたジェラートを抵抗なく食べ
仲良し…まあね
密かに気に入っていた観覧車へ
うん、いい眺めだ
セリオスの問いに笑顔で答えよう
勿論、楽しいよ
瀬名・カデル
【星華】
アドリブ◎
遊園地ってボク初めて!
セリオスは初めてじゃないんだね!他にどんなの乗ったの?
えー、それだけならボクとそんなに変わらないよぉ。
うん、みんなで一緒に色々と乗ってみよう!
絶叫系がとーっても楽しくて!
セリオスに勝負を挑まれたから勿論受けて立つよ!
いっぱい叫ぶけどよく考えたらセリオスの方が絶対肺活量大きいよね!
大人気なーい!(叫
遊び過ぎちゃって置いてかれちゃった!
あわててマリアとアレスを追いかけよう!
メリーゴーランドも楽しめたら美味しいジェラート。
マリアと半分こで2倍楽しめるね
観覧車はお空を飛ばなくてもみんなとお空を飛べるんだね、
みんなで一緒にこういう景色見れて嬉しいな。
ね、綺麗だね!
●きらきらのおもいでを
ここ「わくわくキマイラランド」では、事前に申し込みをしておくことで「名前や団体名を来園の日付とセットで記念に刻印したメダルキーホルダー」を、なんと無料でプレゼントしてくれるサービスを行っていた。
という訳で、おしゃれな字体をした【星華】の文字が刻まれたキーホルダーを入園時に受け取った男女四名のご一行様は、失くさないようにと記念品を懐に収めたり早速身につけたりしつつ、遊園地という非日常の世界に臨む。
「初めての遊園地にカデル達と来れて、マリアとっても幸せなのよ!」
ね、とマリアことマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)は、緩く波打つ銀糸の髪を煌めかせながら、同行の友人たちを振り返る。
「うん、遊園地ってボクも初めて!」
わああと華やかな光景を間近にして、瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)も薄桃色の愛らしい翼を揺らして周囲を見渡せば。
「お前ら、遊園地行った事ねぇの? ふふん、俺は観覧車に乗ったことあるぞ」
「――遊園地は初めてだが、観覧車なら僕も乗ったことあるな」
「なっ
……!?」
ここぞとばかりに遊園地に関してなら一歩リードしているぞという旨を強調しようとしたセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)の言に、アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)がその目論見を木っ端微塵に粉砕する。
そうですね、遊園地以外の場所にも観覧車単体で設置されていたりしますからね……。
「セリオスは初めてじゃないんだね! 他にどんなの乗ったの?」
「ほ、他は……」
無邪気に、それはもう何の悪気もなしに、純粋な質問として投げかけられたカデルの言葉だったが。
正直な所、観覧車以外のアトラクションの経験が皆無に等しいセリオスは言葉に詰まり、思わず目をそらしてしまう。
そんなセリオスの様子から色々と察してしまったのか、カデルは軽く頬をふくらませると追撃の一言を放つ。
「えー、それだけならボクとそんなに変わらないよぉ」
「ぐぬ……っ! ま、まあ今日は色々乗ってみればいいだろ!」
明後日の方向に顔を向けたまま、セリオスが若干顔を赤らめつつ言い放つ。いわゆるぐぬぬ顔をしている感じとご想像いただければ幸いです。美青年のぐぬぬ……良き……。
「そうだね、色々乗ろうか。でも、はしゃぎすぎないように」
いいね? とウインクひとつ念押しするのはアレクシス。これは誰もが良い子になるムーブですわ……良き……。
「うん、みんなで一緒に色々と乗ってみよう!」
せっかくの遊園地なのだから、たくさん遊んで思いっきり楽しもう。今はお留守番をしている大切なからくり仕掛けのお人形に、素敵なお土産話ができるように。カデルは園内ガイドのパンフレットを片手に、元気良く拳を突き上げた。カワイイ!
そんな友人たちの様子を柔らかな笑みで温かく見守っていたマリアドールは言う。
「――今は、怪人の事は忘れて楽しむのだわ」
そう、とても大事なことだ。確かにゆくゆくは怪人を退治するという任務を帯びているとはいえ、今この瞬間は、WCLを存分に楽しむことこそが求められている。
マリアドールは自身もパンフレットを手に取ると、はて遊園地なるところには一体どんな楽しみがあるのかと、友人たちと共に何から楽しもうかと作戦会議を始めるのだった。
ところで超余談なんですが、ご来園いただいた時点でのマリアドールさんのステシの背景イラストがですね……2019年6月の誕生日プレゼント背景の例のアレでしてね……せめてひと時でも幸せに満ちあふれる楽しい世界をご堪能いただければ幸いですって思っちゃいましてね……。
そんなこんなで四人が最初にやって来たのは――。
「そうだね、遊園地と言えば確かに絶叫系マシンだ」
轟音と共に悲鳴や歓声が聞こえてくるここは、まぎれもなく絶叫マシンの花形・ジェットコースターの前であった。そびえ立つレールを見上げて、アレクシスがひとり納得したように頷く。
今までも幾多の猟兵たちが満喫してきたジェットコースターだが、絶叫レベルは多種多様だ。明らかにヤベーやつもあれば、初心者にも安心なマイルド仕様のものもある。
四人の眼前にあるそれは、どちらかというとガチ勢向けよりはエンジョイ勢向けと言った感じの、肩慣らしにはちょうど良さそうな作りをしていた。
安全バーを下ろして身体をしっかりと固定したら、あとは疾走する車両に身を委ねるのみ。じりじりと焦らすように昇っていく最初の坂を越えれば――真っ逆さまにと錯覚するほどの急降下で落ちていく!
風になったかのような錯覚さえ覚える中、猛スピードでアップダウンを繰り返し、大きくループをすれば今まで経験したことのない――そりゃあ日常生活で逆さまにされることなんてほぼほぼないですが――感覚に襲われる。
楽しい時間はあっという間で、気がつけば四人を乗せた車両は最初に乗車した時の場所に戻ってきていた。
ぞろぞろと出口へと向かう人々と共に移動しながら、蒼い瞳をそれはもうキラキラさせたセリオスが、おもむろにカデルに向けて声をかけた。
「何だこれすっげぇ……。カデル、次はどっちがでかく叫べるか勝負しようぜ」
「えっ!? いや勿論受けて立つけど!」
バトルしようぜのノリで17歳の少女に絶叫勝負を挑む26歳男性もだが、すんなり受けて立つ方も、どちらもすごい。人生はノリと勢いでだいたいどうにかなるのかも知れない。
それじゃあ二週目なと早速ジェットコースターの入口へと向かうセリオスとカデル。
――当然、マリアドールとアレクシスも、一緒について来るものだと思っていた。
が。
「あら……置いていかれてしまったのよ……」
きょろきょろと辺りを見回すも、セリオスとカデルの姿がどこにも見当たらない。マリアドールは小首をかしげると悲しげに呟く。
ここで冒頭のアレクシスさんの台詞を思い出してみましょう。
『はしゃぎすぎないように、いいね?』
ほらー! セリオスさんとカデルさんいきなりはしゃいで二人でさっさとジェットコースター二周目行っちゃったー! だから言ったのにー!
「仕方がないな……何処かで待っていようか、マリアさん」
ため息ひとつ、アレクシスの視界にふと飛び込んできたのは、優雅に回るメリーゴーランドの雄大な姿だった。
飾り立てられ並び立つ白馬に、豪奢なデザインの馬車。全体的にファンシーな印象のあるWCLにしては珍しいクラシックな作りをしたそれと、隣で眉をハの字にして困り果てているマリアドールとを見比べ――。
「うん、あれに乗ろう」
「えっ? ……まあ、メリーゴーランド! マリアもあれに乗りたいわ!」
アレクシスの声に顔を上げてみれば、友人とはぐれてしまった悲しみが一気に吹き飛ぶ。ぱあぁと華のかんばせに喜色を浮かべ、繊細な指でもってアレクシスの手を取ると、マリアドールは先導する。
「行きましょう、アレクシス!」
メリーゴーランドの座席は早いもの勝ちで、その点列の区切りでほぼ先頭に位置取れた二人は運が良かったといえよう。
いざ順番が回ってきた時、白馬なり馬車なり、実質選び放題だったのだから。
マリアドールの目に留まったのは、二人乗りができる大きな白馬の座席。でも、大きいだけあって座席にまたがるのも大変そうだ。どうしましょうと思案していると。
「お任せを」
そう言うなり、アレクシスが先立って悠々と白馬の座席の後方にまたがる。そして馬上から手を差し伸べるとマリアドールを誘った。
こうして手を貸せば、マリアドールも着席することができるだろう。アレクシスの心遣いに感謝しつつ、えいっと前方に無事おさまったマリアドール。
程なくして、優雅な音楽と共にメリーゴーランドは回転を始める。白馬は二人を乗せてゆるやかな上下運動を繰り返し、さながら本当に乗馬をしているかのような心地にさせてくれた。
先程のジェットコースターは速すぎてあっという間だったが、メリーゴーランドは楽しすぎてあっという間だったというべきか。
音楽がすうっと止まり、夢のようなひと時は終わりを迎える。
今度はアレクシスが先に座席から降りると、うやうやしくマリアドールに向けて再び手を差し伸べる。
「どうぞ、お姫様。足元にはお気を付けて」
「――まぁ、ありがとう騎士様」
くす、と口元に手を当ててひとつ笑むと、マリアドールは優雅な所作でアレクシスの手を借りながら座席からぴょんと降りる。
立ち位置だけではない、二人は本当におとぎ話に出てくるお姫様と騎士のような姿をしているものだから、そんな二人の様子に――メリーゴーランドの背景も相まって――周囲の一般客の数名が思わず見惚れていたとか何とか。
一方その頃、勇ましくも二周目のジェットコースターに挑んだセリオスとカデルは。
「――ふ。この勝負、勝ったな」
「何よ、お互いいっぱい叫んだけど、よく考えたらセリオスの方が絶対、ぜーったい、肺活量大きいよね!」
「当たり前だろ! だから俺の勝ちな!」
「おっとなげなーい!!」
またしてもあっという間の二周目を終えて、出口のすぐそばでやいのやいのしていた。
このままでは埒が明かない、第三者にジャッジしてもらうしかないと思い辺りを見回し――ようやく、ようやく二人は自分たちが置かれている状況に気付いた。
「……あれ、アレス達どこいった?」
「あっ……そういえば……」
君たちはアレだ、列に並んでいる時とかに気付いたりしなかったのか。そういう無粋はナシにしよう、何しろガチのマジで真剣勝負をしていたのだから。しょうがないね!
周囲を見回していたセリオスが、ちょうどすぐそばのメリーゴーランドの座席から降りてくるアレクシスとマリアドールを見つけた。
すぐさまメリーゴーランドへと駆け寄ったセリオスとカデルは、柵にしがみついてまくしたてる。……主にセリオスが。
「あーっ! ズルいぞ二人だけ!」
「ああ、見つかった。良かった」
「ふふ、とても楽しかったわ」
柵ごしに、自分のことを完全に棚に上げて抗議するセリオスに、アレクシスとマリアドールがそれぞれマイペースに返す。
「くっそ、カデルが負け認めねーから置いてかれたんだぞ!」
「ちょっと!? それ絶対関係ないからね! あとボクまだ負けてないし!」
勝敗のことに話が及ぶと、それはさておきという風にセリオスがメリーゴーランドの出口で二人を待ち受ける。
そうして出てきたアレクシスの腕をガッシとつかむと、セリオスはズンズンと入口の方へと突き進んでいくではないか。
「アレス、マリア、もっかいだもっかい!」
「はぁ……手助けは必要かい? 親友殿」
「うるせー! いらねー!」
一人乗りの白馬の座席は、三頭セットで並んで配置されている。そこに引っ張ってこられたアレクシスは今回も余裕でまたがると、茶化すように親友に問うたが、返ってきたのはいつもの強がり。
「カデル、マリアは今度は馬車に乗りたいわ」
「うん、この馬車とか素敵だね! 向かい合って座れるんだー」
女子組は女子組で男性陣を見送りと、キャッキャと声を弾ませながら豪奢な作りの馬車型ボックス座席に乗り込む。
そうして、楽しいメリーゴーランドでのひと時が過ぎていく――。
「流石に少し疲れたね……休憩にしようか」
「はー、遊んだら腹減ったなぁ。ジェラート、あれ食おうぜ」
初夏の陽気にも似た心地良い今日の天気に、氷菓はよく似合うだろう。四人はジェラートを提供しているカフェスタイルの店舗に入っていく。
……いや、正確にはセリオスが一人先行して目をキラッキラ輝かせながら駆け寄っていき、他の三人がその後を追う形だったのだが。
マリアドールはフランボワーズ、セリオスはブルーベリー、アレクシスはレモン、カデルはキウイと、それぞれ違ったフレーバーを選んで受け取ると丸テーブルを囲んで席についた。
「すっっっげえうまい! ほらアレス、食ってみろよ」
プラスチックのスプーンで、山と盛られたブルーベリーのジェラートを口に運ぶとその美味しさに目を丸くしたセリオスは、真っ先に親友に自慢のチョイスを勧める。
「……ん、くれるのかい?」
自身もレモン味のジェラートの程よい酸味を堪能していたアレクシスは、セリオスから差し出されたジェラートを何の躊躇もなく、パクリと食べる。えっ、えっこれはその、あの、アッいや何でもないです!
そんな二人の様子を見たマリアドールは上品にジェラートを口に運びながら微笑む。
「ふふ、仲良しさんね」
「仲良し……? まあね」
「仲良し……? まぁな」
ハモった。ほぼほぼハモった。アレクシスとセリオスが同時に口を開いた。何? 何なの? 結婚するんです?
色々な事柄をさも当然と言わんばかりに、アレクシスにそうしたように自分のスプーンでマリアドールに分けてやろうとしたセリオスだが、しかしそっとマリアドールの方からスプーンでブルーベリーの薄紫色を一口分すくわれていく。
フランボワーズの風味を、カデルのキウイとこちらも仲良く半分こ。
「わあ、美味しい! ありがとうマリア、これで二倍楽しめるね」
紅色と黄緑色を交互に堪能する贅沢なひと時が、あっという間に過ぎていく。
ジェラートを平らげた四人が〆にと足を向けた先は、ちょうど四人がけのゴンドラがある観覧車だった。出ました、大本命。
実は四人の中で誰よりもこの観覧車に乗るのを楽しみにしていたアレクシスだったが、そこは紳士にして騎士たるものレディファーストである。女の子二人を先に席に通せば、何と二人仲良く並んで座っているではないか。
となると、必然アレクシスはセリオスと並んで座ることとなり――。
「わ、観覧車はお空を飛ばなくてもみんなとお空を飛べるんだね」
翼持つオラトリオたるカデルらしい視点からの意見に、向かい合って座ったセリオスがいわゆるドヤ顔で返す。
「ふふん、最高の眺めだろ?」
「うん、みんなで一緒にこういう景色見れて嬉しいな」
「……本当に、素敵なのよ。此処にはキラキラが沢山あるのだわ!」
「ね、綺麗だね!」
マリアドールも、どんどん上昇していくゴンドラからの眺めに興奮と感嘆の言葉を口にして、カデルもうんうんと頷き返す。
昼間でもキラキラしているのだから、本当にキラキラな景色を一望できる夜であったならば、マリアドールやカデルは一体どんな感想を聞かせてくれただろうか。
(「……うん、いい眺めだ」)
やはり観覧車は良い、そう思いながら外の景色に見入っていると、肩をトントンと突かれる感触に気付く。
はたと顔を上げると、自分の顔を覗き込んでいるセリオスの姿が目に飛び込んできた。
「――なあ、楽しい?」
よもや、自分が言葉を発せずにいたから、心配をかけてしまっただろうか。
アレクシスは心からの笑顔でセリオスの問いに答える。
「――勿論、楽しいよ」
楽しくない訳がない、だからどうか安心して欲しい。
そんな思いが伝わったのか、セリオスもその端正な顔立ちで、破顔一笑した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
明智・珠稀
ふふ!
楽しいですよね遊園地…!!
お一人様参加と悩みましたが、
ぜひランドでお客様を楽しませる側に回りたいたまちゃんです、ふふ!
と、いうわけで!
もし可能でしたら、ランドのマスコットキャラクター的着ぐるみ(着ぐるみお任せ☆)に入らせていただきたいのです…!
どんなに窮屈であろうと厚かろうとハードであろうと
楽しむ来園者の方の笑顔が見られれば
たまちゃん頑張っちゃいます♥️
風船を配ってみたり、写真撮影に応じてみたり。
ご安心ください、不埒なマネはいたしません、夢は壊しませんよ…!
少しラブラブカップルや愛らしい方々を見て、着ぐるみの中で
ニヤニヤくねくねさせていただく位です、ふふ!
※アドリブ&絡み、ネタ大歓迎♥️
バンリ・ガリャンテ
ぬふふ。来てみたかったんだよなー遊園地。なるほどメルヘンでゆめかわでファンタスティックですこぶるすてき。
ガキんちょのように燥いでジェットコースターやバイキングやら一通り楽しむよ。
んでな。あれ。ちっと恥ずかしいけども一人で楽しむんだ。メリーゴーランド。
パステルカラーのおうまに照れつつもしがみついて気分は姫騎士?みてえな。回転する夢の国の風景は、何だか少し奇妙でノスタルジックで……過去を知らんはずなのに「懐かしい」ってのは不思議だね。
あーあとね!どうしても食べたかったの。遊園地でクレープ!一人でだって寂しかねえけど今度は友達と来てえなあ…。
【アドリブ歓迎です!】
●ごほうししちゃうぞされちゃうぞ
ここまで猟兵たちは基本的に「自分が楽しむ」ことを主眼に置いて行動をしてきた。それ自体には全然まったく問題ないのだが、「他の来園者を楽しませる」ことを旨としてここ「わくわくキマイラランド」に馳せ参じたのは、明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)ただ一人であったのだ。
「ふふ! 楽しいですよね遊園地……!」
たまちゃ……珠稀はお一人様での参加と悩んだ末に。
「ぜひランドでお客様を楽しませる側に回りたいたまちゃんです、ふふ!」
アッ自分からたまちゃん言うたわこの人! まったくもう!
という訳でと珠稀が向かった先はスタッフルーム。元々大人気だった上に先の戦争で株が爆上がりな猟兵さんが来たとなればWCLのスタッフ側も諸手を挙げて歓迎してくれた。
「あの、もし可能でしたら、WCLのマスコットキャラクター的着ぐるみに入らせていただきたいのですが……!」
「ちょうど良かった、着ぐるみに入る担当が一人欠勤になっちゃって困ってたんだ」
「ちょっと窮屈で、暑くて、ハードなお仕事だけど、猟兵さんならだいじょぶだね!」
待って、二人目のスタッフさんの発言の根拠は。君たち猟兵のことを何だと――。
「はい……! どんなに窮屈であろうと、暑かろうと、ハードであろうと! 楽しむ来園者の方の笑顔を見られれば! たまちゃん頑張っちゃいます♥️」
たまちゃん頑張りすぎィ! 過労死されても労災とか出ないかも知れないですよ!?
スタッフさんサイドは欠員の補充ができて大喜び、たまちゃんサイドも希望が通って大喜び。あれっ、win-winの関係の成立……!?
珠稀がスタッフルームで着ぐるみを装着している間に、ひとりの猟兵がチケットを片手にWCLの入園ゲート前に降り立った。
「ぬふふ。来てみたかったんだよなー、遊園地」
チケットを半分もぎってもらいゲートを抜けて、辺りを見回すその人影の正体はバンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)。
元々キマイラフューチャーという世界は根本からしてハチャメチャだということは理解していたつもりだったが、ここはそう、飛び抜けて――。
「なるほど、メルヘンでゆめかわでファンタスティックですこぶるすてき」
遊園地という、日常の煩わしさを忘れさせてくれる非現実的で幻想的な夢の空間。並び立つ建物ひとつ取っても愛らしい。それに、すぐ目の前でたくさんの風船を持っているピンクのうさぎの着ぐるみ。あれも遊園地ならではだ。
(「わ、かわゆ! あの着ぐるみ、一緒に写真撮ってくれたりすっかな」)
もうお分かりかと思いますが、着ぐるみの中の人は珠稀さんです。WCLの顔ともいえる存在の、ピンク色のうさぎさん着ぐるみの中に入るという大役を任された珠稀は、張り切って風船を来園者に配るお仕事に精を出していたのだ。
スッとスマホを取り出しつつ近づいてくるバンリの気配を鋭く察知した着ぐるみ――の中の珠稀は、ベストなタイミングでバンリに風船をひとつ差し出す。
「えっ、こ、これ、くれんの!?」
バンリの中では、着ぐるみが配る風船はせいぜい小学生までが対象だろうと思っていたので、これには思わず声を上げてしまう。
(「どうぞどうぞ、是非とも受け取って下さい
……!」)
声を出せない代わりに心の中で全力の愛を込めて風船をそっとバンリの手に握らせる着ぐるみたまちゃん。ほわぁ……という顔で着ぐるみと風船を交互に見るバンリ。
「……あっ、そうだ! 写真撮っていい?」
(「勿論です……っ!」)
着ぐるみが大きく首を縦に振る。頭が取れそうで心配になる勢いだった。
やったぜと早速着ぐるみのすぐ横に並び、思い切り腕を伸ばしてスマホのフロントカメラで自撮りをしようとしたその時だった。
「よろしければ、私が写真を撮りますよ」
丁寧な物腰のキマイラスタッフが即座にやって来て、状況を察して撮影係を買って出てくれた。
一枚。もう一枚。はいオッケーです!
そんな感じで無事ピンクのうさぎさんとのツーショット記念画像をゲットしたバンリは、風船を手にバイバーイと手をひらひらさせながら、上機嫌で園内へと消えていく。
手を振り返しながらその姿を見送った着ぐるみこと珠稀は、ひと仕事成し遂げたことに胸をいっぱいにしていた。
またたまちゃんのことだから不埒な真似とかすると思った? ご安心です、夢の世界の雰囲気ブレイクなんてことは決してしませんよ!
タイミングが合わなかったのか、ラブラブな猟兵さんカップルを見かけることは残念ながらなかったが、バンリという愛らしい猟兵さんに出会えたことは素直に嬉しく。
(「園内でも存分に楽しんでいって下さいね、ふふ!」)
そう願いながら、着ぐるみの中でそっとニヤニヤくねくねするたまちゃんでした。
そんな珠稀の願いを受けたバンリは、そうとも知らずにジェットコースターに乗ってはバンザイしながら思いっきり絶叫し、今まさにバイキングに乗ってひゃっほーいと歓声を上げていた。
バイキングを最大限に楽しむならば、船体の端に乗るのがオススメとされている。振り子の位置関係上、一番大きく振られてスリルを味わえるのが両端なのだ。
という訳で、当然のように船体の端に陣取って全力ではしゃぎまくるバンリ。我ながらガキんちょかな? って思ってしまう程にははしゃいでいる。
船体が大きくスイングするタイミングに合わせて安全バーから手を離し、余裕のバンザイポーズだ! ナイス!
バイキングがあまりにもツボに入ったのか、ジェットコースターのように待ち時間が長いわけでもなかったからか、連続で十回ほどバイキングをキメたバンリは、さすがにちょっと休憩しようとベンチに腰掛けて一息つく。
なるほど、本当にお一人様でも楽しめる、いいところじゃないか。
ご機嫌で周囲を見渡すバンリの次なるお目当ては――。
(「……んでな。あれ。ちっと恥ずかしいけども」)
一人で楽しむんだ、メリーゴーランド。
凛々しい白馬もいたけれど、バンリが選んだのは、パステルカラーの愛らしいおうまさん。
よいしょとまたがり、照れが入りながらもきゅっとその首にしがみついてはふと思う。
(「気分は姫騎士? みてえな」)
いざ参らん、とおうまさんが応えたような気がした。メリーゴーランドが音楽と共に回りだす。ゆるりと上下するおうまさんの動きは、まるで本当の乗馬のようだ。
おうまさんに身を委ねつつ、バンリが眺めるのは回転する夢の国の風景。
何だろう、何だか少し奇妙でノスタルジックで……。
(「……過去を知らんはずなのに『懐かしい』ってのは、不思議だね」)
姫騎士は、ほんの少し、馬上で曖昧な笑みを浮かべた。
メリーゴーランドを後にしたバンリが最後に向かったのは、どうしても食べたいと思っていたクレープのワゴンであった。
クレープ自体は普通の街中ででも食べれるけれど「遊園地で食べるクレープ」こそがバンリのお目当てだったのだ。シチュエーションって大事ですよね、わかります。
「一人でだって寂しかねえけど、今度は友達と来てえなあ……」
もしも友達が一緒だったなら、バンリの口元についたままのクリームのことを教えてくれたに違いない。
今度機会があれば、その時は――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】
【POW】
わーい!
ジェットコースターは全種類乗りたいでいす
お化け屋敷っぽいのもぜんぶ!
きゃーっ!死ぬうううううううう
うわああああああ、ちょっとアヤネさま、手をつないで!!
はあはあ、ああ、怖かったー
でも楽しかった!
…アヤネさま、ノリが悪いですねい?
いえ、まずはここは楽しまないとでいす!
アヤネさまもまだ子供じゃないでいすか
え、13歳に言われたくないですって?
サクラコのはあくまでも見た目ですからねい
ヤドリガミは関係なくないでいす?
射的で目がキラキラしているアヤネさまを楽しそうに眺めて微笑みます
じゃあ、次はあのピンクのうさぎっぽいマスコットを狙ってくださいませ!
アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
【POW】
アドリブ連携歓迎
あーはいはい
子供向けの遊園地でしょ?
僕は仕事じゃなかったら来ないって
真顔でジェットコースター乗って
真顔でお化け屋敷を通過するネ
いや、ほら16歳って結婚できる歳だし
サクラコってヤドリガミらしくないよネ?
なんでそんなに楽しそうなの?
射的?
あー、うんやってもいいけど
めっちゃ楽しむ
うれしそうに、次どれ落とそうか?
って顔をあげたらサクラコがめっちゃいい笑顔していて我に返るネ
あー、
撃つの好きだし
ほら、職業病っていうの?
いつまでも笑わないで!
じゃあラストはそいつだ
どこかで見たような顔だネ
●てんしょんあげてこーぜ!
まずはここ「わくわくキマイラランド」に響く、とある少女の歓声をお聞き下さい。
「わーい! 遊園地! ジェットコースターは全種類乗りたいでいす! お化け屋敷っぽいのもぜんぶ!」
「あーはいはい、子供向けの遊園地でしょ? 僕は仕事じゃなかったら来ないって」
そこんとこよろしくねと念を押すように、無邪気にはしゃぐ鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)に対してあっさり塩対応をするアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)。あれっ、お連れさんのテンションめっちゃ低くないですか? 大丈夫?
ヌルいのからヤベーのまで各種取りそろえてあるジェットコースターのどれに乗っても。
「きゃあああああああーーーーーーーーーーーーっ!! 死ぬうううううううううううう」
(「いや、死なないから。落ちない限り」)
絶叫マシンの名に違わぬ悲鳴を盛大に上げるサクラコとは対照的に、あくまで真顔を貫くアヤネ。決して恐怖で硬直しているとかそういう訳でもないあたりが強すぎる。
よろしいならばお化け屋敷だ、と勇ましく突入するも。
「うわああああああ、ちょっとアヤネさま、手を! 手をつないで!!」
(「……大体、係員が出てきて驚かせてくる場所は予想通りだネ。この調子なら想定の範囲内ってとこかな」)
汗ばんだ手でぎゅうと手を握ってくるサクラコをさせるがままにしつつ、あくまで真顔のまま冷静に通路やオブジェクトの配置を見て色々な事情を把握してしまうアヤネ。これだから天才ってやつはよお!
こんな調子でアトラクションを一通り回った後、サクラコがおもむろにアヤネに向き直ると、直球で尋ねた。
「……アヤネさま、ノリが悪いですねい?」
「……いや、ほら16歳って結婚できる歳だし」
「それが何か? でいす」
微妙に言外に込めたニュアンスが伝わらない。これは直球で返すべきだろうか。
「サクラコってヤドリガミらしくないよネ? なんでそんなに楽しそうなの?」
質問に質問で返す形になってしまったが、仕方がない。だって不思議なんだもの。
「ヤドリガミは関係なくないでいす? ……いえ、まずはここは楽しまないとでいす!」
サクラコは、古い銅鏡を本体とするヤドリガミである。人としての身体を得てからどれほどの時を経たのかは知れぬものの、最初から人として生まれ育ったものとは、どこかしら「根底にある感覚」が異なるのではなかろうか。
ところがどうだろう、人の子と変わらず遊園地を満喫するサクラコは――ヤドリガミ「らしくない」。アヤネはそう思ったのだ。
そんなアヤネの思いを知ってか知らずか、ようやくアヤネの発言の意図に気づいたサクラコが、ああと声を上げた。
「アヤネさまもまだ子供じゃないでいすか!」
「いや、13歳のサクラコには言われたくないというかネ」
「いえいえ、サクラコのはあくまでも見た目年齢ですからねい」
そう言って、えへんとふんぞり返るサクラコ。んん? ここは胸を張る所かなあ?
しかしそうやってわいのわいのしていても、結局何ならアヤネも楽しめるのかは分からない。困りましたねい、と辺りを見回したサクラコの目に留まったのは――。
「アヤネさま、射的ができる所がありますよ!」
「……えっ」
ヒット。手応えありだ。
「あー、うん。やってもいいけど」
(「アヤネさま、目がとてもキラキラし始めましたねい」)
とてもわかりやすい反応を返したアヤネと共に、連れ立って建物の中へ入っていく。
射的と表現すると屋台のそれをイメージしがちだが、WCLのそれはさながら西部劇の舞台のようで。用意された銃も本格的なライフルだった。
「……よ、良くできてるじゃないか」
それを一つ手に取れば、自然と気分が高揚してくる。ずらりと並ぶマスコットキャラクターをこれで撃つのかと思うと最初は少し躊躇われたが、一度撃ってしまえば、あとはアヤネの思うがままだ。
一発撃てば、ひとつコテンと倒れる。その繰り返し。三分の一ほど仕留めたところで上機嫌のままふと思いつき、アヤネはサクラコの方を向いた。
「――次、どれ落とそうか?」
そこで、めっちゃいい笑顔で自分を見守るサクラコとガッツリ目が合った。
にっこり。
サクラコが、心から微笑ましいものを見たという顔で微笑んだのを見て、ハッと我に返るアヤネ。顔が熱くなった気がしたのはどうか気のせいであって欲しい。
「あー、撃つの好きだし。ほら、職業病っていうの?」
照れ隠しにと弁明をするアヤネを、ニコニコと笑んだままで見つめるサクラコに。
「……いつまでも笑わないで!」
「はーい、でいす!」
思わず語気を強めて言ってしまうアヤネであった。
「ところで、次でいすか? ……じゃあ、次はあのピンクのうさぎっぽいマスコットを狙ってくださいませ!」
そう言ってサクラコが指さしたのは、WCLのシンボルキャラクターとも言える、ピンクのたれ耳うさぎのマスコットだった。
「じゃあラストはそいつだ」
じゃき、とライフルを構えるアヤネ。狙おうと思えばいくらでも狙って落とせるが、込められた弾には限りがある。故に、これが最後。
(「……どこかで見たような顔のマスコットだネ」)
き、気のせいですよ!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『懐かしおもちゃ三人衆』
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POW : コマ回し怪人・ウェポン
【コマ回し兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : けん玉怪人・ジェノサイド
【けん玉攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : トランプ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【トランプ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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●ごあんない
プレイング受付開始は「6/15(土)AM8:31~」とさせていただきます。
それまでに断章を投稿致しますので、今しばらくお待ち下さいませ。
また、途中で〆切のご案内や、場合によっては再送のお願いをする可能性がありますことをあらかじめお伝えしておきます。
お手数をお掛けしてしまうおそれがあること、申し訳ありませんがご了承頂けますと幸いです。
●なにがゆうえんちだこのやろう
猟兵たちが思い思いに「わくわくキマイラランド」を満喫している一方で、日も傾いてきた頃合いに不穏な気配が入園ゲートの前に現れた。
「お客様、チケットを拝見しま……ああっ!?」
『ええい、こんな邪魔くさいゲートはこうだ!』
あーっお客様! 困ります! いやもうこれお客様と呼べるシロモノじゃないですよね!?
頭部がけん玉をしている見るからに怪しい人が頭をぶんと一振りするや、糸でつながった赤い玉を思い切り入園ゲートに叩きつけ――破壊してしまった。
かん、と小気味良い音を立ててけん玉怪人が頭部に玉を戻すと、無残にも破壊されたゲートの跡地を踏み越えて、頭部がそれぞれコマとトランプをした二体の怪人が園内に侵入する。
『何が遊園地だこの野郎、どうせ遊ぶなら由緒正しいコマ回しで遊べ!』
『ハ、正月くらいにしか出番がない奴が抜かしよる。トランプこそが遊戯の王者よ』
『なんだァ? てめェ……』
やだ……この(怪)人たち、いきなり仲間割れしてる……。
『まあ待て、俺達が真に戦うべき相手はこの中にいる。逸る気持ちはわかるが、我々『懐かしおもちゃ三人衆』の魅力を、今こそ憎き猟兵どもに見せ付けてやるべきだ』
どうやら、このイカれたメンバーの中でも一番マトモなのはけん玉怪人のようだ。
『そ、そうだな……俺達はそのために来たんだからな』
『仕方がないな、ここはけん玉の顔を立てよう』
コマ回し怪人とトランプ怪人も、WCLの方へ向き直る。
程なくすれば、騒ぎを聞きつけた猟兵たちの方からこのエントランスにやってくることだろう。
そこを叩く。ありとあらゆる懐かしいおもちゃの楽しさを見せ付けて、遊園地などというチャラチャラした現代っ子の娯楽を、完膚なきまでに否定してやるのだ。
もちろん、個人の娯楽の在り方を否定してまで自分の主張を押し付けるやり方など言語道断。猟兵たちには、怪人たちの速やかな撃退が求められる。
気が合いそうな怪人がいたならば、少しは付き合ってやっても良いだろう。でも最後はちゃんとユーベルコードで一撃かますのを忘れないで欲しい。
当然、最初から殺意全開フルスロットルでお前のこだわりなぞ知るかと殴りかかっても良い。相手はオブリビオン、遠慮は不要だ。
――猟兵諸君、夕暮れ時のエントランスで怪人三人衆とバトルだ!
●しめきりのおしらせ
詳細はMS個人ページやTwitterでも記載しておりますが、執筆の時間確保の都合上、恐れ入りますがプレイングの受付を「6月17日(月)15:00」をもちまして〆切らせて頂きたく思います。
それまでに頂戴したプレイングは(現時点でのペースなら)問題なく採用できると思います、ご都合よろしければ期日いっぱいまでお待ちしております。よろしくお願い致します!
真宮・響
【真宮家】で参加。
はぁ?何いってんだこいつら。遊園地は子供から大人まで遊べるいい触れ合いの場所だ。チャラチャラしている現代っ子の娯楽って視野が狭すぎるんじゃないかね。
まあ、それなりに歳は取ってるから昔から続くおもちゃを大事にしようとする気持ちは分からんでもない。ある程度は遊びに付き合ってやるよ。まあ、怪人達がいう遊びも現代風にアレンジされたりしてるんだけどね。
気が済んだかい?じゃあ、アタシの夫と共に遊びの仕上げだ。【無敵の相棒】で叩き潰すよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
えっと、トランプをモチーフにしたアトラクションもありますし、遊園地でコマもけん玉も売ってますよ?何も忘れ去られた訳じゃないんです。まあ、自分の思いに凝り固まってるようですので、言っても納得しないでしょうが。
とりあえず遊園地を破壊する行為は止めましょう。まずはお手並み拝見ということで怪人のご自慢のユーベルコードを待ちます。勿論、【イージスの盾】でそのまま、ご自慢の技をお返しする為です!!自らの行為の罪深さを味わいながら、ご退場願います!!
神城・瞬
【真宮家】で参加。
遊園地も良さがありますし、トランプもけん玉もコマもそれぞれの良さがあります。どれも大人にも子供にも夢を与えるのは変わらないんですかね?むしろ怪人の使う技がこうやって遊ぶものだと誤解を与えかねないと思うのですが。風評被害も心配ですね。
響母さんがしばらく付き合うというので、速やかな撃破は止めましょう。まあ、響母さんが行けというなら、月読の同胞と共に【全力魔法】【二回攻撃】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【武器落とし】を併せた【誘導弾】で容赦なく殲滅しますけどね!!憩いの園を荒らす不届き者は即刻退場願います!!
●まみやさんちのこうぼうせん
エントランス付近で突如起こった騒ぎをいち早く聞きつけたのは、レストランで遊園地フードを堪能していた【真宮家】の三人だった。
ほとんど食べ終わるところだったので急いで食事の残りを口に運ぶと、丁寧に食器を返却口に戻してから、急ぎ足でエントランスの方へと向かう。
――遊園地を満喫しているうちに、程なく怪人がやってくる。
予知の通りだ。怪人が現れて騒動が起きること自体は織り込み済みのつもりだったが、いざ無残にも破壊された入園ゲートを見た真宮・奏(絢爛の星・f03210)は思わず両手で口元を覆う。
「ひどい……」
そんな奏のすぐ後ろで、母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)と義兄の神城・瞬(清光の月・f06558)も息を呑む。
「……よくもまあ、派手にやってくれたもんだ」
「あそこにいる怪人の仕業ですか、……力はそれなりにあるようですね」
そんな三人の姿に気付いた怪人たちが、待ちかねたように詰め寄ってきた。
『来たな猟兵ども! 遊園地などでうつつを抜かしおって、我々「懐かしおもちゃ三人衆」が、真の娯楽というものを教えてくれる!』
けん玉が、コマ回しが、トランプが、それぞれ己を象徴するおもちゃを手に身構える。
「はぁ? 何いってんだこいつら」
ここで響が奏の前に進み出る形で一歩踏み出すと、怪人たちに反駁した。
「遊園地は子供から大人まで遊べる、いい触れ合いの場所だ。チャラチャラしている現代っ子の娯楽だなんて思ってるんだとしたら、それは視野が狭すぎるんじゃないかね」
『なっ
……!?』
「えっと、トランプをモチーフにしたアトラクションもありますし、遊園地でコマもけん玉も売ってますよ?」
『なん……だと
……!?』
母の後ろからそう声をかける奏の言葉に、怪人たちがあからさまに動揺する。
「はい。だから、何も忘れ去られた訳じゃないんです」
(……まあ、自分の思いに凝り固まってるようですので、言っても納得しないでしょうが)
内心でため息をつきながら、駄目元で怪人を諭そうとする奏だったが。
『だ……黙れ! そんな甘い言葉にだまされると思うな!』
案の定だった。奏は今度こそ深いため息をつくと、入れ替わるように瞬が口を開く。
「遊園地も良さがありますし、トランプもけん玉もコマもそれぞれの良さがあります。どれも大人にも子供にも夢を与えるのは変わらないんですがね?」
『綺麗事を! ならば何故俺達は――『過去のもの』となったのだ!』
「……っ」
――オブリビオン。それは、失われた過去の化身。それが意味するものは。
「まあ、待ちな。アタシもそれなりに歳は取ってるから、昔から続くおもちゃを大事にしようとする気持ちは分からんでもない」
「響母さん……」
話はここまでか、そう瞬が決断しかけた所に大人の余裕で割って入ったのは響だった。つかつかとコマ回し怪人に近づくと、その手にあったコマをおもむろに取り上げる。
「紐を貸しな、ある程度は遊びに付き合ってやるよ」
『……ふん、猟兵にしては話が分かるじゃねえか。言うからにはそれなりの腕前を見せてくれるんだろうな?』
コマ回し怪人が鼻を鳴らしながらあっさりとコマを回す紐を響に手渡す。そしてその様子を一歩下がったところで見守る奏と瞬。
(「響母さんがコマ回しする所、初めて見ます」)
まるで自分が回す当事者のように緊張で胸を高鳴らせる奏と、ならば速やかな撃破は止めましょうと決めた瞬とが見守る中、器用にコマに紐を巻き付けた響が不敵に笑う。
「コマ回しか、最近は現代風にアレンジされたりしてるんだけどね」
『げ、現代風……?』
「そうさ、コマに色々なパーツを付け替えて自分だけの最強のコマを作るんだ」
『なにそれすごい』
「そしてそれは紐で回すんじゃなくて、専用の器具でシュバッと射出する!」
『うおおおお!?』
「さあ行くよ、コマを回しな!」
コマ回しが、現在もなお、自分たちが知るそれとは形を変えて、遊ばれている……?
衝撃を受けつつ、響に促されコマを思い切り回すコマ回し怪人。流石は本職というべきか、回転が鋭い。
響も負けじと紐を強く引き、自分のコマを回転させて怪人のコマにガツンとぶつける。こちらは威力が高い。
そんな様子を見守っていた奏がふと思い至り、声を上げた。
「あっ、思い出しました! UDCアースのテレビで夕方にやっているアニメで見たことがあります!」
「ああ、確かシリーズものとして随分長く続いているとかいう……」
『あ、アニメ化まで……!? メディアミックスするまで人気なのか
……!?』
「ほら、よそ見してんじゃないよ!」
がつん。
コマとコマが一度激しくぶつかり合い、そして弾かれ転がったのは――コマ回し怪人のコマだった。響の勝ちだ。
『なっ……コマを回すことなら誰にも負けないはずの、この俺が……』
(「それってつまり、コマを回す以外は何もできないということでは?」)
(「奏、それは言わないでおいてやりましょう」)
「……気が済んだかい? じゃあ、アタシの夫と共に遊びの仕上げだ」
響の、その言葉が合図であった。奏と瞬も続くように臨戦態勢に入る。
『そ、それは、まさか』
「――さあ、アンタの力を借りるよ!! 共に戦おう!! 【無敵の相棒】!!」
響の勇ましい声と共に発動したユーベルコードは、響の最愛の夫の姿を模した巨大なゴーレムを召喚してみせた。巨人の手には、響が持つ「ブレイズランス」が巨大化したものが握られている。
槍は、響の感情に呼応して赤熱する。今まさに赤く燃え上がる槍の穂先を、ほぼ叩き潰すような形でコマ回し怪人目がけて突き立てた!
『……ッ!!!』
一瞬だった。旦那様、めっちゃ強かった。コマ回し怪人はひとたまりもなく消滅する。
『お、おのれっ!』
同胞を葬られ、ついぞ先程まで仲違い寸前まで行っていた間柄のトランプ怪人が意外にも激昂して飛び出してくる。
「奏、準備はいいですね?」
「はい、瞬兄さん! まずはお手並み拝見です!」
息もピッタリな兄妹が、迫り来るトランプ怪人の前を迎え撃つ。まず動いたのは瞬だ。
「【月読の同胞】――力を借ります!!」
ユーベルコードで瞬が召喚したのは、月読の紋をつけた戦士の霊だった。腰に剣を佩いているが、今回構えたのはもう一つの武器である弓だ。
瞬の全力全霊をもって喚び出された戦士は、矢をつがえるとギリリと弓を引きしぼり、どんなに強固な鎧をも穿つ勢いでトランプ怪人に向けて矢を放つ!
『――ふ、甘いな! 【トランプ怪人・リフレクション】!!』
トランプ怪人の方に導かれるように向かっていった矢の一撃が、トランプ怪人が投げつけたトランプと衝突し、いかなることか相殺されてしまう。
しくじったか? いや、まだだ。今発生した一連の行動は、奏が油断なく構えていた愛用の「エレメンタル・シールド」の前面にしっかりと映し出されていたのだ。
【イージスの盾】。神話に伝わる最強の盾の名を冠した奏のユーベルコードは、ひとたび盾に映した攻撃を一度だけ借用することができる。
それを確認した瞬が、戦士に再度矢をつがえさせながら思う。
(「むしろ怪人の使う技が、こうやって遊ぶものだと誤解を与えかねないと思うのですが」)
何なら自分たちから風評被害を起こしに行っているまであるのではとさえ考えてしまう瞬だったが、ひとたび開戦したからには容赦はすまい。
「瞬兄さん、今です!」
「よし、もう一撃です!」
『愚かな、何度でも相殺してくれる! このトランプでな!』
奏の合図と共に、瞬が戦士へと攻撃を命ずる。二度放たれた矢は、初撃を更に上回る勢いでトランプ怪人を狙う。
それを再びトランプでかき消そうとするトランプ怪人の手元に、鋭く飛来する何かがあった。――トランプだ!
トランプ怪人のユーベルコードを奏が相殺し、その隙を瞬が突く。完璧な連携だ。
「ご自慢の技を返された気分はどうです?」
『こ、小賢しい真似を……っ!!』
「自らの行為の罪深さを味わいながら――」
「憩いの園を荒らす不届き者は、即刻――」
そうして、奏と瞬の声が合わさる。
「「ご退場願います!!」」
『ギャアアアアアア!!』
凄絶な一矢が、トランプ怪人の頭部を貫いた。怪人の手から、トランプの札がはらはらと落ち、視界は暗くなっていく。身体が言うことを聞かず、最期は悲鳴を上げるだけ。
どさり、と地に伏しそのまま消滅するトランプ怪人。
「残りはアンタだけだね、けん玉の」
そう言ってけん玉怪人に向き直る響に、しかしけん玉怪人は不敵に笑ったかのように見えた。顔面と思われる部分は丸い玉で、表情などうかがい知ることはできないはずなのだが。
『それは、どうかな?』
けん玉怪人がパチンと指を鳴らすと、驚くべきことに今しがた倒したはずのコマ回し怪人とトランプ怪人が、文字通り「復活」したではないか!
「えっ
……!?」
「集団戦とは聞いていたがこれは厄介だね、とりあえずアタシらはここまでだ。後は他の味方に任せるよ!」
息を呑む奏に、響が素早く決断を下す。ちょうど背後に、複数の猟兵の気配を感じる。自分たちは良くやった、何度でも復活するならば復活しなくなるまで叩くのみ。
三人は後続の猟兵たちに、交戦で得た情報を伝えるべく踵を返した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
榎・うさみっち
何も暴力で優劣つけるだけが戦いじゃない…
正々堂々と紳士的にトランプ対決で白黒つけようぜ!
その前に!うさみっちスケブセットに
ワイシャツ・黒ベスト・蝶ネクタイなうさみっち達をお絵かき
【かみえしうさみっちクリエイション】で実体化!
名付けてディーラーっちだ!知性増し増し!
俺達が相手だー!
ディーラーは普通はゲームに参加しない?知らん!
勝負内容はズバリ…皆で円になってババ抜き!
単純なようで実はかなりの心理戦である
ババが来てもポーカーフェイスを貫き
時には仕草や言動で相手を惑わす
怪人の微妙な表情の変化も見逃さず…
ってトランプ顔だから分からん!
さぁ勝負の行方やいかに…!
なお怪人が勝とうが負けようがタコ殴りに処す
●うさみっちはゆうえんちをすくえるか
お化け屋敷でこっぴどい目に遭いながら癒やしを求めて園内をさまよっていた榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は、ぶーんぶーんと文字通り飛んでエントランスに駆けつけた。
「ほうほう、怪人は『倒しても復活する
』……?」
そこで先立って怪人たちと交戦した味方の猟兵から情報を得たうさみっちは、確かに平然とした顔で並び立つ三人の怪人たちの姿を目にする。
『さあ、次は誰の番だ?』
『なあ、そこのピンクの塊がそうじゃないか?』
『ははは、まさか! あのようなちみっこいのが戦うとな』
うさみっち、身長17.4cm。ただでさえちっちゃいフェアリーの中でもとりわけちっちゃい部類に入る。だからって馬鹿にしていいわけじゃない、ですよねうさみっちさん!
「ふ、何も暴力で優劣つけるだけが戦いじゃない……」
『……何?』
怪人たちの煽りをものともしない様子でうさみっちが口を開き、トランプ怪人がそれに反応する。
「正々堂々と! 紳士的に! トランプ対決で白黒つけようぜ!」
ズビシとトランプ怪人を指差し勝負を挑むうさみっち。大丈夫? トランプ持てる?
『……面白い、この私を相手にトランプで戦おうとは。良かろう、受けて――』
「その前に!」
早速トランプのカードの束を取り出そうとした怪人を一旦制し、うさみっちはおもむろに愛用の「うさみっちスケブセット」を取り出すと、サラサラと何かを描き始める。
「よし出来た! これを【かみえしうさみっちクリエイション】で実体化!」
息をするようにユーベルコードを発動させ、何かが描かれたスケッチブックをドンと正面に向けると。
『な、何……!? 絵が、飛び出してきただと
……!?』
そう、スケッチブックにうさみっちが描いた、ワイシャツに黒ベスト、それに蝶ネクタイを身に着けた三人のうさみっち――いや、ディーラーっちが次々と実体を得てぴょこぴょこと飛び出てきたではないか!
「このディーラーっちは知性増し増し! そんな訳で、俺達が相手だー!」
『だが少し待って欲しい、ディーラーは普通はゲームに参加しないのでは?』
「知らん!!!」
わーわー、囲め囲め。囲んじまえばこっちのもんよ。そんなノリでうさみっちとディーラーっちたちは、異論を唱えるトランプ怪人を問答無用で巻き込んで勢いで勝負を始めるのだった。
『流れで勝負に乗ってしまったが……何で戦うのだ、ちみっこいの』
「うさみっち様だ! ちゃんと様まで付けて呼べよ! あと勝負は……ババ抜きだ! みんなー円になれー」
「「「わーわー」」」
『うさみっちか……ババ抜きをチョイスするとは、お前、分かっているな……?』
様をつけろと言われた先から無視を決め込むトランプ怪人だが、ババ抜きという提案には素直に応じる。
ババ抜きのルールはここで説明するまでもないかも知れないが、ジョーカーを加えた53枚のカードを使用してペアになったカードを捨てていき、最後に手元にジョーカーを残した者が負けとなるゲームだ。
一見単純に見えるこのゲーム、実はかなりの心理戦を伴う。うさみっちはそれを知った上で敢えての勝負に出たのだ。果たして、勝算はあるのか――!?
うさみっち、ディーラーっち三人、そしてトランプ怪人の手元にカードが均等に配られ、ゲームが始まった。カードのサイズについてはこの際気にしてはいけない。
最初にジョーカーを持ったのはディーラーっちのうちの一人。だが、ディーラーっちは揃いも揃ってジト目にバッテンお口のポーカーフェイスを貫いている。三つ子かな?
時計回りに隣のプレイヤーのカードを一枚引いては時折ペアを捨て、ゲームは順調に進んでいく。ジョーカーは行ったり来たり、今は誰の所にあるのかがひと目では分からない。
「あー、あと一枚! アレが来れば上がりなんだけどなー!」
あからさまにチラチラとトランプ怪人の手札に目線を向けながらうさみっちが声を上げる。まるで、トランプ怪人が何のカードを持っているかを把握しているかのごとく。
『……』
対するトランプ怪人はその手には乗らぬと無視を決め込み、隣のディーラーっちの手札に手を伸ばし、違和感を覚えた。
『……お前、そのいかにも取って下さいと言わんばかりに飛び出たカードは何だ』
「~~♪(口笛)」
ぴーぴぴー。ディーラーっち、バッテンお口で器用に口笛を吹いてごまかす。カードは二枚。どちらかが……ジョーカー、なのだろうか?
『その手には……乗らんっ!!』
飛び出したカードを無視して普通の位置にあったカードを引くと、トランプ怪人の手元には見事最後の一組のペアが完成する。トランプ怪人の勝利だ。
『流石は私、やはりトランプは良いな! 至高にして究極! さあ、次は――』
すっかり上機嫌になったトランプ怪人は、当然次の勝負があるものと思い込んでうさみっち達の方を向き――言葉を失った。
「おうおうトランプ怪人さんよう、さっきはよくもちっちゃいからってナメた口きいてくれたなあ」
うさみっちが、ディーラーっち三人と共に仲良く素振りをしていた。
『そ、それは……悪かった。うさみっちがこんなに話が分かる者だとは思わなかったのだ』
「うさみっち「様」だっつってんだろ! 行くぞディーラーっち、乱闘だ! タコ殴りの刑に処す!!」
『アーッ困ります! お客様! アーッ!!』
勝っても負けても元よりタコ殴りにする腹づもりだったうさみっち、後に「ちくしょうさぎ」の名をほしいままにするのだが、それはまた別のお話。
成功
🔵🔵🔴
城島・冬青
【壱季・深青(f01300)くんと一緒】
深青くん、けん玉とコマとトランプだよ
やったことある?
全部やったことあるとか深青くん経験豊富だね!
え?私??
…トランプくらいかなぁ
けん玉とコマはうーん、覚えがないなぁ
現代っ子なので
あ、武器として使ってる人は見たことあるよ!
まぁなんか殺る気満々みたいだし迎え撃とうか…
トランプの怪人さんは私が相手するね!
UC死神の矢で相手をしてあげ…って相殺したー!!?
ぐぬぬ、じゃあ接近戦で勝負!
【ダッシュ】で間合いを詰め愛刀・花髑髏で斬りかかっていきます
相手が少しでも怪我を負ったら【傷口をえぐる】で追撃
相手の攻撃は【残像】で惑わせてから避けるか無理なら【武器受け】で凌ぎます
壱季・深青
【お姉さん(城島・冬青・f00669)と引き続き一緒】
(遊園地の乗り物見る→3怪人見る→もう一度繰り返す)
同じ「遊び道具」なのに…ここまで楽しくないなんて
…ある意味、すごい
俺…全部…遊んだことある
お姉さんは…どれかで遊んだことある?
トランプだけ…現代っ子の遊び?
コマと…けん玉…残念だったね(哀れんだ)
うん、俺はコマを…相手するよ
黒曜の導【猩々緋】で…攻撃力を上げる
『我が身纏いし烏羽は、黒曜の導にて彩を放つ…』
敵の動きは…戦闘前から…ちゃんと確認しておく
そして…「野生の勘」「第六感」で…敵の動きに…対応する
(「…」「、」は適当で可)
●たしかにとらんぷはあたまひとつぬきんでてるかもしれない
騒動が勃発したエントランスに駆けつけた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)と壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)は、待ち構えていた三体の怪人の姿を見て、しばし硬直してしまった。
深青は一度振り返り遊園地のアトラクションを見て、視線を三怪人に戻し、そしてまたアトラクションを見て――思わず呟く。
「同じ「遊び道具」なのに……ここまで楽しくないなんて、……ある意味、すごい」
『開幕早々失礼な小僧だなオイ!!』
すごく残念そうに感心された怪人たちの中でもとりわけ血の気が多いコマ回し怪人がキレ散らかす。すまんな……これが現実なんだ……。
「深青くん、けん玉とコマとトランプだよ。やったことある?」
「俺……全部、遊んだことある」
冬青が問うと、深青が実は経験者であることを明かす。
「へええ! 全部やったことあるとか深青くん経験豊富だね!」
「いや……そんな」
『男子の方は我々を全員知っているのか、感心したぞ! コマも落ち着くんだ』
『フーッ……』
感心する冬青にちょっと照れる深青、そして話にしれっと混ざってくるけん玉怪人。コマ回し怪人は鼻息をひとつ吹くと努めて冷静になろうとする。
「お姉さんは……どれかで遊んだことある?」
「え? 私??」
話の流れ的にこうなるだろうとは分かっていても、いざ問われると驚いてしまうことってありますよね。今の冬青さんが、まさにその状態でして。
いやーちょっと言いづらいんだけどという感じで、小さめの声でこう返しました。
「……トランプくらいかなぁ」
『トランプ』
『……くらい?』
三怪人がそれぞれ反応を示す。トランプ怪人がちょっと嬉しそうにして、他の二体がまさかという雰囲気を出し始める。
「けん玉とコマはうーん、覚えがないなぁ」
『覚えが』
『ない?』
「現代っ子なので! ……あ、武器として使ってる人は見たことあるよ!」
慌ててフォローするように付け加える冬青だったが、しかし深青が図らずもその流れをひっくり返してしまう。
「トランプだけ……現代っ子の遊び? コマと……けん玉……残念だったね」
『『哀れまれた!!』』
けん玉怪人とコマ回し怪人が同時に悲痛な叫びを上げた。一方でトランプ怪人はまんざらでもなさそうな雰囲気でうんうん頷いている。この怪人たち本当にチームワークとか大丈夫なんですかね……?
『けん玉、お前は下がっていろ! やはり俺はコイツをやる!』
再び怒りの火がついたコマ回し怪人は、深青をズビシと指差すと宣戦布告する。
「……怒って、しまった」
「まぁなんか殺る気満々みたいだし迎え撃とうか……」
二人とも悪気はなかったのだ、ただ素直な気持ちを述べたに過ぎないのだ。
だが、こうなってしまっては仕方がない。
「じゃあ、トランプの怪人さんは私が相手するね!」
『えっ!?』
てっきり自分は今回お休みかと思っていたトランプ怪人が、おもむろに指名されて思わず変な声を上げてしまう。すみませんね、主にユーベルコードの都合でして……。
「うん、俺はコマを……相手するよ」
『やってやろうじゃねえかよこの野郎!』
かくして、冬青はトランプ怪人を、深青はコマ回し怪人を、それぞれ相手取ることとなった。
「――切り裂け、疾風! 【死神の矢】!!」
愛刀「花髑髏」の切っ先をトランプ怪人に向け、凛々しくユーベルコードを発動させれば、カマイタチが怪人目がけて襲いかかる。
『見切ったぞ……! 【トランプ怪人・リフレクション】!!』
「ええっ、相殺したー!!?」
冬青が放ったカマイタチとトランプ怪人が投擲したカードがぶつかり合うや、カマイタチがかき消えてしまう。
「ぐぬぬ……じゃあ接近戦で勝負!」
言うやいなや、冬青はスニーカーで強く地を蹴り猛然と駆け出し、一気にトランプ怪人との距離を詰める。
トランプ怪人が反応した時にはもう、冬青は既に怪人の懐深くに踏み込んでいた。それほどまでに、冬青のダッシュは――。
『速い……っ!?』
「そこっ!!」
花髑髏の刀身が閃き、トランプ怪人の胸元を掠める。かろうじて身を反らしたことで傷は浅く済んだが、それだけでは終わらなかった。
返す刀で、もう一撃。寸分違わず、最初につけた傷を深くえぐるように。
『ぐ……あっ……娘、トランプが好きでは……ないのか……っ』
「ごめんね、遊んだことはあっても、それとこれとは別かなって」
致命傷を負って消滅していくトランプ怪人の最期の問いかけに、冬青はてへぺろしながら返すのであった。
『喰らえっ、我がコマを!』
「我が身纏いし烏羽は、黒曜の導にて彩を放つ……」
コマ回し怪人が、強烈な回転を伴い攻撃力を増したコマを次々と投げつけてくる。対する深青も【黒曜の導】なるユーベルコードで「猩々緋」の力を得て、奇しくも怪人と同じく攻撃力を上げて対峙する。
(「飛んでくるコマの、動きが……分かりやすい……。性格が、出るのかな……」)
戦闘前のやり取りから察するに、恐らくこのコマ回し怪人は直情的な性格なのだろうと深青は冷静に分析していた。
そして、その読みはまさに正しく、怒りのままに放たれるコマの動きは実に単純で。鋭い勘があれば悠々かわせるものだった。
『小僧! 避けるな!』
「……じゃあ、キミも、避けないでね……」
『なっ
……!?』
眠たげな瞳をした、鈍そうな子供だと油断していた。その蒼眼の奥に秘められた強い意思の光に、コマ回し怪人は最期まで気付けなかった。
刃から柄まで全てが黒く、わずかに金が煌めく「黒曜羅刹」の名を冠したバトルアックスが、コマ回し怪人を頭頂から両断したのだ。
『こ、この小僧の……どこに、こんな、力が……』
「羅刹は……そういう、ものだから」
消滅していくコマ回し怪人を見送りながら、深青は常と変わらぬ口調でそう返す。
こうして猟兵たちの戦いは、順調に進んでいく――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
満月・双葉
【大神狼煙】
楽しく遊べるなら、何でも良くないかな?
遊園地はまぁ、僕も遊べないものが多いからなんとも言えないけれど、それでもそれなりだよ
狼煙との連携重視
敵の攻撃は視力、暗視、聞き耳に加え、第六感と野生の勘であらゆる感覚を活性化させて把握し見切り、狼煙に向かう攻撃も可能な限り察知して警告を送る
見切れないものはオラトリオベールが展開するオーラ防御で防ぐか、利用できそうな攻撃なら大根を盾にして受け、シードバッシュの要領で殴り返す(ユーベルコード使用)
武器をスナイパーで精度を上げて投擲(渾天儀も投げる)する事で狼煙の攻撃の援護も行う
おら狼煙いてまえやぁ!(なんか声援が違う)
大神・狼煙
【満月双葉】
ジェットコースターくらいは乗っておく?
あれ、動力は使ってないから多分いけるよ?
援護されるが、恐らく要は双葉ちゃんの一撃
機械巨人の右拳を召喚して地面を破砕
コマが回らない地形に作り変えてコマ怪人を封殺
けんだま怪人『本体』へ、フックの要領で回り込む拳を叩き込む
迫るけんだま攻撃はどれだけ速かろうと直線的か、弧を描くか、命中範囲は一枚の面の形になるため初撃を躱し叩き潰す
後続の攻撃は双葉ちゃんが抑えてくれるやろ
トランプ怪人は真正面から拳を叩き込み、わざとUCを相殺させ、直後敵の背後から左拳を召喚
死角から反応すらさせず圧殺
年頃の女の子がそんな言葉遣いするんじゃ……それ投げちゃらめぇえええ!?
●ゆうぐれどきのげきとう
入園ゲートが破壊され、エントランス付近で怪人が猟兵と交戦中との情報は、日も傾いてきた頃合いでそろそろあらかじめ目星をつけておいたお土産を買って帰ろうとしていた大神・狼煙(コーヒー味・f06108)と満月・双葉(星のカケラ・f01681)の二人の元にも届いていた。
「これは……お土産はひとまず後回しだね、双葉ちゃん」
「むぅ、分かってはいたけど水を差された気分」
手にしていたクッキーの詰め合わせの缶を棚に戻すと、頬をふくらませる双葉を促し共にエントランスの方へと向かう狼煙。
たどり着いてみて見れば、そこで待ち受けていたのは、我らこそ真の娯楽と称する『懐かしおもちゃ三人衆』の姿だった。
『お前たちが興奮する真の娯楽を理解するまで、我々は何度でも蘇る! さあ、次の相手は誰だ!』
自分の主張をゴリ押ししてかえって事態を悪化させる、そうとこやぞお前ら。もう幾人もの猟兵たちにツッコまれているのだが、それが理解できればそも怪人になどなっていないという所だろうか。
「楽しく遊べるなら、何でも良くないかな?」
「うん?」
双葉のつぶやきに、狼煙が反応する。
「遊園地はまぁ、僕も遊べないものが多いからなんとも言えないけれど、それでもそれなりだよ」
怪人曰く、遊園地など邪道。そして双葉は持って生まれた体質故に、アトラクションの多くを楽しむことができない。しかし、それでも今日はそれなりに、楽しかった。
そんな双葉の思いを聞いて、狼煙は守るように背にした園内をチラと振り返り。
「……ジェットコースターくらいは乗っておく? あれ、動力は使ってないから多分いけるよ?」
そう、双葉が接触するジェットコースターの車両自体には機械的なアレソレは存在しない。外部からの様々なエネルギーで高速移動する仕組みを考えれば、双葉でも大丈夫かも知れない。
だが、それを確認するためにも。眼前の邪魔者たちをまずは打ち倒さねば!
『我々を前にしてなおも遊園地の話をするとはいい度胸だ――遊んでやるっ!』
けん玉怪人が声を上げると、コマ回し怪人とトランプ怪人が散開する。三者三様、それぞれ手には凶器と化したおもちゃがあった。なるほど、遊ぶってそういう……。
狼煙と双葉は一度視線を合わせ無言で頷くと、それに対峙する。
「転移門解放……転送。文字通り、鉄拳制裁をくれてやる……」
眼鏡の奥で、狼煙の赤い瞳がギラリと光る。
「――【古代機械兵器・機巧巨人(エンシェントギア・ゴーレム
)】!!」
『なっ
……!?』
コマ回し怪人が自慢のコマたちを次々地面に走らせ始めたその時、狼煙が喚び出したメカニカルな姿の巨人――その右の拳が虚空から突如現れ、轟音と共に自分たちとコマ回し怪人との間の地面を思い切り破砕する!
『くっ、これではコマが奴らの方に向かえない!』
ならばとコマを直接「飛ばす」方向に切り替えたコマ回し怪人の攻撃の軌道を、今度は双葉が夕暮れ時でも難なく見通す視力や、鋭く研ぎ澄まされた直感を駆使して察知する。
「狼煙、右から二つ、左から三つ!」
「ちょ、多ない!?」
予想以上のコマの数にギョッとしながらも、飛来することさえ把握できればそれで充分。タイミングを見計らって身をかがめると、狼煙はそこから一気に地を蹴ってその場を離脱する。目指す先は――けん玉怪人の元だ!
ついぞ先程まで自分がいた場所で、小気味良い音を立ててコマ同士がぶつかる音がする。それを振り返ることなく狼煙は右の拳を強く握り込む。
『魅せてやる……「円月殺法・無回転灯台」!!』
うわあなんかやたらカッコいい技名叫びながらけん玉怪人が頭振って玉の部分を振り回し始めたぞ! 遠心力で勢いを増した大きな玉の部分が迫る狼煙を迎撃せんと唸りを上げて襲いかかる!
(「――どれだけ速かろうが、その攻撃は直線的か弧を描くか。命中範囲は一枚の面の形になる」)
糸の長さと力加減を見て、狼煙は飛来する玉の位置を予測する。赤い色の帯を引くように飛んでくる凶器と化した玉を紙一重でかわした狼煙は、無防備になったけん玉怪人の本体――胴体の部分に強烈な右フックを叩き込もうとして。
「……ひゅう」
頭部に残されたけんの鋭い先端を狼煙に向けて猛然と突っ込んできたけん玉怪人の攻撃を、今度こそギリギリで避ける狼煙。
ちょっとだけ予想外だったが、相手の方から間合いに踏み込んできてくれたのは僥倖でもある。今度こそ遠慮なく、怪人の腹部に一撃叩き込む。
『おうっ
……!?』
けん玉怪人がニ、三歩よろめいたその時、狼煙がパチンと指を鳴らす。すると――。
ズシイィィィィィ……ン!!!
けん玉怪人にとってみれば、何が起きたかも分からなかっただろう。いまだ戦場に留まっていた狼煙の機巧巨人の右腕が、頭上からまっすぐ叩き潰したのだ。
それを見届ける間もなく踵を返した狼煙は、怪人最後の一体であるトランプ怪人目がけて大きく腕を振り下ろし、人差し指を突きつける。
『来るか、猟兵! だが私にユーベルコードは効かぬぞ!!』
トランプ怪人が手にしたカードを構えるが、狼煙は構わず機巧巨人の右拳を正面から叩き込む。当然、トランプ怪人はカードを投げつけてたちまちその拳をかき消してしまう。
『ははは、無駄だと言ったはず――があっ!!?』
トランプ怪人の言葉は、突きつけた指先を肘が直角になるよう曲げた状態で天に向けた狼煙が、それを合図に追加で召喚した左側の拳によってほぼ物理的に遮られた。
虚空から突如現れた拳が、背後から強烈な一撃をぶちかましてくる。
この一言だけで、トランプ怪人がいかに為す術がなかったかが分かろうというもの。
ドサリと地に伏すトランプ怪人を捨て置き、双葉が抑えてくれているであろうコマ回し怪人の方を見る狼煙。
二人の攻防は、一進一退だった。無限に湧いてくるコマを全て見切るのはさすがの双葉でも難しい、虹色に輝くオラトリオヴェールが展開する防御障壁で受け止めつつ、絶妙な位置に飛んできたコマを大根を――そう、大根を使って一度防御した後、バットのようにして怪人目がけて打ち返したり。
それじゃあ加勢するかと再び拳を構える狼煙の姿を確認した双葉が、待ってましたとばかりに声援を送る。
「おら狼煙いてまえやぁ!!」
「年頃の女の子がそんな言葉遣いするんじゃ……それ投げちゃらめぇえええ!?」
ぶぉん。
狼煙曰く「借りパク」してきちゃった渾天儀を思いっきりぶん投げる双葉。いやいやちょっと待って、使い方が分からないからってそれは投げちゃいかんでしょ!
そら狼煙さんも色々とツッコミますわという状況だが、すごい勢いで飛んでいくコズミックリングは、今まで防戦一方に思われた双葉を侮っていたコマ回し怪人の不意を突くには充分だった。
『おぶっ!!!』
はいクリーンヒット。のけぞっている所が完全無防備なので、後は狼煙さんの方で煮るなり焼くなり好きにしちゃって下さい!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
インディゴ・クロワッサン
ちょっとー!
「出遅れたけど、僕も遊園地のちょっとお高かったりするフード類巡りしたかったのにー!」
この怒りはオブリビオンにぶつけるべきだね、うんそうしよう(怪人達を睨み付けつつ【殺気】)
「と言う訳で、死んでよ」 (底冷えする低い声で【恐怖を与える】)
【SPD】
高速の連撃って、見切っちゃった上で回避して隙を作るにはもってこいだよね。
止められないなら、尚の事☆
UC:限定覚醒・藍薔薇纏ウ吸血鬼 を発動して、一対二翼のヴァンパイアになってから、敵の攻撃は【見切り】【第六感】【残像】で回避。
隙が出来たら【怪力】を込めてから【なぎ払い】【衝撃波】【フェイント】【鎧砕き】【鎧無視攻撃】【串刺し】で攻撃だー!
●ゆうぐれどきのだいさんじ
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は憤慨していた。
「ちょっとー! 出遅れたけど、僕も遊園地のちょっとお高かったりするフード類巡りしたかったのにー!」
「わくわくキマイラランド」の営業時間自体は夜までなのだが、ひとたびオブリビオンによる事件が起きてしまえば当然ながらそれどころではなくなってしまう。
もしかしたらまだワンチャンあるかも、という一縷の希望を抱いて転送されてきたインディゴが見たものは、哀れ怪人の手により破壊された入園ゲート。
要するに、遊園地をエンジョイするには、ちょっと遅かったのだ。残念!
『ふ……遊園地で遊べなくても嘆くことはない、何故なら、俺達が居るからだ!』
キメッキメの台詞でインディゴを歓迎するかのごとく鷹揚に両手を広げるけん玉怪人。自分たちと遊べばいいじゃない、心からそう思っているようだ。
だが、その言動がインディゴの神経を逆撫でしてしまったことに、果たしてけん玉怪人は気付いただろうか。
(「……腹が立ってきた、この怒りはオブリビオンにぶつけるべきだね」)
うん、そうしよう。心に決めたインディゴはものすごくいい笑顔で怪人たちを見た。笑顔だ、それは間違いない。だが――目が笑っていない。
『ヒェッ
……!?』
インディゴから放たれる殺気を前に、思わず声を上げてしまう怪人たち。何故こんなにもむき出しの殺意を向けられなければならないのかとさえ思ってしまう。
猟兵とオブリビオン。互いに不倶戴天の敵であるとは分かっていても、自分たちのおもちゃとしての魅力に多少なりとも自信を持っている怪人たちからすれば、それをガン無視していきなり戦闘になるとはちょっと想定外だったというか。
「という訳で、死んでよ」
『ヒイイイイ!!?』
それはもう底冷えのする低い声で、インディゴが直球ストレートな言葉を怪人たちに投げつける。こうかはばつぐんだ! 怪人たちは盛大に震え上がる!
だが、ここでけん玉怪人がここは俺がと一歩前に出る。
『そう簡単に我らを倒せると思うなよ、猟兵……!』
それを見たインディゴは、相手がけん玉怪人であることに内心ガッツポーズをする。各怪人の戦闘スタイルについては、グリモアベースである程度事前に聞かされていたからだ。
(「高速の連撃って、見切っちゃった上で回避して隙を作るにはもってこいだよね」)
――一度発動すれば止められないというのならば、尚のこと☆
アッこれは対策万全なヤツですわ、けん玉怪人さんごめんなさいするなら今のうちですよ!?
『喰らえ、けん玉超奥義――「インフィニティ」!!』
しかし構わずけん玉怪人は、自らの身体ではなく手にしたけん玉を巧みに繰って、猛然とインディゴに襲いかかる!
ちなみにインフィニティは螺旋と違って技量さえ許せば延々と回転を続けられる、まさに連撃である。いや元々は攻撃するための技じゃないんですが。
それを見たインディゴが一瞬不敵に笑んだのを、果たしてけん玉怪人は見ただろうか。
「藍の血の片鱗を、今ここに。――【限定覚醒・藍薔薇纏ウ吸血鬼(リミテ・エヴェイユ)】」
そう口にすると同時に、インディゴの身体に異変が起こった。背から一対ニ翼の羽がばさりと広がったのは、インディゴがヴァンパイアに変身した証でもある。
当然、外見だけの変化には留まらない。内なる移動速度と反応速度が爆発的に増大した今のインディゴにとっては、けん玉怪人の超絶技巧の回転技さえ見切るのは容易い。
『どうだ! 為す術もなく剣と玉の超高速回転に巻き込まれるが良い!』
「……ふぅん、その程度で「超高速回転」とか言っちゃうんだ」
『何っ
……!?』
ひょい。
けん玉怪人の予定では、紐を指に引っかけてぐるんぐるん回した剣と玉を交互にがっつんがっつんぶつけてやる感じだったのだろう。
だが、その動きがほぼスローモーションのように見えてならないインディゴは、いとも簡単にけん玉怪人の攻撃を回避する。
『しまった、この技が避けられるとは……!』
「はい、隙だらけ」
何か、こう、その名の通りに技量さえあれば無限に回せるというワザマエが仇となったと申しますか。
途中で攻撃を中断することも出来ず無防備な姿を晒すけん玉怪人目がけて、藍の血を持つヴァンパイアは、自身を象徴するような薔薇の紋章が刻まれた黒剣「Vergessen」を振るう!
己の持てる力の全てを込めて、横薙ぎに。副次的に発生した衝撃波でもダメージを与え、それで終わりかと見せかけて、一度グッと剣を引いて全ての守りを貫く勢いで剣の切っ先を突き出し、けん玉怪人の胴体を深々と貫いた。
『が……はっ……』
顔面が人間であったなら、口から血を吐いていたのではなかろうか。
そんな声を上げながら、黒剣が引き抜かれると同時に、けん玉怪人は倒れ込んだ。
「ポップコーン、まだ売ってるかな……」
黒剣を一振りして刀身の汚れを払うと、インディゴは遊園地を見ながら呟いた。
成功
🔵🔵🔴
山路・紅葉
🐰だ、大丈夫だよ!?みんなにもしっかりとお土産買って帰るからっ!
🐺…アンタ、一体誰に何の言い訳してるのよ。でもその為には…
🐰うんっ、頑張ってお仕事するよっ!
🐰こらーっ!みんなの笑顔のあふれる場所を壊しちゃ駄目でしょっ!ごめんなさいしなきゃ!
…ふぇ、懐かしおもちゃ…?…うち(孤児院)だと皆現役だよ…?よく皆の相手をするし…
さ、さすがに独楽の相手はできなくなっちゃったけどね?(※怪力)
基本的にHMGで"援護射撃"、隙を見つけたら『Black Bind』で、独楽に噛みついてそのままぐるぐる巻きつけて…
独楽の要領で"怪力"任せに"投擲"!これでもそこそこ上手かったんだよっ!
※協力・アドリブ歓迎
●たのしいこままわしのおじかんです
騒動が勃発したとされるエントランスに向かうには、お土産屋さんが立ち並ぶ大きな通りを抜ける必要がある「わくわくキマイラランド」。
飾り立てられたショーウインドウを横目で見ながら、山路・紅葉(白い兎と黒い犬・f14466)は相棒の織子と共に大通りを駆けていく。
「だ、大丈夫だよ!? みんなにもしっかりとお土産買って帰るからっ!」
『……アンタ、一体誰に何の言い訳してるのよ』
織子さんのツッコミが今日も冴え渡る! でもアレですよね、紅葉さんが猟兵のお仕事でいろんな所に行けるから、孤児院の皆さんもいろんなお土産を楽しめて結果オーライなのでは?
『でもその為には……』
「うんっ、頑張ってお仕事するよっ!」
大通りが終わると程なく問題のエントランスにたどり着く。紅葉と織子は、遂に問題の三怪人たちと対面する――!
「こらーっ! みんなの笑顔のあふれる場所を壊しちゃ駄目でしょっ!」
手酷く破壊された入園ゲートを見るや、紅葉が怪人たちを一喝する。
「こういう時はごめんなさいしなきゃ! でしょ!?」
『い、いや……そうは言うがな、我々も仕事で……』
『俺達『懐かしおもちゃ三人衆』は、それぞれのおもちゃの楽しみをだな……』
ド直球の正論の前に危うく頭を下げそうになる怪人たちだったが、ギリギリ踏みとどまって自分たちの立場を説明する。中々に律儀である。
そんな怪人たちの、特にコマ回し怪人が手にしたコマを見て、紅葉が反応した。
「……ふぇ、懐かしおもちゃ……?」
コマ回し怪人からトランプ怪人へ、そして最後にけん玉怪人へと順繰りに視線を向けた後、紅葉は不思議そうに言った。
「……うちだと皆現役だよ……? よく皆の相手をするし……」
『何だと!?』
『現役!?』
『ど、どこの世界線だ
……!?』
めっちゃ食いつかれた。ちなみに紅葉が言う「うち」とは生活の拠点としている孤児院のことだ。UDCアースっていう別の世界のお話なんですがね……!
「さ、さすがにコマの相手はできなくなっちゃったけどね?」
『そうか……』
紅葉の言にコマ回し怪人がちょっとしゅんとしたように見えた。ああ、成長するにつれて腕が落ちてしまったという話なのだろう。勝手にそう思い込んで。
『……紅葉、あのコマ回し怪人を相手にするってことでいいわね?』
「えっ!? あっ、うん! 行こう、織子ちゃん!」
そろそろいいかしら、という感じで織子が尋ねると、紅葉はあわてて愛用のHMG「フローズヴィトニル」を構えて臨戦態勢に入る。
『いいだろう猟兵よ、俺のコマ回しで葬ってくれる!』
コマ回し怪人が器用にコマに紐を巻き付け、遂に戦いが始まった。
『喰らえっ!!』
無数のコマが地を這いながら、または空を切って紅葉と織子に襲いかかる。
それを重機関銃で次々と撃ち落としていく紅葉。今更だが、凄まじい膂力である。
(「織子ちゃん、コマの攻撃が一瞬でも途切れたら……」)
(『分かってる、準備は出来てるわ』)
肩口から覗く織子との意思の疎通は完璧にして、紅葉が撃ち砕いたコマの破片がコマ回し怪人の方へと飛んでいき、攻撃の手が緩んだその隙を逃すことはなく。
「逃がさないっ! 行くよ織子ちゃん!」
『いつでもいいわよ!』
――発動したのは【Black Bind(ブラックバインド)】。黒犬の形をしたオーラが勢い良くコマ回し怪人目がけて伸びていき、その顎が大きく開かれ怪人の肩口に喰らいつく!
『……ほら、捕まえたッ!』
『ぐわあぁっ!!』
噛みつかれた痛みだけではない、身体が内側から――文字通り爆破されたコマ回し怪人は、思わず叫び声を上げてしまう。
だが、それだけでは終わらなかった。
『何だこれは……何がつながっている
……!?』
紅葉とコマ回し怪人との間に、黒いオーラが見える。それを一本の紐に見立てて、紅葉はおもむろに怪人の身体にぐるぐると巻き付け始めたではないか。
『ま、まさか、これは』
「ふふっ、これでもそこそこ上手かったんだよっ!」
そうして黒いオーラにぐるぐる巻きにされたコマ回し怪人が何かを察する。オーラをギュッと握った紅葉は――コマ回しの要領で、それはもうものすごい力でもって、巻いた怪人をぶん投げた!
『あああああああああああ
!!!??』
コマ回し怪人は、てっきり紅葉がもうコマを回せない身なのだと思いこんでいた。しかし実際は全然異なり、むしろ怪力が過ぎてコマを回すと大変なことになってしまうから回さないというのが正しかったのだ。
そんな紅葉が、ユーベルコードの力でもって全力でコマ回しをしたらどうなるか。
結果は、大体皆様のお察しの通りでございました。
成功
🔵🔵🔴
真守・有栖
遊狼たる私に勝負を挑む、と?
いい度胸ね。気に入ったわ!
びしっ!と独楽の怪人を指差して、正々狼々と受けて立つわ
飛び込み歓迎のすてーじがあったわね?場所を変えるわ、ついてらっしゃい!
さぁさ、お立ち会い!
これからとっっっておきの大狼芸を魅せてあげるわっ
飛んでくる独楽に月喰を抜き――
……よっと!
独楽の刃渡り
切っ先で受け、わふんと得意気に刃の上で廻してみせるわ
芸狼ですもの!この程度はお手の物よ
貴方も中々の廻しっぷりね!褒めてあげるわっ
さ、どんどん来なさいな!
そして、演狼ですもの
不利で無茶こそ狼魂が滾るというもの!
次々と襲来する独楽を延びた光刃で受けて、廻して、捌いて魅せて――此にて終いと光閃。成敗よっ!
●こままわしかいじんさんがにんきありますね
『まだまだいるのだろう、猟兵ども! さあ、次は誰だ!?』
そんな調子でさっきから勝負を挑んではこてんぱんにのされてるのは誰ですかね……? いくら謎の仕組みで何度倒されても復活するとはいえ、多分限度ってものがありますよ……?
切り替えが早いのか何なのか、次の勝負を求める声に、応える声がひとつ。
「――遊狼たる私に勝負を挑む、と?」
こ、これは。この言い回しは……! 間違いない、真守・有栖(月喰の巫女・f15177)だ!
「いい度胸ね。気に入ったわ!」
びしっ! とコマ回し怪人を指差して、有栖は正々狼々と――アッ遂に四字熟語の概念さえ変えちゃった! とにかく受けて立ちますって!
『ほう、大した自信だな! 面白い、お手並み拝見と行こうじゃないか』
指名されたコマ回し怪人は一歩前に出ると、早速手にしたコマに紐を巻こうとして、しかし有栖にそれを制された。
「……飛び込み歓迎のすてーじがあったわね? 場所を変えるわ、ついてらっしゃい!」
『えっ』
答えは聞いてない。そんな感じでコマ回し怪人の腕をがっしと掴むと、ズンズン園内の奥へと突き進んでいく有栖。
『ちょっ、待て、ステージだと!? 観客がいるのか!?』
「あったりまえでしょ! いいものを魅せてあげるってきっちり約束してきたわっ」
『マジか……』
困惑、のちじんわりとした興奮。コマ回し怪人が、待ち受ける晴れ舞台に図らずも胸を躍らせる。後をついてくるけん玉怪人とトランプ怪人、羨望の眼差しを向けちゃう。
そうしてたどり着いたちょっとしたショーが催せる野外簡易ステージには、有栖が言った通り大勢の来園客が集まっていた。
元々は怪人たちの襲撃でほとんどのアトラクションが一時運休となってしまい、かといって帰ろうにも入口には怪人が居座っていて、事実上足止めを食ってしまっていた者がほとんどなのだが、そこでショーが始まるというのならば見ない手はないというもの。
そこへいよいよ有栖とコマ回し怪人とがステージに上がると、わっと歓声と拍手が上がる。
「さぁさ、お立ち会い! これからとっっっておきの大狼芸を魅せてあげるわっ」
わあーーーーーーーーっ!!
まさかの大歓迎モードに圧倒されるコマ回し怪人に向けて、有栖はクイクイっと指先を曲げて何かを促すと、佩いていた光刃「月喰」に手をかける。
(『この狼娘、まさか
……!?』)
真意を確かめるべく、有栖目がけて自慢のコマをひと投げする。すると有栖は――。
「……よっと!」
すらっと抜刀し、絶妙なタイミングでコマを刀身に乗せたではないか!
『コマの……刃渡り!?』
切っ先で受け、一度刀身の半ばまで運ぶと、有栖はコマが回っているのが観客にも良くわかるようにとコマの軸にそっと飾りのようなものを乗せる。沸き起こる歓声。
「わふん、目指すは剣先よ……!」
じわじわと刀を傾けつつ、乗ったコマを徐々に刀の先へと移動させていく有栖を、いつの間にかコマ回し怪人は手に汗握りつつ見守ってしまっていた。
「……はいっ!」
コマが切っ先に到達する。しかもそれだけには留まらず、横に寝せていた刀を高々と――コマを頂点に乗せたまま、地面に垂直になるよう構えてみせたのだ。
すごーい!
いいぞー!
「芸狼ですもの! この程度はお手の物よ」
自信たっぷりに豊満なお胸を張る有栖は、刀に乗せていたコマをひょいっと下ろして手に取ると、コマ回し怪人に向けて声をかける。
「貴方も中々の廻しっぷりね! 褒めてあげるわっ」
『お……おう』
「さ、どんどん来なさいな!」
有栖に促されるまま、コマ回し怪人はこれならどうだと今度は二個同時にコマを投擲する。それを巧みに刀身に乗せ、またしても喝采を浴びる有栖。
そんな様子を見ながら、コマ回し怪人はふと思う。
(「この狼娘……何故、敵である俺を立てるような行為を
……?」)
悪くない、悪くないはずなのだが、疑問は拭えず。
怪人の胸中を知ってか知らずか、有栖はステージ上のコマ回し怪人にのみ聞こえる声で囁いた。
「――そして、演狼ですもの。不利で無茶こそ狼魂が滾るというもの!」
有栖の所持するユーベルコードに【我狼】なるものがある。自身の本能のためにあえて不利な行動をすると、身体能力が増大するという――。
次々と飛来するコマは、相手のそのつもりがなくとも、ユーベルコードによる攻撃とみなされる。それを敢えて受けて、廻して、捌いて魅せるその様は、間違いなく有栖の力を高めていく。
極限まで、力がみなぎるのを感じる。最後のコマを刀の切っ先に乗せて拍手喝采を受けると、構えた光刃をそのままコマ回し怪人に向ける。
怪人はと言えば、こうなることは分かっていたという体で、静かにその時を待っていた。
「――此にて終い、成敗よっ!!」
刃が閃き、コマ回し怪人の身体を袈裟斬りにしていく。
ステージに倒れ込んだ怪人は、どこか満足気に見えたという――。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
【狼犬豚兎】
トランプは、知ってるし…皆でやった事もあるけど…
じぃっと怪人達を見つめ夏輝君に
ねーねー、トランプ以外なんていうオモチャ?
もし怪人達が普及用持ってるなら少し遊ぶ
ただしけん玉振り上げた瞬間にうっかり怪人に直撃させたり
コマ回そうとして明後日の方向に飛ばした結果怪人に以下略
わー、ごめんなさいぃ!
これはこれで楽しいけど
色んな遊び方があってもいいじゃない
トランプは雨で外出れない時に皆でよくやるけど
屋外ではやらないしね
運動の機会は大事だよ
他3人の後ろで空中飛行
【高速詠唱】で氷の【属性攻撃、全力魔法】
敵の足場を凍らせ動きを封じ
【指定UCの範囲攻撃】で斬撃攻撃+視界潰し
他の3人の為の隙作り
紫崎・宗田
【狼犬豚兎】
またしょうもねぇ敵が出て来たな…
澪の興味が向いている事に気付き
いつでも動けるよう代わりに警戒
声掛け以降は意図的に武器に炎を宿しておき
チビに手出したら容赦しねぇからなオーラを出して
澪が怪人の側に居る限り威圧しておく
(見た目完全にヤンキー)
まぁ遊ぶのは無理ですぐ戦闘入りそうなら
その時点で俺らの背後に【かばう】がな
戦闘時は澪、夏輝、諒太の順に連携を繋いでる間に【指定UC】を発動
一定武器を振り回した後タイミングを見て急接近
【鎧すら砕く程の怪力+炎の属性攻撃】を宿した武器で
片足を軸に振り回すよう【薙ぎ払い+範囲攻撃】でトドメ
チビには後で買ってやるよ
怪人じゃなく…本物のオモチャをな
小林・夏輝
【狼犬豚兎】
ん?あぁ、まぁ昔流行った遊びかな
コマ回しは正月に対戦したりとか
けん玉は単純に見えて結構技があったり…
澪きゅん興味ある?
んじゃ聞いてみっか
すんませーん
あんたら普及に来たんなら玩具持ってんの?
この子が遊びたいんだって
俺は片手でバットを担ぎ警戒してますアピール
断っても澪に手出してもアウトだかんな
そんな遊びばっかじゃコイツが太ってしょうがねぇよ(諒太をチラ見)
いつでも【庇える】よう澪の側に控え
戦闘時は一度離れさせる
★バット+R-Lでロケットランチャーに変形
【クイックドロウ+援護射撃】
攻撃+爆煙で視界を奪いつつ
万一避けられた時のために【指定UC】で怪人の居場所を把握
諒太!そっから15度右!
金子・諒太
【狼犬豚兎】
コマ回しも、けん玉も、やった事あるけど
あれ楽しいよなー
動かなくていいし、楽だし
遊園地内を澪について歩き回るだけで
1人だけ汗びっしょりな僕は
少し離れた所で【大食い】
食べ歩き用の色々を凄い勢いでモリモリ食べる
皆、あれだけ動いた後で、よく元気に動けるよなー
まぁ澪が興味持った以上
守ってやるのは、僕らの役目だけどー
なんか、もぐもぐ、護衛っていうより、どっちも不良みたい
もぐもぐもぐもぐ…
戦いになったら
へ、もうはははうのふぁ?(え、もう戦うのか?)
んぐ、ごくん
なら、いくかー
爆煙を合図に【指定UC】発動
大玉のような体型に肥大化後助走付きで転がり
夏輝の指示で方向転換しながら怪人達を【踏み付け】
●おもちゃのおなまえいえるかな
話の流れでエントランスから園内のショーステージへと戦いの舞台が移動した所へ、ちょうど近くのレストランから怪人出現の報せを聞いて外へと出てきた四人の猟兵が偶然現場を通りかかった。
ちょっとした人だかりができており、話を聞けば猟兵と怪人とがしばし芸を見せた後に怪人が一人退治されて終わったという。
「……に、しちゃあ、きっちり三人組が揃ってんじゃねぇか……」
そう苦々しく、ステージ上に並び立つ怪人たちを見て紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は言った。またしょうもねぇ敵が出てきたな、という気分である。
先程ばっさり斬られたはずのコマ回し怪人も、バッチリ復活を遂げている。三体揃って、ここぞとばかりに集まった来園客へと自分たちのアピールを忘れない。
そんな様子を見ていた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が、宗田の隣でふと呟く。
「トランプは、知ってるし……皆でやった事もあるけど……」
じぃっと怪人たちを見つめながら、近くにいた小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)に向けてこう問うた。
「ねーねー、トランプ以外なんていうオモチャなの?」
『聞こえたぞ、そこの女子! さては我々を知らない現代っ子だな!?』
「きゃっ、びっくりしたぁ!? でも誰が女子だ誰がっ!!」
「……澪きゅんはね、しょうがないね……」
どこからどう見ても女子だものね、という諦観に満ちた顔で夏輝が苦笑いしつつ言い、しかし澪からの肝心の問いに答えるのも忘れない。
「ん、まぁ、昔流行った遊びかな。コマ回しは正月に対戦したりとか、けん玉は単純に見えて結構技があったり……」
澪きゅん興味ある? と顔をうかがえばキラキラした瞳でうんうん頷く澪がそこにいた。ならばと夏輝は観客をかき分けてステージへと近づき、怪人たちへ声をかけた。
「すんませーん、あんたら普及に来たんなら玩具持ってんの? この子が遊びたいんだって」
『おお、もちろん用意してあるぞ! ささ、ステージへ来ると良い。我々プロ中のプロが直々に教えてやろう』
けん玉怪人が嬉々として猟兵たちをステージへと招く。やったーと無邪気にステージへと上がる澪に、一緒にステージへと上がりながら自身はバットを担いで警戒の姿勢を見せる夏輝と、ステージには上がらず、しかしいつでも駆けつけられる間合いで巨大な斧に炎を宿してあからさまに威圧する宗田の姿が。
(「いいか、チビに手ェ出したら容赦しいねぇからな」)
そこんとこヨロシクといった所である。完全にヤンキーのそれである。
――ところで、ご一行様の中に金子・諒太(戦える肉団子・f12789)さんがいませんでしたか? ちょっと姿が見当たりませんが……。
「……もぐ、コマ回しも、けん玉も、やった事あるけど、あれ楽しいよなー」
動かなくていいし、楽だし。ああ、そういう理由……って諒太さん何やってんすか! グルメワゴンを片っ端から回ってはパクパクモグモグしている場合ですか!
「皆、あれだけ動いた後で、よく元気に動けるよなー……まぁ、澪が興味持った以上、守ってやるのは、僕らの役目だけどー」
そのために、今自分ができること。それが諒太にとってはこの「大食い」なのだが、それは追々明かされることとなる。
ふと視線を賑やかなステージへと向けると、澪を守るべく油断なく布陣した宗田と夏輝の姿が。
「……なんか(もぐもぐ)護衛っていうより、どっちも不良みたい」
率直な感想ありがとうございます! まだもぐもぐしてて大丈夫ですよ!
「いいか、断っても澪に手出してもアウトだかんな」
『断りもしなければ手出しもせんわ! 物騒なヤツだな!』
夏輝の釘刺しに、けん玉怪人が言い返す。その隣では、澪が嬉しそうにコマ回し怪人から回し方のレクチャーを受けていた。
コマ回し怪人が主に愛用するのは、コマの胴体に紐を巻き付けて投げる「投げゴマ」という種類のものである。
まずこの紐を上手いこと巻くのが難しいのだよなと思いながら、せっせと不器用ながらに紐を巻き付けていく澪を見守る。
「……で、できた!」
『よし、では投げてみよう。思いっきりだぞ』
「うんっ!」
澪は、言われた通りにしただけだった。思いっきり、コマを回そうとしただけだった。
しかし――コマは澪の手を離れた瞬間あさっての方向へと飛んでいき、コマ回し怪人の顔面のコマにすごい音を立てて激突してしまった。
「あっ……ごめんなさい……」
バターンと卒倒するコマ回し怪人に声をかける澪に、仕方がないなという風に近づくのはけん玉怪人だった。
『……君にはまだ、コマ回しは早かっただろうか。けん玉ならどうだ?』
そう言って、澪にけん玉を差し出す怪人。パアァと顔を輝かせてそれを手に取る澪。
『基本は、玉をけんに刺したり皿に乗せたりすることだ。まずは、左右の大きな皿のうちどちらかに乗せる所から始めてみよう』
即席けん玉教室が始まり、観客たちも遊んでみたいという気持ちでいっぱいになる。これは――怪人たちの思う壺なのでは!?
「えっと、この玉を……勢いをつけて、お皿に乗せる……えいっ」
澪は、言われた通りにしただけだった。ただ、ちょっと力をこめすぎちゃっただけだった。
「あっ」
『がっ』
澪の手からすっぽ抜けたけん玉が、けん玉怪人の顔面にクリーンヒットした。倒れ込みこそしなかったものの、頭部のけん玉を両手でおさえてうずくまってしまう怪人。
「わー、ごめんなさいぃ!」
「いいぞ澪きゅん、放っとけ放っとけ」
思わず駆け寄りそうになる澪を、しかし夏輝がすかさず制止する。夏輝の目には巧妙な策と思われたのだが、澪の側からすれば本当にわざとではなかったので、申し訳なさばかりが募ってしまう。
「……これはこれで楽しいけど、色んな遊び方があってもいいじゃない」
『何……?』
痛みをこらえ、ようやく立ち上がった二体の怪人に向けて、澪がいよいよ本題に入る。
「トランプは雨で外出れない時に皆でよくやるけど、屋外ではやらないしね。運動の機会は大事だよ」
「……そうだな、そんな遊びばっかじゃアイツが太ってしょうがねぇよ」
澪の言葉に同意しつつ、夏輝がチラと視線を向けたのはフードワゴンで大食いチャレンジ中の諒太の姿。
まあ、けん玉もガチになってくると室内では色々と危ないので、芝生のある広い公園で練習しましょうとかいう話になってくるそうなんですが。
『そうか、そろそろ頃合いか……良かろう、勝負だ猟兵よ!』
事態を静観していたトランプ怪人が、カードを構えて宣戦布告する。
その声を聞いた諒太は慌てて手にしていたピタサンドの残りを口に押し込む。
「へ、もうはははうのふぁ? (訳:え、もう戦うのか?)」
んぐ、ごっくんと咀嚼し終えると、ステージに向かってたゆんたゆんのお腹を揺らしながら走り出す。
「なら、いくかー」
ヤンキースタイルのまま威圧感たっぷりにステージに上った宗田とバットを構えた夏輝、そしてそれに合流した諒太の背後で、澪が翼を広げて宙を舞う。
「行くよっ……!」
澪が念じると同時、怪人たちの足元が突如凍り出す。ステージに固定される形となり身動きが取れなくなった三体に、澪が顕現させた【Orage de fleurs(オラージュ・ドゥ・フレア)】の花の嵐が襲いかかる!
『くっ……花弁の数が多い……!』
『視野が遮られる……アッ痛い痛い!』
何とか各自の武器でもあるおもちゃで足元の氷を砕き束縛から逃れた三体を、次に襲ったのは突如飛来したロケットランチャーの弾だった。
『ええええええ!!?』
一体誰がと辺りを見渡したけん玉怪人が、先程まで何の変哲もない金属バットだと思っていた夏輝の「カラクリバット」が「R-L」なる追加パーツと合体し、ロケットランチャーと化したのを見て変な声を上げた。
夏輝が不敵に笑うのと同時に着弾、吹っ飛ぶ怪人たち。そして、もうもうと立ち上る爆煙。
それが、合図だった。動けるデブこと諒太の身体が、細胞の活性化による超肥大化を起こし、ほぼ球体に近いレベルに達する。
その状態で助走をつけて転がっていくが、果たしてこの爆煙に包まれた状況で敵を捉えることはできるのか!?
「――諒太! そっから15度右!」
「よぉし、デブだからってなめると痛いぞ!」
『ギャアアアアアア
!!!??』
寸分の狂いなく、転がる諒太はすかさず方向転換して見事立ちこめる煙の中から怪人たちを見つけ出し、その巨体でひき潰していった。
『な……何故、この煙の中で、俺達の正確な位置を
……!?』
「【影の追跡者の召喚】さ、俺達からは逃げられねぇよ」
夏輝がニヤリと不敵に笑う。いつの間に……! という体で悔しがる怪人たち。
「……おい、そろそろいいか」
炎を宿した斧を頭上で充分なまでに振り回していた宗田が、誰の答えも聞かぬ間にステージを蹴って怪人たちに急接近する。
ザ、と急ブレーキをかけるように力を込めて突き出した足を軸にして、どんな強固な守りも打ち砕かんとする意思を込めた炎の斧を――全力で横薙ぎに振り回した!
『『『ぐわあああああ
!!!!!』』』
宗田のひと薙ぎのもとに、盛大にふっ飛ばされていく三怪人。
それを見送ることもなく、宗田は澪に向き直るとおもむろに頭をわしゃりと撫でてやる。
「チビには後で買ってやるよ。怪人じゃなく……本物のオモチャをな」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と
…とんだすちゃらか集団だな
あの丸い玉のやつがけん玉
くるくるしてんのが独楽な
エンパイアの子供たちは良く遊んでるぞ
俺も結構得意
けん玉と独楽、タノシソーダナーと怪人をちらちら
大皿小皿、けん先へと玉を移動させお手本
こうやって身体使ってやんの
だいじょぶ、ヴァーリャちゃんなら出来るよ
みてたみてた、ふふ
すぐ出来るようになるなんてすげーじゃん
貸してみと糸を巻いてから手渡す
自分も独楽回しは好きだが
どう説明しようかと少し悩み…
なあ、お前ちょっとコツ教えてよと敵に尋ね
嗚呼、成程。もっかいやってみよ
さて、お前らの遊びも楽しくて好きだが
でも遊園地も楽しかったんだわ
悪いなと鬼火で燃す
ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と
あー楽しかった!
綾華、もっと乗り物乗らな…
わあっ!なんだ!?
トランプはわかるけど、他はなんだろう?
綾華、知ってるか?
…ケンダマとコマ?綾華の世界でも有名なんだな!
気になるし、ケンダマとコマでちょっと遊んでみてもいいか?
ケンダマのコツを教えてもらい、まずは大皿から
むむ、中々難しい…
身体の重心を意識?それは得意だ!
わあっ、できた!
綾華、見たか?俺もできたぞ!
コマは糸を巻く時点で難しい
あ、回った!
でもあまり長く回らずしょぼん
コツを教えられれば
わあ、すごい回る!それにめちゃ速い!
お前すごいな!怪人なのに物知りなのだ
遊び終わって満足した後は
名残惜しいけど、『雪娘の靴』で蹴散らすぞ!
●ほのおとこおりのえがくもの
楽しい時間はあっという間に過ぎるものだが、浮世・綾華(美しき晴天・f01194)と共に遊園地を巡っていたヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)はまだまだ元気いっぱい。
いよいよ日が傾いて茜色の夕日が差す頃合いになっても、まだ回れていないアトラクションが残っているのだから、時間いっぱい楽しまなくては。
「あー楽しかった! 綾華、もっと乗り物乗らな……」
「きゃーっ! 怪人ですって!」
「エントランスの方に出たってよ!?」
「わあっ! なんだ!?」
隣を行く綾華の手を引いて次なるアトラクションへ。そう意気込んだ矢先に、水を差すような怪人登場の一報が飛び込んできて仰天するヴァーリャ。
そういえば、遊園地を満喫していると怪人が現れるとは言われていたような。綾華はやれやれという風にため息ひとつ、ヴァーリャの背をそっとエントランスの方へと押した。
「残念、邪魔が入っちゃったね」
果たして、待ち受ける怪人とは一体何者なのか――?
「……とんだすちゃらか集団だな」
『人を見て開口一番それとかお前も大概だな!?』
でもですよ、どんな凶悪な輩が待ち構えているのかと思って来てみれば頭部がおもちゃの怪人トリオとか、しかも遊園地を襲撃した理由がほとんど八つ当たりだとか、そりゃあ綾華さんだって率直な感想を漏らしますよ。
「……トランプはわかるけど、他はなんだろう? 綾華、知ってるか?」
『ガーン! またトランプだけ知られてる案件!』
トランプ怪人がもはや隠そうともせず一人ガッツポーズを取る横で、膝から崩れ落ちるけん玉怪人とコマ回し怪人。
そんな二体を交互に指差し、問うてきたヴァーリャに説明をしてあげる綾華。
「あの丸い玉のやつがけん玉、くるくるしてんのが独楽な。エンパイアの子供たちは良く遊んでるぞ」
俺も結構得意、と付け加えてチラと怪人たちの方を見やれば、よろよろと立ち上がってくるけん玉怪人とコマ回し怪人の姿が綾華の視界に入る。
「……ケンダマとコマ? 綾華の世界でも有名なんだな!」
キラキラと、ヴァーリャの瞳が好奇心で輝く。
「けん玉と独楽、タノシソーダナー」
チラチラと、思わせぶりな棒読みを交えて綾華が誘えば。
『『……』』
けん玉とコマが、それぞれ無言で二組のおもちゃを手にしているではないか。
トランプはと言えば、余裕の雰囲気で二体の怪人の背を見守っている。
「気になるし、ケンダマとコマでちょっと遊んでみてもいいか?」
『『ウェルカム
!!!』』
すごい勢いで、ヴァーリャと綾華の分のけん玉とコマが差し出された。
『お前は中々の手練れのようだな、早速お手並み拝見と行こうか』
そう声をかけてくるけん玉怪人から、妙な圧を感じるのは気のせいだろうか。
――自分でも実際に遊ぶようになったのは「人の姿を得てから」なのだが、とは言っても詮無きこと。ならばと手渡されたけん玉を、手始めにぶらりと玉を下に垂らしてから。
「……よっ、と」
身体全体、特に膝を使って玉を引き上げまずは小皿に、次いで反対側の大皿に、そして最後はけん先へと、小気味良い音を立てて綾華は巧みに玉を移動させてみせた。
『ほう、日本一周か! 基本は完璧だな』
「へぇ、そういう技名なんだ」
「俺もやってみるのだ! よっ……」
綾華のお手本を見たヴァーリャが、見よう見まねで同じようにまずは小皿へと玉を乗せようとする――が、これがなかなかに難しい。
すると綾華が一度けん先に刺した玉を再び下に垂らすと、もう一度小皿に玉を乗せて見せながら説明する。先ほどより若干動きがオーバーに見えたその理由は。
「こうやって身体使ってやんの、手だけで動くんじゃなくてね。特に膝使って腰落として衝撃を吸収するイメージかな。だいじょぶ、ヴァーリャちゃんなら出来るよ」
「身体の重心を意識? ……それは得意だ!」
具体的なアドバイスと、ヴァーリャ自身の才覚とが合わさって、もう一度挑戦した時には吸い込まれるように玉が小皿の上にピタリと乗った。
カンッ、という音と共に、ヴァーリャが満面の笑みで綾華の方を見る。
「わあっ、できた! 綾華、見たか? 俺もできたぞ!」
「みてたみてた、ふふ」
二人お揃いで小皿に玉を乗せたまま、次は大皿にと先立って綾華が手本を示せば、後を追うヴァーリャも綺麗に一回で決めてみせた。
「すぐ出来るようになるなんてすげーじゃん」
でも、最後はどうだろうか。玉の穴にけん先を狙って刺すのはなかなかに難しい。
――カンッ!
『何と……! 基本技を飛ばして、いきなり日本一周を
……!?』
「もうバッチリだね、ヴァーリャちゃん」
「綾華のおかげだぞ! ありがとうなのだ!」
けん玉怪人もこれには仰天する。ヴァーリャは見事、巧みにけんの位置を調整して玉をけん先に収めることに成功したのだ。木がぶつかり合う音が心地良かった。
「次はコマ回しだ! 怪人からコマとヒモを借りたぞ!」
『お前はなかなか懐かしおもちゃへの適性が高いようだな、期待しているぞ……!』
初めてのけん玉を思い切り楽しむ様子を見ていたコマ回し怪人が、それはもうウキウキした様子でヴァーリャと綾華へと熱い眼差しを向け――ている気がした。
目とかないですからね、表情とは言い難いんですよ、気配で察して下さい!
コマにも様々な種類があるが、コマ回し怪人が扱うのは、コマの胴体に紐を巻き付けコマ本体を放り投げる「投げゴマ」と称されるものだった。
そして、肝心の紐を巻き付けるのが、言うのとやってみるのとでは全然違って難しい……!
「ヴァーリャちゃん、ちょっと貸してみ」
悪戦苦闘するヴァーリャにたまらず綾華が助力する。ヴァーリャのコマの胴体にきつくしっかりと紐を巻いてあげてから、まずはこれでやってみとヴァーリャに返す。
「こ……こうかっ!?」
見よう見まねで紐とコマを構えて地面に放つと、コマは勢い良く回転した!
――が、程なくしてバランスを崩し、ゴロンゴロンと転がり倒れてしまう。
ヴァーリャの跳ねた髪が力なくペタリとなってしまったように見えた。しょんぼりしているのは明白だ。綾華も手元で自分のコマに紐を巻き付けながら思案する。
(「俺も独楽回しは好きだが、どう説明しようか……」)
そしてふと視界にコマ回し怪人の姿は飛び込んでくる。そうだと思いつき、おもむろに声をかけた。
「――なあ、お前ちょっとコツ教えてよ」
『何!? ま、まあいいが!』
唐突に話を振られて一瞬仰天するも、コマ回し怪人はまんざらでもなさげに自身もコマと紐を用意しながら解説を始める。
『紐の巻き付け方はそこの鍵の髪飾りのヤツのやり方でいい、問題は回し方だ。紐の先端は利き手の小指と薬指とで挟め、まあこれは投げた時に紐が一緒にすっ飛んでいかなきゃ何でもいいが』
そう説明を始めながら、コマ回し怪人は息をするようにぐるぐるっと綺麗な巻き目でコマを包むと、紐の先端を挟み込みながらコマ本体を親指と人差し指で握り込む。
『投げる時はサイドスローだ。変に腕を曲げるな、肩から先は一本の棒だと思え。投げるというよりは放るくらいの意識でいい――そうだ、やってみろ』
予想以上に本格的に教えてくれた! ヴァーリャと綾華は、揃ってコマ回し怪人の言葉を意識しながらコマを放る。
「わあ、すごい回る! それにめちゃ速い!!」
「嗚呼、成程。――もっかいやってみよ」
次々とコマを出してくる怪人から二つ目のコマを受け取ると、早速紐を巻き付ける綾華。元々そこそこ上手に回すことはできたのだが、何だか己の技に磨きがかかった気がして。
ヴァーリャのコマは、最初とは見違える程に長く、そして速く回転を続けていた。度胸良く思い切って投げたからか、とても良い感じだ。
「お前すごいな! 怪人なのに物知りなのだ!」
先程までへたってしまっていたヴァーリャの跳ねっ毛はピンと立ち、怪人を褒めるその言葉には嘘偽りもなく、心からの喜びと称賛にあふれていた。
『そ……そりゃ当然だ、俺はコマ回し怪人なんだからな』
他にわからないことはないか? と気を回してくる始末。まったく、調子の良いもので――。
「……さて、お前らの遊びも楽しくて好きだが」
『……そうか』
ひとしきり楽しんだあと、綾華がおもむろに口を開く。もうすぐ日が沈む、楽しいひと時もいつかは終わりを告げる。
「でも、遊園地も楽しかったんだわ」
怪人の目的があくまでも遊園地の否定であるのならば、それを見過ごすわけにはいかない。
綾華の手に握られた黒鍵刀が、淡い光と共に緋色の鬼火へとその姿を変えていく。
そのすぐ傍ではヴァーリャが、優雅な所作でブーツの底にキラキラと氷を集める。
――悪いな。
そう綾華が呟くと同時に、炎が無数の花弁のごとくに怪人たちを押し包む。火の粉のように舞い踊る鬼火の中を、輝く氷の欠片を引いたヴァーリャが駆ける。
怪人たちの抵抗はほぼなく、華麗な氷上の舞を演じきったヴァーリャが振り向くと、そこには綾華の鬼火の残滓だけが静かに散っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
……まだ遊園地で遊び足りないが、猟兵の仕事もしないとな
カガリが怒っている気がする。確かに物を、しかも入園ゲートを壊したとなれば許せないな
一先ずここはトランプで勝負をしようか
内容はババ抜き、カガリの案に乗りつつ、怪人と勝負をやろう
しかしまぁ、私は表情が読まれやすいのだと思う
ババが回ってきたら……顔に出てしまっているかもしれないな
それを取らないでくれよ、そっちのババを取ってくれ!
と願いつつ自分手札を指し出そうか
勝負が決まった瞬間
勝敗にかかわらず【流星剣】を手にすぐに【凍星の剣】で怪人たちを凍りつかせて斬る!
そうだカガリ、ありがとう
なんとなく礼を言わないといけない気がしてな
出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
騒動が起きる事はわかっていたとは言え、せっかく楽しんでいたのになぁ
トランプ怪人と、ババ抜き勝負でもしてみようか
どうせ戦わねばならんのだ
上がった順に戦闘の先攻を取れる、というルールでどうだ
ステラがばばを引いても、すぐにカガリが抜いてやれる位置か、
カガリがばばを止めて置ける位置にいておく
勝負がつき次第、勝敗に関係なくステラに先制攻撃を頼む
約束が違う? 先に入園ゲートを破壊したのはそちらだろう
ものを大事にせんやつは、ものに報復されるのだ
【鉄門扉の盾】を念動力と怪力で怪人に叩き落して一撃を
あれに効きそうな攻撃のUCは持っていないのでな
礼を言われるようなことは、何も(でも嬉しい)
●こうどなじょうほうせん
騒動を聞きつけた出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)とステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)の二人も、エントランスの方へと急いでいた。
(「……まだ遊園地で遊び足りないが、猟兵の仕事もしないとな」)
お土産屋さんが立ち並ぶ大通りを駆け抜けながら、ステラが気を引き締める。その横で、正直な気持ちを言葉にするカガリ。
「騒動が起きる事はわかっていたとは言え、せっかく楽しんでいたのになぁ」
口調は間違いなく「残念だ」という気持ちを示している。しかし、ステラとカガリとの仲にもなれば、それ以上に伝わるものがあった。
(「カガリが……怒っている気がする」)
確かに物を、しかも「入園ゲートを壊した」となれば、それは到底見過ごせる話ではなく。
しかもカガリは、元は城門を守る鉄門扉を本体とするヤドリガミだ。近しいモノとも言える入園ゲートが破壊されたとあっては。
(「許せないな」)
カガリの胸中を察しつつ、同じヤドリガミであるステラもまた思いを同じくするのだった。
『ふ、新たなる猟兵か。歓迎しよう、今ちょうど手が空いているのが私一人でな』
大仰な言動でカガリとステラを出迎えたのは、頭部がトランプになっている怪人だった。
「カガリ達は、怪人は三人組と聞いた。他の二人はどうした?」
『――平たく言えば、復活の最中だ』
「えっ」
ちょっとメタ入った感があるトランプ怪人の回答に、思わず変な声を上げてしまうステラ。
アレですかね、何度も猟兵に倒されて、ペナルティとしてリスポーンに時間がかかっているとかそういう。えっこれそういうゲームじゃない!? ごめーん!!
『という訳なので、私と戦ってもらおう。文字通り刃を交えても良いし、トランプ勝負にも乗ってやるぞ』
何故か余裕綽々なトランプ怪人に対し、一度顔を合わせたカガリとステラは短く頷きあうと、トランプ怪人に向き直る。
「――ならば、ババ抜き勝負でもしてみようか」
『ほう?』
「どうせ戦わねばならんのだ。上がった順に戦闘の先攻を取れる、というルールでどうだ」
カガリが提案したルールを聞いて、トランプ怪人の動きが一瞬止まった気がした。何かあったのか。あったのだ。ババ抜き勝負で、約束を反故にされたことが……!
「どうした、何か問題でもあるのか?」
『……いや、良かろう。その勝負、受けて立とうではないか』
懐からカードを取り出しながら、カガリとステラを見やるトランプ怪人。
誠実そうな騎士と、実直そうな騎士。だまし討ちとは、およそ縁遠そうな存在。
(『ふ、そもそも負けなければ良いだけの話よ! 恐れることなど何もない!』)
そう内心ほくそ笑みながら、しかし決してそれは表情としては出ないのだが。
トランプ怪人とカガリ&ステラの、仁義なきババ抜き勝負がここに幕を開けた。
エントランスのあちこちに設置された丸テーブルを囲み、椅子に腰掛けて二人と一体は手札とにらめっこをする。
果たしてトランプ怪人は気付いていただろうか、着座する時カガリが意図してステラの右隣を選んだことに。
ババ抜きは基本的に時計回りに相手の札を抜いていく。カガリがステラの札を取ることができるこの位置取りには、ある明確な狙いがあった。
『それでは勝負を始めよう! 親は私な!』
「待て、親くらいせめてじゃんけんで決めてはどうだ!?」
『ははは、臆したか猟兵!』
「そういう問題ではないのだが……」
トランプ怪人の突然の横暴に猛然と抗議するステラと、あくまで聞き耳を持たない怪人らしいといえば怪人らしい様子に半ば諦めの色を見せるカガリ。
結局はいはいわかりましたよということで、トランプ怪人からカガリ、カガリからステラ、そしてステラから怪人という順にカードを引くこととなった。
(「しかしまぁ、私は表情が読まれやすいのだと思う」)
そう自己分析をするステラの手元には、ジョーカーは不在。このまま平穏無事に終わってくれれば良いのだが、もし、万が一だ。
(「ババが回ってきたら……顔に出てしまうかもしれないな」)
自分がトランプ怪人の手札から一枚取る番だ。どのカードにジョーカーが潜んでいるかは全くわからない。トランプ怪人の様子を伺おうにも、何せ頭部がトランプだ。まるで胸中を読み取ることが出来ない。
(「ええい……ままよ!」)
思わず目をギュッとつむりながら引いた一枚を、恐る恐る目を開いて確認する。
――確認して、ステラはあからさまにすごい顔をした。
(「あ、これは引いたな、ステラ」)
どんな顔をしてもステラは可愛い。ああいやそうではなく。ステラの窮地を察したカガリは今こそこの位置取りを活かすべきと、自分の手番を待つ。
トランプ怪人がカガリの手札から一枚引き、ペアを作って順調に捨てていくのも構わず、カガリはステラの方に向き直る。
そこには、震える手でズイっと手札を突き出すステラの姿があった。
四枚ある手札のうち、一枚だけがあからさまに飛び出している。
(「他のを取らないでくれよ、そっちのババを取ってくれ! ああいやでもそれではカガリが負けてしまう
……!」)
どうしましょう、ステラさんのお目々がだんだんぐるぐるしてきましたよ!
(「いや、それでいい。後は任せておいで」)
(「――!? カガリ!!」)
大丈夫、とひとつ笑んで。カガリはあからさまに飛び出たカードを迷わず引いた。手元にやってきたジョーカーを、何事もなかったかのように手札に収めるカガリ。
これで、自分が留めておきさえすれば、ステラは無事に上がることができる。後は、どうやって手札のジョーカーをトランプ怪人に押し付けるかだ。
(「相手は手練れ、そう易々とババを引いてくれるとは思えない」)
いざとなれば。そう、二人の間で話はついていた。だが今はまだその時ではない。
場が進むに連れて順調に減っていく三人の手札。いかなる引きの強さだろうか、遂にトランプ怪人の手札があと一枚というところまで来てしまった。
『さすがは私、遊戯の王者! さあ、頂くぞ!』
「くっ……」
カガリが一番引かれたくなかった札が、どんな巡り合わせかトランプ怪人の元へと渡っていく。パサリと場に捨てられるペア。トランプ怪人の手元は――空っぽだった。
『ははは、上がりだ、一抜けだ! それでは私の方から攻撃を――』
「させるか! 【凍星の剣(イテボシノツルギ
)】!!」
『ギャアアアアアアア
!!!??』
椅子を跳ね飛ばし高らかに勝利を宣言したトランプ怪人に、同じくおもむろに席を立ったステラがテーブルを踏み越えて、自身の本体でもある「流星剣」でユーベルコードを発動させた!
――勝負がつき次第、勝敗に関係なくステラが先制攻撃を行う。
これが、カガリとステラとの間であらかじめ取り決められていたことだった。
隕鉄石から生まれた剣は、凍てつく冷気を放ちバキバキとトランプ怪人を凍らせていく。
トランプ怪人は必死に声を上げる。
『や……約束が違うぞ、卑怯者どもめ!!』
「約束? 勝手に親を決めておいて?」
『ぐっ……』
淡々と言い返すカガリに、思わず言葉を詰まらせるトランプ怪人。そこへ、更なる言葉が投げかけられた。
「それに、先に入園ゲートを破壊したのはそちらだろう。ものを大事にせんやつは、ものに報復されるのだ」
やっぱりカガリさん、入園ゲートの件でお怒りでした! これもうごめんなさいしても許されないやつですね!
『……はっ、それは
……!?』
トランプ怪人が、ふと己を覆った影に気付き頭上を見上げると――そこには、カガリの身の丈ほどもある、大きな大きな「鉄門扉の盾」が、いかなることか浮いていた。
「――喰らえ」
驚異的な念動力でもって宙に縫い留められていた鉄門扉の盾が、真下のトランプ怪人目がけて勢い良く落とされる。
――ズシイイィィィィ……ン!!!
ステラの氷に足元を固められ、逃げることもかなわなかったトランプ怪人を、まさに鉄拳――ならぬ鉄門扉制裁で成敗したカガリ。
よし、と一息つくカガリに、ステラが駆け寄ると、ペコリとひとつ頭を下げた。
「カガリ、ありがとう」
「……礼を言われるようなことは、何も」
「……いや、なんとなく、礼を言わないといけない気がしてな」
トランプ勝負の時の気遣いか、それとも、あるいは別の――。
何もしていないと言いつつも、カガリの表情は明らかに嬉しそうで。
そんなカガリの姿を、改めて愛おしく思うステラがそこにいた。
『あの……この門、早くどけてもらえませんか……ね……』
お前まだ生きとったんか! 今ちょっといいシーンだから黙ってて!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
五百雀・斗真
◎
えっと、何だか楽しそうな姿のオブリビオンが出てきたね
…だけどいくら気に食わないからってゲートを壊して息巻くのは感心しないな
ご退場願わないと
あ…うさ耳が壊れたら大変だから外して大田さんに持ってもらおう
戦いが終わったらぬいぐるみもいっぱいもふっていいからね
よし、準備ができた
まずはトランプのオブリビオンを指名して神経衰弱で勝負を挑んでみよう
負けたら勝者のUCか攻撃を受けて退場という事で
異存がなければ正座して早速ゲームを始めよう
ちゃんとカードをめくった位置を覚えて…っと
うーん、まだ開いてないカードは勘で開けていくしかないから
運が悪いと負けちゃいそうだね…
でも自分から仕掛けた勝負だし最後まで頑張ろう
●しんけいすいじゃくといおじゃくってひびきがにてますね
うさ耳カチューシャを装着したまま慌てて事件が起きたとされるエントランスに駆けつけた五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は、そこで待ち受けていた怪人たちの姿を見て、率直な感想を述べた。
「えっと、何だか楽しそうな姿のオブリビオンが出てきたね」
『おっ? 俺達と遊ぶか? おっ?』
自分たちを「楽しそう」と評してくれる相手にはとことん好意的なのだろうか、怪人たちがウキウキで斗真を出迎える。
「……だけど、いくら気に食わないからって、ゲートを壊して息巻くのは感心しないな」
『うっ……』
『やはりオブリビオンと猟兵、戦うしかないのか……』
けん玉怪人とコマ回し怪人とが次々と臨戦態勢に入る中、トランプ怪人だけが不気味にカードを念入りにシャッフルしていた。
「ご退場願わないと……あ、うさ耳が壊れたら大変だから……」
よいしょ、とうさ耳カチューシャを一旦外すと、薄墨色の触手――その名もUDC「大田さん」を身体の外に一部出して持っていてもらうことにした。
「戦いが終わったら、ぬいぐるみもいっぱいもふっていいからね」
斗真のその言葉に、大田さんがとても嬉しそうにくねくねと動いた、気がした。大田さん……ぬいぐるみが……好きだったんです……!?
「よし、準備ができた」
そう言って斗真が対峙したのは、先程から不気味な余裕を見せていたトランプ怪人だった。まるで自分が指名されることを予知していたかのようだ。
バララララ、とトランプを巧みにシャッフルしながら、怪人は声を発する。
『こちらも、いつでも良いぞ。何で勝負する?』
「……じゃあ、神経衰弱で勝負をしよう」
ぴたり。
トランプ怪人がカードをシャッフルする手を止めた。その様子を見て、あれ僕なにかまずいこと言っちゃったかなと不安になる斗真。
『……実に良い! 二人でババ抜きというのも少しなあと思っていた所だ、神経衰弱か、わかった! では早速始めようではないか!』
「い、いいんだ……」
心配して損したなあ、などと思いながら、上機嫌の怪人に向けて斗真はひとつ提案をする。
「えっと、せっかくの勝負だから。負けたら勝った方のユーベルコードか攻撃を受けて退場するという事で……」
どうかな? と言いながら斗真はトランプ怪人の頭部を覗き込む。
『ははは、構わんよ!』
――快諾された。妙に話がすんなりと行き過ぎている気もするが、そういうことならと斗真もトランプ怪人がカードを場に並べるのを手伝うのだった。
今更説明するまでもないかも知れないが、神経衰弱とはトランプゲームの一種で、1組52枚のカードをよく混ぜた上で全部伏せた状態にして場に広げ、じゃんけんで負けた方から先に2枚ずつめくる。同じ数字を引き当てればそれを手に入れられ、違う数字であれば元に戻して次の人へ。
それを繰り返し、最終的に手にしたカードが多い方が勝者となる。運ももちろんだが、記憶力も同じくらいにカギとなるゲームだ。
じゃーんけーん、ぽん!
『私の負けか……では、先攻だな』
ん、んん? 今回のトランプ怪人さんはやたらとルール通りに動くぞ? ババ抜きで勝手に親になって痛い目を見たのに懲りたのかな?
だが、事情はどうあれ斗真にとっては好都合。先に相手がノーヒント状態から場の状況を見せてくれるのだから。
一巡目、先攻のトランプ怪人がめくったのは、ハートの5とクラブの8だった。ハズレである。
(「ちゃんとカードをめくった位置を覚えて……っと」)
後攻の斗真がめくったのは、スペードの4とダイヤの9。それをしっかり覚えて、そっと場に伏せる。
二巡目、トランプ怪人。ダイヤの3とハートの……4!
(「来た……! さっき僕はあそこでスペードの4を引いたから……」)
顔があれば苦々しい表情でもしたのだろうか、トランプ怪人が渋々カードを元に戻すや、斗真は真っ先に記憶に留めていたスペードの4と、今しがた怪人が引いたハートの4を合わせて見事最初のペアを手に入れる。
『ふむ、中々に運が良いようだな』
「うーん、まだ開いてないカードは勘で開けていくしかないから……その運が悪いと負けちゃいそうだね……」
怪人の言葉は、果たして集中している斗真の耳に届いているのか。一応会話は成立しているが、斗真の視線はカードに釘付けである。
(「自分から仕掛けた勝負だし、最後まで頑張ろう」)
――約一時間後。
『……これは、私の負けだな』
「つ、疲れた……! って、僕の勝ちでいいの?」
『互いの取った枚数が明らかに違うからな、さすがの私も認めざるを得ない』
極度の集中状態からようやく解き放たれた斗真は、思わずあおむけにひっくり返ってしまう。
自分が何枚取ったかさえも把握していないのは、それだけカードの柄を覚えることだけに意識を集めていたということだろう。
「はっ、寝てる場合じゃなかった。約束だから、ご退場願っていいかな?」
『ははは――どこからでもかかってくるがいい!』
トランプ怪人のこの余裕は、自身のユーベルコードの能力にあった。トランプを投げつけてしまえば、どんなユーベルコードも相殺できるのだ。
(『ご退場願う、だと? やれるものならやってみるが良い!』)
さあ来い、と手を広げるトランプ怪人の指先には、しかし油断なく挟まれたトランプのカードが。
「……悪く、思わないでね……!」
斗真が構えた「かりそめスプレー」から、ピンク色の塗料が盛大に放たれる。ユーベルコード【グラフィティスプラッシュ】だ!
迫りくる塗料の波めがけて、トランプ怪人がすかさずカードを投げつける。が――。
『おぼぼぼぼぼ
!!!??』
ピンク色の塗料にまみれてトランプの柄もなにもあったものではない状態と化すトランプ怪人。おかしい、何が起きたのか? 自分のユーベルコードは、確かに発動したはずなのに……!
「もしかして、僕のユーベルコードを相殺して勝負を無かったことにしようとした?」
『……はい』
「駄目だよ、約束したんだから。それで、ちゃんと勝負をした結果なんだから」
『……はい』
ド直球の正論で、論破されてしまった。
トランプ怪人さん、ご退場です――!!
成功
🔵🔵🔴
狭筵・桜人
おやおやぁ?食後の運動に丁度良さそうなオモチャが並んでますねえ。
どーれーにーしようかなー。コマ回しで遊びまーす。
私は現代っ子なので遊び方教えてくださいね!
フンフンなるほど?
ヒモをぐるぐる巻きにしてー……と素直に従うフリをして
身体っぽいところを全力で縛り上げてみたり。
こっちじゃない?
で、ヒモ引っ張って投げるんですか?
と思いきり回転させてる隙に『名もなき異形』を呼び出して叩き潰します。
UDCは先日拾ってきたモノリスです。
つまりでかめのコンクリブロックをこう上からドスンと、ね?
回転数(攻撃回数)を大事にします。コマなので。
やぁ楽しいですねえ、コマ回し。
次はどんな遊び方をしましょうか。ンッフフフフ。
●げんだいっこがでたぞ! にげて!
「おやおやぁ? 食後の運動に丁度良さそうなオモチャが並んでますねえ」
『ヒェッ……』
あれ? おかしいですね、明らかに興味を向けてもらっているのに、何故か怪人たちがみんなしておびえた声を上げちゃってますよ?
怪人たちが恐る恐る振り返った先には――ニコニコと微笑みながら仁王立ちする狭筵・桜人(不実の標・f15055)の姿があった。
何ていうかね、こうね、圧がすごいの。笑ってるのが逆に怖いっていうか、そういうのあるじゃないですか。それです。
怪人たちもね……そういうの、本能で分かっちゃうのかも知れませんね……。
「どーれーにーしーよーう、か、な!」
『ヒイィ!?』
「という訳で、今日はコマ回しで遊びまーす」
怪人たちを順繰りに指差していき、本当に適当なところで指を止めた先にはコマ回し怪人がいた。オイオイオイ、死ぬわアイツ。
『あ、あ、ああ……』
返事なのか恐怖にあえぐ声なのかの判別がつかないが、桜人にとっては些事である。
「私は現代っ子なので、遊び方教えてくださいね!」
にっこり。
ああ、その笑顔が怖ろしい――!
『こ、コマの胴体に……紐を、ゆるまないようにしっかりと巻き付けて……』
「フンフン、なるほど?」
ヒモをぐるぐる巻きにするんですね? と問い返す桜人に。
『ま、間違っては……いないんだが……』
おかしい。自分はコマ回しの方法を教えていたはずなのに、何故胴体を全力で縛り上げられているのだろう。いや、何となくこうなることは分かっていたのだが――!
「え、こっちじゃない? まあいいでしょう。で、ヒモ引っ張って投げるんですか?」
『まあいいでしょうじゃない! あと投げるのではなく放るように……ってアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
コマ回し怪人の言葉は、途中でさえぎられた。いわゆるサムライエンパイアとかで良くある、あの、着物の帯を引っ張って回すアレみたいな、そういう状態になったからだ。
怪人の身体に巻き付けられた紐を全力で引っ張った桜人は、ふういい仕事したという顔でぐるんぐるん回る怪人に背を向け――。
「――起きろ化物。餌の時間だ。【名もなき異形(ディスポーザブル・クリーチャー)】」
そのまま、パチンと指先をひとつ鳴らす。
それを合図として、桜人がその身に宿すUDC「モノリス」が虚空から姿を現す。
ぐるんぐるん回り続けるコマ回し怪人は、その存在にさえ気付くことができない。端的に言えば「デカめのコンクリブロック」である桜人のUDCは、そんな怪人の頭上でおもむろに回転を始めると、怪人の回転にも負けない程の勢いをつけて――落下した。
ドスウゥゥゥ……ン。
「攻撃回数、というか、回転数ですか? それを大事にしてみました。コマだけに」
にっこり笑顔で残る二体の怪人の方を振り返る桜人に、思わず抱き合う二体。
『あ、あ……ああ……』
『何ということだ……』
怪人たちの視線の先には、いまだ回転を続けるモノリスがあった。ああ、あの下には。
「やぁ、楽しいですねえ、コマ回し」
そう言いながら桜人は、しかしもはやコマ回し怪人がいた所を振り返ろうともしない。
「――次はどんな遊び方をしましょうか。ンッフフフフ」
怪人たちには『次はお前がこうなる番だ』と聞こえたとか何とか。
まあ実際、猟奇殺人事件かな? という位にけん玉もトランプもアレソレされちゃうんですが、具体的な描写はちょっと避けておきますね!
成功
🔵🔵🔴
明智・珠稀
ふふ!
素晴らしき着ぐるみ体験でした、ピンクのタレ耳うさたんに入れましたのも光栄です、ふふ!
…と、おや。
愛らしい敵さんですね。
どの方も愛らしいですが…私、けん玉得意ですよ、ふふ!
棒にぶっ差す遊戯…ふふ(意味深)
是非戯れさせて頂きたいです…!
私のテクニシャンっぷりを披露いたしましょう…!(変なポージングで)
あ、着ぐるみは汚したら申し訳ないので脱ぎます。
人気のない所に行き【早着替え】いたします
■戦闘?
「伝統的な遊びも大好きです…!」
敵攻撃は【オーラ防御】しつつ
けん玉で妙技を繰り広げ、けん玉を堪能した後
「残念ながらお別れの時間です…!」
UC【妖剣解放】でズバッと一刀両断を
※アドリブ&絡みネタ大歓迎♥️
ヘスティア・イクテュス
懐かしいおもちゃねぇ…?
懐かしいというか骨董品…?
なるほど、けん玉はそう上手く止めるのね~へぇ~
コマは紐を巻いて投げて回転させるのね~へぇ~
……で、宇宙の重力の低いところではどうやって遊んだらいいのかしら?(煽り)
なんていうかトランプと比べて遊びの幅がないのよね…
コマもUDCではベイゴマブレード?とか子供用に改良されたりするけど
本当けん玉って進化が無いというか…ドン詰まりよね?(煽り2)
後、おもちゃを人に向けてはいけません
良い子の皆は約束よ!(ブラスター砲撃)
そうやって危険な使いかたするから親御さんの厳しい目で廃れていくのよ
●りかいをしめしたりあおったりするむーぶ
「ふふ! 素晴らしき着ぐるみ体験でした」
「えっ、あのピンクのたれ耳うさぎの中に入ってたのってもしかして……」
日中、園内でせっせと来園者たちに風船を配ったり記念撮影に快く応じたりしていた「わくわくキマイラランド」のメインマスコットキャラクターがいたことはヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)も知ってはいたが。
まさかその中身が誰あろう明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)だったとは、さすがに想像がつかなかった。
ちなみに今の珠稀は頭部だけ脱いで首から下はいまだ着ぐるみのままである。
「……どうだった? それ、暑くなかった?」
「少し暑かったですが、平気です! むしろ光栄です、ふふ!」
「そ、そう……ところで、それ着たまま戦うの?」
「あ、着ぐるみは汚したら申し訳ないので脱ぎます」
「脱ぐんだ!?」
そう言うなりそそくさと人気のない所へと一旦消えていく珠稀を見送りながら、ツッコミも忘れないヘスティア。そっか……やっぱり暑いわよね……と思いながら、ようやく視線を待ち構えていた怪人たちの方に向ける。
「懐かしいおもちゃねぇ……?」
『な、何だその意味深な口調は』
「懐かしいというか、骨董品……?」
『やんのかテメェ!!』
『止めんか、コマ回し!』
うわあ開幕から賑やかだぞう!? だがヘスティアの感想は多分何の悪気もない率直なものだったのだろう、だってヘスちゃんスペースノイドだし……。
骨董品呼ばわりに、久々にコマ回し怪人がキレてそれを諌めるトランプ怪人の構図が完成する。この二体、仲が良いのか悪いのかがイマイチ良く分からない。
『……なるほど、宇宙育ちとはな。ならば確かに我々のことを知らなくても仕方がないかも知れないな』
そう言いながら、逆境を逆手に取って布教のチャンスと変えるべく、カンカンと軽快な音を立ててけん玉を自在に操りはじめた。
「なるほど、けん玉はひざを曲げて身体を落として上手く止めるのね~」
へぇ~、とヘスティアは感心したように声を上げる。
それに続けとコマ回し怪人がシュバッと巧みな手さばきでコマの胴体に紐を巻き付け、まるで手品か何かのような素早い手つきでコマを回す。
「ふむふむ、コマは紐を巻いて投げて回転させるのね~」
へぇ~、と再びヘスティアは言うが……しかしどうも様子がおかしい。
どや! と各自の技を披露するけん玉怪人とコマ回し怪人に向けて、ヘスティアはにっこり笑顔で言い放つ。
「……で、宇宙の重力の低いところでは、どうやって遊んだらいいのかしら?」
『『う……宇宙
……!?』』
ヤバい、話の規模が文字通り宇宙規模にまで広がってしまった。現代っ子ってレベルじゃねーぞ! 宇宙っ子だぞ!
そしてその点俺は安心だなと完全に他人事のように静観していたトランプ怪人の目の前で、ヘスティアの容赦ない追撃がけん玉とコマを襲う!
「なんていうか、トランプと比べて遊びの幅がないのよね……。コマもUDCアースではベイゴマブレード? とか子供用に改良されたりするけど」
ああ、UDCアースの夕方にアニメもやってるっていうあの……!
「それに比べて、本当けん玉って進化が無いというか……ドン詰まりよね?」
ヘスティア、煽る――! 特にけん玉に何か恨みでもあるのかってくらいに煽る!
『……進化が、ない……? ドン詰まり……?』
ここまで常に冷静だったけん玉怪人の拳がワナワナと震え始める。そこへ。
「私、けん玉得意ですよ、ふふ!」
たまちゃんが帰ってきた! ある意味ナイスタイミング! ハッと我に返るけん玉怪人が、突如現れた変t……いや、珠稀を見る。
「玉を棒にぶっ刺す遊戯……ふふ」
たまちゃんやっぱストップ! 意味深が過ぎます!
「ふふ、冗談です。どの方も愛らしいですね、是非戯れさせて頂きたいです……!」
ここでちょっと表現しづらい変なポージングをキメる珠稀。これはいよいよ戦わなければ生き残れないと察した怪人たちがその手におもちゃを構える中、その意図を察したのかどうなのか、珠稀が一層昂揚した声を上げた。
「私のテクニシャンっぷりを、披露いたしましょう……!」
『ここは俺が相手をしよう、お前たちは下がっていろ』
『けん玉の……!』
けん玉怪人が他の二人を片手で制すると、ヘスティアと珠稀に対峙する。その手には愛用のけん玉が握られていた。
「伝統的な遊びも大好きです……!」
おーっと、ここで何とまさかのマイけん玉だーっ! 珠稀は懐から持参したけん玉を取り出すと、けん玉怪人を見据えて自らも構える!
『ほう……面白い!』
けん玉怪人がまず繰り出したのは「スイーツスペシャル」なる技だった。糸を指に引っかけつつ玉を大きくぐるんと回し、大皿に乗せる。そこからそのままの状態で指を使ってけん玉をぐるんぐるんとまた回し、最後はけんを先に握り、再び離れた玉をけん先でキャッチしてフィニッシュだ。
もちろん、ただ技を繰り出すだけではない。この動作を猟兵にぶつけて攻撃とするのが、けん玉怪人の真骨頂なのだ。
「ふふ……流石ですね!」
苛烈な連続攻撃を、マイけん玉の玉をぐるんぐるんと回しながらそこへオーラを纏わせ即席の盾として弾き返すと、今度は珠稀が魅せる番である。
下に垂らした玉を、けん先に刺すのかと思いきやフワッと上にあがってきたそれをおもむろに手でつかみ、何と玉を軸としてけんの方を振って、手にした玉に一度カツンと当てたと思うや、おもむろに――けんと玉とでジャグリングをしたではないか。
『そ……その技は!』
「血のにじむような修行の果てに習得した技です、ふふ! タップジャグルけん!」
二度、三度。珠稀の手を行き来した玉とけんは再び分かれ、最後は手にしたけんの先で玉を受け止める。これ絶対普通にけん玉楽しんでますよね!?
『それ程までの腕前を持ちながら……何故……』
「残念ながら、お別れの時間です……!」
珠稀はマイけん玉を素早く懐にしまうと、佩いていた妖刀をすらりと抜く。そして発動した【妖剣解放】の効果であっという間にけん玉怪人との間合いを詰めると、躊躇なくけん玉怪人を袈裟斬りにした――!
ゆらりとあお向けに倒れゆくけん玉怪人に、珠稀は申し訳なさそうな顔を向ける。
「ああ、あわよくば一刀両断にと思っていたのですが……!」
「珠稀、下がって!」
鋭い声に、反射的に身を反らす珠稀。一撃で楽にしてやれなかったと悔いる珠稀の意図を汲んだのか、ヘスティアが【ミスティルテイン(長距離砲撃モード)】でとどめを刺すべく狙いを定める。
(「そうやって危険な使いかたするから、親御さんの厳しい目で廃れていくのよ」)
ヘスティアはけん玉怪人の技自体は認めていた。それが、攻撃の手段にさえ使われなければと思うばかりだった。
「後、おもちゃを人に向けてはいけません。良い子の皆は約束よ!」
砲撃直前、カメラを向けられたヘスティアは、それはもう良い笑顔でそう言った。
――ちゅどーん。
その日「わくわくキマイラランド」エントランス付近で、強い光と爆発が目撃されたという。大丈夫? やりすぎてない?
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
ようやくオブリビオンのお出ましか
それにしても、弱そうだな
これは対UDCライフルだとあっさり貫通して逆にダメージが入らないかもしれない
アサルトライフルで仕留めた方が良いだろうか
は?遊ぶって?
サクラコはもう少し真剣にやらないかい?
礼儀。供養
ヤオロズというものかな
郷に入りては郷に従え
ってことで
僕はトランプを相手にしよう
セブンスポーカー辺りでどうだろう?
は?ババ抜き? 今すぐ撃たれたいの?
レイズレイズレイズ
おや2ペアで勝負かい
はいフルハウス
最後はアサルトライフルでトランプに風穴開けて終わるよ
鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】
相手はけん玉、ベイゴマ、トランプですねい?
これは迷いますね...
気分的にサクラコはけん玉でしょうか
ねえ、アヤネさまはどれで遊ぶでいす?
ここは遊んであげてから倒すのが礼儀というものですねい?
供養とでもいいましょうか
ではけん玉勝負でいす!
大皿小皿の基本技からぽんぽんと
ほほほ、器用さではそうそう負けませんとも!
ぽーんでさくっと飛行機決めて
最後は宇宙一周でいす!
はー、面白かった!
ではさくっとやっつけちゃいましょうねい
アヤネさま、次に参りましょう!
●あそんであげるやさしさ
怪人たちの復活する速度が、徐々にだが遅くなってきていることに、果たして猟兵たちは気付いていただろうか?
入れ替わり立ち替わりで波状攻撃を仕掛けた甲斐あってか、怪人たちの根本に関わる部分に少なからずダメージを与えているのは間違いなかった。
――さあ、決着の時は近い。
「ようやくオブリビオンのお出ましか」
それにしても弱そうだなと率直な感想を口にするアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)は、さあどの得物で仕留めてやろうかとさっそく所持する武器を選別する。
『おいちょっと待て、最初から殺意が高すぎやしないか!?』
「あのボディだと、対UDCライフルだとあっさり貫通して逆にダメージが入らないかもしれない」
怪人たちの悲鳴に近い声をも無視して、アヤネは一度その重量ゆうに10kgを超える大型ライフルをわざとらしく掲げてみせたりする。威圧かな? 威圧だね!?
「アサルトライフルで仕留めた方が良いだろうか……」
「アヤネさま、アヤネさま! 相手はけん玉、ベイゴマ、トランプですねい? これは迷いますね……」
銃火器を手にああでもないこうでもないするアヤネに、鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)もまた何かを迷った体で声をかける。
サクラコは怪人たちを順番に見比べ、ふーむと顎に手をかけつぶやくと、楽しげにアヤネの方を振り返った。
「気分的にサクラコはけん玉でしょうか。ねえ、アヤネさまはどれで遊ぶでいす?」
「は? 遊ぶって?」
それはもう無邪気に、次のアトラクションを選ぶかのごとくにけん玉怪人を指名するサクラコに対し、思わず呆れ混じりの声を上げてしまうアヤネ。
その一方では、けん玉怪人がガッツポーズをひとつ決めてから、けん玉の準備を始めていた。
「……サクラコはもう少し真剣にやらないかい?」
「いえ! ここは遊んであげてから倒すのが礼儀というものですねい?」
サクラコはサクラコなりに真剣だった。けん玉怪人から手にしっくりと来るけん玉を受け取ると、慣れた手付きでまずは大皿に玉を乗せ、次に中皿――けん先の反対側のお皿だ――に移動させる。そして、その動きを交互に繰り返し始めた。「もしかめ」だ。
かん、かん。かん、かん。かん、かん。
「――供養とでもいいましょうか」
巧みにけんを動かし、身体全体でリズムを取りながら玉を交互に移動させつつ、サクラコは不敵な笑みでけん玉怪人を見た。邪魔さえ入らなければ、サクラコは延々この「もしかめ」を続けるつもりかも知れない。
『は、いいだろう! 歯ごたえのある手合いと見た、存分に楽しませてもらおう!』
「では、けん玉勝負でいす!」
かつん。
玉をおもむろに宙に放るとけん先に刺し、サクラコとけん玉怪人は向かい合う。
「……礼儀。供養。ヤオロズ、というものかな」
そんなサクラコの様子を見守っていたアヤネもまた、一旦ずらりと並べた銃火器を下げて、どうしたものかと残るコマ回し怪人とトランプ怪人とを見比べる。
『あのピンクの娘、俺のことをベイゴマと呼ぶとは……なかなか分かっているな』
『しかし彼女はけん玉を選んだ、惜しかったなコマ回しよ?』
『あぁン……?』
あーまた始まっちゃった。これもう放っておいて潰し合ってもらった方がいいんじゃないかなとも思いつつ、アヤネはやれやれとトランプ怪人に向けて声をかけた。
「郷に入りては郷に従え……ってことで。僕はトランプを相手にしよう」
いいね? というアヤネの視線に、トランプ怪人は掴みかかってきていたコマ回し怪人の腕を振りほどくと余裕で返す。
『ほう、良い度胸だ。いいだろう、何で勝負する?』
「セブンスポーカー辺りでどうだろう?」
『セブンカード・スタッドとな……? ババ抜きや神経衰弱あたりでなくても良いのか?』
予想外のチョイスに思わず聞き返してしまうトランプ怪人に、アヤネは親指と人差し指で銃の形を作ると、怪人の頭部に突きつける。
「――は? ババ抜き? 今すぐ撃たれたいの?」
『いやいやいや失礼したポーカーだな承知した!』
「セブンカード・スタッド」、ポーカーの一種だが、一部の手札をオープンにして行うことと、合計7枚のカードの中から5枚を使って役を作るというルールを採用している。
最初に2枚のカードを伏せた状態で、次いで3枚目のカードが表向きに配られた。アヤネと怪人は、まずここで勝負を続けるか否かを決断する、のだが。
『コンプリート』
アヤネと比べて弱い手札を晒している側のトランプ怪人、意外にも強気に出た。
「……いいね、レイズだ」
それを受けてアヤネは怪人よりも多いチップを賭けると宣言する。二人とも、一歩も引かない。
フォース・ストリート。
「レイズ!」
強気なアヤネの声が響く。
フィフス・ストリートにシックス・ストリートでも。
「レイズ! レイズ!」
どんどん増していくアヤネの掛け金。
(『これがハッタリでなければ一撃で吹っ飛ぶ……しかし、まさか、そうそう上手い話があるものか
……!?』)
トランプ怪人には表情という概念がない。だが、この場においてはそれが救いとなったかも知れなかった。何せ眼前の相手に感じる「焦り」を知られることがない。
怪人の手札をオープンしてみれば――そこには何とか成立させた役が。
「おや、ツーペアで勝負かい」
『……随分と強気に出たが、その様子では……』
なにせ半分近く手札が明らかになっている、それを見て察することなど造作もない。
アヤネは惜しげもなく全ての手札を開示すると、自らの役を改めて突きつけた。
「――はい、フルハウス」
笑顔のアヤネの手には「Phantom Pain」の名を冠したアサルトライフルが。
降参だ、という様子で両手を顔の近くまで上げたトランプ怪人は、敗者の定めとして放たれた銃弾を甘んじて受け入れた。
一方のサクラコも、けん玉の妙技を披露していた。
「ほほほ、器用さではそうそう負けませんとも!」
最初に披露したもしかめで肩慣らしをし、そこから流れるように玉を手に取り逆にけんを放り出すと――ぐるんと回ったけんは吸い込まれるようにサクラコが手で固定する玉の穴の中にストンと落ちてはまった。
『ははっ、飛行機だな! たやすくこなしてみせるものよ、次はどうだ!?』
「もっちろん、これだけでは終わらないでいす!」
けん玉怪人がこれは愉快という風に次を促してくるのに、サクラコは言われるまでもないと持ち手をけんへと移し、スッと構える。
「ほっ……!」
まずサクラコが玉を乗せた先は、何とどの皿でもなく、皿胴と呼ばれるけんと大皿小皿とが交差する箇所。絶妙なバランスでとどまっているその玉を、いったんけん先に戻す。
『まさか、その初動……! やるのか、あの技を!?』
しかしサクラコは集中していて返事をしない。次いで玉は小皿へ乗り、またけん先へ戻る。そして大皿、けん先、中皿と玉は自在に移動していき、最後は綺麗な弧を描いてカツンとけん先へと収まった。
「――最後は、世界一周でいす!」
『やり切ったな! 大したものだ!』
見守っていた怪人が素直にサクラコを称賛する。ならば次は自分の番だ――もちろん、技を披露しながら攻撃する算段なのだが。
しかしそこはサクラコも織り込み済みというもの、敢えて避けもせず、むしろ脱力状態で怪人の攻撃を待つ。
『そちらが宇宙一周で来るなら……俺は宇宙遊泳で葬ってくれよう!』
怪人が玉を持つとけんの方を大きく回し、さらに玉からもフッと手を離す! その流れでサクラコにアレソレぶつけて攻撃をしようとして――。
「――【オペラツィオン・マカブル】、でいす」
だらりと首を下に垂らしていたサクラコが、ユーベルコードの発動を告げた。
『何……っ!?』
サクラコにけん玉怪人の放った「技」が触れた瞬間、けん玉が虚空に吸い込まれるかのように消えてしまう。
と、同時にサクラコのからくり人形「白名鬼(ハクナキ)」が動いた。その手には何と、けん玉が握られているではないか。
「ハクナキ、華麗な宇宙遊泳を魅せてやるでいす!」
ハクナキを繰りながら、サクラコが――ハクナキが、そっくりそのまま宇宙遊泳を繰り出す。
途中けんからも玉からも手を離したタイミングで、ポコポコとけん玉怪人にダメージを与えると、地に落ちそうになるけん玉をギリギリで引き上げて最後まで技を決めた。
したたかに打ちのめされてうずくまるけん玉怪人をよそに、サクラコは満足げにアヤネの方に身体を向けた。
「はー、面白かった!」
「……それは、何よりだネ」
あっさりとトランプ怪人を葬ったアヤネは、駆け寄るサクラコを迎える。
「アヤネさま、次に参りましょう!」
「えっ、まだ遊ぶのかい!?」
『俺は!? コマ回しでは遊んでいかないの!?』
折角ベイゴマという分かっている名称で呼んでもらえたのに、放置されるコマ回し怪人さん。ちょっと可哀想ですが、まあしょうがないね!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セリオス・アリス
【星華】
アドリブ◎
全身タイツ……変態か?
マリア、カデルあんま近づくなよ
うわぁとドン引きの目で眺めつつ
カデルの言葉にそう言えばと手を叩く
…知らねぇなぁ?
一緒に育った俺が知らねえのにアレスだって知ってるわけ…ないよな?
上目遣いで尋ね
あ、待て
トランプは知ってる
賭けごとでも時々使うよな
他のは……なんだ?
むしろ懐かしくない変人じゃね?
勝手にもめ出したりしたら好都合一気に叩くぜ
『歌』で身体強化
靴に風の魔力を送り『ダッシュ』で『先制攻撃だ』
敵の攻撃は『見切り』回避
…っと!戻ってくんのかよコイツ!
ああそんなら、進路に足を出し蹴りで無理やり浮かせ
浮いたコマを【星球撃】で全力で
懐かしくない変人の方向へ殴り付ける!
マリアドール・シュシュ
【星華】
◎
まぁ!可愛らしい怪人さんだこと!(手を叩き目輝かせ
変態だなんて…セリオスったら
格好は自由よ
触れては可哀想だわ
マリアも分からないの…(緩く首振り
そのカードは見た事があるわ!
他はどうやって遊ぶのかしら?教えて欲しいのよ(首傾げ無邪気な笑顔で優しい言の刃で抉る
ふふ、懐かしくない怪人さん
此処は遊園地
遊ぶのはいいけれど他のお客さんに迷惑がかかる行為はだめよ?
仲間割れを無意識に誘発
後衛
敵と距離取り仲間と連携
竪琴で麻痺の糸絡む終焉の輪舞曲を嫋やかに演奏(楽器演奏・マヒ攻撃・おびき寄せ
高速詠唱で【透白色の奏】使用
トランプへ一点集中
攻撃手は休めず確実に当てる
華やかな言ノ葉(こえ)で世界(ランド)を歌唱
アレクシス・ミラ
【星華】
アドリブ◎
これはセリオスに同意だな…と三人衆を見て頭を抱え
…マリアさん、カデルさん
出来れば、僕の後ろに
懐かしの…?
首を傾げ
セリオスの問いに心配するなと笑い、ぽんと彼の頭に手を乗せる
僕も知らないな
おや、カデルさんも知らないのか
マリアさんは?…そうか
…知られてないね
…あ、そうだ
カードなら分かる
だが、他の二人は一体何だい?
懐かしくない怪人の変人…
ただの変人では
…これは好機か?
僕はケンダマ?怪人の相手をしよう
【絶望の福音】発動
回避しながら近付き、紙一重で避け
赤い玉が怪人本体に当たるように仕向ける
拳の二回攻撃でバランスを崩した後
雷属性を纏わせた回し蹴りを叩き込む
…騎士としては少々荒っぽかったかな
瀬名・カデル
【星華】
アドリブ◎
でたね、怪人さんたち!
でも懐かしおもちゃ…っていうけどボク全然わかんないんだよね。
マリアは知ってる?
……アレスやセリオスなら知ってる?
いわれてみたら、あのカードっぽいのだけ知ってるかも。
つまりあとの2体は懐かしくない怪人さんたちだね!
なんとなく、怪人さんたちがショック受けてる気がするけどそれなら今のうちに退治しちゃうんだよ!
アレスとセリオスはあの怪人さんか、
じゃあボクはマリアと一緒にあのカードっぽいやつを相手にするよ。
そういって「玩具の行進」を発動。
ボクの兵隊さんと怪人さん、おもちゃ対決で勝負だよ!
でも5体だけだと思わないでね、怪人さんに普通の魔法攻撃もいれちゃうんだから…!
●なつかしおもちゃよえいえんに
騒動が起きたとされるエントランスに向かう途中途中で、あっお土産! とか、あっポップコーン! とかちょいちょい足止めを食ってしまったため、【星華】の四人は若干到着が予定よりも遅くなってしまった。
日はほぼ傾き、夜の帳と燃え上がる地平線とのコントラストが美しい。そんな中でエントランスにて四人を待ち構えていたのは、幾多の猟兵たちとの死闘(意味深)を繰り広げ、もはや息も絶え絶えになった『懐かしおもちゃ三人衆』だった。
「でたね、怪人さんたち!」
「まぁ! 可愛らしい怪人さんだこと!」
瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)がズビシと怪人の方へと指をさし、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)はその横で手を叩いて目を輝かせた。
可愛い? アレが? と言わんばかりに、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)はその整った顔を苦々しい表情に変えると、はばからずに言い放つ。
「全身タイツじゃねえか……変態か?」
『『『ひどい
!?』』』
今までも大概ひどい目に遭ってきたつもりではあったが、これほどまでの言葉の暴力を先制攻撃で食らったことはあっただろうか。
「変態だなんて……セリオスったら、格好は自由よ。触れては可哀想だわ」
「いや、これはセリオスに同意だな……」
「だろ!?」
たしなめるマリアドールに、しかしセリオスへの同意を示したのはアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)。全身タイツに頭部がおもちゃの怪人たちの姿からは、アレクシスがどう好意的に解釈しようとしても、怪しさしか感じることができなかった。
とりあえずこの変態たちから女性陣をなるべく遠ざけておこう、それに越したことはない。
そう考えたアレクシスとセリオスは、カデルとマリアドールをその背にかばい立つ。
「……マリアさん、カデルさん。出来れば、僕の後ろに」
「おうおうマリア、カデル、あいつらにあんま近づくなよ?」
『だから! 変態扱いは! やめてもらおうか!!』
半ば涙声のようにも聞こえる、怪人たちの訴え。猟兵と一緒に遊んでも通報されずにここまで来たけれど、遂に年貢の納め時が来たなあって感じありますね……。
男性陣の背に守られるようにしながらも、チラチラ怪人たちを眺めていたカデルがふと呟く。
「でも『懐かしおもちゃ』……っていうけど、ボク全然わかんないんだよね」
マリアは知ってる? とカデルはマリアドールの顔を覗き込むも。
「マリアも分からないの……」
申し訳なさそうに、そっと緩く首を振るマリアドール。銀糸に踊る宝石が、きらきら。
背中から聞こえてくる声にそう言えば、と手を叩くのはセリオスだ。
「……知らねぇなぁ?」
「懐かしの……?」
その隣でアレクシスも小首をかしげる。ここでセリオスが一抹の不安を抱き、思わず尋ねてしまう。
「……なあ、アレス」
「うん?」
「一緒に育った俺が知らねえのに、アレスだって知ってるわけ……ないよな?」
チラと、上目遣いにセリオスがアレスに問う。美少年の! 上目遣い! よっしゃ!
しかしアレクシスはそれを素直に不安の目線だと受け止めて、セリオスを安心させようとぽんとその頭に掌を乗せた。
「はは、心配するな。僕も知らないな」
そう答えるアレクシスの笑顔は、どこまでも爽やかだった。
『いやそこは心配しよ!? 俺達のことそこまで知らないって相当だから!!』
「……アレスやセリオスなら知ってるかと、思ったんだけど」
「カデルさんも、マリアさんも……そうか……」
これ顔があったら絶対泣いてますよという声音で、切実に怪人たちが訴えかけてくる。あまりの剣幕にカデルがそっと男性陣を頼るも、こちらはこちらで女性陣に期待を寄せていたので双方の思惑は空振りに終わってしまう。
「……知られてないね」
『ムギャーーーーッ!』
申し訳なさそうに、しかし結論付けるかのように言うアレクシスに、コマ回し怪人が思わずムギャる。
「……あ、待て。お前トランプだろ! トランプなら知ってる!」
『……!!』
セリオスがおもむろにトランプ怪人を指さすと、お前かー! というリアクションをする。パアァァと、トランプ怪人の元にだけスポットライトが当たったかのように思えた。
「思い出したわー、そうだよトランプだよ、賭けごとでも時々使うよな」
セリオスの言葉に、トランプ怪人が少し動揺しながら声の主の顔を見る。
(『こ、こんな容姿端麗な青年が……トランプで賭けごと、だと
……?』)
一体どんな修羅場をくぐり抜けて来たというのか。トランプ怪人の一方的な妄想が広がる中、次々とこんな声が聞こえてきた。
「いわれてみたら、あのカードっぽいのだけ知ってるかも」
「……あ、そうだ。カードなら分かる」
「ええ、そのカードは見た事があるわ!」
カデルが、アレクシスが、マリアドールが。口々にトランプの存在を認識していく!
完全勝利。光の中でひとり立ち上がりガッツポーズをするトランプ怪人。
だが忘れてはならない、その一方で完全に知らない子扱いをされているけん玉怪人とコマ回し怪人の存在を……!
『し……知らぬとあらば教えてやろう、俺は……俺達は……』
ゆらりと立ち上がるけん玉怪人とコマ回し怪人目がけて、まずはカデルの一撃が刺さった。
「つまり、あとの二体は『懐かしくない怪人』さんたちだね!」
『『がはぁッ!?』』
カデルにはまったく悪気はなかった。だがそれゆえに破壊力は抜群だった。無邪気さは……罪……。
「他の二人は一体何だい?」
「他のは……なんだ? むしろ『懐かしくない変人』じゃね?」
「『懐かしくない怪人の変人』……それはもはや『ただの変人』では?」
グサッ! グサグサグサッ!!
アレクシスとセリオスの、これちょっと無意識に煽り入ってませんかね的な口撃がクリーンヒットする。言葉の刃にのけぞる怪人二人。
そこへ、傷口をえぐる技能でも持ってるのかな? とさえ思わせる絶妙なタイミングで、マリアドールが声をかけた。
「他のお二人はどうやって遊ぶのかしら? 教えて欲しいのよ」
『遊び方さえ知られてなかったーーーーーーーーーーーッ!!』
小首をかしげ、無邪気に微笑み、優しい言葉で、そして殺す。
もうこの時点で猟兵勝利で決着つけてもいいんじゃないですかねっていう雰囲気の中、マリアドールは光を浴びて一人勝利の余韻に酔いしれているトランプ怪人の方を見た。
トランプ怪人は、ついぞ先程まで三体一組でのトリオを結成していたとは思えぬ態度で、力なく地に伏せるけん玉怪人(頭の玉がけんから外れてコロコロと転がっている)とコマ回し怪人(手にした紐が首にかかっているのが怖い)をあからさまに見下すと。
『――フッ、落伍者どもめ』
『何……?』
『お前達では到底私と共闘するには釣り合わぬということよ!』
トランプのカードを気障ったらしく口元らしき箇所に持っていきつつ、おごり高ぶった発言を堂々とぶちかます。
『てめェ……ちょっとばかし知名度がある程度で調子に乗りやがって……!』
『その知名度こそが! 我々を定義づけるのだよ!』
アッでもそれは正論かも知れない。いけません、ヒートアップしている相手を正論で殴るのは――。
『野郎! そのキレイな顔をぶっ飛ばしてやる!!』
顔……? と猟兵四人は思わずいぶかしむが、とにかく目の前で勝手に勃発した仲間割れはこちらにとっても好機である。活かさない手はない。
(「セリオス、僕はあのケンダマとやらの相手をしよう」)
(「任せた、俺はあのキレ散らかしてるのを狙うぜ」)
かくして初動で動いた前衛の男性陣は、それぞれけん玉怪人とコマ回し怪人とを相手取ることにした。息の合った動きで、一瞬で散開する。
突貫したコマ回し怪人と連携して、隙を見て攻撃を叩き込もうとしていたけん玉怪人に向けて猛然と突進していくアレクシス。
その気配に気付き、慌てて攻撃対象をアレクシスに変えてけん玉のけん先を鋭く突き出す!
『何……っ!?』
たかがけん玉と侮れないその動きを、ユーベルコード【絶望の福音】の力で見切って紙一重で回避すると、突き出したまま止まらないけんの動きに引っ張られるように玉が赤い軌跡を描いて――。
ごつーん!!
『痛ッッッッ!!!』
けん玉怪人の頭部に、手にしていたけん玉の玉がすごい勢いでぶつかった。
思わずうずくまりそうになる所を、しかしアレクシスはそれを許さない。無防備なみぞおちに左右の拳を一撃ずつ叩き込む。
『がっ……』
もしも怪人に口があったなら、血反吐のひとつも吐いていたかも知れない。そう思わせるうめき声が、どこからともなく響く。
確かな手応えを感じ、これでトドメだと左足を一歩力強く踏み込むアレクシス。重心を左足から右足に移動させると、強く念じる。
その意志に応えるかのように雷撃の力をまとった強烈な回し蹴りが放たれ、けん玉怪人の脇腹に深々とめり込む!
「……騎士としては、少々荒っぽかったかな」
アレスさん、てっきりグラップルの技能持ちかと思っちゃいました! 完璧な格闘技のもと、けん玉怪人は遂に地に伏したまま動かなくなった。
一方のセリオスは、トランプ怪人に掴みかかろうとして完全に自分へと背中を向けていたコマ回し怪人を狙った。
「~~♪ ~~~♪」
決して余裕の鼻歌などではない、立派な身体強化の効果がある歌唱だ。歌姫もかくやという美声を、しかし今回は口ずさむ程度におさえると、力がみなぎる感触を確認しつつおもむろに地を蹴り、風の力を借りて猛然と駆け、コマ回し怪人との距離を詰める。
「背中がよ、ガラ空きだぜ!」
『猟兵……っ!!』
抜き放たれた「青星」の名を冠する純白の剣が閃き、コマ回し怪人の背中を袈裟斬りにする。しかし怪人もただでは倒れない、小賢しいとばかりにセリオスの方を振り向くと同時に、コマを猛烈な勢いで複数投擲してきた。
直線的にしか飛ぶまい。よって、回避するのも容易かった。軌道を見切ってひょいと身を反らせば、後方へと飛んでいくコマたち。
しかし。
「……っと! 戻ってくんのかよコイツ!」
それを見越しての投擲だったとしたなら大したものだ、地についたコマたちが、次々と高速回転しながらセリオスの方へと――「戻ってくる」!
『俺が回せばコマの動きも自由自在よ、どうだ! すごいだろう!』
「ああそうかよ!」
ドヤ顔をするコマ回し怪人に適当な返事を返すと、セリオスはならばと思い切って迫りくるコマの進路に足を出す。
軽く蹴ってやる感じで靴先をコマに当てると、ぽーんと跳ね上がるコマ。靴先が少しすり減ったかも知れないが、今はそれを気にしてはいられない。
「これでも、喰らいな……!」
【星球撃(モーニングスター)】、それはセリオス渾身の一撃。持てる力の全力でもって、宙に浮いたコマを、懐かしくない変人ことコマ回し怪人目がけて殴り付ける!
『あがッ
……!!!』
コマとコマが激しく衝突し、コマ回し怪人がゆっくりとした動作であお向けに倒れ込む。そして再び起き上がることは――なかった。
「ふふ、懐かしくない怪人さん? 此処は遊園地。遊ぶのはいいけれど、他のお客さんに迷惑がかかる行為はだめよ?」
アレクシスとセリオスがそれぞれ一体ずつ怪人を相手取っている最中、マリアドールとカデルは遂にトランプ怪人と対峙する。
『ふ、私まで懐かしくない怪人呼ばわりとは心外だな』
マリアドールのたしなめるような言葉に、あくまでも認知度にこだわっていくトランプ怪人。そんなだから致命的な仲間割れを起こすんですよ……!
マリアドールが構えるのは「黄金律の竪琴」なるハープ。黄昏時の今がまさに出番としてはふさわしい。
カデルと位置取りの確認をすると、ハープの弦に白魚の指をかけ、たおやかに奏でるは「終焉の輪舞曲」。
『何だ……!? 身体が、言うことを聞かない……!』
マリアドールが奏でる音色には、不可視のマヒの糸が絡みつく。
「スキありだね、ボクも行くよ! 【玩具の行進(マーチング・トイ・ソルジャー)】!」
カデルが元気良く発動させたユーベルコードは、クラシカルなおもちゃの兵隊の人形たちを喚び出した。隊列を組んで、整然と登場するその数実に140体。壮観である。
『ぶ、ブリキの兵隊ごときに……』
「それはどうかな? ボクの兵隊さんと怪人さん、おもちゃ対決で勝負だよ!」
かかれー! と手を振り下ろして合図をするカデルのもと、おもちゃの兵隊たちは次々とトランプ怪人へと突撃していく。
常ならご自慢のトランプを投げつけて、ユーベルコードであるならば何でも相殺してしまうのに、身体が思うように動かない。
『あ痛っ、痛っ』
「それだけだと思わないでね、普通の魔法攻撃も入れちゃうんだから……!」
『あばばばば!』
小さなおもちゃの兵隊さんたちは、いくつか蹴散らされながらも奮戦。ポコポコと着実に怪人にダメージを与えていく。
「あらあら、うふふ」
そんなトランプ怪人とカデルとのやり取りを、ハープを奏でながら微笑ましく見守っていたマリアドール。
その瞳に映し出されるのは、トランプ怪人。狙いは――定めた。
「煌き放つ音ノ葉を戦場へと降り注ぎましょう――」
――さぁ、マリアに見せて頂戴? 玲瓏たる世界を。
『この音色は……いかん
……!!』
とっさにトランプ怪人が頭部を抱えるも、時すでに遅し。マリアドールの【透白色の奏(リスタ・エメラルム・カノン)】の旋律は、確実にトランプ怪人を捉えていた。
「華やかな言ノ葉(こえ)で、世界(ランド)を謡う。……心安らかに、お眠りなさい」
『おの……れ……』
それは、安らかな最期であった。もはや、復活することはないだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『ギヴ』
|
POW : あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD : しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:棘ナツ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
●ごあんない
プレイング受付は「6/22(土)08:31~6/24(月)22:00」の間とさせて頂きます。
冒頭文は6/21(金)中に投稿します、そちらをご確認の上、よろしければ皆様のお力をお借りできますと嬉しく思います。
期間外に頂戴したプレイングは採用できない可能性が高いです、恐れ入りますがご協力の程をよろしくお願い致します。
●そのながいみするものは
猟兵たちの奮戦の結果、入園ゲートを襲撃した謎の怪人たちは遂に完全撃破された。
「わくわくキマイラランド」には夜の帳が下りて、園内のあちらこちらにイルミネーションが輝き出す。
一時はどうなることかと思われたが、これで遊園地にも平和が訪れ――?
ぽろん、ぽろろん。
『~~♪』
園内のちょうど中央に位置するアトラクション「メリーゴーランド」。これもまた色とりどりの電飾に飾られて、来園者の夢とともにゆっくり回り出す、はずだった。
それがいかなることか「忽然と姿を消し」、かわりに現れたのは、頭部がメリーゴーランドをした――怪人の姿。
『ギヴ』。与える者の名を持つそのオブリビオンは、人々の楽しい思い出で構成されている。そして、人々にそれを与えんとするが、その行為は虚しくも裏目にしか出ない。
『~~♪ ~~♪』
ぽろろろん、ぽん、ぽろろん。
ギヴはただ、オルゴールの音のみで意思表示をする。その意思とは――『誰もが素敵な思い出の中で眠り、朽ち果てていく』ことである。
既に、オルゴールの音色を聞いてしまった来園客たちは、次々と眠りの中に落ちてしまっていた。心地よい眠りであろう――だが、その先には滅びしかない。
止めなければ。
猟兵たちはあらゆる手を尽くして、この滅びの舞姫を止めなければならぬ――!
●ごあんない
単刀直入に、ギヴに対抗する手段をお伝えします。
皆様の「素敵だった思い出」や「楽しかった思い出」を自らギヴに告げることで、「与えられるだけの喜び」など不要であると、ギヴの思惑を封殺することができます。
「今日の遊園地、楽しかった!」でも、他に良い思い出があれば、何でも良いです。端的に申しますと「幸せ自慢大会」になれば大丈夫です。
(という訳なので、嗜虐的な楽しみなどのちょっと歪んだ内容は、今回は採用を見合わせる可能性もございます。さじ加減は私次第となってしまいますが、ご容赦下さい)
戦闘プレは、忘れずに書いてさえ頂ければ、最低限で大丈夫です。
皆様の素敵なお話を、楽しみにしております!
アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
サクラコ起きて!
素敵な思い出だって?
そんなもの(やや顔を赤らめ
あるネ
友達ができたんだ
5年ぶりに
ソヨゴは一万人を超えるの猟兵名簿から選び出した女の子だ
不正アクセスについては今はノーコメント
猟兵のパートナーとしての資質の高さは当然求めた
でも本音は友達になってくれる子を探していた
容姿とかはかなり好みだったし
偶然を装って仕事を一緒に始めた
会ってみたら
すごく優しいし
面倒見がいいし
思っていた以上にすごくいい子で
僕みたいなダメな人間と友達になってくれるか不安だった
先日僕のダメな部分を全て告白した上で
友達になってもらえた
受け入れてくれるとは思ってなくて
うれしかった
戦闘します
鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】
オルゴールの音は落ち着きますねいー
すやあ
いえ寝てないですねい
寝てたでいす?!
幸せなことですかねい?
今、この時を生きている事でしょうか
何しろ70年ほど埋まっていたので
えっ?それは不幸自慢じゃないかって?
いえいえ
こうしてお天道様の下で
身体を与えられて自由に動けて
こんな風に頼れる仲間がいる
最高でいす!
アヤネさまは
ああ!なるほどですねい
冬青さまは
いつも明るい笑顔で
はきはきお話ししますし
猟兵としても優秀で
素晴らしいかたですねい
台詞をとるな、でいすか?
戦闘はアヤネさまとタイミングを合わせて
得意な武器でやっつけるでいす!
サクラコはハクナキを使いますねい
●すてきなおもいでを~あやねとさくらこ
園内各所に設置されているスピーカーを介す訳でもなく、不思議な力で伝搬するオルゴールの音色は、次々と来園客を柔らかな眠りへと誘っていく。
どさり。
――ああ、また一人。足元で倒れ込むキマイラの家族連れを抱きかかえ、しかし目覚める様子がないことを確認したアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)は、別の子供をそっと横たえる鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)と視線を交わす。
「……コレは、犯人を直接叩くしかなさそうだネ」
すっくと立ち上がりメリーゴーランドの方へと駆け出そうとしたアヤネだったが、ふと違和感を覚えて振り返ったそこには。
「……オルゴールの音は落ち着きますねいー……」
すやあ。サクラコが、手近なベンチにお行儀よくちょーんと腰掛けて眠っていた。
「サクラコ起きて!」
「いえ寝てないですねい。……寝てたでいす!?」
何やってるのさと無慈悲にサクラコをベンチから全力で引き剥がそうとするアヤネに、訳の分からない返しをするサクラコ。危ないところだった。
自分でも気付かぬうちに眠りの淵へと追いやられてしまうとは……怖ろしい! ともあれ二人は、改めてメリーゴーランドのある場所へと急ぐのであった。
『~~♪』
ぽろ、ん。
機械が軋むような音を立てて、それは二人の方を振り返った――ように見えた。身体は常に舞い踊り、しかしメリーゴーランドの頭部だけを二人に傾けた、ような。
「……っ!」
その瞬間、アヤネとサクラコが同時に目眩のような現象に襲われた。ぐにゃりとする視界、ふらつく足元。いっそ身を委ねてしまえば、楽になれるのかも知れない幻想。
(「なるほど、ですねい」)
サクラコが、己の本体を体現するかのような曇りなき笑顔で隣のアヤネに声をかけた。
「アヤネさま、素敵な思い出を聞かせて下さいませ!」
その声から意図を察した聡明なるアヤネは、少しだけ頬を赤らめて、口を開く。
「素敵な思い出だって? そんなもの――あるネ」
ぽろろん、ぽろん。
『~~♪』
なあに? なあに? それは、どんなおはなし?
「友達ができたんだ、五年ぶりに」
それは、街中やキャンパスで偶然に出会ったとかそういう話ではなく。一万人を超える猟兵データベースの中からアヤネが自ら選び出したというとんでもない話で。データベースへの不正アクセスについては今は不問としておこう。話がこんがらがるからね!
「猟兵のパートナーとしての資質の高さは当然求めた。でも本音は、友達になってくれる子を探していた」
くるくる回るギヴに、訥々と語るアヤネ。その来歴から孤高の天才という二つ名が相応しいアヤネに秘められた、年相応の欲求がそこにはあった。
そんなアヤネが選んだ運命の少女はさてどうだろう。
「……容姿とかはかなり好みだったし」
「ああ! なるほどですねい。冬青さまはいつも明るい笑顔ではきはきお話ししますし、猟兵としても優秀で素晴らしいかたですねい」
誰のこととは敢えて言わずにいたアヤネの思惑を、全力で実名を出して木っ端微塵に粉砕するサクラコに悪気はない。ないんです。
「サクラコ、僕の台詞を取らないでくれるかな」
「たははー、ごめんでいす」
てへぺろしながら一歩後ろに下がるサクラコと入れ替わるように、再び前に出るアヤネ。
「ごほん! ……偶然を装って仕事を一緒に始めたんだ、会ってみたらすごく優しいし、面倒見がいいし、思っていた以上にすごくいい子で」
最初は、データを元に『選抜』したに過ぎないと思っていた。しかし、実際出会ってみたら不思議なもので、自分にとっては非現実的な話だが――『運命』という要素まで信じても良いという心地にさえさせてくれる。
「……僕みたいなダメな人間と友達になってくれるか不安だった」
人が人である以上、誰にでも悩みの一つや二つはあるだろう。一見完璧超人のように見えるアヤネにもそれは言えることであり。
そして先日、自らのダメな部分を全て告白した上で、改めて友達になってもらうことができた。
「……受け入れてくれるとは思ってなくて」
うれしかった。そう、言葉にすることができず、胸元で両手をぎゅっと握りしめ、アヤネはその時のことを思い出しては感慨深げに瞳を閉じる。
――そこには、ギヴが与える幸せが入り込む余地などなく。
ならばとサクラコの方を向くギヴに、しかしサクラコも屈託のない笑顔で。
「幸せなことですかねい? 今、この時を生きている事でしょうか」
着物の袖をたなびかせてくるりと一回転、本体である銅鏡も追随して一緒に回る。
「何しろ、七十年ほど埋まっていたので」
事もなげに言いながら、良く手入れされた銅鏡を愛おしむように抱えるサクラコ。それを見たギヴが、ひときわ大きな音を立てて何かを訴えかけようとする。
「えっ? それは不幸自慢じゃないかって?」
ともすれば耳障りにさえ聴こえかねないオルゴールの金属音をものともせずに、サクラコは笑顔のままで動じずに返す。
「いえいえ、こうしてお天道様の下で身体を与えられて自由に動けて、こんな風に頼れる仲間がいる」
サクラコの言は、この世全てのヤドリガミが一度は抱いた想いの代弁なのではなかろうか。百年の時を経て、人間としての第二の生を満喫するサクラコは――わざわざ夢などに逃げ込む必要など、そもそももってなかったのだ。
「――最高でいす!!」
今を全力で楽しむサクラコが繰るからくり人形「ハクナキ」が、まるで生命を吹き込まれたかのごとく躍動し、ギヴに舞うように迫る。
「おっと、僕も攻撃しないとだね」
アヤネも一番早く準備が整えられる「Phantom Pain」を構えると、ギヴとハクナキとの攻防の間隙を縫って、一撃お見舞いする。
固い、が、着実に傷ついていくギヴの身体。
戦いは、まだまだ続く――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
明智・珠稀
◎
ふふ。
楽しかった思い出、ですか…!
それは勿論、本日…ッ!
(うさちゃんポーズ★)
愛らしいマスコットさんに扮し
人々にトキメキと癒しを与えられるこの悦び…!
普段の私ではない何者かに扮することが出来、新たな快感を得られました…!
そしてこの進化した遊戯施設を楽しみつつ
アナログな伝統遊戯(けん玉)を堪能する時間…!
遊戯でありながら、様々な技を会得するには努力が必要となるあたり
実生活でも役立つ精神を育めましょう…!
毎日新たな発見のある私は幸せ者です、ふふ!
決して過去の記憶がないから本日の話をしてるわけではありませんよ、ふふ!
■戦闘
UC『青薔薇吐息』で敵に攻撃を♥️
「甘い香りと共にお眠りください、ふふ!」
●すてきなおもいでを~たまちゃん
遊園地は幻想的なイルミネーションに彩られているが、今やそれを目にしているものはわずかであり。
なればこそ、一刻も早く事件を解決して、来園者の人々に一日の締めくくりを楽しいものにしてもらわなければならない。
そんな思いを胸に秘め――ているかどうかは本人のみぞ知る、かくして明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)がこの事件に決着をつけるべく決戦の地へと舞い降りた!
「ふふ。楽しかった思い出、ですか……!」
『~~……♪』
ぽろ……ん。
あれ今ちょっとギヴのオルゴールの音とか雰囲気に動揺の色が見えたような。どうしたの?
しかし珠稀はそんなことにもお構いなしに続ける。
「それは勿論、本日(トゥデイ)……ッ!」
ハイここで両手を頭の上に乗せてクイッと曲げてー! うさちゃんポーズ★(きゃるん)
『……♪』
ポロロン……。明らかに悲しげな音を立てて、顔とおぼしき場所を両手で覆うギヴ。何だよ! 誰も何も悪いことしてないだろ! ホラたまちゃん語るよ! 聞いて!
「愛らしいマスコットさんに扮し、人々にトキメキと癒しを与えられるこの悦び……! 普段の私ではない何者かに扮することが出来、新たな快感を得られました……!」
そう、まだ日も明るいうちに遊園地を思い思いに堪能する時間が与えられていた時のこと。猟兵たちの中でほぼ唯一、来園客をおもてなしする側に回ることを選んだ珠稀は遊園地を代表するマスコットキャラクターの着ぐるみの中の人となり、風船を配ったり記念撮影に応じたりとそれはもう奮戦していたのだ。
元よりサービス精神旺盛(意味深)な珠稀の気質からして、こういったいわゆる接客業が向いているのでは……? と周囲から思われていたとかいないとか。
いかなる伝手でかギヴもそのことは把握済みであり、こと珠稀のことは警戒していたのだが、実際対面してみるとその圧倒的な変t……ポジティブオーラに圧倒されてしまったのだ。
そしてそんなギヴの心境を知ってか知らずか、珠稀のトゥデイズメモリー発表会はまだまだ続く。
「そして! この進化した遊戯施設を楽しみつつ、アナログな伝統遊戯(けん玉)を堪能する時間……!」
ああ、玉に棒をぶっ刺す遊戯(意味深)。たまちゃんお上手でしたね!
「遊戯でありながら、様々な技を会得するには努力が必要となるあたり、実生活でも役立つ精神を育めましょう……!」
実際、珠稀が披露した「タップジャグルけん」なる大技も、実際こなすにはそれこそ血の滲むような日々の練習が必要となる。
確かにそれはけん玉だけに言える話ではなく、剣技であったりその他諸々の事柄に通じる話であろう。
『~~♪』
ぽろん。ぽろろん。
いつの間にか、ギヴもくるりと一回転して同意を示す。アッすっかりほだされてますよ!
「毎日新たな発見のある私は幸せ者です、ふふ!」
そんなギヴの様子に、珠稀もくるりと一回転で返すと――熱い投げキッスだ!
「――決して過去の記憶がないから本日の話をしてるわけではありませんよ、ふふ!」
『……♪』
ぽろろん……。オルゴールの音色が再び悲しげになった。あああたまちゃん、ギヴさんがなんか気の毒そうな雰囲気でそっち見てますんで適当に相手してやって下さい!
「ふふ、承知しました! さぁ、私の青薔薇に愛されてください…! ふふ…!」
状況理解度の高い珠稀さん、持ち手に薔薇の刻印が入った「黒革の長鞭」をひとつ大きく振るったと思うや、鞭の先端から青薔薇の花弁に見る見る変えていき――あっという間にギヴを包み込む!
無数の青薔薇の花弁は、ギヴの身体を切り裂き、着実に傷つけていく。
『……♪』
「甘い香りと共にお眠りください、ふふ!」
遂にギヴがその可憐な膝をつく。舞姫への攻撃は、着実に通っていた。
成功
🔵🔵🔴
セリオス・アリス
【星華】
◎
また次から次へと
人が眠りに落ち賑やかが消えていく様に寂しさを覚える
つーか…素敵な思い出の一部が動いて戦っちゃダメだろ
ぶっちゃけメリーゴーランドなんざただ回るだけだろって思ってたけど
景色を共有しながらぐるぐると
上下に動く馬の固さも何だかおかしくて楽しくて
また乗りたいと思った
次はマリアと同じ馬でも
カデルとどっちの馬がかっこいいか勝負してもいいし
アレスと同じ馬車に乗るのも楽しそうだ
そう言うわけだから大人しく元のメリーゴーランドに戻ってもらおうか!
【青星の盟約】を歌い剣で『2回攻撃』
まだまだこっそり買ったコイツらへの土産を渡したりっつー楽しい事が待ってんだ
邪魔すんな!
瀬名・カデル
【星華】
◎
遊園地に来ている人達が次々寝ちゃってるんだよ
あなたがここで一騒動を起こそうとしてる怪人さんなのかな
素敵なメリーゴーランド、素敵な思い出を哀しみの糧にするわけにはいかないんだよ…!
そう、ボクね今日、すごく楽しかったよ
遊園地に来て、
記念のメダルもらって、
セリオスと対決もしたり…
マリアやアレスとジェラート食べたり!
みんなと一緒に空を飛んで、
初めてのことがいっぱい出来たんだよ…!
(みんなのお話にうんうん頷いて)
アーシェが待っているから
ここで夢は見ていられないんだ
素敵なお話しとお土産を沢山抱えて帰らなきゃ
「玩具の行進」を発動
兵隊さんたち、もうちょっとだけ手伝って!
アレクシス・ミラ
【星華】
アドリブ◎
人の気配が消えても動き続ける遊園地に寂しさを覚える
まさかメリーゴーランドが…
…マリアさんと乗ったそのメリーゴーランド、気に入ってたんだ
木馬の動き、廻る景色
また乗りたいとも思っていた
ああ、今度は馬車もいいね
セリオスとカデルさんが連続で乗ったジェットコースターの速さも
観覧車から見る景色も
皆で食べたジェラートも
…正直に言うと、だ
その…実は僕も内心はしゃいでいたんだ(ちゃっかり土産も買ってる)
照れを誤魔化すように目を逸らす
だから…今日はとても楽しかった
この光の景色を観覧車から見たら綺麗だろうね
僕も光を以ってお相手いたそう
【天星の剣】を流星群の如く放つ
さあ…夢が滅びゆく運命を変えようか
マリアドール・シュシュ
【星華】
◎
(楽しい想い出で創られた器…まるで己を映す鏡のよう
事実は似て非なるもの
真実は星芒の眸の中へ)
素敵な夢に抱かれ永久の眠りへ誘う
それは誰も傷つかず幸せだと
本当に言えるかしら
カデル達の楽しい事を聞いて微笑
宝石が一層煌く
アレクシスと一緒にメリーゴーランドに乗れて楽しかったの!
セリオスとも乗りたいわ
観覧車から見た景色は本当に綺麗だったのよ!
今度は一緒に夕焼け時を見ましょう
ふふ、カデルと食べたジェラート美味しかったわ
お土産に可愛らしいゆたんぽも買えて
きらきらが沢山見つかったわ
マリアね、今日の事は忘れないのよ
絶対
大事にするわ(メダルに触れ
【茉莉花の雨】使用
咲き馨る旋律で敵を水晶花で埋め尽くす
お休み
●すてきなおもいでを~【せいか】のみなさん
アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)たちが目指すのは、まだ日も高いうちに皆で楽しんだ、あのメリーゴーランドがあった場所。
人の気配が消えてもなお動き続ける遊園地の景色を横目に大通りを駆け抜けながら、寂しさを覚えるアレクシス。
(「まさか、メリーゴーランドが……」)
自分たちの素敵な思い出となったアトラクションが、人に害なす存在と化そうとは。無意識に歯噛みすると、自然と足早になるのだった。
――どさり。
同じく駆けるセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)の横で、今まさに一人の来園客が崩折れるようにその場に倒れ込んだ。
(「また、次から次へと
……!」)
助け起こしてやりたいが、元を断つことが先決だ。そう知るが故に、今はメリーゴーランドへと急ぐ。
日中の、喧騒とも言えるほどの賑やかさはすっかりどこかへ行ってしまった。アトラクションもそうだが、今は夜景をイルミネーションが彩っている。それを見て歓声を上げる人々の姿があるはずなのにと、セリオスはアレクシス同様寂しく思う。
(「つーか……素敵な思い出の一部が動いて戦っちゃダメだろ」)
それな! 早く何とかしてやりましょうね!
そうして瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)とマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)も頑張って駆けた先には、自分たちが昼間見たものとは異なる光景が広がっていた。
「……あなたが、ここで一騒動を起こそうとしてる怪人さんなのかな」
カデルがその愛らしい顔を精一杯険しくして投げかけた言葉の先には、頭部がまさしくメリーゴーランドをしたバレリーナの異形の姿。その代わり、自分たちが昼間に楽しんだ大きなメリーゴーランドの姿は、どこにもない。
『~~♪』
ぽろん、ぽろろん。ぽろろろん。
まるで応えるかのように、オルゴールの音が響き渡る。同時に、四人の脳髄がぐらりと揺さぶられるような感覚に襲われる……!
「……っ!!」
(「遊園地に来ている人達が次々寝ちゃってるんだよ」)
片手を額に添えて必死に内側からの衝撃に耐え、カデルは怪人に向き直る。
「素敵なメリーゴーランド、素敵な思い出を……哀しみの糧にするわけにはいかないんだよ……!」
懸命にギヴに向けて言うカデルだが、思わず足がよろめいてしまう。その時だった。
強く言い放ったカデルを、後ろからそっと支える手があった。――マリアドールだ。
(「楽しい想い出で創られた器……まるで己を映す鏡のよう」)
マリアドールはカデルを励ますように支えつつ、その肩越しにギヴを見つめ、思う。
(「事実は似て非なるもの、真実は星芒の眸の中へ」)
たのしいことしかおぼえていないじぶんは、めのまえの「あれ」と、なにがちがうのかしら?
――今は、考えまい。為すべきことは、はっきりしているのだから。
「素敵な夢に抱かれ永久の眠りへ誘う、それは誰も傷つかず幸せだと――本当に言えるかしら」
ねえ? と友の顔を見回すマリアドールに、口々に返ってくる答えがあった。
「ぶっちゃけメリーゴーランドなんざただ回るだけだろって思ってたけど」
最初に、ちょっとぶっきらぼうに言ったのはセリオスだった。景色を共有しながらぐるぐると、上下に動く馬の固さも何だかおかしくて楽しくて。
「……また乗りたいと思った」
あの時はアレクシスと競うように乗ったが、次はマリアと同乗しても良いし、カデルとどちらの馬がカッコいいかを勝負しても楽しそうだ。ああ、アレスと同じ馬車に乗るのもいいな!
セリオスの夢は尽きないが、そろそろ話はアレクシスの番となる。
「……マリアさんと乗ったそのメリーゴーランド、気に入ってたんだ」
木馬の動き、廻る景色。また乗りたいとも思っていた。
そうして、セリオスの言を耳にすると、
「ああ、今度は馬車もいいね」
と、柔らかに笑んでみせたりして。
「セリオスとカデルさんが連続で乗ったジェットコースターの速さも、観覧車から見る景色も、皆で食べたジェラートも」
そこで思い切って何かを告げようとしたアレクシスを、図らずもカデルが上から被せてしまう。勢いってありますからね、しょうがないね!
「そう! ボクね今日、すごく楽しかったよ! 遊園地に来て、記念のメダルもらって、セリオスと対決もしたり……マリアやアレスとジェラート食べたり!」
カデルは両手を大きく回すことで全力の感情表現をする。ぶんぶん。
「みんなと一緒に空を飛んで、初めてのことがいっぱい出来たんだよ……!」
(「空を飛ぶ……ふふ、観覧車のこと、ね」)
マリアドールが内心納得し、皆の楽しかった思い出話に口許に手を当てて微笑む。華水晶が夜の遊園地にキラキラと輝く様は、イルミネーションにも負けず劣らず美しい。
「アレクシスと一緒にメリーゴーランドに乗れて楽しかったの! セリオスとも乗りたいわ」
「マジか!」
「本当よ、だからこの後叶うことなら一緒に乗りましょう?」
途中でセリオスに声をかけつつ、言葉を紡ぎ続けるマリアドール。
「観覧車から見た景色は本当に綺麗だったよの! 今度は一緒に夕焼け時を見ましょう」
ふふ、カデルと食べたフランボワーズとキウイのジェラート、美味しかったわ。そう思いながらカデルの方を見ると、カデルも皆の話に同意するかのようにうんうんと頷いていた。
「アーシェが待っているから、ここで夢は見ていられないんだ。素敵なお話しとお土産を沢山抱えて帰らなきゃ!」
「そうね、お土産に可愛らしいゆたんぽも買えて、きらきらが沢山見つかったわ」
アーシェとは、カデルの大切なお友達。今日はお留守番をしているけれど、きっとカデルの帰りを楽しみに待っているはず。
そしていつの間にか、しっかりお土産を買ったのか。しかもそのゆたんぽは、このWCLでも一番の人気アイテム……!
「マリアね、今日の事は忘れないのよ。絶対、大事にするわ」
そう言ってマリアドールが触れるのは、入園時に記念にもらったWCL特製メダル。
ギヴには表情という概念がないため、直接その胸中をうかがい知ることはできない。
だが、先程から響くオルゴールの曲調に一貫性がないのは、心が乱れているためか。
ぽろ、ん。ぽろろろ、ん。ぽろ、ろ、ん。
「……正直に言うと、だ」
ちょっと気恥ずかしそうに口を開くアレクシスの手には、WCLのマスコットキャラクターが描かれたビニール袋が。ちゃ、ちゃっかりお土産買ってるー!
「その……実は僕も内心はしゃいでいたんだ」
照れてるのを誤魔化すように目を逸らしてもダメー! その手のお土産は何ー!
「だから……今日は、とても楽しかった」
「よしアレスよく頑張った! そう言うわけだから大人しく元のメリーゴーランドに戻ってもらおうか!」
照れが天元突破しそうなアレクシスをフォローするようにセリオスが肩に手を置いてずいと一歩前に出る。
『……♪』
ぽろろろん、ぽろろん。
それを合図に、戦いが始まった。
先手を取ったのはマリアドール、耳元を飾る白いジャスミンのイヤリングの正体は魔導蒸気機械の拡声器。これがユーベルコード【茉莉花の雨(ヤースミーン)】の力で咲き誇る水晶の花弁と化す――。
「ハルモニアの華と共に咲き匂いましょう舞い踊りましょう――さぁ、マリアに見せて頂戴? 神が与えし万物を」
『……♪』
ぽろろん、ぽろん。
煌めく水晶の花弁は、その美しさとはうらはらに容赦なくギヴの身体を傷つけていく。悲しげな音色も響こうというもの。
数で押すなら、と続いたのはカデルだ。バッと右手を高々と掲げると、心強い味方を召喚する。
「兵隊さんたち、もうちょっとだけ手伝って! 【玩具の行進(マーチング・トイ・ソルジャー)】!」
元気良い詠唱と共に中空から現れたのは、総勢145体のクラシカルなおもちゃの兵隊さんの姿だ。黒い山高帽に赤い軍服と言えばイメージしやすいだろうか。
「いっけー……っ!!」
掲げた右手を思い切りギヴ目がけて振り下ろすさまは、あたかも指揮官さながらだ。カデルの号令を受けて、兵隊さんたちがいっせいにギヴにまとわりついてワーワーする!
『~~♪』
ぽろん、ぽろん。
アッ、蹴散らされてます! でも着実にダメージも与えてます! 数の暴力ってすごい! 兵隊さんがんばえー!
戦場はイルミネーションに包まれて、おもちゃの兵隊さんの奮戦ぶりもきらきらと照らされている。
アレクシスはそれを申し訳なくも微笑ましく見やりながら、ふと周りの景色に目を向ける。
(「この光の景色を、観覧車から見たら綺麗だろうね」)
――ならば、僕も光を以てお相手いたそう。
隙を見せているギヴの背中を狙うのは少々躊躇われたが、敢えてそれを外す義理もなく。アレクシスはすいと柄に赤い石が埋め込まれた十字剣を抜くと、眼前に縦一文字に構えて瞳を閉じて静かに念じる。
「――星を護りし夜明けの聖光、我が剣に応えよ。【天星の剣(ディアトン・アステラス)】」
詠唱を口ずさむと同時、青の双眸を見開く。それを合図として、天から文字通り――そう、具体的な本数を述べるのが無粋なまでの、流星群のような聖なる光の剣が、容赦なくギヴの身体を貫いた!
『――』
一瞬の静寂、絶え間なく鳴り響いていたオルゴールの音が、一瞬、沈黙する。
光の剣に、まるで磔刑にされたかのようなギヴの姿に――しかしセリオスだけは油断しなかった。
「まだだ!」
ぴ、ん。
ギヴが、震える手をこちらに伸ばそうとしていた。一本、また一本、アレクシスの光の剣を引き抜いていくその姿は――実に凄絶で。
「しぶってえ!」
「青星」の名を冠する鉄塊剣を横一文字に構えると、魔力を行き渡らせるように強く念じつつ、ユーベルコードを発動させる。
「星に願い、鳥は囀ずる。いと輝ける星よ、その煌めきを我が元に――さあ歌声に応えろ、力を貸せ! 【青星の盟約(オース・オブ・ディーヴァ)】!」
純白の輝きが、極限まで高まった。満ちた攻撃力に任せて振るわれた剣は、初撃で袈裟斬りに、返す刀で胴を横薙ぎにする。
「まだまだこっそり買ったコイツらへの土産を渡したりっつー楽しい事が待ってんだ! 邪魔すんな!」
「「「えっ」」」
「あっ」
勢いで、サプライズにしておこうと思っていた秘密を自ら暴露してしまうセリオスとそれに素直に驚く友人たち。しまったと口をおさえるセリオスだったが、時すでに遅し。
一方のギヴは、しこたまメッタメタにされて、よろめき座り込んでしまっておりました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
【狼犬豚兎】
ギヴさんは、知ってる
何度か対峙した事があるけど
素敵な思い出を見せてくれる
眠りの先に待つ未来を考えなければ…
悪い怪人じゃなさそうなんだけどね
思い出かぁ…
囚われていた場所から紫崎君に助けてもらった時に見た星空
皆の元に来て、夏輝君と諒太君が歓迎会開いてくれて
ちょっとでも恩返ししようって家事覚えて
初めて褒められた時はほんとに嬉しくて
毎日誰かが傍に居てくれる
遊んでくれる
守ってくれる
僕に笑顔をくれて
僕も誰かの役に立てて
僕の居場所はここにあるって
これ以上の幸せは贅沢だよ
だから、ごめんね
【指定UC】でギヴさんに斬撃を与えると同時に
火種として身体中に張り付かせる
…さ、さっき言ったことは全員忘れてね…
紫崎・宗田
【狼犬豚兎】
楽しいだとか幸せだとかは、俺の柄じゃ無ェんだがな…
俺の呟きにすかさず茶々を入れる夏輝には拳骨
まぁ…初めは他人との馴れ合いなんざ興味も無かったし
チビの事拾ったのも偶然ではあるんだが
正直絆されちまったっつーか
こいつら揃いも揃って
どんだけ素っ気なくしても諦めずに関わって来るから負けたっつーか…
その結果の今なわけだが
鬱陶しいと思う時期もあったが
こいつらとの生活に慣れちまったらまぁ…なんつーか…
うるせぇ毎日も、悪かねぇよ
顔を背けて言いつつ
夏輝にはもう一発拳骨入れとく
戦闘時は【指定UC】+炎を宿した武器の【属性攻撃】で
夏輝が引火させた花弁の炎も巻き込みながら
火力増し増しで【薙ぎ払い】攻撃
小林・夏輝
【狼犬豚兎】
よっしゃ、じゃあ俺らの思い出発表会ー!
1人1個絶対言えよ!
俺はねぇ
宗田が初めて返事してくれた時とか
澪に好物教えたら頑張って覚えてくれた時とか
諒太と一緒にゲームしたり
後は今日みたいに大人数で出掛ける時な!
諒太の食費問題はあるけど思い出は永遠だし
ぐえっ、ちょ、わかったから抱き着くな死ぬ!
確かに楽しそうな紫崎って気持ち悪…ってぇ〜暴力反対ー!
なんだよ素直じゃねぐへえっ(撃沈)
澪きゅんマジいい子、しゅき(キュン)
諒太はわかりやすいなー(笑)
澪が花を仕込んだ隙に【指定UC】が先攻
【ダッシュ】で急接近
バットで頭部に1発入れ即変形
ロケランの【クイックドロウ、零距離射撃】で吹っ飛ばし+花弁に引火
金子・諒太
【狼犬豚兎】
素敵な思い出かぁ
そんなの、わざわざ見せてもらわなくても、いっぱいあるだろー
夏輝ぃー、僕も、夏輝とゲームするの楽しいぞー!(ぎゅう)
僕はね、夏輝が初めて奢ってくれた時とかー
一緒に外食する時とかー
澪の作ったご飯、皆で食べる時とか
食べれればなんでもいいんじゃないぞ
1人で食べてた時より、夏輝達と知り合って
皆で食べるようになってからの方が、美味しいもん
やっぱり、揃ってる事、大事だよなー
うわぁ、紫崎の拳骨、いたそー(他人事)
夏輝、僕、宗田、澪の順に発表
終わったら澪の謝罪を合図に
初手で【指定UC】
何故か僕と同じぽっちゃり体型なヒーロー達の一斉攻撃で
敵を翻弄して、澪のための隙作り
●すてきなおもいでを~つゆりんとゆかいななかまたち
既に駆けつけた猟兵たちから、何度も手痛い攻撃をぶつけられているはずだった。しかしそれでも、ギヴはオルゴールの音色を止めずに回り続ける。
何故か。きっと問うても詮無きことなのだろう、彼女がオブリビオンである限り。
そうして、猟兵たちは次々と駆けつけ続ける。死の眠りへと誘う自鳴琴の音色が絶えるまで、何度でも。
(「ギヴさんは、知ってる。何度か対峙した事があるけど」)
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、素敵な思い出を見せてくれる怪人の姿を捉え、これが何度目の邂逅になるだろうかとふと思う。
(「眠りの先に待つ未来を考えなければ……悪い怪人じゃなさそうなんだけどね」)
「素敵な思い出かぁ。そんなの、わざわざ見せてもらわなくても、いっぱいあるだろー」
直球で正論を叩きつけるのは金子・諒太(戦える肉団子・f12789)。稀に例外はあるかも知れないが、大多数の人は語って聞かせられる思い出話というものをひとつやふたつは持っているものだろう。多分。きっと。
「よっしゃ、じゃあ俺らの思い出発表会ー! 一人一個絶対言えよ!」
元気よく右の拳を上げてイエーイと宣言した小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)に、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)があからさまに渋い顔を向けるが夏輝はお構いなし。強い。
言い出しっぺの法則とばかりに、まずは夏輝がウキウキと語り出す。輝く瞳はまさに小動物を思わせ――え? 犬? 珍獣? どっち?
「俺はねぇ、宗田が初めて返事してくれた時とか」
無視され続けてた時期があったんだ……。
「澪に好物教えたら頑張って覚えてくれた時とか」
あーそれはキュンと来ますねえ!
「諒太と一緒にゲームしたり」
「夏輝ぃー、僕も、夏輝とゲームするの楽しいぞー!」
ぎゅう。自分の話題が出た途端に超反応した諒太が歓喜のハグを発表中の夏輝にかます。超重量級のハグは、控えめに言って、苦しかった。
「ぐえっ、ちょ、わかったから抱き着くな死ぬ!」
諒太の愛が主に物理的に重い。何とか引き剥がし呼吸を整えると、夏輝は続ける。
「……あ、後は今日みたいに大人数で出掛ける時な!」
諒太の食費問題はあるけど思い出は永遠だし、と言いながら夏輝はなんやかんやでいっぱいあるなあと思う。
はい次諒太な、と夏輝から話を振られた諒太が、ワガママボディをゆっさりさせるとそうだなあと口を開く。
「僕はね、夏輝が初めて奢ってくれた時とかー」
あああの夏輝くんのお陰で難を逃れたっていう、無銭飲食はダメですよ!
「一緒に外食する時とかー」
大丈夫? 人の金で食べる焼肉は美味いとかしてません?
「澪の作ったご飯、皆で食べる時とか」
食ってばっかじゃねえか!!
「食べれればなんでもいいんじゃないぞ、一人で食べてた時より、夏輝達と知り合って皆で食べるようになってからの方が、美味しいもん」
ハッ……。
『……♪』
ぽん、ぽろん。ぽろろん。
ギヴも心なしか同意しているかに見えるのは気のせいか、軽やかな音と共にくるくると回っている。
この思い出自慢大会は、癪ではあるが、確実に効果を示しているらしい。そう感じた宗田は腹を括るとぼそり呟く。
「楽しいだとか幸せだとかは、俺の柄じゃ無ェんだがな……」
「確かに楽しそうな紫崎って気持ち悪……」
ごつん☆
「ってぇ~! 暴力反対!」
「うわぁ、紫崎の拳骨、いたそー」
「実際痛いっつーの!」
涙目で拳骨をお見舞いされた頭部を抱える夏輝と、それを完全他人事モードで見やる諒太。そんな二人を尻目に、しゃーねーなという顔で重い口を開く宗田。
「まぁ……初めは他人との馴れ合いなんざ興味も無かったし、チビの事拾ったのも偶然ではあるんだが、正直絆されちまったっつーか」
貴方ねえ! 澪くんが宗田くんと出会ったことでどれだけ救われたかご存知ない!? ご存知!? ならばよし!!
「こいつら揃いも揃ってどんだけ素っ気なくしても諦めずに関わってくるから負けたっつーか……」
その結果の今なわけだが、と三人の仲間たちを一見素っ気ない素振りで一瞥する宗田。
「やっぱり、揃ってる事、大事だよなー」
しかしそこで目が合った諒太ににっこり同意され、すぐに照れくさくなり視線をギヴの方に向けてしまう。
「鬱陶しいと思う時期もあったが、こいつらとの生活になれちまったらまぁ……なんつーか……」
それでもやっぱり、結局三人の方を見ずにはいられないのはどうしてか。
「……うるせぇ毎日も、悪かねぇよ」
すぐに、顔を背けてしまうくせに。
「なんだよ素直じゃねぐへえっ」
おまけに、茶々を入れてきた夏輝には顔も見ずに裏拳をクリーンヒットさせるくせに。
そんな様子をふふっと微笑みながら眺めていた澪が、自分の番かなと一歩進み出る。
「思い出かぁ……。囚われていた場所から紫崎君に助けてもらった時に見た星空とか」
それはとても、印象的だったに違いない。第二の人生の幕開けと言っても過言ではない瞬間だっただろうから。
「皆の元に来て、夏輝君と諒太君が歓迎会開いてくれて、ちょっとでも恩返ししようって家事覚えて、初めて褒められた時はほんとに嬉しくて」
その気持ちだけでも充分だったろうに、実際に行動として気持ちを表してくれるだなんて。それはとても、互いにとって幸せな瞬間だったろう。
ぎゅっと胸の前で両手を握りしめる澪の姿に、ギヴは何を思うのか、メロディーを奏で続ける。
これは、敵対の意思ではなく。心からの感謝として。澪は言葉を紡ぎ続ける。
「毎日、誰かが傍に居てくれる。遊んでくれる。守ってくれる。僕に笑顔をくれて、僕も誰かの役に立てて、僕の居場所はここにあるって――これ以上の幸せは贅沢だよ」
「澪きゅんマジいい子、しゅき……!」
はい地の文の台詞が夏輝きゅんに取られましたよ! ガチファンの底力を見たよ!
「――だから、ごめんね」
ちょっとだけ寂しげに微笑んだ、澪のその笑顔と言葉が、合図だった。
諒太がその巨躯からは想像もつかぬ俊敏さで、すかさず前に出ると【バトルキャラクターズ】を発動させ、合計24体のぽっちゃり体型なゲームヒーローを敢えて合体させずに散開させてギヴを取り囲み、四方八方から翻弄する。
『……♪』
ぽろん、ぽろん。
どこか鬱陶しげに、思うように身動きが取れずにいるギヴ目がけて、今度は澪がユーベルコードを放つ。
「香り高く舞い遊べ――【Orage de fleurs(オラージュ・ドゥ・フレア)】」
す、と指先をギヴに向ければ、どこまでも追いかける無数の花嵐がギヴの身体を切り裂いていく。逃れようにも、諒太のぽっちゃりヒーローがまとわりついてかなわない。
澪が花弁を纏わりつかせた隙に、今度は夏輝が動いた。諒太に続いて【バトルキャラクターズ】を召喚し先行させると、自らも地を蹴りダッシュでギヴに急接近。
おもむろに振りかざした「カラクリバット」でメリーゴーランドの頭部に容赦ない一撃をぶちかますと、振り抜いた勢いで手元に戻ってきたバットにガチャリと「R-L」なる追加パーツを装着。何とこれでロケットランチャーに変形するのだから恐ろしい。
「ぶちかませぇ!!」
ズドン! 至近距離での一撃は盛大な反動を伴い、夏輝の身体をギヴから遠ざける。それが幸いした。ロケットランチャーの一撃が澪の撒いた花弁に引火したのだから、即座に退避していなければかえって危険だった。
そのまま捨て置いても良かったかも知れない。だが、宗田はそれを許さなかった。
「破殲」の名を冠した漆黒の斧に【ブレイズフレイム】の炎を宿し、消し炭になれとでも言わんばかりに炎の追撃を試みる。
「――眠んのは、お前の方みてぇだな」
『……♪』
ぽろ、ん。
轟々と燃え盛る炎が横薙ぎに払われ、ギヴをしたたかに打ちのめす。
派手に地面を転がったギヴは、しばらく起き上がることができずにいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加。
喜びを与えるとて、手段や結果を考慮してないんじゃ意味ないんじゃないかね。
いいだろう、本当の喜びってものを教えてやるよ。
ここ半年、奏と瞬と色んな体験をしてきた。雪遊び、餅つき、花見、端午の節句のお祭り、家族水入らずで温泉もはいったねえ。どの思い出も家族3人で力を併せ、分かち合ってきた思い出だ・・・それに最近これ(フルエタニティリングに手を添えて)をウェディングドレスと共に子供達に贈られてねえ。分ったかい?ただ意味もなく与えることの喜びの無意味さを。
じゃあ、少しおとなしくして貰おうか。竜牙で敵を斬り裂くよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
ギヴ、与える、ですか。与えるだけに終始していて喜びの尊さや価値を全然理解してないようで。本当の喜びを、突きつけてやりましょう。
よく食べるのが幸福な私には、家族全員でお菓子を手作りしたこと、お餅やお団子やお店でお蕎麦をたべた事、花見でお弁当を食べた事などが思い出に残ってます。・・・何より、桜の木の下で瞬兄さんと将来の約束をした時の胸の高まりは今も残っています。
分かりましたか?喜びとはただ無意味で無分別に与えるだけで全く意味が無いんです。しばらく、おとなしくしていてください。信念の拳で思いっきり殴ります。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
自覚無き悪人とはこういう人の事をいうんでしょうかね・・・他人の事情も考えず、喜びを押し付けるだけとは・・・いいでしょう。毅然として対抗しましょう。
僕達家族は音楽一家でもあります。母さんは歌、響はダンス、僕は楽器演奏ですね。精霊との共演体験もありますし、助けた村での演奏も楽しかった。桜を蘇らせたこともありますし、先月の他の猟兵さん達との音楽フェスティバルも大成功でした。
どの音楽もただ演奏の機会を与えられるだけではなく、皆と心を併せて初めて素晴らしい音楽が生まれます。なので、ただ与えるだけの貴女は真っ向から否定させて頂きます。氷晶の槍で突き刺します。
●すてきなおもいでを~まみやさんち
――こんなはずではなかった。何故、なぜ、皆、幸せな思い出の内にとどまって穏やかな終わりを受け入れようとしないのか。わからない。ワカラナイ。
先程から猟兵たちは苛烈な攻撃を自分に与えてくる。幸か不幸か、そう簡単に斃れる自分ではないが、とはいえ痛いものは痛い。
それでも、自分は踊らねばならぬ。奏でねばならぬ。自分は、そういうモノだから。
くるくる回るギヴを視界に捉えた人影が三人、臨戦態勢に入る。ギヴも、くるりと一回転してそちらへ向き直った。
「ギヴ、『与える』、ですか。与えるだけに終始していて、喜びの尊さや価値を全然理解してないようで」
――本当の喜びを、突きつけてやりましょう。真宮・奏(絢爛の星・f03210)が口火を切る。
「自覚無き悪人とはこういう人の事をいうんでしょうかね……。他人の事情も考えず、喜びを押し付けるだけとは……」
――いいでしょう、毅然として対抗しましょう。神城・瞬(清光の月・f06558)が奏の隣に並び立つ。
「喜びを与えるとて、手段や結果を考慮してないんじゃ意味ないんじゃないかね」
――いいだろう、本当の喜びってものを教えてやるよ。真宮・響(赫灼の炎・f00434)がそんな二人の後ろに頼もしく構える。
『~~♪』
ぽろろん、ぽん、ぽろん。
ほんとうのよろこび? それはなあに? 興味深げにギヴは回る。
「僕達家族は音楽一家でもあります。母さんは歌、奏はダンス、僕は楽器演奏ですね」
瞬が自分たちを紹介するかのように説明する。旅芸人の一座を名乗れそうな組み合わせだ。
「精霊との共演体験もありますし、助けた村での演奏も楽しかった。桜を蘇らせたこともありますし、先月の他の猟兵さん達との音楽フェスティバルも大成功でした」
朗々と積み重ねてきた数々の経験を語る瞬の脳裏に浮かぶのは、当時の光景。特に直近の思い出でもあるアルダワ魔法学園での音楽フェスティバルでは、即興の大規模セッションとしては最高の出来だったと今でも思い出すだに興奮が蘇る。
故に。瞬は思うのだ。
「どの音楽もただ演奏の機会を与えられるだけではなく、皆と心を併せて初めて素晴らしい音楽が生まれます」
――なので、ただ与えるだけの貴女は真っ向から否定させて頂きます。
そう強い意思を赤と金の瞳に秘めて、瞬は隣の奏に目配せを送る。それを受けた奏が、引き受けたとひとつ頷き言葉を繋ぐ。
「よく食べるのが幸福な私には、家族全員でお菓子を手作りしたこと、お餅やお団子やお店でお蕎麦を食べた事、花見でお弁当を食べた事などが思い出に残ってます」
は、花より団子だった――! 瞬と響のみならず、ギヴまでもがズルっと転びそうになる。ま、まあでもいっぱい食べるのは大切なことですからね!
「……何より、桜の木の下で瞬兄さんと将来の約束をした時の胸の高まりは今も残っています」
ぽろん。
ギヴがひときわ高音をひとつ、奏と瞬の顔を交互に見た――ような気がした。何というか、圧がすごい。食いつきというか、明らかに興味を持たれている。
「あ、改めて言うほどの事じゃないですから! あんな勇気、もうそうそう振り絞れるようなものじゃないんです!」
もうひとりの当事者である瞬はといえば、助け舟を出したものかどうしたものかと迷っていたが、これなら大丈夫そうかなと差し出しかけた手をそっと引っ込める。
「わ、分かりましたか!? 喜びとは、ただ無意味に無分別に与えるだけでは全く意味が無いんです。しばらく、おとなしくしていてください!」
そう言っておもむろに拳を振り上げた奏を、まあちょっと待ちなと後ろから母である響がストップをかける。
「響母さん……」
「アタシもね、ちょっとアイツに言ってやりたい事があるのさ」
そう言うと、響はウインクひとつ、ギヴに向かって一歩踏み出した。
「アタシもね、ここ半年、奏と瞬と色んな体験をしてきた」
それは、雪遊び。餅つき。お花見。端午の節句のお祭りに至るまで。
「そうそう、家族水入らずで温泉にも入ったねえ」
家族……水入らず……!? あ、ああ、湯帷子着用ですか、びっくりしました!
「どの思い出も家族三人で力を併せ、分かち合ってきた思い出だ……それに」
そこで一旦言葉を切った響は、すいと左手をかざす。薬指のあたりがイルミネーションの光を浴びてキラリと輝き、ギヴの興味を惹いた。ぽろん、と音が鳴る。
「最近『これ』をウェディングドレスと共に子供達に贈られてねえ」
愛おしげに左手を胸元に当てると、もう片方の手を左手薬指に嵌まるフルエタニティリングにそっと添える響。
――駆け落ちで結婚をした響は、正式な結婚式を挙げていない。そんな母に、今からでも遅くはないと、奏と瞬はとある機会を用いてサプライズとしていわゆるブライダルフォトをプレゼントしたのだ。
それは、最高の贈り物。一生忘れられない、キラキラの思い出。それを知るからこそ言える、そう――。
「分ったかい? ただ意味もなく与えることの喜びの――無意味さを」
響が言葉を紡ぎながら、抜き放つのは「ブレイズフレイム」。それを見た奏が、今度こそ殴っていいんですねと力強く拳を構える。瞬の手には、氷の結晶を思わせる杖が。
「じゃあ、少しおとなしくして貰おうか!」
響の声を合図として、瞬が六花の杖を振るい氷の槍をギヴ目がけて突き立てれば、奏の強い信念を込めた一撃がメリーゴーランドの頭部をしたたかに打ち据え、仕上げとばかりに響の一閃がギヴの線の細い胴体を袈裟斬りにした。
『……♪』
ぽろろん、ぽろん、ぽろ、ん。
ああ、まぶしい。
このひとたちは、まぶしい。
このままでは、わたしが、きえてしまう。いや、いや、それは。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城島・冬青
【深青(f01300)くんと一緒】
遊園地の思い出を語ればいいんだね
今日も楽しかったんだけどさ
家族で来た時に
お父さんと一緒に絶叫マシンに乗ったんだけどさ
お父さん始めてだったみたいで降りた後に足が震えてて
お母さんに手を引いて貰って歩いてて…今でも思い出しても…ふふっ…
後はお化け屋敷で恐怖演出を考察したりお弁当をみんなで食べたり…遊園地は素敵な思い出が沢山だよ
深青くんの思い出は……えと…煩くして…ごめん…
そうだね
1人より誰かと一緒の方が楽しいよね!
戦闘はUC廃園の鬼を使用
刀を構え深青くんと息を合わせて斬りかかっていくよ
相手の攻撃は第六感で素早く感知出来るよう対応
ダッシュと残像を用いて回避に勤めるよ
壱季・深青
【お姉さん(城島・冬青・f00669)と一緒】
楽しかった思い出…いい思い出…今日お姉さんと一緒に…遊んだこと
お姉さん…思い出…素敵だね…でも、なんで謝るの?
遊園地…初めてだったから…いろいろビックリしたこと…あるけど
それでも…楽しかったって…また来たいって…思える
お姉さんと…一緒だったから…なのかも
誰かと一緒って…いいね
ジェットコースター…重力…最高(片手を上げる)
ファンタジーだけど…ホラー感も満載
さすが…オブリビオン
メリーゴーランド…触らないように…気を付ける
【野生の勘】【第六感】使って…攻撃に備える
さっきと同じ…【黒曜の導】「猩々緋」で…攻撃力を上げる
お姉さんと…息を合わせて…戦う、よ
●すてきなおもいでを~そよごとみお
猟兵たちは屈しない、まるで自分が奏でるオルゴールの音色が最初から耳に入っていないみたいに。
どうして、どうして。自分がしていることは、よいことのはずなのに。楽しい思い出だけに抱かれて眠ることは、すばらしいことのはずなのに。
『……♪』
ぽろん、ぽろろろん、ぽろん。
オルゴールは、まだ止まらない。猟兵もまた、立ち向かう。
メリーゴーランドが「あった」場所にたどり着いた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)と壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)の二人は、忽然と姿を消したメリーゴーランドの代わりに舞い踊る怪人の娘を視認する。
「いたいた、あいつに遊園地の思い出を語ればいいんだね」
「楽しかった思い出……いい思い出……今日お姉さんと一緒に……遊んだこと」
冬青と深青が互いの顔を見て口を開き、しかし冬青がちょっと待ってと唇に人差し指を当てる仕草で深青を軽く制する。
「今日も楽しかったんだけどさ」
そう言うなり、冬青はおもむろにギヴの方へ向き直ると両手を広げて語り出す。それはまるで、ミュージカルの一幕か何かのようで。
「――家族で一緒に来た時、お父さんと一緒に絶叫マシンに乗ったんだけど。お父さん初めてだったみたいで、降りた後に足が震えてて」
可愛い娘に格好良い所を見せようと頑張っちゃったのだろうか、微笑ましい話である。
「それで結局、お母さんに手を引いて貰って歩いてて……今でも思い出しても……ふふっ……」
お父さん! 文士でダンピールなお父さん! 娘さんの中で永遠の思い出になっちゃってますよ!
思い出し笑いを堪えきれない冬青の様子を見た深青も、つられて微笑んでしまう。
「後は、お化け屋敷で恐怖演出を考察したり」
それはつまり、お化け屋敷反省会というか何というか……冷静に分析しちゃうヤツですかね……? あそこの古井戸はあからさまに怪しかったからスタッフが出てくるだろうとかギミックがどうのとかそういう……? ち、知的……!
「お弁当をみんなで食べたり……遊園地は素敵な思い出がたくさんだよ」
冬青は父と母、それに兄と弟を合わせた五人家族だ。さぞ賑やかで楽しいひと時だったに違いない。そう、一人きりでは決して得ることのできない、素敵な思い出。
「お姉さん……思い出……素敵だね……」
「深青くんの思い出は……えと、……煩くして……ごめん」
「な、なんで……謝るの?」
ほんわかと話を聞いていた深青は、唐突に冬青から謝罪を受けて仰天する。ただし表情はあまり変わらない。
冬青としては主にうきゃーとかそんな感じの悲鳴を上げて、深青の記憶に一番のインパクトを与えてしまったことについて申し訳なさを感じた故のことだったのだが……。
それでも深青はかぶりを振って微笑む。
「遊園地……初めてだったから……いろいろビックリしたこと……あるけど、それでも……楽しかったって……また来たいって……思える」
「ホントに!? よかった……!」
「お姉さんと……一緒だったから……なのかも。誰かと一緒って……いいね」
ジェットコースター……重力……最高。そう呟くと、イルミネーションに彩られながらも今は誰も乗っていないアトラクションを見やって、深青は片手を上げた。
「……そうだね、一人より誰かと一緒の方が楽しいよね」
可愛い弟分に、楽しんでもらえて良かった。
お姉さんと一緒に、楽しい時間を過ごせて良かった。
互い無くしては有り得なかったひと時だ――ギヴには、決して与えることが出来ないものだ。
二人は佩いた刀に手をかけて構える。
「ファンタジーだけど……ホラー感も満載。さすが……オブリビオン」
「そ、そうだね……頭がメリーゴーランドしてるって、結構ホラーだよね……」
親指が鍔を押し上げ、ちゃきりと刀が音を立てる。
ギヴの出方を油断なく見極める二人だが、今のギヴは「無抵抗の相手にしか行動を起こせない」。
ならばと互いに頷き合うと、一気に刀を抜き放ち、息を合わせて斬りかかる――!
「――花髑髏の、真の姿をここに。【廃園の鬼】!」
「我が身纏いし烏羽は、黒曜の導にて彩を放つ――【黒曜の導】」
冬青はものすごい代謝と引き換えに得た力で、深青は「猩々緋」を憑依させた力で。
それぞれ全力をもって、交差するようにギヴを叩き伏せるように斬りつけた。
『……♪』
ぽろ、ん。ぽん、ぽろん。
どうしてかしら、なぜかしら。たのしいおもいでは、わたしのなかにだけにある。そのはずなのに。
いたい、いたい。
どうして、こんなにかなしいの?
――うらやましいと、おもってしまうの?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャック・スペード
我ながら遅過ぎる到着だが
閉園時間には間に合ったらしい
コレがメリーゴーランドか?
話に聴くより小さいが……ああ、怪人か
人々に喜びを与える舞姫とは
――お前は優しいオブリビオンのようだな
然し楽しい思い出か……困ったな
再起動されてからというもの、毎日が楽しくて仕方がない
此の目に映るヒトの営みや、彼等の豊かな感情はいつでも新鮮で
不器用なりに其の真似をして、ヒトらしく生きる事がタノシイ
だが一番は、偶にその人真似が受け入れられて
異形の身でありながらも仲間の輪に入れて貰えることだな
其の時がもっとも楽しいと感じる
戦闘は召喚した金の短剣で、先端に毒を滲ませ属性攻撃を
自分の力で幸せを掴みとるのもまた、楽しい事なんだ
山路・紅葉
🐰こ、今度は中から!?
🐺ええ、どうやら新手のようよ、急ぎなさいッ!
🐰う、うんっ!
🐺…あれが新手のようね…でも、今回はどうやら私の出番じゃなさそうよ
🐰ふぇっ…うん、頑張るよ…っ!
(二丁銃を撃ちつつ駆けまわる、援護射撃的な物になっても可)
今日の遊園地はとっても楽しかった!あ、それとそれと色々美味しかったよっ!
(どうやらあの後も色々と遊んで食べていた模様)
でもね…やっぱり一人よりみんなで遊んだ方が楽しいの
だから、私は皆の笑顔のあふれる場所を守る為に…
(撃ちつつ突撃)『Black Bite』!…独りよがりなあなたを倒すっ!『Black Breaker』!
皆を…起こしてっ!
※協力・アドリブ歓迎
インディゴ・クロワッサン
素敵だったり、楽しかったり、か
(ぶっちゃけ、思い出の類いとは無縁なんだよなー)
(猟兵に)なってからの記憶こそちゃんと覚えてるけど、猟兵になる以前の記憶が無い身としては、割と複雑だったり。
でも、まぁ。
「他の猟兵と協力してオブリビオンを倒したりする今の生活…実は結構気に入ってるんだよね。
だから、思い出の中で眠るなんて御免だね。…邪魔しないでくれるかな」(邪魔~以降は声のトーンが低くなる)(二対四翼の真の姿を解放)
【POW】
UC:黒剣舞踊 を攻撃力重視で使用。
【怪力】と【力溜め】、【気合い】【鎧砕き】【鎧無視攻撃】【捨て身の一撃】【串刺し】を重複発動させながら物凄い威力の一撃をお見舞いするよ!
●すてきなおもいでを~そっきょうきょく
突然だが「わくわくキマイラランド」は種族フリーで楽しめる施設である。フェアリーからウォーマシンまでドンと来い、不思議な力でなんとかしてくれるのだ。
――そう、今からでもまだ間に合うとグリモアベースから転送されてやってきたジャック・スペード(J♠・f16475)のような、全長267.1cmを誇る巨体でも、WCLは温かく迎え入れてくれる――はずだった。
今ジャックの眼前に広がる光景は、至る所に横たわったりもたれかかったりしながら醒めない夢の中に誘われてしまった来園客たちの姿と、見て楽しむものがほとんどいなくなってしまった空虚なイルミネーションの数々。
そんな中、微かにセンサーが捉えた機械仕掛けの音色を辿れば、奇っ怪な生体反応がひとつ感じられた。
「……我ながら遅過ぎる到着だが、閉園時間には間に合ったらしい」
舞台の幕はまだ降りてはいない、むしろジャックを待ちわびている。さあ急ごう、目指すはメリーゴーランドが「あった」所だ――!
一方で、壮絶な死亡遊戯……じゃなかったコマ回しを楽しんでいた山路・紅葉(白い兎と黒い犬・f14466)と相棒の織子も、いよいよ親玉が現れたことを察知していた。
「こ、今度は中から!?」
『ええ、どうやら新手のようよ、急ぎなさいッ!』
「う、うんっ!」
園内へと続く大通りを取って返せば、だんだん近づいてくるオルゴールの音。それを頼りに紅葉と織子は駆ける、駆ける。噴水を横切りジェットコースターのレールをくぐったその先には――。
いかなることか、大きな大きなメリーゴーランドは忽然と姿を消し、代わりに佇んでいたのは頭部がメリーゴーランドをした舞姫の怪人であった。
いち早くその場にたどり着き状況を把握したインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、怪人に聞かせる訳でもなく独りごちる。
「素敵だったり、楽しかったり、か」
(「ぶっちゃけ、思い出の類いとは無縁なんだよなー」)
はて困った、猟兵になってからの記憶こそきちんと覚えていれど、それ以前の記憶がインディゴにはない。いわゆる記憶喪失という状態だ。割と複雑な思いである。
(「でも、まぁ」)
そこで、背後から聞こえてくる足音と響く機械音とに、知れず口許が緩んだ気がした。
「――コレがメリーゴーランドか? 話に聴くよる小さいが……ああ、怪人か」
『あれが新手のようね……でも、今回はどうやら私の出番じゃなさそうよ』
「ふぇっ……うん、頑張るよ……っ!」
人影は二つ、なれど声は三人分。あれー不思議だなーとインディゴは思うも、まあこの界隈そういうこともあるよねで普通に流す。猟兵にはよくあることですね!
『~~♪』
ぽん、ぽろろん。ぽろん。
ギヴは、今度こそ自分のことを「受け入れて」くれるかも知れないとの期待をもってくるくる回る。オルゴールの音色も、心なしか元気を取り戻したかのようだ。
「人々に喜びを与える舞姫とは――お前は優しいオブリビオンのようだな」
グリモア猟兵は告げた。相手は何処まで行ってもオブリビオン、よって斃さねばならぬと。
しかし、それでも、ジャックはその「こころ」のままにギヴを「優しい」と評せずにはいられなかった。
ふむ、と顎に手を当てる仕草で、ジャックは思考回路をフル回転させる。
「然し楽しい思い出か……困ったな。再起動されてからというもの、毎日が楽しくて仕方がない」
一度は廃棄された身の上でありながら、縁あってたどり着いた英雄たちが闊歩する世界で第二の生を得たジャック。
アイセンサーに映るヒトの営みや、その豊かな感情はいつでも新鮮で。不器用なりにその真似をして、ヒトらしく生きることが――タノシイ。
『……♪』
ぽろろん、ぽろん。
ひとではないのに、たのしいとおもうの? よろこびをねがうこころが、あるの?
ギヴとは意思の疎通はかなわぬ。それでも、ジャックは訥々と続ける。
「……だが一番は、偶にその人真似が受け入れられて、異形の身でありながらも仲間の輪に入れて貰えることだな。其の時が、もっとも楽しいと感じる」
ぽろん、ぽん、ぽろろん。
オルゴールの音色が響く。異形の怪人がくるくる回る。
ああ、わたしがもとめたものは、もしかすると――。
かつん、と硬質な靴音がひとつ響いた。オルゴールの音色がかき消えるようだ。
「こんな風にさ、他の猟兵と協力してオブリビオンを倒したりする今の生活……実は結構気に入ってるんだよね」
インディゴだ。肩には黒い西洋剣が担がれている。そのまま靴音も高らかにジャックの隣まで歩み寄ると、ギヴに向けてすい、と黒剣――「Vergessen」を突きつける。
「だから、思い出の中で眠るなんて御免だね」
ここで言葉を切ったインディゴの気配が、明らかに変貌した。
「……邪魔、しないでくれるかな」
その声音は低く響き、ばさりと広がったのは二対四枚の翼。それは、インディゴの真の姿を示すものであり、敵対の意思を明確なものとするものであり。
ここで遂に物陰で様子をうかがっていた紅葉と織子が二丁一組のカスタムハンドキャノンを構えつつ、一回転しながら飛び出してきた。
挨拶代わりにと一発ずつお見舞いしながら、紅葉が叫ぶ。
「今日の遊園地はとっても楽しかった! あ、それとそれと、色々美味しかったよっ!」
「キミ昼間っからいたんだ、うらやましいなー」
夕方から参戦したインディゴが、放つ殺気はそのままにのんびりと紅葉を見る。
てへぺろしつつも紅葉はキッとギヴを見据えて言い放つ。
「でもね……やっぱり一人よりみんなで遊んだ方が楽しいの」
そう、例えば今度は、叶うことならば孤児院のみんなと一緒に遊びに来たい。
「だから、私は皆の笑顔のあふれる場所を守る為に……」
ガンガンガンガン!!! 二丁銃の反動に耐えつつ突撃する紅葉は、途中でおもむろに片方の銃を下げ、肩を突き出すようにする。
すると、突き出された肩口が突如黒犬――織子の頭部に変形したではないか。織子は紅葉の突撃の勢いに任せて、ギヴの胴体に全力で喰らいつく!
「……独りよがりなあなたを倒すっ! 【Black Breaker(ブラックブレイカー
)】!!」
織子はそのまま、喰らいついたギヴを振り上げるように高々と持ち上げると、思い切り地面に叩きつけた。
ギヴから口を離し、飛び退る織子と紅葉の二人と入れ替わるように進み出たのはジャックだった。
もう充分だろうか、とも思ったが、それでもギヴは起き上がってくるのでそうも言ってはいられない。
果たしてこの手合いに毒は効くだろうか、と思いながら召喚したのは、先端に毒を滲ませた金色の短剣だった。柄の部分にはスペードのスートが刻まれていた。
済まないな、と呟きつつ短剣を一斉に放つ。
「自分の力で幸せを掴みとるのもまた、楽しい事なんだ」
――お前に、この楽しみが理解できるだろうか。
身体中を貫く短剣から伝わる毒に苦しみながら、ギヴはそれでも屈しない。
「そうでなくっちゃ。さ、抗ってみせてね――【黒剣舞踊(マイオドルツミノアカシ)】」
インディゴがすらりと「Vergessen」を突きつけるや、ユーベルコードの発動で攻撃力が劇的に増した黒剣を一度大きく引き、強く力を溜めるようにぐぐっと構えると、裂帛の気合と共に我が身を顧みぬ強烈な突きの一撃をギヴに叩きつけた!
『……♪』
ぽろ、ん。ぽん。
黒剣を引き抜かれたギヴは支えを失い、ニ、三歩後ろによろめいたと思うや、遂に尻もちをついてしまう。
致命傷には、まだ至らないとは。だが、着実に心も体も、ダメージを負っているようだ。
猟兵たちの奮戦は、確実に戦況を良好なものにしていく――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
五百雀・斗真
◎
このオルゴールの音を聞いて眠ってしまった人達…
とても安らかで心地よさそうだね
あ…大田さんが心配そうに頬をつついてきてる
大丈夫だよ、大田さん
どんなに素敵な思い出を見せられても
思い出というのは、浸り続けるだけのじゃなくて
自分と向き合って進んでいく為の原動力だと思ってるから
そのまま夢の中へ堕ちていったりはしないよ
…最近こんな風に強く思えるようになったのは
先輩との思い出を振り返る事ができたのと
色んな人達と仔竜達との思い出ができたからなんだけどね
勿論、大田さんとの思い出も忘れてないよ
いつもたくさん助けてくれたり励ましてくれたり
ありがとうの気持ちでいっぱいだよ
帰ったらソルとルアと一緒に森で遊ぼうね
狭筵・桜人
楽しかったですねえ、遊園地。
懐かしいおもちゃで遊んだんです。
遊び方を教わってコマを回したり
トランプやけん玉でも遊びました。
スマホゲームが普及してハードゲームすら
若者離れしつつあるこの時代にアナログも悪くないなって思いましたよ。
……いやいやいや嗜虐趣味とかじゃないです。
イマドキ小学生だってこんなピュアな話しないでしょ。
コマが回ってトランプが神経衰弱して
けん玉が串に刺さっただけですって。ね?
でも今は楽しくなくなってしまいました。
なんでだと思います?
UC発動。
疑問の感情は与えやすくていいですね。
嫌いなんですよ。幸福の押し売りって。
人が嫌がることは喜んでやりますが
私の嫌がることをした奴はブチ殺します。
●すてきなおもいでを~とうまとおと
五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は、園内に響くオルゴールの音を頼りに歩を進めていた。その足元には、穏やかな顔で眠る来園客の姿がずらり。
「このオルゴールの音を聞いて眠ってしまった人達……とても安らかで心地よさそうだね」
斗真の言を肯定的なものとして捉えたのか、体内のUDC「大田さん」が不意にニュッと姿を現すと、その触手で主の頬をむにむにとつついてみせた。
「あ……大丈夫だよ、大田さん」
自分を心配してくれているのだとすぐに察した斗真は、そんな大田さんの触手にそっと触れながら声を掛ける。その間も歩みは止めず、目指すはメリーゴーランドだ。
ギヴ。楽しい思い出でできている、それだけならば素敵な存在。
「……どんなに素敵な思い出を見せられても、思い出というのは、浸り続けるだけのじゃなくて」
――それが今、遂に自分たちの眼前に姿を現した。
『~~♪』
ぽん、ぽろん。ぽろろん、ぽろん。
幻想的なオルゴールの音色の正体は、これまた絵本の中から飛び出してきたような――しかし、それ故にどこか狂気を孕んだ姿をした舞姫は、くるりくるりと回り踊る。
対する斗真は、強い眼差しで抗うように、意志を言葉に変えて言い放つ。
「――自分と向き合って進んでいく為の原動力だと思ってるから、そのまま夢の中へ堕ちていったりはしないよ」
その時、もう一人の猟兵の気配が増えた。
イルミネーションの煌めきの向こうから、ついぞ前に過ぎ去ったはずの春が帰ってきたかのような気配は、狭筵・桜人(不実の標・f15055)のものだった。
「楽しかったですねえ、遊園地」
「桜人くん!」
良く知ったその顔に、斗真が思わず声を上げる。相変わらずというか、桜人の表情からはその思考を読み取るのが難しい。飄々としている、そういう少年なのだ。
「いやあ、どうでしたか五百雀さん。私、懐かしいおもちゃで遊んだんです」
遊び方を教わってコマを回したり……回しましたね、ええ、確かに回しました、ハイ。
「トランプやけん玉でも遊びました。スマホゲームが普及してハードゲームすら若者離れしつつあるこの時代に、アナログも悪くないなって思いましたよ」
ぽろん、ぽろろん。ぽろろろん。
ギヴのオルゴールの音色が響く中、桜人が斗真と別行動をしていた間にあった出来事を語ってみせれば、心なしかギヴが配下の怪人の身の上に何が起きたかを察したのか震えたような気がした。
「そっか、桜人くんも楽しかったようで良かった。僕も今『君には負けない』っていう話をしていたんだ」
聞かれていただろうか、だとしたら少しだけ気恥ずかしいかも知れない。斗真はそんな思いをぐっと飲み込み、自身の物語を再び綴る。
「……最近、さっき話した風に強く思えるようになったのは」
それは、蒼いあおい花の向こうで見た姿。厳しくも優しかった『先輩』の思い出。
それは、遠い世界で旅をした時に出会った人々と、仔竜たちとの柔らかな思い出。
それらが斗真に、思い出というものの本当の意味を教えてくれた。
不意に、斗真をにゅるりとした感覚が襲い、現へと引き戻す。正体は言わずもがな、大田さんだ。
「ふふ。勿論、大田さんとの思い出も忘れてないよ」
触手の先を、まるでぎゅっぎゅと握手するかのように握りながら斗真は微笑む。
「いつもたくさん助けてくれたり励ましてくれたり、ありがとうの気持ちでいっぱいだよ」
この仕事が終わったら、仔竜のソルとルアと一緒に森で遊ぼう。そんな心地で――。
「五百雀さん、それはちょっと死亡フラグめいてますよ」
「え、ええっ!?」
口に出さないでいたことを何故、とうろたえる斗真だったが、そこはほら雰囲気的に。察しちゃったというか。
そんな感じですかさずフォローに入った桜人の姿を見(たように思え)たギヴは、心なしか震え上がったように思えた。配下の末路を視てしまったのだろうか。
「……いやいやいや嗜虐趣味とかじゃないです、イマドキ小学生だってこんなピュアな話しないでしょ」
嫌ですねえ、コマが回ってトランプが神経衰弱して、けん玉が串に刺さっただけですって。
「ね?」
『……♪』
ぽ、ろん。
オルゴールの音色が見る見る弱々しくなっていく。ちょっと! 頑張りましょうよ!
そんなギヴの様子を、あくまで微笑みながら見やって桜人はある問いを投げかけた。
「でも、今は楽しくなくなってしまいました。……なんでだと思います?」
『~~♪』
ぽろろん、ぽろん。
なぜかしら? わたしのおともだちといっしょにあそんで、つぎはわたしのたのしいゆめで、しあわせなままおわれるはずなのに?
疑問。そう、ギヴは、桜人の言葉に対して疑問の感情を抱く。
そして、それこそが桜人の狙いであった。
「――【謎を喰らう触手の群れ】、疑問の感情は与えやすくていいですね」
桜人の笑顔が、不敵なそれに思えた者もいただろう。イルミネーションの輝きを背に、むしろ桜人の表情は影に隠れてあやふやだ。
『……♪』
オルゴールの音色が止まる。ギヴの足元からわっと伸びた紫色の触手のかたまりが、ギヴごとその裡に生じた謎を喰らわんと無数に分かれ、ギュイっと強烈に絡み付く!
その様子を見やりながら、桜人が淡々と告げる。
「嫌いなんですよ。幸福の押し売りって」
人の嫌がることは喜んでやりますが、と一度喉で笑ってみせて。
「――私の嫌がることをした奴はブチ殺します」
ぱちん。
そう言ってひとつ指を鳴らせば、明確な殺意を持って、触手の群れがギヴを締め上げ――極限まで締め上げ、弾け飛んだ。
ぐらり、ぐらり。
バランスを失った舞姫が、よろめき崩折れる。
仕留めるまでには至らなかったものの、確実に痛打を与えているのは明らかだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヘスティア・イクテュス
あぁ!あれ確か楽しかった思い出がどうのこうののオブリビオン!
楽しかった思い出ねぇ…
まぁ猟兵になってから普通に異世界の人たちと楽しく交流して
異世界の色々を見て回って…
毎日が楽しい日々ね
チョコの波に流されたり
紅茶飲んだり
遊園地で水浸しになって
紅茶飲んだり
雨でびしょぶれになって…………
楽しい思い出?えぇ、きっと、たぶん…………
まぁ、あれよ。こういうのも将来大人になった時に良い思い出になるのよ(遠い目)
ということでミサイル発射
●すてきなおもいでを~へすてぃあ
「わくわくキマイラランド」のエントランスから取って返し、オルゴールの音色を頼りにメリーゴーランドのある場所へと急いだヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)もまた、ギヴを知るものの一人であった。
「あぁ! あれ確か楽しかった思い出がどうのこうののオブリビオン!」
かなり雑な覚えられ方ではあるが、だいたいあってるので問題なかった。
そんな扱いをされているとも露知らず、ギヴは猟兵たちのこれまでの猛攻で随分と痛々しい姿にはなってしまったものの、それでもいまだに舞い踊り続けている。
今は忽然と姿を消したメリーゴーランドの跡地でくるくると回るギヴと対峙したヘスティアは、あらかじめ教えられた「対処法」について思案する。
「楽しかった思い出ねぇ……」
顎に軽く手を当て小首をかしげるヘスティア(かわいい)、十四年の人生を振り返って。
「……まぁ、猟兵になってから普通に異世界の人たちと楽しく交流して、異世界の色々を見て回って……」
毎日が楽しい日々ね、と知らず笑みがこぼれる。ヘスティアの生まれは幾多ある世界の中でも特に異彩を放つ宇宙世界、たとえば他の世界の人間が一般的に慣れ親しむ空ひとつ取っても、スペースノイドたるヘスティアにとっては真新しく映ったに違いない。
文字通り「世界を股にかける」ことが出来るのも猟兵の特権だ。故郷の宇宙世界は言うに及ばず、現時点で発見されている全ての世界で起きた事件にヘスティアは駆けつけて、その力を存分に振るい活躍を積み重ねてきた。
そんな思い出を、ヘスティアは自ら振り返る――。
「チョコの波に流されたり」
えっえっちょっと待って、報告書から探しきれなかったんですが一体何が。
「紅茶飲んだり、遊園地で水浸しになって」
搭乗口前でずぶ濡れ防止のポンチョ売ってたでしょ! 有料だったけど!
「紅茶飲んだり」
英国貴族かな?
「雨でびしょぬれになって……」
捨てられた子猫かな??
何だろう……真っ当な思い出のはずなのに、ツッコミどころしかないのは何でなんだろう……解説のギヴさん、いかがですか?
『~~♪』
ぽろん、ぽん。ぽろろろん。
ギヴのオルゴールの音色が、心なしかちょっぴり悲しげになった気がした。ギヴさんにも分からないのだろうか、ヘスティアがちょっぴりしまったという顔になる。
「楽しい思い出? えぇ、きっと、たぶん……」
あわててリカバリーを試みるヘスティアは両手を前に突き出すとぶんぶん掌を振る(かわいい)。
「まぁ、あれよ。こういうのも将来大人になった時に、良い思い出になるのよ!」
『……♪』
ぽろん、ぽろろろん。
ギヴがまるで「なるほど」とでも言いたげな音色で返す。確かに、今はまだピンと来ないものであったとしても、将来歳を重ねてから改めて振り返った時にこそ、キラキラ光る価値をもってその思い出は蘇るのかも知れない。
「――と、いうことで」
ご納得いただけただろうか。ヘスティアは妖精の羽を思わせるジェットパックに仕込んだマイクロミサイルをおもむろにギヴ目がけてぶっ放す!
「さぁ! 素敵なパーティーを始めましょうか!」
ドン! ドドドン! ズドン!!
炎と爆発を伴って炸裂するミサイルは、効果もさることながら見た目のインパクトが凄まじい。この場に起きている一般人がいたならば、夜のパレードの演出か何かかな? と思い込んだやも知れない。
立ち上る特撮の爆発のようなミサイルの間を、文字通り舞うようにかい潜ってギヴは踊る。数発被弾し衣装が煤けるも、骸の海に還すまでには、惜しくもまだ至らない。
「あなたの目論見も、あと一息で打ち砕かれるわ。覚悟なさい!」
『……♪』
ぽろん、ぽろろん。
地面に燃え残る炎に煌々と照らされたヘスティアとギヴの姿は、戦いが終盤に突入したことを示しているように思えた。
成功
🔵🔵🔴
満月・双葉
【大神狼煙と】
昔ママの知り合いの女の人に…キラキラ光る金髪が綺麗な美人。よく遊んでもらって、フルート聞かせてもらって、すごく上手だったよ…そのフルートは今はおねーちゃんが使っ(ぶるっ)
他の思い出にしよう!
パスタ爆発した…
チョコ爆発した…
爆発ばっかりだね(棒)
狼煙の良い思い出どーぞ
安くて結構買う
それを僕の魔力で武器改造(百円ライタードカンの属性攻撃(炎)
派手なことして注意をこちらに引き付けてる
狼煙が動きやすくなるといいな
敵の攻撃は、視力と暗視、聞き耳で把握し、第六感と野生の勘も合わせて見切る
利用できそうな攻撃は大根を盾にして武器受けしてシールドバッシュで殴り返し…大根は爆発だ!(咄嗟の一撃)
大神・狼煙
【満月双葉】
お姉ちゃんの方は笛が下手なんだね……
などと呟く眼鏡、フルートで顔面殴打され目線顔に……
爆発って双葉ちゃんの調理風景なんだけどね?
目線(のように顔が窪ん)で、感情が窺えない表情
思い出っていうか、写真かな?
満月双葉写真集を取り出し、オブリビオンと肩を組んで動きを封じながら、こういう思い出があってだね?と語る
双葉ちゃんがライター構えたらオブリビオンを投げ、ノーガードで発破
こちらに有効な何かを出すならば、爆破して召喚前に潰し、更に両腕に関節技極めてメリーゴーランドに触れさせない
仕留め損ねたら本体へ強制葬棺
召喚された幻影から隔離して援護に入られるのを防ぎ、双葉ちゃんのフィニッシュブローへ繋ぐ
●すてきなおもいでを~ふたばとろうえん
大神・狼煙(コーヒー味・f06108)と満月・双葉(神出鬼没な星のカケラ・f01681)の二人もまた、メリーゴーランドの舞姫の元にたどり着き、早速思い出話に花を咲かせていた。
――後にこの表現が、かなりの間違いを含んでいることが判明するのだが。
「昔ママの知り合いの女の人に……キラキラ光る金髪が綺麗な美人。よく遊んでもらって、フルート聞かせてもらって、すごく上手だったよ……」
魔眼殺しの眼鏡の奥で、昔を懐かしみ瞳を輝かせる双葉と、それを微笑ましく聞いている狼煙。そして、次の相手はあなたたちねとオルゴールの音色を響かせるギヴ。
「そのフルートは、今はおねーちゃんが使っ……」
そこまで言って、ぶるっ、と双葉がものすごい悪寒に襲われ言葉を途切らせてしまう。色々と察した狼煙が、事もあろうに直球ですごいことを言ってしまった。
「お姉ちゃんの方は笛が下手なんだね……」
ぼごん。
すごい音がした。小声でつぶやいただけなのに、双葉の姉――ニ対四枚の虹色の翼持つ乙女は、いい笑顔(ただし目が笑っていない)で手にしていたフルートをフルスイング、狙い違わず狼煙の両目部分をしたたかに打ち据えた。
『……♪』
ぽろ、ん。ぽん……。
ギヴのオルゴールの音色が勝手に弱々しくなっていく。敵にもビビられる惨状だ。狼煙さんのお顔を見てみましょう――あっ、横一文字に目の部分が、こう、めり込んで……! 画面ではお見せできませんがまるで黒い目線で加工してるみたいです!
「他の思い出にしよう!」
はい切り替えてこー、と双葉がパンとひとつ手を叩く。狼煙の目線顔はまだ戻らず、感情をうかがい知ることが出来ない。
「パスタ爆発した……」
「うん」
「チョコ爆発した……」
「うん……」
ここだけの話、だいたい狼煙が被害者である。主にアトリエで目撃致しました。
「バクハツバッカリダネ」
「爆発って、双葉ちゃんの調理風景なんだけどね?」
調理すると……爆発……? しかもそれを、さも日常のように……?
もしギヴに人間の顔のパーツが存在したとするならば、ぐるぐる目になっていたことだろう。この二人は……何? 楽しい思い出の話をしているの……? わからない……。
自分の思い出話では埒が明かないと思ったのか、双葉はようやく元に戻った狼煙の顔を見ながら話を振る。
「ではここで狼煙の良い思い出どーぞ」
「思い出っていうか、写真かな?」
『……!?』
おおっとここで狼煙さんがギヴさんの肩におもむろに手を回す! なんて慣れた手付きだ! しかももう片方の手で懐から何かを取り出す――!
『満月双葉写真集』
狼煙が取り出し開いた書物の表紙には、確かにそう書かれていた。明らかに困惑してターンしたりジャンプしたりでその気持ちを表現しようにも、狼煙にがっつり肩を組まれて事実上動きを封じられてしまっているギヴに逃げ場はない。
パラパラとゆっくりじっとりねっとりページを繰っては、ひとつひとつのシーンを丁寧に説明する狼煙。
「――これはさっき双葉ちゃんも言っていた、パスタを作っている時の様子。ナポリタンだね。僕が流血しているように見えるかも知れないけど、ケチャップだから安心してほしい」
こんな調子で、こういう思い出があってだね? と語って聞かせる狼煙は完全に保護者の顔であり、まるで愛娘の成長アルバムを紐解いて自慢しているようであり。
――実に、良い感じであった。これこそ、ギヴの力を封じる、最適解であった。
例えそれが、どう見ても盗撮です本当にありがとうございました案件であったとしても!
キリの良いタイミングで狼煙が双葉に目線で合図を送る。すると双葉はポケットからそのお手頃価格で御用達にしている百円ライターを取り出し構えた。それを確認した狼煙はガッチリホールドしていたギヴの身体を一転して双葉の方へ放り投げる!
『……♪』
ぽ、ぽろん、ぽん。ぽろ、ん。
旋律の体を成さない外れた調子で音だけが鳴る。双葉は自分目がけて飛んでくるギヴに向けて手にしたライターに魔力を通し、通し――膨大な魔力を注ぎ込まれたライターは見る見る危険な気配を孕み、ギヴに叩きつければドカンと盛大に爆発し、炎が上がる。
ギヴからすれば放り投げられ空中でどうにもならない所に突然爆弾が飛んできたようなものだ、これは完全なノーガードにならざるを得ない。遂に奥の手を出す時かと思われたが、それさえもかなわぬ程に身を焦がす炎。これをどうにかせねば。
(「流石に、ライターの一撃では倒しきれないか」)
一方で、更なる追撃を狙って「葬送棺」を構える狼煙は炎に包まれて回るギヴを見据えながら呟く。
「――お帰りくださいませ、お客様?」
火葬も良いが、土葬は如何でしょう。そう、ギヴの死角で突如ガバリと口を開けた棺が導く先は――冷たい土の中。目覚めた時には既に骸の海の只中やも知れぬ、まさに【強制葬棺】。
「双葉ちゃん!」
手応えは感じた、だが止めではない。そう判断した狼煙が声を上げるや、ギヴが地中からどぷんと這い上がってきた瞬間を咄嗟に双葉が捉えた。大根で。
「大根は……爆発だ!!」
ギヴの鋭い回転からの蹴りを、大根を盾にして受け止めた勢いをそのままに。
全力をもって、大根で、殴りつけた。
『……♪』
ぽろん、ぽん、ぽろろん。
音色が、明らかに弱まってきていた。これでもかと思い出話を聞かされて、燃やされて、埋葬され、死ぬかと思った所に大根の痛烈な一撃だ。ダメージも深刻である。
あと一息、ゆめのおわりは、ちかい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
眠っている間に、朽ちてしまうなら、苦しくないな
そう悪くはない…が
やはり、オブリビオンに与えられるのは、嫌なので
今日は、ずっと楽しかったぞ
初めて乗ったじぇっと…、そう、こーすたー
ステラが楽しそうだった
髪も、頑張った
観覧車も、二人で同じ高さから、見下ろせた
隣り合って座って、きすをして
とても、特別な心持ちになれた
トランプ怪人との勝負も、思い返せばちょっと、楽しかったな
ゲートを壊されたのは、やっぱり許せないが
あれこれ、考えながら、遊ぶというのも
楽しかった
ステラとまた、今度は違う遊びも試してみたいしな
だから――今日の思い出は、これでおやすみ、だ。
(【泉門変生】で閉じ込め)
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
今日のカガリと過ごした時間は確かに楽しかった
お互いに髪を結い合ってジェットコースターに乗ったな
あの速さは本当に良かった、また乗ってみたい
観覧車も良かった
空から見下ろした街並みを背景に
カガリと、その、キスしたりだとか……
カガリとトランプをしたのはあれが初めてだったか
次やるならもう少し表情を隠したいものだな
幸せな時間はあっという間に過ぎ思い出になる
そして思い出は未来で振り返るもの
お前に与えられるまま、囚われて居続けるものじゃない
それにこれからの新しい思い出が作れなくなるだろう?
カガリとまた遊園地に遊びに行く
その約束を、願いを叶えるためにお前を我が剣にて斬り払おうか!
●すてきなおもいでを~かがりとすてら
遊園地を彩るキラキラのイルミネーションも、見る人が皆無となった今ではただ虚しく。
そんな状況を一刻も早く打破すべく、出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)とステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)も光の中を駆ける、駆ける。
(「眠っている間に、朽ちてしまうなら、苦しくないな。そう悪くはない……が」)
やはり、オブリビオンに与えられるのは、嫌なので。
それは、猟兵としての本能か、それとも。カガリの思いを知るものは果たしてそこにいただろうか、隣を行く愛しい人ならば、あるいは。
「……いた、あそこだ!」
ステラが指差した先には、本来あるべきメリーゴーランドがかき消え、代わりにくるくる舞い踊るオブリビオン――ギヴの姿があった。
オルゴールの音色も心なしか弱々しく、見た所既にかなりの手負いのようなのは、恐らく先に奮戦した猟兵たちの積み重ねによるものだろう。
きっと、あと一息に違いない。
楽しい思い出を自ら明かすことで、押し付けられる思い出を拒むことができる。
故に、カガリとステラは、今まで過ごした遊園地での話を聞かせることにした。
「今日は、ずっと楽しかったぞ」
「ああ、今日のカガリと過ごした時間は確かに楽しかった」
『……♪』
ぽろん、ぽろろん。
金属板を弾き奏でられる音が響く。弱々しくも、興味深げに。
「初めて乗ったじぇっと……」
「ジェットコースター」
「そう、こーすたー」
慣れぬ横文字に詰まるカガリと、それをそっとフォローするステラ。ふふ、と知れず笑みをこぼしながらステラが言葉を紡ぐ。
「お互いに髪を結い合って乗ったな。あの速さは本当に良かった、また乗ってみたい」
「ステラが、楽しそうだった」
髪も、頑張った。そう訥々と続けるカガリの気持ちもまた心からのもの。
日中のアトラクション巡りの話になると、自然と観覧車に乗った時のことにも言及することとなる。
「観覧車も良かった、空から見下ろした街並みを背景に、カガリと、その……」
ステラが頬を染めて言いよどんでしまうのも無理はない、他人(今回はオブリビオンだが)に語って聞かせるには照れが過ぎる出来事だ。しかし。
「観覧車も、二人で同じ高さから、見下ろせた。隣り合って座って、きすをして」
「――っ!?」
カガリは、男前だった。ド直球に観覧車での二人きりの出来事を詳らかにして。無論自分でもきちんと言おうとは思っていたのだが、これにはステラも両頬に手を当てて目を丸くしてしまう。
「とても、特別な心持ちになれた」
心底幸せそうに瞳を閉じてそうはっきりと言ったカガリに、私もだと同意するように大きくステラが横で頷いてみせれば、ギヴはぽろんとまるで嘆息するかのようにひとつ音を鳴らす。
「か、カガリとトランプをしたのはあれが初めてだったか」
照れ隠しのように夕方の怪人たちとの対戦について触れるステラの顔はいまだほんのりと赤く、やはり感情が表に出てしまうのは隠しきれないようで。
「トランプ怪人との勝負も、思い返せばちょっと、楽しかったな」
――ゲートを壊されたのは、やっぱり許せないが。門を本体とするヤドリガミからすれば、万死に値する罪であったのだ。連中でしたら無事(?)報いを受けて骸の海へと還りましたが!
「あれこれ、考えながら、遊ぶというのも、楽しかった」
「……次やるなら、もう少し表情を隠したいものだな」
駆け引きが求められる勝負の場で、いかにステラを守って「戦う」か。そのことに注力して全力で「遊ぶ」ひと時は、カガリにとってはまた楽しいひと時の一部であった。
一方のステラは、いわゆる「ポーカーフェイス」というものを次があればもっと心がけたいと思うのであった。
……そう、『次』があれば。
『~~♪』
ぽん、ぽろん、ぽろろろん。
ギヴの奏でる音が響き続ける、その限り。自分たちはもちろん、伏して眠る来園客に『次』は訪れない。――決して。
それを知るが故に、ステラは凛々しき騎士たる者として告げた。
「幸せな時間はあっという間に過ぎ、思い出になる。そして思い出は未来で振り返るもの」
すら、と自分自身でもある流星剣を抜くと、ギヴに向けて突きつける。
「お前に与えられるまま、囚われて居続けるものじゃない。それに――」
一度言葉を切ると、ステラは傍らの愛しい人を少しだけ見て、力強く言った。
「これからの新しい思い出が、作れなくなるだろう?」
ステラの言葉を合図にして、カガリが動いた。否、正確には「不動のものとなった」と言うべきか。一つに結われた長い金髪が解けて広がるのを合図に、ギヴを金色の城塞が囲い込む。
『……♪』
突如自身を囲んだまばゆい黄金の城壁に、出口はないかとくるくる見回すギヴはしかし愕然としたに違いない。唯一の出口は、この上なく堅牢な鉄門扉によって閉ざされていたのだから。
――【泉門変生(オオカミオロシ)】、出水宮・カガリなるヤドリガミであるからこそ発言せしめたユーベルコード。
(「ステラとまた、今度は違う遊びも試してみたいしな」)
鉄壁の城塞と化しギヴを封印したカガリは、そう思いながら攻撃をステラに託す。
(「だから――今日の思い出は『これでおやすみ』だ」)
門に宿る視界で、頭上からまるで流星のように降ってくるステラを捉えるカガリ。
ステラは、天を駆ける。剣を構えて流星のごとく、ギヴ目がけて一直線に。
「『カガリとまた遊園地に遊びに行く』、その約束を、願いを叶えるために!」
『……♪』
ぽろろん、ぽん、ぽろん。
ギヴに逃げ場はない。オルゴールの音が悲痛に響くが、その願いは斬り捨てられるべきものである。故に、ステラの剣が一閃した。
「――お前を、我が剣にて斬り払おうか!」
落下の勢いで、頭頂から足元まで。ギヴが辛うじて身をよじりさえしなければ、両断できていたであろう剣さばきであった。
ぽろ、ん。ぽん。 ぽん。
その音色を途切らせることこそかなわなかったものの、深手は負わせた。
傷口からなにかがぽろぽろとこぼれおちていく感覚、これは。
ギヴを構成する「楽しい思い出」が、徐々に崩れ始めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロエ・ウィンタース
ヴォルフ(f09192)と
【SPD】アレンジ歓迎
>思い出
…………わざわざ言わんといかんのか
…まぁその。なんだ
遊園地と言うのは初めてではあったものの、
ヴォルフと一緒に歩けて楽しかったと…思うぞ?
(こほんと咳をして誤魔化し)
…ええい、ともあれ!ともあれだ
俺は思い出や人の想いは自ら作る物だと思う
与えられるモノで安寧を得るのは真っ平だ
斬らせてもらうぞ、オブリビオン
>戦闘
ひとつ頷き駆ける
ヴォルフの攻撃が何処に落ちるのか知ってるかの様に動く
自身の斬撃とルーンの攻撃が虚実織り交ぜ【フェイント】となり
【2回攻撃】となる
素敵なプレゼントはUC【無銘・壱】で腕ごと落とす
言ったろう。与えられるモノなぞ真っ平だ、と
ヴォルフガング・ディーツェ
クロエ(f15418)と
【SPD】
アドリブ歓迎
クロエと一緒に回れてオレもすごく楽しかった。まるでこの見た目通りの年に戻れたような、優しい時間だった
記憶と共に朽ちる幸福を望んだ事がないとは言わないさ…けれどね、ギヴ。こうした新しい出会いが、楽しさが、孤独から救い上げてくれるのも確かなんだ
クロエ、走り抜いて!援護するよ!
【抗魔の喪跡】で手数を増したルーン魔術で舞姫を妨害
【戦闘知識】を活用しクロエは巻き込まない
【範囲攻撃】で巨大な水塊(ラーグ)を叩き付け、弾ける水泡は無数の氷槍(イス)となり貫く
得た水と氷は降り砕く雹(ハガル)となり、舞姫の分身も逃がさない
ああ、未来は自分達が切り開かなくっちゃね!
●すてきなおもいでを~くろえとゔぉるふがんぐ
園内に響くオルゴールの音が徐々に途切れ途切れのものになっていくのを、クロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)とヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)の二人ははっきりと己が耳で確認する。
終わりは近い、あるいは幕引きは自分たちの手で為されるやも知れず。
クロエとヴォルフガングは自然と走る速さを上げて、音の出処へと急いだ。
『……♪』
ぽん 、ぽ ろん、 ぽろろ ん。
それは、まるで櫛歯のあちこちが欠けてしまったかのような調子で奏でられる「音の集合体」。既に音楽の体を成していない。
それでも、ギヴはくるくる回り続ける。傷だらけになっても、なお己の信念を貫くように。
「……わざわざ言わんといかんのか」
こほんとひとつ咳払いをして、クロエが苦々しげに言う。何をかと言えば、もちろん楽しい思い出についてのあれそれだ。
そうだよ頑張って、と言わんばかりに隣のヴォルフガングが視線を送ってくるではないか。
それに対してクロエは眉間に皺を寄せて軽く抗議をしてみせるが、しかしギヴを見て覚悟を決めたように大きく息を吸うと、吐き出しながら声を出す。
「……まぁその。なんだ。遊園地と言うのは初めてではあったものの、ヴォルフと一緒に歩けて楽しかったと……思うぞ?」
そう言った直後、照れ隠しのようにもう一度こほんと咳払いをして誤魔化すクロエに、ふふと笑んで言葉を受けるヴォルフガング。
「クロエと一緒に回れて、オレもすごく楽しかった。……まるでこの見た目通りの年に戻れたような、優しい時間だった」
それは、嘘偽りのない心からの言葉だった。外見こそまだ若い青年であるヴォルフガングは、その裡に想像もつかぬ程の永い時間と、それに伴う「余人では到底抱えきれぬモノ」を秘めている。
だからこそ、その身の内側から侵食してくるようなモノをひと時でも忘れさせてくれたこの遊園地と、他ならぬクロエには、感謝の念に絶えないのだ。
しかし同時にヴォルフガングは思う。思うからこそ、口にした。
「記憶と共に朽ちる幸福を望んだ事がないとは言わないさ……けれどね、ギヴ」
ギヴに向けて一歩踏み出すヴォルフガングと、合わせるように一歩後ずさるギヴ。オルゴールの音は、欠けたままそれでもなお止まらない。
「こうした新しい出会いが、楽しさが、孤独から救い上げてくれるのも確かなんだ」
――ああ、誰よりもそのことを知っている。このひとのことばは、つよい。
ゆらりと一瞬傾いだ舞姫に、様子を見守っていたクロエが宣戦布告のように告げた。
「……ええい、ともあれ! ともあれだ! 俺は思い出や人の想いは自ら作る物だと想う。与えられるモノで安寧を得るのは真っ平だ」
しゃらん、と黒鞘の太刀を抜き放つクロエは、その切っ先をギヴに向ける。
「――斬らせてもらうぞ、オブリビオン!」
『……♪』
ぽ ろ、ん。 ぽろ、ん。 ぽ ん。
「クロエ、走り抜いて! 援護するよ!」
満身創痍、というべきか。しかしそれでもなお、強大な力量を感じさせるギヴに対して油断なくヴォルフガングが連携を促せば、クロエがそれにひとつ頷き駆ける。
駆け出すクロエを確認したヴォルフガングは、指先をすいとギヴに向けてルーンの魔術を行使する。
「一手は地に、八手は二十四の軌跡に祝福されし勝利が為に――【抗魔の喪跡(ウォーロック・ギャンビット)】」
発動したユーベルコードは、ヴォルフガングのルーン魔術の攻撃回数を爆発的に増やしてくれる。が、一度でも味方へその矛先を向けねば文字通り身を削る代償が待っている。
ならば、どうするか。
――クロエは。クロエならば、ヴォルフガングの攻撃が「何処に落ちるのか」を把握することができる。
(「行くぞ――【無銘・壱】」)
発動したクロエのユーベルコードで、錬気による身体強化の賜物である身軽さを活かし「ヴォルフガングのルーン魔術の落下点で刀を振るい、即離脱する」ことでフェイントをかけギヴを翻弄すると同時に、ヴォルフガングのユーベルコードの反動をも欺いてみせる――!
「来たれ、来たれ。『Lagu(ラーグ)』」
ヴォルフガングの指先が宙にルーン文字を描き、示された巨大な水塊がどばんと落ちる。
「弾けよ水泡、『Is(イス)』となり貫け」
そしてぱぁんと弾けた水はその一粒一粒が氷槍と化し、四方八方からギヴを串刺しにする。
「煌めけ『Hagall(ハガル)、決して逃してはならぬ』
さらに細かく散った水と氷はひとつ残らず雹となり、ギヴをしたたかに打ちのめす。
そして、その攻撃の全てに合わせるように、クロエが鋭い斬撃を一撃、返す刀でまた一撃と着実に決めていく。
『……♪』
ギヴの気配がゆらりと変わった気がした。くるりと一回転したかと思うや、す、とクロエとヴォルフガングに向けて差し出されたその手の上には――手提げの提灯。
これは、昼間に二人でお化け屋敷に行った時に貸し出された小道具だ。ギヴからの「すてきなプレゼント」とでも言うところだろうか。
「……! そ、その提灯は……っ!」
そこでクロエは、お化け屋敷で起きたあれそれを思い出す。思い出して、思わず赤面してしまった。
――斬。
鮮烈な、一撃だった。
それは照れ隠しか、あるいは本気の一撃か。クロエの一閃が、ギヴの腕ごと提灯を斬って落とした。
ヴォルフガングの方に敢えて背を向けたまま、クロエが告げる。
「言ったろう。与えられるモノなぞ真っ平だ、と」
「……ああ、未来は自分達が切り開かなくっちゃね!」
そんなクロエの胸中を知ってか知らずか、ヴォルフガングが相槌を打つ。
『……♪』
ぽ、ろ ん。ぽろ、ん。 ぽ ん。
櫛歯がさらに欠けたのか、文字通り片腕を斬り落とされたギヴは虫の息だ。
――しかし、なおもステップを踏み、懸命に音を奏でようとする。
ものがたりのおわりは、すぐそこに。
クロエとヴォルフガングは、静かに見守るばかりであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
真守・有栖
◎
めりーごーらんど
おうまさんじゃないのっ
すっかり忘れてたわ!
ゆうえんちといえば、めりーごーらんどよねっ
ぺたりと怪人に触れると、しゅるりと遊園地の中に
ほら?乗狼たる私と一緒に乗りたいんでしょう?いくわよっ
ぐいぐいと引っ張り、おうまさんに二人で乗るわ!
わっふっふー。なんっっって大人しいおうまさんかしら!噛んだり踏まれたりしないなんてっ
おるごーる。なかなかの音色じゃないの
すやすやと瞼が落ちるのをぐっと堪えて、ここは歌狼たる私の出番ね!と音に合わせ、わふわふと歌うわっ
ぱかぱかわおーんぽろろんで楽しかったわね!楽しかったわ!
素敵な思い出になったかしら?
……うん。なら、よかったわ!
さようなら
――光刃、一閃
●すてきなおもいでを~ありすとぎゔ
舞姫は片腕を失い、奏でるオルゴールの櫛歯はボロボロに欠け、もはや立っているのが不思議な程に傷ついていた。
それは、果たしてギヴ自身にとって「しあわせなこと」なのだろうか。それとも、与えるものとは、自らのことなどそもそも顧みぬものなのだろうか。
そんなギヴの様子を見た真守・有栖(月喰の巫女・f15177)は、しかしそんなことはお構いなしにギヴを見て喜びをあらわにする。
「めりーごーらんど、おうまさんじゃないのっ」
『……♪』
ぽ ろん、ぽ ん。 ぽ ん。
途切れ途切れの音で、有栖の声に応えるようにするギヴに対し、有栖はびっくりするほど無抵抗に近づいていく。
「すっっっかり忘れてたわ! ゆうえんちといえば、めりーごーらんどよねっ」
ぺたり。
そう言うや否や、何と有栖は自らギヴの頭部のメリーゴーランドにそっと触れて――ユーベルコードでできた遊園地の中にしゅるりと吸い込まれてしまったではないか!
『……♪』
ぽ ん。ぽろ ん。
これにはギヴも困惑するが、遊園地の中で有栖はごきげん大はしゃぎである。ちょっと混乱するかも知れないが、メリーゴーランドの怪人の中の遊園地の中のメリーゴーランドを見つけた有栖は、意識としてそこに存在していたギヴの残っていた方の手を取る。
「ほら? 乗狼たる私と一緒に乗りたいんでしょう? いくわよっ」
そのままぐいぐいとギヴを引っ張ると、メリーゴーランドまでたどり着く。有栖が目をつけたのは、二人乗りができるおうまさん。
半ば強引にギヴを先に乗せてやると、有栖自身も後ろにえいやっと乗り込んだ。
「わっふっふー。なんっっって大人しいおうまさんかしら! 噛んだり踏まれたりしないなんてっ」
これはすごい偏見なんですが、サムライエンパイアのおうまさんって、その、気性が荒そうなイメージがですね……何故なんでしょうね……。
ともあれ、メリーゴーランドのおうまさんは人畜無害である。その点はごあんしんです。
そうして、一人と一体だけを乗せてメリーゴーランドは回り出す。オルゴールの音色と共に。
――音が、欠けていない。それはそれは、綺麗な旋律だった。
ぽろん、ぽろろん。ぽろろん、ぽろろろん。
「おるごーる。なかなかの音色じゃないの……っと」
心地よい音色にすやすやとまぶたが落ちそうになるのをぐっと堪えて、有栖はご機嫌で音に合わせて歌い出す。
「ここは歌狼たる私の出番ね! わふっ、わふっふっ、わっふっふ♪」
ぽろん、ぽろろん。ぽろろろろん。
おうまさんが上下にやさしく動き、揺られながら有栖は歌う。それを、ギヴはどんな気持ちで聞いていたのだろうか。
ぽろん、ぽん。
オルゴールの音が静かに終わるのと同時に、メリーゴーランドの回転も止まった。
今度は先に有栖がおうまさんから降りて、ギヴにさも当然のように手を貸す。戸惑いながらもその手を取って地に降りるギヴ。
「ぱかぱかわおーんぽろろんで楽しかったわね! 楽しかったわ!」
屈託のない笑顔を向けて、有栖はギヴにそう語りかけた。ギヴは――答えない。否、答えられないのだ。
『ギヴ』。与える者。与えるだけの者。そんなオブリビオンの顔――メリーゴーランドを覗き込んで、有栖は問うた。
「素敵な思い出になったかしら?」
『……♪』
ぽ ろん、 ぽ ん。
――思い出した、自分はもはや満身創痍で、音楽もろくに奏でられず、踊りももはや見せられたものではなく。
それでも、今乗ったメリーゴーランドは――。
ギヴの頭部が、まるで肯定の意思を示すかのように、一度大きく上下した。
それを見た有栖は、ちょっとだけ寂しげに微笑んだ。
「……うん。なら、よかったわ!」
佩いた光刃『月喰』に手をかける。
(「さようなら」)
ぽ ろ、ん。
――光刃、一閃。
抜き放たれるや、渾身の力でもって、有栖はギヴを斬り伏せた。
オルゴールの最後の音が弾かれ響き、そして、ギヴの身体ごと消えていった。
●すてきなおもいでを~えぴろーぐ
かくして「わくわくキマイラランド」には、無事平和が取り戻された。眠りに落ちた来園客は皆目を覚まし、閉園時間までイルミネーションやパレードを楽しんでいったという。
馳せ参じ、奮戦した猟兵たちがどのように過ごしたかは、各々のみぞ知るところである。
――皆様、どうぞ素敵な思い出を!
大成功
🔵🔵🔵