【忘却者】
アルトリウス・セレスタイト 2020年5月29日
・発生
いずれかの世界で猟兵であった者が、骸の海とそこにに揺蕩う世界群から逸脱し、外を求めた結果生じたもの
骸の海を含む「この世界」も、「発生した」以上その礎がある
そう考えた者は己にしか通じぬその仮設を証明すべく没頭し、不幸にも求める境地へ至ってしまった
骸の海を潜り、世界の揺り籠の境界を超え、その先に手を掛けるに至り
そして
自身の想定通り其処にあった、全なる空虚を掴んで溶け消えた
それは独力で泳ぎ切るほどにその空虚に近いものと為っていたため、僅かに溶け切らず澱のように留まり
全であるがために人の要素も残さず内包するものがそれを再現してしまい
人の機能は不足なく補完され、しかし精神は形ばかりをなぞり
そうして
故郷である其処に通じる肉体を持つ人型の端末が駆動を開始した
・原理
万能であるもの
全なる空虚は文字通りの全であり、可能不可能を論ずる意味もないが、一個体でそれを完全に把握することは不可能であった
機能としてそれを扱う適性を持った端末が機能を最適化する過程で、自身に再現可能とするために便宜上付けた呼称が「原理」である
名を必要としないものに態々名を付け、更に概念を限定して術式の形に落とし込み、漸くその一端を再現可能としている
つまり「タネを知るものが極端に少ない手品」程度
一応、行使者が想像し得る限りその干渉域には万能の拡張性と深度がある
・個
肉体と精神は人間のそれを完璧に模倣する
文字情報としての記憶は素となった人物のそれを基に補完されている
自身の発生の詳細は当初知らなかったが、猟兵の活動の過程で触れる機会があり、現在は概ね把握
そういうものかと納得しつつ、納得してしまえる事実に対する感情を持て余し気味でもある
ある程度「好み」に近いものが発生した
他者への感情も個々で幾らか差異があると自覚している
相互に尊重し合う個人間の繋がりは尊ばれるべきもので、それを持てるのは喜ばしいことだとごく自然に信じる
親子、兄弟姉妹、恋人などより深いものはより尊重される
これは出会う事例や猟兵仲間の様子から学び取ったものから導かれた結論
概ねをそれを基準に活動を行う
見知ったものも、見知らぬものも、恙無く過ごすに越したことはない
埒外の理由で損なわれるなら、知りうる限り阻もうとする
現状では知己であるか否かによってその優先順位に差はない
基本的に発言に裏はない
他者の言葉を真に受ける、もしくは言葉通りに受け取りすぎ、窘められることもしばしばあった
ヒトを模倣したものであることを自覚し、近くとも決定的に違うと見做すようになった
感情も一枚壁を隔てる感覚が抜けず、裡に生じる熱も実存か錯覚か判別できない
ならばせめて、猟兵として求められる性能は発揮しようと務める
・機能
技術的には魔術師に近い
どの世界のいかなる魔術体系にも属さない異能と見做されることが殆ど
原理と名付けたそれから、目的に合致する概念を汲み上げて術式を当て嵌め行使する
術者である自身の想像力と個体能力以外に制約は何もない
幾らかの戦闘で得た経験と知識から格闘戦技能も身に付いた
魔力を何かに変換せず操作する技術が苦手
体内で動かすだけでもかなり苦労するが、修練により実用範囲までは習得した
元が全を単一の何かに落とし込んで扱う機能であるため、無色のものをそのまま扱うのは適性に合致しない
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