桜悼記
桜橋・ゆすら 2019年2月12日
ごめんなさい。
ごめんなさい。
この世に生まれて、ごめんなさい。
それでも――わたしは、“ゆすら”は。
この世に生を受けたことを、後悔してはおりませぬ。
0
桜橋・ゆすら 2019年2月12日
(和綴じの薄紅の本を、ぺらりと開く)(以下、全て赤黒い文字で記載されている。)
桜橋・ゆすら 2019年2月12日
【2/10】グリモアベースへ、初めて訪れる。猟兵になったことを自覚したばかりのゆすらは、其処で初めて様々な説明を受けた。依頼の受け方、戦い方、そして、今判別している世界の情報など。――どうやら、ゆすら自身も『グリモア猟兵』という存在みたい。よくは、わからない。勝手がわからず、猟兵としての仕事にも不安がある分際で、戦いに赴く猟兵を導くだなんて、如何なものか。 “それでも、出来うる限り頑張ろう”
桜橋・ゆすら 2019年2月12日
【2/10】【夜】『MM Kingdom』への入国審査が通り、さっそく足を踏み入れた。探索をしている最中、とても寒くなってしまったので、急遽世界樹の中へ――すると、此処に来て初めて猟兵さんと出逢えました。魅力的な狐耳のとわさん、からから笑う屈託のない男の子がヴィクティムさん、骨を咥えた陽気なお兄さんがリンタロウさんです。ゆすら、初めてのお喋りで緊張してしまったけれど……いま渦巻いているスペースシップの戦いについて、ふと訊ねてしまいました。するとリンタロウさんは、笑顔を絶やさぬまま「新鮮」なのだと、答えて下さったのです。ヴィクティムさんは肩を竦めながらも、戦いを多少楽しむ気概が丁度良い――と。でも、「一歩が無ければ進まない」とハッキリおっしゃったヴィクティムさんは、ブラウン管に映るどんなヒーローよりも眩く見えました。……ご本人には、内緒です。
桜橋・ゆすら 2019年2月12日
【2/11】【夜】探索ついでに、ずっと気になっていたウエストエリアへ。江戸の都に差し掛かる大橋を渡る最中、何かの袋を片手に驚いた様子の女の子を見つけました。おそるおそる声を掛けてみようとすれば――なんとその子ってば、犬のおやつを食べちゃって、ゆすらはびっくり仰天してしまいました。声を掛けたは良いものの、どうフォローすれば分からぬまま悩んでいれば、やたらと声の大きい肉まん屋さんのお兄さんが偶然やってきました。犬のおやつを食べちゃった女の子はアイナさん、やたら声の大きい肉まん屋さんは良馬さんというそうです。
桜橋・ゆすら 2019年2月13日
ゆすら、どうフォローすれば良いか分からなかったものだから……終始、肉まん屋さんこと良馬さんに頼ってしまいました。だってあの人ってば、フォロー気質でツッコミも冴えているんですもの。ゆすらはなんとか合いの手を入れつつも、どうにもいたたまれなくなって、問答が落ち着いた頃合いに良馬さんへお願いしました。「チョコレートまんを二つ」って。うち一つは、此度の出会いの記念にとアイナさんへお渡ししました。良馬さんもまた、サービスをして下さったものだから、嗚呼、なんて此処は優しい世界なのだろうと、心が染み入ったものです。この日記を買う用事があったものですから、お二人とは此処でお別れしました。いつかチョコレートまんのお礼をお伝えしなくっちゃ……。『お逢いましょう。また、いつか。』【
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=9039】
桜橋・ゆすら 2019年2月13日
【2/12】【夜】此方もまた、足を踏み入れていなかったイーストエリアへと訪れました。こういう時、グリモアの力は移動においてとても便利です。訪れた先は、城下町の噴水広場。街並みや立ち並ぶ店、人々の服装もまったくゆすらとは正反対のファンタジーめいたもので、とっても肩身が狭かったです。噴水の縁で座り込んでいたところに、声をかけてくださったのは、サフィリアリスさんという、銀の髪が綺麗な、小柄の女性でした。
桜橋・ゆすら 2019年2月13日
サフィリアリスさん――サフィリとも、アリスとも呼んでも良いと、彼女はおっしゃって下さいました。どちらをとっても、サファイアとも、アリスとも意味合い取れる名があるなんて、贅沢で、名前もまた綺麗だと感服してしまって。青い瞳に心惹かれたゆすらは、「サフィリ」さんと呼ぶことにしました。サフィリさんは、会話の中でゆすらに自分のことを打ち明けてくださったのです。電子の海で生まれた時のお話、電子の中で生きていた頃のお話。その当時の、冒険譚――。ゆすらは、とても聞き入って、思わず本と万年筆を手にとってしまいました。
桜橋・ゆすら 2019年2月13日
サフィリさんは、ゆすらのことを『保存する』とおっしゃって下さった。ゆすらは、その言葉を信じたい。ゆすらもまた、本の中に彼女の物語を綴って、憶えておきたいから。――サフィリさんが経験した冒険の顛末は、まだ知らないけれど。それでも、ゆすらは
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
桜橋・ゆすら 2019年2月13日
(インクが足りない。『補充』が必要だ。)
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
【2/13】ウエストエリアにある、お団子屋さん。ゆすらは、そのお店でお団子を頬張っている桃色の髪の長身の男性を、ふと目に留めました。なんて美味しそうなみたらし団子――なんて、見惚れてしまっていると、空からふわふわ、黒い翼のふわふわ真っ白なオラトリオさんが舞い降りてきたのです。ゆすらは一瞬、天使かと錯覚してしまいました。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
天使の彼女は、無邪気な笑顔で自らを『いやしちゃん』と名乗りました。ゆすらもそのお言葉に甘んじて、その名を呼んで――桃色の髪の長身の彼は、ぶっきらぼうな雰囲気に見えながらも、とても面倒見が良さそうで、なんだかお兄さん気質のように見えました。お名前は、アロンソさんとおっしゃっておりました。ふとした拍子に垣間見える微笑みが、安心感をもたらしてくださる――そんな、優しい本質を抱く方なのだと、ゆすらは感じました。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
そして、三人でご一緒にお団子を食べながら……アロンソさんの腰に下げられた刀のお話になりました。ゆすらも、いやしちゃんさんも、とっても興味津々で――短い筈の刀身が、一旦鞘におさめて引き抜くと、立派な細長い長剣になるなんて! まるで手品みたいで、ゆすらはびっくりしてしまいました。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
思わず、ゆすら、聞いてしまいました。「アロンソさんにとって、その刀はやはり大切ですか?」と。問いへの答えは、微笑みと共に率直そうで、手放す気はない、と。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
―――――あのとき、ゆすらは少しばかり、嫉妬しちゃったんです。だって、「手放す気はない」だなんて言われるほど手に馴染んでいる、だなんて。そんな、器物が、あるだなんて、
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
【何かの思いを吐露したような文字列】【しかし、新たに塗りつぶされていて、何を綴られていたのかは判別できない】
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
――ゆすらは、とても、傲慢な人としてかたどってしまったみたいです。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
いやしちゃんさんが飛ばして下さった、しあわせ風船を手に取ることすらできなかった――。彼女の笑顔に、心動かされていたはずだったのに。空に飛んでく風船を、見守るしかなかったのです。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
――――それでも、ゆすらは、
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
【2/14】今日は、とても嬉しいことがありました。以前に街でお話したサフィリさんから、バレンタインのプレゼントが届いたのです。とっても、とっても、心惹かれるメッセージを付けて下さった。ゆすらは確かに、サフィリさんの青い瞳に一目惚れした――だからこそ、それをかたどったお守りを頂けるなんて、夢にも思わなくて。とっても舞い上がってしまったのです。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
贈られたお守りを、思わず見つめました。サファイアの色。ゆすらが一目惚れしてしまった、あなたの瞳の色。――嗚呼、なんて贅沢な贈り物なのでしょう。思わずぎゅっと胸元に抱き寄せてしまったくらい。ゆすらにとって、そのお守りは『宝物』となりました。
桜橋・ゆすら 2019年2月19日
どうしても、どうにかしても、この御礼はお送りしたい。ゆすらはそう感じました。来月のホワイトデーを考えると、心臓がはち切れてしまいそうです。それでも、ゆすらは――――
桜橋・ゆすら 2019年2月20日
【2/※※】――――君がため 惜しからざりし 命さへ 筆先香るは 夢にみし花
桜橋・ゆすら 2019年5月30日
(そっと、静かに日記を閉じた)