【1:1】罅ぜた燿
杜鬼・クロウ 2021年10月28日
──左様なら。ありがとう。
嗤う火車は、猫妖の姿になって……瞬く間に、消滅した。
その経緯を知ったのは、大分後になる。
芒の野に陽炎が未だ揺れていた最中のこと。
淡い月影は、静かに戦場を離脱した二人を見下ろしていた。
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38105
・高速時々低速。
・キリのいいところで〆。
・小さな倖いの証は、此処に。
1
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
──…(時を少々刻んだ後。戦場から隔離された安全地帯…簡易救護室がある場所に辿り着き、ぐったりして動けない彼を八咫烏から下ろしては白の寝具へと横に寝かせていれば)
……ッ祝!?(手の甲で赤い粒子を拭いながら、意識が覚醒した彼を様子や容態を見て、微かな安堵と…罪悪感をより濃く眸に宿した)
悪い、……すごく、痛むだろ(俯いて絞り出した聲は、未だ遠くから聞こえる業火の音に混じって容易に消されてしまう程)
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
(頭がぐらぐらと揺れている。違う、視界が歪んでいるだけだ。身体なんてろくに動かせる訳もなく、救護室の枕に置かれた頭も動かせる訳もない。気を抜くと、すとんと完全に身体中から力が抜けてしまいそうな感がある。これは、良くない兆候だ。実体化が保てなくなってしまえば、物理的な物に触れられなくなってしまう。相手にも。救護室のものにも)
……大、丈夫、ですよ。慣れている、ので。
(表情の人真似に割いている余裕は、あんまりない。が、痛い分には別に慣れ切っていたし、怪我塗れなのは昔からそうだ。大体何時だって、昔の肉体は身体中傷だらけで、治る間もなく生きていた)(小さな手がゆるゆると上がって、当たり前のような仕草で相手の手を撫でた。よしよし)(小さな小さな声。“こわかった”、のだだろうか)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(目の前の妖が呼吸をしている、といった表現は可笑しいと思うのだが意識を取り戻した彼の聲に気遣いにも似たまろさも感じて)(余計に、視れない)
慣れてるからといって、痛くねェ訳ねェだろうが(俺が、大怪我させたんだから)……無理に動かそうとしなくていい、じっとしてろ(触れられて固く握られた拳を僅かに震わせれば、眉間に皺寄せてあからさまに彼から目を背けた)(救う筈の力を、誰かの命を失う為に揮った自分が赦せない。もしもあのまま、お前が消え失せてしまったらと考えるだけで…怖かった)
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
(残る毒の残滓か、急激な吐き気がせり上がって来るのを無理矢理飲み下す。かふ、と空気が抜けるように喉が鳴る。鉄の味。こんな所まで霊体で再現しなくても良いのに、意識しなくても動くほどに人真似を刻んだ妖の身体は、霊体での実体化構築に過去の己の肉体情報をそのまま上書きしている。幾ら自分から離れれば直ぐに粒子になって霧散するとはいえ、此処まで弱って見える相手の目の前で血に似た赤を吐きたくはない)
大丈夫です、よ。もう少し、落ち着いた、ら、自分でも治せます、から。
(痛いものは、痛い。それは事実だが、跳ねそうな語尾を抑え込む。鏡面の眼には、全く此方を見ない相手の顔が映っていた。何時もなら、必ず合う視線が合わない。緩慢な指先だけで、よしよし、と繰り返し相手の握り締めた手の甲を撫でる。あんまり握り締めているから、爪で手を傷付けそうだ。もう手遅れかもしれない)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(簡易的とはいえ救護器具が彼の周りに用意されて施される様を静かに眺めながら、念う。その間、もしも回復用の奇跡の力(ユーベルコード)を持っていればここまで重傷が長引かずに済んだのではとも思うと、)(堰き止められている赫に視線落とした儘、彼を映す事は無く)
…大丈夫じゃねェだろ!(──堪え兼ねて、吼えた。分かってる、彼が此のような事を告げるのはきっと己の為。けれども、してしまった事は消えない。一時でも、忘れてしまった事も含めて。荒げた聲は一瞬、重い沈黙と共に再び淀んで深く沈んだ)……俺のコトはいいから、…今は自分の体を治すコトだけに、専念してくれ(撫でる小さき掌をそっと下ろして、瞼を閉じた。それでも、彼の傍から離れずに居て)
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
(無関心な有象無象の手は、きらい。触られたくない。でも、動けない今は、仕方がないとも分かっている。だから、一度、諦めたように目を閉じた。少なくとも、目の前の彼が居るならば、可笑しなことをされることもないだろう)(急に声を荒らげられると、表情の薄かった幼い顔に一瞬だけ驚いたように瞳が丸くなって感情が乗る。僅かに肩が跳ねたのは、今まで相手から声を荒らげられたことがないからだ)(痛い)
ッ、……くろ、う?
(怒鳴られた?)(いま?)(どうして?)(私を、見ない)(怒ってる?)(手を退かされた)(何で?)(どうして?)(私に触れられるのが、いや?)(何故
?)(……きらわれた?)
葬・祝 2021年11月6日
(他者からの攻撃で傷付けられることに慣れ切った妖には、それが普通で、今までの日常で、別に珍しくもなくて。だから、自分を傷付けた者が視線すら合わせられないほど、触れ合いすら出来ぬほど後悔することが分からない)(僅かに身じろぐように相手へ腕を伸ばし掛けて、周囲の救護者に止められる)(邪魔)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(通常の人の体とは違い、霊が実体化している器を完全に修復する術はこの場にはなく本当に最低限の治療を施すに留めた。だが、道具が揃っているこの救護室では、己が処置をした時よりも疵の塞がりは幾分早いだろう。火傷や切り傷の赫が段々と零れ落つる事もなくなった様に思えて)
………ぁ、…いや、驚かしちまった、な。ごめん。………ごめんな。
(思わず張り上げてしまった声量に、空気が震えた気がした。同時に彼を怯えさせてしまったと、そう思った)(違う)(そうじゃない)(今の俺が、お前を、視れるハズがない)(どうして責めない)
(謝罪の言の葉を花脣に乗せては、伸ばした腕を知りながら掴む事はせずに近くのパイプ椅子に座って項垂れて)
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
(謝られた)(……きらわれてない?)(でも、伸ばした手に気付かないはずがなかったのに、何も言わずに)(分からない)(だって、ひとのこころなんて、分からない)(学んでも学んでも学んでも学んでも学んでも学んでも学んでも、どれだけ学んでも、全然足りてくれない)(……どうしよう)(聞けるひとが、此処には、居ない)
葬・祝 2021年11月6日
……邪魔、です。私に、さわらない、で。
(救護者に止められた手を、相手に向けるのとは違う欠片も温度のない声で払う。その指先は殆ど空気に溶けるように透けてしまっていて、多分、払った時の当たり判定は掌でぎりぎりだ。脚も、多分今は、地面に立てない)(だって、救護者たちだって、無意識に、無自覚に魂の何処かで身構えている。知らずとも生物が忌避すべき厄災への恐れに。理由も分からず湧き上がる嫌悪に。だったら、自分で治す。今までだって、大怪我をしても少し休んでから自分で治して、騙し騙し動けるようにして来た)
……クロウ。自分で治します、から。もう、帰りましょ、う。君が、……私に触れられたくない、なら、触れません、から。自分で、ちゃんと帰ります、から。
(灯る、無垢なほど透明な淡い光。出力は、何時もよりずっと弱い。治せば疲労が蓄積されるそれは、既に大怪我によって疲れ切った魂で行使すると当然弱くなる)
葬・祝 2021年11月6日
(だって)(煌めく刃が。殺意が。敵意が。そうだ。向けられたそれらが痛かったのに、そうではない眼差しを見て落ち着きたいのに)(目が、合わない)(こういう時、どうしたら良い?)(あのこなら、どうする?)(分からない、頭が回らない。無理矢理身体を起こそうとはしたが、ぐらぐらする)
…………せめて。ちゃんと私を、見て。
(ぽつねんと、色のない声が落ちた)(嗚呼、分かった。これ、“さびしい”のか。この前、学んだばかりだ)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(触れられなかった。今もあの感触が残っている。何時もの様に、頭を撫でる掌と同等ではない汚れてしまった手で、)(今は、掴めなかった)
(冷徹に振り払われて、彼を手当していた輩に生まれる微かな畏怖に近い感情を感じ取ったのだろう。彼を纏うのは嫌悪に等しい)(あァ、そうか。彼の存在は、”そう”だった)(彼らに向けているのは其れだが、実際に彼の深層を占めてるのは歯痒さやそれ以外の別の何かも抱えている気がして。思考が絡まり合って上手く言語化出来ないでいると)
馬鹿…っ!無茶すンな!…わかった、社に戻るぞ。俺が送るから(未だ治りきっておらずに透けている容態見て、勢いよく椅子から立ち上がって彼を支える。この儘此処に居ても却って悪化するだけと踏んで、救護者へ二言三言やり取りして彼を引き取って)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(──時同じくして。渦中にいた他の猟兵達が結びを済ませていた)
(己が運ばなければ意地でも自らこの場から出ようとしそうな彼を抱き留めながら、転送前の場所まで戻り、懐から紫鴉のグリモアを取り出して移動を試みた。目指すは彼の朱の社(いえ))
(紫の時砂がさらさらと舞って、瞬き一つすれば其処に広がるのは見慣れた紅葉だろう。彼を抱えながら鳥居を緩やかに歩み、二人の間に暗晦な隔たりが流れる中、徐に口を開いた)
……なァ。なんで、(なんで)あの時、何もしなかったンだよ。
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
(あの子に出逢うまで、否、出逢ってからも。あの子が神域を持つまでは。彷徨う内に殺され掛けてはあちこち怪我をして、酷い時は大怪我をして動けなくなって。誰にも見付からぬようにと人前から可能な限り隠れて、己の力で治せるだけの体力が戻るまで身体を丸めてじっとしていた。怪我を治す、と言うのは、己にとってはそういうことだ。弱った身を晒すことは、狙ってくださいと言っているようなものだった)(この妖、悪霊になる前からずっとそうして来た。厄災たる× × ×の身では、安全なんて願うべくもなかったから)
葬・祝 2021年11月6日
(見て、と願ったか細い声は届いたか、届かなかったのか)(けれど、手を伸ばして抱えてくれる腕に少しだけ安堵して、大人しく無抵抗に身を任せた。人間で言うと、血を流しすぎた時のような目眩と傷の痛み、毒による影響、火傷の酷く冷たいような熱。この熱は、好きじゃない。寒暖差になんて左右されない身なのに、何だか、さむい)(目を閉じたまま完全に相手に身体を預けた子供は、重さはなくとも弛緩して、ぐったりとした様子が窺えるだろう。本当は、手を動かすだけでも全身の傷に響いて痛い)(空間を超えた感覚。秋の、匂い。紅葉の、葉の。あのこの、神気。嗚呼、帰って来た。良かった。此処なら、もう、だいじょうぶ)
葬・祝 2021年11月6日
(ゆっくりと、鏡面の眼を開く。白銀のそれに紅葉の色が確かに映り込むと、ほっとしたように肩の力を抜いて)
……? あの時、って、……きみが操られていた時、です、か。
(問われると、少しだけ考えるようにした。ずきんずきんと響く痛みと毒の影響と疲労で鈍い頭をぼんやり巡らせながら)
……だって、君、でしたし。
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(汚れた儘の手で伸ばしたあの腕を掴めずとも、眼前の消えかけている淡い灯火を更に弱らせて歩かせて自力で戻らせる行為は、流石に間違っていると、意に反していると天秤に掛けて社まで運んできた。少し持つ所がずれれば、簡単にすり抜けてしまう霊体に貌は曇った儘)(…つめたい)
(救護者には露骨に忌嫌っていたのに、自分には容易に体を委ねてくれたのは、)(そんな簡単に許さないでほしい。許せないコトだろ?)
……あまりに申し訳なくて、映せねェよ(暗に視れない、と言っているようなもの)(朱の道を上りながら、洩らす)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(この神域はやはり彼によく馴染むのか、心なしか先程よりは精気が戻ったように思えた。そうであって欲しいという強い願望がそう働きかけているのやもしれないが)
ン、そうだ。……っ、だからといって!お前がこうなるまでッ!何も、しなかったのは……一歩間違えてたら、消えてたンだぞ?俺が、悪ィンだケドよ(あァ、まるでこれでは彼に八つ当たりしてしまっているよう)
(無効票)
葬・祝 2021年11月6日
……ひとは、目を逸らすの、が、当たり前だと思ってました、けど。……君、が……ッ、ぃ、見ないの、は、ちょっと新鮮で、……“さびしい”ものです、ね。
(ふふ、と何時ものように笑おうとして、僅かに痛みに呻いた。自業自得である。やっぱり今の所、この霊体は駄目らしい。封印を解けば少しはマシかもしれないが、そうすると多分、今の己に瘴気を抑え込む気力が足りないから駄目だ)(また声を荒らげられると、ぴくりと肩が揺れる。やっぱり、分からなくて。でも、これは。これ、は)(ただの願望の取り違えかもしれないけれど)(そう。まるで、自分があの子の代わりに怪我をした時のあの子のようで)
葬・祝 2021年11月6日
(少しだけ、視線を伏せた)
……ね、クロウ。私、は、君を攻撃、しませんよ。私の瘴気、で、呪詛、で、君を穢したり、しません、よ。だって、わた、し、は。……私は、ただの、厄災に、戻りたく、ない。……ッ、ただの、我儘、です。
(長く紡ぐ言葉の合間に、呼吸なんて必要がないはずなのに息が切れる。吐き気のせいだ)(己の能力のその殆どが呪詛や厄災としての瘴気による飢餓や腐蝕や、何が起こるか自分にも分からない不慮の事故による不幸を元にしている。だからこそ、“大切”にまで、“どうでも良くない”にまで、そんな厄を振り撒いてしまったら。そんなの、ただの厄災と変わりやしない。災いだ。禍津だ)(そんなの、嫌だ)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
さびしい?(いつからそんな風に思うように?)(鳥居を潜る足が一瞬止まるも、社を目指して歩んでゆき)……はは、そんなコトをお前の口から聞けるたァな。俺がお前を視ている時、お前も俺を見ててくれたンだな(軽く呻く聲が笑みと重なれば、まだ無理して言の欠片を呟いたのは明白で)(どうしようもなく、力なく嗤った)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
……!祝、お前…(彼は、本当に変わった。分からない事はまだ多い筈なのに貪欲に学んで吸収して。以前の厄災に戻りたくないと明確な意思を持って言い退けるまでに。若しくは、そう言わせる程、己との関係も深まったと自惚れてもいいだろうか)(彼の成長に目を瞠り、言葉を呑み込んだ)
俺がお前の立場なら、そうするコトもあるかもしれない。何故なら、自分が傷つくより、相手が傷つく方がもっと辛いから。お前の我儘(きもち)も、よくわかった。…でも、
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
(ぴたりと歩む速度を緩めて、漸く彼を映した)
杜鬼・クロウ 2021年11月6日
今回は俺が自分で術から抜けられたから良かったものの、あのままお前が無抵抗のまま攻撃を食らい続けてたらと思うと……ぞっとする。もしも、の話になっちまうが、カフカと一生を添い遂げると契りを交わして、その方法を模索中のお前が、こんな途半ばで終えるコトになっていたかと思うと(わなわなと聲が震えて視界が霞む。異色の眸が揺れに揺れて、雫が零れるのを堪えていた)
(無効票)
葬・祝 2021年11月7日
“さびしい”、も、この間、知りまし、た。君とね、目が合う、の。すきです。
(知ったばっかりだと言う子供の声は、何時もなら人に聞かせるためのもののように良く透るが、今は乱れて、きちんと声を張ろうとしないためにか細く、少しばかり聞き取りづらい。早く体力を戻して、自己治癒をしないと。あの子も治癒は持たないし、何なら珮李やりゅうこも治癒は持たない。それでも、あの場に居るよりお社の中に居る方が遥かに安心感があった)(秋の冷えて透き通った空気。枯葉の匂い。弱っていても、隠れて息を殺していなくても良い、あの子の神通力にまるで護るかのように包み込まれる場所。常秋の、神域)
葬・祝 2021年11月7日
(だって、やっと本当の意味で学べたのだ。こころを。やっと、好きなものが増えた。あの子以外でも、敵意も嫌悪も嘲りも何もない穏やかな心地良さを知ってしまった。頼ることを覚えてしまった。戻れない原因が積み重なって、今の己は一体何なのだろうかと酷い存在の揺らぎを抱えて。それでも違う何かになりたくて、学び続けることを決めた。だからこその、我儘)(けれど)(僅かに未だ霞む視界の中で見上げた相手が今にも泣き出してしまいそうなのを見て取ると、僅かに瞳を見張った)
……くろ、う? 大丈夫、ですよ。クロウ。大丈夫。私、は、消滅しません、から。……なかないで、かわいいこ。
(黒い着物に包まれた腕が僅かに持ち上がり、透けた指が、そっと相手の頬に触れる。感触はないかもしれないが)(泣く子を慰めるようなそれは、昔からそう言い続けて来たが故の癖だ)
葬・祝 2021年11月7日
(己を構成する概念がある限り、完全な消滅はしない。まして、己の魂はとっくに朱蛺蝶を介した楔によってカフカに縛られている。実の所、己の魂は既にカフカのものと言っても過言ではない。だから、“はふり”という人格の剥離にさえ気を付ければ、今の己は弱り切ることはあっても死に切ることがない)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
この間?(何時の事だろうか。彼の情緒が緩やかに裡に芽吹いていく様は純粋に応援したい気持ちで
)……、…そう、言ってくれンのは凄ェ嬉しいよ(未だ治りきってない躯で無理して発したと思われるか細い声が神域内に響き、一度映した鏡(め)は逸らされた)
だけど、…祝が消えずとも、そうじゃねェンだ。俺自身が赦せなくて、不甲斐なくて、申し訳なくて……(今まで通り接していいのか、どう償えばイイのか分からなくなってる。彼を視れば己が傷つけた痕が否応無しに視界に入ってしまうから)(触れた彼の指が優しすぎて、堰き止めていた透珠は静かに頬を伝う)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
…悪ィ、俺は大丈夫だ。お前の方が、つらいンだから(してしまった事は云い訳はしない。彼を抱える手が僅かに震えて、言いようのないもどかしさだけが募る中、彼が一番馴染む朱の社へ辿り着く。この状態で彼の番に出逢ったらどう説明すべきかはともかく、せめて彼の部屋までは送り届けようと地を踏みしめながら向かい)
(無効票)
葬・祝 2021年11月21日
秘密、です。
(ふ、と笑う。幼い顔立ちに似合う柔らかい少女のような微笑みは、笑うことを選択して浮かべた偽物だ。でも、笑いたいと思った、本物だ。だって、目の前の子供があんまり苦しそうだから。ゆっくり、よしよしと幼子を慰めるように頬を撫でて、細い指が青年の目元を拭う。それは、大丈夫、大丈夫、と泣く我が子をあやそうとする母親の手に似ていた。この妖が、あの子以外で一番最初に映して学んだ人間性だった)
あの、ね。クロウ。例えば、私が辛いとして、も、何方が上、なんて比べるのは、無意味です、よ。……だって、今、君は泣いているんです、から。ね。
葬・祝 2021年11月21日
それに、……ごめんなさい、ね、クロウ。君を泣かせて、おいて。私、は……今、少し、……多分、“嬉しい”。
(何時もよりゆっくりと時間を掛けて、途切れがちの言葉を口にする。痛みには慣れているけれど、猛毒の影響の残りが厄介だ。それでも、この子をそのままにしておくことはしたくないし、そもそも、自分は多分今、嬉しく思っている。厄災を殺し掛けたことで心配して傷付いて自己嫌悪に陥ってこんな風に泣いてしまうような生き物、今まで見たことがなかった)(あの子以外、に)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
秘密なら仕方ねェな(普段なら教えてくれてもイイのに、ぐらいの軽口は簡単に突いて出ただろうが、すんなりと言葉を仕舞って。作られている様で自ずと零れた様にも見える笑みに眉下げて微笑み)
……結果的に、俺が蒔いた種だ。本来なら、祝はもっと俺を責めてもイイ立場だし、俺に優しくなんか、しなくてもイイんだよ(大丈夫、大丈夫と。只管にあやす腕の中の小さな妖に罪悪感は拭えず。両腕は抱えた儘ゆえに目元を拭えず、軽く鼻を啜って顔ごと背けて)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
…?(其の言葉を反芻させて、どういう意図で告げたのか噛み砕くのに少し時間が掛かった。眼前の彼にとっては此の一連の流れ…感情の揺れ幅そのものを見せられるのはそう経験した事がない、という事なのだろうか)
……お前のコトを大事に思ってなかったら、こうはなってねェよ(途切れがちな言葉を拾っては、小さな呟きで返して。気付けば彼の部屋の前と思わしき扉の前まで来ており)祝の部屋は、ココで合っているか?(安静に床に寝かせたいのは山々だが、勝手に入るのは今は特に躊躇いがあり尋ねて)
(無効票)
葬・祝 2021年11月21日
私には、窘める口や、叱る口はあって、も、……責める口なんて、持ってません、よ。私が、したいことをしているだけ、です。
(顔を背けられると、少年の指が名残惜しげにその動きに置いて行かれる。身を乗り出せないから、背けられてしまえばこの手はついていけない。ぱたりと手を胸元に戻せば、ずきんずきんと脈打つように痛んで全身の傷が熱を持つ感覚。体温なんてない癖に、自分が自分に感じることが出来た熱は何時だってこれだった。生きているものに触れた時に感じる充足感と違って、痛みには慣れてもこれは何時も煩わしい)
葬・祝 2021年11月21日
分からない、って、顔。……だって、私。斬られるのも、射られる、のも、焼かれるのも、裂かれるの、も、何もかも、慣れてます、もの。みんな、笑います。それが正義、だから。当然だ、から。……私に傷を付け、て、泣くひと、初めて見まし、た。
(普段ならそれが当然のことだから敢えて語るようなものでもないと思っている範囲を口にしたのは、伝わるように。己なんぞを“大事”だと言う変わり者。それが何れだけ稀有で、何れだけ己にとって特別なものになってしまったのか、噛み砕いて目の前に晒すように。嗚呼、本当に。今の己は何なのだろう)
合ってます、よ。……今日、カフカ、居ませんから。もう少し、居てくれます、か。
(自分のための部屋は、今はほとんど宝物置き場な訳だが、自分の部屋ではあるし、望めばまよひが効果で布団も出て来る)(あの子を含む神々は、今の時期は居ない)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
(彼が”したい事”は、ただの厄災に戻りたくないからこそ、穢したくない咎めない。彼の我儘(きもち)は頭ではきちんと理解っていた。只、よもや己が手をあげると思っていなかった中での出来事で、心の整理が簡単につけられる程、割り切れる想いでは無く)(俺の今の行動はきっと”間違ってる”──そうしたところで、…)
(視なくても、彼から別の痛みを感じてしまったから)
ン、そうか………ありがとうな(ごめんな)
(少年の優しさに、本心はひた隠しにした)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
…面食らっちまったのが本音。慣れてるって祝は言うケド、今の祝には慣れてほしくは、ねェよ(それは普通ではあり得ないから)例え”みんな”がただの悪霊(おまえ)を当たり前に傷つけても、俺が知る”はふり”はそういう存在じゃねェンだ。
──厭なンだよ、俺は。……それはカフカだけじゃなく、社にいる奴らも同じコトを言うと思うぜ。
(思えば最初に彼と会話を繰り広げた時も、一人の彼として接していたのをふと思い出す)(ココには変わり者だらけが集ってるンだっけか)
カフカ、いねェのか…そういや、何だかいつもより人気が少なかったような。丁度、皆出払っちまったンかねェ(タイミングが良いのか悪いのか。疵を治す者がいなければ余計に彼の治癒が遅れるのではと不安がよぎり)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
え、もう少し…?(了承を得た後に部屋の扉を開けて、頭の中で念じれば案の定ぽふんと新品な布団が現れて。次ぐ台詞に彼を送り届けたら直ぐに此処を離れようと思っていただけに表情に迷いが生まれて、横たわらせながら手が止まり)
(無効票)
葬・祝 2021年11月21日
(お礼を言う相手を、鏡面の眼がじっと見上げていた。少し落ち着いて来たからか、霞は若干マシになったように思えた。現時点での自体が好転した訳ではないけれど、体力さえ戻れば自己回復が出来る)(この妖は、怪我をした時、誰かに頼ることが思い付かない。ずっとそうして来たから。例え大怪我をしても、隠れ休んで体力さえ戻れば、自己治癒で何事もないように振る舞える。あの子の前で血塗れ傷だらけの姿を見せることがあまりなかったのはそれが理由だ)
……難儀な子ですねぇ、君。
(何となく、納得なんて出来ていないし割り切れてもいないのだろうことは、相手の性格と思考の傾向を分析すれば分からなくもない)(少し。そう、少しだけ。失敗したな、と己の判断を悔やむ。反撃する訳にいかなかったのは本当だが、もう少し良いやり方があったかもしれない。泣かせてしまったし、多分これは、心を傷付けた、という奴だ)
葬・祝 2021年11月21日
(慣れて欲しく、ない?)(不思議だ。死して悪霊になったのは去年の話であって、自分はそれ以前に生まれながらにして災いそのものだ。穢れと不和と不吉と不幸の塊だ。病を呼び、不仲を呼び、死を齎し、瘴気と毒を振り撒き、人を飢えさせ、惑わせ、恐れられる。そういうものだ。そういう人間が恐れ憎んで怯えたものをひとつに集めて、名前を付けて、妖に仕立て上げ、そうしてその逸話が事実となって生まれた。だから、× × ×とはふりは同じものだし、違いなんてないはずなのに)
……君も、お社の子たちも、やっぱり変わってます、よ。でも、……どうしてでしょう、ね。前より、少しだけ。やっぱり、“嬉しい”。
葬・祝 2021年11月21日
(布団に横たえられて、包み込まれる柔らかな感触にひとつ息を吐いた。でも、落ち着くより前に、己の小さな手で、相手の袖を掴んだ。行かせないために。この手を振り払ってなど行けない男であることは、とっくに知っている。外そうとするかもしれないけれど、手を離す気はない)
カフカたち、は、神無月の宴で、二週間ちょっと、帰って来ません、よ。まあ、あの子も、珮李、も、癒しは持っていない、ので。大丈夫、です。……でも、神無月の宴、に、合わせて、ほとんど、みんな居ない、ので。もうちょっと、だけ。……ね。
(今のこの神域には、強固な護りが施され、空間は閉じている。出入り出来るのは、あの山神が許す者たちくらいだろうか。だから、この神域の中ならば例え神域の主が居なくても、己が弱っていても、誰にも狙われない)(袖を弱く引く。ね、と付け足したのは、子供のような甘え。まだ、居て)
(無効票)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
そうでもないぜ。…いつまでも下向いてる訳にもいかねェからな(俯いて立ち止まった儘ではいられない。もうあのような事態にならないよう心の中に刻んで省みつつ、彼に心配されないよう”程よい”距離感を保った)
(彼の本当の姿以外で、彼を真っ直ぐ視るのがこんなに辛くなる日が来るとは。彼を下ろして漸く自由になった己の手の甲で乱雑に目元拭いながら気丈保つ。彼が自分の体だけの事を考えられるようにと)(俺のコトで余計な気を揉ませたくねェし)
杜鬼・クロウ 2021年11月21日
嬉しいと感じるのは、お前が変わった証拠だよ(災禍である事実とは別に、それだけを占めるものでなく変貌し始めた今の妖が学ぶ感情がまたひとつ)(好きだから、心配したり怒ったり。ひとの心は斯くも難しい)
(掴んだ袖に込められた力は柔くも、離さぬ強い意思を感じて当然振り払う事など出来ず。立とうとした姿勢を戻して膝を折り)神無月の宴?神サマが集う会か何かか
。……、…祝が居て欲しいってンなら、ちぃっとだけな(己が傷つけた責任感から頷いたのもあるが、子供らしいねだるような甘えには、弱い。気まずさは後を引いていたが、袖を引く小さな掌に尻込みしながらも自分の手を重ねて)俺が言えた台詞じゃねェかもしれねェが、早くよくなってくれ。
(。)
葬・祝 2021年11月21日
(自分に傷を付けることは、他人にとっては正義で、武勇伝だった。だから、自分のことであの子以外の誰かに目の前でこんな風に落ち込まれたことなんてないし、経験が足りない。こういう時、どうするのが正しいんだろう?)(何が正解なのか、どうするのがまともなのか、良く分からない。でも、何だか。多分、このままにしておくと、良くない気がした)
……別に、君が、落ち込んでいても、居なくても、私のやること、は、変わらないと思います、よ。……私のことで、泣くなんて、おばかさん。可愛いだけです、もの。
(多分、これは気を遣われている、という奴だと思う。でも、どうせなら、その剥き出しの感情を見せてくれる方が自分は好きだし、それに触れたい)
葬・祝 2021年11月21日
……変わるって、“こわい”ことなんですけど、ね。最近の私は、……変わってばかり、だ。
(変化は恐ろしい。概念の塊であるからこそ、変化ひとつで己の中身が変わってしまうのではないかと思う。変わる度、理解出来ないものを何とか読み解こうと必死になってばかり。今の己自身の存在すら訳が分からなくなりつつあるというのに、それでも足を止められない。何が何でも止めたくない)(眼を閉じて、一度深く息を吐き出す。痛みと吐き気と熱で喉が詰まったような感覚は、深呼吸で少しマシになる)
葬・祝 2021年11月21日
そう、です。毎年、旧暦の神無月の時期、に、神々は出雲の宴に行くんです、よ。あの子も、珮李と、りゅうこと、先日此処を発ちまし、た。ふ、ふ、静かでしょう。
(主に、喧しい竜神が居ないので)(そう笑って、重ねてくれた手の温度に少しだけ安堵する。のろのろとその手をまるでぬいぐるみを抱く子供のように引き寄せて、そのまま頬を寄せた)
大丈夫。直ぐです、よ。体力さえ戻れば、全て自分で治せます、から。ね。
(。)
杜鬼・クロウ 2021年11月23日
……可愛くねェよ、全然(恐らくこの状況の時にどうやって対応したらいいのか手探りで模索しながら紡いだのだろう。その懇切とも取れる言の葉を裡に仕舞っておくと同時に、素直になれない台詞を唇尖らせて洩らして)(──お前のコトだから、なンだけどなァ)
今まで当たり前だと思っていたコトがそうでなくなったり、抱いたコトがなかった感情が芽生えるってのは、未知の領域だろうから怖いと感じるのも分かるぜ。変わるってのは、勇気が入るよな。
でも、カフカとの人生を歩むと決めた時から……もう、(止まらないンだろ)
杜鬼・クロウ 2021年11月23日
へェ、そうなのか。りゅうこ達も居ないなァと思ったらそういう。静かだからゆっくり出来そうだが……祝は寂しくねェの?(多分、前までの彼なら至極当然とばかりに寂しくない、と答えたろうが、今は果たして)
俺がそれなりの力を込めて傷つけたンなら、そんなに早く治るかは怪しいから(苦虫を噛み潰した様な表情で掠れた聲を落として、擦り寄る頬に紕いながらも軽く撫ぜた)
杜鬼・クロウ 2021年11月23日
(しん、と静まる社に流れる清の空気が鬱々と澱んだ想いをもほんの幾許かは晴らしてくれて。願いを馳せるなら…彼がきちんと養生出来るようにと。彼が眠りにつくまでの尠い刻の間迄、己の心境的に居心地はともかく彼の傍から離れず見守って、己の腕に編まれた淡い光灯す赫月が持ち主の意志に応える様に、送り主へ安らぎを注いだ──)