【1:1】やさしい傷痕
宵雛花・十雉 2021年1月21日
世界が明けたその先で、
帰るべき場所――桜舞う帝都にふたりはいた。
正しくはもう一匹、
紺色の蝶がひらひらと舞っているのだが。
あれ以来、彼が人の形をとることも何かを語ることも無かった。
事務所のソファに沈み込めば、身体が忘れていた疲れを思い出すようで。
男はただ言葉少なに右手を差し出すのだった。
+++
お相手:
唄夜舞・なつめ(f28619)
参考:
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=29795
1
宵雛花・十雉 2021年1月21日
(時間の経過により凝固した血餅が、痛々しい噛み跡を塞ぐ。炎症が起きているのか、その周囲の皮膚には発赤が窺えた)……あの、簡単にでいいからね。なつめも疲れてるだろうし。
唄夜舞・なつめ 2021年1月22日
…ダメに決まってンだろ。
こんなの簡単にして終わらせてたら…もう治んねーかもしんねーだろ。(じっと自分が傷付けた手を取り、見れば申し訳なさそうに目を細め)…ちょっと沁みるぞ。(せめて周りの炎症だけでもと、傷に効く薬を丁寧に塗ろうとする)
宵雛花・十雉 2021年1月22日
っ……(思わずあがりそうになった声を抑える。誇張でも何でもなく、付けられた薬は言葉通り傷口に沁みた)
唄夜舞・なつめ 2021年1月23日
…我慢すんな。
こんな傷で痛がっても別にかっこ悪いとか、思わねーから。痛い時は痛い、して欲しいことはしてって…言え。
…じゃないと俺……またどうしていいか分からなくなってお前のこと傷つけちまう。それは…俺が嫌だ……(薬を塗り終えれば、相応の処置を取る。雑な性格の白龍にしては珍しく、丁寧に包帯を巻き始めた)
宵雛花・十雉 2021年1月23日
うん……ありがとう。(素直に返事をすれば、大人しく包帯を巻かれているだろう)
ねぇ、なつめ。お父さん、いたね。
唄夜舞・なつめ 2021年1月24日
(素直に返事をされた。が、どこかうわの空のような気がして)…お前、ホントに分かってんのかァ?(ツンっと白雉の額を人差し指でつついてやった)
あァ。お前の言う通り、すげー良い親父さんだったよ。…俺の言ったとーり、怒ってなかっただろ。自分を犠牲にしてでも、護ってやりたかったんだよ。それぐらい愛してたんだよ。…お前の事。(ひらり。近くを舞う幽世蝶を見つめる。きっと伝わらないのだろうと分かっていても、そうだろう?と言うように目配せをせずにはいられなかった)
宵雛花・十雉 2021年1月24日
いたっ……(驚いたように、突かれた部分を反射的に押さえて)な、何するのいきなり。
(丸くなった目で相手を見ていたが、大好きな人を褒められたと分かれば嬉しそうに笑んで)
へへ、そうでしょ。……うん、怒ってなかった。笑ってた。昔とおんなじだった。(持ち上げた視線の先で、気ままに蝶が舞っている)
それに、ちゃんと謝れた。……なつめが背中を押してくれたお陰だよ。オレひとりだったら泣いてばかりで、きっと何も言えなかったから。
唄夜舞・なつめ 2021年1月25日
また我慢しそーな
空返事に聞こえたから
注意してやっただけだァ。
(じとっとした目を向け)
お前に力をやれてたってんなら嬉しーけどよ、俺ァそうしたらいーんじゃねェのって提案してやっただけで大した事ねェよ。
それを聞いて、行動したのはお前だ。素直に自分を褒めてやんな。(優しく微笑めば白雉の目をしっかりと見つめ)
ーー会えて本当に良かった。
宵雛花・十雉 2021年1月27日
だ、大丈夫だよ。すぐには無理かもしれないけど……頑張る、から。(信じて欲しいと視線を返して)
それでも、オレにとっては大したことだよ。なつめやお父さんみたいに、誰かに勇気や力をあげられる人って凄いと思うんだ。
(言いながら視線が落ちる。包帯の巻かれた手が目に入った。今だってたくさん勇気をもらっているのだ)
……オレは、闇に閉ざされてたあの世界みたいに真っ暗だから。真っ暗な、夜。
唄夜舞・なつめ 2021年1月28日
クク、そーだな。
焦らず、ゆっくり確実に。
いつか頑張んなくても
我儘言えるよーになるのを
信じて待ってるなァ
(返してもらった視線に頷いて)
…そうか?そう思ってもらえンのはうれしーけど………。俺、お前のこと傷付けたのに…そんな風に言ってもらう資格なんてあンのかな…。(白雉が落とした目線の先を自分も追えば、自然と心が痛んだ。)
…何でそう思う。
(自分を真っ暗だと。夜だと言う白雉に疑問が浮かぶ。こんなに雪のように真白で優しくて何より自分にとっての『ひかり』である存在が何故に真逆の『やみ』を思うのか。)
宵雛花・十雉 2021年1月29日
(頷きがあれば、こちらも同じものを返した)
あるよ。だって、オレのためを思って噛んだんでしょ? あのまま目を覚ましてなかったら、今頃ここにはいないだろうし。……だからなつめは恩人で、凄い人だ。(きっとこの傷が痛むたびに今日という日を思い出すのだろうと、そう思う)
……よすがら。(ぽつり、うっかり聞き逃しかねないか細さで呟いた)本当は終夜っていうんだ、オレ。『おわり』『よる』って書いて。華が無くて、根暗なオレにはピッタリでしょう?(家族に対してはそうは思わないけれど、何故だか自分には似合いのものに思えるのだ)
いつまでもうじうじ悩んで闇の中でうずくまって、誰かに照らして貰わないと歩くことすらできない。それが本当のオレだよ。
唄夜舞・なつめ 2021年1月30日
そー…だけど…。
でも…治るかわかんねェぐらい深く
………。(いつもの威勢は何処へやら。困ったように目を泳がせる。けれど白雉の尊敬の言葉に背を押され)…わかった。お前がそう思うならそれでいい。けど…責任は取らせろ。その手の傷に誓って、お前を護ってやる。
(だって、お前は俺のーーー『しあわせ』だから。)
(一通り話を聞けばクックと笑い)
終わる夜で、よすがら…
へぇ、いー名前。
ほんと、お前にピッタリだ
終わる夜…
つまり夜明けってことだ
俺を照らしてくれた夜明けの光
よすがらときじ!
すげー良い名前じゃねーか!(ニカッと笑って)
照らさねーと歩けねーなら
俺が照らしてやる
だからお前は側で俺を照らしててくれよ
おれの…終夜。
宵雛花・十雉 2021年1月30日
もう、そんな深刻に考えないでよ。なつめはいつもみたいにゲラゲラ笑ってるくらいが丁度いいんだからさ。(言いながら、無防備な額を指で弾いてやる)
でも、ありがとう。……なつめが護ってくれるなら心強いや。
終わる夜?(不思議そうに橙色を向ける。終夜とは一晩中の意。終わるまで続くそれは、どちらかと言えば長い長い夜の闇を自分に連想させたから)
……。(意味を知らない彼だからこそ、そんな風に考えられるのだろうなぁと。思わず笑みを零して)
馬鹿だなぁ、なつめは。(鼻を啜る。もしかしたら、馬鹿なのは自分の方なのかもしれない)
夜は明けるのかな。……オレも、誰かの道を照らせるのかな。
唄夜舞・なつめ 2021年1月31日
ンっ…(指で弾かれた額の衝撃に思わず目を瞑る)ンだよ…なんでいつも俺が真剣に考えてる時はそんなに呑気なんだよおまえ…調子狂うなァ…。(じっと相手を見つめ)
…フン、当たり前だろ。俺を誰だ思ってんだァ。何からでも護ってやるよ。
…。(鼻を啜る白雉の顔を覗き込み、ニッと笑えば優しい声で)
あたりめーだろ。明けない夜なんてない。それに、お前は照らしてくれたよ。ただ死ぬことだけを考えて、見えなくなってた俺の道を。
ありがとう、ときじ。
これからも俺の道、側で照らしてくれよ。(…頼りにしてる。そう付け加えれば少し照れくさそうに笑った)
宵雛花・十雉 2021年2月1日
(呑気と言われれば、そんなことないよと笑って。覗き込まれればその顔を下に向けた)
……ありがとう。まだ、夜明けは先なのかもしれないけど、それでも……なつめと一緒なら、頑張れる気がする。
(光とともに明けていった世界を思い出す。声を震わせながら探った懐から、いつか目の前の相棒から贈られた耳飾りが現れた。ほたり、柔らかな雫が花に落ちて)
宵雛花・十雉 2021年2月1日
(刹那、涙の触れた一点から淡い光が生まれた。光は花々をなぞり、彼岸花の赤を白に変えていく)
! な、なつめ……これ。(「見て」とそれを差し出して、相手と耳飾りを交互に見ている)
唄夜舞・なつめ 2021年2月2日
俺が一緒にいて頑張れンなら、俺ァいつでも、何度でも。ときじの側で、ときじの道を照らしてやる。
だから…
一緒に夜明けを見ようぜ。
!(柔い雫を落とす白雉を見れば微笑もうとして、淡い光を放ち彩を変える彼岸花に驚く)これは…俺がこの前やった耳飾り…?色が……!
宵雛花・十雉 2021年2月3日
うん……オレ、夜明けを見てみたい。
(長い夜を経た明けの空は、きっとかけがえの無いものになるだろうから)
彼岸花の色……何か、意味があるのかな。(意味なんて無いのかもしれないけれど、それでも何かを感じずにはいられなかった)
? ……なんだろう、霊力の感覚がいつもと違うような。
唄夜舞・なつめ 2021年2月8日
あァ、見せてやるよ
…お前が俺を望んでくれるのならいつでもお前のそばで、何度でも。
(恐れていた包帯の巻かれた白雉の手を優しく両手で握れば誓うようにそう言って)
白い彼岸花なんて俺ァ初めてみたから花言葉も分かんねぇ……。けど、きっと何か、意味はあるはずだ。(そう言って、まじまじと耳飾りを見つめる)
……霊力?(自分には分からない力を語る白雉を見て難しそうな顔で首を傾げる)
宵雛花・十雉 2021年2月12日
うん……(包帯越しに包まれれば、安心したように目を細めた)なつめは、いなくならないでね。(そう小さく願いを溢して)
どう変わったかは分からないけど、何か掴めそうな気がするよ。
唄夜舞・なつめ 2021年2月14日
(いなくならないでね。その言葉を聞けば一瞬きょとん。とするも、すぐに笑って)ったりめーだ。居なくなったりなんてしねーよ。だからお前も。…俺を置いていかないで…。(きゅっと、握る手に力が籠った)
なんかよくわかンねーけど、きっと、ときじの成長にその『霊力』とやらが反応したんだろーな。クク、今後が楽しみだァ。
宵雛花・十雉 2021年2月17日
(置いていかないでと聞けば、いつか彼が見せた幼い顔を思い出す。きっとあの時のことを覚えているのは自分だけだろうけれど)わかった、置いていかないよ。(はっきりと聞こえるように言うと、握られた手にもう片方の手を添えて)
唄夜舞・なつめ 2021年2月21日
(『置いていかない』という声にハッとする。ねこになったあの日。意識を飛ばしていた時。頭の片隅に残っていた『どこにも行かない』そう言ってくれた…【あの声】と重なった。)
……何だよ…お前だったのかよォ…。あの日『どこにも行かない』って、俺に言ってくれてたのは…(震える声、自然と潤んだ瞳で見つめた。大きな雫を零しそうなのを必死に耐えて)
ーーーほんと、最高だよ。
お前はよォ…!
(ニカッと心からの笑顔を向ければ1粒、2粒と大粒の涙が零れ、2人の手を濡らしたのだった。)
宵雛花・十雉 2021年2月25日
(時を超えた再会。それは彼が繰り返してきた輪廻には遠く及ばないものだろうけれど。それでもふたりの手の中で、真っ白な花が嬉しそうに咲っていた)