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Secret notice

皐月・灯 2020年7月15日


あれから数日が経った、夜。
幾つか資料を漁り、調べ物を済ませ――仮説と確信を、結論の域に押し上げる作業を終えた。

その上で、告げておくべきだと思ったことがある。

――話がある。

そう言って、彼女を呼び出した。



・ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)
・皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)


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ユア・アラマート 2020年7月15日
おい、ちょっと待った。私が考えてるより酷かったんじゃないか。 (酷い怪我といっても、命に関わるような風を感じられなかった。けれど相手の口から出てきたのは、そんな可愛いものではなかった。大丈夫だったのかと聞きかけるも、同時に彼女に何かあれば自分にも知らせが届くはずだと思い、言葉を飲み)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
……。 (そうして、話を最後まで聞き)(無意識に、呼吸も飲み込んでいた) お前の診立てが外れているとは、思えない。ましてや怪我ならなおさらだ。 (だからそれは、紛れもなく事実だったんだろう)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
(事実であったならば、それは) ――それは、異常だ。
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皐月・灯 2020年7月15日
――話が早くて助かるぜ。(状況の共有。前提の確立。「それは異常である」という認識を互いに得ることで、話を先に進めることができる)
もう一つある。あいつの出血量は危険なほど大量だった、それは間違いない。
なのに、あいつの服を洗ってやろうとしたときには。
(いつもの青いジャケットとコートを思い浮かべる。あの夜も、彼女は同じものを着ていたはずだ)
何もなかったんだ。血なんて、どこにもついてなかった。
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皐月・灯 2020年7月15日
オレは埃を払って、あいつに服を返してやった。……綺麗なもんだったよ。そのまま着られるくらいにな。
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ユア・アラマート 2020年7月15日
……。 (今度は、此方がじっと視線を送る方だった)(とはいえその視線は目の前の相手をとらえながらも、意識はそれとは別のところにあるといった様子で。浅い呼吸を繰り返しては今まで聞いた話を整理しようとしている) 大した治療もせず、けれど翌日には綺麗サッパリ治っていた怪我。それと同時に消え去っていた、大量の出血痕。
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ユア・アラマート 2020年7月15日
(分かるのはその2つだけ)(その2つだけが、ひどく重苦しくのしかかる) なあ、灯。それは。 (いいかけて、止まる。すべて言うのが憚られて、唇を引き結ぶ)
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皐月・灯 2020年7月15日
――ユア。(静かに、けれどはっきりと、名を呼んだ)
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皐月・灯 2020年7月15日
お前は知らなきゃならねーぞ。これから先も、あいつの世話を焼いていくつもりなら、な。
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ユア・アラマート 2020年7月15日
……お前も酷いな。 (肺に溜め込んだものを全部吐き出すような長い呼吸だった。空っぽの内臓に新しい空気を入れて、ぽつりと漏らす) 私が今更、シャルを手放すように見えないからそう言うんだろう? ……わかったよ。
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ユア・アラマート 2020年7月15日
分かったが。……ああ、分かったが。 (私にそれを言わせるのかと、半ば八つ当たりに言いかけて)。止めた) ……教えてくれ。お前は、今のシャルをどう思う?
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皐月・灯 2020年7月15日
――ひとつ違う。手放さねーのはお前だけじゃねーよ。
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皐月・灯 2020年7月15日
オレは、調べた。他のグリモア持ちに便乗して、いくつかの世界を渡ってな。
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皐月・灯 2020年7月15日
(シャルロット・クリスティア。彼女の身体には異常がある。人間では致命傷ながらも、翌朝には歩き回れる回復力。「彼女が人間以外の種族だった」というだけなら、種族的な特徴と言えたかもしれない。だが、それでは消えた血液の説明がつかない。布地の繊維に染み込んだ血液が、においひとつ残さず、綺麗さっぱり消えていた理由)
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皐月・灯 2020年7月15日
あいつの身体は、人間のものじゃない。髪、肌、肉、骨、血液に至るまで。
全て霊子で構成された体……霊体だ。

(カクリヨファンタズム――幽世の幻想という、なんとも皮肉な名前の世界で得た、それが答えだった)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
(珍しい話でもない)(新たに繋がった世界のことが、既に自分たちの身近にあった。そういうことだ。問題があったとするなら、繋がる前だったからこそ、無かったのだ。その選択肢が) ……一番、矛盾や疑問のない答えが、それなんだな。
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皐月・灯 2020年7月15日
ああ。これがオレの結論だ。(死した人間の魂がなにかに宿ることはある。魔力で形作られた疑似物質というのも存在する。だが、そのどちらでもない。人間の魂が、何らかの理由で、そのエネルギーで形作ったかりそめの肉体に宿ったもの。それを一言で表した存在は、かの世界で言うところの――)
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皐月・灯 2020年7月15日
(口を開きかけ、一度閉じて。)
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皐月・灯 2020年7月15日
結論の先にある推論も、言うぞ。あいつは……あの体になったってことは。
シャルロットは、今日になるまでの、どこかで。
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皐月・灯 2020年7月15日
――死んでる。
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ユア・アラマート 2020年7月15日
……はあ。 (もう何度目だろうか。ため息をつくと体の重みがいやに感じられる) 正直否定したいが、カクリヨの存在が明らかになったことでお前の説がほぼ確証づけられたな。一番最悪な形でだが。 (こればかりはもう、仕方がないのだろう。徐に右手を開くと、伏せた目元を覆って)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
私の生まれは、自然界のマナと魔術回路の融合した有機体だ。造りとしては、それこそ亡霊寄りになっている。だから、「同類」は見れば分かる。……ただ、常時それが分かる視界の開き方はしていない。それが仇になったな。 (手を離し) もう少し早く気付けたかもしれないと思うと、悔しい話だ。
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皐月・灯 2020年7月15日
(もっともな話だと思う。自分自身、否定したいからだ。否定するために本人と話して、否定するために世界も渡った。けれど、それは叶わなかった)――お前に落ち度はねーよ。オレも、あいつが死にかけるまで気付かなかった。それこそお前の身体の造りも知ってるし、あいつが怪我するとこなんて、何度も見てきたのにな。
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皐月・灯 2020年7月15日
……今のところ、だが。オレはこのことを、シャルに伝えるつもりはねー。
(いっそ誰にも伝えず、胸のうちに留めておくことだってできた。そのまま呑み込んで彼女たちに接することも、自分ならできたと思う。けれど、そうはしなかった)
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皐月・灯 2020年7月15日
けど、あの体は「執念」で編み上げられてるようなもんだ。いつかはそれを認識させねーと、摩耗していくだけだろう。(それでも目の前の彼女に告げたのは、そういう理由だった)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
そうだな。いつかは……だが、今はまだ、伝えなくていいと思う。 (もしこのまま、何事もなく暮らせるのであればそれでいいとも思ってしまうが、きっとそれは難しい) シャルも、いきなりそんなことを言われたら戸惑うだろうし。精神的にも不安定になってしまうだろう。自分が死んでいる、なんて。――。 (そうだ)(死んでいるんだ)
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ユア・アラマート 2020年7月15日
シャルが死んだのは、いつだ? いや、それ以前に。――どうして死んだんだ?
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皐月・灯 2020年7月16日
それは、オレにもわからねー。話した限り、あいつにも自覚はねーみてーだからな。
生まれた村が焼け落ちて、逃げ延びた辺りまでは記憶があるらしいが……そこから拾われるまでははっきりしねーらしい。何かあるとすれば、そこだ。
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皐月・灯 2020年7月16日
ダークセイヴァーだからな。碌なもん食えてなかったからか、逃げてる途中でどっかから落ちたか……何があっても不思議じゃねー。ただ、
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皐月・灯 2020年7月16日
ただ、な。
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皐月・灯 2020年7月16日
もしも、どっかの碌でもねー野郎の手にかかって、そいつが今ものうのうと生きてやがるんだったら――。
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皐月・灯 2020年7月16日
地獄に叩き落してやるよ。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
……、ふ。 (笑った)
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ユア・アラマート 2020年7月16日
そうだな、それがいい。 (起きてしまったことはもう、取り返しがつかない。あんまりにも衝撃的だったが、事実であるならば受け止めるしか無い。だからせめて) そんな屑がいるんだったら、欠片も残さず磨り潰してやろう。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
……一応、今度シャルに会ったら「視て」みる。
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皐月・灯 2020年7月16日
――ああ。結局のところ、お前に頼みたかったのはそれだ。お前の「目」で、確かめてみてくれ。
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皐月・灯 2020年7月16日
それと…………。(何かを言いかけて、やめる。口にするまでもないと思った。その判断が正しいのかどうかは……もう少し先で分かるだろう)
いや。頼んだぞ。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
分かった。任せておいてくれ。 (言いかけた言葉は、言及しないでおいた。彼が今必要ではないと判断したのなら、それに従うまでだ) 私の方でも確証を得たら、報告するよ。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
……さて、それじゃあどうする? まだここで何かするなら見ているし。そうじゃないなら……。
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皐月・灯 2020年7月16日
……疲れたろ、お前も。(衝撃的な事実をゆっくり整理する時間も必要だろう。自分がそうだったように。――それに、必要なことだったと信じているが、やはり密告めいた真似は性に合わない。立ち上がり、ひとつ伸びをした)
今夜は帰ろうぜ。必要なことは伝えたし、やることも決まったし、な。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
まあな。けど、教えてくれてありがとう。 (重苦しい話だが、知らないでいるよりはよほどマシだ。立ち上がって椅子を戻すと、自然と手を伸ばし) とはいえ、今夜は遅くまで付き合ってもらうぞ。
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ユア・アラマート 2020年7月16日
――少しは愚痴も言いたいし、気弱にもなりたいんでな。
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皐月・灯 2020年7月16日
……おう。(オレだけで抱えるなんて、無理だったかもな。彼女の手を握ると同時に、そんなことが頭をよぎった)……いいんなら、遠慮はしねーぞ。
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皐月・灯 2020年7月16日
――オレも、あの日オレが飲み込んだ言葉を、思い出してーんだ。
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皐月・灯 2020年7月16日
(――取返しのつかないこと。もう戻らないこと。時を挿げ替える術は無く、起きたことは変えられない。そのことを幾度も、幾重にも思い知らされながら、その先にある今を歩む)
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皐月・灯 2020年7月16日
(それがいのちだと皆が知る。生きることだと皆が言う。だが、そう在る為には、抜かねばならない楔がある。其れが突き立っていることに、気付いたものがいるならば)
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皐月・灯 2020年7月16日
(楔を突き立てたのは、誰か?)
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皐月・灯 2020年7月16日
(彼女を したのは、誰か?)
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皐月・灯 2020年7月16日
―了―
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皐月・灯 2020年7月16日
―或いは、続―
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