have you heard
黒江・イサカ 2020年4月24日
駅前≪鉄櫓の半鐘前≫
それは駅前に昔からあった。今はモニュメント化している。
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三条・千尋 2020年5月2日
(春も半ばの事である。晴れた空をいくつかの雲が切り取って、まるで日が落ちてきたころの夕方の訪れを千々に割いているかのようだった。『そこ』までやってくるのは、別に何ら難しいことではなかったように思う。駅前にある≪鉄櫓の半鐘前≫がふてぶてしく私を見下げているのが、遠くからでも見て取れたからだ。携帯を見て時刻を確認すると、丁度『待ち合わせ』の時間である。辺りを軽く見渡せど、それらしい『帽子のひと』は見当たらなかった。『案内したい場所があるから制服のままで来て』と、伝えてきたのはあちらの方なのに。だから私は、折角の休校にも関わらず制服を着てここまで来たのに。せめて、代わりの人でもいれば――――)
……ほんとうに、人を振り回すのがお上手な方。
鸙野・灰二 2020年5月7日
(青年から送られてきたメッセージを見て駅へ向かう。戦いに赴く以外には特に用事のない身に青年からの頼まれごとを断る理由は無かった。全く普段通りの装いで到着した駅前にビルまで案内するべき「客」の姿を探す。「制服の女の子だからすぐわかるよ」と言われたが夕方の駅前はそこそこに人が行き交い、更には「制服の女の子」の姿が幾つもある。果たしてどれが件の待ち人やら、男には皆目見当つかない)……(詳しい情報を尋ねようと決め、取り出した携帯電話は丁度青年と客が取り決めた「待ち合わせ」の時間であった)
三条・千尋 2020年5月8日
……、……? …………サムライ……。
(ひとしきり周囲を確認して、『帽子のひと』がいないのを確認し終わったその時だった。学生鞄の中から、携帯の着信音が聞こえたのは。察するに、マナーモードにし忘れていたのだろう。学校が休校になっていて、設定を忘れてしまっていた。取り出すと、先程の音は一件のLINEが届いたことを知らせるものだったことが分かった。『帽子のひと』からだ。掻い摘んで言えば、「行けなくなったから代わりの人を寄越すよ」とのことであり、その下にひらがなで何となくの特徴が記してあった。誤タップしたのだろうか、いくつかは要領を得ない文字も挟まっている。だが、これは恐らく……「ながくてはいいろのかみのさむらい」だ。なので、私はその特徴に当てはまりそうな人物を探すことにした。――――もっとも、)
三条・千尋 2020年5月8日
あの
…………、もし。つかぬ事をお聞きいたしますが、もしや……。貴方が、『帽子のひと』の代わりの方でございますか?
(――――もっとも、目星は既に付いていたのだが。声をかけたのは、今しがた携帯電話を取り出した男のひと。色黒で、灰色の長い髪が印象的だった。黒を基調にしたノームコア。肩にかけているのは竹刀袋だろうか。――――ともかくとして、私はその方に声をかけてみたのだった。何から話し始めるかは、連絡が来た時から決めていた。私とこの人を繋いだ、『帽子のひと』という単語だ)
鸙野・灰二 2020年5月12日
(携帯電話を購入して暫く経つが文字を打つ手は未だ拙く、青年に宛てた「詳しい情報をくれ」の数文字をようやく入力し終えたその時、自分に向かって呼びかける声が聞こえて顔を上げる。「帽子のひとの代わり」と、確かに言っていた)……ああ。(向けた視線の先には「制服の女の子」が一人。手がかりを求めるより先に尋ね人らしき少女がやってきた事に少々驚き、入力した文字はそのままにお役御免となった携帯電話をしまう。「帽子のひと」は青年のことで間違いないだろうと)確かに俺は「帽子のひと」に頼まれて来た。じゃアお前が「制服の女の子」か。
三条・千尋 2020年5月15日
……ふふ……。いえ……失礼。はい、恐らくはそうなのだと思います。申し遅れました。私、千尋と申します。三条・千尋。すると、貴方様が……、ええと……失礼、お名前をお聞きしても宜しいでしょうか?
(不思議な心持であった。何となく可笑しくなってしまったのは、この会話のシチュエーションが『UDCアース』に来てからすぐに見させられた、とあるドラマに似ていたからだ。あれは確か、非合法な麻薬の取引現場のシーンだったか。『案内したい場所』へと連れて行ってくれるのだろう彼に向かって、先にこちらから名乗った理由は二つある。一つ目の理由は、暗号と思しき言葉を用いて取引を進める登場人物たちの影に、これ以上自分を重ねるのは止めておきたかったから。二つ目の理由は――――相手に名乗ってもらう流れを作るためだった)
鸙野・灰二 2020年5月19日
俺は鸙野と云う。鸙野・灰二と。(名乗られたので名乗り返す。銘のみを伝えてしまうのは殆ど癖のようなものだった。その後に人としての名前を付け加えるのも同じく)お前を案内するように頼まれている。ついて来て呉れ。(目的地は自然に「知っている」ものとして敢えて口にもしない。簡潔に用向きを伝えたなら、サンダル履きの足を目的地の方向にむけて歩き出す。駅前から目的地まではそう遠くない)
三条・千尋 2020年5月24日
灰二様――――でいらっしゃいますね。その、どうぞよろしくお願いいたします。……あっ、あの。良ければ、一つ質問してもよろしいでしょうか? ……私は、これから一体どこに連れて行かれるのでしょう? 『帽子のひと』からは、『案内したい場所がある』としか聞かされていないのです。
(彼の所作はまるで切り絵のように無駄がなく、そして決断もまた切味の良いものであった。挨拶もそこそこに歩き出した案内人の後ろに追従して歩き出しながら、私は色んな疑問の内からまず最初にそれをぶつけることしかできなかった。目的地についてから、『これから君は天国に行くのだよ』と天使に言われるのでは堪ったものじゃない)
鸙野・灰二 2020年5月28日
…… 彼奴から何も聞いていないのか。(「行き先を知らない」事と「案内したい場所を教えていない」事、どちらも不思議に思いつつ振り返らず足も止めず、会話を続ける)ビルだ。(答えはまたも簡潔に。客を怯えさせたい訳でもなければ会話の内容を不穏にしたい訳でもない、わざとでもない。目的地は其れとしか言いようがないのだ)
三条・千尋 2020年5月29日
お恥ずかしい限りでございます。……あの方には、働き口を紹介してもらった恩がありますので。誘いを無下に断る訳にもいかず――――ビル、ですか。……ええと。……灰二様は、イサカ様のお知り合い……なのですよね?
(驚きは大きくなりながら連鎖するものだというが、まさに今回がそれであったように思う。モニュメントのそばで『お侍の方』と出会ってから、私は彼の切れ味にペースを握られっぱなしであったのだ。『ビル』? ビルとはいったい? という質問を再度投げるのも失礼であるように思えた私は、共通の知り合い『だろう』人物についての話を広げるための質問を投げるしかできなかったのだから)
鸙野・灰二 2020年6月3日
ああ知り合いだ。偶に会う。(歩く、歩く。眼前には横断歩道、点滅する青信号を見て足を止める。この世界に来て比較的直ぐ身につけた知識のひとつであった)彼奴は不思議だが、良い奴だ。(口を開いて続けた言葉は青年に対するちょっとした印象のようなもの。視線は目の前を通り過ぎる車と、その奥の信号に向いたまま)
三条・千尋 2020年6月3日
……まあ、それは……。私はまだ『あの方』との面識があまり無いので、その言葉に対しては何とも言いかねますが
……。……あの、まさか灰二様も、私と同じように『帽子のあの方』に何か借りを作っていらっしゃるのでしょうか? 今日の迎えも、もしやそういった……?
(歩く、歩く、目の前の彼につられて止まる。青信号が赤信号に変わって、私たちはもう少しだけ止まり続けるだろう。その間に、私は彼に次の質問を投げてみることにした。私ばかりが聞いていて、なんだか申し訳ない気持ちになった)
鸙野・灰二 2020年6月7日
いいや、彼奴に借りを作ッた覚えは無い。迎えを了承したのも用事が無かッたからだ。(変わったばかりの信号は未だ赤いまま、二言三言の会話をするのにこの待ち時間は丁度良い)彼奴に「働き口を紹介してもらッた」ッてのは、誘いを断れん程の「借り」なのか。(少女の「借り」であろう其れは、内容も二人の関係性も知らぬ男にとっては余りに些細な事に思えた)
三条・千尋 2020年6月9日
……はい。私にとっては、そうでございます。誰かに借りを作っている限り、私はその誰かに負い目を感じ続けてしまう。……私はお金を返すために働き先を探していたのに、結局そこでも新しい借りを作ってしまった。先のことを考えるのが、ひどく苦手なのです。……灰二様は、先のことを考えるのはお得意ですか?
(投げた問いに、深い意味などなかった。赤い信号が青になるのを待つ間に、彼の考えを聞きたかった。まったく奇妙なことだが、彼の切れ味のいい返答は、私の不安を打ち消していくようだったから)
鸙野・灰二 2020年6月15日
得意じゃアない。今と一寸先の事で手一杯でな。(考える「先の事」は戦場ばかり、きっとこれは少女の言うそれとは違う。首を横に)借りを作ッてそれに負い目を感じ続けるのなら、早々に返してしまえ。(信号が赤から青に変わる。同じ様に信号を待っていた数人が弾かれたように歩き出して)手土産を買ッて行くだとか、……いや、金を返すために働き口を探したんだッたな。(それから少し遅れてまた歩き出した)
三条・千尋 2020年6月16日
――――あら。それでは、お揃いですね。私もそうなのです。いつもいつも、後のことも先のことも分からずに、『今のこと』だけで手いっぱいで。……ふふ、そうですね。灰二様の言う通り、何か方法を見付けて早いところ借りを返すことに致します。……灰二様はなにか、お困りのことなどございますか? 私でよろしければ、『ビル』に行くまでの間にお聞きしますよ。
(彼に合わせて歩き出し、そのまま横断歩道を横切っていく。白と黒の足元が、なんだか妙に彼の話し口によく似ている気がした。自分の事ばかり聞いてもらっている気がして何だか少し申し訳ないなと感じたので、おもむろにそう聞いてみることにした。誰かの相談に乗る提案など、考えてみれば初めてのことだ)
鸙野・灰二 2020年7月1日
(それがいい、との意を込めて頷く。次いで投げかけられた言葉は、男には縁遠いものであった)……(困りごと。身体に不調は無く、竹刀袋の中に在る己が心臓と二振りにも欠けや曇りは無い)(考えながら道なりに歩き、曲がり角を右に)此れが、(ひとつ思いついて取り出したのは携帯電話)切れたときに蘇生させられると云う何某を買おうと思ッていたンだが、分かるか。
三条・千尋 2020年7月4日
まあ
……。……切れてしまった携帯電話を、蘇生させるもの、でございますか? ええと、それなら多分……充電器、かしら。
……あの、灰二様。もしも灰二様の方に急ぐ理由が無く、この辺りのどこかに電気屋さんなどがあるのでしたら――――どうでしょう、先にそちらへ寄り道というのは。『帽子の方』をもう少しだけ待たせてしまうことにはなると思いますが。私もあまり詳しくはありませぬが、どうやって買うかは知っておりまする。
(『こちらは急ぎと聞いておりませぬので』と付け足しながら、私は彼の質問に笑い、曲がり角を右に曲がりながらそう答えるのであった。少し面白かったのは、彼がまじめな顔をしながら僅かに思案して、口に出した困りごとが、何とも……何というか、生活感のあるものだったから。いい意味で気が抜けたかもしれない)
鸙野・灰二 2020年7月12日
(充電器。確か此れを購入した際についてきたものも同じ名前であった。携帯電話に色々種類があるように、充電器にも種類があるのだろう)電気屋…… 確か、ちいと先にそれらしいのが在ッた筈だ。(先、と言いつつ指さした先にはまだ何も見えない)彼奴には悪いが、まア何とかなるだろう。分かる者が共に居て呉れるのは助かる。是非頼む。
三条・千尋 2020年7月15日
はい、確かに承りました。不肖の身ではございますが、尽力致します。とはいえ、私も詳しいというほどではないのですが……。遅れてしまう分、イサカ様には後で二人で謝りにいきましょうね。……それにしても、少し意外でした。灰二様のような方でも、電気機器には弱いのですね? 何だか、すこし親近感を覚えてしまいます。
(本心だった。私がこの世界――――『UDCアース』という世界に来てからというもの、私が会う人はほとんどの割合で『携帯電話』を使いこなしていたからだ。私と同い年くらいの女学生や、年端もいかない子供までが所持している所を見ても、普及率という点においては凄まじい所がある。私も最近ようやく使い方を覚えてきたところだが、まさか自分が携帯電話の充電のやり方を誰かに問われるとは思ってもみなかった。『携帯電話の使い方を知らない人物など、自分のような別世界出身の人物しかいないだろう』と思っていたから――――)
鸙野・灰二 2020年7月22日
此れを買ッたのはついこの間でな。使い方は一通り習ッたンだが、まだ分からん事の方が多いのさ。(取り出した携帯電話を片手に持ったまま真っ直ぐ進む。使われる頻度の高くないそれは冷やりとしている)俺にしてみれば、お前も此れ等に弱いと云うのが意外だ。此処の人間は皆、特に若いのは此れを易々と扱ってみせるだろう。お前もそうだとばかり。
三条・千尋 2020年7月29日
おや、――――灰二様も、ついこの間だったのですか? それはまたしても奇遇でございますね、私も携帯電話を買ったのは割合最近のことで――――、
……その、もしかしてと思ってお聞きするのですが……もしや灰二様は、猟兵と呼ばれる存在でいらっしゃいますか? 実は、私も『そう』なのです。『携帯電話の無い世界』から、私は来ました。
(確信へと至ったのは、彼がぽろっとこぼした『此処の人間』という言葉だった。私の経験上、その言葉は『此処の人間ではないひと』しか言わない言葉であったから。そして恐らく彼が言う此処とは――――、世界そのものを指して言う言葉なのだろう。私と、それから彼に共通する『どこか世界から浮いているような感じ』は、たぶんそこから来ているように思えた)
鸙野・灰二 2020年8月11日
(瞬き一つ。同じ生業の者には直ぐ「そう」だと気付かれていたので、猟兵かと直接に尋ねられた経験は極少ない)(そして、少し遅れて気が付く。嗚呼今日は常通りの服装では無かった、と)嗚呼『そう』だ。此処じゃア無い――『サムライエンパイア』だッたか、そう呼ばれてる場所から来た。(居た場所につけられている呼称は未だ口にするに慣れない。少し先に在る小さな電気屋を一瞥し、少女に尋ねる)お前は何処から?
三条・千尋 2020年8月17日
(彼が言うその名前には覚えがあった。元々私が猟兵としての力に目覚めた時、一番最初に行ったことは『世界の確認』だったし――――それに、その名前は最近古着屋に来た人物との思い出に新しい。さむらい、着物、そして刀。古く、強く、鋭い世界だったことを記憶している。そろそろ電気屋が見えてきた)
サムライエンパイア……。それではやはり、灰二様も猟兵だったのですね。この街に――――イサカ様に縁を持つ人たちの多くは、猟兵の方が多いのかな。
ええと、私は
……。……その、実は、滑稽な話なのですが……私、元の世界の記憶は既にひどく朧げで、確かな記憶は『アリスラビリンス』と呼ばれる世界でひどい男に拾われたところから始まっていて。詰まる所――――私は、『自分の世界の名前を憶えていない』のです。
鸙野・灰二 2020年8月27日
どうだろうな。彼奴に縁のある者を、俺は多く知らない。(この街で会った猟兵の全てがかの男と縁がある事を、男はまだ知らない。軽く首を傾げた)……『アリスラビリンス』は別の場所から人を召喚するンだッたか。『自分の世界』を覚えてないッてのは、随分と難儀だろう。(関心は少女の口から出た『アリスラビリンス』に移る。其処に関しては名前と少しの知識――人間を餌にする化物が支配する世界であること、人間は餌として別の場所から召喚されること――程度しか知らない。話を聞きながら歩いている内、電気屋に着いた。自動扉を通れば、そう広くない店内に数名のテレビウムが働いているのがわかるだろう)
三条・千尋 2020年8月30日
ありがとうございます。ただ、難儀というより、何というか……。言いようのない居心地の悪さばかりを感じてしまうんです。それから、元の世界の思い出さえも、いつかは忘れてしまうだろうという恐ろしさも。
日に日に減っていくのが分かるんです。この世界に来てすぐに手帳に記した記憶たちへの郷愁の念が。私たちは生きている限り何かを忘れる生き物で、永遠などないと分かっているんですけどね。
(私は元の世界の話をするに当たり、彼の聞き方に感謝の念を抱いた。この世界に来てから、こんなに元の世界の話をするのは始めてのことで、私はそれが不思議と嬉しかったのだ。電気屋に入る時、私の口許は僅かにほころんでいた)
――――失礼、そこの方。私たち、携帯の充電器を探しておりまして。はい、携帯の電池が切れてしまって。……携帯の機種と使用目的でございますね。ええと、灰二様、携帯を見せて頂いても宜しいですか?
鸙野・灰二 2020年10月4日
そうか。それは――(難儀な事だ。と続く言葉は呑み込んだ。郷愁の念を持たない刀はそれらを忘れる恐ろしさを理解し得ない)「いつか」が来る前に見つけなければな。居心地の悪さやら、恐ろしさやらを感じずともすむように。(協力しよう。もまた呑み込んだ。「借り」と思わせることを危ぶんで。電気屋に入る時も前も表情に変化は無いが、頭だけは普段より働いていた)
……ああ此れだ。機種は覚えていないが、見て分かるだろうか。(ためらいなく携帯電話を差し出す。極シンプルなスマートフォンである)
三条・千尋 2020年10月11日
ありがとうございます、灰二様。少々お待ちくださいね、少しお話を聞いてまいります。――ええと、こちらなのですが――。――あら、本当でございますか? ――いえ、ご丁寧にありがとうございました。
(彼に差し出された携帯を受け取って、店員に話を伺う。どうやら手練れであったようで、話は実に早かった)
灰二様、分かりましたよ。ええと、良く動画を見るなどするならば、大容量のこの商品が良いそうです。別段普段使いで困ることがないならば、更に安価なものもあるのだとか。どちらになさいます?
(電気屋に入る前の彼の言葉は、私の胸に静かに染み入っていた。ありがたいと感じる。元の世界の話をするのも、それに気遣いを受けるのも初めてのことであったからだ。もしかすると『借り』を作ってしまったかもしれないが、今の私にとってそれは別段嫌なことではなかった)
鸙野・灰二 2020年10月31日
(店員と話している様子を見て聞いている)(話の内容は半分もわからなかったが、此方へ戻ってきた少女の説明は電子機器に疎い男にも分かりやすいものであった)成程、説明感謝する。(「良く動画を見るなどするならば」良い、という所に惹かれたらしい。大容量だという商品を指して)
――そうだな、その大容量の商品を買うことにしよう。動画はよく見るンで丁度良い。
三条・千尋 2020年11月3日
あら、……ふふ。少し、意外です。灰二様、しっかりと携帯を使いこなせているではありませんか。『分からん事の方が多い』などと言いながら、動画視聴を使いこなしていらっしゃるとは……なんだか、先を越されたような気持ちです。
商品の説明は店員様のお陰で果たせたことですが、それならば今度灰二様のおすすめの動画など教えて下さいませね。そういったことには疎いのです、私。では、少々お待ちくださいね。先ほどレジに並んでしまった手前、こちらの商品は私が買って参ります。代金は後で建て替えて頂ければと。
(彼の回答を受け、私は何だか少しうれしくなったことをよく覚えていた。全く僅かなことではあったが、やはり人に頼られるというのは喜ばしいものだ。故郷を失い、寄る辺ないこの世界においては特に)
――――はい、灰二様。こちらが携帯の充電器と付属品のコードになります。
鸙野・灰二 2020年11月22日
なに、俺の周りには親切な奴が多くてな。教わッたのさ。(携帯電話の事を知った時の事、よく見ている動画を初めて見た時の事。思えば案外「分かる」事が多いのかも知れない)(金を渡すより早くレジに向かった少女を見送り)
有難う。お前のおかげで助かッた。……幾らだ、此れで足りるか。(受け取る前に支払いをと、取り出した財布の中には様々な世界の通貨が混在して収まっている。UDCアース日本の紙幣1万円を引き抜きながら)
三条・千尋 2020年11月25日
……ふふ、足りるどころか。充分すぎますよ、灰二様。ええと、……ああ良かった、丁度あるみたい。はい、こちらがお釣りになりますのでお確かめください。領収書も一緒に渡しておきますね。灰二様の助けになれたのなら良かったです。これでまた、たくさん動画が見れますね。
――――そうだ、もし良ければ教えて頂けませんか? その、携帯で時代劇を見る方法を。私も少し前から興味があったもので……。
(目の前の彼の言う『親切な奴』というのが誰のことかは分からないが、きっとその人物は優しい人なのだろう。彼の無知を利用せず、希望に沿った答えを『嘘もつかずに』教えているのだから、きっと。いつかはこの街で会うこともあるのだろうか? その時を楽しみにしておくとしよう。時代劇の閲覧と同じくらい)
鸙野・灰二 2020年12月5日
そうか、足りているなら良い。これで此奴が切れた時にも対処出来る、嬉しい事だ。(受け取った釣り銭と領収書を一瞥し、特に確かめ直す事はせず財布へ。そろそろ世界毎に貨幣を揃えるべきだろうか)
応、任せろ。時代劇を見る方法なら教えてやれる。(「親切な奴」に教わった事を教える機会はそう無い。好む動画と同じジャンルである事も併せて無表情に僅か、喜色が滲んで)……嗚呼。時代劇なら彼奴も、イサカも詳しいぞ。(ふと思い出した。元々時代劇を自分に教えたのは「帽子の男」であった事)
三条・千尋 2020年12月9日
はい、是非に。それでは、ええと……確か、こうかな。……ああ、良かった。合ってたみたい。灰二様、私の電話番号がこちらです。こちらに一度かけて頂ければ、連絡も付きやすくなることでしょう。時代劇を見る方法は、その時に是非とも。
名残惜しくはありますが、もともと今日は『帽子の方』に呼ばれている話ですからね。それに、これ以上待たせるのもさすがに申し訳――――あら? まあ、そうだったのですか。それではもしかして、イサカ様だったりするのですか? 灰二様に時代劇を教えた人というのは。
(釣銭を確認もせずに財布に流し込む彼を見、彼の人となりを把握する。どうやら彼はこの世界の貨幣制度に然程興味がないらしい。もしくは、人を疑うことに縁がなかったかのどちらかだろう)
鸙野・灰二 2020年12月17日
そうだな。あまり待たせると彼奴に悪い、付き合わせて済まなかッたな。(店から出る前に教えられた彼女の電話番号に早速電話をかけた。此方から電話をかければ相手の端末に自分の番号が映る事は、教わったので知っていた。かけろと言うのは後程だったかも知れないが)ああ。俺に時代劇を教えたのは彼奴だ。携帯電話で観る方法を教えたのはまた別の奴で、まア何方も良い奴だ。お前ももしかしたら、会う事が有るかも知れないな。
(帽子の男と、もう一人、黒服の少年を思い浮かべた)
三条・千尋 2020年12月23日
いえ、お気になさらず。そもそもの話は、帽子の方が灰二様に自分の役割を押し付けたのが始まりでしたし……私としても、非常に有意義な時間でしたので。こうして腕の立つ猟兵殿と知り合えたのは僥倖でございました。それも、このような穏当な形で。その、『別の良い奴』という方ともいずれお会いしたいものですね。
……灰二様、最後に一つ聞いても宜しいですか?
(自分の端末に映った彼の電話番号を電話帳に登録し、話に上った『もう一人の人物』について僅かに想像する。目の前の彼に携帯電話で時代劇を見るやり方を教えるという人――それを聞くと、なんとなく優しそうな人物であるような気がした。恐らく猟兵であろうが、その人がもしも思っている人物像の通りであれば早めに知り合っておきたいところである)
鸙野・灰二 2020年12月29日
確かにこうして街で猟兵と知り合う事はそう無いな。これも縁だ、手が必要な時には呼んで呉れ。(「もう一人」の名を教える事もできた。が、許可も得ず勝手はできまいとそれ以上は口を噤んだ。店を出てビルの方向へとまた歩き出す。もう少し歩けば目的地が見えるはずだ)(最後に、と、改まった言う少女に頷いて)応。何を聞きたい?
三条・千尋 2021年1月4日
おや、よろしいのですか? それでは、その時は借りだなどとは思わず……遠慮なしに呼んでしまいますからね。……ふふ、ありがとうございます。恩に着ます。
ええと――灰二様は、昔自分がいた世界のことを……。『サムライエンパイア』で過ごしていた昔のことを、いったいどれくらい覚えていらっしゃいますか? ……ふと、興味が湧いたんです。私はもうほとんど忘れてしまいましたが……もしも昔に住んでいた、遠い遠い故郷のことを覚えていたら、ひとはどういう気持ちになるのかな、と。やはり、懐かしいものなのでしょうか? それとも……?
鸙野・灰二 2021年1月25日
(少女からの問いかけに、記憶を遡る。一等最初の箱入の記憶から、これまで)どれくらい…… そうだな、自我を持ッてからの事は大体覚えている。(どういう気持ちになるものかと言うのも考える。時折昔を思い出す事は有った。それこそ戦場に立ち始めた頃は頻繁に)それなりに懐かしく思う事も有るが、日が経つにつれ思い出さなくなる。昔々は随分穏やかで、俺にはちいと、退屈だッたからやも知れんが。……こんな答えで良いだろうか。
三条・千尋 2021年1月29日
――はい。ありがとうございます。十分過ぎるほどですとも、灰二様。
(不思議と、彼が言う忘却についての言葉には心を惹かれた。彼が普通のひとよりも年を取っているような気がするのは何故だろう。『日が経つにつれ思い出さなくなる』か。懐かしく思うことがあったとしても、きっと最後は何もかもが忘却に沈むのだろうか。……もしそうならば、私の胸に燻る復讐の火も、いつかは消えてなくなるのだろうか? その答えは、彼の言葉を聞いても出せないままだった)
……ここが、目的のビルでしょうか。灰二様、案内誠にありがとうございました。また是非お会いしたく思います。その時は、……今日みたいに質問ばかりではなく、友人のように時代劇の話などをいたしましょう。
(目的地に着いた私は、目の前の侍に別れを告げて階段を上り始めた。この街には猟兵が集まる。彼とも、またいずれ逢うこともあるだろう。その時が、とても楽しみだった)