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Once upon a time

皐月・灯 2020年2月5日


あれはどういう話の流れだったか。
1人の男と1人の女。
語らいの合間、どちらかの唇からふと漏れた。
磨き上げた互いの技を以て、それでも仕留めるに至らなかった相手。

思い返すのは幽玄の霧。

月明かりを煙らせ、全てを迷妄に覆わんとする薄衣の只中で。
遠くに立ちながら尚、曇ることなく此方を射抜く眼光。

一手誤れば死に至る。
互いにそう確信して、然れども。

思い返すのは死の舞踏。

――そこにいたのは、ふたりの死神。



・ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)
・皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)




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ユア・アラマート 2020年2月5日
……。 (獣がいる。真っ先に出てきたのはそんな感想だった。薄曇りで遮られた淡い光は地上を這いずる霧にも遮られて、目に届いてくるのはごくわずか。目指す館への道標は、馬車が通るに問題がない幅をした道に沿って設置された松明の光くらいか。それもいくつかは消えて、まばらに揺れるばかりではあるけれど) ――こんな小さな見張りがいるなんて、情報になかったんだけど。 (マスクで覆った目元が細まり、眼光を返す。肩までの銀髪を揺らす、狐に似た特徴を持った症状だ。幼さを残す高い声が闇に消え、次の瞬間にはため息が漏れる)
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皐月・灯 2020年2月5日
(松明の明かりは、もともと夜を照らすに十分な光度とは言えない。さらに霧に阻まれてしまえば、常人にはぼやけた輪郭ぐらいしか捉えられないだろう。夜目の効く方だと自負しているが、相手が仮面を付けた……おそらく女、だということしかわからなかった)……見られたのは初めてだから。(肩まで無造作に伸ばした黒髪の間から、薄青の左目だけを覗かせて。ぼそりとこたえた声音は、相手より更に一段あどけなさを残していた)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
(見たところ、自分よりもずっと幼い……少女、だろうか? そこは判断がつかないので一旦結論を保留した。なにせ、今大事なのはそこではない。誰ともしれない人影が、自分の進行方向に立ちふさがっているということの方がよほど大事で) 一応聞く。このまま大人しく先に進ませてくれるかどうかを教えてほしい。
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皐月・灯 2020年2月5日
――そのつもりなら、ここにいない。(口調は激しいものではないが、はっきりとした拒否の意思。聞くだけ無駄と言外に告げて、纏った襤褸布の裾から両手を出した。黒布を巻かれた拳をぐっと握る)……こっちも聞く。あんた。帰るつもり、ない?
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ユア・アラマート 2020年2月5日
(左右の腰にくくりつけてあるナイフホルダーに交差した手を当てる。形をなぞって、両手が柄を軽く握り) 多分、帰ったほうが無駄に労力を使わないで済むとは思う。けど、だからって大人しく引っ込むわけにもいかないの。その、お前が背中で守っている道の先でのうのうとしているヤツに用がある。
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皐月・灯 2020年2月5日
そう。(両腕を顔の前で構えた。襤褸と黒髪の奥から、青い一つ目で、道の先に見える相手を見据える。)

じゃあ、あんたはここまでだ。

(死の宣告。それだけ言って地を蹴った。それほど速くはないが、身を低く、夜霧と地面の暗さに紛れ込むように)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
(薄い翠は暗闇と霧で視界が悪い中では余り目立たない。強い光を放つでもなく、ただこの世界では珍しい木漏れ日を透かす葉のような瞬きだけを残し) 面倒だな。 (短く呟き、次の瞬間には両手に鋭く光る刀身を引き抜いていた。ただでさえ小さい体は、霧も相まってすぐに見えにくくなる。地面を、前方に土を飛ばす勢いで蹴りつけながら体を後方上空に逃し)
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皐月・灯 2020年2月5日
(間合いに持ち込む前に逃げられた――そう知るや、身を丸めて素早く前転。起き上がりざま両手を土に食い込ませ、その場で瞬時に向きを変える。体重の軽さと体の柔らかさが両方あって成立する、無理矢理な方向転換)……はやい、けど。(俊敏性の差を小回りでカバーして、追いすがる)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
うわっ。本当に獣みたいなヤツだ。 (小さい分相手も動きは俊敏で、中々にとらえにくい。両足だけではなく両手も使って、本当に動物のような動きをすると評する方はまだ。空中。着地時点で足をられるのはまずいと、その場で右手に持っているナイフを躊躇いなく投げつけた。首を狙い、その間に口元が何事かを呟く)(ぼやりと、指先を伝う蔦が光を帯びる)
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皐月・灯 2020年2月5日
(眼前に迫った刃を裏拳で叩き落す。ぶつかった個所がきん、と金属質の音を立て、宵闇に火花を散らした。無傷。しかし格段に進撃速度が減速した)面倒。(こぉ、と鋭く息を吸う。固めた両の拳、巻かれた黒布に淡い光の文字が描かれ始めた。ぐ、と腰だめに構えて)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
(弾かれたナイフは何度も回転しながら地面に突き刺さる。よく見えなかったが、手甲でもつけているのだろうかと思わせるような音がした。ひとまず、相手の動きを鈍らせることには成功した) それはこっちのセリフだ――。 (こちらもだが、向こうも何か仕掛けてくるつもりのようだ。それならば、先手必勝に限る) 吹き荒れろ! (声は、力強く響く。応えるように周辺の落ち葉が浮き上がり、木の葉の竜巻となってそれで相手を包もうとする。普通の木の葉と違うのは、その一つ一つが鋭利な刃物じみていることだ)
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皐月・灯 2020年2月5日
(本当はもう少し近づきたかった。というより、「触れなければならなかった」。けれど、相手を捕まえるのは簡単ではなさそうだ。今まで相手にした大人よりも小柄で、その上自分より小回りが利く)っ……!(そのうえ魔術も使うのか。総毛立つような危機感は、視界の端で落ち葉が浮いた瞬間に襲ってきた。とっさに両腕を顔の前に翳した次の瞬間、襤褸が無数の火花とともに裂かれてちぎれ、鉄製の手甲が露わになった。1枚が小さい分傷は浅いが、次々に開かれれば出血で危ない)……そこだ!(葉の刃が途切れる刹那、地面に拳を叩きつけた。衝撃点を中心に亀裂が走ったかと思えば、たちまち炎が噴き上がる)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
(ざあざあと木の葉が擦れ合う騒音に混じって、あの金属質な音が混じって聞こえる。やはり、手甲で弾いていたのか。納得すると同時に、自身の火力不足も感じてしまう。本当であれば自然物を使うのではなく、斬撃の概念を物質化するための術式。使いこなすにはまだかかると思った刹那――) っう……! (地面に着地した途端、その地面が急に不安定なものに感じた。足の間に走る亀裂から、橙色の炎が巻き上がってきたと思った次の瞬間には体を横に転がし。土がつくのも構わずできるだけ距離を取った。直撃は免れたものの、右の腿に焼けるような熱さを覚えて舌打ち。止まらず、先程の相手の真似をするように片手を地面について機動力とし。身を低めたままナイフ片手に距離をつめにかかる)
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皐月・灯 2020年2月5日
(手甲に巻いていた黒い包帯から光の文字が消え、たちまちのうちに炭化する。思わず舌打ちした。動きだけでなく、反応も速い。仕留めるつもりで使った虎の子のアイテムだったが、掠めるだけで終わった。懐に手を入れ、替えの黒布を取り出し)……っ(切り裂かれた腕の痛みに、あろうことか取り落とした。予め術式を込めた伝導体がなければ、あとはもう徒手空拳しかない。拳を握り直して、腰を落として向き直った)
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ユア・アラマート 2020年2月5日
なにも、殺そうって気はないんだから。大人しく…ッ…。 (言っていて、無理だろうなと思った。そんな簡単な話なら、そもそもこうして交戦していない。視界の隅で地面に落ちていく布を見て、それからすぐに視線の標的を目の前に変えた。間合い寸前でもう一度片手が地面をたたき、その衝撃を借りて起き上がると。右足を前に出して踏ん張り足場を固め、右手で逆手に構えたナイフを振りかぶりで肩へ刺そうと。本来なら首筋を狙うところ、たしかに命を取るまではしないといったスタイルで)
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皐月・灯 2020年2月6日
殺し合いだろ、これ。(頬を伝う血を拭い、踏み込む。発条仕掛けのように跳ね上がった相手に対して、此方は右腕を思いきり後ろに振る。肘を曲げて小さく畳み、腰を捻りながら貫き手を――否)変なヤツ。(肌がひりつく感覚は、首筋よりも肩に強く感じた。その刃が何処を狙っているのかを悟る。――貫き手は自然、掌となり、鳩尾を狙って突き出された。)
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ユア・アラマート 2020年2月6日
別に、今日の標的はお前じゃないし。 (ぼやくような口調と反して、体ばかりがまるで別の思考を元にしているかのように動く。避けられるかと思ったが、どうやら正面同士のぶつかり合いになりそうだ。手加減は微塵もしていないが、肩を貫かれるだけなら死なないだろう。というざっくりした思考で) それに、ここじゃあ何もしてなくったって死ぬんだから。無理に削ることもないんじゃないかって。 (どうしようか。そんな思考が少しだけ入り。右手は肩を狙うまま、左手は互いの隙間に入り込んで鳩尾を守るため横入り。――気分は等価交換のようなものだったかもしれない)
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皐月・灯 2020年2月6日
ぐぅぅぅっ……!(肩に灼けた鉄を押し込まれたような熱。ぞぶりと、体を直接伝わって鼓膜を揺らす音。切っ先は鎖骨で止まったものの、踏ん張り切れずにたたらを踏んだ。致命ではない。だが無視もできない――)っ……仕事を放りだしたら、おれみたいなガキにはもう2度と回ってこない。まだ、(餓え死にはできない。その一念で苦痛を押し殺し、掌底を打ち切った)
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ユア・アラマート 2020年2月6日
っぐ、げほっ……だからって……! (突き刺し、押し込み。本来であれば抜かなくてはいけなもの。それができなかったのは、言わずもがな左腕どころかそのまま体にまで突き抜けてくる衝撃を食らったせいだ。内臓が揺れ、せり上がる吐き気に歯を食いしばりながら突き飛ばされるようによろけ。ナイフは一本肩に残したまま、鳩尾を抑え込んで息を吸う) 仕事は選んだほうがいいと思うけどね。ああ、いたいなあ……。
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皐月・灯 2020年2月6日
(いかに貫き手でないとしても、衝撃を伝わらせて内臓を損壊させる一撃――のはずだった。決め切れなかった。ただでさえ小柄な体躯、その重量を少しでも乗せ損ねれば、必殺はその意味を失う。)ッあ……ん、ふ。(間合いが離れたところで、肩を手で押さえる。深々と突き立ったナイフは、そう簡単に抜けそうにはなかった)……どういう、意味。
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ユア・アラマート 2020年2月6日
っづ、ぅ……! (内臓へのダメージはそれなりに抑え込めたが、代償はそれなりに大きかった。庇いに入れた左腕が、満足に動かない。見れば本来関節がある部分ではない箇所から歪に折れ曲がっていて、使い物にならないのが一目瞭然で) どういう意味も何も。お前、今時分が守ろうとしてる相手がどんなヤツなのか、ちゃんとわかってるの? (利き手ではないとは言え、片腕は封じられた。じりじりと後退で距離を空け、次の一手を推し量る)
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皐月・灯 2020年2月6日
(肩から先は感覚があれど力が入らない。デッドウェイトはお互い様、というのが救いか。もうどちらも、先刻ほど速くは動けまい。)……金のあるヤツ。会ったことはない。……柵の外から見ただけ。(だらりと垂れ下がった左腕の先から、とめどなく血液が流れ落ちている。決着をつけるなら急ぐべきだと思いながら、攻め込むタイミングをうかがって)
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ユア・アラマート 2020年2月6日
(力を入れてみると、動くより先に痛みが走る。ああ、これは綺麗に折れたかもしれない。ため息に誘われるように、また左手に絡みつく入れ墨が光を孕んだ) そいつは、自分の領地の人間を吸血鬼に売り払っているような下衆だ。 (ゆらり、主を守るように。はたまた相手を威嚇するかのように小さな狐火がいくつも浮かぶ。どのみち地面に刺さったきりのナイフを取り戻すタイミングは、すでに無い) だから、なんとしてでも私は先に行く。
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皐月・灯 2020年2月6日
(体捌きは、今のところ互角。腕一本を代価に腕一本……いや、出血分、こちらがやや不利。さらには、灯った入れ墨の蔦模様に、相手にはまだカードが残っていることを察知する。)……ふうん。(宙に灯る光芒。そこに籠められた魔力の強さは、相手の言葉に真実味を持たせていた。もしもそれを信じるとするなら――)よくいる。そんなの、珍しくない。(この世界で金を持てる人間など、吸血鬼に媚を売る者しかいない。それでも行くつもりかと、問うた)
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ユア・アラマート 2020年2月6日
(霧を焼くように追い払い、その辺りだけは明るさを強くしている。戦闘の気配に怯えたのか、気がつけば鳥の鳴き声すら聞こえなかった。二人分の音以外はなにもない) そう、よくいる。その全てをどうにかできないんだから。 (狐火が燃えるぼうぼうという音は、徐々に大きくなっていく。明るい赤から血のように深く染まり、白い肌の横顔を光が舐めるように通過した) ――手が届く範囲くらいはどうにかするんだよ。ほら、こい。もう少しだけなら遊んでもいい。
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皐月・灯 2020年2月6日
(霧が晴れた――狐火が照らしだした相手の姿をしっかりととらえる。銀髪に、狐めいた仮面。年のころはやや上とみるが、その年代の男にしては体が柔らかい。やはり女だ)……その手、届くかな。(狐火の軌道を見切って一気に近づき、急所に一撃しかない。魔力防御くらいは張れるが、なにせ魔術師になってから2~3年と経っていない。殺す気でやって、相討ち)……。
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皐月・灯 2020年2月6日
(二人の間の空気が張り詰める中で、不意に構えを解いた。)届かせてやるよ、あんたの手。(青い一つ目が、鋭さを幾分か和らげて相手を見つめた)あいつは、おれが死んでまで守りたいやつじゃない。
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ユア・アラマート 2020年2月6日
あれ。 (素っ頓狂な声が出た。てっきり粘るのかと思っていたのに、あっさりと手のひらを返した様子に肩透かしを喰らって) なんだ。わりと意地でも通さないってつもりかと思ったけど。まあ、それならそれで、助かる。 (本番前に体力と魔力を消費しないですんだと、明らかに安堵した息をつく)
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皐月・灯 2020年2月6日
「ここじゃ何もしなくたって死ぬ」けど、続けたら両方死ぬ。(淡々と告げた。自分が死ぬでも、相手が死ぬでもなく、きっとお互い譲らずに、2人であの世に行くだろうと。まあ、あの世なんて見たことないけれど――何故か確信があった。こいつと、地獄に行くだろうと。)……おれとあんたの命、どっちも安いけど、あいつに使うのはもったいない。
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ユア・アラマート 2020年2月7日
……なら、いいんだけど。 (狐火が一斉に消えた。また暗がりが忍び寄ってきて、お互いの顔もはっきり見えなくなるような、そんなおぼろげに視界を奪われる。相手の言う通り、このまま意地を張り合っていれば、そのうち共倒れになっていたのだろう。その理由を求めるには、これから狩りに行く獲物では約不足だ) 私達よりもっと安い命相手にこれ以上寿命減らすこともないだろうからね。ま、通してくれるならそれでいい。やれやれ、素直にしてくれればお互いこんなナリにならずにすんだのに。
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皐月・灯 2020年2月7日
……あんたがやめないからだ。(闇に朧と消える前、薄い感情の奥に、呆れに似た気配を滲ませた。そこに敵対者への拒絶のような、刺のある色は薄い。)
いままで来てたやつみたいに、さっさと諦めてればよかったのに。(木の幹に歩み寄り、背を預けた)……あんたのそれ、綺麗に折った。たぶん、すぐ治るよ。
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