Lost
皐月・灯 2020年1月14日
疼く。
0
皐月・灯 2020年1月15日
(暗闇の中瞼を開いた。ぼやけた像がはっきりとした形を取り戻すまでほんの数瞬。曲がったブラインドの隙間、差し込んだ月明かりだけが部屋を照らしている。)
皐月・灯 2020年1月15日
(薬瓶の転がった床に、出しっ放しの真鍮の秤。表面が破けた黒い長ソファ。……ソファの表皮の中から見えている綿が、薄ら赤く見えた)
皐月・灯 2020年1月15日
……。(上半身を起こすと、ぽたりとしずくの落ちる音がした。睫毛に違和感。目元が何かで濡れている。)
皐月・灯 2020年1月15日
(指先で頬に触れると、ぬるりとぬめる感触。両手に刻まれた刻印回路は常に仄かに赤い光を帯びているが、指先だけが黒っぽく汚れていた。鉄の臭い。)……くそ。(テーブルに放置していたタオルを掴み、顔を拭って投げ捨てた)
皐月・灯 2020年1月15日
(床に落ちた薬瓶を拾い、ラベルを確かめる。鼻の奥に溜まった赤が垂れてきたが、タオルは捨ててしまったので乱雑に手の甲で拭って)……活性薬が効果あり。決まりだな……。(ぼそりとつぶやいた)
皐月・灯 2020年1月15日
(握った拳を、自分の胸に叩きつける。重い衝撃が胸の奥を揺らし、鼻腔と唇の端から、呻き声にも似た音を立てて深紅が散った)……っ。やりやがったな……。やりやがったな、クソ野郎……。
皐月・灯 2020年1月15日
どうやって手に入れたんだよ……偽神細胞なんて……。(血だまりにうっすらと映った己を睨みつけて。怒りと無力感との綯交ぜになった表情で、歯噛みした)
皐月・灯 2020年1月15日
(ストームブレイド。命を削り、過去の猛威を喰らう刃。ただの人間に齎された力の所以。――其れは紛れもない、喪失の牙だった)