0
【1:1】陽の下の桃、涼む日陰の黒

ロカジ・ミナイ 2019年7月1日


リンリンと鳴る、これは風鈴の音だ。

初夏の昼下がり、店の外の丁度いい大石に腰掛けて、
桃を模った風鈴を摘んで揺らす男がひとり。
そばに立つ木がいい具合に影を作っていて、
ささやかな風が程良く体温を連れ去ってくれる。

今日は近くでガラスもの市があったとか。


「――おや、店主なら席を外している様だよ」


そう言って男は自身の横っちょを顎で指して君を誘った。


「一緒に待つかい?」




0





ロカジ・ミナイ 2019年7月1日
(気怠げで無作法な仕草だが、表情はというと柔和そのもので)こいつを包む紙がないかと寄ったんだけど、ご覧の通り持て余していたところでねぇ。(ガラスに汚れや指紋なんかがつかない様にしているのだろう、摘んだ紐を体から離して持っているから、話す度に小さく音が鳴ってしまう)
0
華折・黒羽 2019年7月2日
(用を済ませた帰り際、心地好い音が耳を撫でる。この先にあるのは最近立ち寄る様になった手紙屋のはずで。音の出処はそこの様だとなんともなしに立ち寄る歩み。目に入ったのは日陰の下ですら鮮やかさを失わぬ桃色)…宵の頃にしか開かないんじゃないですか?(前触れの記憶では確かその様に謳っていたはず。店主がいるなら話は変わるが口ぶりからすればどうやら今は留守の様で、知らぬ顔では無い相手に警戒は無く歩み寄る。手元で揺れる風鈴は相槌を打つように)どうしたんですか、その風鈴。
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月3日
おや、そうだったかね。どうりで静かな筈だ。(このままここで宵の口まで待つ事はさしたる苦ではないようで、傾きかけの太陽をチラッと見はしたものの、顔色を変えるどころかいっそう笑みを深めらては姿勢を緩める)ややこれかい?来る途中でね、出会っちゃって。いいでしょう?桃の形した風鈴なんて、とーっても夏っぽくてさぁ。……黒羽は、夏は好きかね?
0
華折・黒羽 2019年7月4日
(待つ事すらも楽しんでいるかのようなその男の様子を眺め、木の影に入れば陽射しの下よりも和らぐ暑さにほう、と自然息が漏れる)桃の…。丸い形のものしか見た事が無かったので、桃の形の風鈴は初めて見ます。…器用なものですね(形に目を凝らしながらも問い掛けられれば視線は男の方へと向けられて)夏、ですか…?…嫌いでは無い、と思います。ただ、暑いのは苦手…ですけど(何分四肢が獣の毛に覆われているとなれば暑さは内に籠るもので。そんな例年の自分の状況を思い出し溜息ひとつ)…ロカジさんは、好きなんですか、夏。
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月6日
ああ……ハハッ、確かにそのお姿じゃあ、この世界の夏は天敵かもねぇ。いやね、実は僕もこう見えて化け狐の類だから他人事じゃなくって。夏場は人型になりっぱなしよ。(都合よくツルツルとはいかない様子の隣人がちゃんと日陰にいるのかどうか、上下に視線を動かして確かめる。日差しを避けられているのを見ればホッと笑みが零れた)夏は好きだよ、何せ開放的になるっていうじゃない?うっかりこんな可愛らしいモンまで買って、誰にって当てもないのに与えたくなっちゃうしさぁ……。……、そういや黒羽は歳はいくつだっけ。
0
華折・黒羽 2019年7月8日
(耳に入った話に眸を瞬いた)…ロカジさん、狐なんですね(言われてみれば少し、獣のにおいが混じっているような気もする。しかし見ただけでは人のそれと全く相違無い姿に不思議なものだ、とまじまじ観察しながら)開放的…(覚えのない感覚には首を傾げた。目の前の人は話し方や雰囲気からも随分と他人の懐に入るのが上手そうな気はしている。自身とは正反対に。だから手元で揺れる風鈴もてっきり)…誰かに贈るものなんだと思ってました。…歳、ですか?17ですけど…。
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月9日
黒羽は、えーっと、……?(同じく動物なのだろうが、その正体を求め毛並みを見て)そ、開放的。縮こまって丸くなってたら暑苦しいばっかだし、文字通り腕広げたり窓やらシャツのボタンやら開けたくなるでしょ。そういう事よ。財布の紐もこの通り。(風鈴をやさーしく振って音を立ててみる。こうして遊んでみると、ちょっとずつ愛着も湧いてくるもので)誰かにあげるよ、誰かは決まってないけどね。その誰かが見つかったらいいなぁなんてね、思っちゃうのも夏の醍醐味って話よ。……と、17か!10も下とは、こりゃ参ったねぇ。(立て掛けた長刀の柄に紐を引っ掛けて桃を吊るす。風に靡いて鳴る自然な音に変わった)
0
華折・黒羽 2019年7月10日
(思案と伺う様な視線がこの獣の部位に向けられている事に気付けばその理由に思い至り)…ああ。俺は、猫です。それと、烏。(腕を持ち上げた後にその流れのまま背の両翼を指差して。見事なまでの熱を集める黒に染まっている。彼の言うまでの開放的、には至らぬまでも心当たりはあるようで、なるほどとひとつ頷けばしかし次いで零れたのは)…財布の紐が緩むのは、夏とは関係無いような気もしますが…(贈る誰かが見つかるのも夏の醍醐味、という言葉にはさらに首を傾げるばかり。エンパイアの山奥、狭い世界で育った身には思い至らぬ話)…へえ、(年齢の話には数度目を瞬いて)ロカジさん、30も手前なんですね。
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月12日
猫、(と聞くとちょびっとだけ瞬きが増え)と烏ね、素敵な組み合わせだねぇ。ってことは、飛べるのかい?空を。(翼に羨望の眼差しを向けた。モコモコとしていて、いや確かに今後数ヶ月の苦労は窺えたけれど)ふふっ、鋭いねぇ、黒羽。仰る通り、財布の紐は冬にも緩む。(何なら春にもね、とイタズラっぽく眉を上げて)……本当に鋭いね、君。そう、30も手前だから余計ね、ロマンチックなアレソレに期待するのがさ、日課みたいになっててね……。(遠い空を見る)17なんて青春真っ只中なんだし、そういう期待も少しはあるんじゃないの?(桃の風鈴への反応がパッとしない事にようやく気付いて、不思議そうに隣の様子を覗き込んだ)
0
華折・黒羽 2019年7月16日
(少し空いた間と瞬きに首を傾げるも問われた事には頷きを)翼としての役割は果たせます。人を運ぶとか、そういった事は出来ないですけど(後付けの様なこの翼では自分の身一つを動かすので精一杯。向けられた眼差しにはそんないいものじゃないですよ、と返した)…なるほど、ロカジさんの財布の紐は常に緩みっぱなしだという事はわかりました(この調子ではきっと秋も大差ないのだろうと)ろまん、ちっく……せいしゅん…?(聞き慣れない言葉の羅列に頭を捻りながらも年齢から紐づく話、そして遠く見つめる視線からある程度の見当をつけて)…………もしかして、色恋の話、ですか?
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月19日
へぇ、へぇ、いいなぁ!お空を飛ぶのは気持ちがいいからさ、一度でいいから自分の力で飛んでみたいと思うよ。(絵空事だからこそ、瞳を輝かせて夢を語った)いやぁ、仰る通り、参った参った!ってな事を知ったからって、緩んでるとこを狙わないどくれよ?(そう言って左のズボンのポケットを押さえる。財布の在り処までさらけ出すのは、迂闊さなのか冗談なのか。やけにニヤけた顔を見ればお察しだろう)そうそう、色恋の話。…………おや、あんまりピンと来ないかね?(覗き込んで様子を窺い、ふむ、と気付く)もしかして黒羽は、人里に来て日が浅いのかい。
0
華折・黒羽 2019年7月20日
…世界は広いですから、何処かには自力で空を飛べる方法もあるんじゃないですかね(猟兵であれば世界を行き来する事が出来る。高い建造物が雑多に立ち並ぶ世界では、空を飛ぶ何かを見かけた事もあったのだし、可能性はありそうだと考えながら)心配せずとも人の財布に集る程困ってはいないので、安心してください。(呆れたように返せば徐に足を動かし、木に凭れる様に腰を下ろした。僅かに滴り落ちる額の汗を袖で拭って)元は小さな集落で暮らしていたので、その場所しか知らなかったんです。猟兵を始めてからですね、色々な所に行くようになったのは。……………恋は別に…知らないわけでは、ありません…(最後はぽつり、声量を落として視線を逸らしながら)
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月24日
そうだねぇ……ああ、スペースシップワールドなんて、似たような体験が出来た気がするな。ただいかんせん青空じゃないのがねぇ……僕はアレが欲しいんだよ。良くない?アレ。雲。(夕刻が近付いて尚青々とする夏空を見上げ、指先で雲を囲う様に円を描いて)(腰を下ろす様子にニッと笑った)へぇへぇ、なるほどねぇ。僕も猟兵になるまでは狭い世界にいたもんだ。どうだった?飛び出してみた世界ってのは。僕は楽しくて仕方ないけども。……それはがどんな恋か聞いてもいいのかい?(小声を勘繰るではないにせよ、かえって唆られた興味を隠し切るのは惜しかった)
0
華折・黒羽 2019年7月25日
すぺえす…ああ、“機械”の世界、ですか?実はその世界には一度も行ったことが無いんですが…。でも雲は、いいですよね。もし乗れたなら、寝心地、良さそうです(飛べると言っても雲にまで至った事は無い。故に語られる答えもあくまで想像に過ぎず)そうですね…(上を見上げながらも問われた事には思案を挟み少しの間を置いて答えた)悲喜様々、何もかもが走り抜ける様に過ぎていく。…世界は少し忙しない、と思いました(駆け足で過ぎ行く世界の移ろいを楽しむ余裕は、未だ無く)……………(「どんな恋か」。過る記憶。)…あなたが期待する様な、楽しい話は出てこないと思いますよ。
0
ロカジ・ミナイ 2019年7月30日
そうそう、みんな鉄の船に住んでる所。機会があったら行ってみてよ、僕のイチオシ世界よ。きっと雲の上に行くよりも簡単だ。……ふふ、やっと気が合ったね。雲の上でお昼寝、したいよね。(グイッと背を伸ばしてから後方へ手をついて、体を少し解放した)そうだねぇ、確かに確かに、見るのも聞くのも忙しくって……情報過多って言うのかね、誰にでも心地良いスピードなんてないんだって驚いた事もあったな。(ちょっとだけ視線を落として、懐古に浸った様だ)僕が期待する恋バナが果たして甘酸っぱい恋なのか後味の悪い悲恋なのか、どんなものだと思ってるのか知らないけどさ、(それで興味を失う事はなく、けれど繊細なものを扱う様な所作で君を覗き込んで)あんまり話したくない恋だった?
0
華折・黒羽 2019年7月31日
既にその世界は平穏を取り戻している、と聞きましたけど…そうですね、もし機会があれば(頷きを返すだけに留めて、今度依頼を受けにいく際に探してみよう、と。穏やかな風に押され流れていく雲を眺めては口を開いて)止まらずに流れていく世界の様は、宛ら雲のようだとも…思いますけどね。抗いたくとも抗えない風がこの世界には多過ぎる…(身動ぎを感じて視線を向ければ少し表情の変わった相手の様子を捉えて)…そのまま、揚々と楽しく語れるような話がない、という事です。それに……まだ過去では、無いので(掠れる程に小さく呟いた言葉の終わり。覗き込まれた視界からは逃れる様に視線を外した)
0
ロカジ・ミナイ 2019年8月3日
(自然な位置に視線を置けば、隣人と同じように雲を眺める事になる。同じ雲を眺めているかは知らないが。)はぁん……いい例えだね。本当にその通りかもしれないな。少し目を離したら、形が変わっちまったり、下手すりゃ消えてなくなっちまってたり。食らい付いて生きていくにはあんまりにも不安定だ。あの分厚い雲だって、機嫌はすぐ変わるんだろうなぁ。(この季節特有の雲に向け、プーと子供染みたため息をひとつ)…………ほう、そうかい、正に今。(小さな声をまるっと拾ってしまったから、パチクリと瞬きを繰り返したら、キュッと口の端を持ち上げて)いいねぇ、羨ましいねぇ。……いやね、当事者はそれどころじゃないってのは分かってるけど。(相手の声が掻き消えない様に、静かな声色に努めて)
0
華折・黒羽 2019年8月8日
(逃れた視線は風に揺れながら生い茂る草を映していたが、届く声には傾く耳が時折向きを変えその音を拾う。何気ない筈の会話に宿る言霊に引っ張り上げられるように呼び起こされそうになる記憶に蓋をして、己の手をゆっくりと目の前で開いた)掴んでいると思っていたものも、時には簡単にすり抜けていく。分厚い雲を抜けた先に必ずしも望むものがあるとは限らない…(彼が言うように、それこそ雲も世界も、機嫌なんて瞬きをしている間にころりと変わってしまうだろう。けど)
0
華折・黒羽 2019年8月8日
…それでも食らい付きたい、と…思ってしまうんです。届くかもわからない、掴めるかすらもわからないのに。…ロカジさんは、そういう事一度も無かったんですか…?俺よりも経験は、多いのだろうし…(開いていた手の平をぐっと握り、納める。言葉尻には軽口を交えながらも、体良く話を相手の事へと転換しようと問い掛けと共に再び視線は上げられて。口角を持ち上げ楽しげにする相手の表情がその目に映った)
0
ロカジ・ミナイ 2019年8月16日
(不意に視線を察知して、青い瞳でそちらを見る。空をそのまま写した様な色だ)……あるよ。山ほど。(ニッと笑って、また空を見上げる。記憶を手繰っているのか瞳が左右に揺れた)これでもね、若い頃は無鉄砲なとこがあってねぇ。やってみなけりゃ気が済まないし諦めも悪い。届くかもしれない、掴めるかもしれない、ってさ。……何か掴んでもすり抜けてくれりゃいい方でね、ギュッと握りつぶしちまったりもしたなぁ。(苦笑混じりに懐古を重ね、戯けた風に口端を下げて見せ)……しくじるのはおっかないかい?
0
華折・黒羽 2019年8月20日
(山ほど。その答えに驚きはしなかった。)…安心してください、今でも無鉄砲な感じはしてますよ(あくまで見た目には、だけれど。この人と会って余り日は経っていない。内面は知らないのだから判断材料はその見目でしか測れないのだから仕方ない。言葉を挟みながら続く言葉にはしっかりと音を拾うように。繰り返す事に、恐れは無いのだろうか。すり抜けていく事に虚しさは…握りつぶしてしまった事に、後悔は)…(聞きたい事は幾らでも出てきたけれど、言葉に成せない)…一度しくじってるからこそ、尚更怖いんです。
0
ロカジ・ミナイ 2019年8月21日
おや?ヘヘッ、そうかい?僕もまだまだ青いかねぇ。(種族由来の体質では得られぬ、外側に漏れ出す若さというのは気恥ずかしさしかなく、耳の縁をポリポリ掻いた)ふむ、もうしくじり済みだったか。大した痛手でもない様なのは、阿呆みたいに何度も繰り返して、慣れちまったりするもんだけどね。一回でビビっちまう様なのは、……そりゃもう痛くって、大事なモンだったんだろうよ。(後ろに背を預けて、足をゆらゆら上下に揺らす)僕なんか、どうやら生まれつき鈍感らしくってね、ヒトよりずっと阿呆みたいに繰り返す生き方でさ。「しくじった」って思う様な事案は、そりゃもう複雑骨折より重傷でねぇ。(ケラケラと笑って)
0
華折・黒羽 2019年8月27日
大人の無鉄砲って、子供の無鉄砲より厄介そうではありますけど…(零れ出る軽口はその男の飄々とした雰囲気がそうさせるのか、思わず出た言葉にあっ、と口元を隠した。男の話を聞きながら伏せた目の先で記憶を遡る。回数を数える程の経験など重ねていない。記憶にあるのは、頭を過るのは、最初で唯一の、そしてまだ終わらぬ思い)複雑骨折…。…それで今は、ロカジさんのその複雑骨折とやらは治ってきているんですか?(それとも、まだ)
0
ロカジ・ミナイ 2019年8月30日
ハハハハハッ!仰る通り、身体もデカけりゃ金まで使ってやる無鉄砲だもの、厄介厄介、実に厄介よ!(豪快に白い歯を出して、図星な自分の生き様も黒羽が自身の軽口を咎める様な仕草もまとめて笑い飛ばす)ああ、そりゃもう、治りが早いのが取り柄でね。……治って頑丈になったり、複雑なまま柔らかくなったり、いつまでも何となくシクシクしてたり、傷も色々よ。――薬屋やってるのに、生き様を治す薬は作れなくってねぇ。へへ。
0
華折・黒羽 2019年9月5日
(笑い飛ばす男の様子に、なるほどこれは無鉄砲と言い得る豪快さと納得した様に)経験を糧に、というやつですか。なるほどそれは生きた年数が連れ来る
0
華折・黒羽 2019年9月5日
(言葉の途中に誤送信)強みですね。…俺にはまだ縁無い要因だ(己の痛みもいつか違った形になることはあるのだろうかと頭の片隅で考えながら、─ふと)…ロカジさん、薬屋だったんですね(初めて知った事に僅か瞠目し)
0
ロカジ・ミナイ 2019年9月7日
へぇ?ヘヘッ、強みなんてそんなご立派なもんじゃないけどね。何にせよ糧にする経験がなけりゃどうしょもないからさ、面白そうな事には手付けてみる事にはしてるよ。(そう言う側から、横の木の葉っぱにくっ付いたちいちゃな芋虫を突いて)そう、薬屋なのよ、僕。(小綺麗な紙切れを差し出す。店の情報が書いてある様だ)どっかがおかしい時や痛い時はいつでもおいで。相談くらいには乗れるだろうよ。
0
華折・黒羽 2019年9月10日
…俺も、色々経験して色々な事を学びたいです。…ロカジさん程無鉄砲にはなれそうもありませんけど(己の中に経験が増えれば、この人の様な余裕も持てる日が来るんだろうか)塗り薬以外、あまり使った事は無いですが…(渡された紙を受け取り書かれた字を眺めながら)ロカジさん(視線そのままに呼ぶ声)…心臓を絞め続けてずっとじくじくと痛む傷を、治す薬なんかもありますか…?
0
ロカジ・ミナイ 2019年9月17日
んん?……そうねぇ、(心疾患の話ではない事など当然で。だからこそ返答に時を要したのだ。虚空を眺める瞳は、空ではないものを映している)…………チュウだな。(自身の回答に思わずクスリと声を綻ばせ)接吻ね、知ってる?アレはココ(胸を親指で突く)のじくじくに良ーく効く。相性と用法用量が重要なんだけども。(ムムムと難しい顔になった顎を撫でて)ただアレは、箱や袋に入れて売れないのが難点でね。ナントカの病に塗る薬は、僕も欲しいくらいでさ。
0
華折・黒羽 2019年9月22日
ちゅう?(分からなかった言葉に顔上げ、相手へと視線向けるも次いだ言葉に表情はひととき固まって)………………。
0
華折・黒羽 2019年9月22日
…ロカジさんに聞いた俺が馬鹿でした(思わず零れる溜め息を隠そうとはせず)接吻くらい知っています。ですがはいそうですか、と簡単に出来るものでも無いでしょう(相性だ用法容量だなんだと、この人は何を言ってるんだ?と理解出来ぬと言いたげな顔で。そして疑問が浮かぶ)…ロカジさん、ちゃんとした、薬屋ですか?(ちゃんとした、という所だけ強調した。目の前のこの人は、飄々とし過ぎていて言っている事が嘘か真か判断しづらいのだ。これで薬屋を営んでいるのかと疑問に思ってしまうのも不思議では無い筈だ)
0
ロカジ・ミナイ 2019年9月23日
おや、機嫌を損ねてしまったかい?(こりゃ失敬、と後ろ頭に添えた手で押し下げる様に頭を垂れて)黒羽の言う事はもっともだ。意味ある接吻はおいそれと出来るもんじゃない。しかしながら僕だってウソは言っちゃいねぇ。どうしたってね、馬鹿と色恋につける薬はないんだよ。ないというよりか、あっちゃいけねぇと言った方がいいな……馬鹿はともかく。――まぁ、さっき言った通り、僕こそ欲しいと思って久しいんだけどね。恋患いなんぞと思った事なら幾度となくある。けどさぁ、こうも思うわけ。その胸のシクシクの元は、(相手の胸元を指差して)薬ひとつで消していい様な想いなのかい?ってさ。
0
ロカジ・ミナイ 2019年9月23日
……そんなだから、黒羽のいう“ちゃんとした薬屋”じゃないかもしれないが。ちっぽけでも譲れぬ信条みたいなもんは持ってるつもりよ。(その言葉は相変わらず飄々として)
0
華折・黒羽 2019年10月4日
別に機嫌は…損ねていませんが…(ついと一瞬は視線逸らすも、話が始まれば再び相手の目元へ視線向けて。男が語る自論を素直に身に受けられる程齢を重ねてはいない。話している間、静かに聞きはするものの、どうにも至らぬ思考の道筋にこれが大人、というものなのだろうかと。狭い世界で生きてきた自分にはまだ解らない世界が山ほどあるのだろう)……例えば他に思いを移したとしてそれで治るよなものならば…そもそもここまで、引き摺ってなどこない。…消したくは、無いんです(指差された胸に手をあてぽつり。すっと何かが染み入る心地に、先程のロカジさんの言葉が紐づく。僅かでも何かが見えた様な感覚。それに伴って、内から湧く気まずさ)…すみません、ロカジさん。俺凄く生意気な事を言ってしまいました…よね。
0
ロカジ・ミナイ 2019年10月7日
へぇ?生意気? ハハハッ!そりゃあ、初恋に溺れたままの少年で居られる様な性格でも種族でもないからねぇ。こっちこそ不粋な事ばっか言っちまった自覚はあるのよ。――それにまぁ、僕みたくハンパばばっかの女の話に花が咲いちまう様な17歳にはあんまり会いたくねぇなぁ……。(言って、想像しては変り者の希少生物でも見てきたみたいに苦笑した)…………。で、(肩を寄せて声を顰め)その相手さんはベッピンさんなのかい?(浮き足立った口調で尋ねる。興味半分揶揄い半分と言った下世話な“アレ”だ)
0
華折・黒羽 2019年10月12日
………恐いもの見たさで見てみたい気もしますけどね、そんなロカジさん。…ものの数分で違和感は湧いてしまいそうですけど(想像してみれば中々にしっくりこない光景に首を傾げそうになる。この在り方がこの人たりうる所以なのか。例えとして零れた言葉には確かに、と此方も頷く)俺もそんな同輩にはあまり会いたくない…というか、会った所で話を出来る自信がありません。─…?(肩寄せた相手に何事かと瞬き、小さく紡がれた問い掛けにはああ、と潜められた音に納得して。思い出せばひらり、舞う桜)…村で一、二を争う、美しい人ですよ(そこに雑じるのは珍しくも自慢気な、目を細めるのみの小さな笑み)
0
ロカジ・ミナイ 2019年10月16日
ふふふ、そういう僕もいたはずなんだけどねぇ。……箪笥のずーっとずーっと奥の方に仕舞い込んだ一張羅は、例え一張羅でも忘れちまうもんでさ。引っ張り出したって、きっともうカビ臭くってダサいしねぇ。(そして。質問への返答をワクワクと待っていた男に、望郷の中に珍しく自信の滲む声が信憑性を増して届いた)へぇぇえ!面食いかい!!ッカー!黒羽も隅におけないねぇ。ククク。……同郷って事は、お耳生えてるのかい?お耳。(頭上で両手を開け閉めして耳の真似をする。自分の本当の耳が生えている場所でもあり。要するに「黒羽と同族か」を問うているのだろう)
0
華折・黒羽 2019年10月17日
へえ…(僅か、耳の痛い話だ。今話している自身の想い人こそその“一張羅”に当てはまるのではないだろうか。彼と違うのはその一張羅を、自分は未だに衣桁に掛け毎日毎日眺め続けているという事。箪笥の奥になど仕舞えないままこの日まで来てしまっているというのに、その一張羅の事を尚自慢気に話す自分の、なんと滑稽な事だろう。はたりと両手の平を頭の上で動かす様子に小さく浮かべた笑みそのままに)俺は…只人の居る村で育ちました。周りに同族など居ませんでしたよ。…今話した彼女も人です。ただの、人間。俺の様に耳も尾も生えてなければ翼なんてものも勿論無い(そんな人間に、己は傾慕した)
0
ロカジ・ミナイ 2019年10月21日
ふぅん……?(頭の上の手をゆっくりと下ろす。両膝の上に片手ずつをゆったりと置いて話を聞いた。誰かが想い人の姿を浮かべる表情を見るのは好きなのだ)人間ってのは毛の色も肌の色も均一で、飛び出たとこも少なくて、シンプルだよねぇ。当たり前だけど、里で暮らすにはとっても理に適ってる。(ひとつひとつの言葉をゆっくり咀嚼して見えてきたのは、女の姿形ではなく。彼が感じている、里にいる時の自身の異質さだ)彼女と違うことに、負い目を感じた?
0
華折・黒羽 2019年11月3日
(投げ掛けられた問いを思考の中で解かせ答えへと紡ぐ)……そう、ですね。…嫌でも、考えずにはいられませんでしたよ。(惹かれれば惹かれる程に何故彼女と自分は違うのかと、同じであればなんの躊躇いも無く彼女の手を掴めたのに、と。)けれど、彼女はそんな違いなど存在しないとでも言う様に俺を俺として見てくれた…受け入れてくれたから……──あ、(話しながら記憶に深く沈んでいっていたものだから、言わなくていい事まで口走ってしまったと途中で口を真一文字に結んでふいとそっぽを向く)
0
ロカジ・ミナイ 2019年11月11日
(本音が垣間見える話を大人しく真面目に聞いていたが、唐突に途切れてしまって、パチクリと瞬きをした)(あっちまで向いてしまったもんだから、ああ、そうか、口下手だったっけね、とこちらも視線を外して彼を解放し)いーーい女に出逢ったもんだねぇ。ベッピンさんで懐も深いだなんてさ。自分と違うものを受け入れるってのは、そう簡単に出来る事じゃないもの。(事実、ここに並ぶ両者とも、形は違えど「異質」を強く意識してきたのだ。こと狐男など、自分の尻尾の色も忘れてしまいそうな有様だ。何かを思い出そうとして空を仰いだ)そんで?好きって言ったんだっけ?
0
華折・黒羽 2019年11月30日
(唇は頑なに真一文字。彼女の事を誰かに話すのはいつぶりだろうか…。いや、むしろ誰かに話したことはあったろうか…?何故今、この人を相手に話してしまったのだろうかと。ちらり視線を戻し覗き見れば外れていた視線は探し物をしているかのように空を見上げていた)──結局、……言えず仕舞い、ですよ(するり、結びがほどける感覚。薬屋だと言っていたこの人は、であれば医学を修めているのだろう。それ故に言葉で、空気で、視線で以てしての人心掌握が上手いのか…はたまた、ただ俺自身が誰かに話したいと感じていたのか。口を滑り出た理由は解らないままだけど)
0
ロカジ・ミナイ 2019年12月10日
そっかぁ……どれもままならないもんなんだねぇ、慣れない恋ってのは。(そう呟く横顔は空を仰いだままだ。見ているのは空か記憶か……言ってしまえば初恋を思い出していたからなのだが。途方もなく古い思い出だったから、思い出すのに時間がかかってしまった)(けれど、一度蘇った高鳴りは記憶の色を取り戻していく。変わった事があるとするなら、その記憶に微笑むことができる様になった自分だと。隣の青年を見て気付いてしまった)(ヒョイと飛び跳ねるように石から降りて、君と向き合う位置に立った)――……じゃあさ、次にその子に会ったら、どうする?
0
華折・黒羽 2019年12月15日
(重ねた記憶を思い起こしているのだろうか。呟かれた言葉からはそう捉えられて、ままならないもの、という一言がまたじくりと胸に染み渡る)……。(そう、ままならないもの。多くを知っているわけではないし、持ち得た知識は見聞の域を出ない。けれどたった一度芽生えたこの思いがこんなにも心に根を張るのかと、自覚した感情が己の未熟さを知らしめる様で)、…次(土踏む音がしたかと思えば前方頭上から降ってきた声。移動し眼前にいるのであろうこの人の言葉を反復し、飲み込む。ゆっくりと立ち上がり、上げた視線に映る彼の顔はやはり笑んでいて)──内緒、です。(柔く小さな弧を描いた口元。その子に会ったら、会ったならその時は──。確証の無い未来を何度夢見た事か。けれど今はまだ、なんとなく音にしたくはなかった)
0
華折・黒羽 2019年12月15日
(ひゅるり、風が髪をさらう。来た頃よりもほんの少し冷たくなった風が時間の経過を知らせる様で。見上げれば傾きかけているだけだった陽も大分落ちてきていた。──ああ、そろそろ店の戸が開く頃合いだろうか。)
0
ロカジ・ミナイ 2019年12月20日
――ほう?(視線が近付き、垣間見えた微かな……これはきっと笑顔だ。そこに秘められた答えがある気がしたときには、こちらの口元も弧を描いていた)(そんな風に声が途切れた折に、店の方からカタリと音がした。ああ、とそっちを見て) そろそろ開きそうだねぇ。ふふ、すっかり話し込んでいたらあっという間に時間を潰しちまったようだ。(夏の陽は暮れるのが遅い。それでお天道さんがこの角度なのだから、そこそこの「いい時間」になっていると分かった。セミの声もいつの間にか静まっている)(風鈴を担ぎ上げ、行くかい?と親指で店を指しながら、歩を向けた)
0
華折・黒羽 2020年1月6日
(カタリなる音に耳を震わせ同じように店の方へと視線向ける。戸は開かないまでも、微かな物音が確かに人の気配を伝えた。向き直り見るは、音鳴らす風鈴の呼び声。静かになった夏の暮れにどこか切なげに音は響いて消える)…ロカジさん(頷きついていく背にぽつり)…どういった形であれ、もしこの思いに決着がついた時は……また、話聞いてください(それはいつになるか分からないし、ちゃんと決着がつくのかすら分からない、けれど…そう告げる事で前に歩む理由…いや、言い訳に近いだろうか?そういったものが欲しかったのかもしれない)
0
華折・黒羽 2020年1月6日
(──小さく小さく投げ掛けるだけの言葉を置いたまま、黒翼背負った黒猫は桃彩の背を追い抜き、その顔は見せぬまま夏の風に尾を撫で小さく駆けてゆく)
0
華折・黒羽 2020年2月8日
(それは夏のとある一日。風鈴の音が招いたひととき。

雲は変わらず流れていく中で
強い陽ざしがけれどどこかあたたかに──其々の歩む道を照らしていた。)
0
華折・黒羽 2020年2月8日
―了―
0