1
【RP】Moon knows

皐月・灯 2019年4月13日


――大抵の人間は、建物の中で夜を明かす。

たとえ青空のない世界でも、それは同じだ。
人は眠り、僅かでも苦境を忘れ、ひとときの夢を見る。
……自分を取り囲む壁の向こうで何が起きているかなんて、想像もせずに。

住人たちが寝静まった村は、昼間とは全く違う静けさに満ちている。
だが、もしも耳を澄ませたなら、奇妙な息づかいや、ひたひたという足音が聞こえたかもしれない。

人ならざるもの、あるいはその傀儡。
暗い隙間から溶け出す様に現れ、あたりを跋扈し、まだ屋外に居る人間を襲う。

そうなったら最後、襲われた者は理不尽に命を奪われるばかりか、肉を貪られ魂まで引き裂かれる。
だが、辱めはまだ終わらない。
抜け殻の筈の骸は、連中と同じ存在に成り下がり、新たな犠牲者を求めて彷徨いだす……。



……まあ、珍しい話じゃねーよな。
見かけたらとりあえずブチ砕いて終わり、そんな程度のことだ。
……別に。人助けなんて気取っちゃいねーよ。
夜中に騒がれちゃ迷惑なんで、片っ端からブッ飛ばしてるだけだ。

……そういや、あの夜はちょっと違ったな。
あ? ……ちげーよ、もう一人いたんだよ。

……女だ。
黒い鎧に銀色の髪。オレと同じで、両目の色が違う女。

――――たしか、名前は。



◆場
ダークセイヴァーのとある村外れ。
人の気配はなく、月明かりだけが照らしている。

◆人
アストリーゼ・レギンレイヴ(闇よりなお黒き夜・f00658)
皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)




1





皐月・灯 2019年4月13日
(そう、特に目を見張るようなこともなかった。煙を上げて崩れ落ちる魔性を蹴倒し、未だ魔力をたぎらせる刻印回路を励起させる。背後で得物を振りかざした敵の額に、つ、と指を触れた。その刹那、術式は接触点を通じて対象の体内を駆け巡り、次の瞬間、異形の頭がスイカのように破裂する。――動きは鈍重、苦戦するほどでもない)
0
皐月・灯 2019年4月13日
ちっ。数だけは無暗に多いな……(返り血を拭い、忌々しげに呟く。これを続ければ、あるいはこの界隈を支配するヴァンパイアに辿り着けるかと思ったが……調査するにも、殲滅するにも、どうにも人手不足が否めない)……ん?(そんな折、何かの気配を感じて、ふとそちらの方を見遣った)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(譬うならば、それは黒い疾風のようであっただろう。)(光纏わぬ全き漆黒。それが少年の視界の外から、突如として飛び込んできたのだ。)(目を凝らしたならば、それが人の姿をしていることにも気付くかもしれない。――漆黒の鎧を纏い、禍々しき大剣を携えた女の姿。)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(女の振り下ろした剣が、鈍い動きで爪を振り上げる魔性を両断する。正しく両断、脳天から真っ二つに。噴き上がる血がその頬を濡らすのも厭わず、女は次の獲物を求めるようにその異色の瞳を魔性の群れへを向けた)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(漆黒の影。嚆矢の如く真っ直ぐに戦場に現れたそれは、誰何の声を上げる暇も与えず魔性を屠った。)アンタ――(予期せぬ闖入者の姿に、ほんの僅か二色の目を瞬いた。何者かはわからないが……刃の向いた先がこちらでないということは、敵ではないのだろう。)猟兵か? なら、手を貸せ。(言葉少なに言い放ち、魔性の両手足に拳を叩き込む。絶命、炎上。燃え上る紅蓮の炎が周囲を照らして)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(横薙ぎに振るった剣の軌跡が、そのまま複数体の胴を横一文字に切り裂く。そのまま更に群れの中へと踏み込み――かけて、自身へ向けられたと思しき声に振り返る。――少年だった。紅玉色の瞳がその異色の双眸へと向けられ。それに僅か遅れるように、黄金が追従する。)――構わないわよ。(そう持ち掛けてくるということは、相手も言わずもがな、ということであろう。短く答え、再び敵群へと視線を戻す)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(こちらに向いた顔と声で、それが女であると知る。真っ先に印象に残ったのは、自身と同じ、両目で異なるふた色の瞳だった。ルビーとトパーズ。覚えのある宝石を連想する色合い。左目の方がわずかに動きが速い――というより、右目の方が遅いのか。)――おう。(悠長にしているのはそこまでだ。敵の威嚇を無視して突っ込む。爪の一撃を、跳ね上げた肘を叩きつけることで弾き、がら空きの胴に両拳をぶち当てる。直後、巨体が千々に刻まれた。――足りなかった手が、たった今足りたようだ。攻勢をかければ、殲滅までにはそう時間もかかるまい)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(向き直ればその瞳に映した敵以外へと割く意識はない。振るった黒剣が首を刎ね飛ばす。向けられた牙が剣持つその腕を害する――何するものぞ。剣から放した逆の手でその喉頚を締め上げる。ごきりと鈍い音。細腕の女には似つかわしくない膂力で以て捩じり切るようにその首を握り潰し、力を失った肉塊を放り捨てる。――再び剣を握り直せば、斃れたものどもに目をくれることもなく、女は次なる獲物を求めて疾駆した。目の前に動く魔性がひとつ残らずして途絶えるまで、その行進は止まぬであろう)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(――しばらく後。魔性を大木に叩きつけ、そこに拳を打ち込んだ。まばゆいほどの紫電が弾け、炭化した敵がぼろぼろと崩れ去る。群れ為していた魔性は全てが滅され、もはや動くものは自分たち以外いない。手こずった――ふう、と一息ついて)……おい、そっちはどうだ?(轟然たる行進、剣の一振りで敵を両断する尋常ならざる膂力。何の心配も要るまいと、女の方に視線を戻す)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(――振るった一太刀が、飛び掛かる魔性の腹を裂いた。噴き出す鮮血、勢いを失ったように地に墜ちたその首を、具足の踵で以て踏み砕く。頬を濡らす赤い血をぐいと乱暴に拭い取って、息を吐いた)問題ないわ。そちらも――(平気そうね、と。振り返った視線の先、もはや周囲には少年以外に動くものはなく)一人で、なんて随分な無茶をするものだわ。怪我は?(――尤も、この程度で手古摺る様には見えなかったけれど。)
0
皐月・灯 2019年4月13日
……別に、大したことねー。相手の頭数が多いのなんざ慣れっこだ。(今回は少々多すぎたけれど。まあ、五体満足で立っているのだからよしとしよう。手傷は負ったが、どれもかすり傷の類だった)これで全部みてーだな。……で、アンタはどっから出てきたんだ?(改めて問うた。ついでに、フードの下からじろじろと相手を眺める。初対面ながら、礼儀作法の欠片もなかった)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
そう。(じ、と眇め見た相手は、傷を負ってはいるようだが、致命傷には程遠い。とあればそう大仰に身の心配をするものでもないだろう。恐らく彼は、そういう扱いを好まない人種のように思えた)あたしは偶々通りがかっただけ、よ。此方へ向かったのは、戦の気配がしたものだから――誰かが襲われているとしたら、援けに入るのは普通でしょう?(少なくとも女の中でそれは、当然の所業。此方を見定めるようなその視線にも、些かも怖じることなく答えて)
0
皐月・灯 2019年4月13日
……ふうん。(相手の視線を感じれば、すぐに目を逸らす。存外に柔らかな表情で迎えられて、むしろ僅かな居心地の悪さを感じた)……そりゃ随分と優しいこった。(そも、こんな何もない場で起きた一戦、その発端は、自分が彼女と似たような真似をしたことにある。それを認識していながら、憎まれ口を叩いた)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
優しくはないわ。放っておけないのはあたしの事情だもの。(憎まれ口に、特段気分を害した風もなく応えて。逸れた視線の先を追うこともなければ、それに不快を覚えることとてない。貴方とて似たようなものでしょう? ――などと、問うことも。)首魁を追うのならば手伝うわよ。生憎と小難しいことは苦手だけれど――盾にくらいならば幾らでもなれるわ。
0
皐月・灯 2019年4月13日
……そうかよ。……ならいい。(目深に被ったフードの縁を摘み、一段と深く位置を直す)……この近くの村が、ヴァンパイアどもに食いもんにされてる。気まぐれに殺されたり、生きたままペットの餌にされたりな。……まあ、ここじゃ珍しい話でもねーけど。(今しがた撃滅した魔性どもの魔力を辿れば、出処を突き止めるのは容易いだろう。相手の腕は見た。同行すれば、間違いなく仕事は早く片付くはずだ)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(ただ)……アンタ、さっき腕を噛まれてたろ。あれは……その、大丈夫なのかよ。(ぼそりと呟くように聞いた)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
――(少年が語り聞かせる惨状を耳にすれば、異色の双眸を僅か眇める。瞳の奥にちらつく、ヴァンパイア――この世界の支配者たるオブリビオンへの憎悪を、せめて気取られぬようにと視線を僅か伏して。……そう、よくあることだ。この世界では珍しくもない有り触れた悲劇。――だけれど、そうであろうと、そうであるからこそ、それを見過ごすことはできない。剣持つ手には、無意識に力が籠る)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(――しかし)腕?(問われれば、目を瞬いて。自身の二の腕を顧みた。手套は裂け、白い膚にはくっきりと噛み痕が残り、赤黒い血が腕を伝い、肘の先から滴り落ちる――それを、何でもないことのように見遣って)慣れているわ。このくらい問題はないわね。(この通り、と。剣から放した手を握り開きしてみせて)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(目を伏せた女の反応に何を言うこともなく、横目でちらりと見た。――かいつまんで話したつもりだが、それでも外道の所業である事実は薄めようもない。胸糞悪い話だ。それが、この世界でありふれているということも。)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(――じっとその傷を眺めて、明らかに不機嫌な顔をした)……どこがだよ。問題しかねーだろ。(やめろ動かすな、とばかりに首を振って近寄ると、ずい、と手を差し出した)ついてくる気なら、それ診せろ。
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
――(意識を切り替えるように小さく息を吐いて)何はともあれ、ここら一帯の支配者の首を刎ねればよい、ということね。ええ、シンプルでいいわ。(……無論。それは一時凌ぎにしかならないのだろうとも理解しているが。だからといって、目の前にある悲劇を放っておけるほど、女は割り切ってもいない)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
え?(近寄る少年、差し出される手から、此方はあからさまに、右半身を引く。少年の目から、右腕に刻まれた傷を隠そうと――或いは遠ざけようとするかのように)――いいのよ、さほど痛みもないし……じきに血も止まるもの。
0
皐月・灯 2019年4月13日
(差し出した手を納めず、じっと見据える。身を引いた姿を自身への警戒と解釈して、付け加えた)……おかしなことはしねーよ。素人に毛が生えた程度だが、医術の心得はあんだ。……あと、オレは魔術師だ。(魔性の牙に何某かの毒や呪詛が含まれないとも限らない。そう言って、再度傷を見せるように要求する)じきに止まるなら、今止めたって同じだろ。
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
――――。(当惑したように。女は差し出されたその手をじっと見詰めていた。ややあって零された言葉を耳にして、その双眸は彼の双眸へと。紅玉が双色を捉え、黄金がそれに続いて。)……信用、していないとかではないのだけれど。(歯切れ悪く呟く。痛みはほとんどなく、血が流れたところでそれに何の問題もなく。そして毒も呪詛もこの身体に影響を及ぼすことはない。だってこの肉体は、――)…………。(軈て、観念したように。無言でその右腕を差し出した)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(少年がその腕に触れるならば。凡そ人肌とは思えぬ、その膚の冷たさに驚くかも知れない。昼夜を問わず闇に包まれたダークセイヴァーの世界は確かにうすら寒くはあるが、そうであることを差し引いても、異様なほどに。)(或いは、彼が魔術を用いた走査を行うとすれば、気づくだろう。流れる血に交じる、魔力に似た――、それは、呪の気配にも近しいものであるだろう)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(色を異にする2対の瞳が視線を揃える。見ず知らずの男に手を預けるのは不安なこともあるだろう。それでも、耳がとらえた言葉は拒絶ではなかった)……おう。(そうして腕を差し出されれば、黒手袋に包まれた指が相手の肌に触れた)
0
皐月・灯 2019年4月13日
……? (怪訝そうに首を傾げた。あれだけの運動をした直後だというのに、布越しでもわかる程の冷えを指先に感じたから。人間らしい柔らかさはあるけれど、見た目と温度はむしろ白磁の陶器に近い。無言のまま触れた掌から術式を送り込んで、それは確信に変わる)――これは。
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(首を傾げる彼の様子を見たならば、微かに苦笑を浮かべて)……少し人とは違ってね。特別製なの。(女は、呪詛を束ねて纏う死霊使いにして黒騎士。その肉体は死霊との親和性を得るが為に死者のそれに近く変質しており、血の一滴に至るまでその肉体のすべては僅かならぬ呪詛を帯びている――。そのように言葉少なに語る。)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(本来的には、その説明は正確ではない。然し、それだけ伝えれば治療法の策定には困らぬであろう。余計なことは言葉にしない――聞いた処で彼は困るだけだ)……秘密よ。(故に、そうとだけ。左手の人差し指を口元に当てて、軽く笑った)
0
皐月・灯 2019年4月13日
……特別製か。(それだけ言うと、両目がうっすらと光を帯びた。網膜を通じて得た情報を人工精霊が処理し、彼女の血の呪詛を確認する)……ヘルメス方式なら影響しねーな。(6本ある胸飾りのうち、青いものを取った。アンプル状の構造になったそれは、先端を捻ると蓋が開く。くちびるを近づけて何事か呟けば、胸飾りが淡い光を帯びて、飾りを傾けると中の霊薬が傷口に垂れた。ひとしきり血を洗い流してから、傷を観察する)……大丈夫だ。これなら痕も残らねー。
0
皐月・灯 2019年4月13日
(顔を上げたところにその仕草を見て、)……心配すんな。別に誰にも言いやしねーよ。(少しばかり早口に言い放つと、無造作に自分の服の左袖を破り取った。手際よく引きちぎって即席の包帯代わりとし、こちらにも霊薬をふりかける。それから、幾重にも彼女の腕に巻きつけた)――これでよし。
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(淡く光を帯びる、少年の双眸をまじまじと見遣るも。あまりじっと覗き込むのは失礼であろうかと思い直してややあって目線を逸らした。自身の傷へと紅玉の瞳の視線が注がれて。流れ出る血を、何ともなしに眺めやる)……っ(痛みには慣れている、とはいえど。霊薬が傷口に滲みるその感覚には、ほんの僅かだけ身を竦ませた)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(粗野でぶっきらぼうな口調とは裏腹に、慎重に手当てを施していくその手の感触はどこか優しくさえ感じるような気がした。言葉に出しはしないけれど、口元に刷いた笑みは穏やかで)(……ただそれでも、躊躇なく服を破り取ったのには少しばかり慌てたが。抵抗することはなく最後まで、施される治療を受け入れる)……有り難う。時間を取らせてごめんなさいね。
0
皐月・灯 2019年4月13日
(一通りの手当を終えて、ようやく相手の腕を解放した。感謝の言葉を告げられれば、目をそらして)……大したことはしてねーよ。こんなのただの応急手当だ。……けど、勘違いすんなよ。その怪我が原因で、向こうでもたつかれちゃかなわねー……そう思っただけだからな。(また少し早口でいうと、彼女に背を向け、左腕を前に伸ばした。指先が示すのは暗い道の先。肩から先の布がなくなり、むき出しの肌に赤い光が走る。残された魔力を辿って、敵の本拠を探り当てんとし――ふと、口を開いた)……アンタのその体、いつからそうなんだ。
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(解放された腕をもう一度握り開きしてみる。支障はない。)傷を慮ってくださったのでしょう。意図がどうあれ、それは感謝に値することだわ。(背中を向ける少年へ、そうとだけ告げて。――剥き出しの肌に走る光を物珍しそうに眺めた。右眼は魔力の流れを感知するが、彼のそれは聖痕――というのとも異なる様に思う。恐らくここ(ダークセイヴァー)とは違う体系の魔術か、とあたりをつけ)……ああ、これは猟兵としての力に目覚めてからね。戦うには困らないから、良いのだけれど……(人に触れられると驚かれるのだけはどうにもしがたい、と苦笑して)
0
皐月・灯 2019年4月13日
……そーかよ。(振り向くことはない。ただ、胸中には若干のやりづらさ……のようなものを感じていた。こうも穏やかに感謝してくる相手には、どうもペースが狂うのだ。そんな思いを封じるように、魔力光が幾筋にも走り続ける手を地面に付ける。光が瞬時に前方に走ってゆく――)……そうか。……別にオレは驚いてねーからな。ちょっと意外だっただけだ。(そう言い添えたのは、人と違う部分に驚かれることの煩わしさを知っているからだった)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(地面についた手から光が大地を伝い走りゆくのを、目で追う。――女は後天的に魔力に近いものを有するに至ったが、それを術の形で行使することはできない。自身の血を媒介として些少に用いるか、或いは肉体に纏わせる程度が関の山だ。それゆえに、幾分も自身より年下であろうにこのほどの魔術を行使する姿には、素直に称賛の思いが浮く)気を遣わなくてもいいのよ――なんて、ええ。そうね、殆ど動じていなかったものね。(それには多少、救われる気持ちにはなる。怯えられることとて少なくはないから)
0
皐月・灯 2019年4月13日
(立ち上がった。膝の土を払って、肩越しに橙の瞳で相手を見遣る)遣ってねーよ。……体温が低いとか、別にオレにとっちゃどーでもいーことだ。触って冷てー、それだけだからな。(人と異質なものを有するという点で、多少なりとも似通ったものを感じたせいか……その声は先ほどよりも柔らかかった。)……それに、オレがアンタの力に助けられたことは間違いねー。(……借りができたな、と、小さく。だがはっきりと言った)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月13日
(小さくもう一度。有り難う、と呟いて。)……あら、借りだなんて思う必要はないわ、勝手にしたことだもの。……それに、もし貴方がそれで助かったのだとしても、(先程治療を施された、自分の右腕を指差し)これで帳消し、ではないかしら?(それこそ「勝手にしたことだ」と彼が言うならば。自分も同じなのだから。立ち上がる彼の背をじっと見詰めて、)……場所はわかった?
0
皐月・灯 2019年4月13日
(まさに、「オレが勝手にやったことだ」と言いかけて――確かに。おあいこだと気づく)……そうだな。アンタの言う通りだよ。(素直に礼を言うことがどうにも苦手で、だから、少しばかり居心地が悪そうに鼻の頭をかいた)……ああ。ここからそう遠くねーみてーだ。急ぐぞ、――そういやアンタ、名前は?(今更ながらに問うた)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月14日
でしょう? だから、気にしなくてもいいのよ。(穏やかに微笑んでそのように告げたなら。両手で大剣を握り締めて、数歩、前へ。少年の横に並ぶように立ち)ええ、そうね。一刻も早く、あんな下らない茶番は終わらせましょう。ああ、(名を問われれば、少年へと視線を向けて。紅玉がその双眸を捉える。)アストリーゼ・レギンレイヴよ。アストで構わないわ。(貴方は? と、首を傾げる)
0
皐月・灯 2019年4月14日
……わかった。(応じて、こちらも拳を握りしめた。節約した分、魔力はまだ余裕がある。先だって斃した魔性たちの力量を考えれば、並び立つ彼女がいれば十分と踏んだ。――ここから先は、こいつと進む)……灯だ。皐月・灯。(薄青と橙の瞳が、深紅の眼差しを受け止めて)――じゃあ行くぜ、アストリーゼ……アスト。遅れんなよ。
0
皐月・灯 2019年4月14日
(一度目を閉じ、かっと開く。網膜に映し出される魔力の糸を手繰り寄せ、探知した先へと向かって、わき目も振らずに駆け出した。)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月14日
アカリ、ね。ええ、では宜しく頼むわね。(微かに笑んでそう言ったなら、前へと向き直り)
0
アストリーゼ・レギンレイヴ 2019年4月14日
(視線を向けた先を、睨めつけるように怜悧な眼差しで一瞥して――)(駆け出す少年の背を追い。女もまた、黒き闇を纏いて疾駆する)
0
皐月・灯 2019年4月14日
(救い無き常夜の世界。その片隅に、今を是とせぬ者がいる。――其々の情念で、世界の定めに刃向かう者が。彼らは孤独に走り、時に交わる。偶さかの交錯で生じる火花は、果たして儚く消えゆくか、支配者を屠る砲火と成るか)
0
皐月・灯 2019年4月14日
(――今宵の二人の結末は、三日月だけが知っている。)
0
皐月・灯 2019年4月14日
―了―
0