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茜崎・トヲル 8月21日09時


悲鳴。
――悲鳴。

人間の。動物の。
建物の。世界の。

作られた救世主メサイア
千を越える献体。
鋼の子宮。
生まれなかった九百余名。
強化ガラスの揺り籠。
生まれはした九十余名。
生誕を祝う声。
望まれて生まれた一人。

誰が悪かったのか。
誰もが悪かったのか。

高台を浚う波。
山を割る地震。
海を巻き上げる颱風。

きっかけは何だったのか。
最初から決まっていたのか。

砕ける街。
砕ける命。
滅び行く、おれたちの故郷。
あるいは、きっと、星さえも――

無限を宿した肉体。永遠に適した構成。
ただ一人生まれた人造の救世主。
英数字の名前。

手を尽くした。頭を尽くした。
何でもした。何も出来なかった。
全てが無意味だった。
全てが無価値に終わった。

おれは、なにも、できなかった。
ただ、すべてがおわっていくのを、みていた。

神は滅亡に瀕して現れ、おれを祝福した。
人の限りでしかなかった永遠を、本物の永遠にして。
人の限りでしかなかった無限を、本物の無限にして。
きっと祝福だった。心からの善意だった。
呪いでしかなかった。滅びるはずの命からすれば。

神よ。我らが主よ。
おれはお前を憎む。
いまや、きっと、共に滅んで、どこにも居ないのだとしても。

神よ、神よ、なぜおれを置いていった。Eli, Eli, Lema Sabachthani
無限に再生するこの体と。
永遠に生き続ける運命だけ残して。
世界が滅びても、生きている世界に飛ばしてまで。

神よ。主よ。
おれは、お前を呪う。




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茜崎・トヲル 8月21日09時
(じりりり、じりりり、と、目覚ましが鳴って)
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茜崎・トヲル 8月21日10時
ふわー!うーん、今日もいい朝だなー!
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茜崎・トヲル 8月21日10時
(おれは起きる。夢なんて見てないから、嫌な思いもしない)
(覚えていない。何も、何も、何も、何も。全部忘れているから。全部棄ててしまったので。なんにもない)
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茜崎・トヲル 8月21日10時
(ただ、うっすらとした、神様への嫌悪感だけを、残して)
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