偽りのラプンツェル
●恋するお姫様は王子様の夢を見る
「ああ、私の王子様。貴方はいつ、私を迎えに来てくれるのかしら」
高い高い塔の窓。
"お姫様"は、暗い空を見上げて物憂げに呟き、溜息を吐く。
「偽物の王子様にも、もう飽きてしまったのよね」
お姫様が可憐な仕草で振り返り、鈴のなる様な声を掛けるのは。
部屋の中央に、青痣だらけの姿で、茨で拘束された青年。
「助けに来た、だなんて……ああ、貴方が"私の王子様"だと信じていたのに」
虫の息の青年に、可憐なお姫様はカツンカツンとヒールを慣らして近付くと、細い腕を伸ばして。
「うっ……ぐ、ぁ……」
胸倉を片手で掴むと、自分の身長よりも高い青年を持ち上げて、再び窓際へと引きずりながら歩いていく。
「偽物の王子様には、"本物の王子様"の為の試練になって貰おうかしらね」
そう呟いて、まるでゴミを放るようにひょいっと青年を窓の外に放り投げた。
宙を舞う青年は、抵抗もなく重力に従って堕ちていく。
堕ちていく先は水路だ。
そうして、瀕死の青年は思い出す。
そう、自分は捕らわれの"お姫様"を助けに、試練をなんとか躱して塔に辿り着いたのだと。
そして、今度はその試練に自分が加えられるのだと気付いたのは、彼が着水した瞬間、禍々しい触手に身体を絡め取られたときだった。
"偽物の王子様"が触手に絡め取られて沈んでいく様をつまらなそうに眺めてから、再び空を見上げるお姫様。
「ああ、あの子のような素敵な王子様、私を救いに来てくれないかしら」
思い描くのは、とても頑丈で、私のどんな愛も受け止めてくれて、瞳の光を失わなかった少年。
不注意で逃げられてしまったのだけれど、私の愛を受けて唯一生き延びた彼。
「……逢いたいわ、"王子様"」
夢見る乙女のように、熱い吐息を零して、お姫様は王子様を待ち続けるのだった。
●『私を迎えに来て、素敵な王子様』
「皆様は運命の出会い――というものを信じていらっしゃいますか?」
グリモアベースに集う猟兵たちへ、小首をかしげながらふと問い掛けたのはグリモア猟兵の胡・翠蘭。
唐突な問い掛けに言葉を詰まらせたりする者もいれば、元気に肯定する者もいて。
そんな様々な反応を示す猟兵たちにクスリと笑ってから、グリモア猟兵は視えた予知を語る。
「ダークセイヴァーのとある領地にて……お姫様気取りのオブリビオンの討伐をお願い致しますわ」
そのオブリビオンは村の外れに在る森の中に聳え立つ塔の最上階に居り、滅多に外に出ることはないらしい。
というのも。
「どうやら、自分を"魔女に捕らわれた可哀想なお姫様"……とやらに見立てているようで……部下や手駒の人間に付近の村に潜入させ、こう……人々に訴えているのです」
――『塔の中のお姫様を救ってくれる勇気ある若者はいないか!』……と。
「……とはいえ、そのような噂で動く方は少数で……最初の頃に勇敢な若者が2、3人ほど興味半分でその塔を目指し、帰ってこなかったと話が広まって以降は誰も"お姫様"を助けに塔に向かう人はいなくなりましたの」
それで話が終われば苦労はないのだが――。
「塔に来るものがいないと気付いたそのオブリビオンの部下たちが、今度は"お姫様"の好みであろう男性を、村から"生贄"として差し出させ、塔へ向かわせることにしたのです……主のオブリビオンには内密に」
オブリビオン――"お姫様"は、"王子様"が助けに来てくれているのだと信じて。
「なぜオブリビオンには内密なのか……と、思っておられるのでしょう?」
翠蘭の話を怪訝な表情で聞いていた猟兵に、微笑しながら尋ねれば、頬に手を当てながら翠蘭は言葉を続ける。
「お姫様気取りとはいえ、相手はオブリビオン……かたや自分は命惜しさに部下に着いた人間。……皆、機嫌を損ねて自分たちが八つ当たりで殺されるのではと恐れたのです」
自分の安寧の為に他人を差し出す――ダークセイヴァーでは珍しいことではない。
「それに、オブリビオンは塔にたどり着いた"王子様"を大層愛し、王子様からの愛を求め続けるようですわ……彼女のやり方で、飽きるまで」
眉を顰める猟兵を横目に、翠蘭は紅を塗った爪で撫でていた唇を再び開く。
「彼女の愛は殆ど拷問に近い暴力……そして彼女が求める愛は――暴力に耐え抜くこと」
耐え切れず命を落としたり、心を亡くしてしまう者もいる。そういった者たちには瞬時に飽きを示し、塔の窓から下にある水路へと投げ捨ててしまうようだ。
それが愛か、と熱り立つ猟兵に、翠蘭は苦笑混じりに呟いた。
「……愛は、人の数だけ種類があるものかと」
「……まずは、村に皆様を転送致します。そこで、オブリビオンの部下である人間に接触し、塔を目指して頂きます……お姫様を救いに来た、勇敢な者達として」
村から塔へ行くには地下の水路しか道はない。
「……部下の人間については、主を失えば自然と散開するでしょう。……処遇については皆様にお任せ致しますが、水路の入口までは口を封じぬようにお願い致しますわ」
冗談なのか本気なのかわからない口調で語った後、クスッと笑いながら翠蘭は続ける。
「水路は一本道になっているはず……ですが、オブリビオンが"王子様"への試練、と称した関門を用意しております」
水路の途中に、オブリビオンが潜んでおり、先へ進むことを拒む。
「そのオブリビオンを排除すれば塔内部へ侵入出来ます。塔の中には"お姫様"しかおりません」
邪悪な魔女も、危険な魔物も、存在しない。
ただ、人々が恐れるオブリビオンの実力は確かだ。
「見た目は可憐な美少女……ですが、美しい花には棘があるもの。皆様、どうぞ心してかかってくださいませ」
オブリビオンは最初は久しぶりの"王子様"だと喜ぶかもしれないし、自分の好みがいない、人が多過ぎるから情緒がないだの不満を漏らしながらいきなり殺しにかかってくるかもしれない。
「正面突破も宜しいですが、彼女の好みに合わせて"王子様"を演じて気に入られ、油断させて奇襲する……というのも有効でしょう。ちなみに、彼女はあまり演技がかった態度……というよりは、自然体で接した方が良いようですわ」
そこまで語った後、ああ、そういえば……と、呟き。
「"王子様"、と申し上げましたが、性別や種族は問わないようですわ。要は心根の問題なのかもしれません」
そう言葉を足してから、翠蘭は胸元のグリモアを指先で撫でながら転移の門を開く。
「……そんな自分勝手な"お姫様"の生み出す悪夢の連鎖を、断ち切ってくださいませ」
バッドエンドは"お姫様"と"王子様"には不似合いに思いますので――なんて、小さく笑いながら翠蘭は、猟兵達に一礼をして見送るのだった。
胡蝶
●
愛とは解釈違いを起こしやすい劇物ですね。
お久しぶりです、胡蝶です。
●
第一章…塔へ向かうため、地下の水路を歩いて頂きます。
道中は、死体が流れてきたりネズミや黒い虫が現れることがありますが、特にトラップもなく進むことが出来ますのでプレイングには心情などを記載して頂ければ良いかと思います。
場面は、オブリビオンの部下に連れられ、猟兵の皆様が水路に入った所からスタートになります。
第二章…集団戦『スレイヴ・スクイーザー』との戦闘です。
彼らは塔へ向かわせまいと威嚇してきます。
意地でも通ろうとするものには殺す気で攻撃してくるようです。
皆様、得手のやり方で倒して下さいませ。
第三章…ボス戦『恋に恋するイヴィエラ』との戦闘です。
正面切って戦うには中々手強い相手です。
策を考えて、油断させて奇襲するなどして攻撃するのが有効かもしれません。
なお、"王子様"を好むため、彼女が好むような勇敢そうな行動をすると油断するかもしれません。
あまりに好みの相手は、捉えて拘束して自分なりの愛し方で愛そうとしますので、捕まらないようご注意くださいませ。
以上、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『地下水路』
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POW : 濡れるのも構わずとにかく走る
SPD : 隠し通路や扉を探してみる
WIZ : 水の流れや光を頼りに出口を探す
👑11
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ルトルファス・ルーテルガイト
(※アドリブ、他PC絡み歓迎)
(WIZ)
…酷い匂いだ、精霊の気も汚れて淀んでいる。(眉をひそめながら)
…如何に事態が事態とは言え、こんな道を歩くとは。
(【選択UC】で、僅かに残る「炎の精霊の加護」で灯を作りながら)
…恋路に迷うという言葉は、どの世界でもよく耳にする話だ。
…恋の意味を知らぬ故に、自分の解釈で恋を作ってしまう。
…人でも生き物でも、オブリビオンであっても…皆一緒か。
……まぁ、俺も恋というモノを本質で分かってる訳では無いのだが。
…だが、暴力の果てに愛が生まれるとは…とても思えない。
…いや、きっと…あってはならない筈だ…少なくとも、俺にとっては。
スフィーエ・シエルフィート
・WIZ
いやはや王子様に憧れる気持ちってのは分かるがね
昔は私も、いつかは王子様と出会って甘酸っぱく結ばれる…なんてことを考えてた時期もあったものさ
…だから憧れは否定しない、自己満足は大いに結構
でも誰かを害することには責任は負わねばならない、それが貴き者の義務なのだよ
一応、耳を澄まして【追跡】と【情報収集】を使い、水流を頼りに出口まで迷わないように心がけて置こうか
……黒い虫が出てきたら、いやがらせに英雄譚に憧れた少女『迷宮』でも仕掛けてあげよう
無限ループの中で苦しむがいいさ
…死人が流れてきたら、せめて祈りは捧げるよ
安心したまえ、苦しみの無限ループは打破してみせよう
※アドリブ・連携ALLOK
植田・碧
王子様に助けられるのを待つ囚われたお姫様……ね
お望み通りに王子様として助けに行かせてもらおうかしら
オルタナティブ・ダブルで姉さんを呼び出して手分けして隠し通路とかを探してみようかしら、私と姉さんの第六感で探せば割とすぐ見つけれそうよね
ところで姉さんは運命の出会いとか信じてたりする?
あまり信じてはいないですが、母様と父様の馴れ初めを聞くとあるんじゃないかとは思いますよ
姉妹で雑談を交えながら出口に通じる扉や通路を探していくわ
☆アドリブ・他猟兵との連携歓迎
世界へ転送されて数分後。オブリビオンの地下水路へと案内された猟兵たちは、みな思い思いに灯り乏しく陰鬱な道を進んでいた。
「……酷い匂いだ、精霊の気も汚れて淀んでいる。……如何に事態が事態とは言え、こんな道を歩くとは」
ルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)は、腰から抜いた精霊剣にこの土地に僅かに残った炎の精霊の加護を得ると、灯りを燈し掲げる。
離れた間隔で灯る僅かな明かりの影をも照らすその精霊の加護の灯火――それはルトルファスたちに、進むべき道と共に地下水路に住まうモノたちの姿をはっきりと視せる。
「おや、明るくて助かる……よ……」
その灯りはルトルファスのすぐ後に続いていたスフィーエ・シエルフィート(愛と混沌のストーリーテラー・f08782)の足元、水路の壁を我が物顔で這い回っている地下水路の住人――灯りを反射し黒光りした甲虫の姿をもはっきりと露わにしてゆく。
カサカサと耳障りな音を立てながら辺りを這い回る彼らをハッキリと視認するや否や、スフィーエはポーカーフェイスの口元を一瞬だけヒクリと歪めると、"英雄譚に憧れた少女『迷宮』"の対象を甲虫へと定めて。
「……さぁ試そうか、君達が真の英雄ならば抜けられる筈さ……この意地の悪いラビリンスをね……っ」
彼女の目に映る全ての黒光りたちを嫌がらせのように、ユーベルコード製の無限ループに嵌ったと思わせる波動を放つ壁で出来た迷路へ彼女の周囲のそれらを全て"招待"し終えると、どこか満足そうにニッコリと微笑むのだった。
「便利なユーベルコードね……」
「そうですね、特にこういった場所ではお約束の生き物でしょうから」
後を歩いていた植田・碧(多重人格者・f17778)と、彼女がオルタナティブ・ダブルで呼び出したもう一人の自分――別人格の姉である"茜"は、スフィーエのユーベルコードを目の当たりにした感想を呟きつつ彼らの後に続く。
二人は周囲を警戒しつつ、目立った脅威がないことを確認すると、和やかに談笑を始めた。
「ところで」
冴えた感覚で隠し通路がないか探りながら、ふと碧が茜を見つめる。
「姉さんは、運命の出会いとか信じてたりする?」
右の青い瞳で、同じ顔をした姉の赤い瞳と視線を交わらせながら問い掛ける碧に、茜は左の赤い瞳を瞬かせて穏やかに微笑む。
「そうですね……あまり信じてはいないですが、母様と父様の馴れ初めを聞くとあるんじゃないかとは思いますよ」
「ああ、母さんと父さんね……確かに」
両親の惚気る姿を思い出しながらクスクスとお互い笑って。
そうしながらふと、碧は今回の目指す場所……塔へ住まう"お姫様"を思う。
「王子様に助けられるのを待つ囚われたお姫様……ね
」
運命の出会いを求める者、計らずとも運命の出会いを果たした自分の両親とは違う――そう思案して。
「お望み通りに王子様として助けに行かせてもらおうかしら」
"お姫様"の愛とやらは御免だけれど、と帯刀した刀の柄を指先で撫でながら、足を進める。
(……恋、か)
ルトルファスもまた、此度のオブリビオンについて思案していた。
(……恋路に迷うという言葉は、どの世界でもよく耳にする話だ。……恋の意味を知らぬ故に、自分の解釈で恋を作ってしまう。それは……)
精霊剣に宿された炎の精霊、その加護の灯りが僅かに揺らめく。
ルトルファスの整った怜悧な顔が、その揺らめきに合わせるようにやや眉を寄せた悩ましげな表情へ変じる。
(人でも生き物でも、オブリビオンであっても……皆一緒か)
ルトルファス自身も、"恋"というモノを本質で分かってる訳では無い。
想像するしかない代物だが、それでも確信があるのだ。
「……暴力の果てに愛が生まれるとは…とても思えない」
思わず、小さく声を漏らす。
(……いや、きっと……あってはならない筈だ……少なくとも、俺にとっては)
もしそうならば、自分はこうも周りの人々の優しさによって育たなかったから。
空いた手で父と母の形見の赤い外套の端をぎゅっと握りしめながら、ルトルファスは真っ直ぐと前を見据える。
「……いやはや王子様に憧れる気持ちってのは分かるがね」
やれやれ、と首を振りながら進むスフィーエも、お姫様を気取るオブリビオンを想像しては苦笑を浮かべていた。
(昔は私も、いつかは王子様と出会って甘酸っぱく結ばれる……なんてことを考えてた時期もあったものだったけれどね)
そんな経験もあり、頭から"お姫様"の憧れを否定するつもりはないし、寧ろ自己満足は大いに結構だと考えているスフィーエ。
だが、それならば。
「……誰かを害することには責任は負わねばならない、それが貴き者の義務なのだよ」
そして此度、その義務を履行する時が来たのだ。
「……あれは」
その時、ふと水路の上流――塔の方角から流れてくる何かが、炎の精霊の灯りに照らされ開けた視界に入り込む。
それは誰のものとも分からぬ遺体。
生贄として捧げられ、塔に辿り着く前に力尽きたか、それとも"王子様"の成れの果てか。
水路の端に引っかかるように流れ着いたその人であったものに、スフィーエは祈りを捧げるように目を伏せ、美しく整った唇を開いた。
「……苦しみの無限ループは打破してみせよう」
だから、安心して眠り給え。
柔らかな、優しい声は"王子様"のような気高さで捧げられる。
目指す塔まで、そう遠くはない。
終わりなき悲劇に終焉を与える為、猟兵たちは再び先へと進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅狼・ノア
恋は盲目って言うけどこんな感じなのかな?恋や愛とか知らない僕には分からないなぁ
そういえば誰が言ってだなぁ“恋は駆け引き”だって…
んじゃ、姫を迎えに行こうか…姫が望む王子になり、駆け引きとやらで楽しもうか(ニヤッ)
地下水路を通るの⁉濡れるのは嫌だなぁ…(匂いとか気になる)
なんか隠し通路や扉とか無いかな?【第六感】を駆使し探ってみよう
もしも見つからなかったら仕方ない…フードを被って出口まで走るか(嫌だけど我慢)
「恋は盲目って言うけど……こんな感じなのかな?恋や愛とか知らない僕には分からないなぁ」
紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は、転送される前にオブリビオンや事件についてのあらましを聞いてはいたものの、実際の経験のない"愛"や"恋"については首を傾げるばかりで。
転ばぬよう、周囲に気を払いながら歩きつつずっと思案していた。すると。
「うわっ!……っと、危ない、……濡れるのは嫌だもんね」
不意にぬかるんだ泥に足を取られそうになると寸でのところで踏ん張り、転倒を防ぐ。
更には、下水道ではないため悪臭とまではいかないものの、この先に待つ敵のものか、はたまた暗くじめじめとした陰鬱な場所に相応しい何とも言えぬ生々しい臭いが気になるのか、ノアは黒い狼耳をへたらせながら足元を注意する。
隠し扉か何か無いかな、と何となく勘を働かせるがそれらしいポイントはないと解ると、諦めたようにフードを深く被って一息吐いて。
(そういえば……誰が言ってだなぁ、“恋は駆け引き”だって)
前を見据えながら、ノアは以前そんな会話を思い出す。
「駆け引き、かぁ。……んじゃ、姫を迎えに行こうか。……姫が望む王子になり、"駆け引き"とやらで楽しもうか」
――"駆け引き"。
それはノアの得手であり、好むギャンブルのスリルや刺激にも似ている。
自然と、ニヤリと楽しそうに口角が上がってしまいながら、逸る気持ちが抑えきれないのか早足で水路の出口へと向かっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
オブリビオンでなければわたしも喜んで挑むのですが…
お姫様、しかしその実態は人を弄ぶ邪悪
救うのでなく討たねばなりません、『勇者』として!
【コミュ力】で勇者を名乗り部下の方から案内を
案内に感謝はすれど害しはしません
彼らも進んで生贄を出したくは無かったでしょう…
いいえ、みなまで言う必要はありません!あとはわたしにお任せをっ!
地下水路、此処に立った時点ですでに試練は始まっている
いざ、勇猛に参りましょうっ!【勇気・鼓舞】
カンテラを手に意気揚々とずんずん進み
彼らもまた塔に挑んだのでしょう…流れてくる死体に痛ましく想う
貴方たちもまた、紛れもなく勇者です
貴方たちを弄んだ悪鬼はわたしが討ちます…どうか、安らかに
華奢な体躯に、驚くべき勇敢さを秘めながら堂々と水路を進んでいくのはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)だ。
「"お姫様"を救うための塔に向かう……オブリビオンでなければわたしも喜んで試練とやらに挑むのですが……」
正義感の強いソラスティベルならば、仮に『邪悪な魔女の手によって塔へ捕らわれの身となったお姫様』――という状況に遭遇した場合、まず間違いなく救うために行動しただろう。
だが――。
「"お姫様"、しかしその実態は人を弄ぶ邪悪……救うのでなく討たねばなりません、『勇者』として!」
その"お姫様"は此度、邪悪なオブリビオンに過ぎない。
しかも、自分の為に"王子様"を欲しい、望むがままに誘い込み、愛と称してその命を弄ぶ邪悪。
そして本来ならば、今歩みを進めているこの地下水路へと案内したオブリビオンの部下の人間にも、其の正義感故に少なからず怒りを覚えはした。
だが、ソラスティベルは『お姫様を救いだす勇敢なる者』を求める彼等に遭遇した際、自らを勇者と名乗り、案内に感謝をしめしてから、こう囁いたのだった。
「安心してください、"お姫様"はわたしが必ず救い出して……もう、終わりにしますから!」
彼らも進んで同胞を生け贄に差し出すのは本意ではないだろう。
それは、ソラスティベルが名乗り出た時、そして案内をする彼らの暗い表情からありありと伝わってきたのだから。
(いいえ、みなまで言う必要はありません!あとはわたしにお任せをっ!)
そう訴えるような堂々たる"勇者"の姿に、彼らの瞳に一瞬光が戻ったように感じて。
「皆さん!いざ、勇猛に参りましょうっ!」
そんな数刻前の出来事を思い出しながら、他に同行している猟兵たちへと、そして自身を鼓舞するかのような明るく勇敢なソラスティベルの声は、陰鬱な雰囲気を払うように水路に反響してゆく。
カンテラを片手に歩みを更に進めてゆけば、猟兵たちよりも前に試練に向かった者だろうか、襤褸のようにズタズタな衣服を纏った遺体が上流から流れてくる。
流れてくる死体を痛ましく、そしてその勇敢さを想いながら、ソラスティベルは死者の安息を願って、彼の邪悪を討ち果たすべく歩みを進めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
蒼薙・鈴音
うぅ…
この水路、なんか臭いよぅ…汚いよぅ…
でもでも、親分の昔のオンナ案件と聞いたら、黙っていられないよ
【白岩】の皆とは敢えて別行動で、隠し通路とかを探しながら侵入を試みる事にするね
…愛っていうのは色々ある
それはボクも、なんとなく分かるけど
相手が喜ばない事をするってのは、なんかちょっと違うよね
はぁ…
親分ってばアレで結構優しいからなぁ…
きっと色々面倒見てあげたくなったんだろうけどさ…
それなら代わりに親分が欲しがってるモノを返さなきゃ…
大事にしているモノを護らなきゃ…
…なんてね
そんな信念を持った親分の今の子分(オンナ)としては、一発ぶん殴ってやらないと気が済まないのでありました♪
よーし、頑張るぞー!
「うぅ……、この水路、なんか臭いよぅ……汚いよぅ……」
落ちてくる水滴を避け、淀んだ泥溜り、かさかさと這い回る蟲や小動物を踏まないように気を付けながら蒼薙・鈴音(ぎんぎつね・f13257)は一人、暗い水路を進んでいた。
お気に入りのパーカーや靴を汚さないように気を払いながら、耳や尻尾も濡れないように抑えつつタッタッと慎重に、かつ軽快な足音を響かせながら小柄な妖狐の少女は前へ進んでいく。
普段ならば、この様な陰鬱な場所へ好んで立ち寄ろうとは思わない鈴音だったが、今回はどうしても進まねばならないと強い意志を抱いていた。
(……親分の昔のオンナ案件と聞いたら、黙っていられないよ!)
所属する旅団で、信頼している親分に関係したオブリビオンの事件――そう聞いて、鈴音の身体は考えるよりも早く行動していて。
(親分たちは、他の皆と来るのかな、きっと)
そんな風に予想しながら、旅団の他の皆とは敢えて別行動をとり、隠し通路や罠などを探しながら進みつつ、ふと。鈴音は思案する。
「"愛"、かぁ……」
"お姫様"は"王子様"を愛する、愛を求める――そんな話を思い出し、つい呟きが漏れる。
(……愛っていうのは色々ある。……それはボクも、なんとなく分かるけど)
一つの意味しかないわけではなく、人が抱く分だけ類を持つものだと、鈴音は漠然とした"愛"についての考えを持っていた。
それでも、これだけははっきりと言えた。
(相手が喜ばない事をするってのは、なんかちょっと違うよね)
そう考えてから、ふと"親分"の顔が鈴音の頭に思い浮かんで。
「……はぁ……」
普段の親分の見せる、明朗快活な屈託のない笑顔。
雰囲気は荒々しく思えるが、面倒見が良くて頼り甲斐のある逞しい羅刹の姿。
「……親分ってばアレで結構優しいからなぁ……。きっと色々面倒見てあげたくなったんだろうけどさ……」
思い浮かべた親分の姿に、"お姫様"と振舞うオブリビオンとの間に何があったか――と、想像してしまって。つい、溜息の一つも零して苦笑してしまうけれど。
でも、そう。
それは昔の話で。
「……それなら代わりに、親分が欲しがってるモノを返さなきゃ……大事にしているモノを護らなきゃ」
ス……、と紫の瞳を細めると、仄かに妖気を纏いながら静かに抑揚なく呟いてから。
「……なんてね」
纏っていた空気を霧散させて、冗談めかして独りごちる鈴音。
「そんな信念を持った親分の今の子分(オンナ)としては、一発ぶん殴ってやらないと気が済まないのでありました♪」
よーし、頑張るぞー!、と陰鬱した水路の空気を払うように明るい声で気合を入れ直すと、大切な人を想いながら。
銀の尻尾を揺らして、妖狐の少女は軽快な足取りのまま水路の奥へと進んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エスタシュ・ロックドア
【白岩】
俺ぁ殿で後方を警戒しつつ行くぜ
聞いて分かる様な答えが返ってくる気はしねぇけどな
誰が王子様……へいへい今だけ王子サマな(段差跨ぎつつ)
道すがらイヴィにとっ捕まってた時の事を思い起こしてる
ありゃ神隠しでこの世界に飛んで一年、
俺が13の頃だったか
UCに覚醒してなくて、
森で行き倒れたとこを拾われたんだよな
そんで恋愛ゴッコに付き合わされた
悍ましい手料理を食わされーの、
期待と違う反応したら殴られーの、
枷付デートされーの、
散々だったな!
ただ、別に憎んじゃいない
枷と檻さえなきゃ、耐えてそのまま付き合ってたかもしれん
つい面倒見ちまうからよ
だが今はもう猟兵とオブリビオンだ
この手で仕留める事に躊躇いはねぇよ
月隠・三日月
【白岩】
エスタシュさん、数宮さん、六島さんと一緒に
王子様にお姫様……姫様はわかるけれど、殿様でも将軍様でもなく『王子様』というのは何なのだろうか。アリスラビリンスとも関係ないようだし
とりあえず『囚われのお姫様を王子様が助け出す』という筋書きがオブリビオンのお気に入りということかな
エスタシュさんには普段からお世話になっているし、少しは役に立たないとね
辺りを見渡して警戒しながら水路を進もう(【視力】【情報収集】)。敵や罠が存在する気配はないけれど、警戒しておくに越したことはないだろう
前方の偵察は六島さんと数宮さんが、殿はエスタシュさんが務めているから、私は全体を警戒していようか。水路の横道とかね
◎
六島・椋
【白岩】
王子だとか姫だとかは知らん
相棒の目指すところがあるなら力を貸すだけだ
だが、そうだな、護衛ごっこでもしてみるか
偵察は任せろってな
多喜と共に、相棒……王子サマ(笑)の露払いをしよう
【目立たない】よう気配を消しつつ、
【情報収集】で辺りを探りながら離れすぎん程度に前を行く
とはいえトラップもないなら、障害物を知らせる程度になるだろうか
王子サマ(笑)、そこ段差あるぞ
骨を探して、こういう場に来ることもある自分は慣れたものだが
皆はどうだ、気分は悪くなっていないか
エスタは大丈夫だろ
遺骸があったら場所を覚える
後で戻ってきてきちんと弔えるように
……終わりを迎えたものは尊重されるべきだ
放置していいものではない
数宮・多喜
【白岩】
さてさて、王子様を待つお姫様か。
ダークセイヴァーって意外とそういう趣味の輩が多いのかねぇ?
どこか英雄の絵物語の登場人物になぞらえたがるって言うか。
……ま、そこは本人に聞けば分かるか。
それじゃバッチリと露払いをしますかね!
陰気臭い上にネズミや虫が多い下水も、
最初からそんなもんだと思えばギリギリ耐えられるよ。
本心?辺り構わずぶっ飛ばしてぇ!ってんだよ!
まあそこは抑えて。
六島さんと連携して、
水を伝った感電に気を付けながら放電して。
オーナー(エスタシュ・ロックドア(f01818))の
行く道を拓くとするよ。
◎★🔥
(ありゃ神隠しでこの世界に飛んで一年、……俺が13の頃だったか)
暗い水路を歩きながら、エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は"お姫様"――『イヴィ』と呼んでいた少女に過去捕らわれていた頃の記憶を思い起こしていた。
ユーベルコードの覚醒の無いままに名も知らぬ森で行き倒れていた少年であった頃のエスタシュを拾った少女、それが『イヴィ』だった。
(……そんで恋愛ゴッコに付き合わされたんだっけな)
そうして彼女との思案するエスタシュの顔に、段々と苦笑が浮かんでくる。
(悍ましい手料理を食わされーの、期待と違う反応したら殴られーの、枷付デートされーの、……散々だったな!)
――なんだこれ、食いモンなのか?
――もう、何それ!エスタひどい!
「……ハッ」
「……"王子サマ"、そこ段差あるぞ」
過去を想起しながら漏れたエスタシュの苦笑を耳にしたのか、彼の前方を歩く六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)が、不意にエスタシュへと振り返る。
無表情の口角を僅かに上げながら、抑揚が少ないながらもからかい混じりの"王子サマ"呼びで足元への注意を促す椋に、意識を戻されれば。
「誰が王子様……へいへい今だけ王子サマな」
エスタシュは軽口に応えて、彼女に笑うのだった。
今回、エスタシュや椋たちは同じ旅団に所属する仲間で【白岩】を組み、行動していた。
また、椋と同じく前方で露払いを請け負う数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)、全方位を警戒しながら歩く月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)、そして殿を務める後方のエスタシュ。
(骨を探して、こういう場に来ることもある自分は慣れたものだが)
「……皆はどうだ、気分は悪くなっていないか。エスタは大丈夫だろ」
骨を愛する椋は、出会いを求めるが如く骨を探し似たような状態の場所へは良く訪れており、自身はこの陰鬱な空気には慣れている身ではあるのだが。
先程のように発見した障害物の注意を仲間に促したりしながら、地下水路の瘴気に中てられていないかと、前方警戒を続けながら声を掛ける。
「そうだね、陰気臭い上にネズミや虫が多い下水も、最初からそんなもんだと思えばギリギリ耐えられるよ」
本心は辺り構わずぶっ飛ばしてぇ!ってんだよ!って感じなのだけれど。
椋に応えつつ笑いながら、多喜は"王子様"という単語で思い出したのか、周囲の警戒をしながらも浮かんだ疑問を口にする。
「オーナーを……いや、王子様を待つお姫様か、ダークセイヴァーって意外とそういう趣味の輩が多いのかねぇ?どこか英雄の絵物語の登場人物になぞらえたがるって言うか」
会敵しないよう、水を伝った感電に気を払いながら放電を試みつつも、多喜は首を傾げる。
「王子様にお姫様……姫様はわかるけれど、殿様でも将軍様でもなく『王子様』というのは何なのだろうか」
多喜の後ろを歩く三日月は、周囲を見渡しながら横からの奇襲に備えつつ、そんな多喜の呟きに心底不思議そうな口調で呟きを漏らした。
サムライエンパイアで育った三日月に、"王子様"という言葉は馴染みがないのだろうか。
「とりあえず『囚われのお姫様を王子様が助け出す』という筋書きがオブリビオンのお気に入りということかな」
「……ま、そこは本人に聞けば分かるか」
「聞いて分かる様な答えが返ってくる気はしねぇけどな」
「待て、……何かいる」
三日月や多喜の言葉に、カラリと笑いながらエスタシュが応えていると、前方を警戒していた椋が進行している道の先に何かの影を見つけ声を掛けた。
椋の声に、全員の足が止まる。
寸前まで談笑していた皆に緊張が走るが、遠方まで見渡す三日月が目を細めながら影を見つめれば、それは。
「……ああ、亡くなった人だね」
物言わぬ屍だと、直ぐに解かる。
警戒を解くと再び一同は歩き始めるが、椋はその遺骸を、擦れ違うまで横目で見つめる。
(……終わりを迎えたものは尊重されるべきだ。放置していいものではない)
後で、戻ってきてきちんと弔えるようにとこの場所を忘れぬよう、瞳を伏せて椋は物思う。
前へと進みながら、後に続く殿――エスタシュも、骸へ視線を向けた。
もし、『イヴィ』の下から逃げなければ、この骸になっていたのは自分かもしれない、そんな考えが過る。
――ただ、別に憎んじゃいない。
浮かんだ彼女の微笑みも、仕草も、未だ忘れていないのだ。
(枷と檻さえなきゃ、耐えてそのまま付き合ってたかもしれん)
つい面倒を見てしまう自分の性分を自覚しているからこそ、本心でそう思っているのだ。
しかし、今と過去ではエスタシュと『イヴィ』の立場は全く違ったものになっている。
「……今はもう、俺とお前は"猟兵"と"オブリビオン"だ。この手で仕留める事に躊躇いはねぇよ」
その呟きは、前を進む仲間の耳には届かない、自身に言い聞かせるような酷く静かな音のまま、水音に溶けてゆく。
彼が思案から現実へと返れば、水路の出口は眼前に在る。
先に"お姫様"――とは似ても似つかない禍々しい気配を感じながら、エスタシュたちは水路の先へと足を進めるのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『スレイヴ・スクイーザー』
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POW : テンタクル・スクイーズ
【美味なる極上 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【おぞましくのたうつ肉色の触手】から、高命中力の【感情を吸収する数十本の触腕】を飛ばす。
SPD : スラッジ・スキャッター
【全方位に汚濁した粘毒液 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ブレインウォッシュ・ジャグリング
【幹触手の先端 】から【暗示誘導波】を放ち、【洗脳】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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猟兵たちが水路を抜けると、先は大きく開かれた広場のような貯水場。
其処を抜ければ、塔の上層階へと進むことができるだろう。
だが、彼らの行く手を阻む様に、塔内部への入り口の前には、十字にくくりつけられた屍と、その肉や骨を食い荒らすように這い回る悍ましい触手――スレイヴ・スクイーザーたちが立ち塞がる。
「タチサレ……進ムナ……」
猟兵たちを威嚇する様に触手をうねらせ、鞭のように眼前の石床に叩き付けるスレイヴ・スクイーザー。
だが、まだ害意を感じられない。
消極的な言葉を発したオブリビオンを不思議に思いながらも前へ進もうとする猟兵たちへ、突然鋭い声が響いた。
「……帰レ……俺タチノヨウニ、ナル前ニ……!」
ア、ア……ガァァァァァァァ!
不意に括られた骸が叫び、襤褸を纏った骨が跳ねたのだ。
同時に、触手が狂ったような無規則な動きで猟兵たちへ襲い掛かる!
僅かに骸の主――元は人であった彼らへ意思疎通を行うことは、もう不可能だ。
オブリビオンに意識を完全に侵食された彼ら――スレイヴ・スクイーザーたちは、塔への侵入を拒む障害から、侵入者を嬉々として喰らい弄ぶ本性を剥き出しにしているのだから。
スフィーエ・シエルフィート
そうは言われても、君達のようになる者をこれ以上出さない為に来てるんだがね
さて、我儘お姫様に行く道、切り拓いてあげようか――戦うお姫様がね
まずは英雄譚に憧れた少女『戦姫』を発動!
「お姫様、推して参るってね」
強化された精霊銃の二挺拳銃を「クイックドロウ」と「一斉発射」
触手の辺りを重点的に狙って潰しておこうか
接近されたらサーベルに持ち替え、「属性攻撃」の真空の刃で触手をバラバラに
洗脳が来るなら、「見切り」と「早業」で高速飛翔で接近しサーベルで触手の先端を切り落とそう
時速180キロ、速度も十分の筈さ
切り落としたら無理せず上方へ飛翔して離脱
同時に銃で牽制し、反撃の芽も確実に潰そうか
◎
連携も歓迎
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ・連携絡み歓迎)
…こいつらは、元は普通の人間で…この先の姫様とやらに殺された人間か?
…ふん…帰れ、と言うか。
…悪いが、俺らはその先の姫…という名のオブリビオンに用がある。
…どけ…さもなくば、そのうごめく触手ごと斬って…押し通る。
(POW)
…この触手、何やら感情に呼応してくる様だな、ならば…【美味なる極上】と真逆の【不味く感じる嫌悪感】を抱き…「武器受け」と「オーラ防御」で防ぐ。
…攻撃は【選択UC】と「属性攻撃」で強化した刀身で、のたうつ触手は残さず斬り落とし、本体も斬る。
…死んだ人間は戻らない、だから速やかに死に戻す…それも自然のあるべき姿だ。
「……やれやれ、そう簡単には辿り着かないようだ」
地下水路を抜け、眼前に広がるスレイヴ・スクイーザーたちの姿にスフィーエ・シエルフィート(愛と混沌のストーリーテラー・f08782)は肩を竦めながら呟く。
「……こいつらは、元は普通の人間で……この先の姫様とやらに殺された人間か?」
立ち去れ、帰れ――と、そう警告するオブリビオンに眉を顰めながら口を開くルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)の呟きに、さてね、と応えながらスフィーエは苦笑を漏らした。
「……ふん。……帰れ、と言うか」
「そうは言われても、君達のようになる者をこれ以上出さない為に来てるんだがね」
ピシィィッ!
退くつもりは毛頭ない――そんな二人の足元へ、骸に巣食う悍ましい触手が激しく打ちつけられるが、スフィーエもルトルファスも微動だにしない。
それが脅しであると看破していたからだ。
「……悪いが、俺らはその先の姫――という名のオブリビオンに用がある」
もはや会話を為すことは不能と判断するや否や、ルトルファスは静かに精霊剣を鞘から抜き、敵意を向けて。
「どけ……さもなくば、そのうごめく触手ごと斬って……押し通る!」
「さて、我儘お姫様に行く道、切り拓いてあげようか――戦う"お姫様"がね」
精霊剣に風の精霊を纏わせるルトルファスの隣で、スフィーエは指を鳴らす。
同時に、周囲に花弁が舞い、スフィーエの翼が光り輝く虹色へと変化していく。
「そう、お姫様だから望むのさ!お姫様だから戦うのさ!誰より何より、――ハッピーエンドって奴の為にね!!」
その言葉と共にスフィーエの携えたルーンソード『“賑やかしの刃”ルーン・サーベル』と二丁の精霊銃『焼き尽くすほどに愛すモノ』が光を発して耀く。
「――お姫様、推して参るってね」
そうして幸福な結末の為に戦うスタイリッシュお姫様へと変身したスフィーエは慈悲深く微笑むと、スレイヴ・スクイーザーたちに向かって素早く抜き構えた二挺拳銃を一斉発射したのだった。
スフィーエの一斉掃射を受け、威力の増した精霊の力の込められた弾丸で撃ち抜かれた触手は、其の体積を減らしながらも、弾痕から全方位に汚濁した粘毒液を撒き散らしてゆく。
「おっと……これは当たるとマズイね」
触手を重点的に狙っていたスフィーエは、カウンターのように撒かれる粘毒液を回避しながら仲間に声を掛ける。
一方ルトルファスは、眼前に迫る触手に対し風の精霊を剣に纏わせながら対峙するが、うねうねと艶めかしく蠢く触手の動きに、視覚から快楽を想起させられそうになって――。
「……フンッ!」
美味なる極上の感情を与えようとするスレイヴ・スクイーザーへ、感情に呼応して攻撃してくる相手であると看破すると、直ちに真逆の『不味く感じる嫌悪感』を抱きながら、斬撃でブツリと斬れた断面から放たれる粘毒液をオーラで防ぐ。
「風霊よ……その息吹を剣に宿し、悪鬼魔獣の牙角を絶つ旋風となれ!」
斬られて本体と分離した触手が、うねうねとのたうつのを蹴り飛ばして水路に沈めながら、ルトルファスは駆けた。
精霊の加護を纏う風刃を生み出し触手の先――十字に括られた本体の骸へ研ぎ澄まされた一閃を見舞う。
本体を袈裟に一閃されれば、その骸は塵となって消滅してゆく。
近接戦闘で直接本体を斬り裂くルトルファスに対し、スフィーエはやや後衛に位置取りながら精霊銃を撃ちこんでいた。
あまりその場から動かず撃ち続けるスフィーエに、近接に耐えられまいと浅慮したのか、或るスレイヴ・スクイーザーが死角から急襲する。
"お姫様"を謳う猟兵の肢体をに巻き付き捉え、幹触手の先端から暗示誘導波を放ち洗脳を試みようとする
――そんなスレイヴ・スクイーザーの目論みは、空打った感触に気付くと同時に霧散したと識る。
「おやおや、随分卑劣な真似をしてくれるじゃないか」
気付けば、スフィーエの姿は触手の根元、骸の主の傍に在った。
ユーベルコードによって高速と飛翔の能力を得ていた彼女にとって、触手からの奇襲は止まって見えるようなもの。
二挺の精霊銃をホルスターに仕舞い、耀きを帯びた刀剣をすらりと腰から抜いた姿は勇ましく美しい。
居合のように滑らかに抜いた刃は骸の首を触手ごと落とし、墜ちてゆく其れが着水するまでの数瞬の内、間合いを取るようにスフィーエは飛翔し、斬れた断面へ再び抜いた精霊銃の弾の雨を浴びせてゆく。
近接のまま骸と触手を断ち切るルトルファスに当たらないよう、そしてルトルファスはスフィーエの精霊の弾の声を聴いているかのように避けながら、踊るような身のこなしで一体一体、確実に刈り取っていく。
「……死んだ人間は戻らない、だから速やかに死に戻す……それも自然のあるべき姿だ」
祈りを込めるようなルトルファスの重い斬撃に、落とされる寸前。
カタリ、と骨音を立てた骸は、どこか穏やかに笑っているように見えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エスタシュ・ロックドア
【白岩】◎★🔥
ああそうか
元は見ず知らずのお姫様を助けようとする、
気の良い勇気のある連中だったな
椋、ちゃんと仕事しろよ
そんじゃ多喜を援護しようかぁね
傷痕から溢れる業火より『鋭晶黒羽』発動
まずは遠距離から【範囲攻撃】
敵の触手を斬り刻んで多喜の援護をするぜ
多喜が接敵したら俺も突っ込む
【怪力】でフリントぶん回して敵を【なぎ払い】【吹き飛ばし】だ
仲間がヤバけりゃ【かばう】
襲い来る触手にゃ【カウンター】
至近距離から『鋭晶黒羽』喰らわしてやらぁ
毒粘液が来たらフリント盾にしつつ【毒耐性】
ああ、付き合わせてんのは俺だからな
クリーニング代くれぇちゃんと払ってやるよ
六島・椋
【白岩】◎★
骸か。そうか
ん? 仕事はするさ。当然だろ
――ああいうヒトは、きちんと終わらせてやるべきだ
投げナイフ、それから藤切――刀に【毒使い】で毒を塗布し、
斬ると同時に、毒を喰らわせてやれるようにする
投げナイフを【投擲】して、前に出る多喜の援護
必要ならば、痺れさせる毒を仕込んだナイフを【範囲攻撃】でばらまく
随分とマナーのいいゲソ共だな、主人もさぞかしできているのだろうよ
自分も、クソ触手と粘液を【第六感】と『絶望の福音』で避けつつ、
クソ触手をただ淡々と刀で削ぐ。斬る。落とす
滅多に使わず、そう思い入れもない刀だが、切れ味はいい(【鎧無視攻撃】)
骨もないのに寄るな
出すんじゃないのか、そこのオーナーが
月隠・三日月
【白岩】
あの敵、元はオブリビオンの犠牲者か……
とはいえ、今となっては敵に相違ない。倒して進むしかなさそうだね
私は敵を牽制して味方の援護をしよう
戦場を見渡し【聞き耳】を立てて【情報収集】しつつ、敵に包囲されて身動きがとれなくならないよう、暗器を投擲して敵を牽制。加えて、接敵する数宮さんが敵に妨害や攻撃をされないよう援護しよう
効率的に敵の動きを阻害するために、暗器には麻痺毒を塗っておこう(【毒使い】)。また、遠くまで暗器を投擲する際は【制限破壊・怪力無双】で筋力を上げよう
洗濯物を店に出すのかい。よければ私もお願いしたいな。たまの贅沢もいいものだからね(※洗濯に金をかけるのは贅沢という認識)
◎
数宮・多喜
【白岩】◎★🔥
参ったね……
こういう無差別に被害撒き散らす奴、
遠距離からだとアタシ撃ち漏らすんだよな。
だから、接近戦を挑んで確実に数を減らす。
接近するまでは、『マヒ攻撃』を込めた
『衝撃波』を『範囲攻撃』の様に飛ばし、怯ませて。
オーナーや三日月さん、六島さんの援護も活用して、
『ダッシュ』で距離を詰めるよ。
毒への備えはないけど、
『呪詛耐性』や『狂気耐性』は少々備えているんでね。
激情には身を任せず、あくまで努めて冷静に。
至近距離まで間合いを詰めたら【漢女の徹し】を、
触手を吹き飛ばす勢いでスレイヴ・スクイーザー共に叩き込む。
数が多いだろうから油断せず、
次々に狙っていくよ。
クリーニング代、出るのかねぇ?
「ああ、そうか」
ともすれば怨嗟の様に警告を与える骸――スレイヴ・スクイーザーたちを眼前にして、エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は思う。
「元は見ず知らずのお姫様を助けようとする、気の良い勇気のある連中だったな」
「あの敵、元はオブリビオンの犠牲者か……」
エスタシュの呟きに応える様に、月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)も悍ましい触手を覗かせる骸の群れを前にして眉を顰めた。
「骸か……そうか」
触手よりも骸、先に骨の造詣に視線を巡らせていた六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)も、二人の言葉にその骸が"王子様"の成れの果てであると認識する。
「とはいえ、今となっては敵に相違ない。倒して進むしかなさそうだね」
表情を崩さないまま、三日月は隣で戦闘態勢を整えている数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)に目線を遣りながら懐へ手を差し入れ、暗器に指を振れて攻撃の姿勢へと移行する。
「だな。……椋、ちゃんと仕事しろよ」
「ん? 仕事はするさ。当然だろ」
フリントを担いで軽口を向けるエスタシュに、椋は静かに答えて視線で骸の群れを指しながら。
「――ああいうヒトは、きちんと終わらせてやるべきだ」
だろ?と相棒に言向ければ、当然と言った風にエスタシュは笑う。
「ああ、俺たちで終わらせてやろう。そんじゃ、多喜を援護しようかぁね」
「任せてよ、オーナー!」
エスタシュからの声に、気合十分の声で応えると同時に。
臨戦態勢を整えていた多喜は、スレイヴ・スクイーザーの群れへ向かって駆け出していくのだった。
(参ったね……こういう無差別に被害撒き散らす奴、遠距離からだとアタシ撃ち漏らすんだよなぁ)
初見で、悍ましい触手を蠢かせる骸の群れを見て、頭を悩ませながら戦闘分析をしていた多喜。
最終的には得手の近接戦闘で確実に倒す、という結論に達し今に至る。
単身駆け出した多喜は、スレイヴ・スクイーザーの本隊へ接近する間は麻痺の属性が篭った衝撃波を放ち道を拓いてゆく。
「邪魔されても推し通るっ!」
疾駆けで触手を掻い潜り、蹴散らしながら骸へ接近するが、阻む様に多喜の背後から汚濁した粘毒液を撒き散らしながら触手が迫る。
「オラァァ!」
だが、援護に回ったエスタシュが、その怪力を如何なく発揮した鉄塊剣の振り回しで、多喜の周囲に生えた触手を一網打尽に薙ぎ払っていく。
「ありがとオーナー!」
背中越しに礼を向けながら、多喜は更に足を進め、骸をその射程距離に捉えると、掌に力を込める。
(練って、整え、ぶち込むっ!)
その気迫は骸の有りもしない表情を恐怖に歪めるほど。
多喜のサイキックエナジーを込めた掌底は、至近距離の骸を触手ごと捉え、その超高速かつ大威力の一撃で確実にスレイヴ・スクイーザーを消滅させた。
「よし、まだまだ行くよ!」
そうして消滅を確認するや否や、多喜は次のスレイヴ・スクイーザーへと駆けていく。
しかし、そんな多喜の脅威を見ていた近くの骸が何もしないわけはなく、近づけさせまいと触手を放つ。
避けようとする多喜へ、幹触手の先端から暗示誘導波を放ち洗脳を試みようとするスレイヴ・スクイーザー。
「ッ……!」
暗示誘導波を受け、僅かに多喜の足取りが鈍る。
毒の耐性はなくとも、呪詛と狂気への耐性に心得ある多喜の足取りを完全に止めることはない。
だが、その暗示は遅効性の毒の様に、足を進め続ける多喜の精神を蝕んでいく。
「大丈夫かい、多喜さん」
「いやらしい攻撃をする奴等だが、援護は任せろ」
多喜を苛むそれは、周囲の状況を常に把握しながら援護を行っていた三日月の暗器投擲、そして椋の投げナイフによって阻まれてゆく。
三日月は麻痺毒を仕込んだ暗器で、椋も痺れを催す投げナイフで、多喜を阻む触手を全て萎えさせスレイヴ・スクイーザー本体への道を拓いていた。
「アアア……立チ去レ……!」
多喜たちの連携に、個々では敵わぬと判断する知能は在ったようで。
周囲に点在していたスレイヴ・スクイーザーたちが、群がりながら猟兵たちへと襲い掛かる。
「随分とマナーのいいゲソ共だな、主人もさぞかしできているのだろうよ」
直接近接で戦う多喜の他、後方で戦う自分たちへ向かってくる触手を、椋はただ淡々と刀で削いで、斬って、落としていく。
(滅多に使わない、そう思い入れもない刀だが、切れ味はいい)
冴えた勘と、まるで先の未来を見てきたかのような動きで触手と毒の粘液を回避しながら、椋は露払いするように刀を振るう。
「骨もないのに寄るな」
接近されている椋に気付いた三日月も、暗器を投擲して椋に迫る触手を貫き、無力化させながら多喜の援護も同時に行う。
周囲の情報を常に収集しながら動く三日月だからこその多角的な援護を行っていた。
(……そういえば、エスタシュさんは……?)
そんな三日月がふと、多喜の援護に向かっていたエスタシュへと意識を向ければ。
「よそ見してると危ねぇぞ、っとぉ!」
「うわっ?!……ありがとう、エスタシュさん」
物思いに耽ったものの数秒で、三日月の死角から触手が伸ばされていたのを、いつの間にか接近していたエスタシュが庇う。
前に伸ばした腕に巻き付く触手を、己の中で燃え盛る地獄の業火で焼きながらフリントで薙ぎ払いながら三日月に嗤うと、さて、と呟いて。
「キリがねぇな……よし!」
周囲のスレイヴ・スクイーザーの群れを見渡すと、エスタシュは傷痕から溢れる業火から黒羽を生み出してゆく。
「……此処に示すは我が罪業、此の身を覆う黒単衣、以て羽撃く風切羽……」
地獄の熱は、周囲の空気さえ灼いて、灰を焦がすよう。
空気の異様さにスレイヴ・スクイーザーたちもざわめき出す。
だが、もう。
「遅い。――逃すかよ、……全部、切り刻むぜ」
言うや否や、エスタシュに宿る地獄より"岩をも刻む黒い鴉の羽根"が全方位へと放たれれば、鋭い切れ味の羽根の雨は悍ましく触手を蠢かせていたスレイヴ・スクイーザーたちを一気に切り刻み、その蠢きを萎えさせてゆき。
多喜たちの攻撃で既に削られていた骸たちは、次々と消滅してゆくのだった。
「いやー、一気に逝ったねぇ……で、そう言えばクリーニング代、出るのかねぇ?」
「出すんじゃないのか、そこのオーナーが」
一息吐きながら小休止ついでに、水路を駆けまわって大分足回りが濡れた多喜が笑いながら言えば、椋がしれっとエスタシュを見遣りながら笑って。
「ああ、付き合わせてんのは俺だからな。クリーニング代くれぇちゃんと払ってやるよ」
無論だ、と言うようにニカッと笑ってエスタシュが応える。
「洗濯物を店に出すのかい。よければ私もお願いしたいな。たまの贅沢もいいものだからね」
それを聞いていた三日月の言葉に、エスタシュたちは『えっ』という顔を浮かべた。
三日月にとっては『洗濯に金をかけるのは贅沢という認識』のようで、嬉しそうに微笑む彼に、一同は何処か生暖かそうな眼差しを向けてしまいつつ。
猟兵たちの波状攻撃に、一時萎えていた触手たちが鎌首を擡げて再び蠢き出すのを感じ取れば、各々再びトドメを刺すべく戦場を駆けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィゼア・パズル
囚われた姫を救うつもりで、か。…元は、気の良い者達だったのだろうな…
…それでも化け物に成り果てたのなら、せめてもの情けだ。存在ごと葬ろう。
【WIZ】使用 絡みアドリブ歓迎
精霊に依り形作る偽翼を使用【空中戦】技能
「心配するな。…"本物"が、来たんだぞ?」エスタシュを横目に示して、笑み浮かべ仲間を援護
【地形を利用、敵を盾にする】事で攻撃を回避し【カウンター】にて【なぎ払い】を併用。一度に複数体へ【マヒ、二回、属性、範囲攻撃】の【鎧砕き、全力魔法】を叩き込む
連携が可能であれば合わせよう
「俺達の様になる前に、か」
その案じた理性と、悲しい感情に終わりが来る様に
「向き合う事から逃げなければ…陥りはしない」
漆黒の羽根が降り注いだ後。
切り刻まれ、その断面から流血したように毒粘液を滴らせながらも。
その骸の頭蓋が、肋骨が砕かれても。
安息が訪れない彼らに、ヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)は眉目秀麗なかんばせを向けて、精霊を統括する指揮杖を構えた。
(囚われた姫を救うつもりで、か。……元は、気の良い者達だったのだろうな……)
彼らに罪はない。
だが、だからこそ自分たち猟兵の手で終わりにしたいと思う。
(……それでも化け物に成り果てたのなら、せめてもの情けだ。俺たちが存在ごと葬ろう)
風翼の纏――風の精霊の依代に偽翼を携え、ヴィゼアは空中へと浮かび上がる。
空を自由にかけるヴィゼアを引きずり下ろそうと伸ばされる触手を、風の刃を操って退けると、近くで鉄塊剣を振り回す友人を横目にしなからケットシーは優雅に笑った。
「心配するな。……"本物"が、来たんだぞ?」
褐色の羅刹が"お姫様"に会いに――そう囁きながら、ヴィゼアは仲間の猟兵たちへ風の精霊による援護を向ける。
空中戦に持ち込んだヴィゼアに対して、その場から動くことの出来ないスレイヴ・スクイーザーたちは機動力で劣らざるを得ない。
伸ばした触手も、ヴィゼアの精霊による風の刃により退けられ、毒粘液も風によって逸らされてゆく。
「さて、そういえば――傘の用意は大丈夫か」
単一で襲いかかっても、空で舞うように戦うヴィゼアを落とせない。
ならば、とヴィゼアの足下の数体が包囲するように陣取ると、幹触手を一斉に伸ばし暗示誘導波を放つ。
だが、その洗脳を引き起こす暗示が届く前に。
「傘すら貫く雨を与えん」
フロゥラを指揮棒のように操り、歌うようにヴィゼアが囁けば、彼の周囲には200にも及ぶ鎌鼬が現れる。
「ガァァァァァァァ!」
「グァァ……!オレ、タチ、ノ……ヨ……ウ、二……」
鎌鼬は、ヴィゼアを襲わんとしたスレイヴ・スクイーザーたち、更に仲間へ襲い掛かるモノたちをも含めて等しく裂いて、葬ってゆく。
「……俺達の様になる前に、か」
自分たちの死の瞬間、断末魔の中でさえ警告を向けた骸に、ヴィゼアの青い瞳が静かに細められる。
最後まで他の"王子様"たる者を案じた理性と、死さえ自由を得ずオブリビオンにされた苦痛の生と悲しい感情に終わりが来る様にと、祈るように。
「向き合う事から逃げなければ……陥りはしない」
ヴィゼアは事切れた彼らに手向けの言葉を向けると、残った骸の群れへ向けて。
風の精霊を伴って、空を駆けてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
植田・碧
元は人間だったのね……でも襲って来るからには容赦しないわ
とはいえぬめぬめとかうねうねってあまり得意じゃないのよね……
まずは敵の動きを観察しながら距離を取って拳銃で攻撃が通りやすそうな所を狙うわ
敵が粘毒液を分泌し始めたら眼帯はを外して姉さんと入れ替わる
まったく……すぐ私を頼るんだから(少し嬉しそうに)
紫微垣と三日月を抜き攻撃範囲内の敵が粘毒液を周囲に撒き散らすと同時にUCを発動し全ての粘毒液を切り伏せると同時に敵本体も切り刻ませてもらいます
☆アドリブ・他猟兵との連携歓迎
「タチ……サレェ……」
瀕死の体を醸しながらも、猟兵をその先に進ませまいとするスレイヴ・スクイーザーたち。
「元は……人間だったのね」
黒の二挺拳銃――BlackShot-A.AとBlasterShot-A.Aを携え、植田・碧(多重人格者・f17778)は静かに呟いた。
元は、"お姫様"を救おうと塔を目指した、或いは"お姫様"に捨てられた、また或いは生贄として、自分の意思関係なく向かわせられた"王子様"。
おぞましい触手に搦め捕られながらも、悲しみの顔を骸に映す彼らに、思わずグリップを握る手に力が籠る。
「……でも襲って来るからには容赦しないわ」
彼らには同情はしよう。
だが、刃を向けるならば敵として。
二挺拳銃の銃口を真っ直ぐに向けながら、碧はスレイヴ・スクイーザーへと蒼く煌めく隻の瞳で射抜いて。
(とはいえぬめぬめとかうねうねってあまり得意じゃないのよね……)
凛々しい表情の内に、そんな感情も秘めつつ、両指を掛けているトリガーを引いたのだった。
最初、碧はその場から動かずに周囲のスレイヴ・スクイーザーたちの動きを観察する。
その中で、銃撃の通りそうなポイントを見抜くと、躊躇なくトリガーを引いてゆく。
触手の合間を縫って、骸の核を捉える弾丸、熱光線に、骸は砕け触手とともに水底へ沈みながら灰となり溶けてゆく。
だが、有効部位を見極めるその間に、碧の周囲には何体ものスレイヴ・スクイーザーが集まってゆき、狙いをつける時間を奪ってゆく。
「くっ……流石に数が多いわね……!」
聡く気づくと、瞬時に距離を取りながら二挺拳銃を放ち相当を試みるが、触手が放つ毒粘液や、触手の傷口から漏れ出す毒粘液には射撃の手を止めて回避に集中する。
「……姉さん、お願い」
敵対象に間合いを詰められた状況で旗色が悪いと判断すれば、碧はそっと瞼を下ろし頼れる姉へと託す言葉と共に眼帯を外して――。
「まったく……すぐ私を頼るんだから」
開かれた双眼は燃えるような赤を灯し、唇が紡ぐ声も、碧のそれではなく――彼女の姉、"茜"のものへ変わる。
呆れたような言葉の中にも、どこか頼られて嬉しいそうな、そんな姉らしい感情を込めながらも。
茜は碧が握っていた二挺拳銃を太腿のホルスターに戻すと、代わりに使い慣れた妖刀――紫微垣と三日月を抜く。
僅かに場を灯す明かりが、赤黒い刀身と白銀の刀身を妖しく照らし出す。
「さて……」
茜の赤い煌めきが捉えたのは、人格が入れ替わっていることなど知りようも無い、、または気にせずに毒粘液を浴びせようと伸ばされる触手の群れ、そしてその奥のスレイヴ・スクイーザーたち。
双眼を左右上下に向け瞬時に敵の位置関係、間合いを把握すると、対象を視界に捉え切った茜はそっと囁いた。
「私の刃は――」
茜の姿が、その場から忽然と消え失せた。
残る場には、幾本の太刀筋、――斬撃の残り香。
それらは茜が視界に捉えた全てのスレイヴ・スクイーザーたちを正確に捉えて両断する。
「……私のように、甘くはないですよ」
スレイヴ・スクイーザーたちの守っていた扉の付近に、彼らに背を向けた姿で現れた茜は、カチン、と鍔を鳴らして刀を鞘に収め、呟く。
Blode arts “Tempest”――自身の周囲を、目にも止まらぬ斬撃で無差別に切り裂く茜の刃は、その言葉通りに、触手も骸も諸共に切り刻み、灰燼へと変じさせてゆくのだった。
"王子様"を拒む関門は、これにて全て排除された。
障害は消え、猟兵たちの眼前には堅牢な扉。
"お姫様"の待つ、塔への入口がある。
水音が静かに反響するなか、一人の猟兵が進み、扉に手をかけ、物怖じすることなく進むのを見て、ほかの猟兵たちも後へと続く。
一つしかない階段を数分登ると、頂上らしき部屋の前に辿り着く。
この先に、間違いなく"お姫様"は居る――その確信を胸に、猟兵たちは部屋の扉に手をかけるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『恋に恋するイヴィエラ』
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POW : 運命の赤い糸
【投げ付けた人形】が命中した対象を爆破し、更に互いを【赤黒い糸の束】で繋ぐ。
SPD : 貴方は私のモノ
【射抜くような視線】【呪詛をかけた人形】【吸血攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 素敵な花占い
自身の装備武器を無数の【紫陽花】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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※第3章のプレイング受付開始は7/28日以降を予定しております。お待たせしてしまい申し訳ありません。
扉を開けた先に待ち受けていたのは――可憐な少女、ただ一人。
胸に手縫いの人形を抱いて、扉を開いた"王子様"を見つめると、熱に浮かされたように頬を染め、嬉しそうにはにかむ。
その愛らしい仕草は、まさに"お姫様"と呼ぶに相応しいもので、目の当たりにすれば誰しもがトクリ、と胸に萌ゆるものを感じさせるだろう。
「お待ちしていたわ、……ねぇ、素敵な人」
そんな"お姫様"――恋に恋するイヴィエラは、猟兵に向かって両手を広げ、歓迎するように囁いて。
「とても寂しかったの。今までここに来る人たちは、……みんな偽物ばかりで」
鈴を転がすような声に、猟兵は誘われるように一歩、部屋へと足を踏み入れる。
「きっと、アナタは本物の王子様」
――そう、本物。
私がずっと探していた。待っていた。
"彼"のような、本物の。
「私の恋人。私の愛を、大好きを、……全部受け止めてくれる人」
ふわりとした甘い微笑み、はにかんだ口元から覗くのは八重歯ではない――それは鋭いヴァンパイアの牙。
美しい装飾のドレスのフリルをひらりと揺らしながら、イヴィエラは彼女の"愛"を贈ろうと、猟兵へ近づいてゆく……。
スフィーエ・シエルフィート
哀れなお姫様だね
高望みを否定はしないけど、それは与えられるモノあってこそなのさ
……君に望む資格はないよ
英雄譚に憧れた少女『殺陣』を発動
「物語のクライマックスにはこれが相応しい!」
紫陽花の嵐をスタイリッシュに、ダッシュで潜り抜けていこう
精霊銃で花弁を吹き飛ばしたり、属性攻撃のルーンサーベルの回転斬りで風を発生させて吹き飛ばしたり
「王子様はこれぐらいの攻撃なんて軽く切り抜けられるのさ」
攻撃を切り抜けたら連続攻撃
二挺拳銃で牽制して接近、サーベルで斬り上げて空中で何度も斬りつける
最後にサーベルの属性攻撃、地の重力波と共に兜割でシメ
「……そう、本当に困っている者の為に。悪者を倒す為なら、ね」
ヴィゼア・パズル
【wiz】使用
アドリブ絡み歓迎
「随分と身勝手ですね、貴女の愛とやらは。…在るが儘に我儘を受け入れて欲しい?…赤ん坊ですか。」
偽翼翻し【空中戦】を使用
「……唯一無二とは、そんなに軽い物じゃありませんよ?」
仲間に合わせ波状攻撃。弾幕式の援護を中心に【スナイパー】で狙いを定め【マヒ攻撃・二回攻撃・範囲攻撃・なぎはらい】を叩き込もう
花弁など、総て蹴散らす
「身代わりを幾ら求めても飢えは癒えず、本当に欲しい物は手に入らない。……慰め程度にはなるでしょうがね。」
自分と比べる様に笑み含む声で"本物"を示す。トドメはエスタに譲ります。
…ほら。求め続けた本物は違うでしょう?
蒼薙・鈴音
【白岩】◎★🔥
他メンバーより先回りして現着
やっと見つけた
貴女がエスタシュ親分の…昔のオンナ、だね?
貴女の愛は鎖みたいで、檻みたいだ…!
ボクも、きっと親分も…そんなの好きじゃない!
だから悪いけど、貴女を退治させてもらうよ!
今回は親分の手を汚さずに片づけたかったけれど…一人じゃやっぱり無理かな
皆に助けて貰ったら、ちゃんと謝ろう
機を見てイヴィエラへ渾身の突撃
拳でも足先でも、なんなら頭でも何処でもいいから叩きつけて
『フォックスファイア』を全力【零距離射撃】
さぁ…後は…
「…―親分ッ!」
お願いね
いつもみたいに、ガツンと決めて――
最後は笑っていてくれたら、うれしいな
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ連携絡み歓迎)
…さて、あのオブリビオンが標的か。
…愛だか大好きだか知らんが、暴力じみたのは愛か?
…ふむ、一度…「愛」に詳しい奴に聞いてみるか。
(【UC】で精霊召喚、空間を魔力(誘惑)で覆い、愛に満ちた空気で
敵を虜にしようと。
しかし、愛と言う名の『暴力』をご主人のルトルファスに
振るおうとすれば、ラーヴァが赤糸を腕に巻き付けて縛りあげる)
ラーヴァ
『ダメだよ、ソレは「愛」じゃない。
「愛」は一方的には生まれないの、互いに求める物じゃないと。
…判らない?それじゃあ…貴方の「愛」はいらない♪』
(と、笑顔で冷たく言い放った愛精霊は、触れると爆発する
❤の魔力弾を打ち出す(属性攻撃+全力魔法))
エスタシュ・ロックドア
【白岩】◎★🔥
イヴィが多喜のUCで止まったトコを、
フリントで弾いて鈴音を【かばう】
一人で渡り合うたぁやるじゃねぇか、良く頑張ったな
さて、俺のかわいい子分に何してくれてんだ、イヴィ
久しぶりだな、俺の見てくれは大分変ったがよ
そんじゃ、俺ぁ今だけ青い目の王子様だ
行くぜ
今度は俺が上手に愛(殺)してやる
簡単に壊れんなよ、イヴィ
『群青業火』発動
業火を纏わせたフリントを【怪力】で振るうぜ
イヴィの攻撃は業火を【範囲攻撃】で広げて【カウンター】、
焼き払うわ
みんなの援護受けて礼を言いつつ、
格好のタイミングで渾身の一撃を首を狙って叩き込みに行く
受け取れイヴィ、お望みの愛だぜ
冥途……じゃねぇ
骸の海の土産に持って行け
六島・椋
【白岩】◎★🔥
『敬虔』で痛覚遮断
庇ったエスタへイヴィ――なんとかの意識が行っている間に、
【目立たない】死角から奴に【だまし討ち】を仕掛ける
……こういうやつが、かわいいと言うのか
生物の美醜はわからんな
やあ鈴音じゃないか、骸でなくて何より
自分とダガーを盾として、【盾受け】でエスタへの攻撃を防ぐ
だが、あくまでエスタと向こうのやり合いを邪魔しない程度
視線と吸血は、オボロにはすまないが彼に受けてもらう
後で念入りに手入れする、許してくれ
必要なら【早業】で、
ダガーと人形での【二回攻撃】や、
投げナイフを【投擲】しての牽制、攻撃
こちらを気にする必要はない
存分にやってやるといい、相棒(エスタシュ・ロックドア)よ
月隠・三日月
【白岩】
蒼薙さん、先行するとは無茶をする……けれど、そうするだけの理由があるのだろうね
……しかし、なかなかどうして可愛らしい吸血鬼じゃないか。確かにどこぞの姫君のようだ。オブリビオンでさえなければね
私は皆さんを守るように動こう
【降魔化身法】で戦闘力を強化して、仲間に向かう敵の攻撃を遮るように立ち回るよ。敵の投げてくる人形を斬ったり、敵の吸血攻撃を受け止めたりね
代償のあるユーベルコードではあるけれど、ここで足手まといになるわけにはいかないからね。出し惜しみをする余裕はない、多少の反動は【覚悟】の上だ
恋とか愛とかは、私にはまだよくわからないけれど……エスタシュさんの手助けくらいはしたいんだ
◎★🔥
数宮・多喜
【白岩】◎★🔥
まったくもって悪趣味だねぇ、
どうやって本物を見極わめてるのかすら分からねぇ。
そんなんだから王子様とやらも見逃すんじゃないのかねぇ。
……ん?先に誰かいる?
なんかヤベェ雰囲気じゃねぇか!?
仕方ねぇ、不意打ちが無駄になるが
【時縛る糸】でイヴィエラの動きを止める!
……なんだよオーナーの知り合い、てかアタシともお仲間かよ。
こんなところで初対面とはねぇ、っと話は後だ。
飛び来る人形にも【時縛る糸】を掛けりゃ、
噛みつかれる事もねぇだろ。
そんな感じで露払いはやってやんよ、
我らが王子様!
しっかりとカタ、付けてきな!
「やっと見つけた……!」
イヴィエラの部屋に最初に到達した蒼薙・鈴音(ぎんぎつね・f13257)は、開口一番イヴィエラに向かってそう言向けると、キッと紫の双眸で見つめる。
「あら、そんなに私に会いたかったのかしら、嬉しいわ……"王子様"」
一番乗りの"王子様"に、嬉しそうに微笑みながらイヴィエラは射抜くような視線を向ける。
「……ッ!貴女が、ッ……エスタシュ親分の……昔のオンナ、だね?」
「……エスタシュ、ですって?」
イヴィエラの視線に圧を感じ、僅かに距離を取りながらも鈴音が言葉を向ければ、イヴィエラはピクリと目を細めながら歩みを止める。
――"エスタシュ"。
――嗚呼、聞き覚えがあるわ。
「……エスタのこと、知っているみたいね、アナタ」
久方ぶりに聞いた名に、上機嫌そうに笑いながらイヴィエラは鈴音へと、人形の一つを紫陽花の花弁へと変じさせ、花吹雪を見舞う。
「――ッ、貴女の愛は鎖みたいで、檻みたいだ……!ボクも、きっと親分も……そんなの好きじゃない!」
触れれば皮膚を裂いてゆく花弁を、素早い身のこなしで最小限のダメージに抑えて避けながら、鈴音はイヴィエラを見据えて、叫ぶ。
「まぁ。……アナタにエスタの、何が解かるのかしら?」
「……少なくとも、貴女よりは今の親分のコト、沢山知ってる!……だから悪いけど、貴女を退治させてもらうよ!」
花吹雪の範囲外へと向かって距離を取りながら熱線銃を構え、鈴音が応酬すると。イヴィエラはやや不機嫌そうに眉を顰めて。
「そう……じゃあ、アナタを殺して私の方がエスタのことを知っている子になりましょう」
ふ、とイヴィエラが鈴音に掌を向ければ、範囲外かと思っていた鈴音まで紫陽花の花吹雪が舞って。
「ッ、あ……!」
(今回は親分の手を汚さずに片づけたかったけれど……一人じゃやっぱり無理かな……)
全身を花弁の花吹雪に呑みこまれる――そう感じた瞬間、頭の中に走馬燈が巡って――。
時は数分遡って、イヴィエラの部屋の前。
「まったくもって悪趣味だねぇ、どうやって"王子様"とやらを本物を見極わめてるのかすら分からねぇ」
肩を竦めながら数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が【白岩】のメンバーと扉の前へとたどり着いた頃。
「そんなんだから王子様とやらも見逃すんじゃないのかねぇ。……ん?先に誰かいる?……なんかヤベェ雰囲気じゃねぇか!?」
部屋の中から、複数人の気配――何処か言い合う様な声を聴きとった多喜がひそひそと呟くと、エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)が前に進み扉に耳を近づけて。
「……嫌な予感はしてたんだよな」
部屋の中から聞こえたのは知った声が、『二人分』。
バァン!と反射的にエスタシュが思いきりドアを開き、叫ぶ。
「多喜!」
「オッケー、オーナー!」
呼ばれた多喜は、対象の主観時間をレベル秒間止める思念波――時縛る糸をイヴィエラへと放つ。
「――何?!」
突然の横やりに完全に不意を突かれ、暫くその時間を拘束されるイヴィエラ。
イヴィエラの動きが止まった間に、エスタシュは花吹雪に呑みこまれそうになっていた鈴音の前に立つと、フリントを振るい花吹雪を払いながらその身を挺して庇う。
「あ……親分……」
走馬灯の旅から意識が戻ってきた鈴音が、目の前へと現れた親分――エスタシュに、恐る恐る声を掛ける。
「一人で渡り合うたぁやるじゃねぇか、良く頑張ったな」
そんな鈴音に、ニィ、と笑って褒める様に頭に手を乗せるエスタシュ。
てっきり説教の一つも貰うモノかと思っていた鈴音は、ビックリしながらエスタシュを見上げれば、目の前の彼はイヴィエラへと視線を移していて。
「さて、……俺のかわいい子分に何してくれてんだ、イヴィ」
「……エスタ」
好戦的にエスタシュが言葉を向ければ、身体の自由が戻りつつあったイヴィエラが、ぽつりと目の前の猟兵――懐かしい"王子様"を見つめて、その名を呼ぶ。
「久しぶりだな、俺の見てくれは大分変ったがよ」
「久しぶりね、エスタ……そうね、すっかり成長したのね、アナタ」
久しぶりに会う友人のような、そんな言葉を交わしながらも、お互いの交わる視線に含まれる感情は、交わり得ないもので。
エスタシュ――猟兵の一見優しそうな青い眼差しには、強い敵意と殺意が含まれていた。
イヴィエラ――オブリビオンの熱に浮かされた様な赤い瞳には、恋慕と慈しみと――狂気が含まれていた。
「そんじゃ、俺ぁ今だけ青い目の王子様だ……行くぜ、今度は俺が上手に愛(殺)してやる」
――簡単に壊れんなよ、イヴィ。
フリントを片手で振るってその刃をイヴィエラに向けると、ニィッと野性的な微笑みを以て好戦的な眼差しを向ける羅刹の"王子様"に。
「嗚呼!嬉しいわ、愛(殺)し合いましょう――エスタ!」
本当に、心から嬉しそうな声で叫ぶと、"お姫様"は目の前の羅刹を模して作られたような褐色の人形を手に、狂気に満ちた瞳を向けながら笑う。
笑いながら人形をエスタシュへと曲げつけようとするイヴィエラの死角から、数本のナイフと暗器がその腕へと刺さる。
「ッ……な……!」
「……こういうやつが、かわいいと言うのか。生物の美醜はわからんな」
イヴィエラの意識がエスタシュや多喜、鈴音に向いている間にイヴィエラの死角へと回り込んでいた六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)が、両手にダガー、投げナイフを持ちながら抑揚のない声で呟く。
だまし討ちされたと気付くや否や、憤ったイヴィエラが椋へと人形を投げつけるが、エスタシュのフリントの一振りで防がれて。
「やあ鈴音じゃないか、骸でなくて何より」
「……なんだよオーナーたちの知り合い、てかアタシともお仲間かよ。こんなところで初対面とはねぇ、っと話は後だ」
痛覚を遮断する術を発動させながら、涼しい声で椋が鈴音に声を掛ければ、術を発動させながら多喜がエスタシュと鈴音へと挨拶交じりに声を掛け。
「蒼薙さん、先行するとは無茶をする……けれど、そうするだけの理由があるのだろうね」
さらに椋の後ろから、さり気無く暗器で追撃を仕掛けていた月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)が鈴音へ声を掛けた。
「……しかし、なかなかどうして可愛らしい吸血鬼じゃないか」
イヴィエラの可憐なドレス姿に視線を向けて、そう評価しながらも、降魔化身法で己の肉体を強化して戦闘への備えを行う三日月。
「確かにどこぞの姫君のようだ。……オブリビオンでさえなければね」
そう、どんなに美しくても、どんなに可愛らしくても。
相手はオブリビオンであり、それの意味するところは猟兵の敵にほかならず。
身体強化の代償を身を蝕まれながらも、物腰柔らかそうな笑みを崩さぬまま、三日月は怪しく輝く刀身を持つ、月隠に伝わる無名の妖刀を構えて。
(代償のあるユーベルコードではあるけれど、ここで足手まといになるわけにはいかないからね。出し惜しみをする余裕はない、多少の反動は……覚悟の上だ)
内心で苦心を語り、外面には堂々と戦人として刀を構える。
「……恋とか愛とかは、私にはまだよくわからないけれど」
妖刀の煌めきは一瞬。
イヴィエラへ一瞬で距離を詰めると、居合いの要領で無駄の無い一閃を見舞う三日月は。
「……エスタシュさんの手助けくらいはしたいんだ」
謙虚に呟きながら、羅刹の角を鈍く光らせて、イヴィエラを見下ろす。
「……さて、あのオブリビオンが標的か」
そんな【白岩】の猟兵たちの後ろから現れたのは3人の猟兵たち。
「……愛だか大好きだか知らんが、暴力じみたのは愛か?……ふむ、一度……『愛』に詳しい奴に聞いてみるか」
ルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)は、部屋に入るや否や戦闘態勢を整えるべく精霊を呼び出した。
「……我が精気を依り代に、出でよ……「愛」を司る精霊・『ラーヴァ』!」
イヴィエラの愛に疑問を呈しながら、ルトルファスが呼び出すのは、愛欲の大精霊・『赤糸』のラーヴァ。
愛の精霊は、ルトルファスの身体に絡みつくように抱きながら、イヴィエラへ愛の魔力弾を撃ち出し、援護を行う。
「哀れなお姫様だね。高望みを否定はしないけど、それは与えられるモノあってこそなのさ。……君に望む資格はないよ」
更に部屋へと足を踏み入れたのはスフィーエ・シエルフィート(愛と混沌のストーリーテラー・f08782)。
「何故?私はこんなにも愛しているのに……王子様に愛を受け止めてもらうこと、答えてくれることを望んで、何がいけないの?」
自らの愛を否定され、眉を寄せて不満を顕にしながら、イヴィエラは次々と人形たちを紫陽花の花弁へと変え、花吹雪を以て猟兵たちへと愛を唄う。
「やれやれ……随分と身勝手ですね、貴女の愛とやらは。……在るが儘に我儘を受け入れて欲しい?……赤ん坊ですか」
紫陽花の花弁を風の翼を纏いふわりふわりと空中で躱し、零虚を携えてヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)が囁く言葉は、紳士的で穏やかながら呆れが混じる。
「身代わりを幾ら求めても飢えは癒えず、本当に欲しい物は手に入らない。……慰め程度にはなるでしょうがね」
空の弾倉にヴィゼアが込めるのは意志を持った大気の弾。
精密な腕前で射出されたそれは、二連で撃ち出され、構えていた人形ごと身体を撃ち抜き貫通した、あるいは掠めた傷口から麻痺の毒でイヴィエラを蝕み。
「きゃああっ」
「さて……物語のクライマックスにはこれが相応しい!」
回避能力を著しく上昇させ、スタイリッシュな動きに磨きをかけたスフィーエが、麻痺に侵され精度の鈍った紫陽花の花吹雪を華麗に踊り躱してイヴィエラへと接近し、追撃の人形たちを二挺の精霊銃で撃ち抜き牽制する。
「知ってるかい?……王子様はこれぐらいの攻撃なんて軽く切り抜けられるのさ」
「王子、様……」
至近距離へ詰めると同時に、風と地の属性を宿すルーンサーベルで切り上げ、軽い身体も相まって浮かび上がったイヴィエラの胴に重力波と兜割りを見舞う。
「……そう、本当に困っている者の為に。悪者を倒す為なら、ね」
斬撃によって体勢を崩され、声鳴き悲鳴と共に零れるように宙から墜落するイヴィエラ。
だが、その瞳はまだ活きている。
「あははははっ……まだよ……そんな"愛"じゃ、足りない……まだまだ私の"愛"も、足りないの……ッ」
狂気を孕んだ赤色が視界に写したのは長髪の猟兵、腕に抱えた人形を、運命の赤い糸を結ぶために投げつけて――。
『ダメだよ、ソレは「愛」じゃない』
ルトルファスを守護するように位置どった愛の精霊が、イヴィエラの攻撃を弾きながら、冷たく微笑む。
『「愛」は一方的には生まれないの、互いに求める物じゃないと』
「……お互いに、求める?」
精霊の囁きに、動きを止めるイヴィエラ。
それは、一瞬だが十分な隙だった。
『……判らない?それじゃあ……貴方の「愛」は、"いらない"♪』
「――だ、そうだ。"お姫様"とやら」
言葉に詰まったイヴィエラにそう断じると、精霊はルトルファスの振り下ろす大剣に合わせるように赤い糸を放ってイヴィエラを拘束し、刹那ルトルファスの一薙はイヴィエラの肩を砕き斬る。
「うぁぁぁっ!……はぁ、……っう……はぁ……」
「……恋人を求め続け、愛がわからなくなりましたか?……でも、ほら。……求め続けた本物は違うでしょう?」
大剣の勢いのままに吹き飛ばされ、血を流しながら痛みに呻くイヴィエラへ近づくと、宙を舞いながらヴィゼアは剣を鞘に収めつつ、ある方向を指し示す。
痛みに朦朧としながらイヴィエラが視線を向けた先には、青い瞳の羅刹が立っている。
「エスタ……エスタエスタ……私のエスタ!」
傷だらけの身体を起こして、イヴィエラは鈴を転がしたような可憐な声のまま、愛しい彼を呼びながら、駆け出した。
「まだ動けるのか」
エスタシュへ向かうイヴィエラを、椋がダガーやオボロを盾のように差し向けて妨害するが、狂ったように突き進むイヴィエラは傷を増やしながらもそれらを甘受し、押し退ける。
射抜くような視線、流れた血を取り戻すように立てられる牙を椋の代わりに受けるオボロが、ジリジリと後退させられる。
多喜もエスタシュへ投げつけられる人形を時縛る糸で防いで、時間稼ぎを行い妨害の手を加える。
「ッ、ここまでか!……しっかりとカタ、付けてきな!我らが王子様!」
「こちらを気にする必要はない。……存分にやってやるといい、相棒――エスタシュ・ロックドアよ」
「おう、……ありがとな」
背を押すような多喜と椋の言葉に、凛とした青い瞳を向けて軽く頷きながら礼を言うと、イヴィエラに向き合いエスタシュは詠唱する。
「此処に示すは我が血潮、嘆かわしくも誇るべき臓腑の火……」
唱えれば、エスタシュの傷痕から群青の地獄が噴き出し、湧き上がる業火は部屋の空気を灼いてゆく。
「――さあ、燃えろ、焼けろ、灰になれぇ!」
「――親分ッ」
咆哮と共に、エスタシュの群青色の業火がイヴィエラを灼く瞬間、彼女の背後から駆ける妖狐が、炎を纏った掌をイヴィエラへと向け、放つ。
機を狙っていた鈴音の零距離からのフォックスファイアの橙の狐火――その爆発的な火力が、エスタシュの炎へ加わる。
「きゃああああ!……熱い、……いやっ……あああ……!」
あとは宜しくね!――と笑顔で目線を送る鈴音に。
――任せろ、と言わんばかりにニカッと笑ってみせてから、エスタシュは断末魔を上げ致命傷に至り燃え続けるイヴィエラに向き直るとゆっくりと近づいて行く。
「……エスタ」
「よぉ、イヴィ」
「……私ね、……私、ずっと」
息も絶え絶えに、業火に可憐で華奢な身体を灼かれる少女に、エスタシュは怪力の逞しい腕でフリントを肩に担いで正面から向かい合う。
「ずっと、好き……大好きよ、エスタ」
「……ああ」
肌を灼かれながら、今際の際の言葉を向けるイヴィエラに、エスタシュは静かな声で応じる。
――枷と檻さえなきゃ、耐えてそのまま付き合ってたかもしれん。
面倒みがいい、寧ろ良すぎるぐらいの性分は、自分がよく知っている。
だから、もしもイヴィエラがオブリビオンでなければ、或いは――。
(……こいつを使うこともなかったかもしれねぇな)
「……受け取れイヴィ、お望みの愛だぜ」
「嬉しいわ、エスタ……」
担いだフリントを振り上げる。
外すものか。一撃で決めてやる。
「冥途……じゃねぇな。骸の海の土産に持って行け」
ブオンッ、と重く風を切る音を間近で聴きながら、"お姫様"は灼けながらも幸せそうに微笑んで。
「愛してる、エスタ」
迷わぬエスタシュの渾身の一撃は、イヴィエラの首を跳ね飛ばした。
笑みを浮かべたまま首を刎ねられたイヴィエラは、別れた首も胴もそのまま炎に巻かれ灰燼となり――骸の海に還り、二度と戻ってこないだろう。
猟兵たちは、暴君の死を領民たちに知らせようと塔を後にする。
これからはもう、"王子様"に仕立てあげられる不幸な生贄は生まれないことも、知らせるために。
「……じゃあな」
最後の一人、褐色の羅刹が主なき部屋に声を残してから重く扉を閉めれば、姫を喪った塔は永い静寂に包まれるのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月09日
宿敵
『恋に恋するイヴィエラ』
を撃破!
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