温室の防衛戦 ~あま~い蜜ぷにと一つ目巨人~
#アルダワ魔法学園
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ぴょいん、ぷにっ、ぴょいんっ。迷宮内に、奇妙な音が響く。
このまま進めば、怖いアイツから逃げられる。
ぴょいん、ぷにっ、ぴょいんっ。気の抜ける音が、更に響く。
今は逃げ切り、仲間を増やして。いつか必ず仕返しするんだ。
ぴょいん、ぷにっ、ぴょいんっ。迷宮内に、奇妙な音が響く。
仲間をイジメて食べた、あの一つ目のデッカイのに。いつか必ず、復讐するんだ。
ぴょいん、ぷにっ、ぴょいん。ぴょいん、ぷにっ、ぴょいん。ぴょいん、ぷにっ、ぴょいん。
迷宮内で良く見られるモンスター、『蜜ぷに』が、何故か群れをなしている。
群れをなす彼らは突き進む。迫る脅威から逃げる為。いつかの捲土重来を果たす為。
そうして進み続けた彼らが辿り着いた場所は、霧に包まれた自然豊かな広大な空間。静かで、草花も栄養に満ちたモノが多く……力をつけるには、うってつけの環境だ。
そうして、蜜ぷにの一団は一時の安住の地を見つけた。
だが、いじめっ子とは存外しつこいものだ。美味を覚えた野生となれば、更にしつこいものだ。
そう。蜜ぷにの味を忘れられない『一つ目の巨人』が、蜜ぷに達を追ってすぐそこまで迫っているという事を。蜜ぷに達は、知る由も無いのだ。
●
「お集まり頂き、ありがとうございます」
集まった猟兵達を迎え入れたのは、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)。艷やかな銀糸の髪と絶やさぬ微笑が特徴のグリモア猟兵だ。
「今回皆様に赴いて頂くのは、『アルダワ魔法学園』世界のとある迷宮です」
蒸気に覆われた地下迷宮。その迷宮を抜けた先には、様々な薬品の原料となる樹木が自生する空間が広がる『温室』と呼ばれる設備があるのだという。
過去に幾度か、この『温室』を巡る戦いが繰り広げられており、その都度猟兵達の活躍により『温室』の環境は守られてきたのだが……
「……今回も。えぇ、今回もなんです。『温室』に災魔……オブリビオンが、現れたようでして」
その対処を、皆さんにお願いしたいのです、と。ヴィクトリアは語る。
今回『温室』に出現したのは、『蜜ぷに』と呼ばれる迷宮内ではよく見られる存在だ。花の蜜で身体を構成されたスライム状のモンスターで倒されると身体が崩れて美味しい蜜をその場に残すのだとか。
ちなみに、肝心の戦闘力は高く無く……というか、はっきり言って弱い。学園の一般生徒でも鼻歌混じりで駆除出来る程度の強さでしか無い。
……え、そんな相手に猟兵が出るの? という疑問の声が上がったのは、当然の事だろう。
「えぇ、仰る通り蜜ぷに自体は大した問題では無いのですが……問題は、別にありまして」
『温室』に居る蜜ぷに達は、その地で自然発生した存在ではない。他所から流れてきた、いわゆる難民のような存在だ。
問題は、蜜ぷに達が元の住処を離れる原因となった存在……彼らを追いやった、強力な災魔、『一つ目の巨人』が遠からず『温室』に足を踏み入れる未来が視えた事である、とヴィクトリアが説明する。
強力な、と形容されるだけあって、『一つ目の巨人』の戦闘力は中々の物。学園の一般生徒が対処をするのは難しいであろう事は、想像に難くない。
「なぜ、『一つ目の巨人』が『温室』まで蜜ぷにの群れを追い掛けてきたのか。その詳細は分かりませんが……」
『巨人』が温室に足を踏み入れ、万が一定住してしまえば……日々『温室』を利用する生徒たちに危険が及ぶだろう。『温室』の環境にも、悪影響が及ぶ可能性は非常に高い。
また『蜜ぷに』達も、花々から蜜を吸い上げ凝縮する事で身体を作る存在である為……こちらも放置しては、温室の草花にとって良くない事になるだろう。この機会に、しっかり駆除をしておきたい所である。
今回の依頼を要約すると……まずは、蜜ぷにの駆除。その後、温室に足を踏み入れるだろう『一つ目の巨人』の撃破。この二つを両方達成する事が、成功条件となるようだ。
「学生達が今後も『温室』を使えるよう、脅威は出来る限り排除しておきたい所です。皆さんのお力を、お貸し下さい」
そう言ってヴィクトリアは皆に向かって頭を下げようと……した所で、思い出した様に皆に告げる。
「今回、皆さんにご足労頂いたお礼に、『温室』を利用する学生達が魔法の氷室で作られた氷を提供してくださるそうです」
削って口に運ぶも良し、砕いて冷たい飲み物を楽しむも良し、氷を器に使った冷菓子を楽しむのも良いだろう。
……少しずつジメジメと、暑くなってきた今日このごろ。魔法の氷室で作られた純度の高い氷は、きっと心地よい涼しさを猟兵たちに供してくれるはずだ。
シロップや飲み物、菓子等は学生達が手配してくれるらしいので……堪能してみてはどうだろうか?
「それでは、改めまして……」
皆さんのお力をお貸し下さい、と。
ヴィクトリアは深い礼をして、猟兵達を現地に送り届けるのだった。
月城祐一
5月後半戦、暑い……暑すぎない??? どうも、月城祐一です。
今回は『温室』にまた現れた災魔の討伐のお仕事です。
参考までに、以前の『温室』関連の事件は ↓こちら↓ になります。
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=1711 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=2149 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=6652 )
読まずにご参加頂いても問題はありませんが、宜しければ是非ご一読下さい。
さて、補足です。
舞台となる『温室』は、木々も多く面積も広大です。自然の森の中と同じ様な環境と考えて頂いて問題ありません。
ただし、常時蒸気の霧に覆われている為に視界はよくありません。その辺りの対策を考えてみると良いでしょう。
なお、本編は『温室』に足を踏み入れた所から始まります。その道中を考える必要はありませんので、お気になさらず。
第1章は集団戦。アルダワ世界ではおなじみの、蜜ぷにが相手となります。
戦闘力は、はっきり言って弱いです。よっぽど変な事をしない限り、失敗・苦戦はありえないレベルの弱さです。
……あ、この蜜ぷには『温室』の草花の蜜を吸ってます。しっかり栄養を蓄えた蜜ぷに……あ、いえなんでもありませんよ?(棒
第2章はボス戦。一つ目の巨人が相手となります。
詳細不明ですが、パワー型。そして甘い物に目が無い相手となります。
第3章はお楽しみの時間です。
学生達が学園の魔法の氷室から氷を提供してくれます。
削ってよし、砕いてよし、器にしてよし。混じりっけの無い純度の高い氷をお楽しみ下さい。
シロップや飲み物、菓子類なども生徒側が用意してくれていますが、持ち込みも歓迎となっております。
また、お声掛け頂いた場合、ヴィクトリアもお邪魔させて頂きます。交流してもいいかなー、とお考えの方は是非。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 集団戦
『蜜ぷに』
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POW : イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ワーブ・シートン
【熊熊】
今回が初出場なんですよぅ。
何ていうかぁ、おいしそうなぁ、においがするんですよぅ。
今回はぁ、ランディスと共に行動するんですけどねぇ。
まぁ、あのぉ、おいらは初なんでぇ、災魔とかも知らないんですけどねぇ。
でもぉ、あの丸っこいのからはぁ、蜂蜜に近い感じの匂いがするんですよぅ。
まぁ、おいらはぁ、ゆっくりとぉ、近付かせてもらうんですよぅ。
蜜ぷにが動物たちに追っかけられてこっちに来たらぁ、一網打尽に捕食(大食い)するですよぅ。
使用するUCで、食べたい意志の強さで自身を強化、熊の突進力で蜜ぷにをムシャムシャする。
「ヴォ〜〜ン、おいしいですよぅ。」
ランディス・ティンバーウルフ
【熊熊】
ア、コンカイ、オイシソウ、エモノ、デテクル。
ジャマモノ、アトデ、タオス。
ココハ、ホショク、テツダウ、
ワーブ、イッショニ、アレ、タベル。
蜜ぷにが出るってことで、今回は、黒熊にも、蜜ぷにの味を味わわせたい、
まずは、最初に森の友達の熊さん(UC)を使って黒熊を呼び寄せて、ゲフェン(狼)とバギ(黒豹)で蜜ぷにをワーブのもとに誘導させるようにする。
【動物使い】で狩りをする。
ワーブのもとに届けたら、ランディスは武器で蜜ぷにを刺して喰ってみる。
「ガウ、ハジメテ、タベタ。アマイ、ミツ。コレ、クマ、ヨロコビソウ、ガウ」
まぁ、狼と黒豹は甘みはあまり宜しく無さそうだから、捕食は少しに留める。
●
「アー……コンカイ、オイシソウ、エモノ、デテクル」
どこか辿々しい言葉遣いの少年が、巨大な黒い影に跨って『温室』の森を往く。
少年の名は、ランディス・ティンバーウルフ(狼少年・f04939)。跨る影は、ランディスが喚び出した黒熊である。
「ジャマモノ、アトデ、タオス」
ランディスの言葉は、どこまでも辿々しい。それもそのはず、彼は熱帯のジャングルで狼によって育てられたという経歴を持つ猟兵だ。故に、その口調は単語も多く難しい言い回し等は出来ないようだが……コミュニケーションが取れぬ訳では無いし、大きな問題では無い。
「邪魔者ぉ……えっとぉ、災魔? でしたっけぇ?」
事実、ワーブ・シートン(森の主・f18597)にはランディスの言いたい事は通じている。
だが……
「えっとぉ、あのぉ、おいらは初なんでぇ、災魔とかも知らないんですけどねぇ」
おいしそうなぁ、においがするのはわかるんですけどぉ、と。のんびりした口調で応えるワーブ。
……猟兵となって日が浅く、今回が初めての依頼となるワーブにはどうも災魔……オブリビオンのイメージが上手く湧かない様子である。
「ダイジョウブ、タタカウ、アトデ。イマハ……」
獣の唸り声、遠吠えが森に響く。ガサガサ、と茂みが揺れて……飛び出してきたのは、10体程の『蜜ぷに』だ。更にその蜜ぷに達を追い立てるように、灰色の狼と黒色の豹も茂みから飛び出してくる。
「ワーブ、イッショニ、アレ、タベル……ゲフェン! バギ!」
狼、ゲフェン。黒豹、バギ。それぞれランディスの家族であり友である存在である。どうやら二体はランディスの命を受けて先行し、この場に蜜ぷに達を誘導してきたらしい。
そんな二体が、ランディスの指示を受けて吠え立てる。響く声に怯えた様に、ぴょいんっ、ぷにっ、と。奇妙な音を立てながら、蜜ぷに達は逃げ惑い……ランディスの投じたダガーが、一体の蜜ぷにの身体を貫いた。身体を構成する蜜が漏れ、甘い香りが周囲に溢れる。
「……ぉ、ぉお? 蜂蜜に近い感じの匂いがするんですよぅ」
甘い香りに誘われる様に、ワーブの鼻がスンスンと動く。芳しいその香りに脳裏を過る、心身を蕩かす様な蜂蜜のあま~い味。そんな想像が広がれば、自然と口の中にも涎が溢れようと言うものだ。
(これは、なんとしてもぉ、食べないとですねぇ……)
我知らず黄金に輝くワーブの身体。『蜜ぷにを食べたい』という強い意思が、ワーブの身体を纏うオーラとして現れ出たのだ。……微妙に締まらない気もしないでもないが、生物の三大欲求に直結した意思は強いと相場が決まっているから仕方がない。
ゲフェンとバギに追い立てられる蜜ぷに達。その一体に狙いを定めて……ガバァッ!! と突進。文字通りのベアハッグを決められて、哀れ蜜ぷにはプチッと潰れてしまう。
「……ヴォ~~ン、おいしいですよぅ」
潰れた蜜ぷにから溢れた蜜を掬い上げ、口に含むワーブ。その瞬間広がった蜂蜜に似た甘みと、その中に存在する『温室』で育った様々な草花の香りにワーブの心は一瞬で虜となる。もっと食べたい、もっとっ! と言わんばかりに、金の輝きを増々輝かせながら。ワーブは逃げる蜜ぷにを追いかける事になる。
一方、投げたダガーを回収したランディスもダガーに付着した蜜を指で救ってその味を確かめてみる。
「……ガウ、ハジメテ、タベタ」
初めての蜜ぷにの蜜。凝縮された甘さの中に感じる滋味深さは、口にすればするほど身体の活力へ変わるよう。迷宮探索者の多くがおやつ代わりに愛好するのも頷けるという味である。
「コレ、クマ、ヨロコビソウ……ガウ」
一つ頷くと、跨る黒熊の為に蜜ぷにを確保しようと武器を振るうランディス。頑張ってここまで追い立てたゲフェンとバギにも、と思ったが……二体は甘味はそれほど好みでは無かったか。少量の蜜を舐め取っただけで満足している様子であった。
ともあれ、ランディスとワーブの二人は蜜ぷにの駆除を進めながら……その甘い味も、堪能するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と同行
セフィリカさん、また蜜ぷにの蜜を取りに行きませんか?
今度のは草花の蜜を吸ってるみたいだから、はちみつみたいに味が変化してるかもしれませんね
ちゃんと仕事を終わらせれば氷ももらえるみたいだし、かき氷目指して
多めの密閉瓶を用意してから温室へ
中に入ったら眼鏡を取って蜜ぷに集め
ひととおりの色の蜜を集める
仕事が終わる前だけどちょっとだけ味見、してみません?
セフィリカ・ランブレイ
颯夏(f00027)と行こう!
颯夏、悪いけど私はもう完全にダメ
この国の夏は熱すぎる!湿度がヤバくて完全にグロッキーな私
なので部屋から出る気がですね……
ほう、蜜プニと氷のコラボレーションですか、詳しく話を聞こうか……!
というわけでやってきました温室。ここはまだ涼しいよね
よーし、いっぱい集めるぞー!
ここは人海戦術がいいね。
【シェルファ顕現】を使用
そんなことで呼ぶの…?と言いたげな魔剣と可愛いゴーレム達に蜜ぷにの採取をお願いするよ
私は指揮担当という事で。合体して強くなりそうなやつは優先的に採取しちゃいましょうね
うーん流石にこの位だと楽だよね、颯夏
かき氷の前にちょっとだけの味見、しちゃおっか!
●
「よーし、いっぱい集めるぞー!」
霧の温室に、活発な少女……セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)の声が響く。
金の髪、赤の瞳、身体から溢れる陽性の活力が魅力的な美少女である。
だが……
(セフィリカさん、さっきまでとは違って随分と元気になって……)
青葉・颯夏(悪魔の申し子・f00027)は知っている。この依頼に誘う前の、セフィリカのグダグダっぷりを。
夏本番にはまだ遠い時期。そんな時期だと言うのに、外の暑さは尋常ではない。湿度も高く、肌に纏わりつく様な空気は容赦なく体力を奪う。
……そう、セフィリカはこの暑さに既にグロッキー状態であった。蜜ぷに狩りに誘っても『部屋から出たくない』と駄々をこねた程だ。
そんなセフィリカだったが……
『ほう? 蜜ぷにと氷のコラボーレーションですか。詳しく話を聞こうか……!』
颯夏の説明を聞けば態度は一変した。その余りにも見事な手の平の返しっぷりは、今思い返しても……思わずくすり、と。颯夏の口元にも笑みが溢れる。
(まぁ、セフィリカさんの気持ちも分かりますけど)
甘くて美味しいものは、どんな世界、どんな時代であっても多くの女性の心を惹き付けるもの。セフィリカも、颯夏も、例外ではない。
蜜ぷにの蜜と、仕事終わりに供されるという混じりっ気の無い氷。二つを組み合わせて生み出されるであろう美味を思えば……身体に活力も漲ろうと言うものだ。
「颯夏ー?」
「はい、今行きますね」
セフィリカの呼び声に応え、眼鏡を外しながら颯夏は温室に足を踏み入れる。
かつて来た時と同じ様に、温室の中は蒸気に満ちて、暑くもなく、寒くもなく。程よい温度に保たれている様に感じられた。
「いやー、ここはまだ涼しいよね。……さて、準備は良い?」
「えぇ、瓶の準備も出来てます」
颯夏の持ち込んだ手提げ鞄の中には、大きめの密閉瓶がいくつも仕舞い込まれていた。これだけの数があれば、二人で楽しむだけでなくお土産に持ち帰ってもしばらくは楽しめる量は確保出来るかもしれない。
まぁ、その為には……
「しっかりと集めなきゃね。と言うわけで……」
愛用の魔剣を地に突き刺せば、たちまち剣から目も眩む様な光が溢れる。光が収まれば……魔剣の姿は、影も形も無く。代わりに立つは、一人の青い髪の女性と無数の戦闘用ゴーレムだ。
「それじゃよろしくね、シェル姉!」
セフィリカの言葉に、『そんなことで喚び出すの……?』と言いたげな表情を浮かべる女性。ゴーレム達の方もその動きはどことなく緩慢な様な。
とは言え、主と認める少女のお願いである。応えぬ訳には行かぬのか、女性とゴーレム達は、それぞれに森に散っていく。そうしてしばらく待っていれば……戻ってきたゴーレム達の腕の中には、それぞれ数体の蜜ぷにの姿が。蜜ぷに達の中には額に刻まれた数字が既に2や3を数えている者がいたりもするが……
「ちゃんと仕事を終わらせなきゃいけないから……ごめんね?」
合体強化しようが、蜜ぷには蜜ぷに。颯夏の生み出した花びらの刃で簡単に斬り伏せられ、その体液である蜜を献上する事になる。
5や6くらいになればもうちょっと梃子摺ったかもしれないが……蜜ぷに達には悪いが、そこまで合体させるほど猟兵の方もお人好しではない。致し方なしである。
「まー、これくらいなら楽勝だよねー?」
「そうですね。……ところで」
溢れる蜜を瓶に収めつつ……蓋をする前に、二人はじっと中の蜜を見る。
きらきら輝く蜜ぷにの蜜。個体によってそれぞれ吸った草花の蜜が違うのか、その色合いは千差万別だ。その味もきっと、少しずつ違いがあるであろう事は想像に難くない。
この蜜は、きっと。あの蜜は、多分。色から感じる味の想像に思考が傾けば、同時に誘惑も訪れて……
「……仕事が終わる前だけど。ちょっとだけ味見……してみません?」
「……そう、だね。かき氷の前に、ちょっとだけの味見、しちゃおっか!」
『味見』という大義名分に託つけて、年頃の二人はその誘惑に素直に乗じる事にする。
舌を喜ばせる幸せの味に、顔を綻ばせる颯夏とセフィリカ。二人は楽しみながらもしっかりと、与えられた仕事をこなしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミフェット・マザーグース
甘いものは好きだけど うごく甘い物って すごくへん
お肉なのかな スイーツなのかな
ぷにぷにうごく食べ物 食べても だいじょうぶ?
蜜ぷにを追い出すよ
かわいそう、とか、そんなことないけど
ミフェットは、食べるのもちょっと、こわいかなって
ミフェットは一人できたから、ほかにお手伝いにきてる猟兵さんがいたら、一緒に行動して、効率アップをめざすよ
UC【バウンドボディ】
髪の毛を伸ばして掴んで、ゴムの要領でピンと伸ばして遠くへポーン!
「ロープワーク」と「怪力」で、うまくできるかな?
・・・・遠くへ飛ばしたぷにが、地面で弾け飛んでたら
うー、しょうがない、よね
●
迷宮探索者のおやつ。そして多くの猟兵達の舌と心を魅了する甘美なる蜜を持つ存在。それが、蜜ぷに。
その味に惹かれる者は数知れず。だがそれでも、一部にはその存在に首を傾げる者もいる。
(甘いものは好きだけど……動く甘いものって、すごくへん……)
蜜ぷに達を前に、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は小首を傾げる。
ぴょいん、ぷにっ、ぴょいんっ、と元気よく動き回る蜜ぷに。こんな姿形で多くの者から捕食される存在であったりするが……一応これでも、災魔。オブリビオンではあるのだ。
(そんなのを食べても、だいじょうぶ、かな?)
まぁ、過去に蜜ぷにを食べた事で健康被害が、という話はいまのところは無かったはず。これから先もきっと何も無い、と思うのだが……
(……食べるのは、ちょっと、こわいかな、って……)
ミフェットの中で今回勝ったのは、未知への興味よりも知らぬ存在への恐怖……と言うと、少し大げさかも知れないが。
他の猟兵達の様に、その蜜の味を楽しむ事はせず。とりあえず蜜ぷにを追い出そうと、ミフェットは動く。
「こうやって、伸ばして……」
高い伸縮性と弾力性を身体に付与するユーベルコードを使い、ミフェットが伸ばしたのは髪の毛だ。伸ばした髪の毛で呑気にぴょいんぴょいんとしていた蜜ぷにを絡め取ると……
「よい……しょ、っとー!」
伸ばした髪の毛を自分の元へと引き戻す。自前の力に反動も活かしながら……絡め取った蜜ぷにを、遠く彼方へポーンっ! と放り投げてしまう。
森の彼方へ消えていく蜜ぷに。その姿を眺めて……ハッ! と何かに気付くミフェット。
(遠くに飛ばしたぷにが、そのまま地面で弾け飛んじゃったら……)
別に、蜜ぷにがかわいそう、とか……そういう訳では無いのだが。
「ぅうー……しょうがない、よね……」
でもなんとなーく、夢見が悪い。そんな複雑な気分になってしまう心の優しさが、ミフェットという少女の良い点であり悪い点である……と、言えるのかも知れない。
ともあれ、ちょっとした罪悪感に苛まれながらも。ミフェットは順調にお仕事を進めていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『サイクロプス』
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POW : 叩きつける
単純で重い【剛腕から繰り出される拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 暴れまわる
【目に付くものに拳を振り下ろしながら咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 憤怒の咆哮
【嚇怒の表情で口】から【心が委縮する咆哮】を放ち、【衝撃と恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠茲乃摘・七曜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
時に蜜ぷにの蜜を味わい確保し、時に遠くへ追いやって。色々あったが、猟兵達は『温室』に居座っていた蜜ぷに達の駆除に成功した。
一仕事は終えた……が、蜜ぷに退治はあくまで前座。仕事の本番は、これからだ。
ズシン、ズシン、と。感覚に優れた猟兵は、地が揺れる事に気付くだろう。震源の方へ視線を向ければ……濃い霧を割って現れる、巨大な影が見えるだろう。
ヒトと同じ様な四肢を持つ、巨大な影。その最大の特徴は……顔の中央にギョロリと存在を主張する、単眼だ。
一つ目の巨人、剛力を誇る災魔。その名は、『サイクロプス』。
現れた巨人はギョロリとした目で周囲を睥睨しつつ、まるで何かの匂いを探り当てようとするイヌの様に、鼻をスンスンと動かしている。一体何を探しているのだろうか?
猟兵達が疑問に思った次の瞬間、巨人の瞳が猟兵を捉えて……
『……アマイニオイ……ヨゴゼェェェェ!!!』
咆哮と共に、その腕を振り上げるサイクロプス。どうやら巨人も、蜜ぷにの蜜に魅入られた存在であったようだ。
だが、素直に蜜ぷにの蜜を渡して大人しくなる相手とは思えない。万一この地に居座られてしまっては一般生徒達にとっては大迷惑だ。
猟兵達はそれぞれの武器を手に、剛力の災魔に立ち向かうのだった。
アテナ・アイリス
ミフェットには、内緒でこっそり合流します。
攻撃を躊躇している様だったら、後ろから声をかけます。
【武器受け】【かばう】【盾受け】を使って、敵の攻撃を全て受け止めるようにする。
今回は、あえてこちらから攻撃することは控えましょう。
UC「アイギスの盾」を使って、相手の攻撃力も下げておきましょうか。
【鼓舞】【魅惑】【存在感】も使って、声をかけて相手に攻撃することを促します。
「あら、私の力が必要かしら?」
「今回は防御に徹するから、攻撃はお任せするわよ。」
「鍛冶神の盾よ、召喚に応じよ!」
「さあ、今のうちよ!」
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。
ミフェット・マザーグース
大きい大きいひとつ目の怪物
ミフェットが投げ飛ばせないぐらいおっきい怪物
こういう時、戦えない自分のことが、すごくもどかしくなる
みんなの戦いの手助けになるように、ひとつ目を「おびき寄せ」て
「見切り」「盾受け」で頑張って逃げながら
いつものように、戦うみんなを「鼓舞」する「歌唱」を唄うよ
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
飢えた目をしたひとつ目巨人 蜜ぷに求めて大暴れ
蜜ぷによこせとコブシをふり上げ
目につくものを叩いて壊し 大事な温室が大ピンチ
でもこれ以上はやらせないと立ち上がる猟兵
だって蜜ぷに美味しかったから
またいっぱい増えるように 天敵をやっつけよう!
ミフェット一人じゃ戦えないから、もちろんみんなと連携するね
●
蜜ぷにの蜜を求めて暴れ回る一つ目の巨人、サイクロプス。
(うぅ……蜜ぷにと違って、おっきいし、重そう……)
もし、サイクロプスがもっと小さければ。蜜ぷに達と同じ様に髪で絡め取って、遠く彼方へ飛ばして終わらせられただろう。
だが、現実は違う。眼の前の巨人は巨大で、四肢はずんぐりと見るからに重そうで。意外と力持ちであるミフェットであっても、これを投げ飛ばすのは難しそうだ。
(こういう時、戦えない自分のことが、すごくもどかしい……)
猟兵として世界を渡り、多くの危機を救ってきたミフェット。かつての自信なさげで弱かった少女は、今では実績ある立派な猟兵へと成長していた。
だが、それでも。ミフェットという少女の本質は、戦いを忌避する心優しい少女のままだ。戦いは苦手だし、痛いのも怖いのも、本当は嫌な臆病な少女のままだ。
そんなミフェットの根の部分が、巨体を前に行動に逡巡を強いたのか。ほんの一瞬だけ、動くのが遅れてしまう。
『アマイニオイ……ヴァァァァァァアアア!!!』
「……っ!?」
そんな遅れを、サイクロプスは見逃さなかった。怒声を上げ、拳を振り上げ。黒く太い髪に僅かに残る甘い匂いを放つミフェットの元へ、一直線に迫る。
勢い激しく迫る巨体。その迫力を前に、ビクリとミフェットの身体は怯えてしまい、釘付けとなってしまう。最早回避は、間に合わない。
振り上げられた拳が、迫る圧力にギュッと瞳を瞑ってしまった少女の身体に振り下ろされ……
「鍛冶神の盾よ、召喚に応じよ!」
瞬間、凛と響いた女性の声。直後鳴り響く、金属音。
訪れぬ痛みに、恐る恐るとミフェットの瞳が開く。その視界には、ミフェットを護る様に巨大な盾を構える一人の女性の姿。輝く金の髪、ツンと尖る笹穂耳。
「怪我は無さそうね?」
「……アテナ?」
白の外套を翻すその姿、その声を。ミフェットは知っている。
彼女の名は、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)。ミフェットとは縁浅からぬ女性猟兵だ。
「アテナ、どうして……」
「ミフェットが、ちょっと心配になって、ねっ!」
振るわれる豪腕の猛打。その尽くを受け、弾き、往なしながら答えるアテナの声は、まだまだ余裕の色を濃く残す。
一目見れば、細身で色白の肌を持つ美女であるアテナ。そんな彼女が、サイクロプスの振るう嵐の様な暴威を受けても態勢を崩さずいられるのは……アテナの持つ身体能力の高さやユーベルコードの特性も然ることながら。その身に染み付いた技術……勇者を見出し、見届ける為にと磨いてきた護りの技術があってこそ。
一向に崩れぬ盾を前に、サイクロプスはムキになった様にその豪腕を振るい続ける。その全てを受け止め通さぬアテナの姿は、正しく無敵の盾だ。
「防御は任せて! 今のうちよ、ミフェット!」
「う、うん!」
無敵の盾に守られて、立ち上がるミフェット。
……ミフェットは、普通に戦う事は苦手だ。だがそれは、戦いでは足手まといになるという事と同義ではない。
ミフェットは、自分を良く知っている。自分が、戦いで一番役に立てるのは……
──飢えた目をしたひとつ目巨人 蜜ぷに求めて大暴れ
──蜜ぷによこせとコブシをふり上げ
──目につくものを叩いて壊し 大事な温室が大ピンチ
共に戦う者達の、勇気を奮い立たせる様に。戦意を鼓舞する様に。声を張り上げ、歌うこと!
響く少女の歌声。その声を聞けば、共に戦う猟兵達の身体の奥底から力が溢れ出すだろう。
──ゴォォオオオオォオォオオオ!!!!
その事実を、サイクロプスも直感で感じ取る。魂も凍えて削られる様な恐ろしい咆哮が、ミフェットの歌を掻き消すように『温室』を揺るがす。
……もし。ミフェットが一人で挑んでいたら。サイクロプスの攻撃を掻い潜りながら歌を歌っていたならば。ミフェットの歌は、きっと掻き消されていただろう。
「やらせないわよ!」
だが、ミフェットは一人じゃない。少女を護る、頼りになる仲間が。この場にはいるのだ。
物理的な衝撃すら伴う様な、憤怒の咆哮。ミフェットへ向かおうとするその勢いを、アテナが盾を掲げて受け止める。
──でもこれ以上はやらせないと立ち上がる猟兵
──だって蜜ぷに美味しかったから
──またいっぱい増えるように 天敵をやっつけよう!
そう、アテナが居たから。ミフェットの歌声を遮ろうとする悪意の手は、ミフェットには届かない。
一人では、ミフェットはその歌声を皆に届ける事が出来なかった。苦しい戦いになるはずだった結末は潰え、新たに広がるのは約束された輝かしい勝利の未来。
ミフェットとアテナ。二人の動きは、猟兵達の戦いを圧倒的優位に進める上で欠く事の出来ない下地となるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と
ヴィクトリアさんも言ってましたし、お仕事はちゃんとしないと駄目ですね
甘いものが好きみたいだから、蜜ぷにの蜜で釣れるかも
……って、え、あたしが?
呆然としてセフィリカさんを見送るけど、気を取り直して《絃凛》をたぐる
敵の死角に入るように移動
うまく位置が取れたら花風を撃ってから《弓曳落星》を一斉射撃
その後はセフィリカさんに合わせて《黒紅》の一撃を
美味しいものを食べる前の運動と思ってしっかり仕留めるわ
セフィリカ・ランブレイ
颯夏(f00027)とこれから至福のおやつタイムのはずだったのに!
あいつも甘い物好きなんだね
仲良く分け合う……ってのも出来たらいいなあとは思うけど相手どう見てもひとり占めしたがるタイプかな
んーーーしかしいっぱい集めたし、欲しがってるならちょっと分けてあげちゃおうか
というわけで、いい感じに振り回してくるからいいタイミングで颯夏先生、やっちゃってくださいよお!ってトコで!
集めた蜜を見せびらかして此方に注意を引き付ける。
注意を集めて、【夕凪神無-柳布式】
魔剣片手に柳のごとく相手の攻撃を受け流しながら誘導
颯夏が死角になる位置へと誘導して、不意打ちを食らわせてもらおう!
相手の体勢が崩れたら一斉攻撃だ!
●
戦場に響く歌声。心を震わし力を引き出すその歌を聞いて、猟兵達が動き出す。
「ほーらほらっ。これがナニか、見えるかなぁ?」
中身の詰まった密閉瓶を掲げながら、セフィリカがサイクロプスの視界を横切る。蒸気の霧の中にあっても不思議な輝きを放つ瓶の中身は、なんだろう?
動きを止めて訝しげにこちらを見るサイクロプス。そんな一つ目巨人に見せつける様に、セフィリカは瓶の蓋を開封すると……途端、溢れるのは蜜が発する甘い香り。
(あのサイクロプス、甘いものが好きみたいだから。蜜ぷにの蜜で釣れるって思ったけれど……)
まさかここまで上手く行くとは、と。瓶に目が釘付けとなったサイクロプスの様子を伺いなら、颯夏は小さく息を溢した。
そう。セフィリカの持つ瓶の中身は、先程集めに集めた蜜ぷに達の蜜の一部。先程からサイクロプスが見せる『甘いもの』への執着を逆手にとって、釣り出そうと策を練ったのだ。
……もっとも、策を聞くなり瓶を抱えて『いい感じのタイミングで颯夏先制、やっちゃってくださいよお!』と突っ込んでいったセフィリカのお陰で、一瞬呆然としたりもしたのだが……
(そのあたりは、上手い事やれば……美味しいものを食べる前の、運動と思って)
気を取り直して、颯夏は動く。お仕事をしっかりとこなせば、この後にはご褒美の時間が待っているのだから。
「そんなに欲しいなら、ちょっとくらいは分けてあげても……っとぉ!?」
見せびらかす様に瓶を掲げるセフィリカ。瞬間、勢いよく伸びてきた豪腕をとっさに回避。蜜が溢れないよう、瓶の蓋を閉める事も忘れない。
チラとサイクロプスの様子を伺えば……単眼は蜜の瓶だけを見ており、その鼻息も荒い。
(こりゃどう見ても、ひとり占めしたがってるなぁ……)
同じ蜜の味に心惹かれた者同士。仲良く分け合えるのならば……と、割と本気で思っていたのだが。どうやら目の前の巨人は、譲り合いの精神などとは縁遠い精神性の持ち主であったらしい。
(ま、オブリビオン相手にどうこう言ってもしょうがないけど、ね)
瓶を抱えて、魔剣を片手に。振り回される豪腕を時に避け、時にゆらりゆらりと受け流しながら動くセフィリカ。
柳の様にしなやかなその動きは、まるで優雅な剣舞のよう。無駄な力の一切を抜き、脱力した自然体のままに身体を動かせば……振るわれる豪腕は、尽く空を切るのみだ。
当たらぬ拳、避け続けるセフィリカ。瓶を抱えたままの小さな存在のその動きに増々苛立ちを深めたサイクロプスが、癇癪を起こしたかの様に更に拳を振り回しながら、怒りの咆哮を上げるが……
「あまり、騒がしくしないで貰えるかしら」
霧を裂くように飛来した花びらの刃が、数多の矢が。巨人の肌を裂き、その背に突き立てられた。サイクロプスの死角、背後から放たれた颯夏の一撃が、命中したのだ。
……巨体から想像できる様に、サイクロプスのタフさは相当な物だろう。だがその頑健さも、意識が向いていてこそ発揮できる物。意識の向かない所からの一撃……不意打ちとなる攻撃には、意外と脆い物である。
セフィリカが回避を続けていたのは、まさにその為。颯夏が完全に不意を突ける様に、自身に意識を引き付け続けた。その成果が、今まさに実を結んだのだ。
「颯夏!」
「えぇ、合わせます」
グラリと揺らぐ巨体に追い打ちを掛ける様に。正面からセフィリカの魔剣が、背後からは颯夏の操る絡繰が迫り……胸を、背を。それぞれの刃が、切り裂いた。
それぞれの手の平に、確かに感じた手応え。二人揃って離脱したその瞬間、巨人の身体から吹き出したのは鮮やかな血の花。その勢いはまるで、蒸気の霧を紅く染め上げるかのよう。
……今のは、致命傷になったはず。颯夏とセフィリアは、揃って確信を抱いていたが……
『……ゥ、ゴ、ヴォォォオオオオッ!!!!』
サイクロプスは、斃れない。錯乱した様に、その腕を虚空に振るう。
……だがその傷は、明らかに深く。その動きも、明らかに鈍い。致命傷を得ているのは、間違いないはず。
あと一押し。一撃を与える事が出来れば。この豪腕の災魔を屠る事が出来るはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ランディス・ティンバーウルフ
【熊熊】
ヴ…ガウ!!
アイツ、デカイ!!
エモノ、ヨコドリ、ヤッテキタ!!
デモ、コレ。ワタス、ムリ!
オマエ、カエレ…ヤハリ、ダメカ。
デハ、タオス。
突拍子に襲いかかろうと出てきたデカブツには、なるべく前方の攻撃に注意して、なるべくSPDを駆使してヒット&アウェイの戦法で後ろから攻める。ランディスが前で引きつける間にゲフェンとバギとマッキー(熊)で後ろから襲いかかって転倒を狙う。
ガウ、コイツ。メ、ヒトツ。
ウシロ、シカク!
オマエ、カクゴ。
オコラセル、コワイノ、ヨブ。
敵を転倒させたら、トドメとして象を呼ぶUCを使う。
一気に体当たりと踏み潰しを行った後に、念入りに踏み潰しが入る。
ダカラ、ヘタニ、テヲダスナ。
ワーブ・シートン
【熊熊】
あ、何か、出てきてるんですよぅ。
これ、おいら達のだからぁ、渡さないんですよぅ。
え、来るの…ヴウーヴォアァアアア!!(威嚇の咆哮)
こんな美味しいミツ、渡せないと言うか、勝手に横取りしようとしたら怒る。
UC発動。ワーブも巨大化してサイクロップスに対抗する。
相手にひるまず、両前足で攻撃を繰り返す。
ウォアアァアアアア!!
相手にひるまず、スーパー・ジャスティスも同時に使用、美味しいものは渡さないという食欲も同時に入って強化を目指す。
仲間の攻撃が入ると同時に、敵の頭部目掛けて灰燼拳も食らわす。
「美味しいものはなるべく渡さないのはセオリーなんですよぅ。」
●
深く傷つき満身創痍となった一つ目の巨人。あと一押しすれば倒せるであろう傷を負ったサイクロプス。
『ググヴゥ……アマイモノ、ヨゴゼェェェェ!!』
だが、その闘争本能は未だ萎えず。戦意と欲望を剥き出しに、猟兵に迫る。
「ヴウー、ヴォアァアアア!!」
その剥き出しの本能に対抗し、威嚇するかの様に。ワーヴが吼える。
今もワーブの口の中には、蜜ぷにの甘い幸せな味が残っている。それは、自分たちが働いて得た、立派な報酬だ。
そんな成果を、後からやってきて横取りしようと言うのか、と。普段おっとりとした態度を崩さぬワーブであるが、怒る時には怒るのだ。
「ヴ……ガウ! コレ、ワタス、ムリ!!」
ランディスもまた、同じ様に威嚇の咆哮を上げている。
野生の中で育ってきた彼らにとって、獲物の横取りという行為は明確な敵対行為だ。この威嚇に怯み、相手が引き下がるのならまだしも……
『オデノォ……アマイノォォオオオオ!!!』
より深く踏み込んで来るのなら、最早容赦はしない!
「ワーブ! デカイノ、タオス!!」
「ウォアアァアアアア!!」
ランディスの声に呼応するように、一層強力な咆哮を上げるワーブ。咆哮と共に、ユーベルコードが発動される。
獲物を横取りしようとする不埒な存在。そんな悪者に対する明確な『怒り』の感情が爆発すると……ワーブの姿が巨大化し、サイクロプスと正面から取っ組み合える程のサイズに変貌を遂げる。蜜ぷにの蜜を渡さぬという強い食欲も相まって、その毛並みは金の色を維持したままだ。
そのまま負傷したサイクロプスとがっぷり四つに組み合うが……正面からの力勝負では、ワーブがやや不利か。
力の底上げを受けているとは言え、ワーブの戦いに関する経験は薄い。経験を重ねて技量を本能に染み込ませれば押し込めたかも知れないが……それは今は、望むべくもない。
……このままでは、押し負けてしまう。だが、それは一人で戦っていればの話!
「ガウ、コイツ。メ、ヒトツ!」
ならばその後ろは死角になると、ランディスが狼と黒豹、熊を伴って疾走る。その背に刃を突き立て、膝を獣の牙が噛み砕き、腰を熊の爪が打ち砕く。
苦悶の声を上げ、膝が折れるサイクロプス。崩れ落ちたその頭部の中央のぎょろりとした目に向けて……
「美味しいものは、なるべく渡さないのはセオリーなんですよぅ!」
食欲全開。ワーブの強烈な拳の一撃が放たれる。強化された身体能力も相まって、その破壊力は絶大であり……その一撃は、サイクロプスの瞳を捉えて潰し、頭蓋を粉砕する。
この一撃が、決め手となった。糸が切れた様に、サイクロプスの身体が地に転がって……
「オマエ、カクゴ!」
どこからともなく現れた、巨大な影……陸生哺乳類として最大の体躯を誇る巨象の群れが、崩れ落ちたサイクロプスの身体を踏み潰し、弾き飛ばし、蹂躙する。
「エモノ、ヨコドリ、ユルサナイ」
だから、手を出すな、と。
念には念を。息の根を断つまで、確実に。その光景を見るランディスの瞳は、自然界の戦いの厳しさを表しているかの様に残酷であり……強敵への敬意を示かの様に、静かに揺れていた。
……こうして、甘い物を求めて現れた一つ目の巨人は打倒された。
『温室』は守られ、これからも一般学生たちで賑わう事だろう。
大成功
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第3章 日常
『真夏の奇跡』
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POW : 氷を細かく削って食べる
SPD : 砕いた氷を飲み物に入れる
WIZ : 大きな氷を器に冷菓子を作る
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵達の働きによって、『温室』の平和は守られた。今後も一般学生達の研究の為に、この設備は有意義に使われていく事になるはずだ。
……そのうちまた、別の事件が起きそうな気がしないでも無いが。その予感は一旦、横に置いておくとしよう。
ともあれ、仕事を終えた猟兵達を労う為に、学生達が魔法の氷室で作られた混じり気の無い氷を供してくれた。
学園の空き教室に足を運べば、そこにはいくつかの氷の塊。透き通る様なその美しさと冷たさは、戦いに火照った猟兵の身も心もきっと癒やしてくれるはず。
さて、この氷をどう楽しもうか。猟兵達はそれぞれ思い思いに、氷の塊と向き合うのだった。
青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と
そうですね、ヴィクトリアさんに声を掛けてみましょうか
今回は蜜をシロップ代わりにしてみますね
自信満々のセフィリカさんにどこか不安を覚えながら、氷を削ってもらう
……ええ、まあ、そうですね
セフィリカさんってとっても手先が器用ですよね
ヴィクトリアさんは何色の蜜、かけます?
希望を聞いてからその色の蜜を掛けて手渡す
セフィリカさんは全部ですね
何も聞かないで、2杯で全種類を掛けたものを置く
あたしは……水色にしておきます
運動した後の方が美味しいですよね
あ……これ、蜜を凍らせて削ったら美味しいかも
帰ったらやってみよう
セフィリカ・ランブレイ
颯夏(f00027)と勝利を味わう
ヴィクトリアちゃんにもかき氷、おすそ分けしに行こうか!
報酬の氷だからこそまた美味しさが上がるっていうかさー!
そうだ、かき氷メーカー作ってみたんだよね。
氷をセットしてボタンを押せば風の魔法が刃物を高速回転!
手軽に氷が削れちゃう!
ふわっふわの氷をあなたに!これで細かい作業とおさらばいえい!
あ、こういう機械売ってるんだよね?知ってるよ!
自分で作ることに意義があったんだい。あったもん。
動いた後の汗にこそかき氷は相応しい……ああ、ぷに蜜が程よい甘さでかき氷3杯くらい行けちゃいそう……
しかし颯夏も私の好みわかってきたなー!
これはもはやお嫁さんですねウフフ!
アテナ・アイリス
【料理の鉄人】
こんなにいい材料があるのであれば、アイアンシェフの私の出番ですわね。
UC「アテナの手料理」を使って、料理技能レベルを390にする。
アイテム「シークレットレシピ」を使って、いろんな冷菓子を素早く作成する。
リクエストがあったら、遠慮なく言ってね!
ものすごく大変だけど、もちろんミフェットは手伝ってくれるよね?
作業が終わったら、とっておきのゼリーをミフェットと一緒に食べようかな。
もちろん、ヴィクトリアさんや旅団のみんなへのお土産も作っておいたわよ。
「さあ、腕の見せ所ね!」
「手伝ってくれるよね。(ニコッ)」
「お疲れ様。これ、とっておきのゼリーよ。一緒に食べよ。」
アドリブ・連携好きです。
ミフェット・マザーグース
固くておっきな氷のかたまり
髪の毛ぐるぐる、ドリルにして ガリガリ削ってかき氷
シロップはー・・・蜜ぷに、つかまえてればよかった、なーんて
【料理の鉄人】
アテナがみんなを誘って氷菓子を作るんだって
おうちのお手伝いでミフェットも「料理」できるからお手伝いするよ
【POW】
「怪力」「串刺し」「トンネル堀り」を組み合わせて、先っぽを尖らせて髪の毛を束ねてドリルをつくって、ぎゅるるるるーって氷を削って、かき氷につかえる氷が作れるはず
・・・アイスとか、いろいろ作るのにも、削ったほうがいいよね?
もちろん、削った氷や、砕いた氷の欠片は、ほかに氷菓子を作る人にもあげるね
みんなで作ったもの、わけて色んなもの、食べたいな
ランディス・ティンバーウルフ
【熊熊】
アドリブ・他人絡み歓迎
ガウ、コレ、ナンダ?
ヨク、ワカラナイ。
コオリ、サムイトコロ、ソコニシカナイ。
アイス、トリアエズ、タベテミル。
ア、ツメタイ。
まぁ、要するに、かき氷とか、食べたこと無いからなぁ。
初体験ってやつ。
とりあえず、蜜ぷにの蜜もかけながら、食べていこうかと。
ワーブ・シートン
【熊熊】
アドリブ、他人絡み歓迎
あぁ、ランディスぅ、おいらもぉ、氷とかはぁ、あんまり食べてないんだよぅ。
なんせぇ、おいらなんてぇ、冬眠しちまうからぁ、凍ってるものとかはぁ、あまり口にしたこと無いんだよぅ。
そういやぁ、UDCアースとかはぁ、暑いらしいからぁ、こういうのもぉ、よく消費されるんだと思うんだけどねぇ。
人間ってぇ、いいのもぉ、作ってるんだよねぇ。
自然にはないからなぁ。
POWで
かき氷を器に入れて口に頬張ったり、舌で舐めてみたりする。
何も掛けないものは「うん、つめたいねぇ」
蜜ぷにの蜜を凍らせたものは「あ、つめたくておいしいですよぅ」
●
「「「おぉー……」」」
アルダワ魔法学園のとある空き教室に、猟兵達の感嘆の声が響く。
教室の中央には、氷の塊が置かれている。反対側が透けて見えるほど透明で、その純度の高さ、混じり気の無さが見ただけで判るほどだ。
「ガウ? コレ、ナンダ?」
そっと近寄るランディス。顔を近づけてじっと見れば、氷塊から溢れる冷気を感じて驚いた様に目を見開く。
「コオリ、サムイトコロ、ソコニシカナイ……?」
熱帯の密林の中で育った野生児であるランディスにとって、氷とは寒い所、冷たい所にしか存在しない物。なのにこの特に寒くも暖かくも無い場所に氷が存在するという自身の常識外の出来事を前にしてしまい、首を傾げるしか出来ないランディスである。
そして氷と、それを活かした氷菓子の類に縁の薄い物は、もうひとり。
「おいらもぉ、氷とかはぁ、あんまり食べないんだよぅ」
なんせぇ、冬眠しちまうからぁ。と、ワーブはのんびりとした口調ながら氷とその周囲に置かれた飲み物やシロップ、菓子の類に興味津々のご様子だ。
「あら、二人はこういうのは初体験かしら?」
そんな二人に柔らかな女性の声が掛かる。振り返ればそこにいたのは、金の髪と白磁の肌を持つ美女、アテナの姿。並ぶ氷とその他各種を見つめる瞳はどこか鋭い。それと言うのも……
「こんなにいい材料があるのであれば、アイアンシェフの私の出番ですわね」
腕を捲ってエプロンを締めて。威風堂々なその所作に、思わず飲まれるランディスとワーブの二人である。
「リクエストがあったら、遠慮なく言ってね! ……ミフェット、手伝ってくれる?」
「えっ……う、うん。お手伝い、するね」
綺麗な氷に見入っていたのか、掛けられた声に思わずビクッとした反応を返すミフェットもアテナと共に準備を進めれば、即席のキッチンスタジアムが教室内に作り上げられる。
本日のお題は、氷。さてさて、アイアンシェフ・アテナは一体どのような料理を作り出すだろうか……
●
「いやぁ、報酬の氷だからこそまた美味しさが上がるっていうかさー!」
ブオー! と駆動する機械音に負けない、セフィリカのハイテンションな声が教室に響く。
セフィリカの手元で駆動するのは、彼女お手製のかき氷メーカー。風の魔法で刃物を高速回転させ、ふわっふわの氷に削り上げるという一品なのだが……
「……えぇ、まぁ、そうですね」
「あれっ? なんか不安がられてる?? でもこういうのって自分で作る事に意義があってね???」
「ふふっ。お風呂の時もそうでしたけれど、お二人は本当に仲が良いのですね」
自信満々に自作のかき氷メーカーを稼働させるセフィリカに対して、颯夏はと言えばどことなく冷めた物。少々お調子者な気があるセフィリカの発明品に、どこか不安を覚えたのは付き合いの長さ故だろうか?
とは言え、そんな二人のやり取りは気心の知れた間柄だからこその物。距離の近さを感じさせる軽妙なトークを聞けば、側にいるヴィクトリアの頬も綻ぶというものだ。
「お二人とも、今回もご足労頂いてありがとうございました」
「いやいや、困った時はお互い様で……そうだ、ヴィクトリアちゃんにもかき氷、おすそ分けね!」
笑顔のままに颯夏とセフィリカを労うヴィクトリアに、セフィリカは照れたようにはにかみながら、器に盛られた削りたての氷の山をヴィクトリアの前へ。
純白のふわふわとした氷の山。その山を彩る蜜は……
「ヴィクトリアさんは何色の蜜、かけます?」
「え、よろしいのですか? その蜜は……」
颯夏の手元に並ぶ、瓶の数々。そう、先程『温室』で採集した蜜ぷにの蜜が詰まった密閉瓶だ。颯夏達が労力を払い集めた蜜の数々、頂いてしまっていいのだろうかと恐縮するヴィクトリアであったが……
「えぇ、せっかくですから。セフィリカさんの言う通り、おすそ分けを」
「あ、颯夏! 私のは……」
「全部、ですね」
七色の蜜で彩られた氷の山が、颯夏の手によって作られる。阿吽の呼吸を体現するかの様なそのやり取りに気を良くしたのか、セフィリカさんはにんまり上機嫌。
「颯夏も私の好みをわかってきたなー! これはもはや、お嫁さんですねウフフ!」
「それじゃ、ヴィクトリアさんは……」
「それでしたら……黄色の蜜を頂けますか?」
「無視!?」
わざとらしいオーバーなリアクションを取るセフィリカを適当に宥めつつ。颯夏はヴィクトリアの希望を聞いて黄金の様に輝く蜜を注いで、自分の器には水色の蜜を注ぐ。
そうして一匙口に運べば……濃厚な蜜の甘さの中に、ミントの様な爽やかな風味が鼻腔を抜けていくだろう。
(……あ。これ、蜜を凍らせてから削ったら美味しいかも)
ふと、颯夏の頭を蜜ぷにの蜜を用いた新たな料理の可能性が過っていく。だが、それは後に回そう。
「うぅーん、動いた後の汗にこそかき氷は相応しい……ぷに蜜が程よい甘さで3杯くらい行けちゃいそう……」
「本当ですね。甘さはしっかり感じられるのに、舌にはクドく残らない後味の良さが……」
セフィリカも、ヴィクトリアも。蜜ぷにの蜜で彩られたかき氷を口に運び、その甘味を味わっている。
今は二人と同じ様に、運動で疲れた身体と心を……この冷たい口福で、癒やす時なのだから。
●
かき氷、アイスキャンディー、シャーベット、ソルベ、アイスクリーム……氷、果汁、牛乳、その他様々な食材が使われる氷菓子が作られていく。
その全ては、アイアンシェフと化したアテナの手による物であるが……
──固くておっきな氷のかたまり
──髪の毛ぐるぐる、ドリルにして ガリガリ削ってかき氷
その調理の過程において、鼻歌を歌いながら氷を削るミフェットの存在を無視する事は、出来ないだろう。
ミフェットはその髪の毛を尖らせ束ね、ドリル状にして氷を削る。そうして砕かれ、削られた氷を、アテナが秘蔵のレシピを活かしながらアレやコレやと調理していく。
アテナの動きは、まさしく料理の鉄人と呼ぶに相応しい、一切の無駄のない洗練された物。だがミフェットがいなければ、その技術を十分には活かしきれなかったはず。
二人の力が合わさることで、即席キッチンスタジアムの機能は保たれていたのだ。
……さて、こうして二人の力で生み出された料理の数々を前にして、氷菓子初挑戦となるランディスはと言うと。
「ガウ……アイスキャンディー? トリアエズ、タベテミル」
男は度胸、と言わんばかりに。果汁入りのアイスキャンディーの棒を手に取ると、恐る恐る口の中へ。
その塊が唇に、ついで舌に、歯に触れて……
「……ア、ツメタイッ」
びっくりした様に一度離すが、再び恐る恐る口へ。一度体験した冷たさを我慢して、口の中でゆっくりと溶かしていけば……広がっていくのは、果物の酸味と風味。特徴的な甘さは……蜜ぷにの蜜の物だろうか?
「……ツメタイ。デモ、ウマイ……」
戦いを終えて、火照った身体を癒やす涼。心を満たす甘い味わい。未知の体験に知らず緊張していたランディスの頬も緩み、手は次の氷菓子を求めて無意識に動いていた。
「人間ってぇ、いいものもぉ、作ってるんだよねぇ」
一方、ワーブの方はというと。シャーベットを口に頬張ってこちらも幸せそうに頬を緩めていた。
自然界には存在しない、料理という文化。それを生み出してきたのは、人類という種が重ねてきた様々な経験だ。
……その経験は、決して良い物ばかりではない。ワーブ自身、人類が生み出した業をその身で経験しているのだ。
だが、それでも。人類が生み出した、この料理という文化は……多くの命を、幸せにしてくれるものであると、胸を張って言える文化である。
「うぅん、つめたくて、おいしいですよぅ」
満足そうな笑顔で、氷菓子を口にするワーブとランディス。そんな二人を見れば、料理を作っていたアテナとミフェットの胸にも達成感が溢れる。
「お疲れ様、ミフェット。大変だったでしょう?」
「ちょっとだけ……でも、ミフェットは氷を削ってただけだから」
ミフェットはそう言って謙遜するが、先に触れた通り、この氷菓子の数々を生み出せたのは『氷をひたすら削り続ける』という根気のいる作業をミフェットが担っていたからだ。
その事実を、アテナは正しく認識している。だからこそ……
「ふふっ。頑張ったミフェットには、ご褒美をあげなきゃね?」
ご褒美? と首を傾げるミフェットに、アテナが差し出したのは小さな容器。プルプルとした色とりどりのゼリーが容器の中で揺れている。
眼に鮮やかなその姿は、ミフェットの心を瞬く間に掴んだ様で。
「……ゼリー!」
「そう、とっておきのゼリーよ。一緒に食べよ、ミフェット」
目を輝かせるミフェット。その姿を微笑ましく思い、アテナの表情にも微笑みが浮かぶ。
一つの容器に浮かぶゼリーを、二つのスプーンでそれぞれに突く。気心の知れた二人の絆は、同じ皿の甘味を味わうことで更に強さを増すはずだ。
この結果を笑顔で迎え、味わえたのも……彼らがしっかりと務めを果たしたからこそ。だがそう遠くない未来、また猟兵達の活躍が求められる時が来る事だろう。
猟兵達はその時に備えるかのように、涼と甘味の織りなす幸せを味わいながら英気を養うのだった。
大成功
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