●
白頁。
『妖怪変化が思い込みから来た伝承という論調はどうかと思うわけだよ私は』
黒頁。
『確かに現代科学ならそういう風に結論づけるのが正解だろう。ああ、そうだろうとも。幽霊の正体見たり枯れ尾花、自然現象に対して理屈を付ける事によって、未知の存在を無理矢理理解しようとした結果が妖怪変化であり幽霊であり怪物であり化物であり伝説であり伝承であり妖精であり、つまるところ人間の防衛本能、叡智の結晶というやつだ。まったく想像力というやつには頭が下がるよ、いやはや』
ぐるりとこちらを向く。
『けれども、けれどもだ。一方でそれらには解明されない、どうしたって解明できない部分が生ずる。万象には必ず例外があり、人間の理屈では埋められない欠点であり盲点だ。いや、いやいや。ここは盲点があって欲しいと願ったと言うべきかな。分からないことがあって欲しい。世界には謎が残るべきだ。だって完璧な世界はつまらないからね。いずれこの世の全てを解き明かした時、人は真の意味で滅亡するのだろう』
(中略)
『――つまりさあ。信仰ってのはそういうコトなんだよ。君たちが願ったから、私はここにいる。私を倒すってことは、そのものずばり人の可能性を潰すってことだぜ――?』
●
エンディングが流れる。声優アイドルユニットのかわいらしい歌声に合わせて、抽象画のような映像がグリグリと滑らかに動いていた。本編同様、前衛的な内容ではある。
「はー、すこ。すこすこのすこ。この圧倒的滑舌、たまりませんなー」
集まった猟兵に対してアニメ十話分、時間にして約二百四十分の動画をぶっ通しで見せた上で、桜咲・智依子(みこーん☆ちょこたん・f16218)は暢気な感想を述べた。待てやコラ。
「あっやめて怒らないでSNSにチクらないで! また炎上するからぁ!」
智依子は「だって上映会したかったんだもん……」などと半泣きになるが、公私混同すんじゃねえと一喝される。まあ、この炎上芸人の話は置いといて、だ。
「ちゃうねん……アニメ自体は無関係じゃないねん……。えーとこのアニメ、『ひゃくものがたり』はですね……。今期覇権!……というほどではないにせよ、カルトな人気があるのだな!」
智依子曰く、人気小説家の作品をアニメ化したものであるという。
内容を簡単にまとめると『オカルトブームが起こっている世界。怪談が人々の噂になると、それが実体化して人を襲うようになる。主人公達はそれを鎮めに行く』という話だ。
内容としてはそれだけだが、語り口が妙に大仰で、演出がやたらアーティスティックだ。独特の文体で『読ませる』タイプの原作だからこんな演出になったらしい。
――で、だからグリモア猟兵として何を見たのよ、という話だが。
「ちょこは悲しい……ぽろろん。結論から言うと、このアニメを見ると、怪談に興味を持って噂にしたくなるのだ……。広まるとそれが実体化しちゃうのだ……」
演出として多用されていたサブリミナル効果。そこに邪神召喚の術式が埋め込まれているのではないか、と智依子は言う。
これに晒され続けると、無意識下で『怪談に興味を持ち』『話題にしようとする』。そして『噂話として広めたくなり』――『噂話が定着すると、オブリビオンとして実体化する』。そういう仕組みらしかった。
SNSでこの作品について調べてみるならば、既に『これってドッペルゲンガー?』『うちの学校でも人体模型の噂あった!』『あの山に件がいるらしいぜ!』といった『具体的な噂話』が跋扈していることだろう。
これを放置すると、やがて取り返しのつかないものが実体化すると、智依子は言う。
「うう、最終回目前でスキャンダルってのも悲しいけど、世界崩壊の危機と比較したら流石にネ……」
つまり、アニメの影響力を落とさなければならない。
人々の興味を怪談から逸らすことができれば、ひとまずの目論見は崩せるだろう。
だが、このような手段で介入を計ったオブリビオンを突き止め打破せねば、業界そのものがオブリビオンの温床になることだろう。それも避けねばならなかった。
「あっ、でも炎上は! 過度な炎上はやめてね! 原作は普通にちょこの好きな作家だからぁ!」
自己管理もできない炎上芸人が何か言っているが、気にせず君たちの方法で解決するのだ!
むらさきぐりこ
(このグリモア猟兵では)初投稿です。お久しぶりのむらさきぐりこです。
噂話を媒介にするオブリビオンを倒しましょう。
一章における敵の狙いをゲーム的に整理しておきます。
「アニメに邪神復活の儀式に使う術式が埋め込まれている」
「儀式の内容は『怪談の噂話を広めること』」
「アニメには『怪談をしたくなる』暗示効果がある」
「怪談が広まりすぎると、それが実体化する」
「放っておくとやばいものが顕現する」
となります。
参考にしてください。
第二章、第三章は戦闘となっております。
以上、よろしくお願いします。
第1章 冒険
『深夜アニメに警戒せよ』
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POW : 製作現場に乗り込む
SPD : 他の作品人気を盛り上げる
WIZ : ネット・口コミなどでこの作品の問題点を指摘する
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白斑・物九郎
●POW
制作現場の住所を探って(情報収集)、現地周辺へ移動
周辺で建造の影にでも隠れて(クライミング+地形の利用)、周辺情報解析【狩猟の魔眼】ONで人の出入りを監視しまさ
アニメ業界なァ
とんでもねー労働時間かもですしな
野良猫っポく振る舞えるドローン「茶斑の三毛」も駆り出して、交代制で監視体制敷きますわ
傍ら、そのヘンの野良猫への聞き込み(動物と話す)なんかも適宜
アニメに術が仕込まれるとして、ソレはどの工程で誰が仕込むモンなのか
製作現場に出入りしてる輩の中に居るのか
【野生の勘】を張りながら、関係者の出退勤を片端から見張る
※調査が捗々しくなければ、取り分け無害そうな人を退勤時に捕まえて訊き込む(恫喝)
問題のアニメ会社は、こじんまりとした雑居ビルの中にあった。
業界における知名度は高く、熱狂的なファンも多いという。前情報だけ聞けばさぞかし儲かっていそうなイメージだったが、意外とそうでもないらしい。あるいは移築している暇がないほど忙しいのか。
まあ、その辺の事情は白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)にとってどうでもいい。むしろセキュリティが最新でないなら好都合ですらある。
物九郎は勝手知ったる我が家のような足取りでビルに入ると、会社の入り口を見張れる位置に身を潜めた。
『ザミエルシステム、起動』
出入りするネズミ一匹見逃すまいと、物九郎の視界がクリアになっていく。
それにしても。
――アニメ業界なァ。
この場所の情報を集めた時から、少し気になってはいた。
毎週、二十四分前後の動画を作る。そこにかかっている技術と労力はいかほどのものか。
というか、労働時間は一体どうなっているのか。
ぶっちゃけ、一日何時間見張ればいいのか。
物九郎の懸念は的中した。
一般的な退勤時間である午後五時を回っても、誰も退社するそぶりがない。これはまあ、まだいい。どこの会社でもよくあることだ、多分。
六時。七時。八時――。
「よくもまァ、そんな働けるもんっすな」
近所の公園でドローン越しの映像を見ながら、物九郎は独りごちる。まあ、これについては猟兵が口を出すことではないのでスルー。
「で、なんか怪しいヤツがいたんスか?」
物九郎はベンチに腰掛けながら、隣に鎮座まします野良猫にそんなことを尋ねる。なんとなく、この猫なら何かを知っているという直感があったからだ。
――うん。そりゃあもう、くっせえ臭いがしていたからね。
「ほう」
野良猫曰く、この数ヶ月、ぷんぷんと『嫌な臭い』をさせていた男がビルを出入りしていたという。
あそこのビルに入る人間は基本やつれているが、その男はやけにイキイキしていたから余計に印象に残っている、と。
「参考になったっス」
ならば、スタッフではなく外部に黒がいるのか。例のアニメに関わる他企業の某か、を探すべきだろう。
物九郎は、ネットワークを使って早速その情報をシェアした。
成功
🔵🔵🔴
国木田・光星
■WIZ
深夜番組は大人の癒しの時間だぜ。
それを餌にっつーのはちょっと無粋が過ぎるよな。
SNSで「コミュ力」使って試してみようか。
アニメに盛り上がってるやつに絡んでいこう。
特にインフルエンサー…影響力がありそうで、個レスに応えるような奴がいい。
「このアニメは全然ダメだ、褒めてるやつの気が知れねぇ」
そう絡んで反論されてわざと言い負ける。
いい気になったらしめたもの。
有意に思ったのなら…UCが動く。
SNS先に使えるか試しだが、向こうはエライ騒ぎになるだろうな。
アニメ自体の話から、俺が絡むとアレが出るって話になりゃあ目的達成。次から次へ絡んでやるよ。
違う噂が広まりゃ、自然と熱は冷めるだろ。
・アドリブ歓迎
忙しい現代人にとって、深夜番組というのは大切な癒しだ。
「それを餌にっつーのは、ちょいと無粋が過ぎるよな」
例のアニメによって、今もSNSで話題が飛び交っている。それ自体は健全な行為のはずなのに、これを利用しようとしたオブリビオンが蠢いているのだ。
さあて、と国木田・光星(三番星・f07200)はパソコンの前で意気込んだ。
アニメ名で検索すれば、影響力のあるファンが何人か出てくる。
アニメで得た感動を語彙豊かに表現しているアカウント、真剣に考察を深めているアカウント、あるいは元々有名人で、たまたまハマっているアカウント。
それらの投稿にはずらりとレスが付いている。おおむねが賛同意見だ。そしてそこから『怪談』が盛り上がっている――。
「……ま、俺がやることも無粋ってのは分かってるけどね」
独りごちると、光星はそれらに以下のようなレスを付けていった。
『このアニメはダメだ。褒めてるヤツの気が知れねぇ』
そう。光星の作戦とは『煽りに行く』ことだったのである。
新規アカウントを作り、アニメファンの体裁を整え、しかし安直な否定意見をどんどん投下していく。
目立つためにインフルエンサー――注目度の高いアカウントを狙ってこのようなレスを付ける事で、
>は? お前何様?
ヒット。ファンからの反論が山のように飛んでくる。
光星の意図を理解したのか『釣られるな』と指摘する冷静な意見もあるが、一度付いた怒りの火はなかなか収められないのが人情というものだ。
この隙を狙う。
『だってキモいじゃん。自己満足っつーの?』
『今時妖怪とかダサくね?』
……作戦のためとはいえ、人が楽しんでいるところに水を差し、応報として多数の罵倒が飛んでくる事に、心の痛みを覚えないほど光星もズレてはいないのだが……。
ともあれ、ともあれだ。
>かわいそうな人ですね。
>あなたを名誉毀損で訴えます。裁判所の準備をしておいてください。
ここだ。
『すみませんでした。ついカッとなってやってしまいました。反省します』
ここで敢えて『言い負ける』。
> 完 全 勝 利
>逃げたwwwザマァwww
>煽るんなら最後まで徹底しろやクソザコメンタル
相手は「優越感」を、「憐憫」を、あるいは光星を見下す「傲慢さ」を覚えた。
ならば条件は満たすはずだ――!
>ヒェッ、G!
>黒いアイツが出たのでジェノサイドモードに移行します。
>衛生兵! 洗剤持ってきて衛生兵!
>え? 同時多発G?
>例の垢に絡んだ奴らがGを目撃してる件について
「出来れば使いたくはなかったがな……」
ユーベルコードの効果の程を確認して、フッ、と光星は独りごちる。
いや、なんか胸の奥が痛いのは気のせい。これは作戦の必要経費。大多数の人間を敵に回すということが、思いの外応えたとかそういうことではないはずだ。
数時間もすれば、現れた黒い虫についての対処法についての話に移っていた。少なくともアニメの話題から意識を逸らすことに成功はしたようだ。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
妾は怪人どものやり口は褒めてアゲるようにしておるのだがな
しかーし! 映像に悪意を仕込む手口、見事であるが許しがたい!
全力でボコってくれよう!
制作の邪魔をすべく、住所を調べて作画スタジオに乗り込むぞ
非常口や窓、屋上などから潜入よ
といっても派手な破壊活動はせん、作画の邪魔をするよ
建物内で人気の無い場所に潜み、昼休みやトイレに席を立ったスタッフを襲撃!
悲鳴を立てんように口を塞ぎ、尻尾で巻き付き脅してやれば、ただでさえ疲れている者を気絶させるのは簡単であろう
落とした者は……近くの公園のベンチにでも運んで休ませてやるか
毎日終日繰り返していけば、放送延期となるか作画崩壊となるか、残念な結末になるであろうな
こんな話がある。
――怪談を取り扱う時はきちんとお祓いをしろ。さもなければ祟られるぞ。
有名な映画の撮影現場で、怪奇現象がいくつも発生した、なんて話は枚挙にいとまがない。
スプレー式消臭剤に除霊効果を見いだしたのがホラーゲーム開発スタッフだった、というのも有名な話だ。
つまり。
社内は荒れていた。ただでさえ鉄火場なのに、ここに来てオフィスが閑散としていたのである。
まるで神隠しに遭ったかのように、席を立ったスタッフが帰ってこない。ある者はトイレ、ある者はランチ、ある者は――本気で嫌気が差したか。
もはや怒号も響かない。それだけの気力がもうないのだ。それに、もしかして、
――もしかして、本当に神隠しとかホラー映画的な状況に巻き込まれたのでは……?
疲れ切ったスタッフはそんなことを本気で思い、そしてある者は『創作者としてこの状況めっちゃ美味しいんじゃね?』などと狂気の沙汰を口走った。
『今回の怪人は、実に鮮やかな手口を使っているのである!』
蛇神であり邪神を名乗る女は、動画の始めにそう宣言した。
『しかーし! 人々の憩いの場を媒介にするその悪辣さ、許しがたい! よって全力でボコってくれよう!』
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)はそこまで撮り終えると、一度カメラをオフにした。掴みはこんなところだろう。
「それにしても、ここまで根を詰めて働かずともよかろうに」
菘がいるのは、件のアニメスタジオ近くの公園だ。そしてそのベンチには、気絶したスタッフが三人ほど転がっている。
アニメ制作とはそこまで過酷なものなのだろうか? 菘も動画制作者の一人として編集には人一倍気を遣っているつもりだが、それにしたって身体を壊すほどに働く必要もあるまい。これが必要というのであれば――いや、やめよう。
『忍び込んで不意を突く。蛇にとっては造作もないことよ。なに、甘い果実で堕落を唆すのは、蛇の特権であるからな!』
フレーズとしてはこんなところか。
屋上からビルに忍び込み、オフィスを出たスタッフを待ち構える。哀れな彼らに悲鳴を上げさせないように口を塞ぎ、尻尾を巻き付け驚かす。それだけで彼らはこてんと意識を落としたのである。
……それだけ疲弊していたのだろう。多少の同情を禁じ得ない。
猟兵としての目的と、彼らに休息という知恵の実を。
明日も明後日も続けてやれば、やがてスケジュールが破綻することだろう。
そうすれば、邪悪な映像が流れることは阻止できるのだから――。
成功
🔵🔵🔴
舞塚・バサラ
◇SPD
やり口は見事
ならば同じ手段を使うで御座るか
さあ「某が」「我が」「拙者が」「わたしが」やるべきは…
まずはユベコ使用
人海戦術で「このアニメに劣らないが、原作や知名度の都合で地味になっている作品」を探すで御座る(情報収拾)
見つけたら「このアニメを話題にしたくなるサブリミナル」を仕込んだ、その作品のMAD、解説動画、BGMアレンジ等々を我ら4人がかりに加えて我らのSPDを活かして沢山作り、SNS、動画サイト等々に放流。
サブリミナルも含めて学びながらに、となるが……拙者達は技術の習得は得手であるが故なあ(情報収拾、学習力)
あとはさいくをごろうじろ!いんふるえんさーがひっかかればなおのことよし!
深夜アニメという媒体が、群雄割拠の時代を迎えて久しい。
三ヶ月の間に数多のアニメが作られては入れ替わっていく。そして話題に残ることが出来るのはほんの一握り。作品の出来はもちろんのこと、販売戦略、話題性、時の運。何がきっかけで跳ねるか、それとも忘れ去られていくのか、そのときになるまで分からない。
ただ。
出来が良いものは、評価されて欲しい。
それはきっと、誰しもが持っている願望だ。
「見事、見事」
進捗率を示すダイアログを眺めながら、舞塚・バサラ(罰裁羅影・f00034)はそう独りごちた。
それはいくつもの意味を含んでいる。
――敵ながら天晴れというやつだな。
『我』が言うには、敵の作戦がやはり巧妙であると。不特定多数が自然と接触する媒体に邪神復活の術式を仕込むとは、実に鮮やかな手口である。対処すべき相手が漠然としていて、やりづらいことこの上ない。
――しかしながら、この『72』も負けてはおらんよ。
『拙者』が言うには、神話を題材にしたファンタジー作品も件のアニメに負けず劣らずの出来であると。地味なタイトルに派手な宣伝もないことが足を引っ張っているが、丁寧に描写された世界と緻密なシナリオには一見の価値ありだ。
――わたしたちの成長力も流石って感じだよね。
『わたし』が言うには、作戦立案からここまでこぎ着けた自身の行動力の早さを、多少は誇っても良いだろうと。たかだか一週間もないうちに、情報収集を済ませた上で動画編集まで身につけたのだ。
ダイアログが100%を告げる。さあ、最初の弾は込められた。
「さて、それでは。あとはさいくをごろうじろ!」
『某』の言葉と共に、最初の動画がアップロードされていく。
――それは、『72』の盛り上がるシーンを丁寧に編集した、いわゆるMADと呼ばれる作品だった。
おおよそ初心者の作品とは思えない、勢いよしメリハリよしの『アガる』動画である。
しかしバサラの作戦はそれに留まらない。第二弾、第三弾、第四弾。
複雑な脚本の解説動画、シーンを切り貼りしてコメディにした動画、作中BGMをアレンジしたミックス――。
おおよそ一人の仕業とは思えない『神動画』の数々に、ネットは騒然となった。『一人でやったとは思えない愛』と言うがさもありなん、バサラは一人であって一人ではない。
バサラが導線となり、それまで静かだった『72』の話題性は一気に盛り上がった。
そうしてほとんど決まりかけていた『覇権アニメ』の座は、一気に揺らぐことになったのである。
「毒を以て毒を制す。なるほど、サブリミナルはこの国では禁止されていたで御座るか」
結果を見届けてから、バサラは席を立った。
彼の動画に意味不明なカットがいくつも挟まれていたことが判明したのは、既に全てが終わった後の話である。
成功
🔵🔵🔴
野良・わんこ
WIZ
ええっ! 猟兵の立場を使って匿名掲示板荒らしまくっていいですって!?
SNSでやると広まりすぎて過度な炎上になってしまうので落ち目の痰壺がTOP画面の匿名掲示板でやりましょう
壺のせい
やり方は簡単。
その作品のAAを探してきて儲を装い関係ないスレや板に褒める文言で大量爆撃します。
こうするとアニメを知らない人にそのアニメに対する悪印象を植え付けることができます
それに便乗して他の荒らしも使いだします。
必然的にそのアニメの本スレも空気が悪くなり肩身が狭くなっていきます。
勿論すべてネットカフェから行います
これが印象操作です。
わんこはこれでゆっくりとやる夫が未だに好きになれないので効果は抜群だ!
野良・わんこ(灼滅者・f01856)は天高くガッツポした。
「猟兵の! 立場を! 使って!」
ピシッ。ガシッ。グッ。グッ。
「掲示板荒らしまくっていいんですかーーーー!!!」
ヤッターーーーーー
!!!!!!!
まあぶっちゃけた話。
どう言いつくろったところで、今回は風評被害を振りまくお仕事である。つまり手段としては何も間違ってはいない。
そう、何ら! 問題は無いのであった!
わんこは歓喜した。
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
意気揚々とネカフェのフリータイムを買い取ると、ドリンクバーとジャンクフードと適当な漫画を集めて環境は完璧。
パソコンは多少旧式だが、それもまたご愛敬。
そんな訳で([要出典:どんな?])、わんこが選んだ『戦場』は匿名掲示板であった。
「かーっ……ぺっ!」
あくまで口で言っただけ。多分。
ともあれ、わんこの目当てにしているブツはあっさり回収できた。あとはもう、ひたすら本能の赴くままにやることをやるだけである。
すなわち。
『ひゃくものがたりは はけん アニメです みんな みよう!』
『円盤売り上げ XXXX枚 (比較アニメ) XX枚(笑)』
『今世紀最大ヒロイン●●●●よ。崇めなさい』
『こんばんは。おちゃどうぞ^^ おやすみなさい^^』
……その他諸々。
人気アニメなら、アスキーアートが山のように出来上がるのも時間の問題。
そこに煽り台詞をくっつけて、ひたすら関係の無い板にスレに爆撃爆撃爆撃すればよかろうなのだ!
戦争は数だよ兄貴!
適当に切り上げても、流行っちまえば悪ノリした連中が勝手に後を引き継いでくれるって寸法さ!
こうして増えるよアンチってやつは! くそう、これだから儲は! 反応するヤツもまた荒らしです! スクリプト組んで爆撃するヤツまで出てきたぞ!
「むーん、まんだむ。これが印象操作です」
……お陰で本スレは大炎上。若干SNSに飛び火したりして、まあそれはもう惨憺たる有様に。
後にはキャラの名前を出すのも憚られるほどの焼け野原が広がっていたのであった。
「おかげで、やる●とか●っくりとか未だに好きになれないんですよね」
ならば同じ手段で切り返してくれる。その結果がご覧の有様だよ!!!
どうでもいい余談だが、原作者はこの事件すら後の作品でネタにした。それはそれでたくましい話ではあった。
大成功
🔵🔵🔵
刑部・理寿乃
猟団長くんが見つけてくれた『嫌な臭い』の男
これは気になりますね。少し探ってみましょうか
可能ならUDC組織にこの男について調べてもらいます。
ユーベルコードを使い、男を追跡します
人気のない場所や建物に行ったら、インタビューしましょう
貴方は関係者ですよね、とビルから出てきた事を言って、知り合いがアニメを見てから怪談話しかしない
演出のサブリミナルに何かあるのかと質問
関係者じゃない、知らないと否定されたら、人が嘘をつく時ある特殊な臭い出て、狼はそれを見極めることができるとハッタリを言って、白狼で押し倒して恐怖を与えます
ここで男の名前とか言えたら効果的だと思う
質問が拷問になる前にお願いしますね(決め台詞
「見つかりましたか、ありがとうございます!」
報告に来たUDCエージェントに、刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)は、丁寧に頭を下げた。
野良猫が証言したという『嫌な臭いのする男』。
理寿乃はこの情報を詰めることにした。
――猟団長くんが見つけれてくれた情報だからね。
漠然としたこの事件に見えた、具体的な手がかり。見せた尻尾は必ず逃すまいとして。
果たして、件のアニメ会社を見張っていた理寿乃が見つけたのは、ビルに出入りするスーツを着用したサラリーマンであった。
一見して凡庸、どこにでもいるビジネスマンである。しかしあのアニメ会社は私服OKだ。フォーマルな服を着ている人間はそれだけで浮く。
もちろん、アニメとは様々な利権が絡む商売でもある。制作会社だけでは成り立たない。故に版元であれスポンサーであれ、それらの人間が出入りするのは当然だ。
だからこそ、そこに付けいる隙がある。
あの会社の人間がシロだと言うのなら、クロは外部から接触する人間以外にありえない。
「あなたは、『ひゃくものがたり』の関係者ですね?』
そして理寿乃は正々堂々、正面から接触した。
「な、なんですか、君は」
ビルから出てきた男は――どうも憤慨しているらしい――理寿乃を見て面食らった様子だった。
無理もない。一見して年端もいかぬ少女のそばには、巨大な狼が控えていたのだから。
その隙を見逃さず、理寿乃は畳みかける。
「あのアニメを見てから、友達が怪談の話しかしなくなりました。――端的に聞きます。演出のサブリミナルに、何か仕込みましたね?」
直球を投げる。ぱっと見、『はい』か『いいえ』の二択問題だ。
「し、知らない! 何のことだ!」
――ヒット。男は明らかに狼狽して、せわしなく視線を動かす。その反応が答えだった。
「――これは嘘を吐いているにおいですね。この白狼は嘘をかぎ分けることができます。そんなごまかしは通用しません」
ハッタリだ。そんな能力は持ち合わせていない。しかし、男の顔が青ざめたことで確信へと変わる。
本当に何も知らないなら、こんな反応は返ってこない。例えば「何を言っているんだろう」ときょとんとするとか、そんなところか。
「もう調べはついているんです。――さん」
白狼が男にのしかかると同時に、UDCエージェントから伝えられた名前を告げる。
「な、な、な……! まさかお前は……!」
「アニメに何を仕込んだのか。どんな邪神を蘇らせようとしていたのか。洗いざらい吐いてもらいますよ? ――質問が拷問に変わる前にお願いしますね」
理寿乃は花のような笑みを浮かべた。それはとても美しく、男の目にはどこまでもおぞましいものに映った。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『噂語り』
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POW : 自分ソックリの妖怪『ドッペルゲンガー』の噂
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使ってきた猟兵のコピーを生み出し、操り】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 学校の七不思議『動く模型』の噂
戦闘用の、自身と同じ強さの【動く骨格模型】と【動く人体模型】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : 予言をする妖怪『くだん』の噂
対象のユーベルコードに対し【使ってくるユーベルコードを言い当てる言葉】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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『ひゃくものがたり』は放送延期となった。
具体的な理由は明かされなかったが、納品が間に合わなかったのだろうと言うのが主流の見解であった。そしてそれは間違っていない。
放送を心待ちにしていたファンは荒れ、制作事情を憂う業界関係者の意見がバズり、あるいは『荒らしが大量に発生したことが何か関係しているのでは』という陰謀論めいた噂も流れたが、結局のところいずれも『消費される話題』でしかない。
そしてやがて忘れられていくのだろう。次のクールが始まれば、おのずと話題はそちらに移っていくのだから。
――ねえ、知ってる?
故に『やつら』は次の手を打ってきた。
――これは友達の友達から聞いた話なんだけど――
いや、あるいは『これ』とアニメ、両方を合わせて噂を世の中に潜行させていたのかもしれない。
――本当にあった話らしくて――
人混みに紛れ、楽しそうに歓談するオブリビオン。人の形を取っているそれは、しかし無責任な噂話を放流するだけである。
そしてそれらは不思議な求心力を以て、人々の心に染みこんでいく。
怪談という刺激的な話を、さも現実にあったかのような錯覚に落とし込んでいく。
現実世界におけるインフルエンサー。
都心に紛れる『噂話』そのものの具現化。
それが、邪神復活のための、もう一つの装置だった。
白斑・物九郎
●POW
●敵コードの不全を狙いつつドッペルゲンガーを狩り回る
このグールドライブは『“他者”を喰らう』事で強化を得るコード
ま、もっともテメエらにゃ使おうにも使えねえ力でしょうけどもな
『俺め(本物)』にしてみりゃ『テメエら(偽物)』は断固として『他者』
でも『テメエら(偽物)』は、自身を『俺め(本物)』と定義しなくちゃなりませんよな?
つまりテメエら偽物は、俺めを指して『他者』と呼ばわるコトは出来ねえ
つまりテメエら偽物は、俺めとタイマンを張る限り、グールドライブ最大の肝『強化』を重ねられねえってコトですわ
なんか理屈っポい狩りになりましたわな
見せられ倒したアニメのせいっスね
(顎を上向け肩越しに振り返る)
――ねえ、知ってる?
それは『もう一人の自分』の噂。自分の生き写し、何もかもが同一の影を見たならば、その人物は死んでしまうという怪談。
その名をドッペルゲンガーと言う。
噂話は具現化する。
相手の分身を生み出し、コピーした敵の能力そのもので自壊させる、恐るべき罠として。
しかし。
「そういう搦め手こそ、ハメがいがあるってモンですわ」
悠然と『噂』を狩り回りながら、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は独り言つ。
なるほど。ユーベルコードを真似るという特性は、強烈な切り札を持つ相手にこそ有効に働くだろう。
それは攻撃であろうと、防御であろうと、回復や補助であろうと例外ではない。
――あれ? 今、あの子二人いなかった……?
そんなざわめきを聞き流しつつ、物九郎は雑踏を離れる。
ふらっと入った路地裏。そこには『また』物九郎がいた。
『ザ・レフトハンド――【吸血/生命力吸収】ON』
そうしてもう一人の『自分』は、左腕に刻まれた刻印を活性化させる。それは『他者』の血液を、魂を食らって自身を強化――
「さて。俺めはテメエにとって『他者』ッスか?」
――ここに陥穽がある。
ドッペルゲンガーの性質上、コピー元は『本人』という定義になる。ならざるを得ない。
「ザ・レフトハンド――【吸血/生命力吸収】ON」
オリジナルとして、物九郎は同じ詠唱を唱える。左腕の刻印が励起して、『他人』を食らう拳が顕現する。
物九郎にとって、ドッペルゲンガーは言うまでもなく『他人』である。よって発動条件を問題なく満たす。
ところがドッペルゲンガーにとって物九郎は『本人』である。『他者』と定義した瞬間、自己矛盾に陥るからだ。そして、『本人食い』は『グールドライバー』の発動条件を満たさない。
つまるところ、空撃ちになってしまう。
物九郎の拳がドッペルゲンガーを捉え、その血肉を啜る。そうして上がった身体能力による二撃目によって、『噂話』はあっけなく霧散した。
相手の特性を殺しきる、物九郎らしい『ハメ殺し』であった。
「それにしても、なんだか理屈っぽい狩りになりましたわな」
見せられたアニメのせいッスね――。
『ひゃくものがたり』の劇中に多用された演出のように、物九郎は顎を上向けて肩越しに振り返った。
成功
🔵🔵🔴
野良・わんこ
WIZ
噂話は路地裏から。
ならば路地裏をうろつけば遭遇できるでしょう。
路地裏で戦うこそUDCアースの醍醐味です。
吹き飛ばしで路地裏のさらに奥へと飛ばした後コード発動。
ユーベルコードを言い当てて相殺。
それに何の意味があるんです?
わんこのこのコードはギャグにしてもいい雰囲気を作り出すだけのもの。
それが相殺されたからといって何ら痛手ではありません!!
ツインレーザーブレードで斬りかかる。
これがオーバーテクノロジーの力!
一撃目で与えた傷に2回攻撃で傷をえぐってトドメを指す。
これぞわんこダイナミック!
――ねえ、知ってる?
『くだん』。それは人の頭に牛の身体を持つ妖怪。日本中に現れ、凶事を予言し、その悉くを当ててきたとされている。
歴史に残る数々の災害に、くだんの目撃情報がついて回る。凶事があるからくだんが現れるのか、くだんが凶事を連れてくるのか。それは、鶏が先か卵が先か、のような話であろう。
「どっせーい!」
が、その辺、野良・わんこ(灼滅者・f01856)にとってはすげえどうでもいい話だった。路地裏でこそこそ話をしているオブリビオンに、不意打ち気味に蹴りをかまして吹っ飛ばす。
「やはりいましたね、路地裏に! 噂話と言えば路地裏なので!」
UDCアースの醍醐味、それは路地裏バトル! 華やかな表の喧噪とは遠い、ちょっとアンダーグラウンドな雰囲気で戦闘! なんかこう、『異能力バトルしてる』って感じ……しますよねえ……。
まあ路地裏は路地裏で、なにげにエアコンの室外機とかゴミ置き場とかだったりしてきちんと社会の一部ではあるのだが――まあどうでもいいよね! ロマン優先です!
ともあれ、『くだん』とて油断はならない『噂』だ。
それは自らに降りかかる凶兆――対象のユーベルコードを予言する。切り札を無効化するジョーカー殺し。
立ち上がった人型オブリビオン――顔がぼんやりしていて区別がつかない――は、人頭牛体の怪物を呼び出し、いざわんこの手の内を暴かんと、
『キモッ! キモいわ! 人面牛とかバランスが逆やろ! なんでこんな形にしたん! 牛ケモならまだ需要あるやん!』
色々と台無しだった。『くだん』は己のあまりのニッチさを嘆いて消えた。
うん、現代なら多少の需要があると思うから頑張れ。ちなみに逆バージョンもあるそうです。
「それに何の意味があるのです?」
わんこは勝ち誇ったように言った。
そう、わんこが差した切り札は『ギャグを挟まないと死んじゃう病』――ギャグ時空を作り出す『だけ』のユーベルコードである!
説明しよう! このユーベルコードは『シリアスシーンに唐突にギャグをぶっ込む』という作風の先駆けとなった少年漫画誌がモチーフなのだ! そういえばギャグに特化した増刊号もあったね!
え? それをキャンセルしたなら徹頭徹尾シリアスでないとおかしい?
「隙あり! よっしゃー! わんこダイナミック!」
そんなツッコミごとねじ伏せるように、わんこの二つ重ねたレーザーブレードが『噂話』を一刀両断した。
これぞオーバーテクノロジー!!!
成功
🔵🔵🔴
国木田・光星
さて、次の戦場は雑踏か。
なら派手な戦闘が出来ねぇな。
オブリビオン自体に攻撃力はなさそうだな。
イレイザーレーザーの出力を抑えて、スタンガンのように使って倒すとしようか。
コソコソしてる割には声がでけぇんだよ。静かにしてやがれ。
さて、次は噂話を聞いちまった連中だ。
イレイザーレーザーで記憶を消すのは簡単だが…余計な分まで削る訳にはいかねぇ。
だから俺は、植え付けられた不穏不安を"傷"と見る。
蟲笛【七つ星】を吹き、光の蝶を召喚する。
少し変則だが、皆の"傷"を癒してくれ。頼んだぜ。
蝶達に皆の目が向いてる隙に、俺はクールに去るとしよう。
幸い平凡過ぎるからな。雑踏に紛れるのは得意だぜ。
■アドリブ共闘OK
――ねえ、知ってる?
うるせえ、黙ってろ。
人通りの多い雑踏の中、誰かが気を失ってふらりと倒れた。しかし視線をやると、そこには誰もいない。
気のせいだったのだろうと人々は受け流し、それぞれの日常を進めていく。
そんな一人に紛れながら、国木田・光星(三番星・f07200)は、手にしたイレイザーレーザーの熱を確かめた。……もう少しいけるか。
このオブリビオンには戦闘能力自体はほとんどないようであった。個体差はあるのだろうが、雑踏に紛れている分に関しては誤差の範疇だろう。
その代わり、数が多いのが厄介だ。行き交う人波の中、一体どれだけ紛れ込んでいるというのだろう。
すれ違いざま、男子高校生の姿をした何かが口を開く。
――なあ、知ってるか?
「知らねえよ。内緒話ならもっと小さい声でやりやがれ」
光星はイレイザーレーザーの出力を調整して、スタンガンのように荷電粒子を走らせる。それを男子高校生に突きつけると、一撃でオブリビオンは霧散した。
流石に至近距離で目撃した者はうろたえるが、元より実在感の薄い敵だ。死体も何も残らない以上、何かの勘違いとして処理される。
光星は舌打ちをする。今のでレーザーはオーバーヒート寸前だ。冷却時間が必要だろう。
とはいえ目に見える範囲の敵はあらかた狩り取ったはずだ。
なら後処理に回ろうと、光星は笛を取り出した。
オブリビオンが世界の染みとして、それがもたらした人々への影響を何と表現するか。過去の汚染に晒されて『傷ついた』、と解釈することは十分に可能だろう。
実際、噂話の元凶を断ったところで、奴らが振りまいた『噂という毒』は残留している。
故に、光星は笛を吹く。
そして現れたのは、光り輝く蝶だった。
幻想的な蝶が、ふわふわと雑踏の上を飛んでいく。これには何人かが足を止めた。
夢のような光景だ。果たしてこれは現実なのだろうか?
そうして見とれているうちに、『怪談をしたい』とざわめいていた心が鎮まっていく。やがて自分がそんな欲求を覚えていたことすら忘れて、再び歩き出す。
「国木田光星はクールに去るぜ……なんてな」
回復の代償として、光星の身体にずっしりと疲労感がのしかかる。対象が多いために、まるでフルマラソンを走ったかのような感覚だ。
それでも作戦は成功した。だから、これは気持ちの良い疲れだった。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
噂話とはまた労力のいる作業、頑張っておるな!
そしてコピーを作り出せるとは凄い!
はっはっは、自分とのバトルなんてレア体験、逃すわけにはいくまい!
ということでどう防御させるのか分からんが、ひとまず順に殴っていけば良いのか?
タイマンも良いが、一対多数ならもっと派手で素晴らしいバトルになるであろうな!
そして、技をコピーしたのなら分かるであろう?
不利を覚悟し、なおかつ余裕で魅せていかねば、大して漲りもせんぞ
問答無用で仕掛けるなんて面白くない、もっとイケてるポーズとか高笑いとか!
待っててやるからベストを見せてみよ! だが妾はカッコ良さも強さもその上を行く!
本体もろとも、妾の左腕にボッコボコにされるがよい!
――ねえ、知ってる?
『今回の相手は、なーんと! 自分自身との戦いである! クローン怪人との一対多! 実にお約束で漲ってくるではないか!』
今回の動画はそんな入りで。御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、カメラの前で高らかに宣言した。
『噂話を蔓延させる。言葉にすれば容易いが、しかーし! ただ噂をすれば良いというものではない! 動画を作ったことのある視聴者諸君ならば、この意味が分かるのではないかな?』
話題というのはただ無作為に放り投げたところで、たちどころに広まるようなものではない。適切な営業、魅力的な惹句、時流を読むこと。この情報化社会、これらの技術をかみ合わせてようやくスタートラインに立てるのだ。
『それが今回の敵のすさまじい所である! 怪談で広く人心を掴み、敵対者には怪談を以て制する。うむ、その一貫性、配信者として見習いたいものだな!』
『ただ話しているだけで話題になる』。それは動画配信者として、喉から手が出るほど欲しいスキルであった。
『このような形でなければインタビューをするのもやぶさかではなかったが、しかーし! 相手は妾の世界に仇なす怪人よ! それでは、一部始終をお届けしよう! 刮目して見るがよい!』
高笑いと共に菘はフェードアウトし、VTRスタート。
――怪獣大戦争のようだった。
様々な爬虫類の特徴が合わさった菘の体躯は、まさしく蛇神、邪神と自称するだけのことはある。
それが複数、街中で殴り合っている。現実から遠すぎて、特撮の撮影と言われれば納得してしまいそうな有様だった。
「くっくっく、どうしたどうした! 一斉にかかってきても構わんのだぞ? ん?」
目に付いた『噂話』を片っ端から(殺さない程度に)殴りかかり、ドッペルゲンガーを大量に作らせた。結果、菘は自身のコピーにずらりと囲まれる形になる。
見るからに状況はかなり不利だ。もし自身と寸分違わず同じものが出来上がるなら、単純計算で相手の数だけ押し負ける。
――だからこそ、だ。
「コピーしたなら分かるであろう? 不利な時こそ不敵に笑え! 逆境とは乗り越えてこそ!」
菘の左腕が敵をまとめて薙ぎ払う。同じはずのドッペルゲンガーは、しかし束になっても本物に追いつけない。
「不利を覚悟しながらも、余裕を崩さぬ! そうでなければ漲らん! 面白くない! そしてなにより、カッコよくない!」
敵が多人数で囲んでいるならば、それは圧倒的『有利』となる。そしてそれは、菘の『逆境アサルト』の発動条件を満たさない。
蛇神を名乗る女は高々と笑う。
「ほら、どうした! 待ってやるからかかってこい! この場の空気は妾が掌握した。ならば今はお主らが『不利』であろう!」
最終的に全て巻き返してみせよう。そのために相手にも相応の格を与えよう。それでこそ、最も『映える』絵が撮れる。
「ベストを尽くしてかかってこい! 妾は常に、その一歩先を行く!」
蛇神は高らかに笑い、ポーズを取る。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・つかさ
●POW
ユーベルコードのコピーか。
厄介な能力を持ってるのね。
……じゃあ、ユーベルコードに頼るばかりが戦いじゃないって事、教えてあげるわ。
敢えてユーベルコードを「使用しない」で戦う。
敵の攻撃は「オーラ防御」で常時守りを固めつつ「見切り・早業・武器受け」技能を活用し切り払う。
敵が遠いなら風の「属性攻撃」による「衝撃波」や適当な物の「投擲」で「吹き飛ばし」て牽制。
近いなら「残像」の出る速度で踏み込み「怪力・鎧砕き」技能の乗った大剣でぶった切るか「グラップル」技能を活かしての肉弾戦を行う。
伊達にPOW特化して戦闘技能ガン積みしてる訳じゃ無いのよ。
鍛えに鍛えた基礎能力で押し通らせてもらうわ。
――ねえ、知ってる?
そうね、どうでもいいわ。
荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)の拳が、女子高生のような何かの頭を打ち砕いた。
後には何も残らない。初めからそんなものはなかったかのように、主体のない噂は雲散霧消していく。
つかさはそれを確認すると、颯爽と次の『噂』を探しに行く。
オブリビオンにしろ猟兵にしろ、ユーベルコードとは必殺の切り札だ。
どのようにその『超常』を使いこなすか。それが彼らの戦いの基本と言っても過言ではない。
しかし。
広場で喋るグループに、顔の見えないオブリビオンが混じっていた。つかさはそれを認めると、狙い澄まして掌底を撃つ。すると、『見た目には』当たってもいないのにオブリビオンだけが綺麗に吹っ飛んだ。
何のことはない。風属性の衝撃波を飛ばしただけである。
人の輪から吹き飛ばされたオブリビオンを、まっとうな人々は意にもかけない。アレはそういう存在だからだ。つかさは残像が出るほど早い足捌きで距離を詰めると、刀でその胴体を容赦なく切り捨てた。一切の防御を許さない、鎧をも通す一撃である。
――何のことはない。これらは修練の賜であり、鍛え上げた膂力を使った『技術』である。
――同じ影を見ると死んじゃうって
そう。なら、真似はさせないわ。
――災いを言い当てるって
そう。なら、予知はさせないわ。
――動き出す模型が
そう。なら、それごと叩き潰してあげる。
つかさは、敵の悉くを『自力で』霧散させていく。
――ユーベルコードに対策してくるなら、そもそも使わなければいいだけよ。
鍛えに鍛えた鋼の如き地金。生まれながらの戦士だからこその発想。超常を弄して逆手に取られるのなら、そもそも正面から突破すればよい。
拳が、刀が、投擲物が、敵の悉くを打ち払う。
ユーベルコードを使わない以上、反撃をもらうこともあろう。だからどうした。策士の正面攻撃など、遅すぎて当たる気がしない。
「ユーベルコードに頼るだけが――」
轟。
「戦いじゃないのよ」
つかさの拳が、噂話の土手っ腹を撃ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
舞塚・バサラ
【SPD】
ただでさえ人間関係やら、勉強やらで鬱屈してるで御座るからなあ
SNS等で情報を探り、噂が広まっている学校へ潜入すれば自ずと見つかるで御座ろう(情報収集、変装、目立たない)
で、確かに手数で攻めれば某は一人故、押し切れるで御座ろうよ(ユベコ発動)
だが、生憎と我らも手数は多い方でな。無為無策で相対してなどおらぬ(骨格模型の攻撃を刀で武器受け)
其方は動けて二人、拙者らは此れで三人(大剣で人体模型の攻撃を武器受け)
そしてわたしでよんにんめ(噂語りに対して花札を投擲)
__さあ、是より先は『某が』(存在感を目立たなくして噂語りへ暗殺)『我が』『拙者が』『わたしが
』『『『『相手だ』』』』
アドリブ大歓迎
――ねえ、知ってる?
結局の所。怪談というのは、ある意味で青春とセットである。
子供から大人になる過渡期。現実を少しずつ知りながらも、自由に幻想を見る事がまだ許される時期。
――理科室の人体模型と骨格標本が動き出すんだよ――
だからだろうか。そんな定番の『学校の七不思議』は、いつまでもなくならない。
「ただでさえ、勉強やら人間関係やらで鬱屈しているで御座るからなあ」
美しいだけが青春ではない。苦いのもまた青春だ――などと謳ったのは何の作品だったか。
舞塚・バサラ(罰裁羅影・f00034)は、とりわけ噂の多い学校に当たりを付けていた。
「しかし、個人情報をウェブに上げるのは、まったくぞっとしないで御座る」
現場を特定出来たという面では良いものの――いや、いや。ネットリテラシーの話は今はどうでもよい。
バサラは手早く制服姿に着替えると、あたかも遅刻してきた学生のように、悠々と学校に乗り込んだ。
果たして、それは廊下にぼんやりと佇んでいた。
顔の見えない学生服。意識しなければ見失ってしまいそうな非現実感。そこにいて、そこにいない。
アレは単に、授業中だから雑談に混ざれないだけなのだ。チャイムが鳴れば、またお喋りの輪にするりと入り込むのだろう。
故に、今のうちに斬る。
バサラが刀を抜き、一気に距離を詰める。するとそれは口を開いた。
――よなよな動き出して、生け贄を探しているって――
人体模型と骨格標本が呼び出される。バサラの振るった刀は、寸前で人体模型に食い止められた。
「なるほど。某は一人。ならば押し切れるで御座ろう」
その隙を狙わんと、骨格標本が腕を振り上げる。
「だが生憎――」
バサラの側頭部に、その白い骨は――
「『我ら』も、手数は多い方でな」
もう一人のバサラが、刀でそれを受け止めていた。
「其方は動けて二人。対して『拙者ら』は、三人――」
人体模型の拳を、さらにもう一人のバサラが大剣で受け止める。
「そして『わたし』でよんにんめ。ざんねんだったね」
最後に現れたバサラは、動けない『噂』に対して花札を放った。それは炎となって、実体のない噂を無に還す。
「某らに『我らに』『拙者らに』『わたしたちに』それを使ったのが悪手であったな」
『ドッペルゲンガー』や『件』なら、あるいはバサラのユーベルコードに対してカウンターになり得ただろう。だが、ここで敵は間違えた。散々対策されていたからこそ、出し惜しんだのだ。
かくして四人のバサラは、学校に蔓延る噂を狩り取った。
成功
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第3章 ボス戦
『邪悪が宿ったモノ』
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POW : 人質
【一般人】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD : 幻影か実体か
質問と共に【回答者の見知った幻影】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : 六つ目の影
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【邪神の影】が出現してそれを180秒封じる。
👑11
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――何者にもなれない。
噂は噂のまま霧散した。人々は古めかしい怪談に見切りを付け、また新しい流行を探し始める。せわしないことこの上ない。
儀式は延期した。信仰は不足した。残ったのは、ただの『邪悪』の塊のみ。
形をなそうとして失敗し、ただ『邪悪』という概念のみが残ったモノ。
それはぬいぐるみの形をしていた。今回の事件を企んだ邪教団は、一時の依り代にそんなかわいらしいものを選んだらしい。
あるいは――子供を狙っていたのか。アニメのスポンサーであるホビー会社の地下。教団のアジトはそこにあったのだ。
何はともあれ、無責任な噂を食い止めたからこそ、アレはこの程度の形に留まっている。
今のうちに、破壊してしまえ!
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
●POW
裏工作にゃウチの透破が走りましたからな
こっちは気ィ惹いとく意味コミで正面戦闘と行きますでよ
平伏せ、出来損ない
ガチの怪異がどんなモンか見せてやりまさァ
ブラッド・ガイスト――モード『鍋島』
(サーチドローン「茶斑の三毛」へ己の血を舐めさせ【封印を解く】
主の血を舐めて変じる化猫が敵を討つ伝説、その再現)
・「茶斑の三毛」の殺戮捕食態、でっかい化猫を嗾ける
・化猫には【吸血&生命力吸収】で程度のダメージは即リカバリしつつの戦闘を命令
・己は【野生の勘】で勘所を押さえつつ前線の化猫と併せての2回攻撃コンビネーションで戦況をアシスト(怪力で操るメイスでブン殴り掛かったり串刺しを狙ったり)
舞塚・バサラ
【SPD】
【ワイルドハント】と協力
相手のユベコは全て相手を認識せねば発動し得ぬ
故、某は影に潜み、不意を狙うで御座る
(ユベコ発動
極限まで目立たぬように地形を利用、かつ忍び足で敵アジトへ潜入
また、道中破壊工作用の仕込みも早業で行う)
人質、か
有効な手段で御座るなあ
動きが止まる手合いは居るで御座ろうよ
(遮蔽や物陰を利用
足音を忍ばせ、相手の不意を見切り、気付かれぬように人質の一般人を救出)
居たら、で御座るがな
(以後、逃げ足で距離を置き、隙を見ては苦無や花札の投擲によるだまし討ちや暗殺を叩き込む)
討伐後、地上に影響が出ないように破壊工作を決行
後追いが出ないよう資料等を破壊する
暗い地下室の中に、昏い、冥い何かがある。べったりと闇いそれが蠢動する。
――何者にもなれない。
未だ形を得られない邪神は、しかしその指向性だけは初めから決まっていた。
邪悪であれ。
依り代としているぬいぐるみは、どうやらこの上にあるホビー会社の大量生産品らしい。
さもありなん。今回の敵は『膾炙させる』ことを目的としていた。
無作為な流出。無責任な噂の流布。となれば次は――物品の流通。であれば、特別な触媒などはむしろ邪魔になるのであろう。
確固たる怪異としてそこにあるのではなく、万人の意識に潜り込むことで己を確立しようとしたのか。
「は」
その在り方を、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は鼻で笑った。
「ま、確かに怪異ってのは、いかに有名になるかってのはありますわな」
そういう意味では相手のやり方は間違ってはいないのだろう。怪談は『知られなければ意味が無い』。広くあまねく恐怖の対象になることが、怪異としての強度を決定する。
だが。
物九郎は左手の爪で、軽く右腕の肌を裂く。つう、と血が流れた。それを、追随していた三毛猫型ドローンがぺろりと舐める。
「ブラッド・ガイスト」
にゃあお。おぞましい鳴き声がどこかから聞こえた。すると、三毛猫はその身体を巨大な怪物へと変えていく。
「モード――『鍋島』」
――鍋島化け猫騒動。非業の死を遂げた主の仇討ちのため、血を舐めて怪異へと変貌した猫の復讐譚。
「平伏せ、出来損ない。ガチの怪異がどんなモンか、見せてやりまさァ」
所詮、敵は粗製濫造。かつて江戸の世を震撼させ、現代にまで言い伝えられている怪異とでは『格』が違う。
猫と化け猫は、そう吼えた。
それに対して『邪悪』の取った行動は、実に悪性の強いものであった。
ぬいぐるみという依り代の持つ特性。つまり子供を誘引する愛嬌である。
古今東西、行方不明者には事欠かない。ネットワークが発達した現在でも、数え切れないほどの家出は発生している。
そのうち何人が、この『邪悪』の手によるものだろう。
襲いかかる爪と牙を、無辜の一般市民を盾にすることで、
どこからか声がした。
「居たら、で御座るがな」
――いない。
物九郎の振るう巨大な鍵型鈍器が、ぬいぐるみを強烈に打ち払う。
「とっくに、ウチの透破が走りましたからな」
透破――舞塚・バサラ(罰裁羅影・f00034)によって、既に救い出された後だった故に。
ぬいぐるみが吹き飛ばされた先に、黒々と闇に紛れる苦無があった。
何のことはない。物九郎の大見得も、真正面からの激突も、全てはこのための布石だった。
バサラは闇に融ける。仲間の卓越した猟兵でさえもその存在を感知しきれない。それだけの隠密性が彼にはあった。
人質、あるいは儀式の生け贄。邪教団にはよくあることだ。
それでなくとも地下室に仕掛けられた罠をあらかじめ解除しておくのは透破――忍者、つまり斥候の役割である。
ぱりん、がしゃん、ごおごお。
地下室の奥から破壊音が聞こえてくる。
今回の『サブリミナル』の仕掛けは後追いされると非常に厄介な代物だ。バサラはそのまま破壊工作に移行したのだ。
そしてその姿は物九郎にも見えない。隠密性を保つために、必要以上の発声もない。
それがどうした。問題はない。作戦は滞りなく進んでいる。
「もっと頑張らねェとジリ貧ですぜ、おたく」
化け猫が『邪悪』を囓り取る。その分だけ活力を食らい、傷がみるみる再生していく――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御形・菘
信仰が足りずとも顕現しようとする気概は評価するがな
ならば残された役割はただ一つよ、妾にボコられ動画高評価の糧となるがよい!
右腕を高く上げ、指を鳴らし鳴り響けファンファーレ!
燃焼を続けるのは本体のみ、味方を含め他は即消火するぞ
一般人に持たせておるなら、手などへ延焼しないように調整だな
はっはっは、お主だけを苛むその炎、消したければ妾をブッ倒すことだ!
間違っても一般人に手出しはせんよ
そういう絡みはちゃんと(事前にカメラ外で)許可を取る!
ということで、ちょっと熱心すぎるファンのようなものに応ずるとしよう
そしてどんなファンであっても塩対応はNG!
燃え尽きるまで、ガードを固めて辛抱するとしよう
早くも趨勢は決まった。
『あらかじめここに捕らわれていた』人質は全て助け出した。ならばその手はもう使えない。相手の手札を一つ潰したことで、攻め入る隙が――
かたん。
いつの間にか。死人のような顔をした女が、ぬいぐるみを抱いていた。
服装から察するに、上のホビー会社で働いている女性だろうか。
なり損ないとは言え、相手は邪神であった。そしてその指向性は『邪悪』。
故に、行動は簡単だった。
『ないのなら、新しく持ってくればいい』
使い捨ての肉壁感覚で、無辜の一般市民をこの場に召喚したのだ。
「信仰が足りずとも顕現し、自身の属性を全うしようという気概は評価しよう」
その図を見て、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は一歩前に出た。
そして、ビシッとカッコいいポーズを決める。
「ならば! 残る役割は一つよ! 妾にボコられ、高評価動画の糧となるが良い!」
猟兵としての前口上終わり! ここからは動画撮影のターンだ!
菘は右腕を高らかに上げると、パチンと指で綺麗な音を鳴らす。
するとどこからともなくファンファーレが流れだす!
『はーっはっはっは! 妾だけを刮目して見よ!』
菘が高らかに宣言すると、ぼう、とぬいぐるみに火が灯る。あわや女性ごと、と思う無かれ。不思議なことに、その炎は『ぬいぐるみだけを』焼き尽くす!
『はっはっは、人質など無意味よ! その炎はお主だけを苛むぞ! 消したければ手段は一つ。そう――』
バン! ここでかっこいい見栄切り!
『妾を! ブッ倒すことのみ!』
――夢を、見ている。
ああ、仕事中に寝落ちしてしまったのか。最近疲れてたもんなあ……。
それにしても、変な夢。
私は何故かぬいぐるみを抱いている。うちの会社の量産品だ。正直これのせいで仕事が増えるのだから、憎しみ……とまではいかないけど、辟易しているのは確かだった。
なんと、それが燃えた。しかも私の腕の中で。まるで私の心を見透かしたように。なんていうか、ざまあみろって感じ。
――もうちょっとの辛抱だ! なぜなら妾がもうすぐブッ倒すからな!
視線を上げれば、なんだろう……。なんか、めっちゃクリーチャーっぽいのがいた。けれども不思議と全然怖くなくて、「ああ、この人は味方なんだ」ってすぐ理解出来た。
――動画を視聴の諸君! 見るがいい、彼女の勇姿を! このような状況にも関わらず、気丈に立っているその勇気に喝采を!
そうか。この人はヒーロー動画を上げている人なのか。
じゃあ――もし、夢から醒めて、この人の動画が本当にあったなら。
ファンになっちゃおうかな。そんな風に、思った。
成功
🔵🔵🔴
野良・わんこ
POW
ユーベルコードである以上、それを封印でもしないかぎりどこからか一般人が湧いてくる可能性はあります。
なら湧いてくる一般人をどうにかすればいいのです!
なので、出てくる一般人を片っ端からサイキックウェーブで拘束して無力化していきます。
召喚されたといっても所詮は一般人。ユーベルコードに対する耐性はないも同然!
拘束したらそのまま部屋の隅にでも転がしておきましょう。
隙があればついでに本体のほうを拘束、壁にでもぶつけたりしてみましょうかね。
もしくは手元に引き寄せてカウンターでレーザーブレードでずんばらりんです。
「案の定でした!」
戦況を見て、野良・わんこ(灼滅者・f01856)は叫んだ。
一般人を盾にする。その特性がもしユーベルコードによるものなら、それそのものを封印しない限り、いくらでも呼び寄せることが出来るのではないか?
「めっちゃリスポンしてきますねー!」
正解である。
あらかじめ捕まえておいた人質、次は上階層で働いている人間、その次は――その辺を歩いていた通行人。
まるでRPGのエンカウントのごとく、『邪悪』は一般人を連れてくる。無論、捕まえられた人の自由意志など完全無視である。
面倒な事態だ。とにかく攻撃を振りにくい。一般人がユーベルコードへの耐性を持っているはずがないのだ。よしんば使わないとしても、猟兵の攻撃がかすっただけでも危ういだろう。
無駄な犠牲は避けるべきだ。全体の士気低下を招く――
「ですが所詮は一般人です!」
しかし、わんこの切り替えは早かった。
そう。あの『盾』は精神的な重圧でしかない。物理的な防御は期待できないのだ。
「むむむむ~ん! わんこサイキック!」
みょいんみょいん。うろんに動くわんこの両手から、目には見えないウェーブが放たれる。
するとそれを受けた一般人は動けなくなり、その場に転がった。次いで壁の端にふわふわと移動させられる。
――つまり、攻撃せず、拘束してどっかに置いておけばいいんです!
増えた端からばっしばっし! 死ななきゃOK! 後始末のことは置いといて、とりあえず今は障害の排除!
「わんこダイナミーック!」
ついでに召喚が間に合わなかったっぽいので、ぬいぐるみも引き寄せてレーザーブレードでずっぱーん!
正義は勝つ!
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
ぬいぐるみを依代に、ね。
まあ何でもいいわ。
形あるものなら、壊せない道理は無いもの。
一般人を召喚してくるの?
人質として使ってくるとか、面倒ね。
盾にされたら巻き込みかねないし。
まあ、私は気にせず接近するわ。
武器は持たず、丸腰でね。
人質を盾として使うようなら、誤射しようもないほど近づいてしまえばいい。
もし人質を殺害すると脅してきても気にしないわ。
だって、当たり前でしょう。
人質を殺した瞬間、お前の盾は消えてなくなる。
つまり、人質に遠慮する必要もなくなるのだから。
接触できたら人質の一般人から腕ずくでぬいぐるみを奪い取り、引きはがした上で「怪力・鎧砕き」技能を乗せた【螺旋鬼神拳】を叩き込むわ。
邪悪なるものは盾を――ただの一般人を呼び続ける。
それは単なる習性か、それとも人に対する昏い感情によるものか。悪性の化身は、ひたすらに人質を取り続ける。
猟兵に対する精神的な枷として。『このまま続けるなら、被害が増え続けるぞ』と厭らしく嗤うように、自身をここに繋ぎ止めるぬいぐるみを、人に抱かせ続ける。
「だからどうしたの?」
荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)は武器を投げ捨てると、丸腰でずかずかと歩み寄る。
当然、『邪悪』は人質を操る。自分を攻撃しようとすれば、こいつに当たるぞと言わんばかりに。
「ええ、だから丸腰よ」
だってほら、武器だと巻き込みかねないから。
それならまだ、拳の方が制御が効く。
誤射が怖いなら、ゼロ距離から拳を叩き込めば良い。
つかさにとって、これはたったそれだけの話である。
つかさの手がぬいぐるみを乱雑に掴む。一般人は抵抗するが、所詮UDCアースの誰ともしれない人間である。筋力に優れた羅刹であり、猟兵でもあるつかさに抵抗できる道理がない。
そうしてあっさり、『邪悪』を込めたぬいぐるみは射程圏に収まった。
「随分とぬるい手ね。人質が死ねば、お前の盾は消える。それだけの話でしょう?」
人質に気を遣うから攻撃が鈍る。けれどそれは、守るべき対象が命を落とせば、遠慮する必要がなくなるということでもある。そこを割り切れるような人種が猟兵にいないとでも思っていたのだろうか?
ぬいぐるみを放り投げると、つかさは身体を捻る。足は身体を支え、腰と腹筋の旋回を乗せる。
「抉り込むように――!」
力は独楽のような美しい螺旋を描き、正拳突きの形となってぬいぐるみを貫いた。
成功
🔵🔵🔴
国木田・光星
UDC本体のご登場って感じだな。
形無き形ってところか?全くめんどくせぇなぁ、お前らはいつも。
最初から全力で行くぜ。
【七つ星】を吹き、メガネウラを二体召喚する。
まぁ弱点を突かれるとなるとこの笛が狙われるってとこだろ。
だが分かってりゃ思ったとおりにはさせねぇよ。
一体はぬいぐるみをぶっ壊させる。
一体は俺や他の猟兵を守らせる。
だけど守られるだけじゃねぇ。
イレイザーレーザーで遠距離からでも焼いてやるよ。
まぁ、玩具に罪はねぇんだけどな。
とにかくメガネウラが消えねぇように奔走しながら射撃で攻撃だな。
やれやれ。走り回ってすっかりセットも崩れちまった。
てめぇのせいだぜUDC。絶対許さねぇからな。
アドリブ共闘歓迎
そもそもの話。
もし敵にぬいぐるみという依り代がなければ一撃を与えることも難しかっただろう。『邪悪という概念』は形而上のものだ。形あるものによって破壊することはできない。
「全くめんどくせぇなあ、お前らはいつも」
国木田・光星(三番星・f07200)は、かつて他のUDCエージェントが語った、そんな哲学じみた話を思い出していた。
敵は言うなれば形のない形だ。何を持って撃破とするか――言うまでもなく、現世に干渉できなくなった時点で、である。
つまるところ、やることは変わらない。ぬいぐるみを破壊すればいいのだ。
光星は『七つ星』と名を付けた蟲笛を吹く。すると軽やかな音色と共に煙が立ち上がり、そこには二体の巨大なトンボが現れていた。
その名はメガネウラ。太古に滅びた、世界最大の昆虫である。
新たな技に闇が反応する。うぞうぞと暗い地下室を這って、光星の笛めがけて殺到する。
「そりゃ、そう来るだろうな!」
光星のユーベルコードの弱点。それは召喚する笛そのものだ。
実際、破壊されると途端に制御を喪うことだろう。
そのための二体だ。
一体はぬいぐるみに向かって飛ばし、依り代を攻撃する。そしてもう一体に光星本人を守らせる!
飛び込んでくる闇を、メガネウラが果敢に跳ね返す。防ぎきれなかった分は自分で回避し、出来た隙を狙ってイレイザーレーザーの荷電粒子砲を撃ち込む。
「やれやれ、セットが崩れちまった」
光星はメガネウラの限界を的確に見極め、消滅する前にいったん離脱する。一息吐くと、たらりと汗が頬を伝う。
「絶対許さねぇからな」
軽く言いながらも、その目は闘志に燃えていた。
成功
🔵🔵🔴
刑部・理寿乃
一先ずユーベルコード発動。
竜の楽団が奏でるのは『ひゃくものがたり』のOPのオーケストラver。
ボス戦でOPが流れるのはテンション上がりますよね。
さて、敵はユーベルコードを阻止してくるでしょう。
竜の楽団は戦う力がないのが弱点だと思う。でも、回避や空を飛べます。竜なので。
楽器によっては自由に動けないのもいるでしょうが、私が第六感で攻撃を察知し、ダッシュ&見切って武器受け。ついでにカウンターで守ってやればよいのです。
それに一般人を盾にような奴は逆に鋼糸を使って盾にしてやれば良いのです。
後は強化された剣でぶった斬ってやりましょう。
――何者にもなれない。
度重なる攻撃によって、既にぬいぐるみは崩壊寸前だった。市販のぬいぐるみと考えればあり得ない耐久力だが、つまりはそれがあの『邪悪』の本体ということなのだろう。
「そろそろとどめです!」
刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)はそう叫ぶと、楽器を持ったたくさんの竜を呼び出した。
指揮者がタクトを振ると、楽団は覚えのある曲を奏で始める。
――これは、あの『ひゃくものがたり』のオープニングテーマだ。
「ボス戦でオープニングが流れるとテンション上がりますからね」
壮大なオーケストラアレンジを背に、猟兵たちのボルテージが上がっていく。
それでも敵は黙っているわけがない。蠢く闇が竜の楽団めがけて飛びかかってくる。
ヴァイオリンやオーボエなどはまだ自前で避けられる。しかしコントラバスやパーカッション楽器はそうはいかない。
「弱点は『戦闘力がないこと』ですか……!」
この手のカウンター能力は、『弱点を実証』することで封印を成立させる。ならば、当てさせるわけにはいかない。
大型の楽器を狙う不埒者には、理寿乃自身が割り込んで攻撃を弾く。
その直感と反射速度を以て割り込み、余裕があれば攻撃を返す。
そうしているうちに、いよいよ敵の存在感が揺らいできた。
ぬいぐるみはもはや首がもげる一歩手前である。
そして楽団の演奏はサビに入る。勇壮に盛り上げるアレンジがなされたそれは、まさに今の状況にぴったりだった。
「トドメ、いきましょう!」
理寿乃の声と共に、猟兵たちは攻撃を合わせる――!
後日談。というか、今回のオチ。
『ひゃくものがたり』はスケジュールの遅れが出たものの、最終話をネット配信にすることで事なきを得た。
終わってみれば綺麗な大団円であり、さらに続編の制作も示唆された。スポンサーの一つであるホビー企業が降りたが、そこに注意を払う視聴者は少なかった。
アニメは次のクールが始まっており、荒らし騒動もすっかり過去のものである。
怪談は続く。よくある話の種として消費されていく。
――ねえ、知ってる?
ただの創作は、今日もどこかで語られる。
成功
🔵🔵🔴