皐月空に花満ちる
●とおいむかしのものがたり
アックス&ウィザーズに伝わる、数多の逸話。
帝竜ヴァルギリオスを滅すべく、群竜大陸に集った冒険者たち。
勇敢なる其の姿勢は、死して尚、勇者と呼ばれる存在と也て、伝承として語り継がれた。
時を経ても、勇者の伝承は廃れる事無く、各地に小さく根付いている。
そして、現在。
群竜大陸は、帝竜ヴァルギリオスと共に再び世に現れたのだと言う。
けれど、其処へ到るまでの道筋は、未だ不明である―。
此れは、そんな伝承の一つを追い求める物語。
人里離れた森の中。
森の、奥の奥。底まで透き通る、澄んだ水。
こんこんと湧き出る泉は、枯れる事無く神秘なる水を湛え流るる。
嘗て、群雄大陸に向かう勇者の一人が、水不足に悩む村を救うべく祈りを捧げた泉だと言う。
―長い年月を経て、近隣の村は無くなってしまったけれど。
其の泉は水の透明度はさることながら、周囲を木々に囲まれた此の泉はある一定の時期になるとその様相を変える。
緑に覆われるはずの視界が、一面の薄紫や白等の淡色に替わる。
自生している樹が一斉に花を咲かせるのだという。
そうして、其処に眠る勇者の伝承なる泉が、今静かに狙われていた。
●見上げた先に
眼前に差し出されたるは、やや大き目な植木鉢。藤の花が、鮮やかに咲き誇っている。
「…報告。アックス&、ウィザーズで、事件が、起こります」
抱えていた植木鉢を、手近な机に置くと神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)は静かに語り始めた。
幾千と勇者の伝説が残るアックス&ウィザーズ。所在の掴めぬ群竜大陸を探す為には、勇者の伝説を探すのが一番の近道なのだという。
「…情報。…神秘の、泉、と呼ばれる、場所に、勇者の、伝説が、あるよう、なのですが」
―神秘の泉。永久に枯れぬ、澄んだ泉と、豊かな自然に覆われた場所。
「…好機。…その、泉、なのですが、今の時期に、なると、木々が、満開の、花を、称える、そうです」
空を見上げれば、広大な藤の花で埋め尽くされる。
遥か昔、誰かがこう呼んだ。『花天井』と。
「…皆様には、この場所で、勇者の、伝説に、ついて、探して、いただければ、と、思います」
勇者へ感謝の念を込めて、嘗て在った村の人間が石碑や祠を残しているかもしれない、と。
そんなに目立たないものではないし、花天井を愛でるでも泉で休みながら探すでもいいと蒼は告げる。
年に一度しか見られない風景。
―群竜大陸へ渡ったとされる勇者も、同じ景色を見たのだろうか。
ぺこり、と小さく頭を下げると、蒼は転送の準備をするのだった。
幽灯
幽灯(ゆうひ)と申します。
今回は、アックス&ウィザーズのお話をお送りいたします。
マスターページの雑記部分にプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
お手数ですが、一度マスターページをご確認くださいませ。
●1章
藤の花天井を眺めたり、泉で涼んだりしながら、勇者の伝説を探しましょう。
隅にちんまりと伝承についての物がありますので、楽しみながら片手間に探してください。
●2章
戦闘は夜となります。
この場を乱そうとするオブリビオンの痕跡を発見、警戒してください。
●3章
集団戦です。この場に集う、何かとの戦闘になります。
ご一緒する方は「お名前」か「ID」を記載してください。
また、蒼をお誘いする場合も、その旨をプレイングに記載してください。
それでは、良き冒険となりますよう。
第1章 日常
『神秘の泉でのひと時』
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POW : 泉で泳いだり、水を飲んでみたりする。
SPD : 泉やその周囲に咲く植物を調べたりしてみる。
WIZ : 泉の畔で休みながら、景観や空気を楽しむ。
👑5
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●花天井
まるで、絵画を切り取ったような場所だった。
透き通った水は水底を移し、差し込む光が煌いて。
泉までの道には、一面の藤の花が空へと広がる。風に揺れる花が、淡く甘い香りを漂わせた。
木々の騒めき、鳥の鳴き声。
静寂なる空間が、泉の神秘さをより一層引き出しているよう。
嘗て、此処と訪れたとされる勇者は、この景色を見て何を思ったのだろうか。
さあ、探索の時間の始まりだ―。
シビラ・レーヴェンス
緑と土の匂いが凄いな。白と灰色に支配された私の故郷とは真逆だ。
…日差しも…暖かい。この太陽の熱も故郷では感じられなかった…。
こんな私の感慨よりも今回の仕事は勇者に関する伝承を探す、だったな。
伝承か。重要度が高いほど巧みに隠すものだが。さて…。
泉自体を調べてみる。勇者が祈った泉だしな一番怪しい。
まずは文字が刻んであるか直接泉の底を覗いてみよう。
次に泉の水面が陽の光に反射した先を探してみる。
泉の底が魔鏡のような仕組みになっているかもしれないと考えてな。
的外れの場合は泉の周囲を手探りで丹念に調べてみよう。
藤が気になる。傷つかないように注意しながら調査しよう。
最後は伝承の勇者のように泉に祈ってみるか。
苔生した土と新緑の草木の香りがふわりと薫る。
辺りを物珍しく見渡しながら、シビラ・レーヴェンス(ダンピールの電脳魔術士・f14377)は故郷を思い出す。
極寒の地に生まれ落ちた彼女が目にしてきたのは、白と灰色。寒々しいあの場所は、太陽の光など滅多に差さなかった。
木々の隙間から差し込む光は、じんわりとした熱を彼女へ伝えた。こんな、色に溢れた世界があるなんて、あの時のシビラは知らなかった。
見た目こそ幼いけれど、ダンピールたるシビラはゆうに数百年の時を生きている。
もう、あの頃の、色彩の無い世界しか知らない彼女ではないのだ。
小さく息を零す。
「こんな私の感慨よりも今回の仕事は勇者に関する伝承を探す、だったな」
足取り緩やかに、シビラは泉へと向かう。
泉自体は大きくなく、彼女の足でも一刻程で一周する事が出来た。
一心に、泉を見つめながら歩くが、特に目立った物は見つからず。
泉を見つめていた金眼をそっと上に向ければ、さわさわと風に揺れる藤の花。
低い位置にある花に、そっと触れてみる。
このように集団で自生しているのだ。魔術的な要素が働いてないか、気になる部分は在った。
其れを差し引いても、植物好きの好奇心が勝った。
優しい、甘やかな香りが広がる。知らずのうちに口角がうっすらと上がる。
花の色、形、香り―。ゆっくりと観察すれば、知識欲は満たされたのか、再び探索へ戻る。
ふと、泉と木々の境目に、小さな石碑が視界に映った。
そっと近づけば、擦れているが、小さく文字が刻んであった。
「…祈り、…加護…」
そっと石碑に触れ、読み取れる部分を指でなぞる。
此れは、手掛かりの一つになるだろうか―。
そう思案しながら、シビラはそっと空を見上げるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ヒナ・ローレンス
WIZ
まるで自分の周り全てを花に囲まれているようで、とても素敵な場所ですね。
今の時間も綺麗ですけれども、夜になればまた違った雰囲気を楽しめそうですね。
昔この辺りで水不足が起きていたなんて、今では信じられないです。
この景色を遺してくれた勇者さんに感謝しませんと。
とりあえず辺りを散歩してみましょう。
目当てのものが見つからずとも、景色は楽しめますから。
村はどのあたりにあったのでしょう。
長い時を経て朽ちているでしょうけれども、辺りに日用雑貨などが見つかれば、かつて人の居た場所が分かりやすくなるのですが……
【第六感・失せ物探し】で勘に従って行動してみます。
周囲をぐるりと見渡せば、淡色の藤が所狭しと咲いている。
其れは、過去の、小さな部屋と空を切り取った窓しか知らなかったヒナ・ローレンス(今はまだ小さな光・f06137)の心を小さくざわつかせた。
陽の光を浴びる花も、生き生きとして美しいけれど、きっと夜になれば相応しい姿を彩るのだろう。
今はもう存在しない、遥か昔に在ったとされる村。
こんこんと水溢るる泉と、豊かな樹々を見れば、水が不足していたという伝承はにわかには信じられない。
でも、それらは全て過去の事。真実を知る術は、無い。
けれど、事実がどうであれ、この景色を残してくれたものが居る事は事実。泉に向かい、ヒナはそっと祈りを捧げた。
美しいものを見せてくれた、感謝の気持ちを込めて。
そうして、ヒナは泉へ視線を向ける。透き通る水は、陽の光を受けてきらきらと煌めている。
緩やかに泉の方へ足を向けると、ゆったりと歩き始める。
何か見つかれば儲けもの。例え、見つからなくても―。
(景色は楽しめますから)
心の中で、言葉を落とす。
爽やかな風が、新緑と花の香りをヒナへ届ける。其れは、何処か芽吹きの薫りにも似て。
景色を楽しみながらも、ヒナの視線は観察する事を忘れない。
村の位置は分からないけれど、何か手掛かりがあればと、空色の瞳を凝らす。
ふと、何かに呼ばれた気がして、そちらへ歩み寄る。
土に埋もれているが、僅かに頭を見せている其れを拾い上げる。
―木で出来た、小さな筒。
けれど、其れはヒナの手の中でボロボロとその姿を崩した。形からして、水筒だろうか。
もしかしたら、村の住人が使っていたのかもしれない。
まだ、探せばあるかもしれないと、ヒナは再び泉の外周へと歩を進めるのだった。
成功
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月藤・紫衣
縫さん(f10334)とご一緒させていただきます
これは、見事ですね。
故郷の藤にも劣らないくらい美しい。
……ふふ、この月藤というのは母の名なのです。
でも、そうですね…私と母の共通点でもありますから…私の花だと、そう言っていただけて嬉しいです。
私みたいなんてそんな…私の方が藤に憧れがあるんです、だから藤が私にではなくて私が藤に、だと思います。
でも…ありがとう、縫さん。
ちょっとした宝探しみたいですね。
縫さんを追いかけつつ木々の生え方や植生などから【情報収集】しましょう。
どういったものであれ、当時はきっと村人が通うこともあったでしょうし…そうなると歩きやすく、迷いにくい場所にあるとは思うのですが…。
真幌・縫
『しーさん(f03940)』と。
藤のお花が咲いてるって聞いたからしーさんと一緒に行きたかったんだ♪
しーさんは「月藤」ってお名前でしょ?
だからしーさんのお花だなぁって!
(とっても素敵な閃きだと言うように胸を張って)
えへへ、藤の花ってしーさんみたいに綺麗だねぇ♪
勇者様の伝説も見つかるといいなぁ。
石碑なのか祠なのか…どんな物でどんな形なのか…分からないけれど探すのはちょっと楽しいかも。
じゃーん!これはペンデュラムです!
探し物をする時に使うといいらしんだけど…。
【失せ物探し】【地形の利用】
たぶん…こっち!
はらりと一つ、藤の花弁が地へと舞う。
ふと上を見上げれば、空一面に咲く藤の花。
ぴこりと猫耳を揺らす真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)は、傍らを歩く月藤・紫衣(悠々自適な花旅人・f03940)へ笑みを向ける。
「藤のお花が咲いてるって聞いたからしーさんと一緒に行きたかったんだ♪」
何時もの眠そうな表情は何処へやら。朗らかに少女が笑う。
「これは、見事ですね。故郷の藤にも劣らないくらい美しい」
藤咲き乱れる故郷の森を思い出し、紫衣が空を見上げる。故郷を離れて、幾年月。今も、あの森は満開の藤の花で彩られているのかと、少し懐かしく思う。
それにね、と縫が朗らかな笑みを浮かべて言葉を続ける。
「しーさんは”月藤”ってお名前でしょ?だから、しーさんのお花だなぁって!」
えへんと胸を張って告げる縫に、紫衣の口角が僅かに上がる。髪に差した、藤の簪がしゃらりと揺れる。
「……ふふ、この月藤というのは母の名なのです」
母との共通点。血の繋がりの証明―。
「…私の花だと、そう言っていただけて嬉しいです」
表情が乏しい彼が、ゆるやかに笑んでいる。其の姿を見るだけで、縫の心が温かくなる。
「えへへ、藤の花ってしーさんみたいに綺麗だねぇ♪
そんな言葉に、思わず目を瞬かせる。一陣の風が吹き荒れ、木々を揺らす。
さわさわと、揺れる藤を見上げながら、紫衣は花へと思いを馳せる。
「私みたいなんてそんな…」
藤の花に憧れた。そんな花のように在ろうと思った。でも、真っ直ぐな気持ちをぶつけられて、内心嬉しく思う。
だから。素敵な言葉をくれた少女へ。
「…ありがとう、縫さん」
笑みと共に、礼を告げる。向けられた笑みに、縫もふわり微笑んで返すのだった。
藤の花を愛でながら歩みを進めると目の前に広がる、神秘の泉。
きょろきょろと辺りを見回せど、目立った手掛かりは未だ見えず。
まるで、宝探しのようだと縫は思う。形の分からぬものを探すのは大変だけれど、探す工程が楽しいのだと。
「ちょっとした宝探しみたいですね」
同じ事を思ったのか、紫衣が言葉一つ。大きく頷き返した縫が取り出したるは―。
「じゃーん!これはペンデュラムです!」
紅石英のペンデュラムを垂らし、動きを確認する。真剣な表情で、前を歩く縫の後ろを負いながら、紫衣もまた情報を探る。
嘗て、村があったのであれば、通り道が存在したはずだと。人が通れば、地は固まり、草は避け、道が出来る。
痕跡が無いか、周囲を見回す。けれど、村が存在したのは遥か昔。嘗ては在っただろう痕跡も、今となっては見つけられなかった。
「たぶん…こっち!」
前方を歩いていた縫のペンデュラムが大きく反応する。
示す方向へ向かえば、木々の隙間に隠れるように建てられた小さな祠の姿が見つかるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アテナ・アイリス
勇者の伝説の手がかりを探すために、泉の周りを散策しながら探しますわ。
歩き疲れたら、泉のふちに座って足だけ水につけて休憩をします。
お弁当を作ってきたので、周りの仲間と一緒にいただきましょうか。
そこで、いろいろ情報交換をしますね。【魅惑】【存在感】【コミュ力】
「手がかりってどんなものなんでしょうね。」
「ちょっと一休みですわね。」
「たくさんあるから遠慮なく食べてね。」
「そういえばあの辺りはまだ見てませんでしたね。いってみようかしら。」
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。
アメリア・イアハッター
花の天井、花の空!
沢山の世界の空を見てきたけど、花の空は初めて聞いたなぁ
うー、待ちきれない!
早くその泉に行こう!
泉に着けば、上見て下見て上を見て
空の花畑を見れば、自分が立っているところが実は空で、空中で逆さになって地上の花畑を見てるんじゃないかと勘違いしちゃうかも
そのあとはもう、しばらくは石碑の探索は忘れちゃうよね!
すごいすごいと花天井を見ながら地上を駆け巡り、いろんな角度から花天井を眺める
足元は疎かになっちゃうでしょうけど、犬も歩けばなんとやらってね!
最後は我慢できずにUCで空へ
すぐ近くで花天井を眺めよう
宝物を見るように、そっと愛でて
あ、そういえば石碑!
いっそ、花天井の中に潜んでないかなぁ
泉へ藤の花弁が一つ落ちる。其れは波紋となり、泉の水を小さく揺らした。
見上げれば、小さく揺れる藤の花天井。アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)とアメリア・イアハッター(想空流・f01896)は共に泉の周辺を散策していた。
幾多の世界の空を見てきたけれど、花に溢れた空を見るのはアイリスも初めてのよう。
待ちきれない、と足取りも僅かに早くなる。
「早くその泉に行こう!」
此処へ着くまで、それなりに歩いてきたアテナも同意を示す。時折、頬を撫でる風が火照った体に染み渡る。
折角なので、そっと泉の水に触れれば、程よい冷たさで、思わず笑みが浮かぶ。
「少し、休憩しましょうか」
持ってきたランチバッグを掲げれば、アメリアの顔に笑みが浮かんだ。
疲れた足を泉に浸けて、そっと空を見上げる。視界一杯に映る藤の花は圧巻だった。
ふわりと優しくも甘い香りが鼻を擽る。その香りを、胸いっぱいに吸い込めば、何処か清々しい気分。
其れとは別に、空腹を誘ういい香り。アテナが持参したお弁当の準備が終わったようで、アメリアの視線も自然と其方へと向く。
食べやすいようにと作られたサンドイッチは、彩りもさることながら、とても美味しかった。
「たくさんあるから遠慮なく食べてね」
隣で、サンドイッチを頬張るアメリアを見て、アテナが微笑み告げる。
そうして、のんびりとした時間を過ごしていれば、話も弾む。
「手がかりってどんなものなんでしょうね」
サンドイッチを一口頬張りながら、アメリアは僅かに思案する。
手がかりがどんな物かは分からないけれど。
「この景色を残してくれた勇者にはありがとうって伝えたい!」
その言葉に、瞬き一つ。しばらくして、小さな笑い声が二つ、周囲へと響いた。
泉に映る、藤の花。まるで、空と地上が逆転したような錯覚を起こす。
ランチタイムを終え、再びの探索。
花の天井も綺麗だけれど、大地に落ちた藤の花弁がまるで紫の絨毯のようで、其れもまた二人の目を楽しませた。
しばし、泉の周辺を探索していた二人だったけれど、ついにアメリアの我慢の限界が訪れた。
「ちょっと、空から何かないか探してみるね!」
そう告げるよりも早く、アメリアの身体は空を駆ける。そして辿り着いた空の上。
上から眺める藤の花も、宝石のようにきらきら輝いていたけれど、空から見る、緑が混じった藤の花もまた、別の姿を魅せる。
そっと花に手を伸ばして触れてみたりして。そんな様子を、地上からアテナが微笑ましく見守っていた。
地上へ降り立ち、アメリアが空から石碑は見つからなかったとアテナへ告げた。
目立った手掛かりは見つからなかったけれど、心に刻む想い出がまた一つ、二人の頁に綴られたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミント・ベルガモット
リュカ(f02586)との出会い
※アドリブ歓迎です
伝承探しのはずが気づけば空腹に
ふと見つけた赤い実にかぶりついたら悶絶
苦くて酸っぱいってなんだよ!
色だけ美味そうにしやがって!
等、悪態をついて泉の水をぺろぺろしてたらリュカが居た
なんだよ見世物じゃねえぞぉ(ぐったりのまま見上げて睨む)
んー? オレはレミントゥニエッタ、ミントとでも呼んでくれ
…お姉さんだぁ!?
いや、違わねぇけどよ、呼ばれ慣れてねぇから、あー…よろしくな、リュカ!
ぐったりした経緯を話すと昼食を勧められ
有難ぇ! あの実を食べた後ならなんだって美味いぜ!
花天井か、寝転がって見ると凄ぇな
お、珈琲どんとこいだぜ、お姉さんだからな!(ふんぞり)
リュカ・エンキアンサス
※アドリブ歓迎
ミントお姉さん(f18542)に出会う
藤の花天井か…
この淡い色は結構嫌いじゃないんだよな
丁度此処は涼しいし…
泉のほとりで休みながらのんびり花でも眺めてるよ
(思わず銃を構える)(何か来た)
…ああ。はじめまして。俺はリュカ
あなたは?
そう。じゃあ、ミントお姉さんだね
よろしく
…ええと
俺の昼食でよかったら、食べる?
といっても携帯食料しかないんだけど
(わりと、まずいが、味音痴なので、自分は気にしない
そ、よかった。
じゃ、せっかくだからお昼ご飯にしようか
ここだったら涼しいし、花も綺麗だし
お湯を沸かして珈琲を入れよう。飲める?無理なら紅茶もあるけれど
ゆっくり花見でもしながら自己紹介をしあおう
さくり、と踏み締めた大地が小さく音を立てる。空を見上げれば、白藤色が視界一杯に広がる。
足取りはそのままに、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の天色の瞳は花天井を見つめていた。
(この淡い色は結構嫌いじゃないんだよな)
幾多の戦場を渡り歩き、目にした景色は数え切れぬ程。けれど、其れが穏やかな景色となれば、数えられるのは果たして如何ほどか。
甘い香りを含んだ風が頬を撫でる。歩き続けて、火照った頬には心地良い。首元を覆う夜半色のマフラーを少し緩める。
風に混じる、水の匂い。件の泉は、もうすぐ其処に―。
―好奇心は猫を殺す、とは言うけれど。
空腹に負けて齧った実が、こんなにも不味いとは誰が予想しただろうか。
確かに実は熟れていた。つるりと輝く、赤い実。けれど、ミント・ベルガモット(人形と躍る銀猫・f18542)は気付くべきだったのだ。
別の色の実は鳥が食んだ跡があったけれど、赤い実は一切手が付けられていなかった事を。
「…苦くて!酸っぱいって!なんだよ!」
色だけ美味しそうにしやがって!不味いなら不味いって言えよ!
ひたすらに悪態をつきながら歩いていると目の前には、澄んだ水を湛える泉。もう、口の中が限界だった。
―こうして、二人は出会った。
ふらふらと現れた影に、リュカが反射的に銃を向ける。が、露わになった姿に、思わず目を見張る。
けれど、一心不乱に泉の水を飲むミントは、リュカの視線に気付かず。ようやく、口から苦味が消えた処で、此方を見つめる存在に気が付く。
「なんだよ見世物じゃねえぞぉ」
ぱちくりと、瞬き一つ。相手に敵意がない事を感じ取り、リュカが銃を降ろす。
とりあえず、害意はない様子。
「…ああ、はじめまして。俺はリュカ。…あなたは?」
ふるりと銀の毛並みを揺らし、ミントが応じる。
「んー?オレはレミントゥニエッタ。ミントとでも呼んでくれ」
「そう。じゃあ、ミントお姉さんだね。よろしく」
黒手袋を外し、リュカがミントへ手を差し出す。
「…お姉さんだぁ!?いや、呼ばれ慣れてねぇから。あー…よろしくな、リュカ!」
何処かこそばゆいような表情を浮かべ、ミントも手を差し出せば。
―ぐぅぅぅうぅ!!!
盛大な腹の虫が周囲へと響き渡った。
「…ええと」
「…腹減った…」
白い毛並みのおなかをさすりさすり。
「俺の昼食でよかったら、食べる?」
リュカの申し出に、ミントの瞳が輝く。持っているのは固形の携帯食料だけれど、とも付け足す。
赤い実に比べれば、何だって美味いさ、とはミントの弁。
互いに、昼食がまだであった為、その場で休憩となった。
準備を始めるリュカの横で、ミントがごろりと寝転がる。
下から眺める藤の花は、また何処か様相も違って見えて。思わず、小さく感嘆の声。
「珈琲、飲める?無理なら紅茶もあるけれど」
準備をする手は止めず、微笑ましいものを見るように天色の瞳がミントを見やる。
「お、珈琲どんとこいだぜ、お姉さんだからな!」
からからと笑いながら、ミントが応えれば、手際よくリュカが珈琲を二つ、カップへと作る。
周囲に、香ばしい珈琲の薫りが漂う。
一息ついたら、改めて互いの話を始めよう。此処で出会ったのも何かの縁。
出会えた今日に、ありがとう。
そんな二人の姿を、風に揺れる藤の花がそっと見守っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴェル・ラルフ
陽(f03238)、サンディ(f03274)と
図鑑でしか見たことのない、藤の花。
花天井、きっと荘厳なんだろうな。
年に一度しか見られない花を、ふたりと見れるのが嬉しい。
…なんて、美しい。
仄々とした、藤の花。
眩しいのは苦手なんだけど…薄様を透かしたような日の光は、優しくて、いいな。
サンディはすっかり見とれてるね。
呼ばれたらにっこり微笑んで
「うん。…つい、見とれちゃうね」
陽もはしゃいでるなぁ。
ふふ、風に揺れる藤の花が、陽に手招きしてるみたい。
梅雨が明けたら、秋になるまで僕は眩しいところに来れないから。この光景を、目に焼き付けておきたい。
と、石碑みたいなやつね。
見逃さないようにだけ気を付けとこっと。
サンディ・ノックス
陽(f03238)、ヴェル(f05027)と一緒に
空が花で埋め尽くされるってどんな感じなんだろう、想像もできないや
俺、藤の花自体知らないんだよね
どんな形なのかな
綺麗だ、それに、圧倒される
まるで命の力が形を持ったみたいだ
見とれるとつい足が止まってしまうね
「ごめんごめん!陽が花好きの理由、わかってきた気がするよ」
陽に声をかけられたら小走りで隣まで行き微笑みかけてヴェルも呼ぶ
「ヴェルもほら、こっち来なよ!」
不思議なことに一人で見るのと三人で見るのって違って見えるんだ
目的のものも探さないとね
この見事な眺めを邪魔しないようにしている気がする
比較的目につく場所に小型のものがあるかなって思うけど、どうかな?
縁城・陽
サンディ(f03274)ヴェル(f05027)と一緒に
藤の花ってすだれみてーに綺麗に咲くよな…
薄紫色、藤の色。…見ごたえありそうだぜ。
石碑や祠、あるとしたらこの藤に囲まれたところ、とかか?
周辺を眺めつつ探していこーか
せっかくの景色だし3人で一緒に歩くぜ
しっかしやっぱ綺麗だなー……
手を入れなくてもここまでのものが見られるってすげーよな
思わず軽く走ってくるっとその場で一回転
「おせーぞー!見とれてんなよー!」
にっ、と笑って止まってるサンディに声をかけ
ヴェルが柔らかい日差しを眺めているのを微笑んで見守る
へへ、こーやっていー景色みるだけでもたのしーな!
一面の、藤の花。其れが、見渡す限り咲いている光景は、まさに圧巻だった。
図鑑でしか知らない藤の花。絵で見るのと、目で見るのとでは、迫力が違う。思わずヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は息を呑んだ。
空を見上げても、藤の花が覆いつくす。初めてサンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)は藤の花を目の当たりにする。
一つ一つは小さいけれど、其れが連なって、力強い花を咲かせている姿には目を見張る。
唯一、藤の花を知っている縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)も、視界を埋め尽くす薄紫色に目を奪われた。
揺れる花の姿を美しいと思う気持ちは三人一緒だけれども、其れよりももっと共通する思いが、一つ。
―この景色を、三人で見れた事が何よりも嬉しい、と。
木々の隙間から差し込む光は、ヴェルの瞳には眩しく映るけれど、揺れる藤が陽の光を隠そうとそよそよと揺れる。
強い日差しは苦手なヴェルだけれど、藤の甘い香りが漂うこの空間の日差しだけは、何処か優しく感じた。
傍らを歩くサンディの足が、ついに止まる。自生しているが故に、花の高さも、大きさも、品種すらもばらばらだけれど。
力強く咲き誇る花の姿は、命そのものを感じさせた。
後ろを歩く陽が、友たる二人が立ち止まっている事に気が付く。悪戯を思いついたように、軽く助走を着け追い抜く。
くるりと振り返り、にやりと笑み一つ。
陽が二人の姿を金眼に映せば、大きく手を振って呼びかける。
「おせーぞー!見とれてんなよー!」
思わず我に返れば、サンディは己が藤の花に見惚れていた事に気が付く。
「ごめんごめん!陽が花好きの理由、わかってきた気がするよ」
今を精一杯に生きる、一つの命のカタチ。其の一瞬の輝きは、とても美しいものだと分かったから。
陽の隣へ駆けよれば、未だ空を見上げるヴェルへと声を掛ける。
「ヴェルもほら、こっち来なよ!」
ゆるりと琥珀の瞳が、サンディと陽の方へと向けられる。其処には、暖かな、微笑みが一つ、二つ。
じんわりと心に灯が燈る。
「うん。…つい、見とれちゃうね」
柔らかく微笑んで、二人の元へと歩を向ける。
日差しが苦手なヴェルにとって、照りつける太陽が強い夏は天敵である。傍らを歩く、親友たる二人と出かけられるのも、しばらくお預け。
だから、この光景を目に焼き付けようと、再び天を見やる。
「また、三人で出かけよう」
そう、呟いたのは果たして誰だったか。
しばしの間、三人は藤の花天井を愉しむのだった。
そうして、泉の前に辿り着く。
澄んだ水が、陽の光を反射する為、ヴェルはあまり泉は近づけない。
その意を知らず汲み取ってか、自然と三人の足取りは木々の境目へ。
勇者が残してくれたというこの景観を、村の人間は壊さないだろうとサンディはアタリを付けて。
藤の木々の隙間に、手掛かりがないかと陽が目を光らせる。
目線を動かし、ヴェルが石碑が無いか周囲を眺める。
探し始めて、どれくらい経っただろう。
ふと、陽の瞳へ、樹洞が映った。人が入れそうなその樹洞に、何かが見える。
傍らを歩く二人へ、其れを告げれば、当然其方へ向かう事となった。
そっと覗いた樹洞の中。小さな石碑が佇んでいた。
「…これかな?」
長い年月が経ったからか、石碑には苔がびっしりと張り付いていた。
サンディが苔を掃うと、微かに文字が読み取れた。
「えっと。…泉の、勇者、……忘れぬ、よう、…駄目だ、これ以上は読めないや」
目を凝らしてヴェルが文字を読み取るが、長い年月、手入れもされずに在った石碑はほぼ朽ちかけていた。
けれど、此処に勇者が現れたという伝承は、どうやら本当の事のようだった。
ひとつ、手掛かりを見つけられた事に、安堵の息が漏れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『夜襲に備える』
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POW : 体力に任せて寝ずの番をする
SPD : 罠や警報器を仕掛ける
WIZ : 地形などを利用して迎撃態勢を整える
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●迫りくる影
鮮やかな藤の花天井。透き通る、泉の水。
嘗て、この地を訪れ、村を救った勇者は泉の勇者と呼ばれ、称えられた。
長い年月を経て、村は滅んでしまったけれど、村人の努力の賜物か。
泉が荒らされる事は無かった。
そう、今までは。
目立たぬ、泉の端の方。
折れた枝と、散乱する藤の花弁。
近くには、巨大な鳥の羽根。
何者かの痕跡が、ひっそりと、ひっそりと残されていた。
ただの杞憂かもしれない。
けれど、猟兵の勘が、この場を害する物の存在をひっそりと告げていた。
美しいこの景色を、汚すわけにはいかない。
ならば、何を為すべきか。
勇者が護ったものを、再び護る為に。
ヒナ・ローレンス
WIZ
羽根……この場を荒らしたのは大きな鳥でしょうか、それと他に何か翼を持つ何か?
どちらにせよ大きい相手には違いないでしょうし、放っておけませんね。
足跡など他の痕跡がないかどうかも探してみましょう。
花天井がどのように壊れているのかも確かめておきたいですね。
もし目立って何度も壊れされている場所があれば、相手が姿を現しそうな場所が特定できそうです。
羽根が落ちていた以上、上空から見て目立つ位置にいるのはよくないでしょうね…
近くに少しでも上空から身を隠せる場所か岩などがあればいいのですけれども。
落ちていた羽根を、ヒナがそっと拾い上げる。散乱した藤の花弁は踏み荒らされた様子はなく、綺麗な形を保っていた。
陽に透かして見れば、己の純白の羽根とは違い、ほんのりと淡く色付いているのが見て取れた。
(…この場を荒らしたのは大きな鳥でしょうか、それと他に何か翼を持つ何か?)
くるりと周囲を見回せば、藤の花弁が散乱しているのはこの付近だけのよう。
何か明確な目的をもってこの場を狙ったのか、はたまた偶然なのか。
現状だけでは何も分からない。
ならば、少しでも情報を―。
手掛かりを掴むべく、泉の周囲をゆるりと歩む。他の痕跡が残っていないか、目を凝らして。
そうすれば、先に羽根が落ちていた場所以外にも、藤の花弁が散っている場所が幾つか見つかった。
はらりと地に落ちる花弁は、何処か物悲しく見えた。
思わず、ヒナが藤の花天井を見上げる。
一面の藤の花天井から、小さく青い空が見える。―以前は、其処にも藤の花が咲き誇っていたのだろう。
けれど。大地へ散った、藤の花と折れた枝。其の残骸の近くには、先ほど拾った羽根と同じものが、もう一枚。
その時。僅かに太陽を覆っていた雲が、晴れる。
空から、一筋の陽の光が零れる。花天井の隙間が、一番大きな部分。
他とは違い、大きな羽根が無数に散らばっている。
此処が、羽根を持つものが現れる場所なのだろうか。見上げた空は広く、花天井に開いた穴が決して小さくない事を示していた。
相手が空を移動してこの場に現れるのならば、ヒナの姿は丸見えとなる。其れは悪手。
近くに身を隠せる場所が無いかと目を凝らせば、朽ちて傾いた樹木が目に映る。
其の陰に身を滑らせれば、すっぽりとヒナの身体を覆い隠した。
この場に現れるものが何か。ヒナはそっと、樹の陰から空を見上げるのだった。
大成功
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シビラ・レーヴェンス
罠や迎撃に用いる武器はこの場にあるもので作ろうと思う。
蔦や枝や石など考えれば色々と活用できるだろう。
害するモノは空を飛ぶ存在だと予想されるから適した武器を作る。
簡易的な投擲器や弓がいいだろうか。
弾は斜めに切った枝を数十本束ねた物を三十束くらい作っておこう。
茂みの中や樹の陰などのあまり目立たない場所に作る。
適当に設置せず有効な地形を割り出してから…だな。
ついでに侵入を知らせる物を作り仕掛けておこうか。
武器制作や設置や仕掛けの技術知識はゴーグルで調べる。
(【戦闘知識】【情報収集】使用)
今回は協力や連携をした方が有利になりそうだな。
(【暗視】【迷彩】【オーラ防御】【高速詠唱】使用)
アテナ・アイリス
泉の周りを歩いて巡回する。巡回しながら何らかの痕跡がないかどうかを調査する。
でも、できれば誰かと一緒に、夜の景色を見ながらだともっといいかな。
もし、誰かが発見したことがわかれば、UC「ディバイン・フェザー」を使い、高速移動することにより、現場に急行する。
そこで、光の剣を召喚して、敵が何者かを照らすようにする。
「慎重に行きましょう。」
「夜の風景もまたきれいね。」
「勇者はどんな思いで祈りをささげたのかしらね。」
「今行くわ!」
※アドリブや他の方との連携が大好きです。
アメリア・イアハッター
あー、サンドイッチ美味しかった!
ありがとね、アテナちゃん!
さて、お腹もいっぱいだし、石碑も他の方が見つけてくれたみたいだし!
起きる事件とやらにしっかり備えないとね!
とはいえ、木が折れて花が散って現場には鳥の羽
やっぱり敵は空からくる鳥なのかな?
となると、花を散らさないためには花天井の更に上で迎え撃つか、地上で迎え撃つかかなぁ…
とりあえず、さっき鳥に啄まれた木の実があるって聞いたから、それをとって地上に置いてみようかな
置く場所は、羽の落ちている付近にころころと
その下にUCで氷を貼って、食べに来たところをツルリ、と
私にできる罠はこれくらいかなぁ
後は木の上に飛び昇り、敵が来ないか警戒
きたら皆に伝えよう
自然の風景が心を、一時のランチタイムがおなかを満たす。
「あー、サンドイッチ美味しかった!ありがとね、アテナちゃん!」
にこやかにアメリアがアテナへと向き合い、礼を告げる。
「お口に合ったようで何よりだわ」
同じく、優しい笑みを浮かべてアテナが応じる。二人の間に和やかな空気が流れる。
けれど、此処からは猟兵の領分。美しいこの場を乱すものが在る。心休まるひと時を過ごした、素敵な場所。
事件が起きるならば、阻止しなければなるまい。二人からやや離れた場所で、周囲を見回すシビラも、心は同じ。
この場を狙っているものが何者であるか、明確に知る者は未だ居ず。
けれど、相手が何であれ、仲間と共に在れば、どんな強敵だろうと負ける気はしない。
高かった陽は落ちて、周囲は黄昏色に染まる。薄藤色の花が、夕陽を浴びて日中とは違う様相を見せる。
「慎重に行きましょう」
日も落ち、視界も暗闇に鎖す。緊張した面持ちで、アテナが背後の二人へと告げた。
共に周囲を警戒しながらも、アメリアがふと空を見上げる。無数散らばる、折れた枝と落ちた花と、羽根。
天から注ぐ夕陽が、大地を赤々と照らす。冷えた風が、花天井を小さく揺らした。
日が暮れる前に、罠作成に着手したのは、シビラだった。
例え、道具がなくとも、自然溢れるこの場所ではそのような心配は無用だった。
落ちている羽根から、相手は大きな鳥だとシビラは予想する。
ふと、アメリアは、道往く途中にあった木の実の存在を思い出す。鳥に啄まれた跡があっとその実を突いたのが、この場を壊そうとする元凶かは分からないけれど、別の鳥が啄んだのであれば、その実は鳥たちにとっては好ましい物なのだろう。
誘い出す道具と成れば、とアメリアは警戒に樹を登り、熟した実へと手を伸ばす。
枝や石、蔦を集めるシビラはこの暗くなるこの場を物ともしない。けれど、アメリアがふと下を見下ろせば、闇に覆われた―。
ふわりと、アテナの纏った聖なる光が青白く辺りを照らす。機の上からアメリアが地へと降りれば、光はゆっくりと収束し、やがて暗闇が周囲を包んだ。
「これ、使えないかなあ?」
そうして、羽根が落ちている付近にアメリアが近付き、熟した実を転がす。
此れでおびき出せれば儲けもの。現れなければ、別の手を考えればいいだけの事。
念には念を。木の実を転がした周囲を氷で覆えば、簡易的な罠の出来上がりだ。
うまくいけば、相手の姿勢を崩す事が出来よう。
其れを見たシビラが、先端を斜めに切った枝を、束ねた物を周囲へと張り巡らせる。
相手が鳥ならば、暗闇には弱かろう。仕掛けが見えないと踏んで、アテナと共に設置を終える。
先手を取れるように、もう一つ仕掛けを樹々へと張り巡らせる。
木々に張り巡らせた蔦が、藤の花天井を揺らせば、相手が現れた証拠。
後は、害する物が現れるのを待つのみ。
微かに風が戦ぐ。淡い色の藤の花は、存在を主張するように揺らめいては甘い香りを風に乗せる。
黄昏の光はすっかり地へと沈み、白い光が周囲を指し照らす。
「夜の風景もまたきれいね」
小さくアテナが呟くと、小さく頷く者と、返答を返す声。
―後は相手が罠にかかるのを待つのみ。
三人は、そっと物陰に隠れ、様子を伺うのだった。
この場を荒らす、相手の姿がみえるまで、後―。
成功
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ミント・ベルガモット
リュカ(f02586)と協力
※アドリブ歓迎です
この羽根…デカい鳥か
水飲みに来るだけなら良いんだけどな
藤の枝が花天井から落ちてきたとしたら、上から飛んでくるって事もあるか?
からくり人形の細工に使う糸を手に
罠でも張ってみるかってな、へへ
枝が折れてた辺りの木の何本かに
スカイステッパーで跳びながら糸を張り巡らせ
デカいのが飛んできたら網にかかるように
すっかり暗くなっちまったな
夜の見張りかぁ
あー悪ぃ、オレ夜更かしニガテなんだよー(ヒゲぽりぽり)
数日起きてられるって凄ぇなオイ!?
あぁ、見張り頼んだぜ。頭上にも気をつけてな
と言い残して夢の中へ
朝になる前に起こされたら
「にゃっ!?」
と寝ぼけた驚き声で毛を逆立てる
リュカ・エンキアンサス
ミントお姉さん(f18542)と
とりあえずは様子見だね
近寄ってくるものがいないか、確認して対処するしかない
罠はれる?
じゃあ、そういうのは任せた
流石に器用だなあって思いながらも自分の準備
俺は夜通し警戒する係り
俺は大丈夫だよ
数日は寝なくてもやっていける
んー…慣れかな
むしろこんなところだと、安心して眠れないから丁度いいんだ
野営の準備をして
お姉さんが起きてる間は話とかもするけれども、
眠そうになってきたら、無理しないように促す
一人になったらのんびり珈琲でも飲みながら
警戒はしっかりしておくよ
上ね、大丈夫、わかった
そっちも、ちゃんと起きてね
何かあったら、すぐにお姉さんのことは起こそう
…ほら起きて。起きてって
泉に浮かぶ羽根を拾ったのはミントだった。
しげしげと珍しそうに様々な角度から手にした羽根を見つめる。
「こんなデカい鳥、いるんだな」
くるくると、手の中で羽根を遊ばせながら、ミントは眼前に広がる泉を見やる。
「…水飲みに来るだけなら良いんだけどな」
澄んだ水は、黄昏の色を移して黄金に染まる。このまま行けば夜が更けるだろう。
ミントの傍らに立つリュカが、小さく頷く。
「とりあえずは様子見だね」
相手が鳥だと分かっていても、羽根一枚では種類を絞る事は難しい。
藤の花の散り具合や枝の状態から、時間はある程度経っているとリュカは察する。
この場に戻ってくるのも時間の問題である。だが、相手は、大きな鳥だ。
ならば、近寄ってくるのも目に見えるはず。そうして、対処するしかない、と。
「罠はれる?」
吟の毛並みが、夕陽と同じ色に染まる。ミントは一瞬考えたのち、頷きを返す。
からくり人形の細工に使う糸を、器用に空を蹴り、枝が折れている藤へと張り巡らせる。其の様子を見上げるリュカの瞳には、尊敬の色。
そうして罠を張り終える頃には、周囲はすっかり闇へと浸かる。
「すっかり暗くなっちまったな」
きょろりと周囲を見回せば、暗くなった世界。電子的な明かりは当然ながら無く、辺りは夜へと塗り替えられた。
後は、相手が現れるのを待つばかり。けれど、いつ戻ってくるかは分からない。
夜更かしが苦手だと、バツが悪そうに髭を摘まむミントへ、リュカが任せて、声を挙げた。
「俺は大丈夫だよ。数日は寝なくてもやっていける」
そんなリュカの言葉に、ミントは驚きを隠せない。
「どうすれば夜更かし出来るんだ?」
そんな純粋な問いに、リュカは小さく笑う。
「んー…、慣れ、かな」
旅人たるリュカには、野営の心得が勿論備わっている。警戒すべき何かがいるこの場で休む事は、神経が張り詰めてしまい出来ないのだろう。
―適材適所。そんな言葉がミントの脳裏に閃く。人には向き不向きがある。ならば、この場はリュカに任せよう、と。
そうして、迎えた夜。
他愛のない話を始めたのはどちらだったか。気が付けば、夜も更け、頭上には星が煌きを放つ。
小さく寝息を立てるミントを眺め、リュカは湯気の立つ珈琲をゆっくりと口に含む。勿論、周囲の警戒は忘れない。
「…頭上にも、気を、つけろ、よ…」
零された心配に、頷き一つ。ミントの寝起きが良い事を、リュカはそっと願う。
パチパチと焚火が爆ぜる音とは別に、何かが羽ばたく音が頭上より響く。
「…ミントお姉さん。…ほら、起きて」
小さな身体をそっと揺する。けれど、目が覚める様子は無く。
「起きてって」
先程よりもやや力を込めて、肩を揺すれば、びくりと肩の跳ねる気配が伝わる。
「にゃっ!…何だ?」
リュカがそっと口元へ指を当て、静かにするように告げる。
両手で口を覆ったミントが見上げた空の先―。
遠い空の上、羽ばたく鳥の姿が、小さく見えた。
成功
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月藤・紫衣
縫さん(f10334)と。
ここはもうダメですね…。
自然の中でもあることではありますが…折れてしまうと元に戻るのに時間がかかりますから。
せっかく美しく守られてきた泉と藤です…これ以上は荒らされないようにしなければ。
ふむ…縫さんの案いいですね。
大きな羽根がありましたから空から来るのかもしれません。
縫さんが誘き寄せる辺りを目安に回りの木々の枝と葉に【物を隠す】【ロープワーク】【罠使い】で敵を捕まえましょう。
鳥などを捕まえるにはロープなどの紐を絡めたり、羽を使えなくするのが一番で…!
す、すいません、縫さんにも羽根があるのに…大丈夫、縫さんの可愛らしい羽根にはこんなことしませんからね…?
真幌・縫
『しーさん(f03940)』と。
藤の花…もう荒らされてしまってる所もあるんだね花を散らしてしまうのはダメだけど枝を折ってしまうのはもっとダメ。
せっかくの綺麗なお花だし勇者様の伝説がある場所だから守りたいよね。
守るためにどうすればいいか…うーん…。
【地形の利用】でオブリビオンを【おびき寄せ】てどーん!…とか。ぬいが思い浮かぶのはこれくらいかなぁ。
しーさんは何か案があったりする?
しーさんみたいなお花ちゃんと守りたいからぬい頑張るね!
陽が沈み、空の色が変わる頃。
折れた枝を、何処か悲しそうな表情で紫衣が見つめる。
「ここはもうダメですね…」
血の通う生き物と違い、植物には自己を修復する力は無い。
だから―。
折れてしまった藤の枝が再び花を付ける事は無く、朽ちるのを待つのみ。原木も、新たな枝を芽吹かせるには長い時間が必要であろう。
それが自然の摂理ならば、仕方のない事と割り切れる。だが、眼前に散る花は明らかに外部の力が加わったもの。
彼の故郷の、彼を象徴する花、花が散るのは定めだけれど、折ってしまうのはきっと、許されない。
勇者の伝説がある場所だから、綺麗な花があるから。其れだけじゃない。傍らに立つ、藤の花に憧れる彼の為に、此の場所を守り抜こう。
これ以上、被害は広げないと縫は決意を新たにする。
「守るために、どうすればいいか…。…うーん」
きっと、相手は空からやってくる。―ならば。
「…オブリビオンをおびき寄せて、どーん!…とか」
自然を壊さないように、けれど、確実に相手を捕らえる為に、必要な事。考えが、纏まりそうで纏まらない縫の言葉を聞いて、紫衣が何か閃いたよう。
「ふむ…。縫さんの案、いいですね」
その為に、必要な事。この場を荒さないために、捕獲する事。
おびき寄せる場所に縫が検討を付け、その付近に紫衣が罠を張る。
樹々に負荷をかけないよう、なるべく太い幹にロープを張って、目立たないよう偽装する。
たくさんの葉が茂っており、物を隠すには最適だった。
「鳥などを捕まえるにはロープなどの紐を絡めたり、羽を使えなくするのが一番で…!」
張り巡らせた罠を見やり、仕掛けを説明する紫衣だが、ふいに言葉が途切れる。
「す、すいません、縫さんにも羽根があるのに…」
そして、傍らに立つ縫へ小さく謝罪の言葉を告げる。一方の縫は謝罪の意が分からず首を傾げる。
「…大丈夫、縫さんの可愛らしい羽根にはこんなことしませんからね…?」
紫衣が、優しく言葉を掛けるが、縫は知っている。目の前の藤の青年は、絶対にそんな事はしない、と。
気遣ってくれる言葉に、縫の心が温かくなる。だからこそ、今度は嗤ってほしいと小さく願う。
「しーさんみたいなお花、ちゃんと守りたいからぬい頑張るね!」
大丈夫。だって、ひとりじゃない。
―はらりと一枚。大きな羽根が空から舞い落ちた。
大成功
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縁城・陽
サンディ(f03274)ヴェル(f05027)と一緒に
鳥の羽……巨大鳥、か?大型の鳥退治、腕が鳴るぜ!
なによりこんな綺麗な場所、つぶさせてたまるかよ!
方針:罠を仕掛けて待つ
サンディの寝ずの番は先に仮眠しとくように言う
少しでも寝られたら大分違うしな
周囲を【ダッシュ】で走り回って二人が罠を仕掛けやすい場所探し
「あの辺、罠仕掛けとくのにいーんじゃねーか?」
場所を探しつつ二人の罠に使える素材がないか探しておく
見張りは深夜まではがんばるけど
罠の場所探すのに走ってるし、何より徹夜は苦手だからなー
サンディに言ってもらえたら、素直に任せて寝る
「んー……サンディくんに、おねがい、するね……おやすみなさい……」
ヴェル・ラルフ
陽(f03238)、サンディ(f03274)と
敵の正体は大型であることは間違いなさそうだね。大型なら捕獲は難しいだろうし…存在を見つけられる罠がいいかな。
うん、陽が探してくれた場所でよさそう。
サンディが集めてくれた情報も生かして。
あ、夜に見張りしてくれるサンディはここまで。ちゃんと寝てね。陽が見つけてくれた素材を生かして罠を張りにいこう。
それじゃ、定石だけど糸を張って端に鈴でもつけとこうかな。時間配分しつつ、可能ならカモフラージュと、糸を越えた着地点に穴を掘ろうか。
一応、罠を張る間も
【雄凰】、旋回して見張りを。
ふふ、陽はおねむだね。僕も、お言葉に甘えて休むよ。
でも、日が昇る前には僕も起きるね。
サンディ・ノックス
陽(f03238)、ヴェル(f05027)と行動
夜遅くなっても敵が来なければ俺が寝ずの番をするよと予め二人に伝える
その代わり罠準備中は少し体力を温存させてね
え、仮眠?あ、うん
…気を遣わせちゃったな
何かの痕跡を観察
羽根は鳥の種類に心当たりがないか
枝の折れ方から敵の来る方向が推測できないか等【情報収集】
陽が目星をつけた【地形の利用】して罠が発見されないような場所をヴェルに提案
仕掛けた罠は信用してるよ
でも皆で寝るのは二人も落ち着かないだろうなと思った
あ、陽の眠たいモードだ
ふふ、和むなあ
寝ずの番に特別工夫はしないけど
消耗を抑えるため、神経を尖らせる警戒はしない
起きてさえいれば罠の発動音に気付けるものね
空の色と共に、藤の花も在り方を変えて。其れがまた違った一面を魅せ、小さな発見となる。
そして、夜の帳が降りる頃。
折れた木の枝の中にぽつりと落ちていた大きな羽根を眺めながら、陽は未だ見ぬ敵の姿に思いを馳せる。
「…巨大鳥、か?大型の鳥退治、腕が鳴るぜ!」
陽の手元を見ながら、ヴェルもこの場を荒そうとするものの姿を見極める。
「敵の正体は大型であることは間違いなさそうだね」
羽根の大きさからして、相手の体躯は相当大きい物なのだろう。
もしかしたら、捕獲は困難かもしれない。捕まえられないのならば、どうするべきか。
考え込むヴェルの横で、サンディは羽根が落ちていた付近をじっと見つめていた。
落ちていた羽根は、サンディが今までに見た事のないもの。相手の種類は推測出来ないけれど、よくよく見つめれば分かる事がある。
枝の折れ方、落ちていた位置。それら全てを見て、相手の出方を推測する。
「罠を、仕掛けようか」
ぽつりとヴェルが言葉を落とす。捕獲が無理ならば、せめて相手の存在を見つけられるように、と。
枝が落ちた周囲を、陽が元気よく走り回る。勿論、ただ走り回っている訳ではなく、罠を仕掛ける場所を探しての事。
見つけたのは、空から陽の光が差し込む木々の境目。
空からも見やすく、下からも見やすい。
「あの辺、罠仕掛けとくのにいーんじゃねーか?」
手を振って声を掛ければ、ちょうど罠を作るための素材が集まったのか、ヴェルとサンディが駆け寄ってくる姿が見れた。
特に異論はなく、罠作りに取り掛かろうとするが、ヴェルから待ったが掛かる。
「あ、夜に見張りしてくれるサンディはここまで」
相手が何時来るか分からない以上、夜の番が必要である。ならば、とサンディはその役目を自ら請け負っていた。
「そうそう、少しでも寝られたら大分違うしな」
陽に、にこりと笑顔で言われてしまえば、無下に断る訳にもいかず。
「え、仮眠?あ、うん…」
気を遣わせてしまった事を病むが、其処はお見通しなのか。
「気にするな」
「見張り、頼んだよ」
そんな言葉を掛けられ、二人は罠を作るべく場を離れる。残されたサンディは、樹の幹に寄りかかり、そっと瞳を閉じるのだった。
罠の作成に取り掛かる前。ヴェルが自身の相棒たるヘビクイワシを呼び、周囲の見張りを依頼する。
空を舞うヘビクイワシを見送ると、ヴェルは手近な樹へと糸を結ぶ。同じく、陽も枝に糸を結んだ。
あちこちに張り巡らされた糸の端には、小さな鈴。少しでも糸に触れれば、たちまち涼やかな音が響き、相手の来訪を告げるだろう。
目立たぬように、巧妙に糸を隠し、仕上げに穴を掘る。
そうして罠が出来上がる頃には、すっかりと日が暮れていた。
小さく、虫の音が響く。日は暮れ、月が真上へ昇る頃。
相手の出現を待っていた陽が、こくりこくりと舟をこぐ。
夜の眷属の血を引くヴェルも、何処か眠たげな表情。
小さく笑ったサンディが、二人に少し眠るよう告げる。
「んー……サンディくんに、おねがい、するね……おやすみなさい…」
何処か幼げな口調に戻った陽に次いで、ヴェルも横になる。
「僕も、お言葉に甘えて休むよ。…でも、日が昇る前には僕も起きるね」
そして、静寂が訪れる。二人を見守りながら、サンディは耳を澄ませる。
罠は張った。相手が来れば、音が知らせてくれる―。
ならば、後は、待つのみ。
そうして、太陽が頭を覗かせる頃。
ばさり、と羽ばたく音がサンディの耳へと届いた。
大成功
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第3章 集団戦
『氷凝鳥』
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POW : 爪の一撃
【非情に素早い突進からの爪】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 氷柱雨
レベル×5本の【氷】属性の【鋭利な結晶体】を放つ。
WIZ : 大空を舞う
【空高く飛ぶことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
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●碧き破壊者
ばさりと羽ばたく度に、僅かに冷気が漂う。
薄らと顔を覗かせた太陽が、巨大な鳥の結晶をきらりと輝かせる。
羽ばたきと共に、枝が、花が落ちる音が小さく響く。
―此れが、この場を荒そうとするものの正体なのだろう。
けれど、羽ばたきの音は、一つに留まらず。
空を見上げれば、無数の鳥の姿が確認出来た。
あれら全てが降り立てば、藤の花天井は跡形もなく壊れてしまうだろう。
そうなってしまえば、この場に伝わる勇者の伝承も―。
『――!!!』
一羽の鳥が、此方の姿に気が付き、大きく鳴き声をあげた。
この場を護る為、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
真幌・縫
『しーさん(f03940)』と。
鳥さんがたくさん…!あんなにたくさんの鳥さんに荒らされちゃったら大変…!
鳥さんとしてはきれいだなぁって思うのに少し残念だなぁ。
ぬいは大丈夫だよしーさん!しーさんも無理しないでね!
じゃあ例の罠にぬいの【存在感】で【おびき寄せ】て【全力魔法】に【高速詠唱】でUC【ウィザード・ミサイル】発動【属性攻撃】炎で強化するよ!せーの、どっかーん!
これでも全部をいっぺんには無理だから残った鳥さんの攻撃は【野生の勘】で回避しつつしーさんたちを【応援(鼓舞)】するよ♪
なんとかなったねー。
ぬいは怪我はないよ♪
しーさん。ぬい、しーさんのお花守れて嬉しいな♪
月藤・紫衣
縫さんと(f10334)
これは随分数が居ますね…
縫さん、無理は禁物ですよ
…これ以上荒らさせてたまるものか
縫さんが罠に引き寄せてくださる間に酔蜜月刀に【なぎ払い】するように振るうごとに風魔法の【属性攻撃】による【衝撃波】を飛ばせる魔法を【歌唱】による詠唱で継続的にかけ、罠にかかった敵が散らばらないように牽制と攻撃を
こちらまで攻撃が届くようなら【残像】と【見切り】で回避を
縫さんに向かうようでしたら【かばう】【咄嗟の一撃】でフォローいたします
敵がある程度消耗したところで【高速詠唱】した【狂華乱舞】をおみまいしましょう
…なんとかなったのでしょうか
縫さん、お怪我はありませんか?
ふふ、ありがとうございます
ばさり、と羽ばたき一つ。僅かに冷気を含んだ風が藤の木々を揺らす。
朝焼けの光に照らされた青い体躯は、ゆらりと煌めいて、何処か神秘的に見えた。
されど。どんなに姿が美しいとしても、あの鳥はこの場を荒そうとする害獣。―オブリビオンなのだから。
「鳥さんがたくさん…!あんなにたくさんの鳥さんに荒らされちゃったら大変…!」
空を見上げ、ぴこりと猫耳を揺らす縫が慌てたように紫衣の袖を引く。
「これは随分数が居ますね…。縫さん、無理は禁物ですよ」
同じく、空を見上げる紫衣の藤色の瞳には、怒りが宿っていた。
今は遠い、故郷の花。母との共通点、そして―。
ぐっと握りしめた拳に、縫の小さな手がそっと重なる。
「ぬいは大丈夫だよしーさん!しーさんも無理しないでね!」
真っ直ぐな眼差しに、肩の力がすとんと抜けた。憧れの物を、共に護ろうとしてくれる存在が在る。
なら、今出来る最善を。
捕獲用の罠の傍。小さく息を吐いた縫だが、次の瞬間、圧倒的な存在感―プレッシャーが場を覆う。
空を旋回していた氷凝鳥の動きがぴたりと止まる。きょろりと首を動かし、眼下を見れば、小さな少女の姿。
縄張りを荒らす者は排除せよ。本能が働いたのか、数羽の氷凝鳥が縫の元へと迫る。
縫の元へと氷凝鳥が迫ると同時。すらりと酔蜜月刀を抜いた紫衣が、空を祓う。
『――ギィ!』
青に輝く羽根が、木々の隙間に張り巡らされた罠へ絡まり、動きが止まる。ばたばたと動く度、絡みついたロープが喰い込み、動きが制限される。
しゃらりと刀身についた球飾りが揺れれば、氷凝鳥の周りを風の網が覆いかぶさる。
「―♪」
小さく清涼なる歌声が場に響く。それに呼応するかのように、風の網は強度を増し、柔らかな羽毛に赤い傷を残した。
「せーの、どっかーん!」
明るい声が響くと共に、無数の炎の槍が顕現する。全力を込めた魔法の矢は、強度を増し、槍へと変じていた。
煌々と輝く炎の槍は、氷凝鳥を貫き、青い体躯を焦がした。
炎が消えた後。強い風が吹けば、さらさらと鳥であったものは、風に流され塵と化した。
其れを見て、驚いたのは別の個体である。ちらりと二人を一瞥し、倒しやすいと思ったか。
縫の方へ、一直線に突進し、爪を翳す。咄嗟に、紫衣が駆け寄り、愛刀を振りかぶる。
刹那、強い風が吹き荒れ、色彩豊かな花弁が周囲へと現れる。其れは、意志をもって氷凝鳥へと向かい、其の首を切り落とした。
どさり、と鈍い音が響き、氷凝鳥が地へと沈んだ。
そっと空を見上げれば、この場の氷凝鳥は、切り払ったよう。
「…なんとかなったのでしょうか」
酔蜜月刀を納刀し、誰にともなく呟く。けれど、其れに応える聲が、ひとつ。
「なんとかなったねー」
にこりと笑みを向けた縫は、何処かとても嬉しそうだった。
「しーさん。ぬい、しーさんのお花守れて嬉しいな♪」
くるりと回るその姿は、誇らしげ。思わず、紫衣の口元にも笑みが浮かんだ。
「ふふ、ありがとうございます」
藤の被害は、と辺りを見回せば、幾つかの枝が折れ、地へと伏せたけれど被害は広がっていないよう。
朝日が昇り、明るさを増す。陽に照らされた藤の花天井を、縫と紫衣は再び見上げるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アテナ・アイリス
空中からの攻撃であれば、弓で攻撃したほうがいいわね。
『セレーネの白弓』を使って、後方からの【援護射撃】を行いますわ。
UC【プロテクション・フィールド】を使って、「氷属性のダメージ無効もしくは大幅軽減する魔法」を味方全員に唱えて、鋭利な結晶体に対処しますわ。
突進されてきた場合は、かわすしかないから、味方の助けを借りないとね。
「藤の花天井には、行かせないわよ!」
「どうやら、氷属性のオブリビオンの様ね。ならば!」
「障壁よ、我が仲間を守り給え!」
「ごめん。お願いね。」
アドリブ・連携好きです。
ヴェル・ラルフ
陽(f03238)、サンディ(f03274)と
氷の鳥は、花天井から離した方がよさそうだね。
陽と一緒に、より多くの氷の鳥を誘き寄せる。
まずは樹上からナイフを投擲して注意を引こう。
目を狙えばこっちに気づくかな。
「おいで、こっちだよ」
そのまま、陽と一緒に[ダッシュ]で落とし穴の方へ誘導。
空から氷の結晶を放たれたらなるべく、[見切って]で[残像]を残せる[早業]で避けながら蹴落とす。
サンディが待ち受けてくれているところまで来たら、攻撃に転じる。
十分に花天井から離れてることを確認して【ブレイズフレイム】を森に被害が出ないように操作。
「さよなら、次の季節を寿いで、地に還って。」
★アドリブ・連携歓迎
サンディ・ノックス
陽(f03238)、ヴェル(f05027)と
アドリブ・連携歓迎
鳥達は何しに来たんだろう
理由がわかれば対策しやすいと思ったけど無い物ねだりはやめよう
罠近くで待ち伏せ、二人が誘導してくる敵を攻撃力重視した『解放・宵』で狩る
罠に嵌った敵を優先して仕留める
それに怒って敵が降下してくれば一石二鳥だな
罠にかかっていない敵相手は可能な限り藤の幹から離れて戦闘
敵の近距離攻撃は強烈らしい、突進の兆候を【見切り】回避する
ただし回避したら二人や藤に攻撃が行く場合は避けない、【オーラ防御】を活用しつつ【怪力】を発揮し剣で受けとめて踏ん張る
二人が扱う火と加減する技術はすごいな
俺は力しか無い、けど出来ることを全力でやろう
縁城・陽
サンディ(f03274)ヴェル(f05027)と一緒に
他の方との絡み・アドリブ歓迎です
判定:WIZ
こんなにたくさんいるのかよ…でも広範囲攻撃なら得意分野だぜ
《狐花の舞》で鳥を可能な限り巻き込んで攻撃、【おびき寄せ】て地上に引き寄せ
戦闘する場所はできるだけ藤の幹から距離をとる
【ダッシュ】で敵を罠とサンディのところまで誘導する
自分たちの罠で足りない場合他の人の罠にも誘導
鳥の近距離攻撃が届きそうなら《狐花の舞》を解除し【武器受け】【怪力】で攻撃を止める
周囲の草木が凍りそうなら《鬼切安綱》で右手を炎に変化させ相殺する
延焼させないよう注意して炎操作
この綺麗な森、荒らさせねーからな!
ヒナ・ローレンス
WIZ
巨大な鳥が、あんなに沢山…
花達が荒らされるのを、このまま見ている訳にはいきません。
相手がこちらから見えない場合は聞き耳と第六感に頼りながら相手の位置を探りましょう。
鳥達が空高く逃げてしまう前にUCを放ちます。
あなた達が羽根を休めるべき場所はここではありませんよ。
…できることならただひたすらに打ち落とすのではなく、花天井の隙間が一番大きく開いたあそこに鳥達を降ろしたいですね。
あそこだったら比較的周りへの被害も少ないはずです。
今いる無事な花達は、一つでも多く守ってあげたいですから。
射しこんだ朝日が、夜の闇を払う。明るくなった空を見上げれば、無数の巨鳥が空を覆っていた。
「巨大な鳥が、あんなに沢山…」
空を見上げたヒナが、ぽつりと呟く。
あれが、花天井を荒そうとする、元凶。
握りこんだ白い手は、無意識のうちに強く握りこまれていた。
其れは、この場を荒そうとする鳥たちへの怒りか、恐れか。
「こんなにたくさんいるのかよ…」
同じく、空舞う氷凝鳥を見上げる陽。其の瞳は闘志に燃えている。傍らに立つサンディは小さく小首を傾げていた。
「鳥達は何しに来たんだろう」
何の目的でこの場所へ害を為そうとしたのか。原因が判れば、対策も取れるが、其れを確かめる術は、ない。
光増す朝日に、思わずヴェルを目を細める。―大丈夫。柔らかな朝日ならば、こわくない。
月の女神の名を冠する白弓を携え、アテナがその場へ集った者たちへ、視線を巡らせる。
抱く思いは、皆同じ。この場に集ったのが其の証拠。
「藤の花天井には、行かせないわよ!」
アテナの言葉に、誰もが頷いた。
そして―。
同時に、花天井の隙間を縫って、氷凝鳥が列を成して迫り来る。
それぞれの武器を構え、氷凝鳥へと向かう。
全ては、此の場所を護る為に。
羽ばたく翼に冷気が混じる。
「どうやら、氷属性のオブリビオンの様ね。ならば!」
相手の属性を感知したアテナが、青に輝く障壁を個々へと纏わせる。
氷属性の防御に特化した障壁は皆の身を案じてのもの。
花天井を護る事も大事だけれど、其れは自身を護ってこそ。
「ありがとな!」
柔らかな微笑みを落とし陽が礼を告げれば、最前線で向かってくる氷凝鳥へ白き曼殊沙華の花弁を舞い上がらせる。
魔力を帯びた曼殊沙華は、其の花弁を刃として氷凝鳥へと襲い掛かった。
『―ギイィィ!』
無数の鳴き声が響き渡れば、柔らかい青い体毛がじわり黒に侵食されるのが見えた。
辛うじて、花の嵐を免れた個体も居たけれど、投擲されたナイフに気が付き、身を翻す。
ナイフの軌道を辿れば、樹の上にヴェルの姿。
『――ギャアア』
けたたましい鳴き声が、空気を揺らす。飛んできた刃を避けれずに、目を貫かれた氷凝鳥が怒りに身を染める。
よくよく見れば、ナイフではなく矢が刺さった個体も在った。罠を張った、樹の陰でアテナが白弓で矢を射たよう。
樹の上からヴェルが陽の隣へと降り立つ。
親友が隣へ立った事を確認すれば、互いに頷き一つ。
「おいで、こっちだよ」
身を翻して、二人はサンディの元へと走る。其の背に向けて、氷の矢が放たれた。―先に動いたのは、ヴェル。矢の軌道を見切り、目にも止まらぬ速さで氷の矢を蹴り落とした。
全ては落とせず、多少の怪我を覚悟した瞬間。淡く輝く蝶がふわり舞う。
この場にそぐわない美しさを持つ蝶は、氷の矢に触れると、纏う光を弾けさせ、氷の矢を砕いた。
視線の先では、ヒナがホッとしたような表情を浮かべていた。
そのまま二人が走り抜ければ、黒剣を抜き放ったサンディが薄く笑みを浮かべていた。黒剣に念を込めて揮えば、刃は鋭さを増して。
振り下ろした刃は、氷凝鳥の首を簡単に切り落とした。返す刃でもう一羽の胴を薙げば、鈍い音を立て地へと伏し、やがて動かなくなった。
勢いのまま、向かえば危ないと感じたのか。
一度、氷凝鳥が地へと降り立つ。きらり輝く、氷で覆われた―。
陽の光を受けて、やや融けかけた大地はとても滑りやすい。其れは鳥とて例外ではないようで。
勢いよく降り立てば、止まる術の無い鳥が、光射す落とし穴へと滑り落ちた。
一羽ならばいざ知らず、複数が穴へと落ちてしまえば、上がるのは容易ではない。
落とし穴の上から、ヒナがそっと祈りを捧ぐ。
「あなた達が羽根を休めるべき場所はここではありませんよ」
小さく言葉を溢した後、ヒナの周りに再び、光の蝶がひらりと舞う。
蝶が羽ばたく度、きらりと輝く鱗粉が穴の中へと降り注ぐ。頭上を見上げれば、其れは幻想的な風景なのだろう。
けれど、鱗粉が降り積もる内に、氷凝鳥は己の異変へと気付く。
―身体が動かない。
きらり、きらきら。意識が、朦朧とする。訳も判らぬまま、氷凝鳥は意識を闇へと落とした。永久に覚める事のない、闇へ。
気が付けば、泉の傍へと来ていた。一面の青空が、眩しい。
そう、青空。
此処ならば、藤の樹々が荒される心配はなさそうである。
今まで、樹を傷つけないようにと制限をかけていたけれど、この場ならその必要もない。
猟兵たちが立ち止まったのを見て、氷凝鳥が鋭い爪を向ける。
けれど、其れは陽が真っ向から受け止める。
「この綺麗な森、荒らさせねーからな!」
力は均衡。どちらかが気を抜けば、一瞬で片が付く。力を籠める度に、氷凝鳥から冷気が漏れ出る。
ぱきり、と地が白むのをみた陽は、右手を炎に変え、大地を元の色へと戻した。
刹那、氷凝鳥の身体が炎に包まれる。力が緩んだその隙に、陽が後方へと飛びのいた。
切り裂かれたヴェルの腕から、紅蓮の炎が立ち昇った。
「さよなら、次の季節を寿いで、地に還って」
炎が広がらないように意識する。そうして、炎が止んだ後、其処には何も残っていなかった。
「みんな、怪我はない?」
アテナが問えば、大きな怪我は無いと声が挙がった。
花を護れた事に、ヒナも安堵の息を吐いた。
ほっと胸を撫でおろせば、強い風が一陣、吹き荒れる。
藤の花天井が、さわさわと音を奏でた。
その様子を、猟兵たちはそっと笑みを浮かべて見つめるのだった。
大成功
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リュカ・エンキアンサス
ミントお姉さん(f02586)と
おはよう、お姉さん
見たことない?それは良かった
冒険は、そうじゃないと
…さあ、そして締めくくりだ
鳥退治、お姉さんは得意?
…そ、真面目だね
俺の理由?仕事だから、かな
まあ、綺麗な景色も見られるしね
とにかく
自身の生存優先、無理しない
銃で攻撃
なるべく距離をとって、ミントお姉さんの援護をするように、爪や結晶体に当てて攻撃を阻害していけたら
やむなく接近されたときは絶望の福音で回避しながらナイフを抜いて応戦
基本淡々と当てていく感じ
出来るだけ連携できそうなところは連携しあって戦う
終わればお疲れさま、って
お姉さんのおかげで、今日の仕事は楽だったよ
綺麗な花も見られたことだしね
よかった
ミント・ベルガモット
リュカ(f02586)と協力
鳥の姿を見ると寝ぼけ眼を一気に丸くして
おおぉ、故郷の森じゃあんなの見たことねーぜ!
鳥退治か、鳥は飛んで逃げるから自信ねえなー!
けど、勇者が見たかもしれない景色が壊れたら
伝説へ繋がる“糸”がひとつ切れちまう気がする
それって寂しいよな
等身大の少年型からくり人形(ヴァン)の肩に乗って戦う
敵の攻撃がきたら人形から跳び
スカイステッパーで踊る様に空中で方向転換
氷柱を避けつつ注意をひく
その間に人形を接近させ
マントの内側に隠したナイフで羽根の付け根を狙って貫く
よっしゃ終わったー!
こっちこそサンキュな、リュカ!
花が好きってなんかいいな
オレは実を食べる専門だからさ!
へへっと牙を見せ笑う
射しこむ朝日が頬を照らす。眩しさからか、思わずミントはうっすらと目を開いた。
「おはよう、お姉さん」
覚醒した気配を感じてか、視線は空に向けたままリュカが挨拶一つ。
彼が何を見ているのか気になって、寝ぼけたまま空を見上げれば、と花の隙間から飛び交う鳥の姿が見えた。
「おおぉ、故郷の森じゃあんなの見たことねーぜ!」
空を舞う鳥の姿に、寝ぼけ眼が一気に覚醒する。
「見たことない?それは良かった」
始まりが在れば、終わりも在る。ならば、この旅の終わりは―。
「鳥退治、お姉さんは得意?」
飛び交う鳥の体躯は青く輝く。氷晶が陽の光に煌めいたのが視界の端に映った。
そう問われたミントは、氷凝鳥へと視線を向ける。
「鳥退治か、鳥は飛んで逃げるから自信ねえなー!」
からりと笑う。けれど、勇者の伝説が眠る此の場所が、壊れるのは寂しいと思う。
そんな心情を吐露すれば、リュカは僅かに微笑む。そんな彼女を、真面目だね、と。
「俺の理由?仕事だから、かな」
旅人たるリュカは、これまでに様々な場所を巡り、いろんな景色や、物を見てきた。それが、小さな楽しみだった。
だから。勇者の伝説が眠る此の場所を壊させるわけにはいかないのだ。
幸い、氷凝鳥は此方に気が付いていない様子。
等身大の少年型のからくり人形”ヴァンデミェール”、略称ヴァンを呼び出し、肩へと乗る。
からくり人形の駆動音に気付いたか、氷凝鳥がリュカたちに気が付く。
迫る氷凝鳥が、身に宿る結晶に冷気を纏わせ、放つ。
其れはまるで雨のように、けれど明確な殺意を持って二人を襲う。スコープを覗くリュカが、放たれた結晶を一つずつ打ち落としていく。
けれど、無数飛び交うそれら全てを打ち落とす事は叶わず。呼び出したヴァンからミントが跳躍すれば、まるで空を踊るように氷凝鳥へと肉迫する。
眼前に現れたミントに氷凝鳥は驚くも、鋭利な爪を振りかぶる。
振り下ろされようとしていた爪を、リュカが放った弾丸が掠める。固い音が響けば、氷凝鳥のバランスがぐらりと崩れる。
気付けば、眼下にいたヴァンが再びミントと共に在った。
マントの内側に隠していたナイフで、翼の付け根を切り裂く。
飛ぶことままならず、氷凝鳥は地へと落ちた。慌てて首を持ち上げるも、ナイフを振りかぶったリュカが首を描き切った。
小さな鳴き声をあげた後、氷凝鳥は。もう、動かなかった。
「よっしゃ終わったー!」
ヴァンの肩に乗ったまま、ミントが喜びの声を挙げる。
「お疲れさま」
ナイフに付いた血糊を払い、懐へと戻したリュカが労いの言葉を掛けた。
「お姉さんのおかげで、今日の仕事は楽だったよ」
この場を脅かすものの駆除。共に戦うものが在ったからこそ、無事に終えることが出来た。
「こっちこそサンキュな、リュカ!」
にこり笑ったミントが、風に揺れる藤の花を見やる。釣られて、リュカも視線を持ち上げる。
空一面に広がる花天井。まるで、別の世界に来たような錯覚を起こす。
けれど。
「オレは実を食べる専門だからさ!」
からりとした笑い声が周囲へと響くのだった。
大成功
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