バトルオブフラワーズ⑪〜Gotta/God speed
「――三度目の正直という言葉があるだろう? あれを聞くととわ、少しばかり複雑な気分になるんだよね」
徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)が大きく振る尻尾を、その振り方故に、もとよりそのたっぷりの毛並故に正面からでも見て取っただろう。
「いやね、最初から上手くやれとかそういう話じゃあないんだよ? 二度の失敗があったって三度目にこそ成功するかもしれない、実に前向きな言葉だ。ここはとわも好きさ?」
更に一振り、尻尾はゆるりと小さな風を生んで。
「でもさ。三度目が失敗したら、それまでの二度の成否に関わらずその失敗は正直な実力だって言われているような……そんな気がしないかい?」
三度、柔らかな尻尾が弧を描き空を切る。
「だからと言う訳じゃあないが、今回は二度あることは三度あるで行こう」
殆ど気の持ちようだけれどね、そう言ってとわは茶目っ気のある笑顔を見るのだった。
「さあ、本題に入るよ。多くの者は既に知っている事と思うが、猟兵各員の尽力のお蔭で三度目の関門まで辿り着いた」
――兵は神速を尊ぶ、あれを地で行くようだねえ。
目まぐるしく変化してきたこれまでの戦況を思い起こすように瞼を閉じるとわ。
程なくして瞼を開き、手にしたグリモアを通して情報を投射してみせる。
「スピード怪人『ウインドゼファー』。それが今回相手取る敵の名前だよ。何でも風を操る能力を持っているらしい」
右をさらり、左をちらり。とわは猟兵たちの表情を一度確認する。
そうして一呼吸おいて、猟兵たちの表情の変化に、或いは変化しない表情に、少しの安堵を覚えていた。
「エイプモンキーやラビットバニーに比べれば大した事は無い……とは、問屋が卸さないだろうね。想像の創造だとか絶対無敵だとか、そういう能力を差し置いてこの位置だ。これまでで最強が立ち塞がっている、そう思って臨んだ方が良いだろう」
改めて言葉にされることで、それが全員と共有されることで、空気が一段引き締まったかもしれない。
「注意すべきことは一つだけ。スピード怪人と呼ばれる位だ、敵からの先制は避けられないと思ってくれ」
まずはこれを凌がなければ戦いの土俵にさえ上がれない。
グリモア猟兵曰く、
荒れ狂う暴風を纏って得た驚異的な戦闘力と速力で戦う。
周囲の足場さえ砕く暴風で周囲を無差別攻撃する。
二振りの剣とその剣が持つ竜巻を放つ力で戦う。
「以上だ。向かい風は強烈だが……なに、キミたちなら勝ったと言いに来てくれるだろう? よろしく頼むよ」
言ってとわはグリモアの力を引き出し、システム・フラワーズの中へと猟兵を送り届けるのだった。
芹沢
芹沢、小さな頃から好きになるキャラクターにスピードタイプが多かった気がします。
憧れるスピード感をリプレイの中でも表現できたら、そのように思います。
●特記事項
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
●その他
公開され次第プレイング募集中となります。
また、スケジュールとキャパシティの都合でプレイングをお返ししてしまう可能性は常に付きまといます。無理のない範囲でより多くの採用をしていきたい所存ですが、予めご了承して頂けますと幸いです。
以上、芹沢でした。
皆様のらしさ溢れるプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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リーネ・メルトハート
【POW】
(終始無言で、言葉は発しません)
……。 ………。
(相手は、はやい。 わたしより、きっと早い。)
――………。
(だけど、知ってる。 速ければ疾いほど――動作の終わりに、隙ができる)
初撃は受ける。 当たっても、【激痛耐性】でふんばる。
その終わりに出来る隙、ただ一瞬の隙。
いかに疾く高く飛翔しようとも、着地の一瞬に生まれる、その隙に。
【捨て身の一撃】に、【ダッシュ】【早業】【覚悟】【残像】【野生の勘】――わたしにできる全部を乗せる。
狙いはただ一点、ウインドゼファーの首を。
コンマ1秒の世界の隙を縫って掻き切るために。
叶わぬならばせめて一撃、刃を浴びせん為に。
そのための最短経路が【首狩り兎の憂鬱】
「(相手は……っ……はやい……)」
花畑――システム・フラワーズ――に風が吹き荒ぶ。
「(はやすぎる……っ!)」
リーネ・メルトハート(首狩りスノーホワイト・f14460)はウィンドゼファーの振るう嵐の如き暴力に曝されていた。
目で追う事は最早叶わず、音さえ置き去りにするような速さの前に白く長い耳も力無く項垂れている。
振るうナイフは空を斬り、見失ったかと思えば目の前に現れる、それを何度繰り返しただろうか。
「……っ!?」
今もまた、影も形も無かった筈の正面から重い蹴りが見舞われる。
覚悟していた痛みはとうの昔に許容量を超え、全身が火を付けられたように熱かった。
「(それ、でも
……、)」
《おや、尻尾を巻いて逃げるのですか》
嘲笑の言葉が背後から。
リーネは脱兎の如く花畑を走り出す。
「(わたしに……出来る、全部を
……!)」
しかし、涙で滲む瞳は未だ覚悟の輝きを失ってはいなかった。
「(一瞬、……を……よそ、く――)」
彼女を突き動かしたのは、一つの予測。
『誰よりも速くありたい』。その欲望の大きさと同じだけ肥大した『私の方が速い』という自信を見せつけ、遅き者を嘲うが如く、この敵は再び前から来るのではないか。
――その予測は正しかった。故にウィンドゼファーは背後から追撃すればその存在すら知覚することが無かっただろう、
「(――ここ!!)」
リーネが自身の正面へ向けて振るったナイフの軌道に自ら飛び込む事となる。首に白刃を立てられる事となる。
首狩り兎の爪は確かにウィンドゼファーに届いたのだ。
「(……ぁっ)」
嗚呼、それでも。
《遅い》
触れた刃がそれ以上前へ進む事は無かった。
刃がその身に触れる程の後塵を拝して尚、致命に至るまでの猶予でそれを御破算にするだけの速さ。ただただ単純な、故に覆し難い実力の違い。
鋭く突き込んだ拳は少女の小さな身体を容易く吹き飛ばし、開いた距離の分だけナイフを遠ざけていく。
《この程度ですか》
立ち上がる気配のないリーネに踵を返し、ウィンドゼファーは次なる敵を迎え撃つために歩き出す。
《しかし……侮り難し、としておきましょう。モンキーとバニーを破っただけあって、頭は回るようです》
道すがら、彼女は首に生まれた小さな傷を撫でて独り言ちるのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
雪華・グレイシア
ここに来て、まさか真っ向勝負とはね
でもこういう輩ほど油断はならないものだ
それでも、怪盗らしく華麗に勝利を奪わせてもらうぜ、レディ
小細工抜きの勝負だ
こちらも最初から全力でお相手しよう
マスカレイドビークルをロボへと変形させて、暴風を突き抜けながら全力攻撃だ!
……なんてね
ソイツは囮
ロボが暴風に耐え切れなくなる前に脱出して、飛び出すよ
バラバラになった足場と壊れるロボを影にして【ワイヤーガン】からワイヤーを発射
敵を捉えたら、ワイヤーを戻す勢いで接近しながら掌の中に隠しておいたダガーで【だまし討ち】で斬りつけるぜ
こちとら騙して奪うのが本業でね
どうだったかな、お嬢さん?
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
「――ここに来て、まさか真っ向勝負とはね」
雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)。鮮やかなる仮面の怪盗。少女と見紛う素顔を今は黒いマスクに隠し、立ち塞がるウィンドゼファーと対峙していた。
《おや……勝負になるとでも?》
「なるさ。怪盗らしく華麗に勝利を奪わせてもらうぜ、レディ」
グレイシアは懐からミニチュアのように小さなバイクを取り出し、不敵に笑って見せる。
彼がそれを宙に放り投げると、次の瞬間にはバイクは質量を無視して――或いは別次元から質量を盗みでもしているかのように――その全長を肥大化させ、さらに変形までしていくではないか。
《……子兎の次は巨大ロボット。見た目だけは退屈しないで済むようですね》
『小細工抜きの全力だ、いくぜ!』
グレイシアは二足歩行ロボットとその姿を変えた愛機に乗り込み、ウィンドゼファーの巻き起こす暴風の中へ飛び込んでいった。
《その巨体でどれだけ機敏に動けますか?》
彼は嵐を掻き分け抜け出そうと愛機を操縦し、地鳴りを響かせて前進させるが……、
《いつまで走れますか?》
暴風は纏わりつくようにその後を追い、装甲を軋ませ、足元を掬わんと足場を破壊していく。
操縦席には異常を知らせるアラームが鳴り止まない。
《私の風に耐えられますか?》
計器がスパークを起こし、断続的な衝撃がグレイシアを襲う。
『くっ……うぁぁーーーっ!?』
ついにロボットはその装甲をバラバラに砕かれ、暴風に巻き上げられてしまった。
《呆気ない》
降り注ぐ鋼鉄の雨。自身に向かってくるものを風で払いのけ、ウィンドゼファーは興味が失せたように呟く。
「――なんてね。本当に真っ向勝負をすると思ったかい?」
《!?》
声はウィンドゼファーの後方上部から。
同時に彼女の身体を雁字搦めにしていく、声と同方向から伸び来るワイヤー。
「こちとら騙して奪うのが本業でね」
放たれたワイヤーの根本、落下する残骸の影から飛び出す――また、影。
グレイシアは初めからロボットを戦闘に使うつもりなどなかった。怪盗が予告状を出した美術館に忍び込む為に一計を案じるように、この戦いでのロボットの役割を敵の懐へ潜入する為のガジェットと位置付けたのだ。
そのまま宙でワイヤーの巻取り機構を作動させることで彼はウィンドゼファーとの距離をさらに詰め、マントをはためかせながら、抜き放ったダガーの一閃を見舞う。
「どうだったかな、お嬢さん?」
《……小癪、ですね》
背中に刃を浴びせられたウィンドゼファーの声音には怒気が篭っていた。
しかしその所作は冷酷なまでに落ち着いたもの。
彼女は唯冷静に、身体に巻きつくワイヤーを膂力で以って内から引き千切るのだった。
成功
🔵🔵🔴
ウェンディ・ロックビル
スピード怪人!――いーじゃん、燃えてきたぜ。
絶対先手を取られるから対策を取れ……オッケーオッケー、了解だよ。
……っていってもさ。僕、そんなに色々、対策とかできるわけじゃないんだよね。
僕、器用な方じゃないし。だからね。やれることはひとつだけ、かな。
ウインドゼファーさん!君、なかなかのスピード自慢みたいだけど――残念、世界じゃ3番目だね。
確かめてみる?誰が1番速いのか。
限界速を、一歩越えて。瞬間加速でトップギアまで上げて、「先に放たれた敵の攻撃が届くよりも早く」ウインドゼファーさんのところまで駆けつけて、思いっきり、蹴っ飛ばすよ。
三十六世界一速いのは――この僕!ウェンディ・ロックビルだぜっ!
浅葱・シアラ
速かったら!強かったら!
どうするか、そんなの、決まってるよ!
戦う、勝つ!
だってシアたちは世界を守る猟兵だから!
使用するユーベルコードは「神薙胡蝶蘭」
先制攻撃が来るなら……受けて立つから……!
おいで、胡蝶蘭!
鉄塊剣を白い胡蝶蘭の花弁に変えて、白い胡蝶蘭の花弁を嵐に乗せて!
花弁の刃を纏う嵐をシアの前に!
【属性強化】で風属性を、【全力魔法】で魔法そのものを強化して!
早く、何度も何度も発動するよ!
嵐の壁は高速回転モードで迫ってくるウィンドゼファーからの攻撃を守る盾にも、ウィンドゼファーを攻撃する刃にもなるから!
風を操れるのはあなただけじゃない、勝負……!
世界の命運をかけて!
「ねぇっ!? 起きてよ! ねぇってば!?」
ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)の上げる悲痛な叫びはシステム・フラワーズ内に木霊することはなく、荒れ狂う風に飲み込まれて掻き消えていく。
ウェンディがこの場に辿り着いた時には小さな妖精は既に荒れ果てた花畑に倒れ伏していて、一つの戦いが終わったことを、一つの敗北があったことを告げていた。
《遅い。何もかも、余りに遅すぎる》
風に乗って届くウィンドゼファーの声には落胆の色。
それは直前にあった戦いに向けてだろうか、それとも戦いの終わった後でやって来た少女に向けてだろうか。
「……っ! 確かめて、みる……!? 誰が一番速いのか……!」
その言葉を聞いたウェンディは噛み締めた歯が砕けてしまいそうな程に怒りを露わにして、今にも敵に向かって飛びかからんと姿勢を低く構えた。
《誰が
……。……もしかして、ご自分が、と仰りたいのですか? 面白い冗談ですね?》
正しく、失笑。
「教えてあげる……、君は世界じゃ三番目だって……!」
兜の如きフルフェイスマスク越しであったが、嘲笑交じりの小さな風がウィンドゼファーの口元から生れていたことをウェンディは感じて、――普段なら一笑に伏せた言葉であっただろうが、――さらに怒りを燃やしてしまう。
《ええ、出来るものでしたら――》
ウェンディが一歩踏み出すのとウィンドゼファーが暴風を放たんと片手を突き出すのは、全く同時のことだった。
――……確かめ…………誰……速い……。
風に混じって流れ来る少女の声。
「(……あ……れ)」
その声は妖精の耳に微かに届き、意識を繋ぐ。
目覚めた浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)が目にしたのは風に花弁を散らされ、歯を千切られ、茎を折られ、無残に散らされた花々だった。
「(シア……どう、して……っぁ!)」
徐々に霞が晴れていく意識は体中の痛みも呼び覚まし、その苦痛に緑の瞳には涙が浮かんでしまった。
「(間に合わなかっ……た、んだ……シアの、胡蝶蘭……。ウィンドゼファーの、速さに……)」
だが同時に、痛みは意識をよりはっきりとさせていく。
思い出されるのは、ウィンドゼファーと対峙してから意識が刈り取られる寸前までの光景。あらん限りの速さで放った魔法がウィンドゼファーに迫り、しかしその鼻先に、爪先に触れるかというところで自分が竜巻に飲み込まれてしまったことを。
「(あんなに速い、なんて……あんなに強いなんて……)」
――教えてあげる……、
「(……だれか、居る……? 戦おうとしてる……? ……だめ、きっと……)」
悔しさに目を瞑ったせいだろうか、再びの声ははっきりと聞こえた。
それは怒りの篭った声。
――君は世界じゃ三番目だって……!
戦う意志の篭った声。
「(だめ……だめっ!)」
その声はシアラの意識に続いて、
「(弱気は……! シアも……戦う……、戦わなきゃ!)」
戦う意志さえも、繋ぐ。
再び開いた瞼の下、妖精の右の瞳には確かにそれが灯っていた。
戦いの終わりまでは、瞬く間の事。
ウェンディは疾走った。
数多ある世界のどの法則にも囚われない、人智を、それどころか神智さえ凌駕しようという速さで。
速さを縛ろうとする抵抗の全てが今の彼女には無い。
蹴り出した足が花に触れるが、まるで花自身が避けでもしているかのように柔らかに退いて、空気でさえ彼女の為に道を開けていた。
それでも、
――間に合わないっ!?
彼女は直感してしまう。あと一歩届かないことを。到来する向かい風を。
如何に後の先を狙おうとも、風の、攻撃の発生源がウィンドゼファーである以上、そこに飛び込むという以上、それが放たれた後では既に遅いのだ。妖精の魔法が敵の元に届かなかったように。
ウェンディの元に、一陣の風が駆けた。
――ウィンドゼファーには届かなかったけれど、
それは追い風。
速さを押し上げる、故に彼女に干渉可能な法則。
――それでも、戦っているあなたになら届くはずだから……!
シアラの放った嵐が、白い胡蝶蘭の花弁が、ウェンディの背中を押していた。
まるであなたに幸運がありますように――Godspeed you――と言っているかのように。
――……っ!!
シアラの後押しは、遂にウェンディに限界を越えさせる。
斯くして少女は、あと一歩を、踏み越える。
《なッ!?》
蹴り出した足は見事にウィンドゼファーを捉え、疾走の速力のままに弾き飛ばしていた。
嵐が吹き抜ける刹那の間、彼女は間違いなく――
「三十六世界一速いのは――この僕! ウェンディ・ロックビルだぜっ!」
――最速の存在だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クロヴィス・オリオール
サルにウサギの次は何だ、随分イカつい見た目のが出てきやがったな
ったく、はやけりゃイイってモンでもねェだろ
あんまり早ぇのも考えモン……っと、冗談言ってる場合じゃねェな
対峙しただけで翅がビリビリきやがる
この小っこい身体じゃ、文字通り嗤う竜巻とやらに吹き飛ばされちまうだろうし、せめて直撃は避けてェな
…よし、冴えわたるギャンブラーの第六感ってヤツで避けれるか試してみるか
こちとら身体なんざチップにし慣れてンだ
直感頼りに左へ右へ、賭けて死ななきゃ大儲け…って、どっかで聞いたことあるリズムのような?
さて、レディだかヤローだか分かんねェ見た目を相手に先を譲ってやってンだ
女王様の御戯れにくらい付き合ってくれよ?
非在・究子
し、シンプルな、やつの方が、強かったり、するんだよな。
でも、やりがいが、ある。
さ、最初の先制攻撃、は、『ボム(アイテム)』の無敵時間で、すり抜けさせて、もらう。
それに、ラビットバニーに見せてもらった、『花の足場』の制御コードを使って、『花の足場』を動かして、相手の足場を崩したり、盾にしたり、しながら、戦うぞ。(技能:ハッキング、学習力)
あ、後は、ゲームウエポンのシューティングモードに、UCの力を乗せて、攻撃だ。け、軽減される、だろう、けど……当たったら、相手を【ハッキング】して、『寿命を削る速度』を加速させる。
だ、誰よりも、速くが、モットーなんだ、ろ? スピードの彼方まで、逝かせてやる、ぞ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
風そのもの問題じゃない
まずいのは足場を崩されて、そのまま落下だ
各種サイバネに【ハッキング】、出力を限界まで絞る
ドラッグでも何でも使って、とにかく機動力確保
遮蔽があるなら【地形の利用】で風をやり過ごし
崩れていく足場は【ダッシュ】【ジャンプ】【早業】で、足場から足場へ急いで跳んで戦線復帰
先制攻撃を捌けたら、UCのチャンスを待つ
チャンスが来たら【覚悟】を決めて風をUCで受ける
風の力を再利用、弱体化を司る『暴風ウィルス』で【カウンター】だ
──悪ィな
お前の風、使わせてもらう
毒が回ればそれでいい、あとは主役の仕事だ
"アイツ"に「勝った」以外聞かせたくないんでね
これが…勝利の為の、俺ができる小さな『勝ち』だ
「サルにウサギの次は何だ、随分イカつい見た目のが出てきやがったな」
「わかりやすくて結構じゃねえか」
「し、シンプルな、やつの方が、強かったり、するんだよな」
続いてウィンドゼファーと対峙するべく花畑へ踏み込んだのは三人の猟兵だった。
「でも、その分、やりがいが、ある」
非在・究子(非実在少女Q・f14901)は小さく拳を握り、高難易度のゲームに挑むかのように意気込む。
「「わかる」」
賭博師の目から見れば、それは高配当の賭け事。
ハッカーの視点からすれば、それは高度なセキュリティ。
究子の言葉にクロヴィス・オリオール(GamblingRumbling・f11262)とヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は揃って頷いて見せるのだった。
「向こうはやり飽きたゲームを消化するだけみてぇだがな」
お話しは済みましたか? なんて一言も無く、ウィンドゼファーは猟兵たちへ ――妖精と比べれば的の大きい究子とヴィクティムへ向け、暴風を放ち、攻撃を開始する。
「」
対応するように究子が取り出したのは一つの爆弾。
ドットで描かれた……否、構築されたそれは、シューティングゲームの世界で保存してきたアイテム。発動すればその瞬間に画面内に描写されていた雑魚と敵弾とを消し飛ばし、一時的な無敵時間まで得る事が出来る。
しかし……、
「は、判定、残りすぎ。こ、こんなの、出し得、クソ――」
「おいっ!?」
無敵時間の終了と共に竜巻に飲み込まれ、彼女は姿を消してしまった。
「ドレック……ッ! こいつ、これまでの奴とレベルが――」
「……おいおいおい!」
ヴィクティムも崩落する足場から逃れようと跳躍したが宙で竜巻に身体を捉えられ、そのまま落下させられてしまう。
《時間が惜しいです。早く終わらせましょう》
「…………マジかよ」
後に残ったのはウィンドゼファーと、小さき賭博師だけであった。
「右」
鋭い角度で妖精が宙を曲がる。
「……右」
翅を撃ち振るい、さらにもう一段の加速。
「ひだ……」
制動をかけ、逆方向にと切り返そうとするが、
「りィっ!?」
その先に竜巻の壁。
接触して打ちのめされることはないが、飲み込まれて弾き飛ばされてしまう。
「(ンだよ、くそッ……。何回当てりゃ勝ちだっつーンだ……)」
クロヴィスは竜巻を掻い潜ってウィンドゼファーに接近しようと試みていた。
しかし彼我の距離が妖精の身にはあまりに遠く、躱さなければならない竜巻の数もそれに比例する。
結果与えられたのは、左右の二択を当て続けなければならない、敵にだけ有利な理不尽の――イカサマの――ゲーム。
だが、
「(……だがよ、)」
それを相手取るからこそ、
「こちとら身体なんざチップにし慣れてンだ。直感頼りに左へ右へ、賭けて死ななきゃ大儲け……ってな」
決して勝負を降りる事はしない。
風に衣服を肌を切り裂かれようとも、クロヴィスはまた飛び立つ。
口にしたのは誰かが口にしていたような、口にして小気味の良いリズムの台詞。ほんの僅かばかりの勘でも借りたい気分だった。
《いい加減にしてほしいものですね、諦めの悪さも貴方方の性質の一つですか》
何度落としても向かってくるクロヴィスに辟易したのか、ウィンドゼファーは宙を舞う妖精を睨め付ける。圧倒的優位から生まれた油断か、彼だけを凝視する。
――故に、
《[from:Arsene to:Q子]gogogo!》
《[from:Q子 to:Arsene]おk》
足元から生えるように現れた光線銃の存在を、
「――ヘ、ヘイトコントロール、からの不意打ち、余裕でした。なんて」
そこから放たれるビビッドカラーの光線を、察知できなかった。
「究子、てめどっから!」
「あ、安地と、ショトカ。つ、作った」
がなり立てるクロヴィスに、光線銃の持ち主、究子は足場の下から顔を覗かせピースサインを作ってみせる。
竜巻に飲み込まれたかに見えた究子だったが、ラビットバニーとの戦闘から解析した花の足場の制御コードを用いて窪みを作り、身を隠していたのだ。
さらには足場を操作して地下に通路を構築、壁抜けバグを利用するかのようにウィンドゼファーの元まで忍び寄る事にも成功を収める。
「で、俺が指示を飛ばした」
況や、電子情報で送受信された個人宛のチャットなどウィンドゼファーに知る術もなく。
「お前もかよ! っつーか教えとけ色々!」
荒れ放題となった足場の影から跳躍したヴィクティムがクロヴィスの傍らに着地する。
「イカサマ仕掛けるようなもんだったからな、その片棒担ぐ自覚持たせちまったら……なぁ?」
彼もまた崩れた足場の下に飲まれたと見せかけて、その実各種サイバネティクスの出力を限界まで絞り、気配を殺して戦場の観察に勤めていたのだ。
「言ゃあ合わせンだよ……」
にやにやと口端を釣り上げる少年をクロヴィスはひと睨み。
その間に究子の攻撃は、
《これで一矢報いたつもりですか? この程度の攻撃で私をどうこうできるとでも――》
「攻撃じゃ、ない。数値、の書き換え。その装備、呪っておいた、から」
――否、データの改造は完了していた。
究子の放った光線は、云わば自身と相手を繋ぐ回線。
「だ、誰よりも、速くが、モットーなんだ、ろ?」
それによってウィンドゼファーの情報をハックし、
「スピードの彼方まで、逝かせてやる、ぞ」
能力行使のコストとして消費されていた寿命の消費速度を加速させたのだ。
《……! 貴様ッ!》
自分の身に起きた異常に気付いたウィンドゼファーは怒りと共に、まるで地団太を踏むかのように究子に向かって踵を落とす。
しかし再び足場操作して究子は地下へと退避、ウィンドゼファーの踵は虚しく足場を穿つばかり。
それどころか、
「ツラぁ見えねぇが、やっと怒ったかよ」
先刻まで視界に捉え続けていた男を意識の外に置いてしまう有様。
「これでオレの手番だ。付き合ってもらうぜ、」
ウィンドゼファーは再び光線を浴びる事となる。それはクロヴィスが構える一枚の札、ハートのクイーンが描かれたトランプよりのもの。
「女王様の我儘に」
光線は標的となったウィンドゼファーの身体から機動力と防御力を奪っていく。まるで女王様に献上する、折檻しやすい相手を用意するかのように。
《次から次へと
……!!》
故に未だ――コストこそ跳ね上がったものの――無事な攻撃能力を発揮するべく剣を振るい、クロヴィスへ向けて全力の竜巻を生み出す。
「──悪ィな」
だがそれを予見していたのだろう。……否、そこまでも彼の筋書通りだったのだろう。ふらりと、敢えて攻撃に飛び込むようにヴィクティムが割り込んでいく。
本来であれば、当然竜巻に飲まれ、嗤うように吹き飛ばされてしまっていただろう。
「それでチェックメイトだ」
しかし嗤ったのは彼の方だった。
《Reuse Program 『Fragarach』 activat》
彼を飲むはずだった竜巻は、
《Absorb prosess --- complete》
逆に軽く翳した左腕に飲み込まれ、
《Conversion prosess --- complete》
《Emits excess energy --- done》
内部でエネルギーに変換されていく。
《Safety release》
「――お前の風、使わせてもらう」
《Retaliation》
続いてヴィクティムが突き出した右腕から放たれたのは、有り余る余剰エネルギーから構築されたウィルスの弾丸だった。
それは着弾を以てウィンドゼファーに浸食を開始、彼女の戦闘力を損なわせていく。
弱体化に次ぐ弱体化。それは感覚と動き間にの乖離を引き起こし、ウィンドゼファーに踏鞴を踏ませるほどに影響を与えていた。
《……この、っ……程度! ここまでして、それでやっとです! 格の違いが多少埋まったに過ぎないッ!》
それでも尚彼女は膝を折らないが、猟兵たちには不安も動揺も無い。
「お前聞いてなかったのか? こいつはチェックメイトっつったンだ」
「そ、そうだ、ぞ。ルートに、乗せるのが、アタシたちの、仕事」
「あとは主役どもの仕事だ。勝利の為の小さな『勝ち』、確かにもらったぜ?」
にやりと。口元だけで。シニカルに。
三者三様にウィンドゼファーを嗤ってみせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天命座・アリカ
さあさ行こうぜ未来君!これが最後の中ボスだ!
共に力を合わせれば!きっと倒せる大丈夫!
……啖呵を切ったはいいのだが!糸口見えない難しい!
でもでも、天才に二言はないからさ!こうなったらねやるしかないか!
荒ぶる風はなんとかしよう!残りは頼んだ未来君!
今回ばかりは大盤振る舞い!見せてあげよう奥の手を!
未来君の前でやりたくないんだが!こうなったらね八つ当たり!
天使の羽と悪魔の翼!現れたるは天命座!
自我機能制限、演算機能集中
竜巻を記録。瞬時に情報を変換、逆回転の竜巻弾を構成
構成に劣化確認。分析、再構築、強化
強化、警告「機能限界」警告無視、強化
強化、強化、強化
発射
セーフモードに移行
はらひれ……頭が痛いよ……
作図・未来
うん。行くよ、天命座君。
どんな強敵でも二人なら絶対に乗り越えられるはずだ。
っと、会話をしている余裕は無さそうだね。
どうにかあの攻撃をしのいで反撃をしないと。
とは言っても、どうするべきか。
……!
あの竜巻をどうにかしてくれるのならばありがたい。
あれを一度防いでくれるのなら――僕は霊を呼び出せる。
この世界にはチェーンソー剣という武器があるようだね。
ならば過去にその達人もいたはずだ。
回転する刃には回転する刃を。
これでその剣による攻撃も迎撃させて貰うよ。
そうそう、タイヤを回転させて防御をしようとしているみたいだけれど……
そこに同じ回転方向でチェーンソーを当てたらどうなるだろうね?
さあ、反撃の時間だ。
――さあさ行こうぜ未来君! これが最後の中ボスだ!
――うん。行くよ、天命座君。どんな強敵でも二人なら絶対に乗り越えられるはずだ。
――そうさ力を合わせれば! きっと倒せる大丈夫!
辿り着いた花畑――システム・フラワーズ――で天命座・アリカ(自己矛盾のパラドクス・f01794)と作図・未来(朝日の死者のタンツ・f00021)がそのやり取りを交わしたのは数瞬前のこと。
軽やかに、そして力強く啖呵を切ったはいいのだが……、
「糸口見えない難しい!! 攻略できるか訝しい!!」
「でもどうにかあの攻撃を凌いで反撃しないと!」
今はウィンドゼファーの持つ剣、それが放つ竜巻によって破壊された、隆起した足場の影に。耳を劈くような風音を乗り越えられるようにと普段以上に声を張り、風に巻かれて飛ばされないようにと帽子の鍔を固く抓んでいた。
「…………こうなったらね!! やるしかないか!!」
「……! 出来るのかい!?」
「荒ぶる風はなんとかしよう!! ただし防御のみだよ一回だ!! 残りは頼んだ未来君!!」
「あの竜巻をどうにかしてくれるのなら……一度でも防いでくれるのなら、」
――僕は霊を呼び出せる!
アリカに向けて未来は強く一度頷く。
そんな未来にアリカはにかっと歯を見せ、
「(本当は未来君の前でやりたくないんだが! こうなったらね八つ当たり!)」
一度大きく深呼吸。
「今回ばかりは大盤振る舞い!! 見せてあげよう――」
決意と共に立ち上がる。
「――天命座を!!」
そして彼女の背に現れたのは、純白と漆黒。
片翼の天使にして片翼の悪魔。
相反する二色をその身で束ね、体現するは自己矛盾。
「自我機能制限、演算機能集中》
暴風域に躍り出る、双翼の電子生命。
《竜巻を記録。瞬時に情報を変換、逆回転の竜巻弾を構成》
変じたのは存在の在り方。
《構成に劣化確認。分析、再構築、強化》
身体はホログラフィティのように朧げで、実体が無いかの如く風の干渉を受けていない。
……しかしそれは見た目だけの事。
如何に物理的な損害を受けなくとも、身体を、電子を、情報を、自身を構成するものを風に奪われないようにと抗っていた。
その上で尚彼女は、
《強化、
《警告「機能限界」 警告「機能限界」 警告「機能限
《警告無視、強化》
天命座は、状況打開のためにと務める。
《強化、強化、強化》
己の全てを注ぎ込む。
喩え自我が希薄になっても、目的がそこにあるのだから。
観測してくれる者が、そこに居てくれるのだから。
《発射》
斯くして放たれるは竜巻の弾丸。
超圧縮と多段強化を施した、今や真に勝るとも劣らない竜巻。
それを元となった竜巻に向け叩き込む。
《セーフモードに移、行……」
成果の情報を記憶する前にアリカはその場へ崩れ落ちてしまうが、
「はらひれ……頭が痛いよ……」
「…………、天命座君。少し、休んでいて」
未来がそれを抱き留めたのが、暴風域であった場所に飛び出てきていることが、何より成果を示す情報だった。
彼はアリカを再び瓦礫の影に退避させ、ウィンドゼファーに向かって走り出す。
――さあ、反撃の時間だ。
「よくもやってくれたとは、言わない。彼女が……よくやってくれた、それだけだ」
《自分を犠牲にして、それであなたをここまで来させた。私に倒されるだけの存在を。それをよくやったとは……お気楽な思考回路ですねッ!》
唸りをあげ、振り降ろされるウィンドゼファーの車輪剣。
「いいや――」
《……ほう》
しかしその回転する刃が未来に届くことはなかった。
「――ハッピーエンドが好きなだけさ」
二振りのチェーンソー剣が、それを握る死霊が、ウィンドゼファーの剣を受け止めたのだ。
未来が喚び出したのはこの世界に過去存在したチェーンソー剣の達人、その死霊だ。
その剣捌きはウィンドゼファーを相手取っても見劣り無く、荒々しい剣戟を、けたたましい打ち合いを演じていた。
しかし……時折ウィンドゼファーの身体にチェーンソーの刃が届くが、如何なる金属で構成された身体なのだろうか、それを切断することは叶わない。刃が火花と悲鳴を上げ、引っ掻き傷を残すばかり。
《技量だけではとてもとても足りませんね》
悠々と両腕を広げ、己の身体を見せつけるウィンドゼファー。
「……それならここは、」
そんな敵の余裕を斬り飛ばすべく、未来は死霊にウィンドゼファーの肩口へ、そこで回転するタイヤへ、
《そことて硬さに違いは……》
「こうするのは、どうだい?」
回転するチェーンソー剣の刃で以ってタイヤの回転を打ち消す回転を叩き込ませる。
《……!?》
止まる回転、鳴り響く異音。
二者の回転軸からは小さく煙が立ち上り、
「もらったよッ!」
焦げたような匂いと共に、遂には軸が損壊するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アネット・レインフォール
▼行動
・POW
葬剣の一部か鞘を全身を覆うコートにして武器受け用に。
また換装用の刀剣を周囲に展開させ、攻撃が来る方角を判断。
暴風を食らうのは覚悟し、この間に見切る為の動作を把握。
大した速度だが…自ら近づいて来てくれるのは幸いだったな。
2度目の攻撃前に【霽月一刀】をコート外側に展開。
全身を『触れただけで斬れる』一振りの刃とし、
手刀でUCごと斬り伏せる。
必要なら念動力で足場を固定し吹飛び対策。
別の攻撃や最後の一撃が来るなら此方も合わせる。
…だが、宣言しよう。
それが届く事は無いと。
最大限に練り上げた【零斬】の闘気を片手平突きに構えた葬剣に纏わせ、
剣先を神速の如く物理的に伸ばし貫通特化の突き技を放つ。
――ィィィイン。
鍛え抜かれた刃が生み出す、澄んだ振動音。
足場を、そして大気を震わす存在に呼応し、そして共振することで奏でられた音。
「(来た)」
アネット・レインフォール(剣の教導者・f01254)の周囲には、彼を囲うように各種剣や斧に槍、彼が所有する武器が突き立っていた。
それはセンサー。
敵の到来をその身で以って持ち主に伝えさせる、守りの為の布陣。
彼は音を聞くや否やその方角に意識を向け、徒手にて身構える。
それと同時、彼方より見舞われる拳。……或いはただただ速力に身を任せた薙ぎ払い。
ウィンドゼファーが暴風と共に飛来し、一撃と共に離脱していく。
《防ぐだけは上手な様子! ですがいつまで続けられますかッ!》
周囲を旋回しているのだろう、微かな残像と共に全方向から聞こえて来るウィンドゼファーの声。
彼女の言う通り、拘束の飛翔体との接触による痛みはあれど、アネットはウィンドゼファーからの攻撃を受け、往なすように滑らせ、肉体へのダメージを抑えていた。鎌鼬の如く吹き付けた風に頬を斬られたことが最大のダメージとさえ言えるだろう。
彼を取り巻くものの情報をより正確にしよう。
彼の所持する刀剣は周囲に突き立つものだけではない。
その身を包むコートが、グローブさえも、彼の剣の一振り。
愛用のが剣が姿を変えたコートに身を包み、その刃で以ってウィンドゼファーの攻撃を防いだのだ。
「(大した速度だが……自ら近づいて来てくれるのは幸いだったな)」
アネットはウィンドゼファーの声に耳を貸しはしない。
ただ集中し、呼吸を深く、剣気を練り上げる。
「(動きは見た。間隔も、文字通り叩き込んだ)」
深く、深く、肺に取り込んだ空気の全てを吐き出し、小さく吸って、
「……宣言しよう。お前の攻撃はもう届かないと。来い」
どこを掛け抜けているともつかないウィンドゼファーに言い捨てる。
《お望み通りにッ!》
ウィンドゼファー――澄んだ音――は、正面から。
アネットを、アネットの言葉を、アネットの刃を打ち砕かんと飛来する。
両者の交差は刹那の事。
手刀を振り抜いたアネットの遥か後方で、線を引くように花弁が宙に舞っていた。
「――壱式・霽月一刀」
その刀は、雨上がりの澄み切った月の如く。
身を包む剣に気を纏わせば、最早その身さえも一振りの剣。
怜悧に閃く一刀にてアネットはウィンドゼファーを、彼女の欲望から生まれ出でた戦闘力を斬り伏せたのだった。
成功
🔵🔵🔴
祇条・結月
……うん、わかってる。
この怪人は、僕なんかよりずっと強くて。
僕にできることなんてきっと多くないんだろうけど
……それでも、できることをするよ。
居場所を、守りたいから。
星がこうして開いているのも……きっと、星も、みんなを守りたいって思ってるからなんだ、って
僕じゃどうやっても相手の攻撃には対抗できない。敵の攻撃を受けることは【覚悟】してる。
でも喰らうことがわかってれば、【激痛耐性】で耐えて、間を置かずに反撃に転ずるよ。
次の動きを見せる前に【先制攻撃】。苦無を【投擲】して足を狙っていく。
【スナイパー】で心を落ち着けて、正確に狙って。
僕は、あいつに勝てない。でも後に繋がれば、いい。
……あとはお願い、ね
――うん、わかってた。
崩れ行く花畑が足を取る。
――この怪人は、僕なんかよりずっと強いって。
吹き付ける暴風が肌を切り裂く。
――僕にできることなんて、きっと多くないだろうって。
巻き上げられた瓦礫が身体を打つ。
――それでも、
それでも、
「……できることをするよ」
少年の心までは切り裂けない。
――居場所を、守りたいから。
彼の覚悟を打ちのめすことは、できない。
祇条・結月(キーメイカー・f02067)は開かれた星の中で、巻き起こる暴風に抗っていた。
星がこうして道を開いた意味を、我がことのようにさえ感じられるその思いを、守るために。
体勢を立て直し、走り、一瞬の猶予を見つけては苦無を投擲する結月。
しかしその尽くはウィンドゼファーが放つ暴風に絡め取られ、速度を失い、音も無く花畑に零れ落ちていく。
「……ッは……ッは……駄目、……か……ッ!」
不安定な足場で走り続ける事に、風に耐える事に、足腰が悲鳴を上げつつあった。
心臓は早鐘を打ち、浅い呼吸で喉が掠れる。
《そろそろ諦めも付きましたか? 投擲武器がこの私に届くとでも?》
「冗……談……ッ!」
それでも結月は立ち止まらない。
ウィンドゼファーとてその身に負った傷は幾つもある。大小合わせれば最早軽いものとは言い難く、この敵が不落の存在ではないことを示している。これまで戦ってきた者たちが示してくれている。
故に立ち止まれない。
たとえ勝ちきる事が出来なくても、後に続く誰かに一つでも多く示せるものを残すために。
「(前からが、駄目なら……っ!?)」
明後日の方向に放たれる、銀の一滴。
結月が苦無を投擲する一瞬前に、暴風が彼の身体を襲っていた。
しかし、
「……あとは、」
彼の苦無は立ち塞がる風を裂き、横面を叩く風に向きを変え、
《……まさか、狙って?》
この戦場で唯一そこに辿り着ける軌跡をなぞって、ウィンドゼファーの踵を……そこに配されたタイヤを射貫いて見せる。
鼓膜に届く破裂音。
それによって成し遂げた事を確信し、結月は笑みを浮かべた。
……いや、力の抜けた筋肉が、一瞬だけ彼にその表情を浮かばせていた。
――……お願い……ね。
薄れゆく意識の中、後に続く誰かに思いを託し、結月は花畑に倒れ伏すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆レイラ(f00284)と
レイラの目が庇うなって告げてる気がする
……いや、しないよ
「二人で戦ってる」んだもんな
……さ、行こうぜ
相手の動き、足場の揺れ
風音、肌を撫でる風圧、大気の震え
それらの動きの大小なども含めた
自分を取り巻く全環境から風の流れを読み
相手の攻撃が足場を薙ぐ順序を予測/推定
回避を試みる
多少不格好でも致命傷/戦闘不能さえ避けられればいい
初撃を凌いだ後は
同じ足場に長く留まらないよう留意しながら継戦
レイラに拾ってもらうのを待つ
拾ってもらった後は
こちらの位置と相手の動き/位置を逐次確認しながら
レイラへ敵の場所を伝える傍ら
射撃で軌道を制限して追い込む
または、レイラの攻撃を逃れた隙を突いて狙撃
レイラ・エインズワース
鳴宮サン(f01612)と
庇うのが最適、トカいいそうだカラ目で語る
ん、共闘だからサ
疾風の如き機動力と、実体のない風による攻撃
考えるほど厄介な相手ダネ
でも、止まるわけにはいかないカラ
周辺への無差別攻撃、相手の足の方が速いから魔法使いの私ニハ不利
そうなれば防御しかないヨネ
花びらを跳ね上げて後ろに
【オーラ防御】を張って少しでも軽減するヨ
足場ごと壊してくれたら御の字
落下しながら竜を呼んでその背に乗って舞い戻るヨ
途中で鳴宮サンを載せて空中戦と行こうカ
鳴宮サンの誘導を頼りに風を避けながらヒットアンドアウェイで戦うヨ
すれ違いざまに雷撃のブレスを当てたり
武具を射出する魔法を角度とタイミングをずらして放つネ
「……行こう、鳴宮サン」
「……ああ」
レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)が花畑に辿り着いたのは、丁度そこで小さな破裂音が響いた時の事だった。
連ねられてきた一つ一つの勝利、そこに加わる新たな一つが生れた時の事だった。
そしてそれは、二人に新たな負けられない理由が生れた時でもあった。
状況を理解し、短かなやり取りの後、二人はウィンドゼファーに向かって踏み出す。
「(……鳴宮さん、庇うのが最適、トカ言いそう)」
直前の光景もあってか、そんな予感が不意に過ったレイラは匡をちらりと見やる。
交わされる視線。
「……しないよ。二人で……いや、皆で戦ってるんだもんな」
匡は向けられた瞳の意図を、彼女と培ってきた関わり、そこから知った人となりや蓄積した経験を元に推測して……或いは単純にそんな気がして、言葉で答える。
「ん。そうだよ、共闘なんだからサ」
その答えに満足したようにレイラは小さく頷き、そうして二人の視線はウィンドゼファーに向けられるのだった。
……だがしかし、二人は彼女だけに意識を注ぐわけにもいかない。
立ち向かうは疾風の如き機動力。そして実体なき風による不可視の攻撃。
「後ろカラくるヨ!」
だからレイラは周囲を舞う花弁の動きにも気を払い、流れが生まれる方向へ魔力による防護を張る。
匡は風音に耳を澄ませ、肌に伝わるほんの僅かな風の予兆さえも取り零さぬように集中し、身を放るように回避していた。
「次、上からだ!」
続く突風は、二人の間に落ちるように。そしてそこから巻き上がる暴風の嵐。
跳躍した匡は素早く距離を取ることに成功したが、
「レイラッ!!」
防御を選んだレイラは砕かれていく足場に足を取られ、崩落と共に身体を沈めていってしまう。
嵐を挟んで交わされる、離れていく、二人の視線。
しかしレイラの瞳は毅然と、
「(大丈夫……なのか)」
そう伝えているように匡には感じられて、彼は体勢を整え、次なる攻撃に備えるのだった。
匡は突撃銃を携行しながら、しかしその引鉄に指をかけない。
向かってくる、そして足場を破壊していく暴風を躱すことに全神経全運動能力を集中させていた。
《そらッ! そらッ! 攻撃して見せただけ先ほどの坊やの方がまだマシでしたよ!》
故に向かってくる攻撃は矢継ぎ早だ。間断なくとさえ言える。
ウィンドゼファーは防御と回避を行う必要が無く、攻撃のみに全てを注ぎ込めていた。
どうにか致命傷こそ避けているものの、風が向かってくるたびに匡の傷は増えていく。
「……まだ、っ……その時じゃ、ないんでな」
しかし彼は戦闘を放棄したわけではない。
《残念ですが、もう時間切れですよ!》
見舞われ続けた暴風に、遂に匡の周囲の足場が纏めて崩れ去っていく。
逃げる先を失い、瓦礫と共に落下していく匡。
「いいや――」
それでも尚、彼の視線は的(勝利)を射貫かんと前を向いている。
「――ここからだ」
匡の姿が奈落の如き縦穴に飲まれたとき、咆哮と風切り音を轟かせてそこから飛翔する黒影があった。
翼を撃ち、黒き焔を纏う身体で宙を駆けるのは、
「お待たせ、鳴宮サン!」
レイラと匡をその背に乗せた、一頭の魔竜だ。
一度は崩落に巻き込まれたレイラだったが、落下の最中に魔竜を喚び、こうして花畑へ舞い戻る事に成功したのだ。
「いんや、もう来るだろうと思ってたよ」
「ホントかなぁ?」
「ほんとほんと。それよりも、反撃の時間だ」
「ん、オッケー!」
再会のやり取りもそこそこに、二人は眼下のウィンドゼファーを見下ろす。
「下だ。低空飛行で、正面から頼む」
匡の指示に頷き一つ。レイラは手綱で魔竜を操る。
飛行の最中、魔竜が練り上げるのは武具の召喚、そして投射の魔法。
召喚された武具たちはウィンドゼファーを囲うように展開し、四方八方から襲い掛かっていく。
ウィンドゼファーもそれを風で受け止め、弾くが、その数の前に防御に集中せざるを得ない。
それ故に彼女を取り巻く風はその向きを常に変え続けていたが、
「――
…………!」
匡の放った弾丸は、
《ぐッ、アぁッ!?》
荒れ狂う風の海を容易く泳ぎ切り、
《あ、ありえない……! こんな……ッ、しかも一発で……!》
「十分観測たからな」
ウィンドゼファーに着弾すると既に損壊していた右肩を更に喰い荒らす。
遂にはそこから連なる右腕の機能全てを奪い去ってみせた。
「コレもおまけだヨ!」
低空を翔ける魔竜が追撃に見舞うのは、その咢から出でる閃光と轟音。雷撃のブレスがウィンドゼファーに襲い掛かり、ゴムの焼け焦げる臭いを風に乗せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宮落・ライア
◆トリテレイアさんと共闘
『無限大の欲望』…。お前らが原因か。
あれ、止められる?トリテレイアさん。
守りはトリテレイアさんに全幅の信頼と信用で任せ、
自分は瞑目し集中する。
そして自分の役目、トリテレイアさんに投げられたならば相手との距離、衝突タイミングを【見切り】、
投げられた勢いによる痛みは【激痛耐性】で無視。
自分はあれを落とす。その為に【気合い・覚悟・怪力・捨て身の一撃・薙ぎ払い・剣刃一閃】で荒れ狂う暴風ごと薙ぎ払い相手を切り落とす。
お前らがどんなに欲望を持っていようと!
ただそれだけの為の欲望なんかに!
私の『願い(ヨクボウ)』を止められるもんかぁ!
トリテレイア・ゼロナイン
※ヒーローたらんとするライア様との共闘
攻撃は任せ、彼女の補佐に回ります。頼みましたよ
貴女が目的の為、仲間の為、門番として立ち塞がるならば、私はキマイラFの人々の為、騎士として戦いましょう。
機械馬を自動●操縦で追従させ、二人を●かばえるように動かしゼファーの攻撃方向を制限
そこから攻撃を予測しセンサーで接近を●見切り、●盾受けでライア様を●かばいつつ腕一本を犠牲に受け流します
初撃を凌いだらUCの発振器を戦場に撒き、ゼファーの再飛翔に合わせて檻のように電磁バリアを起動、壁面への激突と電磁波で動きを一瞬封じます
そこに自身を●ハッキングしてリミッター解除した●怪力でライア様を投げて彼女の一撃に繋げます
花畑――システム・フラワーズ――に吹き荒れていたのは、正しく暴風だった。
足場は抉れ、瓦礫が飛び交い、ぶつかり合って耳障りな音を響かせている。
《薄鈍どもの分際で、次から次へとォッ!》
怒りのままに暴れる、破壊の風。
ウィンドゼファーの姿に最早戦いの始まった時の余裕は無く、向ってくる全てを捻じ伏せんと風を操っていた。
「あれ、止められる? トリテレイアさん」
「止めて見せましょう」
そんな花畑と敵の姿を宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は険しい表情で、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は兜の奥の緑光で見つめていた。
「攻撃は任せます。頼みましたよ、ライア様」
トリテレイアは言葉の通り、剣を抜くことなく盾のみをその腕で構える。
……盾と言うにはあまりに大きく、堅く、重いそれは、同性同年代の平均身長よりやや高いライアから見ても壁と感じるのに十二分な迫力を持っていた。
「任されたよ。……一撃で終らせる」
同時にその盾は、――否、たとえその盾が無かったとしても、トリテレイアの存在は守りの全てを委ねられる安心感をライアに与えていた。
故にライアは、この荒れ果てた花畑の直中で瞼を降ろす事も出来る。
唯一つの時だけを待って集中することができる。
「……さて」
そんな彼女を一瞥し、トリテレイアは改めてウィンドゼファーと相対する。
彼の傍らには、一頭の巨馬。
三メートルに近い身の丈とウォーマシンとしての超重量を乗せて走るに足る、機械仕掛けの白馬。
トリテレイアはその馬、ロシナンテⅡに後方からの攻撃に備えさせる。
全身に装備されたセンサーを向けるのは前方と両側面を合わせた二百七十度。僅かでも範囲を絞り、可能な限り感度を高めていた。
「(ライアが目的の為、仲間の為、門番として立ち塞がるならば、私はキマイラフューチャーの人々の為、騎士として戦いましょう)」
腰を落とし、ウィンドゼファーの攻撃を待つトリテレイア。集中を高めるライアを慮って、騎士としての誓いは電脳の中に。
向かい風を感じたのは、ウィンドゼファーの突撃を観測したのは、その後間もなく事だった。
《死ぃねェェェェェェェ!!!》
その盾を、守りを、貴様らを吹き飛ばしてやると語るような、正面からの突撃。
「ぐッ……!」
打ち鳴らされる、轟音。
ぶつかるという言葉など生易しく思える、金属同士の衝突。
速さ/欲望に身を任せた純粋な暴力がトリテレイアの盾に襲い掛かる。
圧し合い擦れ合い、盾をマウントしたトリテレイアの右腕が甲高い悲鳴を上げながら粉砕されていった。
「――ォォォォオオオ!!!」
それでも尚、彼はライアの為の守りを決して解かない。
膠着状態はどれほど続いただろうか。或いは一瞬の出来事だったのかもしれない。
遂にはウィンドゼファーの突撃、その運動エネルギー全てを抑え込み、
《チィっ!》
彼女を止める事に成功する。
《だが次で終わりだッ!!》
再びの飛翔の為、次なる暴風を身に纏うウィンドゼファー。
「……ええ、その通りです」
地を蹴り、魔上へと跳躍するが、
《!? なッ……ガ……》
「次は、こちらの番ですがね」
そこには壁があった。
それは複数の発振器により展開される、電磁波の壁。
構えた巨大な盾の裏、攻防の最中にトリテレイアは肩部ハードポイントから発信器を射出し、ウィンドゼファーの退路を断つ檻を構築していたのだ。
「行きますよ、ライア様ッ!」
トリテレイアの叫び声にライアの瞼が開かれる。
彼は無事な左腕でライアの身体を抱え上げ、渾身の力でウィンドゼファーに向けて投げ上げた。
ロケットの如く上昇するライアがウィンドゼファーを間合いに捉えるまでは、僅かの事。
しかし彼女の集中は、その一瞬を正確に捉える。
「お前らがどんなに欲望を持っていようと!」
《来るなァーッ!!》
見る間に距離を縮めてくるライアにウィンドゼファーは、彼女を押し返すべく暴風を放つ。
しかしライアの放つ剣の一太刀に容易く斬り払われ、その速度を落とす事も出来ない。
「ただそれだけの為の欲望なんかに!」
彼女が振るうは持ち主の思いを糧に質量を増す、骨肉が如き剣。
「私の『願い(ヨクボウ)』を――」
ヒーローたらんとするライアの強い願い/欲望に従い、幾何級数的にその質量を増やし、
「――止められるもんかぁ!!」
電磁波の檻と挟み込むように、暴風ごと、速さへの欲望ごと、
《こんな、コンナあアぁァぁァーー!!!》
ウィンドゼファーを圧し潰し、破壊し、両断するのだった。
ライアは最後に風――と言うには少々荒々しい、落下による空気の流れ――に包まれ、程なくして彼女を受け止めたトリテレイアの腕の中に。
金属装甲に包まれた腕によるキャッチはライアの身体に多少の痛みを与えたが、彼女の願い/欲望が潰えさせられてしまう事に比べれば、痛みの内にも入らない。
斯くして花畑に吹き荒れた風は、数多の猟兵たちの手によって止んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵