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勇者が祀りし護り

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索 #毒 #勇者の布石



「皆さんは何か、勇者の伝説を聞いたことがあるかしら?」
 グリモアベースへ集った猟兵たちにポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)が声を掛ける。
 ――帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったという、未だ所在の掴めない『群竜大陸』
 帝竜がもしオブリビオン・フォーミュラだとするなら、大陸の発見は必須だろう。
「発見のための、何らかの予知を得るために、出来ること――それって勇者たちの伝説を追っていけば良いかしら、と思っているのよね。
 それっぽい伝説を見つけてきたから、調査を頼んでもいいかしら?」
 たとえデマであろうと、勇者の伝説をひとつひとつ解き明かすことは、将来的に、群竜大陸に関する予知の精度を高めることとなるだろう。
 頷く猟兵たちに、ポノはアックス&ウィザーズ世界の、とある地方の地図を広げて見せた。
「今回赴いて欲しいのは、毒の町・ディリティリオ。やや荒野となっている地域で、一方は切り立つ山、一方は平地が続いて川向うに草原があるみたい」
「毒の町とは――穏やかじゃないね」
 猟兵の言葉に頷くポノ。
「そうね。でも、今は至って平和な町みたいよ。
 昔の通り名をそのまま、現在でも使っているみたい」
 商売上、その方が客寄せとなるのだろう。
「昔は結構毒性のある植物が存在していた土地らしいわ。解毒の療法に長けた町で、町民も動物もそこそこ毒に耐性を持っているのが特徴かしら」
「……で、そこで勇者の伝説というと、勇者の毒薬、とか?」
「そう思うでしょう? そうじゃないのよねぇ。この地域に伝わる勇者の伝説は『勇者がつくりし神殿』なの」
 この地から群竜大陸へと渡った勇者はクレリックであった。
 沈みゆく群竜大陸とともに運命を共にしたこの勇者がつくった神殿を見つけようと、人々は調査を続けていたが、結局は見つからないまま。
 気の遠くなる年月が経ってしまった。
「神殿っていうと建造物を思い描くでしょう?
 たぶん、昔に探索した人はそういった物を探そうとしていたのかもしれないわね。
 けれど『俗なるものから分離する』という意味もあるのだし、広義に『聖なる場所』として探してみましょう」
 場所となれば、泉、丘、洞窟、神霊が宿るとすれば、石や木――猟兵たちは考えてみるが、こればかりは現地に行ってみなければ分からない。
「――そもそも何を信仰しているのか」
「火の神様ね」
 火ならば蜥蜴だろうか。
「毒の町・ディリティリオに伝わる話や、小話を拾って、繋いでみてはどうかしら?
 名前にふさわしくあろうと、町ではこの時期、夜市をしているみたい。
 夜市を楽しみながら、情報収集をしてみれば、話は集まると思うわ。
 ――あと、目的の地『神殿』には何か、嫌なもの――オブリビオンがいる気がするわ。どうか気を付けて」
 それじゃ、よろしくね。と、そう言ってポノは猟兵たちを送り出す。


 アックス&ウィザーズに到着した猟兵たちに訪れる、夜。荒野の地ゆえか、肌寒い。
 灯の届かない暗がりから広場へと出た猟兵たちは周囲を見回した。
 夜は訪れたばかりのようで、広場にはまだ子供たちがいる。
 地元民、露店の者、神職につく者、冒険者、自警団などに話を聞くのが良いだろうか。

 篝火に照らされる市の天幕は、色とりどり。
 視界も、音も、異国のもの。香りも――場所によっては美味しそうな匂いが漂ってくる。
 ふと空を見上げれば、星の空が広がり、猟兵たちを天へと誘う。
 吸い込まれそうな星空から、再び地上へと目を戻して注意深く眺めてみれば、タテガミを持つトカゲのモチーフがあちらこちらに。
 猟兵たちは、それじゃあ後で、と声を掛け合い、心赴くままに歩き始めた。


ねこあじ

 ねこあじです。
 今回は、勇者の伝説を探すシナリオです。
 のんびりいきましょう。
 プレイング締め切りなどが決まりましたらマスターページの上部や、Twitterに記載します。
 今回、日程により、プレイング受付開始日が発生するかもしれません(なるべくないようにはしますが)、こちらはリプレイ本文に記載します。
 お手数おかけしますが、ご確認の程、よろしくお願いします。

 以下、ゆるっと方針。
・第一章 夜市を楽しみながら、情報収集をしてみましょう。
 お買い物ができます。
 食べ物は、魚系は干物くらいですが、肉はあります。甘味は干し果物のプティングなどですが、他にもあるかもしれませんね。
 調べるものの方針としては、植物、信仰対象(蜥蜴)、町の歴史などなど。大人、子供、職業と、訊く対象によって出てくる情報も少し違ってきます。
 WIZの静かに星空や景観を愛でるでは、場所によっては気付くことがあるかもしれません。
 一応どのルートでも目的地自体には辿れるようにゆるふわ設定してますので、すべてを網羅する必要はありません。
 話は色々転がしていますので、上記以外の調査を思いつけば、採用可能・不可能は出ますが、挑戦してみてください。

・第二章
 目的地へ行きます。

・第三章
 戦います。

 第二章、第三章の始まりに、軽いまとめリプレイものせます。

 それでは、プレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『夜市にて』

POW   :    店を見て回り、買い物をする

SPD   :    料理や酒、甘味など食事を楽しむ

WIZ   :    ゆったり静かに星空や景観を愛でる

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幽草・くらら
真面目に情報収集してる人には申し訳ないんですけど、現代人の私としてはちょっとこれは筆が乗っちゃう景観ですね……

軽食とか買ってからですけど、近くに街を一望できる所があったらそこからディリティリオの街と夜空が写るような構図でスケッチしてみたいです!

一応軽く買い物する時に少しくらい話聞いたり、
スケッチも名目としては観察って事で辺りに怪しいところが無いかとかチェックしてみますね。




 煌々と、炎が篝籠にて焚かれている。
 橙色の灯は近い露店のガラス工芸を照らし出し、見る角度によって様々な彩りが表現されていた。
 わあ、と小さく感嘆の声をあげながら幽草・くらら(現代のウィッチ・クラフター・f18256)が緩やかに歩けば、反射の光が流れる星のようについてくる。
 くららの指先は思わず空を掻いた。
「現代人の私としては、ちょっとこれは筆が乗っちゃう景観ですね……」
 うずうずとする指先を留めるようにして、ぎゅっと拳を作るくらら。
 自身の心に在る表現の泉が、少しずつ色を変え、満ちゆくのを感じた。
「ええと、まずは軽食と、飲み物を買っていきましょう」
 持ち運びができるように陶器に注がれた果実ジュースにはコルクの栓、軽食は煮詰めたマルメロの実を練りこんだパン。
「ありがとうございます」
「ああ、お待ちよ。運びやすいように、この籠に入れていきな」
 受け取ろうと手を伸ばしたくららを止め、店の女将はやや粗い作りの籠へと入れて、改めて彼女へと渡す。
「客待ちの間に作った籠だけどね、無いよりいいだろう?」
「あ、ありがとうございます」
 目を瞬かせて、くららは改めて礼を述べた。
 コルク栓にはトカゲと思わしき意匠。籠にも、木彫りの同じような意匠がくっついている。
「……これは、トカゲでしょうか?」
「そうそう。お守りさね。木彫りの奴はうちの旦那が作ったものさ」
 その言葉を聞いたせいか、周囲を眺めながら歩くくららの目に映るは色々なトカゲ。
 とある露店には、木板に掛かる数多の焼皿。
 絵付けられた皿には、炎から生まれるトカゲ。木の根元で眠るトカゲ。木の実をくわえたトカゲ。
 描く者としての目でそれらを見ていった。
 夜市を歩いていけば、やがて端へと辿り着く。その時、ふと、高い位置にある篝火に気付いた。
 上げた視界の先には櫓。観察してみれば、それは町を囲うように幾つかあり、利用している人もいるようだ。
「……使ってもいいのかな」
 呟いて周囲を見回したのち、大丈夫そうだと判断したくららは梯子をのぼる。
 町の喧騒は少し遠ざかり、繊細なリュートの音色はやや高く、彼女の耳へと届く。
 上へと辿り着けば、眼下にはディリティリオの町と、その向こうに広がる闇は地平だろうか――それらを覆うは空にある数多の小さな光。
 地上で見た灯の輝度は強く感じたが、それらを囲うような位置となった天幕により、今は内包する光のように柔らかく。
 ふと、後ろを向けば少し遠くに『切り立つ山』がある。この櫓よりも、遥かな一望がのぞめる場所だろう。
 隠れた空で山の高さは分かる気がした。
 広げたスケッチブックに向かえば、世界は眼下の風景と彼女の意識のみ。
 時折テンポを変えるリュートの音色は遠く、指先から伝う筆の動きは軽快に。
 紙の上で躍らせれば、軌跡が生み出す風景――心赴くままに、くららはスケッチをしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
ウェリナちゃん(f13938)と

少女が目を輝かせたなら
目を細め、はい、と手を差し出し
迷子になんねえように
手ぇ繋いで行こーか

ぷてぃんぐって、ぷりん?
洋菓子は詳しくないケド…へえウェリナちゃんは物知りだな
俺は苺味のやつにしよ
ウェリナちゃんはどれにする?
ふふ、こっちもたくさん食べていいよ

ふわふわ可愛い蜥蜴のぬいぐるみを見つければ
ウェリナちゃん、ドラゴンさんの友達になれそな子いっぱいいるよ
あはは、んじゃ可愛がったげてネと購入しぷれぜんと

ちゃんと調査もしなきゃな
ウェリナちゃんもいるし小さな子供に聞いてみようか
ウェリナちゃんに買ったげた蜥蜴を指して
この蜥蜴って、何でこの町で信仰――大切にされてんの?


ウェリナ・フルリール
アヤチャン(f01194)と!

はわ、よるのおまつり、どきどきなのです!(きょろきょろ
まいごになったらたいへんなので、アヤチャンとおててつなぐのです
おおきなおてて、あったかいのです(にこー

リナ、プティングしってるです(えっへん
プティングはあまくないのもあるのです!
でも…あまいのがいいです(じー
リナはドライマンゴーのにするのです!
えへへ、イチゴとはんぶんこですっ

わぁ、ドラゴンさんのおともだち!
えとえと…あ、このこ!
くろくてあかいつりめが、アヤチャンみたいなのです
きっとやさしいこ、このとかげさんにするのです(ぎゅー

ききこみのおしごとも!
「リナはおはなすきですけど、めずらしいしょくぶつあるのです?」



 遥か星の瞬きに応じるが如くに流れる、強弱ある弦の音色。
 涼やかなテンポを奏でるリュートはしばらくのビブラートののち、天幕越しに見る篝火のような仄かな丸みを帯びた音楽へと変化した。
「はわ、よるのおまつり、どきどきなのです!」
 微かにステップしているのか、ウェリナ・フルリール(ちいさな花騎士さん・f13938)の足取りはやや軽く。
 きょろきょろとあちこちを見るウェリナ。その瞳は、少女が動くたびに、篝火に反射するガラスの光源が映りこみ様々な青を魅せた。
 そんなウェリナに気付いた浮世・綾華(美しき晴天・f01194)は目を細めて、はい、と手を差し出す。
 きょとんとするあどけない彼女に微笑みを向け、
「迷子になんねえように、手ぇ繋いで行こーか」
 促されたウェリナが綾華の手にそっと触れ、にこにこ笑顔。
「……――アヤチャンの、おおきなおてて、あったかいのです」
 少し冷たくなってしまっていた小さな手を握り、綾華は少女の歩幅に合わせて歩き出す。
 と。
「あ、プティングです」
 くんっと手を引かれた綾華が、ウェリナの声と視線を辿れば乳製品を扱う飲食店があった。
「ぷてぃんぐって、ぷりん?」
 洋菓子に詳しくない綾華は首を傾げる――想像したぷりんとは、何か違うような?
 ウェリナはふるふると首を振り、やや胸をはる。
「リナ、プティングしってるです。
 プティングはあまくないのもあるのです!」
「……へえ? あ、ほんとだ。色々ある。
 ウェリナちゃんは物知りだな」
 香草と挽肉を使ったもの、ナッツ類、グラタンに近いものもあり、いわゆる家庭料理のように見えた。
 でも、と呟いたウェリナは背伸びして露店をのぞく。何となく繋いだ手を上げてみる綾華。更に背伸びのウェリナ。
「……でも?」
 尋ねてみれば、あまいのがいいのです、と少女は上の空で答えた。プティングの見極めに一生懸命。
 やがて目当ての品たちを見つけたようで――子供たちもよく訪れるらしい店の前には踏み台が置かれていた。ウェリナはそれに乗り、甘い香りを放つプティングを見ていく。
 綾華も見ていけば、一際目立つ赤の色。
「俺はこの苺味のやつにしよ。ウェリナちゃんはどれにする?」
「リナはドライマンゴーにするのです!」
 この黄色や橙色っぽいの、それっぽい。
「はい、毎度ありだよ。直ぐに食べていくのなら、横にスペースがあるからね」
 店のおばちゃんが皿に取り分け、案内してくれる。口当たり爽やかな葡萄ジュースをお供に、いざ実食。
 苺味のものには、アーモンドと牛乳がベースで仄かな薔薇の香り。
 刻んだドライマンゴーは歯ごたえがあり、プティング生地のなめらかな食感と、
「はわ、たのしいのです」
 クランブルが下部にあるのだろう。ざくざくとした食感が楽しめた。
「ふふ、こっちもたくさん食べていいよ」
「えへへ、イチゴとはんぶんこですっ」

 お腹が満たされたところで、再び夜市を散策する二人。
 鮮やかな絵皿の店、様々なランプを売る店、手芸用品店には四方に開く可愛いソーイングセットや色々なモチーフのサンプラーが飾られていた。
 その時、空いた手でとある場所を指す綾華。
「ウェリナちゃん、ドラゴンさんの友達になれそな子いっぱいいるよ」
 ふわふわ可愛い蜥蜴のぬいぐるみたち。棚に並ぶ蜥蜴、上から吊るされて鈴なりとなった蜥蜴と、様々だ。
「わぁ、ドラゴンさんのおともだち!」
 当然一つ一つが手作りで、それぞれが表情を持っている。可愛い子、ちょっと怒っている子、抜けているようでどこか憎めない子。
「こっちのこは、にこにこしてるのです。えとえと……あ、このこ!」
 鈴なりの蜥蜴たちの中から、覗く尻尾を摘んでくるりと回す少女。
「くろくてあかいつりめが、アヤチャンみたいなのです」
 どうですか? とウェリナが掲げた蜥蜴に近付き、綾華はしばしのにらめっこ。
「きっとやさしいこ、このとかげさんにするのです」
 どうやら少女は購入を決めたようだ。ぎゅっと抱きよせる。
「あはは、んじゃ可愛がったげてネ――おじさんこれ一つ」
 抱きよせている間に、さらっと代金を払う綾華に、ウェリナは「え、あっ」とわたわた。
「はわ、アヤチャン、ありがとうなのです」
 蜥蜴のぬいぐるみに灰色のリボンを結んでもらって、ウェリナは大事そうにそのこを抱えた。
 片手にはぬいぐるみ、もう片方の手を綾華と繋ぎ、再び広場へ。
「ちゃんと調査もしなきゃな」
 と、周囲を見回す綾華は、篝籠の近くで蜥蜴の絵を描いて遊ぶ子供たちを見つけた。
 夜の挨拶をすれば、声を揃えて返してくる子供たち。
 目線に合わせるように、やや屈んだ綾華はウェリナの持つぬいぐるみを指差して、
「聞きたいことあんだけど、この蜥蜴って、何でこの町で信仰――」
 子供たち、不思議そうな顔。綾華は一度言葉を切り、改める。
「この蜥蜴って、何で大切にされてんの?」
「おにーさん、たびびとさん?」
「ナール様はあぶないものを食べてくれるんだよ」
 とある子供が、地面に字を書く。歪ながらも識字率は高いのが伺える字。
 ナール・ニバリス。
 一方で、ウェリナもまた足を揃えて座って。
「リナはおはなすきですけど、めずらしいしょくぶつあるのです?」
「……めずらしい?」
 うんうんと考える子供たち。
「えと、みたことがないものとか、えとえと……」
「蜥蜴が食べる、あぶないもの、とか」
 ウェリナの言葉を引き継いで、綾華。
 それがきっかけになったのか、子供たちはそれぞれ言い始めた。
「ううーんと、なんか、実を食べちゃだめって」
「絶対さわるな、って」
「ナール様が食べるものだから、ってかーちゃん言ってたな」
「でも見たことないよね、それ」
「うん」
 珍しいもの、といえばそれなのだろう。
 見たことがないとはいえ、確りと伝えられている辺り、何かがあるのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
胡蝶(f12549)と参加
しっかりと可愛らしいレディのエスコート頑張るぜ
胡蝶の気に入るものがあるといいなぁ

夜市を歩きながら
胡蝶の好きそうな甘味を探すか
迷子にならないように気をつけてな
場合によっては手繋ぐか?
って、オレが迷子扱いかよっ!?
ま、行きたいとこがあればどこでもお供するぜ〜

胡蝶が甘味を食べたり買い物してる間に
店の人から【情報収集】
町の歴史や信仰対象なんかを聞いてみるか
あ、胡蝶のそれオレにも一口くれよなぁ
はいはい、オレからはドライフルーツのクッキーな


鬼灯・胡蝶
マクベス(f15930)と夜市でお買い物

お小遣いの入った財布を握りしめ
初めて見る物ばかりで、尻尾が勝手に揺れちゃうのはしょうがない

きょろきょろと辺りを見れば、興味のある物があちこちに
うっかりマクベスを置いて行っちゃいそう
注意されれば、慌てて「…忘れて…ない、よ…?」って、手を握る
「…こうして…歩け、ば…マクベス、も…迷子、に…ならない、でしょ…?」

お菓子を中心に食べ歩きしたい
こっちこっちと手を引っ張って、あれも食べたいこれも欲しいお土産買ってとおねだり

マクベスと【情報収集】してる間
胡蝶はパウンドケーキを頬張ってにこにこ
「マクベス、も…欲し、い…?…じゃあ…あーん」
マクベスのも胡蝶にあーんして



 色とりどりの天幕。
 飾り幕には異国織の紐が括られている。
 その一つ一つにガラス彫刻が飾り付けられていて、刻まれたトカゲの絵が炎の揺らめきに応じ動いているようにも見えた。
 鬼灯・胡蝶(旅する蝶々・f12549)はお小遣いの入った財布を握りしめながら、初めて見る物たちに目を奪われる。
「わ……あ……」
 雑貨屋一つとっても様々だ。
 革細工の小物、何かを束ねるための紐飾り、
「こっちは旅人向けの店みたいだな」
 マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)が露店を覗きこみ、胡蝶に教える。
 旅の者向けだろうか水袋や角笛、丈夫そうな鞄。気付け薬を入れるための瓶。
 一つ一つに目を向ける胡蝶の尻尾が揺れているのに気付き、そして少女が店の品に夢中になっている間に、マクベスは歩む先へと目を向けた。
(「胡蝶の気に入るものがあるといいなぁ」)
 リュートの奏でに反応しているのか、時折動く狐耳。それを見てマクベスは帽子をやや深く被りなおす。
「迷子にならないように気をつけてな」
 マクベスが声を掛けるも、頷く胡蝶はやや上の空。
 その時甘い香りが漂ってきて、胡蝶がひらりと、つま先を別方向へ。
 一歩、違う方向へ進めば喧騒の色も変化する――。
「ちょ、胡蝶!」
「あ……忘れて……ない、よ……?」
 慌てたようなマクベスの声に、胡蝶の方ははっきりと慌てて彼の手を握った。
 そして言うのだ。
「……こうして……歩け、ば……マクベス、も……迷子、に……ならない、でしょ……?」
「って、オレが迷子扱いかよっ!?」
「……?」
 かくりと首を傾ける胡蝶。ぐ、とマクベスは言葉をのみこむ。小さな手を握り返し、胡蝶が行こうとした方向へと一歩。
「――ま、行きたいとこがあればどこでもお供するぜ~」
 二人で向かった先には飲食を扱う店の並び。
 店と店の間に飲食スペースがあり、結構な規模だ。
 甘味探して、すぐに目に付くのはクッキーやビスケット、タルト。
「マクベス……こっち、ね……」
 マクベスの手を引っ張って、あれを食べよう、これが欲しいと胡蝶。
「お、こっちは土産によさそうだぜ?」
「おみやげ」
 ガラス瓶に入ったお菓子たち。
 店の人が一つずつ試食をさせてくれた。アーモンドの糖衣菓子、様々な形のクッキー。マジパンだろうか、人形のような菓子もある。
「あ、ここにも蜥蜴がいるんだな」
 マクベスが特に目についたトカゲの形のクッキーを何種類か購入。
「ああ、それはナール様だよ。
 ナール様は悪いものを食べてくれる守り神なのさ」
「へー」
 話せる位置にある椅子へ座り、頭の方から食べてみるマクベス。
「こうやってあたしらがナール様を食べることで、あたしらの中の悪いものを食べてくれるんだよ」
 瘴気払いの神みたいなものだろうか。
 毒の町・ディリティリオらしい信仰対象であり、この町が毒とともに歩んできたのが垣間見える気がした。
 その間にも胡蝶は、切り分けられたパウンドケーキを手に。
 干し果物がたっぷりと入ったものと、ナッツ類が入ったもの。それらを頬張って、にこにことしている。
「あ、胡蝶のそれオレにも一口くれよなぁ」
「マクベス、も……欲し、い……?」
 一口サイズに切り分けて、フォークに刺す胡蝶。
「……じゃあ……あーん」
「――ん、うま」
 しっとりとした生地と、甘味と酸味が程よい。
「マクベス、も」
 先程とは違う声色の胡蝶――何かを促しているようで、彼をじっと見上げてくる。真っ直ぐな瞳に、言わんとすることを察するマクベス。
「はいはい、オレからはドライフルーツのクッキーな」
 一枚摘んで、胡蝶の口元へと向ければ、少女はぱくりと。
 初手にさくりと、のちに歯ごたえのあるドライフルーツ。
 噛めば噛むほどに口の中に広がる甘味は、幸せの味だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
さて、初めての世界になるのだが。どんな冒険が待っているのかな。
フードマントを纏い、旅の占い師に扮して行動。
夜市を回りながら、酒や料理を楽しもう。私はいつも
宇宙船で生産した合成食料ばかり食べているから、こういった
自然派の食品は新鮮だ。食事をしながら人々と会話をし、
〈世界知識〉で情報を集めよう。この地域の歴史や、宗教の
話題を知識層の人間や神職から聞き出し、お返しに無料で占いを
してあげよう(適当)。
「毒の町とは、風変わりな異名ですね」
「教えてくださいます? 貴方が知っている、この地方の勇者の伝説を……」
露天では、装飾品や書物を物色。特に本は暇つぶしになるので
面白いものがないか色々探してみよう。



 夜市にてしばらく佇んでいると、人の流れが読み取れる。
 焚かれる篝火は物売りのところに多く、そして篝籠は近い。
 飲食の並びでは灯は遠く、仄かな暗がりはくつろぎの空間を生み出していた。
「さて、初めての世界になるのだが――」
 どんな冒険が待っているのかな、と呟いたガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、漆黒の外套に備わるフードを被り、歩みを飲食店の並びへと。
 選んだ料理は香草サラダとハムの原木を削り、チーズを添えたもの。
「――飲み物はどうしようか」
「お客さん、こちらはどうだい?」
 悩んでいると、店の女将が話しかけ、試飲をすすめてくる。
 酒は穀物を発酵し長期熟成させた――ひと口飲んで気付く、ウィスキーだ。
「強いようなら、薄めたものがあるけど……」
「いえ、これで大丈夫です。ありがとうございます」
「そこのテーブルが空いたから、おあがりよ」
 代金を払い、ガーネットは女将が指し示したテーブルへと移る。
「飲み水はそっちからな」
 近くのテーブルに座っていたおじさんが、樽を示す。こくりと頷くガーネット。ほんの少しフードを上げれば、赤の髪がさらりと一房。
(「宇宙船で生産した合成食料ばかり食べているから、こういった自然派の食品は新鮮だ」)
 原木から直接削り取られた生ハムは、皿に盛られるまで思わずじっと見つめてしまった。それだけ見応えがあった。
 水も貰おうと樽を見たガーネットは、異なる樽が二つあることに気付く。ほんの少しの観察時間を察したのだろう、慣れた様子で、おじさんが言葉を掛けてきた。
「左が甘め、右がやや味気ない水だよ。好きな方を飲みなさい」
「……同じではないのですね――水脈が違うのでしょうか?」
 世界知識を以て、ガーネットは推論を立てはじめる。
「おお、よくわかったな――まだ若いのにたいしたもんだ」
 フードを覗きこむような姿勢を一瞬とったおじさんが言う。
 名乗りはしないが、おじさんは土壌を研究しつつ農業をする職についていた。ガーネットは占いをすることを明かし、同じテーブルへと移動した。
「毒の町とは、風変わりな異名ですが、水脈は無事なのですね」
「ああー……水脈は三つあってな。一つは川に通じていて、ここ数十年に毒気が抜けたものだ。一つは南から流れてくるものらしく、安全だ。もう一つは――」
 と、おじさんはふと遠くを見た。ガーネットが視線を辿れば、星空のなかの闇。何か高い――山だろうか。
「毒気があって飲めたものじゃない。幸い、町には掛かっていないのだが――まあ最近は調査してないけどな」
「汲んでからの浄化にも手間がかかるしねぇ」
 と、言葉を続けた店の女将。ガーネットは相槌をうつ。
「――調査といえば、その昔、町の人々が勇者の伝説を探していたのだとか……教えてくださいます? 貴方たちが知っているこの地方の勇者の伝説を」
「ああ、ヤトゥ様のことかい。
 優れたクレリック――癒し手だと聞いたことがあるねぇ」
「熱心な神官さまだったってぇ話だな」
「確か、ここは火の神様を信仰されているのですよね?」
 ガーネットが問えば、よく知っているねぇと二人は頷いた。
「占いとしても、大事な要素なのかい?」
「ええ、まぁ」
「ナール・ニバリス様は火の神であり、浄化の神であり、毒の神でもあるんだ――農事暦の一つに、火祭りがあるんだが」
 おじさんが言う。ガーネットが彼の説明を聞けば、それは野焼きのことだと分かった。
 風の強い時期でなければ、毒素が空に舞ってしまって大変危険な行事だったようだが。
 最近は毒性の植物もなくなりはじめていて、事前調査はやや簡潔になってきたこと。
 おじさんの話が徐々に違う話に移りはじめた頃、店の女将が止めてくれる。
 ガーネットは礼を述べ、話を聞かせてくれたお礼に占いを披露したのちに場を後にした。
「……なくなりはじめた植物、か」
 ふと言葉にすれば、絶滅危惧種の案件が思い浮かぶ。
 露天市場では、装飾品や書物を見て回った。物語は様々で、毒を使った話はちょっと怖い読み物集だ。
 その中で、丁寧に植物を描き記した手記を見つけ、手に取る。
 植物に詳しい者なら、読み取れるであろうもの――確か、共にきた猟兵のなかにこの方面の識者がいた。
 ガーネットはそれを購入したのち、再び何か面白いものはないかと探していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クララ・リンドヴァル
話によると、群竜大陸と共に運命を共にした勇者の数は何千名にも上るそうです。彼らはその過程で様々な伝説を為したとも。この街では何を為したのでしょう。
解毒、火、分離……薬の製法のようなものを連想しましたが、違ったようですね。
【POW】
お店を見て回ります。
異国情緒溢れる市ですね。眺めて歩くだけで、わくわくしてきます。
お魚を……えっ、干し魚だけ。家にありますね。
それなら、美味しそうな匂い以外のお店に目星をつけます。おそらくですが、薬とか植物絡みの場所なのではないかと。お店の方にお話を聞いてみましょう。



「話によると、群竜大陸と共に運命を共にした勇者の数は何千名にも上るそうです。
 ――彼らはその過程で、様々な伝説を為したとも。この町では何を為したのでしょう」
 皆と別れる前に、クララ・リンドヴァル(本の魔女・f17817)はそう言った。

 静かな場ではぱちぱちと火が爆ぜる音。
 肌寒い荒野の夜は、市場へと赴けば、暖かな空気へと変化していく。
「解毒、火、分離……薬の製法のようなものを連想しましたが、違ったようですね」
 露天市を見て回れば、例えば薬屋。数多の薬草、水薬、練り薬、香木と種類は様々だ。
 この地方の勇者が為したものは何なのだろう。
 ――果たして、それは目に見えるものなのだろうか?
 ――この町の人々が、それとして認識しているものなのだろうか?
 そんなことを考えながら、異国情緒あふれる市を巡ってみる。
 眺めながら歩むだけで、クララの足取りは軽くなり、心も弾む。
「お魚はあるのでしょうか?」
 と、それらしき店を覗いてみれば、
「魚かい? これしかないねぇ」
「……えっ、干し魚だけ、ですか……家にありますね」
 ちょっとしょんぼりするクララに、店主が「ああー」と同じくしょんぼりな表情。
「えっと、一応、川魚が釣れるんだけどね、昔は毒ある川だったから、今大丈夫になってもあんまり皆食べたがらないんだよねぇ」
 あ、これは輸入した干物だから、安全なんだけどね。と店主。
 詳しく話を聞けば、安全な生きた水脈があるらしく、そちらが主な生活水源となっているようだ。
 ありがとうございました、とクララは礼を述べて、次の店へ。
 植物を売るお店を訪ねてみれば、「何かお探しですか~?」と元気な女性の店員さんが話しかけてくる。
「あ、私、いま勇者の伝説を調べているのですが……何か、知っていることって、ありますか?」
「勇者様の――ヤトゥ様が作った神殿のお話ですかね?」
「そ、それです。見つかっていないということまでは分かっているのですけど……」
 そもそも、どうして神殿としての伝説が残っているのかなど、謎は尽きない。
 店員さんは微笑み、言う。
「ヤトゥ様は旅立つ前に、神様は彼の家にて永遠にこの地を見守ってくださることだろう、と仰ったのだそうです。
 ご先祖様は、神様とともにこの地で生きることを決めました」
 彼の家――神殿のことだろう。
 先祖の拓いた土地で、命を繋ぐ人々。それは自然と共に生きる人にとって、当然の人生で。
 例え、それが、その昔、毒に満ちた大地であったとしても。
 そんな土地を守護しているのだろう、神の住まう『神殿』
「おそらくですが、植物絡みの場所なのではないかと思ってはいるのです、が」
 クララの声は少し自信なさげだ。
「うーん……と、植物ですか。
 そうですねぇ……植物絡み……。
 神様は、ナール・ニバリス様という蜥蜴様なのですが、伝承ではナオスの実を好んでいたと聞いたことがあります」
「ナオス……ですか? それはどういった――」
 しかし、クララの言葉途中で、店員は首を横に振った。クララの声が途切れる。
「誰も、見たことが無いのです。
 実が生るのであれば、何らかの木ではあるのだろうと――神官さんは私たちに伝えます」
「……見たことが無い、のですか」
 それは過去に実在していたとして、すでに絶滅してしまったものなのかもしれない、と。思い当たった。
 丁寧にお礼を言って、クララは広場へと戻ってきた。
 猟兵の人数分に渡された地図を広げる。
「俗なるものから分離する……誰も、見たことの無い植物ですか……」
 空を見上げれば輝く星空。
 きっと星は遠い遠い昔に、この大地でそれを見ている――クララは何か見出せないものかと、時折流れゆく星を眺め続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スピレイル・ナトゥア
「やはり、『神殿』を調べるのであれば聖職者さんたちに聞いてみるのが1番でしょうか」
町の教会を訪ねてみるとしましょう
昔は毒だらけだった町なら、神頼みも昔はきっと盛んだったのでしょうし、聖職者さんたちに話を聞く他にもなにか資料などがあるかもしれません
「私たちは復活したという帝竜ヴァルギリオスに繋がる情報を集めています。この町に伝わる勇者の伝説について教えていただけませんか?」
情報を得るためなら、ある程度の寄付も覚悟しておくとしましょう

それにしても、勇者の伝説の調査はかなりの期間続いていますね
この世界を平和にするためにも、『群竜大陸』の情報をどうにか早く手に入れたいものです



 夜風に乗るリュートの調べがスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)の耳を打ち、彼女はそのクロネコミミをぱたぱたとさせ、音を払った。
 荒野の夜は肌寒いものだが、スピレイルは慣れているのか、背筋を凛とさせたまま周囲を見回す。
「やはり、『神殿』を調べるのであれば聖職者さんたちに聞いてみるのが一番でしょうか」
 町人に聞けば、町の教会は直ぐに知ることができた。
(「昔は毒だらけだった町なら、神頼みも昔はきっと盛んだったのでしょうし、聖職者さんたちに話を聞いて……他にもなにか資料などがあるかもしれません」)
 こうやって夜市と、教会へ向かう道を歩くだけで、信仰の度合いは見て取れる。
 幕飾りには蜥蜴の彫り物やガラス細工が飾り付けられていて、魔除けのように扱われているのが、スピレイルには分かった。
「――こんばんは。どなたか、おられますでしょうか?」
 市の喧騒から離れ、教会の扉を叩けば聖職者と思わしき女性が出てくる。
「こんばんは。何か、御用でしょうか?」
「はい。――とその前に自己紹介を」
 スピレイルは本日この町に辿り着いた冒険者の一行の一人だと名乗ったのちに、用件を切り出す。
「私たちは、復活したという帝竜ヴァルギリオスに繋がる情報を集めています。この町に伝わる勇者の伝説について教えていただけませんか?」
「……あら、勇者様のこと、ですか。ああ、失礼しました、私は神官職をつとめるギリアと申します」
 訪問理由が予想外だったようで、ギリアは目を瞬かせたのちに中へと促す動作。スピレイルは一礼し、中に入っていくギリアの後に続いた。
「勇者がつくりし神殿の話は聞いたのですが、まだ情報を集めはじめた段階でして……」
「ああ、なるほど。それでは最初からお話ししましょうか。
 勇者様の名はヤトゥ。癒しの力に長けたクレリックでございました。
 この地に生まれ、この地の神を尊び、信仰厚い方であったと、伝えられております」
 やがて、ヤトゥは群竜大陸へと旅立ち、帝竜ヴァルギリオスとの決戦ののち、沈みゆく大陸と運命を共にした。
「数少ない生存者が死したヤトゥ様の遺品を届けてくださいました」
「遺品、ですか」
「ええ、種でございました。旅立つ前に、お守りとして持ったものらしいのですが、とても危険なもので直接触れれば命を落とすものらしく。鉄の箱におさめ、氷結の魔法をかけ続けていたようです――今も、それは私たちの方でかけ続けています」
 それは、とスピレイルは呟こうとして、止めた――その躊躇いを感じ取ったのだろう、ギリアは苦笑の表情。
「呪いのアイテムみたいでしょう?
 出来るならば、ヤトゥ様がつくったとされる神殿を見つけ、おさめたいところなのですが――きっとヤトゥ様がつくったのだから、癒しの力や解毒の力は強いと思うのです」
 だが、神殿は見つかっていない。
 その『種』を持て余しているのが現状。やや俯き考えるスピレイル。
「氷結の魔法を解くことは致しませぬが、目にしてみますか?」
「……よろしいのですか?」
 願ってもない申し出に、スピレイルはぱっと顔を上げた。
 教会の奥へ。
 途中、紗を幾重にして口元を覆い、入った一室は窓もなく、光も差さぬ場所。光源はギリアの持つ燭台のみだ。
 冷え冷えとした室内。氷結の魔法を維持するのは一苦労だろう。
「なんて、小さな――」
 それは小さな箱であった。小林檎の大きさほど。
「何かの果実の種ではないかと、言われているのですが――お守りとして持つとなると、火の神が好む果実の種なのではないかと推測されます」
 ここで立ち話をするものではない、と二人は退室しながら言葉を交わす。
 火の神が好む果実は、伝承によればナオスの実と呼ばれるもの。
「火の神が好むものでしたら、それこそ、『神殿』にあって然るべきですね」
 スピレイルの言葉にギリアは頷いた。
「――浄化の力が強いことを願いたいものですが……」
 そう、神殿の所在は分からぬまま。
 探し当てたいという願いは今だ変わらぬもののようだ。だからこそ、こんな風に話をしてくれるのでしょうね、とスピレイルは感じた。
 最悪、朽ちている可能性もある、が。
「私たちは勇者――勇者ヤトゥの意思を知るためにここへ来ました。何かが分かれば、また、伺わせていただきます」
 恐らく別方向から切りこむ仲間たちの情報と合わせれば、色々な物が見えてくるだろう。
 教会でお茶をいただき、しばらくギリアと話をしたあと、スピレイルは再び夜の元へと戻っていく。
(「それにしても、勇者の伝説の調査はかなりの期間続いていますね」)
 勇者の数は数千を超すと言われている。
 スピレイルは夜空を見上げた。視認できる星の数――その一つに目を凝らし、
「この世界を平和にするためにも、『群竜大陸』の情報をどうにか早く手に入れたいものです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

泉宮・瑠碧
毒草が多かったから
解毒の療法も発達したのか…
その毒を制しなければ生き難い分
外敵から守る面もあったのだろうか

僕は薬屋や類する所へ行って情報収集
植物の話も聞きたい

薬効のあるハーブを見せて貰い
心中で礼を言ってから幾つか購入して訊いてみよう

蜥蜴のモチーフをよく見るが
火の神を信仰しているからだろうか
勇者もクレリックであったと聞いたし、火とは縁が深いのか
火で蜥蜴というと…火の精霊の一種が思い浮かぶな
…以前に会った大蜥蜴の子達も元気かな

それと、今は荒野が多いみたいだが
毒性のある植物はまだ生息しているのだろうか
川の向こうは草原らしいが…

採ったり荒らそうとは思わない
毒性があるのは草花はそれで身を守るものだからな



 ポン、ポン、と太鼓の緩やかな音が夜市に響き渡っていた。やがてリュートの音が奏でられ、市の喧騒の色が変化していく。
 泉宮・瑠碧(月白・f04280)は灯りに照らされる露店を見ながら、ゆっくりと歩いていた。
 町の顔となる露店――薬草を使った類のものが多く、それらは症状により事細かに分類されているようだ。
(「毒草が多かったから、解毒の療法も発達したのか……」)
 その毒を制しなければ生き難い分、外敵から守る面もあったのだろうか――と瑠碧はこの地における『理由』を考えてみる。
 毒草、毒虫の多発地帯は放置されがちな世界だ。それらに対処してまで人々が住まう地。
 元々は一つの一族から派生した集落であったのかもしれない。闇に生きる者らの毒の生業。
 瑠碧は路地へと入った。話を聞くのなら、客の絶えない表より、並べる商品を作る場所。
 店の内容が分かり易いよう様々な意匠が並ぶ看板。その一つ、すり鉢と葉の意匠の店を瑠碧は訪ねることにした。
「こんばんは」
 営業中なのが確認でき、硬い扉を開けば、軋む音をかき消すドアチャイム。
 さっと店内を見れば、配合を兼ねる薬屋。独特の香りが瑠碧を包みこむ。
 生育中の植物が多くみられ、そちらへ目を向けた瑠碧は、彼らにも心の中で挨拶を。
「いらっしゃいませ。何かご入用でしょうか」
 物静かな声色の女性が、奥から出てくる。店主だ。
「毒草から身を守る術を――どの薬にも主に据える薬草があると聞いたので、見せて貰えるだろうか」
「……旅の薬師様でございましょうか。ええ、確かに。ベースとなる薬草はございます」
 と、店内の寄せ植えを指し示す店主。鑑賞用ではない大きさの鉢だ。
「こちらに少し、多くは庭に。後は希少な薬草です」
「購入はできるのだろうか?」
「ええ、できますよ。薬師を兼ねた者がこの町には多いですから」
 聞けば、店によって薬効の違うハーブが育てられているらしい。手広く多種を、というよりは、一つ一つを特化させていく傾向にあるようだ。
 色々と話を伺い、その中で薦められたもの、乾燥させたハーブを幾つか購入する。
(「――ありがとう。これからよろしくね」)
 手中の袋、そのハーブへと思いを届けるように心の中で言う瑠碧。
「今は荒野の面が多いみたいだが、毒性のある植物はまだ生息しているのだろうか」
「はい。山の手はまだ、生息しております。――絶滅してしまったものも、ありますが」
 それを聞いた瑠碧の青の瞳が揺れる。店主もまた、落胆の色を含む溜息。
「川の向こうは草原らしいが……」
「川向うは、植物の種類が面白いほどにこちらとは違うのです。
 あの川は、流れが迎合したものでして、最近は毒素が完全に抜けたようです」
 こちら側の水脈が枯れつつあるようで、清浄化されていったようだ。そのうち、川の方面から、川向うと同じような植物が育ち出すだろうという予測が町の研究方に広まっているらしい。
 採ったり荒らそうとは思わない――瑠碧は頷く。研究方もしばし『成り行き』を見守る姿勢であるようだ。
(「毒性がある草花は、それで身を守るものだからな」)
 今は、毒草であれど、種の保全に動いているらしい。
 ――資源が尽きかける今からでは、遅いかもしれない。間に合うかもしれない。しかしながら、土質や水質が変化しつつある今、元通りにはならないであろう。
「毒の調査は大変だと思うのだが、何か、素人でも分かり易い見分け方とか、あるのだろうか」
 でなければ、旅の者は目的が無い限りは、この土地を忌避することだろう。
「ございます。ガランサス・ニバリスという花が分かり易いことでしょう。毒の見分けを行なっているのです」
 名を聞いて、瑠碧はスノードロップを思い出す。店主が見せてくれたそれはやはり、真白き花、スノードロップだ。
 しかし。
「こちらの花も、ガランサス・ニバリスなのです」
 また違う鉢。
 他の植物と寄せ植えられた、真白は、黒を基調とした赤斑。
「毒々しいでしょう? 毒草に反応するのか、この花は近くにある種で色を変化させながら、土壌を浄化します」
「触れても問題はないのだろうか」
「はい、触れても大丈夫です。寄せ植えのこれらも、根に毒を持つものですし」
 ガランサス・ニバリスに触れた瑠碧は、挨拶と、労いの言葉を。
「そういえば、蜥蜴も種によっては体色変化を行う――蜥蜴のモチーフをよく見るが、火の神を信仰しているからだろうか」
「そうですね。蜥蜴の姿を持つナール様は火の神として信仰されております」
(「火で蜥蜴というと……火の精霊の一種が思い浮かぶな」)
 火を司り、恐ろしい毒をもつと過大評価されるサラマンダー。
 苦難に負けずに貫き通す心、善なる火を燃え上がらせ悪なる火を消し去る正義の心――それが、かの勇者の信仰の一面だろうか。
 ふと連想するのは、以前に会った大蜥蜴たちだ。元気かな、と彼らの鳴き声や姿を思い出し、ほんの少し微笑む。
 店主は言葉を続けた。
「ナール様は瘴気祓いの神でもあります。
 ナール様を象るクッキーなどを食べれば、体内の瘴気を祓ってくださるという話を、子供の頃から聞かされていますね」
 同一であり、少し異なる。否、浄化の面としてみれば同一であろうか。
 しばし言葉を交わしたのち、瑠碧は店主へと丁寧に礼を述べて店をあとにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シリン・カービン
街のあちこちに姿を見かける、
トカゲ、トカゲ、トカゲ…
「ふふ…」
以前親交を持ったトカゲを思い出して笑みが零れます。

トカゲがここまで民衆に親しまれているのなら、
恐らく町の特色とも深い関りがあるのでしょう。
即ち『毒』と『火』。
このキーワードと結びつく伝承が無いか探します。

この街の冒険者の宿に向かい、名物料理をつまみながら
酒場の女将に聞いてみます。
「トカゲ、街中でよく見かけるけれど、どんな由来があるんです?」
何故街のシンボルの様に扱われているのか。
勇者の伝承や前述のキーワードに結びつくものが無いか。
店内の冒険者達からも話を聞いたり、
壁に貼られた依頼メモにも目を走らせます。

アドリブ・連携可。



 幕飾りにはトカゲの彫り物やガラス細工が飾り付けられていて、魔除けのように扱われているようだ。
 食品を扱う露店では、愛らしいトカゲの形のクッキーなど。
 町のあちこちで、様々な姿を見せるトカゲの姿。
「ふふ……」
 以前に親交を持った大蜥蜴たちを思い出し、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は笑みを零す。
 今なお、彼女のエルフの耳に愛らしい鳴き声が届けられるようだ。
(「トカゲがここまで民衆に親しまれているのなら、恐らく町の特色とも深い関りがあるのでしょう」)
『毒』と『火』――これらに結びつく伝承がないかと――シリンは、冒険者の宿を訪ねることにした。
 宿兼酒場の木製の扉を開けば、やや重低音ながら響くドアチャイム。
 市とはまた違った喧騒が、わっと出てきてシリンの耳を打つ。
「こんばんは! いらっしゃい!!」
 元気な声が彼女を出迎え、女一人であることに気付くと、大きく手招き。配膳途中の酒瓶が大きく揺れた。
「うわっ、イエカ! 俺の酒が零れてるっ」
「ああ、ごめんごめん」
 イエカと呼ばれた女性の店員――否、女将だと察したシリンは、彼女の元へ。
 手巾を投げつつ、詫びのつまみを例の客へと渡したイエカは、シリンをカウンターの席へと促した。
「何か、名物料理などのおすすめはありますか」
「あるよあるよ、安全安心な毒料理定食と、薬膳定食さね」
「イエカ! おすすめに肉が! 欲しい!」
「うっさいよ。肉定食は別であるだろう!?」
 すかさず茶々が入るも、イエカが押さえつけ、シリンは肩を竦めた。冒険者が集まる場でよく目にするやり取りだ。
「では、毒料理定食を」
「いやはやエルフのお姉さん、分かっているねぇ! 名前は?」
 にっこにことした笑顔で厨房へ注文を投げつつイエカは、シリンに問う。同時に行われる色々な手腕が見事だと感じつつ、シリンは名乗った。
 名前はおっかないが、こういったおすすめ定食は名は見掛け倒しで、美味いものが多い。
 毒料理は、やはりソレっぽい色付きであったが、紫芋のポテトサラダが美味しい。
「ああ、疲れたよ、ちょっとばかし休憩するね。
 ダニロ、あんたアタシのかわりに配膳やっといてくれよ――シリンさんは今日来たばかりかい?」
 気にかけてくれているのだろう、イエカは声を掛けてくる。ダニロと呼ばれた男が、何か言葉を返すも慣れたやり取りなのだろう、彼は渋々と配膳を始めた――ちなみに客である。
 シリンは心の中で苦笑したのち、こくりと頷いた。
「トカゲ、街中でよく見かけるけれど、どんな由来があるんです?」
「ああ、ナール様かい。魔除けさね。
 ほら、クッキーを見てご覧。トカゲの形をしているだろう?」
 言いながら大皿を引っ張ってくるイエカ。シリンが一つ摘まんでみれば、確かにクッキーはトカゲの形。
「火から生まれたナール様は、浄化の力が強いんだ。
 ナール様――トカゲの形をしたものを食べれば、体内でおきる厄介事を浄化してくれるんだ、って子供の時から言い伝えられていてねぇ」
「瘴気祓いの一種ですね」
「そんなもんさねぇ。さすがにこれは迷信なんだけどね、それだけ身近な神様なのさ、ナール様は」
「……夜市は、昔、ひっそりとした闇市でもあって、薬効作用のあるトカゲの干物も売っていたんだがな」
「ちょっと、外のお客さんにそういうこと言うもんじゃないよ!」
 ぽそっと呟かれた他客の言葉に、キッと睨みをきかせるイエカ。ほんの少し、手を挙げるシリン。
「……いえ、出来ればそういった情報も聞かせていただければと」
 信仰対象であれど、陰と陽はある。
「今は、売られていないのですか?」
 と、シリンが尋ねれば、直ぐに答えは返ってくる。
「捕獲できなくなっちまったんだよ。
 消えていった毒ある植物と共に、そのトカゲも見なくなった」
「ニバリスは、山にいるって話を聞いたぜ?」
「いや、あそこは厄介すぎるだろう。かなり前の目撃情報は、下場じゃなくて、山頂付近だぞ」
 どんどんと酒場内で言葉が連なっていく。ひとつひとつを聞き逃さない様にとシリンは耳を澄ませた。
 聞けば、ニバリスは、トカゲの神ナールの家名なようなものらしい。
「山は毒性の植物が多いのでしょうか」
 そんなシリンの呟きに、ああ、と頷く冒険者たち。
「即効性の毒消しと、出来れば、癒しの力を持つ者がいれば、まあいけるとは思うが……」
「今は生育旺盛な時期だからな、好んで入りたいとは思わんな……」
「アンタたちがそう言っていると、仕事も溜まる一方なんだけどねぇ」
 黙って聞いていたイエカが、壁に貼られた依頼メモを指し示す。
 シリンが読んでいけば、
『研究方からの採取依頼』
『ガランサス・ニバリスの分布調査手伝い募集』
『水脈調査の同行依頼』
 と、何とも研究方面の依頼が多いことか。
「商隊護衛とか、毒虫退治は直ぐにさばけちゃうんだけどねぇ」
 言い添えるイエカ。
「殺虫剤撒くだけとか、置いてくるだけとか――うおお殺虫剤サマサマな時代だぜ」
 昔はそれなりに大変だったらしい。冒険者たちが拝んでいる。あと、植物採取とかは気が乗らないのだとか。
 よって、研究方自ら乗り込んできて、冒険者を引っ張っていく光景がよく見られるのだとか。
 この場の冒険者たちが言うには、ざしゅっ、ばさーっとやれる仕事が良いらしい。分からなくもない。
「…………。
 ……採取方法、教えて頂いてもいいですか?」
 しばし、いや、かなり考えたのちに、シリンが言う。
「えっ、シリンさん行くの!?」
「仲間とともに行くことになりそうな気が、します」
 このあとは対処法、予防のための塗り薬などを教わり、シリンは酒場をあとにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と行動】
買い物しつつ情報収集をします!
この後は得た情報を元に移動をするわけだし
日持ちのする食材を購入しようかと思います
それと情報収集の方針は「神職につく方に蜥蜴について」聞いてみる…ですね

買い物しつつ他のお客さんをチラチラ
神職っぽい服装の方を探したり
お店の人に神職の方々がよく集まる露天やお店を聞きます
行動時には【コミュ力】と【情報収集】を駆使
もちろん忘れずに買い物もしますよ
干物や干し肉、ナッツやドライフルーツを
中心に購入していきます
…味見と称してもぐもぐ。アヤネさん、このドライフルーツめっちゃ甘くて美味しいですよ!

神職の方に出会えたら忘れずに蜥蜴について聞きますね


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】

【POW】

キャンプの用意のために保存食などの買い物をするネ
気になるのは火蜥蜴
サラマンダーという奴かしら
宗教関係だろうから神職の人を探すよ
市場を移動しつつ情報収集
それらしい人はいないか
教会の様な施設はないか聞いてみる
ソヨゴの買い物は横目で見つつ
あっ、つまみ食い!
僕も食べる
うん、甘いネ

神職の人を見つけたら聞きたいことは
神殿の場所を見つけたいということ
火蜥蜴からのイメージは火口
洞窟、カルデラ辺りだろうか
蜥蜴について謂れなどはないかどうか尋ねてみるよ
解毒というワードからも手掛かりはつかめるだろうか?



 夜市。
 リュートの奏でや篝火の灯りが夜闇を弾き、明るく楽しげな雰囲気を人々に提供している。
「得た情報を元に移動をするわけだし、日持ちのする食材を購入しておかないと……」
 情報収集を始めたばかりの今は当然目的地など不明なわけで、しかし、簡単に行ける場所ではないだろうという猟兵たちの見解。
 城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)はそれに備えるための買い物を。
「店員さん、店員さん、日持ちのする食材――携行食を兼ねたものとかありますか?」
「栄養価を考えるなら、蜂蜜を使ったものが良いかしらね。これはどう?」
 試食としてトカゲの形のクッキーを差し出され、二つに割った冬青は片方をアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)へと渡し、
「あっ、これは、ハニージンジャークッキーですね」
「本当だ。蜂蜜と生姜、食べれば体もあったまるネ」
 それよりも、とアヤネはクッキーの形を改めて見た。
「サラマンダーという奴かしら」
「ナール様のことかしら? 外からきたお客さんは、よくそう言うね。実際のところは、あたしたちにも分からないのだけれど」
 と、店員さん。アヤネは頷いた。
「そうか、やっぱり神職の人に尋ねるのが一番かな」
「どこか神職の方々が集まるお店はありますかね?」
 アヤネに続き、買い物を終えた冬青が問えば、店員は少し考える表情。
「そうね、今宵は夜市。儀式の火が焚かれる夜なの。そこに神官様が何人かいらっしゃるはずよ」
 市の篝火の番人も兼ねてるらしい。冬青とアヤネが人の行き交いをしばらく眺めていると、篝籠を開き木を足す神官を見つけた。
「神官さんはたくさんいるんでしょうかね?」
「兼職の人が多そうだネ――って、あっ、ソヨゴ、つまみ食い! 僕も食べる」
「アヤネさん、このドライフルーツめっちゃ甘くて美味しいですよ!」
 干物や干し肉、ナッツと買っていた冬青は、くわえて買ったドライフルーツのつまみ食い。いつの間にかもぐもぐしていた。
 はいっ、と冬青はドライフルーツをアヤネに渡し、二人肩を並べてつまみ食いだ。
 歯ごたえのあるそれを食べれば、口の中に広がる甘味。
「うん、甘いネ」
 一瞬だけ途切れるリュートの音色。二人は微笑み合って――。

 神官が歩き始めて、二人も歩き出す。火番する様子を見守りつつ――何となく、仕事が終わるまで待ってみる。
 そのうちに夜市の喧騒から離れ、儀式の火が焚かれている場所へと辿り着いた。
 そこにはキャンプファイヤーと、露店があり、露店は神官が営んでいるようだ。品々は護符、お守り、何らかの軟膏、そしてトカゲの形のクッキーなど。
「すみません、お話を伺ってもいいですか?」
 冬青が人懐っこそうな表情を浮かべて、火番をしていた神官へと声を掛けた。
 声を掛けられるのは慣れているのだろう。神官は人当たりの良い笑顔で応じる。
「はい、私でよろしければ、何なりと」
「あの、この町でよく『蜥蜴』を見かけるのですが、何か信仰の対象だったりするんでしょうか?」
「ああ、火の神、ナール・ニバリス様ですね。
 苦難に負けずに貫き通す心、善なる火を燃え上がらせ悪なる火を消し去る力を持つ、炎から生まれる神です。
 強い毒を持つ神でもありますが、浄化の力も持っています。
 トカゲの形のクッキーをよくお見かけになられたでしょう?
 あれを食べれば、体内の悪いものを祓ってくださる――そんな話もあります」
「瘴気祓いだネ」
 アヤネは頷いたのちに続けた。迷信だろうが、毒に耐えてきたこの地ならば、解毒の神としてもありえる。
「僕たちは、勇者が遺した神殿を見つけたいと思っているのだけれど、その昔、この辺りは火山帯だったのかな?」
 火蜥蜴からのイメージは火口。アヤネはそう考えて神官へと尋ねる。
「ええ、大昔の話ですが――今は闇に覆われてみえませんが、あちらの方に、切り立つ山がございます」
 掌で示された方角を見る二人。
「今はもう火が枯れてしまった山にございますが、あの山の火からナール様は生まれたと言い伝えられております」
 ですが、と神官は続ける。
「昔々に、勇者ヤトゥがつくりし神殿を探しに、山へと入った者もいましたが、結局は見つけられず今に至ります」
「やはり山にある可能性が高いんですか?」
 冬青が首を傾げて問えば、ええ、と神官は頷いた。
 だが、それらしい場所は、無い。
「ナール・ニバリス様の生まれ変わりとされる、ニバリスというトカゲの目撃情報が山頂付近であったようです。
 ですが、今は山々に住まう植物の生育旺盛な時期。
 毒草が多く、危険な場所ですよ」
「――うん、けれど、もう少し情報を集めて、僕たちは探しに行ってみるつもり」
「……そうですか。では、毒草への対処法をお教えいたしましょう」
「メモします!」
 神官の言葉に、はいっと冬青が挙手し、準備を始める。
 毒草、毒虫、予防法と毒を受けた時の対処法など色々なことを教わり、
「くれぐれもお気を付けて」
 という神官の言葉に頷き、丁寧に礼を述べて、二人は夜市の中へと戻っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

夜市だー!(耳ピン)
ポノちゃんも来れたらよかったのに。
お土産探そ、近所のおばちゃんたちと、ポノちゃんのぶん!

お店の人たちに、おススメ土産聞いてみるー♪
ココ、毒の街なんだってねー。毒消しとか名産?
夏場の虫除けみたいなの?
鶏除けは?(ぽそ)

勇者もいたんだってね。勇者と関係あるモノも売ってる?
せっかくだからお土産にしたいし、まつわるお話もあったら教えてー?

広場に冒険者の人いたら、最近流行ってる食物や遊びの噂を聞いてみよー♪
うん、おいらも冒険者になりたいなって。(琥珀拳見せて)
手合わせする? おいら強いよー?(ひらりひらり)

……まあ、アンちゃんは更に強いんだけど(ぽそ)。


木元・杏
まつりん(祭莉(f16554))と夜市

少し冷えるね
フード付膝丈コートを羽織って息をはくと少しあたたかくて
お店の灯りもきれいであたたかね
…………納豆はなくてもチーズあるかも(納豆苦手な子)

鉱石のオブジェやアクセサリーはある?
石が採れた場所の由来や言い伝えをお店の人に聞いてみて
情報収集しながらお土産選ぶ
つんでれのお友達には白乳色の石の武器飾り

……まつりん?(探してきょろきょろ)
はぐれたら慌てて探すけど
お店の誘惑にも負けてふらふら

ん、まつりん見つけた
何買ったの?

広場には子供も多いね?
トカゲのモチーフもたくさんで
夜空もきれい
夜空にもトカゲの星座、ある?
子供達に聞いてみて
色んなお話を聞くだけでわくわくね



 夜闇を弾く篝火がぱちぱちと籠のなかで爆ぜた。
 目を向けた木元・杏(微睡み兎・f16565)が何となく掌を上へと翳してみれば、ほんのりと温かな火のもてなし。
「少し冷えるね」
 羽織ったフード付きの膝丈コートの前をしっかりと閉じ、息を吐くと少しあたたかい。
「お店の灯りもきれいであたたかね」
 幕飾りのガラス工芸がきらきらと光を反射していて、薄らと彫られたトカゲの絵は刹那の彩り。
 と、
「……ッ、夜市だー!」
 わあっと声を上げて、跳ねた双子の兄、木元・祭莉(花咲か遮那王・f16554)が杏の手を握る。駆けだそうとするので、杏は踏ん張った。ちょっと大人しいなぁと思っていたのだが、どうやら、駆けだすまでに色々と感情のタイムラグがあった様子。
「アンちゃん、お土産探そ、近所のおばちゃんたちと、ポノちゃんのぶん!」
「ん、つんでれのお友達のぶんも、ね」
「あと、いろいろ食べたい!」
「……納豆はなくてもチーズあるかも」
 きょろっと見回して、大胆に焼かれる肉や焼きたてのパン、切り分けられたチーズと生ハムの原木を目にする二人。スープには根菜がごろごろ。
 なんというか、豪快だ。
 杏が祭莉の手をくいくい引いて、とある店の前に立った。
「あら、いらっしゃい。ゆっくり見ていってね」
 売り子の女性が笑顔で二人を出迎えた。
 鉱石屋な露店には、大きな石、小さな石が並べられていて、籠の中には彩色された石がたくさん。かと思えば、板のように揃った大きさの石――何か絵が彫られている。
 一枚一枚が違っていて、まるで絵本のように。
「これは……?」
「うん? ああ、それはナール様のお話が彫られているのさ」
「なーるさまー?」
 杏の疑問に答えた売り子は、祭莉の声に改めて丁寧に説明をしてくれる。
「ナール様っていうのは、トカゲの姿をした神様のことだよ。
 ほら、実を食べている姿とか、愛らしいだろう?」
「このアクセサリーもトカゲね」
「魔除けのお守りだからね。黒曜石にちっちゃなトカゲがのっていて可愛いだろう?」
 これは、あれは、と尋ねる杏に答えていく売り子。
 六面体、八面体の邪気祓いの石は最近じゃとんと採取できなくなり値段が上がっているとか。
 万病に効く薬石など、彩りは乳白、金、黒、黒に金や濃緑が混ざったもの、これらの石は全て北の山で採れたのだとか。
 色々な話を聞いていく杏。
「大昔が火山帯だったらしくてね。
 今じゃここも平地に近いけれど、毒草が無くなってきた今、色々採れるようになったのさ」
「ココ、毒の町なんだってねー。毒消しとか名産?」
「そうだね。名産だね。そして必須。予防には軟膏をオススメしておこう。
 この辺で火を焚く時は、香木を使ったりね」
 と、篝火を指差す売り子。気付かぬところで色々な対策がなされているようだ。
「必須なんだ~……それって、夏場の虫除けみたいなの?」
「そうそう毒虫とかね、いるからね。あとは肌から入る毒に触れないように、とかね」
 へ~と呟いた祭莉は、やや目を逸らし、杏がアクセサリーに意識を向けているのを確認した後に、こそっと尋ねる。
「鶏除けは……?」
「ええ?? ――獣よけや鳥よけのお守りはあるよ??」
 少年のわりと深刻そうな声色と表情に、売り子は改めて言葉後半に呪いの石やリアル怖いトカゲの像を勧めた。
「これにしようかな」
 つるりとした肌触りの石を撫でる杏が呟いた。
 つんでれの友達に似合う武器飾り。
 白乳色の石のそれを買い、杏たちは鉱石屋を後にする。
 次は祭莉が雑貨屋をひょっこりと覗きこみ、
「勇者と関係あるモノとか売ってるー?」
「お、ヤトゥ様か~。この聖印の指輪とか、ヤトゥ様が身に着けていたものと同等だぞぉ」
 見せてもらったのは、ジャスパーという石を加工した指輪だった。
 癒しの力に長けたクレリックは、信仰厚い人物であったようだが、驚くほどに目立った伝承が残っていない。
 毒の扱いにも長けていて、そのレシピは今も伝わっているんだがな、と店主。――表じゃ売れない物だ。
「そういえば、ニバリス……今じゃとんと見ないトカゲなんだが、ニバリスの扱いにも長けていたって聞くなぁ」
「何か美味しいモノをあげてたのかな……?」
「どうだろうなぁ。ニバリスも、ナール様と同じ実を好むっつー話だが」
 それ自体、見た者がいない。
「……まつりん?」
「アンちゃん、こっち!」
 お店をあちこちふらふらとしていた杏の呼ぶ声に、手を挙げ声を返す祭莉。
「ん、まつりん見つけた。何か買うの?」
「まあしばらく悩んでいきな。ほら、この飴細工をあげよう」
 やっぱりこれもトカゲの形をしていて、飴は蜂蜜と生姜の味がした。

「あっ、冒険者のひとだー♪」
 広場へと戻ってみれば、さきほどと同じところに子供たちと、新たに冒険者が何人か。
 祭莉は冒険者のところへ駆けて行き、杏はきょろりと見回したのちに子供たちのもとに。
 わんこのように跳びこんだ祭莉に、冒険者のおじさんが笑い声をあげて応じていた。もう馴染んでいる。
「最近流行ってる美味しいものってなんかあるー?」
「なんだボウズ、腹減ってんのか?」
「うん!!」
 おすすめ、おすすめ! とわくわくした声で言えば、そうだなぁとおじさんは考える仕種。
 ピリピリするタレのかかった串焼き。フェアリーの作った繊細なマジパン。
 お兄さんがポンと手を打ち、
「この町だと、毒料理定食の紫芋のポテトサラダだな」
「すっごい名前」
 ちなみに遊びは子供にはまだ早いと教えてもらえなかった。頬を膨らませる祭莉。
「なんだぁ? ひょっとして冒険者にでもなりたいのか?」
「うん、そう。おいらも冒険者になりたいなって」
 と、拳を突き出して装備しているアンバーナックルを見せた。
「お、格闘術か?」
 にっこりと笑みを深めるおじさんがずずいっと前に出てくる。
 同じく祭莉もにっこりと。
「手合わせする? おいら強いよー?」
 ……まあ、アンちゃんは更に強いんだけど……と、ぽそっと呟く祭莉――ふと、杏がこっちを見たのに気付き、へらっと手を振ってみせた。
 その時。
「あーまてまて、ちょっとまて」
 二人を止めに来るお兄さん。あんだよ止めんのかよ、とヤル気だったおじさんは抗議する。
「そうじゃねぇ。賭けの準備くらいさせろ」
 ――と、騒がしい彼らから少し離れた場所で、星座の話を子供たちから聞く杏。
「でねぇ、お家をつくってあげたヤトゥさまに、ナールさまが赤い指輪をあげたんだって」
 その指輪が、あの、赤い星ね、と。たどたどしく語られる物語。
 杏が少女の小さな指を辿り、目を凝らしてみれば、確かに赤い星があった。
「おねえちゃん、覚えた?」
「ん、あの赤い星がナール様の目で、こう、辿っていけば、大きなトカゲの星座になるの」
 杏の答えに、そうそう、と女の子たちが頷く。
「色んなお話を、ありがとう」
「ううん、どういたしまして」
 星空の下、喧騒を向こうにお喋りをしていると、やがて親が少年少女たちを迎えに来た。
 家路につく彼らを手を振って見送ったあと、兄のほうを見れば何やら勝ち抜き戦のような有様になっている。
 ほんの少し溜息。そのままにしておくか、止めるべきか、迷いながら杏は彼らのもとへと歩いてくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルノルト・ブルーメ
外套のお陰でそこまで寒くはないけれど……
さて、どうしようね?

折角だから店を回って
信仰対象である蜥蜴に関する逸話でも聞いてみようか
一つと言う事はないだろうから
幾つかの店を回って……売っている品々を褒めたり冷かしたり
旅のついでに立ち寄った風を装って、色々な話を聞こう

勿論、蜥蜴の話に限らず
勇者の話も残されているのであれば聞いてみるのも悪くなさそうだ

蜥蜴、可愛いよねぇ……
っと、信仰対象を可愛いとか言ったら失礼にあたるかな?
いや、僕も大蜥蜴をね?
預かって貰っていて今回の旅に同道はしてないけれど
可愛いよね?

あぁ、そうだ……
火の神は、毒を用いる事で何かから町を守っていたのかい?
そう言う逸話はないのかな……?



「外套のお陰でそこまで寒くはないけれど……さて、どうしようね?」
 闇色に染まった外套に身を包み、やや影に入ったアルノルト・ブルーメ(暁闇の華・f05229)は喧騒を聞き分けるようにゆるりと見回した。
 トカゲの形の菓子、絵皿に描かれる物語調のトカゲ。
 至るところで見かけるそれにふと微笑み、夜を照らす篝火のもとへその身を晒す。夜市へと一歩。
(「折角だから店を回って、信仰対象である蜥蜴に関する逸話でも聞いてみようか」)
 一つと言う事はないだろうから――と。
 薬屋の露店からトカゲ自体がもつ薬効について。
 雑貨屋からはトカゲの好物の実の話を。
 そして次に気になったのは物語風に描かれる絵皿だ。
「いらっしゃい」
「こんばんは、御主人。通り掛かって気になったのだけれど、この皿は物語になっているのかい?
 凄く綺麗に描かれているね」
「ああ、ありがとう。そうだね。ここにあるのは、勇者ヤトゥ様と火の神・ナール様の話さね。
 ある日、ヤトゥ様の夢の中にナール様が現われて言ったんだ」
 描き手なのだろう。店主は物語に詳しそうだ。
 彼が語る話――。
『夢の中にあらわれた神様はいいました。
 敬虔なるヤトゥ。どうか、僕たちのおうちをつくってくださいと。
 そうしてふたつの果実を渡しました。
 果実を見たヤトゥは言います。
 あなたのおっしゃる家は、人を死へと導くものです。
 神様は言います。
 それならどうか、人が来ぬ場所へ。この毒が広がらないように。あなたたちが、あなたたちの手に終えぬ毒に晒されたときに、僕たちが助けられるように。僕たちがいのちを繋ぐおうちをつくってください』
「僕たち――?」
「ナール様はニバリスという家名を持っていて、小さなトカゲたちの神でもあるのさ」
 小さなトカゲ――どれ程の大きさだろうか。
 アルノルトは絵皿を見つめるが、読み取れない。
 果実が家になるのだろうか――となれば、『木』か。
 答えを導き出したところで、アルノルトは頷いた。そして絵皿を見つめたまま、やや真顔で言う。
「蜥蜴、可愛いよねぇ……っと、信仰対象を可愛いとか言ったら失礼にあたるかな?」
「いや、可愛い」
 分かる、と店主は言った。
 そして自分のおやつらしき、トカゲの形のクッキーを取り出した。
 皿に盛られたそれをアルノルトにすすめてくる。
「あ、では、頂戴するよ」
「長年、そりゃあ子供の頃からトカゲを描き続けてきたんだ。もう子供のようなものだ」
 うんうんと頷き合う二人。
「いや、僕も大蜥蜴をね? 預かって貰っていて今回の旅に同道はしてないけれど――可愛いよね?」
「可愛い」
 噛み合っているのか、いないのか、よく分からない会話をしているアルノルトと店主だが、とても満足そうに頷き合っている。
 アデライーダは可愛い。元気でお転婆で、そして気のいい大蜥蜴。ちゃんと留守番ができているだろうか? と考え、そして、ここで我に返るアルノルト。
「あぁ、そうだ……。
 火の神は、毒を用いる事で何かから町を守っていたのかい?」
 そういう逸話はあるかな……? と尋ねれば、ふぅむ、と店主は考える顔。
「神官様が言うには、毒を以て毒を制す、ということらしいがな――私が思うに、ナール様はご自身からの毒からこの地を守ろうとしていたのではないかな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
毒の町で信仰されているのが火の神とは
中々繋がりが掴めぬが、何せ情報も乏しい故
…ふふん、良いぞ興が乗った
此処は探りを入れてみるとしよう

景観を楽しむ中、植物の中でも特に多く目に留まる物を観察
私の世界知識で分る品種ならば良いが
分らぬならばコミュ力を用いて町人に聞いてみるのも手か
出来れば神官――それに類する者が良い
もしかすると植物と信仰との関係も探れるやも知れぬ
何より私が気になるのは、毒の町と呼ばれるディリティリオに何故火の神が信奉される様になったのか
それは勇者が訪れて以降なのか、それともそれ以前からなのか
…信奉の歴史は奥深く、興味が尽きぬもので
どうか立て続けの問いには御容赦を

(従者、敵以外には敬語)



 ぱちぱちと音を立て爆ぜる篝火。
 その数は多く、火の番として神官職の者が時折巡っていくのを見かける辺り、火は聖なるものと認識されているようだ。
(「毒の町で信仰されているのが火の神とは、中々繋がりが掴めぬが、何せ情報も乏しい」)
 故に。
 流麗なる杖でトンと軽く肩を打つアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の唇がゆるやかな弧を描く。
「……ふふん、良いぞ興が乗った。此処は探りを入れてみるとしよう」
 しばし夜市を歩くことにしたアルバ。
 天幕や、幕飾り、並ぶ露店の品々へ目を向け景観を楽しみながら、その青の瞳は注意深く観察するように。
 そして気付く。
 この町には至る所に、スノードロップのような花が咲いていることに。
 膝を折り、そっと指を添えてみれば滑らかな花弁の感触。
「其方……」
(「……否、此れは似て異なる種」)
 スノードロップよりはやや大きな花。雪の耳飾りと称されるには、やや上向き。何より開花時期が違う。
「いくつかの地方で同名称の異なる種があったな――確か、名はガランサス・ニバリス」
 真白の花弁が常態であるが、土壌によってその色を変える種。よくよく、今度は露店の――薬屋の並びを観察する――根に毒持つ植物と共に植えられているガランサス・ニバリスがあった。黒を基調とし、赤斑の花。
 毒持つ土壌の見分けは此れで行っているのだろうか。
 と考えた時、その寄せ植えを置く露店に一人の神官が訪れた。
 トカゲの形のクッキーを渡し、かわりに香木を受け取っている。一言二言を店の者と交わし、ゆるりと去ろうとする神官。人の流れは薄く、アルバは声を掛ける。
「今よろしいでしょうか? お尋ねしたいことがあるのですが……」
「はい、いかがなされました?」
「そこの、ガランサス・ニバリスのことを伺いたいのです」
 アルバが声を掛けた神官は、研究方を担う者であった。
 推測通り、ガランサス・ニバリスの色分布により土壌の安全性を確かめているらしい。
 川の方面は白く、切り立つ山の方は――毒々しく。
 これは目的地への指針となるだろう、とアルバは思った。
 荒野に点々と咲く花は、ある意味、目印だ。
「ですが、山頂付近のガランサス・ニバリスは色が違うのだという話がありました」
「……何か、違う毒性の植物があるのでしょうか?」
 だが神官はゆるりと首を横に振った。
「分かりません――中々調査へと入れないのです、あの山は」
 毒草、毒虫、あの山だけは毒性の強い植物が生育旺盛で、立ち入るには覚悟がいるのだと彼は言う。
「されど絶滅したと思われる種の確認もされているのです」
 実際に行ってみなければ、分からない。そう判断したアルバ相槌を打ち、次の質問へ。
「――毒の町と呼ばれるディリティリオに、何故火の神が信奉される様になったのか、それもお訊きしたく。それは勇者が訪れて以降なのでしょうか」
 と、そこでアルバは、改めて神官へと言い添える。
「……信奉の歴史は奥深く、興味が尽きぬもので――どうか立て続けの問いには御容赦を」
「ああ、旅の方には長く、そしてやや入り組んだ話となってしまいますが――ここは大昔、火山帯でした」
 そう言って、神官は言葉で綴り始める。

 火から生まれて、その身に強い毒を持ち、一帯を毒の大地に染めてしまった火の神・ナール。
 ナールは嘆き、その涙は雨となるも、その水すらも毒。
 一帯に盛る炎を消してしまった。
 新しく芽生える生命もまた毒に侵されて。
 毒涙を流したせいか、その身から毒が抜けるナール。残ったのは浄化の力。涙は尽きてしまった。
 ある神が可哀想にと、一つの白い花を贈る。
 大地に根付いた花はたちまち毒々しい色へと変化してしまったが、それは大地の毒を浄化してくれる花だった。
 ある程度大地に浄化が進むとヒトが住み始めた。
 盛っていた炎が消え、寂しく思っていたナールは、再び違う意味の賑やかさを知り、大層喜んだ。
 浄化の力も強いナールはこの地で信仰対象となった。

「トカゲの形のクッキーなどがありましたでしょう?
 あれを食べると体内の毒を祓ってくれるという言い伝えもあります」
「瘴気祓いですね」
 アルバの言葉に神官は頷く。
「ですが、浄化が進むとナール様の力も弱っていくようでした。眷属として、ニバリスと呼ばれるトカゲを作ります。
 彼らは薬効作用を持っておりました」

 捕獲されその命を人へと捧げていくニバリス。
 ナールの身が朽ちて長い時が経つ。
 ある日、ナールは敬虔なる信徒にしてのちの勇者ヤトゥの夢へと立つ。
 彼らが命を繋ぐための家を作ってほしいと、二つの実の種を渡した。

「種ですか」
「はい。恐らくはナオスと呼ばれる果実のものです。彼らの好物なのです。
 ――ですが、それを、今生きる者は誰も見たことがありません」
 その時、ぱちっ、と篝火が大きく爆ぜて、二人はここが夜市の最中であることを思い出した。
 アルバが聞いたものは伝承とも呼ばれる、とても古いものだ。
「以上にございます」
「ありがとうございました」
 礼を返し、去っていく神官を見送るアルバ。
 ぱちぱちと火が爆ぜる――ふと、それが火蜥蜴の声のようにも思えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『切り立つ山で素材集め』

POW   :    すぐ傍に崖がある山道で命懸けの採取

SPD   :    獣の足跡を辿りながら落ちている物を採取

WIZ   :    図鑑を手に散策しながら採取

👑11
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●おはなし

 ナールは、ヤトゥの夢へと訪れました。
 そしてお願いをするのです。
「敬虔なるヤトゥ。どうか、僕たちのおうちをつくってください」
 ころりころりと、小林檎のような実をふたつ、落とします。
 その実をみたことのあるヤトゥは、おそれながら、とナールにうかがいます。
「ナール様、あなたのおっしゃる家は、人を死へと導くものです」
「それならどうか、人が来ぬ場所へ。
 この家の毒が広がらないように。
 あなたたちが、あなたたちの手に終えぬ毒に晒されたときに、僕たちが助けられるように。
 僕たちがいのちを繋ぐおうちをつくってください。
 これはおれいの指輪です」

 目を覚ましたヤトゥの指には、赤い石の指輪がはまっていました。
 そして例の実。あわてて氷結魔法をかけます。
 ヤトゥは人がこない場所へその実をひとつ、埋めました。
 花の種を蒔きました。
 そして、ナールとニバリスのおうちを作りました。
 そこはニバリスたちの聖域となりました。


 円卓を借り、地図を広げた猟兵たち。
 持ち寄った情報を整理していく。

 勇者の名はヤトゥ。敬虔なる信徒であるが、遺品として教会に届けられた毒の種をお守りとして持ち歩いていた辺り、やや行き過ぎた人格であったかもしれない。
 なお指輪は彼とともに沈んだと思われる。

 トカゲの神の名は、ナール・ニバリス。
 火から生まれ火を司り、その身に強力な毒を持つ。
 強い浄化の力もあり、人々の間では魔除け・瘴気祓いの神として親しまれている。
 ニバリスは神の眷属のトカゲ。
 高い薬効作用があり、その昔は干物として売られていた。今はその姿を見ない。
 目撃情報は、山側。

 ナオスの実。
 ニバリスの好む実。ナールがヤトゥに二つ与えたとされる実。
 一つは何処かに埋められ、一つは勇者が持ち歩いていたと思われる。
 他の一部毒草と同じく絶滅種か。
『神殿』か? 昔に見つからなかった理由は、木の生育具合によるのかもしれない。 

 ガランサス・ニバリス。
 一見、スノードロップのような花。多年草。
 白い花を咲かせるが、土壌に反応し色を変える。
 毒草の近くでは黒を基調とした赤斑。山頂にもあるとのことだが、色は違うみたい?

 火口、目撃情報、ガランサス・ニバリスの色分布、そして水脈の違いから、恐らくは毒性の強い植物が生育旺盛な山に、『神殿』はあると予想する猟兵たち。
「山登りですね」
「毒草の見分けは――ああ、手記がありましたね。ナオスの、木も記載されています」
 仲間が手に入れた手記には、絶滅されたとされる植物も載っていて役に立ちそうだ。
「どんな木なの?」
 読んでみる。

 全体に猛毒を含む。
 降雨中にナオスの下にいると、滴ってきた雨水に触れただけで猛烈な肌の痛みに襲われる。
 喉は腫れ上がり、窒息に至る。
 果実を食べると死に至る。

「……」
 水溶性の毒のようだ。
 手記の写し。
 加えて解毒の薬、予防の塗り薬、薬草などを次々に円卓に並べて、一気に卓上は雑然とした。
 気付けば朝日が昇っていて、例の切り立つ山が薄らと見える。
 一部の猟兵は、隅の方でうつらうつらと眠っている。
 連山だったらお手上げだが、まあ、何とか丸一日で辿り着けそうな気がする。
 が、準備期間がもう少し欲しい。
「出発は明日にしようか? どうする?」
 明日早朝に出たとして、帰路は野宿は必須だろうか――この町に戻ってくるか否かで変わってくる。
「あとたくさんのオブリビオンがいる可能性もあるんだよね……毒性に耐えてる……というか、毒持ちかな?」
「……。出発は、明日早朝にしよう」

 一体どんな気持ちでこの『神殿』を作ったのだろうか、勇者ヤトゥは。
 だが分かる、トカゲのためだ。
 中々に厄介な人――否、場所だ。
「一応、採取依頼が冒険者の宿から出ているのを確認しています」
「あと、教会に遺品として届けられている、勇者の遺品もどうにかしないといけませんね」
 毒の実の種は箱に入れられ、氷結魔法をかけられて、封印みたいな扱いになっている。
 完全に呪いのアイテム状態な気がする。
 持て余している教会の人が可哀想になってくる。
「持って……行く?」
 悩みの声をあげる猟兵たち。厳重に厳重に保管すれば、なんとか……なんとか!
「――実際に場所を見てから、種を埋めるかどうか決めましょうか」
「採取は、毒草の中に耐え抜いた薬草とかがあるかも、ね」
 してもいいし、しなくてもいい――。
 一応の方向性を決めて、猟兵たちは各自、一時の休息をとるのだった。

 町を出て、山を目指し道を歩く。
 早朝の出立故か、他に人の姿はない。
 荒野に物を見かけるも、どこか閑散としている風景。
 突き刺した木の棒に赤紐が括られているのが散見され、そこには毒草があるのだと知れた。
 町から町を繋ぐ道を外れてしばらくすると山岳荒野へ。
 遠目では緑に覆われているように見えたが、近付けばむき出しの地面の割合が多い。
 されど、上へと目を向ければ繁る緑が見える――。

 思ったより早くに山のふもとに到着できた。

 毒草は扱いによっては薬となるものもある。
 毒虫は部位によっては、暗器となったり塗布用の毒が採取できるだろう。
 そしてこの山は採石の手が入っていない。火山帯で産出される鉱石も採れそうだ。土壌に問題はあるが、逆を言えば力の強い石が採れるかもしれない。
 もちろん、登りやすいルートを選び真っ直ぐに向かうのもありだ。
 肌に軟膏を塗り、膜を作ったところで、さらに手袋を。
 毒虫除けの香木をベルトに挿し。

 勇者ヤトゥがつくりし神殿――そこに、今、何があるのか――猟兵たちは、山の頂を目指す。
浮世・綾華
ウェリナちゃん(f13938)と

猟兵とはいえ、ちっちゃな女の子に
険しい道を行かせる気にはなれず

俺、すぐ疲れちゃうから
登りやすい道行くんでい?
ありがと、ウェリナちゃんは優しいな

白い花、毒を浄化する――
ガランサス・ニバリスだっけ

うん、そんな話だった
ナールさまの家の毒――
ナオスの毒はいのちを繋ぐ特別な毒だから
咲く花の色も違うんかねえ
一体どんな色、してんだろうな

うわ、あれ毒虫か?
虫、だいじょぶ?
ん、そんなら捕まえとこ
使えるかもだし
鳥籠を念力で操作し捕獲
生け捕りがダメそーなら器具で刺す

疲れたなら手を取るのもいい
ウェリナちゃんと一緒だから山道も苦じゃないな?

指輪の石と同じ色
近くまで、行ってみよっか


ウェリナ・フルリール
アヤチャン(f01194)と

リナ、たいりょくはじしんあるです(装備万端、ぐっ
なるべくのぼりやすいみちいくです(こくこく
しろいはなもってくです

おはなのいろ、さんちょうちがうのですね
おはなくろくするどくを、さんちょうのナールさまのおうちのどくがやつけるです?
ナールのみもしんでんも、みんなみたことないのです
でもはなしたこ、みにさわるのダメいわれてたです
みんないかないどくのくさのさんちょうに、ナールのみがなるき…しんでんあるです?

むしさん、リナへいきです!(逞しい
おててつないでアヤチャンとやまのぼり!
どくのかわたどるです

アヤチャン、あかいおほしさまです!
あのナールさまのおめめはなにみてるのでしょうか?



「リナ、たいりょくはじしんあるです」
 やや足場の悪い山岳荒野。その山の口にて、小さなおててでぐっと拳を作ったウェリナの目は強し。
 準備万端に装備を纏い、やる気に満ちた表情。
(「んー」)
 そんな少女の背を見つめ、綾華は考える。
 猟兵とはいえ、ちっちゃな女の子に険しい道を行かせる気にはなれず――彼が「ウェリナちゃん」と声を掛ければ、白い花を持つ少女が振り向いた。
「俺、すぐ疲れちゃうから、登りやすい道行くんでい?」
 首を傾けて訊いてみれば、一瞬同じ方向に首を傾けた少女は、こくこくと頷いた。
「なるべくのぼりやすいみちいくです」
 作った拳をゆるゆると解き、ウェリナは白い花を抱え直した。根と土を布で包んだ生きた花。
 ほんのたまに、町の研究方が山のふもとまで来るのだろう。ささやかな道標には道程が刻まれていて、緩やかな傾斜が続く方向を二人は選んだ。
 やや遠回りとなるルートではあるが、先の見通しは良く、時折植物の集合地帯を目にすることができる。
 その中に、黒い花。それには赤斑が無く、毒の度合いが違うのだろうか、と綾華は思う。
 ウェリナの持つ白い花を雪の耳飾りとするのなら、あれは黒真珠の耳飾りと称すこともできそうだ。
「白い花、毒を浄化する――ガランサス・ニバリスだっけ」
「おはなのいろ、さんちょうちがうのですね」
「うん、そんな話だった」
 観察するウェリナの言葉に頷く綾華。
「おはなくろくするどくを、さんちょうのナールさまのおうちのどくがやつけるです?
 ナールのみもしんでんも、みんなみたことないのです」
 皆も見たことがなく、集めた逸話を繋げてみた猟兵たち。
 夜はどんどんと更け、あやふやな物語を聞いているうちにウェリナは眠くなってしまって、皆の声を子守唄に、綾華にもたれてうとうととしてしまったけれど。
「でもはなしたこ、みにさわるのダメいわれてたです」
 しっかりと言い聞かせられた子供たちの、話。きっと長い長い時のなかで、言い伝えられてきたことなのだ。
「みんないかないどくのくさきのさんちょうに、ナールのみがなるき……しんでんあるです?」
 答えを知るものはなく、情報を持つウェリナや綾華たち猟兵の一歩一歩が演繹の道程。
「実が生る木……ナールさまの家の毒――ナオスの毒はいのちを繋ぐ特別な毒だから、咲く花の色も違うんかねえ」
 一体どんな色、してんだろうな。
 そう言った綾華の声に、手元のガランサス・ニバリスを見るウェリナ。
 この清らかな白は、一体どんな色に染まっているのだろう――。

「おみずのいろ、ふつうです」
 やや身を屈めて湧き水の作る小さな川を観察するウェリナ。
 水場近くは植生するものは多く、そういった場所では生き物もよく見かける。
 例えば、虫。
 見た目はテントウムシだが、大きなそれの色は、ちょっと主張が激しい。
「うわ、あれ毒虫か?
 ウェリナちゃん、虫、だいじょぶ?」
「むしさん、リナへいきです!」
 普通の虫であったなら、興味津々に触れていたかもしれない勢いの声。
「ん、そんなら捕まえとこ。使えるかもだし」
 綾華が繰る鉄屑ノ鳥籠がくるりと回転し、その扉が開く。動きと共にはらりはらりと舞うは白き花弁。
 特に抵抗をみせることもなく、毒虫は生け捕りにされた。
「ごはんなにたべるです?」
「摘んでも平気そな草を入れておこうか」
 幸い、書物の写しには大丈夫な植物も記されていた。
 これでよし、と鳥籠を携えて、綾華が再び歩こうとすれば足場の不安定さに気付く。
 この辺りは滑りやすそうだ。
 水溶性の毒草は近くにはないようだが、万が一転ぶと危ない。
「ウェリナちゃん。手、繋ごっか」
 手を差し出せば、にこっと笑顔のウェリナ。
「おててつないでアヤチャンとやまのぼり!」
 そのまま水場を辿っていく。
「ウェリナちゃんと一緒だから山道も苦じゃないな?」
 高低ある場では綾華がリードし、平坦な足場が続けばウェリナがリード。
 そうやって進んでいくと、少しずつ岩場の色が変化してきた。
「アヤチャン、あかいおほしさまです!」
 灰の岩場に、一際輝くような赤い鉱石を見つけたウェリナが指差す――もう少し上がった場所だ。
「あのナールさまのおめめはなにみてるのでしょうか?」
 ウェリナと綾華が辿るように、ふと後ろを振り向く――遠く、眼下には続く大地の地平。
 青の空を流れる雲が、その地に影を落としていた。
「近くまで、行ってみよっか」
 赤き瞳の傍に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
さて、それでは本格的に調査を始めようか。
夜市で入手した書物も活用するとしよう。(<世界知識>使用)
「毒とは、生物が生まれながらに保有する防衛機能。おそらくは
ガランサス・ニバリスが群生する山間部の水源。そこに何かがあるんだろう。『毒』を以て守るべき何かが」
冒険の準備は念入りに。フード付の外套を纏い、肌の露出を避ける。
それに、山に生息する虫や蛇なども強い毒を持っている可能性が高い。虫よけの薬や解毒剤を事前に調達しておく。飲み水も、川の水や湧水を飲むわけにはいかないから自分で準備しておかなければ。……これか? これはワインだ。
「土壌によって色を変える。毒草の近くでは黒を基調とした赤斑……あれか?」


マクベス・メインクーン
山登りか…胡蝶は置いてきて正解だな
さてと、こっからは冒険を楽しむぜっ!
つか、毒だらけだな…気をつけねぇとやばそうだ

素材を探しながら、近くに動物がいれば【動物と話す】で【情報収集】
こういうのは危険に敏感な動物のが詳しそうだしな
あとは【野生の勘】で検討付けて探しながら山の頂上を目指すぜ

発見したら気をつけて採取
触れられなさそうなら氷の精霊を喚び出して凍らせて運ぶ

鉱石も近くにあれば採取してく
火山帯で取れる鉱石…話の内容的にやっぱ赤い石だよなぁ
「赤」は好きだから、それは是非採取しておきたい!
毒草よりはこっちがオレ的には最優先事項かな


アルバ・アルフライラ
やれ、中々の重装備だが仕方ない
多少耐性はあれど蓄積したら不味い故
その分薬や触媒となる品の探索に精を出すとしよう
ふふん、その位して罰は当たるまい

神殿を探す合間、世界知識を用いて毒草を観察
その中に薬効があるとされる物があれば採取を試みよう
後は我が魔術に必須である触媒――鉱石も是非とも手に入れたい
強い力を秘めた石ならば、尚更である
そうさな…我が魔力を周囲に注ぎ、良く染み、反応の良い場所を主に採掘してみるか
後は我が第六感が此処ぞと発揮されてくれれば良いが

無論、神殿探索も忘れてはおらんよ
周囲に咲くガランサス・ニバリスの色を確認
恐らく神殿付近に咲くそれは色が異なって見えるのだろう
それはそれで、興味が尽きぬ


クララ・リンドヴァル
ナオスと言いつつ、毒でした。
興味をそそられる対象が沢山あります。一日かけたフィールドワーク。しっかり準備を整えたいですね……。

図鑑を胸元に抱えて、それを参考にしながら採取を行います。足元に注意しながらいかないと、捻挫しちゃいそうです。
怪しい所で眼鏡をかけます。【第六感】と【視力】を引き上げる、別世界の技術の結晶です。よく行くんですよ。
安全なルートも良いですが、険しい道や採掘の手が入っていないルートにも少し寄り道してみたいです。
『魔界の女王蜘蛛』と契約しています。ある程度の悪路であれば、蜘蛛の何処でも這う事の出来る性質を活かして突っ切れると思います。巨体故に場所は限られるとは思いますが。



 マクベスがナオスの実が入った箱に、念のためと氷の精霊の力で、凍結させていく。
「ナオスと言いつつ、毒でした」
 ナオスの実を別班となる猟兵が受け持つ様子を見て、クララが呟く。
 彼女の言葉を受け、ふむ、とガーネットは思考を巡らせた。
「ディリティリオが、ギリシアの言葉で『毒』の意味だったか。
 ならば、ナオスは『神殿』という意味になるが――……、ナールはアラビアの『火』だったか」
 現地の者には把握できていない言語の元を、考えつつガーネットが分析する。
「――ああ、成程、そちらから紐解けばガランサスもまた、その言語に由来する形となっていますね」
 と、アルバ。
「ええと異種ですが、同名のスノードロップしたよね……花言葉は、希望と、慰め、あとは――」
 思い出しつつクララが呟けば、「あなたの死を望みます」とアルバとガーネットの声が被る。
「ひえ、おっかねぇ。そんな意味もあんのかよ?」
 やや仰け反り反応するマクベス。二面性のある花なのだ。
「――さて、それでは、そろそろ本格的に調査を始めようか」
 夜市で入手した書物を携え、ガーネットは外套に備わるフードを深く被った。
 肌を露出させない装備、それに加えて、事前に調達した虫よけの薬や解毒剤となれば、
「やはり、中々の重装備となりましたが、致し方ないことです」
 心得を持ち、毒の耐性を持つアルバもまた同じような装備で頷く。
 毒が蓄積すれば不味いことは分かっている。
(「その分薬や触媒となる品の探索に精を出すとしよう――ふふん、その位して罰は当たるまい」)
「ええと、飲み水も……はい、大丈夫です」
 クララもまた自身の装備をチェック中。
「飲み水も、川の水や湧水を飲むわけにはいかないからな」
 と頷き言うガーネット――まあ彼女が持ってきたものは、ワインであったが。
「何かやばい時は、言ってくれよな!」
 ユーベルコード・癒しの雫を持つマクベスが三人へと声を掛ける。
「頼りにしています」
 柔らかく微笑んだアルバが頷き、いざ四人は山岳荒野へ。
 ほんのたまに、町の研究方が山のふもとまで来るのだろう。ささやかな道標には道程が刻まれていて、四人が選んだルートは、人の手が入っていないと思われるやや険しいものだ。
 遠目からは緩やかに見えた地も、いざ入れば傾斜が延々と続き、足場も悪い。
「……胡蝶は置いてきて正解だったな」
 マクベスが呟く。
 植物が生育旺盛な時期――花の飛ばす花粉もまた毒が含まれている種もある。
 風が吹けば、息を止めてそれをやり過ごす。
「つか、毒だらけだな……気をつけねぇとやばそうだ」
「土壌によって色を変える、ガランサス・ニバリス。毒草の近くでは黒を基調とした赤斑……あれか?」
 植物の集合地帯を見つけたガーネット。
 その一部に本来の真白の花を黒に染め、赤い斑を散らす花。
 周囲を広く見渡してみれば、また違ったガランサス・ニバリスを見つけた。
 漆黒に光沢が見て取れ、まるで黒真珠のようだと思うアルバ。その花は点々と――岩場に咲いているのが確認できた。
 上に咲くとされるあれはどんな色をしているのか――。
 やがて背高の種が生える場へと辿り着き、湧き水が流れているのを見つけた。
「毒とは、生物が生まれながらに保有する防衛機能。
 おそらくはガランサス・ニバリスが群生する、山間部の水源。そこに何かがあるんだろう。
『毒』を以て守るべき何かが」
 湧き水を見ながら言うガーネット。
 水源。
「であるならば火口湖でしょうか――いえ、推測に過ぎませぬが」
 と、アルバ。
 火山地帯であったこと、この山で目にする植物は、高山類のものが多い。
 実際に目にしながら行く、猟兵たちの一歩は演繹の道程だ。
 水ある場にて初めて目にする種もあり、アルバはその毒草を観察する。
 調べれば群生する可憐な五枚花弁の花は、トリカブトと同じ毒を持つものだ。
 次。それらを覆う草本。
 草本の根と根茎を採取し始めたアルバの傍に、興味をそそられた若き魔女クララがやってくる。
「それは、毒草とありますが、薬効もあるのでしょうか?」
「そうですね、根や根茎を水やエタノールに浸出させれば、強い薬となります」
 強すぎるが故に、症状に合わせ適宜の配合が必要となる。
 アルバが次を見つけ、彼の説明とともにクララもまた採取を手伝う。
 やがて対霊障眼鏡をかけたクララは、向上した第六感と視力を駆使し、次の植物を見つけては図鑑を手に調べ、そしてアルバへと尋ねていく。
 同じく素材の採取をしていたマクベスは、一体の動物と出会った。大ネズミのようなそれは人を見たことが無いのか、興味津々といったように、やや身を潜めこちらを見ている。
 じいっと見つめ合うこと、数秒。
 そおっと手を差し伸べたマクベスに、鼻をひくひくとさせた動物は、ゆっくりとした足取りで近付いてきた。
「よしよし」
 撫でても大丈夫だろうか――刹那の逡巡ののちにマクベスは動物の額をひと撫でした。
 そうして、先程話にのぼった火口湖のことを尋ねてみる。
『おおきな、みず』
「うん、たぶんそれかな」
 動物は後ろ二歩脚で立ち、スッと前脚をとある方向へと向けるのだった。

 ほぼほぼ崖といってもいい場所を、クララが『音無き女王の招来』で召喚した魔界の森の女王蜘蛛に騎乗しのぼっていく。
 突出する岩場にその脚を這わせ、揺れの少ない動きでクララを運ぶ魔界の女王蜘蛛。
 高さにして大人二人分の身長ほど。
 崖上に辿り着いたクララは周囲を見回し、仲間がのぼれそうな場所を見つけた。
「こちらから、行けそうです」
 そう言って、今度は違った意味で周囲を見回す。見つけたのは洞窟だ。
 洞窟内から水でも流れていたのだろうか、大地が削られた跡があった。
「崖まで辿れるということから、その昔、小さな滝であったのかもしれないな」
 目で跡を辿ったガーネットが言い、中を覗きこむ。
「採石をするのなら、ここは適した場所だろう」
 空気中に毒が留まっていないか、安全確認をしたのちに入っていく猟兵たち。
 ガーネットは鉱床学の実地体験だ。
「火山帯で取れる鉱石……あ、これとかいいんじゃねぇか?」
 マクベスが指差すそれは石英質の鉱物。
「赤いヤツはあるかな~?」
 赤が好きだから、と、是非採取しておきたい! と意気込んで色々と見ていく。
「見事な色彩石ですね」
 赤く、黒曜の模様を描くレッドジャスパーの原石を観察するクララ。
 洞窟内にて大地が持つどっしりと落ち着いたエネルギーを身に感じる猟兵たち。
 洞窟内をぐるりと見回したアルバはしばし考えたのちに、トン、と地に杖をつく。
(「我が魔術に必須である触媒――鉱石は是非とも手に入れたい」)
 強い力を秘めた石ならば、尚更である、と。
 魔力を周囲に注げば、スポンジの如くそれらを吸い、端々まで染み渡らせる原石を見つける。
 そして打てば響くように呼応する。
(「あれか」)
 と、傍に寄ったアルバもまた採掘を始めた。
 町からの依頼にあった鉱物を採取するクララとガーネット。
 目当てのものを見つけたアルバとマクベスはほくほくと原石を手にして。
 四人は再び山頂目指して進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルノルト・ブルーメ
教会が保管している毒の実に関しては毒耐性もあるから僕が行おうか
他にも毒耐性持ちが居るなら交代で運搬しよう
氷結魔法を施されているとはいえ……
何かあった時に耐性が無い者よりもある者の方が対処しやすいだろうからね
氷結魔法使用可能者が居るなら
時折状態も確認して貰った方が良さそうかな

入手してくれた手記の写しを見ながら
依頼の出ている対象の採取も多少は手伝おうか

ガランサス・ニバリスの毒性の強い方向を探りながら進もう
こうした場では単独行動は危険だから
何かあればフォローに駆け付けられるよう
同行者を視認できる距離を保って移動

周辺の状態も注意し
不自然な状態がある場合は皆と情報共有して
オブリビオンを警戒しながら進む


スピレイル・ナトゥア
「今回の勇者の伝説が『群竜大陸』に関する手がかりになるといいのですが……」
色んな依頼があることを教会のひとから聞き出していたことにして、図鑑片手に山を登るとしましょう
「採取の依頼があるということは、それを欲しくて困っているひとがいるということです。オブリビオンを倒すことも私たち猟兵の仕事かもしれませんが、困っているひとたちを助けることも私たちのお仕事です」
大鷲のルパクティの空からの情報と【第六感】で素材を探します
毒で危ない場合はバトルドロイドに採取してもらうとしましょう
「今回の旅が終わったら、毒を拭うためにもバトルドロイドのメンテナンスをしてあげなきゃいけませんね」


泉宮・瑠碧
ナオスの水溶性の毒で、毒草が生育していたのか…
だが水脈が枯れつつあるから
毒の水が流れて来なくなり、毒草も減った…?
なら、水の流れを辿ればナオスへ着きそうだが…

ガランサス・ニバリスの色や分布は見ながら進もう
山地の草花もどうなっているのか知りたいしな
自身にも毒耐性はあるが
あまり触らずに色や形状もある程度覚えておく
医術の面で、薬になる草花も
多少でも町の研究の足しにもなれば

毒虫は…虫が苦手なので、素直に避けておく
もし毒に影響が出た者が居れば、医術にて薬草や優緑治癒で処置
処置や水脈等の水に関しては水の精霊へ

毒には是非があるとは思うが…
毒を以て毒を制す様に
毒から助けるニバリスの生息地なので、残って欲しいが



「教会が保管している毒の実に関しては、毒に耐性のある僕が持っていこうか」
 ここで一旦別れる猟兵たちに対して、アルノルトが言う。
 別班となる猟兵が使役する精霊に、凍結を強固にしてもらい、改めて受け取った。
「氷結魔法を施されているとはいえ……何かあった時に耐性が無い者よりも、ある者の方が対処しやすいだろうからね」
「では、僕も同行させてもらおうかな。
 毒に関しては同じく心得もあるつもりだ。何か異変があれば、優緑治癒を行おう」
「ああ、それは心強いね」
 ユーベルコードの癒しの力を持つ瑠碧の申し出に頷きを返すアルノルト。
 教会の者から受け取った図鑑を抱え、スピレイルは自身が立つ山の口からその頂へと視線を移す。
「今回の勇者の伝説が『群竜大陸』に関する手がかりになるといいのですが……」
「そうだね。皆が勇者の伝説を探し始めて、しばらくが経つし、ね」
 数千と言われる勇者の存在だが、その全てを明らかにするわけではない。どれほどの『勇者の意思』とやらを確かめればいいのか――。
 二人の会話の傍ら、周囲を眺めつつ、道の模索をする瑠碧。
(「ナオスの水溶性の毒で、毒草が生育していた……だが水脈が枯れつつあるから、毒の水が流れて来なくなり、毒草も減った……?」)
 毒の抜けた川は、情報を統合してみると、この山から枝分かれした水脈であったらしいこと。
「なら、水の流れを辿ればナオスへ着きそうだが……」
「山頂には、火口湖があるのでしょうか」
「どちらにしろ、行ってみなければ分からないな」
 瑠碧の呟きに応じたスピレイルは続いた彼女の言葉に「そうですね」と頷いた。
 件の水脈は地中にあるらしく、道中に見当たらなかったこともあり、まずは頂を目指しながら湧き水なり、山中の川なりを探そうと、三人は山岳荒野へと入っていった。
 時折研究方が訪れているであろう麓近くを足早に抜け、傾斜の続く岩場を辿る。
 植生は豊かであろう水場を探すのは、普通であるなら容易くはない――が、瑠碧い応える水精霊が方角を教えてくれた。
 草花の密集地帯を目に留めながら、進む。
 それらの近くに咲くガランサス・ニバリスは黒色で赤斑の模様。
 ふと、上を見たアルノルトが黒真珠のような光沢を放つ同じ花を見つける。それよりも上はやや繁っている。
「――色分布によれば、黒一色は一種の強毒を持つ土壌だと記載されている」
 と、写しの分布図を参考にしながら、瑠碧。
「辿れそうな足場を探してみましょう」
 スピレイルは大鷲のルパクティを空へと放ち、旋回させる。
 とある場所で垂直降下したルパクティは茂みの中でやや固い地鳴き、やがて水平飛行で出てくるとスピレイルの近くの岩場に止まった。
 何かを伝えるように再び地鳴きの声をあげ、岩を伝うように飛んでいく。
 三人がルパクティに着いていくと、やがて水が湧き出す岩場を見つけた。複数から湧き出す水は岩に流れを遮られ細かく枝分かれしていく。
 植物の生育は旺盛であった。
 その一つ、一つを見ていく瑠碧とスピレイル。
 群生する可憐な五枚花弁の花は、トリカブトと同じ毒を持つものだ。
 それらを覆う草本の根や根茎は、きちんと処理をすれば薬効あるものとなる。
 これの場合は浸出だ。
「採取の依頼があるということは、それを欲しくて困っているひとがいるということです。
 オブリビオンを倒すことも私たち猟兵の仕事かもしれませんが、困っているひとたちを助けることも私たちのお仕事です」
 そう言って、スピレイルが触れないように掘り起こし、ルパクティが嘴に摘む。
「手伝おうか」
 アルノルトもまた採取の手伝い。手記の写しを見て、薬草となる毒草を採取していく。
 瑠碧は記述とは違う草木を見つけ、その違いを記憶していった。
(「医術の面で、薬になる草花も、多少でも町の研究の足しにもなれば――」)
 と。
 長い年月の中、元の姿と袂を分かった物もあるだろう。
 採取したり観察をしたりしていると、水場には虫が多いことにも気付く。
 ふと、瑠碧が後退し避ける。
 何となく、山頂となる方向を見上げ――少し、嫌な予感を覚えた。
 彼女の後ろでは、採取したものを手早くまとめにかかる二人。
「これくらいで良いかな」
「ありがとうございます。
 今回の旅が終わったら、毒を拭うためにもバトルドロイドのメンテナンスをしてあげなきゃいけませんね」
 ルパクティの分も束にして羊皮紙に包むアルノルト。
 入れやすいように革袋の口を開き待つスピレイルが、礼ののちに大鷲を見て言う。
 湧き水を辿り、山頂を目指す三人。
 やがて水は途切れたが、水精霊は上へ行くにつれ賑やかになっていく――瑠碧とスピレイルは思わず顔を見合わせる。
 周辺の状態を常に警戒し、同行者である二人にも気を配っていたアルノルトが、精霊術士である二人の様子に気付いた。
「どうしたんだい?」
 アルノルトが不思議そうに問う声。
 戸惑いを見せるスピレイル。
「――いえ、こういっては可笑しいかもしれませんが、精霊たちが打てば響くような雰囲気なのです」
「例えるなら、燦々とした――そのような感じだ」
 瑠碧も次ぐように、言う。
「水の精霊が、かい?」
「ええ。水の精霊だけ、が」
「風の精霊は、怯えているようだ」
 再び問うたアルノルトの声に、はっとして他精霊を探れば、差異は明らかだった。
「オブリビオンのせいかもしれないね――気を引き締めて行こうか」
 彼の言葉に頷く二人。
 果たして、山頂はどのような状態であるのか。演繹の道程をまた進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
・アヤネさん(f00432)と
図鑑を見ながら採取を行います
【毒耐性】があるので私は平気ですけど
アヤネさんは気を付けて下さいね

採取をしているとアヤネさんが突然の告白
恋バナですか!誰です?
…ってお父さんのことですか
アヤネさんはお父さんが大好きなんですね
…凄いファザコンだなと思ったのは内緒
ウロボロスのことも初めて知りました

え?私ですか
アヤネさんの前で自分の家庭のことを言うのは気がひけるけど
向こうから聞かれてるし…いいかな
うちの父は小説家なので家にはいつもいますね
心配性でUDCアースで依頼だとすぐ依頼について来ようとするんです
門限も18時とか言うし…ほんと信じられない!
早く子離れして欲しいんですけどね


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
勇者の遺品か
箱は持って行きたい

異世界の生物に興味はある
準備をしっかりして、僕も採取することにしよう
ソヨゴの手伝いをしつつ話しかける

僕は誰も好きになった事が無い
そういった覚えがあるけど
それは違うかも?
実は結婚したいと思った相手がいたんだ

少し顔を赤らめ続ける
それはお父さん

お父さんはUDCエージェントのリーダーで
男らしく熱い人で
行動力があって
気さくで
優しくて

お父さんが素敵すぎて
僕は周りの男子なんて眼中になかったんだろうネ

そう、うれしそうにはなす

このUDCウロボロスは遺品だ
お父さんの一部だったものだ

ソヨゴのお父さんはソヨゴを大事にしているんだネ
それは良いこと、と微笑む



「毒への耐性があるので、私は平気だとは思いますが、アヤネさんは気を付けてくださいね」
 手袋をはめ、確りと手首まで伸ばしつつ冬青がアヤネへと言う。
「うん、気を付けるネ」
 勇者の遺品を持つ猟兵を見送ったアヤネが応じた。
 氷の精霊により強固された氷結、毒に耐性のある猟兵の手で運ばれることとなったナオスの実。
 充分に装備のチェックをしたあとは、いざ、山頂を目指して。
 二人で山岳荒野を行く。
 仲間たちは個人に採取したいものがあるのか、班別に山頂を目指すこととなり、途中険しい道へと入っていく。
 猟兵たちを再び見送るアヤネと冬青。
 二人はやや緩やかな「道」を選んだ。
 ほんのたまに、町の研究方が山のふもとまで来るのだろう。ささやかな道標には道程が刻まれていて、途中まではそれに従い歩む。
 岩場が多く、緩やかな傾斜続き。
 休憩時は持参した温かなお茶を飲み、
「温度調節が難しくて、焼きむらが少し出てしまったのですが……」
 と、冬青はドライフルーツを使って作ったパウンドケーキなるものを。
 昨日、準備にあてた時間で、厨房を借りて作ったものだ。ちょっとしたお茶会となって、アヤネは嬉しそうにぺろりと食べてしまう。
「ごちそうさま。――本当にソヨゴは凄いネ」
 異世界での順応力が高いよ、とアヤネ。
 お腹も満たされたところで、再出発だ。
 二人がしばらく歩くと植物の集合地帯に行きあたり、近寄ってみることに。
「あっ、ここにある植物は採取依頼にあったものですね!」
 指示書と図鑑を見比べて、冬青。
 すべては毒草であったが、適切な処理をすれば薬となるものがほとんどだ。
「ええと、確か、これは折らないように――」
 植物の乳液に毒が含まれており、冬青は掘り返すようにして採取する。
 手伝うアヤネも丁寧に土を払い、広げた羊皮紙の上に置いていった。
 黙々と――作業する手とは別に、思考は時の彼方へ。
 ふと、呟くように、アヤネが冬青へと話しかける。
「僕は誰も好きになった事が無い――以前、そう言った覚えがあるけど……それは違うかも」
 訂正するよ、と。
「え?」
 静かな静かな、するりと冬青の耳に届いたアヤネの声に、一瞬反応が遅れる。
 冬青が顔をあげるのと、アヤネの手が止まるのは同時。そして驚きの一言が、
「実は結婚したいと思った相手がいたんだ」
「えっ!? はっ、恋バナですか! 誰です!?」
 ぐぐっと身を乗り出すようにして耳を傾ける冬青。
 そんな彼女からアヤネはちょっとだけ目を逸らす。少し頬が赤く染まっていて、それは、と言葉にするもややいつもと違う声の色。
「お父さん」
「……って、お父さんのことですか」
 きょとんとした冬青の呟きに、少し顔を背けたまま、アヤネはこくりと頷いた。
「お父さんはUDCエージェントのリーダーで、男らしく熱い人で」
 そっとアヤネは、冬青へと視線を戻しながら言葉を続ける。
「行動力があって、気さくで」
 思い出しているのか、とても柔らかく優しい声であった。
「優しくて。
 お父さんが素敵すぎて、僕は周りの男子なんて眼中になかったんだろうネ」
 緩やかな弧を描く口元は嬉しそうで、緑の瞳も、輝いているように――冬青には見えた。
 十を過ぎた頃の、少女のような微笑み。
「アヤネさんはお父さんが大好きなんですね」
 そう言うと同時に冬青は――凄くファザコンだなぁ――と微笑ましく思ってしまって、けれど言わずに心へとどめておく。羊皮紙の上の毒草をくるりと包み、革紐で縛った。
 ウロボロスをその手に這わせるアヤネ。
「この、UDCウロボロスは遺品だ――お父さんの一部だったものだ」
「ウロボロスのことは、初めて知りました」
 どこか嬉しそうな声で冬青は応じた。そんな彼女に、うん、と頷くアヤネ。
 少しずつ、少しずつ。
「そうだ。ソヨゴのお父さんはどんな人だったの?」
「え? 私の、ですか」
 ぱちくりと目を瞬かせた冬青は、ほんの少し躊躇った。
(「アヤネさんの前で自分の家庭のことを言うのは気がひけるけど……向こうから聞かれてるし……いいかな」)
 よし、と心の中で頷き。
「うちの父は小説家なので、家にはいつもいますね。
 心配性で、UDCアースでの依頼だとすぐ依頼について来ようとするんです。
 いつもひと騒動なんですよ!」
 色んな日常のことが冬青の中で駆け巡った。
「門限も18時とか言うし……ほんと信じられない!」
 頬をぷくっと膨らませて言う冬青の表情は、ころころと変わる。
 へぇ、とアヤネが応じた。
「ソヨゴのお父さんは、ソヨゴを大事にしているんだネ」
 それは良いこと、と微笑んで言えば、むぐぐと冬青は唇を尖らせた。
「早く子離れして欲しいんですけどね」
「本当にそう思っている?」
「思ってますよ……!」
 ちょっとだけ喚く。
 大自然の中で交わされる少女たちの会話は、しみじみと、そして賑やかに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】
シリンもいた(手を振り)、一緒にいこ?

とかげのお家探さなきゃ
ん、なに?まつり……(きょとんとお守り眺め)
岩がごろごろな崖に近い獣道を登る
【白銀の仲間】で岩を退けたり割ったり
鉱石が見つかったら削り取る
岩陰に生える草や花を覗き込み
……ニバリスいないかな?

ナールは人が好きだった?
毒のせいで一緒に住めず
でも、すぐに皆をたすけられる近い場所
人を見渡せる高い場所で
どんな気持ちで暮らしてたのかな

シリンは神さま知ってる?
わたし、神さまの気持ちはわからないけど
……独りが寂しい事はわかる
ね、まつり……まつりん?(きょろきょろ

頂上であの星座は見えるかな

白い花に違う色が混ざってきたら
神殿はすぐそこ


木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

アンちゃんと……あ、シリン姉ちゃんだー。やほー♪

神殿にいけば、勇者さんがいる?
あ、違った、神様がいるんだっけ。あと、トカゲさんたち。

夜市で買った虫除けや毒消しで、準備万端!
せっかくだから、ジャスパーの指輪も左の中指に。
アンちゃんには、御守り袋ね!(首から懸けるリアルトカゲの像入り)

あ、これ、ナオスの木に似てない?
(身体痒そうにしつつ)
実を集めて、袋に詰め。
一部を腰からロープでぶら下げ、地面にずりずり。
おびき寄せに挑戦してみる!
トカゲさんたち、わかるかなあ?

ガランサスの花を追っかければいーんだよね?
おいら、毒には強いし。動物も得意だし。
先に偵察してくるー♪
(山頂目指し)


シリン・カービン
【かんさつにっき】

神殿は恐らく火口近くのナオスが自生する地そのもの。
毒の水脈とガランサスが道標になるでしょう。
出発前に植物の特徴をよく覚えておきます。

酒場の女将に教えてもらった情報を元に事前準備。
道中の食料は狩りに頼らない方がよさそうです。
各種薬の他、干し肉等の食料等々、
「…よく食べそうですよね」
同行する子供達の顔が浮かんで多めに購入。

私はずっと一人で生きてきたけれど、
ナールの孤独はきっと別なもの。
杏はそれを感じられるのですね。
…多分、祭莉も。

その身に毒を持ちながら人々の生活に溶け込み
星座になぞらえるほど親しまれるナール。
「どんな形であれ、また人との縁を結ぶことが出来れば
ナールも喜ぶでしょう」



 時は少し戻り、ディリティリオの町。
「神殿は恐らく火口近くのナオスが自生する地、そのもの」
 人の捌けた町の休憩所で、シリンは広げていた地図をぱたぱたと閉じていった。
 手に馴染むこの世界の羊皮紙を畳み、書物の写しと異世界の紙でできた地図を重ねる。
 と、そこへ待ち合わせ場所へ駆けてくる子らの声。
「シリン姉ちゃーん! おつかいいってきた!」
「頼まれたのもの、これで大丈夫?」
「祭莉、杏。――はい、大丈夫そうです」
 シリンは、双子に彼らの好みに任せた行動食の調達を頼んでいた。
 日持ちのする行動食、例えば、硬パンや干し肉など。
 シリン自身は、各種薬、水袋と水の調達と――、
(「……よく食べそうですよね」)
 と、ドライフルーツも袋いっぱいに。酒場の女将は蒸かした芋も持たせてくれて、食料に困ることはなさそうだ。
 芋は鮮やかな紫の色で、やや毒々しいのが、『らしい』。
 仲間の猟兵たちとともに出発し、山のふもとで一旦別れる――鉱石・植物採取や、ペースに合わせた傾斜を選んでいくと、そうなった――虫除けの香木、毒消しを入れたポケットなどをチェックしていた祭莉は「あ」と声を上げた。
「アンちゃん、アンちゃん」
「ん、なに? まつり……」
 サッと首に何かが懸けられる。離れていく兄の左手中指には赤の指輪。思わずといったように視線で追えばにぱっとした笑顔。
「アンちゃんには、御守り袋ね!」
 何が入っているのだろう――取り出してみれば、中にはリアルトカゲの像。
 キョトンとする杏と像の目と目が合った。トカゲには赤の石が使われているようだ。
「神殿にいけば、勇者さんがいる?」
 山のふもとの道標を見ていたシリンへと振り向きつつ祭莉は、「あ、違った」と訂正。
「神様がいるんだっけ。あと、トカゲさんたち」
「とかげのお家探さなきゃ」
 兄の言葉に頷き、呟く杏。
「――祭莉、杏、どの道がいいですか?」
 元気な子供たちの脚力を考えていたシリンだが、本人たちに訊くのが手っ取り早いと判断したようだ。
 見通しの良い緩やかな傾斜は研究方が訪れているようで、道標が先に見える。
 そして一見緩やかそうに見えて延々と続く急勾配。
 だが、杏が指差したのは、
「ん……と、こっち」
 岩がごろごろな崖に近い獣道であった。

 するすると白銀が崖に近い岩場を登り、周囲を見回しては岩を割り、足場を作る。
「――しなやかな獣――豹のような気分ですね」
 シリンが呟く。手も足も、全身を駆使する岩登り。
 杏のユーベルコード『白銀の仲間』が道を作ってくれるから、まだ楽な方なのだろうと彼女は思った。
 やや低木が茂る場所に差し掛かった時は、祭莉がじいいーっと観察を。
「これ、ナオスの木に似てない? 実がころころ落ちてるよー」
 小さな実を集めて、袋に詰めていく。
「あ……まつりん、きゃっち」
 と、杏の声が上から聞こえ「なーにー?」と顔を上げれば小さな鉱石が降ってきた。岩を削り鉱石を採取した白銀の動物のパスを杏が受け取り損ねたようだ。
 咄嗟に手を伸ばす祭莉だが、同じく受け取り損ねて――下に落ちるかと思われたそれを、シリンがキャッチ。
「はい、どうぞ」
 と、祭莉の袋に入れてあげるシリン。
「ありがとー。……なんか、手が痒くってー」
「……大丈夫ですか?」
 シリンが問えば、こくりと頷く祭莉。岩を登りながら口ずさめば癒しの力が働いた。
 杏は時折岩陰に生える草や花を覗きこむ。
「……ニバリスいないかな?」
「どうでしょうか、最近はあまり見た者が――、……――いますね」
 杏と同じ目線――覗きこめる位置まで登ってきたシリンが呟いた。酒場できいた特徴と一致している。
 白の身体と赤い目。光に反射して螺鈿のような虹色が浮かぶ鱗。
 岩ごろごろな崖に近いこの道は、トカゲたちの安全な道でもあるようだ。
 しばしの――何か通じ合ったような沈黙ののち、ささーっと逃げていくニバリス。
 シリンが視線で追えば、小休止できそうな場所があった。
「少し、休んでいきましょうか」
「ん。干し肉、食べる」

 干し肉を齧りつつ、ふやかすように飲み水を口に含む。
 合間にドライフルーツの味も楽しんで。
 ゆっくりと食べる女性陣を横目に、ぱくぱくっと食べた祭莉は崖を登り始めた。
「まつりん?」
「おびき寄せに挑戦してみる~! トカゲさんたち、わかるかなあ?」
 そう言った彼の腰からロープが垂れていて――程よく長く、先端には先程の実がいくつか。
 同時に採取もやっていくようだ。ちょっと回ってくる、と言い置いて少年は束の間の旅に出た。
「元気ですね」
「ん、元気」
 シリンと杏。
 見晴らしの良すぎる場所で、こうやってのんびりながら、ふと杏は思考する。
(「ナールは、人が好きだった?」)
 二人の視界には、遠く、しかしはっきりと見える毒の町ディリティリオ。
(「毒のせいで一緒に住めず。
 でも、すぐに皆をたすけられる近い場所」)
 ぽつり、ぽつり。心の中で呟いて。
 人を見渡せる高い場所で、どんな気持ちで暮らしてたのかな――と。
 シリンは先程のニバリスの姿を思い出す。薬効作用の高いトカゲ、加えてあの姿なら乱獲もされやすいだろう。
「シリンは神さま知ってる?」
 問うような声。シリンの緑の瞳が杏を捉えた。
「わたし、神さまの気持ちはわからないけど……独りが寂しい事はわかる」
 ね、まつり……まつりん? といつものように声を掛けたのだろう、杏はきょろきょろとした後、祭莉を見つけた。そういえば、誘き寄せの最中であった。
「私はずっと一人で生きてきたけれど、ナールの孤独はきっと別なもの」
 静かな静かな、シリンの声。
「杏はそれを感じられるのですね。……多分、祭莉も」
 ――そうして言葉を切って、シリンは上を見た。そろそろ出発しましょうか、と添えて。
 その時、祭莉の声が降ってくる。
「残念、逃げられちゃった」
 と言いつつ再挑戦する気満々な様子だった。

 ガランサス・ニバリスの花は、真白。
 けれど、山で見かけるそれは黒の赤斑が多く。
 中腹に差し掛かれば、それは黒真珠のような花に。
 ベルベットのような質感に、黒のなかにある光沢。
 それはニバリスの姿を思い出す――真逆の色であるにも関わらず。
 やがて、花には白の斑が混ざり。
「ガランサスの花を追っかければいーんだよね?
 おいら、毒には強いし。動物も得意だし。
 先に偵察してくるー♪」
 そう言って速度を上げた祭莉の跳ねるくせっ毛には、懐いたらしき一体の白い小トカゲ。
「頂上であの星座は見えるかな」
 空をなぞれば、ナール様になるという星座。
 杏が教えてくれたその『星座』を、シリンも見てみたいと思った。
(「――その身に毒を持ちながら人々の生活に溶け込み、星座になぞらえるほど親しまれるナール」)
 ここから見えるであろう、人の灯。
 かつて火山地帯であり、その熱も光も消えた地に宿る灯。
「どんな形であれ、また人との縁を結ぶことが出来れば、ナールも喜ぶでしょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『毒牙虫』

POW   :    針付き鎌
【毒針】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    針付き鋏
【毒針付きの鋏】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    1匹いれば
【忌避】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【30匹の仲間】から、高命中力の【攻撃】を飛ばす。
👑11
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 ガランサス・ニバリスの花は、真白。
 けれど、見かけるそれは黒の赤斑が多く。
 中腹に差し掛かれば、それは黒真珠のような花に。
 ベルベットのような質感に、黒のなかにある光沢は増して白が散り、山頂に近付くにつれ色は変化していった。

 山頂に辿り着いた猟兵たちの目にまず移ったのは、カルデラの大地と、虹色が混ざる白銀の光景であった。
 今立つ場所から少し下れば、ガランサス・ニバリス。
 近くで見る銀色の花には、雪が散ったかのような真白。
 太陽の光に反射するそれらは、螺鈿のような鈍い虹を放つ。

 その中心部には、小さな小さな仄かに赤い湖。
 左右少し遠くには、丘のように盛り上がった場所二つがあり、一つは緑の葉が生い茂る一本の樹木。
 その周囲には、小さな林檎のような実が落ちていて、注意しつつ猟兵が近くまで寄ってみれば、丁度実をくわえた一体のトカゲと出会った。

 本来の真白であるガランサス・ニバリスと同じ色のトカゲは、赤い目を猟兵たちに向けたようだ。
 しばし見たあとに、ささっと丘をくだり、花の下に隠れる。
 くねりと動けば、白の身体に走る虹の色。
 よくよく見れば、トカゲたちを複数視認することができて、彼らが花陰、木陰から猟兵たちを窺っているのが分かった。
 その身体が持つ薬効と、煌びやかな姿から、乱獲された時代もあったのだろうと悟る。
 丘は苔に覆われており、その下は岩の山であった。
 砕けば、木の根が見えるだろう――が、一部齧られた根を発見する。
 それは地面にあちこちと。
 小さな湖を覗きこめば、水は透き通っていて、赤の鉱石の色がゆらりと。
「燦々と、の正体はこれだったのか」
「……綺麗ですね」
 綺麗なものに囲まれて喜んでいる水の精霊。精霊術士の猟兵たちが確認を行う。

 一本の木。
 実は、唯一ニバリスだけが食すことが出来、けれど芽吹くものは一つもない。
 木の近くに落ちたものはニバリスが食べてしまうし、丘から転げ落ちたものは、ガランサス・ニバリスの浄化の力に作用されてしまうのだろう。
「これがナオスの木」
「神殿か」
 葉も幹も樹液も実も、全てが毒となる木。
 となれば、火口湖も、根から染み出た毒で侵されたものなのだろう。
 勇者ヤトゥはその毒を知っていた。
 知っていたからこそ、ガランサス・ニバリスを蒔いたのだろうか。
 人を、欺くためか、護るためか。
 物語の中の真実。勇者ヤトゥの本心は、ヤトゥしか知らない。

 だが、分かるのは、ナールの眷属であるニバリスを救うためにこの場を作ったのだということ。
 ――きっとヤトゥの目には、遠い遠い未来、ニバリスの衰退が見えていたのだ。
 神の眷属が息絶えぬよう、生き延びる場所を。
 そして眷属が人へともたらす救いの道を途絶えさせぬよう。

 その時。
「ギ」
「ムシムシ」
「ギギ、ギィィ」
「ムシムシ」
 むしゃむしゃとガランサス・ニバリスを食べる虫たちが、現われた。
「……!!」
 はたはたと飛び、丘へ辿った虫は、むしゃむしゃとナオスの実も食べ始め、ささっとトカゲたちが逃げ出す。
 火口湖まで伸びているのか、地下の根を探り当て、掘り出す毒牙虫たち。
 場を荒らす彼らを倒すべく、猟兵たちが動く――。
アルノルト・ブルーメ
場を荒らして、あの子達を脅かすとは
随分と無粋な真似をするね……

尤も、無粋の代償はその命で贖って貰うけれど

血統覚醒使用

Viperで先制攻撃からの2回攻撃
手首を返して範囲攻撃のなぎ払い
そうする事で虫の動きを阻害し
可能ならば引き裂いた後にその動きを封じよう

VictoriaとLienhardでも傷口をえぐる、串刺し等の攻撃
鎌も鋏も武器で受け流して出来るだけ負傷は回避
召喚された仲間はViperで叩き落そう

戦闘後
ニバリスを必要以上に刺激しないよう注意して周囲の調査
その後、持ってきた勇者の置き土産の対処
箱ごと置いて行くのが良さそうかな?
奉納、と言っても良いのかもしれないね

補足
虫に対して若干怒りを覚えている


マクベス・メインクーン
こりゃまたすげぇ見た目の虫だな
っと、そんなこと言ってる場合じゃねぇな
これ以上荒らされる前にさっさと蹴散らそうぜ

毒持ちなら接近戦は避けたほうが良さそうだな
サラマンダーの炎の力を魔装銃に宿して
UC使用して炎【属性攻撃】、そんで【範囲攻撃】するぜ
まずは数減らしにいかねぇとな
もちろん木々なんかは燃やさないようにする
味方が危なきゃ敵の攻撃妨害に【援護射撃】するぜ

敵からの攻撃は【野生の勘】で回避
飛んでくんならこっちも飛んで【空中戦】してやるぜ
空中なら遠慮いらねぇ
【全力魔法】で風の精霊の力も合体して
UCで増えようが全部最大火力で燃やしてやんよ!

アドリブ・共闘OK


泉宮・瑠碧
此処は、花が白いのか…
しかし、嫌な予感とは当たるものだな

虫は苦手だが…
オブリビオンなら話は少し別だ
自然を荒らすなら尚の事

僕は風鳥飛行
風の精霊は怯えていたが…
風鳥にも一緒に頑張ろう、と撫でて騎乗

攻守に第六感を使い
花や木、蜥蜴を守る事だけを考えて援護射撃
白銀世界の染みを落とす様に
無心にスナイパーで射るが…安らかにとは祈る

見切り時の動きは風鳥に任せ
周回したり羽搏きで動きを阻害して
数を纏めたら矢を分散させて範囲攻撃

終えたら
花や木を調べ
ニバリス達に動物と話すで訊いてみる
ナールやヤトゥという名を知っているか
それに関する場所や物は
ナオスの実は足りているか

…叶うなら
薬効が必要なく、彼らが穏やかに過ごせたら良い


クララ・リンドヴァル
このまま座視すれば、ナオスの木もニバリスも絶滅してしまいます。勇者ヤトゥの意志を途絶えさせない為にも、この聖域を守り抜かなくては。
『不変』のリンドヴァル、参ります……

ウィザード・ミサイルを放ち、味方の【援護射撃】を行います。序盤は広角に撃ったり、密集している所を狙って【全力魔法】を撃ち込んだりして、一度に多数の相手を巻き込むようにします。戦い進んで撃ち漏らしが増えて来た頃を見計らい、数減らしにシフトします。
終始後衛として動き、飛んで来る敵を叩き落としたりして、近接攻撃を避ける立ち回りをします。
時の流れは神の眷属にも、神にさえも容赦無く。だからこそ、この奇跡が何時迄も続いて欲しい、そう思います。



「こりゃまたすげぇ見た目の虫だな――」
 マクベスが言った。
「「「ギィィ――ギィィ――」」」
 毒牙虫――彼らにとっての『侵入者』に気付き、高らかに鳴けば、次々と仲間がやってくる。
「嫌な予感とは当たるものだな。
 虫は苦手だが……オブリビオンなら話は少し別だ」
 まして、と呟くは瑠碧。
「自然を荒らすなら尚の事」
 頭上を羽ばたく毒牙虫たちが過ぎ行き、自浄作用のある翠編がはたりと揺らめく。
「……このまま座視すれば、ナオスの木もニバリスも絶滅してしまいます……。
 勇者ヤトゥの意志を途絶えさせない為にも、この聖域を守り抜かなくては」
「これ以上荒らされる前にさっさと蹴散らそうぜ」
 クララの声は小さく控えめながらも確りと、そして続いたマクベスの言葉に頷く猟兵たち。
「――『不変』のリンドヴァル、参ります……」
 Bibliae Magicaeを片手に、施行する杖をもう片方に、顕現するクララの魔法陣。
 渦巻いたかと思われた炎が、広範、射角の定義のもと矢を象り布陣されゆく。
「場を荒らして、あの子達を脅かすとは――随分と無粋な真似をするね……」
 そう呟いたアルノルトの瞳は紅い。
 蛇牙の如き先端を持つViperが一体の敵を捕らえ、彼が手首を返せば敵を薙ぎ払っていった。
 刹那の滞空にViperの噛み付きを解除すれば、放られた毒牙虫へ炎の矢が突き刺さる。
「ギイイイイ……!」
「尤も、無粋の代償はその命で贖って貰うけれど」
 低空を這うアルノルトのViper、クララの炎の矢が広角に敵を射っていく。
「風よ、暫しの時、力を貸して……其の身は風と等しく、自由に空を翔けるものなり……」
 瑠碧が呟き願えば、小さなリラが応じるように音を奏でた。
 風が舞い起こり、鳥の姿を取る。瑠碧がそっと手を添えれば、微かにふわりと巻く風。
「一緒に頑張ろう」
 風鳥を撫でて、騎乗し――空へ。
 俯瞰の位置を取った瑠碧は、まず急降下する毒牙虫を見つけ精霊弓で射る。
 次いで、その先、白銀の世界へとそれを向けた。
 とある場所に集っていこうとする毒牙虫たちを見つけ、弦を引く――生成された水矢が白銀に蠢く魔を祓っていった――安らかに、と祈る。
「毒持ちなら接近戦は避けたほうが良さそうだな」
 サラマンダーの力を魔装銃リンドブルムとファフニールに宿したマクベス。
 その時、毒牙虫が数多の仲間を召喚する。
「ギギィッッ!!」
 即座にアルノルトが振るったViperで敵の動きを阻害し、炎の矢を束ねたクララが全力で放つ。
 そして、マクベスの魔装銃から放たれた炎の弾丸が毒牙虫へ着弾する瞬間、炎は散弾が如く弾け周囲の毒牙虫を撃ち飛ばした。
 マクベスの炎は木も花も傷つけることなく、敵のみを攻撃する。
 発生した暴風に上手く捉えた風鳥が一つ羽搏けば、逆風が起こり毒牙虫たちは更に煽られ翻弄される。
 瑠碧が弦を引き放てば、水矢が分散し虫たちを射抜いていった。じゅわっと水蒸気が発生し、一時の霧を作り出す。
「ギギィ……!」
 僅かな後退を見せた毒牙虫たちがその羽を動かし、空へ――向かおうとする一体を、アルノルトがLienhardで突き刺した。
 が、針付き鎌の一閃が繰り出され、Victoriaとの鍔迫り合いが起こる。
「オレは飛んだ奴らを始末してくるぜ」
「任せるよ」
 竜の羽根で虚空へ身を躍らせるマクベスへ端的に応じたアルノルトは、鎌をVictoriaで押し敵胴を斬り払う。
 返す刃で更に一刀。
 上昇の最中、針付き鋏を最大限まで開き急降下してくる敵を避けるマクベス。
「「「ギィィ!」」」
 耳を劈く毒牙虫の声に、猟兵たちが眉を顰める。
 召喚される毒牙虫たちへ、マクベスはガルーダの力を宿させた魔装銃・リンドブルムの銃口を向けた。
「空中なら遠慮いらねぇ」
 発砲と同時に暴風。敵を浚う風のなか、再びファフニールから炎の弾丸を放てば爆炎が起こる。
「最大火力で燃やしてやんよ!」
 全力を込める次なる弾丸が更なる火炎の繭を作り上げ敵陣を一掃していく。
「……ギ……ギィ」
 炭となり灰となり地へと落ちていく毒牙虫。流れる風で炎が解け、一時の炎舞を見せる。
 クララはより精度ある矢を生成していく。
「時の流れは神の眷属にも、神にさえも容赦無く。
 だからこそ、この奇跡が何時迄も続いて欲しい……そう願います」
 不思議と、一人静かに呟いたはずのクララの声は風に乗り、周囲の猟兵の耳へと浸透するように届いた。

 ニバリスたちが穏やかに過ごせたらという、願い。
 神殿が遠く遠く先にも在ることへの、願い。

 炎の矢が、的確に一体の毒牙虫を射貫く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

どーくーむーしー!(叫んでみた)

毒の木、毒のトカゲ、毒の川、毒の神様。と、勇者。
毒虫は神様が嫌いだった、とか?

今日はヨロシクでっす!(顔見知りの姉ちゃんたちにぺこり)
とにかく、暴れまくっていくよー!(むん)

前線に殴り込んで、舞うように戦う。
(グラップルメイン、ダッシュジャンプ空中戦スライディングの大盤振る舞い)

蹴りを入れ、反動で飛び退き、攻撃を躱す。
左拳で毒針をいなし、至近距離からカウンターで右拳の灰燼拳!

虫が集めた毒、取り戻せないかなあ? 吐き出せーっ。(ぶしゃ)

撃墜数をカウントアップして、アンちゃんと競争!
戻ったら、ポノちゃんにも自慢してやろ♪

って、沁みるー。(涙目)


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】
ナオスの木、これが勇者ヤトゥの『神殿』というわけか!
ニバリスの花は大地の毒を浄化する力がある、だったか?
何処から湧いた虫かは知らないが……この場所を食い荒らさせはしないさ。

全身毒針だらけ、随分攻撃的なデザインだな。出来れば近づきたくはないが……
採掘した赤い鉱石を御守代りに忍ばせ、【念動武闘法】でクロスグレイブを複製。さらに自身の体を<念動力>で身軽にして、木や岩場を次々に飛び移る。
敵に攻撃の的を絞らせず、全方位から光線を発射して毒虫を撃ち抜いていこう! 一撃で仕留められずとも、
うまく翅に当たれば機動力を低下させられるはずだし、接近戦でも楽に戦えるだろう。
「今だ、やれ!」


木元・杏
【かんさつにっき】 
他の皆との連携OK 

毒の虫 虫は毒をばら蒔く? 
お花、ナオスの実、これ以上食べさせない 
「神殿」のナ―ルもきっと望んでない 

ガーネットとシリン 
頼もしいおねえさん達に後ろを守ってもらって、
わたしは中位置
灯る陽光を大太刀に象りリーチ確保 

【絶望の福音】で虫の攻撃を予知し皆に知らせる 

鋏の軌道は第六感で読み、
届く前に大太刀で叩き落とし、そのまま虫を突っ斬す

うさみみメイドさんはそっと花畑に忍ばせて
攻撃の合間が出来れば、虫の群れに足元からアッパーでフェイント攻撃
怯んだところを一気に大太刀で薙ぎ払う

数が多いからカウントしながら各個撃破を心掛けて…… 競争?
ん、負けない(←負けず嫌い


シリン・カービン
【かんさつにっき】

この神殿は荒らさせない。
ヤトゥの願いは私達が繋ぐ。

前衛は子供達に任せ、
私はガーネットと共に援護します。
【スピリット・バインド】で
氷の精霊を宿らせた投網を広げ、
出来るだけ多くの虫を巻き込み、
寒さで動きが鈍くなったところで、
「とどめを」
誰のカウントになるかは早い者勝ち。

森の住人である私には毒虫も見慣れたもの。
近寄られた虫の攻撃を見切り、
精霊猟刀で墜とします。

「祭莉、動かないで」
戦闘終了後、虫に刺された祭莉の傷に
薬を塗ってあげます。
よく効きますよ。凄く沁みますが。

帰ったら神殿や冒険者の宿に知らせて、
ここを守って貰うようにしましょう。
ナールとの絆が途切れぬように。

アドリブ・連携可。



(「ナオスの木、あれが勇者ヤトゥの『神殿』というわけか――!」)
 ナオスの実を食べるトカゲは、火蜥蜴の神ナールの眷属と言われていた。
 トカゲたちは逃げ隠れ、地に咲く花も転がる実も食べつくそうとする毒牙虫たちを、ガーネットは睥睨する。
 奴らはのちにトカゲをも捕食し始めることだろう。
 ガーネットは採掘した赤い鉱石を御守り代わりに忍ばせた。鉱石から広い視野と洞察力、そして勝負強さの波長を感じつつ、念動力を展開する。
「何処から湧いた虫かは知らないが……この場所を食い荒らさせはしないさ」
 ガーネットの言葉に、シリンが微かに頷く。
(「この神殿は荒らさせない。ヤトゥの願いは私達が繋ぐ」)
 スリングを回せば、手に収まるは精霊猟銃――構えの姿勢を取りながら、ボルトハンドルへと指を滑らせる。
「シリン」
「ええ、気を付けて」
 暗に行ってくると告げる杏へ、シリンは照準へ目を通しながら応じた。彼我の距離、32フィート先の毒牙虫に狙いをつけ、呟く。
「――氷の精霊よ、彼奴を縛れ」
 手の中の精霊猟銃は冴え冴えと。
 撃てば氷の精霊が宿る投網が第一の陣を敷く――。
「ギイイイ!!」
 ばりばりぎしぎしと鋏で氷る網を砕かんばかりに毒牙虫が暴れ回った。
 排莢は凍てつく吐息。僅かに射角を上げ、次は36フィート先。
(「全身毒針だらけ、随分攻撃的な敵だな。出来れば近づきたくはないが……」)
 そう思い念動力を駆使したガーネットの跳躍は、通常のそれより高く、重力は彼女を捉えることが出来ない。
 瞬時に三十五のクロスグレイブが複製され、三十六。
 赤が集い、砲口から中空に在る敵陣へ向かって一斉に光線が発射された。ガーネットは反動に逆らわずに身を任せ、岩場への着地から瞬発力を重ねる。
 土精霊の宿るゴーレムがある猟兵の力によって複数生成され、たまに彼女の動きを補助するように立ち回った。
 ガーネットの眼下には、駆けていく祭莉が――ハッと気付き、手を振ってくる。
「ヨロシクでっす! おいらは、とにかく前で暴れまくってくるねー!」
 そう叫んで前を見た祭莉は一体の毒牙虫に目をつける。岩を跳び台とし、その身を更に加速させた。
「どーくーむーしー!」
「ギギィ!?」
 全身をばねに、自らが弾丸の如く突っ込んだ祭莉は毒牙虫を殴り飛ばし、前転半ばにて両腕で大地を叩く。
 空中に踊るは我が身。
 刹那の滞空。この瞬間に周囲を一瞥した少年は、半身を捻り飛翔する敵を蹴撃で地に落とした。
「着地はまかせたっ」
 と、言った祭莉が毒牙虫の上に着地する――加速の末なので、当然虫は轢き潰された。
 兄と違い、回りこむように駆けるは、杏。
「お花、ナオスの実、これ以上食べさせない……『神殿』のナ―ルもきっと望んでない」
 そう呟いた杏はくっと唇を結ぶ。
 手を緩く、しかし確りと握れば白銀の光が少女の周囲で揺らめき何かに反射するように輝いた。
 次の瞬間、灯る陽光は大太刀を象り、振るえば銀の残光。
「ギイイ!」
 氷結の網に捕らえられた毒牙虫たちが耀く銀閃の餌食となっていく。
 一方、
「毒の木、毒のトカゲ、毒の川、毒の神様。と、勇者……毒虫は神様が嫌いなのー?」
「ギギィギギィ!!」
「……、虫が集めた毒、取り戻せないかなあ?」
 吐き出せーっ、と、お腹狙って一撃を入れる祭莉であった。

 杏がぴくりとする。そして、ガーネットに向かってやや声を張った。
「ガーネット、気を付けて。鋏の攻撃、くる」
「「ギイイイイ!!!」」
 一番の脅威は手数の多いガーネットと判断したのだろう。
 くるりと毒牙虫がその場で回る――羽音が猟兵たちの耳を打った――次の瞬間、ロケットのように急上昇していく虫たち。
 推進に任せた斬撃か。
 刀身を伸ばすイメージを脳裏に描きながら、杏が灯る陽光を横一文字に振るった。
 やや離れた場所ではうさみみメイドさんが羽ばたこうとする毒牙虫の腹をアッパーで殴りつけ、そこを起点に大太刀で周囲の虫を薙ぎ払っていく。
 ガーネットは数多のクロスグレイブを動かし、大きな盾のように――そして容赦なく光線を放ち虫たちを落としていった。
「シャギャアアア!!」
「今だ、やれ!」
 ガーネットが声を張る。
 落ちていく毒牙虫は鋏を大きく開き杏を狙うのだが、彼女は大太刀で叩き落とし、その白銀で大地に繋ぐ。少し引けば、敵の虫腹が裂けた。
「ん、一体――合計で、十……と」
 プラス、奮闘するうさみみメイドさんが二体倒している。
「おいら、八!」
 撃墜数を数える杏。即座に反応するのは祭莉だ。
「ん、負けない」
 このまま突っ走る気満々で呟く杏。
 カウントアップする子供たちの声を聞きながら、上空にてガーネットが光線を放った。そして、告げる。
「追加だ」
 頭上から翅がボロボロになったり胴が削れた毒牙虫数体が落ちてきた。
 反動に対角の空を過ぎるガーネットが軌道を細かに調整し、少し遠く、地面へと降り立つ。彼女を猟兵が使役する土精霊が援護して守る。
「シギィィィァァァ!!」
 怒り狂っているのか、鋏が頻繁に動く敵陣。
 祭莉は敵一体の鋏を掻い潜り、蹴撃を放つ。反動に身を任せ、飛び退けば空振る敵の針付き鎌。
 次いで曲線を描くはずであった敵の軌道がぶれる――左拳で鎌と毒針をいなしたのだ。
 敵懐へと入った祭莉が更なる一歩とともに超高速かつ大威力の一撃を叩きこんだ。
「じゅうっさん!」
 素早く引く拳には琥珀の彩り。
 その間にも黙々とシリンはスピリット・バインドで毒牙虫たちに対し、氷の布陣を拡げていく。
「ギィィ……」
「とどめを」
 誰のカウントになるかは早い者勝ちです、と言わんばかりのシリンの援護に、祭莉と杏が駆けた。

「祭莉」
 付近の毒牙虫を倒し、次なる戦場を目指し駆けようとする少年をシリンが呼び止めた。
 近付くと、やはり、とシリンが呟く。
 手や腕は敵の鋭い針やギザギザの鋏に傷付き、そこから毒が入りこんだのか、変色し爛れていた。
「うわ」
 改めて、自身の手と腕を見て祭莉は呟いた。履物の裏も見て――岩場にざりざりと擦りつけた。
「アンちゃんはー?」
「わたしは大丈夫。先にいくね」
「では共に参るとしよう」
 岩場を跳躍し、空駆けるように行くガーネットと、彼女を追って駆ける杏。その後ろをうさみみメイドさんが着いていく。
「薬を塗りましょう。よく効きますよ」
 と、シリンが言う――間を置いて「凄く沁みますが」という一言の通り、物凄く沁みて祭莉は涙目だ。
 身じろげば、
「祭莉、動かないで」
 と注意が飛んできたので、狼耳を伏せて耐える。
「次は、少しは毒を阻むこともできるでしょう」
 処置が終わりシリンが促せば少年は「ありがとー」と、ぱっと駆けて行く。
 シリンは精霊猟銃を再び手にし、ナオスの木へふと視線を移す。
(「帰ったら神殿や冒険者の宿に知らせて、ここを守って貰うようにしましょう。
 ――ナールとの絆が途切れぬように」)
 放っておけば途絶えたであろう存在との絆を、静かに繋ぎ止めた勇者ヤトゥ。
 彼の意を正確に汲んだシリンは、更なる護りをと願うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

スピレイル・ナトゥア
「周辺の環境を考えると、あまり派手な技を使うわけにはいきませんね」
ガランサス・ニバリスの花たちやトカゲさんたちを全滅させてしまっては本末転倒です
火気厳禁で、ここは精霊樹の弓を使って毒牙虫さんを打ち抜きます
しかし、毒牙虫さんのあのハサミは厄介ですね
「土の精霊さん。みんなを守ってください!」
毒牙虫さんのハサミからみんなを守るための盾として、土の精霊を宿したゴーレムさんたちを生成します
「『群竜大陸』への手がかりはどこかにあるのでしょうか……? 勇者の伝説を調べるたびにオブリビオンさんが出てきます。オブリビオンさんたちが私たちを妨害しようとしている……ってのは、考えすぎでしょうか?」



「周辺の環境を考えると、あまり派手な技を使うわけにはいきませんね」
 そう言ったスピレイルは、思考を巡らせる。
(「ガランサス・ニバリスの花たちや、トカゲさんたちを全滅させてしまっては本末転倒です」)
 派手な術を使う猟兵たちは、岩場の多い場所へと赴き、スピレイルは真白き虹の彩りを放つものたちを守る位置へ。
「ギギィィ」
 毒牙虫は、花だけでなくトカゲたちをも捕食しようと動いている――その光景を目の当たりにした彼女は、精霊樹の弓を構える。矢を番え放てば、敵の正鵠を射貫いた。
 間断なく二の矢を放てば、その衝撃に敵が弾け飛び、地面に転がる。
 そうやって敵の進撃を阻み、倒し、時に射角を調整したスピレイルは矢を敵胴を掬うように放ち、仲間の元へと送り届けた。
「ギイイイイイイ……!!」
 風精霊の力も作用し、送り届けられる毒牙虫はよく叫び強制的な飛びを見せた。
(「しかし、毒牙虫さんのあのハサミは厄介ですね」)
 青の瞳が猟兵たちの動きを捉える。大きく開けば仲間の身はすっぽりが入るそれは、開閉するだけでも危ない。
 そこで、スピレイルは土の精霊へと呼びかけることにした。
「土の精霊さん。みんなを守ってください!」
 ぼこりぼこりと動き出す。
 土の精霊が宿るゴーレムは鉱石まじり。
 仲間の猟兵を守るべく、三十八体の彼らが動きその巨躯で鋏を阻んだ。
 当たり処の悪かった毒牙虫の鋏は噛み合わせが悪くなる――つまり頭部が歪み、挙動は酔歩の如く。
 飛翔すれば、容易な的となった。
 ゴーレムたちは、岩場を利用し跳躍する猟兵の補助も行っているようだ。
 時折土精霊たちの様子を捉えつつ、スピレイルは新たに向かって来る毒牙虫を射る。
 そして、
「ギィィ……」
 ――矢を番えるとともに、ふと、思うのだ。
(「『群竜大陸』への手がかりはどこかにあるのでしょうか……?」)
 勇者たちの跡を追い始めて、しばらく。
 彼らの意志を把握していくにも、この時は未だ見えぬ群竜大陸――否、見え始めようとしているのか――。
 目的地を霧中で探すようなもの。
 スピレイルは青の目を瞬かせた。――精霊の眼がそこには在る。
 確かめた伝承は一つ一つ、霧中に流れを作り、スピレイルたちに新たな道を示そうとしていた。
 ――そして、見過ごせないことが、一つ。
(「勇者の伝説を調べるたびにオブリビオンさんが出てきます。オブリビオンさんたちが私たちを妨害しようとしている……というのは、考えすぎでしょうか――?」)

成功 🔵​🔵​🔴​

浮世・綾華
ウェリナちゃん(f13938)と

さっきまで真っ黒だったのにすげー綺麗だな

そして神殿と呼ばれる木、ナオスから
花を食らう毒牙虫、そしてウェリナちゃんへと視線を移し
ん、勇者さんの想い、守ろうなと頭をぽんぽん

めらめら。うんうん
虫にはやっぱ炎だよな、俺も一緒に燃やす
花や木は燃えないように注意

虫は特別嫌いでもねえケド仲間が召喚されちゃったら
向かわせる鬼火は【範囲攻撃】【属性攻撃】で
遠距離から高火力・広範囲を焼き尽くす

は、ピエールつえー
近くまで寄ってきた奴はフェイントでかわし
動きをよく観察し引き寄せ黒鍵刀で受け止め切り払いカウンター狙い
ウェリナちゃんの近くに向かう奴がいたら
串刺しにした蛾を薙ぎ払って敵を盾に


ウェリナ・フルリール
アヤチャン(f01194)と

やまのぼり、がんばりました(はふぅ
はわ、トカゲさんもおはなも、きれいなのです!
このふうけい、アヤチャンやみんなとまもるのです!
もうひとがんばりなのです(ぐっ

リナ、はなびらひらひらめらめらさせます!
きやはながもえないようきをつけつつ
アヤちゃんとピエールのほのおで、てきをもやします!
むしさんへいきですけど、あまりちかづかないように
どくばりも、もやすのです!
ちかづくむしは、やりのピエールでくしざしです!
ほめられてピエールも、えっへんとくいがおです

ゆうしゃさんがなんでおはなまいたかは、わかりませんけど
でも、きっとゆうしゃさんがまもりたかったもの
いまはリナたちがまもるのです!



「さっきまで真っ黒だったのに、すげー綺麗だな」
 綾華が言い、ウェリナが持つ元のガランサ・ニバリスを見た。元の花は陽に照らされようとも虹の光沢は出ず、ナオスの木の毒が、この場の花色を変えているのだろうと察する。
 山に入る者、今は枯れたとされる水脈を伝い人里へ与えたであろう影響も、花が留めているのだろう。これは、それ故の色だ。
「やまのぼり、がんばりました」
 はふぅ、と息を漏らしつつウェリナは屈み、このカルデラらしき土地にいる白いトカゲたちに持ってきた花を近付けた。
「はじめましてなのです。ちょっとだけ、このばしょに、おはなさんをおかせてほしいのです」
 そう言ってウェリナは立ち上がり、トカゲも花も綺麗な光景を見回した――異質なのは、場を乱す毒牙虫たち――。
「このふうけい、アヤチャンやみんなとまもるのです!」
 神殿と呼ばれるナオスの木から、花を喰らう毒牙虫へと綾華の赤がゆるりと流れ――そしてウェリナへと留まる。
「ん、勇者さんの想い、守ろうな」
 頭をぽんぽんとしてやれば、こくりと頷いたウェリナが拳をくっと作る。傍には相棒ドラゴンのピエールが。
「はい。もうひとがんばり、なのです!」
「ギィィ」
 大地と虚空に在る数多の毒牙虫を睨みつけたウェリナは、自身の周囲にたくさんの蕾を出現させた。
 天を向くそれらが一斉に花開けば、真白の世界と高貴な香りが漂う――くるりと花が回りその花弁が解けていく。
 ひらひらと舞う白き花びらが吹雪き、それに紛れ飛翔するはピエール。
「ドラゴンさんのほのおは、あつくてつよいのです!」
 ウェリナが言った瞬間、花びらの嵐は猛烈なドラゴンの炎と化す。
「ギイイイイ!!」
 虚空は炎に覆われるも、その熱が、火の粉が大地に生きるものの脅威となることはない。
「ひらひら、めらめらなのです!」
「めらめら――虫にはやっぱ炎だよな、俺も一緒に燃やそ」
 うんうんと頷いた綾華。
 虫を忌避することもない彼だが、遠く、他者から微かに感じ取った毒牙虫たちの数が増えている。
 黒鍵刀の刀身がウェリナの焔を映し、次の瞬間、その身を緋色の鬼火へと変化させた。
 鬼火が舞えばその軌道から幾つもの小さな炎が生まれる。
「――ほら、喰らいな」
 鬼火たちが描く弧の軌跡は一種蛍のようでもあるが、その輝きは力強い。
 展開する地上の敵陣を薙ぐように鬼火たちが旋回し、虫たちの三接続部分、口器へと入りこみその体を焼けば炭化し瓦解する虫体。
「ギャギャギャ……!」
 飛翔する毒牙虫たち。
 耳障りな翅音を鳴らし、彼我の距離をつめる敵を視認した綾華が寸前で躱した。
 地面に激突するかと思われた毒牙虫はバウンドするように跳躍してくるのだが――旋回する鬼火が綾華へと舞い戻り、彼がその腕を振るうとその手中には黒鍵刀。
 頭部の鋏を受け止めた綾華は、刹那の鍔迫り合いののち切り払い、酔歩の如くにふらついた敵を貫いた。
 その時、二体が針付き鎌を構え、ウェリナへと突っ込んでいく。
 綾華は黒鍵刀を薙いで串刺しの敵を投擲し、一体を弾き飛ばす。
 そして射線に入ったピエールが対空砲火の業を見せ、自身もまた突撃すれば――。
 風の如き飛翔に散開する炎のなか、現れるは敵胴を貫く竜槍の姿。
 上を向く竜槍が下段へと振るわれ、敵が地面へと叩きつけられる。繋ぐ大地と虫から穂先を抜き、その身に咲く白木蓮を揺らしながらピエールは再びドラゴンの姿に。
「は、ピエールつえー」
 綾華の声に、ピエールは尻尾をぶんぶんと振る。
「これは、えっへんとくいがおなおかおなのです」
 ピエールを撫でながら、綾華に教えるウェリナ。
 一瞬だけ訪れる和やかな空気は、次なる敵への対峙で払われた。
(「ゆうしゃさんがなんでおはなまいたかは、わかりませんけど」)
 眷属のトカゲのための毒木。人のための浄化の花。
 関連は多岐に渡り、ウェリナは云々と考える。勇者の真意は勇者のもので、真意が向けられた伝承を繋ぐ。
 だけれども、大事なことは分かるのだ。
(「でも、きっとゆうしゃさんがまもりたかったもの、いまはリナたちがまもるのです!」)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
ソヨゴは好きじゃなさそう?
僕は見た目はわりと、嫌いじゃないよ
これが自然のものならじっくり観察したい
幼虫はどんなのだろうとか
でもオブリビオンだし
害虫駆除だネ

蜂の話はちょっと気になるけど
今は目の前の敵に集中しようか

ソヨゴの後方
戦場全体を見渡せる位置に配置
Phantom Painを構える
ソヨゴの死角から彼女に近づこうとする敵を優先的に射撃する

さらにUC展開
150体をソヨゴの周囲
攻撃の邪魔にならないように配置し一定以上の数の敵を近づかせない
50は僕の周囲を守らせる

「ソヨゴ、右」
周囲を警戒しつつソヨゴに指示する

戦闘後は
この地で勇者ヤトゥの気持ちに寄り添ってみたい


城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と】
アヤネさんは虫って平気ですか?欧米の方では昆虫採取とか興味がない・理解できないって人が多いと聞いたことがあるんですが…
あ・私は虫、平気です
なるほど。オブリビオンじゃなければ採取できたのに残念ですね
そういえば父が最近書いた短編ホラーではない蜂の群れが……いえ、やっぱやめておきましょう

【廃園の鬼】を発動し【衝撃波】で虫を吹き飛ばしたり何匹か纏めて叩っ斬ります
虫の毒は【毒耐性】である程度は耐えられますが
それでも刺されると痛いものは痛い!【武器受け】で直接食らうのは出来るだけ避けますよ
負傷してる虫には【傷をえぐる】でとどめを
アヤネさんの指示には素早く反応して対応します



 どこからともなく現れたようにみえる毒牙虫。
 その敵たちを、広く視野におさめながら冬青は携える花髑髏へと手をやった。
 刀鍔の、花と髑髏の彫り模様を指先に感じつつ、柄へと滑らせる。
「アヤネさんは虫って平気ですか?
 欧米の方では昆虫採取とか興味がない、理解できないって人が多いと聞いたことがあるんですが……」
 問う冬青に、アヤネは少しだけ気遣わしげな視線を向けた。――虫が苦手なのだろうか?
 そう思っていると、冬青は「あ。私は虫、平気です」ぱたぱたと手を振った。アヤネは頷いた。
「うん、大丈夫。敵の見た目も僕はわりと、嫌いじゃないよ。
 これが自然のものならじっくり観察したいところだけどネ」
 ――幼虫はどんなのだろうとか、長期の観察はしてみたい、とアヤネ。
「でもオブリビオンだし、害虫駆除だネ」
 そう言ってアヤネが携行するはPhantom Pain。中距離制圧用アサルトライフルだ。
「なるほど。オブリビオンじゃなければ採取できたのに、残念ですね。
 ――そういえば、父が最近書いた短編ホラーではない話には、蜂の群れが――……いえ、やっぱやめておきましょう」
 そこまで言われると気になる。
「蜂の話はちょっと気になるけど――そうだネ、今は目の前の敵に集中しようか」
「はいっ」
 戦いを始めた仲間の猟兵と毒牙虫たち。
 ナオスの木のある丘とは対岸にある丘へと駆けた二人――冬青は途中で踵を返し、丘上へと駆けながらアヤネはユーベルコード・エレクトロレギオンを展開させた。二百の小型の戦闘用機械兵器が出現し、百五十を冬青の元へ。残りを自身の周囲に留め、Cybereyesを戦場へと向けた。
「花髑髏の本当の姿を見せますね」
 冬青が廃園の鬼を発動し、鞘から抜き放てば、漆黒の吸血武器と化した花髑髏の刀身。
 彼我の距離を詰める前に振るえば衝撃波が舞い起こり、彼らの脚を掬うように吹き飛ばす。
「まだまだっ!」
 告げ、上段からの振りが起こす圧。着地する瞬間の敵に上からの衝撃波が襲いかかり、大地へと強打させる。
 バウンドする毒牙虫に接敵した冬青の刃が、砕けた敵の胴を貫いた。
 そんな彼女の死角に向かって、弾丸を放つアヤネ。
 連射は虫特有の三構造の内、比較的柔らかと思われる腹部から胴、翅にかけて。
 スコープ越しの視界に、毒濡れのなか中腸が垣間見え、とどめとばかりに撃ち抜いた。
 次いで牽制の銃弾。
「ギイイイ!」
 数体の毒牙虫が飛翔し、機械兵器がその飛行を阻害するべく動いた。
 すり抜け、急降下の勢いで針付き鎌を繰り出す毒牙虫。
 複数の毒針を備えた鎌を打ち返す勢いで冬青は刀を斬り上げた。
「刺されると痛いものは痛いですからね」
 刃で鎌部を絡め、払う。遠投された敵が着地した瞬間、
「ソヨゴ、右」
 アヤネの声に即応し、冬青は刀を薙いだ。「はいっ!」と半拍ほど遅れる返事。
 四脚を開き、冬青に張り付くつもりだったらしき虫が斬撃の末、真っ二つに。その間、遠投した敵はアヤネの手で蜂の巣と成り果てる。
「この虫たちの体液も、毒なんでしょうかね?」
 冬青が呟いた。花髑髏が吸血し、変色した体液が刀身に残っている。振り、払えば、大地に飛沫が刻まれる。
「……それっぽいネ。十分に気を付けて、ソヨゴ」
 毒への耐性はあれども油断は禁物。
 アヤネの言葉に頷いた冬青は、再び衝撃波を起こしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
此処がヤトゥの遺した『神殿』
…なんとも美しい聖域よな
斯様な地を荒そうなぞ
不届き千万なる害虫は一匹残らず駆除してくれよう

美しい花々を燃やさぬよう延焼に注意
虫共は一切容赦なく【愚者の灯火】で焼き払う
群れたところで貴様等が格好の的である事は変わりない
範囲攻撃にて広範に炎を展開、数を減らす

召喚した炎の内、幾つかは我が周囲に展開
近付こうものならば骨まで残さず灰にしてやろう
ふふん、どうした
掛って来ぬのか?

無論、彼奴等を侮っている訳ではない
自他問わず、決して死角を狙われぬよう
死角を補う為にも支援は欠かさぬ

全て片付けた後
可能ならば花を始め周囲の様子を観察したい
…宜しいでしょうか?
問い掛けるよう、ニバリスを見て



「此処がヤトゥの遺した『神殿』――……なんとも美しい聖域よな」
 目を凝らせば透き通った湖底に在る鉱石。
 場に存在するただひとつの樹木、ナオスは青々としており。
 その毒を受け咲く花は、風吹けば虹の奏でが起こる。
 石突でカツンと地を打つアルバ。
「斯様な地を荒そうなぞ、不届き千万なる害虫は一匹残らず駆除してくれよう」
 そう言うと同時、流麗なる一振りを掲げれば、杖先を起点に流星の如き煌きが魔方陣を描いていく。
 大地に這う毒牙虫、虚空に群れる毒牙虫。
「ギィィ――」
 敵陣は地と空に在り、仲間の猟兵たちが目前の敵との一戦、挟撃にと動くのを視界におさめながらアルバが愚者の灯火を展開した。
「群れたところで、貴様等が格好の的である事は変わりない」
 一部の炎を自身の側に留め、数多の炎が空の毒牙虫へと放たれていく。
 ある炎は弾丸が如くに、ある炎は数体を翻弄した末にその身を叩きこむ。空が炎に覆われるも、その熱が、火の粉が大地に生きるものの脅威となることはなかった。
 魔術を行使するアルバの陣は精緻に描かれており、比例し炎の命中精度は高い。
 魔方陣を重ねれば、広範に、炎は苛烈に空を駆け毒牙虫たちを撃墜していった。
 仲間が扱う爆炎の術を援護し、敵を討つ。
 大地を駆ける虫たちには土精霊のゴーレムが応じるも――数体はやはり掻い潜る。
 視認したアルバは手元に残した炎を旋回させた。近付くことすら許さぬとばかりに弧を描く炎が、毒牙虫を弾き、腹を灼き貫いた。
「ギイ……!」
 忌避しない者に対して、毒牙虫たちは本領であるべき力を行使できない。
「ふふん、どうした。掛って来ぬのか?」
 アルバが炎を飛ばせば、一つめは虫脚をすくって体勢を崩し、二つめの炎は無防備な虫を包みこむ。
 アルバは灰燼と化す虫を見、それから視線を移し現在の戦況を見る。
 例え毒牙虫が召喚を続けようとも、仲間の範囲攻撃、その火力は充分に敵を上回っていた。既に軍配は上がり、殲滅へと移行しつつある――。




 もう一体たりとも出てこない――それを確認する猟兵たち。
 この場に到着したのは昼半ばであった頃だろうか。戦闘が終わった今、空を見れば陽は下る最中。
「カルデラの中ということもあり、宵の訪れは早いでしょう」
 アルバの言葉に、アルノルトが頷く。
「では、やるべきことを片付けていかないとね」
 勇者の遺品である種は、もう一つの丘へと埋めることとなった。
「奉納、と言っても良いのかもしれないね」
「先のことにはなりますが、新たな『神殿』の実りが、神の眷属の助けとなればいいですね」
 アルノルトとクララが、実を奉納する。
 限られた時間の中でも、動く猟兵たち。
「私は、周囲の様子をもうしばらく観察したいと思っています」
 そう言ったアルバは、突出した岩場にのぼってきたニバリスへと目で問うた。
 ――宜しいでしょうか?
 陰りなく輝くはトカゲの鱗。承諾したと言わんばかりに、ニバリスはじっとアルバを見たあと、花の影へと入っていった。
「この辺りが良いんじゃねぇか?」
 と、マクベスが指差した場所に、スピレイルが二体のゴーレムを動かす。
 トカゲたちの遊び場へと変形させたのちに土精霊を去らせた。
「これトカゲさんたちのべっそう?」
「そうです。遊び場も兼ねていますが、雨露を避ける場所があれば良いかと思いまして」
「たくさん食べてね」
 スピレイルの言葉に頷き、慎重に拾ってきた実を集めてくる祭莉と杏。
 ウェリナは土を掘り、持ってきた花の根をそこへと埋めた。
「おんなじにじ、できるといいのです」
「そだね。ウェリナちゃんの花も、きっと人のための護りになるんじゃないかな」
 と、綾華。
 瑠碧が一匹のニバリスの話を聞いていると、二匹、三匹と、段々増えていく。
「壮観だな」
 ガーネットが目を瞬かせ、瑠碧と同じように屈んだ。
「ナールという名も、ヤトゥという名も、知っているみたいだ」
 聞き出した情報を瑠碧が教える。どちらもトカゲたちの間では、祖先として語り継がれている名であった。
「トカゲたちの間では、ヤトゥもトカゲという認識なのか」
「そのようだ」
 種の認識の違いに目を瞠るガーネット。
 ナオスの実は足りない時期もあり、時折、カルデラの外へも行くらしい。祭莉と杏が出会ったニバリスもその一匹なのだろう。
「ちょっとだけ、ヤトゥの気持ちに寄り添える――そんな気がするネ」
「ヤトゥさんは、この光景も夢で見ているような気もしますね」
 人嫌いのしないニバリスと戯れながら座って景色を眺めるアヤネと冬青。
 流れる風が虹の煌きを猟兵たちに魅せてくれる。
「そろそろ下山しなければ」
 と、皆を促すシリン。宵の訪れはじめたカルデラ内を抜ければ、再び、視界は明るくなる。
 一部の猟兵たちとはこの場で別れ、毒の町・ディリティリオへと戻る道を辿る。
 神殿のことを、町の神官や冒険者に知らせるためだ。種の衰退に無頓着であった昔と違って、今ならば保全に努めてくれるだろう。
 シリンはふと、町の方へと視線を向けた。
 そこには、
「町の灯が、微かに見えますね」
 静かなアルバの声。もっと夜がくれば頂上付近では、より美しく見えるであろう灯。
「星座に関する情報もありましたが――」
 と、アルバは空の星をなぞった。赤い星を瞳として、描かれるトカゲの図。
「瞳を、赤き鉱石在る山とすれば、頭は町の方へと向かっていることになりますね」
 彼の言葉を聞きながら、空から地へと視線を移したシリンは頷いた。
(「ナールとの絆が生き続けること――それが勇者の願いであり、意志だったのでしょう」)
 時の流れや人の手で絶えていたかもしれない絆。
 されどその手は流れを整え、生かし続けることもできるのだ、と、猟兵たちは思うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年06月09日


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#アックス&ウィザーズ
🔒
#群竜大陸
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#勇者
🔒
#勇者の伝説探索
#毒
#勇者の布石


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト