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バトルオブフラワーズ⑩〜エモーショナル・リフレイン

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー


「皆さん、新たな幹部へのルートが開けました!」
 ふわっとこちらに飛んできたのは妖精のグリモア猟兵ファータ・カンタータ(遥か彼方の花びら・f02060)だ。
「今回戦う敵は『カワイイ怪人『ラビットバニー』』です。キマイラフューチャー都市部ではブランドのモチーフとして使われている方みたいですね」
 しかしその可愛らしい名前と姿とは裏腹に、持つ能力は非常に協力なものだと彼女は注意を促す。
 なんでも、【あらゆる攻撃を無効化するバリア】を展開することが出来るらしい。ファータの説明を聞いた猟兵たちは怪訝な表情をした。
 どの系統(POW、SPD、WIZ)のあらゆるユーベルコードが防がれてしまうとなると、猟兵としては太刀打ちできないのではないか?
 その問いにファータはゆっくりと首を振った。
「確かにバリア自体は強力です。ですが、強力が故に綻べば脆く、簡単にバリアを突破出来ます」
 彼女曰く、ラビットバニーが【エモいと思うモノ】を目撃すれば、バリアは簡単に消滅するそうだ。
「えもい? という言葉はあまり聞き慣れないのですが、頑張って調べてみました。元は音楽用語らしいのですが、今現在キマイラフューチャーやUDCアースなどの一部の世界で積極的に使われている語句らしいですね」
 例えば、美しい風景、心がじんわり来るような手紙。
 例えば、可愛らしく舞う姿、勇ましく何かを護ろうとする様。
 例えば、突拍子もない行動、予想もできない展開。
 そういった、敢えて一言で言うのならば心が動かされるモノ、もっと砕けた言い方をすれば、思わずいいね❤等の評価を付けたくなるモノ。
 それらをラビットバニーに見せつけた上でユーベルコードを使えば、バリアを突破出来るとのことだった。
「幸いラビットバニーさんは、その【エモいと思う基準が広く緩い】そうなので、皆さんがいいと思ったものを見せてみたり、やってみたりするといいと思います」
 逆に、【エモい思われる行動をしなければ、絶対に攻撃が通らない】と思っていいだろう。
「バリアが消えても、決して油断はしないでください。その実力自体も相当なものです」
 幹部を名乗るだけあって、その強さはバリアを差し引いてもかなり強いらしい。例えエモいモノを見せてバリアを突破したとしても、勝負自体に負けてしまう可能性も低くはないとのことだ。
 バリアを消す担当、攻撃をする担当で別れてもいいくらいだとファータは言った。

「ちなみに戦場はエイプモンキーさんと同じ、お花が沢山舞う空間なのです。咲き乱れる花々を足場にして進んでいくと、どういう進路をとってもラビットバニーさんに到達できます」
 素敵な場所ではありますけどね、と彼女はおどけてみせた。だがそれは一瞬で、すぐに真剣な表情へと切り替わる。
「――厳しい戦いになることが予想されます。どうか皆さん、【よく対策を立てて臨んでください】。お気をつけて」
 祈るように言えば、彼女はそのままグリモアを操作し、ゲートを展開していくのだった。


苗木 葉菜
 こんにちは、苗木です。
 幹部戦ですね。必ず先制攻撃で無敵バリアを展開していきます。以下注意事項です。

 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 ということで、エモい行動がないプレイングのユーベルコードは通りません。相手の攻撃にやられるだけなので失敗扱いになります。
 例えエモい行動をしてバリアを破ったとしても、戦闘や成功率によっては苦戦判定になることもあります。難易度は【難しい】です。ご了承ください。
 それでは皆さん用意は周到に、お怪我には気をつけていってらっしゃいませ。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
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 ふわ、ふわ、舞う花の世界。
 柔らかそうな花はくるくると回り、不規則な軌道で落ちていく。
 遠い先に、大きな花の集合体が見えた。
 ぽっかりと浮かぶそれは、一見するとそこは花畑のようで、花で作られた足場は存外丈夫そうだ。
 そこの中心に立っているのは、ド派手なウサギ頭。
 ド派手なウサギ頭から出ているのは、ふんわりとした緑色の髪、そして豊満で引き締まった身体に、ショッキングピンクのバニー服。
 頭さえ見なければ非常に魅力的なボディだろう。頭さえ見なければだが。
 どこか楽しそうに鼻歌を歌っている『カワイイ怪人『ラビットバニー』』は、武器であろう赤べこを振り回しながら猟兵達を待っていた。
 花が舞う。その美しい景色に「うーん、エモだね!」と一人呟いた。
『絶対無敵バリア』を保有する彼女は、余裕綽々で花畑に佇む。自らが骸の海に沈むことなど、露程思ってもいない様子だった。
ルーナ・セリオン
ワタシはこの手の精神に訴えかけるのは苦手でね、少しばかり先人の知恵を借りよう。
具体的にはこのUDCアースで流行りの少年漫画というやつだ、主人公が必殺技を土壇場でモノにする展開とかが人気らしいし倣ってみようか。

脚部ガジェットでの蹴りをメインに戦いつつたまにメスで応戦、主に【武器受け】しつつたまに【踏みつけ】などで攻撃にも転じよう。
届かなくても演技が必要そうだからね。
当然追い詰められるだろうからそうしたら一か八かの必殺UCシークエンスを詠唱付きで開始だ。
バリアさえ破れればあの日憧れた流星のように敵を貫……ければいいなあ。

まあ、実は前々から使ってる技なのは内緒にしておこうか。



「ワタシはこの手の精神に訴えかけるのは苦手でね」
 少しばかり先人のち絵を借りよう。そう言いながらラビットバニーへ向かっていくのはルーナ・セリオン(機械仕掛けの探求存在・f13441)。
 彼女は【シリウス六号】を起動すると地を蹴り、一気に敵へと距離を詰めていく。
「はぁあ!」
 舞う花びら、響く金属音、微動だにしないラビットバニー。
 敵とルーナとの間には、見えないバリアが張り巡らされていた。
「あは、ウケるんですけどー! そんな攻撃じゃあーしには一生届かないっしょ!」
 瞬間、ラビットバニーの兎面がぎらりと光る。
 それじゃ、次はあーしの番だね!と言う言葉が、ルーナの耳に入ったかと思った、瞬間。
 彼女の身体が吹き飛んだ。いや、正確にはラビットバニーに吹き飛ばされた。
 “うさちゃんカンフー”を発動した彼女の行動は恐ろしく早く、そして強い。
 咄嗟に【ゴールドスカルペル】で攻撃を受け止めたにも関わらず、この威力。
 空中で体勢を整え着地をしようとした瞬間、ルーナの視界を兎面が塞ぐ。
 容赦ない踵落とし、勢いよく叩きつけられたことにより、ルーナの周りにはぶわっと花が舞った。
 多少やられることを予想していたが、ここまでとは。
 反撃はわかっていたがことごとく聞かず、防戦一方、いや、下手すれば防戦さえもさせてはくれない。
 せめて、一度距離を取らなければ。ルーナはシリウス六号で攻撃を受けると、そのままの反動で再び吹き飛ばされ、そして今度は素早く着地した。
 思った以上に損傷は激しい。だが、追い詰められてこそ、今回の作戦は功を奏する。
 近づいてくるラビットバニーを、脚部ガジェットのブーストで牽制しながら彼女はゆっくりと口を開いた。
「……全種リミッター、解除」
 鳴り響くモーター音、足を中心に光り輝いて行く彼女。
「レイライン配置を“輝きの向こう側へ”モードシフト」
 蒼く透き通った瞳が、ラビットバニーをゆったりと捉える。そしてその瞳も光に包まれ次第に見えなっていった。
「文字通り、全速力で決めるとしようか――!」
 より一層、光が増した、瞬間。
 その光は矢の形を型取り、流星が流れるがごとくラビットバニーへ飛んでいく。
 光の矢は物凄いスピードで花畑を駆け抜け、ラビットバニーの頭部を貫いたように見えたが、
「――いいじゃん、満身創痍で行う捨て身の全力攻撃みたいな?」
 敵は首を傾げ、ルーナの攻撃を躱していた。
 躱す動作をした、ということはバリアは解けたのかもしれない。
 だが脚部ガジェットを酷使したルーナはすぐさま次の攻撃に移ることは出来なかった。
 あの超高速攻撃を躱すなんて。反応速度とスピードが強化されている状態を甘く見たか。
 ルーナは奥歯を噛みしめると、再びメスを構える。
 他の猟兵が来るまでなんとか凌がなければ、こちらが危ない状況だ。
 彼女は再び立ち上がると脚部ガジェットの様子を確かめ、再び作動させたのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

駆爛・由貴
ボアネル(f07146)と出撃

エモねぇ…ま、俺たちなら余裕だろ
と言うわけで任せたぜボアネル!

まずは【万能機械】を発動してアイツが作る料理のアシスタントだ
足場は花が絡んで動けなくなるだろうからな、空を飛ぶアイツらなら問題ないだろ
絞って混ぜて盛りつけるだけだからちゃっちゃっと作るか!

しっかし美味そうだなオイ!

アイツが気を取られてバリアーを解除したらすかさずボアネルの【憎悪する薔薇】と一緒に砲撃だぜ!

…なんてな!
まず俺のスティールラバーに魔力を注入して装備を軽量化だ!
ボアネルの薔薇が花ごと足場を吹き飛ばしたらそのまま飛んで俺のミストルティンで敵をスナイプ!
任されたぜ!ボアネル!
こっちが本命だ!
♡♥


ボアネル・ゼブダイ
由貴(f14107)と出撃

エモい…なかなか興味深い言葉だな
では私達のやり方で奴をエモらせることにしようか

狙うのはスイーツだ
私の食糧袋から『早業』で次々と食材を出す
チョコ、クッキー、生クリームにアイス
作るのは悪魔のように黒く天使のように甘いチョコパフェだ
『料理』を全力で使い美しいパフェを作る

いいね!がいくらあっても足りないほど最高の出来だな

由貴の自律ポッド達も料理アシスタントとして使い手早く作る

奴がこのパフェに気を取られたなら風属性の【憎悪する薔薇】を投げつけ吹き飛ばす
…振りをして由貴の足下にも数本投げる
発生した強力な風圧で由貴の身体を上空に浮かせ一撃を叩き込む
これこそが本命だ
任せたぞ、由貴
♡♥



「エモい……なかなか興味深い言葉だな」
 顎に手を当てながら呟くのはボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)だ。花びらと共に靡く漆黒のマントは、花畑によく映えていた。
 彼の隣にいる駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)は悩んでいる彼の腕に軽く握りこぶしを当てると、にかっと歯を見せて微笑む。
「ま、俺たちなら余裕だろ!」
 楽観的なのか、それともボアネルに対する信頼から来る言葉なのか、どちらにせよその言葉が彼の憂いを多少晴らしたのは間違いない。
 ふっと息を吐くように笑ったボアネルだったが、そのまま目を細め前を見据えると、そこには今回倒すべき敵。怪人軍団の幹部の一人、ラビットバニーが佇んでいた。
「やっほー、じゃーちゃっちゃとはじめよっか?」
 じわりと伝わる殺気。臨戦態勢になろうとする彼女に対し、向かってきたのは由貴が放った“万能機械”の自律ポッド。
 しかしそれらはラビットバニーを攻撃せず、足止めをするかのように辺りを漂っていた。
「いや、戦いの前に――」
「料理の時間だ!」
「はい?」
 なんてった?と思わずそちらを見るラビットバニー。するとボアネルの周りにはいつの間にかアイスや生クリーム、チョコレートにクッキーなどの材料が漂っている。
 正確には由貴の自律ポッドの上に乗せているのだが。
 ちゃんちゃらちゃらちゃらちゃんちゃんちゃーん♪
 突如流れる音楽。ラビットバニーの傍らにいた自律ポッドが軽快で楽しげな音楽を流していた。
 そのBGMを背景にボアネルは手早く料理を始めていく。
「まずはじめにこの美しいパフェグラスの内表面にチョコレートソースを塗ってから、底に砕いたクッキーを敷き詰める。そして次にアイスクリーム。味はバニラとチョコ、二種類用意することで飽きない味を演出するぞ」
 淡々と説明しながら材料をしながら料理をしていく。その手際はかなりのもので、しゃべると同時にその行動が終わるほど速かった。
 由貴の近くの自律ポッドはボアネルに頼まれたのか、一生懸命生クリームを泡立てている。自律式とは言え、それぞれにそれぞれの指示をしているのは由貴だ。
 彼は自律ポッドの動きを指示しながら、ラビットバニーを警戒していた。
 しかし彼女は「すっごー!」と言いながら興味津々でボアネルが料理していく様子を観察しているようだ。もうこの時点でバリアは消えてるのでは?と思ったがそれはそれとして相棒の料理の邪魔をしたくないので再びポッドに集中する。
「続いて重ねるのはチョコムース、再びクッキー、アイス、泡立てた生クリームを飾り――ここで予め用意をしておいた薄い板状のブラックチョコレートを表面に張り巡らせる。そしてアクセントにチョコレート菓子を刺せば……」
 完成だ!とボアネルが言うと同時に鳴り響くファンファーレ。
「見た目こそ悪魔のような真っ黒なチョコに包まれているが、それをぱりっと割れば天使のように甘く白いクリームが顔を出す……。名付けて、天使と悪魔のチョコレートパフェ!」
 味だけではなく、見た目も探求したこの一品に、仲間である由貴も思わず口元に垂れた涎を拭った。
 美味そうだなオイ。
「うむ、いいね❤がいくらあっても足りないほど最高の出来だな」
 念のために言っておくが、二人はキマイラフューチャーという世界を救うため、戦いにここに来ている。しかしそれはそれとして、ボアネルは自らの料理の出来に満足そうに頷いた。
「きゃぁあああ!! なにこのパフェ! ゲキカワ!! ゲキエモ!! なんですけど!!」
 しかしラビットバニーの反応は二人以上で、ぴょんぴょんと可愛らしく跳ねながら美味しそうなパフェをまじまじと見つめている。
 これなら確実にバリアは発動しないだろう。

「――では本日のメインディッシュに入ろうか!」
 ばさっとマントを翻し、一瞬で調理器具や材料を仕舞うボアネル。そしてもう一度マントがはためいたときには、“憎悪する薔薇”を発動し大量の薔薇を顕現させていた。
 同時に由貴の自律ポッドも、一斉にラビットバニーへと照準を合わせる。
 風を纏った薔薇と、自律ポッドの砲撃が一斉にラビットバニーへと飛んでいった。
「わっとぉ!?」
 慌てて指先からビームを放つラビットバニー。そのビームは花畑へと放たれ、その地形をばらばらに分断させていく。
 しかし二人の攻撃は勢いを弱めることなく、ラビットバニーへと襲いかかった。
 彼女の周りを、爆風が包む。しかしラビットバニーも赤べこをつかい薔薇を弾き返したり、咄嗟に躱すなどをして直撃を免れているようだ。
 敵は予想もしなかっただろう。
「任せたぞ、由貴」
 ボアネルの薔薇は自分にだけでなく、味方の足元にも放たれていたということに。
「任されたぜ! ボアネル!」
 更に相手が、自分が崩した足場をものともしないということ。
 そして攻撃が、砲撃と薔薇以外にもくるということに。
「――こっちが本命だ!」
 魔力を注入した由貴の武装は限界まで軽量化され、ボアネルの放った薔薇の風圧によって天高く飛び上がる。
 構えられる漆黒の弓。きりきりと悲鳴を上げる弦は、由貴が手を離すと同時に豪速の矢となってラビットバニーへ降り注ぐ。
「いっ……ったー!」
 見事腕を貫く矢。咄嗟に腕を押さえるラビットバニーを見ながらすたっと着地した由貴は小さくガッツポーズを作る。
 そしてそのまま相棒とこつんと拳をぶつけ合ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルティア・サーゲイト
 ふと思ったんだ、出来るんじゃないかってな。腕部に四基のブースターをくっ付ける。で、拳を握って構え、ブースト点火して腕をパージ。
「砕け鉄拳! ブーストパンチ!」
 おー、出来たかな? いわゆるロケットパンチはエモい浪漫だろ。ちなみに、腕を元に戻す機能が無いからバインダーから再生成だぜ。反撃のキャノン? やってみろよ。撃ち合いは望む所だ。あ、そうだ。
「ブーストパンチ、百連発!」
 何も、バインダーから直で飛ばせばいいじゃん! バインダーを大きく開いて次々と鉄拳を撃ち込むぜ! で、最後はこの浪漫武器!
「全ての物に終末を! アポカリプス、パァーンチッ!」
 私自身が巨大な拳に変形して最高速でぶん殴るぜ!



「よっ、ほっ……そろそろかなっ、と!」
 可愛らしい少女のドールユニットを腕に乗せ、花々に飛び乗りながらラビットバニーの元へと現れたのはメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)だ。
 そのドデカイ図体に敵も気付かないわけもなく、メルティアのゴーレムユニットを見上げると「おー、ずいぶんデカイやつが来たね!」と愉快な様子でけらけらと笑った。
「おう、来てやったぜ。試してみたいことがあってな」
 そういうとメルティアのゴーレムユニットは腕部に四基のブースターを装着する。そのままラビットバニーへ拳を向け、ブーストを点火すると、
「砕け鉄拳! ブーストパンチ!」
 ブースターの勢いで腕を断裂させ、そのままラビットバニーへと腕を飛ばした。
 いわゆる、ロケットパンチか。それはラビットバニーへ勢いよく飛んでいったが、彼女のバリアに難なく弾かれてしまう。
「??? なになに、今の!」
 どうやらそれがエモいものと認識が出来なかったようだ。ドールユニットがゴーレムユニットの【ナノクラフトバインダー】から替えの腕を即座に生成すると、装着作業をしながらすかさず説明を入れていく。
「うまくいったみたいだな。なぁ、ロケットパンチって浪漫じゃね? ――エモだと思わないか?」
 一瞬の間。きょとんとするラビットバニー。
 メルティアはその間に自損した腕を装着し終わった。くるりとラビットバニーの方へ向き直ると、どうやら小刻みに震えているようだ。
「……確かに! かっくいーよね!」
 顔を上げたラビットバニーは興奮した様子でぴょんぴょん跳ねている。
 元々エモいと思う基準がかなり広く緩いという情報だったが、こういったものでも問題は無いようだった。
「んじゃもういっちょ」
 試しにメルティアがもう一発ロケットパンチを繰り出すと、今度はラビットバニーの前で爆発が起こる。恐らく赤べこキャノンで相殺したのだろう。バリアは問題なく消えているようだ。
 相殺ついでにいくつもの赤べこキャノンがこちらへ飛んできたが、ドールユニットの素早い装着と発射でそれらを弾いていく。
「撃ち合いは望むところだぜ! ……あ、いちいち腕に装着しなくてもいいなこれ」
 生成した腕を装着してロケットパンチを発射し続けていたメルティアだったが、思いついたかのように背中のナノバインダーを大きく展開し始めた。
 次の瞬間、ブーストのついた腕がバインダーから生成され、それらは一斉にラビットバニーへと向かっていく。
「いけ! ブーストパンチ、百連発!」
 ずどどどど。と夥しい数のロケットパンチがウサギを襲う。舞う花びらに、爆煙が覆われていった。
 通常のオブリビオンならば一溜まりもないほどの威力だろう。だが彼女は怪人軍団の幹部、ラビットバニー。
「あーしがこの程度でやられると思ったら、大間違いだかんね!」
 赤べこを振り回して煙を払いながら、反撃のキャノンを繰り出した彼女だったが、それをすぐに取りやめた。メルティアがその場にいなかったからだ。
 まだ爆煙は完璧に晴れてはいなかった。あたりを見渡し、彼女の姿を探す、と。自分に影が落ちていることに気付く。
 ――直上!
 ラビットバニーが見上げるとそこには自らが拳の形を模ったゴーレムユニットのメルティア。その上にドールユニットが乗っかっていた。
 ユーベルコード“MODE VANGUARD”を使用したメルティアは、ご覧の通りの飛翔能力、そして戦闘力を増強し、真っ直ぐラビットバニーへと落下していく。
「ひゃっはー! 最後は浪漫に浪漫を重ねようじゃねぇか! 全ての物に終末を! アポカリプス、パァーンチッ!」
 ドールユニットが声高らかに叫ぶと同時に、着弾する拳。その場を形成していた花々は、一瞬ぶわっと舞い上がるとまたひとつひとつがくっつき、元の形状へと戻っていった。
 元の形状に戻ったメルティアが距離を取り、敵を見据える。花吹雪の中、ウサギはゆらりと立ち上がった。
「ったぁ~……バリアがあればよゆーだったっしょ……巨大ロケパンとかマジエモなんだけど」
 まだ仕留めきれないか。メルティアは小さく舌打ちをしたが、すぐに猟奇的な笑顔を作る。
「だろォ? まだまだたっぷりお見舞いしてやるぜ!」
 再び武器を構えるメルティア。ラビットバニーは未だ健在だが、確実に、着実にその体力を減らしていっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リチア・スィール
エモい、エモい…なんか楽しくなる!って感じでいいのかな。
それじゃオレが一番好きなもの作っちゃえばいっか!

いくぜー、ガジェットショータイム起動!
アルねーちゃんが作ってくれた感じにして…
お皿に乗せて、これでよしっと!

「ほら見てみて、山盛りマカロン!」
お皿一杯に積み重なった色とりどりのマカロンを見せるぜー
思わず食べるのがもったいなくなるくらいのやつ!
一個一個を大切にしたくなる感じで!

「ほら、あげるから一緒に食べようぜ」…っと、一個パス。
なーんてね、オレ式マカロンボムだから食べられないんだけどさ!
可愛くて美味しそうででも強い、すっごいだろー!
しかも数があるから逃げ場は中々ないぜー!喰らえっ!!



「エモい、エモい……」
 花をぴょんぴょんと軽やかな足取りで伝っているリチア・スィール(無限に描く航海図・f09595)は、唸りながらもラビットバニーの元へと到着した。
 年相応の身なりをした彼だったが、敵へと対峙するとそのあどけない表情から一変、瞳に鋭さが宿る。
「ううーん、なんか楽しくなる! って感じでいいのかな?」
 エモいという単語がよくわからなかった少年は、歯を見せて笑うと“ガジェットショータイム”を発動した。
 楽しそうにしながら彼は自身のガジェットを操作し始める。魔導機械はかちゃかちゃと形を変え、分裂し、それをリチアが組み立てていった。
「アルねーちゃんが作ってくれた感じにして……」
 思い浮かぶのは、姉貴分の姿、笑顔。それを思い出して一瞬顔が緩むも、手元はしっかりあるものを模っていく。
「――できた! オレが一番好きなものなんだぜ! 見てみて!」
 そう言いながらラビットバニーに見せつけるように差し出したのはマカロンタワー。
 パステルカラーのマカロンが円錐状に立ち並び、リボンやお花で可愛らしくデコレーションされていた。
 その一個一個が芸術品のように美しく、思わずため息を付きたくなるような出来だ。
「きゃー! なにそれカワイイ!」
 ラビットバニーもその立派なマカロンタワーを見て思わず写真を撮っているようだった。フラッシュに目を細めながらも、リチアはそこからそっとひとつマカロンを摘む。
「ほら、あげるから一緒に食べようぜ?」
「わ―! いいの!?」
 そういってひょいっと投げられるマカロンを、ラビットバニーが受け取ろうとしたその時、
 ぼふん。
 小さな爆発音。ラビットバニーを見ればその長い毛が若干ちりちりと渦巻いているのがわかった。
「な、な、な……」
 なに今のー!?と驚くラビットバニーに対し、子供らしい無邪気な笑顔を見せたリチアは再びマカロンを一つ摘んだ。
「ガジェットから造ったオレ式マカロンボムなんだぜ! 食べられなくて残念だったな!」
 そう言って再びラビットバニーの元へと飛んでいくマカロン。爆発し直撃しているところをみると、バリアは無事突破出来ているようだ。
 しかし爆煙の中で、ぎらりと光る兎面の双眸に感づくと、少年は素早く距離を取る。
 突如、マカロンタワーが砕けた。
「ひどーい! あーしを怒らせた罪は重いんだかんね!」
 それはうさちゃんカンフーモードによるもので、距離をとっていなければリチアがマカロンタワーのように四散していただろう。
 さすが幹部、油断はできない。
「可愛くて美味しそうで、でも強い! すっごいマカロンボムの真髄を見せるんだぜ!」
 リチアは散乱しているマカロン達をに遠隔命令を送ると、再びラビットバニーから距離を取った。
 物凄い速さで回転している色とりどりのマカロンボムは、不規則な軌道を描きながらラビットバニーへと向かっていく。
 再び爆発音。それも複数回。辺りは爆煙に包まれたが、ラビットバニーは小さなマカロンを強化された素早い蹴りで誘爆させていたようだ。
 小さいが故に攻撃力が足りなかったか。リチアは奥歯を噛みしめると、マスケット銃を模った熱線銃を取り出す。
 少しだけだが、敵の体力を浪費させることは出来ただろう。リチアは素早く銃を構えると、ラビットバニーへ向けて引き金を引いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルティア・サーゲイト
「まだまだあるぜ、浪漫武器!」
 次にバインダーから出すのは巨大狙撃砲。長い砲身を延長、右肩にレドーム、左肩には専用発電機を追加装備。砲身も多段薬室を順次点火して砲弾を加速させる多薬室砲だ。発射までに大分時間がかかるし間違っても近距離使える代物でもないんだが、困った事に見せないと意味が無い。激しい光と吹き上がる炎で撃つ前からド派手に見せる……発射までは待ってくれないかね?
「エネルギーライン直結確立、反重力ギア正常動作確認、薬室内正常加圧中、ライフリング回転開始」
 どれだけ加速しようが、こっちの弾速は電磁加速砲以上だ。問題は射角に捉えられるかどうかなんだが……味方の援護に期待か?

♡♥


エルシー・ナイン
エモい……よく分からない言葉ですが、ウォーマシンにしかできないことをやってみせましょう。
いきなり首をブンと捻り、真後ろを向いて見せます。それでもバリア解除しないようなら、そのまま首を高速回転です。
大丈夫、バランサーはしっかりしてますから、これくらいで目を回したりはしません。

バリアが解除されたら、赤べこキャノンの攻撃を【見切り】、【覚悟】を決めて『サイキックフィールドジェネレーター』による【オーラ防御】で耐えきって見せます。
赤べこキャノンさえなんとかできれば、後は全火力を叩き込むのみ。
【LC式全武装一斉射撃】で【誘導弾】を【一斉発射】です!
出し惜しみはせずに最強・全力の一撃で勝負です!!



「驚くのはまだ早いぜ? 浪漫武器はまだまだあるんだからなァ!」
 そう言いながら新たにゴーレムユニットのバインダーを展開させたメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)が新たに取り出したのは、自身への追加装備だ。
 一言で言えば巨大な狙撃銃。尤も、銃という規模ではなくメルティアのゴーレムユニットでも負荷に耐えられるかどうかわからないくらい巨大なもので、最早大砲なのだが。
 ゴーレムユニットの右肩にはレーダーの役割を果たすレドーム、左肩には専用発電機が備え付けられており装着者に負けないくらいゴツい代物となっているが、その中でも軍を抜いて目立っているのがその巨大な砲身だ。
 延長した砲身には突起物のような筒がいくつもついていた。それは多段薬室というもので、順次点火することで砲弾を加速させることが出来るとメルティアは早口で捲し立てた。
「どうだ、浪漫だろォ?……ま、発射までに大分時間が掛かるんだけどな」
 ここまで説明し終えるとドールユニットが発射命令を下す。
 ゆっくりとエネルギーがメルティアへと集束していくが、そんな強力な攻撃をラビットバニーが黙って見過ごしているわけがなかった。
「確かにロマンだね! 見たかったけどさ、見たらあーしがやられちゃうじゃん?」
 見れないよね?と言いながら光るのは、兎面の双眸。
 うさちゃんカンフーモードに入ったラビットバニーに対し「やっぱそうだよなー!」となんとかドールユニットで時間稼ぎを行おうとするメルティアだったが、そこに一機のウォーマシンが割り込んできた。
「なるほど、時間稼ぎですか。やってみせましょう」
 ラビットバニーの前へと現れたのはエルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)で、身体はメルティアへ、そして首はラビットバニーの方へと向いている。
 異様なその姿に一瞬止まるラビットバニーだったが、目の前に現れたエルシーに対し容赦ないハイキックをお見舞いした。
 それを後ろ手に受け止めるエルシーは「ふむ、ダメですか」と呟くと今度は自身の首を高速回転し始める。
「こここここれれれれれくくくらららいいいで目めめめええをまままわしたりりりりりりはししししししままままませせせせんんんん」
 首を高速回転している彼女の声が途切れ何十にも重なって聞こえた。エルシーの言う通りここまで高速回転しているにも関わらず身体はしゃかしゃかとバランスよく動きラビットバニーの攻撃を見極めている。
「……っ、あはははは! もう無理! マジムリ!! なにそれ!!」
 その様子にラビットバニーも思わず大笑いし、思わずうさちゃんカンフーモードを解除してしまったようだ。だが距離をとった彼女は続いて赤べこキャノンを繰り出してくる。
 エルシーは赤べこキャノンが発射されるよりも早く【サイキックフィールドジェネレーター】を構えていた。
「敵砲弾を確認。ただいまより防御に入ります。サイキックフィールドジェネレーター、起動」
 そして発射と同時にサイキックエナジーを送り込み、ジェネレーターを起動させる。もう首は元の向きに戻っていた。
 赤べこキャノンはエルシーが起動した円盤状のシールドに当たると巨大な爆発音を鳴らしながら四散する。
 爆風にさらされた花が美しく舞い上がり、そして吸い寄せられるようにひらひらと舞い落ちていく。
「エネルギーライン直結確立、反重力ギア正常動作確認、薬室内正常加圧中、ライフリング回転開始……」
 ひらりと、一枚の花びらが乗った場所はゴーレムユニットの砲身。メルティアの巨大狙撃砲は、ようやく発射準備が整うかというところだった。
「敵の攻撃は来ない。距離も射角も十分取れている。……助かったぜ、前の戦争以来か?」
 ドールユニットがエルシーへと駆け寄る。エルシーはメルティアに対し変わらぬ微笑を向けると、その身を【LC9型フルアーマー】で武装していった。
「そうですね。共にオブリビオンを倒しましょう。出し惜しみはしません」
 望むところだと返すメルティア。その目の前で、ラビットバニーが次弾を装填する様子が見えた。
「マルチプルミサイル、ロック解除」
 エルシーが操作を行う後ろで、メルティアがライフリングを高速回転させていく。
「ブラスター、ガトリング照準セット」
 フルアーマーを完全武装したエルシーが、ゆっくりと敵を見据えた。
 メルティアの搭載している機器は過重稼働で悲鳴を上げ、激しい光が、炎が吹き荒れる。
 敵も負けじと赤べこキャノンを連射したが、それがこちらへ着弾するよりも早く放たれた。
「対象を完膚なきまでに殲滅します。――オールウエポン、フルファイア!」
 次の瞬間、赤べこキャノンは、誘爆すらせずに焼き尽くされる。
 メルティアの効果力の砲弾はそれだけに飽き足らず、ラビットバニーにも直撃した。
「がっ……ぐっ……ううう!!」
 持ちこたえようと踏みとどまるラビットバニーの周りには、エルシーが“LC式全武装一斉射撃”で放った夥しい量の誘導弾。
 凄まじい爆発音。一点集中のそれは、花畑にドーナツ状の穴を開けた。
 花畑はやがて元の形へと戻っていったが、そこにラビットバニーの姿は、ない。
「……っはー、浪漫追い求めすぎてボロボロだぜ」
 ところどころ煙を上げながら崩れ落ちるメルティアの元へ、エルシーが駆け寄る。
「敵、殲滅完了ですね。お疲れ様でした」
 変わらない彼女の微笑に、ドールユニットは肩を竦めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月18日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト