バトルオブフラワーズ⑩〜エモいってなにさ
「……何なんでしょう」
テュティエティス・イルニスティア(искатель・f05353)は真顔で問うた。
「ああ、いや、そのような言葉があることは知っているのです。ただ……そういう珍妙奇天烈な単語は……なんと言いますか、その、銃を向けたくなってしまうので」
だからきっと、この戦いには皆さんの方が向いているはず。
テュティエティスは謎の確信を元に、猟兵達を戦場へと案内する。
行く先は、キマイラフューチャーの中枢“システム・フラワーズ”内部。
幹部怪人の一人、カワイイ怪人『ラビットバニー』が守る“咲き乱れる花々の足場”。
「ラビットバニーを倒さなければ、咲き乱れる花々の足場を越えることは出来ません。まだこの先にも障害となる幹部怪人がいることですし、あまり足止めを喰らいたくはないところなのですが……」
やはり幹部級ともなれば、一筋縄ではいかない。
「ラビットバニーは、絶対無敵バリアなどという非常に安直――いえ、強力な防御障壁を展開するユーベルコードを所持しています。これは名前の通りに攻撃を悉く無効化するため、闇雲に挑んでも勝ち目はありません」
ならばどうする、と誰もが抱く疑問が形を成す前に、テュティエティスは言葉を継ぐ。
「そこで先程言いました『エモい』が重要となるのです。バリアの維持にはある程度精神を集中させる必要があるらしいのですが、どうにも彼女は小石で簡単に波打つ程度のメンタルなのか、とにかく『エモい』と思えるものに出会せば集中を乱すそうなのです」
たとえバリアが破れても、簡単に倒せないだけの力はある。
しかし、絶対無敵の防御障壁さえ剥がしてしまえば、猟兵にも十分な勝機があるはず。
「『エモい』のハードルは非常に低いようです。あまり難しく考えず、皆さんが『エモい!』と熱く叫べるような物、行為、状況などぶつけましょう」
もちろん、その後で戦うことも忘れずに。
テュティエティスは説明を締めくくり、転移の準備に移った。
天枷由良
●注意事項
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
プレイングの取り扱いについては、マスターページも一読頂ければ幸いです。
エモいプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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二つに割れた世界の中の花畑。
そのメルヘンな響きに似つかわしくない“ないすばでぃ”な幹部怪人ラビットバニーは、第二の関門を守る番人として、猟兵の前で一つ気合を入れた。
「アゲてくぞー!」
影守・吾聞
えーっと…つまり
感情を揺さぶれば、敵のバリアが解けるんだよね?
俺ができることで、エモいこと…
あまり使いたくなかったけど、あの技しかないかな
俺が生まれ育った世界の危機、悩んでなんかいられないよね!
敵がバリアを展開したら
『野生の勘』も頼りにバランス取りながら【甘い言霊】を発動!
「ねえ、俺じゃ駄目?」
「俺が結婚できる年になるまで、待っててくれないかな?」
年上のお姉さんに男として見てもらいたい
そんな感情を込めた台詞ぶつけて、萌え『属性攻撃』するよ!
…怪人相手に何やってるんだろ、俺
バリアがうまく解けたら?
虚無感を乗せて思う存分殴る!
魔法剣で雷の『属性攻撃』『マヒ攻撃』『2回攻撃』だ!
※アドリブOK
対照的に。
攻め掛かる側の猟兵には、些か困惑の気配がある。
そりゃそうだ。敵を倒すためにエモいことをしろ! だなんて言われても、風が吹いたら桶屋が儲かるくらいには突拍子なく聞こえるだろう。
なので影守・吾聞(先を読む獣・f00374)は、まず己が為すべきを検めた。
(「えーっと……つまり感情を揺さぶれば、バリアが解けるんだよね?」)
正解正解大正解。ピンポンと跳ねるような効果音は誰も鳴らしてくれないけれど、その認識で間違いはない。
しかし本題は其処からだ。
感情を揺さぶるために、吾聞は何が出来るのか。何をすべきなのか――。
「考え事なんてあーしと会う前に済ませてくるし!」
「っ、うわぁ!?」
僅かとはいえ思索にふける吾聞を、ラビットバニーは容赦なく攻め立てる。
絶対無敵バリアを展開するべく振り上げた腕。その先の綺麗に手入れされた十指から放つは、システム・フラワーズ制御用ビーム。
ネイルカラーと同じ赤紫色の線条が走った花畑は揺れ震え裂けて割れ、占いで引き千切られる花弁のように一つまた一つと小さな欠片に分かれては飛んだり落ちたり回ったり忙しなく動く。
とてもじゃないが思案などしている場合ではない。
「くっ……!」
「さっさと諦めて帰った方がいいと思うんですけど!」
舞い飛ぶ足場の合間に声が響く。
しかし挑発的にも聞こえる言葉とは裏腹に、ラビットバニーは翻弄される吾聞を眺める最中もしっかりとバリアを維持している。……あれだろうか。ギャルっぽい子に限って意外と身持ちが固いとか、そういう。
(「……あまり使いたくなかったけど、あの技しかないかな」)
ギャル云々とは何ら関わりなく、吾聞は一つの決断を下した。
足場の不安定さを勘で乗り切るのも限界があろう。故郷キマイラフューチャーの危機を前にして、逡巡するあまりろくな働きも出来ずゲームオーバーにはなれない。なりたくない。
(「悩んでなんかいられないよね!」)
そうと決めてからは早かった。
爬虫類系の立派な尾も巧みに使いつつ、吾聞は足場を跳んで敵への接近を図る。
あまり離れていてはよろしくない。“それ”をするには、肌触れ合うほどまでいかなくとも、せめて声に色が感じ取れるくらい近づかなくては――。
「何する気だし!」
「っ……!」
不穏な気配を察したラビットバニーの操作で、また一段と足場が激しく動く。
必ず先んじられるという状況が恨めしい。防戦を強いられるのでなければ、もう少し効果的な環境を作る余地もあったのだろうが、しかし仕方ない。
「ねえ!!」
不安定な花弁の上で器用にバランスを取りながら、吾聞は意を決して言い放った。
「俺だって……俺だって、男なんだよ
……!!」
「……は?」
そりゃあ、見れば分かるし。
防御障壁の維持も足場の操作も続けたまま、けれどぽかんとした表情(を恐らくしているだろう雰囲気)で立ち尽くす怪人に、吾聞の告白は雷鳴の如く叩きつけられる。
「そりゃあ、確かにお姉さんから見ればまだまだ子供かもしれないけど……そういう風にしか見てもらえないのかもしれないけど……でも……ねえ、俺じゃ駄目!?」
「いやダメっていうか……」
「俺頑張るから! 絶対、お姉さんに見合う男になるから! だから!」
「だから?」
「俺が――俺が結婚できる年になるまで、待っててくれないかな?」
「へ? ……あ! ああ! そーゆー! そーゆーやつこれ!?」
いや気づかなかったわー! と兎面を小突いて、ラビットバニーは――両手を激しく振った。
「無理無理無理無理! あーしそういうの考えたこともないし!」
「じゃあ、俺にもまだチャンスがあるってことだよね?」
「ない! ないし! てかあーし怪人で、あんたキマイラじゃん!」
「……それが?」
いつの間にやら動きの鈍った足場を素早く跳び渡り、ぐっと間合いを縮めて吾聞は尚も攻める。
「俺は気にしないよ。それで何か言われても、俺がお姉さんを守るからさ」
「いやいやいやいや!」
「嫌? ……そんなに嫌? それなら、別に、無理強いはしないけど」
「けどなに!? なに!?」
「俺は本気なんだ。だから断るならお姉さんも本気で、ちゃんと俺の目を見て言って」
「いやー!! むりー!!」
何かが爆発する音がした。
それはラビットバニーの心臓かもしれないし、或いは頭かもしれないし、若しくは恋愛シミュレーションゲームを教材とする口説き文句を並べ立てるのにも限界が来た吾聞の口かもしれないし、そもそも限界なのは壁の向こう側かもしれない。
ともかく、予想だにしなかった方面からの攻撃にラビットバニーは尊死しかけた。
仕方ないね。年上のお姉さんを困惑させる強気ショタとか尊いから仕方ない。うん。
「いやむりもうほんとむりしぬ……」
エモい。
たまらずその単語が口をついて出て、そしてラビットバニーは己を本当に守っている大事な防壁を失った。
「……何やってるんだろう、俺」
無防備のまま蹲る怪人を見下ろして、我に返った吾聞も虚しさに浸る。
全CGコンプリートの為にセーブ&ロードを繰り返している時ですら味わうことのなかった、この虚しさ。
晴らすには――晴らすには、怪人を処すしかなし!
「うわあああああああ!」
「いやあああああああ!」
気合と悲鳴。二つの叫びが綯い交ぜになる中、雷を帯びた剣は兎を二度裂いた。
成功
🔵🔵🔴
二條・心春
こんな強敵と戦うのは初めてですが……この世界のために、頑張ります!
【召喚:蛇竜】で召喚したワームさんに乗ります。
「不安だけど、ワームさんがいれば怖くないから」
そう微笑んで優しく顔を一撫でして……槍を構えて、真剣な表情で、
「私達が相手です。この世界は好きにはさせません!」
演出で、槍に風属性を付けて花を散らします。……かっこよく、エモく決まったかな?
そのままワームさんと空を飛びながら、「勇気」を出して相手に接近します。これなら足場を操作されても大丈夫かな。他の攻撃は「第六感」で察知し、彼に伝えて避けたり、尻尾で弾きます。接近したら、私の「槍投げ」と彼の尻尾で同時攻撃です。ワームさん、一緒にいくよ!
「な、なかなかやるじゃん……」
雷の剣に斬り裂かれたラビットバニーは呻き、呟き、しかしすぐさま立ち上がってファイティングポーズを取る。
「まだまだこれからだし!」
(「……やっぱり、簡単には倒れてくれそうにないですね」)
さすがは幹部怪人。
ファニーな見た目も油断するべきでないと、二條・心春(弱さを強さに・f11004)は気合を入れ直す。
その生真面目な雰囲気を、怪人は萎縮と捉えたか。
「尻尾巻いて逃げるなら今のうちっしょ!」
先程までの醜態を骸の海へと投げ捨て、再び制御ビームで足場を操作する。
それは予想出来ていた状況といえど、いざ実際にやられてみれば中々に難儀する事態。じっと一箇所に留まっていられない、地に足が着かないような感覚は心春の胸に不安を抱かせた。
「――だけど、私は一人じゃない……!」
心から安らぎが失せても表情は変えず、祈り願って喚び寄せるは共に戦う大切な仲間。大事な大事な、はじめての仲間。
「お願い、ワームさん……!」
「な、何する気だし!」
敵役としては合格点の反応が示されたのも束の間、心春の傍らには蛇のように長く靭やかな身体と、風掴む強靭な翼を併せ持つ邪竜<ワーム>が現れる。
「不安だけど、ワームさんがいれば怖くないから」
そう言って微笑み、優しく顔を撫でる少女と蛇竜の間には、種族を越えた信頼が見て取れた。
そして一人と一匹は頷きあい、互いの想いを言葉に依らず伝えて、言い放つ。
「さあ、私達が相手です」
槍を手に、表情を引き締めて。
「この世界を好きにはさせません――!」
極めつけに一つ、槍から迸る風で周囲の花を上手い具合に散らす。
「え、え……」
エモい!
ビームが途絶えて、代わりにラビットバニーの手は花畑を叩く。
「そんなの反則じゃんー!」
争いとは無縁に思える少女。一見して恐ろしさしか感じ得ない怪物。
それが何故か通じ合い、共に在る。そして共に在ることで少女は強さを、怪物は穏やかさを手に入れたのだろう――とか、きっと一昼夜では語り尽くせぬ様々な出来事の末にそうなったのだろう――とか、思わず背景を妄想したくなる。
ずるい。これはずるい。もう絶対映画化する。
「はー……むり……」
一頻り悶えた後、ラビットバニーは呟いて蹲った。
かなりキているようだ。これではバリアの再展開は勿論、制御ビームによる操作も出来るか怪しい。
「今のうちに。ワームさん、一緒にいくよ!」
心春は相棒に呼びかける。其処に含まれる勇気を察したか、蛇竜は高く飛び上がると兎怪人目掛けて一気に急降下を仕掛ける。
「……あっ、やばっ!」
ラビットバニーも強襲に気づくが、時すでに遅し。
反攻の手より早く投じられた心春の槍が身体を貫くと共に、蛇竜の強烈な尻尾ビンタが炸裂して、綿毛のように軽く高くどこまでも行くのではないかと思うほど打ち上げられた兎怪人は、ぐしゃりと嫌な音を立てて花畑に墜ちた。
成功
🔵🔵🔴
塩崎・曲人
いやホント、エモいことって言われてもなぁ……
敵のUCはカンフーモードに変身完了するところまでが効果だ
だから、実際の攻撃にはオレのUCをあわせられる
そして、無敵バリアで攻撃が通じなくても
攻撃をさばいて撃ち落とすことは可能!
予め、敵の攻撃を反射で防御することだけに集中し
それ以外の一切を頭から追い出しておく
そして敵のカンフーを全力の【喧嘩殺法】でひたすら迎撃していく
「無敵バリアなんぞ張らなくても……無我の境地に至れば攻撃を通さない程度、造作もねぇ……」←エモい
そしてうまく敵がひるんだら、そのまま勢いに乗って反撃に転じる
「今度はこっちの番だぜ、オイ。我流・喧嘩殺法!捌いてみせろや!」
「合体攻撃とかずるいっしょ……」
より深刻なのは身体と心、どちらの傷だろうか。
或いは、真に心配すべきは頭だろうか。
ともかく二発目の有効打によって折れたラビットバニーの膝が、再び花の足場に別れを告げるまでは暫しの時間を――特に必要としなかった。
「そんな“ずる”したって、あーし負けないし!」
「いや……」
絶対無敵バリアなんて能力の方が余程イカサマじみているじゃないか。
塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)はそう思って――思うだけに留める。
それよりも考えなければならないことがある。
(「エモいことって言われてもなぁ……」)
ヤバいことなら二つ三つ浮かばないでもないが、そのヤバいことは怪人にとってきっと大してヤバいことではない。だってアレ、斬られても貫かれてもぴょんぴょん、いやピンピンしてるし。
(「どーすっかなぁ……」)
「……あ! あーしの強さに今頃びびっちゃった感じ?」
曲人の沈黙を最大限に都合よく解釈して、ラビットバニーは声を弾ませる。
それから腰を落として片腕を前に、もう一方を高く挙げて――ああ、なんか凄いステレオタイプな中華武術風の型を取り始めたぞ。
「遊びの時間は終わりだし!」
もはや二度破られて看板に偽りありな絶対無敵バリアが広がる。
兎面の目が光る。ぴかーん。
「あーしの本気、うさちゃんカンフー見せてやるっしょ!」
「……」
「なんか言うし!」
無視とか一番つらいんですけど!
ギャル(風味)のめんどくさ――もとい悲痛な叫びと共に、花の足場を力強くも軽やかに跳んだラビットバニーの掌底が曲人の顔面に炸裂!
ぺちーん! 痛いのか痛くないのかいまいち計りかねる擬音とは裏腹に凄まじい衝撃波が花畑を駆け抜けて――!
「……いったーい!!」
明らかに女性のものである声が響く。
微動だにしない曲人の前で、ラビットバニーが片手を押さえながら蹲る。
「いた……えっ……なに……えっ」
猟兵の皮膚ってそんな硬い?
全く予期していなかった感触に震えながら、怪人が顔を上げてみれば、そこには。
未だ無言の曲人と。
鉄パイプ。
「どっから持ってきたし!」
「……その辺?」
「嘘つくなし!」
一面花畑じゃねーか! そんな抗議が口から発せられるのと同時に、目にも留まらぬ早さの掌底が二つ三つ百八つと飛ぶ。
しかしその全てを、曲人は悉く打ち落とし跳ね返す。
今の彼を動かすのは“捌く”こと、ただそれだけ。余計な思考を一切合切投げ捨てた我流武術はそれ故に早さで怪人の先を行き、さらに決して抜かせようとしない。
「な……こいつ……ちょっとおかしいっしょ……」
どれほど突いても殴っても、赤くなるのは己の拳ばかり。
ついに息が切れて、ラビットバニーの手が止まる。
ご自慢の絶対無敵云々も宝の持ち腐れだ。けれど仕方ない。曲人が攻めについて小指の先ほども考えなければ、幾ら激しい応酬であろうと防壁の介在する余地は無い。それは受ける攻撃があってこそ意味を成すもの。
「……無敵バリアなんぞ張らなくても」
遮るべき拳打が途絶えたところで、曲人はぽつりと零す。
「……無我の境地に至れば攻撃を通さない程度、造作もねぇ……」
「……」
あー、うん。エモい。
激しくやり合った気配などまるで感じさせないスカした余裕(褒め言葉)が、ラビットバニーにその単語を呟かせた。
そして、それは敗北と同義である。
「今度はこっちの番だぜ、オイ」
「え……あ……!」
「我流・喧嘩殺法! 捌いてみせろや!」
オラァ! とチンピラ成分たっぷりの怒声に加えて、一欠片の容赦もない猛烈な打撃が兎怪人を襲う!
さっきまではエモかったけれど、これはただの一方的な暴力! 暴力! 暴力!!
一撃一撃がまた早くて重い。
そりゃそうだ。余計なこと考えてないもの。暴力に頭が染まっているもの。
「ちょ、ま、やめ、やめいたっ、ね、やめ、すとっぷ、たんま、ま、いったっ!」
「まだまだァ! ブッ込み行くぜオラァ!」
ヒャッハー! と興奮を隠さずに叫び、曲人は兎怪人にヤキを入れ続ける。
ここは花畑などではない。
地獄だ。
成功
🔵🔵🔴
サハル・マフディー
エモい、ねェ。
つまりは感動させたり、心情に訴えかけたりしてやればいいわけかい。
そんじゃ一つ、揺らしてやろうじゃないか。(煙管片手に)
今は亡き夫との馴れ初めを語る
「あれは私がまだヒーローじゃなかった頃さ。チンピラに絡まれてる私を助けてくれたのが後の夫だった。
私が逆上してチンピラを殴ろうとしたら、そこに割って入って来てねェ……何の咎もない奴を全力で殴っちまったのさ。
そこから恋に発展するんだから分からんもんだ」
バリアが解除されたら一挙に距離を詰めて灰燼拳
【怪力】と【グラップル】を活用し、相手の腕やら肩やらを掴んで動きを止めてから殴る
「どうだい、この拳を私の夫は受けたんだよ」
アドリブ・連携歓迎
巡り合わせが悪いと言えばそれまでかもしれないが。
しかし、しこたま殴られて啜り泣き、どうにか立ち直った(ようにしか見えない)女怪人を相手にして、ただ戦うだけでなく『エモい』と思わせねばならないなど。
(「難儀だねェ」)
これも試練と宣いそうな神に、吹き付けるかのように煙を吐く。
彼女はサハル・マフディー(神の信徒は紫煙と共に・f16386)。
またの名を、ヒーロー“スモーキータウルス”。
竜人の上半身と、四つ足竜の下半身を持つ、バイオモンスターである。
その姿や年齢や生まればかりが理由ではないだろうが、サハルはエモいという言葉にすんなりと頷けていない。
だが、求められている事は理解できる。
(「つまりは感動させたり、心情に訴えかけたりしてやればいいってことさね」)
それは簡単でないが、難しい話でもない。
「そんじゃ一つ、揺らしてやろうじゃないか」
薄雲立ち昇らせる煙管片手に余裕綽々と。
サハルは遥か遠く、慎ましやかでも満ち足りた日々に想いを馳せ――。
「うがー!!」
兎らしからぬ叫びと共に撃ち放たれた、赤べこキャノンの集中砲火に声も姿も、追憶さえも掻き消される。
「ちっ……まだ何もしてやいないじゃないかい!」
人の話は聞いとくもんだと、説教とも悪態ともつかない台詞を吐く間にも砲撃は絶えず飛んでくる。
これでは語るに語れない。足場が穏やかであるのは逃げ回るに幸いだが、しかし。
「っ!」
雨あられと降る砲撃の欠片がついに前肢を傷つけて、体勢が崩れた直後、おびただしいほどの熱量がサハルを包んだ。
焼けるような、刺すような、抉るような、潰すような。
数々の痛みが大きな身体を襲う。そしてそれらが名残にもならない内に、倒れ込んだままの竜人を兎面と砲口が見下ろす。
「どう? これがあーしの実力っしょ!」
降参するなら、今が最後のチャンス。
そう言って勝ち誇るラビットバニーに、竜人の首はゆっくりと反応を示す。
勿論、それは否定の意味で。
「あの人のところにようやっと行けるんだ。早く送ってくれよ」
もはや何もかもを諦めたような、そんな投げやりな台詞が――却って兎の好奇を煽る。
「……あの人?」
「何だい、私の話なんて聞く気もなかったんじゃないのかい?」
「……ど、どーせこれでお別れだから? 最期に少しくらいなら、聞いてあげるし?」
「そうかい」
それじゃあ遠慮なく。
抵抗する気はないとばかりに倒れ込んだまま、サハルは兎の面でなく、また過去を見つめ直す。
それは、サハルがまだヒーローなどではなかった頃の話だ。
勇猛か無謀か、ともあれチンピラ、ゴロツキ、無頼の輩と呼ぶべき者に絡まれた時。
「私が逆上してチンピラを殴ろうとしたら、そこに割って入って来てねェ……」
あっ、と思った時にはもう遅い。振り上げた拳は止められない。
悪漢を制裁すべきそれは、何の咎もない無辜の存在を全力で。
全力で、しかも一撃で、叩きのめした。
「さすがの私も『しまった!』ってなるさ。チンピラがどっか行っちまうくらいの本気をブチかましたんだからね」
ヒーローでもヒーローでなくとも。たとえ誰であろうと大事件だ。
咎められるのは当然として、兎にも角にも目の前の“被害者”をどうするか。
――と、そんな風に慌てて考えた事すら、今になってみればおかしく感じてしまう。
「全力で殴って……殴って、そこから恋に発展するんだから分からんもんだ」
「……は?」
「そのぶん殴ったのとね、私、一緒になったのさ」
「……はあああああああ!?」
意味わかんない! なにそれ! 殴って殴られて惚れるとかどゆこと!?
未だ砲口を突きつけたまま、いつでも止めを刺せるという状態のまま。
理解の及ばぬ昔話に、ラビットバニーはひたすら困惑して――。
「……え、でもでも、ガチのぐーぱん喰らってもその人全然キレなかったってことなの? あり得なくない? ふつーおこじゃない?」
「ま、物好きっちゃ物好きだったのかもしれないね」
私を選ぶくらいだもの。
そう語るサハルの言葉には益々哀愁が滲んでいく。
それは本音かもしれないし、今だけの演技かもしれない。
ただ何れにしても、オブリビオンにすら感じ取れる気配だった事は確かで。
「……あ」
何故、サハルが早く送ってくれなどと言ったのか。
察したラビットバニーは、呟く。
――エモい、と。
「中身はさぁ! 中身は正直まだ腑に落ちないとこもあんだけど! だってあーし殴られて好きになるとか絶対ないし! 絶対ボコすし! ……でもさぁ! なんか『そーゆーことがあったけどあの人とはもう会えないんですぅー!』みたいな! でも『まだまだ深く想ってるんですぅー!』みたいな! そういうのズルくない!? いやエモくない!? それもあーしみたいなのが言うんじゃなくてちょっと歳食ったのが言うところがさぁ! 余計に説得力持たせてる的なさぁ!」
「そんな年増に見えるかい、私は」
「あっ」
やっちまった。
そう思った時には、もう遅い。
今しがた得た教訓を、しかしラビットバニーは活かせずに終わる。
「たっぷり聞かせてやったんだ。相応の駄賃って奴を貰わないとねェ」
それは当然、過去を完全なる過去にしたオブリビオンの。
本来なら、馴れ初めなど聞かせたくもない絶対悪の、破滅で。
サハルは手の届く位置で狼狽えるラビットバニーの肩を掴み、足場に埋め込んでしまうのではないかと思うほど力強く押さえる。
そして、もう一方の、空いた腕で。
悪虐を打ち砕くに振るわれるべき、鉄拳を繰り出す。
「ぎゅべら!」
聞いた事もない悲鳴を上げて、錐揉みして。兎面怪人は再び、花畑の中に堕ちた。
その醜態をじっくりと見送りながら、サハルは煙管を口元へと運び。
吐き出した全てをまた己の内に収めるように、深く深く、煙を吸い込んでから言う。
「どうだい、この拳を私の夫は受けたんだよ」
苦戦
🔵🔴🔴
ルベル・ノウフィル
くっ吾聞殿を越えられる気がしない
いや
僕の黒歴史間違いなしの捨て身の一撃を見てください
🌸全身獣化白わんこで参戦
🌸自分の尻尾を追いかけ、くるくる
🌸花に動きが阻害されたらジタバタ人型に戻る
こそりオーラ防御
🌸「あうぅ」へたれる耳としょんぼり尻尾の短パンショタが尻もちついて涙目でお姉さんを見上げ
「お姉さん
僕、今はこんなんだけど、強くなるから
僕を、選んでくださいっ」
(背伸びするように花束を差し出し立ち上がる)
選択UC
【花束】から【彩花】を放ち、【死霊の刃】により対象の動きを一時的に封じる。
妖刀を手に自身も早業活かし攻撃
もう逃がしません、ずっと僕だけのお姉さんでいてください
あれ?なんかヤンデレ風に…
「くっ……!」
ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は花の足場を叩いた。
勝てる気がしない。越えられる気がしない。
「吾聞殿――っ!」
……あ、そっち?
まぁ、今はとりあえず流しておこう。キマイラフューチャーの危機だから。
かくして、ルベルは先達を超える爪痕をラビットバニーと己の心に残すべく、決死の覚悟で戦いに挑む。
大丈夫だ。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、なんて言葉もある。
どうなっても骨は拾うさ。
犬だけに。
「――わんっ!」
「はっ!?」
「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん!!!」
「はぁあああああ!?」
まるで意味が分からない。
しかし「現実とか物語よりやべぇわ」と昔の詩人が言っていた通りだ。
一匹の白いわんこが、ラビットバニー目掛けて花畑を猛進――猛――も――。
「来ねーのかよ!」
びたーん! と赤べこキャノンを足元に叩きつける怪人の遥か手前で、わんこは己の尻尾を追いかけてくるくるくるくるくるくるくるくる。
うはぁ、駄犬だ(褒め言葉)。
「家でやれし! 家で!」
「きゃうーん!?」
無慈悲な決断がわんこを翻弄する。幹部級怪人の威厳を少しくらいは取り戻そうと、十の線条を人形遣いのように操るラビットバニーによって、舞い踊った花の足場がセルフ追いかけっこを阻止。わんこに服従のポーズを強いる。
「くぅん……」
「……いや、いやいやいや! そんな声出したってダメだし!」
そういう時に甘やかすから駄犬は駄犬のままなのだ。
犬の躾は厳しく。じゃないと世間様にも迷惑が掛かる。あれ実は狼だけど、まぁ、そういう細かいこと気にしてると立派な大人になんてなれないから。
それより邪念を捨て去り、心は一点の曇りもない鏡の如く、静かに湛えた水の如く。
さすれば――別に立派な大人にはなれないが、絶対無敵バリアという最強の防衛機構は揺るがない。
「これで完璧完勝っしょ!」
ラビットバニーは確信を抱く。
「あうぅ……」
駄犬は――なんと、じたばたしていたはずが、いつの間にやら少年の姿に。
そうです。あの白くて間抜けな犬っころ(褒め言葉!)こそ、ルベル・ノウフィルくんだったのです!
「うぅ……いたた……」
実はオーラで防御していたからちっとも痛くないくせに、それが武器になると知っているルベル少年は躊躇いなく短パン越しに薄い臀部を擦る。
もちろん座り込んだ――いや“へたり込んだ”ままで、犬耳も尻尾も力なく垂らすのを忘れない。
ほーら見ろ! 落ち込んでるだろう!! 紛うことなき落ち込みショタだろう!!!
ついでに涙目&上目遣いオプションも加えてやる! 追加料金? 手数料込みでルベル少年持ちだ!!!
「ううぅ……お姉さぁん……」
「……は? な、なんだし!」
「うぅ……っ……」
「だからなんだし!! はっきりしろって!! 男の子でしょ!!」
これは本当にオブリビオンと猟兵の応酬なのか。
もう単なるおねショタじゃないのか。
そう誰かが制してくれたなら、この寸げ――惨げ――この熱戦は、至極真っ当な刃と大砲によるやり取りだけに戻ったのだろう。
しかし今、戦場を形作っているのはお姉さんと少年のみ。
止められない。行くところまで、行くしかない――!。
「そうだよ、僕、まだ“男の子”だよ。……でも!」
声の震えを抑えるべく、服の裾をきゅっと摘んでから言う。
ルベル少年の瞳は潤んだままで、しかし流れ落ちそうだった雫は何処かに消えて。
丈の極めて短い洋袴から覗く、まだ男のものと言い難いすらりと美しい足に僅かながら力が入る。
それは、お姉さんの見ている景色に少しでも近づくため。
そうして立ち上がる様こそ、まさしく大人への階段を上る瞬間なのかもしれない。
つまり我々は男の子が男になる瞬間を目撃しているのだ! な!
「――お姉さん。僕、今はこんなんだけど、強くなるからっ」
「ならなくていいし!」
「だからっ」
「聞けよ!」
「僕を、選んでくださいっ」
「あーもー!!」
そーゆーのはいいからー! っと叫び、制御レーザーを繰り出そうとする相手を間一髪制して、ルベルは鼻先へ突きつけるように花束を差し出す。
「これっ! ……これ、あげる」
やや声色が控えめになったのは、きっと自身が“こんなものしか出せない男の子”である事を痛感してしまったからだろう。芝居だけど。
お姉さんと対等に振る舞える男なら、もっと――もっと高価なものとか、とにかく花束よりも凄いものを贈れる。その凄いものさえも具体例は浮かばず、また落ち込む仕草が胸を打つ。芝居だけど。
「……受け取って、くれますか?」
「……受け取ったら帰れよお前」
つれない。けれどそんな台詞にも甲斐甲斐しく頷く。
ああ、ルベル少年は――エモい。
言葉にこそしなかったが、兎面怪人は確かにそう、感じてしまった。
絶対無敵のバリアが、音もなく消失していく。
そして、ついに花束が少年の手元を離れて――。
――離れる、と。
ラビットバニーが思った瞬間。
其処からは、強い想いが実体を伴い、溢れ出た。
愛、ではない。憧憬でもない。そもそも恋慕ですらなく、まして色情などでもない。
怨み。
華やかな束の隙間から噴き出したそれは、オブリビオンを怨む死霊の無念怨念。
その強い想いで形作る、無数の小さな刃。
「ひっ――」
「……駄目ですよ」
もう離れることは許さない。一度は自ら掴もうとしたのだから。
「お姉さんが、そう、望んだんじゃないですか」
だから、ねぇ。ずっと一緒にいましょう。
「ずっと、ずっと僕だけのお姉さんでいてください」
そう。僕だけの。僕一人だけの。
「ねぇ、お姉さん? お姉さん? ……お姉さん?」
「……」
「……あれ?」
如何したのでございましょうか。
ようやく芝居を終えてみれば、花束は花より鮮やかな色で染まり。
些か汚れてしまった妖気纏う黒刀を手に、ルベルは首を傾げつつ、ふと思う。
着地点、間違えたのかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
ルベル・ノウフィル
も一回!
おねーさんに赤丸ゲットした僕の本気を見せに来ました!(ヤンデレ継続感)
UC魂の凌駕
僕の本気を見てください!?
この赤丸をお姉さんのために使いたくて僕こんなになっちゃいました(死霊纏わりつかせ)
ここから僕の本気モードですとも!
(再び尻尾を追いかけて回る駄犬)
ゼエゼエ、あっ…(キャノンで打ち抜かれ何回かバウンドして正気に戻る)
くっ、せっかく本気になったのにこんなに苦戦するなんて
やっぱりお姉さんは凄いや…(目をキラキラ)でも、僕も負けません!
この捨て身の一撃はキマイラフューチャーの未来のために!
不安に怯える人々のために!
そし、お姉さんのために!
(なんかそれっぽいこと言って纏めようとするわんこ)
骨は拾うと言ったから。
第二ラウンド! レディー、ゴー!!
「……はっ」
何かとんでもない目にあった気がする、と思っている気がする。
回りくどい言い回しだなって、だって仕方ない。ラビットバニーは兎面をしているから、失神状態から回復した今、頭に何を浮かべているかなんて何となく推し量るしかない。
けれども、先の惨劇を顧みれば他に考えることはないだろう。
まさか白い駄犬に化けたイケショタが求愛の振りで襲いかかってくるなんて――!
「お ね え さ ん ?」
「うっひゃぁ!?」
何も知らなければ小鳥の囀り。しかしそれが死神の呼び声であることを、ラビットバニーが忘れるにはまだまだ時間が足りなさ過ぎる。
ぴょんと跳ねるようにして大きく間合いを取ってみれば、兎面の向こうに覗くは笑顔の少年。
「良かった! おねーさん、突然倒れちゃうから心配したんだよ!」
「心配って――」
「だって、まだまだおねーさんに伝えきれてないから!」
「聞けよ!」
「おねーさんに! 僕の本気を!! 見てもらいたくて!!!」
「こいつほんっとに話聞かないし!」
とにかくもういいって、マジで! 勘弁して!
幹部らしからぬ弱腰のラビットバニーは全力で両手を振るが、ルベル少年はニコニコと夏の太陽の如き笑顔を湛えたまま、己の姿を見せつけるように両腕を広げて。
「ほら見てください! 僕……僕、お姉さんのこと考えてたら、こんなになっちゃいました。えへへ」
「えへへ……って」
何を、どうすれば、そうなるのか。
確かに煌く表情こそ可愛らしい。
だが、白い肌も、獣の耳も尻尾も、あの美しいおみ足も。
今のルベル少年は、何もかもが“暗いもので穢れて”いる。
それは雨上がりにはしゃいで泥まみれになった子供の姿と似ているかもしれない。
見た目だけなら。見た目だけなら、だ。
何故って、それを無邪気だとは呼べない。
あまりにも、あまりにも禍々しくて――。
「僕、そろそろ我慢出来ないんです」
微かに頬を赤らめながら言って、ルベル少年は一歩踏み出す。
それに僅か遅れて、暗く重たい影のようなものもぬぅっと後を追ってくる。
「っ……!」
あの影は、花束から吹き荒れた刃たちと同じだ。
身体を撫でた冷たい気配に、ラビットバニーは少年が纏うものの正体を察す。
近づけてはならない。
あれを、近づけてはならない。
番人としての役目は勿論のこと、オブリビオンさえも慄かせる恐怖の塊を追い払うべく、兎面の怪人は絶対無敵バリアを張り直しつつ最大の武器たる砲を構える。
しかし、ルベル少年は全く怯まず。
「僕……僕……もうっ!」
ついに耐えかねて、力強く駆け出し――!!
「――わん!」
「はっ!?」
「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん!!!」
「はぁあああああ!?」
マジで意味が分からない。
けれど「リアルとかバーチャルよりパネェわ」と古いポエットが言っていた通りだ。
ルベル少年は、ラビットバニーそっちのけで自分との戦いを始めている。
「またそれかよ!!」
びたーん! と赤べこキャノンを足元に叩きつける怪人の遥か手前で、駄犬は己の尻尾を追いかけてくるくるくるくるくるくるくるくる。
「……ちくしょう、ちょっと可愛いかもとか思ったりしていないし!」
アホの子ほど何とやら、とか言ったり言わなかったりする。
駄犬が駄犬で在るが故の魅力は、既にラビットバニーを蝕んでいるらしい。
だが。
「バカやってるうちに、今度こそ仕留めさせてもらうっしょ!」
「きゃわーん!?」
この兎面怪人は、仕事と遊びをきっちり分けられるタイプのようだった。
無慈悲な砲撃が駄犬を蹂躙する。一人遊びに耽るルベル少年が流石に息切れを見せたところ、構え直された赤べこキャノンがもももーっと火を噴き、直撃。哀れ少年は花の足場をもんどり打って倒れる。
「これであーしの勝ちっしょ!」
遠くで横たわる小さな身体を見据えたまま、ラビットバニーは腕を振り上げた。
どっこい。
それで終わるようならば世にヤンデレなど在りはせぬ。
「――やっぱり、お姉さんは凄いや……!」
「……は?」
恐らくは面の裏でぽかんと口を開けているだろう怪人を余所に、これまで以上に瞳を輝かせたルベル少年は祈るように両手を合わせたかと思えば、上目遣いで尻尾をふりふり、媚びに媚びを重ねたえげつない態度を示して。
「でも、僕も負けません!」
そう宣言したかと思えば、ラビットバニー目掛けて一直線に走り出す。
「っ、このっ!」
もはや遊びの余地もなし。狙い澄ました砲撃が幾度となく繰り出されて、その度にルベル少年は大地を跳ねた。
だが――彼の顔から笑顔が消えることはない。
まるで注がれる弾丸さえもが愛の形であると、そう信じて疑わないように純粋な――だからこそ恐ろしい雰囲気を滲ませて、愚直に、ただひたすらお姉さんへとひた走る。
「なにあいつヤバすぎっしょ!?」
「そんなぁ、褒めても何も出ませんよ?」
「ヤバいヤバいほんとヤバいむりむりむり!!」
顔が良くてもスタイルが良くても声が良くても、どれほど可愛くても。
それを上回るほどの不気味さが全てを掻き消す。常人ならとうに朽ち果てているだけの砲撃を受けて、それでも全く倒れる気配など無いというのに、なのに、全身に“死”の匂いを漂わせながら来る少年は――。
「この一撃は、キマイラフューチャーの未来のために!」
突如叫び、黒刀を腰だめに構えた。
「この一撃は、不安に怯える人々のために!」
「なになになになに!?」
「そして何より、この一撃は――お姉さんのために!!」
「はあっ!?」
なにそれ。
そんな――そんな真っ直ぐな目で、そんな真っ直ぐなことを言われたら。
まだちょっと怖いけれど、でも。
「エ、エモ――」
「つかまえた」
「っ……あ、ぐっ……」
勢いよく飛びかかってきた少年を受け止めきれず、怪人は花畑に倒れ伏す。
馬乗りで両腕を封じられては、もう赤べこキャノンも向けられない。
しかし、それでも。
「あーしには絶対無敵バリアが――」
「そんなもの、ありませんよ?」
きょとんとした顔で見下ろす少年に言われて気づく。
ない。確かに、それは、どこにも、ない。
「なん、で……」
「何でって、お姉さんが一番良く分かっているはずじゃないですか」
ラビットバニーの左胸辺りをとんと突いて、ルベル少年はまた笑う。
そして――そして、然も幸せそうに言いながら、深く沈めた刃を一度引き抜いて。
「これで、本当にずっと一緒ですね、お姉さん」
今しがた指を当てたばかりのところへと、突き立てる。
飛沫が上がり、ルベルの顔が白でない色に塗り替わった。
程なく噴き出すものが尽きれば、その源たる肉体も塵の如く消え失せる。
やがて、一人座り込んだままのルベルは、汚れを拭いもせずに立ち上がって。
「ラビットバニー……いえ、敢えて今だけは“お姉さん”と呼ばせて頂きましょう」
もはや影も形もない彼女の姿を探すように、彼方へと目を向けながら呟く。
――さようなら、お姉さん。
……よし、なんかそれっぽく纏まったな!
成功
🔵🔵🔴