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豊かな森の大きな影

#アックス&ウィザーズ


「えーと。初めまして、だよね?」
 二足歩行の猫が首を傾げつつ猟兵たちに声をかける。
「僕はケットシーのビーストマスター。名前は……レコ。よろしくね?」
 猫――もとい、ケットシーのレコ・ジェヒ(ケットシーのビーストマスター・f00191)はそう言ってペコリと頭を下げた。
「早速で申し訳ないんだけど、みんなに行ってもらいたいところがあるんだ」
 レコの口から、今回の事件の概要が語られる。
「『アックス&ウィザーズ』っていう世界に強力なオブリビオン……モンスターが発生したんだ」
 アックス&ウィザーズは剣と魔法の世界。『冒険者』と呼ばれる者たちがおり、悪の魔法使いやモンスターといったオブリビオンと戦っている。
「ある程度のオブリビオンなら『冒険者』でも退治できる。けど、今回のモンスターは強いから」
 冒険者では相手にならない可能性が高い。そこで、猟兵の出番である。
「最終的な目標はこのオブリビオンの撃破、なんだけど……」
 頬っぺたを人差し指で描きながら言葉を濁すレコ。
「……肝心の居場所が、はっきりしなくて」
 言いながら、少々上目遣いに猟兵たちの様子を伺う。
「いや、大まかな場所はわかってるんだよ? 人里から離れた山の、森の中。その一帯のどこかにいるはず」
 そうは言うものの、その範囲は広い。
「えっと、そのあたりで一番目立つのは大きな滝かな? 大きさに見合った深い滝つぼと、そこから続く沢。あと幾つかの洞窟」
 レコが小さな指を折りながら、オブリビオンが発生したという地域の特徴的な地形を挙げていく。
 森とはいうものの『鬱蒼とした』という雰囲気ではなく、地表まで適度に日光が届き下草がよく茂っていること。
 沢沿いには苔むした岩などが転がっていること。
 洞窟は大小幾つかが点在しており、行き止まりのものもあれば通り抜けできるものもあるらしいこと。
 山頂に近づくにつれ岩や石が増えていき、足場が悪くなっていくこと。
「正直、すぐには見つからないと思う。何日かかかるかも」
 自身が知りえた情報を列挙した後、レコは猟兵たちに告げる。
「広い森の中で探索をしてもらうことになるから、現場に到着したらまず拠点を設営するのがいいと思うんだ」
 どこにどんな拠点を作り、どんな行動をとるか――なにせ危険な場所での野営になる、色々と準備も必要だろう。
「本格的な探索は拠点ができてから、かな。目的のオブリビオン以外のモンスターが生息してる可能性だってあるし、色々注意しとくにこしたことはないよね?」
 確認するように呟いて、猟兵たちに視線を向けるレコ。
「大変だろうと思うし面倒かもしれないけれど、放っておくわけにはいかないから。どうかよろしくね」
 改めてそう言うと、レコは再びぺこりと頭を下げた。


乾ねこ
 初めまして。乾ねこです。

 こちらのシナリオの行く先は『アックス&ウィザーズ』。人里離れたとある森に発生した強大なオブリビオンを探し出し、これを撃破するのが最終的な目標です。

 捜索範囲が広大で危険な場所でもあるため、まずは捜索の拠点となるキャンプを設営しそこで過ごすことになります。
 「どこに拠点を作るか」や「どう過ごすか」等、野営のための様々な準備を整えてください。

 それでは皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『荒野のキャンプ』

POW   :    寝ずの番で警戒する

SPD   :    キャンプ技術や美味な料理で環境を整える

WIZ   :    キャンプ場所を探す、敵を誘う細工をする

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ルクト・オレイユ
事前準備として干し肉や携帯食料、塩などを持ち込むが、おそらくそれだけでは心もとない。キャンプ場所を探しながら、食料になりそうな果物や、魚がいそうな水辺も探す。水辺には他の生き物も集まりやすいし、付近に罠を仕掛けるのも合理的だろう?

モンスターが出たら【咎力封じ】で拘束してから討伐。もし食べられそうなモンスターならそのまま食料にしても良さそうだ。
「……俺は、モンスターはあまり食べたくはないがな。」
ワイバーンは何を好んで食べるんだ?寄ってきたモンスターを調理すれば、その匂いでおびき出せたりはしないだろうか。

夜の見張りは数人で交代しながらが良さそうだな。
力を合わせて成功させよう。


深護・刹那
レコさん、はじめまして、ですわね。
ではでは、不肖、深護・刹那、参ります。

まずはキャンプの拠点から、ですわね。
足を使って探索してみるとしましょう。
どこがいいか、と言いますと、うーん?
長期間滞在を視野に入れるなら、気にする点は、水の確保、見通しがきくこと、滞在しても不快ではないところ、でしょうか。滞在も見張りもしやすくなるでしょうし。
となると、沢と森の境い目とか?

拠点の地点が決まれば次は環境整備。
お掃除の技能は役立ちますでしょうか。
拠点の役割は休息の場。居心地が少しでも向上するように、座る場所や仮眠の場は特に気をつけて、整えるようにしましょう。


タロ・トリオンフィ
先ずは拠点確保だね。
環境的に水に困る事は無さそうなのは幸いかな。

拠点は風雨を凌げる洞窟…と、言いたいところだけど、
モンスターの住処になってる可能性もあるし、襲撃されれば逃場がない。
見通しが良い方が却っていいかも。
滝もあまり近いと大事な音を聞き逃しそう。
僕的には、沢沿い、滝からは程々に距離があり、死角が少ない場所、と提案しよう。
持ち込み食料で不足しても食べられる植物も期待出来るし、
いざとなれば水を求めて来た野生動物を狩って食料確保もありかな。
何らかの襲撃に気付き易いよう鳴子を付けた糸を設置しておこう。

戦闘になるなら、
僕は直接戦闘より補佐の方が得意。
『Ⅷ』のタロットで仲間達の力を底上げしよう。




「まずはキャンプの拠点から、ですわね」
 とある森の一角で、深護・刹那(ヤドリガミの人形遣い・f03199)が呟く。
 さて、どこに拠点を置くべきだろうか。長期間滞在することを視野に入れるならば……?
「できれば、滞在しても不快でないところがいいのですが」
「風雨を凌げる洞窟……と言いたいところだけど」
 言いながら、タロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)が軽く肩を竦めてみせる。
「モンスターの住処になってる可能性もあるし、襲撃されれば逃げ場がなくなるよね」
「見通しはきいたほうがいいかもしれませんね。見張りもしやすくなるでしょうし」
 刹那の言葉に、タロも頷く。
「あとは水の確保、でしょうか」
「沢沿いのどこかに拠点を作れれば、水の心配はしなくても大丈夫じゃないかな。持ち込んだ食糧が不足しても、食糧確保が期待できるし」
 黙って二人の会話を聞いていたルクト・オレイユ(キマイラの妖剣士・f05799)も、その言葉に同意を示す。
「オレも一応最低限の食糧は持ち込んだが、やはりそれだけでは心許ない。食糧の現地調達ができそうならそれに越したことはない」
「では、ひとまず沢を目指して移動ですわね」

 サクサク、サクサク――草を踏みしめる音が響く。獣道すらない森の中、猟兵たちを導くのは微かな水音。
 周囲の警戒も兼ねて周りを見渡しならが歩いていたルクトが、ふとその足を止めた。
「どうかしましたか?」
 刹那の問いに、ルクトが答える。
「いや……あの木の実は食べられるのかと思ってな」
 彼の視線の先には、木の枝からぶら下がる謎の果実が。
「どうだろう? 美味しそうな色はしているね」
 首を傾げるタロ。刹那もうーん、と唸りながら首をひねる。
「沢山あるようだし、幾つか確保しておこうと思うんだが」
 実際、食べるかどうかは別として。
「そうですわね。いいんじゃないでしょうか」
 ルクトの提案に、刹那が応じる。
「だね。食べなかったら森に戻せばいいんだし」
「じゃあ少し取ってくるぜ」
 ガサガサと少し大きな音を立てて二人から離れるルクト。目的の果実を幾つか手にし、二人の元へ……。
「「危ない!!」」
 刹那とタロの声が重なった。
 咄嗟に後方に振り向いたルクトの視界を大きな獣の影が覆う。
「ち!」
 忌々し気にその赤い瞳を細め、ルクトは敵を拘束する枷を放った。手枷や拘束ロープが獣を拘束し、その力を封じる。
「それは強固なる信念による『力』」
 タロが詠唱と共にタロットカードを引き抜く。
 ルクトに力を封じられた獣は、タロの手により力を増した猟兵を前にあっけなく沈んだ。
「モンスター……ではありませんわね」
 地面に横たわる獣の死骸をのぞき込み、刹那が呟く。
「まあ、これも食料にはなるな」
 収穫した果実を刹那に手渡し、獣の躯を担ぎ上げるルクト。
「さて、拠点探しを再開しようぜ?」

 徐々に大きくなる水音を頼りに歩いていると、不意に森が途切れた。
 足元には僅かな草地。その先に大小様々な石が転がる川辺、清らかな水が流れる沢。大きな音がする方へ視線を向ければ、雄大な滝の姿――。
「わたくしは沢と森の境目がいいんじゃないかと思うんですの」
 刹那が改めて提案する。水場も近く、それなりに見通しもきく。
「刹那嬢の言う通りだね。さらに付け加えるなら僕的にはもう少し下流を推すよ」
 滝の音に紛れて、聞き逃すべきではない音を聞き逃してしまうかもしれない。
 刹那とタロ、二人の提案により一行は沢伝いに下流へ移動。広めの草地を発見すると、そこに拠点を設置することにした。
(「ゆっくり休息できなくてはなりませんものね」)
 でこぼこした石を取り除いたり、仮眠に使うであろう敷物を用意したり。拠点が少しでも快適な場所になるようにと、細々としたことに気を遣う刹那。
 戻ったのに全く気が抜けない、疲れが抜けないでは拠点の意味がない。
「僕はちょっと周りに細工をしてくるよ」
 そう言うタロの行く先は、拠点から少し離れた森の入口。彼は適当な高さの木の枝を掴むと、そこに用意してきた糸の片側を括り付ける。
 木の枝を利用しながら心持ち扇状になるように意識しながら森の中に糸を張り、始点とはちょうど反対側の森の入口へ出ると、もう片方の糸もしっかりと木の枝に結ぶ。
 タロがピンと張った糸に触れると、カララン、と軽い音があたりに響いた。糸には幾つもの鳴子がぶら下がっていたのだ。
 同じようなことを数か所で繰り返し鳴子がちゃんとその役目を果たすことを確認すると、タロは満足げに頷き拠点へと戻る。
「そういえば、ワイバーンは何を好んで食べるんだ?」
 ある程度拠点の設営を終えた後、ルクトはそんな疑問を口にした。
 もしかしたら、肉やら何やらを調理する匂いでおびき出せたりはしないだろうか――彼の提案で先ほど仕留めた獣を焼いたりしてみたものの、引き寄せられてきたのは普通の獣が数匹といわゆる雑魚モンスターが一体。
 結果、雑魚モンスターはさっくり倒され、人の存在に気付いてなお逃げることなく襲い掛かってきた獣は猟兵たちの食糧に――。

 やがて日が落ち、夜の帳が訪れる。
「見張りは数人で交代しながらが良さそうだな」
 すっかり暗くなった世界でルクトが呟く。
 雑魚ながらもモンスターと、凶暴な獣がいることがわかった。そうそう遅れをとることはないだろうが、周囲を警戒する『目』は多いほうがいいだろう。
「力を合わせて成功させよう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シェルツァ・アースハーバード
シェルと言います。
見張りならお任せ下さい。
武器の手入れや世界の情報に関する本を読んだりして、静かに過ごそうと思います。
私の殺気を感じて尚襲い掛かってくるのなら、私の剣で相手をしますが。
……っ!!子供ではないです!ドワーフ!あと成人してるので!

トンネル堀りとか、キャンプ設営の役に立つでしょうか?
キャンプ周辺に軽く穴を掘っておけば、近づくモンスターの発見に良いかもしれませんね。

万が一の際は【トリニティ・エンハンス】を使用し、武器に魔力を付与。攻撃力重視で一掃します。
戦いを長引かせ、無駄に消耗する訳には行きません。短期決戦で。
辺りの環境に配慮して、例えば森なら炎の魔力は控えましょう。


リチュエル・チュレル
みなさまごきげんよう。
オブリビオンの討伐は捗っていらっしゃいますかしら?

…って、なんだ、まだ拠点を整えてるとこか。
水もあるし、静かだし、よく見えるし、探索にはいいんじゃねぇの。
とりあえず火は絶やさないように気を付けようぜ。特に夜はな。

オブリビオンは肉を焼いて食べるわけじゃねぇだろうし、生肉の撒き餌なんかもしてみたらどうだ?
効くかどうかはわかんねぇけど、落とし穴掘ってその上に撒いとくとかな。
他の動物やモンスターがかかっても、それはそれでいいだろ。
お、この鳴子、落とし穴にも使わせて貰っていいか?

もし戦闘になったら【サイキックブラスト】で麻痺させて倒すぜ。
あ、これ水辺で使ったら魚捕まえらんねぇかな?




 シェルツァ・アースハーバード(魔法剣士は挫けない・f04592)がぐ、と握った拳で自分の胸を叩く。
「見張りならおまかせください」
 そう言って胸を張る彼女をじっと見つめるのは、リチュエル・チュレル(星詠み人形・f04270)。
 リチュエル自身も小柄だが、シェルツァはもっと小さい。二人の身長差、約40センチメートル……必然的に、リチュエルはシェルツァを見下ろす格好になった。
「子供ではないです! ドワーフ! あと成人してるので!」
 リチュエルの視線に何を思ったのか、力説するシェルツァ。
「え? ああ、そうだな」
 リチュエルが勢いに押されたように頷く。一応言っておくが、リチュエルの視線にシェルツァの言うような意図はない。
「……火は絶やさないように気を付けようぜ。特に夜はな」
 とりあえずシェルツァから視線を外し、焚き火に新しい薪をくべるリチュエル。シェルツァもまたそれ以上拘る様子もなく彼女に同意の意を示した。
「そうですね。少なくとも普通の獣ならあまり火に近づこうとはしないでしょうし」
 焚き火の周りに置かれた石に腰かけると、シェルツァは自らの得物の手入れを始めた。それは自らの背丈よりも大きな魔法剣――彼女の父が、旅立つシェルツァに託したものだ。
(「水もあるし、静かだし、周りもよく見えるし、探索にはいいんじゃねぇの?」)
 そんなことを考えながら、リチュエルは油断なく周囲に視線を走らせる。
 パチパチと炎が小さく爆ぜる音と、川のせせらぎ。時折聞こえるのはこの森に住む獣の遠吠えか。
 どれくらい時間が経ったのだろう、得物の手入れをしていたシェルツァの手が止まった。焚き火に背を向けるような格好で立っていたリチュエルの表情にも緊張が走る。
 闇の中で、何かが蠢く気配。その手に魔力の籠ったナイフを携えたリチュエルと共に、シェルツァは気配のした方角へ向き直った。大きな剣を軽々と構え、前を見据える。
 カランと鳴子が音を立て、得物を握る手に力が入る。気配の主はそのまま姿を現すかと思われたが、二人の放つ気配に怖気づいたのか、あるいは別の何かを警戒してか……二人の前に現れることはなく、ほどなくその気配も消えた。

 ――翌日。
「効くかどうかわかんねぇけど、落とし穴掘ってみたらどうだ?」
「穴を掘っておけば、近づくモンスターの発見に良いかもしれませんね」
 拠点から少し離れたところで協力して穴を掘る二人の姿があった。
「生肉の撒き餌なんかいいんじゃねぇの? 落とし穴の上に撒いておくとか」
 かかるのは今回の標的でなくても構わない。雑魚モンスターなら倒せばいいし、他の動物であっても食糧の足しになる。
 拠点に残っていた鳴子を使って、何かが落とし穴にかかったら音が鳴るように細工をしておく。
「これでよし、と。あとは一旦拠点に戻って……」
 言いかけて、シェルツァに目配せを送るリチュエル。わかっている、というかのように頷くシェルツァ。
 一拍置いて駆け出す二人――進む先には異形の影。
 リチュエルが突き出した両の掌から、高圧電流が放たれる。巨大な剣に風の魔力を宿したシェルツァが、感電した異形に切りかかる。
 それだけで、勝負は決した。
「やっぱりただの雑魚だったか」
「手早く倒せて助かります。無駄に消耗せずに済みますから」
 リチュエルのフォローに感謝の意を告げるシェルツァ。大したことではないとでも言うようにパタパタと手を振っていたリチュエルだが、不意にポン、と手を叩いた。
「あ、さっきの水辺で使ったら魚捕まえらんねぇかな?」
「…………さあ?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

国木田・光星
【POW】

先行して行った連中が先に拠点作りはしてくれたみてぇだな。
うっし、なら体力が余ってる俺が寝ずの番をやってやろう。
他の連中が休んでるんだ、踏ん張らないとな。

つってもただ待ってるだけじゃいくらなんでも芸がねぇ。
だから夜行性動物の動向から洞穴やらに戻る可能性を考えて、影の追跡者で周辺探索を同時に行う。
見張りが半端になってもいけねぇからな。拠点を中心に円状に徐々に幅を広げて探索だ。
円を一周する毎に一度拠点へ戻り、近場の索敵も欠かさねぇ。

しかしモンスターの闊歩する土地で寝ずの番か。
なんかゲームのキャラクターにでもなった思いで、少し楽しいな。




 そして再び夜が来る。風に吹かれた木々の葉がザワザワと音を立て、夜の森を一層不気味な雰囲気に変える。
 そんな森の中を歩く猟兵が一人。木々の合間、沢の方角に見える赤い炎を確認し、国木田・光星(三番星・f07200)はその青い瞳を僅かに細めた。
 あの炎のそばには、つかの間の休息をとる猟兵たちがいる。幾人かは、拠点の見張り兼焚き火番として自分と同じように起きていることだろう。
 彼が森の中を歩いている理由は「自分は体力が余っているから」と寝ずの番を引き受けたから。さらには拠点でただ待っているだけでは芸がないと、夜間の拠点周辺の探索を買って出たからだ。
(「なんかゲームのキャラクターにでもなった気分だ」)
 彼は自分をとても平凡な人間だと思っている。勿論、猟兵としての能力は特別なものに違いはないが……それでもやっぱり凡人だ。
 そんな自分が、モンスターの闊歩する土地で寝ずの番をしている。
 浮かれていいような状況ではないけれど――本音を言うと、少し楽しい。
 浮かれすぎるのは問題だが、今の光星の場合その高揚した気持ちがいいほうに働いているようだった。闇に紛れる生き物の気配をとらえると、シャドウチェイサーを召喚しその気配の主を追跡させる。
 気配の主は光星に近づくことなく走り去り、比較的近くの洞穴へと逃げ込んだ。光星に気付いて逃げ出すあたり、モンスターではなさそうだ。それが逃げ込んだ洞穴ということは、そこに強力なモンスターが巣食っているとは考えにくい。
 拠点と自分、そしてその洞穴の方角と位置関係を確認し、光星は再び歩き出す。
 その後も遭遇した生き物たちの気配を追った結果、拠点近くの洞穴の幾つかは野生動物の住処ないしは隠れ家になっているらしいことが分かった。
 少なくとも拠点近くには、強大なモンスターの類は存在しないのかもしれない。

 拠点の周囲を円を描くようにぐるりと一周。その間、幸か不幸か直接襲い掛かってくる生き物はいなかった。
「一回拠点に戻るか。近場の探索も欠かせねぇしな」
 そう口にすると、光星は自分たちの拠点に向けて歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『荒野の探索』

POW   :    荒野を虱潰しに強行軍で探索する

SPD   :    標的の痕跡を探して追跡する

WIZ   :    地形や気候、目撃情報から居場所を推理する

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 これまで拠点近くに姿を見せたのは、数体の雑魚モンスターとその他の野生動物。警戒中に遭遇したものもいれば、罠にかかったものもいる。
 その中でモンスター及び猟兵に危害を加えようとした野生動物は倒された。比較的おとなしい動物や、猟兵の気配で逃げたり近づかなかった獣にはあえて手を出さなかった。
 生物と遭遇した猟兵たちの話を総合した結果、野生動物たちはそのほとんどが沢の下流側から現れていることが分かった。猟兵の存在に気付いて逃げ出す動物たちも、多少方角の誤差はあるとはいえ下流に向けて逃げている。
 モンスターについてはその限りではなかったが……動物たちが上流に向かわないのには、何か理由があるのかもしれない。

 拠点の準備は整った。
 いよいよこれから、本格的な探索が始まる――。
シェルツァ・アースハーバード
動物は本能的に危険な何かから逃げると言いますし。
上流の方にその何かが居るのはほぼ間違いないでしょうか。

拠点よりも高い所を目指して探してみましょう。
……背が小さいのは、見渡すのには少し向いていないので。
気になった情報は他の猟兵と積極的に交換します。

襲い掛かってくるモンスターには【トリニティ・エンハンス】で迎撃します。
レギーナ一本で問題無いでしょう。
炎の魔力、攻撃重視で対処します。

逃げた個体は追いません。
むしろどの方向に逃げようとしているかで、逆を考えれば更に強い存在に気が付けるかも。
全滅させるよりあえて逃がすのが良いかもしれません。

空が暗くなりかけたら拠点に戻ります。無理は翌日に響きますからね。


タロ・トリオンフィ
リチュ(f04270)と

皆が見てきた感じ、野生動物は下流に向かって逃げる、と。
彼らが遭遇したくないようなものが上流に居るって事だね。
それが僕らのターゲットである可能性も高いし、上流に向かってみようか。

とは言え、闇雲に探すには広いからね。
相手にもある程度行動パターンがあるだろう。
住処なら巨体でも窮屈じゃない場所…高い岩場とか?
あとはお気に入りの餌場…とかね。
木々をなぎ倒した痕跡があるかもしれないし、
獲物に困らないなら食い残したり、近場で骨を捨てたりしてるかも。

色々推測はしてみるけど、こういう時は【第六感】も大事だよね。
特に…僕とリチュは本業だし?
(慣れた手つきでタロットを切ってリチュに差し出す)


リチュエル・チュレル
タロ(f04263)と一緒に行動すっぜ。

ふーん…ま、普通に考えりゃ上流が怪しいわな。
野生動物が近付かないってことは、そこに命の危険があるってことだろ?
他にこれと言って手掛かりもないんだし、とりあえずそっち方面で探っていこうぜ。

あとは、そうだな。
絞り込みやすそうなのは水飲み場とかか。
ここのオブリビオンは生物の粋を外れてない印象だし、餌を食うなら水だって飲むだろ。
水辺に沿って登っていけば何か見つけられるんじゃねぇか?

ん、まぁ指針程度にはなるかもしんねぇし(タロットカードを繰り)
いっちょ占い人形として【第六感】と【失せ物探し】の腕前でも発揮してみっかね。


国木田・光星
【SPD】

上流から動物たちが来ない理由。その答えは俺達が欲するものだろうな。
とはいえうろうろして奇襲なんてのはごめんだぜ。
だから可能な限りの痕跡を探そう。
飯の痕跡、排泄の痕跡、破壊の痕跡。なんでもいい。
手がかりになりそうなものは全て見落とさないように一つずつでも調べよう。

あとは効果があるかわからんし運任せだが、シャドウチェイサーを使う。
条件としては上流に向けて風が強く吹いている場合、もしくは鳥が上流に向かって飛んでる場合だ。
風の場合は昨晩いくらか毟ってきた木の葉を、鳥ならその鳥をシャドウチェイサーで追う。
そいつらの行き着く先に手がかりがまたあればよし。
ま、不確かで地味だが斥候みたいなもんだな。


ルクト・オレイユ
なるほど、上流が縄張りか。野生動物は頭が良いからな、力の強い者の活動域には近寄らないものだ。
【飛来せし孤高の羽ばたき】で鷲のスピリットを呼び出し、空からの探索を享禄して貰おう。
鷲は目が良い。きっと何か見つけて知らせてくれる。
あとアテになるのは…俺の『野生の勘』か?
洞窟に潜むにしろ、生い茂った樹木に紛れるにしろ、周辺には何らかの痕跡が残っているはずだ。
何、猟兵はソロ活動ではない。複数で乗り込めば、やがては見つけられるだろう。根比べだな。




「皆が見てきた感じ、野生動物は下流に向かって逃げる、と」
 タロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)の言葉に、リチュエル・チュレル(星詠み人形・f04270)が応じる。
「ま、普通に考えりゃ上流が怪しいわな。そこに命の危険があるってことだろ?」
「彼らが遭遇したくないようなものが上流にいるってことだね」
 リチュエルに同意するタロ。そして、『彼らが遭遇したくないモノ』が自分たちのターゲットである可能性は高い。
「探すんならやっぱり上流だよね?」
「他にこれと言って手掛かりもないんだし、とりあえずそっち方面で探っていこうぜ」
 ひとまずの方針を決める二人。しかし、上流と言ってもその範囲は広大だ。
「住処が洞窟だとすると、窮屈なんじゃないかと思うんだよね」
 顎に手を当てながら、タロが自分の考えを口にする。
「だから……高い岩場とか? あとはお気に入りの餌場とか、見つけられるといいんだけど」
 食い残しがあったり、動物の骨が転がっていたり。木々が倒れていたりすれば、目標を見つけ出すヒントになるのではないだろうか。
「水飲み場とかどうだ? 餌を食うなら水だって飲むだろ」
 リチュエルが提案したのは『水辺の探索』だった。何らかの痕跡が残っていないか、何かしらの異変がないか、探索しながら沢伝いに上流へ行こうというのだ。
 岩場に向かうのと沢伝いに歩くのでは、ルートが違ってしまう。さて、どちらへ向かうのがいいだろう――?
 思案すること数秒。タロは慣れた様子でタロットカードを切り、リチュエルの前に差し出した。
「こういう時は『第六感』も大事だよね。……僕とリチュは本業だし?」
「ん、まあ指針程度にはなるかもしんねぇし」
 言いながら、リチュエルが差し出されたタロットに手を伸ばす。
(「いっちょ占い人形として『第六感』と『失せ物探し』の腕前でも発揮してみっかね」)
 タロットを一枚繰る。出てきたのは小アルカナ、「カップの4の逆位置」。正位置で出てくるとあまりよろしくない解釈ばかりが目立つカードだが、逆位置になると「答えを見つけ出す」とか「チャンスをつかもうとする」とかいう意味合いを持ってくる。
 さらに言えば、カップのスートは『水』を表す。
「――決まりだな」
 リチュエルがニヤリと笑う。占いの結果に導かれ、二人は沢伝いに上流へと歩き出した。

 『何か』の痕跡を求めて歩き続けたタロとリチュエルは、やがて滝のふもとにたどり着いた。
 滝の上から流れ落ちる豊富な水が激しく音を立てている。滝つぼの周りは霧状になった水でうっすらと煙り、水のひんやりとした感触が二人の元まで漂ってくる。
「……なあ、あそこなんか変じゃねぇ?」
 対岸に見える森の違和感に気付いたのはリチュエルだった。
「怪しいね。調べてみようか」
 沢を越えて対岸へ。違和感を覚えた場所へと近づいてみれば、沢と森の境目の樹木が斜めに傾いてしまっていた。枝も折れているし、足元の草も無残に踏みつぶされている。
「これってやっぱりそうだよな」
 片膝を地面につき、踏みつぶされた草に手をやりながらリチュエルが呟く。
「多分ね。それに……何度か来てるみたいだ」
 リチュエルの呟きにそう返すタロ。折られた枝には枯れかけたものもあれば、まだ瑞々しさを保ったものもある。
「最悪、この場所で張ってたら見つかるかな」
「……候補として挙げておいていいと思うよ」
 標的の手がかりを見つけた二人は、他の痕跡を探して再び歩き始めた。


(「動物は本能的に危険な何かから逃げるといいますし」)
 道なき道を歩きながら、シェルツァは考える。
 上流のほうに、彼らが危険と感じる『何か』がいるのはほぼ間違いないだろう。
(「問題は、どこを探すかですが――」)
 彼女が目を付けたのは、拠点から沢の上流側を眺めた時に見えた高台のような場所だった。
 高所に行けば少しは見晴らしもきくだろうし、ついでに道中の探索も行っていけばいい。
 注意深く周囲を伺いながら歩いていた彼女の耳が、カサッという小さな音をとらえた。
『ガアアァ!!』
 襲い掛かってくる獣の爪を魔法剣で受け止め、その小柄な体に似合わぬ力強さで払いのける。
『ギャウ!!』
 木の幹に叩きつけられ獣が悲鳴を上げる。敵わぬと悟ってか、その獣はそのまま尻尾を撒いて逃げ出した。
 シェルツァも追いかけるような真似はせず、獣が逃げた方角を確認するに留めておく。

 何匹目かの獣を払いのけた後、シェルツァは拠点から見えた高台に到着した。木々の生え方がまばらになっており、少し動き回れば周囲の森の様子が見渡せそうだ。
(「これは助かりますね……背が小さいのは、見渡すのには向いていないので」)
 チラッとそんなことを考えながら、シェルツァは自らが来た方角を振り返る。
(「私たちの拠点があのあたり。獣たちが逃げた方角は……」)
 改めて位置関係を確認し、思案を巡らせていたシェルツァの頭上を大きな影がよぎった。
(「――――!!」)
 顔を上げたシェルツァが目を見開く。
 彼女の視線の先で、巨大な飛竜――ワイバーンが飛んでいた。ワイバーンはシェルツァに気付く様子もなく、悠然と飛び去って行く。
 追うべきだろうか? 一瞬そんな考えが頭を過ったが、シェルツァは小さく頭を振る。
 相手は空を飛んでいるし、追いかけても見失う可能性が高い。ならば飛んでいく先をこの場からできる限り確認したほうがいい。
 判断を下し、シェルツァは遠ざかるワイバーンの背をじっと見据えた。


「上流から動物たちが来ない理由。その答えは俺達が欲するものだろうな」
 国木田・光星(三番星・f07200)の言葉にルクト・オレイユ(キマイラの妖剣士・f05799)が頷いた。
「野生動物は頭が良いからな、力の強い者の活動域には近寄らないものだ」
 探索すべきは拠点より沢の上流側、より山頂に近い場所。とはいえその範囲はまだまだ広い。
「うろうろして奇襲なんてのはごめんだぜ」
 肩を竦める光星。彼の懸念はもっともだったが、沢の上流側に『何か』がいるらしいとしかわからない現状、結局自分たちが動き回るしかない。
「できるだけ、可能な限り痕跡を探したい」
 光星の提案に、今度はルクトが肩を竦めて見せた。
「根比べだな」
 とはいうものの、探索に出ているのは自分たちだけではない。複数であたれば、きっと見つけられるだろう。
「出て来い。出番だ」
 森をある程度進んだところで立ち止まり、ルクトは「鷲のスピリット」を呼び出した。そして、それを空に放つ。
「鷲は目が良い。きっと何か見つけて知らせてくれる」
 ルクトと共に飛び去る鷲を見つめていた光星が、ふと思いついたように口を開く。
「なあ、アレを俺の『シャドウチェイサー』で追ってみてもいいか?」
 「シャドウチェイサー」は召喚者と五感を共有できるが、追跡する対象が存在しなければ使えない。
 ならば、ルクトの鷲のスピリットをシャドウチェイサーに追わせてはどうだろうか?
 もちろん上手くいくかはわからない。それぞれの効果範囲というものがあるだろうし、そもそもユーベルコードで現れた物体をシャドウチェイサーが追えるのかも定かではない。
 色々と不確定要素はあったが、もともとシャドウチェイサーを使えるかどうかは運任せな部分があったのだ。
「鳥が飛んでいるようならそれを追わせるつもりだったんだが、見つかるとは限らないしな」
 風向きによっては飛ばした木の葉を追わせようかとも思っていたが、結局これも運である。
「試してみる価値はあるな」
 光星の提案は、ルクトにとっても悪くないものだった。
 何かを見つけたのか、あるいは見つけられなかったのか――「鷲のスピリット」が戻ってくるまで、呼び出したルクト自身にもわからない。
 しかし光星の案が上手くいけば、戻りを待たずとも光星の『五感』を通じてある程度の情報を得ることができる。さらに詳しく調べる必要がありそうな時には、そのまま現地に向かえばいい。
 一旦戻ってきたルクトの「鷲のスピリット」に対し、光星が「シャドウチェイサー」を召喚する。再び空へと舞いあがった鷲のスピリットを追って、シャドウチェイサーもまた空へ向かった。

 結果的に、二人の作戦は上手くいった。もっともこれが常に上手くいく方法なのかは定かではない……たまたま運良く色々な事情が上手く噛み合っただけ、という可能性もある。
 とにもかくにもこの場所では有効だった。一つの場所で探索を終えたら、ある程度移動して再び「鷲のスピリット」を「シャドウチェイサー」で追跡し、空からの探索を行う。
 そして、気になる場所を発見したらその場へ移動し直接自分たちで確認する。そういったことを何度か繰り返し、二人は標的の痕跡らしきものを発見した。
 木々がなぎ倒され、森にぽっかりと穴が開いたようになっている場所が数か所見つかったのだ。そしてそれは、より山頂近く……滝のあたりからさらに上流、切り立った崖のあたりを中心に点在していた。
「……そっちが行動範囲ってことかな」
「そちらで行動していることが多いのは間違いないだろう。光星がシャドウチェイサーと同調して『見た』というその崖のあたりが怪しいのかもしれんな」


 日が沈み、あたりが薄闇に染まる頃。
 探索を終えた猟兵たちは、拠点に戻り互いの得た情報を交換していた。
「ワイバーンを見かけました」
 そう言ったシェルツァに、他の猟兵たちの注目が集まる。
「空を飛んでいましたので追跡自体は諦めたのですが……滝のほうへと飛んでいきました」
「僕らは滝のそばを探してたんだけど、ワイバーンなんて見かけなかったよ?」
「滝つぼに巨大な何かが何回か足を運んでるっぽい形跡はあったけど、ワイバーン自体は見てねぇな」
 タロとリチュエルが顔を見合わせる。
「滝の上のほうに飛んで行ったんだと思うぜ。シェルツァが行った高台ってあっちのほうだろ?」
 光星が指さす先を見て、シェルツァが頷く。
「多分、位置の関係でリチュエルたちからは見えなかったんじゃねぇかな?」
 タロとリチュエルが見ていないということは、ワイバーンは滝より上流を飛んでいたということになる。
「まだ直接行って確認したわけじゃないんだが、滝の上の森を進んだ先に崖があるのを発見した。何者かになぎ倒されてできたと思われる倒木現場もいくつか見つけたが……」
 確認した限りでは、その崖を中心にワイバーンの痕跡が残っているらしいことを説明するルクト。
「じゃあ、怪しいのはその崖ってことか?」
 リチュエルの問いに、シェルツァが応じる。。
「少なくともその崖周辺に、ワイバーンの住処か何かがあるんじゃないでしょうか」

 そこに何があるのかは、実際行ってみないとわからない。しかし、ワイバーンに関する『何か』があるのはどうやら間違いなさそうだ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

深護・刹那
ではでは、不肖、深護・刹那、次も参ります。

んー、皆様の調査によるとワイバーンの形跡は滝の上、その先にある崖の付近に集中しているのですね。
百聞は一見にしかずと言いますし、現場100回が良さそうですわね。

件の崖付近に赴き、残っている痕跡が何なのかを調査。
必ずしも巣とは限りませんし、それならまずはここが何に使われているのかを特定しませんと。
とはいえ、うかつに近づきすぎるとやられる可能性がありますので、観察による調査をメインとします。
なーんとなく巣にしては派手な形跡のような気がしてまして、実は狩場なのでは?とか。
見極める事を最優先としましょう。




(「百聞は一見にしかずと言いますし、現場100回が良さそうですわね」)
 日が昇り朝が来ると、深護・刹那(ヤドリガミの人形遣い・f03199)は早速行動を開始した。

 崖は滝を流れ落ち拠点へと続く沢からは少し外れた場所にあった。近づくにつれ地面には石や岩が目立つようになり、樹木の生え方もまばらになってくる。
 幸い、生えているのは太い幹を持ち葉を良く茂らせた成木ばかり。刹那は樹木の陰に隠れるようにしながら崖に近づいていく。
(「――これは」)
 崖の下は完全な荒れ地だった。石や岩の合間から、雑草が僅かに顔をのぞかせている。崖の側面には自然にできたと思われる巨大なくぼみ。そしてその一帯の地面は、何故か岩や石ではなく茶色い土が露出しているようだ。
 崖に最も近い木の陰で様子を伺いながら、刹那は考える。
(「近づいて確認するべきでしょうか」)
 崖までの距離は約10mほど。気になる崖のくぼみまで向かうとすれば、もう少しあるだろうか。さほどの距離ではないが身を隠すモノは一切なく、ワイバーンに上空から発見される可能性がある。
 見つかってやられてしまうわけにはいかない。しばらく思案していた刹那だったが、結果的に言うと木陰から出る必要はなくなった――日が傾きかけた頃、彼女の目の前に件のワイバーンが飛来したからである。
 ワイバーンはその巨体に似合わぬ静かさで地上に降り立つと、崖のくぼみに向かいそこで身を丸めた。そしてそのまま目を伏せる。
(「実は狩場なのでは? なんて思っていたのですが」)
 どうやら『巣』で間違いはないらしい。休息を取るように身を伏せるワイバーンの様子に、刹那はそう判断する。
(「それにしても無防備というか……こちらの存在にも気づいてないみたいですわね」)
 ワイバーンは周囲を警戒する様子を一切見せなかった。警戒すべき相手がこの森にいないから、かもしれない。
(「上手くすれば、奇襲をかけられるかもしれません」)
 ワイバーンに気付かれぬようゆっくりと。音をたてぬよう気を付けながら、刹那はその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
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 ――赤い巨体の主は静かに微睡む。
 この森に、彼より強いものはない。なのに何を恐れ、警戒せねばならぬというのだろう?
 歯向かうもの、抵抗するものは……叩き潰してしまえばいいのだ――。

 東の空が白む頃――猟兵たちはワイバーンの住処……崖下近くの森へと集まっていた。
 森の先には10mほどの荒れ地。そして、その先の崖のくぼみには、体を休めるワイバーンの姿が見える。
 今ならばワイバーンを補足するのは簡単だ。一度戦い始めてしまえば、どこかへ飛び去ってしまうこともないだろう。
 猟兵とワイバーンとの戦いが、今始まる。
シェルツァ・アースハーバード
なるほど、私達を脅威と見ていない訳ですね。
でしたら今日、奴にとってその常識が塗り替えられる日となるでしょう。
私達猟兵の力を見せつける時です!

とはいえ、相手は空を飛べる生き物。
飛ばれて空から攻撃されるのは厄介です。
風の魔力を使い、翼膜を切り裂いて見ましょう。
そうすれば満足に飛べなくなり、こちらも戦い易くなる筈。

ですが、油断は出来ません。
暴れる翼竜は全身が武器のようですから。
例え一撃貰ったとしても、退く訳には……!
恐らく私が小さく弱いと認識して狙ってくるでしょう。

その時は【無敵城塞】を使って攻撃を惹き付けます。
大丈夫です、ドワーフは丈夫なので。
そう簡単にこの身を裂かれてなるものですか!


タロ・トリオンフィ
リチュ(f04270)と

さて、いよいよ見つけた訳だけど…
ワイバーンは油断し切ってる
此処は慎重に、気付かれないよう近付いて、
仲間皆で一斉に不意打ちで攻撃開始といきたいところだね
ある程度メンバー揃って出発したいな

僕の武器はこの絵筆
ひと筆で宙に描くはタロットの「戦車」、さあ、突撃
絵の戦車が突っ込んで行っては、避けられれば力場を形成
(グラフィティスプラッシュ)

自分自身は近付き過ぎず、
仲間の攻撃タイミングに合わせていくよ
多少の「戦闘知識」は役に立つかな
仲間の攻撃直後の隙をカバーするタイミングで攻撃したりね
攻撃を受ける時は…「オーラ防御」なんかも役に立つかな?
兎も角、油断なく、突出せず、連携を大事に。


リチュエル・チュレル
タロ(f04263)と一緒に戦うぜ。

ふぅん、自分が狩られようとしてるってのに暢気なもんだ。
油断慢心大いに結構、好機を差し出してくれるってんなら逃す手はねぇな。
『忍び足』を使って奇襲をかけてやろうぜ。
できれば地に伏せてる間に翼を封じて飛べなくしてやりたいところだが…
攻撃に『鎧砕き』『鎧無視攻撃』『武器落とし』辺りを乗っけて叩き込んだらどうにかなってくんねぇかな?
他の連中と合わせられそうなら合わせて行きてぇな。

毒のある尻尾の動きには気を付けたいところだな。
『毒耐性』はあるけど万全じゃねぇだろうし。
他のヤツを狙う動きもあったら声を出していこうと思ってるぜ。




「油断しきってるね」
 崖下で微睡むワイバーンを見てタロ・トリオンフィ(水鏡・f04263)が呟く。
 ワイバーンと森に潜む猟兵たちの距離は、ほぼ荒れ地の幅と同じ。幾ら身を隠しているといっても、複数人の猟兵が近づいているというのにそれに気づいた様子はない。
 あるいは、気づいていてなお放置しているのか……。
「なるほど、私たちを脅威と見ていない訳ですね」
 シェルツァ・アースハーバード(魔法剣士は挫けない・f04592)が僅かにその青い目を細める。
「自分が狩られようとしてるってのに暢気なもんだ」
 ふん、と少し馬鹿にしたように鼻を鳴らすのはリチュエル・チュレル(星詠み人形・f04270)。
「油断慢心大いに結構、好機を差し出してくれるってんなら逃がす手はねぇ」
 好戦的に瞳を輝かせるリチュエルに、タロが釘を刺す。
「リチュ、ここは慎重に、だろ?」
「わかってるよタロ。……忍び寄って奇襲をかけてやろうぜ」
 リチュエルがニッと笑う。タロにもシェルツァにも、異論はない。
「かの竜にとっての常識が、今日、塗り替えらえることになるでしょう」
 シェルツァの言葉に、猟兵たちが頷いた。


 ジリジリ、ジリジリ……少しづつワイバーンとの距離を詰める。
 ワイバーンはまだ動かない。合図とともに、シェルツァは一気に駆け出した。
 風の魔力を纏い、巨大な剣を振り上げて微睡むワイバーンへと切りかかる。
 その狙いは、翼――振り下ろされた剣先が、ワイバーンの翼の膜を裂く。
『グァアァア!!』
 痛み故か、怒り故か。ワイバーンが声を上げる。
 見開かれた金の瞳がシェルツァを捉えた。そのまま起き上がろうとしたワイバーンの体に、戦車を模した塗料が直撃する。
 意表を突いた一撃に、ワイバーンの巨体が大きくよろめいた。
「生憎、僕らは一人じゃないんだよ」
 戦車を描き出した魔法の絵筆を構えたまま、タロが告げる。
(「できれば今のうちに翼を封じて飛べなくしてやりたいところだが」)
 シェルツァの一撃で右翼の皮膜が大きく破れたようだが、まだ足りない。リチュエルは自身が使える限りの技能を凝らし、ワイバーン目掛けて高圧電流を放つ。
「よし、今のうちだぜ!」
 『感電』し、動きを封じられたワイバーンの翼を、シェルツァが容赦なく切り刻む。タロの絵筆から放たれる塗料もまた、ワイバーンの体に傷をつける。
『ガアアァア!!!』
 ワイバーンが吠えた。
「やべぇ気をつけろ! 感電が解けやがった!」
 リチュエルの警告とほぼ同時、ワイバーンが飛翔する。ワイバーンの翼はまだ完全に折れてはいない――空中から猟兵たちを一瞥すると、そのまま一気に急降下。
 狙いはシェルツァ。ワイバーンの鉤爪が小柄な彼女の体を捉え、更に鋭い尾がその身に突き刺さる。
「シェルツァ嬢!」
「シェルツァ!」
 タロとリチュエルの声が重なった。シェルツァの身を案じる二人に、途切れ途切れの声が答える。
「大丈夫、です。ドワーフは、丈夫なので」
 その体格故に弱いと判断してか、はたまた翼を散々切り裂かれた腹いせか。ワイバーンは再びシェルツァを攻撃せんと宙へ舞った。
(「そう簡単にこの身を裂かれてなるものですか!」)
 自身が狙われていると判断したシェルツァが、全身を超防御モードへと変える。
「リチュ、前出過ぎ!」
「おう、そっちも尻尾気を付けろよ!」
 今のシェルツァには、ワイバーンの攻撃は通用しない。無駄な攻撃を繰り出すワイバーンの隙をついて、タロとリチュエルは連携し攻撃を仕掛けた。
『――グォオオ!!!』
 塗料と高圧電流がワイバーンを襲い、ワイバーンが怒りの咆哮を上げる。

 ワイバーンの翼のあちこちには裂傷が走り、その飛行能力は確実に落ちていた。
 しかし体そのものに対するダメージはまだまだ少なく、その敵意は増すばかり。
 怒りに満ちた眼光が、猟兵たちに注がれる――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

深護・刹那
ではでは、不肖、深護・刹那、もう一回参ります!

シンフォニック・キュアで皆様の戦線を支えますわ。
直接ダメージを稼げるユーベルコードがありませんし、回復と囮がわたくしの役目ですわね。
派手に動き回って目障りになって差し上げます。

思惑通り、わたくしを狙ってくればしめたもの。
オペラツィオン・マカブルでその攻撃、いなして差し上げますわ!
「那由多、ありがとうですわ!」
失敗してもめげない感じで、今日は参ります!


コロッサス・ロードス
「ワイバーンか……個の武力では及ばぬだろうが、我ら猟兵は連携を以て貴様を仕留める」

戦闘時は『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間を『かばう』事で被害を抑える為にも、集中攻撃を受ける『覚悟』で敵に肉薄して『おびき寄せ』攻撃を誘う
但し闇雲な突出はせず、他の猟兵達との連携を重視して確実な隊列維持に重点を置いた闘いに徹す

特に大技である【ワイバーンダイブ】【ワイバーンブラスト】に対しては、両技に共通する急降下の動作を素早く『見切り』、適宜【無敵城塞】使用して仲間の盾となる
技を防いだ後は【無敵城塞】を解き、また敵への肉薄を続ける

「例え我が身が砕けようとも、我らの勝利は譲らぬ」


国木田・光星
さーてねぐらも分かったところで奇襲といこうか。
なんか本当にゲームみたいだな。へへ、なんだかんだ楽しかったからな。ここはきっちり締めて帰るとするぜ。

身軽さもなんもねぇ凡人の俺は始めは後衛につく。
イレイザーレーザーでの支援射撃、それから接近してる連中に動作の怪しいところがあれば声で合図する。
空を飛んで戦うようなら、射撃の支援は有効な筈だ。

機を見て、ユーベルコードを使う。必要なら二体呼ぶぜ。
サイズは残念ながらあいつにゃ及ばねぇが、獰猛さは負けてねぇ。
それになにより…てめぇより高いところの動きは予想できねぇんだろ?
なら翼に喰らいついてアドバンテージを削り取ってやれ。翅で叩きつけるおまけもプレゼントだ。




 その手に構えるは破邪の剣、その心に携えるは鋼の覚悟。
「個の武力では及ばぬだろうが、我ら猟兵は連携を以て貴様を仕留める」
 猟兵たちの動きを見極め意図的に突出し、コロッサス・ロードス(金剛神将・f03956)はワイバーンに肉薄する。
 手にした得物を敢えて大きく振り上げ、赤い巨体目掛けて振り下ろす。その隙だらけの攻撃に、ワイバーンが反応した。
 ワイバーンの尾が大きく横なぎに振るわれる。咄嗟に構えた盾と自身のオーラでそれを受け止めるコロッサス。僅かに顔を顰めた彼の目の前で、ワイバーンが翼をはばたかせる。
 宙へ舞ったワイバーンの金の瞳が、コロッサスを射抜く。
(「――来る!」)
 急降下してくるワイバーン。衝撃波を伴う咆哮がコロッサスを襲う。しかし、それより一瞬早くコロッサスの無敵城塞が発動した。
 それこそが彼の作戦――自らが囮となりワイバーンの攻撃を受け、仲間の『盾』となる――。
「例え我が身が砕けようとも、我らの勝利は譲らぬ」
 宣言するコロッサスの声に、別の声が答えた。
「ええ、もちろんわたくしたちが勝ちますわ」
 声の主は深護・刹那(花誘う蝶・f03199)。
「ですが、誰かの体が砕けたりするようなことはありませんわ。わたくしが護りますもの」
 戦場に美しい歌声が響く。猟兵たちの心を震わせる優しくも力強い歌声は彼らの共感を呼び、その傷を癒す。
 刹那にはワイバーンを直接攻撃する術はない。だがそれでもできることはある。
 それは歌による回復であり……コロッサス同様、囮になることだった。コロッサスと刹那、二人してワイバーンの周囲をうるさいほどに動き回り、その注意を引き付ける。
 ワイバーンは飛翔し、急降下する。狙いは――刹那。
 ワイバーンの鋭い爪が刹那に迫る。彼女はワイバーンを見つめたまま、すっと全身の力を抜いた。そのまま目を閉じ、襲い来る脅威を受け入れる。
 次の瞬間、刹那が操るからくり人形がビクンと跳ねた。彼女が受けるはずだった『力』が、からくり人形を通じて排出される。
「那由多、ありがとうですわ!」
 からくり人形に礼を言う刹那に、コロッサスが声をかける。
「あまり無理をするな。お前は大事な回復手なのだからな」
 刹那が使った『オペラツィオン・マカブル』は成功すれば無傷で済むが、失敗すれば通常の倍の被害を受ける。使わずに済むのなら、それに越したことはない。
「また来るぜ!」
 後方から国木田・光星(三番星・f07200)の声が飛んだ。急降下してくるワイバーンに反応し、コロッサスが刹那のかばうように立ちはだかる。
 ワイバーンの動きをギリギリまで見据え、襲い来る鉤爪をすんでのところで回避。攻撃を見切られたワイバーンが、苛立たし気に咆哮する。
(「なんか、本当にゲームみたいだな」)
 光星の胸にそんな思いがちらりと過る。当事者であるはずなのにどこか現実味がないのは、やはり自分が凡人だからだろうか。
 ワイバーンと戦う猟兵たち。そして、構えた銃から光線を放ち、前線で戦う猟兵を支援する自分。効いているのかいないのか、光線が着弾する度にワイバーンは煩わし気にその翼を振る。
(「へへ、でもまあなんだかんだ楽しかったからな。きっちり締めて帰るとするぜ」)
 心の中だけで笑い、光星は改めてワイバーンの様子を観察する。ワイバーンの翼はずいぶんと傷ついていた。空を自由に飛び回る機動力はもはや残っていないだろう。
 だがそれでも、フラフラとながら宙に浮き続けるくらいの力は残っているようだ。その姿に光星はすぅと目を細め、言葉を紡ぐ。
「さぁ、還ってこい……大空翔ける空の覇者」
 光星の言霊に誘われ召喚されるは『メガネウロプシス・ペルミアーナ』。巨大なトンボに似た姿のソレは、召喚されると同時にワイバーンに襲い掛かった。
「サイズじゃ及ばねえが、獰猛さじゃ負けねぇぜ?」
 光星がニヤリと笑う。
「翼に喰らいついてアドバンテージを削り取ってやれ。翅で叩きつけるおまけ付きでな!」


 いかにワイバーンと言えども、猟兵たちの連携には及ばない。
 少しづつ少しづつ、勝利の天秤は猟兵たちへと傾いていく。
 ――けれど、まだ足りない。
 ワイバーンを倒すには、更なる攻撃が必要だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルクト・オレイユ
目覚めて早々で悪いが、また眠ってもらう事になるな。
【妖剣解放】で自分に高速移動と衝撃波を付けてから、妖刀でワイバーンの鱗を剥がす様に攻撃をする。この硬い鱗があると攻撃が通りづらいだろうからな。
首元、あるいは毒を持つ尾の根本か…。『戦闘知識』で戦いながら判断したいところだ。敵も簡単にはやらせてくれないだろうが、手数で勝負だ。
『2回攻撃』『傷口をえぐる』等を用いて1枚でも多く鱗を剥がしたい。後に続く者達の攻撃が貫通するように。


シェルツァ・アースハーバード
【無敵城塞】を使用している間は、いかにワイバーンが仕掛けてこようと無駄です。
ですが……先程の攻撃。
爪か尾か判りませんが、毒があるような……少し、身体の調子が。
少しでも敵を惹きつけ、時間を稼がなければ。

窮地に立たされている時こそ、立ち向かう勇気を振り絞らなければ。
攻撃を受けるうちに相手の攻撃してくる時の予備動作もある程度判ってくるでしょう。

その時は【無敵城塞】を解いて反撃するチャンスかもしれません。
他の猟兵からの攻撃もあります。隙が出来れば、すかさず打って出ましょう。
大丈夫です。タロさんが言うように、私達は一人ではありませんので。
必ず、皆さんでこのワイバーンを討ち取りましょう。




 最前線で無敵城塞を使い続けるシェルツァ・アースハーバード(魔法剣士は挫けない・f04592)。
 小柄な彼女の体そのものを『盾』にあるいは『壁』にと上手く利用し、猟兵たちはワイバーンへと攻撃を仕掛けていく。
(「ワイバーンの攻撃が私にどれだけ当たろうが無駄です……けれど」)
 シェルツァは無傷ではなかった。
(「少し、身体の調子が」)
 最初に喰らったワイバーンの毒を帯びた尾による一刺し、その毒が彼女の身を苛んでいたのだ。
(「少しでも敵を惹きつけ、時間を稼がなければ」)
 幸い、他の猟兵の癒しの力がその痛みをいくらか減らしてくれている。内心で歯を食いしばるシェルツァの耳に、彼女の身を案じる声が届く。
「大丈夫か」
 声の主は、その長身を小さく屈めたルクト・オレイユ(キマイラの妖剣士・f05799)だった。
 無敵城塞を使っているシェルツァは動くことができない。だから、しっかりと前を見据えたままで彼女は答える。
「大丈夫です、私は一人ではありませんから。――行ってください」
 その言葉に頷いて、ルクトはシェルツァの脇から飛び出した。氷を思わせる妖刀の怨念をその身に纏い、ワイバーンへと肉薄する。
(「その邪魔な鱗、剥ぎ取ってやる」)
 狙うは首か、毒の尾か――判断は一瞬。今にも噛みつかれそうなほどに迫ったワイバーンの顎を避け、滑り込むようにしてその懐へと潜り込む。
 そしてそのまま妖刀を一閃。斬撃は衝撃波となり、ワイバーンの首元へと襲い掛かった。
 ワイバーンが苦悶の声を上げ、たまらず宙へと舞い上がる。そしてそのまま急降下し攻撃に転じた。
 その行動に、シェルツァは違和感を覚える。
(「もしかして、もう空を飛び続けることはできなくなっているのでは?」)
 これまでは攻撃の際にもしばらく空に留まる様子が見られた。だが今はそれがなくなっている。実際、猟兵たちに狙われ続けた翼は見るも無残な状態で、とても空を『飛べる』とは思えない。
「目覚めて早々で悪いが、また眠ってもらう……永遠にな」
 苦し紛れにも見えるワイバーンの攻撃をかわしたルクトの妖刀が冷たく輝く。彼はワイバーンの首元にできた傷を狙い、妖刀の切っ先を走らせた。斬撃と衝撃波が立て続けに傷口を抉り、柔らかい皮膚が露出する。
『ギャアアァ!!』
 悲鳴とも取れるような咆哮を上げるワイバーン。今こそ反撃の時――シェルツァは無敵城塞を解き、大剣を構えた。
「もう少しです! 皆さんでこのワイバーンを打ち取りましょう!」

 ――ワイバーンの討伐まで、あと一歩。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラムダ・ツァオ
満身創痍なら引導を渡してあげるのも慈悲かしら。
外套を目くらまし代わりに脱ぎ捨て、一気に喉元を切り裂くわ。
ただ、相手も苦しんでいるのなら爪牙を振り回すでしょうし、
飛び込むとしてもそのあたりはきちんと見極めたいわね。
勿論、反撃を受けないために攻撃したらすぐに距離を取るわ。
所謂ヒットアンドアウェイね。
そのまま力尽きてくれればいいけど、
まだ粘るようなら注意しつつ再びダガーでシーブズギャンビットを狙うわ。

無事に終わればそれでよし。
怪我人の手当てやワイバーンの死骸の後始末もきちんと考えないといけないわね。




 大空を舞うための翼はズタズタに切り裂かれ見る影もない。身体のあちこちにはこの戦いでできた数えきれないほどの傷――中でも喉元のそれはパックリと大きく口を開き、皮膚の奥の肉を露出させていた。
 見るも無残な姿のワイバーンに向かい、黒い外套を羽織ったラムダ・ツァオ(影・f00001)が走る。
『ガアアアオオ!!』
 ワイバーンは手当たり次第とばかりにその尾を、爪を、振り回す。ラムダは頭上から振り下ろされる爪を姿勢を低くして掻い潜ると、その低い姿勢のまま前方へジャンプ。横なぎに払われる尾をかわしそのまま前転、素早く立ち上がるとワイバーンの顔面目掛けて外套を脱ぎ捨てる。
『!!?!』
 黒い外套がワイバーンの視界を遮る。その直後、ワイバーンの喉元を鋭い『何か』が切り裂いた。もともとあった傷口が更に大きく更に深くなり、ワイバーンが苦悶に満ちた声で叫ぶ。
『グアアア!』
 暴れるワイバーンから距離を取るラムダ。ワイバーンの喉を裂いたのは、彼女の手の中にある黒色の短剣だった。
(「このまま力尽きてくれればいいけど」)
 深い傷を負い暴れに暴れるワイバーン。その姿は、攻撃云々ではなくただ痛みから逃れるためにもがいているだけのようにも見える。
(「引導を渡してあげるのも慈悲かしら」)
 黒い短剣を逆手に構えたラムダは、再び目を見張るような速さでワイバーンへと迫った。
 闇雲に振るわれる爪をするりとかわし、勢いのままワイバーンの喉……その傷口へと短剣を突き立てる。
 深々と刺さった短剣を支えにワイバーンの体に足をかけ、そのまま後方へと一回転。その反動を利用し短剣を引き抜くと、トン、と軽い音を立てて地面へと着地する。
『ギャアアアアア!!!!』
 大きく体をのけぞらせたワイバーンが、ひと際甲高い声を上げた。そして、ピタリと動きを止める。
 それから数秒、ワイバーンの巨体がグラリと揺らいだ。
 油断なく得物を構える猟兵たちの前で、地面に横倒しになるワイバーン――その見開かれた瞳は、既に光を失っていた。


 事切れたワイバーンの脇に落ちた外套を拾い、埃を払う。
 黒い外套を羽織り直しながら、ラムダはワイバーンの巨体に視線を向ける。
 これから怪我人の手当てをして、ワイバーンの死骸をどうするか考えなければならない。
(「けれどまあ」)
 丸いサングラス越しに空を見上げ、ラムダは大きく伸びをする。
(「無事に終わればそれでよし、ってね」)

 ――気が付けば、夜はすっかり明けていた。
 朝日の中を、鳥たちが飛んでいく。
 彼らを脅かすモノは、もういない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月28日


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 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト