降りる神、登る人
ただ広い空間に現れたのは人の列。老若男女、数多の人間が美しい列を成し歩いてくる。人々が成すのは円。1つ、2つ、幾重もの円を織り成す。およそ共通点を持たないであろう人々に共通することは、手に何かを握りしめているということ。ただそれだけの人間が何も存在しなかった空間を埋めつくしていく。
円の中央には異質を放った者がいる。黒のローブを深く被ったそれは、用意された人間が全て広場に入ってきたのを確認すると口を開いた。
「お集りの皆様、本日は誠に良い日でございます。あなた方は今日、この日をもって現世のしがらみから解放され、真の意味での救済をされ、生命として1つ上の段階へ進むことができるのです。嗚呼
......嗚呼
......このような瞬間に立会えるなど、なんと幸福なことでございましょうか」
その人物の言葉に、集った人々は沈黙で返す。もはやその瞳は光を灯していない。ただ正面を見据えるのみである。その異様とも言える光景に、ローブの人物は満足そうに笑みを浮かべた。
その笑みに呼応するように光が降り注ぎ、人々の視界を奪っていく。そして、光が落ち着き、視界が開けるころには、その場にはいかなる生命の存在もしておらず、降り立った神の高笑いだけが響き渡った。
●
「と、いうことがありまして」
コーヒーを片手に一息つくと、今井・菫(バリスタ・バリスタ・f00564)は集った猟兵に向けて話を続ける。
「UDCアースにて邪神復活の儀式が行われようとしています。この教団が呼び出そうとしているのは救いの女神。名前こそ良い神のように聞こえますが、死をもって人間を救済し楽園へと導くという、ある種歪んだ救いを示す神です。さすがに見過すことはできません。皆さんにはこの儀式を阻止していただければと思います。ただ、儀式の場所は厳重な警備で固められていることが予想されます。戦闘は避けられないでしょう。また、邪神との戦闘にもなる可能性も十二分に予想されます。危険が伴うことになるとは思います」
ただ、と菫は続ける。
「儀式の行われている場所については特定できていません。そのため、儀式の場所を知らべることから始めないといけません。現在のところ、唯一の手掛かりはこちらです」
1枚の紙が指し出される。そこにはどこかの住所が記されていた。
「こちらの場所に占い師がいます。この人を手掛りとしていただければと思います。ただ、この占い師の占いで儀式の場所が分るわけではなく、この占い師が儀式における生贄とする人を品定めし、祭具をラッキーアイテムとして渡しているようです。可能であれば、このアイテムを手渡された人から回収することもお願いします。ただ、こちらは邪神の復活を阻止できれば、さほど危機的ではないとは思いますが。実際にこの祭具を占い師から手に入れるもいいでしょう。あとを尾けて動向を探るのもよいでしょう。」
なにはなくとも、まずは情報収集ですね、と菫は話を締めくくる。そして最後に一言。
「あ、景気付けのコーヒーは一杯800円でお出ししていますので」
そう言って猟兵を送り出した。
倉澤
はじめましての人ははじめまして。
おひさしぶりの人もはじめまして。
新人マスターの倉澤です。初シナリオになります。
ゆるりとやっていこうとおもうので、よろしくおねがいします。
第1章 冒険
『邪悪な占い師を追え』
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POW : 占い師に会う、悩み相談をする
SPD : 占い師を追跡して行動を調べる
WIZ : 祭具の出所を調べる、ばら撒かれた祭具の回収
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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鈴木・志乃
コーヒー下さい(800円渡そうと)
直接祭具貰いたいなあ……
UC『役作り』でそこらへんのモブっぽい目立たない感じの人に【変装】します
占い師がどんな人に祭具を渡しているのか、見張って共通点を見つけましょう【情報収集】
必要なら再度別人物に【変装】
何度も繰り返せば、自ずと条件も絞れるはず【学習力】
【第六感】も役に立つかなあ
実際に祭具渡された人にも声かけるか【コミュ力】
祭具が欲しいんだけど、自分に占い師はくれなかったという体を装うよ
共通点分かったら条件整えて【変装】
祭具貰えるなら貰っちゃえ
……最終手段、占い師いなくなった瞬間にパクります
必要なら【撮影】でいなくなるタイミング計算することも辞さない
とあるアーケード街の一角。人々の往来の中に一人の女性が佇んでいる。行き交う人の流れを眺めながら、鈴木・志乃(ブラック・f12101)はひとりごちる。
「直接祭具貰いたいなぁ
......」
目立たぬよう通行人に紛れるように変装したままコーヒー片手に時計を確認するその姿は待合せをしているようにも見受けられる。しかし、その視界は常に向いの通りに陣取る占い師を捉えていた。
件の占い師はいかにもな姿で客対応をしている。水晶玉を覗き、ときにはタロットカードを並べ、その仕草は占い師そのものである。とはいえ、客足はさほど伸びているわけでもなく、例の祭具、邪神復活の儀式に関係するというそれを手渡した相手はまだ多くはない。
「なかなか難しいね」
ぽつりとつぶやく志乃。今までに祭具を渡されたのは小学生の少年、身なりの良いおじいさん、疲れた顔をしたサラリーマン、およそ共通点は見受けられない。志乃は定期的に変装の内容を変えつつ監視を続ける。その姿は同一人物と言われたら驚くであろうほどに秀逸なものだった。近所のお店の店員ですら、一人の人間がずっとそこにいるとは思わないだろう。そのおかげもあり、長時間にわたり占い師を監視することができる。
日も傾き始めた頃、一人の少年が占い師の前に立った。志乃は漏れ聞こえてくる会話に耳を傾ける。拾うことができた単語は教会、神父、食事。そして、その他いくつかの言葉。今までに祭具を受けとった人との共通点。ある仮説が頭をよぎる。
「身寄りが
......ない?」
仮説を立てたあとの志乃の行動は早かった。改めて身なりを変え、占い師の前に腰をかける。その姿は貧しい女子高生といったところ。頭に描くのは孤児院で虐げられた暮しをしている女子高生。その像を演じていく。
「......あそこには帰りたくない」
「ご両親は心配しているでしょう?」
悲壮感を漂わせ、存在しない現実を纏う志乃のセリフに、占い師は予想外に優しい声で諭してくる。
「両親は
......いない。もうずっと。私はどうしたらいいの?」
暗に身寄りがないことを匂わせる。ちらりと占い師の反応を観察しながら。さてどうくる、と思いながら、いくらかの時間が過ぎた。それは一瞬だったかもしれないし数分だったかもしれない。占い師は軽く息を吐くと、1枚のコインを差し出してきた。
コインを手にした志乃は一瞬意識が遠のく。そして、眼前に広がったのは白い建物。ただし、視界は曖昧でそこがどこだかは分らない。ただ無機質な建物であることだけは理解できた。
「今日はもう店終いだよ」
かけられた占い師の声ではっと我に返る。気が付くと、占い師は片付けを終えていた。志乃は簡単な礼を言ってその場を離れる。手にはさきほどのコインが握られたままで。
「今のは一体
......」
確かに手掛りを得ることができた。まだ謎は残っているが、掴んだ糸口は逃すまいと志乃はコインを改めて握り、その場を去っていった。
成功
🔵🔵🔴
イクトス・ソーブレ
我も死に纏わる神の一柱であるが
救いを餌に無辜の民の命を奪う女神など断じて許せぬなぁ!
儀式の場を突きとめ教団の首魁をとめねばな
うむ、珈琲は美味であった
WIZUC
我が被造物である栗鼠の彫像に命を与えよう
汝の名はソフィア!神界を駆ける栗鼠也!(知力強化)
ソフィアに命じ占い師の動向を探るのであるな
ふははは、ゆけソフィア!
可能であれば占いの場に潜ませ会話を覚えさせるのである
占いの場を離れたならばそのまま跡をつけさせよう
どこか建物の中に入るのであれば、空いた窓やソフィアが入れる排気口を探し潜入させるのであるな
こちらの世界は不慣れ故、集めた情報は仲間の猟兵達に共有するのである
アド・連携歓 NG無し
アウレリア・ウィスタリア
生に絶望した人々を集めているのでしょうか?
死を受け入れる虚ろさを求めているのでしょうか?
ボクは世界に絶望した……いえ、今でもしているかもしれません
ならば、尋ねましょう
私が抱える捨て去ったはずの苦痛の、絶望の記憶
これから逃れる術を、逃れることのできる方法はありませんか
そう尋ねましょう
ボクの心の、魂の奥底には光があるけれど
今はそれを塞いでしまいましょう
ボクではなく、私の絶望の思い出に身を落とし
悲痛の思いで尋ねましょう
あぁ、どうか私に救済を……
成否に関わらず密かに血糸を巡らして
占い師に血のマーキングをして行動を監視しましょう
それに祭具の回収も出来たのなら幸いです
そちらも調べてみましょう
アドリブ歓迎
喜羽・紗羅
アドリブ可
POW
コーヒー高! フラペ2杯はいけちゃうじゃん!?
まず占い師さんに会う前に情報収集
スマホでその占い師さんの評判について――とか
何か貰った物の話とか、どんな事を占ってもらったか、とかね
他に近くで怪しい施設が無いか
例えば廃墟みたいな所や
その土地の古い歴史とか調べてみるよ
そしたら直接、私の事を占ってもらうわ
ちょっと怖いけど、勇気出してレッツコミュニケーション!
(……。で、何占ってもらうんだ?)
そりゃあやっぱり、出会いとか? 運命の人とか?
(阿保らし。好きにしてくれ)
それと、占い師さんの所の地形を利用して
地多爾得無から情報を吸い出すね
他の人のお話も聞き耳立てたりして
何か分かればいいんだけど
「んー、占い師については有力な情報はないね。愚痴を聞いてもらったとかはあるけど、何かを貰ったって話は出てこないよ」
スマホで占い師の評判について調べていた喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)は一緒にいるイクトス・ソーブレ(情念浄罪の暗黒神・f18187)とアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)の二人に情報共有をする。
「そうすると、分かっていることは祭具がコインであること、どうやら身寄りのない人間が対象とされているようであること、そして無機質な建物ですか」
生に絶望した人々を集めているわけではないんですね、と呟くアウレリアにイクトスが返す。
「たとえそうだとしても、救いを餌に無辜の民の命を奪う女神など断じて許せぬなぁ!」
言いながら、イクトスは手にした彫像に名を授ける。
汝の名はソフィア!神界を駆ける栗鼠也!
その言葉に呼応するように栗鼠の彫像が生を得る。ソフィアと名付けられたそれは主の命を受けて駆け出す。向うは占い師の足元、占い台の布の裏手。占い師の死角に見を隠し、占い師と客との会話を覚えていく。
「あとは無機質な白い建物だっけ。廃ビルとか病院、学校とかなのかな」
スマホで調べる対象を占い師から建物へと変えた紗羅はマップアプリを駆使して近隣の建物を調べていく。
「どこか対象になりそうな建物はありますか?」
「今度は候補が多過ぎるかな」
大きい建物になれば候補は絞られるけどねと、紗羅はアウレリアの問いに返す。
「せめて方角でも分かればもう少し絞れそうだけどね」
そうですか、そう呟くアウレリアが歩を進める。
「では行ってきましょう」
言葉もなく目の前に座ったアウレリアを一瞥する。
「何が聞きたいんだい」
「私が抱える捨て去ったはずの苦痛の、絶望の記憶
これから逃れる術を、逃れることのできる方法はありませんか」
占い師とアウレリアを取り巻く空気が冷え込んでいく。占いというにはあまりにも重い空気。それは生の儚さ、死の尊さを訴えるような、周りの草木すら枯らせてしまいそうな重い絶望感を振り撒く。その緊迫感は遠巻きに観察している紗羅とイクトスにも伝わる。
「アウレリアのあれは演技であるか? 尋常ではない空気であるが」
「分からないけど、演技だとしたら相当な女優よね。演技じゃなかったらそれはそれで危いけど」
真か偽か、それは分からない。ただ、アウレリアは占い師の言葉を待ちながら淡々と手順を踏んでいく。血糸を巡らせ、占い師をマーキングする。これで行動を追跡することは容易になっただろう。イクトスの生み出したソフィアの追跡と併わせれば占い師のあとも尾けられるはずだ。
肝心の占い師はアウレリアの様子を観察したあと、件のコインを取り出して簡単に告げる。
「実際に貴女が何から逃げて、何処へ行きたいのかは分からないけど、もしこの世界に絶望しているというなら、これを持って行きなさい」
コインを手渡すと、店仕舞いだと告げて去っていく。その姿を見届けたあと、アウレリアも紗羅、イクトスの元へと戻っていく。
「うまくいったみたいね」
「はい。マーキングも出来たので、気付かれないように追いかけましょう」
「我のソフィアも既に先行して尾行させてある。建物の特定も難しくはないであろう」
紗羅はマーキングの情報や占い師の移動していった方角などからマップアプリを駆使し、建物の候補を絞っていく。無機質で白い建物、周辺の地形、儀式ができる規模、そして方角。これらの情報を組み合わせて、ここかな、と紗羅は呟く。
「児童養護施設
......であるか?」
イクトスの問いに頷きで肯定を返す紗羅。
「それも、もともと小学校だった場所みたい。生徒数が減って近くの学校と合併したあと、建物をそのままで養護施設にしたみたいね」
「あそこみたいですね」
向った先は歩いて15分ほどの場所にあった。入口とおぼしき場所にはソフィアの姿も見える。
「ビンゴみたいね」
そこは確かに小学校としての造りであり、その面影も残している。つまり、もちろん体育館のような広い場所も確保されている。儀式のための場所にはうってつけだったのかもしれない。そして何より
......
「身寄りのない人間には困らない、ですか」
アウレリアの言葉に二人も息を飲む。それはつまり、生贄の頭数を揃えるにはおあつらえむきの場所だったということ。
「足りない分は占い師が集めてくるということであるな」
イクトスはソフィアに指示を出す。ソフィアは開いている窓を見つけて中へと飛び込んでいった。これで中の様子も多少は掴めるだろう。イクトスはそのまま他の猟兵に対しても情報共有を行なっていく。
「そしたら、準備をして突入かな」
紗羅の言葉にイクトス、アウレリアも頷く。3人は建物を一瞥して、準備のために踵を返していった。
大成功
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第2章 集団戦
『シアワセハコビ』
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POW : またうたえる、しあわせ
【嘴から鳴き声の代わりに歪な金属音 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : またとべる、しあわせ
【自ら動く錆塗れの無線機 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : しあわせ、あげる
【翼を戦闘機のものに組み替える事 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【機銃】で攻撃する。
👑11
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喜羽・紗羅
アドリブ可
どんな場所かも分からないからね
地形を利用して情報収集しつつ
建物の中がどんな所か改めて把握するよ
暗ければスマホをライト代わりにして
ちょっと怖いけど、勇気を出して前に進むわ
騙されて集められた人だっているだろうし
(で、いたらどうすんだよ)
スマホでUDCに連絡して保護の準備をお願いする
その際敵には見つからないように
もし亡くなった方が見つかったら手を合わせて祈るわ
(おいおい、何だありゃ)
飛行機の玩具――いや、鳥?
(薄気味悪いなオイ)
兎に角、あの無線機を壊すわ
私が偽装バッグで鳥を攻撃、援護射撃をするから
(俺が太刀を薙刀に変形して無線機を叩く)
そうね、出来るかな?
やってやるよ。さあ、化け物退治だ!
儀式が行なわれる場所、とある児童養護施設に潜入した喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)。幸い出入口付近に人影はなく、正面から容易に入ることができそうだった。廃校となった小学校を改装した施設ではあるが、建物自体の建て直しがされたわけではなく、外から見るかぎりは普通の小学校という雰囲気である。月明かりと街灯に照らされ、内部でも視界は確保できているものの、若干心許ない。紗羅はスマホのライトを照らし、慎重に歩を進める。
入口には案内図が設置されていた。最奥に体育館。そしてグラウンドを囲うようにコの字型に建物が配置されているようだ。建物は3階建てで、2階3階部分が居室等に使用されているようだ。
「騙されて集められた人だっているよね」
そう呟いた紗羅は意を決して2階へと進む階段に進んでいく。足音には細心の注意を払い、階段の踊り場から2階の様子を確認する。その視線の先に現れたのは
......。
「飛行機の玩具――いや、鳥?」
(薄気味悪いなオイ)
先を飛び回るのは鳥のような飛行機のような。それは鳥の体から飛行機の翼が生えた奇妙な物体だった。おそらくは警備用の配置されているのだろう。
「増援を呼ばれたら厄介ね」
紗羅は、その場にはいない誰かと作戦会議を行う。それは頭の中でのやりとり。行動の指針を決めた紗羅は手にした太刀、奇一文字改を鞘から抜き放ち、そしてその鞘と共に階段の先へと放り投げた。紗羅は太刀を放り投げたあと、その場から動かず短機関銃を仕込んだスクールバッグを構える。肝心の太刀はといえば、2階に出るところで地面に落ちることはなく何者かの手に収まった。手にした者の姿は紛れもなく紗羅そのもの。今この瞬間、2人の紗羅がたしかに存在する。それは多重人格者である紗羅のもうひとつの人格。それがユーベルコードの力で実体を持ち顕現したもの。それは太刀、そして鞘を受け取り、それを薙刀へと変形させる。
「援護するよ」
「任せろ」
2人の紗羅は短かく言葉を変わす。機関銃で鳥の行動範囲を絞っていく。移動先を制限され行き場を失しなった鳥は無線機を召喚する。錆にまみれた無線機は空中に現れ、鳥と共に宙に浮いている。
「させるかよ」
一閃、振るわれた薙刀は錆に塗れた無線機を真っ二つに切り裂く。そして、その勢いを殺さぬまま反対側へと振り抜く。援護射撃によって追い込まれていた鳥はその返された薙刀により、やはり真っ二つ。二度と動くことはなくなった。
監視の鳥を撃ち落とした紗羅は2階へと辿り着く。そこは教室を改装したであろう居室部分。そこには確かに人の気配がする。混乱を招かぬよう、扉の隙間から中を覗けばそこには連れてこられた人々が肩を寄せあう姿が確認できた。
「保護の準備をお願いしないとね」
そうしてUDCに連絡をした紗羅は更に先へと進んだ。おそらくまだ囚われている人はいるだろう。どれだけいるか分からないが、それを確認するために薄暗い廊下を進んで行った。
大成功
🔵🔵🔵
イクトス・ソーブレ
ソフィアは御苦労
しばし離れているのである
翼を失った鳥であるか
なんとも痛ましい姿であるな
せめて安らかに骸の海に還してやろうではないか
WIZUC
周囲の壁や机等を竜巻にかえてくれよう
汝の名はエウロス!恵みをもたらす嵐の名也!
竜巻を手繰り鳥達の動きを制限するよう試みよう
乱流で翼を封じ、上空へ逃れるのを防ぐのであるな
汝等、この澱から逃れられると思わぬことであるな!
機銃での攻撃は杖から生み出した呪詛で防ぐよう試みるのであるな
味方の支援を中心に立ち回るのであるな
皆、頼むのである!
動物会話で末期の声が聴ければ聞き遂げよう
空の旅の果てである
汝等の魂が空へ還るまで見届けるのであるな
アド・共闘歓 NG無
偵察に出していたソフィア、命を宿された栗鼠の彫像が戻ってくるのを確認すると、イクトス・ソーブレ(情念浄罪の暗黒神・f18187)は入口へと足を踏み入れた。
「ソフィアは御苦労。しばし離れているのである」
建物内に入ったイクトスは案内板を確認する。小学校を改装したここは部屋の配置も別段変わったものではない。最奥部には体育館。儀式の場所としては最適であろうことが容易に想像できる。
「儀式といえば体育館。人を集めるのにも向いているし、間違いないであろう」
奥、1階の廊下を体育館へと進む。コの字型の廊下は一本道。迷うことはなく体育館までは辿り着けるだろう。何事もなければ。
「そう上手いことはいかぬな」
視線の先には複数の飛翔物体。それは鳥のようにも飛行機のようにも見える。周囲を警戒するかのように廊下を飛び回っている。体は間違いなく鳥そのもの。ただし、そこから生える翼は鳥のそれではない。無機質で赤錆に塗れた硬質なもの。それは飛行機の翼そのものであった。その痛ましい姿にイクトスも眉をひそめる。
「なんとも痛ましい姿であるな。せめて安らかに骸の海に還してやろうではないか」
踏みこんでくるイクトスに気がついた鳥たちは即座に警戒体制に移行する。イクトスを迎え撃つように、周りを囲むように連携をして飛びかかってくるそれは見掛けによらず統率がとれたように動く。あるものは金属音を放ち、またあるものは翼を戦闘機のそれに変え機銃を向けてくる。まさに集中砲火という言葉が正しい。しかし、それでも臆することなく弾幕の中へと踏み込むイクトスは扉へと手を伸ばす。それは避難のための行動ではなく。
「汝の名はエウロス! 恵みをもたらす嵐の名也」
手を伸ばした先にあったはずの扉はもはや形はなく、不可視の質量となり空間を取り巻く。複雑に動くイクトスの指先に従うようにそれは鳥達の頭上へと流れて、周りの空気すらも取り込んで勢いを増す。廊下という狭い空間にはおよそ存在しえないようない勢いを伴うそれは竜巻。乱気流は鳥の翼を絡めとり動きを封じていく。
「汝等、この澱から逃れられると思わぬことであるな!」
言うが早いか、イクトスが腕を振ると、竜巻が意思を持ったように急降下する。地面へと勢いを増す竜巻は鳥たちを取り込んだまま地面へと衝突し、そのまま霧散した。出自の分からぬ鳥が消えるのを見届けたイクトスは目を伏せ息を吐く。まだ終わりではない。廊下のその先へ、再び進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
どこもかしこも悪意が潜んでる
無事だといいんだけど
懐中電灯片手に進もうか
ちゃんと自分のいる場所は把握しておこう
物音一つ、影一つ見落とさないようにしっかり気を張るよ【第六感、見切り】
どこから何が来ても良いように、位置取りにも頭使おう
襲撃を察知したらダッシュスライディングで物陰に隠れてヒットアンドアウェイ
【念動力】で即席のバリケード組んだり、敵にぶつけたりするね
蛇口あったらぶっ壊して水かけるわ【罠使い】
自分が有利に立ち回れるよう、常に動きを【誘導(誘惑)】する
【早業投擲念動力】
UCは目眩ましと敵の誘導に使う
縛って機動力奪えるかな
隙が出来たら即座に手持ちのピコハン投擲して鎧砕き
常時オーラ防御発動
普段ならばしんと静まり返っているだろう施設の廊下には所々で戦闘の音が聞こえてくる。各所で戦闘が行なわれている以上、一瞬たりとも気を抜くことはできない。いつどこから襲撃があるかは分からない。鈴木・志乃(ブラック・f12101)も懐中電灯を片手に意識を集中させて廊下を進んでいく。遠くの音に気をとられることなく、視覚、聴覚を総動員させていく。
壁を背にした志乃は慎重に歩を進めていく。窓を背にしては外からの襲撃への対応が遅れるだろう。壁を背にするのは最適な選択肢だと言える。ほとんどの場合では。志乃はとある場所の手前で止まる。
「ここは迂闊に踏み込んだら危いかな」
志乃が立ち止まった場所は階段へと続く曲がり角の手前。迂闊に進めば二階からの襲撃すらあり得るだろう。より一層神経を集中させる。はじめに見えたのは影。曲がり角の先に飛翔する何かの影がちらついている。続いて聞こえてくるのは無機質な風切り音。おそらく、飛翔するその何かの音だろう。
「ちょっとごめんね」
意を決した志乃は側にあった部屋の扉を取り外す。外された扉は意思を持ったように階段の前へと飛び出していく。それは志乃の念動力によるもの。飛び出した扉に釣られるように階段の方向から何かが飛び出してくる。機銃の射撃音を伴って。機銃によって穴を開けられた扉は尚も旋回して飛び回る。飛び出してきたのは鳥。しかもただの鳥ではなく、戦闘機の翼を体に生やした奇妙な生物であった。その鳥は扉に合わせるように飛び回る。まるで踊るかのように両者は飛び回る。それは結果的に鳥の行動を制限することとなった。
「そこだ! 覚悟して!」
飛び回るルートを限定された鳥は志乃にとっては絶好の的となった。飛ばすはピコハン。手に持っていたものを念動で飛し、戦闘機の鳥を撃ち落す。鈍い音が響き、戦闘機は墜落していった。目を回したというよりは、完全に反応がなくなっていた。
「先を急ごう。無事だといいんだけど」
そうして志乃も建物の奥へと進んでいく。囚われた人たちの無事を祈りながら。
大成功
🔵🔵🔵
アウレリア・ウィスタリア
鳥?
幸せの青い鳥というのがいるらしいですけど
この相手は不幸のトリモドキといったところでしょうか?
【空想音盤:追憶】で花弁の嵐を身にまとい行動
これでどこから敵が現れても花弁の嵐を盾にできます
それにむやみに突撃してくるのなら
そのまま切り裂いてしまいましょう
感知した敵には魔銃を撃ち
距離が近いなら血糸で絡めとってしまいましょう
ここで時間をかけるわけにはいきませんから
手早く済ませて先に進みましょう
死を救済と解くその考え、ボクに届くものなのか……
だだの建前というのならボクは容赦しません
響き渡る破裂音と共に青い翼が舞い散る。そのあとに降り注いだのは薄汚れた緑色の破片だった。瑠璃色に舞う花弁の中に降る翼はどこか幻想的にも見える。ただし、それはアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)が放った魔弾が鳥を撃ち落とした、幻想とは程遠い行動の結果であった。
アウレリアはネモフィラの花嵐を引き連れて優雅に歩を進める。無機質な廊下の中、そこだけが異彩を放つ。先程撃ち落した鳥とは別の鳥、それも集団が取り囲むように飛んでくる。その姿は青い鳥。ただし、その翼だけは戦闘機のそれを携えて。幻想的な空間に迷いこんでくる異形の物はとてもアンバランスな印象を与える。
「幸せの青い鳥というのがいるらしいですけど
......この相手は不幸のトリモドキといったところでしょうか?」
飛び交う鳥の群れを一瞥しながら、アウレリアはつまらなそうに呟く。しかし、その歩みを止めることはない。周りを囲うネモフィラは盾として鳥の突撃を、機銃からの弾丸を防ぐ。時には刃として胴を、翼を、その頭さえも切り刻む。歩んできた廊下の床は一面の青、そして緑の斑点がまばらに散らされている。向う者にはネモフィラの裁きを、逃げる者には魔弾の追撃を。そして頭上を旋回しながら様子を伺う者には血の制裁を。
旋回している鳥、数にしてわずか数羽ではあるものの、その姿が確認できる。他の鳥と違うのは、その体に赤い糸が巻き付いていること。それはアウレリアから伸ばされた血糸。その姿はまるで猿回しのような、遊園地の風船のような姿を彷彿とさせる。その絡めとられた鳥達も糸に引かれて高度を落す。それは重力に引き摺られるようにも見えるが、それはまさしく血糸に引かれている姿。しかし、それは地面に叩き付けられることなく散り散りになった。アウレリアの纏う嵐に飲み込まれて。
歩いてきた跡に異質な光景を残し、先を急ぐ。まだここで終わりではない。目的地を間近に見据え呟く。
「死を救済と解くその考え、ボクに届くものなのか……」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『三四四『デビルズナンバーあんらくし』』
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POW : 悪魔の慈悲(デビルメルシー)
【慈悲の祈り】を向けた対象に、【異次元から現れるギロチンカッター】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 悪魔の後光(デビルヘイロー)
対象のユーベルコードに対し【禍々しい後光】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : 悪魔の信者(デビルビリーバー)
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身の信者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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施設の最奥、おそらく体育館であった場所の扉を猟兵達が開くと、そこに広がったのは異様な光景であった。人が織り成す輪の中心にはローブの男。その男は猟兵達に視線を向けると、不適に微笑んだ。その笑みに呼応するように光が差す。その光は質量を持って輪の中心、男に降り注ぐ。吹き荒れた風に飛ばされ、輪を成しいていた人々は壁まで飛ばされ気を失う。そして、そこに立っていたのは異様な彫像のような姿をした何かであった。
喜羽・紗羅
アドリブ可
何だコイツぁ……妖怪の類じゃねえな
舶来の化け物か?
(何だろう。作り物みたいな感じもするけど)
とりあえず、ろくでもねえ奴なのは確かだ。さっさと片付けるぞ
ギロチンだぁ? おっかねえが何とかしてやらあ
フェイントを交えて駆けずり回り、パターンを情報収集だ
祈ると出てくるのか、だったらそのタイミングで反撃してやらぁ
ギロチンカッターの出る所に剣刃一閃――それをぶった斬って
2回目の攻撃――続く刃で鎧無視の、確実に届く刃を重ねて斬る
狙いは両手、お祈りの手も組めない様にしてやるよ
地形を上手く使えば攻撃も躱せるだろう
後はビビらないで前に出る勇気――兎に角奴を無力化してやるんだ!
喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)は目の前の敵を静かに見据える。相手から表情は伺い知れない。ただ、その容赦の無い攻撃からは純粋な悪意は感じ取れた。何もない空間から飛び出してくるギロチンは的確に紗羅の姿を捉える。そのギロチンを的確に観察し、分析し、その軌道を割り出すことで紗羅も的確に回避をしていく。
「何だコイツぁ……妖怪の類じゃねえな。舶来の化け物か?」
ギロチンを躱しながら観察を続ける。それは舞いを舞うように優雅に的確に最小限の行動のみで熟していく。そして導き出される答え。
「祈ると出てくるのか。だったら
......」
両手を組むあんらくしー。その姿はまさしく祈り。その祈りの先が何であるか知る由もない。ただ、そこから現れるのは祈りとは程遠い。ギロチン、処刑の道具であり首を落とすことに特化したそれは紗羅に狙いを定め飛んでくる。
「......やらせるかよ」
空中から現れ飛んでくるギロチン。それが勢いを増す直前、紗羅の腕が振られた。剣刃一閃。その刃の軌道は視認することすら難しい。ただ、切り落されたギロチンが真っ二つになり落ちたことにより、たしかにその軌道を描いたことは確認できた。そして、その勢いを殺さぬまま一歩踏み込む。それはあんらくしーを目前に捉える距離。二撃目のギロチンを呼び出すべく組まれたあんらくしーの両腕を的確に捉える。
「お祈りの手も組めない様にしてやるよ」
踏み込みで生かされた速度、そして間合はすでに紗羅の距離であった。振り抜かれた刃は組まれた手に吸い込まれるように流れていく。切り落とすまではいかなかった。ただ、それは確実にあんらくしーの両腕を蝕んだ。祈りの形に組まれたあんらくしーの両手は剣撃を受け砕けた。おそらくこれ以上の祈りは難しいだろう。ただ、まだ終わったわけではない。
「兎に角奴を無力化してやるんだ!」
大成功
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鈴木・志乃
……安楽死を齎す悪魔か
しかしてそれは女神でもある
私みたいな死にたがり相手には特にね
けど許さないよ
歌唱の衝撃波で芯まで意識を誘惑しよう
祈りに集中させちゃダメだ
とにかく意識をぶらさなきゃ
と同時に念動力で周りの小さな物動かして
敵さんの死角からぶつけよう
意識を誘惑した隙にダッシュ、スライディングで懐まで潜り込め
UC発動、祈ることを禁ずる
余裕あれば積極的に鎖でなぎ払い攻撃
【防御回避】
第六感でタイミングを見切り
鎖でギロチンは早業武器受け
……ギロチンなら鎖で行けるよね
オーラ防御常時発動
歌は彩を持って意識を引き込む。その対象は女神、あるいは悪魔か。その存在は人に安楽死を齎す者。死にたがりにとってはそれはある意味救いとなるのだろう。現世への憂いを断ち、あるかどうかも定かではない黄泉の世界への道標となる存在。それはたしかに女神なのかもしれない。
「けど、許さないよ」
鈴木・志乃(ライトニング・f12101)は距離を取りなおし女神を、あんらくしーを見据える。あんらくしーも志乃の姿を確認し、意識を向ける。相対する両者の間の空気が一段と冷えこむ。緊張感と共に空気が重みを増していく。
先に動いたのはあんらくしーだった。ゆらりと視線を揺らすと、近くに倒れていた男、ローブを身に纏っていた男が操り人形のように動かす。その男は引きずられるような体当りをしてくる。対する志乃は念動力を使って近場に落ちていたい木片とあんらくしーへと飛ばす。それは死角からの一撃。意識を男を操作することに集中していたあんらくしーの側頭部へと直撃させる。操り紐を失った男は勢いにまかせて前のめりに倒れ込む。志乃はその隙を縫うようにすり抜け、あんらくしーの懐にまで入りこんだ。
「これ以上の蝋石は許されません」
それは一瞬の輝きだったかもしれない。光の鎖があんらくしーの体を縛るようなそんな錯覚を受ける。志乃の課したルールがあんらくしーを縛る。祈ることを禁ずる。それがルール。攻撃の手段を制限され追い込まれたあんらくしー。もはや引き下がるほどの余裕もない状態となっている。引くことを知らぬ者が選ぶことのできる選択肢はそう多くはない。あんらくしーは自身が被害を被ることも厭わず、動きすら制限された状態の腕を無理矢理に動かし祈りを捧げる。現れるのはギロチン。決死の覚悟を持って一撃を志乃へ向ける。
繰り出されたギロチンは、あんらくしーの腕に向けて振り降ろされていた。状況が把握できないあんらくしーは混乱の表情を浮かべたように見える。それは、志乃の鎖によって受け止められたギロチンを逆に振り降ろされたものだった。
志乃はあんらくしーを見つめる。もはや相手には余裕は見られない。志乃は僅かにではあるが満足そうな表情を見せた。
大成功
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アウレリア・ウィスタリア
さて、死をもって人々を救済する神……でしたね
なぜ死ぬことが救いになるのか尋ねても良いでしょうか?
どのような回答でもボクがお前を倒すことに変わりはありませんが
鞭剣を構え敵へ向け【今は届かぬ希望の光】を発動
七つの光剣で斬り裂きましょう
周囲の吹き飛ばされた人々が操られるのなら
血糸を飛ばし、捕らえてしまいましょう
まだ救い様のある人々なら可能な範囲で助けます
あぁ、そうですね
ボクは他人が怖い
自分の中にある切り捨てたはずの記憶が怖い
それでも自ら死をもって救われたいとは思わない
この恐怖から逃れたいのは本心ですが
ボクはその手段に死を選ぶつもりはありません
だって、救われる気なんてないのですから
アドリブ歓迎
死をもって人々を救済する神
......でしたね。そう呟くアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)の言葉は目の前の女神に向けられたものなのか。それともただの自問なのか。およそ温度を感じない口調で淡々と紡ぐ言葉は誰へのものか。ただ続く言葉は明確に女神に向けられた。
「なぜ死ぬことが救いになるのか尋ねても良いでしょうか?」
その問いに女神が、あんらくしーが答えることはない。ただゆらゆらとそこに佇んでいるのみである。ただ明確な敵意だけを込めて。
「沈黙が答えでしょうか。どのような答えでもボクがお前を倒すことに変わりはありませんが」
今はまだ間合の外。振った手に握られた鞭剣をしならせる。臨戦態勢に入ったアウレリアに応えるように周囲の人間が起き上がる。マリオネットを彷彿とさせるその動きは見えない糸に操られているようだった。宿主であるあんらくしーに動かされた人々はアウレリアを取り囲むように距離を詰める。緩慢な動きながら、その数は多い。操られているとはいえ、一般人である人々を傷つけるわけにはいかない。鎮圧することは骨が折れるだろう
。......通常ならば。
「あぁ、そうですね。ボクは他人が怖い」
一歩、また一歩とアウレリアは歩を進める。その動きはどこか優雅でもある。
「切り捨てたはずの記憶が怖い」
アウレリアを中心に伸びた血糸が人々の足元を絡めとる。それは血に塗れた蜘蛛の糸。
「この恐怖から逃れたいのは本心ですが、その手段に死を選ぶつもりはありません」
立ち止まり切っ先を女神に向ける。血糸の海の中心で、周囲にもがく人々を捕えたまま女神を見据えるその姿はどこか宗教画のような雰囲気さえ感じさせる。切り抜かれた絵画の中心に七色の光が奔る。七つの光の軌跡が女神を貫き神々しい光景を描く。それはまさしく裁きの光で。
「だって、ボクは救われる気なんてないのですから」
大成功
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源・ヨーコ
救済を謳う女神が信者を盾に使うんすか?
安楽死が聞いて呆れるっすね。
こういう胡散臭い輩はキッチリお仕置きさせてもらうっすよ!
〇POW
とにかく接近しないと話が始まらないっす。
[野生の勘]で飛来するギロチンや信者をかわしながら間合いを詰め、[正義執行]を発動! 攻撃力を強化する、約束された「勝利」の一撃を叩き込むっす! 見た目硬そうっすから[鎧砕き][鎧無視攻撃][捨て身の一撃]を全て使用して一撃必殺を狙うっす!
目の前には人の壁。数はさほど多くはないものの、誰も彼も一般人である。その目に光はなく、気を失ったところを女神、あんらくしーに操られている。それ故に女神を守るように源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)の前に立ちはだかる。
「救済を謳う女神が信者を盾に使うんすか? 安楽死が聞いて呆れるっすね」
挑発するようなヨーコの言葉にあんらくしーも敵意を表わにする。表情は変わらない。ただ、周囲の信者が一歩前へ出た。両者の間に緊張感が走る。場が動くのにさほど時間はかからなかった。動き出しはほぼ同時。数人の信者がヨーコを取り抑えんと飛びかかってくる。ただし信者の動きには問題があった。数は多い。一斉に飛びかかってくる厄介さもある。ただし、それを動かしているのはあんらくしーただ一体。同時に操作をすることにも顕界がある。それ故に信者の動きは単調で、読みやすいものになった。
飛びかかってくる信者の間を縫うようにヨーコの体が全身していく。集団での踊りを踊るかのような滑らかな動きであんらくしーとの距離を詰める。目標を見失った信者たちは互いにぶつかり倒れる。
「我、神の名において正義を執行す。汝ら罪なし」
言葉と共に力が強化される。目前には女神あんらくしーの姿。そこに叩き込まれるのは至極シンプルな拳。ただそれは守るもの全てを無視した一撃。硬質なあんらくしーの体にさえのめり込むその拳は目の前の女神を粉砕する。
「キッチリお仕置きさせてもらうっすよ!」
その言葉をあんらくしーが聞き届けたかどうかは分からない。ただ、目の前にはただの石片。この瞬間、人々を誘拐し生贄としようとしていた偽りの女神は消え去った。おそらくこれで一時の平和が訪れるだろう。気を失っている信者たちも時期に目を覚ます。長い夜が明けようとしていた。
大成功
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