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邪神に届け、ピンポンダッシュ!

#UDCアース


●悪名高き呼び鈴の音
 ピンポンダッシュ。
 それは、呼び鈴を鳴らして逃げる悪戯である。

 ここに、一人の被害者が居た。
 ピンポンピンポンピンポーン。
 大量に呼び鈴が鳴って現われたる彼は、不動明王の如き顔だった。
「許せねェ……」
 ピンポンダッシュだと分かるや否や、大いに憤激したのである。
「許せねェ……俺……許せねェよ」

 ピンポンダッシュは、実に幅広い用途を持つ。
 ヤンチャな子供が人を困らせるためにやることもあれば、犯罪行為に関わる事前調査として在宅の確認手段に利用される場合もある。

 そして――邪神召喚の儀式にも用いられるのだ。

 暗がりの中で、男達が話し合う。
「この方法で、本当に間違いないのか?」
「然り。日本国土を可測空間として所与の情報を前提に確率を計算し、情報に基づいて変換したあと複素射影空間に投影し……」
「日本語でOK」
「……取りあえず計算したらこうなった」
「オーケー。でもこれモールス信号じゃないのか?」
「計算したらこうなった!」
「成程……なら仕方ないな」
 暗がりの中で、男達は頷き合う。
 例え理解が出来なくとも、そもそも理解できぬのが邪神である。
 ピンポンダッシュが儀式ならば、遂行するのみ。

●グリモアベース
「って訳でさー、ピンポンダッシュ止めてきて欲しいんだよね」
 呼び鈴の模型を弄びながら、グリモアベースにて少女が言う。
 彼女はソラ・ツキノ。サイボーグのグリモア猟兵である。
 模型のボタンを押せば、ピンポンと電子音が鳴り響く。

 ピンポンピンポンピンポンピンポーン。

「え? 煩い? だよねえ。ピンポンダッシュで怒る人の気持ちも分かるな」
 猟兵から指摘されたソラは、呼び鈴の模型を投げ捨てた。
 ポイ捨てである。

「じゃ、依頼の話を始めるよ! 今回はUDCアースだよ!」
 ソラは言いながら、地図を広げる。
 何やら一つの街で、同時多発的にピンポンダッシュが行われているらしい。
 住民の怒りは増すばかり。余りに怒りすぎて呼び鈴を破壊した家もあるとか。
「このピンポンダッシュがただの悪戯なら、猟兵が行くことはないんだけどね」
 生憎、ただの悪戯じゃないみたいでさー、とソラは付け加える。

 ピンポンダッシュは、邪神召喚の儀式であるのだという。

「アタシも自分で何言ってるか分かんないけどさー。特定の時間帯に特定の回数、特定の場所でピンポンすると邪神召喚が出来るんだって。変なジョークだと思ったけど、どうやらホントの事らしくてさ!」
 ソラは猟兵たちにビシッと指を向ける。
「だから依頼は、『ピンポンダッシュを止める事』だよ!」
 何故か指をくるくる回しながら、ソラは言葉を続ける。
「ついでに、ピンポンダッシュしてるのは邪神の眷属だろうから、それも討伐してきて。不完全な形でも邪神が召喚されたら、それも討伐してきて! って事でまとめると、ピンポンダッシュを止めて、敵っぽい奴を全滅させてきて!」
 雑にまとめると、ソラはバチーンとウインクをした。

「レッツゴーイェーガー! UDCアースの未来は諸君らの手にかかっているぞ♪」


苅間 望
 ピンポンダッシュ。
 自分は見たことありません。
 皆さんはありますか?

 どうも、初めまして or こんにちは。苅間望です。
 アホな依頼を書きたい病に罹患したので、このような形で結実しました。
 邪神召喚のための!
 ピンポンダッシュ!

 POW,SPD,WIZは一例です。
 皆様の想像を膨らませて、いろいろな事をやってみて下さいな。
 それでは! よろしくお願いします!
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第1章 冒険 『ピンポンダッシュなんて許せない』

POW   :    忍耐強く張り込み捜査

SPD   :    逃げる犯人を追跡逮捕

WIZ   :    魔術・機械トラップで犯人捕獲

👑11
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●捕縛の方法、千差万別
 街で起こるピンポンダッシュ。
 邪神召喚の儀式ということ以外、詳細は不明である。
 どうにかして止めねばならない。
 そして、犯人を捕まえるためのアプローチは多種多様、千差万別。
 猟兵たちは己の持つ技能を駆使して、ピンポン犯に対処する……
黒影・兵庫
ゴミのポイ捨て、落書き、信号無視・・・
どんなささいなモラルハザードでも徹底的に根絶する。
それを長い間続けた結果、俺たちの故郷では
犯罪はほぼ皆無の平和な世界になりました。

だからこそ!ピンポンダッシュを行った
不届き者たちは邪神召喚の儀式だからとか
関係なく必ず捕まえないと、ですよね!?せんせー!

【誘煌の蝶々】発動!

支援兵の皆さん、各ご家庭の庭先にそれぞれ
潜んでいただいて、ピンポンダッシュ野郎が
来たら鱗粉で足止めして、知らせてください!
【衝撃波】を地面に向かって打ってその反動で
ピンポンダッシュ野郎に一気に近づいて
とっ捕まえます!


エドゥアルト・ルーデル
今日の拙者はピンポンダッシュ絶対殺すマン!
…拙者の住まいにピンポン無いからされたこと無いけどナ!

先ずは索敵でござるね!上空に【サーチドローン】を大量に飛ばして実行犯を探索!
ふふ…中々いい眺めだぜピンポン犯…

人手の為にレッツ召喚!…また【知らない人】だ!誰だお前は!
…この知らない人(極めて発見され難い)にピンポンしようとしている犯人の後頭部を見つからないようにしつつ執拗にピンポン!
ピンポンしていいのはピンポンされる覚悟のある奴だけだ!

そして拙者は【罠使い】でくくり罠を用意し、知らない人に追い立てられて逃げてきた犯人を捕縛でござるよ
デュフフフ…追い込み漁は楽しいでござるね!

アドリブ連携歓迎



●芋煮艇より来たる者
 件の街は、それほど狭くはない。
 そのため、無作為に調べるにはどうにも手間がかかりすぎる。
 情報は足で稼ぐものとは言うが、世の中には限度という物がある。

 ……はて、しかし。
 一人でやったら大変なことも、人数が集まれば行けるのではないか?
 沢山人を集めて足で稼げば、何か得られるやも知れぬ。
 故に、ある猟兵たちはこういう作戦を立てた――

 ――『数を集めて索敵と張り込みをしよう』と。

「ゴミのポイ捨て、落書き、信号無視……どんなささいなモラルハザードでも徹底的に根絶する。それを長い間続けた結果、俺たちの故郷では犯罪はほぼ皆無の平和な世界になりました」
 黒影・兵庫は故郷の事に思いを馳せる。
 徹底的なモラルハザードの排除。
 いわば割れ窓理論の成功例だ。
 軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、全ての犯罪を抑止する。
 なので兵庫にとっては、ピンポンダッシュは看過できない悪戯だった。
「だからこそ! ピンポンダッシュを行った不届き者たちは邪神召喚の儀式だからとか関係なく必ず捕まえないと、ですよね!? せんせー!」
 頭の中に埋め込まれた『せんせー』こと教導虫に語りかけ、兵庫は自分にしか聞こえぬ言葉に頷いた。

 一方、ピンポンダッシュ犯捕縛のため燃えている猟兵も居た。
「今日の拙者はピンポンダッシュ絶対殺すマン!」
 エドゥアルト・ルーデルは熱意に溢れていた。
 親の仇を追うかの如く熱意である。
 しかし……
「……拙者の住まいにピンポン無いからされたこと無いけどナ!」
 エドゥアルトは独り言のように付け加えた。

 兵庫とエドゥアルトは、住宅街の一角へとやってきた。
「さて、何はともあれ先ずは索敵でござるね!」
「それなら俺も手伝えますよ。支援兵の皆さん!」
 兵庫が言うと、影の中からひらりひらりと蝶が舞い出てきた。
 誘煌の蝶々。彼の言う『支援兵』を呼び出したのだ。
 ふわふわと可憐で、しかし現実離れした儚さを持つ、綺麗な蝶の群れだ。
「支援兵の皆さん、各ご家庭の庭先に潜んでください。ピンポンダッシュ野郎が来たら鱗粉で足止めして、知らせてください!」
 兵庫の言葉を聞くと、蝶たちは一斉に散開した。
「黒影氏は地面から、ですな。なら拙者は空から索敵でござるよ」
 エドゥアルトは手持ちのサーチドローンを大量に飛ばし始めた。
「これで隠れる場所は何処にも無いですぞ……」
「あとは犯人が来るのを待つだけですね!」

 ――ピンポンダッシュ犯らしき人物たちは、数分後にやってきた。
 一人では無い。同時に複数人、呼び鈴を見つめる不審な人物が現われた。
「ふふ……中々いい眺めだぜピンポン犯……」
 ドローンで姿を捉えたエドゥアルトは、ほくそ笑んだ。
 奴らは見られているなどと思っては居ないだろう。
「にしてもちょっと数が多いでござるな。別々の場所に、合計で五人ほどですな」
「なら分かれて対処しましょう。俺は東の方に行きます」
「了解! 西の方は拙者にまっかせーい!」
 二人は頷き合って散開した。

 ピンポン犯らしき人物は、全身黒ずくめの見るからにアヤシイ奴だった。
 目深に帽子を被り、できる限り顔や素肌を見せないようにしている。
「今日のノルマは……あと三カ所か」
「先に向こうの方やっとこうか?」
「タイミングも重要らしいから、それは止めとけ」
 ピンポン犯たちは顔を見合わせ、目の前の呼び鈴に視線をやった。
 至って普通の呼び鈴。何をどうすれば邪神召喚の儀式になるのやら。
「俺たちの与り知らぬ事、か」
 ピンポン犯は人差し指をピンと立て、ゆっくりと呼び鈴に近づけていく。

 そこに。
 ふと、きらきらと輝く粉が飛んできた。

「ん、何だこれ……」
 ピンポン犯は粉を見つめ、飛んできた先に視線を向ける。
 そこに居たのは――
「……! 何と美しい!!」
 この世の物とは思えぬほど可憐で、儚げに舞う美麗な蝶々であった。
 輝く粉は、蝶の翅からこぼれ落ちる鱗粉のようだ。
「……アレ標本にして飾りたいな」
「そうかそうか君はそう言う奴なんだな」
「自然のままを楽しめよ!」
 ピンポンダッシュという任務を忘れ、ピンポン犯どもは蝶に見とれていた。
「見つけたぞ!」
 その隙に、支援兵から連絡を受けた兵庫がやってきた。
 衝撃波を地面に向かって打ち、反動で高く飛び上がる。
 そのまま一気にピンポン犯に近づいた。
「な、何!?」
「やべえ、見とれて何もしてなかった」
 ピンポン犯は不意を打たれて慌てふためく。
 そんな状態の者が、準備万端の猟兵に敵うはずもない。
 そのままピンポン犯はあわあわと兵庫にとっ捕まえられてしまった。
「……ぐむむ。俺たちが捕まろうと第二第三のピンポンダッシュ部隊が」
「そう。我々はあくまで尖兵、最弱部隊。捕まったところで……」
「ちょっと待った。そんなに人数が居るんですか?」
 ピンポン犯の言葉に兵庫が言うと、彼らは皆押し黙った。
「とりあえず、顔を見せてもらいますよ」
 兵庫はピンポン犯の帽子を取り……そして息を呑んだ。
 ピンポン犯の頭は人間のそれではない。

 蛙ではないか!

 一方そのころ。

「さてさて、人手が欲しいところでござるな!」
 西の方に向かったエドゥアルトは、人手を稼ぐために召喚を行った。
 現われたるは……よく分からない人。
「また知らない人だ! 誰だお前は!」
 エドゥアルト当人も知らぬ何者かが現われて、お手伝いをしてくれるようだ。
「よし、じゃあ犯人にピンポンしてくるでござるよ!」
 エドゥアルトが言うと、知らない人は頷いて走り出した。
「さて拙者は……罠でも仕掛けるでござるよ」
 頑丈な糸とバネを取り出し、エドゥアルトも駆けだした。

「クックック……これを押せば今日のノルマは終了……」
「俺たちは優秀なピンポンダッシュマンだからな……」
 ピンポン犯が二人ほど、呼び鈴の前で話し合っている。
「じゃあ俺が押すぞ……クックック」
「構わん……たっぷり悪意を込めて念入りにピンポンしろ……」
 ピンポン犯が人差し指を立てて、ゆっくりと呼び鈴に近づく。

 しかしその指がピンポンと鳴らす前に。
 犯人の頭が、こつんとつつかれた。

「ん? おい、何で頭をつつくんだ」
「何を言っている……そんなことをするはずないだ……痛っ」
 今度は二人の頭がつつかれた。
 それはさながら、人差し指で執拗にピンポンをするかの如く。
「痛い痛い、ちょっと待て、何が起こってる!?」
「俺の頭は呼び鈴じゃない! クリッカーでもない!」
 彼らは頭を押さえながら慌てふためくが、しかし犯人は見つからない。
 それもそのはず。
 彼らの後頭部をピンポンしているのは『知らない人』。
 風景に溶け込み極めて発見され難い、ステルスピンポン犯であった。
「畜生、何が起こってるか分からんが一旦引くぞ!」
「……仕方有るまい!」
 ピンポン犯の二人は頭を抱えながら逃走を始めた。
 しかし『知らない人』は追い続け、執拗に後頭部をピンポンし続ける。
 二人は呻きながら、後頭部の痛みから逃れるため走り回る。

 そして――ガシャンと何かを踏んでしまう。
 ピンポン犯の二人は何かに足を取られ、そのまま地面にダイブした。

「グエーッ! は、鼻が!」
「いったい何が……」
 二人は自分たちの足を見る。
 頑丈な糸が結びついており、動けなくなっているではないか。
「デュフフフ……追い込み漁は楽しいでござるね!」
 そこに、満面の笑みを浮かべたエドゥアルトが現われた。
 何を隠そう、罠を仕掛けたのはエドゥアルトである。
『知らない人』にピンポン犯を追い立ててもらい、逃げ道にくくり罠を仕掛けて捕縛する作戦であった。
「お縄についたところだし……顔を見せるでござる!」
 エドゥアルトが彼らの帽子を引っぺがす。
 そこにあったのは……蛙の頭部だった。

 蛙頭のピンポン犯。面妖なことである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイニーア・ノックス
狙われそうな家を地道に調査し、そこに忍耐強く張り込み捜査を行う。
『これまでされたのを図形として結びつけると、ここみたいね。』
不審人物がピンポンダッシュした瞬間を狙って捕まえようとする。
『止まりなさい。容疑が有るわよ!』


雛菊・璃奈
WIZ

ピンポンダッシュって、随分変な召喚方法だね…それで喚ばれる邪神も邪神だけど…。

「ピンポン!」
「卓球!」
「越後製菓!」

それは大分違うと思うよ…。

「安眠妨害!」
「家事の妨げです。メイドは怒ります」
「これはお仕置きしかないです!」

妙にみんなやる気だね…。

メイド6人引き連れて参加…。
とりあえず、召喚に必要なピンポンが特定できてるなら、その家の人にUDC組織の力と【催眠術】で協力して貰って、ピンポンに【呪詛、全力魔法、高速詠唱】で悪意を持って押した瞬間に呪詛で呪縛する罠を設置し捕獲するよ…。

「悪党をこらしめろー」
「おー!」×仕込み箒持ったメイド達

…程々にね?

※アドリブ等歓迎


アイ・リスパー
「なるほど、無限次元ヒルベルト空間上で波動関数に作用素を適用して邪神降臨状態に収束させるのを現実空間に射影すると、このピンポンダッシュになるのですね」

【チューリングの神託機械】を発動して万能コンピューターで分析をおこない、邪教徒たちの高度な理論に驚愕します。
なんという天才的理論なのでしょうか!

ですが、理論さえ分かれば、次にピンポンされる呼び鈴が計算可能です!

理論に基づいて次にピンポンされる呼び鈴に張り込みます。
(電柱の影でパンと牛乳片手に)

「現れましたね、逃がしませんっ!
……はうっ!」

ピンポンしてダッシュしていく犯人を追おうとして、運動音痴のため何もないところで転んでしまうのでした。



●予測せよ、さすれば道は開かれる
 さて、情報を集める方法は数を集める以外にもある。
 今までの情報を統合して、次のピンポンダッシュされそうな場所を予測するのだ。
 場所さえ分かれば、張り込むなどして対処が出来る。

 顔をつきあわせていたのは、三人の猟兵。
 彼女らの目の前には、大きく地図が広げられていた。
 綺麗な青い翼を持つドラゴニアンの猟兵は、レイニーア・ノックス。
 地図を眺めて、ピンポンダッシュされた場所を見て考え込んでいる。
 銀色の瞳に銀の髪、銀の耳と尾を持つ妖狐の猟兵は、雛菊・璃奈。
 璃奈の後ろには、何故かメイドが六人ほどいてやいのやいのと話していた。
 白い髪に赤い瞳を持つ、バーチャルキャラクターの猟兵はアイ・リスパー。
 電脳魔術師として空間投影を行い、何事かを計算しまくっている。

「電脳空間への接続を確認。万能コンピューターへログイン。オペレーション開始します」
 アイはチューリングの神託機械を用い、演算能力を底上げする。
 宙に浮かぶは無数のホログラム。
 描かれているのは、数式にグラフに三次元モデル。
 アイは手元のキーボードを叩きながら、空間投影されたホログラムでいくつものプログラムを走らせる。
「なるほど、無限次元ヒルベルト空間上で波動関数に作用素を適用して邪神降臨状態に収束させるのを現実空間に射影すると、このピンポンダッシュになるのですね」
 まるで呪文のような言葉を紡ぎながら、アイは深く感動した。
 今まで起きたピンポンダッシュの場所を分析し、ピンポンダッシュに用いられた理論を逆算して導き出したのだ。
「なんという天才的理論なのでしょうか!」
 めくるめく数学的理論の世界。
 理論さえ分かってしまえば、次にピンポンされる呼び鈴は導き出せる。
 という訳で改めて計算し直す。
「……ん? ちょっと多いですね」
 アイは現われた結果を見て首を傾げた。
 次にピンポンダッシュが行われる地点は、同時に複数箇所あった。
 地図の上に予測地点がいくつかマークされる。
「それだと……」
 レイニーアが地図の上にペンで印をつけていく。
 予測地点と過去に起きたピンポンダッシュの地点を結び、図形が作られていく。
「これまでされたのを図形として結びつけると、次はここみたいね」
 レイニーアが一つの予測地点に丸をつける。
 どの予測地点からも等距離な位置にある、中心地点らしき場所だった。
「確かにそこから始めるのがありそうですね」
 アイは大きく頷いた。
「どうする……? そこに張り込む……?」
 璃奈が言うと、アイとレイニーアが頷いた。
「私はここで張り込みます!」
「私も同じく」
「じゃあ、わたしは他の場所に張り込むね……」
 璃奈は地図の予測地点のいくつかに印をつけた。
「ほとんど同時なら、こっちにも来るはずだから……」
「そうですね、お願いします」
「じゃあ、頑張って捕まえましょう」

 かくして情報を得た猟兵たちは、各々張り込む場所へと向かう。

 まずは最初に張り込んだレイニーアとアイ。
 アイは由緒正しき張り込みスタイルとして、パンと牛乳を片手に電柱の裏に。
 レイニーアもアイから貰ったパンと牛乳を頂いて張り込んでいた。
 暫くすると、全身黒ずくめの見るからにアヤシイ奴が二人やってきた。
 周囲を確認し、人が居ないことを確かめた後、呼び鈴をじっと見つめている。
「ここで良いんだっけ?」
「俺たちの分はここ。だからオーケー」
 黒ずくめの男たちは顔を見合わせ頷いた。
 人差し指がじわじわと呼び鈴へと近づいていく。
 そこに、アイとレイニーアは姿をばっと現した。
「現われましたね、逃がしませんっ!」
「止まりなさい。容疑が有るわよ!」
 まさか張り込みをされているとは思っていなかったピンポン犯は驚いた。
「マジ? 人が居るとか聞いてないぜ」
「一旦逃げるぞ!」
 ピンポン犯は脱兎の如く駆けだした。
「待ちなさ……はうっ!」
 追いかけようとしたアイは、運動音痴が災いして何もない所で転んでしまった。
 しかし張り込みをしていたのはアイだけではない。
「逃がさないわよ!」
 レイニーアがドラゴンオーラを放つ。
 オーラはピンポン犯に命中すると、爆発した。
「グワーッ!」
「チイッ! 縛られた!?」
 ドラゴニアン・チェイン。
 ドラゴンオーラは爆破した後に、互いをオーラの鎖で繋ぐのだ。
 物理的な鎖ではないため、抜け出そうにも抜け出せない。
 レイニーアがぐいぐい鎖を引っ張って、ピンポン犯はあっけなく捕まった。

 一方そのころ。

 別の場所で張り込む璃奈は、ふと不思議そうに呟いた。
「ピンポンダッシュって、随分変な召喚方法だね……それで喚ばれる邪神も邪神だけど……」
 何故ピンポンダッシュで邪神召喚が出来るのか。余りにも近代的である。
 璃奈の呟きに、周囲にいたメイドたちもやいのやいのと反応した。
 ……そう。メイドである。メイドが六人、居るのである。
 三人×二隊。過去に彼女がアルダワで出会ったメイド達である。
「ピンポン!」
「卓球!」
「越後せい――」
「それは大分違うと思うよ……」
 ping-pongで盛り上がるのはラン、リン、レン。
「安眠妨害!」
「家事の妨げです。メイドは怒ります」
「これはお仕置きしかないです!」
 妙にやる気なメイド達は、ミア、シア、ニア。
 璃奈は頬を掻きながら、じっと待っていた。
 既に彼女は仕込みを終えていた。
 ピンポンそのものに、悪意を持ってピンポンする奴を呪縛するという罠を仕掛けたのだ。
 あとは引っかかるのを待つばかり。
「ギョエエエエエエエ!」
「あ……引っかかった……」
 何やら凄まじい悲鳴が聞こえ、璃奈は立ち上がる。
 六人のメイドたちは、もうやる気満々に仕込み箒を振り回していた。
「悪党をこらしめろー」
「「「「「おー!」」」」」
 かけ声と共にメイドたちは走り出す。
「……程々にね?」
 璃奈の言葉は果たして届いたか否か。
 遅れて璃奈がたどり着くと、そこには箒でツンツンされながら涙を流す男がいた。
 その男の頭は、見事なまでに蛙であった。
「捕まえた!」
「捕縛!」
「逮捕!」
 璃奈が来た事に気付いて、ラン、リン、レンはふんすと胸を張る。
「……蛙の頭!」
「コスプレでしょうか? メイドは訝しみます」
「本物の蛙の頭です!」
 一方ミア、シア、ニアはカエルヘッドをじっくりと見聞していた。
 メイドたちはやいのやいのと盛り上がり、璃奈は苦笑する。
「取りあえず、連れて行こう……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カラコブ・ガラズィマ
ピンポンダッシュの説明を聞く限り邪教徒共に利が大きいですねぇ。
どこに出るか、いつ来るかも分からないと中々つらいものが有りますし、ここはUDC組織の方々に泣いてもらいましょう。

消防用斧で家々の呼び鈴を粉砕しながら街を練り歩きます。
ポリスメンとキレた住人の相手をUDC組織に押し付けながら!邪教徒共よ、私がアナタを止めつのではない、アナタ達が私を止めるのですよぉ!


四季乃・瑠璃
【チェイン】で分身

緋瑪「ピンポンダッシュしてるのって邪神の眷属なんだよね?それなら、ピンポンの前に感知式ボム仕掛けて全部爆殺すれば良くないかな?」
瑠璃「それ、一般人も爆殺しちゃうよね」

とりあえず、UDC組織に協力して貰って、邪神召喚に必要なピンポンがある場所一帯の道路を工事名目で一般人立ち入り禁止の看板で封鎖。
封鎖した道路やピンポン(家)の前に生成した遠隔式ボムを大量に敷設。
封鎖しても強引に入ってピンポンダッシュしようとする眷属を狙い撃ちして敷設したボムを次々起爆して吹き飛ばしてあげるよ。
それでも決行する根性ある眷属は【ダッシュ】と大鎌の機巧を使って高速機動で追いかけて拘束、または始末するよ



●ピンポンの不在証明
 はてさて、そもそも何故ピンポンダッシュが起きるのであろうか。
 そこにピンポンがあるからである。
 ――そう考えた猟兵たちも居た。

「ピンポンダッシュの説明を聞く限り邪教徒共に利が大きいですねぇ」
 顎を擦りながら、カラコブ・ガラズィマは呟いた。
「どこに出るか、いつ来るか分からないと中々つらいものが有りますね」
「それは確かにそうだよね」
 カラコブの言葉に、四季乃・瑠璃が頷いた。
 彼女の隣には、鏡写しのように似通った姿の、四季乃・緋瑪が居た。
「ピンポンダッシュしてるのって邪神の眷属なんだよね? それなら、ピンポンの前に感知式ボム仕掛けて全部爆殺すれば良くないかな?」
「それ、一般人も爆殺しちゃうよね」
「確かに……」
 瑠璃と緋瑪は顔を見合わせ、考え込んだ。
「……逆に考えましょう」
「と言うと?」
 カラコブの言葉に、瑠璃が顔を上げる。
「一般人が入ってこられない場所を作ればいいのです」
「なるほど、封鎖してみるのは良いかも」
 緋瑪が地図を取り出しつつ、UDC組織へと連絡した。
 猟兵のホットライン。
 UDC組織は猟兵を全面的にバックアップするという決まりである。
「もしもし? わたし、四季乃・緋瑪っていう猟兵なんだけど、協力をお願いして良いかな?」
 UDC組織の主なバックアップ内容。
 第一に交通手段の確保。
 第二に滞在中の優雅な生活。
 第三に……民間人の情報統制である。
「……はい、了解でーす。はーい」
「緋瑪、どうだった?」
「封鎖してもいいけど、あんまり広くは出来ないってさ」
 言いながら、緋瑪が地図に線を引く。
 UDC組織が封鎖できる範囲である。
「……と言うか、UDC組織に泣いて貰えるなら、私はアレをしましょう」
「アレって?」
「ピンポンが有るからピンポンダッシュが起こるのです。ならば……」
 カラコブは輝く笑顔で言い放つ。
「呼び鈴を壊してしまいましょう」

 こうして彼らは方針を打ち出した。
『ピンポンに触らせなければいいじゃん』と。

 ――猟兵たちが方針を決めた暫し後のこと。
 街は混乱に見舞われ、大騒ぎになっていた。
「はっはっは!」
 混乱の中心に居るのは、カラゴフだった。
 消防用斧を持った彼は、街中でそれを振るう。
 振った先に残るのは、家々の呼び鈴の残骸ばかり。
「警察だ! 止まれ!」
「テメェー! ピンポンぶっ壊してんじゃねー!」
 出動してきた警察や、呼び鈴破壊の被害者諸兄が必死の形相でカラゴフを追う。
「止まれと言われて止まる者がありますか!」
 カラゴフは哄笑しながら街を走る。
 元より一般人が猟兵の身体能力に敵うはずも無い。
 加えて、UDC組織が行く先々でカラゴフの追手を妨害していた。
 バナナの皮を撒く、ゴミをばらまく、路上パフォーマンスを始める……などなど、涙ぐましいUDC組織の者たちの努力により、一般人は立ち往生してしまう。
 それでも追ってくる者は……
「我々の儀式を邪魔するな!」
 黒ずくめの男たちであった。
「はっはっは! 目論み通り!」
 カラゴフは呵々と笑う。
 そう。カラゴフが邪教徒を止めるのではない。
 ピンポンを破壊すれば、儀式は立ちゆかなくなる。
 従って、邪教徒がカラゴフを止めにやってくるのである。
「そちらが追ってくれるのであれば、話は簡単!」
 カラゴフは急に反転して、黒ずくめの男たちに向かっていく。
「神妙にお縄につきなさい!」
「なっ!」
 ムキムキキマイララリアットが炸裂する。
 身体能力に自信のあるカラゴフが、姿を現したピンポン犯を取り逃す訳もなかった。

 一方そのころ。

「向こうはもう動いてるみたいだね~。SNSで色々流れてくるよ」
「じゃあそろそろこっちにも来るかもね」
 そこそこ高いアパートの屋上に立って、瑠璃と緋瑪が街を見下ろしていた。
 瑠璃たちはUDC組織に協力してもらい、一定の区画を封鎖していた。
 一般人立ち入り禁止の看板で作り上げた、現代的結界である。
 こうして一般人が入ってくる危険性を取り除いたあと、封鎖した道路やピンポンの前に、いくつもの遠隔式ボムを敷設していた。
 あとは邪教徒がやってくるのを待ち、爆破するだけ。
「あ、何人か来たよ」
「ホントだ。一般人じゃないよね、アレ」
 わざわざ一般人立ち入り禁止の看板を乗り越えて、黒ずくめの男たちがやってきた。
 彼らが目指しているのは、ピンポン。
 一直線に呼び鈴目指して走っていた。
「よーし、花火大会の始まりだ♪」
 緋瑪の言葉を皮切りに、封鎖区画内でいくつもの爆発が起き始めた。

 BOOOOOOOOOOOM!!!

 黒ずくめの男たちが、あちらこちらに吹き飛んでいく。
 緋瑪と瑠璃は、屋上から街を見下ろす。
 爆発、こんがり焼けた男たち。
 そして未だピンポンダッシュを諦めない男たち。
「ウオオオオオオオオオオオ!! 押せェェェェェェェ!」
「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 男たちの暑苦しい声が、屋上まで届いてくる。
「うーん、根性あるな」
「アレはもう、わたし達がキッチリ始末するしかないんじゃない?」
「だねえ……よし、いこう」
 二人の四季乃は立ち上がり、大鎌を取り出した。
 大鎌に、魔力を編んで作り出したジェノサイドボムをセットする。
 そして大鎌の機巧を起動。
 バン、とボムが爆発し、機巧がその威力を全て推進力へと変えていく。
 結果として、凄まじい速度での移動を可能にする。
 屋上から飛び立った彼女たちは、すぐに男達の元へとたどり着いた。
「なっ、何だお前達!」
「邪魔をするな!」
 カエルヘッドの男達は、突如現われた瑠璃と緋瑪に驚いた。
 驚いたが故に、反応が遅れた。懐に手を入れようとしてしまった。
「おっと♪」
「させないよ」
 男達が動く前に、大鎌が斬と振るわれる。
 鮮やかな切り口で、カエルヘッドと胴体が泣き別れになった。
「始末しちゃったけど、まあいいか♪」
「他の人が捕まえててくれてるよ、きっと。取りあえず一旦戻ろう」
「そうだねぇ」
 瑠璃と緋瑪は頷き合い、その場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『エージェント・アマガエル』

POW   :    はねかえる
【強靭な肉体 】による素早い一撃を放つ。また、【あらかじめ跳ね回る】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    いろいろつかえる
いま戦っている対象に有効な【エージェントひみつ道具 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    死亡フロッグ
自身の【死亡フラグをつい立ててしまう言動 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
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●カエルヘッドはかく考えたり
 猟兵たちに捕まったピンポン犯は、どれもこれもカエルヘッドだった。
 その名もエージェント・アマガエル。
「……むぐぐぐ! 儀式が失敗してしまう!」
「どうしろってんだ。人数が足りないだろ」
 未だ捕まらぬエージェント達は、各々憤激しながら議論していた。
 議論の中心点は一つ。
『これじゃ邪神が召喚できないんじゃないか?』
 もしそうだとすれば、何のためにピンポンダッシュをしてきたのやら。
 雨の日も晴れの日も、ピンポンダッシュに明け暮れていた、あの愚かで哀れながらも輝かしき日々の意味とは一体!

「……こうなれば、俺たちを妨害する猟兵を妨害するしかない! 目には目を! 歯には歯を! 妨害には妨害を! BO! U! GA! I!」
「日本語でOK」
「猟兵たちを倒すんだよォー!」
「なるほど一理ある」
 エージェント達は顔を見合わせて頷き合う。
 猟兵を倒してしまえば、改めてピンポンダッシュをすることも出来よう。
 もう一度邪神の儀式を仕切り直すことも出来るはずだ。
「それじゃあ行くぞ、我らの未来の可能性のために!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 かくしてエージェント達はアジトからゾロゾロ溢れ出てきた。
 猟兵とエージェント達の戦いの幕が、今切って落とされた!
四季乃・瑠璃
【チェイン】で分身

緋瑪「カエル男がゾロゾロと…何処にあんなにいたんだろう…」
瑠璃「っていうか、今までよく騒ぎにならなかったね、この人(?)達」
緋瑪「でも、そっちが実力行使なら、こっちも実力行使でいくしかないよね!」
瑠璃「まぁ、最初から実力行使してた気がするけど気にしない方向で」

二人掛かりで【範囲攻撃、早業】接触式ボムをばら撒いて敵集団を大量爆破。
生き残りや分散した敵を瑠璃がK100による【早業、ドロウ】での銃撃、緋瑪が【ダッシュ】と機巧を利用した大鎌による斬撃で殲滅していく

緋瑪「MIBとかSCPのエージェントみたいな格好だね…実力は微妙だけど」
瑠璃「007ではないね。蝶ネクタイじゃないし」



●エージェント・アマガエル
「カエル男がゾロゾロと……何処にあんなにいたんだろう……」
「っていうか、今までよく騒ぎにならなかったね、この人(?)達」
 四季乃・瑠璃と緋瑪が、溢れ出てきたエージェント達を見て呟いた。
 どこか呆れの混ざる呟きである。
 彼らは帽子を脱ぎ捨てカエル頭を隠さず、ゾロゾロと歩いている。
 その様子は、何というか、B級映画のような感じだ。
 彼らの服がピシッとしたスーツ姿なのも、ある意味では違和感を増している。
「でも、そっちが実力行使なら、こっちも実力行使でいくしかないよね!」
「まぁ、最初から実力行使してた気がするけど気にしない方向で」
 そう言うと、瑠璃は魔力を集中させた。
 魔力が体内を駆け巡り、身体能力を引き上げる。
「絆が私の力……私達の絆は誰にも負けない」
 チェイン・シスターズ。
 戦闘力を爆発的に増大させた、二人で一人の殺人姫だ。
「じゃ、行こう」
「オッケー♪」
 二人は魔力を編み上げて、ジェノサイドボムを作り出す。
 接触式に設定して、詠唱を早めて複数作り上げて。
 二人がかりで、エージェントの群れにボムをばらまいた。

 BOOOOOOOOOOOM!!!

 その爆発が、戦闘開始の合図となる。
「な、なんだ!?」
「チイッ! もう来ている奴がいるらしい!」
 爆発はエージェント達を吹き飛ばし、いくつかのグループに分断した。
 全滅はしておらず、まだ生き残りが沢山居るようだ。
「瑠璃、わたしが前に出るよ」
「分かった。後ろから援護するね」
 緋瑪は大鎌にボムをセットし、機巧を起動して超高速でエージェント達に突っ込んでいく。
 瑠璃は拳銃を取り出して、ばらけたエージェント達を狙い撃っていく。

 二人で一人の殺人姫。
 二人の攻撃は、完璧と言っていいほど息が合っていた。
 銃弾に気をつければ、大鎌の斬撃が飛んで。
 大鎌を避けていれば、銃弾が頭を撃ち抜いてくる。

「チイッ、エージェントひみつ道具を見よ!」
「俺たちにはこれがある!」
 エージェントが懐に手を入れて、何かを取り出す。
 いろいろつかえる、エージェントひみつ道具。
 場合に応じて姿形を変えるそれは、今回はこぶし大の球体だった。
「これは……!」
「煙玉だァーッ!!」

 ぼん、と煙が舞い上がり、戦場が白に埋め尽くされる。

「成程ねえ。見えなきゃ攻撃は当てられないって?」
 煙の中で、緋瑪はにやりと笑う。
「でも条件はお互いに同じ。相手も、こっちを捉えられない」
 煙の外で、瑠璃は真っ直ぐ煙を見つめる。

「しまったァーッ! 隠れても反撃できないじゃないかァーッ!!」
「どうするんすか、無闇に撃ったら同士討ちですよ」
 エージェントの悲鳴が煙の中から聞こえる。
 目に頼って戦うモノは、目を封じられたら動けなくなる。
 しかし。

 斬、と大鎌の斬撃が、煙の中を掻き乱す。
 カエル頭が飛んでいき、水っぽい音を立てる。
 或いは銃弾が煙を突き抜け、身体を貫いていく。
「目を使わなくても、場所は分かるんだよ」
「魔力で探知は出来るからね」
 二人の四季乃は笑う。
 チェイン・シスターズで戦闘力が向上した二人にとって、魔力を用いての探査など造作もない事だった。

 銃弾と斬撃が舞う。
 煙の有無など関係為しに、エージェント・アマガエルはなぎ倒されていく。
「にしても、MIBとかSCPのエージェントみたいな格好だね……実力は微妙だけど」
「007ではないね。蝶ネクタイじゃないし」
 瑠璃と緋瑪は笑い合い、再び戦場で舞い踊る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
「蛙男!」
「蛙は確か食材になったハズ。メイドは思案します」
「蛙料理?」

流石にそれはやめて…

「ご主人!」
「準備!」
「完了!」

ん…それじゃ、みんな行こうか…。無理しない様にね…。

「とつげきー!」
「おー!」×メイド達

メイド達には暗器による【暗殺】と【居合抜き】で互いを支援しながら攻撃を指示…。
自身は黒桜による呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で一気に敵集団を吹き飛ばし、呪詛で侵食しつつ、【狐九屠雛】の霊火で追撃して凍結させていくよ…。
まぁ、早めに降参してくれると嬉しいかな…。
これでもまだ手加減してる方だし…。
あ、わたしの家族を傷つけようとする相手には…容赦、しないよ…?

※アドリブ等歓迎



●カエル料理……?
 燃え上がる戦場に、雛菊・璃奈とメイドたちが足を踏み入れる。
「蛙男!」
「蛙は確か食材になったハズ。メイドは思案します」
「蛙料理?」
 ミア、ニア、シアが、燃えたり斬られたエージェント達を見て騒ぐ。
 確かにカエル料理は存在する。
 しかしエージェントたちは、頭がカエルなだけ。
 頭より下は人の身体……
「流石にそれはやめて……」
 璃奈が言うと、ミアたちはしょんぼりした。
 大人しく戦いの準備を整えて、今度はラン、リン、レンが前に出る。
「ご主人!」
「準備!」
「完了!」
 皆仕込み箒を掲げて、元気よく胸を張っている。
「ん……それじゃ、みんな行こうか……無理しない様にね……」
「了解! とつげきー!」
「「「「「おー!」」」」」
 かけ声と共に、メイドたちは武器を掲げて走り出した。

「なんだなんだ、今度はメイドか?」
「可愛いなァ……」
「いやおい気を抜くな、メイドは強いって昔から決まってるぞ」
 駆けてきたメイドを見て、エージェント達は対処をしあぐねていた。
 手に持っているのは一見して箒。他に武器らしき物は無い。
 しかし。
「暗器!」
「暗殺!」
「不意打ち!」
 メイドたちは袖を振り回す。
 そこから現われたるは、殺意高めの暗器。
 ワイヤー、ナイフ、その他様々な暗殺用武器が飛び出した。
「グワーッ!?」
「気をつけろ、こいつら普通に強い……ッ!?」
 キラリと刃が輝いて、仕込み箒から居合い抜きが放たれる。
 見事腕が一刀両断され、エージェントたちは怯んだ。
「仕込み箒もあるよ!」
「居合抜きはメイド必修科目です。メイドは教えます」
「これは蛙男の刺身なのでは……?」
「だから、料理はだめ……」
 璃奈は槍を抜きながら、メイド達に言葉を返す。

 呪力が籠められた薙刀状の呪槍。
 黒桜と名付けられたその槍は、黒い桜の花びらのように、呪力を零していた。

「行くよ……!」
 轟、と璃奈が槍を振り回す。
 呪力が解放されて、桜の花びらが舞い散って空気を纏う。
 黒き花びらは渦のように巡り、凄まじい衝撃波を伴ってエージェント達を襲う。

「範囲が広すぎる!」
「固まるな! 散開しろ!」
 エージェント達は叫び、飛び跳ねて回避する。
 回避できなかったエージェントは、衝撃波を受けて壁に叩き付けられていく。
「チィッ……俺、家に帰ったら家族が待ってるってのに……!」
 一人のエージェントが、悔しそうに唇を噛む。
「バカ! やめろ! それ以上発言するな!」
「家に帰ったらサラダを食べたい……」
 瞬間、そのエージェントの後ろに死神が立った。
 ――ような、幻覚が見えた。
 彼らエージェント・アマガエルは、死亡フラグを立てる癖があるらしい。
 しかし代わりに、彼らは力を得る。

 死亡フラグを立てる事で戦闘力を底上げする、死亡フロッグ!

「ウオオオオオオオオ!」
 力を得たエージェントが飛び跳ねて、璃奈を襲う。
 璃奈は槍を構え、真っ直ぐとエージェントを見据える。
 何処に槍を放つか。放たれるか。
 いつ振るうか。どう振るうか。
 フェイントを交えた刹那の読みあいが、二人の間で交わされる。
「そこだっ!」
 エージェントが跳ねて、璃奈の懐に潜り込もうとする。
 超接近戦なら、槍の長さは逆に不利になる。
 それならば、と一縷の望みをかけた行動だ。
 だが。

「魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」

 急に周囲の温度が下がったような気がした。
 否。気がした、ではない。実際に下がったのだ。
 深く蒼い、そしてどこか不気味な炎が、璃奈の周りにいくつも浮かび上がった。
 九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】。
 触れるモノ全てを凍てつかせる、絶対零度の炎だ。
 地獄の最下層と同じ名を貰ったその炎が、エージェントへと反撃する。
 術さえ展開できれば、超接近戦だろうと、関係は無い。

「かっ……!!」

 炎がエージェントの熱を奪いきって、氷のオブジェを作り上げる。
 そのオブジェは、紛うことなく、璃奈の力を示す彫像となった。
「早めに降参してくれると嬉しいかな……」
 怯むエージェント達に、璃奈は言う。
 だが、エージェント達は首を縦には振らなかった。
「俺たちにも目的がある!」
「未来を……! 俺たちの可能性を……手に入れる!」
「戦うなら……仕方ないかな……」
 璃奈は再び槍を構え、エージェント達を見返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
「くっ、これ以上、ピンポンダッシュなどという非人道的儀式を行わせるわけにはいきません!」

通販で買ったゲームの宅配だと思って喜び勇んでピンポンに出てみれば、誰もいなかった時のあの絶望感。

お風呂に入っているところにピンポンされて、バスタオル一枚で慌ててインターホンに出てみれば、誰もいなかったというあの虚脱感。

これ以上、人々にピンポンダッシュによる不幸を味わわせはしません!

【マックスウェルの悪魔】で氷の弾丸を生成して攻撃します。
蛙なら寒さに弱いはず!

「くっ、秘密道具ですかっ!」

氷を防ぐ秘密道具を出されたら、身体能力に劣る私の方が不利です。

なんとか秘密道具の弱点を探らなければ……!

アドレス大歓迎


レイニーア・ノックス
pow

連携、アドリブ大歓迎

素早く動いても【オーラ防御9】【勇気4】、【残像4】、【覚悟1】を用い防いだり、回避したりして、コードで動きを封じていく。
『なかなか早いけどまだいけるわ!』
そして、敵が隙を晒したところに【串刺し8】、【力溜め5】、【属性攻撃4】、【怪力3】、【範囲攻撃2】、【見切り1】、【衝撃波1】を用いてドラゴンランスに敵に有効そうな属性攻撃(イメージとしては氷)を付与し敵の動きを見切りつつ、冷気の衝撃波範囲攻撃を仕掛けていく。
『カエルならこれはどう!』



●冷えたり茹でたり
「くっ、これ以上、ピンポンダッシュなどという非人道的儀式を行わせるわけにはいきません!」
 エージェント・アマガエルの出現報告を聞き、アイ・リスパーは街を走っていた。
 目指すは、エージェント達と猟兵が戦っている戦場。
 アイの頭の中では、ピンポンダッシュに関する数々の苦い思い出が浮かんでいた。

 通販でゲームを購入する。
 喉から手が出るほど欲しくて、一日千秋の思いで宅配を待ち続ける。
 そこに、ピンポンピンポーンと音が鳴る。
 そう言えば今日は、宅配予定日ではなかろうか、と思い出し。
 喜び勇んでピンポンに出てみれば――
 ――そこには誰も居ない。希望が転じて絶望となる。

 或いは。

 お風呂に入ってゆっくり湯船に浸かっている時。
 暖かなお湯が全身を温めて、心地良い感覚が身を包む。
 そんな時に、ピンポンピンポーンと音が鳴る。
 大事な要件かも知れないと、慌てて湯船から出て。
 とりあえずバスタオル一枚巻いて、ピンポンに出てみれば――
 ――そこには誰も居ない。膝から崩れ落ちるような虚脱感。

「これ以上、人々にピンポンダッシュによる不幸を味わわせはしません!」
 決意に満ちた表情で、アイは拳を握る。

 その隣を、レイニーア・ノックスも走っていた。
 レイニーアには、アイの考えていた事は分からない。
 通販で買ったゲームの宅配だと思って出たら誰も居ない絶望感や、お風呂に入っているところにピンポンされて慌てたことなどは、分からない。
 しかし、アイが並々ならぬ決意を抱き、ピンポンダッシュの犯人を倒そうとしている事は分かった。
 だから、レイニーアはアイに向かって頷いた。
「急ぎましょう。どうにかして止めなくては」
「はい!」
 アイもまた、頷いた。

 猟兵とエージェント達の戦場は、中々すごいことになっていた。
 爆発や煙の跡。いくつかの蛙の氷のオブジェ。
 ちょっと前衛芸術的な趣がある。
「氷……確かに、蛙なら寒さに弱いはず!」
 アイは即座に空間投影を行い、プログラムを引き出した。
「エントロピー・コントロール・プログラム、起動します!」
 いくつかの計算式が浮かび上がり、演算を開始する。
 マックスウェルの悪魔。
 エントロピーに反する悪魔の名を与えられたそのプログラムは、アイの周囲の熱を掌握した。
 アイは更にプログラムを動かした。
 熱はどんどん下がり、水蒸気が氷の弾丸となって凝り、アイの周囲に浮かぶ。

「なるほど、氷の弾丸……」
 それを見ていたレイニーアは、小型のドラゴンを懐から出した。
 30cmほどの小さなドラゴンは、レイニーアの手の中で形を変える。
 現われたのは、竜騎士の槍。
「私があいつらを止めるわ、だからそれで狙って」
「はい、分かりました!」
 アイが頷いたのを見て、レイニーアはエージェントの群れへと突っ込んだ。
 オーラを全身に張って防御に回し、覚悟を決めて前を見据えて。
「新手だ! 今度は竜の……!!」
「データがねぇ! 見てから対応しろ!!」
「そんな無茶な!?」
 エージェント達は素早く飛び跳ねて、レイニーアを攪乱しようと図る。
 だが、レイニーアもまた早かった。
「止まれ!」
 手から竜を象ったドラゴンオーラを放ち、エージェントにぶつける。
 ドラゴニアン・チェインだ。
 着弾したオーラが爆発して、更に互いをオーラの鎖でつなぎ止める。
「何ッ……!?」
 鎖で縛られてしまえば、どれだけ素早くとも関係無い。
 行動を著しく制限されたエージェントは、そこで氷の弾丸に撃ち抜かれた。
「ぴぎゃっ」
 ひんやりどころではない低温の弾丸で、蛙は意識を失った。
「よし、次行くわよ!」
 レイニーアはオーラの鎖を切り離し、再び飛ぶ。
「なかなか早いけどまだいけるわ!」
 ドラゴニアン・チェインを使いこなし、レイニーアはエージェントたちの動きをどんどん封じていく。
 そして、彼女が使うのはオーラだけではない。
「ウオオオオオオオオ!」
 オーラを避けてレイニーアに突っ込んできたエージェントがいた。
 だが彼が見たレイニーアは、彼女の残像に過ぎない。
「ッ?!」
「カエルならこれはどう!」
 ドラゴンランスに氷の属性を乗せて、レイニーアはなぎ払う。
 冷気が乗った衝撃波が、エージェントを吹き飛ばす。
「グワーッ!!」

「……エージェントひみつ道具だ!」
「俺たちは寒さには勝てねえ……今こそ道具が要る……!」
 氷を使いこなすアイとレイニーアを見て、エージェントたちは懐に手を突っ込んだ。
 いろいろつかえるエージェントひみつ道具。
 今回の姿は……
 銀色の小さな水筒のような見た目をしていた。
「湯たんぽ。湯たんぽじゃないこれ?」
「暖かい……暖かいけどこれでいいのか」
 半信半疑でエージェント達は湯たんぽを抱え込む。
 その湯たんぽは、謎の物理現象によって、エージェント周囲の空気を暖めるのだ。
 冷気なんて何のその。
 アナタの暖かく快適な戦場ライフをサポートします。

「くっ、秘密道具ですかっ!」
「冷気が効かなくなった……」
 アイとレイニーアはエージェントから距離をとった。
 見た目は湯たんぽという極めて気の抜ける外見をしているが、それでもひみつ道具。謎のパゥワーにより氷や冷気が効かなくなっていた。
「どうする? こうなると、数が多い相手の方が……」
「そうですね……なんとか秘密道具の弱点を探らなければ……!」
 アイは必死にプログラムを動かして、エージェント達を観察する。
(どうやらアレも、周囲の熱をコントロールしているみたいですね……それ以外は普通の湯たんぽでしょうか)
 そこでアイは、はたと考えつく。
 冷気をぬくもりに変えるからといって、ぬくもりを冷気に変えるわけではない。
 行きすぎたぬくもりは熱となり、今度は生命に牙を剥く。
 タンパク質の変質する温度はおおよそ60℃。
 人体なら42℃で致命的になる。
「よし、レイニーアさん、炎は使えますか?」
「炎? 出来るわよ」
 なら、とアイはエージェント達を指さした。
「あいつらをゆで蛙にしちゃいましょう!」

「お、あいつらまた来ましたよ」
「今度は冷気なんて効かない……さてどうする……」
 レイニーアがドラゴンランスを構えて、エージェント達へと突撃する。
 エージェント達はカエルの如く飛び跳ねて、拳を叩き込む瞬間を伺った。

「止まれ!」
 レイニーアは再びドラゴニアン・チェインでエージェント達を止める。
「チィッ、だが鎖で繋がろうとも、もう氷なんぞ効かん!」
 エージェントはレイニーアへと突っ込んだ。
 鎖で繋がっている以上、逃げることは出来ない。
 だが接近は可能だ。
「じゃあ今度は……」
 レイニーアはドラゴンランスに、炎の属性を乗せた。
 竜と言えば、炎。ドラゴンランスが、赤々と熱を持って輝き出す。
「こんなのはどう!」
 轟、とレイニーアがなぎ払う。
 灼熱が籠もった衝撃波が、エージェントを襲う。
「熱っ……熱い!?」
「更に追い打ちです!」
 アイも炎の弾丸を作り出し、エージェント達を撃ち抜いていく。

 ひみつ道具湯たんぽ。
 寒さを暖めて、ぬくもりある戦場ライフを作る道具だ。
 その道具に、暑さを涼しさへと変える機能などなかった。

「グワーッ!」
「熱いッ……!」
 灼熱がエージェント達を襲い、燃やしていく。
 湯たんぽが爆発し、辺りに熱湯を撒き散らす。
 熱に耐えられなかったエージェントたちは、煙を上げてゆで蛙に変貌した。
「よし、これなら行ける!」
「まだ残ってるみたい。もうひと頑張りしましょう」
「はい! ピンポンダッシュ許すまじ!」
 アイとレイニーアは、エージェント達を追って戦場を駆ける……

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
うわ、カエル人間がいっぱいやってきた!

というか大の大人がいっぱい集まって
やってることがピンポンダッシュなんて
情けないと思わないのか!?
子供に胸張って誇れる生き方をしようと思わないのか!?

【蝗害】発動!

強襲兵の皆さん!今から俺がアイツらの前で
【ダンス】と【パフォーマンス】と【誘惑】で
棒術の演武を見せながら名乗りをして注意を引き付けるので
皆さんはアイツらのズボンのベルトをちぎれる寸前まで噛んで
アイツらが動き出そうとしたら噛み千切ってください!
落ちたズボンにひっかかってこけたところをふん縛ってやります!



●神妙にお縄につけ
「うわ、カエル人間がいっぱいやってきた!」
 さながら奇妙なB級映画。
 カエル頭にピシッとしたスーツ姿の男達の大群が、猟兵と戦っている。
 その様子を見て、黒影・兵庫は驚きを隠せない。

 そして、よく隠れてたとか、見た目が凄いとか色々思う。
 色々思うが、兵庫にはとても言いたいことがあった。

「というか大の大人がいっぱい集まって、やってることがピンポンダッシュなんて!! 情けないと思わないのか!? 子供に胸張って誇れる生き方をしようと思わないのか!?」
 兵庫は憤る。
 ピンポンダッシュする時間があれば、もっと他にやれることはあっただろう。
 なのに何故ピンポンダッシュなのか。
 理解できないカエル男達に憤り、兵庫は戦場へと走る。

「強襲兵のみなさーん! こちらでーす!」
 兵庫は戦場に向かいながら、羽虫を召喚する。
 見た目はただの羽虫なれど、その歯は鋼鉄さえもかみ砕く。
 蝗害。その名に相応しく、戦闘力の高い『強襲兵』である。
「強襲兵の皆さん! 今から俺がアイツらの前で棒術の演舞を見せながら、名乗りをあげて注意を引きつけるので、皆さんはアイツらのズボンのベルトをちぎれる寸前まで噛んで、アイツらが動き出そうとしたら噛み千切ってください!」
 兵庫が言うと、羽虫たちは承諾の意を示した。
「ありがとうございます! あとは、俺が落ちたズボンにひっかかってこけたところをふん縛ってやります!」
 普段用いる武器に加えて、縄を持ち出して。
 兵庫は、戦場へと足を踏み入れる。

 爆発の跡に、氷のオブジェ。
 氷と炎が綯い混ざる、不可思議な戦場。
 そこで戦うは、猟兵とエージェント・アマガエル。

 兵庫はエージェント達の居る一角に足を向け、わざと足音を立てた。
「ん……?」
「また新手だな……何者だ」
 エージェント達は、巨大な警棒を持つ兵庫に警戒の眼差しを向けた。
「やあやあ、遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!」
 警棒を振り回し、兵庫は声を張り上げる。
 声を出すのに力を割きつつ、棒術の演舞のパフォーマンスもしてみせる。
 優雅に鋭く、綺麗に舞う。
 出来うる限り視線をこちらに誘導するために、大げさに。
 それでいて、攻撃が来ても大丈夫なように、警戒も怠らず。
「俺の名は黒影・兵庫! お前達を捕まえに来た猟兵だ!」
 ポーズを決めて、大胆不敵に名乗りを上げる。
「……棒使いか。近接戦闘なら、俺たちの得意分野だな」
「見事な演舞だな。だが戦場ではどうかな……?」
 エージェント達は敬意を示し、拳を構えた。

 兵庫とエージェント達の間に、読みあいの静寂が訪れる。

 静寂を破ったのは、エージェントの方だった。
「ウオオオオオオオオ!」
 カエルの様に足に力を入れて、飛び立った。
 否。飛び立とうとした。

 だがしかし。
 飛ぼうとしたエージェントは、見事頭から地面にダイブした。

「グエーッ!? 何でだ!?」
「おい大丈夫……ぶべっ!?」
 コケたエージェントを助けようとして、他のエージェントが動く。
 が、しかし、彼もまたコケて地面に顔をぶつけた。
「隙あり!」
 兵庫は衝撃波を地面に打ち、その反動で一気に距離を詰める。
 そのまま、倒れたエージェント達をさっさと縛り上げた。
「お、おかしい、何なんだこれは……!?」
 未だ動かぬエージェントは、ふと気付いた。
 ずるり。ズボンが勝手に落ちていく。
 青いおパンツが、シャバの空気とふれあった。
「いやん!」
「ズボンが勝手に!? いや違う……ベルトが!?」
 エージェント達はズボンのベルトを引き抜いた。
 いつの間にかちぎれているではないか。
 これではズボンはユルユルで勝手に落ちて行ってしまう。
 近接戦闘など出来ようもない。

「いや、出来るッッ!!」
 ずるり、とエージェントはズボンを脱ぎ捨てた。
 トランクスと、すね毛の生えまくった生足が顕わになる。
「ズボンがないだけだ! 戦える!」
「俺たちはピンポンダッシュにも耐えた! パンツ丸出しがなんだ!」
「俺たちは止まれねえ! 未来を手に入れるまでは!」
 残ったエージェント達は、皆自らズボンを脱ぎ捨てた。
 皆目に決意が籠もっている。
「そんな覚悟が持てるなら! 決意が抱けるなら!!」
 兵庫は再び憤る。
 エージェント達の努力の方向性がおかしすぎる!
「もっと! 子供に胸張って誇れる生き方をしようと思えよ!!」
「ヌウッ!!!!!」
「ぐうっ!!!!!」
 兵庫の言葉がエージェント達の胸を貫いた。
 図星も図星。本人達にもアホな事をしている自覚はあったらしい。
「全てはこんな方法を指定した邪神が悪い!!」
「この……バカヤロー!」
 轟、と兵庫は警棒を振るう。
 空気を抉り、衝撃波が放たれる。
 下半身丸出しカエルは、皆そのまま壁に叩き付けられた。
「ぐふぅっ!?」
「がはぁっ!」
「お前ら皆ふん縛って連行してやるからな! 覚悟しろ!」
 兵庫は怒りを顕わに、気絶したエージェント達をどんどん縛っていった。

 戦闘はまだ続く。
 残る部隊はもう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
カエルだこれ!しかも死亡フラグみたいな事言いだしたぞ!
ならば拙者もやるしか無い…第三次世界大戦だ

武器を持った大量のエージェントを相手するのは面倒なので行動を限定させて一網打尽ですぞ
先ずは適当に【携行ミサイル】や小銃で応戦しつつ近くの空き家に隠れ、壁越しにこう挑発してやるんだ
来いよカエル野郎!武器なんか捨ててかかってこい!
恐らく丸腰になってナイフ一丁で向かってくるので【罠使い】で敷設しておいた大量の地雷にハマるって寸法よ!
振っといて何だけど拙者がつきやってやる義理はないでござるね

たまたま生き残った一体がいたらこう言ってやるんだ
貴様は最後に殺すと言ったな…(言ってない)
あれは嘘だ!

アドリブ連携歓迎



●一体何が始まるんです?
「カエルだこれ! しかも死亡フラグみたいな事言いだしたぞ!!」
 戦場に現われたのは、エドゥアルト・ルーデルだ。
 目の前に広がるのは、猟兵とエージェント達の激しい戦い。
 エージェントは飛びはね、ひみつ道具を使い。
 ――死亡フラグを立てて死亡フロッグとなる。
「ならば拙者もやるしか無い……」
 セリフの応酬ならば、エドゥアルトも望むところだ。
 コッテコテのオタクが、カエル頭に遅れをとる筈がない。
「……第三次世界大戦だ」
 小銃を肩に担ぎ。
 携行ミサイルを抱えて。
 その姿はさながら、アメリカ映画の主人公のように。

「また新手だぞ! 今度は見るからにやべえ!」
「遠距離武装か……! 散開しろ!」
 エージェント達はエドゥアルトを見た瞬間飛び跳ねた。
「弾なんて当たらなければどうということはない!」
「甘いでござる……当たっちゃうんだなァ、これが!」
 ボシュッ、とホルニッセ個人携行ミサイルが火を吹いた。
 ミサイルが飛び立ち、エージェント達へ殺到する。
「なッ、避けきれない……!」
「誘導性能が良いぞこれ!?」
「クックック……情け無用フォイアー!」
 誘導装置からは逃れられず、ミサイルが見事着弾する。

 BOOOOOOOOOOOM!!!
「グワアアアアアアアア!!」
 エージェント達が爆風に呑まれ、あちこちに飛んでいく。

「ホラホラ、弾はまだ有りますぞ!」
 エドゥアルトは小銃で弾を撃ち込みつつ、後退していく。
 目標は近くの空き家。
「あ、アイツ、退却してやがる……」
「追え! 近づけばこっちのもんだ!」
 エージェント達は、エドゥアルトが駆け込んだ空き家へ突撃する。
「よしよし狙い通り……」
 エドゥアルトは笑みを浮かべて、壁越しに挑発を行った。
「来いよカエル野郎! 武器なんか捨ててかかってこい!」
「……ハッ!?」
「ま、マズい、身体が……!」
 エージェント達は一斉に動きを止めた。
 死亡フロッグとしての習性が、セリフに殉ずる事を求めてくる。
 セリフに生き、セリフで逝く。
 それこそ死亡フロッグ、名誉の死。
「へへへ……ハジキもひみつ道具も必要ねぇや」
「誰がテメェなんか……テメェなんか恐かねぇ!!」
 エージェント達は習性に抗えず武装解除する。
 持つ物はナイフだけ。

「野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」

 かけ声と共にエージェント達が屋内へ殺到する。
 そこに待っていたのは、エドゥアルトと――
 沢山敷設された地雷だった。

 BOOOOOOOOOOOM!!!

「何ィー!?」
「おかしい! こんなはずでは!?」
 何か知っている映画と話が違う。
 エージェント達は吹き飛びながらも、疑問を隠せない。
「振っといてなんだけど拙者がつきあってやる義理はないでござるね」
 爆発まみれの屋内で、エドゥアルトがぼそっと呟いた。
「そんな! 卑怯な!」
「グワアアアアアアアア!!」
 訝しんだ挙句に爆破され、エージェント達は無残に飛び散っていく。

「はあ……はあ……!」
「おっ、まだ生き残った奴がいるでござるな」
 ただ一人、爆発の中で辛うじて生き残ったエージェントがいた。
 エドゥアルトは地雷を華麗に避け、エージェントに近づいた。
「ここが崖でないのが惜しいでござるね~」
「……ハッ!」
 その発言だけで、エージェントの頭は理解してしまった。
「貴様は最後に殺すと言ったな……」
 エドゥアルトが渋みのある声で言う。
 別に言ってないが、エージェントは怯えた風に返した。
「そ、そうだ……助けて……」
「あれは嘘だ」
 エドゥアルトは、ポイッとエージェントを地雷の中へ放り込んだ。
「ウワアアアアアアアアアアアアアア!!」

 BOOOOOOOOOOOM!!!

「悪は去った……」
 かくして、大量に居たエージェント達は、猟兵たちの尽力により無力化された。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『可能性の収奪者』アニマ』

POW   :    『可能性』の反射 / 血濡れた人皮本
対象のユーベルコードを防御すると、それを【『可能性』を記した本から引き出して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD   :    『可能性』の封殺 / 千の貌の仮面
【血色の外套の影】から【『可能性』を集めて作った様々な表情の仮面】を放ち、【敵に仮面の表情と同じ感情を上書きする事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    『可能性』の発露 / 瞳の首輪と強欲の短刀
【目玉で作ったネックレスから魔力を引き出し】【血濡れたナイフに魔力を込めて】【全身に他者の『可能性』を宿すこと】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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●未来を手にするために
「……おいおい。こんな有様では未来も可能性もあったものではないな」
 小さいながらも、何故か良く通る声が戦場に響く。
「不完全ながらも、まあ願いは聞き届けた事だ。出てやるとしよう」
 頭の中に直接響くようなその声は、やがて大きくなり。
 形を伴い。

 建物の屋上に、ぴょこんと飛び出した。

「いやしかし、まさかあの暗号文を解ける奴がいるとはな……」
 現われたるは、右目に傷を負った、シスター服を着込んだ幼女。
 手にはナイフと本を、そして服の上には外套を。
 外套の中からは、無数の仮面が顔を覗かせる。
「普通は解いたとしても、ピンポンダッシュなんかしないだろうに。真面目な奴らだな……ま、呼ばれて嬉しくない訳でもない。可愛い奴らだ」
 幼女はエージェント達を、そして猟兵たちを見て笑う。
「ハハア。貴様達の未来は、そこな猟兵たちの可能性によって潰されたという訳だな。フフッ、楽しい奴らだ」
 幼女は言う。幼女は笑う。
「私はアニマ。可能性の収奪者。可能性を集め自らの物とする者」
 幼女――アニマは、猟兵たちを見渡す。
「カエル共の未来を奪うほど、貴様等の可能性は強い」
 ならば、とアニマは言う。

「貴様等の可能性を……私に寄越せ!」
黒影・兵庫
アイツがカエルの親玉か。
相手の武器はナイフということは接近戦
懐に飛び込まれるか背後に回り込まれる可能性がありますね、せんせー。

【蝗害】発動!

強襲兵の皆さん!【蠢く水】に浸した【皇糸虫】を【ロープワーク】と【罠使い】で俺の周りを規制線のように張ってください!

その後、俺が【ダンス】と【パフォーマンス】と【誘惑】で棒術の演武を見せながら名乗りをするのでアイツの背後から攻撃を仕掛けてください!

奇襲が成功したらそれでよし

奇襲を見破り、俺に突っ込んで来たら【皇糸虫】に触れるよう立ち回り、触れたら粘着性の【蠢く水】の【皇糸虫】をアイツの体に這わせて捕縛します!

後は強襲兵の皆さんと俺の【衝撃波】でタコ殴りだ!



●親玉を正せ!
「アイツがカエルの親玉か」
 黒影・兵庫は、突如として現われた幼女を見て呟く。
 アレは敵だ。
 故に兵庫は、ざっと敵の様子を見て推測する。
「相手の武器はナイフ、ということは接近戦。懐に飛び込まれるか背後に回り込まれる可能性がありますね、せんせー」
 兵庫は頭の中の『せんせー』たる教導虫に語りかける。
 せんせーもまた兵庫にしか分からぬ言葉で返し、兵庫は頷いた。

「となると……強襲兵のみなさーん! こちらでーす!」
 蝗害。
 兵庫は再び『強襲兵』たる羽虫を呼び出した。
 そのあと取り出したるは、蠢く水に皇糸虫。
 蠢く水は、微生物の集合体。その名の通りに蠢き、てらてらと光っている。
 皇糸虫は、なんと体長10mほどにもなる細長い寄生虫。
 兵庫は皇糸虫を蠢く水に浸し、強襲兵たちに言う。
「強襲兵の皆さん! これを俺の周りに規制線のように張って下さい! そのあと、俺が棒術の演武を見せながら名乗りをするのでアイツの背後から攻撃を仕掛けてください!」
 強襲兵たちは、了承の意を示した。

 それから。
 兵庫は、武器たる警棒を担ぎ。
 アニマの目の前に現われた。

「ほう……分かりやすく目の前に来てくれるとは。こちらも楽で助かるよ」
 アニマは笑う。
 子供の笑みとは違う、凄まじき悪意に満ちた笑みだ。
 その目を真っ直ぐに見据えながら、兵庫は警棒を構える。
「俺は黒影・兵庫!」
 くるくると警棒を振り回し、警戒を怠らず棒術の演舞を行う。
 大袈裟ではなく、然りとて小さすぎず。
 鋭く優雅に、動きの節々から溢れんばかりの力が伝わってくる。
 演舞は演武。
 装飾的過ぎず、自らの力量を示しつつも、芸術として昇華させていく。
「カエルの親玉だな、お前を正しに来た!」
 轟と警棒を止めて、兵庫は告げる。

「ほう、見事だな。それを見ただけで、ここに来た価値があったと言ってもいい」
 アニマは呵々と笑い、飛んだ。
「それを囮に……奇襲をかけようとしたのも評価できる」
 外套を翻し、背に追いすがる羽虫をはじき返す。
 鉄を破砕するほどの羽虫が、ただの外套で止まるはずもないのだが。
 どうやら、外套も見た目通りの物では無いらしい。

「だが戦うならば、同じ土俵で! 貴様の可能性を見せろ!」

 アニマは血に濡れたナイフを握りしめ、兵庫に飛びかかった。
(ならプランは二個目の方……!)
 兵庫は警棒をしっかと構え、アニマに突き出した。
 警棒とナイフが空気を裂き、無数に打ち合い金属音を鳴らす。
 そして兵庫は、打ち合いながらも特殊なステップを踏む。
 僅かな隙を、相手に気取られるように晒し。
 見えない罠に誘い込むように、立ち回る。

「そらっ! そこだっ!」
 アニマがナイフを突き出したその瞬間。
 そのナイフは宙を突き。
 代わりに皇糸虫が、アニマの身体に触れた。
「今だ!」
「なっ……!」
 瞬間、粘着質の蠢く水に浸かっていた皇糸虫が動き出す。
 細いが凄まじい耐久力を誇る糸となり、アニマを捕縛する。

 捕縛で動けなくなったアニマを、強襲兵が囲う。
「今です、強襲兵の皆さん!」
 兵庫の合図と共に、強襲兵がアニマを襲う。
 兵庫自身の衝撃波も合わさり、四方八方から無数の打撃が叩き込まれていく。

「がっ……!!」
 悲鳴に近い声が発せられ。しかし、アニマは倒れなかった。
「クソッ……!」
 布が裂ける音と共に、アニマは虫の群れから飛び出した。
 彼女の身に纏っていたシスター服は、その一瞬だけボロボロになっていた。
 服ごと皇糸虫を剥き、強引に滑らせて離脱したのだ。
 皮膚が持って行かれたのだろう、腕や足からは血が流れていた。
 破けた服は一瞬の後に回復する。
 しかし、内側の傷は治らず、シスター服を赤く染める。
 衝撃波や強襲兵からの傷も、かなりダメージを与えたようだった。

「……貴様の可能性、見事だな。こうまで苦戦するとは」
 言葉とは裏腹に、アニマは笑う。
「さあ、もっと可能性を見せてみろ! 私の敵達よ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
貴女は自分を可能性の収奪者って言ったよね…?最初から召喚者の可能性も奪うつもりだったんじゃないかな…?

「詐欺師!」
「嘘つき!」
「カエル!」

いや、蛙は違うんじゃないかな…

とにかく、貴女に可能性を奪わせはしない…。
貴女はここで倒す…!

敵の攻撃を【見切り、第六感】で回避し、凶太刀と神太刀の二刀流による【呪詛、早業】の高速連撃で攻撃…。
敵の仮面は【呪詛】を込めた【衝撃波】で吹き飛ばすよ…。
最後は【呪詛】で極限まで強化した【unlimitedΩ】で仕留めるよ…!

さて…この蛙の人達は組織に引き渡そうか…。

「取り調べは腕がなります」
「尋問にはカツ丼だとメイドは考えます」
「キリキリ吐けー」

※アドリブ等歓迎



●うそつき邪神
 雛菊・璃奈は、目の前の敵を見た。
 アニマ。可能性の収奪者と名乗った謎の邪神。
 エージェント・アマガエルに呼ばれた、幼女。
「貴女は自分を可能性の収奪者って言ったよね……?」
「ん? ああ、そうだが」
 璃奈は実に怪訝そうな顔で聞く。

「最初から召喚者の可能性も奪うつもりだったんじゃないかな……?」

 アニマは実に分かりやすく嗤い、肩を竦めた。
「何のことやら……彼らは可能性が欲しいと言うから私を呼んだんだ。だから私は手持ちの可能性を与える」
「そのあとは?」
「勿論対価を払って貰う。可能性を与えたのだから、返してもらう」
 悪鬼羅刹の如く、アニマは笑みを浮かべる。
 その反応に、璃奈のそばに居たメイド達はプンプン怒りだした。

「詐欺師!」
「嘘つき!」
「カエル!」

 ラン、リン、レンは仕込み箒を振り回して声をあげる。
「いや、蛙は違うんじゃないかな……」
 蛙はあくまで召喚者。アニマは多分カエルではない。
「そうだぞ! 私をカエルと一緒にするな!」
 アニマの方から抗議も出た。

「詐欺師は認めた!」
「嘘つきも!」
「でもカエルじゃない!」

 ラン達の怒りは収まらない。
「とにかく、貴女に可能性を奪わせはしない……」
 勝手に突撃しそうなランたちを遮って、璃奈はアニマに向き合う。
「貴女はここで倒す……!」
「ほう……やってみろ!」
 アニマは血濡れたナイフを握った。
 魔力が迸り、他者から収奪した可能性をその身に宿す。

 先に動いたのは、アニマの方だった。
 鋭きナイフが空気を裂いて、璃奈の方へと突っ込んでくる。
 しかし璃奈は、それを紙一重で躱す。
「見える、ね……」
 幾たびも戦場に立った、歴戦の猟兵としての第六感。
 そして純粋に鍛え上げられた動体視力による見切り。
 アニマのナイフは、その二つを超えることは出来なかった。

 返す刀で、璃奈は二刀の妖刀を抜く。
 一つは九尾之凶太刀。凶悪な呪力を秘めたる、超音速の妖刀。
 一つは九尾之神太刀。不死や再生力を封じる、神殺しの妖刀。
 二刀に呪詛を纏わせて、璃奈は凄まじい速度で振るう。
「行くよ……!」
 轟と音を超えた刃が空気を穿ち、衝撃波を纏う。
「ぐっ……!」
 アニマは辛うじて刃を受け流したが、衝撃波までは防げなかった。
 空気の波は、外套の裏に隠された仮面を幾つも吹き飛ばす。
「ッチ! アレは使えないか……!」
「よそ見すると、危ないよ……」
 斬。璃奈の二刀流が、容赦なくアニマを責め立てる。
 他者の可能性をその身に宿したアニマは、辛うじて璃奈の刃を受け止めていた。
「……ッハハ。いいぞ、その可能性……! 貴様は逸材だな!」
「どうも……でも、奪わせないよ……!」

 斬と一太刀。
 受けきれなかったアニマが、身体をよろめかせ姿勢を崩した。
(今……!)
 隙を見つけた璃奈が、ユーベルコードを発動する。
 璃奈の周りの空気が――空間が、時空が歪み、幾つもの魔剣が現われる。
 その一つ一つが、一本で全てに終わりをもたらす終焉の魔剣。
 そこに更に璃奈が呪力を注ぎ、強化して武器とする。
 それが、195本。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
「……マズいッ!」
 アニマは魔剣を一目見て凶悪さを悟り、回避行動を取ろうとする。
 しかし、それより璃奈の方が早かった。

「unlimited curse blades ……!!」

 轟、と時空を穿ち、終焉の魔剣が放たれる。
 目標はアニマ。一本で致命的な魔剣が、一斉に殺到する。
 Unlimited curse blades Ω(アンリミテッド・カース・ブレイド・オメガ)。
 敵に終わりを。人には未来を。
「……ガハッ」
 無数の魔剣がアニマを串刺しにする。
 鮮血が飛び、宙を舞う。
 終焉の魔剣は……しかし、アニマを終わらせきる事は出来なかった。

「まだ……早い!」

 手に持つ本が開かれ、幾つものページが割かれ、飛んでいく。
 可能性とは、実現しうるもの。未来に起こりうるもの。
 可能性をその身に宿すのならば、可能性を移す事も出来る。
 アニマは終焉の魔剣の呪いを、今まで得た『可能性』を代償にして受け止めた。
 されど完全には受け止めきれず。終焉の呪いは、アニマの身体を内側から蝕む。
「……見事だ……余りにも鋭い可能性だ。私には荷が勝ちすぎるほどの……!」
 アニマは剣を引き抜き、高く飛び上がって璃奈から離れていった。

「仕留めきれない、なんて……」
 離れていくアニマを見て、璃奈は呟いた。
 終焉の魔剣が、その呪いをばらまく前に、回収する。
「……あの方向には別の人が居るから、わたし達は、ちょっと仕事をしよう……」
 璃奈は戦場に散らばるエージェント・アマガエルたちを見やった。
 哀しくもご臨終したのもいれば、気絶で済んでいるもの、死んだふりをしているもの、様々だ。
「さて……この蛙の人達は組織に引き渡そうか……ミア、ニア、シア……」
 璃奈が呼ぶと、三人組のメイド達がエージェント達を引っ張っていった。

「取り調べは腕がなります」
「尋問にはカツ丼だとメイドは考えます」
「キリキリ吐けー」

 うえー、という情けないエージェント達の悲鳴と共に、メイド達は組織へと向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイニーア・ノックス
アドリブ連携大歓迎
pow
過去の自分の先祖との契約での強化なので自分の可能性使っても真似は出来ないと判断。
属性攻撃8、串刺し8、力溜め5、生命力吸収4、勇気4、怪力3、、範囲攻撃2、槍投げ2、空中戦2、衝撃波1、鎧砕き1。攻撃には上記を適用し、回避不能な大火力直接攻撃。武器に対しては武器落とし2を使用。
『それそれ!防げますか?』

防御は下記を使用し、回避と防御を主体に食らっても痛みの耐性とかで耐える。オーラ防御9、残像4、毒耐性4、激痛耐性3、学習力2、見切り1、覚悟1『この程度!』



●祖との契約
(可能性を奪う者……か)
 出現したアニマを見て、レイニーア・ノックスは暫し考える。
 可能性。
 発言からすると、アニマは未来とほぼ同義に使っている。
 可能性。未来の芽。ならばそれは……才能なども含むだろうか?
(どうであっても……彼女の目は未来を向いている)
 だとすれば、とレイニーアは結論づける。

(『自分の先祖』が契約した竜王の力は、私の可能性だけでは真似できないはず)

 そう考えたレイニーアは、その竜王の力を呼び起こす。
「我が祖と契約せし竜王よ。今、再び契約に従い共に戦え……!」
 竜魂導入(ドラッヘゼーレ・インスタリーレン)。
 選ばれしものとしての力を呼び起こし、祖と契約した竜王の一部をその身に纏う。
 竜王の力が全身に巡り、戦闘能力を爆発的に上昇させる。

 そしてレイニーアは、戦場に立つ。
 竜騎士の槍を構え、竜王の力を宿す選ばれしものとして。

「ほう……今度はまた性質の違う戦士がやって来たな」
 アニマはレイニーアを見て笑い……そして怪訝な顔を浮かべた。
「……? 私が力を測れないとは。どういうことだ」
「この力は、先祖から受け継いだ物です」
 レイニーアは誇りをもって言葉を紡ぐ。
「だから、私の可能性を使っても、真似は出来ないはず……!」

 ダン、とレイニーアが地面を蹴った。
 音だけが後に残り、地面には大きな罅が入る。
「ッ……!?」
「行きますよ!」
 レイニーアは高々と飛び上がった。
 竜王の力を腕に込め。
 炎の属性を槍に流し込み。
 竜騎士の槍が煌々と光り輝いて――

 凄まじい速度で投擲された。

 槍は空気を掻き毟り衝撃波を伴って、地面へと着弾する。
 轟、と空気が爆発し、隕石のクレーターの如き跡を作り出す。
「……っぐぅ!」
 その爆心地にて、全身が焼け焦げたアニマが立っていた。
 余りに速い速度。余りに大きな火力。
 それは回避することを許さず、故に防御を強制した。
 しかし防御をしてさえも、槍に込められた力がアニマを焼いた。

 ぱらぱらと、彼女が手に持つ本が捲れる。
「守れはしたが……! これは私の身には重すぎる……!」
「『真似』は出来ないでしょう」
「……ッ!」
 レイニーアは、アニマのすぐそばに降り立っていた。
 投擲した槍を回収し、今度はアニマにそのまま繰り出していく。
「それそれ! 防げますか?」
 竜王の力で強化したレイニーアの槍は、致命的なまでに鋭い。
 アニマはナイフで弾こうとするが、受け止めきれずナイフを取り落とす。
「ならば試してみよう……貴様の可能性を!」
 アニマは、本から先程受け止めたレイニーアの可能性を引き出した。
 竜王の力の関わらぬ、純粋な竜騎士としてのレイニーアの力。
 可能性は武器となって凝り、竜騎士の槍として顕現する。

 二人は同じ武器を構え、向き合い、交わす。
 しかしアニマの動きは鈍い。
 否。レイニーアの動きが速いと言うべきか。
 同じ武器、同じ土俵で戦うのなら。
 竜王の力を宿すレイニーアの方が、尚強いはずだから。
「この程度!!」
 攻撃を受けても、身に纏うオーラがはじき返す。
 痛みを耐えて攻撃を返す。
 やがてレイニーアは、アニマの動きを見切り始め。

 ぎぃん、と鋭い一撃が加わった。
 偽物の槍は弾き飛ばされ、虚空へと消える。
「っち……!」
「どうですか?」
「貴様の言うとおりだな……真似は出来なかったよ!」
 アニマは飛び退いて、弾かれたナイフを拾った。
「大分身体に限界が来ているな……流石と言うべきか、猟兵たち」
 アニマは言う。アニマは笑う。
「だがまだ、私は倒れていない。だから私は戦う」
 アニマは、未だ猟兵に対峙する。
「貴様等の可能性を寄越せ……!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「どう見てもこの邪神が何かを叶えてくれるタイプには見えないんだけど…カエルの人達は何で呼ぼうと思ったの?」
瑠璃「言動的に自分の為に信者さえ使い潰すタイプだねぇ」

UCの効果で分身&能力・武装強化
二人掛かりで【範囲攻撃、鎧砕き、早業】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)を大量にばら撒いて敵の仮面ごと本体を爆破。
その後は瑠璃がK100で銃撃する合間に接触式ボムで爆破、緋瑪が大鎌の機巧で高速機動で斬撃を加えつつ、機動力を活かして爆破して仕掛けるよ


緋瑪「ついでに聞きたいんだけど、何で暗号にピンポンダッシュなんて誰もやらなさそうな召喚方法残したの?」
瑠璃「ある意味手軽だけど、普通誰も呼ばなさそうだよね」



●殺人姫は踊る
 四季乃・瑠璃と、四季乃・緋瑪は、新たな敵であるアニマを見た。
 なんか超絶胡散臭い奴である。
「どう見てもこの邪神が何かを叶えてくれるタイプには見えないんだけど……カエルの人達は何で呼ぼうと思ったの?」
 緋瑪は心底不思議そうに言う。
 瑠璃も緋瑪に同意した。
「言動的に自分の為に信者さえ使い潰すタイプだねぇ」
 未来を求める者が、何故『可能性の収奪者』を呼んだのだろうか。
 文献の読み間違い? 呼ぶ奴を間違えた?
 それとも、本当にこれで願いを叶えて貰えると思った?
 真相は闇の中。カエルのみぞ知る。
「けど、やらないわけにはいかないよね」
「だねぇ。被害が広がるかも知れないし」
 瑠璃と緋瑪は顔を見合わせた。

「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃」
「「さぁ、わたし達の殺戮を始めよう」」

 轟と彼女たちの体内で魔力が巡る。
 殺人姫の覚醒だ。
 魔力が真の力を目覚めさせ、身体能力や装備の性能など、全てを強化する。そして真の力を示すが如く、煌々とオーラを纏う。
 二人は魔力を編み上げて、ジェノサイドボムを形作る。
 そして、アニマへと突撃した。

「何――ッ!?」
 アニマが反応するよりも先に、二人はジェノサイドボムをばらまいた。
 接触式のボムは、地面やアニマに触れて爆発する。

 BOOOOOOOOOOOM!!!

 空気が弾け、地面を砕く。
 鎧砕きの概念を与えられたボムは、アニマの仮面も砕いて塵にする。
「っち、早いな!」
「まだまだこれからだよ」
 瑠璃はUDC-K100カスタムを取り出し、銃撃を叩き込んだ。
 銃弾が宙を穿ち、弾幕となってアニマを襲う。
「クソッ!」
 アニマは身を屈めてダッシュして回避を行う。
 が、その先には大鎌を構えた緋瑪が居た。
「行くよっ!」
 大鎌の機巧が作動して、空気が爆発する。
 爆発の反動が、全て機動力となり、音を超えた斬撃が放たれる。
「ガハッ……!」
 振り上げられた刃が、アニマを切り裂いた。

「クソッ……測れない、何者なんだ貴様等は……!」
 傷を押さえながらアニマは走り、瑠璃と緋瑪の隙を伺う。
「私達は二人で一人の殺人姫」
「仲のいい姉妹だよ♪」
 瑠璃の銃撃に、緋瑪の大鎌。
 完璧に息の合った攻撃が、アニマをどんどん追い詰めていく。
「ああ……貴様等多重人格か!? 可能性を得ても私じゃ使えないッ!」
 ふとアニマは、はっと気付いたように叫ぶ。
 元より独りのアニマに、姉妹の存在を前提とするユーベルコードなど操れるはずもなく。
「今だよ、緋瑪!」
「分かったよ、瑠璃!」
 二人の作り出したボムが、再びアニマに叩き込まれた。

 BOOOOOOOOOOOM!!!
 クレーターの如く地面が抉れ、アニマは大きく吹き飛ばされた。

「そうそう。ついでに聞きたいんだけど、何で暗号にピンポンダッシュなんて誰もやらなさそうな召喚方法残したの?」
「ある意味手軽だけど、普通誰も呼ばなさそうだよね」
 壁に叩き付けられたアニマに、瑠璃と緋瑪が不思議そうに聞く。
 アニマは喘鳴をあげながら、律儀にも息絶え絶えに応えた。
「そんな方法を選ぶ奴……なんて……切羽詰まったか……他に方法がない奴かのどっちかだ……良いカモだろう……! それに、あの暗号自体はそう簡単に解けるモノじゃない……それを解ける位の力があれば……良い『可能性』がある……はずだ」
「で? カエルの人達はどうだったの?」
 緋瑪が聞くと、アニマは苦々しい顔をした。
「てんで駄目だ……!」
「それは残念。それで、貴女はまだ戦うの?」
 瑠璃が聞くと、アニマは立ち上がった。
「当然だ……!」
 可能性を追い求めるものは、どこか目を輝かせて猟兵たちを見る。

「まだ足りない、まだ私は立っている! 私に貴様等の可能性を見せろ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
ピンポンダッシュで出てきたらピンポンダッシュの可能性しか残らないだろうが!
可能性に殺されるぞ!そんな物、捨てちまえ!

敵の攻撃を額から光が出そうな【第六感】で避けながら銃撃しつつ攻撃の下準備をしますぞ
UCと見せかけつつ何処からか取り出したアイテムの【パンジャンドラム】を発射!
見せてみろ!パンジャンドラムの可能性を!

…まあUCでもないし仮に借用できたとしてもパンジャンドラムだから【可能性を記した本】がまともな挙動をするとは思えないでござるがね!
そのスキに【忍び足】で近づきつつ背後から懐にグレネードを【スリ渡し】!
切り札ってのは、最後に切らないとなぁ!

アドリブ連携歓迎



●ピンポンダッシュの可能性
 エドゥアルト・ルーデルは、考えた。
 あのアニマとか言う奴は、カエルのピンポンダッシュで現われた。
 そして奴は、可能性の収奪者だという。
「ピンポンダッシュで出てきたらピンポンダッシュの可能性しか残らないだろうが!」
 嗚呼、哀しきピンポンダッシュ。
 来る日も来る日も呼び鈴を鳴らす悪戯に励むしかなくなるだろう。
「可能性に殺されるぞ! そんな物、捨てちまえ!」
 人の持つ無限の可能性も、時には死へ導く物がある。
 エドゥアルトの言葉に、アニマはにいっと嗤った。
「あいにく私は一角獣でも貴婦人でもないし、パイロットでもなければ撃てませんとも言わない。可能性に殺されるなら本望だ!」

 先に動いたのはアニマの方だった。
 手に持ったナイフを握りしめ、エドゥアルトに突進してくる。
 エドゥアルトの武装なら、近接戦闘は不得手だと判断したのだろう。
 しかし。
「見える……動きが見えるでござるよ……!」
 幾たびも戦場に立ったエドゥアルトの第六感が、ナイフの軌道を教えてくれる。
 後ろに回られようと死角に回られようと、紙一重で回避していく。
 額から光が出そうな、恐るべき第六感!
「チイッ! どうみてもオールドタイプなのに!」
「そういうこと言わないでござる」
 カウンター気味に、エドゥアルトが銃撃を返す。
 至近距離で急所に当たれば致命的だ。アニマは一旦距離を取った。
 ならば、即座に反撃は出来ない。
 エドゥアルトは、この隙に次なる手を出した。

「お次は拙者の番でござる!」
 エドゥアルトが懐に手を入れ、何かを取り出した。
 ずうん。
 モノが落ち、地響きと共にコンクリートが割れる。
「なっ……これはっ……!?」
 アニマは目を見開いた。
 そこに現われたのは――

 ――パンジャンドラムであった。
 第二次世界大戦中に、イギリス軍で開発されたキテレツな兵器である。
 見た目は直径3mのボビン。2トン弱の炸薬を積んだ、自走爆雷だ。
 しかし、この兵器は実戦投入はされなかった。
 何故か。方向は安定しないし、滑る場所では空回りして進まなかったのである。

「見せてみろ! パンジャンドラムの可能性を!」
 エドゥアルトの言葉と共に、パンジャンドラムは動き出した。
 車輪から火を噴いて、火炎を撒き散らしながら爆走する。
「くっ……この兵器が敵となるとはな……」
 アニマは飛んで避けながら、呟く。
 別の山中で、かつてパンジャンドラムが走り回る事件があったという。
「そう、この兵器は技術力が足りなかったから失敗作となった……!」
 ならば、とアニマはパンジャンドラムを本で殴りつけた。
 バランスを崩し、自走爆雷はコケて、ネズミ花火のように回る。
「今の技術ならばきっと……開発者が想定した挙動をするはず!」
 アニマは本を開いた。

 現われたるは、もう一つのパンジャンドラム。
 しかし。起動した瞬間にガタガタ揺れてコケてしまった。

「ハァ!?」
 アニマは思わず唖然とした。
「敗因を教えてやるでござる」
 アニマの背後から、エドゥアルトが囁いた。
「パンジャンドラムは別にユーベルコードでも何でもないでござる……ただ真似したに過ぎんのだ!」
「ッ……!」
 アニマが振り向く頃には、既にエドゥアルトは離れていた。
「それに切り札ってのは、最後に切らないとなぁ!」
「は?」
 エドゥアルトの言葉に、アニマは怪訝な顔をした。
 だがふと、懐に何か固い物が入っている事に気付いた。
 取り出してみるとそれは――

 ――手榴弾だった。

 BOOOOOOOOOOOM!!!

 pickpocket(ピックポケット)。
 背後から手榴弾をスリ渡したのだ。
「気付いた時には終いでござるよ」
 エドゥアルトは笑い、爆風の後からぶっ倒れたアニマが呟いた。
「……やるじゃないか。良い可能性だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カラコブ・ガラズィマ
意味がわからん召喚方法と思ったら、まさか邪神本人が作ったとは思いませんでしたよ。

アナタのおかげで市民の皆様は大変な被害を被ったんですよ?理解しておられますか?
はい?私が出した被害?あれはアレです猟兵的目的の為の致し方ない犠牲です、所謂コラテラルダメージと言うものです、はい。

細かいことは置いといてアナタには市民の皆様の気持ちを理解してもらいましょう。
視界外で【楔打ち】を開始、顔面にバッティングラムを叩き込んでやりましょう、コイツもよく扉に叩きつけますし呼び鈴みたいなもんですから実質ピンポンダッシュですね!

ここは市民の為の街、今すぐ出て行け!死か自由かだ!



●お前自身がピンポンになることだ
「意味がわからん召喚方法と思ったら、まさか邪神本人が作ったとは思いませんでしたよ」
 ぶっ倒れたアニマを見下ろし、カラコブ・ガラズィマが呟いた。
 誰が好き好んでピンポンダッシュで邪神を呼ぼうとするのか。
「結局呼んだ奴がいるのだから……問題はあるまい」
 焼け焦げまみれのアニマは、むくりと身体を起こした。
「それはそうですがね。その結果、何が起きたかご存じですか」
 カラコブは、大きなバッティング・ラムをアニマに突きつけた。
「アナタのおかげで市民の皆様は大変な被害を被ったんですよ? 理解しておられますか?」
「……はて」
 アニマは顎を擦りながら考える。
「安眠妨害に仕事の妨害、家族団らんの妨害に娯楽の妨害。それくらいじゃないか」
「それはそれで、割とアレな被害だと思うんですが」
「それと、呼び鈴を破壊したのは私らではないだろうに」
 アニマが言うと、カラコブは肩を竦めた。
 呼び鈴を消防斧で破壊して回ったのは、邪神にも知られているらしい。
「はい? 私が出した被害? あれはアレです猟兵的目的の為の致し方ない犠牲です、いわゆるコラテラルダメージと言うものです、はい」
 今はUDC組織がそこら辺に対処している事だろう。
 それに、終わったことは終わったこと。

 過去より今を見なければならぬ!

「細かいことは置いといてアナタには市民の皆様の気持ちを理解してもらいましょう」
 カラコブはバッティング・ラムに目を向けた。
 バッティング・ラム、別名破城鎚。
 現代では特殊部隊がドアを破壊するために用いる、太い棒状の器具である。
 それでアニマも察した。
「……断る」
「先にピンポンダッシュを始めたのはそちら! 断る権利なんてありません!」
 カラコブがバッティング・ラムを抱えて突進を始めた。
「やめろ、来るな!」
 アニマは叫び、外套の中に残っていた仮面を投げつけた。
 感情を上書きする特殊な仮面だ。表情は、悲哀。
 仮面は見事にカラコブに命中する。

 カラコブの胸中に、様々な悲哀の感情が浮かんでくる。
 ピンポンされて期待を胸に出たはいいものの、誰も居ない虚脱感。
 騙された、としかいえない、やりきれない悲哀。
 しかし。

「刃が届く戦士の距離、そこまで近づきゃなんとかなる」
 楔打ち(ダイナミック・エントリー)。
 カラコブはその瞬間、戦士としての本能に従い、感情の全てを切り捨てた。
 あるのは『敵をぶっ叩く』という、攻撃の意識のみ。
 バッティング・ラムを抱えながらも、凄まじい速度でカラコブは奔る。
 戦闘で様々に抉れた戦場を、縦横無尽に駆ける。
「……ッチ!」
 アニマの舌打ちが聞こえ、カラコブは判断する。
 相手は自分を捉えきれていない。
 そのまま障害物を用いて視界外から距離を詰め――

 急に飛び出し、バッティング・ラムをアニマの顔面に叩き込んだ。

「ぐっ……!」
 運動エネルギーがたっぷりこもった、余りに重い一撃。
 それがアニマの頭蓋に叩き込まれ、脳を揺らし、吹き飛ばす。
「コイツもよく扉に叩き付けますし呼び鈴みたいなもんですからね!」
 カラコブは呵々と笑い、バッティング・ラムを構え直した。
「どうですか、ピンポンダッシュの味は!」
「畜生……痛いな……!」
 口から血を吐き捨てて、アニマは言う。
 流石にダメージが蓄積されて、満身創痍と言った様子だ。
「ここは市民の為の街、今すぐ出て行け! 死か自由かだ!」
 カラコブが告げる。
 アニマは、顔を歪めて笑う。

「なら死だ……ここまで来れば、それ以外にあるまい!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
「可能性を寄越せ、ですか。
『私』の無限の可能性、奪いきれますか?」

【チューリングの神託機械】で情報処理能力を向上。
【アインシュタイン・レンズ】で収束した光線を放ちます。

「これが私の最大火力。
これでもあなたを倒せる可能性がないと言えますか?
……って、攻撃反射!?」

攻撃を防御され、逆に敵から撃たれた光線に身体を貫かれ……

「という可能性もありましたね。
ですが、それは無限に存在する可能性のひとつに過ぎません」

【シュレーディンガーの猫】によって量子力学的に存在する平行世界から現れた『別の可能性』の『私』が再度光線を放ちます。

「可能性の分だけ無限に存在する『私』を全て倒しきれると思わないことですね!」



●無限に連なる可能性
「可能性を寄越せ、ですか」
 アイ・リスパーは敵を見やる。
 可能性の収奪者、アニマ。
 なるほど、確かに彼女は可能性を奪うのかも知れない。
 しかし。
「『私』の無限の可能性、奪いきれますか?」
 アイは、大胆不敵に笑う。
「そう言ってきた奴は、貴様が初めてだな!」
 顔の血を拭い、アニマも言う。
「私を倒せるというのなら、見せてみろ! 貴様の可能性を!」

 アニマはアイよりも早く攻勢に移った。
 ナイフを握りしめ、距離を詰めようと突進する。
 しかし、アイの思考速度は敵のダッシュより尚速く。
(電脳空間への接続を確認。万能コンピューターへログイン。オペレーション開始します)
 刹那の時間で、アイはチューリングの神託機械を起動する。
 万能コンピュータがアイに凄まじい演算能力を与えた。
 代償は、呪縛。巨大な演算能力が、身体制御を奪ったのだ。
 だが、身体が動けずとも出来ることはある。
(距離は10.3メートル。付近の障害物と光量を前提として……移動後の座標を確定)
 アイの周囲に、無数の投影されたプログラムが走り始める。
 同時に、空間が奇妙に歪み、捻れた風景を映し出す。
「何だ……?」
 アニマは怪訝な顔をするが、移動を止めない。
 アイはその先に、照準を合わせる。
(重力レンズ精製。ターゲットロック。光線発射準備完了です)
 プログラムは演算を完了した。
 あとは発射するだけ。
 アニマがロックした座標に入ったその瞬間、アイはそれを起動した。
 アインシュタイン・レンズ。

「発射!」

 空間が歪み、重力レンズが精製される。
 それによって光を束ねた高出力の光線が、狙った位置に着弾する。
 じゅう、と焼ける音が響き、膨大な熱量に耐えられず空気が爆発する。
 粉塵が舞い上がり、熱で景色が揺らぐ。
「これが私の最大火力。これでもあなたを倒せる可能性がないと言えますか?」
 アイは自身ありげに言う。
 これほどの熱量を浴びれば無事ではあるまい。

 だが。

「これではまだ足りん!」
「……!」
 粉塵が掻き消えて、アニマが姿を現した。
 アニマの周囲に浮かぶのは、アイのものと同じ空間投影。
 そして……いくつかの重力レンズ。
「貴様の可能性はこの程度の物か!」
 アニマの声と共に、重力レンズが光を収束させる。
 その光景、攻撃手段は、アイがよく知っていた。
「……攻撃反射!?」
 アイの用いたアインシュタイン・レンズ。
 それが、そっくりそのままアニマに使われている。
「発射!」
 アニマの声と共に、束ねられた光が発射される。
 その光は、間違いなく身体の芯を捉えた。
「あっ……!」
 膨大な熱量が、アイの身体を貫いた。
 じゅう、と血肉の蒸発する音がする。
 これでは幾ら猟兵といえども、生きてはいまい。
「……これが貴様の可能性か? 私に撃ち抜かれるのが?」
 アニマは言う。物足りなさげに。

 そこに、こつりと足音が響いた。

「……という可能性もありましたね」
「ッ……!」
 その声は、今し方撃たれたアイのものだった。
 その姿は、間違いなくアイのものだった。
「ですが、それは無限に存在する可能性のひとつに過ぎません」
 アイは言う。

 並行世界から現われた、別の私だと。

 シュレディンガーの猫。
 量子力学的には、並行世界が存在する。
 アイは並行世界から新たな自分を呼び、戦闘を続行できるのだ。
「……何だと」
「そもそも可能性や未来とは、一つに確定できるものではありません」
 並行世界からやってきた『別の可能性』のアイは、真っ直ぐとアニマを見つめる。
「そして、私は並行世界の数……可能性の分だけ存在します」
「……くっ」
 アニマは、その言葉の意味を直ちに理解した。
 並行世界からやってくる敵。
 可能性の収奪者は、それを一つ一つ潰せるだろうか?
 可。
 問題は、そのあと。
 幾度も並行世界からやってくる敵と、戦い続けられるだろうか?
 ……否。
「可能性の分だけ無限に存在する『私』を全て倒しきれると思わないことですね!」
 この勝負は、単純な一対一ではない。
 一対一(無限)。どちらが勝つかは、明白だった。
「……ふっ、余りにも見事な解答だな」
 アニマは笑う。アニマは嗤う。
「有限の収奪者を倒すのは、無限の可能性というわけか。ハハッ……来い!」
「アインシュタイン・レンズプログラム!」
 アイは再びプログラムを走らせた。
 重力レンズを、より高精度に、より素早く作り出していく。
 アニマも同じようにレンズを作り出す。
 二人がお互いを照準に収めて。
 起動する。

「「発射!」」

 束ねられた光線が、真っ正面からぶつかり合う。
 莫大な熱量がぶつかり合い、プラズマを発生させる。
 オゾン化した酸素が刺激臭を伴い、熱が風景を歪ませる。
「ハハッ……ハハハハハハッ!」
「これが『私』の可能性です!」
 二人の力が交差して、やがてアニマの光線が押されていった。
 周囲を焼き尽くすプラズマが、やがてアニマを呑み込んで……

 爆発した。

 最後に笑い声を響かせて、アニマは跡形も無く消滅した。
「……見ましたか! これが可能性の力です!」
 アイは胸を張る。

 こうして可能性の収奪者は、猟兵たちの無数の可能性に敗北した。
 首謀者たるエージェント・アマガエルたちは、UDC組織に連行されて、最早ピンポンダッシュをするものは居ない。もうピンポンダッシュに頭を悩ませる必要は無いのだ。

 これにて、街には平和が訪れた。
 享受せよ市民達。猟兵たちに守られし大いなる平和を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月30日


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#UDCアース


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ノルナイン・エストラーシャです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト