バトルオブフラワーズ⑨~理知ある者は誰か
●花畑と論理の猿
「おーおー、周りのステージがやられてるウッキー」
花々が咲き乱れる美しい空間、“システムフラワーズ”。
そこに似合わぬロボめいた風貌のオブリビオンが、花々の上に仁王立ちしている。
「そこそこやる奴らみたいだウッキー。でも、ミーがいる限り此処は通さないし、通れないウッキー。命運此処に尽きるって奴ウッキな! ウッキッキッキ! 攻撃を通せるものなら通してみろだウッキー!」
肩を揺らして笑うのは、幹部の一人“エイプモンキー”。
花は何も語らない。ただ、ふわりふわりと揺れるだけ。
●
「みんなー! システムフラワーズの道が開いたよ!」
メッティ・アンティカ(f09008)は集まった猟兵たちに、嬉しそうに脚立の上で述べる。大きな魔女帽子を被り直して、でもここからが本番だ、と念を押す。
「システムフラワーズの内部は、お花畑になってるみたい。足場に関しては気にしないで良さそうなんだけど……内部にも既に敵が侵入しているんだ。まず、システム中央部にドン・フリーダム。彼は恐らくオブリビオン・フォーミュラで……彼を守護するように、4人のオブリビオンがそれぞれ陣取っている。君たちが最初に相手するのは「エイプモンキー」だよ」
メッティが一生懸命説明する。システムに侵入した彼らは、これまでのオブリビオンとは桁違いの能力を持っている。猟兵のユーベルコードに先んじて能力を発動し、特にこのエイプモンキーは猟兵を無力化してしまうのだという。
「彼は独自の理論を展開して、無力化するためのものを創造する能力を持っている。だから、普通にユーベルコードを叩き込むだけじゃ勝てないんだけど……でも、彼を上回る理論を展開すれば其れを阻止できるかも知れないんだ!」
具体的には……ううん、僕は余り頭が良くないから、判らないけど。
其の魔女帽子は何のためにあるのか。首を傾げるメッティだったが。
「兎に角、相手の理論を“何の! こっちにはこの用意があるんだ!”って論破すれば相手に攻撃が通るみたい。どんな風に避けられるかを想像して、更に其の上を行く理論を構築すればいいんだ、……って、言うのは簡単だよね。でも、きっと今までいろんな戦場を潜り抜けてきたみんななら出来ると思う!」
だって、相手は色んなオブリビオンだったもんね!
瞳を輝かせて言うメッティ。そして掌を上向けると、グリモアをもって門を開く。
「頭を働かせないと勝てない強敵だよ。でも、抜けなきゃこの世界が危ないんだ。どんなトンデモ理論でも相手が納得すればいいんだから、ぶちかましてやってよ!」
key
こんにちは、keyです。
ついにシステムフラワーズの第一関門が開かれました。
今回はそんなお話。
●目的
「エイプモンキーを倒せ」
●注意
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●注意…敵ボスについて
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
●立地:システムフラワーズ
花々咲き乱れる美しい空間です。
花が寄り集まって足場となる特殊な性能を持ちますが、
どのようなルートを通ろうとしても、エイプモンキーに足場は繋がってしまいます。
よって、彼を避けてシステムフラワーズ深部に進むのは不可能です。
●エネミー
エイプモンキーのみです。
配下はいません。彼の自信の表れでしょう。
●
エイプモンキーは皆さんのユーベルコードの隙をついて理論武装を構えて来ます。
敢えて隙を作り、其処を埋めるような理論を持っていく……なんて戦法もありかもしれません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
いってらっしゃい。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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一駒・丈一
まずUC『罪業罰下』を放つ。
この技の欠点は、相手を視認できなければ敵に当てられない点だ。
敵は確実にこの点を突くだろう
ならば以降の俺は『視界を捨てる』
人間は
視界に認識できるものに注意が行き、その認識に脳のリソースの多くを割く。
なら逆に視界を捨て、それ以外の感覚に脳の認識リソースの全てを割く。
猟兵時代での濃霧や夜間、地下等の視界不十分な環境での戦い…
それら過去経験の『戦闘知識』に加え
『見切り』『第六感』や己の感覚を総動員し気配察知に全神経を費やす。
そして、相手がカウンター狙いで間合いに入った瞬間に
装備『贖罪の道標』にて『早業』で『咄嗟の一撃』を放ち迎撃だ
見ざる言わざる。だが、聞きはさせてもらうぞ。
「見ざる言わざる……か」
花々の上に降り立った一駒・丈一(金眼の・f01005)は、呟いて眼前にいるエイプモンキーを見つめる。
「ウキッキッキ。ミーが猿だから連想したウキか? そうウッキ、何も見ず、聞かず、言わなかったらすぐに楽になれるウキよ」
「生憎とそういう訳にはいかないんでな。此処は通して貰う。余罪は地獄で禊げ――!」
「ウキッキッキ!」
エイプモンキーが笑う。
「因果の逆転……復讐と断罪を“己に向ける”事で、元となる罪を自分が放てるという原理ウッキ。つまり自分が復讐される側になるという事ウッキな。しかし一撃で相手を倒してしまえば一時的な因果は途切れ、復讐と言う事象自体がなくなる……ウキ?」
そこまでとうとうと語りながら足元から金色の光を迸らせたエイプモンキーが、ふと言葉を止めた。視線の先にいる丈一は――目を閉じている!
「……ほう…ウッキ……」
「そちらを指摘したか」
「そうウッキ。そちらはどうやら、“視界を塞ぐ”事で対策したつもりウッキね?」
「ああ。見えなければ当たるものも当たらないだろう?」
「ウッキッキッキ! 見ざるも許さざるも同じウッキ! いでよマシーン!」
エイプモンキーの足元に、蓮の葉のような装置が現れる。それはまるで、釈迦が座る蓮のよう。猿が釈迦の真似をするとは、不届き千万というものだが――
「すべてを許すマシーン! ミーはその因果を受け入れないウッキ。復讐など考えず、ただ全てを許すだけウッキ……」
「………」
静と静。じり、と張り詰めた緊張が走る。互いに手は提示した、ならばあとは――
「此処か!」
「そこウッキ!」
打ち合うだけ。
聴覚の全てを総動員した丈一の一撃は、エイプモンキーの腕装甲にヒビを入れ。
エイプモンキーの拳の一撃は、丈一の右肩にずむ、と埋まっていた。
互いに飛び退り、距離を取る。
「く……っ」
「敢えて“ユーベルコードさえ捨てる”事でミーの装甲に傷をつけたのは見事だウッキ! ウッキッキッキ、此処の最前線に来た甲斐があるものウッキ!」
成功
🔵🔵🔴
アルファ・ユニ
あー…うん如何にもマニアックそう。部屋の奥に引きこもってなんか作ってそう。
ともかく通してもらうよ
ユニの攻撃は全て音。壊感音波もそのひとつ。
音に対する対策ってやっぱり耳栓シャットアウトとか位相反転サイレンサーとか?
甘いんだよ
予めその音をクラハライツに大量に圧縮しておいて弾丸として撃ち抜く。聴こえなくとも胴体に当たれば大威力のそれは振動としてちゃんと届くし
位相反転っていうのは音量・周波数・タイミング、何もかもを真逆に再現して打ち消さなきゃならない。
効果そのままにリアルタイムで音を作り替えよう。エンハンサ・イコライザ・ディストーション・リングモジュレーター…
ねぇ
あんたにこの音、作れるの?
「あー、如何にもマニアックそうだね。部屋に籠って何かを作ったりしてたことない?」
「人をプラモオタクと一緒にするなウッキ! しかし今の言葉に貶める他意はないと此処に弁明しておくウッキ! 失礼な娘ウッキな!」
「随分とヘンな猿だ。とにかく、通して貰うよ」
アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)が構えたのは“クラハライツ”――周囲の音によって特性を変える、音響兵器、という言葉がふさわしい魔銃だ。
「こいつの一撃を食らって、まだ周囲の心配が出来るかな」
「ウッキッキッキ! 其れはミーの台詞だウッキ! ミーの一撃を受けて、まだクールなお嬢さんでいられるかな? 銃はしっかり構えるウッキ。心配しなくてもパラボラアンテナとかそういうのは作らないウッキ。作っても意味がなさそうウッキしな。正々堂々死角を衝くマシンを放つウッキ」
ユニはクラハライツを構える。中でわんわんと音が反響し、変化し続ける――其れが彼女の隠し弾。音というものは非常に“合理的”だ。音量・周波数・タイミング、それらが一つでも噛み合わなければ相殺する事は出来ない。そして少しでも噛み合わないなら、それがユニの勝機となる。リアルタイムに音を作り替えれば、決して消えない音の出来上がり。そして、ユニの魔弾が放たれ――
「……ぐ、っ!?」
脇腹に熱と痛みを感じながらの射撃は、耐性があるとはいえエイプモンキーの死線を僅かにずれる。何が、と振り返れば、其処には小さなクレーン車のようなマシンが、彼女の脇腹に鎌めいた刃を突き立てていた。
――わん、と不快な音が周囲に響き渡る。しかし、其の音響が変化する事はない。変化させても意味がないと、ユニが悟ってしまったから。
「……死角」
「そう。銃を持つ奴らは皆後ろに目がいかないウッキ。仕方ないウッキな、ニンゲンは背中に目はついてないんだウッキ。正々堂々後ろから攻撃させて貰ったウッキ。……と言っても、この声、聞こえてるウッキ?」
がいん、と硬質な音がする。音響弾がエイプモンキーの手装甲にブチあたり、更に不快な音を奏でた。
「……この、猿……!」
「ウーッキッキッキ! 何を言われても、今は五感が痺れているので聞こえないウッキ! コレマジ!」
苦戦
🔵🔴🔴
蔵方・ラック
使用するのはパイルバースト!
弱点は「当たらなければ意味がない」とかでありましょうか?
全部回避されたり、飛ばした金属杭を全部壊されたらどうしようもないでありますね!
というわけで、対策頑張って考えたであります!
まず手元のバラックスクラップを【武器改造】でバット状に変形させて持っておく
UCの金属杭はいつもより少し細かめに生成
攻撃時は、全ての杭をモンキーに放っていると見せかけて
自分のバットも攻撃対象に含めておくのであります!
バットに杭が刺さったのは「釘バット」とか言うのでありますよね!
そう!通常攻撃は、通常攻撃で迎え撃つ!
この釘バットを【怪力】でフルスイングしてやるであります!バッチ来い!!
「ずばり! 自分の攻撃の弱点は「当たらなければ問題ない」であります!」
どーん。蔵方・ラック(欠落の半人半機・f03721)は拳を握って切り出した。
「ウキ? 随分と潔いウッキね」
「弱点を色々考えてきましたが、概ね其の結論にいきあたりました! ですが猟兵たるもの、攻撃せずにはいられないッ!」
「しかし論破するウッキ! ユーの言う通り、いま使おうとしているユーベルコードは完全物理型ウッキ。周囲に杭を放ち、相手をトゲトゲにする……単純さは強さにもつながるウッキ。しかしユーがさっき言ったように、当たらなければ意味がないのだウッキ。例えば盾、例えば高速移動、例えば鉄を溶かす程の熱、例えば反射……対策は色々あるのだウッキ。そしてミーはこの通り、重武装しているウッキ。ちょっとやそっとの杭では、装甲に傷をつけるのが関の山。中までは杭を通すことは出来ないのだウッキ」
「その通りですッ! そして自分は、今回細やかな杭でお前を攻撃しますッ!」
「ウキ!? 快活すぎて逆に戸惑うウッキ! 兎に角実証してやるから、ユーベルコードを撃ってみるウッキ!」
「はい!」
まるで先生と生徒のようだが、これはボス戦です。
言うとラックはスクラップ片を投げ上げて――
「細やかな杭なら、鎧の間を通ったり通らなかったりッ! いっけー!」
ゲイルバースト。釘や鉄片が高い唸りを上げて、エイプモンキーに殺到する。其れはまさに鉄の雨。普通のオブリビオンなら逃げ場を探すところだが、彼は其れを避けようともしない。雨に降られ、鉄が刺さっても、装甲に傷がつくだけだ。
「ンフーッフッフッフ! どうだウッキ? この通り、単純防御で防ぐことも――」
「だらあああああ!!」
「ンフッキー!?」
飛んできていた。何がって? ラックがだ! 何故かって? 彼の手を見てご覧。其の手にはバット――バットには無数の杭!
「ま、まさか事前に用意を!?」
「違うであります! 最初から攻撃対象は“お前とバット”だったのでありますよ! バットは柔らかいでありますからな、杭はよく刺さります! そして――」
通常攻撃には、通常攻撃でッ!
振りぬいた其のバットは、怪力が載せられて超速。エイプモンキーは思わず両手でカバーする。鉄と鉄がぶつかり合う高い音が、花畑に反響する。くわあん、と思わず耳を塞ぎたくなるような音だ。
両腕の装甲に入った罅が広がり、鉄が剥がれ落ちる。エイプモンキーの顔が悔し気に歪んだのを、ラックは見逃さない。
カバーした両手を組み、ハンマーのように振り下ろしたエイプモンキー。ラックは其れを交わし、後ろへ飛び退る。
「この……色々教えてやるんじゃなかったウッキー!」
「ええ、色々教えていただきましたッ! 今後の参考にするであります!」
成功
🔵🔵🔴
逆鷺・俐己
私の体に空いた虚ろな穴は相手に【恐怖を与える】ことができる。恐怖した相手に『在りし日の光景』を発動させる。
恐怖が起点の技への対抗策として思いつくものは、恐怖を無くすことかな。
恐怖を無くしたり克服したなら、私は自分の穴に杭を刺す。
恐怖が心配や不安も含むなら。相手は自分より強いかもという心配や、何をしてくるかわからないという不安も恐怖の一部なら。
恐怖が無い猿君は慢心して、文字通り怖いもの知らずになるよね?
それで無策に行動してくれるなら、私は杭を抉り血と多量の呪いを出し、血と呪いを纏った鎖で遠距離攻撃をする。当たったら【呪詛】によりしっかりと呪うよ。
さて、猿君は呪われてくれるだろうか。
「思ったんだウッキが……」
「何?」
てっきり看破から始まると思っていた逆鷺・俐己(虚ろな穴・f17207)は、不思議そうにエイプモンキーを見る。彼の表情に浮かんでいるのは、不思議。不可解。
「其の穴というものは、痛くないウッキか?」
「は?」
「いや、気になったウッキが……気にするなウッキ! さて、今ユーが使おうとしてるユーベルコード……恐怖を与えた対象を攻撃するもの……これを遮断するには、恐怖をなくすのが一番手っ取り早いウッキ。その点は多分、ユーも判ってるウッキね? まあ、そもそも事前にわかっちゃうからミーに恐怖なんてないウッキ。正々堂々と死角を攻撃するドローンを放つウッキ!」
ぶーん、と虫の羽音のような音を立てて、ドローンが展開される。恐怖しない故にか、こそこそ隠れて死角を狙うようなマシンではない。
「へえ、これで死角を探そうって訳? 生憎、私に死角があるかは判らないな……」
言うと、“虚ろな穴”に躊躇いなく杭を衝き入れる俐己。どろり、あふれ出すのは赤黒い血と、相応の呪い。其れは最早聖痕ではなく、呪いのはけ口のようだ。
「君の言った通り、恐怖を与えなければ私のユーベルコードは発動しない。けどね……恐怖を感じないって事は、命の危機を感じられないって事なんだよ。ねえ、呪われることも怖くないんでしょ?」
血液がぼたぼたと、俐己の“牢獄の鎖”に落ちる。呪詛が呪詛を呼び、常人なら触れる事も恐れるような雰囲気を放つ鎖だったが。
「ウーッキッキッキ! ミーは何も怖くないウッキ! 何故ならミーは最強! そして攻撃はこのドローンたちに任せてあるウッキ!」
慢心するエイプモンキー、攻撃に集中する俐己。どちらも、防御面での気配りをしていないのは同じ。ドローンから放たれる熱線で、四方八方を焼かれながら、俐己は呪詛マシマシの鎖をエイプモンキー目掛けて放つ。ついでに灼かれて痛いぶんの呪詛も上乗せして。
「ウーッキッキッキ! 怖いウッキー、怖いウッキー! 美人に縛られるのは怖いウッキー! アイタ!」
鎖にしたたかに叩かれて、僅かに身じろぐエイプモンキー。動じた様子はない。だが……
「……んん……?」
「君が本当に恐怖すべきだったのは、数なのかも知れないね。ほら、其処。無防備だよ」
俐己が集中的に狙うのは、これまでの猟兵の奮闘によって剥がされた装甲の奥。僅かに見える素肌を寸分たがわず狙い、呪詛を植え付ける。
「呪詛はじわじわと効く毒のようなもの。大事な時に君が苦しまないように、願っておくよ」
其の甘い声もまさに毒。俐己を四方八方から狙うドローンを見上げながら、彼女はそれでも笑って見せた。
成功
🔵🔵🔴
エルネスト・ポラリス
UCの弱点、ねぇ……。
いや、マニアックでなくてもわかるでしょ私の弱点。
理性なくなるんですよ、ちょっと複雑な投網でも投げかけられたらもう無力化ですよ。
だって暴走してるもん、理性あればすぐ抜け出せる妨害も、理性なかったらあっさり封じられますよ。
というわけで。
理性を取り戻した瞬間、銃の弾丸をぶち込んでやりましょう。
暫く暴れ回るとばかり考えている相手なら、良い奇襲になるのではないでしょうか。
――ああ、私がすぐ正気に戻る理由。
UCを使用する直前に、耐人狼薬『狼殺し』をがぶ飲みしてますから。
半ば毒薬なんで、この後すぐ倒れると思いますが。
この程度の【勇気】、世界を救おうとするなら当たり前でしょう?
「マニアックでなくてもわかるでしょ、私の弱点」
「うわ、これはまた弱気なのが来たウッキー……もうちょっと自信持っても良いと思うウッキ」
「いやだって、理性がなくなるんですよ? ちょっと複雑な投げ網でも投げられたらもう終わりでしょ。だって暴走してるし。理性がなかったら簡単なトラップであっさりですよ」
「や、やってみなきゃ分からないウッキー! なんでミーがユーを励まさなきゃいけないウッキー!? まあ標的はあくまで速く動くものだから、ミーが動かなかったらそこまで、がめおべら、って感じウッキが……」
「でしょ? でもまあ、そのユーベルコードを使うんですけどね。ああ……満月が、満月が見える……」
エルネストは空を見た。其処には二つに割れたキマイラフューチャーの断面があるだけで、満月などないというのに――彼は其処に、円く浮かぶ月を幻視する。
理性がさらさらと消えていく。獣性が音を立てて肥大していく。爪が伸び、牙が伸び、獲物を寄越せと唸り吼える。 高く咆哮したエルネストは――紛れもなく、人狼であった。
「ウッキー……何故そのユーベルコードを使ったか判らないウッキが、理性を失っている以上簡単な落とし穴や投げ網で事足りるウッキ。速く動くものに反応するウッキから、投げ網なんかなら自ら飛び込んでくれる事請け合いウッキな。後だしみたいになっちゃったウッキが、マニアック投げ網! とうっ!」
エイプモンキーは完全に雰囲気に呑まれていますねこれ。後だしじゃんけんみたいにエルネストの言葉を借りながら、縄跳びのようなゴム質の投げ網を投げ放った。エルネストはがうがうとそちらに向かい、投げ網に自ら飛び込む。その拍子に動いたりぷよぷよする投げ網と戯れる、そんな光景を見ていたエイプモンキーだったが――
ぱん。
「……ウキ?」
最初は、投げ網が弾けたかな、と思った。次に、こめかみが妙にひりつくな、と思った。そして今、ヘルメットに血が飛び散っているのを横目で見て――エイプモンキーはようやく、弾丸が己の側頭部を掠めたのだと知る。
「おっと、ハズレ」
「……な……今先刻人狼になったはずじゃ」
「ええ、なりました。でもね、正気に戻ったんです。これのおかげで」
小さな瓶を振るエルネストから、獣性が消えていく。きわめて理性的に網から抜け出して、改めて瓶を見せた。――「耐人狼薬“狼殺し”」。
「な……!」
「半ば毒薬なので、これ以上の攻撃は出来ませんがね。眉間を狙ったのにズレましたし」
「毒薬……!? 何故、何故そんなものを呑めるウッキー!? 此処は敵地ウッキ!」
「“今は”敵地の間違いでしょう。――其れに」
この程度の【勇気】はね、世界を救おうとするなら当たり前なんですよ。
「……敵ながら見事だウッキー。とどめを刺すのは一番最後にしてやるウッキ」
倒れたエルネストを前に、腕組みをして見下ろすエイプモンキー。両腕から広がる呪詛、こめかみの痛み。ダメージは確実に累積している。
あの銃口が、己の眉間を確実に狙えていたら。……いや、と頭を振る。そんな事は考えてはならない。負ける事を考えてはいけないのだ、何故なら、己は此処を守る番人であり、倒れる事の許されぬ存在なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
アンネリーゼ・ディンドルフ
【SPD】
「私が使おうとしているUCの弱点は、“UCが命中しない”と“真実を言う”ですかね。まあUCが命中することを祈って、やってみます。」
アンネリーゼは、すたすたとエイプモンキーに歩み寄る。
「エイプモンキーさん、初めまして。私はオブリビオン料理研究所の団長、アンネリーゼ・ディンドルフです。m(_ _)m」
丁寧に挨拶をする。
……UCを発動。
「あなたのUCの弱点を教えてくださいな?」
そう質問し、賢者の影を当てようと試みる。
もし対処されてしまったら、相手の攻撃を【見切り】で回避しつつ創り出された装置を【食べちゃいます!】
「(私のユーベルコードの弱点は、“命中しない事”それから“真実を言う事”……の筈! なら、真実を言わせても苦しい状況に持っていけば
……!)」
アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)はぐっと緊張を飲み込んで、エイプモンキーの前に立つ。
「え、エイプモンキーさん、初めまして。私はオブリビオン料理研究所の団長、アンネリーゼ・ディンドルフです」
「あ、これはどうもご丁寧にウッキ。ミーはドン・フリーダム配下のエイプモンキーですウッキ。短い間ですがどうぞ宜しくウッキー」
丁寧にお辞儀し合う二人。非常にシュールである。――が! これはアンネリーゼの罠!
「今です!」
アンネリーゼの影が伸びる。花を黒く染め――其れはまるで、エイプモンキーたちが街を黒く染めるように――、エイプモンキーへと繋がる。仕込みは出来た。あとは……
「ククク、後は真実を喋らせるだけ、ウッキか?」
「!」
「ミーはユーのユーベルコードなんてお見通しだウッキ。避けなかったのは、明らかな抜け道があったからだウッキ。其れは……真実を喋り、無事に影を解除する事。こう見えてもミーは正直者なんだウッキよ?」
「そ、其れじゃあ、“弱点はなんですか”と聞いても教えてくれるんですか!?」
「勿論だウッキ。ミーは確かにこの優れた頭脳でどんなユーベルコードも相殺する術を持ってるウッキ。しかし、其の上を行く理屈――此処まで行くと屁理屈のレベルだウッキが、其の理屈が通ってしまうとミーの相殺は掻き消されてしまうウッキ。これは究極の頭脳戦なんだウッキ。どうウッキ? ミーは嘘をついてないウッキ! ウッキッキッキ!」
「くっ……! ああ、影が!」
ぱちり、と音を立ててアンネリーゼの影がエイプモンキーから外れてゆく。つまり、彼は真実を言ったという事――しかし、最初から判っていた真実だ。新たな情報にはならない。
「さあ、今度はこっちの番ウッキよ! お題は「あなたの悲鳴を聞かせて下さい」だウッキー!」
エイプモンキーが殴りかかる。超合金の――罅割れた――拳でアンネリーゼに殴りかかり……彼女の動体視力が光る。すんでのところでかわしたが、頬をちりちりと掠めてゆく豪速の拳。
「く……ッ! 失敗です……ッ! 此処は一旦退きます!」
「というか、オブリビオン料理研究所ってなんだウッキ? すごく物騒な響きがするウッキ!」
「其れはそのままの意味です!」
「うわ……こわ……この美少女怖いウッキー!」
失敗
🔴🔴🔴
純・ハイト
普通に戦ったら負けるだろ、ならフェアリー用スナイパーライフルでUCを発動するように見せただまし討ちをしながら2回攻撃の技能フルで攻撃、死角から反撃するマシンの攻撃は第六感で回避を試みる。
何回かだまし討ちを仕掛けてだまし討ちを仕掛けたと思わせただまし討ちでUCを発動させて攻撃をしてみる。
心理戦で読み間違えた方が攻撃を受ける、実にシンプルな作戦だからうまくいくかな?
「普通にお前と戦ったら、カウンターで撃ち負ける。簡単な理屈だよな」
純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)はスナイパーライフルを構え、エイプモンキーを見つめる。
「ウッキッキ、判ってるウッキな。的が小さいのは少々不利ウッキが、さしたる問題ではないウッキ。ユーのユーベルコードの弱点は、ずばり其の無差別性ウッキ。無差別であるがゆえに、迅速な援護を受けられない……つまり、時間こそが敵なのだウッキ。援軍が来ても、ユーが死んでいたら無意味なのだウッキなあ。どうするウッキ? 逃げ帰って、大規模なところに助けを求めるウッキか?」
「そんな事をしてたら二度手間だろ。だけど……賭けてみる価値はある。“こちらハイト! 誰でもいいから聞いていたら支援砲撃を頼む!”」
フェアリーの戦士が飛び出す。支援砲撃を待つ前に、攻撃を仕掛けるやり方か。エイプモンキーも意趣返しのつもりか、手に銃を召喚し、ハイトに向かって構えた。
「ウキーッキッキ! どれくらいで援軍が来るのか、見物だウッキな!」
ぱん、と特に狙いを定めず弾丸を放つエイプモンキー。ハイトは其の弾道はフェイクだと読み、まずは一撃を避ける。すぐ体の下を、熱を持った弾丸が過ぎゆくのを感じる。
「……お前、俺が本当に援軍を要請したと思っているのか?」
「ウキ?」
「今のはただの演技で、ユーベルコードではないと言ったら?」
「……ほう……ミー相手に心理戦を挑むウッキ? なかなか面白い冗談だウッキ」
「いや、本当に援護が来るかも知れないぞ? ほら!」
スナイパーライフルを構え、ハイトが撃つ。弾丸は二発、援軍の弾丸と見せかけるには薄すぎる弾幕だが、疑わせるには十分な弾数。
「いいウッキ! 今のがフェイクでも――」
「“こちらハイト! 聞こえていたら援護をくれ!”」
「何!?」
「さあ、今のはフェイクか本当か……判るかな!?」
嘘と嘘の読み合い。弾道と弾道の読み合いが続く。――ふと背後に殺気を感じた気がして、ハイトは体を傾けて右に逸れる。
「ぐ……っ……!」
ばしゃり、と血液が跳ねた。ハイトの左腕をこそぎとって行ったのは、先程エイプモンキーが放った弾丸か。
「ウキーッキッキッキ! 死角から抉られる気持ちはどうウッキか!?」
「良いものじゃないな。お前こそ、どれがジョーカーか判らないカードを見せられてる気分はどうだ」
「ウキッキッキ! 良いものじゃないウッキな!」
左腕が使えずとも、肩を使えば右腕でライフルを構えられる。少しふらついても、相手は大柄な猿だ。少々の弾道の乱れは計算に入れておけばいい。
左腕がどれほどの損傷なのかは見ない。見ても意味がない。この猿を騙しきる事に、今は生命リソースの全てを使い切る……!!
弾丸と、弾丸が舞う。
エイプモンキーの不思議な弾丸が舞い、第六感をフル回転させてハイトはそれらを避ける。避けられなければ右へ傾斜し、左半身の損傷で済ませる。
ハイトのだまし討ちが弾丸となって舞う。援護を要請する口上を何度となく述べながら、ふらつくライフルを構えて弾丸を二発ずつ放つ。
「そろそろ飽きてきたウッキな……ユーも疲れてきたウッキ? そろそろ終わらせるウッキ」
「そうだな……俺もそろそろ終わらせたい。“こちらハイト! 聞こえていたら援護をくれ!”」
「もう聞き飽きたウッキー! 見え見えのフェイク、このミーには」
どぱんっ。
「……ウキ?」
花が弾けた。
続いて、エイプモンキーの足元が。そしてついに彼自身に着弾し、あちこちに弾丸の穴が開く。
「ウキィッ
……!!」
「読み間違えたな。……長い心理戦だった」
弾丸の波に乗り、翅のない妖精がこれまでにない速度で舞う。エイプモンキーの眼前に降り立つのと、狙いを定めるのは同時――
「……こういうのは、シンプルな方が巧く行くのさ。俺の勝ちだ」
●幕間
“この”エイプモンキーは灰となって斃れたが、恐らくまた復活するだろう。
ぼろきれのような左半身を顧みることなく、ハイトは次の戦いに向けて考える。記憶の引継ぎがないなら、同じ戦法で戦う事も出来るかも知れない。
「おい……ええと、君、大丈夫ですか」
考えていると、傍の花畑に倒れている人影を見つけた。エイプモンキーが敢えて其処に寝かせておいたのだろうか。
「う……ううん? ここは……私は薬を飲んで……」
「薬? よく判りませんが……エイプモンキーは斃れましたが、またすぐに復活します。今は退いて、戦線を整えましょう」
「エイプモンキーが? ……そうですか、判りました。支えてもらう訳にもいきませんね、少し遅くなりますから、先に行って……って、貴方もひどい傷じゃないですか」
「ええ。ですから、同行します。傷を癒やしに戻りましょう」
一人の人狼とフェアリーは、来た道を帰るために歩き出す。何度倒せばあの猿の顔を見なくて済むのか、計算したいところだったが……あの甲高い笑い声が聞こえてきそうで、やめた。
大成功
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