はじまりはワイバーンから
●食パンおいしいです
猟兵たちは既に集まっていた。
なのに、一向に説明役――つまり、グリモア猟兵が来やしない。
心待ちにしていた華々しい冒険の数々。
それがついに幕開ける、その記念すべき一歩目だというのに……一体、なにをしているんだ?
もう待ってはいられない。
痺れを切らした猟兵の一人が、別のグリモアベースに向かおうとターンしたその瞬間だった。
「おッ……待たせ、しましたぁ!!」
思わず気が抜けてしまうような、高い声が拠点内に響く。
蜜柑色の髪の毛、ぴんと大きく飛び出たアホ毛。
壁に手をつき荒い呼気を整え、背筋を伸ばす。
エルフだと一目でわかる長い尖り耳は、左右ともヤジロベエのように下がり調子なのが特徴的である。
「セ、セーフですか? セーフですよねっ?」
アウトである。
呆れたような猟兵たちの視線を受けて、蜜柑頭のグリモア猟兵フィン・クランケットは、てへへとばつが悪そうに笑い、頭を掻いた。
●そして、本題へ――
「はいなっ。というわけで!」
パチン。
手を叩く乾いた音。ちゅーもーくっ!と、蜜柑頭が手を振る。
「みなさんお待ちかねの、お仕事!ですよぉ~。えとえと、今回はー」
ごそごそと腰に付けたポシェットを探り、取り出だしたるはカンニングペーパー。
視線を落として、読み上げる。
「アックス&ウィザーズでの事件です。内容としては、ワイバーン退治ですね」
つよいぞーこわいぞー。このグリモア猟兵、身振り手振りがやたらにうるさい。
説明の口調に難はあるが、ワイバーンが強敵であることは事実だ。決して油断はしない方が良いだろう。
フィンは続ける。
「……と言いましても、存在を予知できはしたんですけれど、どこにいるのかという詳細な場所は掴めていなくって」
たはー。
参りましたねぇと笑う女には、一々緊張感というものが欠ける。
「なので、ワイバーンの捜索から含めて取り組んでいただくわけですけれど、出現予測地点の森はそれなりに広く、隠れる場所もたくさんあるので、一朝一夕とはいかないと思うんです」
というわけで!
フィンは、びしっと指を三本立てた手を猟兵たちへと突き出した。
「皆さんにやっていただきたいことは、3つ。1に【森でのキャンプ地の設営】、2に【ワイバーンの捜索】、3に【ワイバーン退治】です」
うにょんうにょん。
指を動かす。
ドヤ顔で。
何を誇っているのかは本人にも分からない。
「あちらでの動き方は、わたしも同行しますので追々おはなしするとして……最初は森の中でのキャンプ設営をお願いしますね。力自慢さんやテントや罠を設置する器用自慢さん、お料理自慢さんも大活躍できちゃいますよぉ」
同道する猟兵たちは、他にどんな能力を披露してくれるのだろう。
皆さんの活躍、楽しみですねぇと女は言い、
「森はワイバーン程ではないとはいえ、モンスターも生息する危険地帯ですから、拠点づくりは重要ですよぉ。張り切っていきましょうね!」
頼りにしてますよぉ。
そう言って蜜柑頭の腕とアホ毛は、天高く振りかざされるのであった。
えいえいおー。
夜一
お初にお目にかかります。
第六猟兵サービス開始おめでとうございます。
MSとしてお世話になります、夜一と申します。
どうぞよろしくお願いします。
皆さんのキャラクターをそのキャラクターらしく、魅力的に描けるよう精進してまいります。
さて、初依頼です。
当NPCの説明があまりにも分かりづらいので、以下シナリオ内容の捕捉です。
シナリオは全部で3章仕立てとなっております。
章ごとに行動指針と内容が異なり、該当の章をクリアしないと次章へは進めませんので、ご注意ください。
●シナリオ内容
(行動内容は一例です。実際のプレイングは能力を生かした自由な発想で出していただいて構いません)
「キャンプ地設営」
●POW 設営に必要な力仕事や夜の見張りなど
●SPD 技術や料理での生活環境整備など
●WIZ キャンプ設営地の探索やトラップ設置など
「ワイバーンの探索」
●POW 虱潰しの探索など
●SPD 標的の痕跡を探して追跡するなど
●WIZ 地形や気候など或いは目撃情報を元に、標的の居場所を推理するなど
「ワイバーン退治」
純戦。ユーベルコード大活躍。
●森について
冬でも緑の葉をつけた木々が生い茂る、手付かずの森です。
町や村からも離れた場所にあります。
大小様々なモンスターの生息地となっており、冒険者が来ることも稀にあります。
目的であるワイバーンでないモンスターに襲われることもあるかもしれません。
目新しい形式の依頼。新しい世界。
MSとしても緊張するとともに、大変楽しみに思っております。
世界の始まりが、何方にとっても楽しい冒険の始まりとなることを願って。
皆様の個性あふれるプレイングを楽しみにしております。
第1章 冒険
『荒野のキャンプ』
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POW : 寝ずの番で警戒する
SPD : キャンプ技術や美味な料理で環境を整える
WIZ : キャンプ場所を探す、敵を誘う細工をする
👑11
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●そして、猟兵たちは、異世界の地に踏み入る。
緑の鬱蒼と生い茂る森に、気配が増える。
森に潜んでいた生き物たちが姿を現した……というわけではない。
一度に複数の気配が、同時に、しかも瞬時に出現したのだ。
とん。
森の湿った土に、足音が響く。
みかん色の髪の毛のエルフ、フィン・クランケット(f00295)が、ふぅと息を吐いた。
「さ、皆さん。ご到着ですよぉ」
グリモアを展開する彼女は、あまり皆の作業を手伝えないのだと申し訳なさそうに肩を縮こませた。
けれど、名乗りをあげてくれた面々を振り返ると、ちゃっかり甘えるように肩を竦めて、
「それじゃあ、おしごと張り切って参りましょーっ! ……よろしくお願いしますね♪」
ウィンクなんかを送るのだった。
猟兵たちが森を行く。
久遠寺・遥翔
ファンタジー世界か。来るのは初めてだな!
まずは拠点を立てない事には安心して探索もできやしねぇよな。
とにかく設営に必要な荷物の運搬は任せて貰うぜ。
キャンプ地点に到着したら周囲を警戒しつつ
手早くテントやらを立てていく。周囲に柵も立てておかないとな。
ただオレは細かい作業はあまり得意じゃないから
ちゃんとした罠やらの準備や設置は器用な奴らに任せるぜ。
設営が終わったら一先ずは見張りに立って周囲を警戒する。
交代できる人間がいれば交代で休憩をはさみ疲れを残さないようにしたいが
それは状況次第だな。
見張り中に怪しい気配や影などが見つかったら影の追跡者を召喚して追わせるぜ。
それじゃ張り切って行きますかね。
キャサリン・エンスレイヴ
・POW
a.独り、目を閉じて寝るふりして体力を温存しつつ、実は薄目を開けて敵を警戒する。
・SPD
a.「美味? オブラートって革新的な発明だよな!」
蛙・ムカデ・そこら辺から抜いてきた雑草…らしきものを包丁すら入れずに鉄鍋に放り込み、出汁を強精剤として提供する。
味は具体的にいうとボディブローされる衝撃をもたらし、隠し味の蟹肉がかえって『食べれる物』として舌に認識させてしまう。
・WIZ
a.予め味方全員と示し合わせたうえでキャンプ場所の選定・テントの設営・料理に食事を済ませておく。
万一交戦状態に陥った際の戦場となる場所を想定し、見張り役を立てる。
然る後に戦場へ紅い世界を使用。敵を誘い出す。
ビスマス・テルマール
◎キャンプ地設営
●事前用意
魚介類のなめろう
茄子のなめろう
ササミのなめろう等を
トマト味噌、白味噌
イチジク味噌、バナナ(魚介類のマグロのなめろうのみ)
を各種3種ずつ
(魚介類は4種)
を10個ずつ真空パックしたのを
クーラーBoxに入れ用意
調味料や皿がわりのホタテの貝やお椀も
●【SPD】で魚介類のなめろうはホタテの貝に詰めて、網の上で焼いて
さんが焼きにして、他のなめろうはそのまま皆さんにご馳走して、備えるついでに、なめろう布教を
さんが焼き以外にも
魚介類のなめろうはお湯に
とげば、暖かい即席の味噌汁になるので、此方も皆さんに
ご飯が在れば、醤油で
なめろう丼にも出来ますが…難しいですよね。
※アドリブ絡み大歓迎
ユウヤ・シュバルツ
「さぁて、とりあえずキャンプを立てねぇとな!」
【風霊召喚】を使用し、相棒であるシルフを呼び出しテントの設営や料理の手伝いをしてもらいます。
「腹が減っては戦は出来ねぇっていうだろ?」
「まぁまぁ、こう見えて料理は得意なんだぜ?」
御門・結華
マスターであるユウヤ・シュバルツ(人間のシーフ・f01546)の手伝いに動きます。
指示に従いキャンプ設営の手伝いを行います。
【トリニティ・エンハンス】を使用し身体強化をかけます。
「マスター、力仕事は任せて下さい」
マスターがシルフを呼び出すと仲良さげな二人をみて、無表情ながらジト目を向けます。
「……楽しそうで何よりです」
食事のあとは寝ずの番に加わります。
「美味しかったです。マスター、ありがとうございます」
眠気対策になるか分かりませんが【トリニティ・エンハンス】で状態異常力を強化しておきます。
「マスターは少し休んでください。ここからは私たちの仕事です」
●そして、猟兵たちは、異世界の地に踏み入る。
緑の鬱蒼と生い茂る森に、気配が増える。
森に潜んでいた生き物たちが姿を現した……というわけではない。
一度に複数の気配が、同時に、しかも瞬時に出現したのだ。
とん。
森の湿った土に、足音が響く。
みかん色の髪の毛のエルフ、フィン・クランケット(f00295)が、ふぅと息を吐いた。
「さ、皆さん。ご到着ですよぉ」
グリモアを展開する彼女は、あまり皆の作業を手伝えないのだと申し訳なさそうに肩を縮こませた。
けれど、名乗りをあげてくれた面々を振り返ると、ちゃっかり甘えるように肩を竦めて、
「それじゃあ、おしごと張り切って参りましょーっ! ……よろしくお願いしますね♪」
ウィンクなんかを送るのだった。
猟兵たちが森を行く。
フィンに続きグリモアベースから異世界に飛び込んだ久遠寺・遥翔(f01190)は、初めて訪れるアックス&ウィザーズ――ファンタジーの世界に心躍らせる。だからと言って任された仕事を忘れはしない。
「ま、張り切って行きますかね」
まず拠点が重要と、キャンプ地を定めながら、快活に仲間たちに声を掛ける。
「設営に必要な荷物の運搬は任せてくれよな」
森の入口付近を軽く見て回った一行は、キャンプ地に適した少し開けた場所を見つけた。
水場もそれほど離れておらず都合がよい。
「ここにしよう」
そういった声は、少女の繊細とも言える見た目からはギャップのある……掠れ声だった。
ミステリアスな少女、キャサリン・エンスレイヴ(f01442)は、仲間たちを集め、すらりと伸びた細い腕を伸ばした。
「水場も近い。丁度いいだろう。見張りは交代でやるのはどうだ?」
みな異論はなく。設営場所についても、見張りの件についても、すんなりと了承が得られた。
「さぁて、とりあえずキャンプを立てねぇとな!」
ユウヤ・シュバルツ(f01546)の声が、仲間たちを鼓舞するように響いた。
つい1年前まで森で育ってきた彼にとって、見知らぬ地、危険なモンスターの巣であっても、不安な様子は露となく。
それも心強い相棒がいるとなれば、尚の事だろう。
「頼むぜ、シルフ」
【風霊召喚】――ふわりと、柔らかな風が木々の間をすり抜け、ユウヤの元へ収束する。
姿を現したシルフは、嬉しそうに頷くと、その場で一度くるりと宙を舞った。
「……楽しそうで何よりです」
元は自分の契約した精霊であるとはいえ、二人の仲良さそうな姿を見れば、少しだけ思うところがある。
御門・結華(f01731)は、じーっと二人を見つめた。
表情は変わらないものの、そこには間違いなく複雑な心境というものがあるのだ。
ドールと言えど、純粋な14歳の女の子なのだから。
けれど、人形は、己の本分を違えない。淡々と、主へ言葉を向ける。
「マスター、力仕事は任せて下さい」
契約が途切れたはずの風霊をも従えて、能力を強化した彼女は、こてりと首を傾げた。
「マスター。さぁ、指示を」
「へぇ、器用なもんだな」
キャンプの周りに巡らせる柵の木材を運ぶ足を止めて、遥翔が感心したように声を上げた。
彼の視線の先では、キャサリンが敵を誘きだす簡単な細工を仕掛けているところだった。
つっけんどんな応答に気を悪くすることもなく遥翔は笑う。
「オレは細かい作業はあまり得意じゃないからな、器用なやつが細かい作業してくれるのは助かるぜ」
「そちらこそ、手際がいい」
褒めている訳ではないが、目の前の少年は確かに本人の言う通り力仕事が得意らしい。
他のメンバーの力ももちろんではあるが、彼の気取らない性格のお陰だろう。キャンプの設営はとんとん拍子に進み、その大部分は粗方終わったようなものだ。
「俺はこういう大雑把な仕事の方が気が楽だからさ」
少年は、木材をよっと掛け声とともに担ぎ直すと
「だから、料理とかはアンタらに任せるぜ」
よろしくな。冗談めかして言った言葉に、キャサリンは少しの間を置いて、
「ああ、任せるといい」
にやりと笑みを浮かべた。
可愛らしい鼻歌が聞こえる。
きらりきらり。
虹のような輝きを放ちながらも、どこか、海のような青を基調とした体を持つクリスタリアン、ビスマス・テルマール(f02021)は危険な森の中であっても、まるで自宅のキッチンのような朗らかさで料理を始めていた。
持ってきた食材は、
なめろう、
なめろう、
なめろう、
後は各種味噌など。
何を隠そう、ふわふわとしたオーラを放つ彼女は、なめろうに只ならぬ拘りを持つ『なめろう猟兵』と言って過言ではない人物なのだ。
なめろう猟兵って何だ。
「何でなめろうなんだ……?」
遥翔、ユウヤの男性陣がその様子に思わず手を止め呟いた言葉を耳ざとく捉え、ビスマスは、ぐいっと身を乗り出す。
「知りたいですか!?」
それまでほのほのと調理していた少女が一変、爛々と瞳を輝かせ始めたことに、その場の猟兵たちは呆気に取られざるを得ず。
沈黙は肯定ですよねとばかり、熱烈ななめろう布教を始めるビスマス。
更にその裏ではキャサリンが、蛙・ムカデ・よく分からない雑草……といった自然味溢れすぎる材料で強精剤をつくろうとしており、何ともカオスなキャンプ飯になりかけたりしていたとか。
「まともに料理してんの、オレだけじゃねぇか」
料理が得意なユウヤがぼやく横、
「美味しかったです。マスター、ありがとうございます」
結華はすまし顔で礼を言うのだった。
食事の後は寝ずの番。
それぞれ決められた順に見張りをこなす。
思いのほか冷え込む森の夜に、心強い味方となったのは、
「はい、どうぞ。あったまりますよ」
なめろうをお湯に溶かした即席味噌汁だ。
吐く息白く、湯気と混じり合う。
一人、眠る振りをしながら周囲を警戒していたキャサリンにも、その香りは隔てなく届いた。
素朴で、独特で、不思議と温かみを覚える香りだった。
大成功
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第2章 冒険
『荒野の探索』
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POW : 荒野を虱潰しに強行軍で探索する
SPD : 標的の痕跡を探して追跡する
WIZ : 地形や気候、目撃情報から居場所を推理する
👑11
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●動き始める者。
夜を越え、朝が来る。
飢えた獣や弱いモンスターがぽつりぽつりとキャンプに近づくこともありはしたが、幸いにも最初の夜は比較的穏やかに終わった。
日が昇り、再び猟兵たちは森の中へと向かう。
この森のどこかに潜んでいる『ワイバーン』を見つけ出すために。
●獣二匹に小動物
「はーい、いらっしゃいましー♪」
グリモアベースから新たに飛んできた犬曇・猫晴(f01003)、白斑・物九郎(f04631)、そして東風・春奈(f05906)にフィンが挨拶をする。
猫晴はどーもと頭を下げて、空を見上げた。
異世界でも、空の色は変わんないんだねぇなんて緩く笑って。
「ァー……本丸の発見はまだ、と。ンじゃちゃっちゃか見つけて、ブチ殺してやりましょうや」
感情の起伏があまり見えない青年に対し、明らかに不機嫌そうな声が続き、樹々で休んでいた鳥たちが、皆驚きに飛び立った。
あるいは、“獣の気配”に怯えたのかもしれない。
「だめですよー? 鳥さんたちを驚かせちゃ」
チィチィと、小鳥の鳴き声を真似ながら、散った小鳥を集めるように。
可愛らしい声は風に乗り、森の空気に溶けた。
そよ風が残した余韻の後、
「よろしくお願いしますね」
春奈は笑い、先に到着していた皆に挨拶するのだった。
飄々とした青年と白斑の黒猫とうさぎを思わせる小さな少女。
三者三様な面々を新たに加え、ワイバーンの捜索が始まった。
●狩る算段は
「ここからが本番だ。なんとしてもワイバーンを見つけ出さねぇと」
気合を入れなおした遥翔が、仲間たちに声を掛けた。
少し遠巻きにして聞く者、既知ゆえに近い距離で聞く者。
各々、自分が好む距離で集まれば、不格好な輪ができる。
「ワイバーンさんは、森のどこかに隠れているのでしょうかー?」
春奈が可愛らしく小首を傾げる。
「それともー、どこかから森へやってくるのでしょうかー?」
どちらでしょうねー?
何かと不安なグリモア猟兵も、一緒に首を傾げていた。あてにはならないようだ。
相談の場になると、皆、最初の一人になるのを避ける場合がある。
そんな中、厭わず口火を切ったのは――、
「まずは痕跡探しと生態の類推、そんれもって追跡。狩りの基本っスね」
物九郎だった。
くぁと欠伸を噛み殺し、木に凭れ掛かって詰まらなさそうに目を細める。
そんな少年の様子を横目、どこか薄曇りめいた空気を持つ猫晴は、へらりと笑みを浮かべた。物九郎の提案に同意しながら、私見を加える。
「ワイバーンって事はそれなりに大きいだろうし、特に森の中なら動き方が限られるんじゃないかな」
「俺もそう思う」
キャサリンが続く。
少し離れた場所いた彼女に注目が集まったが、少女は誰とも視線が合わないように、そっと方向を外した。
「異世界の知識ではあるが、竜種の生態で聞いたものがある。その方面から探してもいいと思う」
「竜種の生態って?」
聞き役に回っていた遥翔が問うも、そこはしれっと交わすウィザードである。
つれないねぇと猫晴が茶化す。
「生態。では、天候などからも予測ができないでしょうか?」
雲と風の流れを目で追いかけて、結華が意見を出す。
「もしくは目撃情報ですとか」
「目撃情報か。この森にはどのくらい訪れる奴がいるんだ?」
結華の言葉を受けて、ユウヤが問いかける。
問う相手は、この事件を予知したエルフのグリモア猟兵。
みかん色のアホ毛をしおしおと萎びらせた女は、さむさむなどと言いながら、何気に焚火に一番近い場所をちゃっかり陣取っていた。
声を掛けられ、ぱちくり、目を瞬かせる。
「う~ん、冒険者の方は時々来るみたいですねぇ。すごく多いわけじゃありませんけど、すっごーく少ないってわけでもなく」
腕組み、難しい顔をしてみせたグリモア猟兵は、ぱっと笑顔に切り替えると、
「運次第ってやつですねぇ♪」
と、本人同様に大雑把な返事をするのだった。
朝餉のなめろうアレンジ料理を作っていたビスマスは、皆に朝ごはん代わりのそれを渡しながら、
「わたしは、しらみつぶしに歩き回る位しか」
そう言って、軽く眉間に皺を寄せた。
「でも、体力の続く限りがんばりますから」
お料理上手の一般女子に見えても、彼女だって立派な猟兵。
心意気はフルチャージ済みだ。
「それじゃあ、俺と一緒だな」
遥翔が言い、
「同じような探し方する奴は探索場所が被らない方がいいだろ。簡単に方角だけでも決めておこうぜ」
「って言っても、この森そこそこ広いよね」
「ああ、ばらばらに散ってしまうのも効率が悪いな」
猫晴とキャサリンが言葉を繋げる。
モンスターに遭遇した場合の対処のことなどもある。
「では、まずはキャンプ地周辺から徐々に捜索範囲を広げていくのはどうでしょうか?」
結華が提案し、
「わかった。んじゃ、今日はこの辺りを重点的に探すか」
「オーライオーライ。方針にゃ従うッスよ」
ユウヤ、物九郎と続いて同意があれば、これで事は決まりとなって。
一同は行動に入るのだった。
と、その前に、
「お弁当持って行ってくださいね?」
「帰り道、分からなくなったら大変ですよー。私、たくさん方位磁石を持ってきたので、もしよかったら、貸してあげますよー」
抜け目なくさんが焼きを持たせるビスマスと、憂いなく備える春奈なのだった。
ビスマス・テルマール
●POW を駆使し
森の中を体力の続く限り
しらみつぶしに歩き回る
位しか思いつきませんが
基本的にはその行動で
時々木登りし
アームドフォードで
森の上空を砲撃の空砲を
花火みたいに打ち上げてみましょうか
ワイバーンを招く様に
弱いモンスターなら
モノによっては警戒して寄ってこないでしょうが
ワイバーンみたく
強いモンスターなら
騒音に反応して
コレにそちらから
よって来るでしょうし
フードファイト・ワイルドモードでなめろうを食べながら
精力的に動く感じで
魚も『肉である』事には違いは
ありませんものね
森の探索の中
同行者にも
なめろうを焼いた
さんが焼きを弁当がわりに
渡しつつ
※アドリブ掛け合い大歓迎
キャサリン・エンスレイヴ
・SPD
a.ワイバーン(以降、敵)の糞や樹木についた爪痕と思しき傷を探す。
明らかに食べ残しの動植物の死骸を発見できれば御の字。
b.ユーベルコードでこまめな罠の設置。
死角と心理的盲点、動物的習性を踏まえた種類と場所を選択。
・WIZ
a.予め目撃情報から大まかな居場所を絞り込む。
以降は[SPD]に準拠しつつ、敵の生態を推測。
竜種の可能性を考慮し、腐葉土が多く存在する土地をピックアップ。
異世界の知識ではあるが「腐葉土の摂取により胃からガスが発生し、金属もしく水晶に覆われた歯同士を打ち鳴らす事で炎を吐く」が調査の手法の動機である。
b.ユーベルコードの選択ミスったかな? 可能なら助言を求める。
●1日目
ザッカザッカ。土と草葉を蹴って勢いよく進む足音。
ビスマスは体力勝負とばかり、とにかく森を歩き尽くすつもりで行動している。
そう。
おっとり天然なように見えて実のところ、POWが人並み外れて優れているビスマスには、その方法が合っていたのだろう。
道なき道も苦戦することなく進んで行く。
時折、彼女のアイデンティティとも言える“アレ”の補給も忘れない。
残念ながら戦闘時ではないからなのか、肉体強化はうまく発動こそしなかったものの、それはさておき、 なめろうはエネルギーも塩分も補給できる万能食品。皆も食べましょうね!
その後ろ、キャサリンがユーベルコード【レプリカクラフト】で罠を創り設置しながら、痕跡を探す。
地面にしゃがみ込んで調べるのは土だ。
黒いそれを摘まみ、柔らかで湿っていることを確かめる。
森の土は冒険者以外の人間が入らないこともあり、よく肥えていた。
ワイバーンが竜種である可能性を考慮した彼女は、以前に聞いた『竜種がファイアブレスの攻撃に腐葉土を利用する生態』を探索に活かせないかと考えていたのだ。
だが……、
(この分だと、腐葉土の多少はあんまり問題にはならないかも知れないわね……)
それならそれで問題はない。
「存外、物おじしねぇ御仁っスね。あの彼女」
木の上に登っているビスマスを見上げたのは一瞬。
物九郎はすぐに金色の眼を左右に鋭く走らせ、痕跡を探す。
彼の言葉を使うのならば、『野生の勘ON』。
モンスターの類には困らぬ森だ、動物の死骸や“食い残し”程度なら難なく見つかる。しかし、
(違うな。こいつァ、“ハズレ”だ)
物九郎は、それを見てすぐさま断じた。舌打ちをする。
“ワイバーンレベルの強敵”――そこらに十把一絡げでいるようなモンスター同士が潰し合ったようなチンケな狩り跡じゃぁあるまい。
探索を続行しようと、物九郎は立ち上がり、先に進む。
――と、その時、砲音が森の樹々を震わせた。
ビスマスがワイバーンを音でおびき出せないかと、アームドフォートで空砲を撃ったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
白斑・物九郎
●SPD
痕跡探しと生態の類推、そんでもって追跡
狩りの基本っスね
野生の勘ON
まずワイバーンの狩猟方法を探らにゃっスね
そいつによるっポい小型モンスターの死骸なんかを探すトコから始めまさ
ソレっポいのを見付けたら傷口・死因を精査
喰われたっポい骸なら食性は勿論、牙・口腔のサイズから図体のデカさとかも程度読めましょうしな
そのテの死骸は腐食具合なんかも見て「狩りをした場所・時系列」と見做してメモ
得た情報を周辺地図に落とし込んでく形で敵行動範囲を追跡
狩猟・捕食の推定頻度から「次に狩りをやる頃」&「獲物はこんなの選びそう」ってアタリを付けて、時期と目標を見定めて「敵喰いに来そうなヤツ」を遠巻きに監視して待ちまさ
「ハ?」
“野性”を働かせていたのが仇となったのか、虚をつくビスマスの行動に、物九郎は一瞬注意を殺がれてしまった。
その上、キャサリンが“野生生物の習性”を考慮した箇所に罠を仕掛けていたとあっては――、
バチンッ!!
ぶらりぶらり。
「おや。すまんな。別の獲物が掛かってしまった」
逆さまの視界で、キャサリンが歩み寄ってくるのが見えた。
彼女は悪びれることもなく、罠に掛かった獣を見つめ、
「ユーベルコードの選択ミスったかな? 可能なら助言を求める」
「オタク、その前に俺めに何か言うことあるんじゃねっスかねぇ?」
真顔で淡々と問いかけるキャサリンに、黒猫がふしゃーっと尻尾を立てた。
「結局、収穫と言や――」
進んだ先で見かけた樹木に残された爪の痕。
それから、既に乾いたワイバーンの物と思わしき糞。
だけっスか、と、物九郎が楽しくなさそうに目を細めた。
爪の痕もついて数日が経過していることが見て取れ、少なくとも、実は標的と隣り合わせでキャンプしていましたということはないようだった。
情報をまとめたメモを、ヒラヒラと指に挟んで遊ばせる。
「でも、ワイバーンの動きや大きさは分かったじゃないですか」
一歩前進ですよというビスマスは、テンション低めの二人に挟まれても元気いっぱいだ。
「ああ。とりあえず一旦戻ろう。日が暮れる」
不機嫌に揺れる尻尾を殿に、三人は一度、キャンプへと戻った。
苦戦
🔵🔴🔴
犬曇・猫晴
獣の追跡といえば、痕跡探しが定石だよね。
ワイバーンって事はそれなりに大きいだろうし、少し拓けた場所の地面や木に足跡や傷痕がないか調べるよ。
大きめの糞とかもあるといいね。
その辺に落ちてる木の枝を使って何を食べてるか調べてみよう。
小動物とか果物なら、確保して仕掛け罠の一種、くくり罠と一緒に設置しておこう。
久遠寺・遥翔
ここからが本番だ。なんとしてもワイバーンを見つけ出さねぇとな。
まずは皆と相談して方針を決めよう。つっても基本的に俺は聞き側に回るぜ。
どの辺りから捜索するか方針を決めたら俺の出番だ。
有り余る体力と第六感に任せてその周囲、ネズミ一匹見逃さない勢いで炙り出してやる。
当然周囲の警戒もおろそかにはしない。邪魔する獣やモンスターなんかがいたら黒剣で追い散らすぜ。
ワイバーンらしき相手を見つけたらまずは影の追跡者を召喚して追尾させる。皆の準備が出来たら交戦開始だ。
御門・結華
WIZで判定します。
ワイバーンの目撃情報、現在の天候を元に大まかな現在位置を推理します。
その推理を地図で説明してユウヤ・シュバルツ(人間のシーフ・f01546)や仲間達に伝えて捜索の手がかりにしてもらいます。
「マスター、敵の目撃情報から推測するとこの一帯が怪しいと思われます」
ユウヤ・シュバルツ
御門・結華(色褪せた精霊人形・f01731)や皆の意見を聞いて、怪しい場所を中心にワイバーンの痕跡などを探索する。
「わかった。そこら辺を重点的に探すか」
【風霊召喚】を使用し呼び出したシルフに捜索と追跡を手伝ってもらう。
「さぁ、今日も頼むぜ。相棒!」
もし、ワイバーンの見つけたらすぐ皆に伝える。
「どうやら、当たりみたいだな」
東風・春奈
森のどこかにワイバーンさんが隠れているのでしょうかー?
それともー、どこかから森へやってくるのでしょうかー?
そうですねー。ワイバーンも生き物ですし、食事はされるのではないでしょうかー?
ワイバーンの餌ってなんでしょうかー?調べてみましょうねー
森の中で、餌になりそうな小動物の生息地を探しますねー。
そしたらそしたら、ワイバーンが来た痕跡がないか調べてみますー
戦いになったら、私の大砲でー、どかーん!と倒しちゃいますー
あ、それと、ですねー。森に入るときにきちんと帰り道がわかるよう、方位磁石を持っていきます。他の猟兵さんは平気でしょうかー。
もしよかったら、貸してあげますよー。
アドリブ描写など歓迎ですよー
●2日目
パチ、と、火花が爆ぜる音がした。
それが真実、彼から発せられた音なのか、それとも似た音が“そう聞こえた”だけなのかは分からないが――、ともかく、遥翔の炎のような瞳は、鼠一匹も見逃すまいとする彼の意気を表したように燃えているのだった。
「昨日調べたところではー、白斑くんたちが痕跡を見つけたのは、あっちの方角ですねー」
春奈が方位磁石とにらめっこしながら、森の奥を指さす。
「昨日の見つけたのは、傷跡と糞でしたっけー。私たちもがんばって、手がかりを探しましょうねー?」
にっこりと笑うけれど、意外に負けず嫌いなちっちゃい彼女。
絶対に手がかり見つけるもんっ、と遥翔同様に瞳を輝かせているのだった。
二人から少し離れ、ゆっくりとした足取りの猫晴は二人の様子に、
「ま。無理しない範囲でがんばろうね」
緩い空気感で応えるのだった。
「ワイバーンの餌ってなんでしょうかー?」
道すがら、春奈が疑問を口にする。
「昨日の情報共有だと、少なくとも獣っぽい毛は混じってたって話だよね」
糞に。青年は、レプリカクラフトで仕掛け罠を複製しながら答えた。
「じゃあ、動物さんの生息地を探すのは有効かもですねー」
春奈が言ったその時、
「なあ、獲れたぜ」
遥翔が道中で発見し、捕まえたうさぎを猫晴に差し出す。
『見つけたら教えてくれない? 別に捕まえてくれてもいいんだけど』
探索に出発する直前、猫晴は同行者二名にそう言っていたのだ。
「何に使うんだ?」
「あった方がいいでしょ、エサ」
言いながら、まだ生きているうさぎの首をくるんと捻る。小さな命は、その体よりもずっと小さな悲鳴を上げて、瞬間に潰えた。
仕掛け罠を設置して、“エサ”も罠に掛かりやすい場所へと配置する。それと同時に、くくり罠も設置する万端さ。
顔色一つ変えずに熟すのが、遥翔にはどこか、直感的に危うくも思えた。
――見た目から察するに、恐らく彼は、遥翔と非情に近しい「世界」の出身なのではないかと思える。
だからこそ余計にそう思えるのかもしれない。
「うーん。ごめんなさい、うさぎさん」
うさぎ耳をつけたドワーフが申し訳なさそうに、うさぎに手を合わせた。遥翔もそれに倣い、猫晴は二人を見守り。
そうして、先へ。
「悪いな、今はお前たちの相手してる暇はないんだよ!」
夕暮れ。
闇を好むモンスターが動き始める頃合いに、偶然フォレストウルフの群れに遭遇した三人は、已む無く応戦していた。
半身を黒い焔から成る異形の鎧で固めた遥翔は、その炎を生み出す黒い剣で一気に狼の厚い皮肉を切り裂き、燃やす。
「いやぁ、運が悪かったよね」
軽い調子で狼の咬撃をいなしながら、使い込まれた剣鉈を振り下ろし、骨ごと内臓を打ちまいて。
楽しげな声。猫晴が言う。
もうそろそろキャンプへ戻る時間だが、途中、罠を仕掛けた地点からワイバーンの声や音といった兆しはなかった。
他の班も本命を見つけたということはなさそうだ。
今日で丁度森の半分ほどを探索し終えたはずで、ならば、もう一日二日もあれば、と、どこか冷めきった頭で考えていれば、
「当たってくださーい! えいやー!」
高い声が思考を遮る。
春奈のアームドフォートの砲口がフォレストウルフの一体を捕らえ、キュィという微かな駆動音を最後、女神と呼ぶには余りに野蛮で、歌声と言うには余りにもしわがれた、その声を響かせる!
【女神はかく歌えり(ダス・アーティラリ・リート)】。
春奈独自のユーベルコードは、轟音と共に周辺の樹々を軽々と撃ち倒し、狼どもを肉塊へと変えた。
キィン、キンッ。
大量に排出される薬莢がぶつかり合う音は、或いは鐘の音に似ていたかもしれない。
静寂が戻る頃には、その“開けた空間”に立っているのは三人だけだった。
「おい、春奈! ちょっと危なかったじゃねえか……」
瞬発的に身を守った遥翔が、春奈に声を掛けようとした、
瞬間、
樹々を揺らし、地を割るような咆哮が轟いた!
「まさか
……!!」
振り仰ぐ。
黒に染まる空を、飛び去る紅。
羽ばたきの一つで風が渦巻き暴れ狂い、生き物たちが恐怖する!
間違いない……、
「ワイバーン!!」
春奈が叫び、
「追え! 【影の追跡者(シャドウチェイサー
)】!!」
遥翔が吼える。
されど、三人に気づいていないのだろうその影はあっという間に引き離し、優秀なる追跡者ですら振り切って、森の何処かへ姿を消した。
尚も追いかけようとする二人の肩を叩き、猫晴は首を振る。
「一度戻ろう。飛んで行った方角は分かった」
地図を復習えば、相手の位置は更に絞り込めるだろう。
明日には、必ず――。
●最終日
最早、ワイバーンは袋の鼠だ。
持ち帰られた遥翔たちの情報から猟兵たちは、三方向からじわじわと囲い込んでの探索及び挟撃を行うこととした。
ユウヤと結華の二人は他の班に比べて人数こそ少ないが、連携の練度で言えば最も高い。
他班に比べて一人人数が少ないとはいえ、それは裏返せば、意思確認の手間が少なく、素早く行動できるということである。
結華が地図を広げ、昨日の情報や当日の天気等からワイバーンの活動地点に見当をつけ、ユウヤに知らせる。
「マスター、これまでの情報から推測すると、この地点が最も怪しいと思われます」
「よし。じゃあ、その辺りまではサクサク行くか」
早く動けるという利点を活かし、存分に活かす。
ユウヤがにかりと歯を見せて笑い、一言で結華とアイコンタクトで確認を済ませると、彼の相棒――風の精霊を呼び出す。
「さぁ、今日も頼むぜ。相棒!」
呼びかけに応じ姿を現した精霊は、続く言葉を待つことなく、目的地へと駆け抜けて行く。
精霊の前には樹々などの障害物もあってなきに等しく、網目を掻い潜るように自在に、自由に、飛んでいく。
主であるユウヤと結華も、足早にその後を追っていく。
然程もせず、周囲は景色を変えていく。
出来て間もない傷跡や、食べ散らかされた大型の獣とモンスター。
空気に混じる血の匂い。
やがて、目的にも関わらず楽しげに飛び交っていたシルフがその動きを変える。ある場所へ近づいた瞬間、慌ててユウヤの元へと戻ってきて、彼の後ろに隠れた。
ピリリと、ひりつくような重圧が、この先にいるのが“並みのモンスター”でないことを語っている。
「マスター、発見しました」
「ああ、……どうやら、当たりみたいだな」
木々の隙間に、赤が覗いた。
グォォ、グォォと、捕獲されたのだろう“何か”が哀れに喚く声と、グチャグチャと下品に物を喰らう音。
「結華、みんなに合図を」
ユウヤが森の奥に潜む者から目を離さぬままで指示を送る。
結華は精霊たちの力を借りて、森の近い位置にいるはずの仲間へと合図を放った。
ワイバーンという強敵を前にして……緊張感か昂揚か、少年の顔にはなぜか笑みが浮かんでいた。
「行くぞ、決戦だ」
大成功
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第3章 ボス戦
『ワイバーン』
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POW : ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
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御門・結華
近接戦を挑むユウヤの邪魔をしないよう、発射した後のコントロールが効く【火精の息吹】をメインに使用します。
「サラマンダーよ、我が敵を焼き払え」
右手で抜いたフレイムソードを振るい【属性攻撃】【全力魔法】を乗せた複数の火球に敵を追尾させます。
「マスター、私が援護します。存分に戦って下さい!」
全ての火球を撃ち出したら即座に【2回攻撃】で再び火球を生み出し撃ち出します。
「マスターが頑張っているんです。休んでなどいられません」
敵の急降下して来たら、左手でアクアブレードを抜刀し、刃に水を纏わせた【属性攻撃】に【怪力】を駆使した【武器受け】で衝撃波や爆風を【なぎ払い】ます。
「全力で行きますよ、ウンディーネ!」
ユウヤ・シュバルツ
結華に後方支援を頼み【霊獣召喚】で巨大な鳥の霊獣を呼び出し【騎乗】して【空中戦】をワイバーンに挑みます。
「結華、援護は任せたぜ」「いくぞ、ワイバーン!俺たちが相手だ!」
ワイバーンに上を取られないよう、巨鳥を操ります。
「アンタと同じ上空なら、いつもの下ばかり狙った浅知恵も使えねぇだろう?」
敵の攻撃を【見切り】ながら、巨鳥を操り爪や嘴を使った【2回攻撃】を繰り出します。
「チッ、流石の体格とパワーだな!」
「けど、オレたちも小回りやスピードじゃ負けちゃいねぇぞ!」
相手が結華たちに狙ったり、巨鳥の操作が間に合わない場合は、片手でダガーを抜き【投擲】して隙を作る。
「チッ間に合わねぇなら、コイツでどうだ!」
ビスマス・テルマール
●POWで勝負です
トリニティ・チルドナメロウで
攻撃力重視で強化し
攻撃には
ユーベルコードで
生成した冷凍クロマグロソードで2回攻撃を叩き込み
一撃離脱しアームドフォードで
一斉発射
当たりそうに無かったら
誘導弾
隙を見て冷凍クロマグロソードで2回攻撃して一撃離脱
その流れを早業を駆使して
行います
攻撃された時の対象は
ディメイション・チョップスティックとパイルバンカーモードの切り替えで武器受けと盾受けで対処(どちらか有効そうならそちらで)
衝撃は受ける瞬間バックステップで緩和の試みを
駆け回りつつ
遠距離攻撃も白兵戦も
成るべく死角から
或いは振り向かなきゃならない位置から
ここで終わらせます
通りすがりのなめろう猟兵として
久遠寺・遥翔
▼決戦
ついにワイバーンとの決戦か
なるほど、確かにお前は地上の獲物を狩るのに慣れているらしい
だがだからこそお前の戦術はそいつに特化している
それこそがお前の敗因だ
身に纏った鋼翼魔装フェンリルのブースターを駆使して
ジャンプからの空中戦を仕掛ける
大気圏下では完全な飛行は難しいかもしれないが
この森なら木々を足場に跳躍すれば相手の頭上を取ることもできる
基本は木々の間をダッシュで飛び回りながら高速の斬撃で牽制
味方とも連携してなんとか相手の隙をつき
頭上を取れたらそのまま相手に乗って
至近距離から焔黒掌を叩き込む
「頭上、取ったぜ。焼き尽くせ焔黒掌(レーヴァテイン)ッ!!」
東風・春奈
大砲にも種類がありましてー、対空砲というものもあるんですねー。原理は他の大砲と一緒なんですけどー、撃ち方が大事なんですねー。空に向けて、勢いよく、弾幕を張るんですー
私は砲兵(アーティラリ)ですからー、空の敵から皆さんをお守りしましょうかー
というわけで、空のワイバーンに向けて、大砲をどかどか撃ち込みますよー。主砲だけではありませんー。むしろ後ろの副砲は速射砲といいますかー、機関砲といいますかー、とにかく弾速が速い大砲なんですー
それを使って、「他の猟兵さんへの攻撃の妨害」とー、「ワイバーンさんの注意を惹いて」みますねー
味方の支援を中心に。
連携描写や、夜一MSさまの判断でのアドリブ描写は大歓迎ですー
犬曇・猫晴
ご機嫌よう森の王様、国民が謀反に来たよ。
事前に影の追跡者を召喚しておき、自分の死角を補う様に立ち回らせるよ。
ぼくがやるのは牽制、敢えて警戒させて隙を作るよ。
飛んでいるならば銃を、地に降りているなら接近して剣鉈を振り回す。
命を脅かす攻撃じゃないけど、足元をうろちょろされるのは鬱陶しいことこの上ないよね
キャサリン・エンスレイヴ
・作戦
a.敵のPOW&WIZに備える。
「ニ、三名ついてこい!」
参加者有志orいないなら単独で突出し、ぎりぎりまでひきつけて紅い世界を使用。
b.例え倒れても。
「(参加者の名前)、まだ生きているなら俺の援護をしろ!」
倒れた者を犠牲と思わず盾と見なす。死ねば自分も同じ事。
c.敵へ向け、紅い世界で絨毯爆撃(用法は違うが気にしない)。
d.敵のWIZの爆風により、飛ばされるタイミングで紅い世界を精密射撃。
精密射撃が無理でも、あたりをつけてニ、三発撃ち込む。
無論、他参加者の身の安全を考慮した上で行う事とする。
e.「今日はカレーだぜ!」
ワイバーンの死骸を保存食として加工し、他は全て調理して皆に振る舞う。
●犬であり、兵
「ご機嫌よう森の王様、国民が謀反に来たよ」
“王様”と、言う言葉の軽さ。
青年は、冗談めかしてお辞儀をした。
その手に銃と剣鉈を持ったまま。
細めた目を殺意で曇らせ、過去から生じた澱みを晴らすという大義名分を翳して――、
入国三日目にして、牙を剥く。
だって、まぁ、仕方ないよね?
木の影と青年の影が重なった。
●天を駆ける者
(ついにワイバーンとの決戦か)
遥翔は竜の巨体を前に、そう思わずにいられない。
彼の背に輝く鋼鉄の翼は、『鋼翼魔装フェンリル』、飛行ユニットとしても使うことができる、特別製のアームドフォートだ。
大気圏下では、長時間の安定した飛行こそ叶わないだろうが、足場の多いこの地形であれば跳躍しつつフェンリルのブーストを活かすことで空中戦が可能だろうと遥翔は睨んでいた。
戦場へと駆け付ける勢いそのままに、遥翔は地面を、そして近くの樹を、足掛かりに。
「鋼翼魔装フェンリル、ブースターON!」
鋼の翼から焔が噴き出し、少年の速度は増す。増す。高速まで。
樹から樹へと飛び移り、勢いを増して、最高点へと到達する。
正面に黒銀の角を持つ金目の竜が、いた。
黒焔を纏い、少年は竜と対峙する。
遥翔がワイバーンと向かい合って生じた時間で、ユウヤはユーベルコードを発動させる。
シルフを呼び出す時、ユウヤの元には彼にじゃれつくような心地好い風が集う……だが、今ユウヤの眼前にはその時とは比べ物にならない強風が収束し、小型の竜巻にも似た渦を巻いていた。
「風の精霊の契約に従い、召喚せよ」
言葉が終わると同時、風の繭の中から生じたのは、体長3mを超える巨鳥。
ユウヤの【霊獣召喚(サモンビースト)】によって呼び出されたそれは、猛り叫んだ。
「結華、援護は任せたぜ」
低い声で少女へ言い置くと、ユウヤは素早く霊獣の背に飛び乗り鳥を空へと駆り立てる。
怒れるワイバーンへと向かい。
食事の邪魔をされた怒りもあるだろう。翼竜は、突然現れた乱入者へと激しい威嚇を向ける。
その咆哮は枝葉を散らし、その翼は突風を巻き起こす。
「火の精霊よ」
静かに唱える声が響けば、灰色の少女の周囲に、15個の火珠が生じ、踊る。
「我が敵を焼き払え」
敵が完全に地面から離れる前にと、結華が契約している精霊の一、火の精の力を借りて【火精の息吹(サラマンダーフレイム)】でワイバーンに牽制を掛けた。
火珠は、全てを一度には使わない。自身では手の届かぬ空中での戦いには、必要な力なのだから。
(マスターの頼み、必ず……)
忠実なるドールは、彩度の低い髪に、瞳に、火色の光を映しながら、ユウヤの援護に回る。
「マスター、私が援護します。存分に戦って下さい!」
日頃荒げることの少ない声を大きくして、主へと叫び。
主たる少年は振り返らない。
代わりに、声高らかに敵へ告げる。
「いくぞ、ワイバーン! 俺たちが相手だ!」
ユウヤは常に敵の上空を制することを意識して立ち回る。
彼同様、空中戦を仕掛けた遥翔は、急増のチームながら、上手く互いの動線が重ならぬよう、前後左右と素早く回り込んでワイバーンを翻弄する。
自分よりも上空からの慣れない攻撃に、やはり竜は苦戦する様子を見せて。
敵が眼下の敵を狙うことを得意としているだろうことに見当をつけていたユウヤは、口端を不適に釣り上げ、
「アンタと同じ上空なら、いつもの下ばかり狙った浅知恵も使えねぇだろう?」
遥翔が畳みかけるように言葉をつなげる。
「お前は地上の獲物を狩るのに慣れている。だからこそ、お前の戦術はそいつに特化している――」
「それこそがお前の敗因だ」
人語を解しているはずはないだろうが、紅の翼竜は忌々しげに唸って二人の少年を睨みつけた。
●地を守る者
ワイバーンが飛び立ったのを見計って、砲弾が炸裂する。
空色の中に浮かぶ赤は、まるで狙ってくれと言わんばかり。
狙いやすくて、助かりますー。少女は小さく呟いた。
絶え間ない砲撃は、春奈から。
可憐な砲撃手は、主砲と副砲をまるで手足のように自在に繰っていく。
「対空砲、というのは、撃ち方が大事なんですねー」
こんなふうに、と彼女は言って、惜しむことなく砲弾で幕を張る。
『Namerou Hearts Chilled!』
砲撃の轟音を割って、小気味よい装着音と機械音声が響いた。続き、
「冷製なめろう武装転送っ!」
ビスマスが高らかにコールする。
「ここで終わらせます。通りすがりのなめろう猟兵として!」
現れた冷凍クロマグロソードをしっかりと握り、速度を上げてワイバーンへと駆けよる。
空中戦に意識を向けているワイバーンの後方に回り、高く跳躍し背の下を切り付ける!
冷凍マグロの重い斬撃は、一撃にあらず。
返す刀の二撃目を一回の跳躍の内に喰らわせると、決して深追いせず一度距離を離す。
ヒット&アウェイの堅実な戦い方だが、ビスマスは、距離を取りながらもアームドフォートの銃撃でワイバーンに暇を与えることはなく。
されど、ワイバーンもされるがままではない。
少女の体を爪で抉ろうと、風を切る音を響かせ、一気に高度を下げようとする。
しかし、春奈の、空を思わせる薄い青の瞳は竜が猟兵の誰かを狙おうとする動きを見逃さない。
彼女の柔らかな白い指先が、中空に浮かんだ電脳映像の操作盤を叩く。
ガシャン。
砲が瞬時に切り替わり。
弾速が早い副砲。その射撃で敵の爪の、牙の、進路を阻む。
「ありがとうございます。助かります!」
ビスマスが春奈に声を掛ける。
再び竜へと接近して、二連撃からの銃撃というルーチンを行いに向かう彼女に「お気にせずー」と答える代わりに手を振って、春奈も自身の仕事を再び開始する。
接近戦の仲間が複数いる中で、彼らに被害が及ばないよう砲撃をおこなうのは、かなりの技量と集中力が問われるはずだが、少女は苦労の色さえ見せず。
ヒュゥ。
後ろから口笛が鳴った。
「景気いいねぇ」
「ここはー、大盤振る舞いするところだとー、思いまして―」
春奈は笑う。
轟音の中とあって、彼女の声は半分以上掻き消されていたが、それでもニュアンスは伝わる。
猫晴は笑って、彼女の前へと進んでいく。
「それじゃあ、その大判振る舞い、ぼくも御相伴にあずかろうかな」
ゆるゆると、ちょっと散歩にでも行ってくると言わんばかりの軽い足取りで、長身の青年は歩を進める。
まだ王が高きにいるなら銃撃を。
上空からの攻撃に高度を落とした敵が、手の届く位置まで下がって来たなら、愛用の剣鉈でぶった切って。
チクリチクリ。確実に、嫌らしく消耗させられていく煩わしさに、翼竜は身を震わせる。
青年の視界の外から、針のように鋭く硬い尾が迫っていく、
が――、服一枚を掠めていっただけで、その被害を受ける事はない。
あらかじめ仕込んでおいた【影の追跡者(シャドウチェイサー)】が死角と敵の動きを補足しているのだ。
自身を警戒させることで、味方の動く隙を作る。
その動きは、丁度死角からの攻撃を意識して動くビスマスをフォローする形となった。
上空ではユウヤと遥翔、地上ではビスマスと猫晴が連携を取りながら挟撃を行う。
支援としての結華、春奈が後方射撃。
戦いの流れは確実に、猟兵たちが握っていた。
●矛先
紅の鱗はさながら鎧。
猟兵たちは、切り結びながら、オブリビオン“ワイバーン”が強敵であると予知されていた意味を知る。
素早さ、タフネス、攻撃力。
何かが突出して高いわけではないが、そのどれもが比較的高い水準にある。
猟兵たちは上手く回避してはいるものの、決して油断していい相手ではない。
ワイバーンの体当たりを寸でで回避して、霊獣が空中でよろめく。
すかさず、結華がフォローに【火精の息吹】を飛ばし、ワイバーンの更なる追撃を防ぐ。
「チッ、流石の体格とパワーだな!」
僅かな消耗の色を見せながら、ユウヤが言って汗を拭った。
結華も絶え間なく火の精霊の力を借り続け、疲労が見える。
それでも尚、火球を撃ち続ける彼女に、上空からユウヤが声を掛ける。
「結華、無茶すんなよ!」
「マスターが頑張っているんです。休んでなどいられません」
すかさず襲い掛かる爪の一撃を、アクアブレードで弾き返して、敵の脚に傷をつけ結華が返す。
攻撃・反撃・回避・防御と繰り返しながら、皆、感じていた。
間違いなく敵にダメージを与えているという手ごたえはあるが、決め手となるもう一手が足りない――。
ワイバーンに確実に大きな一撃を与えんと、敵の動きを備に観察していたキャサリンは、一時的に降りてきていた遥翔とビスマスに視線を向ける。
「ニ、三名ついてこい!」
「ええ、私ですか?」
「何か思いついたのか?」
有無を言わさぬ口調で声を掛けられ、一瞬驚きこそしたものの、何かしらの策があるのだろうと、二人はキャサリンに連れだって。
獲物が三人固まれば、自然と敵の注目を引く。
それこそ、キャサリンの狙っているものだった。
「これじゃ、狙われちゃいますよ!?」
「狙ってもらわなきゃ困る」
ビスマスが慌てても、キャサリンは動じない。
敵の動作の一つ一つをしっかりと、瞬きすらせずに見つめ、最高のタイミングを計る。
獲物を引き千切ろうとする三本の杭に似た爪が迫り、集められた二人が焔黒剣レーヴァテイン、そして冷凍クロマグロソードを構えた瞬間、
「今だ!! ターイラー・ターザンメ・ウォウアリフ・イェーター」
掠れた声が呪文を唱える。
空を朱に染め上げるほどの大爆破を起こすユーべルコード、【紅い世界(アカイセカイ)】が発動し、翼竜の真下から衝撃が生じる!!
衝撃に気づき、急きょ方向を変えて舞い上がろうとしたものの、一歩遅く。
翼竜は腹部に浅からぬ傷を負う。
不機嫌にグルルと唸った竜は、果たして、油断していた。
爆風によって打ち上げられた二つの影に気づかぬほどに――。
青と、黒。
「これが、なめろう猟兵の本気です!」
「頭上、取ったぜ。焼き尽くせ焔黒掌(レーヴァテイン)ッ!!」
二つの影が交錯し、ワイバーンの胸に十字の傷跡が刻まれた。
ワイバーンは大きく揺らぎ、飛んでいることすらやっとの様子だった。
だがまだ、この魔獣は墜ちていない。
手負いの獣と貸した竜は、最早、誰でも良い。敵に刻まれたこの借りを返す先を探していた。
ギョロギョロと痛みで正気を失った瞳が獲物を探す。
すぐさまそれは見つかった。
狙うは――
小さなうさぎ耳の少女を金眼が捉える。
ぐるりと体の天地を入れ替え、ワイバーンは自身の重さに速度を乗せて、春奈目掛けて急降下を始める!
「しまった!」
突然の標的の変更に、ほぼ全員が“虚”を突かれた。
遥翔が叫ぶ。
「チッ間に合わねぇなら、コイツでどうだ!」
今からでは割って入るには間に合わない。
素早く察したユウヤが投げたダガーは、翼竜の背に深く刺さる。
しかし、それでも勢いは止まらない。竜の怒りは止まらない。
誰かが贄にならなければならないのだ。
貴様らが過去を切り捨てたように。
貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が貴様が、
貴様らが、
死ななければ収まらぬ。
グチャリと、肉の潰れる音がした。
翼竜は獲物を鉤爪に捉える。
血の匂いが広がる。
“白”が赤く染まる。
だがそれは、目当ての獲物ではなかった。
「ニャハハ、ようやくですかよ」
下駄の音、響く。
成功
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白斑・物九郎
●真の姿
褐色肌が肌色に
黒8:白2比率のマダラの頭髪が白黒マダラに反転
●POW
俺めが狙うのは相手からの接近時
ダイブの機先がこっちに向いたと見次第、腹ァ決めますでよ
捨て身の一撃の所存で、爪の一撃へむしろ突貫
ワイバーンの首根ッこへグラップルで取っ付いて、地に引きずり落してやりまさァ
爪に続く第二打「尾による突き刺し」が来るまでの一瞬が勝負になりましょうかや
ワイバーンの体躯のデカさのイメージだきゃ先の探索でも得てましたからな
その首ガッツリ極めてやりまさァ
頭へ灰燼拳をブチ落とす
地面へ引きずり落とせてたなら、頭と地表を俺めの左拳でサンするタイミングを狙ってやりますわ
「ブチ殺してやりまさァ。ブチネコだけに」
●「ブチネコだけに」
「も、物九郎さん!」
春奈が叫んだ。
ワイバーンとの間に割って入ったのは、白斑・物九郎その人であった。
ただしその姿は先に行動を共にした彼とは些か色合いが異なっており、褐色の肌は色を薄め、名の通り黒髪に白斑だった髪色は逆転して“黒斑”へと変じていたが。
真の姿を解放した物九郎は、春奈に応えるよりも先に、攻撃へと移る。
翼竜の続く二撃目、尾による刺突を見越していた彼は時間との勝負と踏んでいて、自分に食い込む爪を力づくで抉じ開け、そのまま足伝いにワイバーンの体を駆けあがる。
解放された力によって、下駄の歯が鱗にスパイクのように撃ち込まれ、踏み砕きながら。
毒針のついた尾が準備を整えるよりも数瞬先駆けて、物九郎は腕と足を巻き付け、竜の首をしっかりと極める。
先の探索でワイバーンの大きさについては想定済み。
彼の脳内に、既にイメージは成っていた。
先の仲間との共闘で、微調整も終えていた。
だから、これは必然であったのだろう。
一瞬で竜の視界はブラックアウトする。
コマ送りのようにすら見えた見事な極めの技は、美しくすらあった。
やがて、竜の赤い体は傾ぎ、重力に従って倒れ始める。
物九郎は、するりと、極めた腕を緩め、代わりに左拳を硬く握りしめた。
地面に落ちる翼竜の頭が、地面に接地するジャストのタイミングを損ねず、
【灰燼拳】を、ワイバーンの脳天めがけて“ブチかまし”た。
角が砕け、地面が抉れ、鱗が飛び散り、竜の頭は跡形もなく弾けて。
紅の魔物は、最早動かなかった。
地面に降り立った下駄の音二つが響いた後、
森には、静けさが戻った。
●終宴
「あ、おかえりなさーい」
守備はどうでした?
そう聞こうとしたグリモア猟兵のアホ毛がピーンと垂直に立った。
「あわわわ……大怪我じゃないですかー……っ!!」
他の面々に連れられて帰ってきた物九郎の腹部を見て、慌てた様子。
当の物九郎はすっかり元の黒ベースのカラーリングに戻っており、真の姿を解放した疲れからか、眠たげな表情なのだったが。
既に応急処置はなされていたが、ポシェットからあれでもないこれでもないと、手当の道具を取り出して消毒だのを済ませると、改めて全員を見渡し、ほっと息を吐いた。
「他のみなさんは大きなお怪我はなさそうですねぇ。何よりですよぉ」
「はい、ワイバーンもしっかり退治してきましたよ!」
「ええ、ちょっぴりひやっとしたところもありましたがー」
ビスマスと春奈の答えに頷き、それでも、全員がそろって戻って来てくれて何よりだと、フィンは頬を緩めた。
「みなさん、お疲れでしょう。特に御用事がないなら、このままパパっと帰還してゆっくりお休みするのがいいと思うのですけれどぉ」
グリモアベースへのワープを用意しようとするフィンに、珍しくキャサリンがはいと、小さく挙手をした。
「あらまっ。キャサリンさん、何かありました?」
キャサリンは厳かに頷いて、後ろ手に隠していた“ソレ”を前に出して嬉しげに声を弾ませた。
「今日はカレーだぜ!」
「私、それは食べたくないです!!」
赤い鱗付きの肉を見て、叫び声がエコーして。
森はほんの少し騒がしくなりつつも、
彼らが帰った後、再び、常の姿を取り戻した。
大成功
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