バトルオブフラワーズ⑨〜ドグマチック×マニアック!
●突入
「ウキッ!? もうここまで来たウッキー!!?」
ザ・ステージを制圧し、システム・フラワーズ内部へと突入する猟兵達。
彼らを待っていたのは、色とりどりに咲き乱れる花々で作られた空間だった。
猟兵の1人が、そっとその花の上へ足を踏み出す。
ふわっとした感触と共に、何かをしっかりと踏みしめる感覚。
どうやら、この花々を足場にして、先に進めそうだ。
けれど、猟兵を待っていたのはフラワーズの花々だけではなく……。
「ウッキッキ~! なにやってるんでウキか、怪人ども! ミーの優雅なバナナタイムが切り上げになってしまったウッキー!!」
猟兵たちを見やり、予想以上に早く突破を許したオブリビオン達へ憤慨する異形の猿。
怪人軍団の幹部のひとり、マニアック怪人『エイプモンキー』だ。
「……まあ、どっちにしろお前らはここで足止めウッキー! ミーがいる限り、この花の足場が先へと続くことはナッシン!!」
とのことだ。
ご丁寧に、猟兵がやるべき事を教える彼の思考に存在するのは、自分の力に対する圧倒的な自信。
こいつ等がいくら押し寄せてきたところで同じだ。
自分の無敵の力、底なしのマニアック知識があれば、敵う者などいないのだから。
「ウッキッキ。まあ精々、無駄なあがきを頑張るウッキー!!」
そして、今を生きる誤った人類と共に膝を屈するのだ。
怪人は、目の前の勇者たちが絶望する様が、今から楽しみで仕方がなかった。
●原理や原則、またある判断に固執して、他を受け入れない様。独断的。
「とまあ、こんな感じで。皆さんの前に最初に現れるのはこのマニアック怪人ですね」
自身の見た予知の説明を終えた人狼のグリモア猟兵が、集められた猟兵たちへと振り返る。
「中々に自信満々のようですが、言うだけの実力はあるようでして……ええ、一言で言うと、『想像した全てを創造する』能力が彼の力です」
その言葉を聞いた猟兵たちの顔色が変わる。
まるで、おとぎ話のような力ではないか。
「まあ、あくまで作れるのは物質。概念的なものまで創造できるわけではないようですが、使い手自身も結構厄介でしてね」
マニアック怪人『エイプモンキー』。
その名の通り、マニアックな知識量を誇る猿型の怪人だ。
知識量、観察眼に優れる彼は、相対した相手のユーベルコードの性質を瞬く間に見抜き、的確にその弱点を突くマシンを創造し、反撃してくるという。
「しかもまあ、反撃とか言いつつ、しれっと先制攻撃してくるんですよね、コイツ。ええ、まぎれもない強敵と言えるでしょう」
それに対する対抗策は一つ。
エイプモンキーは、ユーベルコードの性質は見破れても、その持ち主である猟兵が、どのような行動をとってくるかまでが分かるわけではない。
つまり、マニアック怪人の想像以上にマニアックな戦術で、敵の先制攻撃を無効化するのが勝利への道となる!
「確実に勝てるとは言えません。それでも、今の人類を一方的に間違いであると断ずる彼らは、我々の力で止めなくてはならないのです」
どうか、お気をつけて。
そう頭を下げる猟兵の背後で、グリモアの光がひときわ強く輝きだす。
さあ、システム・フラワーズでの死闘、その最初の一歩を踏み出す時が来たのだ。
北辰
OPの閲覧ありがとうございます。皆さんお待ちかね、幹部戦が始まります。
予想以上にエイプモンキーさんが強くてビビっております、北辰です。
今回の敵の力は創造。
猟兵のユーベルコードの性質を即座に見破り、その弱点を突くような装置を作り先制攻撃を仕掛けてきます。
初めて見た時チートかなって思いました。
しかし、無敵の能力を持つ者が、すなわち無敵であるとは限りません。
エイプモンキーが此方の弱点を突いてくるのであれば、その上で皆様の力を示せばいいだけです。
要は、自身の弱点を分析した上で、それを狙う敵の攻撃を予想。
その程度の弱点、とうに見切っておるわ! と言わんばかりのマニアックな戦術で返り討ちにしてくださいませ。
強敵戦である以上、いつも以上に苦戦、失敗が出てくる可能性も大きいシナリオではあります。
それでも、此処を越えねばキマイラフューチャーの楽しい生活は失われてしまいます。
勇気と工夫に満ちた貴方のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フロッシュ・フェローチェス
早々お目見えだなクソ猿。ここで微塵に潰す!
ユーベルコードの性質を見抜き、絶対先制で此方を上回る難敵――けれどそれはあくまでユーベルコードの性質だけだ。
疎らに降らせても意味がない。デス・レインを3つ大槍にし、そのまま豪速で放つ。
当然避けられるね。そして速度を活かした攻撃をしてくるだろう。
でもさ――そのUCがアタシより速いって何時言った?
そいつは自立式、故にアタシはアタシで準備を済ませた。
過剰に上がった【加速式】の出力による激痛を抑え込み、残像すら残さないダッシュ――地を蹴るジャンプと合わせた超スピードで背部へ接近。
早業のだまし討ちを……剛力の形態へ変形させた『衝角炉』での踏み付けを食らえ……!!
●根比べ
「早々お目見えだなクソ猿。ここで微塵に潰す!」
花々が咲き誇るシステム・フラワーズ内部。
いの一番に到着したフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が、エイプモンキーを睨みつけながら吠える。
ふざけた外見の怪人だが、キマイラフューチャー最大の危機を引き起こした一人。決して油断してはならない相手だ。自身の最速をぶつけるべく、フロッシュは静かにユーベルコードを発動する。
それに応じて、【迅速貫槍『デス・レイン』】と名付けられた機械生命体が、彼女の周りにワラワラと現れる。
「ウッキキ、中々速そうなユーベルコードウキね! 速度自慢と見たウキ!!」
合ってるだろ? とでも言いたげな顔で指差してくるオブリビオンに答える義理はない。
その言葉を無視する彼女はデス・レインへ合体の指令を出す。そうして出来上がるのは、12の刻印を刻まれた3本の大槍。
次の瞬間には、超高速で飛翔する大槍がエイプモンキーを貫かんと襲い掛かる!
「……はあ、ガッカリだウッキー。ただデカいだけ、ただ速いだけの攻撃が、ミーに通じるのかと思ったのかウッキー?」
それを、いつの間にかマントを羽織ったエイプモンキーがあっさりと躱してみせる。
ひらりひらりと、大きな身体に掠らせもせずに槍を躱し、勝ち誇った顔でエイプモンキーが視線をフロッシュに戻す。
が、そこにあるのは空中を舞う花々の嵐。女はどこに、そう思考するエイプモンキーの背後で、微かな踏み込みの音。
12の機械生命体が集った大槍は確かに速い。
そして、フロッシュはそれ以上に速い。
花散らす跳躍からオブリビオンの背後に回り、概念術理「加速式」を発動させた神速の奇襲。
エイプモンキーが振り向く――それよりも早く、変形を完了したフロッシュの機械靴が襲い来る。
「いや、ビックリしたウッキー。まさに目にもとまらぬ速度、そこはこのミーが褒めてやるッキー!」
「なっ!?」
それすらも、エイプモンキーには当たらない。
間違いなく、奴はこちらの速度についてこれていなかった。
それでも、その身体は宙を舞う紙のように、蹴りが当たるイメージがまるで沸かない。
「ウキキキ……いくらスピードがあっても無駄ッキー! ミー特製、『ひらひら躱すよマント君6号』を纏えば、この身は川の中の木の葉、風に舞う羽! 意識せずとも、お前の攻撃が起こす風に乗って回避できちゃうっキー!」
「絶望的にネーミングセンスがない!?」
それでも、エイプモンキーの回避は完璧だ。
蹴りの連撃を躱しながら、エイプモンキーがほくそ笑む。
いずれ相手も疲れ、動きが止まる。そこを突けばたやすく勝てる。
このスピード自慢に、光速の弾丸でも創造して叩きつけるのも、一興だろう。
「頑張るッキー。まあ、全部無駄ウッキー……!」
蹴り、躱す。
踏みつけ、躱す。
右から、上から、下から左から前から背後から。
花の大地を走るフロッシュの攻撃のすべてを、エイプモンキーは躱していく。
躱して、躱して、躱して。
「……しつこぉぉぉい!! ッキー!!」
キレた。
「――そこだ」
「ウキー!?」
エイプモンキーの誤算は、キマイラたるフロッシュの肉体強度。
これだけの速度、すぐに消耗し、動けなくなると踏んでいたのだ。
けれど、彼女は止まらない。
痺れを切らしたエイプモンキーが強引に攻撃しようとした瞬間、装置に身を任せている事で実現していた回避能力は失われ、フロッシュはその隙を見逃さない。
「ぐぅ、やってくれたウキ……もう居ない!?」
とはいえ、無理やり負荷を無視した肉体の限界は近い。
彼女が蹴りを入れた直後、エイプモンキーが体勢を立て直せば、フロッシュは既に戦場を離脱した後だ。
「ウキ……ムキキ、ムッキャァーーー!!」
結果だけ見れば、一撃しか攻撃を受けなかった自分の装置は効果的だったと言えるだろう。
それでも、自分の想像を上回る速度を持って強引に攻撃を敢行された挙句、逃走まで許したのも事実。
花園には、屈辱に震えるオブリビオンの叫びが響き渡っていた。
苦戦
🔵🔴🔴
芦屋・晴久
【診療所チーム】で連携
ノストラ君の不可視の一撃と波狼君のミミックの一撃を入れたいですがここに届かせるにはさて……
では私は月代君、並びに彼のコート内に忍んでいるミミックに【水舞転身環】使用し姿を隠しましょう。
対策?そうですねぇ、特にありません。逆に対策させてしまいましょう。
こちらに対して死角から反撃して相殺させるというのならば、水舞転身環に対して一手を使わせるという事
無視しても宜しいでしょうがその場合透明化しているミミックに一撃を貰うでしょうねぇ
さて、もう一手。
私の術符を通して魔力を込めた光弾を相手の目の前で一発破裂させてみましょう。
何か小細工を弄しているといると見せるようにね。
波狼・拓哉
【診療所チーム】で行動
ミミックが十六夜さんのコートの内側に無理なく入れるサイズになりしがみつく
振り落とされない様にしつつ、こいつが原因で透明化してましたよ感の符にミミックが【変装】を
十六夜さんが背中を見せ回避しようとした時に今までの【戦闘知識】からフィニッシュのタイミングをミミック自身で測り、タイミングになり次第十六夜さんを潰さないように龍に瞬間で化け咆哮をお見舞いする
…さあ、狂気を知りな?
自分は弾に【衝撃波】を付与し衝撃【属性攻撃】にして装置やマシンといった相手の武器を狙い撃ち
初撃は間に会わないだろうが【早業】と【クイックドロー】で武器の傷を見逃さず【傷口をえぐり】【武器落とし】で敵の妨害に
ノストラ・カーポ
【診療所チーム】
中々面倒な力を持ってやがるな。だが俺とこいつらが組んだ以上負けはねぇ。
【Onore】を【早業】で抜き撃ち【2回攻撃】で牽制、そのまま銃を撃ち続けながら敵に無力感を煽る言葉を【呪詛】に乗せて浴びせ続け【恐怖を与える】。
ここからがメインだ。十六夜が抜刀術のフェイントを仕掛けるタイミングで【指定UC】で攻撃を放つ。当然これだけでは終わらせん。【Omertà】を敵に向かって伸ばし【念動力】を使い空中で固定、ただでさえ誰にも壊せねぇ上に【オーラ防御】だ。万が一にも破壊される心配はねぇ足場として存分に活用しろ。
月代・十六夜
【診療所チーム】で参戦。
まず用意しておいた煙玉を足元に投擲、準備が終わり次第、相手に向かって透明化の状態で【韋駄天足】で飛び出す。
煙の中から不可視の何かが飛び出してきた時点で透明化だと見抜いてくるだろうから、型無に手をかけて、同じく放たれている不可視の斬撃に合わせて抜刀術の【フェイント】をかけてあたかも自分が目にも留まらぬ攻撃をしているように振る舞う。
相手のUCはできるだけ避けるが、最悪身代わりの札の外付けHP任せだ。
そのまま【視力】【聞き耳】【第六感】で動きを【見切っ】て背中を見せながら鎖の足場も使って回避。
そのまま翻ったコートの中から予め最初から背負っていたミミックの攻撃でフィニッシュ!
●とらっぷ
「ウキッ、ウキッ、ウッキィーー!!」
「これは……少々面倒なタイミングで来てしまいましたかね?」
花園の中、憤慨するエイプモンキーに近づく、3人の影。
サングラスの奥から敵を見る芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)が語った通り、目の前のオブリビオンは明らかに虫の居所が悪い。
先頭を歩いてきたノストラ・カーポ(無法者・f14707)も、そのすぐ傍で、派手な彩色を施された銃を構える波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)も、表情を引き締める。
「ウッキィ……まぁた新手が来たウッキー? 数を揃えたところでミーには勝てんッキー、その猿の浅知恵ごと、ミーのマシンで粉砕してやるッキー!!」
新たな敵の接近に気付いた怪人が、わざとらしいブーメラン発言をしながら身構える。
さあ、どんなユーベルコードを使ってくる。
先頭の人形が纏う鎖か? 銃から何かを打ち込んでくるか? 少し顔色が悪い金髪がなにかしてくるか?
エイプモンキーは一分の油断も無く、3人の猟兵を見据え。
全く別の方向から投げ込まれた煙玉に、その視線を遮られた。
「キキッ!? どこから出てきたウッキか、この煙!」
若干噎せつつ、悪態をつくエイプモンキーの思考は冷静だ。
最初から何か消耗している様子だった金髪――晴久の仕業だろう。
恐らくは、指定した対象の姿を消してしまう類のユーベルコード。見れば、煙の中に4人目の存在を示す空気の揺らぎがあるではないか。
オブリビオンのマニアック知識は、晴久のユーベルコード、【二之式・水舞転身環】の性質と、その力で身を隠した4人目、月代・十六夜(韋駄天足・f10620)の存在を正確に見破っていた。
煙の向こう、複数の影が動く気配。
視界を遮ってからの複数同時攻撃、誰か一人が装置に返り討ちにされても、その間に別の者が有効打を与えられれば良いといった所か。
まったく。
「まったく、随分嘗めてくれたなッキー!!」
エイプモンキーの力、想像の創造により、複数のマシンが同時に作り出されていく。猟兵達が、複数のユーベルコードをもって襲い来るなど、当然想像しうる事態。
だからこそ、エイプモンキーは最初から、認識したユーベルコードへの対応装置を半自動で作り出す補助コンピュータをその身体に搭載済みだ。
たかだか4人、自分の想像力を凌駕するには至らない。
順番に、力の差を教えてやろうじゃあないか。
「まず、ひとぉりっ! 『じわじわポイズン君2号』、あのサングラスを病院送りにしてやれッキー!」
「私、むしろ治す側なのですけどね……!」
猟兵達が本格的な攻撃を行うその前に、エイプモンキーが目を向けたのは晴久だった。
ユーベルコードにより作成されたミサイルが、突如晴久の背後に現れ、襲い来る。
とはいえ、その速度は遅い。ユーベルコードを発動し続け、明らかな消耗を抱えている晴久であっても、どうにか躱せる程度だ。
着弾と共に広がる、毒々しい色のガスがなければの話であるが。
「ああ、毒ですか」
「ウッキッキ、そのとぉーりっ! お前まで透明化されたら少々面倒ウキ、故にガスを使った面制圧! 姿が見えなくてもそこにいるのなら、躱せぬほどの広範囲を攻撃すればいいッキー! ミーや猟兵共には本来通じない程度のよわっちい毒ではあるが……術の維持で消耗しているお前は別ウッキー!!」
その通りも何も、自分でポイズン君と言ったではないか。そんな事も思うけれど、厄介な攻撃をされたのも事実。
無理に透明化を維持し続ける手もあるが、そんな事をして倒れてしまえば、結局その時に術は切れる。
そして、その後動けない自分を見捨てて戦うのは……約一名できそうな気もするが、恐らくは自分を守ろうとする仲間の足手まといになることだろう。
そもそも。
既に自分の仕事はほぼ終わった。
最後のひと手間だけ加えて、後はガスから身を守る術に集中させてもらおうか。
「く、しまった、とうめいかがー」
「……なんか、やたら棒読みじゃないウキか? お前」
パァン、と光が弾け、姿が露わになった十六夜に不審げな目を向けつつ、まず一人の猟兵を無力化したことにほくそ笑むオブリビオン。
恐らくは、金髪のユーベルコードを目の前の男のものと誤認させたうえで、透明なままこの男自身のユーベルコードで奇襲をかけるつもりだったのだろう。
既に地を蹴る体勢になった奴のユーベルコードを受ければ、自分も少なくないダメージを負ったかもしれない。
そして、その未来は潰えた。
「ウーキキキ!! お次は『びゅんびゅんウォール君4号&7号』! 自動飛行、自動防御付きの頼れる防壁ッキー! お前のその体勢、自分自身が突っ込んでくるタイプの接近戦を狙ってるッキー? どこからでも来るッキー、その瞬間、自分のスピードで壁にキッスできちゃウキよ!」
「うわっ、シンプルに面倒なのを!?」
エイプモンキーの前に現れる、空中に浮かんだ複数の防壁。
危うく壁に激突しそうになった十六夜が、咄嗟にユーベルコードの使用を止める後ろで、ノストラが小さく舌打ちをする。
おそらくこれは、自分の対策でもあるのだ。
ノストラは、エイプモンキーと相対してから、ずっと目を逸らすことなく彼を凝視し続けていた。
視ることが、ノストラのユーベルコードの発動条件であるのだから。
だが相手は、観察眼に優れる怪人軍団の幹部。おそらく、ノストラの様子から察したのだろう。
今やエイプモンキーは機械仕掛けの壁の向こう。
物理的に姿を隠せば、そもそもユーベルコードを当てようがないという弱点を突く為の防壁だ。
「(まあ、この程度の壁、さして関係は無いのだが)」
そう、ノストラの眼球にはめ込まれたレンズならば、ただの防壁程度無視してエイプモンキーを見ることも可能だ。
けれど、今回の策は、十六夜と合わせての同時攻撃が肝。
バラバラに攻撃しても防がれてしまうであろうことは容易に想像がつくし、十六夜の抜刀術に見せかけてユーベルコードを使用するにしても、この防壁をどうにかしなければ、十六夜の方は捨て置かれるだけだ。
少しでいい、防御に隙間を作る必要がある。
「手伝え、波狼。あの壁をどかすぞ」
「え、ええ。わかりました……!」
2人の猟兵が銃を構え、エイプモンキーと自分たちを隔てる壁への攻撃を開始する。
銃撃による轟音が鳴り響き、エイプモンキーを守る壁が揺らぐ。
それでもなお、オブリビオンはあくびまでしながら、呑気にそれを眺めている。
「どうした、俺たちを粉砕するんじゃなかったか!?」
「勿論そのつもりウキ。そして、それにどれだけ時間がかかっても、ミーは別に困らんウッキー」
ノストラの呪詛を乗せた言葉もどこ吹く風。
そもそも、エイプモンキーはここの番人。
ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを掌握するまで千日手となったとしても、勝利条件を満たせはするのだ。
「(勿論、ミー達に立てついたお前らを見逃す気はないウキけどね)」
まずは力の差をゆっくり教えてやるのだ。
そう笑うオブリビオンの前で、衝撃波を受けた壁が大きく揺れ、猟兵との間に、少しだけだが隙間ができる。
あ、やたら此方を見てきたミレナリィドールのユーベルコードくらい、飛んでくるかもしれない。
といっても、所詮は猟兵一人のユーベルコード、怪人軍団の幹部たる自分であれば、個々の猟兵など如何様にも対処できる。
そう、壁の隙間に目を向ければ。
サムライブレイドの柄に手を掛けた、十六夜の姿があった。
「ウ、ウキィ!?」
咄嗟に自分の下へ集中させた防壁に伝わる衝撃。
何故、直前まで、壁の向こうは猟兵共自身の弾幕の嵐だったはず。
十六夜のキマイラとしての特性、異常に発達した五感と、それを活かした神がかり的な回避能力を知らないエイプモンキーにとっては、たった今の光景は、平常心を乱すには十分なものだ。
そして、動揺はミスを呼ぶ。
咄嗟に防壁を操作して不可視の斬撃、ノストラの視線による【Occhi silenzio】を防御することには成功した。
けれど、この瞬間、目の前の十六夜のフェイントを見たエイプモンキーの行動は、同時に彼の視界を大きく制限するものだ。
すぐに体勢を立て直すべく、防壁を広げ、その一部をわずかに透過させれば、そこにはキマイラの姿はなく、先ほどまでなかったはずの銀の鎖。
次は何なのだ。
一瞬の思考の後、自身にかかった僅かな影を見出したエイプモンキーが、反射的に腕を振り上げる。
「――ぐぅっ!」
ほとんど偶然だ。
天高く伸びる鎖を蹴り、防壁を上からすり抜けて突っ込んできた十六夜へ、オブリビオンの鋼の腕が突き刺さる。
手ごたえがおかしい、咄嗟に空中で身体を捩り、衝撃を逃がしていたが、それだけではない。恐らく何か防御の術でも用意していたのだろうか。
それでもダメージを殺しきれない様子の十六夜のユーベルコード、【韋駄天足】は不完全な形に終わり、彼の身体はエイプモンキーの後方へ吹き飛んでいく。
4人で、この瞬間を狙い続けた奇襲だったのだか。
それでも防いでやった。相手の上を行ったのは此方だった!
そう勝ち誇るエイプモンキーの視界で、体勢を崩しながら着地する十六夜の背中が映る。
くすんだ色の護符。
おそらく、金髪のユーベルコードの核となっていた代物に違いない。
アイツも毒ガスに耐えるので忙しいだろう、早く楽にしてやろうじゃないか。
前を見れば、消耗しきった陰陽師と、手品のタネが割れた人形。
そして、防壁を少し揺るがせたくらいの、てんで何もできていない黒髪の男。
さあ、どいつから倒そうか。
おや、黒髪がなにか呟いているな。
「――さあ、化け咆えなミミック……!」
瞬間、無防備なオブリビオンの背中を衝撃が貫いた。
「ウ……キィ!?」
なんだ、なにが起こったんだ。
首をどうにか後ろに向ければ、立ち上がっている十六夜の背中から、龍の首が生えていた。
だけど、アイツじゃない。二つ目のユーベルコードを使ったのなら、それは必ず察知できたはずだ。
消去法で、このユーベルコードの主はあの黒髪。
狂気を招く拓哉のユーベルコード、【偽正・龍滅咆哮(ドラゴン・ロア)】に思考を乱されながら、エイプモンキーはようやく気付く。
透明化を使われて、それを破ったものだから、くすんだ護符をその残滓だと決めつけた。
煙玉も、弾幕も、フェイントも、不可視の斬撃と、高速の突進を成功させる為だと思い込んだ。
そのすべてが、囮だった。
4人の男が、このたった一撃を当てるためだけに、それぞれの持つ力を注ぎこんでいた。
「まったく、何重に罠を張ってるんでウキ……」
ふらつく身体で、どうしてもこの言葉だけは、言わずにはいれなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
グラディス・プロトワン
ユーベルコードにカウンターか…
だが、あえて俺はこのユーベルコードを使わせてもらう!
さぁ、俺のユーベルコードを対策してみるんだな。
……気づいたか?
俺はこのユーベルコードを使うとは言ったが、俺自身が発動条件を満たしていない。
つまりこのユーベルコードは最初から『発動しない』!
発動せず、意味の無いユーベルコードをどう対策しようと言うのだ?
お互いにユーベルコードが無意味なら、後は……
そう、殴り合いだな!
殴り合いでウォーマシンが後れを取ると思うなよ!【怪力】
(相手がカウンターを諦めた後なら、ユーベルコードを使うチャンスがあるかもしれないな。他の猟兵が気づいてくれるといいが)
※アドリブ・連携等ご自由に
古高・花鳥
まずは何度も【月下抜刀流・花鳥一閃】を。
直線的な軌道、足を止める構え......弱点から考えると、おそらく障害物に加え立ち止まらせない装置を施す筈です
それらの攻撃は「見切り」耐えていきますが、わたしの剣はなかなか届かないでしょう
でも、それを狙います
ずっと同じ構え、同じ動き、同じ剣。それを愚直に続ければ、次も同じと思い込む
......【居合染】。同じ動作、構えのまま、左の肘から掌にかけて刀を滑らせ、辺り一面ごと血を浴びてもらいます
痛みなんて些細なこと(「激痛耐性」)です
もしも避けられたとしても
染めた花々は、後に続く方々の力となります
わたしの脆い意思が僅かな希望を紡げるのならば、わたしは幸せです
●敗因
例えば、強大なオブリビオンに対して、ユーベルコードを使わずに挑む。
これは、確実な敗北を招く行いであると言っていい。
猟兵の力の源泉は、具現化した奇跡、ユーベルコードである。
武器が役に立たないからと言ってそれを放り捨てたところで、武器を持ってた時以上に強くなれる道理はない。
武器を捨てれば、武器を持った者に蹂躙されるしかない。
例えば、強大なオブリビオンに対し、何度も、あるいは、複数のユーベルコードを使用する。
これは、確実な敗北を招く行いであると言っていい。
1度では足りないから、幾度も挑戦する事は、一般的には美徳であろう。
けれども、それが命を懸けた死闘であるのであれば。
自身が何かを行うたびに、相手もまた同じ時間を与えられる。
その相手が、明確な格上であるのであれば、待っているのは悲惨な敗北だ。
例えば、力を使わぬ者と、力を使いすぎる者が、共に戦った。
これは。
●独断には早すぎる
「ユーベルコードにカウンターか……だが、あえて俺はこのユーベルコードを使わせてもらう!」
勇ましく宣言するのはグラディス・プロトワン(黒の機甲騎士・f16655)。
彼はユーベルコード【トランス・フュージョン】を使用して、エイプモンキーに斬りかかる。
けれども。
「――お前、ふざけてるッキー?」
「ぐ、うぅ!?」
冷たく言い放つオブリビオンの剛腕に受け止められ、カウンターの形で拳を無防備に受けるに終わる。
体勢を崩し、少し距離を取るグラディスに対して、エイプモンキーは憤怒の表情を向ける。
ここまで猟兵にしてやられ続け、次に来たのがこの男だ。
自尊心を傷つけられてきたエイプモンキーにとって、今しがたの行動は、一周回って冷静さを取り戻すほどの怒りを煮えたぎらせるものだった。
「ミーのマニアック知識、観察眼を舐めるなウキ。お前はウォーマシン、それもエネルギーを力に変える事に長けたタイプウキ」
その通り、エネルギーを蓄え、それを力に変えるのがグラディスのユーベルコードだ。
すなわち。
「――エネルギーの無い、ユーベルコードを使わないお前が! ミーに勝とうなんて考えるだけでも不愉快ッキー!!」
怒りに燃えるエイプモンキーが、一方的にグラディスへ殴りかかる。
ユーベルコードを使わなければ対策を取られることは無いという彼の考えは間違いではない。
それでも、他の猟兵がユーベルコードを使い、カウンター装置をすり抜けてようやく有効打を与えられる相手に対して、奇跡を使わない戦いを挑むのは、あまりにも無謀だった。
「(予想以上の馬鹿力……! 他の者が来るまで、耐えきれるのか!?)」
とはいえ、防戦一方のグラディスとて、考えなしにユーベルコードを使わない選択肢を取ったわけではない。
自分の優れた点はなにかと問われれば、ウォーマシンたる体躯と、それを背景にしたタフネスだ。
故に、激昂するエイプモンキーの振る舞いはかえって好都合。
もとより、囮としての役目を果たすべくこの戦場に来たのだから。
そして、彼が待ち望んでいたものは来る。
「その腕を、離しなさい!」
既に身体の各所にひびが入ったグラディスを掴むエイプモンキーへ迫る白刃。
ひらりと躱されたその刃を構えながら、古高・花鳥(月下の夢見草・f01330)はしかとオブリビオンを睨みつける。
また新手が来たと、不機嫌そうに見つめるエイプモンキーに対して、花鳥が取るのは変則的な、逆手居合抜きの構えだ。
「あー、剣士ウキね。この戦場だと、地味ーに見なかったタイプウキ。ほら、さっさとユーベルコードを使うウキよ」
「言われなくても!」
ぞんざいな挑発を飛ばすエイプモンキーに対して、花鳥がユーベルコードを使用し斬りかかる。
同じ型、同じ軌道で繰り出されるその剣技を、エイプモンキーは障害物を作り出し、あっさりと防いでみせる。
今までの戦いで叫んでいた装置名も省略するほどの投げやりな対処だが、単純な花鳥のユーベルコードであれば、これで十分だ。
ときおり繰り出されるエイプモンキーのテレフォンパンチは、彼女自身の技量で見切り、技を放った直後を狙われれば、割り込んだグラディスがその怪力で受け止める。
そして、幾たびもそれを繰り返したのちに。
「――此処っ!」
同じ型、同じ軌道で繰り出される花鳥の刃が、その華奢な腕を切り裂いていく。
自傷によるユーベルコード、【居合染】。
彼女の想いを込めた血しぶきは、オブリビオンの身体を焼く毒へと変ずる。
「はい、『かさかさアンブレラ君1号』」
「……え?」
それを、エイプモンキーが広げた傘がしっかりと受け止めていく。
何故、どうして奇襲がバレたのか。
同じ型のはずだった、ユーベルコードの見分けなど、つくはずがない。
「いやぁ、あんまりお前が同じこと繰り返して暇だったから、念のために想像しておいてみたら大当たりだったウキね!」
そう、花鳥は時間を与えすぎた。
彼女が幾たびもユーベルコードを放つたびに、エイプモンキーもまた、力を蓄えていたのだ。
見れば、彼の周りには傘以外にも、様々な装置が現れる。
まずい、かえって敵を強くしてしまっているではないか。
我慢できると思った筈の痛みが、じくじくと増してきた錯覚すら覚える。
その彼女を庇うように、ボロボロのウォーマシンが進み出た。
「いやぁ、愚かな猟兵達も居たウキね! 随分と楽させてもらったウキ!」
ニタニタと笑う猿へ、グラディスが一歩一歩歩み寄っていく。
駄目だ、このままでは勝てない。そう呼び止めようとした花鳥が、おかしな点に気付く。
彼が踏みしめる、花鳥の血に染まった花の大地。
彼女の、仲間を癒す血の上を歩く彼の損傷が、一向に直る様子がない。
攻撃が失敗したとはいえ、回復の力まで失われたはずではないのに。
「うん? お前から殺されたいウキ? いい心がけウキ、子供を庇う猟兵さんはカッコいいウキな!」
「…………」
明らかに馬鹿にするような声色のエイプモンキーとグラディスの距離は、お互いの拳が届くまでなった。
それでも、エイプモンキーは自分の価値を確信する。ユーベルコードを使わない猟兵など、恐れるに足りないのだ。
そんなオブリビオンに対して、グラディスはボロボロの拳を掲げ。
傷を直すより、もっと大切なことに『エネルギー』を使ったゆえに、ボロボロのままの拳を掲げ。
先ほどよりもはるかに、エイプモンキーよりもはるかに速い鋼の拳が、オブリビオンの顔面を貫いた。
「ウッギィ!? ぞん、な、どうして!?」
「――確かに、カウンターを諦めた後ならユーベルコードが通用するかもしれんと思ったが、まさか自分でその役もやる羽目になるとはな」
どうして。
理由は簡単だ。花鳥の血から得たエネルギーでユーベルコードを発動させた己の身体能力が跳ね上がっているというだけの話。
それでも、自分がボロボロになってでも、ユーベルコードを使わぬ戦いを徹底し、敵の油断を誘わねば。
ぽかんと此方を見つめる、花鳥がいなければ。
エイプモンキーが愚かと決めつけた、自分たちの戦いがなければ。
きっと、もっと違う結末が待っていただろう。
身体は痛いし、時間もかかった。もっと上手いやり方は他にあったかもしれない。
それでも。
「ま、待つウキ! おかしい、こんなの、こんなの!」
「何もおかしい事は無い。俺たちの、勝ちだ」
もう一度オブリビオンに拳を突き立てるこの感触が、確かに自分たちの勝利を伝えてくれていた。
苦戦
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