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お料理バトルは大騒ぎ！

作者：三ノ木咲紀

「大変です！　キマイラフューチャーで変な料理動画が流行っているのです。アカネに力をお貸しくださいませ！」
　焦げたスポンジケーキを手に持ったままテレポートしてきたアカネ・リアーブル（とびはねうさぎ・f05355）は、慌ててスポンジをテーブルに置くと猟兵達に向かい合った。
　キマイラフューチャーでは、料理動画バトルなるものが流行っているらしい。
　どこかをコンコン！　とするとご飯が出てくるキマイラフューチャーだが、わざわざ手間暇をかけて料理するというのが珍しくて面白いのだ。
　それを利用したオブリビオンが料理動画サイトを主催。
　そこで投稿された料理動画に付けられるイイネ！　の数を競い合うのだ。
　料理動画は作るだけでなく、作った料理を食べた時のリアクションもイイネ！　の要素になる。
　たくさんのイイネ！　を集めた動画のうｐ主達は、定期的にお料理コロシアムとかいう場所に集まり、パフォーマンスしながら料理を作成。
　この様子も動画サイトで流され、キマイラフューチャーで大人気。
　たくさんの信者たちが生まれている。
　もちろんここでも、作った料理を食べた時のリアクションも大事。
　なんやかやで動画をバズらせ、クッキングコロシアムでイイネ！　を独占すると、サイトの運営元のオブリビオンが現れる。これを退治して欲しい。
「アカネも動画サイトを見ながら、お料理の勉強をしようと思います。安心して料理動画を見られるように、お力をお貸しくださいませ」
　アカネはにっこり微笑むと、兄が残した手書きの料理レシピに視線を落とした。

第1章 冒険 『ソーシャルネットワーカー』

POW   :    キマイラ達が喜びそうな配信をして、人気をゲットしよう SPD   :    とにかくたくさん活動して知名度で怪人に勝つぞ！ WIZ   :    人気配信の人気の秘訣を冷静に分析して、怪人のブームを乗っ取ってしまおう 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

録画の用意をしていた彩花・涼（f01922）は、試し撮りしながら呟いた。
「丁度料理を覚えなければと思っていたからな、良い練習ができそうだ。動画配信で大勢の意見が聞けるしな」
「えーと……動画は緊張するけど、頑張るよ」
　助手として材料の確認をするノワ・シュタインファルベ（f02707）は、小さく握りこぶしを作ると顔を上げた。
　動画のタイトルは「料理初心者が１から料理作ってみた。」
　軽快な音楽が流れる中、涼はレンズに向かって皮をむいた玉ねぎを手に一礼した。
「今日はオムライスを作ろうと思う。まずライスと一緒に炒める食材を……」
　おもむろに玉ねぎを宙に放り投げた涼は、やおら黒華・改を抜刀すると素早く振るった。
　【残像】が残るようにすばやく黒剣で【二回攻撃】して斬られた玉ねぎが、思い出したようにまな板の上に落ちる。
「そういえばノワ、どのくらいの大きさで斬ればいい？」
「大きさはみじん切り……小さかったら大丈夫かな」
「そうか。なら次は人参だな」
　洗った人参を手にした涼は、拭った剣を再び振るう。
　一瞬で細かく切られる野菜たちに、ノワは目を輝かせた。
「わー……涼、すごいね。野菜、綺麗に切れてるよ」
　切り方がもはや初心者ではない、という視聴者のツッコミをよそに、涼は頷いた。
「卵とソース作成はノワに任せた」
　卵を手渡した涼は、斬った食材とライスをフライパンで炒め始める。
　その隣で卵を託されたノワは、緊張の面持ちで卵を握った。
「卵……責任重大だね……頑張るヨ」
　ボウルに卵を割り入れ、お箸で溶いて溶き卵にする。
「溶き卵に牛乳を少し加えて……サラダ油とバターとお塩入れたフライパン温めます」
　初心者らしい初々しい手付きに、視聴者の心の「ガンバレ！　」ボタンが押される。
「ええと……や、焼キマス」
　熱したフライパンを前に、意を決して卵を投入。
　強火で混ぜながら焼かれるオムレツを、ノワはこわごわ覗き込む。
「大丈夫かな……」
　不安になりつつも、ノワは焼けたオムレツを炒め上がった涼のチキンライスの上に乗せた。
　とろっと広がるところが良く見えるように切れ目を入れると、中の半熟卵がいい感じに広がる。
　少し焦げたチキンライスも、卵が優しく包んでくれる。
　焼き上がったオムライスに、ノアは小鍋を手にした。
「次はソースだね」
　溶かしバターと小麦粉を混ぜて、牛乳入れて温める。塩コショウして焦がさないよう慎重に仕上げたホワイトソースを、オムライスにかける。
「最後にパセリ散らして……完成、です」
「皆、批評を頼む」
　ホワイトソースのオムライスを前に一例した二人の動画に、イイネ！　ボタンがたくさん押された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「はぁ～っす」
　深くも重いため息をついた秋山・軍犬（悪徳フードファイター・f06631）は、一つ頭を振ると壁をコンコンした。
　出てくるのは、袋入の薄力粉一キログラム。よいしょ、と手に持った重みは確かに薄力粉で。薄力粉なのはいいのだが。
　猟兵、秋山軍犬。料理を作るのも食べるのも大好き。料理食材の関わる仕事は大好物。
　……のはずだが微妙にテンションが低い。
「コンコンで得られる食物じゃ、心躍らないっすねーやっぱり。異世界の未知の食物やら、グリモア猟兵さんに超無茶振りしてGETした超レア食物の方が、料理してても楽しいっす」
　小麦粉を手にした軍犬は、別の場所をまたコンコン。出てくる砂糖をバッグに入れて、また別の場所をコンコン。
　無論彼も猟兵の端くれ。異世界の食糧事情を思えば、食うに困らない事がどれほど尊いかは分かっている。分かっているのだが。
「……それはそれ、これはこれなんすよねー」
　まあ仕事を受けた以上は真面目にやる。仕事干されたら困るし。
　食材を揃えた軍犬は、作るケーキを決めた。
　クリスマスの時期だし、無形の食材が形になる過程もワクワクするし、完成形の見た目も面白い。
「ここはやっぱり、ブッシュドノエルっすね」
　一つ頷いた軍犬は、軽快な音楽を背景に簡単な作り方を字幕にして配信した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

「なんでかキマイラフューチャーって、こんなのばかり出てきません！？」
　思わず叫んだ草野・千秋（断罪戦士ダムナーティオー・f01504）は、無意識に頭に手を当てた。
「うう……頭が痛い。しかしやる事はやらねばヒーローの名がすたる」
　頭に当てた手を握りしめた千秋は、どんな動画にするか腕を組んで考えた。
　料理動画の界隈では最近、インスタ映えというか30秒位のレシピ動画はやっているようだ。若い女子にSNSで人気なやつ。
「あれを参考に、パン作り動画を作ってみましょう」
　動画の方向性を決めた千秋は、食材を揃えるとカメラの前に立った。
「まずは、サイボーグフルパワーでパンを捏ねます。えいしょ！」
　すぱーん、と小気味よい音と共に、パンがみるみる捏ね上がっていく。ねばつく生地がふんわり生地にまとまって、そして発酵……のあたりは端折っていこう。
動画映えしないし。
「今回は所謂おかずパン、惣菜パンを作りますよ」
　千秋は元々パン職人希望で、その筋の学校出たから、ここから先もお手の物。
　色々な具、タマゴサラダとか乗せて焼き上げる。
　一瞬で捏ね上がったパンがみるみる形成され、オーブンに入った瞬間焼き上がる。
「はい出来上がり！」
　音楽と共に配信された３０秒パン作り動画は、驚きとツッコミをもってキマイラ達のイイネ！　を集めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

「お料理動画って、とっても面白そー！」
　ワクワクした様子の榎木・葵桜（桜舞・f06218）は、どんな動画にするか腕を組んで考えた。
　誰かを楽しませるには自分も楽しまなくては。
　葵桜が楽しいと思うもの。それはやはり、とびっきり可愛くて、鮮やかで見た目にも楽しいもの。
　撮影時から動画編集に至る最後まで、とにかく楽しむことをコンセプトに、葵桜は動画の構成を決めた。
　カメラの前に立った葵桜は、カラフルな魔法使い衣装着ると同じくカラフルな食材の前に立った。
「今回は、虹色パンケーキをつくりまーす！」
　７つのボウルに入ったプレーン生地に、食紅と野菜パウダーで色を付けて七色の生地を作っていく。
　７つのフライパンに次々流し入れて、テンポよくひっくり返すのもまた楽しい。
　できたパンケーキを重ねたり、クリームやチョコスプレーでデコレーションしたりして、見た目のかわいさ追求も怠りなく。
　出来上がった虹色パンケーキを、一口ぱくり。
「かわいいだけじゃなくて、おいしい～♪」
　楽しそうに美味しそうに頬張る葵桜の姿に、キマイラ達は惜しみないイイネ！　を送った。

成功 🔵​🔵​🔴​

「人気の秘訣のう。映像では味が分からないからどうしたものか」
　ふさふさな腕を組んで考え込んだスターリィ・ゲイジー（ほしをみあげるひと・f06804）は、どんな動画にするかに頭をひねった。
　食べられる範囲でインパクトのある料理が望ましいのだろうが、そうなると思い当たる料理が一つだけある。
「ううむ、苦手なのだが故郷で嫌というほど食わされた、スターゲイジー・パイを作るのじゃ」
　料理を決めたスターリィは、カメラの前に立った。

「まずは普通にパイ生地を作るぞ」
　冷たく冷やした角切りバターに、強力粉と薄力粉を切り混ぜて折り、伸ばして折り。
　できたパイ生地を型に伸ばして、切れ端で星を作ったりして、洒落た演出も忘れずに。
　次に画面に現れたのは、数匹の生魚。
　見た目はなるべくそのまま、骨などを除いて食べやすく捌かれている。
「それを豪快に、真っ二つにするのじゃ！」
　胴の部分で一刀両断。まな板の上で跳ねた魚の頭をキャッチしたスターリィは、準備したパイ生地を手元に寄せた。
「最後に器にパイ生地と魚を重ねるのじゃが、魚の頭をパイから貫通させ、天を仰いでいるように配置するのが大事じゃな」
　言葉通り、頭と尻尾が星を見上げるような前衛的な配置がされたパイ皿は、どうしてそうしたし、としか言葉が出ない。
「そしてオーブンへ投入！　焼けたものがこちらじゃ」
　オーブンから出てきたのは、形を留めた魚が空を見上げている姿をそのまま体現したスターゲイジー・パイ。
　その見た目に、多くのキマイラがイイネ！　を連打する。
「うん……」
　星を見上げたスターリィは、味についての感想は一言も漏らさず、黙々と食べて動画を締めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 冒険 『レッツクッキングバトル！』

POW   :    お腹いっぱい！がっつりボリュームメニューを作る SPD   :    みんなで健康になろう！繊細でヘルシーな料理を作る WIZ   :    ついついつまんじゃう！おつまみやおやつを作る 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

動画サイトのイイネ！　数上位を占めた猟兵達は、送られた招待状を手にお料理コロシアムへと向かった。

　上座には玉座が置かれ、フロアの中央には王様に捧げられるように多種多様な食材が置かれている。
　食材を取り囲むように配置された調理台。猟兵達を撮影するために取り囲むカメラ。
　大勢のキマイラ達が見守る中、王様のコスプレをしたオブリビオンが両手を広げた。
「それでは、わがお料理コロシアムが誇るうｐ主達を登場させましょう。よみがえるがいい、動画・シェフ！」
　どこからか苦情が来そうな決め台詞を言うオブリビオンを、ここで攻撃したら早い気もするが、そんなことをしたら逃げられてしまうのだ。
　さあ猟兵たちよ、存分にお料理するがいい！
　そしてイイネ！　を稼ぐのだ！

　そんなノリのオープニング動画に、猟兵達は袖をまくりキッチンへ立った。

　※審査員として出される料理にリアクションするのでもOKです。








※今回は料理の鉄○風にお送りします※

●
　輝くライトをその身に浴びた彩花・涼シェフが今、お料理スタジアムの中へ入ってきます。
　その隣に立つのは、相棒のノワ・シュタインファルベシェフ。
『動画サイトのでは、見事なコンビネーションでホワイトソースオムライスを見せてくれたお二人です。このお料理スタジアムでのお料理パフォーマンス、期待が持てますね』
　そうですね。
　実況は榎木・葵桜さんと謎のアナウンサーでお送りします。
　目を見交わした二人、食材エリアで別れました。
　肉野菜エリアへ向かった彩花シェフ。手にした食材をみるみる刻み炒めていきますね。
　スパイスを加えています。この香りはカレーでしょう。手慣れた手付きでカレーを作り上げていく彩花シェフ。どのようなカレーで我々を魅せてくれるのでしょうか。
　おおっと、ここで手にしたのはおろし金だ！　そして新鮮なリンゴをおろしていく！
『この隠し味がカレーにどんな風に活かされるんでしょう。試食が楽しみです！』
　榎木さんよだれよだれ。
　ここで煮込みに入る彩花シェフ。手にしたのは人参……？
　丸い人参が彩花シェフの手によって、形を変えていく。輪切りにされ現れたのは、これは……花型ですね。
『花型人参は別鍋で茹でられてるのがいいね。一緒に煮込んじゃうと、煮崩れちゃうから。トッピングにするんでしょう。すっごく粋な演出だよ』
　そうですね。

　こちらシュタインファルベシェフサイドです。
　フルーツエリアで考え込んでいたシュタインファルベシェフ。食材エリアで手にしたのは、結局砂糖とゼラチンのみです。
『うーん、これは持ち込み食材で何かを作ろうとしているんだろうね。持ち込みOKなんて、懐が広いね！』
　どうやらそのようです。冷蔵庫の中から取り出したのは、ヨーグルトと生クリームです。
　器に出されたヨーグルト。これは新鮮そうです。
　ここで、水と砂糖を火にかけましたね。溶かしている間に生クリームを泡立てています。
『これは、ババロアだね！　涼さんがカレーだから、デザートにヨーグルトババロアはぴったり！』
　おおっと、ここで水でふやかしたゼラチンを投入。続いてヨーグルト、生クリームと次々と合わせていきます。
　混ぜ方が優しいですね。まるで愛し子を撫でるように、砂糖液と乳製品を調和させていきます。
　美味しいババロアにとって、分離が何よりの天敵。それを熟知しているのでしょう。
　できあがった生地を入れる型は、丸形を選んだ。これは食べやすさと美しさを両立……。

　ここで彩花シェフに動きがありました！
　彩花シェフが手にしたのは、肉の塊ですね。これはトッピングにステーキを合わせるのでしょうか。
　おおっと！　ここで手にしたのは愛刀の黒華・改だ！
　肉の塊を放り投げる！　そして……え？
　何が起こったのか！　肉の塊がまな板の上で細切れになっている！
　肉の前で彩花シェフ、微動だにしませんね。細切れ肉を炒めてトッピングにするんでしょうか？
『ううん、違うよ！　【残像】が見えるほどの速さで、細切れの肉をどんどんミンチにしてるんだよ！』
　なんという早業！　動画のときにも炸裂した技を、この目で見ることができるとは感激ですね。
　続いて手にしたのは玉ねぎですね。これもまた【残像】が残るほどの早業でみじん切りになっていく！
　続いて手にしたのはフライパンです。ここで玉ねぎを炒め始めています。
　これはハンバーグでしょう。カレーのトッピングにハンバーグ。がっつり系で来ましたね。
　つなぎに卵とパン粉を入れて、練り上げていきます。
「ハンバーグの形は……そうだな、猫にしてみよう」
　ここで呟いた彩花シェフ。その宣言に違わず、手の中でハンバーグの種が猫の形に整えられていく！
　ここで焼き上げに入る！　ご飯の準備も万全だ！
　煮込まれたカレーが、ご飯の上に今……掛けられた！　その上に猫の形のハンバーグと花型人参、うずらの卵で目鼻が添えられ、ここにハンバーグカレーが完成です！
「あ、猫可愛いね……」
　ババロアを器に盛ったシュタインファルベシェフ。完成した猫ハンバーグカレーを見てこれは……ベリーソースを手にしましたね。
　ガラスの器に盛ったヨーグルトババロアに、猫の足型と食用クローバーを添えました。
『お、おいしそうでかわいい……』
　これは粋な演出ですね。
　料理は見た目も大切ですからね。

●　
　さてこちらは草野シェフサイドです。
「頑張りましょう！　いぇーがー・クッキング！」
　気合い充分な草野シェフ。ガッツポーズでお料理スタジアム入りしました。
　炊きたてご飯をざっくりほぐす草野シェフ。取り出したのはこれは……スパム、ですね。
『スパム、っていうと迷惑メール……』
　ではなく、塩味のハムみたいな豚肉缶詰です。
　さあ草野シェフ。炊きたてご飯をおにぎりにして薄切りスパムで……巻きました！
　白いご飯にピンク色のスパム。黒い海苔がいいアクセントになっていますね。
　ふっくらご飯にしょっぱ旨いスパム。これは美味しい！
　スパム巻きおにぎりの次は、食材エリアで牛肉を手に取った！
　続いて白菜、白ネギ、白滝しいたけ。これは……。
『スキヤキだね！　割下があるから関東風と見たよ！』
　放送席放送席。今草野シェフからのコメントが出ました。
「僕の幼い頃は、肉料理なんて贅沢でなかなか出てきませんでしたが。こうしていい肉で料理できるのは嬉しいです」
　微笑む草野シェフ。人には人生があるのです。
　ここで、とんすいに生卵を入れました。やはりスキヤキには生卵。
　そして隣にはお茶碗を伏せるという粋なはからい。
『スキヤキを食べた卵にタレが混じると、ご飯にかけても美味しいんだよね！』
　榎木さんさんよだれよだれ。
　スキヤキの下準備を完璧に整えた草野シェフ。そして今度は……ボウルを手に取りましたね。
　用意したのは小麦粉と卵と砂糖とベーキングパウダー……。
『パンケーキだ！』
　どうやらそのようです。薄いパンケーキを次々に焼いていきます。
　それを丸く花のように大皿に乗せまして、次に取り掛かったのは生クリームですね。
　三つのボウルに、生クリームをそれぞれ一パックずつ……。いくつ入れるのでしょうか？
　そして、やおら泡立てる！　砂糖を入れて更に泡だて！　とんでもない量の生クリームが次々に泡立てられていきます。
　そしてそれを、大きな搾り出し袋に入れて……絞りました！
　パンケーキの上に、これでもかと大量の生クリームを絞っていく！
　そして草野シェフ、他のボウルに食紅を入れて、色を変えました。
　食紅とあれは、抹茶ですね。色を変えて見た目も綺麗に、飽きさせない工夫はさすがです。
『女性版次郎ですね』
　女装をするということですね。見ているだけで甘い！　胃もたれしそうです。
「作ってるだけでもお腹いっぱいです」
　苦笑いの草野シェフ。ホワイトチョコで飾ってすき焼きを仕上げて……完成です！

●　
　さあ、前半戦が終わりました。
　審査員の葵桜さんの前には、ハンバーグカレーとヨーグルトババロア、スパムおにぎりとすき焼きとタワーパンケーキの計５品が並びました。
　見事にがっつり系が揃った今回のお料理スタジアム。審査員の葵桜さんが実食に入った！
「すごいね！　スタミナの玉手箱だね！　見れば驚き食べれば元気いっぱいだぁ♪」
　これはすごい。カラフルな魔女衣装の少女が、がっつり料理を次々に完食していく！
　榎木さん、審査は……。
「えへへ、美味しくいただきましたー♪」
　榎木さーん！？

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●
　猟兵達の控室。
　壮絶なお料理バトルをモニター画面越しに見ていた秋山・軍犬は、画面に向かって指笛を吹いた。
「前回と違って食材は怪人の奢り・無料！　軍犬のテンションは爆上だ！」
　前回もコンコン食材は無料だ！　というツッコミは華麗に無視して。
　手を叩いて喜ぶ軍犬の様子を、物陰から二人の男女が見守っていた。
「ヒューッ!　ナンシー!　これは奴さんやるかもしれねぇ!」
「ええ!　ジョン!　彼はきっとやってくれるわ!」
　アメリケーンな金髪リーゼントのジョンとボンバーボディなナンシーの視線の先。
　出番を待つ軍犬はキマイラフューチャーコンコン産の炬燵に入り……自作の寄せ鍋で熱燗をひっかけたいた。
「Oh、ジョン？　調理の描写、無かったわね？」
「NONOナンシー。描写は無いが丁寧かつスピーディ……ん？」
　炬燵から出た軍犬は調理台に向かい、包丁を手にする。
　持ち込み食材として用意したマグロの冊をお造りにした軍犬は、刺し身と日本酒を持って炬燵に戻った。
「……刺身作って？　また炬燵に入って？　飲んでるわ……ジョン？」
「いや、ナンシーこれは……？」
「他の人の料理まだっすか～？」
　通りすがりのスタッフに、お猪口を掲げてリクエスト。赤ら顔の軍犬に、これからお料理スタジアムに向かおうという気概は……ゼロ。
「奴さん料理勝負から完全に勝負が抜けてやがるぜHAHAHA!」
＼ドッ／
「もう!　どーすんのよコレ!」
＼ドッ／
　寸劇を繰り広げるジョンとナンシーに、軍犬は振り返った。
「で？　ジョンとナンシーって誰っすか？」
＼ドッ／
　オブリビオン戦へ続く！

苦戦 🔵​🔴​🔴​

第3章 ボス戦 『怪人『オンナマズ』』

POW   :    ジャイアントナマズ 自身の身長の2倍の【巨大ナマズ怪人 】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。 SPD   :    ナマズ人召喚 レベル×1体の、【後頭部 】に1と刻印された戦闘用【ナマズ人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。 WIZ   :    矢ナマズ発射！ レベル×5本の【雷 】属性の【刺さるデンキナマズ】を放つ。 👑17 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

大盛り上がりの会場に、一際大きな拍手が鳴り響いた。
「今日も、良いお料理バトルが見られてナマズは満足ナマズ！　この動画の再生数はビリオン超えてダブルビリオンナマズ！」
　控室の奥から現れたオンナマズが、お料理スタジアムの中央へ歩み出た。
「ナーマナマナマ！　これで信者の数もうなぎ登りならぬナマズ登りナマズ！　次回の動画投稿も期待してるナマズ！」
　満足そうにほくそ笑むオンナマズ。
　だが、次回のお料理バトルはないのだ。
　猟兵達が、ここで終わらせるのだから！


高笑いを上げるオンナマズの声を遮るように、秋山・軍犬は高笑いを上げた。
「ナーマナマナマ生ビールっす!!」
　右手にはネギマのタレ。左手にはキンキンに冷えた生ビール。
　飲みには鉄板の組み合わせを誇らしげに持った軍犬は、やおら焼き鳥に食らいついた。
　口の中に広がる、モモとネギのジューシーなハーモニーを、苦い生ビールで流し込む。
　ビールを飲み干し、串を投げ捨てた軍犬の様子を、猟兵控室のモニターが大きく映し出す。
　コンコン産コタツに入ってモニターを見ていたジョンとナンシーは、その様子に指を指して笑った。
「HAHAHA！　見ろよナンシー！　最終決戦なのにビール呑んでやがる」
「ヤキトリもよ。こんなふざけた猟兵、見たことないわ！」
　Oh、No！　とでも言いたげに肩を竦めて首を横に振ったナンシーのツッコミに気付いたのか。
　やおらカメラ目線になった軍犬は、ジョンとナンシーに向けてかニヤリと笑った。
「説明するっす！　一見ふざけているように見えるっすが、自分は食えば食うほど戦闘力が増大するユーベルコード持ちなんっす！」
「それにしたって、飲酒戦闘はどうなんだい？」
「このリプレイは良い子も読んでいるのよ多分！」
　モニターに双方向マイクは付いていないはずだが、思わず反論してしまうジョンとナンシー。
　その手の皿には、軍犬が育てた鍋つゆで作った雑炊がこんもりと盛られている。
　卵で仕上げた雑炊を美味しそうに食べるジョンとナンシーは、コタツいっぱいに並んだ空の皿を指さした。
「ヘイ！　この皿片付けてくれないかい？」
「同じのが欲しいわ。二人前ずつよ」
　ハンバーグカレーとヨーグルトババロア、スパムおにぎりとスキヤキとタワーパンケーキの皿を下げさせ、おかわりを要求するジョンとナンシー。
　自由過ぎる控室には気づかず、軍犬はグルメツールを構えた。
「それはフードファイターという生物を舐めているっす。猟兵の中で現状、唯一食を戦闘力に変換するジョブ、というのは伊達ではないっす。常識は通用しないっすよ！」
　あっけにとられるオンナマズにフォークを突きつけた軍犬は、やはりあっけにとられる猟兵たちを振り返った。
「飯を作ってくれた皆のため！」
　右手を広げた軍犬は、再びモニターに視線をやる。
「ジョンとナンシーのため!」
　左手を広げる軍犬に、ジョンとナンシーは親指を立てる。
「ナマズ怪人ッ!　貴様を討つ!!　フードスペシャリテ・フルコースモーーード!!」
　全身の細胞及び潜在能力が活性化させた軍犬の詠唱と同時に、猟兵たちはオンナマズへと踊りかかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

あっけにとられるオンナマズの見せる隙きを好機と判断した草野・千秋は、アサルトウェポンを構えるとオンナマズへと照準を合わせた。
　千秋はこれまで、動画で炭水化物を、お料理スタジアムで肉と野菜と乳製品を調理した。
　残る食材は一つ。魚介類だ。
「今度はナマズ怪人を解体するターンですね。オンナマズ、覚悟しろ！　僕が、僕たちが成敗する！」
「今回のラストはナマズさん、あなたが材料だよ！」
　千秋に呼応して躍り出た榎木・葵桜は、指をびしぃっと突きつけた。
　千秋はパンケーキを作った仲だ。共闘に何の躊躇もない。
　それは千秋も思ったのだろう。千秋は自分たちを撮影する機材に向けて宣言した。
「ここからは猟兵がオブリビオンを駆逐する動画になります！」
「動画もお料理バトルもすっごく楽しかったし美味しかったけど、ここで終わりにしちゃおう！」
　葵桜と目を見交わした千秋は、オンナマズに向けて容赦なくヴァリアブル・ウエポンを放った。
　アサルトウェポンから放たれる無数の弾丸が、オンナマズの腹に蜂の巣を作る。
　千秋に呼応して葵桜が動く前に、オンナマズが両手を挙げた。
「挑戦者が猟兵だった。なんて燃えるシチュエーションなのナマズ！　ここでナマズが返り討ちにすれば、再生数はトリプルビリオン間違いないナマズ！　というわけで、いでよ！　超巨大ジャイアントオンナマズ！」
「ナマーズー！」
　妙な掛け声と共に現れたジャイアントオンナマズに、葵桜が目を輝かせた。
「わあ！　料理しがいがありそう！」
　あのジャイアントオンナマズを捌いたら、何人前になるだろう。だが、所詮ジャイアントオンナマズは召喚されただけのナマズ。オンナマズを倒さなければ意味がない。
「だいじょーぶ、私がいい感じに【料理】してあげちゃうね♪　お・か・く・ご☆」
　にっこにこな笑顔を浮かべた葵桜は、ナマズ料理を色々思い浮かべた。
　ナマズ料理で美味しそうなのは、蒲焼きだ。ウナギとは違った食感でおいしいって聞いたから、今から焼き上がりが楽しみだ。
「今回は捌くのは飛び越して、いっそ焼きから入っちゃおうか★　田中さん、カモーン！」
　サモニング・ガイストで呼び出した田中さん（霊）に、巨大なハケとペンキ缶入りのコンコン産蒲焼のたれを手渡した。
「田中さん、いい感じにタレを塗ってあげて！」
　ハケを受け取った田中さん（霊）は、タレをたっぷり含んだハケでオンナマズの横面を張り倒す。
　たたらを踏んだオンナマズを庇うように、ジャイアントオンナマズは一声吠えると大きく足を踏み鳴らした。
　地震のように震えるお料理スタジアムの床。思わずバランスを取った千秋に、ジャイアントオンナマズの拳が迫った。
「ナマーズー！」
「甘いな！」
　初手のジャイアントオンナマズ召喚を警戒していた千秋は、拳をひらりと避ける。
　地震に気を取られた葵桜に、オンナマズは刺さるデンキナマズを放った。
「そんなにナマズを調理したいナマズなら、これでも調理するがいいナマズ！」
「危ない！」
　葵桜の危険を悟った千秋は、身体をくるりと翻すとデンキナマズと葵桜の間に割って入った。
　同時に展開する正義の盾に、デンキナマズが食らいつく。正義の盾に突き刺さったデンキナマズはまるでスターゲイジーパイのように尻尾をぴんと立て、同時に雷を放った。
　手にした盾を通じて雷撃を受けた千秋に、葵桜は駆け寄った。
「千秋さん！　大丈夫ですか？」
「大丈夫です。仲間は大事ですから、ね？」
　微笑む千秋に安堵の息を吐いた葵桜は、怒りの目でオンナマズを睨んだ。
「田中さん（霊）！　こんがり焼いちゃって！」
　葵桜の命令に、ハケの毛を炎に変えた田中さん（霊）は、再びオンナマズに迫った。
　殴られ、炎に焼かれたオンナマズの身体から香ばしい匂いが立ち込める。
　雷の衝撃を振り払った千秋は、再びアサルトウェポンを構えた。
「この一撃、必ず当ててみせる！」
　意識を集中させ、オンナマズを狙う。威力を上げたヴァリアブル・ウエポンから放たれる迫撃砲が、オンナマズの腹に穴を開ける。
　同時に二回攻撃。命中に重きを置いた攻撃が、オンナマズに降り注ぐ。
「ナーマナマナマ！　やるナマズね！」
　集中攻撃を受けたオンナマズは、高らかな笑い声を上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

漂ってくるタレとナマズの焦げる匂いに、彩花・涼は愛刀の黒華・改を構えた。
　料理の練習をさせてもらえたのは感謝だが、オブリビオンはもちろん倒さなければならない。ならないのだが、つい美味しそうな匂いに思考が料理に傾いてしまう。
「三枚におろすかフライにするか……ナマズはフライにするのが美味しいらしいが」
（「え？　た、食べるの？」）
　真剣な表情で黒華・改を構える涼の顔を見たノワは、Eklipseのナイフを握り直した。
　涼のことだ。冗談だとは思う。思うが、今回は愛刀で色々な食材をみじん切りにしてきた。
　オンナマズも捌いて食べるのか。オンナマズはオブリビオンであって、食用ナマズではない……はずだ。食べたことがないから分からないが。
「戦闘はちょっと苦手たけど、ちゃんと倒さないとね」
「まぁ、流石にオブリビオンは食べないがな」
　ノワの心配そうな視線に苦笑いをこぼす涼に、ノワは安堵の息を吐く。
「だが、これだけデカいと食べごたえありそうだな」
　え？　ともう一度振り返ったノワの視線の先に、涼はすでにいなかった。
「安心しろ、しっかり黄泉の国に還してやる」
　詠唱と同時に真の姿を開放した涼は、同時に黒蝶の鎮魂歌を発動。迫りくる超巨大ジャイアントオンナマズがトレースした矢ナマズ発射！　の軌道を読み、槍のような矢ナマズ達を鮮やかにいなしていく。
　漆黒の蝶の群れを纏った黒華・改の刀身が、わずかにうち震える。黒い蝶を従えた黒い刀身は黒曜石のように輝きを増し、その美しさに思わず口元に笑みを刷く。
「超巨大ジャイアントオンナマズとやらを捌くにはもったいない得物だが……。解体し切り身にしてやろう！」
　肉薄する黒華・改が鋭く閃き、超巨大ジャイアントオンナマズの身体を裂く。
　続けて翻した刀身がナマズの身体から肉を削ぎ落とす。
　叫び声を上げた超巨大ジャイアントオンナマズは、ギラリと涼を睨むと背後に控えるノワへ視線を向けた。
　ユーベルコード詠唱の準備をしていたノワに、再び放たれた槍のような矢ナマズが迫る！
　ノワは思わず目を瞑り、防御して痛みと衝撃に備える。降り立つ沈黙に恐る恐る目を開けたノワは、超巨大ジャイアントオンナマズの槍を受けた涼の姿に目を見開いた。
　ノワを庇い槍を受けた涼は、苦痛の呻き声を漏らすとその場に膝をついた。
「涼……！」
「大丈夫か、ノワ……」
　涙目になり何度も頷くノワに、涼は安心したように微笑む。
　痛みに身動きが取れない涼に、超巨大ジャイアントオンナマズは再び矢ナマズをつがえた。
「仲間に手出しはさせないぞ」
　多数の槍が、再びノワを狙い迫る。再びノワを庇おうとする涼の前に、黒い影が躍り出た。
「……ごめんね、ありがとう」
　血統覚醒により真紅の瞳を開放し、ヴァンパイアの姿になったノワは、迫る矢ナマズをにキッチンツールを振るった。
　次々に捌かれ、三枚おろしにされる矢ナマズには目もくれず。ノワはEklipseを持つ手に力を込めた。
　小さな宝石がはめ込まれたカトラリーが、爆発的な攻撃力の補助を受けて鮮やかに閃く。
　卸された魚肉を更に捌くように閃くカトラリーセットが、超巨大ジャイアントオンナマズを食べやすい大きさにカットしていく。
「涼と一緒にお料理、楽しかった。また一緒に色々作ってみたいの。だから、ナマズはここで捌きます！」
「ナマーズー！」
　腹に響くような声を上げた超巨大ジャイアントオンナマズは、ノワに向けて拳を振り上げた。
　ノワに命中する直前、拳が地に落ちた。
　黒華・改で超巨大ジャイアントオンナマズの腕を落とした涼は、ノワに叫んだ。
「やれ、ノワ！」
　涼の声を受けたノワは、再びカトラリーを振るう。
　落とした頭を兜割りにしたノワは、倒れる超巨大ジャイアントオンナマズを前に思わずへたりこむ。
「頑張ったな！」
　駆け寄る涼とハイタッチ。
　ノワに手を貸し立たせた涼は、だんだん消えていく超巨大オンナマズの切り身を見送っている。
（「ナマズ料理、気になるのかな？」）
　何かを吹っ切るように黒華・改を振るい露を払う背中を、ノワは軽く叩いた。
「ナマズ料理は……旅団で練習してみよう。きっとみんな食べてくれるよ」
「そうだな。今度は食用ナマズを調達するとしよう」
　頷きあった涼とノワは、未だ健在なオンナマズに向かって駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　超巨大ジャイアントオオナマズを倒した彩花・涼（黒蝶・f01922）は、駆けつけてくれた酒場付き宿屋『牛舎』の仲間たちへ笑みを浮かべた。
「来てくれたか」
「もちろんだ。しかしナマズかぁ……。肉料理は得意だが、魚料理はまだまだ練習中なんだよな……」
　バーバリアンアックスを担ぎ上げたテオ・イェラキ（雄々しき蛮族・f00426）は、ナマナマ高笑いを上げるオンナマズの姿に顎に手を当てた。
「俺も刃物の扱いはともかく、魚は綺麗には捌けんぞ」
　テオに続いて現れた嵩本・李仁（フリーダムモンスター・f04699）は、サムライブレイドの柄を軽く叩きながらオンナマズを値踏みするように見た。
　女の身体にナマズの頭。正しくナマズ怪人なオンナマズは、見るからにぬるぬるしていて切りにくそうだ。
「まあ、細かいところは任せて輪切りでいいか」
　柄を叩く手を止めてしばし。一瞬目を見交わしたテオと李仁は、即座に駆け出した。
　スカイステッパーで空中に駆け上がったテオは、隆々とした肉体に羽根が生えたかのように軽やかに空を駆け上がると、空中戦に備えバーバリアンアックスを振りかぶった。
「空を飛ぶとは何事ナマズ！」
　直線的に突っ込んでくることを警戒していたオンナマズは、突然宙を駆け上がったテオを見上げて驚きの声を上げた。
　その隙を逃す李仁ではなかった。
「隙ありだ！」
　一気に懐へ飛び込み、抜刀一閃。
　抜き放ったサムライブレイドでオンナマズの胴を薙ぐ李仁に、オンナマズは矢ナマズを放った。
「ナマ！」
「遅い！」
　至近距離に迫った李仁に放たれた攻撃は、本来外すものではない。だが、矢ナマズが攻撃したのは李仁が残した残像に過ぎなかった。
　驚きに目を見開くオンナマズの頭上に、バトルアックスが迫った。
「この気色悪い見た目をしやがって、さっさと潰れろ！」
　オンナマズの頭上高く飛んだテオは、一気に急降下しながらバーバリアンアックスを振り下ろした。
　位置エネルギーと加速度のついた攻撃に、たまらずよろけるオンナマズに李仁の【剣刃一閃】が閃いた。
　叩き込まれる攻撃に、オンナマズは回避行動を取った。
　大きなバックステップで避けようとするオンナマズの背中に、ナイフが迫った。
「逃げちゃダメだよ！」
　黄金のライオンに騎乗したノワ・シュタインファルベ（凪ノ皓月・f02707）が投擲したナイフに気付いたオンナマズは、反射的に回避して態勢を崩す。
　そこへ、サムライブレイドが奔った。
「ナマズの輪切り、一丁上がりだ」
　足を輪切りにされたオンナマズは、ナマズ怪人を召喚した。
「お前たち、行くナマズ！」
「ナマーズ！」
　突然現れたナマズ怪人達は、攻撃を終えた直後の李仁へ向けて襲いかかろうとする。
　そこへ、金のライオンが割り込んだ。
「こっちだよ！」
　挑発するようにライオンで駆けるノワに、ナマズ怪人一斉にノワへと襲いかかる。
　繰り出される攻撃を第六感で避けながら戦場を駆けたノワは、ナマズ怪人を全て引きつけると叫んだ。
「涼、今だよ！」
　振り返るノワの声に応えて、涼は走った。
「後はお前だけだ！」
　ダッシュで一気に距離を詰めた涼は、ノワが作った隙をつき黒華・改を振り下ろした。
　続けて一撃。オンナマズの生命力を吸収し、先の戦いの傷を癒やした涼にオンナマズが吠えた。
「返り討ちにするナマズ！　お前たち、融合ナマズ！」
「ナマーズ！」
　最後の力を振り絞るようにユーベルコードを詠唱したオンナマズは、ナマズ怪人達を融合させると涼へ差し向けた。
　雷のような勢いで迫る融合ナマズ怪人の攻撃を、黒爪・改の腹で受け止める。
　迫る猛烈な圧力に、涼は怪力で留めながら歯を食いしばった。ここで押し負けたら、戦闘不能は避けられない。
　攻撃の手を緩めない融合ナマズ怪人の背中に、キッチンツールが突き刺さった。
「あなたの相手はこっち！」
　ノワの援護に一瞬気を緩めた融合ナマズ怪人に、サムライブレイドとバーバリアンアックスが迫る。
「ぬるぬるごと切り裂いてやろう！」
「叩き割ってやる！」
　テオと李仁の攻撃に、融合ナマズ怪人が消滅する。
　踵を返した涼は、大きくジャンプすると真の姿を更に解放した。
　黒爪・改を覆う漆黒の蝶の群れが、オンナマズに迫る。
「三枚おろしにしてやろう！」
　振り下ろしざまに二回攻撃。三枚におろされたオンナマズは、固唾を呑んで見守る動画配信のカメラを見た。
「今……何回転、ナマズ？」
「クアドラプルビリオン……今、クインティプルビリオン突破しました！　新記録です！」
　スタッフの声に、オンナマズは満足そうに微笑んだ。
「最後の最後は三枚おろしに新記録……。我がナマズ人生に、一片の悔いもないナマズ！」
　高笑うオンナマズの姿が、霧となって消える。
　激戦を制した猟兵たちは、大きく安堵の息をついた。

●　戦い終わって
　黒い霧となって消えたオンナマズを見送ったテオは、残念そうに呟いた。
「オブリビオンは死んだら消えるんだよなぁ……」
　オブリビオンを調理したらどうなるか。気にはなるが、料理するならまともな食材に限る。
「さて、今晩の献立は何にするかな？　やはりナマズ料理か」
「献立かぁ……」
　ライオンから降りたノワは、オンナマズの姿を思い出して苦笑いをこぼした。
　なにせ、超巨大ジャイアントオオナマズに融合ナマズ怪人、オンナマズ本体と最後はナマズ尽くしだったのだ。
「ナマズは今見たのでおなか一杯になっちゃったから、また今度でいいかな……」
「だがまあ、うん。魚にしてはなかなか楽しい戦いだった。ほどほどでいい感じだ」
　サムライブレイドの露を払った李仁は、払いきれない粘液に眉を顰めた。布で刀身を拭い、鞘へと収める。
「しかし……魚ってのはぬるぬるして斬りづらかったな。ん、ナマズだからか……？」
　首を傾げるが、答えは出ない。だが、やることは一つ。
「匂いもつきそうだし、帰ったら刀の手入れだな」
　布を懐へしまった李仁に頷いた猟兵達は、それぞれの帰途へついた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年01月19日