バトルオブフラワーズ⑦〜誇れ猟兵、己の意志を
「キミたちは何の価値も無い わかっているでしょう? 誇ることを持たない 作ることができない その手は誰もとりたくない♪」
朗朗とうたいあげられるのは、否定の言葉。その言葉に耳を傾けてしまったキマイラ達が、暗い瞳でパチパチとうたう者に拍手を送る。
「キミたちはそれが解れば良い わかってきたでしょう? 誇ることが無くとも 作るものが無くとも その身を僕が使うから♪」
本来であれば聞くに値しない暴言めいた存在否定。それ受け入れてしまったキマイラのそのすべてが、猫耳のイケメンである。否定を歌う者は猫耳のキマイラ……いや、感情の暗黒面に堕ちた者の体を操る、邪悪な仮面だった。
仮面が心を蝕むことで得たキマイラたちを伴って現れているのは、キマイラフューチャーに現れたステージの一つ。ザ・サウンドステージ。
仮面はその場所で、猟兵達を待っていた。猟兵達を蝕む、あらん限りの否定を用意して。
●グリモアベース
次なる戦場を求める猟兵達へと、手をあげ存在を主張したのはクリスタリアンのネオン・エルバイトであった。
「皆さん、新たにザ・サウンドステージの案件を予知しました。可能であればご協力願いたいのですが……今回は皆さんの意志の強さが必要になりそうなんです」
彼が予知したのは"パッショネイトソング"という特殊戦闘ルールが適用される場所だった。この特殊戦闘ルールが適用される場所では、自身を鼓舞する歌を歌っていないと攻撃が無効化されてしまう。ユーベルコードも全体的にその対象になるため、自身を強く持ち、歌い続けなければならない。また、自身を鼓舞するという必要性がある以上、歌に強い感情がこもっていればいるほど強くなれる。
「そのような戦場なのですが、僕の予知した敵だと皆さんの歌の方向性を縛ることになってしまいそうです。僕の予知した敵は"相手を否定する歌"を歌ってきます。
また、敵は対峙者の思考が暗黒の方面に堕ちる事を起点にするタイプのようなので、そのような他者否定で自身を鼓舞出来てしまうようです。更に言えば、凹むところを見せたりするとより喜んで心をえぐってきます……ある種の変態ですね」
敵の変態性と戦場の特殊性が組み合わさっての厄介さだが、もちろん対抗する手段は存在する。
「相手は自分の歌に猟兵が揺らぐことを期待していますので……皆さんが"自分自身"や"これまでの成果"さらには"守りたいものの尊さ"を歌いそれこそが己の事実であると誇る事が、最も敵の目論見を防げそうです。
そして……個人的なお願いになるのですが、極力それを大きく、はっきりと歌ってくれると嬉しいです」
普段から自信のある人物以外にとって、自身を誇るということは難しい。それを大きく主張するのは尚更であろう。
「……ええと、敵の詳細が関係するんです。戦う敵は一見すると猫耳のキマイラですが、その本体は顔につけてある仮面です。仮面のオブリビオンは肉体を攻撃の相殺等で使い潰す気でいます……が、それは一度肉体を解放させればあとは自由に叩けるという事ではありません。
敵は戦場に肉体の予備となるキマイラを用意しています。そのキマイラ達は全員、仮面による人格否定を受け入れ、仮面による支配を拒むどころか望む状態となっています。仮面が身体を取り替えるときしか皆さんの前に姿を現さないのでほおっておいても良いのですが……その、自分自身を誇っても良いのだということを、みなさんの歌で多少なりとも思い出させてくれると嬉しいなと思うんです」
否定に対峙する、己の意思を誇る歌。それはキマイラ達の心の光を取り戻すきっかけになりうる。あくまで余裕があればの話だが、強く大きく、はっきりと己を誇ると良いだろう。
「ちなみにですが、用意されたキマイラ達の避難を考える必要はありません。というか、ボスとなるオブリビオンを倒さない限り空間が隔離されたままですので敵を早々に倒すことが被害者を出さない事にもつながります……このようなところでしょうか。
必要な情報はおおよそ伝え終ったはず、です。向かっても良いという方は、こちらへどうぞ。人の歌とかち合うのも恥ずかしいと思いますし、基本的には一人づつお送りしますね」
そう言って、ネオンは猟兵を送りだすべくグリモアを手にする。
心の強度を問う戦い。その覚悟ができた猟兵から、戦場に向かうべく足を前にすすめた。
碧依
碧依と申します、よろしくお願いします。戦争シナリオの第二弾かつ、メンタルバトル的な内容となっております。
このシナリオに関しては(戦闘内容は必要ですが)メンタルバトル中心でやろうかなと思ってますので、基本的に一人づつの描写となります。仲間等とご一緒したい方は明言してくださると幸いです。
ちなみにですが、実在曲かどうか調べたりとちょっといろいろ困るので、基本的に歌詞描写よりもメンタル描写の方を優先してくださると幸いです。
心を折ろうとする色んな意味で暗黒面との戦いです。猟兵一人一人の、己を信じる力を乗せたプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『暗黒面『斬裂の支配者ロード・リッパー』』
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POW : 魂を蝕む触手の群れ
【暗黒面 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【蠢く蒼の触手のかたまり】から、高命中力の【魂を蝕む触手の一撃】を飛ばす。
SPD : シンクロ・ザ・ネメシス
【暗黒面の感情で塗潰す事により支配した 】【一般人のイケメンな猫耳キマイラ男子の体に】【斬裂の支配者 ロード・リッパーの身体能力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 次はどんな子にしようかなぁ?猫耳は外せないよね。
対象のユーベルコードに対し【支配していたイケメンな猫耳キマイラ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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ベルンハルト・マッケンゼン
アドリブ大歓迎!
【POW】
“我が名はベルンハルト、我こそはベルンハルト!”
豊かなヘルデンテノールで歌い上げる。
誇らずとも私は唯一無二の私であり、それは他の全てに無関係だ。
(天を仰ぎ呟く)…喩え我、死の影の谷を歩むとも禍害を怖れじ――何故ならこの俺こそが、この谷で最悪の悪党だから、な!(哄笑した)
心をえぐる? 失敬、笑ってしまった。
かつて地獄を見たイオージマの地雷よりえぐれるのか、貴様が。
私は、何も気にしない。何も……気に、ならないのだ。
(一礼して愛銃を構える)…では、フィナーレだ。
どうぞ聴いてくれ……“Leck mich am Arsch!”
(UCのEisernen Handを最大火力で使用)
「その心に真はあるか? その名前に銘はあるか?
あるはずがない あるわけがない 吹き飛ぶ命に価値は無い
揺蕩う海から湧き出でる そのための楔すら打てぬ 生きてる限り価値は無い」
戦闘に備え各所に隠したキマイラ達に向けて、生きる者の無価値を歌う男性の声。肉体にしているキマイラの声を使いながら、仮面のオブリビオンことロード・リッパーはワンマンショーめいてステージの中で踊り、歌う。
骸の海に沈み、そこから世界に手を伸ばせなければ価値などないと歌いながら、その身振り手振りはやけに楽しそうにはずんでいる。
が、そこに新たな声が重なった。猟兵のエントリーだ。
「我が名はベルンハルト、我こそはベルンハルト!」
名乗りを、即興のメロディーと節をつけて歌い上げるのはベルンハルト・マッケンゼン。力強く豊かなその声は、ステージ全域に届かんとしている。
ロード・リッパーはすぐに彼の姿や立ち振る舞いからその中身を見抜き否定を仕掛ける。
「やあ傭兵崩れのおばかさん 戦場に居たご様子だが なぜ命などを繋げてる? 真面目に戦えなかったかな?まともに戦えなかったかな?
ああ、それとも不条理の結末か! きっとたくさん死んだだろう、キミの目の前、多くの人が! 漂う酒気からわかるよ僕は! 死ねなかったから酔い、逃げる!無様な無様なお前がさ!」
ベルンハルトに向けられたそれに、彼は一瞬口元を隠して笑って見せた。
「……フッ。いや失敬。 ああ……喩え我、死の影の谷を歩むとも禍害を怖れじ――何故ならこの俺こそが、この谷で最悪の悪党だから、な!」
天を仰ぎ、哄笑する彼の様子にロード・リッパーは違和感を覚える。声は聞こえているようだし、思うところが一切ないわけではないだろう。しかし、精神がぶれる様子がない。ひそかに召喚し背に潜ませていた触手からの、魂を蝕む一撃は未だ潜んだままだ。
より深くえぐらんと呪いめいた言葉を歌うロード・リッパーの声をかき消すほどに強く、ベルンハルトの歌が響き渡る!
「疑問だろうか?そうだろうとも おまえに私を抉れるものか! 私は、何も気にしない。何も……気に、ならない なぜならば、我こそはベルンハルト 私は唯一無二の私であり それは他の全てに無関係だ」
彼が揺らがぬ理由は単純だ。彼は世界が不条理だと、理解している。それでも何とかなると、敢えて信じながら生きている。
今更不条理に生き延びたなどと言われようと、既にそんなことはわかっているのだ!
「地獄を見た ああ、地獄を見て、生き延びた 貴様にはその地獄の地雷より、私を傷つけるなどできはしまい
死にぞこない?……フッ そうだろうとも 死に損なって、生き続けてこその人生だ! それこそが 誇るまでも無く だが揺らがない 私である私だ!」
ベルンハルトは、己の存在はお前程度の言葉では揺らがないと歌い上げ、一礼とともに武器を向ける!
「では、フィナーレだ どうぞ聴いてくれ……“Leck mich am Arsch!”」
最大火力で放つグレネードランチャーの殺意に満ちた一撃!
ロード・リッパーは召喚してあった触手を盾にすることで致命傷を避けながらも、身体としていたキマイラの負傷がフィードバックされ激しい痛みを感じる!
「ああ、世界とはかくも不条理で やり切れぬこともあるだろう だが誰しもが 唯一無二のその人だ!」
帰投の直前、彼は何処かに身を隠す者たちに向けて最後の一節を歌った。心が抉れるような地獄を見ようと、生きて戦う自分がいる。ならばきっと、今は折られてしまっている彼らも立ち上がれるさと敢えて信じ込んで歌にのせた。
そして、爆風が消えきらぬうちに戦場から軽やかに姿を消したのだった。
成功
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アルカ・ルカルト
ふむ、負の力を糧にして作られた曲も暗く怪しい魅力があるわけじゃが、今はそうも言ってられんのう。
ここは音楽神を名乗らせてもらっとるわしのみせどころじゃな!
サウンドウェポン、シンフォニックデバイス準備よーし!
わしも伊達に神として長々生きてないのでのう、
これまであった数々の戦いの武勇伝、
辛く悲しいこともあったがそれも吹き飛ばして今もこうしてここで戦っておることを、
力強いヴァイキングメタル調で歌い上げるぞい!
『音楽の力』で自己強化しつつ、歴戦の相棒シエラとシエロの双剣で攻撃じゃ!
「ゲほっ、ごほっ……いったたたた……猟兵めぇ……」
煙をパタパタと散らし、無理矢理に空気を吸い込むロード・リッパー。そこに、肉体としているキマイラに対する思いやりは無い。肉体に任せるのであれば浅い呼吸であろう所を、喉を傷める空気を強引に吸い込ませている。
「はー、でも歌うなら空気はいっぱいないといけないからね。がまんがまんっと」
一応は同調しているロード・リッパーも痛みは感じているのだが、その後の事を考えず使い捨てる気でいるため健康被害には全く目が向いていない。
そして、荒れさせたのどで再び呪いを歌いだす……が、そこに民族的な楽器音が被りだす。まだ序奏らしきその曲調がこの後激しくなることを感じ取り、ロード・リッパーは叫ぶようにオブリビオンこそが必然だと歌い上げる!
「来たか猟兵、愚かなるもの!当然を受け入れろ、永久に続くものなどない!朽ちるは全ての必定だ!」
「あっはっは、完全なるブーメランじゃのう」
笑いながら登場したのは、アルカ・ルカルトである。
負の心理や力を糧にした歌にも需要はあるだろうし、その魅力もあらゆる音楽に触れ、音楽神と名乗る彼にはわかる。だが、今まさに心を折るために使用しているとあればそういってられない。
「まあそうじゃろうな、永久に続くものなんてそうはない……じゃが、滅ぶも続くも選び取るのは"今"の者たちじゃ!"過去"たるおぬしらではあらぬ!さあ、聞かせてやるのじゃ!!」
サウンドウェポンから奏でられる曲は激しさを増し曲調はメタルのそれへと変化する!そして、シンフォニックギアから放たれるアルカの声は戦いの叙事詩を歌いあげる!
力強く、疾走と溜めを織り交ぜながら紡がれる物語の中には、当然辛さや悲しみの場面も入る!そこに、ロード・リッパーの問いが差し込まれた!
「ならばなぜそこで絶たなかった?諦めなかった?!争いの中に身を投じるのは、ただの怨嗟の再演だ!不誠実にも同じことを繰り返すお前にお前の人生を誇る価値は無い!死ねないなどというのは言い訳だろう?!」
「辛く悲しい事もあったが、それは決して不幸ではない! 生き延びたにもかかわらず信念を諦め、膝を折る事こそが、不幸であり不誠実じゃ!!わしの誇りは"諦め"になどはありはせんのじゃ!!」
答えをも歌いあげながら、全身を輝くオーラで覆うアルカ!神々の時代から使い続ける神造剣である二振りを手に激しい飛翔能力でロード・リッパーに飛び込み、切りつける!
ロード・リッパーの側も触手を召喚し先ほどのように盾とする!本体である仮面の前に触手を掲げながら、ロード・リッパーも叫ぶように歌う!
「己の強さに胡坐をかく思考だね! 命の長さに頼ってそんな事を言っているけども、キミだって死ぬ命だったならとうに死んであきらめてただろうにさ!」
「そうとも、わしは生きている 戦っている! 命の長さこそ賜りものじゃろうが、逆に言えば生きてさえいれば辛さなど吹き飛ばして、何度だって立ち上がれる! このわしがそれを証明し続け、歌い続けてやろう! そして、この歌は仮面のおぬしに向けた物ではない!」
己を鼓舞し歌いながら、それによって得た力を思い切り双剣シエロとシエラに乗せる!
「己を認めて誇る、そのための歌じゃ!」
飛翔能力と合わせて斬撃の勢いは増し、触手を切り潰す!そして、ガァンと激しい音をたててその奥に隠れていたロード・リッパーの本体に大きく傷をつけた!
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛あああああああ
!!!!!顔、顔が!!せっかくのイケメンが!!」
思わず顔面を覆おうとするロード・リッパーの手をシエロで払いのけ、シエラで二撃目を叩き込んだ!
そこまでやってから、アルカは息を整える。敵の歌が止まっている今、曲を最初から奏でなおすなどの準備が必要な追撃を行うよりは、後の猟兵に任せた方が良いと判断したのだ。
「追撃にも他の策にも絶好のタイミングじゃ。おぬし、次は任せるぞ!」
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
歌うは賛美歌
人々を慈しみ、世界を貴び、命を讃える聖なる詩
暗闇に閉ざされたわたくしの故郷
大地は焼かれ、同胞は苦悶の末に果て
絶望に打ちひしがれ己の無力を嘆くだけのわたくしを
救ってくれた蒼き狼、わたくしの愛しき騎士
あの人のように強くありたいと
共に旅路を往き共にありたいと
人々の涙を払い笑顔を取り戻したいと
願いの果てに宿した この掌の中の光
差し伸べた手のぬくもりが誰かの心を温めるならば
「生きている」ただそれだけで貴方は尊く、いとおしい
「祈り」と「優しさ」を込めた【シンフォニック・キュア】の調べに乗せて
この世界のどこかの、寂しい心に届きますように
敵の攻撃には【奇しき薔薇の聖母】で抵抗を
※アドリブ歓迎
「ええ、任されました」
ロード・リッパーの悲鳴と呻りが混ざった声の中、先に戦っていた猟兵と入れ替わるように現れたのはヘルガ・リープフラウであった。
彼女は伸びやかな声で歌う。奇跡のような声で朗朗と賛美歌をうたいあげる。その歌に、シンフォニック・キュアの癒しの力を乗せながら。
賛美歌とは、元は宗教の言葉を歌う事から始まったが、今では信仰そのものや励ましを歌う物としての面も大きい――ヘルガの賛美歌は、そちら側に入る。それはつまり、赦しや慈しみを請う者の心に神のフィルターを介さず共感を得られるという事であった。
そして、何よりもその歌に込める物は己の道程と、そこから得た願い。歌う事で己を認めながら、どこかで傷ついている者を癒そうとしている。
(暗闇に閉ざされたわたくしの故郷 大地は焼かれ 同胞は苦悶の末に果て
絶望に打ちひしがれ己の無力を嘆くだけのわたくしを 救ってくれた蒼き狼 わたくしの愛しき騎士)
過去に苦しみを得た。過去に嘆きを得た。それでも救いがあった。
その救いがあるからこそ歌える歌を、ヘルガはそうと自覚しながら尊く響かせる。
「くっ……け、けど、攻撃はしてこない
……?!」
ロード・リッパーの耳にもそれは届いていた。その発生元が猟兵というだけでまともに聞く気にはならないが、込めてあるものは嫌でもわかってしまう。
人々を慈しみ、世界を貴び、命を讃える聖なる詩。
(あの人のように強くありたいと 共に旅路を往き共にありたいと
人々の涙を払い笑顔を取り戻したいと 願いの果てに宿した この掌の中の光)
ユーベルコードの力は、彼女自身に勇気を与えた。その勇気を振り絞って、歌う物が救いの歌であるという事が何を意味するのか。
「はぁ……ハァ……うたうだけの、籠の中のとり、ふ、ぜぃ――――っ?!」
ロード・リッパーによる誹謗の歌はうまく形にならない。そして、それがあってようやく気づく。肉体にしていたキマイラは回復しているが、ロード・リッパー本人のダメージは少々呼吸を整えただけで何一つ癒えてはいないことに。
「ばっ、馬鹿な?!嘘でしょ?僕の身体だ!僕の猫耳キマイラくんだぞ?!」
肉体との同調がずれていると言う事実にロード・リッパーが混乱し、そして混乱による攻撃性は真っ直ぐにヘルガへと向かう!
「この、泥棒猫ぉおおおおおお!!ちょっとおいしそうな鳥の羽をもってるからって!!僕のイケメンを誘惑しやがってぇぇーーーー
!!!!!!」
歌とは言えないシャウトだが、自身の攻撃性を高め戦う気力を巻き上げるという意味では最上のそれに任せて刃物を振るう!
そこに合わせてヘルガは白いベールと薔薇を纏った聖母の姿へとその身を変えて、薔薇の茨と花弁でその刃物を受け止めながら歌い続けた。
(差し伸べた手のぬくもりが誰かの心を温めるならば 「生きている」ただそれだけで貴方は尊く、いとおしい
この歌が、この想いが この世界のどこかの、寂しい心に届きますように)
ヘルガは顔をあげ、柔らかに微笑んでみせる。それがある種のトドメであった。肉体との心理の齟齬が決定的になった事に気づいたロード・リッパーはそれ以上歌わせないための捨て駒として支配していたキマイラをヘルガに叩きつける!
茨を引き、花弁だけで弱ったキマイラの青年を受け止めたヘルガはその重みに歌を止める。
「ほおっておくわけにもいきませんし、敵の思い通りですが……最も支配が強いはずの最初の肉体の方があの仮面を拒絶したということは、他の方々もあの仮面の思うとおりにいかぬということでありましょう」
ヘルガへの追撃ではなく、別の肉体を持ちだそうと必死になるロード・リッパーをみつつヘルガは青年を抱えながら後退する。
そして、次の猟兵の気配を感じてそちらに託すことにした。
「……わたくしも退きます。続きを、頼みますわね?」
成功
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アスカ・ユークレース
伸びやかなソプラノボイスで
闇の中でずっと問い続けていた
私は誰?
誰も知らない、私も知らない
私が一体なんなのか
けど、それがどうした?
誰も自分を証明してくれる者がいない?
なら、自分が何者かの証明は自分ですればいい!
私は今此処に宣言する
我思う故に我在り、私は私であり他の何者でもないと!
たとえ貴方が何度心を折ろうとここの住民はその度に立ち上がれるって信じてます
彼等の前向きさや逞しさ、しぶとさや図太さは天下一品なんです
キマフュを……舐めないで!【一射一殺】!
アドリブ歓迎
先に来ていた猟兵が下がる中、前に踏み出したアスカ・ユークレースはボウガンを構えた。狙う先は、隠していたキマイラに取りつこうと必死になる浮かぶ仮面。
「他の誰かが自分をどう思おうと お前たちには関係無い! お前たちは失敗した 失敗だけで作られた 請われないのに壊れる勇気もない だから壊れる道をくれてやろう! そうだ、のばせ 手を伸ばせ ぼくを身につけ盾になれ!!」
キマイラの心がこれまでの猟兵の歌で揺らいでいるためか、思考をネガティブに寄せようとロード・リッパーが必死になってキマイラ達の心を自身に同調させようとする。その声は肉体を用いていないためか、高い少女のような声になっていた。
その様子を見て眉間にぎゅっと力がこもったアスカは、ボウガンに矢をつがえ、想いを乗せながら伸びやかなソプラノで歌う。
「闇の中でずっと問い続けていた 私は誰? 誰も知らない、私も知らない 私が一体なんなのか」
アスカの旅路は、自己の確立という命題とともにある。それを自覚していた時期も、そうでない時期も、常にアスカに寄りそう命題。そう、今この場でさえ、彼女は彼女の中身を自分で作っている最中だ。
「けど、それがどうした? 誰も自分を証明してくれる者がいない?
なら、自分が何者かの証明は自分ですればいい!
私は今此処に宣言する 我思う故に我在り、私は私であり他の何者でもないと!」
だからこそ、猟兵としてここまで歩んできた彼女は何の迷いも無く「私は私だ」という事を誇る。今こうしてこの場に立ち、存在する自身を誇ることができる!
アスカの歌に対して、うっとおしそうにロード・リッパーが用意していたキマイラ達に向けて叫ぶ。
「あんなものは虚言だ わかるだろう? 足元に何も無いきみたちには無意味な歌だ 僕の歌に寄り添え 僕とともに心を闇に浸そう! そうだ いい子だ 僕だけが君たちの闇を活かしてあげられる! さあ、手を伸ばせ 僕を受け取れ!」
ロード・リッパーの呼びかけに向けて伸ばされる手が見える。が、それが本当に良いのかと震えているのも、アスカには見て取れた。
最初から自分の足元がなかったアスカが今猟兵としてここに立っている以上、今折れている人々が立ち上がることも彼女は心の奥から信じている……だが、それを邪魔する存在がいる以上容易ではないのだろうという事も理解した彼女は、節に乗せて一際大きく歌う!
「たとえ貴方が何度心を折ろうと、ここの住民はその度に立ち上がれるって信じてます!
彼等の前向きさや逞しさ、しぶとさや図太さは天下一品なんです!」
さだめていた狙いを違えていないことを確認!そしてユーベルコードを乗せた想いの矢を放つ!
(私の想い、皆の想い、この矢に乗せて……撃ち抜け!!)
「――キマフュを……舐めないで! サジタリウス・オブ・アルナスル!!」
アスカの想いが乗った矢は、この戦場に幽かに残る猟兵達の意志をも汲み上げながら威力と追跡性をましてロード・リッパーに向かう!
迫る矢に対応せんと、ロード・リッパーは手を伸ばしかけていたキマイラを強引に引きずり出す……が、アスカの想いの方に反応したキマイラはそれを振り払う!
「こ、の……ぎゃああああああああ
!!!!!!!」
バキン!と仮面のひび割れる音に、ロード・リッパーの悲鳴が重なる!
「キマイラのみなさん、出来るだけ離れて下さい!」
アスカの呼びかけに、猟兵が召喚される側へと逃げ込む数名のキマイラ。
正気を取り戻したというにはまだ心もとない表情だが……飛鳥の見る限りではあるが、もはやロード・リッパーの声にそのまま耳を傾ける者はいなさそうだった。
成功
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ニレッド・アロウン
馬鹿野郎、自己否定したところで何が変わるんですか。
下ばっか見ているから自分の暗い影しか見えないんですよ。上見てりゃ、影作るための太陽があるんです。太陽見てれば自分の事なんてちっぽけなんですよ、一々細かいとこ気にしてると禿げますよ?
だもんでロック歌います。自分の汚ねぇところも、綺麗だと思っているところもちっぽけな自分の一部なんです。太陽なんてでっかいのがあるのにくよくよしててどうするんですか。太陽みたいにでっかくなりたくないですか。私はなりたいです。
だから思いっきり叫びます。
I LOVE MEEEEE!!!
ハイテンションのまま【加速飛翔】で敵に激突、容赦なく吹き飛ばしていきましょう!
アドリブ歓迎
「寄る辺を見つけたかい?そうかい、それは結構……だけど、猟兵はオブリビオンに敵対するからきみたちにも都合がよさそうな歌を歌ってただけだよ?もう一度言ってあげるよ。君たちの命を有意義に使ってあげられるのはこの僕、ロード・リップ様だけさ!ああ、折角だからこれまでのように歌ってあげようか?」
くるりとまわり、歌いはじめる仮面。それ自体が自身を鼓舞する歌にもなっているのか、ユーベルコード二より召喚した青い触手の塊とともに声を張り上げる。
「救われた気分になってみても自己否定は消えない 否定をしたい気持ちを持つ君らは変わらない
かわるために僕のもとにおいでと そう歌って それに喜んでしまったキミ等は消えない
いくら救われた気分になったって 僕にひかれた君がそれを受け入れるべきではないさ!」
猟兵側に逃げ込んだとはいえ未だ自己否定の最中にあるキマイラたちはロード・リッパーの元に戻るべきか、このまま距離を取るべきかでオロオロとしている。
そのような彼らのなかをつっきって、一人のオラトリオが歩み出る。眼帯で目を隠した白百合の猟兵ことニレッド・アロウンは、はかなげな美しさをもつ見目の要素を振り切るような雑な敬語ではっきりと声をあげた。
「馬鹿野郎、自己否定したところで何が変わるんですか」
どこかからロックの伴奏が聞こえる。
「下ばっか見ているから自分の暗い影しか見えないんですよ。上見てりゃ、影作るための太陽があるんです。太陽見てれば自分の事なんてちっぽけなんですよ、一々細かいとこ気にしてると禿げますよ?だもんで、ロック歌います」
曲が大きくなり、それにあわせてニレッドはあらん限りのシャウトをかます!
「I LOVE MEEEEE
!!!!!!!」
呼びかけとしてのロード・リッパーの歌をかき消す大音量のシャウトから、流れる曲に合わせて強く強く、全てが己だと歌い上げる!
「自分の汚ねぇところも、綺麗だと思っているところもちっぽけな自分の一部なんですよ!!
太陽なんてでっかいのがあるのにくよくよしててどうするんですか?!
太陽みたいにでっかくなりたくないですか!?私はなりたいです!!
太陽だって黒点あるけどきにしやしねえでしょ?そーゆーもんです!
欠点も長所も美点も汚点も
I LOVE ME! I LOVE ME!! 私のだけじゃない、だれのものであれ 愛を、肯定を、止められるもんですか!」
魔法の障壁で覆われるニレッドが、ロックに合わせてシャウトしながら仮面……露わになった真の名をロード・リップというそれに突っ込んでゆく!
「互いにつくろうもものはもうないんだから ラストのぶつかり合いぐらい さあ歌いましょう! I LOVE M! 私は私だ!太陽にだってゴミクズにだってなれる私が 私の愛する私です!!!」
「くだらない!くだらないに決まってる!強さは闇より出でる闇に染まるべきで ……ああ、くっそ!!僕の思い通りにならないきみたちなんて大嫌いだ!!!」
「嫌いで結構! お前にいくら嫌われたって、私は私を誇れますから!」
内側からの炎のようにあらぶり、否定に晒されようとも揺るがない自己肯定がニレッドの戦闘能力を衝突のその瞬間まで引き上げて行く!
「何度でも叫ぶよ I LOVE ME!! このさけびが授けるんですよ!空すら超える――強靭な翼を!」
展開された魔法障壁ごとロード・リップに衝突するニレッド!
多くのヒビを入れられ、肉体による防御もろくにできなくなったロード・リップはニレッドの文字通りの体当たりに吹き飛ばされながらその身をバラバラの破片に変えてゆく!
「あ、あぁ あぁあぁぁあああぁぁあ
!!!!!!」
散ってゆく断末魔とともに力を失う仮面の欠片たち。その欠片すらも空気の中に消えるように溶けてゆくのをニレッドは見送った。
「一丁上がりですね」
一つの悪は去った。とはいえ、相手はオブリビオンである今回はバトルオブフラワーズ関連の作戦で出てきたようだが、それ以外でも今後似たような心を抉る事件を起こすかもしれない。
「……けど、きみたちはもう大丈夫だと私は思うんだけど私は思うんですよ。たくさんの歌を聞いて、その意味はきっと届いてると思うんです。どうでしょうかね?」
キマイラ達に向けたニレッドの口元は明るい笑みを浮かべている。
これまでの歌に、そして今見た笑顔に勇気づけられたキマイラ達は、しっかりとその問いに頷いた。
成功
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