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バトルオブフラワーズ⑧~世界をキミが塗り替えて

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ


●闇に染まった世界
『銀木犀、ただいま参上っす!!』
 銀髪からちょこんと出た鼠の耳。ちょろんと伸びた尻尾をぴょこぴょこ揺らし、大きな袋をかついだ少年(?)がカラフルな街中を駆け抜ける。
 オレンジ色のゴーグルをかけた銀木犀という名の少年がピシッと予告状を放つと、瞬く間に予告状が命中した場所が闇色へと染まっていった。
『へへっ、俺様にかかればチョロいチョロいっ! このまま真っ黒に染めてやるっす!』
 エヘンと得意気に胸を張り。
 銀木犀は次々と街を闇色に塗り潰しながら、下駄を飛ばして目にも止まらぬ速さで走っていく――。

●鮮やかな世界を取り戻せ!
「みんな、急いで集まってほしいのねー!」
 緊急事態だと言わんばかりにユニ・エクスマキナは慌ただしく宙に浮いたディスプレイを操作する。ディスプレイに浮かんだのは色鮮やかな近未来的な街並み―ー次に向かう世界がどこかは言うまでもない。

「キマイラフューチャーが大変なことになってるのはもう知ってると思うのね」
 まっぷたつに割れた世界。
 キマイラフューチャーの中枢『システム・フラワーズ』からの救援要請。
 システム・フラワーズを占領しているのはこの世界のオブリビオン・フォーミュラである『ドン・フリーダム』。
 メンテナンスルートを抜けて『ドン・フリーダム』からここキマイラフューチャーを守る――それが目的。
 しかし、周囲を守る6つの『ザ・ステージ』を全てオブリビオンから取り戻さないと、目的地である『システム・フラワーズ』にたどり着くことはできない。

「で、今回みんなに行って欲しいステージは『ザ・ペイントステージ』って場所なのね」
 このステージはキマイラフューチャーの街並みを模して作成されているが、壁や床は『闇のような黒色』に塗り固められている。
「このステージには特殊なルールがあって、黒い部分ではみんなのユーベルコードではオブリビオンに直接ダメージを与えることが出来ないみたいなの」
 ダメージを与えられないどころか、一方的に攻撃を受けてしまうという。
「だからね、みんなで『黒』を別の色に塗り替えてほしいのねー!」
 ユーベルコード或いは直接武器で床や壁を攻撃すると、ピンク、青、緑、紫などの色で、周囲を塗りつぶすことが出来る。
 一定以上の範囲を塗りつぶすことに成功すると、一度だけ、本来のユーベルコードでオブリビオンを攻撃する事が可能になるという。
 マップの3分の2以上が猟兵によって塗りつぶされた場合、本来のユーベルコードの攻撃を無制限に行えるようになるので、一気に決着を付けることが出来るだろう。
「オブリビオンを攻撃せずに、より広範囲を一気に塗りつぶすスーパー塗りつぶし攻撃を行うことも出来るのね!」
 一定範囲を塗りつぶしてオブリビオンに攻撃を繰り返すか、或いは、敵と戦わずに3分の2以上を塗りつぶす事を目指し、その後一気に攻撃するかは――皆の思うままに。

「そうそう、このマップにいるオブリビオンのことだけどね」
 忘れてたとユニは慌ててモニタに敵の顔を映し出した。
 ――敵の名前は『銀木犀』。
 大泥棒を気取っているただのスリ。
 ……とはいえ、足の速さと手癖の悪さは油断ならない。

「大丈夫! みんなだったら黒い世界も鮮やかな色に塗り替えられるのねー!」
 いってらっしゃいとユニは笑顔を浮かべ、猟兵たちを送り出す。

 ――さぁ、いざ行かん。キマイラフューチャーへ!


春風わかな
 はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。

●シナリオ補足
 このステージでは『ヌリツブシバトル』という特殊戦闘ルールが適用されます。
 ちょこちょこ塗りつぶして敵を攻撃するか、塗りつぶしに注力して一気に敵を討つか。
 どちらの作戦をとるかは各人のお好みでどうぞ。
 塗りつぶす際の色について、希望があればプレイングでご指定ください。

●共同プレイングについて
 ご一緒される方のID(3人以上で参加される場合はグループ名も可)を記載ください。 また、失効日が同じになるように送信していただけると大変助かります。

 以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『銀木犀』

POW   :    頂戴
【予告状】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    手刀
【残像さえ残る格闘術】による素早い一撃を放つ。また、【下駄を飛ばす】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    巾着切り
【スリ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
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ステラ・ハシュマール
元ゴットペインターとしてこの状況は好きではないね。綺麗な色に染めてあげようか。

さて、この状況は言い換えれば黒いキャンバスに何を塗るかだね。全部塗りつぶすのもいいがそれだと折角の黒が勿体ない、一人だときついし、鴉の力を借りるか。

『俺ちゃんをこんなことで呼び出すなよ死神ちゃん?』

「勝手に出てくることもあるだろう?だから手伝いなよ」

使用する塗料は主に紅。
ボクの過去の代表作、ウォールアート時代の一枚。
銘を【深紅の時代~薔薇を抱く焔~】。
無数の薔薇を抱くように焔が辺りを包み込んでいる傑作の一枚…んー少し腕が落ちたかな?

『おいおい、怪人倒す目的はどうした?』

おっと失念してた。…他人に任せるか。



(「――この状況は好きではないね」)
 闇色で塗りつぶされた街並みを見つめ、ステラ・ハシュマールは小さく肩をすくめた。
 本来ならば眩しいくらい鮮やかな色で彩られていたはずの街の面影は――ない。
 その代わりに眼前に広がる光景は元ゴットペインターとしては許しがたいモノクロの景色。
 そんな景色の中で銀木犀は意気揚々と街を黒く塗りつぶしている。
『ふっふ~ん。この調子でばんばん黒くしちゃうっすよ!』
 ステラはちらりと銀木犀を一瞥し、大きく息を吐いた。そして、あたりをぐるりと見回す。
「さて……」
 この状況は言い換えれば黒いキャンバスに何を塗るかということに他ならない。
 全部塗りつぶすのもいいが、それだと折角の黒がもったいない。
 暫し腕を組んで考えていたステラだったが、おもむろに顔をあげるとぽそりと呟きを漏らす。
「一人だときついし、鴉の力を借りるか」
 ステラは骸の海から一羽の鴉を呼び出した。それは、地獄の炎で作られた大型鴉だった。
 鴉はステラの肩に留まると翼を広げて嘴を開く。
『俺ちゃんをこんなことで呼び出すなよ死神ちゃん?』
 勿体ぶった口調で話す鴉を一瞥し、ステラは淡々と答えた。
「勝手に出てくることもあるだろう? だから手伝いなよ」
 鴉の返事は聞かず、ステラは紅色の塗料を手にとる。
「さて行こうか」
 すたすたと歩き出すステラに鴉が話しかけた。
『おっと死神ちゃん、何を描くんだい?』
 しかし、鴉の戯言には答えず、黙々とステラは闇色のキャンバスの上に紅を重ねていった。
 そんなステラの様子に気づいた銀木犀はぷくーっと頬を膨らませる。
『むむっ、オイラの邪魔をするっすか!?』
言うや否や、銀木犀は勢いよく下駄を飛ばし、負けじと街を黒く塗りつぶしていった。
 だが、ステラは銀木犀には目もくれず。自分のペースで絵を描き続ける。
 そして――。
「――出来た」
 ほぅと息をつくステラの前に広がるのは無数の紅い薔薇を抱くように赤い焔が辺りを包み込んでいる大作。ステラの過去の代表作、ウォールアート時代の一枚。その銘を【深紅の時代~薔薇を抱く焔~】という。
だが、ステラ自身は何か納得がいかない様子。
「んー少し腕が落ちたかな?」
 出来上がった作品を見つめ、首を傾げるステラに鴉が話しかけた。
『おいおい、怪人倒す目的はどうした?』
 鴉の言葉にステラは「おっと」と息を呑む。
「失念してた。……他人に任せるか」
 ――大丈夫、仲間たちならば、きっとやってくれる。

成功 🔵​🔵​🔴​

榎・うさみっち
黒はクールで格好いい色だけど、単に全部真っ黒ってのは品がないな!
ゴッドペインターうさみっち様が芸術を教えてやるぜ!

【あいとせいぎのうさみっちレンジャー】を召喚
全員で3分の2以上の塗りつぶしを目指していく
ただ1色で塗りつぶしていくのも面白みが無いから
【アート】な腕前を活かして色んな絵も描いちゃうぜ!
青から水色のグラデーションの青空
そこに浮かぶ白い雲、虹、飛び立つハト
こっちの壁には赤とオレンジの夕焼け空
更にキラキラ天の川が浮かぶ濃紺と紫の星空
フッ、どうだネズミ野郎!

攻撃のチャンスが来たらうさみっち戦隊が
代わる代わるポーズ決めつつパンチやキックで攻撃
最後はスーパー合体して一撃必殺な突進攻撃!


メリー・メメリ
色はライオンの黄色!

よーし、ライオンライオン色ぬりがんばるぞー!
こーゆーのは一人じゃなくてきょうりょくしないとダメってかかさまがいってた!
ライオンもいっしょにぬりつぶす!

攻撃よりぶわーってぬりつぶして、それからライオンとおりゃーってたたかうよ!
まずはライオンの足にもインクをつけて……いけいけー!はしれー!

ライオンの背中に乗ってすばやく黒を黄色にぬりかえるよ!
ライオンのあしあともかわいいでしょー!

敵の足ははやいってきいたけど、ライオンだって負けてないもんね!
ライオンもほかのみんなも一緒ならぜったいに勝てるよ!


黒瀬・ナナ
このまま塗り潰されたら、世界の未来も真っ黒になっちゃうわ。わたし達の手で、鮮やかな世界を取り戻しましょう!

赤や黄色とか、あったかくて元気が出る色を。お気に入りの薙刀を絵筆のように持って『なぎ払い』、『範囲攻撃』で床や壁を広範囲で塗りまくるわね。攻撃で生じた『衝撃波』でも塗れるのかしら?
なるべく3分の2以上を塗り潰すまでは攻撃しないようにしたいけれども、敵の方が塗る速度が速ければ一定範囲を塗り潰してから細かく攻撃を繰り返して少しでも敵の塗りの手を抑えられるようにするわね。
世界は、たくさんの人がいて、たくさんの色があるから美しいのよ。わたし達の色で成敗してあげる!

※他猟兵様達との連携、アドリブ歓迎


終夜・凛是
黒……ほんと、真っ黒な世界
好きじゃない……
何より強い、あの色も。やさしい緑もない
そういえば、藤色……最近一緒にみた、あいつ、藍色だった
……藍色
あの、お節介も藍色だ
色のない世界はひとりぼっち、みたい
だから色、とりもどそ

要領は、わかってる
俺は敵と出会わない限り、塗り潰しを
目に見えるところ、拳に連珠を巻いて攻撃を重ねていく
やっぱり、攻撃すると赤になる……これが俺の色

ユーべルコードが使えるようであれば、俺の全部を乗せて、灰燼拳を広い場所で
力の限りに
倒す相手を見つけたなら抑えに
攻撃受けても痛みは我慢できる。その間に色を取り戻してくれるはず
縛りが無くなれば、拳握りこんで一歩踏み込んで、攻撃を


ガーネット・グレイローズ
※即興の共闘、アドリブ歓迎。

なるほど、攻撃を当てれば、色を黒から塗り替えられるんだな。
では、この技を使って効率的にやっていこう。
【念動武闘法】を使い、クロスグレイブ(十字架型のビームライフル)を
複製。それを<念動力>でいっぺんに操り、黒い壁や床を撃って色を
カラフルに変えていこう。<第六感>を駆使して戦闘空間の高さや広さを
正しく認識し、<空中戦><ジャンプ>技能で体を身軽にして次々に
足場を飛び回って敵に攻撃の的を絞らせないぞ。近づかれたらマントに
仕込んでいたブレイドウイングを展開させ、居合いによる<カウンター>で反撃だ。
「今度来るときは念動力も身に着けたたほうがいいぞ、鼠小僧!」



 ステラが描いた赤い薔薇と焔が闇に包まれた世界を明るく照らす。
 だが、銀木犀はそんなのお構いなしとばかりに街を黒く塗りつぶし続けていた。
 そんなオブリビオンを背後から見つめる桃色の影がチッと舌を打ち鳴らす。
「黒はクールで格好いい色だけど、単に全部真っ黒ってのは品がないな! これだから素人は困るねぇ」
 やれやれと大袈裟に肩をすくめる榎・うさみっちこそが桃色の影の正体。
 うさみっちはビシリと銀木犀を指差すと大きく声を張り上げた。
「芸術をわかってないヤツに絵筆をとる資格なぞ、ない!」
 そんなうさみっちの言葉に何度も大きく頷くのは黒瀬・ナナ。
「そうよ! ……このまま塗り潰されたら、世界の未来も真っ黒になっちゃうわ」
 そんなこと、絶対にさせない――。
 ナナは長い黒髪をパサッと払いのけ、銀木犀を睨み付ける。
「わたし達の手で、鮮やかな世界を取り戻しましょう!」
「うん! メリーもがんばる!」
 ナナの言葉に異論はない。
 ぐっと拳を握るメリー・メメリの気合は十分。――でも。
「あ。こーゆーのは一人じゃなくてきょうりょくしないとダメってかかさまがいってた!」
 早速、メリーが『なかよしの笛』で呼んだのは、頼れる相棒、黄金のライオン。
「ライオンもいっしょにぬりつぶそ!」
 メリーはいそいそとライオンの足にインクをつけていった。
 選んだ色はライオンの黄色。
「よーし、ライオンライオン色ぬりがんばるぞー!」
 えいえい、おー!
 メリーの声に合わせるようにライオンも『がおぅ』と一声あげる。
 そして、背中にメリーを乗せたライオンは、闇の色に染められた街を走りだした。
「いけいけー! はしれー!」
 色を失った世界に彩りを添える黄色の足跡。
 ライオンが駆け抜けていくのと同時に、メリーが黄色く塗りつぶした建物たちが黒色から解き放たれる。
「うん、かわいい、かわいい」
 ライオンの黄色い足跡を見つめ、メリーは満足そうにコクコクと頷いた。
 そして、ライオンの首筋を優しく撫でてその名前を呼ぶ。
「ライオン、あっちに黒い部分がいっぱいあるから、塗りつぶしちゃおう!」
 メリーは全速力で走るライオンの背から振り落とされぬようにしっかりとしがみつきニヤニヤと嬉しそうに笑う。
 あの鼠のオブリビオンも足が速いらしいが、ライオンだって負けていない。
 足の速さを生かして敵よりも速く、広い範囲を塗りつぶして見せる。
「だいじょうぶ。ライオンもほかのみんなも一緒ならぜったいに勝てるもんね!」
 鮮やかな黄色でどんどん街を塗り替えていくメリーたちの姿を見つめ、ナナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「――やっぱりいいわね。あったかくって元気が出る色は」
 ステラが描いた深紅の薔薇と焔。
 メリーとライオンが染める黄色の街。
 どちらの明るい色は見ているだけでもほっこり心が温まる気がする。
「さらに街を元気づけてあげようかしら」
 ぎゅっと迦陵頻伽【花嵐】を握り締め、ナナはそのまま絵筆のように大きく勢いよく薙ぎ払った。
 薙刀が街に与える色は橙色――赤と黄色を混ぜた、太陽の色。
 ナナお気に入りの薙刀が、真っ黒で塗りつぶされていた街の床や壁を次々と鮮やかなオレンジ色で染め上げていく。
「まだまだ! どんどん塗り替えていきましょう!」
「うん!」
 ナナとメリーが場所を選ばず次々と街を染め上げていくことで、無機質な黒に染まっていた世界がどんどん息を吹き返すように明るさを取り戻していった。
 しかし、これを面白く思わない者もいるわけで……。
『むきーっ! せっかく黒く塗ったのに!』
 闇夜に浮かぶ太陽のような橙色に染まったビルを見つめ、銀木犀は悔しそうにダンダンと足を踏み鳴らす。
 銀木犀は気を取り直すとふっと軽く鼻で笑った。
『こんなのまた黒く塗り返せばいいだけのことっす』
 言うや否や、銀木犀は背負っていた大きな袋をおろすと口を開けてばさぁっと逆さまにひっくり返す。
 袋に入っていた大量の黒い液体を辺り一面にぶちまけたかと思うと、ナナたちが塗り替えた街が再び黒に塗り戻されてしまった。
『へへーん! 俺様の手にかかればあっという間に元通りっす!』
 得意気に胸を張る銀木犀。
 だが、ナナは動揺することもなく、銀木犀にちらりと視線を向ける。
「その言葉、そっくりそのままお返しするわね」
『ははっ、何を言って――』
 ナナが両手で握った薙刀が、ブンッと大きく空を薙いだ。
 薙刀から放たれた衝撃波が銀木犀の頬をかすめる。
 笑顔を凍り付かせた銀木犀の頬にうっすらと血のようなものがにじんだ。
 そして、衝撃波が命中した漆黒の巨大モニターがパッと明るいオレンジ色に染まると同時に、カラフルな映像が映し出される。
 それはまるで、息を潜めていた街が元気を取り戻した合図に思え、ナナの口元にもほわりと笑みが浮かんだ。
『うぐぐ……』
 ギリギリと悔しそうに銀木犀は唇を噛む。
 そんな敵の姿には目もくれず、ガーネット・グレイローズはふむふむと独り言ちた。
「なるほど、攻撃を当てれば、色を黒から塗り替えられるんだな」
 仕組みがわかれば、後は行動するのみ。
 ガーネットは【念動武闘法】を発動させると『クロスグレイブ』を複製する――その数はざっと数えただけでも30は超えていた。
「では、神殺しの力の一端をお見せしよう」
 ガーネットは得意の念動力を使って十字架型のビームライフルたちを操ると、一斉に黒い街に向かってビームを噴射する。
 ビームが当たった黒い壁や床が澄んだ青や鮮やかなピンク色に塗り替えられ、一瞬にして色を失っていたモノクロの世界が華やかな景色へと様変わりした。
 そして、ガーネットは軽く助走をつけて大地を蹴って大きくジャンプする。
 傍にあったビルの屋上へと上がったガーネットは、黒く染まった場所を見つけては次々とビームを噴射して黒い街をカラフルに染め上げていった。
(「なるほど、これは面白い」)
 ガーネットは口元を緩めると、ふわりふわりと身軽に宙を飛び、ビルからビルへと飛び回っては街に色を与えていく。
『くぅぅぅぅ……俺様だって、俺様だって! 負けないっす!!』
 ぽいぽいっと下駄を脱いで負けじと身軽になった銀木犀が黒く塗りつぶそうと手刀を振り上げた、その瞬間。
 ガーネットがくるりと銀木犀の方を向いたかと思うと、クロスグレイブがビームを噴射して銀木犀の動きを封じ込めた。
『な、なんでわかったっすか!? こっち見てなかったのに……』
「いや……何となく。勘だ」
『勘……!?』
 涼しい顔で答えるガーネットの前で銀木犀はがくりと大袈裟にうなだれる。
 もちろん、その間もガーネットはもちろん、メリーやナナもせっせと街を鮮やかに塗り替えることを止めていない。
 闇色に包まれていた街は、確実に彩りを取り戻していた――。

 一方、その頃。
 どこまでも続く黒い世界を前に終夜・凛是は息苦しそうに顔をしかめる。
(「好きじゃない……」)
 凛是は無意識のうちに大好きなあの色を探している自分に気が付いた。
 かぁっと頬が赤く染まった気がしたが、それを指摘する者はもちろん、確認する術もない。
 凛是は小さく溜息をつくとゆるゆると頭を横に振り、何も気が付かなかったことにする。
 遠くでオブリビオンと対峙している仲間たちの賑やかな声にぼんやりと耳を傾けながら、凛是はもう一度、闇色に染められた街へと視線を向けた。
 ここには何より強い『あの色』はもちろんのこと、やさしい緑もない。
「そういえば……」
 ふっと凛是の脳裏に藤色の記憶がよみがえる。
(「最近一緒にみた、あいつ、藍色だった」)
 藍色といえば、あの、お節介も藍色だ。
 色と共に、凛是の見知った人たちの顔が心に浮かぶ。
 だが、この色のない世界はひとりぼっち、みたいで――。
「だから色、とりもどそ」
 ポツリと呟く凛是の手には薄桃色の連珠が握られていた。
 桜の色、梅の色。淡い花色の連珠を拳に巻いて、凛是は目に見える黒い部分に対して黙々と攻撃を重ねていく。
 凛是が拳をぶつけた場所が赤く染まる様を見て、少年は「やっぱり」と小さく呟きを漏らした。
「……これが俺の色」
 知ってたけど、と零れる言葉は凛是以外の耳には届かない。
 だが、それを気に留めることは勿論なく。再び凛是は拳を振り下ろす。
 凛是の拳が振り下ろされた場所からゆっくりと、まるで水面に波紋が広がっていくように黒いキャンバスに赤色がじわじわと染みていった。
 徐々に黒い部分が減り、少しずつ赤色に染まった場所が増えていく街を見つめ、凛是からぽろりと言葉が零れ落ちる。
「いつか……――」
 俺の色が、あの色になったらいいな、なんて。言っても許されるだろうか――。

 仲間たちによって続々と色を取り戻しつつある街並みを飛び回りながら、うさみっちはひとり考え込んでいた。
「ただ1色で塗りつぶしていくのも面白みが無いよなぁ……」
 今回はゴッドペインターうさみっち様として、センスのないオブリビオンに『真の芸術』を教えてやらなければならないのだ。
「お、そうだ!」
 名案が浮かんだのか、うさみっちはニヤリと笑みを浮かべるとヒーローコスチュームに身を包んだカラフルうさみっちを召喚する。
 その名も、あいとせいぎのうさみっちレンジャー!
「よーし、それじゃ今から描くぞ!」
 指揮を執るうさみっちに従い、絵筆を握ったうさみっちレンジャーたちが黒いキャンバスにせっせと絵を描き始めた。
(「やるからにはアートな腕前を生かして色んな絵を描いちゃうぜ!」)
 鼻歌交じりにご機嫌で絵を描くうさみっちの頭の中には銀木犀の存在などすっぽりと抜け落ちている。
 今はただ、良い絵を描きたい――。
 その一心で絵筆を振るう、うさみっちたちが描いた力作が完成した。
 青から水色のグラデーションが美しい空にはぽっかりと白い雲が浮かぶ。
 鮮やかな七色の虹の横には白いハトの群れが今まさに飛び立とうとしていた。
 反対側の壁には、赤とオレンジの配合が絶妙な夕焼け空。
 さらにはキラキラ天の川が浮かぶ濃紺と紫の星空が描かれている。
「うわ、すごい……」
 黒い街を攻撃する手を止め、凛是はうさみっちの描いた巨大な空をじっと見つめた。
『な、なんだこれはー!?』
 聞き覚えのない声に、思わず凛是が視線を向けるとそこには銀木犀がわなわなと拳を震わせて立っている。
『誰っすか!? こんな大きい絵を描いたらダメっす! これじゃぁ俺様がぬりつぶしバトルに負けてしまうっす……』
 しょんぼりと肩を落とす銀木犀。
 そこへ、ライオンに乗ったメリーが銀木犀を追いかけてやってきた。
 膝をついて哀しみに浸っているオブリビオンを見て、メリーは嬉しそうに顔を輝かせる。
「もしかして、メリーたちがこのマップの3分の2以上を塗りつぶしたってこと!?」
 それならば、敵を攻撃することが可能なはず。
「いいよ、試してみる?」
 凛是は仏頂面のまま、おもむろに銀木犀へと近づいていくと、連珠を巻き付けた拳をぎゅっと握りこんで一歩踏み込んで攻撃を放った。
 凛是の全てを乗せた渾身の一撃を不意打ちの形で受けた銀木犀に避けることはおろか、その拳を受け止めることも出来ず、その身体は色鮮やかに染まったビルへと打ち付けられる。
「よぉし、このままみんなでいっせいにこうげきするぞー!」
 ライオンと共に銀木犀へと突撃するメリーを皮切りに、マップを3分の2以上塗りつぶしたことに気づいたナナやガーネットも参戦し、攻撃へと転じた。
「―――かしこみかしこみ、ここにてましますは」
 ナナの振るう薙刀から放たれた衝撃波が銀木犀に襲い掛かる。
 薄桃色の花びらが風に舞い、その斬撃はまるで鳥の聲のように響き渡った。
「世界は、たくさんの人がいて、たくさんの色があるから美しいのよ。わたし達の色で成敗してあげる!」
 薙刀を振るうナナの斬撃が息つく暇なく銀木犀に襲い掛かる。
 だが、なんとか反撃のチャンスを掴もうとする銀木犀だったが、ガーネットの操るクロスグレイブがビームの雨を降らせた。
『きぃぃ、邪魔っす!』
 地団駄を踏む銀木犀を見遣り、ガーネットは赤い髪を揺らして尊大な態度で敵を嘲笑う。
「今度来るときは念動力も身に着けたたほうがいいぞ、鼠小僧!」
『はっ!? そ、そうか……念動力があれば……!!』
 ガァンとショックを受けた様子の銀木犀。
 視線を感じ、慌てて顔をあげれば、前にずらりと並ぶはうさみっちレンジャーたち。
「熱血レッド!」
「冷静ブルー!」
「食欲イエロー!」
「ニヒルブラック!」
「ミニスカピンク!」
「ほのぼのグリーン!」
 他、色々。
 延々と続くカラフルうさみっちレンジャーが名乗りをあげる間は攻撃をしないで待っていてくれるあたり、銀木犀はいいヤツなのかもしれない――なんて猟兵たちが考えている間に。
「我らうさみっち戦隊! 悪を滅ぼす正義の鉄槌、喰らえー!!」
 カッと稲妻が落ちたと思った瞬間にうさみっちレンジャーが合体し、巨大うさみっちへと変身する。
「いまだ、行け! うさみっち戦隊よ!!」
 司令官を気取ってうさみっちが攻撃のゴーサインを出せば、待ってましたと巨大うさみっちが銀木犀へとスーパー突進攻撃を放った。
『うわぁぁぁぁ……!』
 銀木犀は巨大うさみっちの一撃必殺攻撃によってポーンと大きく弧を描いて跳ね飛ばされる。
『お、覚えていろっすよー!』
 それが、骸の海へと還っていったオブリビオンの最期の言葉だった。

 オブリビオンを討ったことで、闇色に染まっていた街も徐々に本来の鮮やかな色を取り戻していく。
 ――やはり、この世界はカラフルでなければ、物足りない。
 猟兵たちは色に満ちた街に胸を撫で下ろし、次の戦場へと駆けて行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月11日


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#バトルオブフラワーズ


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト