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帰らぬ者、帰れぬ者

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「お願いがあるの」
「ああ?」
「私と一緒に、鏡の迷宮へ行ってもらえない?」
「鏡の迷宮? それって、あれだろ? 鏡を使った悪辣なトラップが満載で、犠牲者が大勢出たっていう。しかも、あそこは以前に踏破されて、今はなにも残って無いっていうぜ」
「報酬は、私が払うわ。だから、お願い」
「……わりぃな。他を当たってくれ」
 すげなく話を打ち切って足早に立ち去った生徒を見送り、エリィは肩を落とした。
 彼女は数日前から、共に鏡の迷宮に挑んでくれる者を探しているのだが、ほとんど成果は無い。
 無理もない話だ。あの生徒が言っていたように、鏡の迷宮は悪辣なトラップで悪名高く、しかも以前に踏破されて今はなにも残っていないと言われている。
 難易度が高く、新しい発見も見込めないダンジョンに、好き好んで潜る者など居るはずもない。
 しかしエリィには、どうしても鏡の迷宮へ向かわなければならない理由があるのだ。
「……こんなことで落ち込んでる場合じゃないわ」
 エリィは再び、共にダンジョンに挑んでくれる者を求めて歩き出す。
 彼女がようやく数人の同行者を見つけて、ダンジョンに入ったのは、それから四日後の事だった。

「皆さん、お忙しい中集まって頂いて、ありがとうございます!」
 グリモア猟兵ティアラ・パリュールは、帽子を脱いでぺこりとお辞儀をする。
「今回は、皆さんにアルダワ魔法学園にある学園迷宮の一つ、鏡の迷宮っていう場所に向かって欲しいんです。そこは以前に踏破された迷宮なんですけど、最近になって災魔……えとえと、災魔って、オブリビオンの事なんですけど。新しくフロアボスとして住み着いたみたいで……」
 新たに住み着いた災魔『シェイプシフター』はとても強く、猟兵でなければ倒すことは出来ないのだとティアラは言った。
「なので皆さんには、生徒さんたちに被害が出る前に、その災魔の退治をお願いします! ……それから、もうひとつお願いがあって。実は、その迷宮の一層にすでに入っている生徒さんがいらっしゃいます。名前はエリィさん。それから、エリィさんのお友達が数名です。エリィさんは何か目的があって鏡の迷宮に入ったみたいなんですけど、奥へ進むととっても危険で、死んじゃうかもしれません。ですから、まずは彼女たちを見つけて引き留めてあげてください。鏡の迷宮は学生さんたちには高難度の迷宮なんですけど、一層は皆さんならそんなに苦労しないはずです。すぐにエリィさん達を見つけられると思います! 念のために、鏡を使ったトラップへの対策は考えておくと、時間のロスを防げるかもしれませんね。それから……あの、これはわたしの希望なんですけど、できれば、お話で解決していただけると嬉しいなって」
 しかし話し合いでの解決が難しければ、力づくで止めたり、妨害工作で引き返らせたりする必要があるかもしれない。また、二階層から先はシェイプシフターの勢力範囲で、その手下たちが襲ってくる可能性が高いとのことだった。

 ティアラは必要な説明を終えると、ふうっと大きく息を吐く。
「……えへへ、やっぱり、ちょっと緊張しちゃいますね。でも皆さんなら、きっとうまく解決してくれるって、わたし、信じてますから。だから、笑顔で見送りますね!」
 そして言葉通りに、猟兵達へと天使のような笑顔を向けたのだった。
「みんな、いってらっしゃい!」


第六封筒
 当方のOPに目を止めて頂き、誠にありがとうございます。
 このシナリオが二本目になる、第六封筒と申します。
 前回は初シナリオということで手探り状態、ほぼバニラでお送りいたしましたが、少しずつ独自色を出せればいいなと思っています。

 最初の目的となるエリィはすぐに発見することができます。
 鏡のトラップへの対処も書いて頂ければ無駄にはしないつもりですが、エリィをどのように説得するか、どのように引き返させるかを中心に考えてみてください。

 それでは、本シナリオもよろしくお願いいたします。
 皆様の熱いプレイングお待ちしております!
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第1章 冒険 『無謀な挑戦を引き留めてあげて!』

POW   :    自分達の強さを見せつけたり力ずくで止める

SPD   :    先回りして行動の邪魔をして諦めさせる

WIZ   :    引き返すように言葉で説得する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


こつこつと、迷宮の中に四人の靴音だけが響く。
 鏡の迷宮。
 鏡だけではなく水面やガラス、光と闇、スモークといった要素を駆使し、実像虚像を織り交ぜたトラップが多量に配置され、かつて数多の犠牲者を出した、悪名高きダンジョンだった。
 エリィと、その知人三名から構成されたパーティは黙々と歩を進め、誰一人として口を開かない。皆が虚像に惑わされてしまわないよう、集中し続けていた。
 最初のうちは、それでもまだ順調だった。しかし、先へ進み疲労が濃くなるにつれ正常な感覚が失われ、単純に多数の鏡が配置されているだけの通路でも、正しい道がどれなのか、わからなくなるのだった。
 例えばここは天井も床も黒く塗られた部屋だ。所々に落とし穴がある。それだけであれば、光源をしっかりと確保していればさほど脅威ではない。しかし床の所々には鏡が置かれており、光を拡散させ、影を多重に作り出して感覚を惑わせるのだ。水面になっている場所や、鏡にみせかけて薄いガラスになっている部分もある。
 多くのトラップがこの調子で、ここはこうすれば大丈夫、というセオリーを作り出すのが難しいのが、高難易度と言われる大きな理由だった。
 落とし穴の部屋を抜けたところで、エリィはふと前方を見据え、足を止めた。
「……なにか、聞こえるわ」
「え?」
「前からなにか、足音みたいな」
「まさか……敵?」
 一同が身構えると、そこに現れたのは優し気な色をしたオッドアイの、ケットシーの少年だった。
リンセ・ノーチェ
五感やスピードを活かし鏡の迷宮を進みエリィさん達の先回りをするよ
床や壁、天井…無事に進んだ道と比べ違和感あれば罠かもって警戒
「鏡の迷宮…自分が一杯見えて…怖いな」
本当はひとりぼっちなのに、嘘が一杯で、怖くて寂しい…

沢山の僕が映る中、1つくらい僕以外の何かが映り攻撃してきてもおかしくないよね
注意しつつ罠発動したら回避するよ

エリィさん達に発動した罠の酷い有様や僕に怪我があれば見せ
「ね、とても危ないんだ。皆には、まだ無理だよ。焦らないで?
…僕達で出来る用事なら、代わりにしてくるから。頼って欲しい」
【優しさ】籠めて語って、本当に、僕なら出来るって、
ユーベルコードで友達フォルテに乗る姿を見せて安心させる



「よかった。間に合った!」
 一番にエリィに追いついたのは、リンセ・ノーチェだった。
 鏡の迷宮はその性質上、迷わせて同じ場所をループさせるために、通路が複数存在する。
 先行してダンジョンに入っていたエリィたちに先回りするため、リンセは危険も顧みず、スピードに任せて感覚頼りにここまでやってきたのだった。
 猟兵の能力ならば、そこまで難しいダンジョンではないとはいえ、やはり危険には違いない。
 単独ともなればトラップ自体はさておくとしても、感覚の狂いや、単独にも関わらず自分の姿が映し出される事によって強調される、孤独感といったものにリンセは少なからず苛まれもしたのだ。
 先頭に立つ、栗毛をポニーテールにした、眼鏡の少女がエリィだろう。
 緊張と疲労からか表情は強張っており、険があるが、その目には強い意志の光が宿っていた。
「誰? ……敵では、なさそうだけど」
 エリィに一番最初に出会ったのがリンセだったのは、幸運だったのかもしれない。その小柄な姿と優し気な雰囲気から、エリィはとりあえず敵ではなさそうだと判断する。もちろん、このような状況で警戒を解く事はなかったが。
「僕はリンセ・ノーチェ。猟兵だよ。エリィさんだよね?」
「エリィは私だけど……猟兵? 猟兵が、一体私に何の用ですか?」
 その意図を探るように、エリィがリンセをじっと見る。
「僕は……僕達は、皆を止めに来たんだ。このダンジョンはとても危ないんだよ。この奥には、新しくボスも住み着いているって聞いてる。エリィさんは、きっと何か目的があってここに来たんだよね。僕達で出来る用事なら、代わりにしてくるから……」
 精一杯の優しさを込めて、リンセは言葉を紡ぐ。
『不可能を、可能に! 強き嘴と爪、気高き翼と蹄。奇跡なす友フォルテよ、来て……!』
 リンセはユーベルコードにより、純白の頭部と琥珀色に輝く体のヒポグリフを召喚すると、その背にひらりと飛び乗った。
「それが、もしもボスを倒す事だったとしても、ね? 僕を、頼って欲しい」
「それ、は……」
 エリィは逡巡する。やはり、何か目的が合って来たのは間違いないのだ。
 そして、そうこうしている間にも、後方からは複数の足音が聞こえてきていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイチェル・ケイトリン
わたしが得意な念動力技能でパイロキネシスをつかいます。
わたしのまわりに円をえがくように16個の炎をならべるの。

鏡があっても、映った炎の中心はわたしじゃない。
だからそれで鏡の場所はわかるはず。


エリィさんたちがいたらパイロキネシスを見せつつお願いします。
「転校生です。この先を引き継ぎにきました」
「誰も知らなかったこの奥の異変をエリィさんは見つけられた。
そのエリィさんは失えないよ」

「願いも想いも全部従うよ。殺したいなら殺すし、奪いたいなら奪う」
「だからこの先はまかせてください」

「この炎は事実を求めるわたしの心」
「わたしはあなたを失いたくないから」

情報の大切さはティアラさんたちが教えてくれてるものね。


ラスベルト・ロスローリエン
鏡の迷宮ねえ……
鏡面に映る彼女の面持ちは果たして如何なるものか。

【WIZ】
“界境の銀糸”を使い鏡に銀の蔦を這わせて罠の仕組みを探ろう。
【地形の利用】と【情報収集】を使い慎重に進む。

エリィ一行を見つけたら、パイプに薫り良い“浮酔草”を燻らせ【コミュ力】で彼女の事情を聞いてみる。
この先は厄介な魔物が巣食っていてね、無暗に進むのは命を粗末にする行いだ。
しかしただ引き返せと言われても納得出来ないだろう。

どうだろう。何か切実な理由があるなら、話してみてくれないか?
僕達は腕に覚えがあるし、君に代わって望みを果たせるかもしれない。
出来得る限りの事はすると約束しよう。

『花咲けるロスローリエンの御名に誓って』


影宮・近衛
WIZ
【追跡】でエリィ達に追い付き、説得する。

待ってくれ。
知っているとは思うが、ここから先は危険だ。
それを知ってなお進むと言うのか?
……強いな。その心の強さは素晴らしい。
そうまでして、なぜ貴女は迷宮の奥を目指すのだ?
話せる事ならば教えてほしい。

理由を聞けたのなら、私達も手伝おうと助力を申し出よう。
代われる事であるのなら、私達が迷宮を踏破しても良いのだしな。
理由は話せないか、彼女自身が行く事に意味があるのなら、まず私達が先行して危険を排除してくると言い、彼女達には外で待っている様に勧めたい。

……私の理由?
私は怪異と戦う為に生きている。
それに貴女の強さを感じたからな。
その強さには応えたい。
駄目か?



一人先行したリンセがエリィと遭遇し、会話をしている間に、三人の猟兵達がエリィの後方から追い付いてきていた。
 先頭に立つのは影宮・近衛。
 少々、追跡の心得のある近衛が微かに残る足跡を辿ることで、きっちりとエリィ達の通過したのと同じルートを通って来たのだ。
 鏡の迷宮には現在ほとんど立ち入る者が居ない。そのおかげで、すんなりと足跡を見つける事ができた、というのも幸運だったと言えるだろう。
 その後ろでは、愛用のパイプを燻らせるラスベルト・ロスローリエンが慎重に通路を見極めており、地形からトラップを推測すると同時に、一つ見つければ同種のトラップは落とさないのである。先頭を進む近衛は、度々その言葉に助けれていた。
 最後方には、自身を中心として周囲に多数の炎を巡らせたレイチェル・ケイトリン。パイロキネシスによる念動力の炎は、周囲を照らし出すのと同時に、鏡を利用したトラップを見極めるのに役立っている。
 ずいぶんと目立つ一行ではあるが、鏡の迷宮はその性質上、そもそも怪物の類が少ない。ここまで、問題となることは無かった。
 三人は名乗りを上げると、リンセとエリィ達の様子から現在の状況を把握する。
「私達に言われるまでもなく知っているとは思うが、ここから先は危険だ」
 近衛の真摯な言葉を、ラスベルトが引き継いで説明を加える。
「今、この鏡の迷宮の奥には新たに強力な災魔が巣食っていてね、無暗に進んでは命を粗末にするだけだ」
 ラスベルトが持つパイプから漂う浮酔草は薫り高く、知らず知らずにエリィ達の心を落ち着かせ、話を聞く態勢を整えさせていた。
「エリィ……?」
 エリィに同行していたショートカットの女生徒が、不安げな表情でエリィの様子を伺った。彼女も鏡の迷宮の危険性はもちろん承知していたが、強力な災魔の存在を示唆されて、不安が募ってしまったのだ。
「災魔と戦うつもりもないけど……でも、私はどうしても、この奥へ行かなくてはいけないの。危険は承知の上よ」
 思いつめた表情で、エリィは言った。
「……強いな。その心の強さは素晴らしい。そうまでして、なぜ貴女は迷宮の奥を目指すのだ? 話せる事ならば教えてほしい」
「願いも想いも全部従うよ。殺したいなら殺すし、奪いたいなら奪う。だからこの先はまかせてください。わたしはあなたを失いたくないから、エリィさんの理由を教えて?」
 近衛はエリィの想いの丈を推し量ろうとし、レイチェルは素直にその願いを叶えると宣言する。
 レイチェルの周囲ではパイロキネシスの炎が、その心の内を示すかのようにその輝きを増していた。
「そうだな。僕達は腕に覚えがあるし、君に代わって望みを果たせるかもしれない。出来得る限りの事はすると約束しよう。『花咲けるロスローリエンの御名に誓って』ね」
 ラスベルトも深く頷いて、二人の意見に同調。
 それでもエリィは頑なで、彼らの言葉に沈黙で返すのだった。
「参ったな、どうしても理由は話せないか」
 やれやれと、近衛は肩をすくめて。
「どうしても自分で行かなくてはいけない、というのならばこういうのはどうかな。まず、私達が先行して危険な災魔を排除しよう。それからであれば、いくらでも奥を探索すればいい」
 拒絶の意志を沈黙で示そうとも、決して諦めようとしない猟兵達に、エリィの表情が揺らいだ。説得の内容そのものよりも、なぜ彼らはここまで他人の為に真剣になれるのだろう、と。
「……どうして、あなた方は他人の……私なんかのために、そこまで真剣になれるの?」
「貴女の強さを感じたからな。その強さには応えたい。それに……」
「それに?」
「私は怪異と戦う為に生きている。どうせなら、犠牲者は出したくないんだ」
 目を細めてそう言って、近衛は言葉を締めくくった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
うむむ…何か重要な理由があってその迷宮に行きたい…というなら俺は止めない。ただ、命が危ないというなら俺は猟兵として君を止めなければならない。人を救うのが猟兵だからな!

まずは話を聞こうではないか。頭ごなしにダメと言って止めるのも酷なのだ。
無謀だとわかってても行きたい理由があるんだろう? 君は、きちんと信念がある。それを俺は否定したくないからな!(にぱっと笑って)
出来れば、俺たちがその信念を引き継げるのだとしたら……是非ともそうさせてほしい。俺たちが代わりに迷宮に入って、君が望むことをするのだ。
これで君の意思が揺らぐかはわからぬけれど…一度考え直してくれ!

(技能は【コミュ力】+【優しさ】を使用)


リミティア・スカイクラッド
鏡に幻惑されないよう、音や風の流れを頼りに進みます

追いつくことができれば、説得を試みます
自己紹介の後、不躾ではありますが、と前置きした上で

この奥には強力な災魔が確認されています。リムは貴女方に撤退を提案します
貴女の目的が何であれ、迷宮からの生還を果たせなければそれは無意味な筈です

声を荒げず、淡々と語りかけます

リムには使命があります。それはリムの命よりも重く大切なものです
ですが、使命を果たすためには生きなければなりません
貴女にも掛け替えのない望みがあるなら、尚のこと生存を重視すべきです

説得の成否を問わず、こっそりと影の追跡者を彼女に付けて、様子を見守りましょう
まだ諦めないようなら、追跡を


星噛・式
WIZで対応

鏡のトラックは以前、踏破したという冒険者に話を聞き安全なルート・対処を聞きクリア

エリィ達はなんなく発見することができた

「この迷宮が踏破されてることは知ってるかい?何も残ってないよ、ここには。それとも何か他に目的が?」

あくまで冷静に優しく語りかける。

「君たちの先生かな?依頼を受けてね、君たちが引き返すように説得しろって。力で無理やり引き返させることも邪魔して諦めさせることもできる。が言葉通じる者に力を振るうことが果たして正義か…俺は君たちを傷つけたくないし傷つけるつもりもない。俺が斬るのは悪人だけだからな」

彼女は交渉が上手いわけではないが依頼とはいえ自分のプライドを曲げることはしない



丁度その時、また彼等とは別の一団が合流した。
 ヴァーリャ・スネシュコヴァ、リミティア・スカイクラッド、星噛・式の三名である。
 いずれも女性で、ダンピール、人間、クリスタリアンとバリエーションに富んでおり、元々女性が多かった場はさらに華やかに、そして賑やかになった。

 式はダンジョンに入る前に、鏡の迷宮に関しての情報収集を行っている。残念ながら当初考えていたような、以前に踏破した者は見つける事が出来なかったが、噂話やいくらか残っていた文献などから、ある程度のトラップの傾向などは把握することに成功。
 その情報を元に、元々アルダワ魔法学園の学生でもあるヴァーリャが先導、リミティアが音や風の流れを把握して鏡の影響を極力抑える事で安全にここまでやってきたのだ。

 自己紹介の後、口火を切ったのはヴァーリャだった。
「何か重要な理由があって、奥へ行きたい……と言うなら俺は止めない。ただ、命が危ないというなら俺は猟兵として君を止めなければならない。人を救うのが猟兵だからな!」
 あ……とラスベルトが何か言いかけるが、ヴァーリャの勢いは止まらない。
「まずは話を聞こうではないか。無謀だとわかってても行きたい理由があるんだろう? 君は、きちんと信念がある。それを否定したくはないからな!」
 ヴァーリャはにぱっと笑顔を見せる。とてもいい笑顔だった。
「不躾ではありますが」
 呆気にとられるエリィ達に、続けて説得を始めたのはリミティアだ。
「この奥には、強力な災魔が確認されています。リムは貴方達に撤退を提案します」
 それも説明したんだけど、と今度はリンセが割って入ろうとしたものの、真剣に、淡々とした調子で語りかける少女を止める事は、やはり男子には不可能なのだった。
「貴女の目的が何であれ、迷宮からの生還を果たせなければそれは無意味な筈です。リムには使命があります。それはリムの命よりも重く大切なものです。ですが、使命を果たすためには生きなければなりません。貴女にも掛け替えのない望みがあるなら、尚のこと生存を重視すべきです」
 リミティアが語り終えると、今度は式が畳みかけた。
「この迷宮が踏破されてることは知ってるかい? 何も残ってないよ、ここには。それとも何か他に目的が?」
 高身長、かつクリスタリアンゆえに赤い水晶で構成された身体から受ける印象とは異なって、優しい語り口ではあるが、もはや口を挟むものは居なかった。エリィも黙ってそれを聞いている。
「依頼を受けてね、君たちが引き返すように説得しろって。力で無理やり引き返させることも、邪魔して諦めさせることもできる。が、言葉通じる者に力を振るうことが果たして正義か……俺は君たちを傷つけたくないし、傷つけるつもりもない。俺が斬るのは悪人だけだからな」
 実際のところ力ずくで止める方が、猟兵達にとっては簡単なのだ。しかし言葉通りに、式にそんな気は全く無い。交渉が上手いとは決して言えない式の、心を込めた説得。
 そして。
「ふふっ……あははっ」
 不意にエリィは笑みをもらした。
「ご、ごめんなさい。急に笑ったりして……本当にあなた方は、私たちを心配してくれているんだなぁって。みんな、同じことを言うから」
 決して打ち合わせなどはしていないだろうに、揃って猟兵達は、他人でしかないエリィを心配し、尊重してくれた。その事実がエリィの心を打ち、ついには頑なだった心を溶かしたのだ。
「わかりました。……私はここで、引き返します。代わりといってはなんですけど、少し話を聞いて下さい」
 エリィはその事情をぽつりぽつりと語り始めた。

 彼女の話を要約するとこうだ。
 エリィには妹がいる。二週間程前、彼女は鏡の迷宮にとある宝物を探しに向かい、そして帰ってこなかった。
 その宝物はミラードールといい、全身が鏡で出来た人形なのだそうだ。ミラードールに姿を写しとり、破壊することによって、その人物の怪我や病気、さらには呪いなどを肩代わりさせる事が出来るという。二人には病気の父親がいて、父を救うために不確かな情報を元に捜索に出たのだと。
「ミラードールの話を妹にしたのは、私です。ほんの雑談のつもりだったんです。そういった伝説が以前からあったのは本当で、未踏破区画らしきものの痕跡も見つける事ができました。でも、不確かな情報を元に適当な話をして、妹を死地に向かわせてしまった。だから私は、妹を迎えに行かないといけないんです」
 そしてもう一つ、未踏破区画に実際にミラードールがあるのではないか、と。それが、彼女が自らこの鏡の迷宮にやって来た理由。自らの調査にこだわった理由。
 エリィは猟兵達に願う。
「妹は食糧を二週間分、用意していました。まだ、どこかで生きているのかもしれません。もし叶うのであれば、妹を助けてください。そしてどこかにミラードールがあれば……対価は、必ずお支払いします。私に、それを譲ってください」

 話を終え、未踏破区域の場所についての情報を伝えると、エリィは引き返していった。
 猟兵達は迷宮の第二層へと向かう。おそらく苦い結末になることを、エリィと同じように知りながら。しかし、僅かに残る希望にかけて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ドッペルゲンガー』

POW   :    心の模倣
【対象の目を見ることで思考を読み取り 】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    体の模倣
戦闘中に食べた【対象の血肉 】の量と質に応じて【捕食した対象の姿を模倣し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    技の模倣
対象のユーベルコードに対し【対象の動きを模倣し同じユーベルコード 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


第二層に入ると、鏡の迷宮の様子は様変わりした。
 多彩なトラップによる悪意を感じられた一層とは異なり、二層はただただ鏡による代り映えの無い同じ構造の通路と部屋が繰り返して延々と続く。
 合わせ鏡により無限にも感じる、それでいて一切の変化の無い、音一つ聞こえてこない迷宮は、確実に内部にいる者の正気を奪っていくのである。

 猟兵達が第三層への階段を探し続けてしばし。
 疲労が濃くなった一行が、休憩の為に小部屋に集まっていると、不意に付近を奇妙な気配が包む。
 気付いたときには、もう遅かった。猟兵達は暗闇の中に蠢く不定形の影を見る。
 ドッペルゲンガー。
 そう呼ばれる、災魔『シェイプシフター』のしもべたちが、猟兵達の居る小部屋を包囲していた。
星噛・式
SPDで対応

「食べれば食べるほど俺に似てくるってことか。でも実際、たまたま攻撃当てて擦り傷の血を捕食したところで大して強くはなれんだろ。それこそ致命傷を与えるレベルの傷から血肉を捕食しない限りな。多少模倣されたところで勝負の行方は変わらんさ」

その言葉通り、擦り傷は多少受けているもののダメージと呼ばれるものは受けていなかった

インビジブル・ステップにより相手上空を加速しながら舞い最高速に達した瞬間に弱点と思われる部位に一撃与え離脱する

「まぁ、模倣は悪くないが所詮は模倣。本物を超えることはできんよ。そこに気付けるのが怪物と人間の差だろうがな」


リミティア・スカイクラッド
エリィさんに託された使命もありますが、これも放置はできません。リムは目標を殲滅します

この小部屋では大規模な攻撃魔法の使用は困難ですね
トリニティ・エンハンスで自己強化を行い、白兵戦に移行します

「情報収集」技能を活かし、敵の能力を観察、推測
相手はこちらのユーベルコードを模倣するようですが、猟兵の力とはそれのみにありません
剣にもまた炎と水と風の魔力を纏わせ、「属性攻撃」の斬撃を
魔女としての研鑽、鍛えた技能と技量のすべてを合わせて、敵の模倣を上回りましょう



ドッペルゲンガーは、全体的には人間を模したような姿をしていた。
 だがその身体はまるで影そのものであるように黒く、不定形である。
 唯一、人間であれば顔面に当たる部分に一つだけの巨大な目玉が存在しており、そこからゆらゆらと伸びる影の触手が、まるで胴体や手足に見える部位を構成しているのだ。

 しゅるりと音を立て、数体のドッペルゲンガーの頭部から鞭のような部位が放たれた。
 鞭は狭い室内で合わせ鏡のようにその姿を増幅されて、数十本にも及ぶ鞭が同時に襲い掛かったように猟兵達を錯覚させる。
 よく見れば、どうということはない。矢面に立った式は鞭を次々と避けたが、鏡による幻惑の影響を受けていたのか、その一本がわずかに身体を掠った。そして『喰った』。
 引き戻された触手が体内に戻ると同時に、わずかな血肉を吸収したドッペルゲンガーの、その顔に当たる部分が、うっすらと式を模倣する。元が元だけに醜悪で奇怪なだけではあったが、その面影は確かに式のものだ。
「食べれば食べるほど俺に似てくるってことか。でも……」
 インビジブル・ステップにより空中を駆け上がる。狭い室内だ、あまり高くは飛び上がる事は出来ない。しかし空中だけではなく、時には壁を蹴って、多角的にドッペルゲンガー達を翻弄する。それはまるで万華鏡のように、幻想的ですらある光景。
「実際、たまたま攻撃当てて擦り傷の血を捕食したところで大して強くはなれんだろ。それこそ致命傷を与えるレベルの傷から血肉を捕食しない限りな。多少模倣されたところで勝負の行方は変わらんさ」
 その言葉を、全ての攻撃を避け続ける事で、身をもって証明していく。
「エリィさんに託された使命もありますが、これも放置はできません」
 リミティアは、別れ際にこっそりと影の追跡者を召喚し、エリィを追跡させていた。
 休憩中にそちらに集中し様子を確認していたリミティアだが、襲撃の反応し周囲を見回してから即座に判断を下す。
 小部屋で大規模な攻撃魔法を使えば、味方や自分も巻き込んでしまう可能性がある。自己強化を行い、白兵戦を。
 トリニティ・エンハンスを用いて自己強化すると、さらには剣にもその魔力を纏わせた。これはリミティアのマジックナイトとしての力。
 炎、水、そして風。三つの魔力を纏わせた宝石剣エリクシルが輝く。元より赤い宝石で出来た魔剣はまるでそれ自体が炎のように、赤い軌跡を描きながらドッペルゲンガーを迎え撃った。
「これより白兵戦に移行。リムは目標を殲滅します」
 ドッペルゲンガーはその瞳に宿る魔力でリミティアの思考を読み取り、攻撃位置を予測していたが、その刃に宿る魔力までは予想出来る筈もない。
 避けたはずの刃に触手を焼かれ、動きが鈍ればもはや手はなく、唯一不定形ではない目を貫かれると、あっさりと消滅していった。
「敵は目が弱点と推測されます。目を狙ってください」
 その言葉に、空中で加速を続けていた式が天井を蹴って急降下、その目に一撃を加える。的確な攻撃に、さらに一体のドッペルゲンガーが消滅した。
「まぁ、模倣は悪くないが所詮は模倣。本物を超えることはできんよ」
 式は再びインビジブル・ステップで空中をかけ、リミティアを横から狙っていたドッペルゲンガーに一撃を加えつつ呟く。
「そこに気付けるのが怪物と人間の差だろうがな」
 リミティアが振り向きざま一閃した剣は、バランスを崩したドッペルゲンガーを真っ二つに切り裂き、屠っていた。
「その通りです。リムは魔女としての研鑽、鍛えた技能と技量のすべてを合わせて、敵の模倣を上回ってみせましょう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リンセ・ノーチェ
エリィさんの妹がいたり悲鳴とか聞こえないか注意
確かめるまで悲観はしないよ

他の猟兵も皆エリィさんの事を想って頑張ってる
僕も同じだって、凄く嬉しい
「…だから、負けないよ」
敵の目と僕の目を合わせない様に注意してユーベルコードでフォルテを召喚し騎乗
【騎乗】技能も使いフォルテと一心一体、素早く立ち回る
「力の模倣」防止に敵と距離を取りその攻撃は【見切り】で躱すけど
血がどうしても零れるよね
敵が猟兵や僕の姿でも心を強く持ちうろたえず攻撃
精霊銃で素早く【2回攻撃】を撃ち込んで行く
【マヒ攻撃】の弾丸も試してみる
思考を読まれるから小細工はせず威力で押し切る
そう、押し切れる時に【全力魔法】だ
「魔法よ躍れ、躍り狂え!」


影宮・近衛
ドッペルゲンガー、鏡写しの災魔か。
良かろう、眷属のみで我等を止める事など出来ぬと教えてやろう。
彼女は我等の力を信じ、願いを託した。
ならば我が名に懸けて応えよう。
力こそ、戦う事こそ我が一族の誇りである。

我は『エレクトロレギオン』で機械兵器を召喚し、ドッペルゲンガーを攻撃させる。
出でよ、絡繰の軍勢よ。
心の無い機械兵器ならば動きも読めぬであろう。
一目で我の動きだけでなく、術までも模倣出来るというのならばしてみせよ。
加えて我も『破魔』の霊符を放ち、ドッペルゲンガーを討つ。
無論我とて一人では戦えぬ。
我ばかりにならず戦況を見定め、危うい者には助けを出そう。
そう容易く喰らえると思うたか。滅せよ!



式とリミティアが戦端を開き敵の包囲に穴を穿つと、そこから近衛が廊下に飛び出した。
 リンセは召喚したヒポグリフのフォルテに騎乗し、それに続く。
「ドッペルゲンガー、鏡写しの災魔か。良かろう、眷属のみで我等を止める事など出来ぬと教えてやろう。出でよ、絡繰の軍勢よ」
 心の無い機械兵器ならば動きも読めぬであろうと考え、近衛が呼び出したエレクトロレギオンが、狭い廊下に等間隔に整列し向かってくるドッペルゲンガーの行く手を阻む。
 小型の戦闘用機械兵器から一斉に繰り出される攻撃を飽和した空間で逃れるすべはなく、ドッペルゲンガーはその身体を削られていく。しかし、ドッペルゲンガーがそれを避けられぬように、機械兵器達もその鞭のような触手に薙ぎ払われて次々と消滅していった。元より持久戦を行うようには作られておらず、機械兵器達は役目を果たしたものから消えていくのだ。
 機械兵器が作り出した前線の上を、フォルテが飛ぶ。
 天井は低く、ドッペルゲンガーがその手を伸ばしてこれば届く距離。天井も壁も鏡であることで飛行が安定しないフォルテに、その背の上で身をかがめながら必死に指示を出し、それでもなおリンセは周囲の様子を確かめる事をも忘れてはいなかった。
 どこかにエリィの妹がいるかもしれない。もし、悲鳴の一つでも聞こえれば聞き逃さぬよう、そしてもちろん敵の動きからも目を離さない。
 伸ばされる影の触手は精霊銃を素早く連射することで退けていくが、そのいくつかはフォルテの、そしてリンセ自身の身体を掠めていき、ドッペルゲンガーはそれを『喰う』事で強化される。
 まだまだ決して似ているとは言えない。言えないが、その面影を写し取られる事は、リンセの心にも大きく負担をかけるのだ。
 でも。
 他の猟兵も皆エリィさんの事を想って頑張ってる。
「……だから、負けないよ」
 敵の背後を突くまでの、ほんの数十メートル。その距離が、果てしなく遠く感じる。
「あっ」
 一瞬、フォルテの姿勢が傾いた。その正面に、放たれた影の触手が迫る。今から迎撃は間に合わない。
 ――避けられない。
 リンセが身体を固くした瞬間、その背後、近衛が放った破魔の力を込めた霊符が、影の触手を根本から焼き尽くした。
「そう容易く喰らえると思うたか。滅せよ!」
 機械兵器達はもはやほとんど残っていない。自身も数体のドッペルゲンガーを相手取り傷を受けつつ、それでも渾身の一撃を自身ではなく、リンセの危機を救うために放ったのだった。
「ありがとう」
 その言葉に視線だけで返事をし、近衛は再び術を練る。
「彼女は我等の力を信じ、願いを託した。ならば我が名に懸けて応えよう。力こそ、戦う事こそ我が一族の誇りである」
 危機にあってなお凛としたその姿に、リンセもまた勇気を貰うのだ。
 影の触手の一本を失ったドッペルゲンガーに、虎の子のマヒの力を込めた弾丸を打ち込み、わずかな隙を生み出すとその背後……敵の最後尾の後ろに飛び降りる。
 ここだ。
「魔法よ躍れ、躍り狂え!」
 リンセはその一撃に、ありったけの勇気を、全力を乗せる。思考を読まれようと、関係ない。威力で押し切るだけだ。
 目の前にいたドッペルゲンガーは、それを模倣して打ち消さんと動き始めるが、マヒからの回復に要した時間の分、間に合わない。
 近衛が大きく後方にジャンプすると共に放たれた魔法が、残っていた機械兵器ごと数体のドッペルゲンガーを飲み込み、消滅させた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

レイチェル・ケイトリン
みんなのうしろにしずかにたって、念動力と吹き飛ばしの技能でサイコキネシスをつかって「見えないサイキックエナジー」をはなってたたかうね。

おもな攻撃目標はほかの猟兵さんにおそいかかる敵。

わたしの攻撃を敵は「事前に見ていることができない」。

ほかの猟兵さんにおそいかかってるならわたしの目も「見ていられない」。

だからどんどんふっとばしていくね。

もちろん、わたしへの攻撃もふっとばしてふせぐよ。

鏡にもうつらないようなかすかな望み。

でも、わたしはたしかめもせずにあきらめるなんてぜったいにいやだもの。


ラスベルト・ロスローリエン
む……何時の間に囲まれていたのだろう?
どうやら知らずの内に随分と疲弊していたらしい。

【WIZ】
『闇への恐れは己の心の弱さを映し、容易に蝕むからね……』
“翠緑の追想”に填め込んだ水晶に白光を宿して室内を照らそうか。
灯る明りに【勇気】を奮わせ、暴き出した影の虚像に相対する。

僕達を囲んでくれているなら都合が良い。
包囲している影を全て捉え、腕に絡み付いた“永久の白緑”から【全力魔法】で《落命花》を舞い散らす。
【高速詠唱】で魔法を紡ぐ速さに、その歪な物真似芸は果たして追いつけるかな?

今の僕達は猟兵であると同時に大事な依頼を受けた冒険者だ。
こんなところで己の影に怯え、立ち止まっている訳にはいかないのさ。



リンセと近衛が廊下の敵を殲滅している最中、部屋の中では激しい攻防が続いていた。
 リミティアと式は部屋内の敵を抑えつつ、二つある出入り口のもう一方からの敵の侵入を防ごうと奮闘を続けてはいたが、多数の敵を相手取るということは、相手に観察の機会を与えるという事に他ならない。徐々に戦況は拮抗しつつあった。
「ふたりとも、もうすこしがんばってね」
 レイチェルがその二人の背後に回るように立ち位置を変えつつ、二人に襲い掛かる敵に対してサイコキネシスを放つと、それは驚くべき精密さと威力でドッペルゲンガーの身体を次々と吹き飛ばしてゆく。
 狙いは、二人に攻撃を仕掛けるドッペルゲンガーを目標とすることで、敵と直接目を合わせない事。そして見えない衝撃波による攻撃で、敵に模倣をさせない事だった。
 レイチェルのサイコキネシスが、調子良く敵の身体を吹き飛ばして壁に叩きつけていき、その内何体かはリミティアと式により止めを刺されたが、生き残った何体かと、廊下からやってきたものがじりじりと包囲を縮めつつある。レイチェルの攻撃を警戒しているのだ。
「僕達を囲んでくれているなら都合が良い。頃合いだな」
 そこで、それまで光源の確保と取りこぼしのサポートに徹していたラスベルトが動いた。
『やがて大いなる嵐の前に全ての草木は空しく枯れ、花は風に散るものならん――大地に再び命芽吹くその時まで、落ちよ墜ちよ儚き命』
 ラスベルトが詠唱を紡ぐと、その腕に絡みついた若木に咲く花が増えていく。次々と新たな蕾が芽吹き、咲き誇り、十分に数が増えると、今度は弾けるように無数の名も無き白花の花弁を周囲に散らしていった。
 ドッペルゲンガー達もそれに気付き動き始めるが、
「遅いんだよ」
 それよりも速くラスベルトのユーベルコード、落命花が展開し、白い無数の花びらが猟兵達を包囲していたドッペルゲンガー達を包み込む。
「ギェェェェー!!」
 奇怪な断末魔を上げ倒れていくドッペルゲンガー達の中の一匹が、ラスベルトに襲い掛かる。他のドッペルゲンガーを盾にして時間を稼ぎ、その間に模倣した術で落命花の一部を無効化して生き残ったのだ。
 急速に迫る影の鞭に、落命花の制御に集中していたラスベルトは反応できない。
「おそいよね」
 その攻撃も、横合いから放たれたレイチェルのサイコキネシスに阻まれた。ラスベルトの至近距離で衝撃波がドッペルゲンガーを吹き飛ばし、傷ついたその身体は四散して消えていく。
 後に残ったものはなにもない。ただ、猟兵達に残った疲労と傷だけが、短時間の激しい戦闘を物語っているのだった。
 ふう、とラスベルトが息を吐く。
「今の僕達は猟兵であると同時に大事な依頼を受けた冒険者だ。こんなところで己の影に怯え、立ち止まっている訳にはいかないのさ……」

 ドッペルゲンガーの襲撃を退けた猟兵達は、しばしの休憩の後再び三層へ道を探し始める。
 それは今度はすぐに見つかった。
 ドッペルゲンガーの出現してきた方向の鏡の一枚が開き、階段が露出していたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『シェイプシフター』

POW   :    思考の簒奪
【自身を対象の姿へと変化させ思考を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    血肉の簒奪
戦闘中に食べた【対象の血肉】の量と質に応じて【捕食した対象の姿と戦闘経験を簒奪し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    秘技の簒奪
対象のユーベルコードを防御すると、それを【強化し体内へ取り込み】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


三層は、再び一層のような鏡を使った悪辣なトラップが並ぶ迷宮になっていたものの、その難易度は一層とさほど変わらず、多少なりと鏡の迷宮に慣れ始めていた猟兵達の脅威にはなり得ない。
 一行はエリィからの情報を元に、ほどなくして未踏破区域へと辿り着く。
 未探査区域はそこまでとは様子が大きく異なり、白いスクウェア状のパネルを組み合わせて作ったような整然として清潔な区画。
 天井や床の所々と、曲がり角に鏡が配置されては居たが、迷宮という程には複雑な構造もしていない。
 拍子抜けする猟兵達ではあったが、おそらくこの先には災魔『シェイプシフター』が待ち受けているのである。
 到底、油断などは出来なかった。
 慎重に未踏査区画を進む一行の目の前に、ほどなくして大きな扉が現れた。
 だが、繋ぎ目の無い二枚の金属板で出来たそれ以上に猟兵達の注目を引くものが、そこには居た。
 扉の前に佇むそれは、エリィに見えた。しかしその髪はポニーテールにはされておらず、眼鏡もかけていない。
 着衣も先に会った時とは異なり、ぼろきれをその身に巻き付けただけ。所々に素肌さえ見えている。
 なにより違うのは、その目だ。エリィのような、強い意志を宿したものではない。どこか虚ろで、確かにこちらを見ているも関わらず、なにも映し出していないようにも見える。
「…………」
 その口が開き、何かを猟兵達に訴えかけていたが、距離があるためその声を聞き取る事は出来ない。
 リミティアはエリィを追跡させていたシャドウチェイサーを通じ、エリィの無事を確認して全員に告げる。
「エリィさんは無事です。あれは、エリィさんではありません」
「ということは、あれがエリィさんの妹なのかな。もしかして、双子?」
 リンセの言葉に一行は、彼女を保護しようと近寄っていく。もちろん、罠であることも考え、周囲には最新の注意を払って。
「……て」
「……え?」
「にげ、て」
 ようやく少女がその言葉を猟兵達に伝えた瞬間、その影が伸びあがった。見る見るうちにドッペルゲンガーよりも一回り大きな、より人間に近いが歪な人型を取る。
 ドッペルゲンガー達の主、災魔『シェイプシフター』がとうとう、その姿を現したのだった。
「いけない、いけないナァ。オトリは黙って立ってればいいんだよ。あと少しで……」
 ニタァ、とその顔に当たる部分が、笑みのようなものを浮かべ。
「ひとりかふたり、殺せたのにナァ」
 シェイプシフターがドッペルゲンガーのものよりも数倍太いその腕を振り上げ、そして少女に向けて振り下ろした。
レイチェル・ケイトリン
わたしが得意とする念動力に吹き飛ばし技能をあわせてつかって
わたし自身をふっとばしてとびこんで女の子を守るよ。

わたしのユーベルコードは「まもりぬく心」

これを使うとわたしはこれから守ることしかできなくなる。

それなのにまだぜんぜん効果範囲がせまい未完成の力

でも、こんなちっぽけな力でもこの女の子くらいはまもれるよね。


わたしはひとりじゃない。みんながたたかってくれるもの。

それを信じる気持ちがいまのわたしの心だもの。


リンセ・ノーチェ
エリィさんの妹、助けるよ!
真の姿開放に少しでも時間が必要ならせずに行う

真の姿:己の影が揺らぎ煌めき立ち傍に寄り添う

僕の体で庇いきれるか分からないから
フォルテ(ユーベルコード)がまだいるか、経験上即時召喚が可能なら
フォルテに敵と少女の間に割って入らせる
「フォルテ、庇って!」
難しければ僕がエレメンタルロッドで敵の攻撃を防御し庇うよ
彼女が傷つくよりずっと良い

フォルテがいればその力も借り少女を戦闘圏外まで運ぶ
少女を守り抜くのが僕の今の役目
猟兵皆が心おきなく戦える様に
「こちらは、任せて。皆さんは、攻撃を…!」
向かってくる敵はロッドか精霊銃で【2回攻撃】
フォルテは庇いに使い攻撃はしない(敵の模倣を防ぐ為)



振り下ろされた腕は、手下達とは根本的に速度が違う。質量が違う。硬度が違う。
 猟兵達もただ眺めているわけではない。それに先んじて、災魔を倒し、少女を救う為の行動を開始している。
 レイチェルが真っ先に飛び込んだ。痛みを感じるほどの強さの念動力で自らを吹き飛ばし、弾丸のような勢いで少女に接近すると、シェイプシフターの腕がその身体に届く刹那、横抱きに少女の身体を浚ってそのまま扉の方へと飛んでいく。
 鞭のようなしなりを見せながらも、真っ直ぐに振り下ろされた一撃は、まるで鋼の塊であるかのように易々と白い床を粉砕し、その破片を盛大に飛び散らせた。
 その破片の一つでも直撃すれば、それだけで少女の命にさえかかわりかねない、恐るべき力。
 だが、すでにそこに少女の姿は無い。
「フォルテ!」
 勢いを殺し切れず扉に飛び込みそうになった二人を、今度はフォルテを召喚していたリンセがカバーした。円を描くような軌道で低空を飛び、空中で二人の身体を掴む。そのままぐるりと一周して、仲間たちの背後に降り立つ。
 常であればその小さな身体では、フォルテと一緒であってもカバーしきれなかっただろう。だが、リンセはすでに自身の真の姿を現していた。傍に寄り添うように立つ、煌めくそれは、己自身の影。
「おやおやぁ? カカカカカカ。人形一つがそんなに大事とは、わからないナァ。猟兵共の考える事は、まったく、わからないナァ」
「人は、人形なんかじゃないよ!」
 金属の強固さと、液体の柔軟さを併せ持つ身体を揺らめかせ、一歩を踏み出しながら、シェイプシフターが巨大な目をぎょろつかせて三人を見ると、その視線から少女を守るように、立ち上がったレイチェルが一歩前に出た。
「ぜったいまもるよ」
 レイチェルは静かにユーベルコードを発動させた。それはまもりぬく心。
「これをつかうと、わたしはこれからまもることしかできなくなる。でも、わたしはひとりじゃないから。みんながたたかって、あなたをたおしてくれるよ」
 少女を救わんとする気持ちと、仲間たちを信じる心が、レイチェルの身を包むオーラを通し具現化する。それは自身と、周囲の狭い範囲を強固に包み込んだ。
「こちらは、任せて。皆さんは、攻撃を……!」
 リンセもフォルテと共にそれに寄り添って、精霊中を構えると、徹底防戦を決め込むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

星噛・式
SPDで対応

「やっと親玉のお出ましか。こんな深いところでコソコソ囮使って狩ってるあたり底が知れてるな」

手首を切り流血させ代償として体に悪鬼を憑依させる

敵はドッペルゲンガー同様に模倣しようと攻撃を仕掛けてくる

「さっきはかすり傷とは言え当たっちまったからなぁ。今回は初めから本気で行くぜ」

悪鬼を憑依させたことで身体強化を極限まで上げたことで初速から一瞬にして最高速に達する

攻撃をかわしつつ手裏剣で相手の触手を確実に撃ち落とし本体へ距離を詰め弱点と思わしき場所に致命傷を一撃与え離脱する

「模倣できるならしてみな。その上を行ってやるよ。どんなに強くなろうと必ず地獄見せてやるよ。ガキを囮にした罪は重いぜ」



「やっと親玉のお出ましか」
 式は怒りを滲ませてシェイプシフターと対峙した。
「こんな深いところでコソコソ囮使って狩ってるあたり、底が知れてるな」
 挑発するように言いつつも、取り出した手裏剣で自らの手首を浅く切りつける。血が腕を伝い、白い床へぱたぱたと落ちていく。
「おおい、もったいないもったいない。血を粗末にしないで欲しいナァ。その血も肉も、もうすぐワタシの物となるというのに」
 シェイプシフターは式を挑発して返すが、その言葉は本心でもあった。猟兵達の血肉を貪らんと、今まさに動き出す。
 大まかには人型でありながら、決して人ではありえない動きは、対峙するもの達に言いようのない不快感、不安感をもたらすのだ。
「さっきはかすり傷とは言え当たっちまったからなぁ。今回は初めから本気で行くぜ」
 言うが早いか、式は駆け出していた。そのスピードは、先程までとはまさしく桁違い。流血を代償として発動した降魔化身法は、その身にこの世ならざる者達を宿し自身を超強化したのである。
 シェイプシフターが振り上げた腕は、途中から幾つかに枝分かれし、その一つ一つが刃に、槌に、槍へと変化し、それぞれ独立した動きでタイミングをずらしながら式の頭上から襲い掛かった。
 それぞれが必殺ともいえる威力を持つ攻撃を、クリスタリアンの化身忍者は軽々とさばいていく。
 刃を手にした手裏剣で受け流し、槌は側面を叩いて威力を逸らす。直線的に迫る槍は、ギリギリまで引き付けて脇をすり抜けた。
「模倣できるならしてみな。その上を行ってやるよ。どんなに強くなろうと必ず、地獄を見せてやる」
 言葉をぶつけると同時、手裏剣を相手の巨大な一つ目に叩きつける。ドッペルゲンガーと同じように、そこが弱点だと踏んで。
 まさしく、そこはシェイプシフターにとっても弱点ではあった。だが、その感触は思っていたのとは異なり、硬質な陶器を叩いたかのような反発を返したのだった。
「……ガキを囮にした罪は重いぜ」
 一撃離脱。
 手ごたえはあった。しかし、これは相当に骨が折れそうだ。
 一旦相手の射程圏から逃れた式は、仲間と歩調を合わせて再びシェイプシフターへと躍りかかる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

影宮・近衛
真の姿
手足が獣化し、霊符を自身の周囲に浮遊させて操る様になる

……凄まじい力だ。
誰かを護ろうとする強き力、見せて貰った。
少女の護衛、大儀である。
ならば我も真の力を解き放とう。
我が一族に伝わる力、汝の身に刻め!

少女は任せ、攻めに回ろう。
『念動力』も使い、シェイプシフターに霊符を放つ。
何度躱されても追い縋って見せよう。
最初に放つのは『破魔』の護符だ。
立て続けに放ち、ダメージを与えつつ敵がどう出るか見せて貰おう。
有効ならば攻め続ければよし。
逆に脅威ではないと油断するならば、我も切り札を使おう。
次もただの護符と思うたか?
受けよ、『七星七縛符』!
汝の力、我が身を賭して封じよう。
今が好機である、仕留めよ!



近衛も、リンセとレイチェルの強い想いを受け止めていた。
「誰かを護ろうとする強き力、見せて貰った。少女の護衛、大儀である」
 霊符を取り出しながら、二人と少女の方に向けていた視線を、式を相手に激しく踊り続けるシェイプシフターの方へと向け直すと、
「ならば我も真の力を解き放とう。我が一族に伝わる力、汝の身に刻め!」
 いうが早いか、近衛も真の力を解放。その手足が獣の物へと変化する。
 手にしていた多数の霊符はふわりと宙に浮かび、自身の周囲へと展開して、矢継ぎ早にシェイプシフターへと殺到する。
「手始めに、破魔の力を込めし霊符の味はどうだ?」
 シェイプシフターはぎょろりとそちらに目を向けると、動きを止めないまま式に向けていた武器の幾つかを護符の迎撃に割り振る。 飛来する護符を切り裂き、身体をしならせてかわしていくが、式の誘導の助けもありいくつかは直撃しその身を焼いていった。
「この程度か、猟兵。かゆい、かゆいナァ!」
 防御された護符の数枚は、その体内へと吸い込まれていく。どうやら、それらの力は敵に取り込まれてしまったようだった。
 十分な手ごたえは感じている。にもかかわらず軽口を叩く事が出来る程度に、シェイプシフターには余裕があるのだ。
 近衛は再度畳みかけるように、先ほどと同程度の枚数の護符を、今度はひとまとめにしてシェイプシフターに向けて解き放つ。
「カハハハハ。そーら、返すぞ!」
 先ほど吸収された護符が、シェイプシフターの身体から吐き出された。数は少ないが、体内で増幅し形成された大きな力場が、近衛の護符を相殺していく。
「かかった」
 だが、それは近衛の狙い通り。本命はその後ろ、ひとまとめにした破魔の護符に隠すように放たれていた別の護符だ。念動力で操作し、回り込むようにシェイプシフターの背後に張り付いたその護符を起点に、近衛が本命の術を発動した。
「……次も、ただの護符と思うたか? 受けよ、『七星七縛符』!」
 七星七縛符は敵を捕縛しそのユーベルコードを封じる強烈な効果の代償として、解除するまで己の寿命を削り続ける言わば諸刃の剣の危険な術でもある。
 それでも近衛は、血を流し続ける式と同じように、自ら痛みを引き受けながら全力を振り絞った!

成功 🔵​🔵​🔴​

リミティア・スカイクラッド
成程、ボスクラスの災魔ともなれば、それなりに知恵も回るようです
しかし浅知恵です
あなたはその行為がヒトに与える「怒り」の力を知りません

眷属との戦闘を踏まえ血肉を奪われぬよう距離を保ちつつ
「十秒です。リムに時間を下さい」
妖精杖を手に魔力を溜めて【全力魔法】エレメンタル・ファンタジアを発動
発現するのは「光」属性の「嵐」
迷宮内の鏡に反射させた光の奔流を、全方位から目標へと一点収束させ攻撃します

姿・能力・技術。どの模倣の精度も眷属より高いようですね
ですが、リムの魔法は一朝一夕に制御できる代物ではありません
魔女の知恵も知識も持たないあなたが術式だけを模倣しても、待つのは暴走です
自滅なさい、シェイプシフター


ラスベルト・ロスローリエン
『消えよ消えよ影法師。汝が在るべき闇の奥底へ戻るが良い』

【WIZ】

“エレンナウア”から【高速詠唱】で《散華の騎士》を召喚。
(白光を纏い青白い甲冑に身を包んだエルフの戦乙女)
大ぶりな攻撃の直後や気が逸れた隙を狙い遠近織り交ぜた槍と剣の一撃で弱点を穿たせる。
その隙を作るのが僕の役目。【全力魔法】で仲間や騎士を援護するがあくまで囮さ。
例えこちらの思考を読み取っても、独立して動く騎士の動きは容易に予測できないだろう?
戦の舞踏の主演は《彼女》だからね。

影の大元を討ったらエリィの妹を介抱し話を聞いた上でミラードール探索をしよう。
何せこの子の救出に次ぐ依頼だ……鋼の大扉の向こうに手掛かりはあるのだろうか?



『花散らす嵐の乗り手、漆黒と光閃を佩びたる戦乙女』
 ラスベルトはミスリルの長剣エレンナウアを引き抜いて、詠唱を開始する。
 命を削りつつも近衛が動きを阻害し特殊能力を封じてはいたが、敵オブリビオンはそれでもなお、身体能力のみで猟兵達を圧倒できるだけの力を持ってるのだ。
『汝が誓言、戦乱の時代は来たれり」
「やらせんぞ!」
 シェイプシフターが振り上げた腕は振り下ろされると同時に鋭く、細く伸びてラスベルトを襲う。
「――幾星霜の果て、疾く黄泉還りて我が元へ参陣せよ!』
 あと一呼吸、詠唱が遅れれば、その腕はラスベルトの頭部を突き砕いただろう。だがラスベルトの術式は完成し、眼前に散華の騎士の姿が顕現する。
 白光を纏いしエルフの戦乙女はすぐさま、迫りくる腕を闇の剣で受け止めた。全身でその力を押さえつけ、ギチギチと拮抗した後、力勝負では分が悪く押され始めるが、ラスベルトは焦らず距離を取る。
 散華の騎士は闇の剣を片手に持ち替えつつ角度を変えてその力を反らすと、シェイプシフターに肉薄した。空いた手に光の槍を携えて突き進むその姿は、まさに古のヴァルキュリアである。

 複数を同時に相手取りつつも、シェイプシフターは止まらない。縦横無尽に暴れまわり、援護を続ける後衛にもその魔手を文字通り伸ばし続ける。
「ク、ウウウゥゥ! ジャマだ、ジャマだナァァ!」
 動き回り、多方向へと不規則に振り回される両腕に散華の騎士が距離を取ると、シェイプシフターは自らの背後で力を発し続ける護符に腕を叩きつける。腕が反発で削れ落ちるのにも構わず、背中の表面ごと護符を削り取った。
 束縛は外れた。しかし、その代償にシェイプシフターには大きなダメージが残る。
 血肉を奪われぬよう距離を保ち、支援に徹して力を温存していたリミティアはそこに勝機を見た。
「十秒です。リムに時間を下さい」
 妖精杖を手にその目を閉じると、温存し練り上げていた魔力を急速に集中させていく。
 九、八……。
 シェイプシフターもその動きに気付いたが、束縛を解いた際に自ら負った傷により即応は出来なかった。
 散華の騎士もフォローに動き、その接近を許すまじと残された力を振り絞り猛攻を仕掛けていく。
 七、六……。
「ジャマだ、ジャマだ、ジャマだああぁぁぁ!!」
 シェイプシフターは戦乙女の姿を写し取り、その猛攻をことごとくしのぐ。
 五、四……。
 攻撃にその多くを割り振った戦乙女に出来た隙に、シェイプシフターが致命の一撃を突き込むと仮初の肉体は解け光に帰り、その霊が現実への干渉方法を失っていく。
 三、二……。
 シェイプシフターがリミティアの眼前に迫る。
 リミティアが目を開く。
 一、零。
 エレメンタル・ファンタジアが発動した。
 突きだされた妖精杖を起点に、光と嵐の属性を帯びた全力魔法により生み出された光の奔流は、四方八方へと散っていく。だが、それは正確に迷宮内各所に配置された鏡を捉え、反射して、シェイプシフターの元へと収束していった。
「ギャグアァァァァァァー!」
 悲鳴とも怒号ともつかぬ声が、光で満たされた空間に響き。
 光が消えた後には、全身を焼き尽くされたシェイプシフターの姿があった。
「これが『怒り』です。あなたは、あなたのその行為がヒトに与える力を知りません」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


「やって……くれたナァ猟兵!」
 身体を焼き尽くされ、ぼろぼろになりつつもシェイプシフターは止まらない。

「ごめん……なさい。ごめんなさい……私のために……」
 少女は呟く。
「私は……人間じゃないから……。私はあの災魔のいうとおり、人形なんです……」
 どういうことかと問う猟兵達に、彼女は答える。
 彼女の本体は人形、ミラードールであり、オリジナルとなる少女……エリィの妹の姿を写し取った存在。オリジナルは、シェイプシフターにより吸収されてしまったという。
「だから……私を壊してください……。あの災魔を倒したあと、彼女の魂が残っている間に……。そうすれば、その写し身である私の存在が身代わりになって、彼女の存在を癒します。それが私の、存在理由、ですから……」
 猟兵達に、決断せねばならない時が迫っている。
レイチェル・ケイトリン
奇跡ってあるのかわかんない。でも、つかみたいよ……

敵がたおされたら、守りぬく想いはけすね。


人形さんをこわすのってぜんぶいっきにじゃなきゃいけないのかな。

こわしながらなおして、ふたりともたすけてあげられないのかな。


わたしじゃなおしてあげられないけど、やってみてくれるひとがいたら
念動力技能でつかうよ、わたしのもうひとつの未完成の力「共にある想い」を。

わたしが代償を受けることでほかの人の力を超強化する……
回復能力も強くできるほんとにめずらしいユーベルコード。


わたしも人形だもの。どうしようもなかったときがあったもの。

奇跡がわたしに心の力をくれた……だから、奇跡がほしいよ……

わたしとおなじこの子にも……


リンセ・ノーチェ
真の姿でフォルテに騎乗し精霊銃を油断なく構え
エリィさんの妹…ミラードールを守り続ける
「謝らないで」
好奇心が災厄を暴いたと言えばそれまでだけど
少女達の願いは間違ってなくて
胸が痛くて、でも伝えたい気持ちは一つ
「人を守ってくれてありがとう…君は、とても素敵な子」

皆の攻撃と共に
精霊銃に全力籠め【全力魔法】で敵を攻撃
「…おやすみ」

ミラードールを壊す前に
エリィさんの父の病の治療法を知らないか訊ね
叶うならミラードール自身の姿を見せて貰う
君を忘れないよって伝えて
欠片が残ればそっと掌にのせ大切にする

エリィさん達がずっと仲良く出来る様に帰路も守る
ごめんね
僕、何もできなかった
でも、ミラードールの事、覚えていて欲しい



視線からは猟兵達の思考を、血肉からは猟兵達の姿を、そして使用されたユーベルコードすらも簒奪して、シェイプシフターが踊る。
 全身がぼろぼろになっていようとも、その力は衰えない。一切の油断を無くした今、むしろその脅威は増していた。
 暴風のように荒れ狂い、通り過ぎた後は対峙する猟兵達だけではなく、天井も、床も壁も、全てがズタズタにされていった。
 時間にすれば決して長い戦いではないが、その全てが致命の威力を秘めた一撃。短時間の間に猟兵達は疲弊し、そして力を振るい続けるシェイプシフターの身体も、自らの力に耐えきれず徐々に崩壊をはじめている。
 ふとシェイプシフターが、猟兵達の乱れた陣形の先、ミラードールの少女に目を止める。
「……それだ。その人形をヨコセェ!」
 背後からの猟兵達の攻撃に身体を削られながらも、一直線に突き進む。もはや人形の力を以ってひび割れた身体を癒さねば、生き延びる事は出来ぬと悟っての特攻。
 ガァン!
 強い衝撃と共にその進行が止まる。
 レイチェルの、まもりぬく心。少女を助けたいという想い、仲間を信じる心が具現化した光の障壁がその行く手を阻んだのだ。
 だがあらゆる攻撃を阻む障壁は、シェイプシフターの特攻を受けて揺らぎ、その光を減じていた。そのまま光を押し込むように、じりじりとシェイプシフターが迫る。
「奇跡ってあるのかわかんない。でも、つかみたいよ……」
 シェイプシフターが格上の敵である以上、ずっと防御し続ければいずれ限界はやって来る。しかしこんなにも早く効力が減じたのは、レイチェルが少女の言葉によって少なからず衝撃を受けていたのもその一因かもしれない。
「わたしもこの子とおなじ……人形だもの。どうしようもなかったときがあったもの。奇跡がわたしに心の力をくれた……だから、奇跡がほしいよ……そのためにも、いまは、まもらないと」
 レイチェルは、より一層力想いを強くする。力が拮抗し、シェイプシフターの巨体がその場で止まった。
「ヨコセ……ヨコセェェェェェ!!!!」
 シェイプシフターの狂気を孕んだ咆哮。もはや、その声には一切の余裕も感じられない。
 少女はびくりと震え、ごめんなさい、ごめんなさいと呟き続ける。猟兵達に向けたものなのか、シェイプシフターに向けたものなのか、それはわからなかった。
「謝らないで」
 リンセはフォルテに騎乗したまま、手にした精霊銃の狙いをシェイプシフターに定める。
「人を守ってくれてありがとう……君は、とても素敵な子」
 視線はシェイプシフターに向けたまま、少女にその想いを、感謝を伝えた。少女の言葉の通りであれば、シェイプシフターを倒した後にはあまり時間の余裕が無いはずだから。
 シェイプシフターの背後に他の猟兵達も追いついた。一斉に、全力をぶつけんと各々が力を解放していき、シェイプシフターの身体が砕けていく。
「……おやすみ」
 最後に、全力を乗せたリンセの精霊銃がシェイプシフターの目を撃ちぬいた。

 シェイプシフターの肉体が砕け、溶けていく。その中に、光り輝くなにかがいくつも残っていた。取り込まれた者達の魂だ。
 その一つずつが明滅し、感謝を伝えるようにしたあと天へと昇っていく。
「人形さんをこわすのってぜんぶいっきにじゃなきゃいけないのかな。こわしながらなおして、ふたりともたすけてあげられないのかな」
 レイチェルの言葉に、少女は首を振る。
「私の本質は、呪いなの。だから、ごめんなさい……」
 ミラードールの身体は媒体でしかなく、対象者の姿を写し取って核になる呪いを砕く事で力を発揮するのだ、と少女は説明した。
 続けてリンセが、エリィの父……少女のオリジナルの父の病気の治療法を聞くが、それにも少女は首を振る。
 この人格、記憶はエリィの妹のものであり、ミラードールに関する事以外には、その知識の範囲外の事はわからないのだと。
 シェイプシフターの身体から出てきた光は、残り一つとなっていた。ひときわ強く輝くそれは、エリィの妹のものだ。
「……ごめんね。君を壊すよ。エリィさんの妹と、君を同時に救う方法が思いつかないんだ」
「いいの。それが、私の存在意義だから……」
 猟兵達が見守る中、リンセが精霊銃を少女に向ける。せめて、苦しむことが無いようにと願いながら。
「……ありがとう」
 少女の姿が薄れていく。最後に、初めて笑顔を見せながら。あとには、砕けた鏡の破片のようなものが残った。
「君を忘れないよ」
 リンセは優しく破片を掌にのせ、そっと呟く。その破片は、ほんのりと温かかった。

 一方、シェイプシフターが倒れて光が残っていた場所に、一人の少女が現れていた。
 やはりエリィとそっくりで、その目は閉じられたまま、ぺたんと地面に座りこんでいる。
 猟兵達が声をかけると、彼女はそっとその瞳を開く。
「……ありがとうございました。私、ぜんぶ、覚えています」
 エリィの妹……リリィは、ここで起こった事、ミラードールとして存在していた期間の事も全て覚えていた。
「……彼女は、私の写し身です。けれど、彼女が彼女として生きた彼女だけの時間、それは確かに存在しました。私がそれを覚えている限り、彼女は私の中で生きて居るんだと思います」
 その時、地響きがして迷宮が揺れた。見ると奥の扉が開き、中から強い瘴気が溢れ出ている。
「あの奥には、あの災魔が作った迷宮の核がありました。災魔が死んで、迷宮を支えきれなくなったのかもしれません」
 リリィが、ミラードールとして存在していた時の記憶を探って言う。
 なんにしてもここは危険だと、猟兵達はリリィを連れ、守りながら迷宮の外へと脱出したのだった。

 災魔『シェイプシフター』は倒された。鏡の迷宮は崩壊し、ミラードールを巡る事件はここで一旦の終幕を迎える。
 エリィとリリィは再会を果たし、今度は改めて、二人で父を救う術を探すことを約束した。
 ――ひとつの物語が終わり、新たな物語が今また、ここから始まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト