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バトルオブフラワーズ⑧~カラフル・デコラティブ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ


●モノクローム・デコラティブ
「派手な色使いとか、あたしの可愛さを霞ませちゃうからダメダメに決まってるじゃない」
 きっと煌びやかな電飾が施されていたのだろう。けれど今は底なしの闇を思わす黒に塗り潰された馬車から、同じく黒一面の回転床に降り立った少女――アヤカ・ウザカワは、ひらりと舞い来たホログラフの蝶を指先から放ったノイズで消し去る。
 一瞬前までは、極彩色のメリーゴーラウンド。
 けれどノイズの残像を残しながらアヤカが歩みを進める度、華やかな遊園地のようだった街並は闇の色へと染め上げられてゆく。
「ほらほら、この世界で唯一カワイイのはあたしだけ。だからみーんな、あたしを構えばいいと思うの。っていうか、構わないヤツはクズ! 存在価値ゼロ。さっさと消しちゃうしかないよね♪」
 黒い黒い、黒い世界で。
 アヤカは――オブリビオンは、くふふと愛らしく、黒く、微笑む。

●カラフル・デコラティブ
 ――まぁ、大概だとは思うけどね?
 南北にパカっと割れたキマイラフューチャーの現状をけらりと笑った連・希夜(いつかみたゆめ・f10190)は、その笑顔のまま『仕事』の話へ移る。
 キマイラフューチャーの中枢が『システム・フラワーズ』で。
 このシステム・フラワーズを占拠したのが、オブリビオン・フォーミュラの『ドン・フリーダム』。
 オブリビオン達に負われていたテレビウム達は、システム・フラワーズからの救援要請であり、そのシステム・フラワーズへ続くメンテナンスルートを開放した結果が、この真っ二つ状態ということ。
 ざっくりで語っても、斜め上に飛びすぎな事は変わらず。
 というか、こんな面白な世界。何としても守りたいし、存続させなきゃ勿体ない。
「というわけで、皆に行って貰いたいのは。『システム・フラワーズ』を守る六つの『ザ・ステージ』の一つ。『ザ・ペイントステージ』ってところ」
 ペイント、とつくだけあって戦闘に適用される特殊ルールは色に関するもの。
「壁とか床が、『闇のような黒色』に塗り潰されてるんだけどね。この黒色のゾーンでは、みんなのユーベルコードではオブリビオンに直接ダメージを与えることが出来ないんだ。だから、一方的に攻撃されちゃう」
 元々は、キマイラフィーチャーの街並みを模して作成された場所だ。きっと極彩色に溢れていたのだろう。
 変わり果てた闇色の世界はオブリビオンの独壇場。
「なら、さ。色には色で対抗するのが一番って思わない?」
 きらり、と。仄かに光る希夜のアメジストの瞳がいたずらっ子のように輝く。
「――そ。つまり、皆の大好きな色で塗り潰し返しちゃえってこと!」
 一定以上の範囲を塗り潰す事に成功すると、一度だけ、本来のユーベルコードの力が発揮される。
「エリア全体の2/3以上を皆が塗り潰すのに成功したら、皆の力も全開放! 無制限でばんばんユーベルコードをオブリビオンへぶつけられるようになるよ」
 最低限の範囲を縫って、一撃ずつ攻撃を加えていくか。
 一先ずオブリビオンのことは置いておいて、闇色の世界をカラフルに塗り潰すのに専念するかは、猟兵たちの自由。
「せっかくの面白世界だし。楽しく自由にやってみればいいんじゃないかな? 大丈夫、きっとなんとかなるって」
 話の終いに「倒して欲しいのは『アヤカ・ウザカワ』っていうかまってちゃん系のオブリビオンね。自分より目立たせたくて、闇色に染めてるような子かも」と付け足した希夜は、おいでおいでと猟兵たちを手招き、ポップでキュートな鼻歌混じりにテレポートを発動させた。


七凪臣
 お世話になります、七凪です。
 初キマイラフューチャー。
 カラフルに楽しく戦って頂ければ、と!

●シナリオの流れ
 このシナリオは戦争シナリオです。1フラグメントで完結いたします。

●シナリオ傾向
 ポップに楽しく、わちゃわちゃと。
 きっとなんとかなる精神で、自分なりの『戦い方』でどうぞ!

●お連れ様(二人組まで)とご参加頂く場合
 迷子防止の為に「名前+ID」の指定と、できるだけ近い時間帯でのプレイング送信をお願いします。

●その他
 プレイングはOP公開時点から募集開始致します。
 受付締め切りタイミングはマスターページ等でお報せします。
 参加人数次第ではありますが、プレイングの全採用はお約束できません。

 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 ボス戦 『アヤカ・ウザカワ』

POW   :    そんなにあたしに関わりたいの?仕方ないなあ♪
全身を【構ってオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【痛みや苦しみ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    もっとアタシに構えー!
【音や煙が派手な様々な火器を装備したモード】に変形し、自身の【回避力と移動力】を代償に、自身の【命中と攻撃速度】を強化する。
WIZ   :    世界で一番可愛いのはアタシ!
【笑顔】【挑発的なポーズ】【自分を見ろというオーラ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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色採・トリノ
まっくろ、まっくろ、まっくろ
うぅん、色が無いと、寂しいわ?
リノは色はたくさんあった方が好き
だから、色んな色を塗り返しちゃいましょう、ね?

それじゃあ、他の子に人格を交代しましょうね
「お絵かきが得意な子、得意な子、リノを助けてちょうだいな」
それと、UCでお手伝いしてくれる子を増やしましょう
そちらは戦いの得意な子
手分けしてステージを塗って、攻撃できるようになったらUCの子に戦いをお願いするの

どうせなら、塗り潰される前よりキラキラ綺麗に
遊園地だもの
夢みたいにキラキラゆらゆらしてなくちゃ、ね?

(絡み・アドリブ大歓迎。
人格の名前(色)と性格もおまかせします。
他人格はどう動かして頂いても大丈夫です)


ハーモニア・ミルクティー
アヤカには、闇色の世界よりカラフルな色が似合うと思うのだけど…
とりあえず、楽しく自由にポップに!ってワケね!
楽しみながら、カラフルな世界を取り戻しましょう!

仲間との連携を重視するわ!
わたしは闇色をカラフルに塗りつぶすことに専念するわ。
ペンキはもちろん、ライラック色よ!
あちこちを飛び回りながら、片っ端からペンキで塗り潰して行くわ!
アヤカに気付かれないように「目立たない」ようにしたり、「スライディング」で豪快にペンキを撒き散らしたりしようかしら。

全体の3分の2を塗り潰せたら、「Lunatic Howl」で攻撃よ!
猛獣たちの凄さ、見せてあげるんだから!
もちろん、仲間を巻き込まないように気をつけるわ。


ステラ・アルゲン
黒色って私の好きな色じゃないですね
なのでささっと色を塗り替えてしまいましょうか!

白馬の【スピカ】に【騎乗】し【月光槍】のルナを構えます
ルナの先端には筆のように毛を縛って付けておく
ルナを筆のように持ち、スピカを【ダッシュ】で走らせながら素早く色を塗っていきましょうか!
ちなみに色は白銀と青です。ふふ、私の色でもあるし、かつての主の色でもありますので
【オーラ防御】の風【属性魔法】に色を乗せて広範囲にも塗っていきましょう

ある程度塗り終えたら、槍を構えて【流星一閃】にて騎兵突撃し、相手を白銀と青に染め上げましょうか!

(アドリブ・連携OK)


サン・ダイヤモンド
黒が好き 大好きな人の色だから
でもこの黒は、ああ、なんだか息が詰まりそう
あの人の黒は、もっとずっと、優しい

それに、世界は色んな色で溢れていた方が
きっと楽しい

足を踏み出し、駆けるように、踊るように
両手を広げて空を描く
僕が生きてきた森の記憶を呼び覚ますように
光を浴びて煌めく草木、揺らめく川底の石、泳ぐ魚、流れる命の水の色
舞い散る木の葉、あたたかな毛並みの動物達
白い雪
恋の季節、鮮やかに色付く小鳥達

瑞々しくて真っ赤な林檎、それからそれから
僕が大好きな花の色 あの人の瞳と同じ


ねえ、どうして?
闇の中にひとりぼっちなんて、寂しいよ

たっぷり塗ったら「光」の「雪」で世界を明るく彩るの
光の温度は多分受け取る君次第


都槻・綾
敵攻撃は第六感で見切り回避
自他オーラ防御

花香る袱紗を絵筆代わりに
馨遙で闇を塗り替える

星も燈らぬ黒の世界に
一斉に蕾綻ぶ春色を
陽射しの煌く夏色を
暖かなあかり色の秋を
白銀の眩い冬色を
花咲かせてみましょう

共に駆ける皆々様の楽しそうな表情を見れば
海より戻りし褪せた色の魂など
溢れる鮮やかな色彩の洪水で
あっという間に飲み込んでしまえそうで
何より純粋に
全身で色遊びすることが面白くて
隙間を見つけては埋めるように
駆けて跳ねて色を置く

青磁の地色に
四季様々な彩りの花柄が咲き乱れれば
いざ、と悪戯っこのような笑みを浮かべて
敵へ放つ誘眠の技

眠って、誰かの次なる攻撃で目覚めて、
まみえた新しき色彩の世界は
きっと眩く美しいですよ


海月・びいどろ
全部混ぜれば、黒色になるけど
重ね合せるなら、十人十色
…それぞれに、とくべつ

たくさんの色で満たすなら
手数は多い方が、良いよね
海月の兵隊たちと手分けして
バケツいっぱいの、あおい海を

……準備は、いい?

それじゃあ、全部――ひっくり返して

あおいろの飛沫は、しっちゃかめっちゃか
自分たちまで濡れても、お構いなし
青、蒼、碧の世界を塗り広げて
走り出したら
あしあとまで、ボクらの陣地

あの子の笑顔は、かわいい、けれど
無理に一番を決めては、ダメだよ
他の色に霞んでしまうのだったら、いっそ
ボクの色に、染まって?

…なんて

しっかりと、バケツを握って
時間稼ぎをしたら
海月たちは攻撃を、おねがい

いろんなヒトの彩りは
とても、鮮やかだね


岡森・椛
闇の中にいるより、可愛い物に囲まれていた方が可愛く見える気がするのにな…

まずはカラフルに世界を染めるね
【先制攻撃、2回攻撃】で周囲を【なぎ払い】、広範囲を一気に花畑にする
真っ黒な空間が鮮やかに変わる瞬間は、まるで世界が目覚めた様な感覚になる
おはよう!
もっと綺麗な色を見つけていこうねと世界に笑いかける
【範囲攻撃】でどんどん塗り潰すよ
美術の授業も好きだし【アート】の感覚も役立つかな

精霊アウラに手伝って貰う
巻き起こす風が暗闇を吹き払っていく様に見える
アウラの色は優しい新緑の色
私もアウラも瞳がキラキラ
凄く楽しいもの

2/3以上の塗り潰し成功後に【紅葉賀】で敵を攻撃
視界全てを染める秋色を貴女にプレゼント!


穂結・神楽耶
聞いたことがあります。
「構ってちゃん」という存在は、構えば構うほど付け上がるそうですね?
なのでオブリビオンは無視。
この世界を徹底的に彩り華やかに致しましょう。
赤、橙、黄、緑、青、紫。
カラフルな方が楽しい気持ちになりますし、何よりこの世界らしいですもの。
統一感が迷子なのは…ご愛嬌ということでお許しくださいますよう。

力が開放されたら、オブリビオンに相対しましょう。
舞わせた刀で『援護射撃』『なぎ払い』。
それから言わせて頂きますと。
本当の「可愛い」というのは舞台なぞに左右されるものではないのです。
そんな些末事を気にしている時点で可愛いげが全く足りません!


トトリ・トートリド
…ご、ごめん
トトリ、かわいさ…よくわからない
この町の賑やかさ、も…もしかしたら、よくわからない、かも
でも、このままはきっと、よくないから
今度の仲間は、チロル(f09776)と、ソルベ
お揃いのローラー、ちょっとうれしい
一緒に、頑張ろう

ふたりの色は、どんなかな
白、ソーダ色、春の…わかばの色?
戦うの、得意じゃないけど
この戦い、皆の色が見えて…少し、楽しい
チロルも、楽しくいられるように
孔雀緑青の飛沫で、魔法の蔦、芽吹かせる
チロルも花、咲かせてみせて

一生懸命な、チロル
しっかり助けてる、ソルベ
見てると胸、ちょっと、あったかくて
これが、かわいいってこと…かな
ふたりの色は、消させない
前に立ち、武器でなぎ払う


チロル・キャンディベル
トトリ(f13948)といっしょ

チロは葉っぱの色、黄緑のインク
トトリのまねっこでおっきなローラー持ってきたの
ソルベの足にもピンクのインクぬりぬり
いっしょに走れば、葉っぱとお花でいっぱいになるの!(えへん)

トトリの飛沫にはわあ…!と瞳きらきら
すごいすごい!トトリがぱってやったら、葉っぱがひろがっちゃった!
トトリなら、せかいを緑色にできそう!
よーし、チロも負けないの
ね、ソルベ!

おねえさんのそのうさぎのぬいぐるみかわいい!
チロもほしいの!
でもね、チロ黒はあんまり好きじゃないの
だってさむくて、かなしいから
だから色を、かえしてね

攻撃はエレメンタル・ファンタジア
水の力で、ぜんぶの黒を流しちゃうの!


ジャック・スペード
今回のオーダーは色塗りか
此の場所は確かに明るい色の方が似合うだろうな

俺は塗潰しに専念しよう
然し何色にすべきか――ああ、そういえば
黄色は気分を明るくすると聞く
ならば俺は此の闇を黄色に染めて見せよう

ヒトより多少デカイ処が取り柄だ
壁、特に高い処は任せてくれ
もし誰かの作業が敵の攻撃で邪魔されそうなら此の身でかばう
黒も嫌いじゃないが世界がカラフルに成って行く様は
なんというか、タノシイな

塗り終えた後は、チェネルの粘液で自己強化して戦闘へ移行
クイックドロウを活かしリボルバーで戦う
仲間と連携可能な際は、援護射撃でアヤカを牽制したく

反撃は……余り敵を見ないようにして対処を
構ってオーラも無視しよう、少し心苦しいが


ユニ・エクスマキナ
色塗りすればいいのね!
かんたん、かんたん
ユニも頑張っちゃうぞ~!

塗るならどばぁっと一気に塗っちゃいたいなぁ
なんかいい方法ないかな~
(マニュアルめくって調べ調べ
ふむふむ…え?こんな機能が!?
うっそ、これエラーだったの?
ついついマニュアルを読み耽ってしまって
あ!全然色塗りバトルしてなかったー
失敗、失敗
うーん…まぁ、適当にやってみるかな!
【Record&Play】で敵の攻撃をコピーして黒い世界にぶつけるのね
ユニの色は赤!
ばばーんっと世界が明るくなっちゃうのねー!
え?なんか隅っこが黒いまま?
うーん…まぁそれは気にしたらダメなのね
ちゃちゃっと塗ったから仕方がないのっ
でもほら、いーっぱい塗ったから大丈夫!


清川・シャル
f08018カイムと第六感で連携

可愛さは人によりますけどね?
貴女の服飾センスは好きですよ
けど貴女のピンクよりシャルの桜色の方が可愛いですっ

ぐーちゃんに桜色のペイント弾を込めておきます
UCで全弾発射!
わーい桜色ですよー!
無くなったらクイックドロウと早業で装填っ

【P】
敵UC対策に
Amanecerを召喚
「楽しい」催眠術を狙います
痛みや苦しみは忘れちゃいましょうね

すかさず熱光線で攻撃です
一斉発射、目潰し、串刺し、スナイパー、衝撃波

そーちゃんにて
なぎ払い、鎧無視攻撃、鎧砕き

敵攻撃には見切り、カウンターで対処

ねぇカイムー、シャルとアヤカさんどちらが可愛いです?
にっこり笑いながら聞いてみましょう〜。ふふ。


カイム・クローバー
シャル(f01440)と第六感で連携
あー…なるほど。世界を色で塗りつぶせば、こっちの攻撃が通るって訳だ。真っ黒な世界なんざ粋じゃねぇ。俺がこの世界を極彩色に染め上げてやるぜ。
【S】
赤、青のカラフル弾をオルトロスに仕込んでペイント弾に。で、これだと極彩色にならないからよ、UC、もう一人の俺の出番って訳だ。もう一人の俺は緑と黄色のペイント弾を装備。どーよ?黒一色なんて味気ねぇだろ? 戦闘時は銃より剣で戦闘。接近戦をメインに【二回攻撃】【なぎ払い】【串刺し】で攻撃。シャルと合わせて隙を潰せるように。攻撃には【見切り】【残像】【第六感】で回避優先。
シャルの方が可愛い……おい、頬の所、血が付いてるぞ…?


クロト・ラトキエ
新緑。陽光。犬、猫、鳥。星に花に、空。
黒だって厭いはしませんが、世界に溢れる鮮やかな彩を塗り潰すのはいただけない。
という事で。皆さんがバッチリ場を染め上げてくださると信じ♪
倒す為、尽力致しましょう。

色が増えた頃合いでトリニティ・エンハンス。
炎の魔力を攻撃力に。
彼女の攻撃は見切りを試みつつ、機が有れば鋼糸にて斬り断ちの2回攻撃狙い。
不発なら足りず、1撃のみならもう少し、全て入れば範囲は十分…
そんな目安になれればと。

此方を向いて、お嬢さん。
ええ。確かに貴女は可愛らしい。
けれど他をディスるのはノーグッド!
向上より排斥を選んだ時点で、貴女の『カワイイ』は地に落ちた。
…それって構う価値、本当にあります?


泉宮・瑠碧
…他者にも色はあるが
人物も黒で塗り潰すのか…?
黒だけでは逆に映えないものもあると思うが…
色彩も構うのも、程度の問題だろう

僕は塗り潰しに専念で、空より薄い淡い青色に染める
杖を手にエレメンタル・ファンタジアで氷の豪雨
広範囲を一気に塗っていく

他者を巻き込まない様に、人の居ない所を選ぼう
場所も場所だし、多少の制御不備なら問題は無いな
水の精霊、風の精霊…存分に遊んでおいで

見える地域を属性攻撃と範囲攻撃
更に広く塗れる機会があれば制御の枷を外して全力魔法
収めるべき範囲や不可侵の方向を示す必要も無いからな
黒の箇所は塗り潰すべし、位だ

塗り残しは水の弾を作って援護射撃で当てていく

アヤカへは
寂しくない様にと祈ろう


空廼・柩
キマイラフューチャー…鮮やかな世界だと聞いていたけれど
…確か、アヤカだっけ?
可愛いかどうかなんてどうでも良いけれど
本当に可愛い奴は、鮮やかな色の中でも輝くもんじゃない?
それを理解出来てないなんて、まだまだだね

闇色を塗り潰す為、用意するのは空の青
それも飛びっきり鮮やかな色を選ぼう
これが俺の一番
やるからには徹底的にと、無遠慮に
…あ、やばい結構楽しいかも
いやいや勿論戦う事だって忘れてないよ?
ユーベルコードが使える様になったら全力出すから

【咎力封じ】でアヤカの動きを封じつつ
火器は…避ける心算は毛頭ない
拷問具を盾にして一直線に近付く
多少撃たれようが激痛耐性で何とかするさ
さ、お邪魔虫は早々にご退場願おうか



●オペレーションスタート!
 万の色を微かに透かす白い左の眼を、ぱちり、ぱちり。
 色採・トリノ(f14208)はきっちり二度、瞬くと「うぅん」と憂いを帯びた息をそろりと吐く。
 まっくろ、まっくろ、まっくろ。
 帆船を模したアトラクションのメインマストに設えられた見張り台から望む街並は、クラーケンが墨でも吐き散らかしたような黒、黒、黒。
 元の極彩色が鳴りを潜めた世界は、光の届かない水底の眠りに囚われたかの如く。
「色が無いと、寂しいわ?」
 ――リノは色がたくさんあった方が好き。
 内側に幾人もの『自分』を住まわせる白い少女は、造られた風に頬を擽らせながらくすくすと微笑む。
「だから、色んな色を塗り返しちゃいましょう、ね?」
 呼びかけるのは、内側。
 ねぇ、誰がいいかしら?
 相手は黒の中で愉悦に浸る愛らしいオブリビオン。
「お絵かきが得意な子、得意な子、リノを助けてちょうだいな」
 ぱちん。
 今度は、ゆっくり瞬き。すると不思議、先ほどまでの色は消え去り、替わりに鮮やかなライムグリーンが左目にあった。
『ライム、あとはよろしくおねがいね。せっかくの遊園地みたいな街だもの、夢みたいにキラキラゆらゆらにしちゃって、ね』
「お任せよ!」
 会話のようで会話ではないそれは、トリノの制御の証。然して、『ライム』となった少女は、右の瞳はきっちり閉ざしたまま、ひらりと見張り台の上から飛び降りると、闇に彩の目覚めをもたらす緑の風になる。

●構ってちゃんの正しい処し方
 メリーゴーラウンドの回転台から降りたアヤカは、今度は巨大なステージを一瞬で黒へと塗り替えた。
 そうして陣取る、問答無用のセンターポジション。可愛いアタシを遠くからでも存分に眺めればいいのよ、とでも言わんばかりに、一人でくるくる踊って――また黒い闇を周囲へ撒き散らす。
 そんなアヤカの様子に――、
「闇の中にいるより、可愛い物に囲まれていた方が可愛く見える気がするのにな……」
 岡森・椛(f08841)は小首を傾げて、ぽつり。きっと同じ感想を抱いているのだろう、風の精霊のアウラも小さい頭を捻ってささやかなつむじ風を巻き起こし。その風に若干煽られ気味になりながらハーモニア・ミルクティー(f12114)もキマイラフューチャーの電子光を透かす薄い翅を羽搏かせて同意を頷く。
「ほんと、ほんとにそうよね!」
 明るいピンクが目を惹くアヤカには、カラフルな世界の方が相応しい気がする。
 例えば、ハーモニアのミルクティー色の髪にはライラック色のリボンが似合いなように。
 けれども自分と同等の彩があることが不愉快らしいオブリビオンは、また一つ、もう一つと黒を撒く。
 ――どうしようかしら?
 サイズ感的にはほんのり親近感を覚えるアウラと一緒になって、ハーモニアはひらりひらりと中空に描く円の軌道で惑いを表す――が。
「お二方とも、あの方のことは今は無視が一番ですわ。だって、聞いたことがあります。『構ってちゃん』という存在は、構えば構うほど付け上がるそうです」
 蓮の華をあしらう品の良い羽織に癖のない漆黒の髪をさらりと流す穂結・神楽耶(f15297)が、たおやかな姿形と和やかな笑顔とは裏腹に、鋭い神髄をずばりと二人の少女たちへ説いた。
 おそらくアヤカは、構えばかまう程に此方に執着してくるだろう。それなら、さくっと無視してしまうに限る!
「まずはこの世界を徹底的に彩り華やかに致しましょう」
 神楽耶の提案に、ハーモニアと椛も顔を見合わせ、是の笑顔をふわりと咲かす。
「それがいいかな」
「そうね、そうね! それが良いわ。楽しみながら、カラフルな世界を取り戻しましょう!」
 そうと決まれば、アヤカの視界に入らないのが一番。
 フェアリーという小柄さを活かしてアヤカに気取られぬよう周囲を見渡したハーモニアは、きっとメリーゴーラウンドより先に黒く染められたのだろうティーカップの元へ神楽耶と椛を導く。

 刷毛を持ち替えては色を変え、また色を変えては刷毛を持ち替えて。
 赤、橙、黄、緑、青、紫。
 思い付く限りの色で、神楽耶は黒塗りのティーカップたちを染め上げる。
 慣れぬ作業は労が少なくない筈なのに、不思議と口角は上がってしまう。それはモノクロームの世界がカラフルに生まれ変わっていくから。
 やはりキマイラフューチャーには、無数の色があるのがしっくりくる。
「統一感が迷子なのは……ご愛敬ということで」
 お許しくださいませ、と少しの申し訳なさを滲ませると、そんなことないよ、と椛がペンキをたっぷり含んだ絵筆の二刀流で新たな色を弾けさせてゆく。
 右に、左に。
 自在に振るわれる色たちは、無数の花となってティーカップが回る地面を鮮やかな春の園へ生まれ変わらせる。
 ああ、まるで世界が目覚めていくような感覚。
「おはよう!」
 思わず椛の口をついて出た挨拶に、アウラもくるり。風で器用に色を操り、黒を萌え出る鮮やかな新緑の彩で上描く。
 きらきら、と。
 一つ色が芽吹くごとに、椛の鼓動も弾む。
 世界に、もっともっと綺麗な色を見つけていこうね、と微笑みかけたくなる。
 ここにはどんな花が似合うかな? さっきはオレンジだったから、今度は黄色?
 大好きな美術の授業を思い出しつつ、椛はアウラと共に瞳を煌めかせる。
 色が増えていくのは、こんなにも楽しい事。嬉しい事――と、そこへ。
「これって、なかなか楽しいわね!」
 フェアリーサイズのペンキ缶を抱えたハーモニアが、神楽耶と椛たちの頭上を飛んだ。
 えぇいと勢いよく撒き散らされた色は、もちろんライラック色。
 どうせなら、楽しく、豪快に!
 ペンキの雨を降り注がせては、また酌みに戻り。きょろきょろと辺りを眺め、『ここ!』と決めた場所まで一気に翔んで、お気に入りのライラックを空まで染め上げる勢いでぶちまける。
 まるで空にライラック色の虹がかかるよう。
「負けてはいられませんね?」
「そうだね! もっともっと、楽しんじゃおう」
 降り注ぐペンキを器用に躱しながら、椛と神楽耶も声を弾ませ、思い思いの色で世界を彩っていく。

●色・色・色・色
 ごーん、ごーん、ごーん。
 高い塔の天辺にあるまぁるい窓が開いて、時を告げるホログラフの天使たちが躍り出す。
 さらさらと降り落ちてくる祝福の粒子たち。きっと本当は金色なのだろうそれさえも、今は黒。
 自分の髪に積もった黒を指先で掬い取り、サン・ダイヤモンド(f01974)はしげしげと眺める。
 ――黒は、好き。ううん。黒が、好き。
 サンにとって『黒』は、大好きな人の色。
(「でも……、なんだか。この黒は……?」)
 指先を穢す色は好ましく感じられずサンは考え込み、お日様色の瞳を街並へと向け『違い』に気付く。
 ここの黒は、息が詰まりそうな黒なのだ。
 ――ちがう、ちがう。あの人の、黒は。もっと、ずっと。優しい。
 同じ黒でも本質が異なるだけで、こんなにも変わる印象。しかし納得できてしまえば、曇りかけていたサンの表情も明るく輝く。
 かつん、と。
 鋭い爪が伸びる足で、サンは漆黒に塗り潰された模造レンガの道を駆け出す。
 くるり。
 大きな二枚翼をばさりと広げ、ふさふさの尻尾を振り回し。黒い街全体を抱きしめるみたいに、両手を伸ばして。
 時計塔の壁一面に、サンは空を描き始める。
(「それから、それから」)
 青い空が出来上がれば、次は地面。躍らせていた尻尾をインクに浸し、ぱっと鮮やかな緑を一帯に振り撒く。それは光を浴びて煌めく草木。
(「えぇと、次は。次は――」)
 外を知って間もないサンにとって、色の源は塒の森。その細部までを思い出し、なぞり、サンはモノクロームな人工都市を豊かな自然の森へと変えてゆく。
 揺らめく川底。転がる角の取れた石に、合間を泳ぐ魚。それら全てを包み込む、柔らかな水の色。
 舞い散る木の葉は、一枚一枚形を変えて。
 あたたかな毛並の動物たちは、息遣いまで感じられるようにゆっくり時間をかけて。
 様々な色を、悩んで、考えて、とっかえひっかえ。
 一つ色が増える度に心が躍る。黒が好きなのには変わりないけれど、やっぱり世界には様々な色が溢れている方が楽しい!
「これは、雪」
 一面の銀世界を作り上げると、今度はカラフルな小鳥たち。至った春は、恋に色付く季節。
「これは、林檎」
 今にも齧りたくなるような真っ赤は、大好きな林檎。
「それから、それから――」
 さらりと翼にとっておきのインクを刷いて。風吹かすみたいに羽搏くと、そこは一面の花吹雪。
「……うん。これも、大好き!」
 黒を消し去る花色に、サンの頬も同じ色に染まる。だってその色は、大好きなあの人の瞳の色。

「おもしろい、よね」
「ふむ、そうだな」
 小柄な少年と、巨躯の男。真っ黒になった時計塔の内部で、偶然出会った海月・びいどろ(f11200)とジャック・スペード(f16475)は何やら頷き合う。
 それはびいどろの気付きが理由。
 世界には様々な色がある。それこそ、無数に。しかし全部混ぜると、黒になるのだ。
「でも。重ね合わせるなら、十人十色」
 ごちゃまぜにしてしまえば消えてしまう個性も、重ねてゆけばそれぞれが特別になる。
 混ぜる、と、重ねる。
 似て非なる二つは、導く運命も対極。電子の妖精であるびいどろと、ダークヒーローであるジャックの差異くらいに。
「じゃあ、ボクは。床を塗るね」
「俺は高い部分を任されよう」
 一頻り、塗り終えたら。合流するのは、街全体を繋ぐ地下通路。きっとそこも黒でいっぱい。
 自分の倍はありそうな男が時計塔の天辺まで続く螺旋階段へ走っていくのを見送り、びいどろは電子の声でするりと唱えた。
「――オペレーションを開始します。全隊に告ぐ、前へ進むよ」
 ぽ、ぽ、ぽ。
 何もなかった虚空から、びいどろの求めに応えた機械仕掛けの海月たちが飛び出して来る。
 順序良くそれぞれの色に光る海月たちはクリスマスの電飾みたいで、喚んだびいどろ自身も思わず笑み崩れてしまう。
「……準備は、いい?」
 オーケストラを操るタクトのように、びいどろはバケツを抱える。
 すると海月たちもゆらゆら揺らめく触手で、ぴぴっと小型のバケツを抱え上げる。
「それじゃ、始めよう」
 ――ばしゃあ。
 ――ばしゃあ。
 ――ばしゃあ!
 躊躇いなく、バケツをひっくり返すびいどろと海月たち。バケツの中でたぷたぷしていたあおい海たちは、あっという間に時計塔の床に広がってゆく。
 ――ばしゃあ!
 ――ばしゃあ!!
 ――ばしゃあ!!!
 海月たちの数だけ、色が溢れる。
 そしてただバケツをひっくり返しているだけなのに、踊り出したくなるくらいに楽しい。
 ばしゃ、ばしゃ、ばしゃ、と。
 撒き散らす青、蒼、碧。
 跳ねる飛沫も、青、蒼、碧。
 顔にも飛んで、手も染まって、足元もびちゃびちゃ。
 しっちゃかめっちゃかになりながら、けれどびいどろの喉を震わせるのは、弾む歓声。
「さぁ、まだまだいくよ」
 すっかりペンキ塗れになった海月の兵隊たちを率いて、びいどろは地下通路へ続く階段目掛けて走る。
 ぺたぺたぺた。
 残る足跡までも、海の色。
 当然、そこは猟兵たちの陣地。

 はしゃいで転げ回る子供の声を階下に、ジャックも黄色いインクを構えた。
 果てなる宙で潰えたと思った『命』も、巡り巡って温かな心を鋼の身体に宿し、今に在る。
 数奇な運命だ。
 されど今は世界を救う、立派なヒーロー。ニヒルに構えた、ダークサイド側ではあるけれど。
「では、開始だ」
 何色にすべきか迷った末の選択は、黄色。気分を明るくすると聞いたことがあるから。
 クールであるようにみせかけて、その実ジャックは負けず嫌い。誰よりも多くの黒を真夏の太陽色に染め上げる為に、全身をつかって黄色をあらゆるところへぶちまける!
 同じ鋼でありながら、奇天烈な構造ばかりのキマイラフューチャーは、なるほど明るい色の方が似合いだろう。
 金の眼であらゆる黒にターゲットをロックオン、即座に黄色を放って、闇を祓う。
 豪勢なシャンデリアへは、噴霧で。
 壁一面の幾何学模様的な凹凸へは、大波のように浴びせかけ。
 長く続く螺旋階段へは、滑って転ばぬように少しだけ気を遣いつつ。
 ジャック自身、決して黒も嫌いではないけれど。
 世界がカラフルに成って行く様は――。
「なんというか、タノシイな」

●足止めカラフルタイム
 カイム・クローバー(f08018)にとって清川・シャル(f01440)に動きを合わせるのは、そう難しいことではない。
 全ての意識を彼女に注ぎ、彼女がやりたいだろう事に想いを馳せる。
 すると体が自然と動くのだ。生憎と心の機微までは読み切れないので、いつも彼女の琴線を余計に引っ掻いてしまうわけだが。
「やっとアタシの前に現れたのね!」
 黒の中心地に立って、ちらちらと此方へ曰くあり気な視線を放って来るアヤカへ、シャルはこれみよがしに肩を竦めてみせる。
「確かに。貴女の服飾センスは好きですよ」
「ほらほらほらああ!!」
「けど貴女のピンクより、シャルの桜色の方が可愛いのです!」
 ――だよな。
 きっとそうなるだろうと思っていた通りの展開に、カイムは桜色のペイント弾をシャルへと手渡す。
「ありがとう!」
「ま、これくらいはな」
 謎の理屈だが、一定以上の黒を自分たちの色で塗り潰せば、こちらの攻撃がオブリビオンへ通ることは理解した。
 だから――。
「先、行くぜ」
「え?」
 花盛りの笑顔を置き去りに、一足早くカイムは黒の中へ駆け出す。
(「真っ黒な世界なんて、粋じゃねぇ」)
「オレがこの世界を極彩色に染め上げてやる」
 銀の髪を靡かせた男はけらりと嘯き、軽やかな跳躍の合間に二丁銃へと赤と青のペイント弾を装填する。
 されどこれだけでは極彩色には物足りない。故にカイムが、着地の間際に軽やかに唱え上げた。
「仕事の速さと手数は二倍! ……ちょっと煩いのが偶に瑕だがな」
「ハァ、煩いのはそっちだろ?」
 アヤカが立ったステージへ舞い降りたカイムは、気付くと二人。現れたドッペル・ゲンガーは不敵に笑い――紫の視線を交わした直後、全く同じモーションでアヤカの足元へ銃口を火吹かせる。
 立て続けに放たれた弾丸が、オブリビオンの足元でぱちんと弾けた。ある所は赤。ある所は青。またある所は混ざり合った紫。
 そしてドッペル・ゲンガー側は緑と黄。更に混ざり、濃淡様々な色を無数に生み出していく。
 染め上げられる極彩色に、アヤカの表情が胡乱に曇る。
「ちょっと、アタシの邪魔。しないでくれる?」
 ――もっと、ちゃんと。アタシのことを構いなさいよ!!!
 手にしたスマホを重火器へと転じさせ、アヤカが構える。が、重火器とくればシャルも十八番。
「カイム、先走ったらダメです」
 男の甲斐性に気付かぬ少女は、未来の鬼嫁ぶりを発揮し年上の男をぴしゃりと叱責し。その勢いのまま、イケてるピンク色のアサルトウェポンから先ほど受け取ったペイント弾を射出する。
 中空で、二つの弾がぶつかり合う。
 オブリビオン側は、屠る力をもつもの。対するシャル側は、ただ彩を添えるだけのもの。しかしここの勝負は負けて良い。何故ならこの弾は、爆ぜてからが本番。
「わーい、桜色ですよー!」
 ぱたぱたと降り注ぐ桜色の雨に、シャルのテンションは急上昇。黒を上塗りされたアヤカの気分は急降下。
「アンタ達、許さないわよ!」
「許されようが、許されまいが。俺らがやることに変わりはないぜ」
 おそらく、撒いた色は一撃分には事足りる筈。
 直感で悟ったカイムは翼持つ狼が姿を変えた大剣でアヤカへ斬りかかり。その後方でシャルは召喚型の音響機材をステージへと招く。
 インカム、アンプ、スピーカー、etc.
「戦場に響きし我が声を聴け!」
 増幅された声が、物理の力となってアヤカを襲う。
「……やってくれたわね? いいわ、遊んであげる!」
 されどすぐさま体制を整えたアヤカは、これみよがしな可愛いポーズを見せつける。
 手数の多さはオブリビオンが上。
 だが二人でなら、他の猟兵たちが世界を染め上げる時間を稼ぐくらいはきっと出来る。
「ねぇカイム―、シャルとアヤカさんどっちが可愛いです?」
 ペインティングと攻撃と、回避と防御と。幾つもを織り交ぜながら投げられたシャルの凄みある笑顔の問いに、カイムは「当然」とさらりと声を投げ返す。
「シャルの方が可愛いに決まってるだろ……おい、頬の所、血がついてるぞ……?」
「えー、そうですかー? ふふ、きっとアヤカさんの返り血ですよ☆」
「ちょっとちょっと、だから二人の世界を作るのは許さないってば!!! アタシのことを構いなさいってばーー!!!」

●ストラテジー・ゲーム
 何かのモチーフらしい巨大な絵筆を拝借し、『ライム』はウサギのように跳ねつつ明るい緑を街へ撒く。
 大胆なようで緻密な筆さばきは、風を思わす軽やかさ。
 少女はきゃらきゃら愉し気な声をあげながら、目に留まる黒という黒をキラキラへと塗り替え続けていた。
「ライム、ちゃんとお仕事してるの♪」
 真っ黒だった女神の像を自分の色に染め上げて、『ライム』は次の得物を探して颯爽と街を駆ける。

 蹄が、黒い石畳に高らかに歌う。
 水色に輝く一等星の名を持ち、サファイアの星を鬣に飾る麗しの白馬。それに背筋を伸ばし騎乗したステラ・アルゲン(f04503)は、筆の穂先を結わえた月の力を宿す金の長槍を軽やかに繰る。
「生憎と、黒色は私の好きな色ではないのです」
 鉄隕石から作られた流星剣に宿った魂は、女の性を得て、しかし剣であった時の持ち主を真似て凛然。
 後ろで一つに結った、スピカの毛並と同じ色の髪を箒星のように翻し、男装の麗人は白い頬に微かな紅を刷いて闇色の街中を疾く駆け征く。
「なので、ささっと色を塗り替えてしまいましょうか!」
 戦場で敵を薙ぎ払うのと同じ要領で、ステラは槍を薙いだ。すると穂先に沁み込まされた白銀と青が舞い散り、世界に彩を添えてゆく。
 まるで夜空に星が瞬き出すようだ。
 細かに飛び散る色は、ステラの色であり、かつての主の色。
 壁に、地面に、街路樹を模したオブジェに。ステラは冴えた星々を目覚めさせる。
 全ては戦いの応用だ。編んだ風を槍に沿わせ、時には遠くまで色を散りばめる。かと思えば、神速の一閃で銀河を描き出し。
「さぁ、オブリビオンの元までも星を届けましょう」
 ステラは人馬一体となって、黒く沈んだキマイラフューチャーに清風を呼び込む。

「だんだん賑やかになってきましたね」
 無人のゴンドラが回る観覧車。その中ではなく屋根にのんびりと腰を下ろし、クロト・ラトキエ(f00472)は街全体を見渡す。
 黒が大半を占めていた街並は、随分と彩に溢れてきた。
 成しているのは無論、猟兵たち。そして猟兵たちがアヤカの妨害を受けることなく色を振るえているのは、彼女を抑えている恋人たちがいるから。
 はてさて自分もそちらに加勢しようかと思いもしたが、今は混ざるのは野暮というもの。
 それにまだ様子見の頃合い。
 と、優雅なのか、怠惰なのか。いずれとも知れぬ眼差しを周囲へ遣る男は、ふと対角のゴンドラに一人の少女の姿を拾う。
「おやおや、似た考えの方がいらっしゃいましたか」
 距離があるが故に、少女の細かい造作までは分からないけれど。戦に長けた気配だけは、何故だか感じ取れた。
 彼女の名は『クリムゾン』。
 トリノが生み出したもう一人の自分であり、異なる人格の持ち主。
 開いた左の眼に落ち着いた色味の赤を宿す少女は、虎視眈々と機を計る。

●色の守り人青年と、おしゃまな少女と白熊と。そしてポンコツ少女と。
『ちょっとー! 可愛い可愛いあたしのこともっと構いなさいよー!!』
 放送回線をジャックしたのか。黒に埋もれたスピーカーから響いたかしましい声に、トトリ・トートリド(f13948)は「ぅ」と項垂れる。
 人との関わり合いをあまり得手としないシャーマンズゴーストの青年にとって、アヤカの言う『かわいい』とは未知の領域。
 そもそも、自然の気配が感じられないこの街の賑やかささえも、森に息う彼にとっては理解の範疇を超えるもの。その違和感はトトリの髪で寛ぐ小鳥たちも感じているのだろう。ひょこりと顔を出しては周囲を覗き、ぴゃっと隠れてしまう。
「でも、このままは。きっと、よくない」
 視界を埋める『黒』に、トトリの内側にまでもやもやが忍び寄る。だが、彼の心に鈍色が差すより早く、はしゃぐ雪の音色がトトリの耳を、思考を和ませた。
「見て見て、トトリとおんなじ。おっきなローラー!」
 またがっていた白熊――ソルベの腹の下へ潜り込み、隠しておいたペイントローラーをチロル・キャンディベル(f09776)は、うんと背伸びしてトトリの顔の高さまで掲げて、にぱり。
「チロはね、葉っぱの色にするの! でね、でね……」
 トトリの視線を釘付けにした少女は、今度はソルベの元へ戻ってしゃがみこみ。とびきり華やかなピンク色のインクを、白熊の足へと塗り始める。
 多分、ソルベの足跡で黒を塗り替えようとしているのだ。
 大きな肉球スタンプは、さぞやかわいいものになるに違いない――そう察しはしても、ソルベは嫌がりはしないだろうかと、トトリはほんのりおろおろ。けれど何処か誇らしげなソルベの様子に、なるほどと胸を撫で下ろす。きっとソルベも、カラフル部隊の仲間に加わりたいのだ。
「ほら! こうしていっしょに走ったら、葉っぱとお花でいっぱいになるの」
 準備を終えて、えへんと胸を張るチロルに、トトリもこくりと首を縦に振る。
「ローラー、お揃い。ちょっとうれしい」
 口数少なく、択ぶ言葉も素朴だから。感情の顕れは分かりにくいけれど。トトリの歓びが伝播したかのように、身を顰めていた小鳥たちもぴちゅぴちゅと囀り始めている。
「一緒に、頑張ろう」
 決意に代えて、トトリは担ぐペイントローラーをぐっと構えた。
 チロル、ソルベ。二人を色にするなら、どんな色がいいだろう?
(「白、ソーダ色、春の……わかばの色?」)
 戦う事は決して得意ではない。されどこの戦いは――皆の様々な色に出逢える戦いは、少し楽しい。
 忍び寄りかけた鈍色は既に遠く、トトリの心は命に目覚めた春色に染まる。そしてその想いの儘に、トトリはペイントローラーを空へと走らせた。
「……、芽吹け」
 チロルも、ソルベも。みんな、みんな。楽しくいられますようにと願いを込めて、マラカイト色の魔法の絵の具を放射状に放つ。
 さながら、命の雫が雨となって降るよう。
 芽吹いた魔法の蔦は、鮮やかな色となって黒の世界を伸びてゆく。
「すごいすごい!」
 広がる緑の葉たちにチロルの若葉色の瞳はキラキラ。帽子に入りきらない狼の耳はピンとたち、ふさふさの尻尾もぶんぶん揺れる。
「トトリなら、せかいを緑色にできそう!」
「チロルも花、咲かせてみて」
「うん! チロも負けないの。ね、ソルベ」
 ソルベに飛び乗ったチロルは、何処までも伸びる緑を追って駆け始めた。
 常緑に、初々しい黄緑の葉々が寄り添い、その足元には点々とピンク色の花が咲く。
 がなり立てているスピーカーから聞こえる筈のけたたましい声に心を騒がされる事は、既にない。

 色を塗るだけでいいのだ。
 何て簡単なお仕事だろう――だ、なんて。ついさっきまでのユニ・エクスマキナ(f04544)は確かにそう思っていた。
 け、れ、ど。
『かんたん、かんたん♪』
『ユニも頑張っちゃうぞ~!』
 なんてご機嫌なメロディを口遊んでいたのは、自分に搭載されている機能を確認する為に分厚いマニュアルを取り出すまでの話。
 塗るなら一気に、どばぁと!
 いい方法ないかな~なんて今どきアナログ極まりない紙の頁を捲り始めてしまったが最後。黒に塗り潰された遊園地の片隅で、四人乗りのゴーカートに背を預けて座り込んだユニは、一人百面相を繰り広げる。
「ええええ……ユニってこんな機能があったの!?」
「うっそ、これってエラーだったの?」
 読んでも読んでも読み切れないマニュアルは、開く度にユニに新鮮な驚きをくれるもの。いや、性能くらい自分で把握しておくべきなのかもしれないが。それは、中身が型式遅れのユニにとっては不可能なのだ。
 ともすれば、その事実を重く捉えてしまう者もいるだろう。
 しかし溢れんばかりのチャレンジャー精神を持つ彼女にとって、毎日が冒険。思考回路をくよくよに割く余裕があったら、好奇心に身を任せて飛び込んでしまう方がずっと楽しい。
 ――とはいえ。
「……え?」
 とす、とす、とす。
 いつの間にか迫っていた獣の足音。湿り気を帯びた鼻先を頬につんと押し当てられて顔を上げたユニは、仲良しの顔にぱちぱちと苺色の瞳を瞬かせた。
「やっぱりユニだ!」
 そうする間にも、ソルベの背を滑り降りチロがユニの傍らにすとんと着地する。
「ユニもたくさん色をぬってたの? でも、ここはまだ黒いね」
「!! ユニ、しまったさんなのね!!」
 きょとんとチロに首を傾げられ、ユニはようやく我に返った。そうだ、色塗りバトルをするんだった。すっかりすっかり忘れてた!
 ぽつんと足元に残されたピンク色のソルベの足跡に目を遣り、ユニは慌てて立ち上がる。
 だが、やっぱり。ユニには落ち込んでいる暇はない。
「失敗、失敗。いまからでも、間に合うかな~?」
「だいじょう、ぶ。まずはこの辺りを、いっしょに」
 はい、どうぞ――と。
 チロの親し気な様子から、「きっと、いい人」と判断したのだろうトトリから、ペイントローラーを手渡されたユニは、ぱぁと顔を輝かせる。
「ありがとうなの! まずはこのゴーカートをユニ色に染めちゃうおう」
 ユニ色と言えば、苺だったら甘くて、薔薇だったら艶やかで瑞々しい赤。
「ばばーんと世界が明るくなっちゃうのねー!」
 ユニには少し重いペイントローラーを、えいっと転がし、瞬く間に鮮やかな赤が黒を塗り替える。
 細かい部分に黒が残っているのは、気にしない。
「さぁ、ばんばん行くのね!」
 ユニ色に染め変えたゴーカートに乗り込み、ハンドルを握ったユニは、チロとソルベと、トトリを同乗者に誘う。
 街はまだまだ黒で溢れている。
 けれど三人と一頭で回れば、きっとたくさんたくさんカラフルに塗れるはず!

●四季と、雨と、空と
 ――神の世、現し臣、
 花の香りを含ませた袱紗を、都槻・綾(f01786)は懐よりひらと取り出す。
 ――涯てなる海も、夢路に遥か花薫れ、
 馴染む帛紗と比べれば、少々大判の柔らかな布は、綾の祝詞に応えて幾枚にも幾枚にも姿を写し、それぞれに彩を含んで星さえ燈らぬ黒の世界を踊り出す。
 まずは、一斉に綻ぶ春色を。
 次いで、日差しの煌めく夏色を。
 更に、暖かなあかりの秋色を、白銀に眩い冬色を。
 自然の温もりは忘れ去られ、今は色まで失った世界に、綾が思い描いた通りの四季が豊かに咲いてゆく。
 花吹雪は優しく棚引き、白むほどの陽光は向日葵畑を浮かび上がらせ、薪がくべられた暖炉は子供がはしゃぐ団欒を、深々と降り積もる雪は六花となって。
 下地となるのは、綾の魂色たる青磁の地色。
 落ち着いた色味に、風光明媚さはいっそう際立つ。造り物だらけの都市へ、混じり気のない命が芽吹くようだ。
 しかし自らが華やがせる彩よりも、同胞の笑みが綾の心に明るい旋律を響かせる。
 これも一つの戦いの筈なのに、見かけた顔は無邪気な幼子のよう。非日常に多くのしがらみを忘れた様子は、どんな色より鮮やかであり輝かしい。
「きっと、あっという間に飲み込んでしまいますね」
 千差万別な彩は、まさに色の洪水。躯の海から戻った、褪せた色の塊なぞものの敵ではないと、綾は朗らかな笑みを口元に刷いて走り出す。
 ――嗚呼、面白い。
 いつもなら眉を顰められるだろう色遊び。全身で味わう歓喜に、足取りは跳ねる。
 広い場所には思い切り、見つけた隙間には秘密を仕舞う様に。
 駆けて、跳ねて。
 綾は黒という黒へ、彩を置いてゆく。

 果たしてあのオブリビオンは、人物までも黒く塗り潰してしまうのだろうか?
 闇のような黒の中、唯一の色は自分であることを好しとするような性格だ。十二分にあり得る事態に泉宮・瑠碧(f04280)はむぅと眉根を寄せた。
 色とは、互いに引き立て合うもの。
 黒ばかりでは、アヤカが望む結果にならない可能性もある。
(「色彩も、構うも。程度の問題だろう――」)
 余所見は許さない、だとか。アタシ以上に可愛い子がいるはずないじゃん、とか。街に設置されたスピーカーから聞こえてくるアヤカの言い分諸々に、瑠碧は堪らず蟀谷を押さえた。
 瑠碧には、アヤカのように振る舞うことは出来ない。
 他者を貶め、自らを高めようとも思わない――それが誰かを守る為の戦いであるなら話は別だが。
(「自由奔放の権化とでも言うのか?」)
 外見年齢的には近い年頃だろうオブリビオンを、瑠碧は憎み切れぬものとして捉える。せめてその命の終焉が、そこより先の旅路が、寂しくないものになるよう祈るくらいには。
 けれど、その段に至るまでにはまず黒を彩に変えなくてはいけない。
「……ここなら、大丈夫かな」
 首を左右に振って、周囲の状況をよくよく確認し。余人の――猟兵仲間も含む――気配がない事を瑠碧は確認すると、海を閉じ込めたような宝玉を戴く精霊杖を高く掲げた。
「水の精霊、風の精霊……存分に遊んでおいで」
 柔らかな瑠碧の呼びかけに、二種の精霊たちが呼応する。
 宝玉を中心に渦巻いた彼ら彼女らは、瑠碧が手にした小瓶の中身を掬い上げると、瞬く間に空の高みへ翔け昇っていく。
 そして――。
 ざぁ、と。
 雨が、降り始めた。
 空よりも薄く淡い青に色付く雫は、街の至る所を瑠碧そのもののような彩へと塗り替え始める。
 高く、高く、空高く。精霊たちが喜び昇った分だけ、広範囲へと降る色の雨。他者を巻き込まない配慮をしたのは此の為だ。だから尚更、精霊たちは自由に、奔放に、美しい雨を地上へ注ぐ。
 ユーベルコードとして起こした現象だ。目標を攻撃する力もある雨を、瑠碧は軒下に駆け込んで見上げる。
「……ふふ」
 街中の澱が洗い流されていくような光景に、自然と笑みが零れた。
「まぁ。黒い個所は塗り潰すべし――だしな」
 不思議と弾み始めた心の儘に、瑠碧は掌の上に彩の水珠を作ると、雨の届かぬ隅へ目掛けて「えいっ」と放る。
 収めるべき範囲や、不可侵の方向を示す必要も無い、力の使い方は何故か幼子の頃の全力を思い出させるようで――実際のその頃の瑠碧は、森の巫女として幽閉されていたのだけれど――、瑠碧は次から次へと水の珠を結んでは、心の赴くままに黒を優しい色へと上描いていく。
 地上を、屋根を、オブジェを、様々を。染め変える雨の降り際を、野暮ったい眼鏡で見上げた空廼・柩(f00796)は「へぇ」と頷き「それなら」と鮮やかな――しかも飛び切り――空の青を選ぶ。
「これが俺の一番」
 灰染めの髪に白磁の肌。そんな柩がようやく手に入れた彩が、青。例え仮初めであろうとも構わない彩を、柩は黒い世界へ盛大にぶちまける。
 道具を使うなんて、まだるっこしい。
 蓋を開けただけのペンキ缶から、勢いよく、ド派手に。
 やるからには徹底的に、序に無遠慮に。街中を塗れというのがオーダーなのだ、気遣い無用の無礼講。
 普段であればエナジードリンクが心の友の身体も、今日に限っては妙に軽い気がする。
「……やばい。結構、楽しいかも」
 笑みを象りそうな口元を、ペンキで汚れた手で隠し。しかしそんな配慮も要らないのだと悟った男は、人造物の街路樹へ、地面へ、建物の壁へ、あらゆる黒へ真夏の青を撒き散らす。
 柩にとっての戦闘服であるよれよれの白衣が汚れることにも頓着せず。勢いつきすぎて、息があがるのも構わずに。
 没頭し過ぎて、オブリビオンの存在さえも忘れていそうだが。
 そこのところは大丈夫。ユーベルコードが使えるようになったら、本気を出す――多分。

●リミット・シグナル
 黒だって、厭うものではない。
 しかし。
 新緑、陽光。
 犬、猫、鳥――星に花に、空。
 世界に溢れる無数の色を。鮮やかな彩を、全て黒に塗り潰してしまおうというのは頂けない。
「と、いうわけですので」
 疲弊したカイムとシャルから場を引き継いだクロトは、膨れっ面のアヤカへ無駄に爽やかな笑顔を向ける。
「少々、お相手頂けますでしょうか? 可愛らしい、お嬢さん」
 きらり眼鏡の端を煌めかせると、同じくファッションメガネをかけた少女がふんと鼻を鳴らす。
「お相手も何も、もうとっくに始めちゃってるじゃない! 何よ、この女。ウザいんですけどぉ!」
 言いながら、数多の気を惹くオーラをアヤカは放つ。だがそれはクロトへではなく、クリムゾンの左目を持つ少女。
 鳥の尾羽を思わす長いリボンを腰からなびかせ、薔薇咲く可憐な靴で黒い地面を蹴って、楽器を奏でるのが似合いな繊細な指先を仕舞いこんだ拳でオブリビオンへ殴りかかった少女は、襲い来た歪な誘いにぐらりと視界を回す。
「さぁ、続けていくよぉ! ほぅら、可愛いでショ?」
 続けて繰り出す、手でウサギ耳を象るポーズはあざとカワイイ。だがその形が完全に成る前に、クロトはアヤカの背を炎弾で強かに打ち据えた。
「ちょっ、後ろからってズルくない?」
「ええええ、此方を向いて頂きたかっただけなんですけど?」
 ぶぅとクロトが唇を尖らせてみせると、アヤカはまんざらでもない顔つきになる。
「なぁんだ。アタシの魅力。ちゃあんと分かるヤツも居るんじゃない」
 仕方ないなぁ、とアヤカが笑う。
 直後、ずるりと内側を掻きまわされる不快な感覚に、クロトは茶化す笑顔のまま奥歯を噛み締めた。
 命を、吸い上げられた。
 不意に重さを増した体が、その事実をクロトへ教えている。
 けれどすぐさま膝をつく程でもない。これがアヤカの攻撃力だとすれば、時計の長針が60°傾くくらいは耐え切れるだろう――無論、そこに『クリムゾン』の戦力も計算に入れてだが。
「――まぁ、十分ですよ」
 張り巡らせた鋼の糸でアヤカの足元を攫い、僅かにバランスを崩させた隙をついてクロトはオブリビオンとの距離を取る。入れ替わるように、『クリムゾン』が無言でアヤカへ蹴りを見舞う。
 鑪を踏んだアヤカは、スマートフォンへ唇を寄せる。
「もうもうもう! もっと丁寧にアタシに構いなさいよー!」
 炸裂した不満の叫びが、街全体へ響き渡った。

 おそらく時間にすれば5分程度。
 されど密度の濃い攻防に『クリムゾン』の息は既に上がり、鋼糸を操るクロトの腕にも疲労がたまりつつある。
 ――が。
「なんかもう、アンタ達には飽きちゃったんですケド」
 格上であることを自負する少女の、飽いた素振り。見せつけられた余裕を、クロトは逆手に取った。
「――え、」
「少し拝借しますね?」
 攻防は一瞬。指先の延長である自由さで操る鋼糸で、アヤカの手からスマートフォンを奪った男は、三日月型に唇を吊り上げ、マイク部分へ目論見を落とし込む。
「街中の猟兵の皆さんへお報せです。街はもう十二分にカラフルになったようですよ」
「!!!!」
 1発、2発。慎重に発動させていたユーベルコード。自らは一切の色を置かないことで、クロトは力の満ち具合を読み。そうして鬨の声を告げたのだ。
「アンタ、よくも――」
 加速したアヤカの突進を『クリムゾン』が防いでくれるのに感謝しつつ、クロトはくくと喉を鳴らす。
「確かに貴女は可愛らしい。けれど他をディスるのはノーグッド! 向上より排斥を選んだ時点で、貴女の『カワイイ』は地に落ちた」
 ――それって構う価値、本当にあります?
 鋭利な舌鋒に、オブリビオンの貌がどす黒く紅潮した。

●さよならデコラティブ
 一帯を埋め尽くしていた黒の2/3は猟兵たちの手によってカラフルに塗り替えられた。
 それを知った猟兵たちはアヤカの元へ急ぐ。
「願いさえ斬り捨てる、我が剣を受けてみよ!」
 一番槍は、白馬を駆るステラ。
 速度を殺すことなくアヤカへ突撃し、優美な槍から苛烈な一撃を繰り出す。
「来たわね!」
 天翔ける一筋の流星が如き一閃に、アヤカの長い髪がばさりと散る。そして残された白銀と青に、オブリビオンは「アタシには似合わない色」と舌を打つ。
「果たしてそうでしょうか?」
 存分に遊ばせてもらった礼を兼ね、綾は歪んだ少女へ気付きを促す。
「存外、お似合いかもしれませんよ」
「ハアァ? アンタの目は硝子玉なの?」
 だが唯一自分主義のオブリビオンは、綾を温度のない一瞥で見遣る。
「硝子玉も、屈折で色をまた面白くするもの――そう捨てたものではありません」
 永きを経て魂宿らせた男は、時の残影の浅慮を窘めるようにふくふくと笑み、確かめる機会を与えんと誘眠の枝を差し伸べた。
「眠って、誰かの次なる攻撃で目覚めて、まみえた新しき色彩の世界は」
 ――きっと眩く美しいです。
 押し寄せた彩の波にアヤカの意識が攫われるのは一瞬。
 けれど確かに瞼を落としたオブリビオンは、再び開いた眼に多くの彩――自分を囲うほどの猟兵たちを見る。

「おねえさんのそのうさぎのぬいぐるみ、かわいい!」
 アヤカの元へ辿り着いたチロは、いの一番でオブリビオンが頭に乗せるうさぎのぬいぐるみに、きゅんっと胸を高鳴らせた。
「本当、かわいい!」
 気付いたユニも、ユニゾンで頷く。
「ちょっと、可愛いのはぬいぐるみじゃなくてアタシでしょ!?」
「チロもほしいの!」
「うん。ユニも欲しいの!」
「だから、アタシの話を聞きなさいって!!」
 別に、意識してアヤカを蚊帳の外へ放ったわけではない。純粋に、彼女に興味を持てなかったからだ。
 だって、チロルは黒はあまり黒が好きではない。
 チロルにとって黒は、寒くて悲しい色。
 そんな色で世界を染めるなんて、許せない。
「だから色を、かえしてね」
 すぅと一つ息を大きく吸い、意識を世界の端々まで広げ――水の気配へ呼びかける。
「ぜんぶの黒を、流しちゃおう!」
 途端、起きた巨大な波がアヤカを、立ち位置の黒ごと襲う。
「んもう! せっかくのアタシの引き立て役に何してくれるのよっ」
 洗い流された黒と、ずぶ濡れにされたことにアヤカは苛立ち、視線を奪う圧を全身から発する。けれどそれこそユニの思うつぼ。
「ばっちり見ました! もう1回再生しちゃうのねー!」
 髪の動き、首の角度まで。余すことなく写し取ったオブリビオンの力を、ユニは中空に展開させた無数のディスプレイから逆流させた。
 休む間もなく波を起こすチロル。支えるソルベ。自分に出来る全力で、アヤカに対抗するユニ。
(「これ、なんだ?」)
 懸命な少女二人と、白熊一頭。見ているだけで胸を温める熱に、トトリは惑う。
 知らない、もの。
 幸せにしてくれる、もの。
(「……これが、かわいいってこと――かな?」)
 間違っているかもしれない。でも、とてもしっくりくる『感覚』にトトリはぐいと前へ出る。
「小鳥さん達、少し隠れてて」
 チチチ、チチチと意思を交わし、トトリは少女たちを守る為に毒々しい色の前に立ち塞がった。
「ふたりの色は、消させない」
 思い切り薙ぎ払ったペイントローラーに、アヤカが帯びる色が変わる。

「猛獣たちの凄さ、見せてあげるんだから!」
 ――野生の力をご覧なさい!
 ハーモニアの招きの詞に、数体の猛き獣がカラフルに彩られた世界に顕現する。
 そうして、月が吼えた。
 否、そうではなく。ハーモニアが招いた猛獣たちが月を仰ぐような遠吠えのこだまは、敵を穿つ波となってオブリビオンへ襲い掛かる。
「ちょっ、アタシの声が聞こえなくなるじゃない!」
 耳をつんざく音の奔流に、アヤカはとっさに耳を塞ぐ。
 刹那の間隙を、すかさず神楽耶が突く。
「本当の『可愛い』というのは舞台なぞに左右されるものではないのです」
 しゃん! と。神楽鈴の清浄な音色で場の空気を己色に塗り替えた神楽耶は、黒塗りの鞘から結ノ太刀を解き放つ。
 直刃の文が、神楽耶の所作に舞う。
 舞って、閃き、アヤカに鑪を踏ませる。
「はぁ? ウザイんですけどぉ!」
 気迫で圧され、正論まで説かれ。アヤカは悪態をついてぶぅと頬を膨らませた。けれど、そういう態度こそ『カワイイ』の対極。
「そのような些末事を気にしている時点で可愛いげが全く足りません!」
 ぴしゃりと言い切られて、アヤカの口元がぴくりと引き攣る。
「っ、そ、そんなの、そっちの言い分じゃんっ」
「でもね、やっぱり闇の中にいるより。別の色の方があなたの可愛さを引き立ててくれると思うの――だから、ね。全てが美しく色付いた世界の中で、その赤に包まれていてね」
 プレゼントだよ、と。椛は季節を幾つか進めた秋色の風でアヤカの視界を覆う。
「もうっ! 邪魔くさい!!」
 赤、赤、赤。
 吹き荒れ、まとわりついてくる紅葉に、ユーベルコードを封じられたアヤカが地団太を踏む。

「ねえ、どうして?」
 猟兵たちの猛攻に晒される黒の主へサンは尋ねた。
「どうして? 闇の中にひとりぼっちなんて、寂しいよ?」
 純粋なサンの疑問に、然してアヤカは憤然と返す。
「はぁ? オンリーワンじゃないとアタシの本当の可愛さなんて伝わんないでしょ!」
 多くの中にあって自分を構って欲しいアヤカと、ずっと一人だったサンでは考え方の根本が異なるのだ。
「……そう、なのかな?」
 理解できぬ少女の言い分に、やはりサンは首を傾げ、この地を照らす光へ呼びかける。結実した光は、輝く雪となってアヤカの闇を暴く。
 明るい彩。
 闇の対極。
 己を翳ませる眩しさに、オブリビオンはぎりりと唇を噛む。
 されどそんな仕草さえも、愛らしく見えてしまって。長い長い地下通路を経てアヤカのお膝元へ顔を出したジャックは、双眼のピントをわざとアヤカからずらす。
 外見が可憐な少女であるせいで、ジャックは冷徹に徹しきれない。
 温かな『心』が苦しさを、訴えるのだ。
 ――しかし。 
「キミの、笑顔は。かわいい、けれど」
 共に駆けてきたびいどろが、海色の足跡を残しながらアヤカ目掛けて走っていた。付き従う海月の兵隊たちも、次々にアヤカ目掛けて襲い掛かる。
「無理に一番を決めては、ダメだよ」
 だが、ダメージを与える前に海の色を撒き散らして爆散させられる海月たちの姿に、ジャックも世界を救うヒーローとして腹を括った。
 構ってちゃんオーラなぞ、気合で抗ってみせる。
 小さな同胞たちが、そうあるように。
「援護する」
 素早く弾丸を装填し、ジャックはアヤカへリボルバー銃の照準を定めた。
 致命傷にはならなくていい。ただ、びいどろの道行きの援護になれば、それでいい。
 響く銃声に、びいどろも加速する。
「他の色に霞んでしまうのだったら、いっそボクの色に、染まって?」
 ……なんて。
 少し恥ずかしい挑発でアヤカの気を惹き、びいどろは最後のバケツの中身をピンク色の少女へ浴びせかけた。
「え!?」
 打撃が来る――そう信じていたオブリビオンは、頭から滴るペンキに驚きを瞬く。
「これ、攻撃じゃな――」
「本命は、こっち」
 後は、任せたよ。
 退いたびいどろの影から、ジャックの牽制のおかげで生き延びた海月の兵士たちがアヤカへ体当たった。
 道連れする攻撃に、鮮烈な爆発が起きる。
 直撃を喰らったオブリビオンの膝は、笑っていた。いや、きっと。もっと前から限界には近付いていたのだ。それだけ多くの攻撃に、アヤカは晒され続けてきたのだから。
「……確か、アヤカだっけ?」
 猟兵たちの色を浴び、元よりカラフルにデコレーションされたオブリビオンを柩は無感動に睥睨する。
「可愛いかどうかなんてどうでも良いけれど。本当に可愛い奴は、鮮やかな色の中でも輝くもんじゃない?」
 今のあんた、輝けてる?
 暗に含んだ皮肉に、アヤカの眉が吊り上がった。
「十分、アタシが一番可愛いデショ!? 輝いてるに決まってるじゃんっ」
「本当? そう思ってたら、世界を黒くなんてしなくない? つまり、そういう発想した時点で、ダメダメのまだまだだったってことだよ」
 鮮やかだと聞いていたキマイラフューチャーを闇色にしようとしていた少女の思惑を柩は言葉でも挫き、担ぐ棺を盾にアヤカへ一気に肉薄する。
「嫌よ、嫌よ!! もっともっと、みんなアタシを構うべきでしょ!!!」
 ウサギを模した靴が、ぬいぐるみが、スマートフォンが。アヤカの叫びに無数の火器へと姿を換えた。
 最期の全力が、来る。
 察した柩は、それでも止まらず。放たれた熱の嵐を棺で受け止め、ぐっと終いの一歩を踏み込む。
 火器には火器を。
 慈悲を呉れる心算は、毛頭ない。
「お邪魔虫は早々にご退場願おうか」
 懐に忍ばせてあるとっておき。扱いが得手ではないのは承知しているから。柩は零距離――銃口をアヤカの胸へ押し当て、引金をひく。
 銃声は、一発。
「良いわよ、いいわよ! ここよりもっとアタシのこと構ってくれる世界を探すんだからーー!!!」

 断末魔まで賑やかな少女――オブリビオンだった。
 きっと骸の海でも、賑やかなのだろう。
 アヤカの安らかな眠りを祈った瑠碧は、賑やかな極彩色に塗り替えられた街並にそっと水の色の双眸を細めた。
 けれど安寧に胸を撫で下ろすのは、まだ早い。
 バトルオブフラワーズはまだまだ前半戦。キマイラフューチャーを救う為の戦いは、まだまだ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月09日


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#キマイラフューチャー
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#バトルオブフラワーズ


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リサ・ムーンリッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト