1
バトルオブフラワーズ③~パワータイプ理系の侵略

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ


●うるせえ〇〇ぶつけんぞ
「ふふふ……ついに完成した!」
「我々の叡智の結晶がここに……」
「いくぞ勤勉なる怪人諸君! 今こそ我ら実験室トリオがこの世界の覇権を握るのだ!」
 小さな怪人たちが、キマイラフューチャーを侵略するため最強の兵器を開発した。その兵器は強固な金属によって築かれた防壁を尽く突破し、やがてこの世界の根幹である『システムフラワーズ』の防御の要、『ザ・ステージ』を掌握するまでに至る。
 瓦礫の山に立ち高笑いする彼らの手には、水鉄砲が握られていたのだった……。

●盲目な賢者たち
「――現在の状況はおおむねこのような形です」
 オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)は映像を停止する。グリモアベースに集まった猟兵達が目の当たりにしたのは、巨大スクリーンで放送される何ともコミカルな侵略劇。だがしかし、滑稽だと笑っている余裕はない。
 オブリビオン・フォーミュラによってキマイラフューチャーは危機的状況に立たされている。周囲を守る六つの『ザ・ステージ』の全てを奪還しなくては、フォーミュラの元へと辿り着くことはできない。更にこの『ザ・ステージ』には特殊な「ルール」というものが存在し、それに則った戦いを行わなくては勝利を掴むのは極めて難しいものとなる。
 今回挑むステージのルール、それは――『タワーダイセンリャク』と呼ばれるもの。押し寄せるオブリビオンを防ぐために戦場に転がる残骸から『防衛施設』を組み上げ、敵を防がなくてはならない。
 ――しかしこの映像によれば、敵オブリビオンは謎の兵器によって強固な金属の防壁や多数の迎撃システムを難なく突破し、『ザ・ステージ』を我が物としているのだ。
 『防衛施設』がなければ、如何に猟兵と言えど絶え間なくやって来る膨大な数のオブリビオンには勝てない。だというのに敵には『防衛施設』を破壊する秘策がある。
 ならば兵器を避ける為に移動型の『防衛施設』を作ればいいと言う猟兵もいるが、そうすると本来の目的である『防衛』に必要な耐久度が他の施設よりも格段に低下し、件の兵器を使わずとも普通のオブリビオンの攻撃によって破壊されてしまう。
 絶対に動じない固い守りを用意しなくてはならないというのに、相手はそれを崩してくる。まさに、八方ふさがりだ。
「……いえ、そうでもありません」
 重苦しい沈黙を破り、そう口火を切るのはオクタだ。再び巨大スクリーンに電源が点き、あるものが映った――それは、敵怪人『実験室トリオ』の構成員、フラスコ怪人の手にした水鉄砲の内部。揺らめき光る、橙赤色に輝く液体だ。

「敵の使う兵器の正体はとうに判明しております。その名も、『アルティメット王水』。ユーベルコードによって強化された、ほぼ全ての金属を酸化させ、溶解するこの液体こそ、彼らの強さの秘密で御座います。――タネさえ割れれば恐れる相手では御座いません。皆様のユーベルコードや知識、技量を以てすれば、かの兵器を破る事など容易いはず」
 山羊の言う通り、対策さえ講じていれば何一つとして恐れる事はない。戦場に転がる兵器は、技術水準的で言えば第二次世界大戦「以前」の物品。探せば、対『アルティメット王水』に適した素材はいくらでもあるはずだ。
 フラスコ怪人が何事もなく使えている以上、「ある素材」であればこの『アルティメット王水』の効果を完全に無効化できるはずだ。それに山羊の言葉にもその鍵はある、この兵器は、「ほぼ」全ての金属を溶かす、と。それ以外にも、何か方法があるに違いない。
「――真に賢者たるものは、世界の発展の為に力を用いるもの。彼らのように暴力的な力を矢鱈に振り回すものでは決してない。皆様の勝利によって、それが証明されることを心より願っております」
 オクタが慇懃に深々と頭を下げたのと同時に、キマイラフューチャーへのゲートが開かれる。今、「守る」ための戦いが、始まろうとしていた。


佐渡
●注意!
 今回敵は特殊な効果を持つ武器を使用してきます! 対処が不十分である場合失敗、大失敗の可能性がありますので、ご注意ください!

 パワータイプ文系の佐渡と申します。
 今回のシナリオは『防衛施設』を建設し、敵オブリビオンの集団を排除するものとなります。しかし敵は特殊な兵器を有しており、これにより金属製の防壁を容易く突破してくる難敵です。ですがオープニングに存在するヒントや皆様の機転によって、通常以上に容易く敵を蹴散らす事ができるようになっております。
 皆様の作戦を格好良く描写させて頂きますので、宜しければ是非ご参加のほどを宜しくお願い致します。

●※おねがい※●
 迷子を避けるため、ご同行の猟兵の方がいらっしゃる場合には同行者名、あるいはチーム名等目印をお忘れないようにして頂けると幸いです。
 またマスタープロフィールに御座います【シナリオ傾向】については是非一度目を通して頂くよう強くお願いいたします。
68




第1章 集団戦 『実験室トリオ』

POW   :    フラスコ怪人・ウェポン
【フラスコ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    電球怪人・ジェノサイド
【電球攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    バッテリー怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【バッテリー】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
灯璃・ファルシュピーゲル
化学兵器部隊といったところですか…中々厄介ですね

まずは「地形利用・情報取集」で防衛線周囲地形と
利用出来そうな物を選定

小高くなっていて防衛線を狙える位置に
軍時代の「戦闘経験・拠点防御」を活かして
手早く塹壕を掘って火点を準備

銀製の盾や武具とアンプロメット等のような
ガス圧簡易投射機に出来そうな物、それと
火炎瓶やガラス製弾体を材料等探して大量に用意し
うち幾つかには銀製品の破片を混入し破片爆弾を作っておく

銀製武具で簡易の防楯を形成し、「拠点防御」しつつ
コードで味方や敵の視界を利用し敵位置を把握し
「スナイパー・2回攻撃・誘導弾」で敵の先頭から
頭を抑えて進軍の足を鈍らせる様に砲撃し圧力を掛けます

アドリブ歓迎


バル・マスケレード
容器が必要な以上、なんでも溶かす液体はありえねェ。
つーわけでかき集めるべきは、ガラスかプラスチックだ。
素材をかき集め、装備した魔力の棘を用いて縛り、結合。
【ロープワーク】は得意分野でな。
棘を伸ばして遠くの素材も手軽に引き寄せられらァ。

……しかしガラスと棘の城って、えらくメルヘンな防衛施設になったな。
無意識に宿主の影響受けちまったか……。

さて……残念だったなチビスケ共。
強酸だろうがアルティメット王水だろうが弱体化できる。
そんな最強の代物が、コッチにゃァあるのさ。

その名も「水」だ。

そう。
液体なら、薄めちまえばいいのさ。
城の頂上に陣取り、UCでまとめて迎撃。
トッテオキの兵器ごと押し流されちまえッ!!


トリテレイア・ゼロナイン
たとえ星が二つに割れようと騎士としてやるべきことは変わりません
キマイラFに安寧を齎すため戦うまでです

さて、「アルティメット王水」への対策はどうしたものか
(フラスコ頭の怪人を見て)鍵を握るのは理科の実験ですね……

上から狙撃しやすいような壁状の防御陣地を構築しますが、その表面に王水で溶けない「ガラス」を使います
これで水鉄砲攻撃から陣を守ることが出来るはずです

ガラスは衝撃に弱いので接近されて打撃を加えられる前にUCで持ちこんだウォーマシンの●怪力で引く剛弓での●スナイパー技能を使った狙撃で水鉄砲の王水タンクとフラスコを撃ち抜いて砕いてやりましょう
周りに撒き散らされる王水は怪人の体にも牙を剥くはずです


ユーリ・ヴォルフ
アドリブ大歓迎!

次から次へと敵が現れるな
それだけこの世界が窮地に晒されているという事か
明るい癒しであるはずのこの世界を壊させはしない!

「酸化しない金属」は金銀が代表的だ
だが希少金属がこの場にあるだろうか…?
また王水を入れているフラスコ・水鉄砲はガラスもしくはプラスチックだろう
これらは飛行機等の窓部分を発掘しよう
金属以外ならば岩やレンガもこの場にあるなら使えそうだが

以上考えつく素材で防壁を作り
射程範囲に入った敵を片っ端から
『先制攻撃』からの【メギドフレイム】塵と化せ!
敵接近時は
そのような攻撃など、恐れるに足らず!
炎霆を構え『属性攻撃』風で『吹き飛ばし』『範囲攻撃』
『オーラ防御』を展開し被弾を軽減


千愛・万望
順当に考えれば…ふらすこの輩が扱えてるなら、硝子なら大丈夫ってところだわさ
さて、それにもうひと工夫しようじゃないの

硝子板を主材料に防衛施設を作る…だけじゃ少々脆かろ
更に、それだけじゃ用を成さないような硝子の破片も集めるよ

あーしは陰陽師。五行の使い
【地形の利用】をもってしての【属性攻撃】…というより属性利用
土を操り、硝子片を混ぜ込んだ土壁で硝子の防衛施設を補強しよう

王水だか何だか知らんけどね、“水”なんだろう?
だったら『土剋水』、が五行の基本だわさ

防御がばっちりならあとは、拠点防御ったら面の攻撃
さあ行きな、《月泳》!
式神爆弾による【範囲攻撃】の【一斉発射】で【吹き飛ばし】まくってやるさあ!



●溶けず落ちぬは銀と硝子の一夜城塞
「鍵を握るのは理科の実験……でしょうね」
「ああ、そうだな。容器が必要な以上、なんでも溶かす液体はありえねェ」
 『ザ・ステージ』へとやってきた猟兵達は防壁を築くために共闘を行う。その中で、最も最初に建設を始めた二人の猟兵の見解は一致していた。漆黒と純白、相反する二人の装いの猟兵達を始め、それぞれが防衛施設建設の準備を開始する。
 純白の鎧に身を包む御伽の騎士を思わす清廉なるウォーマシン、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は脚部スライサーを用い浮遊しながら、注意深くセンサーによって反応を探しつつ、彼と共に在る白馬型マシン『ロシナンテⅡ』に大量の素材を載せて運ぶ。
 ふと彼が後ろを見やれば、誰かが地面に蹲ってちまちまと何かをしている。どうやら彼が浮遊していたことによって無事に残っていた小さな欠片を集めているらしい。
「……何をしておいでで?」
「んぁー、まあ、あーしにも策があるのさ」
 トリテレイアの問いに答えたのは、こげ茶の髪に垢抜けない口振りの猟兵。袋に大量の欠片を集めながら、千愛・万望(誰が為に誰が為す・f17823)は胸を張る。彼女の「策」が一体どう言うものなのか、明かすことはなかったが、にんまりと笑いながら準備を進める姿は、獲物を待つ狩人のそれだ。馬に乗せるように、彼女は自身の式である翻車魚の背びれに袋をひっかけながら、ちらりと別の猟兵へと視線を向ける。
「ええ、このあたりが良いかと」
 彼女の視線の先に居たのは、軍帽に灰の纏め髪を仕舞いながらきびきびと集められた材料の運搬に指示を飛ばす傍ら、別の猟兵と防壁の建設地点や構造について相談を行う灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)。彼女が建設予定地として候補の一番に上げたのは、周囲に比べやや小高い場所。塹壕を掘るつもりあったが、銃火器を使用するもう一人の猟兵の意見にも従いその案は捨てた。しかし、大量に準備した簡素だが殺傷力の高い手投げ弾や榴弾にも、件の兵器に対する対抗策がふんだんに仕込まれている。
 一方建設の面で大きく活躍したのは、暗黒に消え入るが如き漆黒の衣装に目深に被ったフード、その下から覗くは『哄笑』を思わすヒーローマスク、バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)。彼は素早く周囲を見回しながら、素材同士を素早く繊細な手さばきで結び合わせ、瞬く間に板を、そして壁を、防壁を組み上げていく。
「ま、お前さんには負けるけど」
「? ――何か言ったか?」
 だが、バルの成果の大部分は基礎部分。高所での建設作業で大きく成果を出したのは、ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)。ドラゴニアンであることを活かし資材を大量に持ち上げ、浮遊しながら次々と組み上げていった。更に彼は炎を使い熱で溶接するため強度も高められる。中々普段はやらない大工仕事に鼻歌等歌いながら、どんどんと作業を進めていった。
 全員の持ち味を生かし、完成するは巨大な防壁。大きさもさることながら、その最も特徴的なのは……素材だ。
「かき集めるべきは、ガラスっつーわけだなァ」
「ええ、これで水鉄砲攻撃から陣を守ることが出来るはずです」
「私は銀も集めていた。これで強度の面も確保されることだろう」
「立地も良い、この短時間でこれだけの規模は完璧と言っていいのではないでしょうか」
「ふふ、まだ見えてないけどあーしの仕込みも完璧だわさ」
 銀と硝子によって作られたがゆえに、少々メルヘンチックな外観になってしまった事になんとも言えない感情を抱きながら、肩をぐるぐると回すバルと、淡々と確認を行い、問題なしと判断するトリテレイア。
 出来上がったものの完成度に満足気であるユーリ、そしてもし敵が攻めてきた時の事を脳内でシュミレーションしながら今度は猟兵の配置に思案を巡らす灯璃に、にやりとしながら自身の仕込んだ「策」の出来栄えに上機嫌の万望。
反応こそ違えど……これで、全ての準備は整った。バルは感覚で、トリテレイアはセンサーに映る熱源で、「波」の到来を察知した。
 ――防衛の、始まりである。

「ふはははは! 猟兵達の防壁など、我が【アルティメット王水】の前には無意味だ!」
「その通り! 我らの誇る究極のインテリジェンスの結晶ともいうべきこの力、見せ付けてやる!」
 身丈は小さいが夥しい数の手勢を従え、怪人『実験室トリオ』は現れる。表情は頭部の電球やらバッテリーやらフラスコやらで伺い知れないが、台詞や声色を聞く限りでは相当な自信に満ち溢れ、自分たちの兵器が敗れるなどとは一切思っていないらしい。
「いくぞ者ども、とつげk」
 ……それを、言い終える事ができない者が現れた、その瞬間から。余裕しゃくしゃくのムードは完全に失われる。フラスコ怪人の頭部と、その手にした水鉄砲型の兵器が砕け、中の液体が辺りに撒き散らされる。通常の王水もまた凄まじい毒性を持つが、ユーベルコードによって更に超常の力を備えたオブリビオン達の虎の子、【アルティメット王水】は当然猟兵だけでなく、オブリビオン達にとっても又猛毒だ。
「ぐあああああああ!?」
「くっ、まさか!」
 飛沫を上げたバッテリー怪人の頭部が溶け苦悶の声を上げる中、一切ダメージを受けていない電球怪人ははたと防壁の上へと視線(目はないが)を向ける。
「――命中確認」
「こちらも命中」
 防壁の最上部、建てられた櫓のような地点から的確な狙撃による先制攻撃を与えたのは、トリテレイアと灯璃。伏せながらその長大な馬上槍の如き形状をした狙撃銃で、正確にフラスコ怪人の持つ水鉄砲とフラスコ部分を破壊するトリテレイア。そして双眼鏡で命中を確認すると同時に、設置したガス圧式の簡易擲弾発射器で敵の陣中に弾を発射する。当然敵も迎撃しようとするが……硝子の弾の中に銀の破片を仕込んだ榴弾は、【アルティメット王水】を受けた所で撃ち落されることはなく、地面にぶつかると同時に激しい爆発音とともに肉片と器が破壊された事で飛び散った王水をブチ撒ける。
 武器と、限定的な怪人だけを攻撃しているだけ。榴弾に関してもまだ大群の数か所に撃っただけだというのに、敵の士気は見てわかるくらい如実に低下している。それだけ【アルティメット王水】に頼りきりだったのだろう。
「ひ、怯むな! 相手の防壁はガラス製だ、近づけば勝機はある!」
 王水の影響を受けにくいらしい電球怪人が、討たれたフラスコ怪人と味方の兵器で死に体のバッテリー怪人の代わりに音頭を取り、なんとか崩れかけた隊列を前線へと押し上げようと指示を飛ばす。
 どうせ退いても意味はない、死に物狂いで敵を打倒するしかない。あるだけの気概を振り絞って突撃してくる者達のなんと儚いものか。
 敵も学び、【アルティメット王水】を持ったフラスコ怪人を守るような陣形を作り、次々に防壁へと集まってくるオブリビオン達。狙撃や榴弾に王水では対抗できないとはいえ、バッテリー怪人のユーベルコードによって通常兵器は相殺され、じりじりと接近を許してしまう猟兵達。しかし……それもまた、一つの作戦だった。
「よぉ、お前ら! ご苦労だったな!」
 そんな中、堂々と防壁の中でも一際目立つ場所に立ち、寄ってきたオブリビオン達へ声を掛ける男がいる――バル・マスケレードは、あえて挑発的な言葉づかいで煽るように台詞を続ける。
「いやーにしてもとんでもねー名前だよな、安直にも程があるぜ、なんだ【アルティメット王水】って。ま、しゃあねえなァ、お勉強だけのぽんこつおつむじゃセンスのある名前なんて思い浮かぶわけねえもんなァ!」
 げたげたと笑い転げた演技に、怪人たちは憤慨し一斉に向かってくる。……だが勿論それこそが彼の狙いだ。
『来たれ水神』
 先ほどのオーバーに品の無い笑いから一転し、冷え切った声音で呟かれた一言と共に、怪人たちの頬に雨粒が落ちる。
 否。それは雨粒ではない。天を見れば、防壁の上から身を乗り出すようにして現る巨大な水の神の化身。その表情は一切の感情を感じさせず、ただ冷徹に怪人たちを見下ろしていた。
『運河の底へと沈んじまいなッ!』
 指を鳴らし叫ぶバル。同時に決壊したダムの如き鉄砲水が怪物たちを押し流していく。如何に強力な酸も、水で薄めて希釈してしまえばその効力もまた落ちる。更に小高い位置へと設置した事で宛らスライダーの様に進んだ道のりをゼロかマイナスまで押し戻すことにも成功した。
「ぐ、おのれ猟兵め……!」
 数が多かったゆえに水に溺れた者も少なくなく、同時にぶつかり合う事で【アルティメット王水】の大半が使い物にならなくなってしまった。更に、距離が離れた事によりまたも狙撃手の二人、トリテレイアと灯璃がまた狙いやすい場所に後退させられた挙句、これまで無事だった電球怪人もまた深手を負った。
 だが、それでも怪人たちは再び防壁を突破せんと突っ込んでくる。先ほども言った通り、彼等には選択肢などないのだ。
 ……猟兵達は気付く。敵の進行速度が、明らかに落ちている。士気云々だけではないその理由を理解するのは、容易い事だった。
 敵は、疲れている。そう、バルが先程煽る為に口にした「勉強しかできない」というのは、的を射ていたのである。無敵だと思っていた兵器への簡単かつ完璧な対処に対する激しい動揺、緩い一往復半走っただけで疲弊しきる体力の無さ。もうすでに、勝利は間近。

「お前ら踏ん張れ、もう少しで敵の防壁に……!」
 なんとか全身の意欲を取り戻すために声を出す電球怪人。しかしその直後、彼らの退路を断つように突如地面が盛り上がり、瞬く間に眼前の防壁に引けを取らない土塊の壁が出来上がった。閉所と言うのは恐怖を齎す、慌てて【アルティメット王水】で破壊しようと試みるが、土を溶かすことはできないうえ、この土には細かいガラス片が混ざっている。
「無駄無駄、『土剋水』――五行の基本だわさ」
 防壁からちょこっと顔を出して『策』の成就にまたもにやりと笑うのは万望。彼女の陰陽術という見地から【アルティメット王水】への対策を講じていた。実際に彼女の言う通り、王水ではあの壁を破壊することは絶対にできない。
「そんでもってもう一つ、『火』は、『土』を養うんだ」
 ごう、と。防壁の頂上、最も高い場所。お膳立ては済んだ。退路はなく、敵は完全に袋の鼠。虎の子は既に打ち止め、最早これまで。
『内に眠りし竜の焔よ。我が剣となりて、敵を穿ち焼き尽くせ――!』
 彼の赫々とした髪は逆立ち、緋色の眼に輝く瞳孔は龍のそれの如くに細く、縦へと切れる。彼の詠唱によって呼び出された炎の剣は幾千幾万それ以上か。天を覆い尽くさんばかりに展開し、その切っ先はオブリビオン達へと向く。
「全く、騎士とは言えない戦いぶりですが――」
 勝利の為には致し方なかろう、トリテレイアは自身の武器に焼夷弾を装填する。彼の持つ特殊な化学物質を封入した弾頭は、有機物を瞬時に炭化させ、水中でも燃焼するという【アルティメット王水】もびっくりの性質を持つ。
『視覚野侵入完了――Ziel adfangen.少し"目"をお借りしますよ』
 灯璃は、簡易擲弾発射器が同じタイミングで射出されるよう調節した後、本来は塹壕と共に作るつもりだった火点に用いるはずだった機関銃のセットを終え、同時に敵の群れへと視線を向ける。既に彼女のユーベルコードによって、最適の投下位置は産出された。あとは、撃つのみ。
「さーてと、俺ももうちょっとばかしいいとこ見せますかねェ」
 事の成り行きをみていたバルも又、腰に下げていた黒い鞘から彼らしからぬ豪奢な宝石によって装飾された宝剣を携える。刃に触れれば燃え盛る炎、三つの属性を思いのままに繰るそれを構え、念じるように深く俯く。
『宙に揺蕩え、星の化身――』
 そして、万望も又印を結び祝詞を唱える。式である翻車魚によく似た愛らしく小さな魚達は、水の無いはずの中空をゆらりゆらりと舞うように泳ぎながら、その数を徐々に増やしていく。
 ――そして。

「燃え尽きろ、【メギドフレイム】ッ!」
「【超高温化学燃焼弾頭(ヘルファイア・バレット)】、一斉射出」
「【Overwatch】――行使します」
「っしゃ行くぜ、『トリニティソード』! 丸焦げにしてやれェッ!」
「さあさ、お行きよ……【月泳(ツキヨ)】!」
 五名の必殺の一撃が炸裂し、そして……。
 筆舌に尽くしがたい爆炎と轟音が、全ての敵を一瞬の元に炭化させ、蒸発させ、撃滅した。

●芸術は爆発だし爆発オチも芸術
 猟兵達の作戦と連携によって、見事『ザ・ステージ』を支配していたオブリビオンの集団は見事撃退された。オブリビオンが知恵をつけ生み出した兵器をものともせず勝利したというその功績は、戦争の趨勢を担う意味でも世界の人々に希望を与えるという意味でも、非常に大きいものだろう。

 ――そして、数日後。
 一連の戦いの様子は動画としてとある筋からキマイラフューチャーに流れ、有識者やマニアによる「スーパーカッコいい猟兵のバトルシーン・最高の爆発編」の中でトップ5に入る程の爆発が見られると、秘かな話題になったとか。
 真に賢者たるものは、世界の発展の為に力を用いるもの。彼らの導いた解と、見せた大きな炎は、この有事において人々の心を照らす「何か」を生んだ事は、間違いないのない答えなのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月04日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦争
🔒
#バトルオブフラワーズ


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト