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バトルオブフラワーズ④~フライドチキン・グラトニー

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ


●右を見ても左を見ても
 凄まじい熱気が漂うザ・ステージ。
 そこに置かれたテーブルの前で、かれは仁王立ちしていた。
「すべてのから揚げは筋肉に通じるのであるパカ」
 ステージの隅で次々と揚げられていくチキンの山。
 屋外ステージの周りにまであふれてくる香ばしさと、パチパチと油の弾ける音。
 どちらも、聴衆の胃袋をこれでもかと刺激してしまう。
 腕組みをしながら待機するかれは、見事な肉体美を誇る怪人アルパカマッスルだ。
 かれは山盛りのから揚げを待ち構えている。様々な調味料を手元に用意して。
「さあ、我輩の血となり骨となり肉となるパカ」
 堂々たる姿のかれを打ち負かす猛者は、果たして――。

●グリモアベース
「要はから揚げ大食い対決なの」
 ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)は話を始める。
「今回撃破をお願いしたいオブリビオン、普通には倒せないのよ」
 オブリビオン――怪人の周りに次から次へと用意されていく、から揚げの山。
 敵はから揚げを宇宙のごとき胃袋へ納めることで、圧倒的な戦闘力を発揮している。
 普通には倒せない、とホーラが告げた理由はそこにあった。
「だからオブリビオンが食べる量を上回れば、勝機はあるわ!」
 から揚げの量でオブリビオンに勝れば、立場は逆転する。
 猟兵のユーベルコードが強くなり、オブリビオンへ攻撃を通すことが可能になるのだ。
「……と言っても、向こうはから揚げで勝つ確信があるでしょうから」
 その自信を打ち崩す策を講じなければならない。
 から揚げと一口に言っても、骨なしから骨付きのフライドチキンまで大小様々。
 自分の好みを考えつつ選び取って、食べ進めると捗るだろう。
 もちろん、調味料を足すだけでなく、手を加えることも可能だ。
 鶏肉以外の食材も、多種多様に用意されている。
 少しでも食べやすく、あるいは飽きずに食べ続けられるよう、アレンジするも良し。
「調理は基本的にスタッフがしてくれるけど、自分たちでやるのも素敵ね」
 バトルスペースを囲うようにして、キッチンが設えてある。
 自身や友人の手で、ベストな揚げ具合、ベストなスパイスの配合を用意するのも良い。
 策だけでなく、熱意も必須だ。
 から揚げなら何個でも食べられるという意欲や自信も、勝利へ繋がるはず。
「それじゃ、対決の流れを説明するわ」
 まず、怪人と挑戦者がステージに上がる。
 ステージ中央には、バトルスペースが設えてある。
 そのスペースの横にあるテーブルの前へ立てば、いよいよ大食い対決スタートだ。
 制限時間内にから揚げを食べ続け、鐘が鳴ったらバトルスペースへ赴き一戦交える。
 オブリビオンより多くから揚げを食べれば、猟兵の攻撃は通る。
 オブリビオンよりも量が下回っていたら、猟兵の攻撃は一切通らない。
 わかりやすい戦いだ。
「心とお腹の用意ができた方から、声をかけてね。転送します」
 ホーラは最後にそう微笑み、転送の準備を開始した。


棟方ろか
 から揚げ大好き棟方ろかです。
 とにかくから揚げ(フライドチキン)をたくさん食べましょう。
 情報はオープニングにあるとおりです。
 工夫やアレンジ、熱意、食べ方など詳しく書いた方が、成功しやすいです。
 ご一緒なさる方がいる場合は、お相手の【名前とID】をご記入願います。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『怪人アルパカマッスル』

POW   :    ポージング
自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    鋼の筋肉
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    つぶらな瞳
【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。
👑11
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メリー・メメリ
ふふふーん、これはメリーのとくいぶんやだね!
おにくだーいすき!まけないよー!

大食いとフードファイト・ワイルドモード!
おにくをたべればたべるほど強くなるってかかさまがいってた!
それにからあげだいすきだからたくさん食べれるよ!

味にはあきないもんね!あつあつも平気!
ふっふーん、骨付きでも何でもたべるよ!
一番好きなのは骨の無いふつうのからあげだけどね!

変わった味のからあげっておいしいのかなあ?
ちょっとマヨネーズとかケチャップとかつけてみる!
わー、おいしい!これならどんどん食べれるね!

いっぱいたべてこうげきが出来るようになったら
どーんっとやっちゃうよ!



 はねる赤髪をぴこぴこ揺らして、メリー・メメリ(らいおん・f00061)がステージへ上がる。
 少女の前に立ちはだかるのは、ずらりと陳列された、から揚げ、から揚げ、から揚げ。
 見るひとによっては圧倒される一面の茶世界。しかしメリーは小柄ながらも頼もしく胸を張る。
「まっかせて! メリーのとくいぶんやだよ!」
 ちくちく突き刺す視線に気づき、メリーはちらりとステージの向かいを見やった。
 たいへん肉肉しい怪人が、少女の姿を疑わしげに凝視し、鼻を鳴らす。
「小さき者よ。筋肉に通じぬ身で挑むのは些か無謀かと思うのであるパカ」
「いささか? むぼー?」
 完全に侮った様子の怪人の言葉に、メリーはぱちくりと目を瞬かせて。
「メリーおにくだーいすきだから! まけないよー!」
 挑発をものともせず返した無邪気さに、ふむ、と怪人が唸る。
 こうして互いの言葉が絡み合った直後、ステージに鐘が鳴り響く。
 から揚げにかぶりついたのは、ほぼ同時だった。
 揚げたばかりのから揚げは、衣がまだ弾けているように映る。
 自身の口よりも一回り大きなから揚げも、メリーは驚くほど柔軟な顎でぱくりと頬張った。
「んーっ!」
 直後、メリーに衝撃が走る。
 一度噛み、衣からあふれたのは食欲そそるスパイシーな香り。
 それが二度噛むと、濃縮され溜めに溜め込んであった肉汁のうまみと混ざり合い、メリーの咥内でがっちり握手した。
 包まれていた高熱があふれ出たぐらいはへっちゃらで、メリーは頬だけでなく耳まで赤く染めながら頬を蕩けさせる。
「おいひ~!」
 感想を口にすれば、口の中で融合し爆発したうまみと熱が湯気となって噴き出された。
 あえて大きなサイズに挑んでみたが、これぐらいのあつあつっぷりならば、食べるペースも落ちないだろう。
 ――変わった味のからあげって、おいしいのかなあ?
 ふと視界に飛び込んできた、調味料の類が気にかかる。
 煮るなり焼くなり揚げるなりしても、とにかく肉の風味を味わい続けてきた少女にとって、マヨネーズやケチャップをから揚げにつけて食べるのは未知数だ。
 しかし怪人の皿を一瞥してみれば、甘そうなものから激辛注意と書かれたラベルまで様々な調味料を取り揃えている。
 ――きんにくがどーのって言ってたし、おにくすきなんだよね?
 から揚げ好き怪人が美味しそうに食べているのなら、もしかしたら。
 そんな考えに至れば、あとは本能の赴くがままだ。
 手元の皿へと、小さな手でマヨネーズやケチャップを絞り、山をつくりだす。
 から揚げから滲み出た油と肉汁の香りに、マヨネーズとケチャップの色と香気が混ざった。
 から揚げをぐるぐる回すように付けてみると、マヨとケチャップが合体し、オレンジがかったピンク色のソースが生まれる。
 見慣れない色味だが、くんくんと嗅いでみるだけでも、濃厚そうなソースだ。
 メリーは躊躇わずに、あむっ、と口に放り込む。
 すると新感覚の味わいがメリーの全身をビビビと駆け巡った。
 から揚げだけを噛んだときとは違う、ソースがあるからこそ生じる喉が焼けるような味わい。
 刺激としてはから揚げオンリーよりも遥かに強いが、だからこそ癖になりそうでメリーは打ち震える。
「わーっ! これ、どんどん食べられるね!」
 緑の瞳を輝かせて、自分の顔よりも高く積まれていたから揚げの山を、少女はぺろりと平らげた。
 次にメリーの目に留まったのは、骨付きチキンの皿。
 一番好きなのはふつうのから揚げだが、骨付きは骨付きで齧り甲斐がありそうだ。
 重みのあるフライドチキンを手にして、かぶりつく。
 骨の無い肉だけとはまた一味も二味も違う。骨から滲み出るうまみが、身と混ざっている。
 おいしいおいしいと嬉々として食べる少女の姿は微笑ましいものだが、目の前に積まれていく骨の山はあまり和やかでない。
 一皿を食べ終えた後、彼女はふたたび普通のから揚げへ戻っていった。
 終了の鐘は、その後に鳴り響く。

「よーっし!」
 お気に入りの頭巾を整えるメリーの表情は、先ほどと同じ笑顔のまま。
 相対する怪人も怪人ですまし顔だ。両者に余裕が感じられる。
「小さき者へ誇示するにはやや気が引けるが、先ずは我輩の肉体美を見せ……」
「どーんっ!!」
 ポージングを取ろうとした怪人めがけて、メリーの一撃がお見舞いされた。
 怪人の発言など耳にする気もないし、その必要もない。
 小さき者、と呼んだ相手からの強力な攻撃に、怪人はガードする間もなく吹き飛んだ。
 バトルスペースから飛ばされた怪人は、盛大にテーブルをひっくり返している。
「なんてったってワイルドモードのメリーだからね!」
 仕掛けた側である少女メリーは、得意げに笑みを咲かせていて。
「おにくをたべればたべるほど強くなるって、かかさまがいってた!」
「あ、あるまじき……展開なのであるパカ……」
 ふっふーん、と対決開始前となんら変わらない胸の張り方で、メリーは勝利を誇った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
怪人どもの壮大な計画、実に素晴らしいぞ!
しかしきっちりボコって、キマフュでの上下関係は示してやらんといかんの~

肉はなんでも好きだが、特にフライドチキンは大好物なのでな
まったく負ける気がせん!
そして更に、指を鳴らしてスクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆!
見ての通り此度はチームバトルなのでな、ガンガン妾たちの応援をしてくれ!
苦しそうなら手拍子とかも効果的であろう
妾も応援しながら食べていくぞ

やはり骨付きに限るな、丸ごとバリバリよ
ほら、やはり健康のためにバランスよく食べんとな?
揚げ具合はちょっと生ぐらいが好きだの~
味付けは何でもOKだから、さあどんどん持ってくるがよい!



「素晴らしい……実に素晴らしいぞ!」
 声高々に評した御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が、ステージ中央――バトルスペースに悠然と立つ。
 ざわついたのはステージの周りでスタンバイしていたスタッフや、観客たちだ。
「怪人どもの計画の壮大さは、称賛に値する!」
 びしりと菘が指差した先は、もちろん怪人アルパカマッスル。
「しかしならんの~。上下関係は示してやらんといかんの~」
「上下関係……であるパカ?」 
 上下と言えば筋肉運動にしか思考が結びつかない怪人にとって、菘の言葉は理解できなかったようだ。
 だが菘がそんな些細な反応に感けるはずもなく。
 大量のフライドチキンを前にして、不敵な笑みを浮かべた。
「フライドチキンは特に大好物なのでな。まったく負ける気がせん!」
 パチン、と次の瞬間には菘が指を鳴らす。
 ステージに響いた音は、何処からともなく無数の空中ディスプレイを出現させた。
 何事かとざわめくスタッフや怪人をよそに、スクリーンはとある光景を映し出す。
 正に今、戦わんとしているこの会場を見守る視聴者――、戦いの行く末を熱い声援と眼差しで眺める聴衆の姿だ。
 片隅には「LIVE」と表示も為されている。
 そして直後に流れたのは、無辜の民の嘆きを聞き届け、高笑いを轟かせ颯爽と姿を現す菘の、恒例のオープニング。
 続けざまにデカデカと表示されたのは、『妾がいろんな世界で怪人どもをボコってみた』という番組名。
 なんとも菘らしい邪神の威厳と風格を湛えたフォントとデコレーションによるタイトルは、ザ・ステージを華やかに演出する。
「はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆!」
 そしてオープニング映像同様、響くのは高らかな菘の笑い声だ。
 彼女の声に応じて沸く人々は、画面を覆いつくさんばかりで。
「見ての通り、此度はチームバトルなのでな」
 菘は凛々しくカメラを睨み付け、目許に愉悦と誇りを刷く。
「ガンガン妾たちの応援をしてくれ! 手拍子も効果的であろう!」
 フウウウウウウウ!
 興奮して荒らぶるスクリーンから、視聴者のそんな絶叫が聞こえてきた。
 一部始終をムキムキッと眺めていた怪人アルパカマッスルは、カメラへ向けて軽やかに手を振る菘の姿を一目見、こう思った。
 我輩もやってみたいのであるパカ、と。
 直後、ステージに試合開始の鐘が鳴る。
 それまで威儀を正してカメラへアピールを続けていた菘も、いざ始まればすっかり挑む者の勇敢な顔を浮かべた。
 テーブルに並ぶフライドチキンたちが、芳しい身で菘を誘う。
 ゆえに菘が択んだのも当然、フライドチキンの皿だ。
 あっつあつのチキンを手にし、大口を開けてがぶりと噛みつく。
 菘が思い切り引きちぎれば香ばしい皮は剥げ、肉汁したたるふくよかな身が露わとなった。
「ううん、ちょっと生が残る揚げ具合。これだの~、これ!」
 肉の内側は仄かな桃色を含んで艶々。しかし熱はしっかり通っている。
 昇り立つ湯気にもチキン独特の香りが乗り、頬張る菘の目つきも蕩けた。
「やはりフライドチキンは骨付きに限るな!」
 庶民の嗜みも知り尽くした邪神様は、骨付きフライドチキン山脈へ手を伸ばす。
 肉は骨付き、という彼女の発言を耳にして、怪人が深く首肯した。
「骨から滲み出るうまみ、骨に纏わりついた肉の味を知るとは……」
 バリバリバリバリ!
 硬いものを砕く音が、怪人の思考と発言を阻む。
 怪人がふと見遣ると、菘は骨もろとも噛み砕き、そして呑み込んでいた。
 そんな彼女の様相さえ、配信の視聴者たちは狂喜乱舞する。
 そして視聴者の興奮や喜びがあふれていくにつれ、菘の食べる速さも増していく。
「……なんという……ことであるパカ……」
 ふくふくとした頬と反する豪快な食べ方に、アルパカは絶句した。
 爬虫類が入り混じった身だからか、咀嚼した骨や肉を呑み込むのも一瞬だ。
 どんどん持ってくるがよい、と休まずお代わりを訴える菘をよそに、無情にも大食い対決の終わりを報せる鐘が鳴る。
「なんだもう時間か、妾の胃袋はまだまだ満ち足りぬ!」
 どこにそんなに入るのかと疑問が生じるぐらいに、菘はハイペースだった。
 拍手喝采、スクリーン越しの視聴者たちの反応も凄まじい。
 そろりと立ち上がった菘は、怪人と面と向かって佇んだ。
「しかし手合わせも腹ごなしに丁度良いであろう! 行くぞ!」
 宣言の声が尾を引く中、菘は右腕を突き出す。
 そうして放たれた邪神の禍々しい気を纏い、全力で殴りにかかる。
 たかが一撃。そう思いながら、怪人は円らな瞳で菘を射貫いた。
 かれの眼差しは光り輝くビームとなって、菘へ走る。
 光線はほんの一瞬。
 けれど菘はくるりと身を翻し、ビームが掠れるのも厭わず怪人の懐へ飛び込む。
 怪人が瞬いた直後には、菘の一手が怪人の肉厚な大胸筋を叩いていた。
 筋肉など見掛け倒しに思えてしまう勢いで、かれは吹き飛ぶ。
「はーっはっはっは!!」
 再びステージに木霊する菘の大笑い。
「お主にも見えたであろう? 聞こえたであろう?」
 菘は、無数のスクリーンに映った視聴者たちを広げた腕で示す。
「この感動を背負い、後押しされる限り妾は無敵よ!」
「クッ……動画配信者の鑑であるパカ」
 なぜだかとても悔しそうに、怪人は言い捨てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
昨日もご飯を食べるのを忘れてた
そろそろカロリーを摂取しないとまずい
唐揚げを食べるならお米も欲しいな
用意してくれる?

面倒で数日に一度しか食事をしない故の【大食い】が僕の強み
更にあえて珍味・鴉の唐揚げをオーダー

こんな姿になってしまって可哀想に…
手を合わせ行儀よくいただきます
ん、やっぱり皆も食べたい?
鴉たちの分もお願い
仲間の死骸を平気で食べる僕らが怖いかな
鴉は共食いするしスカベンジャー
自然界の掃除屋だ
普通だよ

僕が思うに大食いって包容力なんだ
生きとし生けるもの全てを
僕の内側に受け入れいとおしむ心だ
UCで虚無的なまでの優しさを発揮し
敵を恐怖に震えさせ妨害&攻撃

待っててね
今きみも食べてあげる
あ、鴉たちがね


竹城・落葉
【SPDで判定】
キマイラフューチャーが危機に陥っているようだな。ならば、我も駆けつけるしかあるまい!
我は『森の賢者』を発動、詠唱と共に大量のゴリラを召喚するぞ。そして、ゴリラ達と共に、唐揚げを食していこう。そうしてチームとして食した量で相手の量を上回る。そのあと、名物竹城を手にして、ゴリラと共に殴るぞ。
我は一食につき一キロ食べるから、楽勝だな。そして、肉食を覚えたゴリラの力も受けてみよ!
*アドリブ・共闘、歓迎です



●から揚げの山
 昨日もご飯を食べるのを忘れてた。
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は大事なことを思い出した。
 人に備わる本能のひとつで、避けては通れない欲のはずだが、どうにも関心が薄い。腹が空いた、喉が渇いた、という実感が章を翻弄しないのもあってか、食事をとらねばと考えた理由も、彼ならではのもので。
 ――そろそろカロリーを摂取しないとまずい。
 生命を保つための熱量が、明確な数値として存在する。当然、章も摂取量や運動により消費される量も知識として持っている。だからこそ、カロリー摂取を控えていられる限界に近い今日、外へ足を向けた。
 数日分をまとめて摂るなら、俗にいうガッツリ系――ハラペコたちの胃袋を満たす料理が適している。
 そうして考えながら通りかかったのが、フードバトルを主軸とするステージだ。
 香ばしさと共に漂ってくるのは、パチパチと油の踊る音。
 空腹なうえに食欲をそそるこの状況は、垂涎必須であるはずだ。しかし章は腹部をさすり、から揚げで摂取できるカロリーを計算しながら、環境には目も呉れずテーブルの前に立った。
 横を見てみると、から揚げに用いる肉だけではなく、野菜や米、パンなど様々な食材がキッチンに取り揃えてある。から揚げが揚げたてなら、白飯も炊き立てだ。炊飯器らしき箱のふたを開けた途端、湯気があふれ出る。そこから、蒸された白飯の甘みある香りがふんわり伝ってきた。
 ――お米もあるならちょうどよかった。
 から揚げにはご飯がつきもの。
 面倒で食事も数日に一度という章だけに、食べるからにはストレスフリー且つボリューミーなのが好ましい。
 そしてステージにはもうひとり。喧騒と華美な色彩が飾るステージに、凛とした女性が佇む。
 言葉で喩えるならばクールビューティ。器量よしと言える。ステージに上がってもなお伏し目がちな竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)の面差しは、どことなく世を愁うかのようだ。
 そんな彼女を見て、怪人アルパカマッスルが唸るのみならず、ステージの周囲にいたスタッフもどよめく。
 大食いの場に似つかわしくない風貌であると、考えた者が多いのだろう。
「……剣客と思しき者よ」
 帯刀する落葉を一瞥した怪人が、徐に問う。
「ここは一騎打ちや剣舞で採点する場ではないのであるパカ」
 本当に間違っていない? 大丈夫? 問題ない?
 そう尋ねたいらしく、怪人の言葉選びが妙に慎重だ。しかし落葉には惑いや躊躇など微塵もなく、テーブルに山盛りとなったから揚げを見つめるばかりで。
「存じています」
 静かに怪人を見据え、唇の動きも最小に、落葉は答えた。
「なら良いのであるパカ」
 腑に落ちないのか小首を傾げる怪人をよそに、落葉は微動だにせず立つだけ。
 一方、章がオーダーした鴉のから揚げが運ばれつつあった。
 鶏よりも栄養分が豊富な鴉は、食事回数の少ない章にとって効率的だった。
 運ばれてきたから揚げは、鶏よりも黒く濃厚そうな色合いだ。薄衣をきれいに纏った様は美しく、ステージ上から降りそそぐネオンを浴びて、衣が微かに煌めいている。
「こんな姿になってしまって、可哀想に……」
 そう呟きながら章は手を合わせて。
「いただきます」
 6文字の言葉に、章の生き方を垣間見た。
 こうして、いよいよ大食い対決の幕が上がる。
 から揚げの形状や色味を目していたやや儚げな落葉の瞳が、突如としてカッと見開かれる。そして。
「ウホ! ウホホホ!」
 腹の底から出しているかのような、落葉の大音声。
 轟く絶叫。響けゴリラ語。
「ウホオオオォォーーッ!!」
 落葉の雄たけびが、ステージの外よりももっと外まで轟然と通る。
 思いもよらぬ叫び声に、怪人も手にしたから揚げをポロリと落とす。
 直後、落葉を囲うように現れたのはゴリラ衆。右を見てもゴリラ、左を見てもゴリラ。凄まじい迫力の絵面に、誰もが圧倒された。ただ絵面が強いだけなら、それで済んだのだが。
「ウホホオオォッ!」
「ウホオオォォォォ!」
 落葉とゴリラたちが共鳴しはじめた。
 怪人も茫然とする中、合唱のごとく地に響く叫びは、すぐさま食への意欲に切り替わる。
 ゴリラの群れがウホウホと鳴くたび、から揚げを口へ放り込んでいく。小気味よく放る調子は軽々としているが、ゴリラにとってもやはり熱いらしく、肉を噛んだかれらの顔色は、途端に赤くなった。
 もちろん落葉も、あっつあつのから揚げを頬張っていた。ゴリラと同じ速度で。
 そして章は、ウホウホと盛況な様子には我関せずの姿勢で、鴉のから揚げへ箸を伸ばしていた。間近でじっと見つめてみると、から揚げから仄かな湯気が昇る。
 滲みこんだ熱を確かめた章は、から揚げをぱくりと一口。
 いざ噛むと、脂肪が少ないためか甘みはなく、逞しく生きる鴉だからこその弾力があった。食感は硬めでも、強く跳ね返るような歯ごたえは通常のから揚げでは味わえない。ほんのり、レバーのような鉄分の味が滲む。
 ――果実か、木の実か……ちゃんとしたものを食べてた鴉かな。
 不味そうなものを生前口にしていない鴉のようで、独特の臭さは殆ど感じない。
 次に章は、つやつやと真白に輝くご飯を咥内へ放り込んだ。ふっくらと炊かれた米の水分が入ることで、ボソボソとした鴉肉の余韻も穏やかになる。
 その一方で、ゴリラ衆と共にから揚げを食していた落葉も、すっかり肉の虜になっていた。
 咥内で広がった香気が、滲みこんだスパイスによる皮の風味をより強めていく。噛めばあふれ出る肉汁も火傷しそうなほどに熱され、落葉の舌を痺れさせた。
 予想以上の熱さだが、揚げたてはこうでなくては、と落葉が黒い瞳に光を宿す。
 こだわりぬいた鶏肉なのか、はたまた揚げ方が巧みなのか。肉厚ながら適度な柔らかさを持つ鶏肉から、臭さは感じられない。皮が含むスパイスも主張が強くないため、鶏肉本来のうまみを存分に味わえた。
「駆けつけた甲斐があったというものだ!」
 素敵な笑みを口端に浮かべる落葉は、もはや先刻までの落葉ではない。
 森の賢者たちと繰り広げる大食いショーに、観客たちのテンションも右肩上がりだ。
「むぐぐ、人数に負ける筋肉ではないのであるパカ」
 呻いた怪人も負けじとから揚げを喰らい、筋肉の糧とする。
 そこでふと、章が辺りを見回す。食事風景を前にし、居ても立ってもいられないのか、鴉たちが騒ぎ出していたのだ。カァッ、と抗議の声があがる。
「ん、やっぱり皆も食べたい?」
「クアァッ」
 応じた鴉たちのため、章は適切な大きさのから揚げを取り分けて差し出す。皿に置いておけば、あとは好きに啄んでくれる。鴉らしい所作を横目に、章もから揚げを胃へと送り続けた。
 噛めば噛むほど、鴉が持つ渋みを感じる。
 しかし目撃した怪人アルパカマッスルは、その光景に低く唸った。
「共食いであるパカ……げに恐ろしき所業であるパカ」
 筋肉を震わせながら何か言いのける。
 から揚げを食べながら、章は双眸をわずかに伏せた。怖いのだろうかと、怪人の様子に気付いて章は思う。それでも残念とも悲しいとも思わず箸を進めていく。彼が秘める情は、自然界の摂理に抗わない。
 ――鴉は共食いするし、スカベンジャー。
 死骸やごみを掃除し、きれいにする掃除屋でもある鴉。
「普通だよ」
 だから章は、そう答えた。

●フライドチキン・グラトニー
 鐘が鳴り、大食い対決の終了が示された。
「良いから揚げ、馳走になった」
 揚げ物の油でテカテカしていた唇を拭い、落葉はご満悦なゴリラたちと共にバトルスペースへ向かう。
「さて、腹ごなしに一戦か、腕が鳴るな」
 ステージを蹴り、飛び掛かった落葉が揮うのは名物竹城。彼女はこれをサムライブレイドのごとく扱い、一閃の軌跡を世界へ刻み付ける。
 対抗した怪人は、筋肉を鋼のような堅牢なものへと変貌させる。強固な守りは落葉の一振りを弾く。
 弾かれた落葉が、着地と同時にバランスを保とうと片足で跳ねる間。
 鴉の群れと一緒にバトルスペースに立った章が、喉を震わす。
「僕が思うに、大食いって包容力なんだ」
 飛び交う鴉たちを見上げ、そして怪人へ意識を向ける。
「生きとし生けるもの全てを……僕の内側に受け入れ、いとおしむ心だ」
「な、、何を言っているのであるパカ……?」
 章の弁舌に理解が追いつかず、怪人はうろたえる。
 虚無にも似たやさしさを帯びて、章は面差しに同じやさしさを浮かべる。
 彼の放つやさしさは恐怖に繋がり、怪人の心の臓を鷲掴みにした――恐怖で判断が鈍る。
「待っててね」
 章が紡ぐ。呟く声音には情を籠めず、ただ淡々と。
「今、きみも食べてあげる」
 ぞっとする音を乗せた一言が、怪人に降りかかる。
 鴉の鼓動の証を体内に秘めながら、章の顔色に変化はない。けろりとしている。だからこそ恐ろしい。
 章は静かに腕を伸ばし、怪人を指示した。彼の意志を受けた鴉たちが高らかに鳴き、飛翔する。天空から思うがままに、鴉は怪人へと襲い掛かった。
「ええい、鬱陶しいのであるパカ! イタタッ、退くであるパカッ」
 無数の漆黒に視界を遮られ、鴉を払い除けようと怪人がたくましい腕を振り回す。いくら鍛えた肉であろうと、鴉の鋭利な嘴でつつかれ、啄まれては、ひとたまりも無い。
 鴉に意識が向いた今ならば、と落葉はそこへゴリラ衆をけしかけた。
「これぞ、肉食を覚えたゴリラの力……」
 たらふく食べてやる気も増したゴリラたちが、ウホウホ叫びながら怪人へ飛び掛かる。
 しかし己の肉体美を誇る怪人は、臆せず屈せずゴリラたちを迎え撃とうとする。
「受けてみよ!」
 落葉の言葉に応じてゴリラたちが繰り出したのは、金剛のごとき拳。筋肉に拳がぶつかり、衝撃音が響き渡る。よくよく見ると、怪人の身がゴリラパンチの形状に抉れていた。
 抉れただけではない。ゴリラたちの強襲を受けた怪人は、手足に纏わりつくゴリラのおかげで身動きが叶わなかった。
 そこへ矢継ぎ早に落葉が走る。駆けた足取りは軽く、瞬く間に怪人の懐へ到った彼女の眼差しが、敵を射貫く。
 名物竹城は落葉の意志に沿い、怪人の身を斬った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月08日


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#バトルオブフラワーズ


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト