バトルオブフラワーズ⑧〜闇を彩る色彩世界
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嗚呼。
鬱だ、心が沈む。何にもやる気が出ない。
悲しい、でももうそれを払拭する気力さえ無い。
あらゆるものが憎い。憎いけれど、それをぶつけるのさえ馬鹿馬鹿しい。
あーあ、此の世界、真っ黒に消えてなくなれば。
いいのにな。
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「みんな! 俺からの依頼だ、宜しく頼む!」
早乙女・輝夜(f10158)は集まった猟兵たちに資料を配りながらそう言った。
「端的に言うと、キマイラフューチャーがふたつに割れた!
俺も何を言っているのか全然わからないが、割れた世界がオブリビオンたちに閉じられる前に、目的の場所へ行ってボスを倒さないといけない。
だが今は、そのボスのところへたどり着ける状態じゃあないんだ。
今みんなにやってもらいたいことは、『ザ・ステージ』と呼ばれた場所に存在する全てオブリビオンをどうにかする事。これは複数存在する。
今みんなに行って貰うところは、その一つってことさ。
それを数いる猟兵たちでひとつひとつ解決していく。そうすると、目的地である『システム・フラワーズ』にたどり着くことができるというんだ。
今回俺が頼むのは、この陰鬱な兎の少女のところへ行って貰う。
我ながらにとてつもなくかわいこちゃんなオブリビオンを引き当てたとほめて欲しいくらいだ――が、冗談はさておいて。
うさぎちゃんをどうにかするだけでは解決しない。みんなは戦闘しながらもう一つの事をしてもらう。それは――」
それは――、猟兵たちはツバをごくりと飲んだ。
「真っ黒に染まった壁や床を、ユーベルコードで攻撃して七色に染めちゃって!
敵の能力で街が黒一色に塗りつぶされたんだ! この黒色の手前では何故だか、こっちの攻撃を敵は無効化する。 なんでって? 知らねえよ! キマイラフューチャーだからだろ!
黒い壁や床は、みんなが攻撃すれば、いろんな色で上書きされる。丁度2/3くらい染められたら、俺たちの攻撃は当たるってことさ! なんでって? しらねって!
ま、流石キマイラフューチャー!! 戦争もファンキーにいかないと、な!!」
終始、輝夜は楽しそうであった。
羽鳴ゆい
8度目まして、羽鳴ゆいです。
みなさまのプレイングをお待ちしております。
当シナリオは、現在行われている戦争のシナリオです。
⑧ザ・ペイントステージ(ボス戦)となっております。
●状況
キマイラフューチャーの街の一角にて、『鬱詐偽『ウサギ』さん』との戦闘となります。
かつてメインキャラを引き立たせる為に陰湿・根暗・不幸なキャラとして作られたバーチャルキャラクター。
番組終了と共に骸の海で眠り続けるはずでしたが、オブリビオンとして世界に戻ってきました。
今回は戦争の一兵として登場となります。
●補足
当シナリオは、『ヌリツブシバトル』という特殊戦闘ルールが適用されます。
戦場ステージは、キマイラフューチャーの街並みを模して作成されていますが、壁や床は『闇のような黒色』に塗り固められています。
この『闇のような黒色』により、猟兵のユーベルコードはオブリビオンに通じません。
その代わり、ユーベルコード、または直接武器で床や壁を攻撃すると、闇のような黒色を塗りつぶすことが可能です。
一定以上の範囲を塗りつぶす事に成功すると【一度だけ】ユーベルコードでオブリビオンを攻撃する事ができます。
オブリビオンを攻撃せずに、より広範囲を一気に塗りつぶす支援などもOKです。
また、マップの3分の2以上が猟兵によって塗りつぶされた場合、本来通りにユーベルコードが敵に通じる形となります。
盛大なペインティング、楽しく描写したいと思っております!
よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『鬱詐偽『ウサギ』さん』
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POW : どうせ、私は嫌われ者
【自身への好意的 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【陰湿な雰囲気】から、高命中力の【自身への悪印象】を飛ばす。
SPD : 私に近寄ると不幸になる
【自身でも制御できない近寄らないでオーラ 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 世界に私の居場所は無い
小さな【自身が引き籠った鬱詐偽小屋 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【自身の心象風景が広がる空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
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冷たい金属、またはタールのように滑らかな闇色が床や壁にへばりついた世界。
それはそれはしぃん、と―――静まり返っていた。
まるで、そこだけ世界が切り取られたように音を失くし、そして、確かに目は開いているのだが、目を瞑っているが如く、暗い。
ここに明かりを灯しても光は吸収され、矢張り、ただの黒色が時間さえ止めながら存在するだけなのだろう。
しかしぽつんと、オブリビオンは立っていた。
彼女の白色の風貌は、この闇色の世界にしては異端極まりない。
しかし、溶け込むように儚く、生を諦めているのを現すように、小さい存在だ。
『――……』
オブリビオン『鬱詐偽』は、猟兵たちさえ見えていないかのように虚ろな目線を明後日の方向へ向けている。
逆鷺・俐己
※アドリブなど歓迎
「わかるよ」
白い手袋を外して、素肌を出すと、そこには黒い穴がある。私はその穴に鉄でできた杭を突き刺す。
「なんで生まれてきたんだ、こんな世界嫌いだなんて想い」
それは傷口を抉り、血を抜き取ることに特化した拷問具。『傷口をえぐる』能力で私はそれをぐるりと回し、抉る。
「でも、私はそれでも未来に生きることにしたから」
杭を抜き取り、血を周囲にばらまく。それが私の戦い方。気持ち悪いのはごめんなさいね。
「あなたを踏み越えて、先に進むよ」
UC【蠍の火】を発動させる。撒かれた私の血は燃え上がり、私の腕も燃え上がる。
赤に、塗りつぶしてしまえ。
他の人が進めるように、私が道を整える。
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しかし。
彼女のアイデンティティに土足で踏み込んでさえ、倒さねばならぬ事情が猟兵(こちら)には、有る。
「わかるよ」
静寂を切り裂き、可能な限り優しい声色で告げたのは、逆鷺・俐己(虚ろな穴・f17207)だ。
まだ戦闘は始まってはいない、この空白の時間を利用して。俐己は儚いウサギに己の心のうちを見せていく。
白い手袋の生地、その中指を口で噛んで外す。晒された素肌には、黒い穴がぽっかりと開いていた。
少し、興味を見せたように瞳が動いたウサギ。俐己と彼女は距離こそあるものの、ウサギは風穴の奥を覗き込むように、見つめ返してきているような気はした。
「なんで生まれてきたんだ」
その風穴に――。
「こんな世界嫌いだなんて想い」
――糸でも通す感覚で、杭を刺す。
痛々しい行動に、ウサギの眉が少しだけ揺れた。しかし俐己は手慣れているようで、眉ひとつさえ動かさない。
俐己の行為は自傷行為そのものだ。されどそれが、彼女が彼女たる力を発揮する為に必要なもの。
野暮かもしれないが、その杭は傷口を開くこともあるだろうが、傷口を埋めているようにも見えた。
『痛そう』
「痛いさ」
杭はぐるりと回され、そして、間も無く鮮血がぼたぼたと地面へ落ち、闇色をじわりじわりと効く毒のように、濁らせていく。
「でも、私はそれでも未来に生きる事にしたから」
『来ないで』
その毒は、甘い毒だ。
「あなたを踏み越えて、先に進むよ」
『こないで!』
血で真っ赤になった手を振り払い、扇状に血を撒けば、赤に食われていく黒が出来上がる。
『こないで!!』
自身を抱き、強烈に悪印象を俐己に植え付けんとするウサギ。
対して俐己の血は轟を燃え上がる。真っ黒で、闇色で、何も無くなった世界に炎が広がる。
それは宣戦布告。
それは戦う意志を示すもの。
否定するウサギはその全ての行動が嫌で、息をするのさえめんどくさくて。
なら息が出来なくなるまで酸素をじわと燃やそう――俐己の身体が燃え、世界は燃える。断罪と贖罪の炎は、今、黒の世界に色彩を与えた。
成功
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ペンチ・プライヤ
ステージを染めるとか、いつもやってる事だし。派手に塗りつぶしてやる。
インスタントステージでLighting multicopter(灯体ドローン)を複製
ステージをキャンバスに、大量の灯体ドローンによる光を塗料に、グラフィティスプラッシュでステージを塗りつぶしていく。
ついでにお前にもスポットライト当ててやるよっ!!
ステージを塗り潰すついでに鬱詐偽に向け、幾重にもスポットライトの様に光を当て、グラフィティスプラッシュ
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「よし! 派手に塗りつぶしてやる!!」
元気に、そして覇気を出して進みだしたペンチ・プライヤ(工具による光と蒸気の空間芸術・f02102)。
真っ黒な世界で、照明機器を取り込んだドローンを飛ばし始めた。
キマイラフューチャーにしては静かな世界ではあったが、モーターや羽が回転する機械的な音が一斉にこだまし始めれば、どこかいつものキマイラフューチャーを取り戻すかのようだ。
駆け出すペンチを追うようにドローンは並走し、摘んだ光る塗料が色彩を放つ。そして、油絵のように黒色の上を塗りつぶすのだ。
『どうして、そんなこと、するの』
淀んだ声色。
黒を上書き。そうされると困るのはウサギだ。カロリーの少ない動き方をしつつ、ウサギ小屋の中に避難を開始していく。
「どうしてだって?! 役目だから、いや、俺がそうしたいからだ!!」
ウサギとは正反対の性格であろうペンチは、徐々に黒色の世界を溶かしていく。
「ついでにお前にもスポットライト当ててやるよっ! こ、こら、引きこもるな!!」
小屋から顔だけ出したウサギ。しかしすぐに引っ込んでしまう。
「その小屋も染めてやる! きらっきらにな!!」
広範囲に響く水音、そしてペンチならではの明るさに比例するように、ウサギの作った闇色は染められていった。
成功
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喰龍・鉋
*アドリブ他猟兵との連携歓迎
塗りつぶしていけば良いんだね、効率がいい方法…取り敢えず爆破かな!!
壁、床、兎に角あらゆるところを対象に爆破していくよ!
勿論猟兵さんたちには当たらないようにね!
たまたま巻き上げた埃がウサギさんの周りを囲んじゃって
針になった剣が拘束するかもね、もしそんなラッキーなことがあったら
黒剣の特性で、生命力吸収もしていきたいな
ともあれ、そんなラッキーでもない限りボクは
ひとまず塗りつぶしに専念するよ、壊すだけなら簡単だもんねー♪
デュラン・ダグラス
【アドリブ・絡み・協力OK】
黒一色なんてつまらねェな、この世界はカラフルなのが良かったってのに。
しっかり塗り替えてやんねェとな!
【SPD】
俺は今回、一回制限無くすため、攻撃じゃなくて塗りつぶし優先で動く。
これも一種の【援護射撃】みてェなモンさ。
UC使って、飛びながら周辺を【なぎ払い】するように『ドラセナ・ガトリングガン』で撃ちまくる。
飛んでる状態なら、地上からじゃ狙いにくい場所も撃って塗りつぶせそうだ。
そういう場所は優先して塗りつぶしておくぜ。
一応【野生の勘】で警戒して、邪魔されそうになったら飛んで避けるか、『ドラセナ・グレートソード』で【武器受け】するぜ。
エンティ・シェア
心地よいくらい真っ黒だね
さぁそれでは、華やかに染めていこうか
華断を使用して黒い部分を塗りつぶしていくよ
広めの範囲をまばらに塗って、細かいところは本で撫でて行く。繰り返しだ
この黒が、最終的にはどんな色になるんだろうね。楽しみだ
基本的には支援重視、なるべく広範囲を塗って回る予定だよ
兎のお嬢さんへの攻撃機会があれば適当に(人格を)変わろうか
「私」は攻撃は分野外だからね
どうせなら兎同士「俺」に出てもらおうか
遠慮はいらないさ。その綺麗な音のする杖で思い切り殴っておいで
ついでだからライオンで適当に黒が多い部分に突っ込んでおいておくれ
こちらが狙われない限りは縦横無尽に走り回ってペインティングを楽しむよ
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俐己の炎、そしてペンチの光が闇色の黒を壊し、少しずつ世界は色を取り戻してく。
「心地良いくらい真っ黒だね。さっきに比べたら、結構色を思い出してきたところだけど」
エンティ・シェア(欠片・f00526)は、一度瞳を閉じ、己の中の別の人物へ状況を報告した。
役割は人格で交代する。俺か、僕か、私か、選抜された人格はすぐさま開眼し、刹那、真っ黒な地面を蹴って奔った。
追走するのは、喰龍・鉋(楽天家の呪われた黒騎士・f01859)だ。
「塗りつぶしていけばいいんだね! 効率がいい方法ってなんだろう~」
「私に聞いているのかい? 短時間で広範囲の黒を塗りつぶす方法だよね」
「あ!! オッケーわかった! 爆破だね!!」
「華やか……いや、派手だね。異論はないさ」
エンティへ向けてサムズアップした鉋は、地面を蹴り、壁を蹴って空中へと身を投げた。くるんと縦に回転してから、鉋の身体の周囲には無数の影の剣が出現。羽のように、それでいて槍の如く広範囲へ吹き飛び床、そして壁に突き刺さった瞬間に爆発が起きる。
衝撃と共に虹色の絵の具がばら撒かれていく。
黒が浸食されれば、猟兵の攻撃手番だ。
エンティが構える。
「支援重視だったはずなんだけどな、まあ仕方ない」
そして人格は『俺』へと変わった。
エンティから見てウサギは小屋の中にこもっていた。その小屋も真っ黒で味気は無い。
踏み出した一歩――、リン、と鳴る杖を大上段で振りかぶってから一気に落とす。小屋ごと叩き落とした一撃にウサギは目を丸くしながら圧力に屈した。
『ぃた……い!!』
ウサギの瞳のなかで、揺れた桜色を淡く帯びた白兎。同じうさぎの三文字を冠しておいて、対極的な二人は今視線に火花が散る。
「もっといっくよー!! そーれ!!」
鉋の爆発が更に発生し、エンティの中の私が――次に私が目覚めたとき、この世界がどうなっているのか楽しみだよ――と心の中の会議で笑っている。
「やっぱカラフルなのがいいな!! 黒一色じゃあ、つまらねえ!!」
デュラン・ダグラス(Dracaena Dragon・f16745)は芽生えた喧騒にガハハと笑った。その表情は、持前の植物に隠されてわかりにくいのが惜しい。
背中にはやした一対の羽。それを大きく広げて、鉋よりも高く高く飛び上がった。
俐己の炎、そしてペンチの光。そして鉋の爆撃が、黒い世界を半分飲み込まんとしているのが、デュランだけにはよく理解できた。その中、エンティがウサギを押さえ込んでくれている。
「もっと押すか、ナァニ、支援射撃さ! あぶねえぞ、ちっこいの!」
「はーい!」
デュランの言葉に、鉋は手を振って避難を開始。
デュランは、腕に繋げたドラセナガトリングガンと呼ばれた多機能銃を地面へと照準を合わせた。
狙うのは目下、黒い部分の世界。上空から見る事で、それは一目瞭然である。
天からの狙撃、降り注ぐ弾丸は重力に従い更に威力を増加させながら、射干玉の地面へと着弾。波紋のように広がっていく色彩に、黒は段々と押さえ込まれていくのだ。それは作業ともいえる攻撃であったが、デュランの心の奥で楽しさが生まれている。自然と綻ぶ口元、そして作業効率が上がっていく手元。
『――ああああああ!!』
ウサギは天を見上げ、そしてその声にデュランはハッとする。そう、今デュランは想像以上にウサギにとって厄介な存在だ。オブリビオンにとっては忌々しい雨は、止まず降り注ぐのだ。
思わず荒れ狂うウサギの思考。しかしエンティの攻撃は続く。回転させた杖で横からウサギの身体を吹き飛ばし、バウンドしながらウサギの身体は壁へとめり込む。
容赦のないエンティだが、突如奇声をあげたウサギの身体から真っ黒なオーラが上空へと向かって伸びたのである。
螺旋のようにとぐろをまいて、狙われたデュラン。
「まっかせてー!」
しかしここで鉋がウサギの手前に飛び出した。
鉋の黒剣は針のように細かく分断され、そのひとつひとつがウサギと、黒色の螺旋を目掛けて飛んでいく。
細かく鋭い氷柱にも似た剣は、無数にウサギの身体に刺さり地面へと縫い付けたのだ。黒色のオーラは槍のように飛んでいた速度を弱め、デュランのもとへと飛んでいく。
触手のように次次にデュランの身体を射貫かんとするオーラだが、羽を自由自在に扱い縫うように飛んでいくデュラン。そしてオーラのひとつを、腕につけた武器で振り払い、ガラスの破片のように粉々にしたのだ。
「偶々だけど、ラッキーだったね!」
確信犯な笑みを含みながら、ペンキ塗れになっている鉋はあっけらかんと笑っていた。そして再び降り注ぐデュランの射撃。その雨はもう、ウサギには止められないものへと変わっている。
どうして、そうウサギは思ったに違いない。憎い、そうウサギは思ったに違いない。
でも、もう何かをするには猟兵の質が高過ぎる事を、ウサギは第六感で気づき始めていた。
力が抜けたように、ペタリと座り込むウサギ。
鉋の頭の上から影が跳躍してきた――エンティだ。
「謝罪はしない。これもあんたの運命でな」
ぽつりと喋った「俺」は、橘の花びらが舞う中、杖を再び大上段から振り落とす。
『嗚呼――やっと静かに、なる?』
「さあな」
鈍い音、ひとつ。
オブリビオンが弾けた瞬間、闇色の黒は透明度を増して消えていく。残ったのはカラフルで、無尽蔵で無秩序だが、いつものキマイラフューチャーの通り、面白おかしい賑やかな世界が完成した。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年05月04日
宿敵
『鬱詐偽『ウサギ』さん』
を撃破!
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