バトルオブフラワーズ④〜ストロベリー・ラッシュ!
●真紅を浴びるごとく
広々としたフロアは来客のために美しく設えられている。訪れるものに極上のティータイムを提供すべく、シンプルに、しかし美しくセッティングされた一室だ。
高く大きな窓から差し込む暖かな午後の日差し。喧騒から切り離された静寂の時。
そして可憐なクロスがかけられた大きなテーブルには、見渡すかぎりさまざまな苺のスイーツが取り揃えられていた。
苺が一面にトッピングされた定番ホールケーキ、乗り切らないほどの苺のタルト、カットされた断面が美しいロールケーキは中に苺がまるごと入っている。ほどよく食感を残したジャムにジュース、苺を丸ごと幾つも使ったピンクのムース、モンブランにマカロン、エクレアにアイスクリーム。
苺に合わせたドリンクも各種用意されているが、このスイーツビュッフェが苺をテーマとしていることは明らかだ。
そしてテーブルの中央に鎮座し、次から次へと苺スイーツを捕食していくものがいた。
全身がホワイトチョコでできた美しい獣。尻尾と防止の先だけがビターチョコでコーティングされた、彼のものこそ『チョコットキング』。
苺スイーツを食べ続けることによって絶大な力を維持している、まさに王であった。
●ステージ攻略を開始せよ
いざ、バトルオブフラワーズ! と意気込みたいところではあるが。
「まさか割れるとは思わなかったよね……」
スイカ割りみたいな勢いで分離したキマイラフューチャーを画面で眺め、乾いた笑いを浮かべるしかないテス・ヘンドリクス(人間のクレリック・f04950)である。いやいや思考を止めるな、柔軟性で対応しよう。
キマイラフューチャーの中枢、システム・フラワーズはオブリビオン・フォーミュラである『ドン・フリーダム』に占領されている。この中枢、コアへ侵攻するには、まず周囲のザ・ステージと呼ばれる拠点を制圧しなければならない。
そして今回テスが予知したザ・ステージの一つのボスが『チョコットキング』なのだ。
「この『チョコットキング』だけど、まともにぶつかっても勝ち目はないぐらい強いの。大事なのはね、周りの苺スイーツなんだ」
どういうことなのって顔の猟兵たちへ、眉間にしわを作りながら話を続ける。
「んとね、このオブリビオンは大食いするなら苺スイーツが一番得意なの。食べ続けている間はどんどん力を増しちゃうんだよね。だから、皆は『チョコットキング』よりたくさん苺スイーツを食べなきゃいけないんだ」
ザ・ステージには特殊な戦闘ルールがある。ここのルールは『オオグイフードバトル』といい、『チョコットキング』よりたくさん苺スイーツを食べることが重要になる。
彼以上に食べることができれば彼我の力は逆転するだろう。強力なユーベルコードで戦うことができるようになるのだ。
ここでは料理に手を加えても怒られないので、味を変えながらたくさん食べる工夫をするという手もアリ。相手よりたくさん食べれば勝利は揺るがないが、同じぐらいでもなんとか互角には持ち込める。
「だからね、苺スイーツは誰にも譲らんってぐらいの猛者を大募集中だよ!」
大きな声をあげて、テスは猟兵たちに声をかけ続けた。
六堂ぱるな
はじめまして、もしくはこんにちは。
六堂ぱるなと申します。
拙文をご覧下さいましてありがとうございます。苺だいすき。
●ご注意!
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●状況
こちらのフードステージのルールは『オオグイフードバトル』です。
敵オブリビオンとの苺スイーツをめぐる大食いフードファイトに始まり、圧倒的な大差をつけられれば後半の戦闘パートが楽になります。同じぐらいの消費量となれば互角の戦いになりますが、フードファイトで負ければ勝負にならないのでご注意を。
●敵
『チョコットキング』は苺スイーツを最も得意とするフードファイターオブリビオンです。『苺スイーツをたくさん食べられる理由』や『大食いにかける熱意』などをプレイングにぶつけてください。
その理由や情熱の量が『チョコットキング』を上回れば、彼に勝つ力を得られます。味を変えるのもアリなので、横で味を変える料理をする連携プレイもいけます。
皆さまのご参戦をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『チョコットキング』
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POW : チョコレートテイルズ
【甘味への欲求 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【巨大な溶けかけのチョコレートの尻尾】から、高命中力の【滑らかトリフチョコ】を飛ばす。
SPD : 蕩けるチョコボディー
【チョコットキング 】に覚醒して【熱々のチョコボディー】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 超硬化チョコボディー
【 超硬化したチョコボディー】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
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月隠・望月
ここで勝つため、には、『いちごすいーつ』を敵のオブリビオンより多く食べなければなら、ない。つまり、甘味をたくさん食べてもいい……?
キマイラフューチャーは素晴らしい。がんばる
家ではたくさん甘いものを食べると叱られる、が、今回は大義名分がある
普段食べられない分、ここで食べる。わたしなりに甘味を楽しむとしよう
勝負も重要、だが、相手に勝つために食べるのは苦しい、からね。食事は楽しいのが一番だ、と考える
わたしは色々な種類の甘味を食べていこう。様々な甘味を味わえ、また飽きるのも避けられて、一石二鳥
可能であれば、飲み物には緑茶を。あの苦みは甘味と非常に良く合う
敵を攻撃するときは【剣刃一閃】で斬りつける
黒瀬・ナナ
アリシアさん(f01607)と一緒に。いざ、世界を救う為にいただきまーす♪
甘酸っぱい苺はそのままでも美味しいのに、さらに美味しいスイーツにしちゃうなんて最高よね!
『大食い』に自信はあるから、最初は全種類のスイーツを普通に食べて、2周目以降はアリシアさんの手作りソースで色々な味の組み合わせを楽しみながら頂くわね。
宝石みたいな大粒苺が乗ったタルトに、塩キャラメルとチョコをたっぷり……んっ、これは美味しい!アリシアさんも一口いかが?
アリシアさんも、何かオススメの組み合わせがあったら教えてほしいのよ。
……はっ!スイーツに夢中で怪人忘れるところだったわ。アリシアさん、全力でやっつけちゃいましょう!
アリシア・マクリントック
ナナさん(f02709)と一緒に参加
ふむ……私はたくさん食べるというのは得意ではないので、お手伝いに回りましょうか。
どこまで行っても苺……というのは飽きてしまうでしょうから、苺のスイーツに合わせられそうなソースを色々作ってみましょう。これならあまりボリュームを増やさずに味を変えられますね。
オレンジ、レモン、ぶどう、リンゴといったフルーツや塩キャラメル、チョコといった一味違うスイーツ風。他にもいろんなソースを作りましょう。必ずしもおいしい組み合わせばかりではないでしょうが、気分転換にはなるかもしれません。
特においしかった組み合わせはメモしておいてあとで個人的なレシピ開発に役立てましょう!
リダン・ムグルエギ
…無理ね
苺スイーツは大好きだけど…
アタシの食欲じゃ敵わないわ
でもね
自分の世界を守るためだもの
キマイラ流の攻略法、見せてあげるわ!
まず、コネを活かしヤジキマイラの皆にアタシが作った服を着て応援してもらうの
その服には催眠模様を仕込んであるわ
見た人の味覚を操り唐辛子の味を感じなくさせるような模様をね
敵に通じなくても自分や仲間にはコードは通用するでしょ
説明し作戦開始
激辛苺スイーツを食べてみた、よ!
(唐辛子を周囲にぶちまけ)
自分が大食いできなくても
相手の食べれる範囲を削りきって勝つ
それがゴッドペインターの戦いかたよ
赤く染めた後は休み休み堪能し食べ進めるわ
無理ー、食べ過ぎてうごけなーい
戦いは仲間に任せるわ
カーニンヒェン・ボーゲン
スイーツ・ベリーは良いですな。
嗜み程度とはいえ料理を致しますが、中でも果物は別格です。
いや、楽しみですな。
手始めに定番から頂きます。
甘味の違い、見た目の違い等を味わうだけで幾らでも食べられますな。
それだけで飽きがくるとは思えませんが、そこから一歩創意工夫の施された品々には更に食欲を唆られます。
味わってばかりはいられないのでしょうが、こればかりは性分といいますか…。
年甲斐もなく、お恥ずかしい。
老体故、食べてすぐの激しい運動は控えさせていただきます。
UC:リザレクト・オブリビオンに後の事はお任せします。
攻撃を受けぬよう気は抜きませんが。
まだ頂いていない種類のスイーツが残っているかもしれませんので。
ユーフィ・バウム
森から出てきて味わった食事の中で、
ひときわ感動したお菓子こそ、苺スイーツです!
甘酸っぱい新鮮な苺をお菓子で綴じ込めた
あのスイーツを食した時の世界が変わった瞬間…!
あの感動は私から消えることはないのです
見た目も可愛いのが、とても素敵ですよね
上記感動の記憶――大食いにかける熱意をもって
フードファイト挑みます!
【大食い】ですのでぺろりといけますが、
苺スイーツの感動の記憶は私に凄い【勇気】をくれるのです
絶対にチョコットキングに食べ負けないと【捨て身の一撃】!
フードファイトが終われば後は勝負ですね
《トランスクラッシュ》でぺっちゃんこにしますよっ!
アドリブ・連携歓迎
仲間の工夫等に協力できることあれば手伝う
ウィンディ・アストレイ
苺…!最近は旬の時期でも、お高くなっていますから
満足できるまで食べるの、難しいんですよね…
それを一杯食べれば、世界を救う一助になるなんて…素敵すぎます!
とは言え、ただ漫然とがっつくというのは品がありませんし
スイーツを作って下さった方への敬意不足です
別に時間制限がある訳でも無いのですから、落ち着いて頂きましょう
ボクは総合量で一杯食べるという方向で攻めます
苺は冷やしても常温でも、暖めても美味しい物ですし
それぞれで食感も味も変わりますから
味を変えたい時は、調理法の違うスイーツを頂く事で対処します
チョコットキングには『鎧無視攻撃&怪力』付【Influx Burst】を
一撃必殺の心積もりで叩き込みます
●芳しき赤の祭典
座り心地のいい椅子に広々としたテーブル、そして一面の苺のスイーツ。
午後のお茶、いや完全に苺を堪能して下さいと言わんばかりのテーブルセットである。そして幾つも並ぶテーブルの一番奥、周りじゅうにこれでもかと苺スイーツを取り揃えて鎮座するものがいた。
このステージのボスたるチョコットキング。帽子をかぶった狼の毛並みは白く滑らかで……いや毛並みも何も、ホワイトチョコだ。尻尾の先の茶色い部分や帽子はビターチョコらしい。まさかの美味しい系ボスだが、今は打倒すべき敵である。
なにしろこのチョコットキング、苺スイーツならいくらでも食べられる、キングの中でも音に聞こえたフードファイターなのだから。
ただ正直、一面の苺スイーツを前にしてそっちが目に入らない人もいた。
「ここで勝つため、には、『いちごすいーつ』を敵のオブリビオンより多く食べなければなら、ない。つまり、甘味をたくさん食べてもいい……?」
勝利条件を確認しただけでふわふわっと幸せオーラに包まれた月隠・望月(天賦の環・f04188)である。家ではたくさん甘いものを食べると叱られるのだが、今この場ならば完璧な大義名分があるわけで。
「キマイラフューチャーは素晴らしい。がんばる」
力いっぱい甘味を楽しむ気満々の望月だけでなく、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)も目の前の光景に喜びを噛みしめていた。
「森から出てきて味わった食事の中で、ひときわ感動したお菓子こそ、苺スイーツです!」
密林出身の彼女にとって、苺のお菓子はまさにカルチャーショックだったのだ。
「甘酸っぱい新鮮な苺をお菓子で綴じ込めた、あのスイーツを食した時の世界が変わった瞬間……! 見た目も可愛いのが、とても素敵ですよね!!」
少しも大袈裟でなく、あの感動を忘れることはないだろう。そして大食いにかける情熱も合わされば、この場で負ける要素などユーフィには欠片もない。
いかにも紳士然としたカーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)は、スイーツへの期待がぴぴぴと動く耳の動きに現れていた。
「本当に、スイーツ・ベリーは良いですな。嗜み程度とはいえ料理を致しますが、中でも果物は別格です。いや、楽しみですな」
「最近は旬の時期でも、お高くなっていますから。満足できるまで食べるの、難しいんですよね……それを一杯食べれば、世界を救う一助になるなんて…素敵すぎます!」
カーニンヒェンと並べば良家の親子のようにも見えたかもしれない、感動露わなウィンディ・アストレイ(W-ASTRAY・f09020)である。この容姿で趣味は食べ歩き、といえば微笑ましい感じで受け止められるだろうが、実際のところ彼女、ガチ勢だ。
「……無理ね……苺スイーツは大好きだけど……アタシの食欲じゃ敵わないわ」
早くも絶望に打ちひしがれてリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が呻くような声をあげた。なにぶん今回はただの食べ放題ではない、勝負がかかっている。
それでもここで諦める彼女ではなかった。
「でもね。自分の世界を守るためだもの。キマイラ流の攻略法、見せてあげるわ!」
もちろん、負けないための布石はちゃんと打ってある。ステージのルールで観客を入れてはならないとはなかったので、コネを活かして応援団として、ヤジキマイラたちをたくさん招いていた。全員がリダンの作った服を着用して応援してくれる。
「まあ、この手は後で。まずは普通に始めましょう」
「甘酸っぱい苺はそのままでも美味しいのに、さらに美味しいスイーツにしちゃうなんて最高よね!」
定番のショートケーキやシフォンケーキ、タルトやモンブランを眺めて黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)が声を弾ませた。大食いには自信がある。まずは全種類、満遍なく食べるところから始めたい。
全種類の制覇から始めたいのはユーフィやウィンディも同じで、普段食べられない分ここで味わうつもりの望月も気合いが入っていた。
「様々な甘味を味わえ、また飽きるのも避けられて、一石二鳥、だ」
ナナと一緒の💠アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は、主にサポートとしての役割を果たすべく来ていた。たくさん食べるというのは得意ではないのだ。
「どこまで行っても苺……というのは飽きてしまうでしょうから、苺のスイーツに合わせられそうなソースを色々作ってみましょう」
大食いである以上、ボリュームを増やさずに味を変えることが望ましい。
「いざ、世界を救う為にいただきまーす♪」
ナナの弾む声にあわせて猟兵一同、勝負スタート。チョコットキングもおもむろに、自身が鎮座するテーブルに山盛りのスイーツを食べ始めた。
最初からとばしていくのはユーフィで、かつての感動の記憶をもう一度という勢いで、苺のスイーツを次々と口へ運んでいく。それに比べればペースはゆっくりめで、カーニンヒェンもタルトやパイを次々とっていった。
「味わってばかりはいられないのでしょうが、こればかりは性分といいますか……。年甲斐もなく、お恥ずかしい」
照れたように笑う彼に笑顔で頷いて、ウィンディが紅茶を一口。
「いえ、おっしゃる通りかと。がっつくというのは品がありませんし、スイーツを作って下さった方への敬意不足です。落ち着いて頂きましょう」
という彼女が一番のハイペースだったりもする。ケーキはホールで消えていき、ムースはバケツで食べたほうが早いのではないかというほどだ。
しかし敵もハイペースで食べ続けている。
「そろそろかしら。じゃあ始めるわね」
事前にリダンが用意した非常の策、【ゴートリック・ファウスト】発動の時である。
「あーあ、面倒臭いわ。見た時点で、戦う前に勝負は決まってるのに」
既に仕込みは完璧、一行はリダンの応援団たちの服を凝視する。そしてリダンはというと、辺り一面の苺スイーツに唐辛子をぶちまけた。
「さあ、激辛苺スイーツを食べてみた、よ!」
動画の盛り上がりを考えるなら、ここは苺にもかかわらず辛さに七転八倒する辺りだ。しかし実際にぱったり倒れてひくつきだしたのはチョコットキングだった。
「……本当です、辛さは感じません!」
ユーフィが驚きの声をあげる。リダンの応援団たちの着ている服は、見るものに唐辛子の味を感じさせない模様を仕込んであった。後はリダンがユーベルコードを発動させるだけだったのだ。
辛さに悶えるホワイトチョコの狼が、別の皿の苺スイーツに食いついた。しかし辺り一面のテーブルのすべてが唐辛子まみれ、毛皮が限界まで逆立つ。
「自分が大食いできなくても、相手の食べれる範囲を削りきって勝つ。それがゴッドペインターの戦いかたよ」
ビシっときめたリダンは再び席につくと、幾分ペースを落として真っ赤に染まった苺のショートケーキの皿をとった。唐辛子が降り積もったミルフィーユを食べながら、ナナが驚いた声をあげる。
「本当に唐辛子の味を感じませんよ!」
別の方向で赤く染まったひと皿を食べ進める彼女を眺めて、アリシアが難しい顔で首をひねる。確かチョコレートやジェラートには唐辛子フレーバーもあったはずだ。
「まったく感じないとは凄いですね……後でチョコに混ぜ込む適量を調べてみましょう」
チョコットキングのペースが激減している間に、こちらは数を稼がなくてはならない。
アリシアはいろいろなフルーツや、塩キャラメルなどのソースを試作してナナに渡していった。フレーバーが変われば気分転換にもなる。
今回のチャレンジは今後の個人的なレシピ開発に役立ちそうだ。きらきら輝く宝石のような大粒の苺の乗ったタルトに塩キャラメルとチョコをたっぷり乗せて、一口食べたナナが目を輝かせた。
「んっ、これは美味しい! アリシアさんも一口いかが?」
もちろんレシピ開発に味見は必須。一口貰ったアリシアがじっくりと目を閉じて味わうと、メモにあれこれ書き込んでいく。
「アリシアさんも、何かオススメの組み合わせがあったら教えてほしいのよ!」
「苺には酸味があるフルーツがいいかもしれませんね?」
二人で顔を見合わせて、味変えは随分とはかどりそうだ。
一方で苺はいくらでも入る派も快調にペースをあげていた。あくまで上品な所作を崩さず、しかしとんでもないペースで皿を積み上げていくカーニンヒェンがカップを傾ける。
「甘味の違い、見た目の違い等を味わうだけで幾らでも食べられますな」
「勝負も重要、だが、相手に勝つために食べるのは苦しい、からね。食事は楽しいのが一番だ」
ペースが落ちないという点でいい勝負の望月がこくこく頷いて、さくさくのダックワーズを平らげる。食感の軽さによく合った、甘さを控えた苺のバタークリームが絶品。飲み物に緑茶を選んでいる彼女は、お茶の苦みとスイーツの甘さを楽しんでいた。
ほんのりピンクに色づいたマカロンと挟まれた苺の濃厚なガナッシュを味わいながら、カーニンヒェンが首肯する。
「飽きがくるとは思えませんが、そこから一歩創意工夫の施された品々には更に食欲を唆られます」
「苺は冷やしても常温でも、暖めても美味しい物ですし、それぞれで食感も味も変わりますからね」
六層重ねたミルクレープは間に刻んだ苺とクリームたっぷりだが、ウィンディのフォークは休むことを知らない。食べている総量で言うなら、彼女とユーフィが互角の勝負を繰り広げている。
ユーフィのペースが落ちないのは理由がある。苺スイーツへの感動の記憶が勇気をくれるだけでなく、捨て身の深い決意も原動力になっていた。
「絶対にあなたには食べ負けませんよ!」
唐辛子まみれの苺スイーツを一口食べては悶絶する狼を横目に、巨大な苺パフェをもりもりと食べ続ける。花が咲いたように盛りつけられた苺とふんわり生クリームの相性は抜群で、まだまだユーフィのおなかには余裕がある。
何を食べても唐辛子の辛さしか感じないチョコットキングが、痺れを切らして咆哮したのはそれから1時間ほど経過した時だった。さすがにこれ以上は容認し難いということらしいが、その時には既に彼と猟兵とで、食べた量には大差がついている。
「申し訳ないが老体故、食べてすぐの激しい運動は控えさせていただきます」
にこやかに笑ったカーニンヒェンの傍らに、死霊騎士と蛇竜が姿を現した。すぐさまチョコレートでできた狼へ襲いかかる。
驚いて跳びのいたチョコットキングだったが、蛇竜に食いつかれて身を捩った。ホワイトチョコレートで出来た体は、もはやかなり力を殺がれているのが見て取れる。
カーニンヒェンに一矢報いようと奮闘しているが、死霊騎士に阻止され本人にも攻撃を躱されでまるで戦いになっていない。
「無理ー、食べ過ぎてうごけなーい……戦いは任せるわー……」
「任せて下さい、ぺっちゃんこにしてあげますよっ!」
息も絶え絶えのリダンに紅茶を差し入れて、ユーフィが身軽に向き直った。
「行きますよ!」
椅子を蹴って宙を舞うと、跳躍した白い狼に渾身の体当たりを食らわせる。力負けした狼は日向に出したチョコレートのように大きくへこみ、肉感的なヒップの下敷きになってしんなりした。大食いで敗北し弱体化したせいか、さっきまでより元気もない。尻尾の先から飛ばすトリュフチョコはキャッチされ、挙句ウィンディに分析されていた。
「苺と合わせるには主張が強すぎますね」
「本当ですね。ナナさん、食べてみますか?」
アリシアに数粒皿に乗せて差し出され、食べてみたナナが首を傾げる。
「……本当ですね。美味しくないわけではないのに」
それから我に返った。よく考えたら仲間が戦闘を始めている。
「……はっ!スイーツに夢中で怪人忘れるところだったわ。アリシアさん、全力でやっつけちゃいましょう!」
「ちょっと待って下さいね、メモをしまいますから」
こまめにつけていたメモをしまいこむアリシアの傍らを、ナナは迦陵頻伽【花嵐】を携え駆け抜けた。風を切る音はまるで鳥の聲のよう。長い黒髪をなびかせ舞うようにふるわれる薙刀は、逃れようとテーブルを蹴ったチョコットキングを捉え薙ぎ払った。一撃、二撃、旋風のような回転に合わせ切り払う。
落下した勢いでテーブルを一つ叩き潰したチョコットキングは跳ね起きて唸った。
ホワイトチョコの体が超硬化し、同時にきらめく牙にこもる力が何倍にもなる。力を減殺されているとはいえ油断ならないその牙が、望月を捉えた――かに見えたが。
残像が揺らいで消えた次の瞬間、望月は伸びきった狼の身体へ斬りつけていた。無銘の刀がざっくり胴を薙いで、硬化したはずの体を深く斬り裂く。チョコレートの体からは血も噴き出さず、滑らかな切断面だけが鮮やかで。
その勢いで狼は為す術もなくテーブルに激突する。
「ゆっくり食べられませんし、そろそろ決着をつけましょう」」
ダージリンの紅茶で喉を潤したウィンディが立ちあがった。インフラックス・バンカーを起動、チョコットキングに標的を絞る。危険を察知したホワイトチョコの毛並みを逆立てて唸りをこぼしているが、もはや虚勢に過ぎなかった。
「一閃必倒……インフラックス・バンカー!」
【Influx Burst】起動。
膨れ上がったサイキックエナジーは爆発的な勢いでパイルを射出。細身の身体からは想像し難い力を乗せた物理の一撃は、チョコットキングの胴体を擂り潰しながら貫通した。
ついでに狼の乗っていたテーブルも粉砕して木端微塵に砕け散らせる。
「ふう。では続きを」
「私、次はタルトにします!」
にこやかに席に戻るウィンディにユーフィが続き、こくこく頷いた望月がシャルロットの乗った皿を手に席へ戻った。それを見つけたカーニンヒェンが騎士と蛇竜を還しながら軽く目を瞠る。
「失礼、それはどちらのテーブルに? まだ頂いていない種類のようです」
「それなら大時計の前のテーブルにありました!」
「苺のソースとキーマンがたいへんに合いますよ」
ナナとアリシアが一言添えて、彼を案内して一緒にテーブルへ向かっていった。
「……嘘でしょ……」
まだ食べるつもりらしい仲間の様子にリダンが胸と息を詰まらせる。ひと休みしながらお茶でも飲んだら、少しは満腹感が薄れるかもしれない。
かくてオブリビオン、それもステージボスの撃破に成功した(リダンを除く)一行は、甘酸っぱい苺のお菓子をとことんまで堪能した。
『システム・フラワーズ』への道はまだ遠い。
けれどこの戦いの積み重ねで、いつか必ず手は届くだろう。
成功
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