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バトルオブフラワーズ⑦～お姉さんと一緒！

作者：しじる

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　いつもは元気いっぱい天真爛漫なクトゥルティア・ドラグノフだが今回は真面目なキリリッとした表情で話し出した。
「みんな知っての通りキマイラフューチャーが真っ二つに割れちゃったよ！その中央にあるフラワーズメンテナンスにたどり着くためには周囲のステージをクリアしないといけないんだ。それを妨害するために怪人たちも集まってる。今回このサウンドステージにいるのは近所の可愛い天然お姉さん『千葉・牛美』。見ての通りふわふわな天然空気にやられないように気をつけて！」
　そう告げてテレポートを開く。そこには賑やかに彩られたステージがあった。その中央に陣取る怪人がいる。彼女がおそらく千葉牛美だろう。さあ出陣だと、テレポートに猟兵たちが飛び込もうとした時だ。
「あ、ごめんまって！」
　ドラグノフが制止の声をかけた。なんだなんだと振り返る猟兵たち。急いで伝え忘れたことをドラグノフは言った。
「この場所は歌を歌わないと力が発揮されない特殊な空間なんだ！ただ普通に戦っても力が発揮されないからダメージがほとんど通らないんだよ！」
　それじゃあどう戦えばいいと言うのだ。猟兵の一人が声を荒げた。それにドラグノフは微笑んで。
「歌いながら戦えばいいんだよ！そしてその歌の思いが強ければ強いほど、効果は強くなるんだ。つまり、思いが強いほうが戦いを制するんだよ！」
　そういって胸を叩き、無駄に大きな双丘を揺らした。
「私は一応アイドルだからわかる。歌に込められた思いは絶対答えてくれる。それは相手だってそう。その事に注意しながら戦ってね！それじゃあ私の故郷のことをよろしくね！」
　そういって、今度こそドラグノフは猟兵たちを見送った。

第1章 ボス戦 『近所の可愛い天然お姉さん『千葉・牛美』』

POW   :    うふふ、お姉さんハグが好きなの！ 【豊満な胸】から【温かく柔らかい感触】を放ち、【妄想や誘惑】により対象の動きを一時的に封じる。 SPD   :    あらあら、うふふ。 【お姉さんの意図せぬ天然行動】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【や空間をお姉さんの天然色に染め上げる】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。 WIZ   :    ほらぁお姉さんの搾りたて生牛乳よ！（言い間違い） 【牛乳瓶】を向けた対象に、【牛乳瓶から放出した牛乳】でダメージを与える。命中率が高い。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　さあ歌合戦（物理）の始まりだ。【劉・涼鈴】はその身の丈を軽く超える巨大なハルバードの仲間である方天戟に分類される覇王方天戟を手に千葉の前に躍り出る。牛のキマイラとして、同じ牛の怪人には負けるわけにはいかないのだ。
「さあ勝負だよ！」
「あらあら元気のいい子ね、おねえちゃんそういう子好きよ！」
　そう呟き、劉にそう微笑みかけた後千葉はスゥと息を大きく吸うと歌いだす。それはまるでミュージカル。まさに戦いながらというより行動しながら歌うにはふさわしい。オペラ歌手のように張りのある声が観客のいないステージに響き渡る。
「あぁ悲しい、悲しいわ。私とあなたは猟兵と亡霊、戦う定め。けれどお姉さんなら大丈夫。牛乳でも飲んで仲良くしましょう？共に世界の滅びの端で、美しく散る物語を見つけましょう？」
　歌声と共に軽やかに踊りながら劉を優しく抱きめようとする。当然劉はそれを拒否、受けてしまえば自身の弱体化は避けられない。かといって反撃に出たいが、想像以上に大きい千葉の歌声に自身の歌がかき消されてしまい力が発揮できない。このままでは危ない。そう思われた時だった。
「大丈夫、お姉さんに任せて！」
　唐突にステージに流れ込んでくる優しくも力強い歌声。それは【レティエル・フォルクエイン】の歌であった。彼女のユーベルコード【サウンド・オブ・パワー】が共感したものを強化していく。それは劉も例外ではなかった。
「おお、力がみなぎるよ！これなら！！」
「私も合わせるわ涼鈴さん！あなたの歌を！！」
　一人の歌声でダメなら二人の歌声で。今度は千葉の歌声をかき消して、ステージにその声を響かせていく。
「いくらキャラかぶりしてたってレティちゃんは負けないんだからっ！」
　そう言い切り、歌にさらに思いを乗せて奏でる。声帯を響かせ空気を震えさせる。
「もっと頼って、お姉ちゃんに！任せておいて、これぐらいは、何でもないことだから！」
「よーし、いくよ！！」
　いまこそ二人の歌が混ざり合う。奏でられるのはキマイラフューチャーの男の子が好きそうなスーパーロボットやヒーロー系の主題歌のような、一昔前のアニソンにも近い歌。力強く、歌のサビの一番気持ちのいいところで主人公や必殺技名を叫ぶ！そう、高らかに！
「いーまだー！　ひっさつー！　グラウンドクラッシャーッ！！」
　ステージの効果か、エコーがかかり、その思いと歌声の乗った覇王方天戟はまさしくヒーロー必殺の一撃。コマのように回りながら遠心力をつけて、腰を大きく捻り、バットを振るうかのように繰り出されるユーベルコードは歌でも語られた【グラウンドクラッシャー】。まさに必殺、それは千葉の腹部にクリーンヒットし、彼女を大きく吹き飛ばした。
「いやぁん、フラれちゃった……」
　しかしそう呟きながらもち千葉は空中で受け身を取り、体勢を立て直す。まだ戦いは続きそうであった。しかし二人の思いを乗せた歌の一撃は間違いなく千葉に大きなダメージを与えたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　千葉の前に次に現れたのは【ミケ・ナーハ】だ。早速ユーベルコード【コスプレ変身（コスプレ・メタモルフォーゼ）】を発動させて千葉に対して有効なコスプレへと変身する。その内容はへそ出しミニスカのカウガール。なるほど牛には確かにカウガールは有効そうだ。自慢の歌唱力とスタイルを見せつける時が来た。
「悪い牛のお姉さん〜おしおきです〜！」
　千葉に対抗するように、こちらもミュージカル風に歌いながら投げ縄を投げる。もちろん千葉もそれにつかまらないように歌いながら逃げる。
「おしおき、いやよ。束縛はごめん、私は自由に、生きて滅ぶ世界を見つめるのー！」
　有効とは言っても相手もそこそこ技量がある、簡単には捕まらない。だけれどこのコスプレ衣装はユーベルコードで作られたもの。そこを失念したのは千葉の失敗だった。何度か縄を回避していると、なんと縄が意志を持ったかのように急に空中で軌道を変えて、千葉の両腕を拘束した。これには驚き千葉はつい歌うのを止めてしまった。
「絶対逃がしません〜恥ずかしいおしおきです〜！」
　そのまま高速で縄を走らせ、ナーハは千葉をあっという間に亀甲縛りに仕上げてしまった。ボディーラインとみずみずしい二つの果実が強調されこれは恥ずかしい。
「いやぁん！？」
　意外とこの千葉、恥ずかしさ耐性はないのか必死で縄を解こうとするがそれをナーハがさせまいと千葉の上にまたがり邪魔をする。まさに農場のカウガールである。こうして結果的にはダメージを与えていないが、千葉の体力と精神力を両方削ることに成功した。

成功 🔵​🔵​🔴​

　歌わないとダメージが通らない。なんとも面倒な仕掛けだ。【笹乃葉・きなこ】はそう思いながらもすでにどんな歌を歌うか決めていた。それはネット配信で行われる特撮やドラマの歌だ。自分のテンションを上げる歌なら何でもいい。このステージの特性をよく活かしていた。
「WOW!WOW！上っ面な正義感をはぎとれー！」
　それは所謂デスメタル、正直巫女が歌うモノかといわれれば疑問だが、そもそも彼女それ以前に野生児である。パワフルな歌唱力に先ほど羞恥心で歌う体力も精神力も持っていかれた千葉にはそれをかき消せるほどの声はもう出なかった。歌えないならこのステージでは戦えない、好き放題やられるのみ。
「邪魔な綺麗ごとをきりさけー！」
　笹乃葉のユーベルコード【笹乃葉式気功術（ササノハシキキコウジュツ）】が牙をむく。未知の生体エネルギーが千葉を拘束し、力強く地面へと叩きつけた。弾力のある体が地面にキスすると同時にバウンドし、あわせて笹乃葉が駆け出す。
「何か欲しなら自分の手を血で染めろォー！！」
　強烈なシャウト、会場に響き渡る。同時に打ち出したドロップキック、宙へと笹乃葉のふくよかな体が舞い、両足が千葉の顔面にクリーンヒットする。
「きゃあああああ！？」
　あわれ千葉は螺旋を描いて吹き飛んでいく、その先には一人の女性がいた。危ない、誰もが思う感情に女性は持っていたエレキギターで答えた。会場をかき鳴らす電子の弦音。脳天まで突き抜けていく刺激的な音楽。ああ、これはまさしく。
「ロックだねぇ！」
　女性、【大宝寺・朱毘】は飛んできた千葉に目掛けて腰の入った強い回し蹴りを放った。こめかみに直撃し千葉の体がまた宙へと飛ぶ。
「お前なかなかロックな歌を歌うじゃないか！名前は？」
　宙へと浮く千葉を他所にして、大宝寺は笹乃葉へ問う。一瞬呆気に取られた笹乃葉だったが特に黙秘する理由もなく名乗る。
「きなこ、笹乃葉きなこ」
「きなこか、あたしは大宝寺朱毘。ロックなお前とセッション組んでみたくなったぜ！」
「……せっしょんってなんだべ？」
「やればわかる、一緒に歌おうぜ！」
　にかっと笑ってギターを構える大宝寺、よくわからないが不思議とやってみたいと思った笹乃葉。ここに即興のシンガーソングタッグが生まれた。
「さあいくぜ、あたしの曲じゃないけど……ゆるふわな空気に負けねーように、クール＆ハードにキメてみようか！『Brave Soldier』」
　鳴り響く心地よいエレベーターの音、紡がれる歌詞は勇気をつけるもの。戦士を讃える歌がステージにあふれていく。ユーベルコード【サウンド・オブ・パワー】に乗せて、共感する皆の力がみなぎっていく。
「今こそ掲げろ　勇気の剣　君こそが……」
　サビの一番の盛り上がり、そこに差し掛かった時宙へと飛んでいた千葉が落下してくる。それを確認した二人のやることは一つ、合言葉は既に分かっていた。
「Brave Soldier！！」
　強化された二人のキックは千葉を的確に捉え、その身体を高く高く吹き飛ばし、ステージの天井をぶち抜いて、千葉を宇宙空間へと追い出すのであった。
「お、覚えていなさいよぉ！？」
　千葉のそんな負け惜しみの声が聞こえた気がした。

　こうして、『ザ・ステージ』の戦いの一つが幕を閉じた。しかし戦争はまだ始まったばかり。この『ザ・ステージ』もほかの区画で戦いが続いている。休んでいる暇はない。猟兵よ、キマイラフューチャーの未来のため、戦うのだ！　　　　　【END】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月03日