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ホテル・ミスティ殺人事件

#UDCアース


「ミステリーって面白いですよね。犯人を追い詰めるシーンなんて心躍ります」
 化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)は何を思ったか、集まった猟兵達にいきなり推理小説の話を始めた。ひとしきり語ると咳払いを一つ。
「実はUDCアースの世界で事件が発生しまして……皆さんに解決をお願いしたいのです」
 グリモアベースは、大雨の中に佇む夜の洋館を映している。
「事件の舞台となるのは、ホテル・ミスティ。日本の片田舎にひっそりと建つ、洋館の外見をした宿泊施設です。どうやらそこで、邪神復活を目論む信者が暗躍しているようで」
 信者は芸術的な殺人こそが邪神復活の儀式の鍵だと考えたようだ。ホテルで猟奇的な殺人事件を起こすことで、邪神を復活させようとしているらしい。
 ホテルでは現在、二階の客室内で体をバラバラにされて殺害された人物が見つかったばかりであり、これは信者の犯行と見て間違いない。
 ホテル側は、まだこの殺人事件を警察に通報しておらず、ラウンジでひとまず宿泊客を集めて事情を説明することにしたようだ。
「そこで皆さんには、今からこのホテルを訪れて頂き、次なる殺人事件を起こそうとしている信者――つまり犯人を推理で追い詰めて欲しいのです」
 旅行客として訪れても良いし、強引にホテルのラウンジに立ち入って、いきなり推理したことを語り始めても良い。
 ラウンジに集まっているのは、支配人の男性のほか、三人の宿泊客だという。
 一人は、写真家の遠野。もう一人は料理人の二瓶。最後は手品師のコノハ。全員が20代であり、コノハだけが女性だという。
「推理の内容は……情報も不足していますし、その、ぶっちゃけ推測とか想像で構いません。論理を組み立てて追い詰めても良いですし、全然見当違いの推理だったとしても、犯人は儀式を台無しにされたと感じて排除しようとするでしょうから」
 勿論、推理を用意して行っても、上手く言葉が出なかったり、思うように語れない場合などもあるだろうが――成功すれば、犯人はおぞましい触手を召喚してくる可能性が高い。集団戦となるだろう。その後のことは、まだ分からない。
「支配人は弱気な事なかれ主義の壮年男性で、余り強く意見を主張する性格ではありません。三人のうち犯人ではない二人の宿泊客も、突然の事態に動転していますから、皆さんの話を聞いてくれることでしょう。というわけで」
 那由他は猟兵達を見回して、ぐいとガッツポーズしてみせた。
「皆さんであれば、きっと犯人を見つけ出せるはずです。どうぞ宜しくお願いします」


相馬燈
 マスターの相馬燈です。
 UDCアースの世界で事件が発生しました。今回はまず推理で犯人を炙り出すという、ちょっと変則的な内容になっています。

●舞台
 ホテル・ミスティ。
 洋館めいた外見の、日本の片田舎にあるホテルです。
 時刻は夜、外は季節外れの冬の大雨が降っています。

●第一章の状況
 ホテルで殺人事件が起きたため、支配人はまずラウンジで三人の宿泊客に今後の対応について説明しようとしています。事件直後のことでもあり、警察にはまだ連絡していません。

●第一章の目的
 ラウンジに集められた宿泊客の三人のうち一人が、邪神を崇拝する悪しき信者です。第一章の目的は「推理を語って、三人のうちの誰が犯人かを炙り出すこと」となります。
 推理の内容については何でも構いませんが、筋が通っていたりすれば判定でプレイングボーナスが付きます。

●その他
 第一章は特に、プレイングの集まり具合によっては、内容を見て厳選させて頂く可能性もありますので、ご了承ください。

 以上です。
 皆様の名(迷)推理をお待ちしています!
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第1章 冒険 『(名/迷)探偵は俺だ!!』

POW   :    犯人の驚異的な身体能力に引き起こされたトリックと推理する

SPD   :    犯人の卓越された技術によって引き起こされたトリックと推理する

WIZ   :    複雑な専門知識や数式でトリックを証明する

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木乃花・蓮司
すでに被害者が出てしまったことは残念だけど、これ以上の犠牲者を出さないためにも頑張って推理するよ!

こういうのって見た目から説得力を出すのが大事だと思うんだ。トレンチコートとハンチング帽を用意して、探偵らしい格好でいこう。帽子で目元を隠せば嘘だってバレにくそうだしね。

「話は聞かせて頂きました。」
と言いながら登場して、ここに宿泊するつもりだった通りすがりの探偵だと説明しするよ。

「犯人はこの中にいます!」
とコミュ力を使いながらはったりかまして、

・バラバラ死体ということは刃物が必要
・怪しまれずに刃物を持ち込める人物が犯人
・プロの料理人ならマイ包丁を持っているはず

という推理で二瓶が犯人だと指摘するよ。


梨地・澁市
正直今の段階で犯人を特定するのは無理でしょ…。
と言うことで、俺はまず現場を見てみたいかな。トリックの痕跡を調べるガジェットを作れるといいんだけど。
それから関係者にも話を聞きたい。人と話をするのは好きなんだ、コミュ力って奴?

推理/
死体をこんなにバラバラにするのはまず素人じゃ難しい。
一番怪しいのは、普段から包丁や鉈の扱いに長けた料理人だと思う。
手品師も手先は器用だろうが、女性に死体をさばくほどの腕力があるとは思えないし。


瑠璃光寺・未子
いつか読んだ探偵小説のように、ミコも推理がしてみたいぞっ!

大雨の中、執事の『ミモリ』(シャーマンの力で付き従えている忌神(UDC)に己の別人格を纏わせた存在)に傘を差させ、優雅に現場に訪れるのだ
心配性のミモリは「お、お嬢様、殺人現場など危のうございます…!」と訴えてくるが、ミコは賢いから平気だ
立派に名推理をしてみせるぞ♪

犯人はズバリ…手品師のコノハ、お主だ!
手品で日頃、人の身体をバラバラにしておるではないか
バラバラ殺人くらい、お手の物だろう?

え、証拠?
よしミモリ、証拠を持ってくるのだ!
ミモリ「ええっ、なんて無茶ぶり…」
(【ミモリの使いっ走り】を使用して現場から犯人の落とし物を持ってこさせる)


ヘルメス・トリスメギストス
「皆様、はじめまして。
私は執事のヘルメスです。以後お見知りおきを」

ラウンジに集まっている御主人様、お嬢様に紅茶を出して
ひとまず落ち着いていただきます。

「では、不肖この私が、この事件の推理を発表させていただきます」

執事とは、主が殺人事件に巻き込まれても問題ないよう
推理技術も習得しているものなのです。

「この事件はどうやって被害者をバラバラにしたかがポイントになります。
女性のコノハ様では力が足りません。二瓶様は料理人なので包丁をお持ちでしょうが、それを使ったらすぐに犯行がバレてしまいます。
よって、消去法で犯人は写真家の遠野様、あなたでございます」

わざと適当な推理を言いつつ三人の反応を伺いましょう。


ユコ・イコーリア
殺人に芸術もくそもないと思うんだけどね
ま、そんなこと言っても無駄だろうし。派手に壊させてもらいましょー

宿泊客の子供として訪れた設定で
ラウンジで支配人が説明してるのを聞きつつ
お気に入りのタブレット(やたら可愛らしくデコられている)に
今の状況と、可能なら事前に手に入れた見取り図を入力して
【WIZ】で推理

人に見つからず2階の客室へ向かうまでの所要時間T1、
殺害して死体をバラバラにする時間をT2、
また自室に戻るまでの時間をT3…として、
それっぽい数式を作って所要時間を導出

全て人に見られないで済ますには体をバラすのに慣れてないといけない
つまり料理人の二瓶さんが怪しいよ、と半ば勘で推理をぶつけてみよー


四十八願・狐倶利
狐倶利は旅行客としてホテルに訪れ、ラウンジに集まっている人達から事件のあらましを聴き、自分の推理を語った。
「今回の事件の現場は客室やろ?死体発見まで気づかへんかったってことは襲われたり争ったりしたわけではないんやろなぁ。当然ホテルの各部屋には鍵がついとるはずやし、不審なもんは入れんわなぁ。つまり、今回の被害者は自ら犯人を招いた形になるわけや。ということは、被害者と親しい人間が薬でももらんかぎりは犯行できんってことなんよ。もしくはオンナが色で惑わしても可能やなぁ。後は被害者の持ちもん調べたらある程度はしぼれるやろ。そない親しかったもんなら、連絡先やら共通の趣味やらあるやろうからな。」


ヴォント・ヴィーヴィス
推理と聞いて好奇心
僕はホテルに泊まりに来た乗客のフリで近づきます
「泊まる予定でしたが……何か事件でも?」
支配人さんには大事にしないからと説得して、調査の手伝いを申し出ましょう。僕も怖いままなの嫌ですから

犯人は写真家さんかな?
と疑ってます
感ですがね
でも、わざわざバラバラにしたなら、記録に残したい、なんて思いませんか?
連続殺人犯とかに多いらしいですよ
戦利品を残したい、とね
怖い怖い

なーんて言って周囲を引きつけている間に
バット・ディで蜂に怪しそうな品物を誰か隠してないか、こっそり調べさせておきますね
少しだけ召喚して部屋とか特に
何か見つかるといいな

戦闘の気配を感じたら、蜂を呼び戻して一般人を避難させます


四季乃・瑠璃
「ねぇ、瑠璃?面倒だし、犯人候補全員爆破しちゃダメ?今なら邪神も防げるよね♪」
「残念だけど我慢して、緋瑪。というわけで、皆さん、推理頑張りましょう。緋瑪が無差別爆破に走る前に…」

瑠璃がメインで推理。今回は瑠璃が本体で分身が緋瑪。

物騒な事を言ってる緋瑪を抑えつつ、他の人達とも協力して推理開始(残念ながらとか言ってる時点で瑠璃も結構危ない)。

バラバラ殺人と聞いて、肉や魚等、生き物(肉)の解体に長けた技術を持つ二瓶が怪しいと推理。

「人をバラバラにするのって大変なんだよねー」

緋瑪、黙って…。それに、料理人の二瓶なら肉切り包丁等、それを可能にする凶器を用意するのも容易。そう、犯人は二瓶さん、貴方です!


忌塚・御門
殺人事件ねぇ、いいじゃねえか小説家的にはテンション爆上がりだ
俺の設定は取材旅行中の推理小説家って奴にしとこうか。んでテキトーにラウンジ通りかかったら話聞いちまったってことで良いかね?

終始陰鬱にして強気に語る
「俺の筋読みじゃあ現状一番怪しいのは二瓶さん、アンタになっちまうんだよなァ?
牛だろうが豚だろうがアンコウだろうが人間だろうが、解体のキモってのはぶっちゃけ肉と筋と骨をどう手際よく切り離すかだろ?
それが頭に入ってりゃ案外出来ねえこたねえからな。その技術を素で持ってるだろうってのがアンタだって事だ」

いや、正直自分でもこんな話じゃ売れねえだろうなって思う筋書きなんだがな。



●探偵達の登場
 季節外れの冬の大雨が洋館めいたホテルの屋根を叩いていた。
「お、お嬢様、殺人現場など危のうございます……!」
 主人に傘を差し掛けながら心配そうに言ったのは、瑠璃光寺・未子に仕える執事のミモリだ。未子がシャーマンの力を用いて己の別人格を与えた忌神である。
「ミコは賢いから平気だ。ミコも推理がしてみたいぞっ!」
 やり取りを交わしながらポーチの前まで来ると、ミモリは傘を閉じてホテルの扉を開き、未子を先に通した。受付係らしい従業員の女性が不安そうな顔を二人に向けて、頭を下げる。
「ごきげんよう」
 育ちの良さを窺わせる物腰で挨拶すると、未子はミモリを手で示して、
「こちらは執事のミモリ」
 紹介されたミモリが一礼する。
「あの、僕も泊まる予定でしたが……何か事件でも?」
 エントランスには、既にヴォント・ヴィーヴィスの姿があった。宿泊客を装った彼は、受付係に呼び止められると、逆に説明を求めたのだ。
「その、詳しくは支配人がご説明させて頂くことになっておりまして」
「支配人はどちらに?」
「ラウンジです。そちらの……」
 玄関をくぐって正面奥にある大きな扉が、ラウンジの入口らしい。
 礼を告げてヴォントがラウンジの扉を開けると、独特なイントネーションを持った声が聞こえてきた。
「殺人事件て。こりゃまたえらいことやなぁ」
 声の主は、四十八願・狐倶利。彼もまた、受付係を何やかやと言いくるめると、旅行客としてこのラウンジに足を踏み入れていたのだ。 
「ですから、ご説明するため、皆様にはこちらにお集まり頂いた次第でして……」
「殺人ね。何かと思ったらそういうことか」
 ラウンジに入ってきたのは、陰鬱な雰囲気を漂わせる長身痩躯の青年だった。両目の下に浮いた隈が、長期の不眠を思わせるほどに深く、幽々たる印象に拍車をかけている。
 口を開きかけた支配人を、青年――忌塚・御門は軽く手で制すると、
「ああ、俺もここに世話になろうと思っていたクチだ。取材旅行中の推理小説家でね。こんなところに出くわすなんて事実は小説より何とやらだが」
 やれやれ、と言いたげな御門ではあるが、内心では高揚を覚えていた。
(「殺人事件ねぇ、いいじゃねえか小説家的にはテンション爆上がりだ」)
 小説家という肩書は本物であり、御門にとってはけだしお誂え向きの舞台と言えた。
「この雨の中で宿探すんは大変なんや。しっかり説明してもらわんとなぁ」
「それがですね……」
 狐倶利に言われると、支配人は、事ここに至るまでの経緯を改めて説明し始めた。
「ねぇ、瑠璃? 面倒だし、犯人候補全員爆破しちゃダメ? 今なら邪神も防げるよね♪」
 宿泊客だと言い、皆に紛れてラウンジの席に座っていた瑠璃の口から、物騒な呟きが零れる。
「残念だけど我慢して、緋瑪」
 多重人格者である瑠璃は、自身の人格の一つである緋瑪を小声でたしなめた。今回は瑠璃がメインで事件解決のために尽力するようだ。さらっと残念とか言っている時点で瑠璃自身も結構危ないのだが……。
(「さあ、皆さん頑張りましょう。緋瑪が無差別爆破に走る前に……」)
 そして支配人の説明が大方、終わろうとした時のこと。
「話は聞かせて頂きました」
 ラウンジの扉を開け放って入ってきたのは、トレンチコートを身に纏い、ハンチング帽を被った青年だった。
 こういうことは形からと、探偵に扮した木乃花・蓮司である。
「貴方様は……?」
「このホテルに泊まろうとしていた者です」
 そのステレオタイプの装いに、問うた支配人はもとより宿泊客の三人までもが唖然とした表情を浮かべたが、持ち前のコミュ力を活かした蓮司は、巧みな語り口で弱気な支配人を言いくるめてしまった。
(「すでに被害者が出てしまったことは残念だけど、これ以上の犠牲者を出さないためにも……!」)
「お話を伺うと、事件当時、宿泊客はそちらの三名のみ。外はこの天気です。だとすれば……」
 普段とは異なる丁寧な口調で言いながら、宿泊客の三人を見回す蓮司。
「おいおい、そりゃ俺達を疑ってるってことか?」
 重そうな機材を足元に置いた男――遠野が睨んでくる。
「紅茶を用意して参りました。まずは落ち着くことが寛容かと」
 更に何か言おうとした遠野の言葉を、ラウンジに入ってきたヘルメス・トリスメギストスが遮った。従業員の青年が、ワゴンの上に茶器を載せて後に続く。
 ヘルメスは、皆に温かい飲み物を、と従業員に依頼していたのだった。
「申し遅れました。私は執事のヘルメスです。以後お見知りおきを」
 胸に手を当てて、恭しく一礼する。
「どーも」
 テーブルに紅茶が置かれると、ラウンジの席に座っていたユコ・イコーリアは素っ気なく礼を告げた。宿泊客の子供と称してホテルに入っていこうとしたユコは、一歩間違えれば不審がられる可能性もあったが、大袈裟なまでに丁重なヘルメスが受付係と話している間に、さらりとラウンジに入ってしまったのだった。支配人が確認を取ろうとした際には、狐倶利が何やかやと事情を問いただし始めたので、幸いにも疑われずに済んだ。
(「殺人に芸術もくそもないと思うんだけどね」)
 可愛らしくデコられたタブレットをユコは忙しなく操作する。
「人に見つからず2階の客室へ向かうまでの所要時間T1、殺害して死体をバラバラにする時間をT2、また自室に戻るまでの時間をT3……として……」
 事前に調べた結果、ユコはこのホテルの見取り図を入手することに成功していた。それに支配人が説明した情報を加え、計算に必要な数値を算出。即席で作り上げた数式に代入して、犯人の移動距離と犯行の所要時間を導き出す。それは運も手伝った望外な成果と言えた。
(「これは行けるかも。派手に壊させてもらいましょー」)

 一方その頃、梨地・澁市はホテル二階の殺人現場に足を踏み入れていた。それは他の猟兵達が犯人を追い込もうとしている状況だからこそ出来た芸当だ。
「ああ、こいつは派手にやったもんだな」
 茶色の絨毯の上に広がる凄惨な光景を見下ろしながら、澁市は言うと、不可思議な機械を取り出した。金色のごてごてした装飾が施された装置だ。モノクルのようにも見えなくはない。
 こちらも幸運が味方して、事は極めて順調に運んだのである。

●推理
「外は酷い大雨だ。外部から人が侵入した形跡もない。故に私はこう考えます。犯人は、この中にいると」
 蓮司の言葉に、三人の宿泊客が絶句する。蓮司は構わず、
「皆さんにも意見があるようですね。お話を伺っては?」
「あ……ええ、はい……」
 コミュ力を駆使した彼にそう言われると、弱気な支配人は断れなかった。
「では、不肖この私が、思うところを述べさせて頂きます」
 ヘルメスが頷き、余裕のある口調で語り始める。
「どうやら被害者は客室で遺体をバラバラに切断されているとのこと。……であれば、どのようにそれを成し遂げたのかがポイントとなります」
 言いながら、ヘルメスは気取られないように三人の宿泊客に注意を向ける。三人とも怪訝な顔をしてヘルメスの方を見ていた。
「支配人の説明によれば、犯行当初、ホテルに滞在していたのはそちらの三名。その中で、女性のコノハ様は犯人候補から除外されることとなるでしょう」
「……それは何故です?」
 料理人の二瓶が訊くと、ヘルメスは軽く頷いて、
「簡単なことです。遺体を切断するのに女性の力では力が足りない。二瓶様は料理人なので包丁をお持ちでしょうが、それを使ったらすぐに犯行がバレてしまいます。よって…………消去法で犯人は写真家の遠野様、あなたでございます」
「ちょ、消去法って!」
 名指しされた遠野が机に手をついて立ち上がりかける。
 しかしこれはヘルメスの狙い通りであり、敢えて適当な推理を口にして三人の反応を窺うことが目的なのだ。
「その推理、あながち的外れでもないと僕も思います。勘ですがね」
 次を受けたのはヴォントだ。
「何を言ってるんだ。俺に死体をバラバラにする趣味なんてない……!」
「凄惨な殺人現場を記録に残したい、なんて思いませんか?」
 ヴォントが狼狽した遠野に冷然と言葉を突きつける。
「連続殺人犯とかに多いらしいですよ。戦利品を残したい、とね。……怖い怖い」
「なっ……」
 写真家の顔が蒼白になる。
 ここに来て、流れは犯人探しの様相を呈し始めていた。誰かが疑われる様を目の当たりにすると、次は自分に疑惑の目が向けられるかも知れないと感じる。その心理が、三人の宿泊客を縛っていた。
「いいや、犯人はズバリ……手品師のコノハ、お主だ!」
「はぁ!? なんで私が」
 未子に名指しされてコノハが反発する。
(「今だ。さあ、行っておいで」)
 二人に視線が集中したその隙に、ヴォントは数匹の黒い毒蜂を召喚した。
 這い寄る蠱毒の怖い影(バット・ディ)。
 攻撃と探索を得意とする毒蜂は、三人の宿泊客の死角から迫ると、床に置かれた各人の荷物を調べ始める。
 その間にも、未子がコノハを追い込もうと言い募っていた。
「お主は手品で日頃、人の身体をバラバラにしておるではないか。バラバラ殺人くらい、お手の物だろう?」
「あれはそういう仕掛けなの! それにバラバラになんて手品だって簡単じゃないわよ」
「仕掛けを用いればできるのではないか?」
「だったらなにか証拠があるはずよ。道具がなければ絶対できないんだから」
「え、証拠? 証拠……」
 追い込むまでは良かったが、こう切り替えされると困ってしまう未子だった。暫し迷った後、後ろでハラハラしていた執事を振り向いて、
「よしミモリ、証拠を持ってくるのだ!」
「ええっ、なんて無茶ぶり……」
 苦労人なミモリが未子に命じられて、ラウンジを出ていく。まだ能力的にホテルを十分探索できるほど行動範囲は広くないのだが……。
「今回の事件の現場は客室やろ? 死体発見まで気づかへんかったってことは、襲われたり争ったりしたわけではないんやろなぁ」
 皆の語る内容を聞いていた狐倶利は、そこでおもむろに口を開くと、ゆったりとした口調で話し始めた。
「当然ホテルの各部屋には鍵がついとるはずやし、不審なもんは入れんわなぁ。つまり、今回の被害者は自ら犯人を招いた形になるわけや」
 狐倶利はそこで一息。
「ということは、被害者と親しい人間が薬でも盛らんかぎりは犯行できんってことなんよ」
「そう言えば、殺された男性と彼女がロビーで親しくお話されていたのを見かけましたよ。親交があるようでしたが」
 こう言ったのは、料理人の二瓶である。
 狐倶利は首肯して、
「ああ、オンナが色で惑わしても可能やなぁ」
「色で惑わすって、そんなことするわけないでしょ! ちょっと会話してただけじゃない。あの人、私のファンだって言うから」
「さて、どうだろうなぁ。それこそ証明する手立てがない」
「それなら二人だって殺された人と友達だったかも知れないじゃない!」
 写真家の遠野が言って険悪なムードが漂い始めるが、狐倶利は構わず、
「後は被害者の持ちもん調べたらある程度はしぼれるやろ。親しかったもんなら、連絡先やら共通の趣味やらあるやろうからな」
「持ち物を調べるのは確かに有効かもね」
 今の今まで我関せずでタブレットを操作し続けていたユコがここに来て唐突に声を発したものだから、皆が一斉に彼女の方を見た。
「バラバラ殺人なんでしょ? 人に見られず短時間で済ますには、体をバラすのに慣れてないといけない……つまり料理人の二瓶さんが怪しいよ」
「私ですか? 女性の勘は鋭いとは聞きますが、一体どんな理由で?」
「さっき誰かが言っていた通りよ。人間の体をばらばらにするなんて、女性の力じゃとてもできない」
 そこでユコは立ち上がると、タブレットを示すようにしながら言葉を続けた。
「だから計算してみたの。犯行時刻と部屋割り、当時の状況を総合した上でね」
 ユコは見取り図と部屋割り、犯行時刻などから割り出した数値を皆に簡潔に伝えていく。
「分かるでしょう? 支配人さんが嘘をついていなければ、どう考えたって遠野さんは除外される。残るは二人だけれど、女性には不可能だと考えると……」
 ユコが二瓶を見据える。子供だと侮っていたのか、余裕の笑みさえ浮かべていた二瓶が真っ青になった。
 ふらふらと立ち上った彼に、猟兵達は更に追い打ちをかける。
「こいつは推理小説としちゃ三流以下の発想だがね、俺の筋読みじゃあ現状一番怪しいのは二瓶さん、アンタになっちまうんだよなァ?」
 後を受けたのは御門だった。陰鬱でありながら、その語気は有無を言わせぬほどのものがある。
「牛だろうが豚だろうがアンコウだろうが人間だろうが、解体のキモってのはぶっちゃけ肉と筋と骨をどう手際よく切り離すかだろ? それが頭に入ってりゃ案外出来ねえこたねえからな」
 肉を削ぎ、骨を解き、食用に供する。
「その技術を素で持ってるだろうってのがアンタだって事だ」
「そうそう、人をバラバラにするのって意外に大変なんだよねー。骨とか硬いし?」
「緋瑪、黙って……」
 別人格の一つである緋瑪が軽い口調で実感の籠った発言をするのを、瑠璃がたしなめる。茫然とする二瓶に、瑠璃は打って変わって落ち着いた口調で語り始めた。
「料理人の二瓶さんなら、肉切り包丁とか、それを可能にする凶器を用意するのも容易。肉や魚とか、生き物の解体に長けた技術や道具も持っているはずです」
「だとしても……人間を解体できるというのは論理の飛躍だ。幾らなんでもそんなことなど……」
「物事というものは複雑に絡み合っているだけで、本質はごく単純なものなのです。こんな時は簡単に考えていくのが事件解決への近道でしょう」
 蓮司は人差し指を立てながら、
「バラバラ死体ということは刃物が必要。即ち、怪しまれずにそれを持ち込める人物が疑わしい。……皆さんの言う通り、持ち物検査はすべきですね」
 二瓶が狂気的に笑い出す。
「ハハッ、幾らなんでも短絡的過ぎませんか探偵さん……考えてもみてください、バラバラ殺人などに、大事な道具を使いますか……?」
「いや、そうとばかりも言えないぜ」
 あと一押しというところで、ラウンジの扉を開けて現れたのは澁市だった。手にはスチームパンクに登場する小道具のようなガジェットがある。
「悪いが遺体を調べさせてもらった。とんでもないものが見つかったよ。なんだと思う?」
 支配人は何も言えず、横を通り過ぎる澁市を見送るだけだ。
 澁市はガジェットを放るような仕草をしながら、二瓶を睨んだ。
「微量な調味料だ。随分変わったものもあってな。何が使われたか言って見せようか?」
 それは奇跡的な幸運によって澁市が掴んだ証拠だった。
「そ、それが何だっていうんです? それを私が用意したとでも?」
「……どうやらそのようですね。そこの鞄を調べれば分かります」
 言ったのはヴォントだ。ユーベルコードにより呼び出された捜索を得意とする毒蜂が、二瓶の鞄の隙から中を調べ、彼に報告していたのだった。
「成分分析すればはっきりするだろうぜ。もっとも、警察が来る前に皆殺しにでもするつもりだったんだろうがな」
 澁市の言葉に、二瓶が後ずさる。
「犯人は貴方ですね、二瓶さん」
 瑠璃が青い瞳を向けて告げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
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「馬鹿な……そんな筈はない、私の計画が……こんなことで……!」
 頭を抱え、掻きむしり、金切声で二瓶が叫ぶ。先程までの落ち着いた態度は消し飛んで、歪んだその顔には狂気の色がありありと窺えた。
「そうだ……降臨の儀式はもう始まっている……一人殺したんだ……殺して……調味料を加えて……旧き神の贄に……」
 死骸に特殊な調合の調味料を加えるという狂った創作料理、それを神に捧げる――それこそがこの狂信者の儀式だったのだ。
 二瓶が呪言を発すると周囲に異様な気配が湧き上がり始め、瞬く間に無数の触手と化した。
「お前達も旧き神に捧げてやる……一人残らずだ……!」
 二瓶がラウンジの奥の扉から走り出ていく。
 同時、触手がうごめき、猟兵達に襲い掛かってきた。
 今はこの触手を撃破するのが先決だ。
木乃花・蓮司
犯人の抵抗もお約束だけどさ、こんな触手は求めてないなぁ!

コートと帽子を脱ぎ捨てて、残された3人に逃げるよう指示するよ。
「とりあえず外まで走れ!ほら早く!」

媒介道具でポチ(犬型UDC)を召喚して3人が避難するまで攻撃がいかないよう護衛してもらおう。なるべく僕たちが食い止めるけどね。

触手の攻撃はみんな当たると厄介そうなものばかりだから、オーラ防御で防ぎつつ全力魔法と範囲攻撃で後方からみんなを援護するよ。

あとはエレメンタル・ファンタジアを使用して氷の波を放ち、相手の動きを封じるよう動くよ。

※アドリブ可



●爪の首飾り
「犯人の抵抗もお約束だけどさ、こんな触手は求めてないなぁ……!」
 探偵風のコートとハンチング帽を脱ぎ捨てた蓮司が辺りを取り巻き始めたパープルテンタクルズを見て言った。喋り方を普段の口調に戻した途端、言葉がまるで通じなさそうな触手の群れとの戦いである。
 その上、気にすべきは敵の大群だけではない。
「おいおいおいなんだよこれなんなんだ……!」
「あー……これ私終わったわー」
「ひいっ、神様っ……!」
 写真家の遠野、手品師のコノハ、そして支配人の三人が今にも触手の餌食になろうとしていた。それぞれの位置がそれほどばらけていなかったのは幸いだったが、蓮司の前にも触手が立ちはだかって駆け寄れない。
「これで間に合うか……!」
 虐殺が始まるかと思われたその時、蓮司が爪の首飾りに力を込めて叫んだ。
「ポチ、頼んだ!」
 媒介道具の首飾りに宿された犬型UDCが即座に出現。垣根を成す触手を飛び越えて、三人の前に躍り出る。
「とりあえず外まで走れ! ほら早く!」
 戸惑う三人に言いながら蓮司は全力を込めて魔力を解き放った。周囲の温度が急速に低下したかと思うと、次の瞬間、周囲を囲んで触手を伸ばそうとしたパープルテンタクルズが音を立てて氷像と化す。
 制御が難しく暴走しやすい力を、蓮司は完璧に御していた。
 分裂した小型の触手塊が、凍りついた同胞を粉々に砕きながら襲ってくる。他の猟兵の活躍も手伝い、ポチと呼ばれた犬型UDCがラウンジの扉をぶち破って一般人の三人をエントランスホールにまで誘導する。蓮司は防御用に高めたオーラを纏いながらそれを確認すると、構えを取った。
 のたくる紫色の触手は、どうやら猟兵達を皆殺しにするまでこのラウンジで暴れ続けるつもりのようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォント・ヴィーヴィス
厄介なもの出てきましたね。僕も戦いましょう。
派手に目立つよりも縁の下の力持ちでいたいものです。

優先順位は
戦闘支援>一般人の避難>逃亡した敵の捜査

「雑魚はこちらで引き受けます。本体は任せました」
蜂を召喚し、小型触手を攻撃。撹乱させ引きつけます。僕自身もナイフで攻撃しますね。
群には群れを。上手くいくといいな。
仲間が戦いやすいように、敵本体から少し遠ざけるよう戦います。
敵の攻撃は極力回避。
全体のバランスを見ながら、サポートしていきます。
「今度はそっち、ですか」

一般人が危険な場合は、蜂が攻撃してる間に僕の方で誘導を。
怪我人は出したくありませんから。

(アドリブなどは歓迎です)



●支援攻撃
「厄介なもの出てきましたね」
 ヴォント・ヴィーヴィスの周囲に、捜索にも用いた黒い毒蜂が羽音をたてて浮遊し始める。パープルテンタクルズはどうやら、獲物に狙いをつけると取り囲むような動きで近づき、じわじわとなぶり殺しにするつもりのようだ。
 触手の壁を作り、その後ろで触手塊を生み出し、波状攻撃を仕掛ける――。
「雑魚はこちらで引き受けます。本体は任せました」
 判断を下すと、ヴォントは猟兵達にそう告げながら毒蜂を操った。
 羽音を響かせながら飛ぶ毒蜂の群れが、黒い旋風さながらに敵に迫る。狙うは、触手塊を生み出してたえず戦力を供給しようとする個体だ。
(「群には群れを。……上手くいくといいのですが」)
 触手塊を生み出そうとしていた群れが、黒霧さながらに殺到した毒蜂に取り巻かれて混乱に陥った。振り払おうとのたうちまわる触手を、毒蜂が巧みに誘導して猟兵達から遠ざける。
「今度はそっち、ですか」
 ヴォントは極力、囲まれないように走りながら毒蜂を操り、敵の動きを攪乱していく。
「雑魚とは言え、油断は出来ませんね……」
 粘液を散らしながら次々と襲い来る触手を、走りながらナイフで斬り払う。普段とは打って変わった軽快な身のこなしで横から来る鞭のような触手を跳躍、回避。
 黒い蜂の群れに取り囲まれてもがきまわる触手塊にナイフを突き立て、切り裂き、上から迫る反撃の触手を転がって回避する。更なる追い打ちは黒く纏まった毒蜂が毒を送り込んで脱力させ阻んだ。床の上で無数の触手が力なく痙攣する。
(「一般人は……大丈夫そうですか」)
 支援は功を奏したらしい。味方の召喚した犬型UDCに物凄い力でぶち破られたラウンジの扉から、三人の一般人が転がるように出ていく。それを見ると、ヴォントは毒蜂の群れを操って猟兵達の支援に徹するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
「ようやく暴れられるね、瑠璃♪」
「ホテルの倒壊は…仕方ないかな…」(諦め)

今回は本体が緋瑪、分身に瑠璃。

接触式のジェノサイドボム(以下ボム)を無数に生成。【2回攻撃】【範囲攻撃】で大量の爆弾の雨を降らせて、恍惚触手と触手の嬰児はまとめて吹き飛ばすよ♪
狂気の触手は触手群は同じく吹き飛ばして、太い触手は爆風で攻撃の軌道を反らしつつ、一ヵ所に集中して爆破。引きちぎって粉砕してあげるよ♪

爆風の範囲外から回り込む相手がいたら、【オルタナティブ・ダブル】でこっそり分身しておいた瑠璃が迎撃。
そこからは緋瑪と瑠璃、二倍の手数でボムをばら蒔いて粉砕するよ♪

「わたしに隙は無いよ♪わたしには瑠璃がいるからね☆」



●殲滅は無邪気に
 不気味な音をたててうねくる紫色の触手が鞭や槍と化して襲い来る。爆発と共に幾重にも花開いた紅蓮が触手を吹き飛ばし、爆風の中から四季乃・瑠璃が躍り出た。いや、今の彼女は『瑠璃』ではない。
「ようやく暴れられるね、瑠璃♪」
 別人格の緋瑪が愉しげに言うと、破壊衝動のままに、取り囲む大群を円周状に爆破した。その爆音と衝撃波が建物全体が震わせる。
(「ホテルの倒壊は……仕方ないかな……」)
 瑠璃が心の中で諦めたように呟いた。
 数えきれないほどの触手は緋瑪にとって格好の標的だ。無邪気に力を解放するその様は活き活きしていて全ての触手を爆砕するまで止まりそうにない。
 ジェノサイドボム。緋瑪が行使するのは魔力がある限り無尽蔵に爆弾を生成可能なアイテムだ。作り出せる爆弾の仕様は多岐にわたり、緋瑪がいま選択しているのは接触式爆弾だった。伸びてきた触手が緋瑪に触れる前に次々に爆破され粉々になる。
「引きちぎって粉砕してあげるよ♪」
 爆弾を作り出すたび爆炎が上がり、緋瑪が踊るように力を振るう。対抗するパープルテンタクルズの触手が絡み合い、大槍と化して襲ってくるのを緋瑪は爆発で軌道を逸らしながら回避してみせる。
「まとめて吹き飛ばすよ♪」
 増殖しようとしている触手を見つけた緋瑪は大量の爆弾の雨を降らせて無慈悲に爆散させる。
 パープルテンタクルズは緋瑪を深刻な脅威と認識したようだ。その周囲を波のように取り囲み始めた。
 周囲を取り囲む大群を纏めて爆破する緋瑪。
 瞬時に対応されるなら連続攻撃で仕留める――波状攻撃に打って出た触手が死角から迫るが、
「……させない」
 その攻撃を、オルタナティブ・ダブルで分身していた瑠璃が迎撃、爆破した。
「わたしに隙は無いよ♪ わたしには瑠璃がいるからね☆」
 瑠璃と背中合わせになった緋瑪が共に猛威を振るう。

成功 🔵​🔵​🔴​

四十八願・狐倶利
「人の人生勝手に捧げんといてほしいわ。」
そう言いながら狐倶利は無数の触手に対して薙刀を構えた。
「こんだけ多いと払いがいがあるわ。」
狐倶利は【第六感】で迫る触手を回避しながら、【薙ぎ払い】と【範囲攻撃】を駆使して触手を切り落としていく。
触手を払い続けて調子の上がってきた狐倶利はユーベルコードを発動させ、勝負を決めにいった。
「そろそろ終いにしよか?」
『巫覡載霊の舞』



●舞い、斬り捨てる
「人の人生勝手に捧げんといてほしいわ」
 うねりながら密集するパープルテンタクルズに、四十八願・狐倶利は薙刀を構えた。
「こんだけ多いと払いがいがあるわ」
 周りを囲むようににじり寄り、出方を窺っていた触手が、獲物を捕らえる海棲生物さながらに刺突してくる。緩急を付けたその攻撃を、狐倶利は第六感を駆使して回避、身をかわしながらそのままの勢いで斬り払った。薙刀の刃が襲い来る触手を断ち、幾重にも閃く斬撃が次々に迫る魔の手を容易く斬り捨てていく。
「所詮は寄せ集めやな」
 円を描く狐倶利の横薙ぎが、周囲に壁を成していた触手の群れを纏めて切り裂き、その威力を以て吹っ飛ばした。
 周囲の触手を片付けると、狐倶利は別の群れに攻撃を仕掛ける。
 薙刀の刃が弧を描き、切断された紫の触手が体液を撒き散らしながら地に落ちる。
 斬り捨てる程に調子を上げていく狐倶利。
 パープルテンタクルズは数を頼りに戦力を掻き集め、再び狐倶利を取り囲み始めた。
「そろそろ終いにしよか?」
 薙刀を構えて言う狐倶利に、周囲の触手がうねりを挙げ、大波の如く襲い掛かる。その五体が呑み込まれたかと思われた瞬間、塊を成した触手に、光の亀裂が無数に走った。同時に巻き起こった衝撃波が、内側から触手の大群を弾き飛ばす。
 触手に取り巻かれる直前、自らを神霊体に変えて攻撃を軽減していた狐倶利に大きなダメージはない。
「巫覡載霊の舞」
 狐倶利が邪気を払うように薙刀を振った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘルメス・トリスメギストス
「やれやれ、触手とは優雅でないモノが現れましたね。
御主人様、お嬢様たちに被害が及ばないうちに駆除するとしましょう」

白手袋をはめ直すと触手の群れに突撃します。

「執事は主を守るため、
格闘技にも精通しているものなのです」

モノクルに執事服という格好のまま、触手と正面から格闘戦をおこないましょう。

「これこそ、執事の間に伝わる秘伝の技、
【執事格闘術】です!」

近距離の相手は徒手空拳で攻撃し
遠距離の相手には懐から取り出した
高級な銀のナイフやフォークを投擲して攻撃をおこないます。

戦闘が終わったら皆様に焼き菓子でもお出しして、
休憩いたしましょうか。

え?
そんな場合ではない?

いえいえ、いつでも優雅さは重要ですよ?



●執事格闘術
「やれやれ、触手とは優雅でないモノが現れましたね」
 粘性の音をたててのたくる触手を前にヘルメスは泰然として言うと、白手袋をはめ直す。右目のモノクルが光を受けてきらりと輝いた。
「御主人様、お嬢様たちに被害が及ばないうちに駆除するとしましょう」
 エントランスの方をちらと見やった後、執事服のまま目前のパープルテンタクルズに突撃をかける。
「執事は主を守るため、格闘技にも精通しているものなのです」
 走りながら言うと、ヘルメスは左から束縛しようと迫る触手を裏拳で弾き返した。そのまま正面の敵に回し蹴りを喰らわせる。触手の塊が爆発でもしたかのように弾け飛び、ヘルメスは群れのただなかで触手の絡まり合った核のような部分を狙って正拳突きをぶちかまし、円を描く蹴りで周囲の群れを纏めて吹き飛ばした。
「これこそ、執事の間に伝わる秘伝の技、執事格闘術です!」
 周りを取り囲み、圧殺しようとする敵の動きを察知してヘルメスは跳躍。銀色に光り輝く何かを投擲しながら囲みを脱する。
 触手の塊に突き刺さったそれは、銀色に輝くナイフとフォークだ。
 他の猟兵達の活躍もあり、紫色の奇怪な触手は急速にその数を減らしていた。
 ヘルメスが残る個体にフォークを投擲。最後の触手塊が力を失って床に落ち、煙と化して消えていく。
「高級なナイフとフォークには少々勿体ない相手でしたね」
 
 凄まじい数を誇っていたパープルテンタクルズも、猟兵達の手で瞬く間に全滅を遂げることとなった。
「ひとまず終わりましたね。それでは少し休憩に致しましょうか」
 焼き菓子を用意してございます、と言ったヘルメスが猟兵達の視線を受けて目をぱちぱちさせる。
「え? そんな場合ではない? いえいえ、いつでも優雅さは」
 言いかけたその時だ。
 異様な叫び声が聞こえたかと思うと、ホテル全体が微かに震え始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『灰霞の剣』ヴォル・ヴァ・ドーズ』

POW   :    焔を焚く者
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【灰色の焔 】で覆われる。
SPD   :    灰霞の剣
【灰霞の剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【霧とも霞とも見える灰塵の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    焔・灰・剣(BLAZE ASH BLADE)
【焔か灰か剣】が命中した対象を切断する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●顕現
 建物を揺さぶる爆発音が、ぴったりと鳴りやんだ。
 再び訪れた静寂の中、ホールからであろう、あの間抜けな手品師と写真家のわめく声が聞こえてくる。二人が生きているということは、支配人も無事に違いない。……それは、有り得ない出来事だった。
 殺人現場となった部屋の中、二瓶はガタガタと震えだす。
 バラバラ死体の前で、膝を突き、床に拳を叩きつける。
「まさか……殺せなかったというのか……嘘だ……そんなこと起こり得るはずがないっ……!!」
 二瓶は完全に恐慌状態に陥っていた。
 縋れるものは最早、彼の信奉する悪しき神しかない。
「け、顕現せよ、偉大なる神よ……」
 苦心して作り上げた調味料を鞄から取り出すと、震える手で中身をすくい取り、両手の甲と顔だけに、最低限の手順で塗り込んでいく。
「我が供物を此処に捧げる……そして我が身を……我が身を喰らい顕れ給え――!」
 狂気の叫びを喉から絞り出すと、二瓶が奇妙な呪言を唱え、料理用のナイフを胸を突き立てた。
 ――ヴォル・ヴァ・ドーズ。
 それが狂信者が口にした最期の言葉だった。

 間もなく、狂信者と哀れな被害者の死体の上に、黒い霧状のものが湧き上がり始める。それはさながら業火に焼かれた死者の灰か。
 寄り集まり、膨張し、渦を巻き、名状しがたい巨体と化してうごめく。
 狂える男の呼び声に応えたか、恐るべき邪神がここに顕現したのだった。
 それは焔を焚く者。
 灰霞の剣。
 その名を呼ぶだけで魂が潰えるとされる異形の神。
 ヴォル・ヴァ・ドーズ。
 邪神は体に埋み火のような光を輝かせると、渦を巻き、窓を突き破って外に飛び出した。
 季節外れの冬の雨が降り注ぐ中。
 庭園に降り立った邪神は、夜の闇に朱い光を輝かせながら、その複眼めいた器官をホテルの方へと向けた。
ユコ・イコーリア
なんか見た目的にも熱そうなの出てきたー!
ホテル燃やしちゃだめだよ…なんて言ってる場合じゃないか

そっちの出鼻を挫かせてもらおっかな
お気に入りのタブレットに指を滑らせて
敵と自分のいる座標、目標の大きさをぱぱぱっと入力
予測される攻撃と規模を計算して
「…そこ!」
正確に敵のユーベルコードを再現、相殺を狙うよ
上手く相殺できたら
「よし、今だよ」って声掛けして
後の攻撃者さんに繋げよう

行動後、余裕があれば
延焼してる火を消すね
んー、戦闘になると柄にもなく
熱くなっちゃうな、なんて考えつつ
あちち、ホテル燃えちゃうよー


四季乃・瑠璃
緋瑪「んー…この姿だと、ダガーやボムは効き難いかなー?焔に灰だし…」
瑠璃「窓を突き破ったし、実体はあるんだろうけど…。ボムなら爆風で吹き飛ばすとかでならダメージ与えられるかもしれないけど、効率悪いかな…」

一発、接触式ジェノサイドボム(以下ボム)で効果を様子見した後、煙幕式ボムで目晦まし。
一旦距離を取り庭園全てを呑み込む規模の【全力魔法】による【エレメンタル・ファンタジア】を発動。「水氷」の「竜巻」で焔も灰も邪神本体も呑み込み、凍てつかせて固めた後、接触式ボムで粉々にするよ♪
発動までは敵の攻撃は回避かボム及び爆風で散らす様に迎撃。

「実体が曖昧なら作れば良いよね♪」
「神殺し、させて貰います」


ヴォント・ヴィーヴィス
「何かが外に出ましたか?!」
嫌な気配にすぐ敵の元へ駆けつけます。

蜂たちを引っ込めてリザレクト・オブリビオン。
「少しでも食い止めます……!」
召喚した二体で盾役に。
騎士で真っ向から敵を足止めしに、蛇は動きを封じれるか、やってみましょう。
不味いですね、もし敵が一般人を狙ったら…!
極力被害を抑えるよう、立ち振る舞います。
僕は攻撃を受けるわけにはいかないので、距離を取りながら、敵の攻撃は回避を。
騎士たちが倒れたらすぐ再召喚します。
「……厄介な邪神、ですね」

真の姿は、使わないです。
無事に戦い終わったら、負傷した仲間に手を貸したり、一般人に被害がないか確かめますね。

……ホテルが燃えませんように。


木乃花・蓮司
うっわぁなんつーもんを呼び出してんだあの男!
でも予定よりは生贄が少ないはず、これ以上力をつける前に片をつけないと!

ポチを呼び戻してから急いで庭園に。
接近戦の得物は持っていないから、後方に位置どって戦うよ。
全力魔法と範囲攻撃で戦いつつ、第六感と情報収集の能力を使って相手をよく観察しよう。
敵が隙をみせたらすかさずエレメンタル・ファンタジアを使用。降っている雨を利用して手からビームのように水の竜巻を放ち、相手に打ち込むよ。
ダンピールが持つ神殺しの力、思う存分味わってもらおうか。


・絡みやアドリブ歓迎


忌塚・御門
(陰鬱なまま忌々しげに)
「…畜生が。馬鹿か、死にやがって。願いも欲望も自分が生きててこそだろうが…!!」

万年筆を取り出し、手首にペン先で文字を刻むように傷つける。
「起きろ、脈打て…物語を紡げ」
傷跡から溢れた血が靄となって手にした万年筆を取り巻き、刻印と万年筆を同調させる。
高速で空間に文章を書く。
『殺された被害者の怨念が炎となって邪神を焼く』
殺戮捕食態によって、書いた虚構を束の間現実にする。
「さあ、起きろ。手前の出番だ」

「そいつはただの俺の紡いだ虚構だ。…本物が恨んだかなんざ知らねェよ。でもな、こんなふざけた事の為に殺されたんだぜ?その元凶をぶん殴る権利くらい、くれてやってもいいだろうがよ?」


四十八願・狐倶利
「なんや、わざわざ外に出てくれるなんて優しいやないの。これなら被害気にせんと思い切りやれるわぁ。」
そういうと、狐倶利は自身の妖力を高めて術の準備をした。
「触らぬ神に祟りなしいうし、あんな燃えとる神さんは触れんのが吉やわ。」
術の準備が完了した狐倶利は持っている扇を相手の方に向け、術を唱えた。
「災禍の中で狼狽えたらええわ。」
『幸災楽禍・神変天地』
狐倶利の発動した術は降り注ぐ雨を氷に変え、敵のもとに氷柱の豪雨を降らせた。



●決戦
 二階の何処かでガラスの割れる音が響き渡った。
 即座に動き出そうとした猟兵達の耳に、支配人の叫び声が飛び込んでくる。
「なにか現れたんですか?!」
 直感したヴォント・ヴィーヴィスがホールに走り出る。他の猟兵達もそれに続いた。
「ば、バケモノ……バケモノが外に……!!」
 エントランスのドアの前で、支配人が腰を抜かして外を指さしていた。
「ポチ、戻れ!」
 木乃花・蓮司がエントランスで待機していた犬型UDCを爪の首飾りに収めると、写真家と手品師の無事を確認してホテルの外へと飛び出していく。 
 庭へと走ったユコ・イコーリアが、渦を巻く黒煙にも似た奇怪極まる異形を目にして声をあげた。
「なんか見た目的にも熱そうなのがいる……!」
「うっわぁなんつーもんを呼び出してんだあの男!」
 蓮司はあの狂信者――二瓶が口走った言葉から、ソレが召喚されてしまった邪神だと直感する。
「ああ、さっき割れたガラスはあいつの仕業やな」
 薙刀を収め、雅な扇子を手にした四十八願・狐倶利は相変わらず落ち着いた口調で言うと、悠々と敵に近づいていった。
「なんや、わざわざ外に出てくれるなんて優しいやないの。これなら被害気にせんと思い切りやれるわぁ」
 言うと、狐倶利の服がふわりとはためき、周囲を圧する程に妖気が高まっていく。
 邪神の複眼も立ちはだかる者達をそれぞれに捉え、止むことなく燻り続ける体がより一層、禍々しく膨張を始めた。
 滞留する黒煙、埋み火のような光を覗かせるその巨体が蠕動する体内に、人間のものらしい顔や手足が見える。それは惨殺された被害者、そして狂気に囚われた料理人の男のもので――忌塚・御門は、焼け焦げ、崩れていく男の末路に顔を歪めた。
「……畜生が。馬鹿か、死にやがって。願いも欲望も自分が生きててこそだろうが……!!」
 忌々しげに切歯しながら万年筆を取り出す。ペン先を手首に突き立て、文字を刻むように傷つけ始める。溢れ出した鮮血が腕に滴り、零れる。
「来る……! 食い止めます……!」
 ヴォントがリザレクト・オブリビオンで死霊騎士と死霊蛇竜を召喚するのと、邪神が巨体をうねらせながら突進してくるのはほぼ同時だった。
 火砕流じみた黒き神に、飛び出した死霊騎士が取り込まれて押し流され、死霊蛇竜が奔る巨体に追いすがる。邪神から吐き出された死霊騎士が焔に包まれながら消滅した時には、猟兵達は散開してそれぞれの攻撃態勢に入っていた。
「起きろ、脈打て……物語を紡げ」
 傷痕から流れ出る血が靄となって万年筆を取り巻く。それを振るい、御門は高速で空間に筆を走らせる。
『殺された被害者の怨念が炎となって邪神を焼く』
 それは自らの血を代償に書き出す、仮初めの実体。
 血と同調した万年筆は殺戮捕食態と化し、現実の上に虚構を実体化させる――! 
「さあ、起きろ。手前の出番だ」
 降り注ぐ雨の中、焼け焦げた黒いヒトガタが立ち現れたかと思うと、バラバラに弾け跳び、燃え上がる複数の炎弾となって暴れまわる邪神を猛追。不確定な巨体を穿ち、爆砕してはまた突っ込む。 
「んー……あの姿だと、ダガーやボムは効き難いかなー? 焔に灰だし……」
 緋瑪は手の中で短刀をくるりと回転させるとそれを収め、掌に力を込めた。
「窓を突き破ったみたいだし、実体はあるんだろうけど……。ボムなら爆風で吹き飛ばすとか」
「なるほどー! 瑠璃、頭いい♪」
 別人格の瑠璃と会話する緋瑪。
 そこに燃え上がる巨大な虫のような形態に変化した邪神が突進してくる。その体のあちこちが緋瑪の生じさせた爆発によって飛散し、即座に集結。
「あんなのがホテルに突っ込んだら大火事に……なんて言ってる場合じゃないか」
 ユコは敵との間合いを測りながら、装飾が施されたお気に入りのタブレットに指を滑らせて敵情報を叩き込む。
 概算速度を算出。
 攻撃方法を入力。
 予想される攻撃規模を算定。
「って、まだ計算終わってないっ」
 黒い竜巻さながらに暴れまわる邪神の体がかすめ、辛うじて体を後ろへ流したユコの体が切り裂かれる。幸いにもかすり傷程度に過ぎず、追い打ちをかけようとした不確定の巨体を再び爆発と爆風が襲った。邪神は即座に体を再形成する。
「やっぱり効率悪いかな……」
「それじゃ他の方法を考えよう!」
 緋瑪は瑠璃に言うと、手に別種の爆弾を生成。
 その間、燻る触手が恐るべき速さで奔ったかと思うと、追いかける死霊蛇竜を輪切りにした。
「この勢いは不味いですね、もし敵が一般人を狙ったら……!」
 ヴォントは可能な限り距離を取りながら、死霊の騎士と蛇竜を再召喚する。
「でも予定よりずっと生贄は少ないはず。これ以上力をつける前に片をつけないと!」
 蓮司は掌に集めた水分を凝縮すると、渦巻く大蛇さながらに駆け回る邪神に狙いを定める。
「それじゃ、こんなのはどうかな♪」
 緋瑪が言った途端、邪神を取り囲むように地雷が起爆。白い霧のような物質が黒々と燃え上がるその巨体を包み込んだ。
 煙幕だ。
 埋み火のような光が白煙の先にうごめく。
 煙幕の中に炎の塊と化した被害者の怨念が飛来し、のたうつ邪神を責め苛む。
「神だか何だか知らねェがな……人を狂わせるような奴に、崇められる価値なんざあるわけねェんだ」
「ダンピールが持つ神殺しの力、思う存分味わってもらおうか!」
 蓮司の掲げた掌から膨大な水が迸る。術者である蓮司の制御を受けて水の竜巻と化し、邪神だけをめがけて襲いかかる。
 それは戦闘開始直後から降り注ぐ雨を集めて圧縮したものだった。それだけでは足りず、不足分は庭園の池からも汲み上げている。
 水の竜巻に取り巻かれ、そこでようやく邪神が飛び退き、距離を取った。
「触らぬ神に祟りなしいうし、あんな燃えとる神さんは触れんのが吉やわ」
 狐倶利から溢れ出る妖気が安定、此処に術の準備が完了する。狐倶利は手にした扇を邪神に向け、言霊を口にした。
「災禍の中で狼狽えたらええわ」
 降り注ぐ雨が妖気を受けて氷に変じる。それは自然現象さえ操る妖狐の術だ。
「幸災楽禍・神変天地」
 術を練り上げた狐倶利の意のままに、氷雨は意志を持っているかのように流れ、氷柱の豪雨となって邪神に降り注ぐ。
 水の竜巻と氷の豪雨が燻る黒き邪神を同時に責め立てる。両者が操るそれは周辺環境さえも味方に付けた妙技だった。
(「んー、戦闘になると柄にもなく熱くなっちゃうな」)
 ユコはタブレットに落ちた水滴を拭うと取り入れた情報を次から次へと叩き込む。
 初撃に対しては情報が足りなかった。
 しかし一度目にすれば精度は飛躍的に向上する。
 邪神が蜘蛛さながらの醜怪な動きで狙いを定めてくるのを見て、ユコは僅かに笑った。
「QED、だよ」
 恐るべき速度で来襲する黒煙の塊を、ユコは逃げることなく迎え撃つ。
「……そこ!」
 その体が邪神の振るう触手じみた黒い剣に両断されると見えたその瞬間、ユコは全く同じ力を生じさせて攻撃を相殺していた。
 ミレナリオ・リフレクション。
 黒煙が弾け跳び、邪神が悲鳴に似た叫びをあげる。
「よし、今だよ」
 ユコの声に頷いたヴォントが命じると、死霊騎士が邪神に切り込み、死霊蛇竜が取り巻いて時間を稼ぐ。
「畳み掛けよう!」
 蓮司が手をかざすと、圧縮した水が拡散砲さながらに迸った。
「仕舞いやな。神さんも年貢の納め時や」
 無数の氷柱が矢となって降り注ぎ、不確定な巨体がのたうち回る。
 そこで緋瑪が凝縮していた魔力の全てを解き放った。それは庭園全てを呑み込む規模の全力魔法――エレメンタル・ファンタジア。
「実体が曖昧なら作れば良いよね♪」
『――――!?』
「神殺し、させて貰います」
 緋瑪が言い、瑠璃が告げる。
 水氷の竜巻が邪神を巻き込み、その不確定な巨体を凍りつかせる。その周囲を、殺された男の亡霊が炎となって取り巻いた。
 御門が暗い闇を湛えた目で邪神を睨む。
「そいつはただの俺の紡いだ虚構だ。……本物が恨んだかなんざ知らねェよ。でもな、こんなふざけた事の為に殺されたんだぜ?」
 供物として惨殺された男。
 そして計画を暴かれ、悲願を遂げる前に打ち砕かれて追い詰められ、自ら命を断った――ナイフを手にした男の影が立ち現れ、邪神に刃を振り上げる。
「元凶をぶん殴る権利くらい、くれてやってもいいだろうがよ?」
 影のナイフが突き立てられたその瞬間、降り注ぐ氷柱の雨が男の影ごと邪神を射抜き、緋瑪が作り出した爆弾が、氷結する邪神を粉々に吹き飛ばした。

●事件解決
「大丈夫ですか?」
 ヴォントが共に戦った猟兵達に怪我がないかを確かめる。深刻な傷を負っている者はなく、戦いは思いのほか上手く運んだようだった。
「……やっぱり不完全だったのかな」
 戦闘の手応えを思い返しながら蓮司が推測する。どうあれ事件が解決されなければ、被害は更に拡大したに違いない。燃え広がり、巻き込む全てを焼き尽くす燎原の火のように。 
「ホテル燃えなくて良かったね」
 ユコが雨に打たれる建物を見て言った。支配人達が恐る恐る外の様子を伺っている。彼らが見たものはUDC組織による情報統制を受け、外部に漏れ出ることはない。
 邪神は潰え去り、再び骸の海に還った。
 狂信者による凄惨な殺人事件は猟兵達によって終止符を打たれたのだ。
 冷たい夜の雨が何事もなかったかのように降り注ぐ。御門は陰鬱な表情を顔に張り付かせたまま、一度、深く息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月28日


タグの編集

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🔒
#UDCアース


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト