贄の価値は~献身なる少女
希望失い活力なくしたダークセイヴァーのとある村。
そこへオブリビオンが姿を見せたのは一ヶ月前の事だった。
一体どんな仕打ちをされるのか、人々が怯え竦んだ一日となったがオブリビオンは危害を加える事無く、村の代表と会談しとある条件と共に、村への援助を申し出る。
オブリビオンの要求に歯向かうことは死を意味する、首を縦に振る以外の返答をできるはずもなく、オブリビオンの望むまま、惨劇の種はこの時に植え込まれたのである。
「大丈夫ですか? どうぞ、これを飲んでください。少しは楽になる筈です!」
熱にうなされ喘ぐ子供に一人の少女が杯を差し出す。
果実を絞って作った飲料、支配されたダークセイヴァー世界においては贅沢なその水分を摂取して子供の呼吸は少しずつ安定していく。
その様を見て母親が安堵の表情浮かべ、少女に何度も頭を下げるが止める様に少女は促す。
「顔を上げてください。私が選ばれたのは何の偶然か分かりませんが、苦しいときはお互い様です」
にこりと微笑み言葉を返した少女は、次に積まれた食材をいくつかの籠に取り分けて。
苦しむ村人のためにと分配していく。
「北側の人にも譲ることができれば良いのですが……無理そうですよね」
ため息と共に籠を渡し、少女は悲しげに目を伏せる。
その理由は至極簡単、オブリビオンの戯れの結果である。
この村を南北に二分し、それぞれに特権階級として一人の人物を選出。
北側は人々を虐げる性質の、そして南側は人々と共に歩み、自らの恩恵で得た食料をできる限り分配し、苦しみを和らげて行こうとする少女が選ばれたのだ。
申し訳なさそうに施しを受ける人々には、北側とは違い楽な生活をさせてもらっている、という負い目だけでなく。
北側の友人知人の苦しみ、それに加えてオブリビオンに要求された未来を考えての苦痛があるのだろう。
その未来、それはこれまで施しを受け、引け目を感じていた村人たちに更なる苦痛をもたらすもの。
「ど、どうしてですか。そりゃあ、私だけいい物を食べたり飲んだりしていましたけど、あれはオブリビオンに言われて仕方なく」
「違う、そうじゃない、そうじゃないんだ……けどなぁ、わかってくれよ」
傷つき終われながら問いかける少女に対し、申し訳なさそうな表情のまま。
手にした農具を振りかざし追い立てる村人達は更に言葉を続けていく。
「元から、お前を殺すことが援助の条件だったんだよぉ。北側でも同じように、あいつが殺されてる」
「分かってくれ、一人を犠牲に村をなんとかしてくれるんだ、だから」
北とは違い、共に歩み生活の改善に努めてきた少女。
だからこそ殺すのは辛い、できるだけ苦しまずにすむように、と覚悟を決めた村人達は保身の為に歩を早め。
包囲され、最早逃げることが叶わなくなった少女は数多の農具をつきたてられて、その命を散らしていた。
(「なーんだ、結局、最初から死ぬ事が決まってたんだ……だったら、北側の彼みたいに……私も。
好き勝手してれば、よかったかなぁ? 一緒に仲良く、なんてしてても、意味なかった、し」)
最後の最後、脳裏によぎった思いは自分の得た権利をなげうって、村人の生活改善を図った事への後悔。
処刑前までの彼女からは想像出来ぬ、怒りと憎しみ込めた表情を最後に残し彼女は絶命。
殺す側も殺される側も、苦しみぬいた末の結末。
人々の苦痛を糧に楽しんだオブリビオンはひとしきりその様子を確認した後、村を滅ぼすべく数多の軍勢を展開していた。
惨劇の夜は始まったばかりである。
●
「というわけでぇー、オブリビオンがひじょーに嫌らしいことをしてるんですよぉー」
間延びした口調で集まった猟兵達にノクス・フォルトゥナ(強化人間のマジックナイト・f17760)が説明を開始する。
今回はダークセイヴァー世界で起こる悪質なオブリビオン絡みの事件、その解決が目的だ。
「実はですねぇ、この村では北と南に分けてオブリビオンがちょーっとばかり悪趣味な事をしてましてぇ。
一人を選んで特権与えて、優遇した生活をさせるなら食料援助をする、って事で約束させましてぇ」
南北、それぞれ一人ずつの特権階級。その選出と引き換えに食糧援助だけならばまだ良かったが、オブリビオンはそれに加えて更なる悪趣味な催しを仕込んでいた。
それは、然るべき時が来れば選ばれた村人を自分達の手で殺せ、という命令。
もとよりオブリビオンに支配された世界、断ることは自分達の死を意味するために断ることなどできなかったが、選ばれた者たちが殺されてしまうのは最早避けようの無い事実。
結果、選ばれた少女は苦悩する村人達の手によって殺され、村人の苦悩も、少女の後悔と恨みも一時の戯れと弄ばれ、最後には数多のオブリビオンの手によって村は滅ぼされるという。
「あぁ、それはさておき、ご挨拶が遅れましたねぇ。ノクス・フォルトゥナと言いますよぉ。クアド姉様が胸部装甲関係でちょーっと凹まされてるのでぇ、代わりにご案内させてもらってますぅ。
あぁ、村の北側、やりすぎちゃって自業自得な目にあってる人の方はぁ、妹のクラちゃんが説明してくれてますよぉ」
マイペースを崩さずに、間延びしたままペコリとお辞儀。
説明途中に挟んだあたり、完全に考えに入ってなかったのだろう。
「わたしがご案内する南側はぁ、選ばれた人が村人に色々分配してるので比較的落ち着いてますねぇ。
けれど、何とかしよう、北側みたいに私刑を止めようとしたらぁ、余計なことをしないで自分達のことはほっといてくれ、みたいな感じで妨害されますねぇ。
事が起こる前に介入できますのでぇ、上手く落ちつかせたら協力は取り付けれるかもですぅ。そうすれば、後から来るオブリビオン退治でも北側と協力したりできるかもですねぇ」
状況は悪く、村人も猟兵の行動に対し妨害を行う可能性が高い。
それでも尚、これ以上オブリビオンの圧制に苦しめられるのは看過できない。
上手く村人達の信頼を得て自分達優位に戦える環境を作ることが重要だろう。
「とりあえずはこんなところですねぇ。色々とやることが多いと思いますけどがんばってくださいねぇ」
眠たげに目を擦るとノクスは右腕をあげグリモアを展開。
紫色の怪しい光が周囲に満ち、猟兵達を転送する準備が整えられていた。
紅葉茉莉
こんにちは、紅葉茉莉です。
今回はダークセイヴァー世界でのシナリオ、二つのシナリオの結果で展開が変化するリンクシナリオとなっております。
このシナリオは 贄の価値は~傲慢なる青年 と結果がリンクするシナリオとなっております。
どちらのシナリオにも第一章は参加可能、行動次第で判定にマイナス補正が掛かる形。
(一日かけて罠を仕掛ける、など時間の掛かるものをするなどでは、片方のみ採用等ありえます)
二章以降では一章の結果次第で、同時参戦した場合の補正が大きくかかってくる可能性があります。
上記を踏まえ、ご参加いただければ幸いです。
第一章では特に、色々な手段がとれると思いますのでその結果が出来る限り反映されるようにしていきます。
それでは、ここまで長文をご覧頂きありがとうございました。
ご縁がありましたら、宜しくお願いします。
第1章 冒険
『恐怖支配からの解放』
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POW : 熱心に説得する、武勇を示す
SPD : 敵の偵察を察知して対処する、卓越した技量を示す
WIZ : 人心を掌握する、勝利への道筋を示す。
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フレミア・レイブラッド
相変わらず、この世界のオブリビオンはロクな事を考えないわね…。
まず到着後すぐに少女に会い、敵がこの状況そのものを愉しんでおり、最後は全員殺される事を説明。
【魅了の魔眼・快】【催眠術】魅惑のフェロモンで自身の虜にして自身を信用させるわ。
その後、実際に少女を私刑にしようとした村人達の前に立ち塞がり、同様の説明をし、自分達が倒すのでする必要は無いと告げるわ。
後は【誘惑】で魅了するとか、魔槍【怪力、早業】で手頃な岩とか破壊したり、【念動力】見せたりとかパフォーマンス披露して力を示し、説得するかしらね。
それでも納得しない様なら、【魔眼】や【催眠術】フェロモンで強引に魅了するかしらね…。
※アドリブ歓迎
モリオン・ヴァレー
随分と手の込んだ仕掛けを今回しているのね
それも理不尽な
本当、この世界の闇は深いわ
村人と襲われている少女の間に入る様に介入
<オーラ防御><見切り>必要であれば重力を護りも使うわ
そして説得を
やめなさい。彼女を殺したら、あなた達も死ぬ事になるわよ
……失礼、流石に説明不足だったわね
【WIZ】
あなた達は重大な見落としとしているわ
この援助は、「彼ら」に選ばれた彼女を最終的に殺す事で成立している
なら、殺した後は?
「彼ら」は今迄あなた達の苦しむ様を見世物として楽しんでいたわ
更なる楽しみを求めて当然この村に攻めてくるでしょうね
あたし達は猟兵
「彼ら」を狩る者達よ
全員で生き残る未来、あたし達に託して貰えないかしら?
オブリビオンによって南北に分断、人の行き来は可能であるも生活のしやすさ、待遇では雲泥の差をつけられ互いにいがみ合う形となってしまった村。
殺伐とした雰囲気を感じる村の北側とは違い、不穏な空気が漂うも落ち着き人々の顔色も良い村の南側。
だが、これより行う自分たちの手で少女を殺す、その未来を思ってか。
大人たちが浮かない顔をする中をフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)とモリオン・ヴァレー(死に縛られし毒針・f05537)が駆け抜ける。
「随分と手の込んだ仕掛けを今回しているのね。それも理不尽な」
「ええ。相変わらず、この世界のオブリビオンはロクな事を考えないわね……」
「本当、この世界の闇は深いわ」
モリオンがオブリビオンの悪趣味、かつ理不尽な結末を強いる催しに嫌悪感を示していけば、フレミアもその考えに同意を示す。
救い無き結末、全てを闇へ、滅びへと誘うオブリビオンの催し。
それを食い止めるべく二人は走り……犠牲となる少女の元にはフレミアが向かい、モリオンは村人がいつ襲ってきても大丈夫なように近くで警戒にあたる事となる。
「あら、見ない顔ですね。行商の方ですか?」
柔和な笑顔で少女はフレミアを見やり、小さくお辞儀。
これから先、どういった結末が待っているのか知らぬその穏やかな様子を見てフレミアはオブリビオンの好きにはさせれぬと意思を強めつつ。
まずは第一段階、少女を守り村人を止めるために言葉をかける。
「こんにちは、はじめまして。行商じゃないけどちょっとあなたに用があってね」
こちらも和やかに、微笑み返しつつ目線をあわせ瞳を覗き。
少し戸惑う少女に対し、真剣な顔つきに変わって話を続ける。
「おかしいと思わない? 一人だけ、いいえ、北側の事を思えば二人だけ特別扱い、そうするだけで食べ物が貰えて身の安全が保障されるって。
村全体でギスギスしてるこの状況、これを見て愉しんでるって思わない?」
それは疑問に思いつつ、平穏得るために蓋をしてきた少女の疑念。
村人が何とか言いくるめ、誤魔化してきたこの状況を見ず知らず、外部の者であるフレミアから指摘され少女は動揺。
「そ、それは……けど、その様子を見せるだけで助かるなら……」
最悪の結末をあえて出さず、何とか自分に言い聞かせようとする少女へフレミアはさらに畳み掛けていく。
「様子を見て愉しむだけだと思う? どう考えても最後には絶望させるために約束を反故にするに決まってるわ。
こういう手合いは今まで沢山見てきたけど、決まって最後はあなたも含めて全員殺してきてるのよ、例外なんてないわ」
悪趣味な遊戯、その結末は惨劇しかないと語るフレミアに、言葉を失いつつも何とか言い返そうとする少女。
目を閉じ耳を塞ぐが如く、このまま言葉を重ねるだけでは少女は納得しなかっただろう。
しかし、フレミアは既に手を打っている。
そう、最初に瞳を覗き込んだ時点でユーベルコード、魅了の魔眼・快を確実に成功させる為、自身を見続けるように催眠をかけ。
何も言い返せず、思考が混乱しているその最中、彼女の魔眼によって与えられた快楽により少女は隷属、フレミアの言葉に従うようになる。
単純に言葉で説得するだけなら拒絶という可能性もあっただろうが、誘惑し従わせる。
少々強引な方法ではあったが、自分たちの話を聞き村人達に対して言葉を述べてもらうにはこの上ない手法であった。
同刻、少女を殺すべく農具を集め進む村人の前に立つ影ひとつ。
苦虫を噛み潰したかのような表情でどくように促す村人へ、立ちふさがっていたモリオンが表情変えず、強い視線と共に言葉を紡ぐ。
「やめなさい。彼女を殺したら、あなた達も死ぬ事になるわよ。
……失礼、流石に説明不足だったわね」
少女を殺す、その目的を見透かされ尚且つ自分達も死ぬ結末だと語るモリオン。
驚きつつもどういうことかわからぬといった表情の村人がほとんどなのを見て、彼女は謝罪しつつも言葉を続けた。
「あなた達は重大な見落としとしているわ。
この援助は、「彼ら」に選ばれた彼女を最終的に殺す事で成立している。
なら、殺した後は?」
オブリビオンが示していたのは、少女を特権階級に据える事、そして最後には村人の手によって殺せという事。
そこまでしか伝えられていないということは、その先に関して命の保障も、生活の保障も約束されていないという契約の証明。
「い、いや……だったら、次の犠牲者を選んで同じ事を」
「「彼ら」は今迄あなた達の苦しむ様を見世物として楽しんでいたわ。
処刑までさせて苦しませたら次には更なる楽しみを求めて当然この村に攻めてくるでしょうね。
もし同じ事をするなら次の犠牲者が選ばれる、という事を伝えておいて。
処刑の後も誰かが選ばれる、それを思ってより苦しむ様子を愉しむはずよ」
同じ事を続けるならば、より効果的に苦しむ手法をとる筈だ。
それをしていないという事は、つまり最後の仕上げに村人を皆殺しにする気であることの証明でしかないと言葉が続く。
「あたし達は猟兵。「彼ら」を狩る者達よ。
全員で生き残る未来、あたし達に託して貰えないかしら?」
破滅の結末を見透かしつつも、それに抗う強い意志。
力強きその眼差しはオブリビオンの言うがまま、少女を殺す事を考えていた幾人かの村人が考えを変え始める力を持つが、やはり染み込んだ恐怖は消えず。
「そうはいっても、どうやって。あんなやつらに敵うわけが」
「やっぱり、したがって命だけでも助けて貰うように言う方が……」
不安に押し潰されそうな村人たち、だがその考えを変える言葉が投げかけられたのはその直後。
「……死ぬのは怖い、ですけど。皆さんが殺されるのはもっと怖いです」
その声は生贄として選ばれた少女。
フレミアに魅了されてはいたものの、本心からどう思っているか語るように促され、彼女は人々が死ぬ事に恐怖する、その思いを語っていた。
「彼女はこう言っているわ。どれだけ力があるかわからないなら証明してもいいけど」
少女の言葉に打たれ、言葉を無くした村人に畳み掛けるモリオン。
その言葉が意味する事に気づいたフレミアはにこやかに微笑みながら、手にした紅き槍を突き出せば、地面にあった岩が粉々に砕け散る。
更に数多の破片が飛び散る最中、動いたのはモリオン。
全身に立ち上るオーラを纏って破片の前へと進み出れば、すさまじい勢いで飛び散る破片を全て受け止めその体には傷ひとつなく。
二人の力量を示すことで、オブリビオンに立ち向かう、それだけの力があることを見せつけていたのだ。
「す、すごい、これならもしかしたら、もしかするかも……?」
何人かの村人は二人の力を見て、立ち向かう気持ちが芽生えていた。
だが、まだ多くの村人は完全に心は動かず。
あと少し、力を示すか言葉を紡ぐか。
オブリビオンとの戦いでどうするか、北側の村人にはどうするか。
幾つかの情報、未来を提示し後押しする必要がありそうだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
善行が必ずしも報われる訳でない事は分かります
でも
私は報われて欲しいと思います
<コミュ力、優しさ、鼓舞、礼儀作法>で
人々が安心できるよう注意して説得
与えられ奪うだけの選択で良いのですか?
分け隔てなく尽くしてきた彼女を殺める事が本当に最善でしょうか?
抗う力が無いのなら私達猟兵が力になります
口先だけだと疑われるなら
私を攻撃させて【贖罪】で耐え
<覚悟と勇気>の眼差しで見つめる
怪我や病を患っている村人がいれば【祝音】で癒し
緊急の避難場所として【救園】の効果を説明
戦いは地形や村の状況を<情報収集し世界知識と戦闘知識>
から戦術や罠を考案
可能なら
北側の村に食料を分けて協力できないか相談
クリストファー・ブラックランド
私刑をした所で一時的に延命するだけだろ。
次に自分の番に回ってきたら、手を汚した分だけしんどくならねえのかな。
■SPD 敵の偵察を察知して対処する、卓越した技量を示す
既に私刑を止めた二人を屋根、煙突の陰から眺める。
小さいから目立たないだろうけど、念のため隠れながら。
その上で【視力】で野次馬の中からオブリビオン側の偵察を探して【追跡】掛けてみよう。
北側へのつなぎになりそうな水路や下水路に向かいそうなあたり、
不必要に視線を気にするあたりは偵察じゃねえかなと。
屋根伝いに飛行し、人が居なくなったあたりでシーブズギャンビットで奇襲、可能であれば生け捕りダメなら死骸で情報収集だ。
※他猟兵共闘、アドリブ可。
夜神・静流
「抗わなければただ死ぬだけです。奴等、魔の者には人に対する情けなどありませんから」
生きたければ、戦わなければならない事を説く。
逃げ場が無いなら立ち上がり、立ち向かわなければならない。
同時に、自己紹介を兼ねて力を示しましょう。
「貴方達が立ち上がるならば、私が力を貸しましょう」
刀を抜き、祈り・破魔・早業・属性攻撃・範囲攻撃技能を使い、七ノ太刀・暁を発動。
地面に向けて放ち、光で周囲を浄化する。
「私は魔を滅する者。悪しき魔の者は全て抹殺します」
吸血鬼や妖魔のような、邪悪な魔物を討つ専門家である事を伝え、信頼を得ようとする。
アドリブ・絡み歓迎。
「私刑をした所で一時的に延命するだけだろ。
次に自分の番に回ってきたら、手を汚した分だけしんどくならねえのかな」
村人と少女が邂逅、これからどうすべきか猟兵交えて道筋を考える最中にとある家の屋根から様子を伺い言葉を紡ぐ者がいた。
それは30cmに満たない体躯、フェアリーであるクリストファー・ブラックランド(ホロウブラック・f04805)である。
小さき体を最大限に、周囲に見つからぬように気を配り。
オブリビオンが私刑をさせていくのなら、何らかの形で情報収集してくるだろうと予測した彼は相手側の動きを待ち受けているのであり、その行動は後々大きな意味を持つ。
クリストファーが周りに睨みを利かす中、村人との交渉は最終段階へ。
少女と村人、双方を引き合わせ絶望しかない未来、それに抗う道を示した猟兵2人に加え、新たに二名。
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)と夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)が加わって。
村人の中に残る恐怖と疑念、それらを拭うべく説得が始まっていた。
「与えられ奪うだけの選択で良いのですか?
分け隔てなく尽くしてきた彼女を殺める事が本当に最善でしょうか?」
今だヴァンパイアに従うべきでは、と思う村人にシホが言葉を紡ぎ、北側の青年とは違い。
自らの恩恵すら投げ打って人々の為に使ってきた少女をこのまま殺す意味はあるのかと問いかける。
彼女は思う、善行が必ずしも報われる訳ではないということを。
しかし、だからこそ。
自己犠牲までして人々と共に歩もうとした少女は、報われてほしいと。
故に思いの籠められた言葉は文字の組み合わせ、意思疎通を図るという意味を超え。
人々の感情を揺さぶる力を持ち合わせていた。
「抗わなければただ死ぬだけです。奴等、魔の者には人に対する情けなどありませんから」
心が動き始めた瞬間、立ち上がらねば為らぬと人々を奮い立たせる言葉を続けたのは静流であった。
従属こそ生存と考える人々にとっては、戯れに殺されるのもわかっていたが僅かな希望、そんないつ切れるとも分からぬ物にすがり生き延びた所でなんの価値があるのだろうか。
「生きたければ。そう、家畜の様に飼われて生きるのではなく、人として生きたければ。
戦わなければなりません。逃げ場が無いなら立ち上がり、立ち向かわなければならない」
強き口調、弱腰な村人を射抜く眼差し。
反論すべき言葉を思わず飲み込み、次の言葉を待つというほどの何か、を彼女は一同に与えていたのだ。
「はい、彼女の言うとおり、抗わなければならない、その時です。
抗う力が無いのなら私達猟兵が力になります」
続けてシホも言葉を紡ぎ、戦う時が来たのだと説けば。
少しずつ猟兵たちの言葉に同意していた村人たちからも、そうだそうだと声が上がり始めていた。
「その意気です。そして、その為の力は先の2人だけでなく、ここにもあります。
貴方達が立ち上がるならば、私が力を貸しましょう」
同意示した村人たち、その後押しをするように。
静流が腰に差した刀である十六夜を抜刀。煌く刀身を晒した直後に光の刃が地面を薙ぐ。
光の刃が走った先、そこには広範囲、10名以上を巻き込めるほどの光りが輝き、魔なる者を寄せ付けぬ、清浄さを感じる結界空間を生じさせていたのだ。
「私は魔を滅する者。悪しき魔の者は全て抹殺します」
吸血鬼、妖魔、邪悪な魔物。
闇をもたらす存在に対し、強烈な力を持つと感じる光の力をその場に示せば一人、また一人と戦いに同意する者が出始める。
「そう、口先だけではありません。戦い抗う力はここに。
そして、もし守る力を、癒す力を欲するならば。それが在るか信じられぬなら、私を傷つけてみてください」
戦う力を示した静流、だが自分たちが傷つけられるのを防げるのかという不安にシホが返答。
恐る恐る、短剣手にした男性が言われるままにシホを突くが彼女は腕を面抜かれても顔色変えず凛とした佇まい。
出血もほぼなく、慈愛に満ちた微笑み返せば刺さった短剣を引き抜いて。
傷口へ手をかざせば患部が淡く輝いて、その傷を即座に癒してしまっていたのだ。
この光景を見て村人は驚きと共に、戦う決意を固めるものが一気に増加。
次々と自分も、自分もと声を上げる人々が続出する中でシホが癒しを与える光をもって、病める人を癒していけば半信半疑だった村人もようやく抗う事への同意を示す。
「戦う覚悟は決まったようだな。なら準備は早いに越したことはない」
意思が統一されたのならば、このままここで時間を潰すわけには行かない。
静流の言葉にハッとした村人は農具を手放し、どうするべきかと問いかければ先ずはシホの提案が。
「村の北側が苦しいようですし、そちらに食料を持って協力するようにしましょう」
「ああ、他の仲間が北側でも交渉している、協力を断られる事は無い」
出された提案、それが完了できる準備はあると静流も続けて協力は可能と説けばそれを行う事が決まる。
続けて緊急避難にシホのユーベルコード、【救園】が有用であることが説明され、同時に南北を隔てる柵などの撤去も必要かと急ぎの話がなされる中、新たな猟兵が急ぎの用を伝えるべく姿を見せるのはその時であった。
「そうだな、急いだ方がいい。それほど時間もあるわけじゃないだろう」
覚悟を、方針を決めた村人たち、その頭上から声響く。
驚き皆が上向けば、直後に降り注ぐ巨大な羽虫、その亡骸。
「コイツが村の様子を探ってた、それも南北あわせてな。野次馬に紛れるか村人に内通してるかと思ったが」
話しながら羽虫の残骸、それに遅れて着地したのは小さな体躯と透き通る羽、そして羽織った聖職服が印象的なクリストファー。
彼が何をしていたのか困惑する村人、それらの疑問に答えるのは時計の針を少々巻き戻す必要がある。
それはほんの数分前、屋根や煙突の影隠れ、状況を伺っていたクリストファーが見つけたのは村を飛び交う嫌に大きな羽虫の姿。
羽虫は不自然に騒乱付近をふわふわと飛びながら、その動向を探るような素振りを見せる。
これは怪しいと睨んだ彼の予想通りというか、羽虫は人々に気付かれぬよう物陰、水路の方を目指して飛べば、人在らざる偵察と即座に彼は見抜いて追跡を。
知性の低さからか追跡されている事など知らず、無防備に飛ぶその羽虫の背後へ迫るクリストファー。
次に羽虫が分かったことは、羽の付け根に走った痛みと自分が落下する感覚。
地面に落ちる、その瞬間に羽虫の複眼が捕らえた光景は。
逆さまの世界の中、冷たき瞳で自身を見遣るクリストファーの振るった短剣が視界一杯に広がりはじめるその景色。
直後に視界から光は失われ、頭部を、複眼ごと切断された羽虫は絶命していたのだった。
「まずは一匹、か。こういう手合いは数だけは居そうなんだよな」
面倒くさそうに頭をかいて、再び空へと舞い上がったクリストファー。
念のためにと村の北側も纏めて巡回、その後数匹の羽虫を仕留めていたのであった。
「どういう敵が仕向けたか分からないですが、偵察が戻らないと分かればすぐに攻める準備をするでしょう。
とやかく言う暇はないですね」
村人の信頼得ようと演技、丁寧な口調で倒した敵と今後について説明するクリストファー。
ここで話しているよりも手早く行動に移すのが最良と彼は付け加え、村人は慌てながらも猟兵たちの指示通りに動き出す。
シホの提案した北側との連携へ幾人かの村人が食料を持って走りつつ、地形や村の家々の位置取りを村人たちが紙へと書き出し戦う為には、また村人が被害を受けぬ為にはどういった動きが良いか話し合いがもたれていた。
残された時間は少ない、だがその中で最善を尽くすにはどうすれば良いのか。
慌しい時間が始まっていた。
大成功
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第2章 集団戦
『暴食飛蝗の群れ』
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POW : 選択進化
戦闘中に食べた【肉】の量と質に応じて【各個体が肉を喰らう為の身体へと進化して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 飢餓
戦闘中に食べた【動植物】の量と質に応じて【少なければ少ない程に攻撃性を増して凶暴化】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : 大繁殖
戦闘中に食べた【動物の肉や植物】の量と質に応じて【群れの個体数が飛躍的に増殖して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
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猟兵たちの説得により少女の殺害は中止、そして慌しく北側との連携の為に人々が動き出していた。
先ずは南北の移動を遮る柵が撤去され物品や人々の行き来、交流が回復しそれと同時に南側にあった食料が北側へ運び込まれ、北側住人の体力回復に多いに効果を発揮していた。
また、偵察を行っていたオブリビオンが排除されたことでこれらの準備が出来るようになったというのはとても大きな意味を持つ。
猟兵にあっさり倒された羽虫、五感を共有しての偵察ならば力強いオブリビオン相手を想定すればこのような事はありえない。
つまりはこの羽虫は、騒動が起これば報告に戻れ、といった簡易な命令だけで運用されていたのは明白。
中々戻ってこない、そこで初めて異変に気付くという状況、普通ならばありえない失態であるがこれも人間など戯れで殺す存在という慢心が産んだ失策ということか。
この間に猟兵達は村人と協力し、急ぎ戦いに備えての準備を行っていく。
家々の配置、破損も覚悟し家屋利用の罠の設営許可、人々が逃げるならばどういったルートが良いかという打ち合わせ。
また、村人も覚悟を決め猟兵が南北で支援しあうならばそれへの協力も約束され迎撃準備は整った。
嵐が来る前、急ぎ対策をするかのように人々が準備を行い、ひと段落つき訪れた休息の時。
それを破るかのように現れたのは、南方から飛来するオブリビオンの群れであった。
群れて姿を見せたのは空覆い、まるで一つの巨人とも見える飛蝗の群れ。
全てを喰らい尽くし、村があったことすら分からぬようにすべくオブリビオンが放った刺客であろう。
飛来する道々に生えた雑草の根すら残さず喰らい、荒れ果てた土地へと変えながら進む飛蝗の群れ。
だが、今この村はオブリビオンに従属し、搾取され弄ばれるだけの村ではない。
抗う力を、意思をもち真っ向から立ち向かう人々が居るのだから。
オブリビオンへの反抗は、これより始まる。
クリストファー・ブラックランド
虫の目を通して覗きか。
何ともうらやまけしからん能力だnハイスミマセンガンバリマショウ(がくがく
■事前準備
緊急退避なら俺もフェアリーランドがあるんで、実演して退避所を増やそう。
主に【動物と話】しをして家畜の退避のサポートだ。
へへ、旦那。ウチには良い牧草有りやすよ(牛馬にゴマすり)
更に時間が有り、飛蝗の速度が遅いならば。
田畑の防衛は厳しいし、退避と収穫の収納は俺のUCでやるから
南北の諸君と出来る時間内で一緒に収穫しよう。
糧食が多く残る実感と吊り橋効果的支え合いが復興の励みになる…かなぁ
■戦闘
まだ「目」に頼ってるスケベ野郎だ。
手足も知能無いだろ。
合流を優先。
広場に牧草でも積んで、寄ってきた虫を刺そう
夜神・静流
「来ましたか……それにしても飛蝗の群れとは……」
ある悪魔の名を連想させる光景ですが、それよりも今は目の前の危機を何とかしなければいけませんね。
ダッシュ・ジャンプ・残像・早業・空中戦の技能を使い、素早く迎撃に当たります。
村人を狙う敵群を優先して排除。
攻撃は早業・属性攻撃・範囲攻撃・なぎ払い・破魔・先制攻撃orカウンターを使用し、三ノ太刀・鳴神を発動。
素早く敵の群れを範囲内に捉え、纏めて消し飛ばします。
「やはり数が多い敵が相手の時は、この手に限ります」
単体では弱いとは言っても、数の暴力は脅威です。迎撃中心とはいえ、なるべく数を減らせるように攻撃出来るチャンスがあれば積極的に数を減らしましょう。
フレミア・レイブラッド
飛蝗とはまた数が多くて面倒そうな相手ね…。何でもかんでも食べようとするのもタチが悪そうだし…。
【ブラッディ・フォール】発動。「仮病とは最大の病に他ならない」の「炎槍使いの魔嬢様」の服装へ変化。【滅びの殺風炎】で一気に焼きつくして数を減らし、討ち漏らしは魔槍【怪力、早業】で叩き潰して【私の「おもちゃ」に殺させてあげる♪】で炎の巨人に変えてこちらの手駒にするわ。
でも…虫って事で炎が効きそうと思ってこのお嬢様の力を使ったけど…本当は(変化元の)お嬢様気に入らないからこの変化したくなかったのよね…。他の黒皇竜や黒焔竜の力だと村ごと焼きつくしかねないから仕方ないのだけど…。
※アドリブ等歓迎
圧倒的な食欲、全てのものを喰らい尽くさんと村へと進む飛蝗の群れ。
だが、この中で進路上に存在する違和感に気付けた個体は一匹たりともいなかったのだろう。
無理もない、知性なく上位者に従い、ただただ食欲を満たす事だけで突き進んでいるのだから。
ギチギチと顎を鳴らし、不協和音を撒き散らし、目に付く雑草、その根すら残さず喰い尽し進む飛蝗。
しかし日当たりよく農作物が細々と作られる南方の畑、そこにほぼ収穫物が残っていない異変には頓着せず進むことがこの飛蝗たち、操られる存在の限界であろう。
この異変、仕込んだものは勿論猟兵。
飛蝗が襲来する少し前、それを成したのはクリストファーである。
「へへ、旦那。ウチには良い牧草や野菜が有りやすよ」
彼が行っていたのは動物と会話できる特性生かし、村の貴重な労働力、牛馬を懐柔する事であった。
村人へは緊急避難能力としてのユーベルコード、壷に触れた対象を異空間へ誘うフェアリーランドの実証を行い、出入り可能な安全地帯であることを証明。
その上で牛馬を、希望する住人だけに留まらず、南方の畑において敵に蹂躙されるならばと動員できる村人を総出でほぼ全ての農作物を収穫。
収穫物の一部は本来、食べる機会のなかった牛馬にクリストファーが差し出して自分のいう事を素直にきくように話をつけて残りをフェアリーランドへ運び込んでいたのだから。
また、この収穫は人手が必要と南北の人員、双方を合わせての行動となり断絶していた村人の関係改善に寄与。
北方におけるバリケードや罠作成といった労働とあわせ、収穫と糧食の確保という共同作業において村人達が互いに何がおこっていたかを報告しあい話し合う場ともなった。
恐らくは戦い終わった後の交流、その滑り出しにも繋がるであろう。
「しかし、虫の目を通して覗きか。何ともうらやまけしからん能力だn……」
「これであと半分も無いで……何か仰いましたか?」
「ハイスミマセンガンバリマショウ」
村人に収穫や収納に関して指示を出し終え、一息ついたその最中。
自分が仕留め行軍を遅らせる結果となった羽虫と使役者に関してつい本音がこぼれかけてたクリストファー。
収穫した作物を纏め運んできた村人に聞かれ慌てて声色変更、がくがくと機械じみた動きとカタコトでごまかしちゃって、彼は収穫後の戦いに備えていた。
そして、時間が進み飛蝗の襲来へと繋がっていくのである……。
「来ましたか……それにしても飛蝗の群れとは……」
「飛蝗とはまた数が多くて面倒そうな相手ね……何でもかんでも食べようとするのもタチが悪そうだし……」
空を覆わんばかりに肥大化、統率され巨獣の如き動きを見せる飛蝗の進軍を眺めつつ静流とフレミアが言葉を交わす。
村への被害、村人の犠牲を無くす為に打って出る形を取った彼女らは頷きあって同時に駆けて。
一気に群れとの距離を詰め、接触直前に二手に別れ左右からの挟撃へ。
「何処を斬っても当たりそうなのは楽で良い、ですが。少々数が多い分、骨が折れますね」
群れの右側へ回った静流、とある悪魔が世界の終わりに率いて現れるというのは蝗の群れ、その悪魔の名を連想させるこの進軍に思うことがあったようだがそれよりもこの光景を収束させるのが先決と思考を切り替え。
飛来し体に纏わりつき、肉を食いちぎろうとする蝗の中を強行突破、地面を蹴って群れの中へとあえて飛び込み腰の刀に手をやれば、ギチギチ五月蝿い顎とブブブ、と不快な羽音の中にて抜刀一閃。
煌く刃と共に雷鳴轟き、剣閃と電撃が放たれ彼女の周囲一帯を纏めて凪げば、電撃に当てられた数多の蝗がまるで殺虫剤の噴霧を受けたかの如くボトボトと地面に落下。
一瞬、足と羽が無茶苦茶に動いたがそれも僅かの抵抗か、その生涯を雷撃にて閉じていたのだ。
「やはり数が多い敵が相手の時は、この手に限ります」
抜いた刀を静かに納刀、纏わりついた姿勢のままに絶命している蝗を払いのけ静流が呟けば、飛蝗の群れは雷撃を受けた腕の部分が抉り取られた巨人のように見えたがすぐに残る場所から蝗が補充、ほんの少し小さくなった巨人の形を維持。
まるで人の形が人間に対し恐怖を与える、とでも認識しているかのような動きだがそれを許さず次なる一手が即座に飛来。
「電撃もいいけど、虫にはやっぱり炎よね。飛んで火にいるなんとやら、ってね!」
声の主はフレミア、だがその姿は身の丈より大きな紅槍構え、金髪なびかせた少女ではなく。
赤き髪、よれ曲がったウィッチハットと質素な赤と紫のドレスを纏った、過去に彼女が葬ったオブリビオン。
心の病だ、頑張ってるのに大変なのに分かってもらえないとのたまって一つの村を支配していた、仮病で大変だと主張していた悪辣なオブリビオン、その姿へと変化していたのだから。
「さあ、燃え尽きちゃいなさい! 私は元のと違ってサボったりしないからね!」
叫びながらに槍振れば、穂先から赤き色に染まった風が生み出されそのまま巨大な炎の竜巻へと急成長。
炎の嵐に巻き込まれ、燃えやすい羽や手足、触覚といった末端より燃え上がり、鼻を突く不快臭。
タンパク質が燃える際にでる独特の臭気を撒き散らしながら多くの飛蝗が燃え落ち、黒き炭となって地面へ落下。
「ほらほら、次いくわよ?」
続けざまに槍に施された封印解除、絶対殺戮モードとして槍の穂先が禍々しく湾曲。
突かれればその穂先が深く歪な傷を作り、たとえ生き延びても治療に時間が掛かったり最悪、治療の甲斐なく死ぬような殺す為だけの物へと姿を変える。
そのまま炎の竜巻で出来た、ぽっかり空いた空間へ飛び込んだフレミアが右へ左へ槍を凪げば、穂先に捕らえやれた飛蝗は体の各所を切断され、柄で打たれた飛蝗は打撃の衝撃にて意識を失い地面へ落下。
「それじゃこれでお仕舞ね、おもちゃにしてあげる♪」
これが最後の仕上げ、落ちた飛蝗の死体へ命ずるフレミア。
命令によって飛蝗たちは炎の巨人に姿を変えて、その熱量にて進軍を阻む壁となっていた。
だが、ここまで盛大に倒したオブリビオンの力を使ったフレミアであったがその内心は少々複雑。
虫には炎が効きそうだから、それと他の炎使いだと村ごと焼き払ってしまいそうな制御困難だからと仕方なく選んだオブリビオンの力であったが変化元たる『炎槍使いの魔嬢様』がやらかしていたので気に入らない、変化したくなかったのが本音。
だが背に腹は変えられぬとこの能力を選び、彼女は多くの敵を打ち倒していたのである。
「流石です、しかし無理にでも突き進むようですね」
二人の猛攻、それを受けても尚進む飛蝗の群れ。
村を食い尽くせという命令、食料を前にして止まれぬという本能であったがそれを阻むは静流の剣撃。
抜刀、手首を返しての二撃目が飛び回る蝗を切り落とし、その移動を誘導すれば何故か進路にあった干草の山。
あざとく目をつけた蝗が食いつき力を増そうとするがそこから飛び出す影一つ、それは潜んでいたクリストファー。
「合流完了、それじゃこっちもお仕事だ」
そう呟いて餌に釣られた飛蝗、その腹部へ剣を突き刺しそのまま両断。
驚き飛びのく仲間にも容赦なく追い討ちを行えば、3人の攻撃で蝗の進軍速度は大きく低下。
村への被害は無いままに、その殲滅戦へと流れは大きく傾いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
予想以上に人々が奮い立ちとても感激しています
もしかして代表者の少女の人徳もあるのかしら?
よければ名前を聞きたいです
基本
村への被害が最小限になるよう行動
逃げ遅れた村人は【救園】に保護
村人も戦うなら<勇気、優しさ、コミュ力で鼓舞>しつつ
最前線に立ち<覚悟を決めてかばう、救助活動、オーラ防御、武器受け>
で守りながら戦う
【祝音】で味方を癒す
特に村人を優先
攻撃の余裕があれば【華霞】を
<スナイパー、誘導弾、鎧無視攻撃、視力、暗視>
で口を狙って撃つか
<フェイント、おびき寄せ、挑発、誘導弾、援護射撃>
で花弁を大量に速く舞わせ続けて攪乱
口を壊せば食べられません!
これでも食べていて下さい!
モリオン・ヴァレー
あの闇の虫達に集られたらあっという間に骨ね
これ以上は村を闇に呑ませる訳にはいかないわ
<暗視>眼帯を取り霊力による視界確保
【パイロ・ブラスト】発動
<属性攻撃><破魔><クイックドロウ>破魔の力を宿すとただでさえ悪い燃費がさらに悪くなるけど、この際仕方ないわ
とはいえ、これだけだと長くは攻撃出来ないからもう一手
<ロープワーク>手頃な小石に指から垂らした霊糸を結び即席のフレイルを
<援護射撃><投擲><オーラ防御>軽くて速度もあるし、糸が纏う重力オーラで一撃の重みも確保、糸も擦違い様に肉を断つ刃となるわ
左手に銃を、右手にフレイルを
やるなら徹底的に焼却に粉砕よ
ベルトの霊力が尽きるまで何匹墜とせるかしらね?
先発した猟兵によって多くの飛蝗が打ち落とされる最中、村の中でも戦う意思示したものが農具を武器に。
万一、負傷したならばすぐに保護するのでとシホがユーベルコード、救園の準備が出来ていると説明する中、視線を移せば生贄として選ばれた少女が戦いへ赴く村人を勇気付け、また恐怖し救園に逃げ込むことを選び、恥じる者の苦しみを受け止めつつ、誰も責めないとその心労を和らげる姿が目に付いた。
支配と抑圧、抵抗する力を持たぬ人々が早期に立ち上がり、猟兵に協力し奮い立つその姿。
いくらオブリビオンの悪辣な遊戯を止め、尚且つ抵抗する準備を整える時間と力持つ猟兵が居るとはいえここまで抵抗する意思を示すその光景にシホは感激しつつ、もしやオブリビオンによって生贄とされた少女、その人徳もあるのかと思いを巡らし彼女に声をかけていた。
「あなたのおかげでしょうか、村人の皆さんが生きる力に満ちているように見えます」
「いえ、そんな事は……皆さんがきて、おかしいという事に目を向けさせて下さって。
その上で助けてくれる、戦ってくれるからこそ、私を犠牲にしようとしていた後ろめたさから話を聞いて下さってるんじゃないかとは思うんです」
少女の人徳によるものでは、とシホが尋ねるも少女はそうではなく、猟兵によって現実を見て、尚且つ抵抗する力があると知ったこと、そして自分を犠牲に生き延びようとした後ろめたさ。
それらがあるからこそ、話を聞いてくれているのだと思い返事をしていたのだった。
「そうでしょうか。もし、後ろめたさがあったとしても、あなたが北側の青年のように、傍若無人に振舞っていれば話を聞くような事もなかったでしょう。よければ、お名前を聞きたいです」
「えっ? 私の名前ですか? はい、リマっていいます。シホさん、危ない目に合われるのは分かっていますし、何も出来ないですが、よろしくお願いします」
名前を尋ね、最後の村人が避難し戦う者だけが残った中で少女、リマが頭を下げる。
その願いをしかりと受け止め、シホはリマを救園へと誘って、戦う為に残った10名ほどの村人と共に南方、巨人の如き姿を維持するも猟兵達の攻撃で徐々に小さくなっていく飛蝗の群れへ向かい歩を進めていた。
同刻、猟兵たちの手によってその数を減らしつつ、炎の巨人によって進軍を阻まれていた飛蝗の群れへ新たなる一撃が見舞われていた。
「迫り来る炎の嵐、耐えれるものなら耐えてみなさい」
眼帯取りつつマシンピストルのパイロ・バスターをコッキング、安全装置を解除して銃口向けたモリオンが呟いて。
破魔の力をその銃身へと注ぎ込み、暗視さえも可能とした右目によって闇と影へと紛れ込む飛蝗までもを視界に捕らえて狙いを定め、引き金引けばマシンピストル特有の圧倒的な連射力。
凄まじき速度で数多のマズルフラッシュが銃口より迸り、射撃の反動で左腕が大きく跳ね上がりそうなのを右手で押さえつけてのリコイルコントロール。
銃口の跳ね上がりによる照準のズレを最小限に押さえ込み、放たれた銃弾は火炎と共に魔を祓う力を持って、飛び交う蝗たちを次々と撃ち落す。
「集ってきたらあっという間に骨にされそうだけど。これ以上は村を闇に呑ませる訳にはいかないわ」
近づき纏わり付き、喰える物なら全て喰い尽くし最後は骨しか残さぬと言わんばかりに集う闇の虫。
されど近づけなければ問題ないと、彼女はトリガーを引き続け燃費の悪化と引き換えに力を増したその銃弾で一匹でも多く撃ち落とさんと攻撃を継続。
焼かれ炭となった同胞の亡骸ですら喰い尽くし、自らの糧として新たな同胞を生み出す飛蝗であったがそれだけでは減少する群れの数を補え切れるはずもなく。
ギチギチと憎らしげに顎を鳴らしつつも数多の仲間を失って巨人の形を維持できず、止む無く群れは幾つもの球体へと分離、複数方向からの攻撃へと切り替えていたのだ。
「なるほど、分離ね。こうなると燃費の悪いこれだけじゃ厳しいけど」
そっと呟くモリオンの右手の指から霊力にて生み出された糸である霊糸が伸びる。
そのまま地面の小石へ伸ばし、霊糸にて結び上げれば即席のフレイルへと姿を変えて銃撃と打撃、二つの攻撃手段となる。
「徹底的に焼却と粉砕よ」
フレイルを振り回しながらモリオンが一つの群れへと突撃、小石の衝突による打撃に加えて糸も遠心力を生かしての切断力を発揮、小石と手の間を飛んだ哀れな飛蝗を両断すればその残骸へ突きつけられた銃口から容赦ない発砲が。
喰って増殖の糧とする、そんな利用方法すらも許さぬ、跡形もなく潰すとモリオンの攻撃は続き、小規模な群れはその猛攻によって合えなく消滅していたのだった。
同時に、分離したことで他の猟兵によって次々と小規模な群れは殲滅、全体数を大きく減らすがそれでも尚、村へ突き進もうとする意思は衰えず。
強引に突破を図った幾つかの群れが合流、一気に村へと迫るがそれを阻むかのように幾本もの唐棹が振るわれていた。
「こ、これ以上村に手はださせないぞ!」
進撃を阻んだのは先ほど村を出た10名程度の村人であった。
やはり恐怖はぬぐえないものの、戦う意思を示した彼らはリーチの長い武器として選んだ唐棹にて何匹もの飛蝗を撃ち落し、進軍を阻み分離した群れを猟兵が撃ちつつ合流するまでの時間を稼ぐ。
「村の人たちを傷つけさせはしません!」
更には戦闘力に劣る村人を守るよう、最前線に立つシホが飛び掛る飛蝗を体を張って受け止めて一匹たりとも近づけさせぬとダメージを肩代わり。
噛み付き、発達した棘持つ前腕部で傷つけられようとも一歩も引かずに攻撃を一身に受け止めればその間に村人も大きく後退すれば、庇う必要も無くなってシホも攻撃へ転じていく。
「口を壊せば食べられません! これでも食べていて下さい!」
叫ぶや否や、彼女の持つ武具が白銀に輝くエーデルワイスの花びらへと姿を変えて撒き散らされれば、それらが飛蝗の頭部、その強靭な顎目掛けて飛来する。
如何なる物でも喰い尽そうとしたその顎であったが、舞い踊る花びらはその顎の強度を上回りご自慢の顎を破壊。
喰いつく力を奪い取り、また同時に全身を引き裂いて撃ち落し、更に多量に撒き散らされれば回避に気を取られて統率された群れの動きはバラバラに分散されその機能を奪い取られる。
こうも攪乱されてしまえば、群体による力など無いに等しい。
はぐれた者から各個撃破の要領で撃ち落され、時折強引に攻撃できた個体も容赦なく潰されていけば最早抵抗する力も無く。
空を覆わんとした飛蝗の群れは駆逐、その数の暴力によって何名かの猟兵に傷をつけれたのだが、即座に傷もシホが癒しの力を持つ慈愛の光で癒してしまえば、群れが与えた被害など無いに等しいものであったのだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『老獪なヴァンパイア』
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POW : 変わりなさい、我が短剣よ
【自身の血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【真紅の長剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 護りなさい、我が命の源よ
全身を【自身の血液】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 立ち上がりなさい、我が僕よ
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【レッサーヴァンパイア】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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「まったく、所詮は虫って所かしら。抵抗されたからって一人も食えずに全滅なんてね」
地に落ち焼き尽くされ、炭になった配下たる飛蝗の残骸踏みにじり紅きドレスを纏った女が姿を現したのはその直後。
抵抗した村人や猟兵たちを値踏みするよう、ねっとりと纏わり付くような視線で眺めてその力量を測っていくのは長きに渡って生きる、その為に必要な能力か。
自ら危険に飛び込んで、そして戦うといった好戦的な要素が余り感じられぬヴァンパイアであったがやはりその力は本物、全身から沸き立つ強者の雰囲気によって村人たちは恐怖に支配されつつあったのだから。
「そこの連中はまあ、楽に死ねるわね。残りの連中は、そうね、抵抗しなければ楽に死ねるでしょうけど、そんなつもりは無いのでしょう?
本当はもっと楽に、楽しく面白いショーが見れるって聞いてきたのに、面倒事を押し付けられたものねぇ……」
騙された、自分は被害者だと言いたげなヴァンパイア。
心底面倒そうにしながらも、逃げるという選択は恐らく北より来訪した仲間に対し、己がプライドが許さぬのだろう頭に無く。
抵抗勢力を殲滅し、自分が変わりに遊戯を完遂してやろうという余裕さえも見せ付ける。
だが、このまま好き勝手オブリビオンの遊戯を続けさせる道理も無い。
猟兵達は己が得物を持つ手に力こめ、ヴァンパイアと対峙する。
夜神・静流
「親玉のお出ましですか……皆様、ここは私達にお任せを」
村人達を後ろに下がらせ、互いに助け合いつつ警戒するよう伝える。
「私の使命は、邪なる人外の者を討ち滅ぼす事」
一匹たりとも逃しはしない。この女はここで討つ。
破魔技能は常時使用。
ダッシュ・残像技能で敵に肉薄し、接近戦を挑む。
敵の攻撃は見切り・残像技能で回避しつつ、避けきれない分はオーラ防御・激痛耐性で対応。
そして早業・カウンター・属性攻撃・なぎ払い技能を使って二ノ太刀・紅で攻撃。
また、隙が出来たら八ノ太刀・神威を発動し、光の剣による必殺の一撃を。
「私の剣は魔を滅する事に特化したもの。普通の剣士と思うと痛い目を見る。気付いた時には、もう遅いが」
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
…楽しく面白いショーとはリマさんの事ですね?
(処刑は口にできず
微かに嫌悪感を滲ませ)
誰も死なせません!
貴女だけを骸の海へ送り返します!
東方の騒ぎに村人が動揺したら
大丈夫です
何故私達がこの村の事情を知っていたと思いますか?
敵の悪巧みは全てお見通しです
ハッタリですがノクスさん達を信じています
念の為
残りの村人も【救園】に保護したいですが
最後まで見届ける事を望む方は
【盾娘】と<オーラ防御、武器受けでかばう>
で守りつつ戦う
【祝音】で味方を癒す
村人がいたら優先
攻撃の余裕があれば【弾葬】を
<楽器演奏と誘導弾でフェイントを交え
味方が攻撃を当て易いように援護射撃>
戦後
東方からの敵襲を警戒
フレミア・レイブラッド
調子に乗らない事ね、吸血鬼。
貴女こそ、この悪趣味の代価はその命を以て払って貰うわ。
全力で滅ぼしてあげる…覚悟なさい!
吸血妃や竜皇と渡り合い、滅ぼして来た『吸血姫』(わたし)の真の力、見るが良いわ…!
【吸血姫の覚醒】を発動。解放した真祖の莫大な魔力を漲らせ、得た超高速の速度と飛行能力で敵に自身の【残像】を攻撃させる等、回避・翻弄。
敵の心の余裕をへし折った後、強化した膂力と【怪力、早業、2回攻撃、鎧砕き】による魔槍の一撃を叩き込み、更にその速度で吹き飛ばした先に移動、更に一撃といった感じに叩きのめすわ。
トドメはこの莫大な魔力を集束した【神槍グングニル】で消し飛ばしてあげる…!
※アドリブ等歓迎
クリストファー・ブラックランド
楽しくて面白いショウなぁ。
目論見が外れた出歯亀な助兵衛連中が返り討ちにされるコメディとかどうよ。お前さん、主演女優になるぜ?
■対ヴァンパイア
とか、威勢の良いことは言ってやったが、俺はサポートに回ろう。
フェイント駆使して、他猟兵に隙を作りつつ、村人から眷属が出ないよう警戒。
急所がとれそうなら、そのまま背後方向から飛んでダガーで一刺し。
「所詮は虫ってな言い分だが、取るに足らねえ虫みたいな男に刺されてどんな気分よ。」
囁くように問い、離脱する。
「特権階級一人を選出して、何だっけか」
「特権階級が皆に殺される事がお役目ってのがルールだっけか。
お前さんの番が回ってきたって事じゃねえか。よかったな、特権階級」
「……楽しく面白いショーとはリマさんの事ですね?」
「リマ? 誰かしらそれ。あぁ、もしかして殺される予定だった子の名前? 興味なんてなかったから知らなかったわ」
淡々と、されど微かにシホの声色に滲んだ嫌悪感、処刑とは言いたくないという意思を感じた老獪なヴァンパイアが挑発するように嘲笑って返答する。
全てを見透かすようなその態度に村人が恐怖し、怖気づくがそれを抑える様に動くは静流であった。
「親玉のお出ましですか……皆様、ここは私達にお任せを」
抜刀、そして一歩進んで村人を守るような位置取りへ。
下がる様に左手で支持を出せばそれに従い村人たちはヴァンパイアを警戒しつつ少しずつ後退する。
「楽しくて面白いショウなぁ。目論見が外れた出歯亀な助兵衛連中が返り討ちにされるコメディとかどうよ。
お前さん、主演女優になるぜ?」
「ええ、調子に乗らない事ね、吸血鬼。貴女こそ、この悪趣味の代価はその命を以て払って貰うわ」
そして下がった村人を鼓舞する様に前に出たのはクリストファーとフレミアの二人。
クリストファーは軽口で余裕を見せつつ挑発を、フレミアは強き意思にて討ち果たす宣言を。
4人の抵抗する姿勢が気に入らなかったか挑発が項を奏したか、どちらもあるのか。
眉を顰めて目つきを変えて、苛立たしげにヴァンパイアが一歩踏み出す。
「やれやれ、面倒だけどやるしかないようね。変わりなさい、我が短剣よ」
これ以上挑発されるのはプライドが許さぬか、自ら左腕を短剣で傷つければ滲み出た血液がまとわり、禍々しき大振りな真紅の長剣へとその姿を変じ、戦いの幕は開けるのであった。
「私の使命は、邪なる人外の者を討ち滅ぼす事」
一匹たりとも逃がしはしない、逃げを打つ間も与えぬと真っ先に切り込んだ静流とヴァンパイアが肉薄。
強き意思込め睨み付ける静とは対照的に、笑みを浮かべて余裕を見せるヴァンパイア。
刀と剣がぶつかり合って火花を散らし、刀身を弾きあって二合、三合とぶつかり合うがやはり人々を制し支配してきたヴァンパイア、膂力を生かして優位に運び押し込みかけるが猟兵は一人で戦っているのではない。
「よっと、どうした、こっちは無視か? それとも捕まえられないか?」
両者の斬合、その合間を縫う様に飛び回るクリストファー。
ヴァンパイアの眼に止まる、そんな位置取りを考えて飛ぶことで注意をそらし静流の援護を行っていたのだ。
「チッ、鬱陶しいわね。人に主演女優なんて威勢いい事言った割には逃げ惑うだけかしら?」
「おあいにく様、主演はそっちなんで俺は助演男優でもやらせて貰うんでこれでいいのさ」
苛立たしげに放つヴァンパイアの言葉にも、挑発した時と同じく飄々と、そして役者に例えて返すクリストファー。
舌打ちしながらその妨害を掻い潜り、無理に切り込み静流の左腕に深々と傷をつけるがそれでも彼女の動きは鈍らず、反撃にと振るわれた一太刀をバックステップで回避。
余裕を見せたヴァンパイアだったがその横合いから迫る紅き一迅の風。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
それは数多の強敵、吸血妃や竜皇と渡り合い、屠ってきたフレミアが持つ真の姿、吸血姫としての力を解き放った一撃。
全身に滾る膂力を生かして超高速の突撃、その真紅の穂先の一撃を、剣を当てて打ち払う事にて回避。
だが直後に反転、大きく飛び上がって飛行し頭上という死角から突っ込む一撃まで反撃は難しくヴァンパイアは大きく横へ飛びのけば、その間に下がった静流の傷にシホの放った慈愛の光が降り注ぎ、その傷を癒していた。
猟兵の猛攻を身体能力で凌ぐも、攻めあぐねる状況は苦しいものがあるヴァンパイア。
どうしたものかと思案するがその思考をさせぬとフレミアが速度を生かし突撃、右へ左へ飛び回り、魔槍の穂先が次々と繰り出される攻撃を防ぎつつ前に出ようとしたその瞬間。
突如背部に走った鋭い痛み、そして同時に衣服に滲む血液の感覚。
「所詮は虫ってな言い分だが、取るに足らねえ虫みたいな男に刺されてどんな気分よ」
「グッ、カハッ!? む、虫けらの分際でぇ!」
背後より聞こえたクリストファーの囁きに激昂、力任せになぎ払った長剣の一撃だったがそこに彼の姿は無く。
ダガーをぴらぴら揺り動かして挑発するクリストファーの姿が空中に見えるだけであったが、これこそ大きな隙となる。
「何処を見てるのかしら? 防戦一方だけどちょっとは抵抗して見せたらどう?」
生じた隙を逃さず切り込むフレミア、咄嗟に体を捻る事で直撃を避けるもその槍の穂先はヴァンパイアの頬かすめ、一筋の傷をつければそのまま真横になぎ払う打撃への連携技。
顔面をしたたかに打ち据えられて吹っ飛ぶヴァンパイアを逃がさぬとフレミアが更に地を蹴り、距離を詰めての一撃はヴァンパイアの左腕を刺し貫く。
だが、流石の支配者階級、これで倒れるはずも無く長剣の切っ先を地面に突き刺し吹っ飛ばされた勢い殺し、至近距離にて追撃狙うフレミア目掛け真一文字に剣を振るえば槍の柄を縦にし、受け止めた彼女の体を力任せに吹き飛ばす。
しかし、強引な反撃は自身が攻められる隙を生むのと同じ、真横から静流が切り込みながら構えた刀に炎を宿す。
「我が剣は焔。二ノ太刀・紅!」
キィンと響いた金属音、咄嗟に構えて斬撃を止めたヴァンパイアであったがその直後、刀身介して炎が広がりヴァンパイアのドレスを燃え上がらせた。
「私の剣は魔を滅する事に特化したもの。普通の剣士と思うと痛い目を見る。気付いた時には、もう遅いが」
「なっ……味なマネを」
只の剣士が用いた武芸だけでなく、魔を祓うために光の、破魔の、炎の、闇に属す存在を倒す為だけに練り上げられた武芸を前に苦々しげに顔をゆがめたヴァンパイア。
このままでは不味いと踏んで逃走も考慮に入れるが、その直後村の東方より激しい発砲音が鳴り響いていた。
何だ何だと村人が同様し、それを見たヴァンパイアが心底楽しそうに表情を変えたのはその瞬間である。
「あらあらあら、ちょっと時間を掛けすぎちゃったから領主様直々のご討伐かしら。
残念ね、あなたたち楽に死ねなくなったわよ、抵抗されなきゃ良かったのにねぇ」
自分だけではなく新手が来た、それも領主であると告げれば戦場に残りこの展開を見ていた村人に恐怖が色濃く滲んでいく。
だが、それを打ち払うのもまた猟兵の力強き言葉である。
「大丈夫です。何故私達がこの村の事情を知っていたと思いますか? 敵の悪巧みは全てお見通しです」
こうなる事は予測済み、既に次の手は打ってあるとばかりに断言するシホ。
ハッタリではあるが転送を行ったグリモア猟兵のノクスを、そして先に違和感から離脱し行動を起こしているモリオンを、更にはまだ姿を見せていない他の猟兵を信じての言葉。
自信に溢れ、また敵の行動を予測していたからこそ出来た南北の処刑阻止、更には防衛準備という実績が加わって村人の動揺は最低限に押し止められたと言って良かった。
動揺を誘って隙を突く策も不発、戦闘では被弾し動きも鈍ったこの状況、不利な要素が満載でありプライドも投げ捨て後は全て領主に任せようと考えたヴァンパイアであるが最早手遅れか。
「……なるほどね、こうもまあ先を打たれればどうしようも無いって事かしら」
追い込まれた状況、援軍も足止めされたとなれば自分の生存はかなり苦しいと判断。
だが最早流れは変えようのない所まで来ていたのだ。
「特権階級一人を選出して、何だっけか」
「いきなり何を……」
終わりを宣告するかのようにクリストファーが頭上から言葉を発せば、ヴァンパイアが睨みつつ言葉を返す。
「特権階級が皆に殺される事がお役目ってのがルールだっけか。
お前さんの番が回ってきたって事じゃねえか。よかったな、特権階級」
この村で行うはずだった、村人による特権階級への処刑。
ならば特権階級を選択し、その権限を与えた存在も特権階級、となれば処刑されるのは当然と言い放った彼の言葉に偽りなし。
「ええ、村人は誰も死なさせません! 貴女だけを骸の海へ送り返します!」
クリストファーの言葉に呼応、村人を安全地帯まで下げたシホが力強く言い放てば、両手にあるは白と黒。
銃身と銃把に十字架が刻まれたその銃は、白が光の精霊弾を放つピア、黒が銀弾放つトリップ。
ヴァンパイアへと銃口向けて躊躇無く引き金引けば、左右が奏でる数多の発砲音と銃身の跳ね上がり。
連射と共に重なり合う銃声と腕の動きはまるで何かの楽器を演奏するかのように優美に、そして時に激しく銃弾を解き放ちヴァンパイアの体へと数多の銃創を刻んでいく。
「我が身は神の依代、我が剣は魔を断つ刃! 八ノ太刀・神威!」
銃弾を受けよろめくヴァンパイア、その機を逃さず静流が戦女神へ姿を変じその手にあるは魔を討つ光の剣。
流れ出る血液を、自らを守る鎧のように纏ったヴァンパイアであったが振るわれたその光の剣撃は魔なる力を宿したその赤黒い血液の守りごとヴァンパイアの体へ深々と突き刺さり、その痛みに耐えかねて膝を突く。
「これでお終い、全力で滅ぼしてあげる……覚悟なさい!」
そして最後に突っ込むフレミア、振り上げた槍に膨大な魔力を滾らせ力任せに叩きつければ、せめてもの防御にとヴァンパイアが頭上に翳した長剣をへし折ってヴァンパイアの体を大地へと打ち据える。
その衝撃は圧倒的、地面を砕きひび割れて数多の石片と土埃が宙を舞い、大地に伏したヴァンパイアの体は砂埃が収まるのと時を同じく徐々に体を薄れさせ、やがて完全に消滅。
ここに、村の南方へ攻め寄せた一団は完全に消滅する事となっていた。
だが、戦いはこれで終わったわけではない。
「此方は安全になりましたが……特に東方が気がかりですね」
「そうね、下手に中央へ戻るのも危ないし。村の人はとりあえず南方に居てもらうかそっちで保護してもらうかどっちかじゃ無いかしら」
落ち着きを取り戻しつつある南方でシホとフレミアが言葉を交わす。
確かにこの辺りの安全は確保できたが、村では依然、襲来した領主の一軍が存在し危険があるのはかわりない。
東方よりの軍勢が迂回し南方に向かってこないかを警戒しつつ、猟兵たちはこの地域の安全を確保。
仲間への援軍へ回るのか、若しくは敵による村の破壊阻止の為に警戒を強めるのか、選択は幾つもある。
混迷する戦場の中、猟兵たちは脅威の排除、人々の生活を守るため更なる戦いへ身を投じるのであった。
大成功
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