7
女子高生にも出来ること

#ヒーローズアース


 好奇心の赴くまま貨物船に密航した私の判断は、果たして正しいものだったのだろうか。海風に冷えた壁へと背を預けて考える。
 ……まあ世間一般的には、どう考えたって間違えている。
 まず、古い港に不審な船が出入りしている事に気付いたときに、ヒーローか警察、学校の先生だっていいから誰か良識のある大人に報告するべきだったのだ。
 この数週間、私の思考力は極端に低下していた。ヒーローへの憧れが、夢に手が届く瞬間のビジョンが脳を支配して、私の手足を突き動かしていた。
 何の能力も持たない女子高生に出来る事など、たかがしれているというのに。
「……もうどうしようもないけど」
 出航の汽笛すら鳴らさず、音も無く船は港を離れた。それから数時間、陸も見えない海のド真ん中に、いま自分はいるのだろう。
 スマホに目を落とす。
 通信は圏外。ネットも使えずGPSも機能しない。従って、助けを呼ぶ事は出来ない。
 この貨物室から甲板に上がれば、少しは使えるようになるだろうか。そう思うも、試す事すら困難なのは明白だった。
 この船が港に停泊していた頃、その周りで作業に勤しんでいたのは屈強な海の男達だ。彼らがそのまま船に乗り込んだ可能性は高く、見つかれば、抗う術を私は持たない。
 結局、ここに隠れて到着まで待つしかない。到着まで待って、積み下ろしのドサクサに紛れて逃げるのだ。そして隠れて、しかるべき場所に連絡しよう。
「――違う」
 そこで、思考を押しとどめる。
「これって、やっぱりチャンスなんじゃ」
 実績を積む。何の能力もない人間がヒーローになろうと思ったら、これが一番難しいはずだ。
 目の前に事件の臭いが濃く漂っているというのに、背を向けて逃げ出すヒーローなどいない。力がなくとも、ここで一歩を踏み出すことが、それこそが勇気であると言える、だろう。
「私は、ヒーローになるんだ……」
 逃げてたまるか。
 そうと決まれば、体力は温存しておくべきだ。固い床にコートを敷いて、丸くなって瞼を閉じる。
 ……体が震えるのは、きっとこの部屋がとびきり寒いからだ。



『ヒーローズアース、と呼ばれる世界からの予知を受信致しました。この世界で”ヴィラン”と呼ばれる反社会的な性質を持つ人々が、大きな事件を引き起こそうとしているようです』
 人通りも多いグリモアベースの隅に立ち、女性型ウォーマシン「星天」が音声を発する。
『事件の発生地点は、ヒーローズアースにおける日本国。その本土からおよそ千二百キロメートル沖にある、小さな無人島――だった島です。現在、その島の地下に多数のヴィランと、それを統括するオブリビオンが潜伏している状況です』
 星天が頭部から空中に、地球のホログラムマップを映し出す。その中の小さな島国にフォーカスが当たり、白い光点が現れると、マップが拡大されると共に破線を引きながら南東へと移動していった。
『問題は、そのヴィラン達が島の地下で何をしているか、ということなのですが……。予知に見えたあの施設は、ミサイル発射基地とその製造工場。既に大半の製造工程は終了し、多数のミサイルが発射施設に配備済みであることを確認致しました。……当然のことながら、これは由々しき事態でございます。製造されたのは大陸間弾道弾。これが人口過密地帯へと着弾すれば、甚大な被害が及ぶ事必至。皆様には、多数のヴィランが防衛に当たる中、何とかこれを止めて頂きたいのです』
 更に、と前置いて星天は続ける。
『この島に、一人の女性が入り込んでいることも確認されました。彼女は完全に一般市民であり、貨物船に密航する事で上陸したと思われます。保護をお願いしたいのは当然ですが……その女性は既に島周辺を、ヴィラン達に見つかる事なく嗅ぎ回り、地下への侵入ルートを調べ上げているようなのです。一般人を危険に晒す事などあってはなりません。しかし、万単位の人類の命が懸かっている状況です。保護しつつ、彼女から情報を引き出して迅速に事件の解決をお願い致します』
 星天は、猟兵達に深く頭を下げた。


灰々
初のヒーローズアースとなります灰々(はいばい)と申します。

今回は、隠密技能の高い女子高生と協力し、オブリビオンを撃破するシナリオとなります。協力しない場合、厳重に隠蔽された入り口の発見に手間取り、ミサイルの発射に間に合わなくなりますので、何とか協力してやって貰えるといいと思います。
30




第1章 冒険 『弾道ミサイルを止めろ!』

POW   :    発射装置をぶっ壊して止める。

SPD   :    ハッキングして止める。

WIZ   :    魔法でミサイルを空中爆破する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「さて、お嬢さん。先ずは、互いの自己紹介から始めましょうか」
「私はクネウス、ヒーローを造ったエンジニアです」

【SPD】

●ハッキング
「大陸間弾道ミサイル……ならば、高度な観測機器とネットワークが必要、足がかりはあるはず」
UCで上昇させた【ハッキング】で発射に必要なデータの書き換えを行い妨害。
【情報収集】し、侵入ルートへの隔壁などのロックを解除します。

●少女へ
「ヒーローになる、言葉には責任が宿りますよ」
【メカニック】として、自分のライオットシールド型パイルバンカーを少女用に【武器改造】に手渡します。

「次に会う時までに、あなたのヒーローとしての名前を教えてください」


三条・姿見
POW/※アドリブ、連携可

一般人を保護した後、
発射装置の破壊を試みる。
…諜報の才はあるようだな。
だが、勇気と無謀は別物だ。

現地到着後は【迷彩】【忍び足】にて
気配を隠し行動。
目視と【聞き耳】で周囲を警戒しながら
少女が隠れられそうな場所に注意を払い、
まずは合流を目指そう。
協力者として身分を明かし、情報を得たい。

…着いて来たければ、好きにしろ。
お前の護衛も仕事の内だ。

会敵時は【撃剣】投擲で奇襲を仕掛ける。
騒がれては面倒だ。暗殺で狙う急所への
【気絶攻撃】で無力化を図りたい。
警戒は十分に行うが、万一かち合った場合は
抜刀しての【2回攻撃】を叩き込む。

装置発見後は速やかに
【剣刃一閃】で両断しよう。



 猟兵たちが転送されたのは、何の変哲もない小さな島だった。
「なるほど、巧妙に隠されているようだな」
 到着と同時に木陰へと身を隠しながら、三条・姿見はさっと周囲を目視で確認する。
 ぱっと見たところ人工物は見当たらず、地形に違和感もない。ここに基地があると切っ掛けもなく気付くのは、難しそうだ。
「まずは少女との合流を目指そう」
 姿見は足音を殺しながら、件の少女が隠れられそうな場所を探った。
 枝葉や草木の揺れに合わせて体を運び、周囲に溶け込むと共に気配を遮断。樹木が生い茂り視線は通りづらいが、耳をそばだてる事でそれを補いながら、姿見は少女を探した。
 やがて姿見は、じゃり、と砂粒を擦り合わせたような音を聞いた。
「……おっと」
 その瞬間、眼前にこぶし大の石が迫る。
 姿見は軽く首を傾けてそれを躱すと、視線を前に向ける。そこには、全力で逃げ出す少女の姿があった。

「さて、お嬢さん。先ずは、互いの自己紹介から始めましょうか」
 できるだけ刺激をしないよう、トーンを抑えてクネウス・ウィギンシティは語りかける。
 少女は肩を震わせ涙目になり、明らかな警戒を見せていた。間違いなく、猟兵たちをヴィランと間違えている。
「私たちは猟兵です。お嬢さん、あなたを保護しに来ました」
「猟兵……」
 その言葉を聞くと、少女は僅かに警戒を解いたようだった。
「私はクネウス、ヒーローを造ったエンジニアです」
「え、ヒーローを?」
 少女が目を見張る。そして戸惑うように視線を逸らすと、ゆっくりと口を開いた。
「お、奥園……スズ、です」
「では奥園スズ、お前がここで得た情報を渡して欲しい」
「情報?」
「ええ。この島の地下にある、ミサイル発射基地の情報です」
 少女はおずおずと、自らが知り得たことを話し始めた。
 基地への通用口、資材の搬入路。そして、メンテナンス用か緊急用と思われる、小さな縦孔。どれもが自然に偽装され、隠されているらしい。
「その場所は、どうやって?」
「足跡とか、枝や葉の損傷具合とか……そういうのを見て」
 猟兵たちは少女に案内されて、森の中へと入っていく。
 暫く歩いたところで、少女が地面を指差した。そこには、金属のハッチが地面に埋もれるように隠されていた。
「……ふむ、諜報の才はあるようだな」
 あるいはハンター、猟師の才か。
「基地に続いているようです。ここから侵入出来ます」
 クネウスが扉を持ち上げ、中を確認する。明かりもない狭い入り口だったが、吹き抜ける風が機械油の臭いを運んできた。
「俺が先に行こう」
「あ、あの、私も……」
 梯子に足を掛けた姿見に、少女が声を掛ける。
「……着いて来たければ、好きにしろ。お前の護衛も仕事の内だ」
 姿見はそれだけ言って、地下へと消えていった。
「あなたは、ヒーローになりたいのですよね?」
「……はい、なりたいです」
 彼女の言葉を聞いて、クネウスは背負ったライオットシールド型パイルバンカーをその場におろす。そしておもむろに、工具を手にしてそれを改造し始めた。
「ヒーローになる、言葉には責任が宿りますよ」
「それは、分かっています」
「でしたら、こちらを持っていて下さい」
 少女用に即席でカスタマイズしたパイルバンカーを、彼女に手渡す。
「次に会う時までに、あなたのヒーローとしての名前を教えてください」
 クネウスの言葉に、少女は小さく、しかし強く頷いた。
「さて、三条さんを待たせてしまいましたね」
 二人は姿見を追って、地面に口を開いた暗闇に足を踏み入れる。


 細く長い暗闇が、地下深くまで伸びていた。
 猟兵たちは警戒しながら奥へと進み、やがて、その先に明かりを見つけた。
「こんなものを、よくぞ地下に作ったものだ」
 通路に開いた小窓から眼下に見えるのは、ミサイルサイロの一角だった。広大な空間に、所狭しとケーブルが這い回り、端末が乱雑に並んでいる。
「大陸間弾道ミサイル……ならば、高度な観測機器とネットワークが必要、足がかりはあるはず」
 まずは、基地内ネットワークに繋がる端末を探す。猟兵たちは、更に基地の中へと入っていった。

 姿見が黒い手裏剣を投げ放つ。音も無く飛んだそれは、暇そうに欠伸をする屈強なヴィランの意識を瞬時に奪う。
「よし、今だ」
 姿見の合図に、猟兵たちが一息に通路を飛び出す。
「あの端末を使いましょう。周囲の警戒をお願いします」
 クネウスは端末に駆け寄るとユーベルコード『MASTER OF ENGINEER』を発動。ハッキング能力を劇的に上昇させて、ミサイル発射に必要なデータを書き換えにかかった。

 そのとき、姿見は無数の足音を聞いた。
「……多いな」
 何らかの集団がこちらに向かってきているらしい。姿見は、端末から少し離れた遮蔽に身を隠す。
 通路の奥から現れたのは、科学者然とした白衣の集団と、それを護衛するかのように左右に陣取る屈強な男たち。
「隠れていろ」
「は、はい」
 少女の移動を確認すると、姿見は無数の手裏剣を一気に放った。非力な白衣たちを立て続けに昏倒させると、追って素早く姿見が飛び出す。
 屈強な男たちの混乱は一瞬だったが、姿見はそれより早い。刹那に抜き放たれた刀の峰が閃いて、男たちを叩き伏せた。

「……既にデータは確定済み、ですか。ネットワークに残っていた装置は無力化できましたが、スタンドアローン状態の装置も多いようですね」
 クネウスのハッキングにより、この一角にある装置の大半は使い物にならなくなった。
「では、残りは破壊するとしようか」
「ええ、そうしましょう」
 姿見が刀を振るうと、金属の塊である装置が両断されて火花が散った。
 その瞬間に警報が鳴り響く。これで基地にいるヴィランが集まってくるだろうが、その前に残りの装置を探して破壊するのも、そう難しくはないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

輓馬・桜
事件現場のなるべく高い場所に颯爽と登場して、制服のポケットから取り出した紙人形を依代に古代の戦士を召喚します。
「急々如律令! あのミサイルを撃ち落してください!」
「御意!」
[サモニング・ガイスト]で召喚した和風な古代の戦士に炎をまとった矛をブン投げてもらうことでミサイルを迎撃します。
全力で投擲された矛は音速を超えて[衝撃波]を放ったり放たなかったりすることでしょう。

失敗したら他の猟兵さんに頼ります。



 やがて猟兵たちの手により、地下基地の複数区画が制圧されていく。そうなったとき、ヴィランたちは慌てふためきそれまでの計画を変えざるを得なかった。
 即ち、前倒しだ。
「これは……」
 輓馬・桜は、山が動くのを見た。
 大きな振動が辺りを襲い、無数の鳥たちが空へと逃げていく。耳が痛いほどの轟音が鳴り響く。
 桜が地上を見下ろすと……そこには、地下ミサイル基地がフタを取ったように露わになっていた。
 岩山が二つに割れて左右に分かれ、その下には、並んだ円形の発射装置に鉛筆型のミサイルが弾丸のように収まっていた。それは今すぐにでも空へ飛び立たんと、力を蓄えているようだった。
「まさか、山が動くとは思っていませんでしたが」
 木立から木立へとひらりと飛び乗り、桜は制服のポケットから紙人形を取り出した。
 ここから見えるミサイルの内、いくつかが早くも起動しようとしていると桜は直感する。そしてその通り、轟音と共にミサイルが動き出した。
 地下ではヴィランたちが、猟兵たちとの戦いで血を流しながら必死に、生き残った発射装置を操作しているところだろう。
「急々如律令! あのミサイルを撃ち落してください!」
 徐々に持ち上がっていくミサイルに向けて、桜は紙人形を依り代にした古代の戦士を召喚する。
「御意!」
 和風の装束に身を包んだ戦士は炎を纏った矛を手に、空中に飛び出すとそれを大きく振りかぶる。
 一瞬の溜め。
 そして矛を、弾丸のように投げ放った。
 押し込まれ層になった大気を突き通し、音速を超えた矛が衝撃波を撒き散らしながら一直線にミサイルの胴体を貫いた。
「よし、これで……!」
 多くの機構を破壊され、音を立ててミサイルが発射装置に沈んでいく。
 だが、それで終わりではなかった。
 広大なミサイル基地に配備された無数のミサイル。そのうちの更にいくつかが、発射シーケンスに入っていく。
「あれも撃ち落としましょう!」
「御意!」
 桜の声に、戦士は再び矛を構える。
 一機でも逃すわけにはいかない。桜は力を込めて戦士へと指示を飛ばし、ミサイルを撃ち落としていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御門・アヤメ
【鎧装召喚】により装備した機械鎧で空を飛びながら、現場に急行。
「出遅れた、けれど間に合った」
『多機能システム』のセンサーを使い、発射されるミサイルを確認すると『スターリヴォア』を構え【封印を解く】
「天翔ける流星を喰らい落とせ」
【スナイパー】で正確に燃料部分を狙撃し貫通した【鎧砕き】の弾丸でミサイルを誘爆させる。
「次」
【クイックドロウ】による早撃ちで次々と撃ち落とす。

ミサイル破壊後、島に付いたら発射装置から内部へ侵入を試みる。
「基地施設に到着、内部へ侵入開始する」
通路が狭い場合は鎧装を解除し【残像】【ダッシュ】で駆け抜ける。
「民間人の保護、及び敵施設の破壊。ミッションを開始します」


雨咲・ケイ
随分無謀な方もいたものですね。
ですが、その行動力には誠に感服しました。
……と今は感心してる場合ではありませんね。

【WIZ】で行動します。

では、私も彼女に合流しましょうか。
私もヒーローではありませんが、ご協力願いますよ。
ミサイル発射地点の情報を持っていれば提供してもらい、
それから迅速にミサイルの破壊に向かいましょう。

ミサイルは【ジャッジメント・クルセイド】を使用して
【スナイパー】による【2回攻撃】で確実に破壊していきます。

ヴィランが妨害してきた場合は【シールドバッシュ】で
応戦しますが、命までは取らないように注意します。

アドリブ・共闘歓迎です。



 異空間より呼び出した機械鎧を身に纏い、御門・アヤメは音速をも超えて空を駆ける。そして瞬く間に島の上空に到達すると、今まさに、岩山が割れてミサイルが顔を出したところだった。
「出遅れた、けれど間に合った」
 ミサイルは発射シーケンスに入っている。しかし、完全に島から飛び出すまでには今少し時間があるようだ。
 アヤメは多機能システムを起動し、センサーでミサイルを走査する。
 こちらを惑わすためだろうか。発射のタイミングはまちまちで、既にブースターを始動させたミサイルもあれば、沈黙し電源すら入っていないものもある。
「これなら行ける」
 アヤメは大型の拳銃、『スターリヴォア』の封印を解く。
「天翔ける流星を食らい落とせ」
 構え、引き金を引く。
 大きな破裂音と共に吐き出された特殊弾が、過たず燃料タンクを撃ち抜いた。大きな衝撃を受けた固体燃料が即座に発火、爆発を伴って、浮かび上がっていたミサイルが基地に落下する。
 同時に、銃弾で砕かれた装甲の破片が同じく飛び立とうとしていたミサイルに直撃し、バランスを崩して傾き壁面を擦ってひしゃげたタンクから煙が吹き出す。
「次」
 アヤメは振り返ることなく目標を変更。飛び立とうとするミサイルを優先して、素早く引き金を引いた。


 天から降り注いだ光の一撃がミサイルの装甲を焼く。続けざまに更に光が落ちれば、耐えきれずに機能を失いミサイルは沈黙した。
「どちらへ向かえばよろしいでしょうか」
 先に基地へと侵入していた猟兵と連絡を取り合いながら、雨咲・ケイはミサイルへと指先を向ける。
 ミサイルは比較的小型だが、数が多い。しかし上空から攻撃する猟兵たちとの連携によって、何とかミサイルが飛び立つことを防いでいた。
「はい、ではそちらに」
 ケイは通信を切って、大きく開いたミサイルサイロの縁から、近くの通路へと飛び降りた。
 貰った情報から基地内部を走り暫く、ケイは先の猟兵たちと合流する。
「……それにしても、こんな場所に一般人とは。随分無謀な方もいたものですね」
 ケイは無残に崩壊したサイロの一部を眺めて呟いた。
 保護されているのは、ケイよりも年上とはいえ、普通の少女に過ぎないただの人間だ。その行動力には感服するが、一体どれだけの危険を冒しているのか。
「……今は感心している場合ではありませんね。私もヒーローではありませんが、ご協力願いますよ」
「ええ、何でも聞いて」
 少女の話すところによると、彼女の乗ってきた船から搬入された資材の量や種類が、ここまで見てきた基地内部のものと一致しないそうだ。
「なるほど、ここ以外にも基地があるかもしれないと」
 得心し、ケイは素早く行動に移した。


 ミサイルの発射口から基地へと侵入し、アヤメは素早く基地内を駆ける。
 基地は広大だが、人の通る道は狭い。仕方なく鎧を解除し、アヤメは残像を残すような速度で通路を走った。
「アヤメさん、基地の構造に違和感は?」
 まもなくケイと合流すると、素早く情報を交換する。
「俯瞰で見るよりかなり広い。別の棟がある、かも」
 アヤメの指差す先、西に伸びる通路が口を開く。奥は暗く、曲がりくねっているようだ。
「では、そちらに向かいましょう」
「了解。民間人の保護、及び的施設の破壊。ミッションを開始します」
 二人とその他の猟兵たちは、少女を伴って基地の奥へと進んでいった。


 屈強な男たちが、彼らの前に立ち塞がる。男たちは一様に、怒るような怯えるような、なんとも言えない表情を浮かべてショットガンを構えている。
「て、てめえら、猟兵ってやつか」
「そうだといったら?」
「く、くそが、やっちまえ!」
 ケイが答えると、男たちは一斉に引き金を引いた。
「民間人。後ろへ」
「う、うん……!」
 機械鎧を召喚し、アヤメが少女を庇う。
「前に立つなら、お相手しましょう」
 ケイは盾を構えて、散弾を弾きながら前に出た。
 ヴィランといえど所詮は普通の人間だ。二人を前に、ほんの一瞬でも足止めすることもできず。
「対象、沈黙。任務を続行します」
 倒れ伏した男たちを踏み越えて、彼らは走った。


 そうして辿り着いたのは、先ほどまでいた基地とは打って変わって、薄暗く、それほど広さもないごちゃついた倉庫のような場所だった。
 ただしその中心には、数機のミサイルが今にも飛び立たんと鎮座している。そしてその周りには、最後の砦のように多数のヴィランがバリケードを張って待ち構えていた。
「高濃度のエネルギー反応。このミサイル、強い」
 多機能システムから、アヤメが情報を読み取った。
「こちらが本命、ですかね」
 防備の厚さといい、ケイはどこか異様な雰囲気を感じる。
 とはいえ、やることは一つだ。ケイとアヤメは少女を後ろに、気を取り直してヴィランへと向き合った。

 ――瞬く間に猟兵たちは、ヴィランを制圧する。
 そして彼らの守っていたミサイルを、発射装置ごと完全に破壊することに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『サラリーマン』

POW   :    シークレット・ガン
【手に持つアタッシュケースに内蔵された兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    エンシェント・マーシャルアーツ・カラテ
【カラテ】による素早い一撃を放つ。また、【武器を捨て、スーツとネクタイを脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    情報解析眼鏡
【スマート・グラスで敵の情報を解析し、】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「……全く、あれほどの数を雇っても、盾にすらならないとは」
 猟兵たちの前に倒れた屈強な男たち。意識のない彼らを蹴り飛ばすのは、かっちりとしたスーツに身を包んだ集団だった。
 一見して何の変哲もない、ただのサラリーマンだが――この場所に、最も相応しくない姿の一つだろう。
「アポもなしに突撃訪問ですか。しかもこんなに暴れ回って。全く、どんな教育を受けてきたのやら」
 言葉遣いは丁寧ながら、その端々には抑えきれない苛立ちが込められているようだった。
「あなたたちのためにどれだけの損害を被ったか。後日資料に纏めて送付させていただいても良いのですが……まあ、それよりも」
 サラリーマンの集団が、飛ぶように陣形を変えた。
 前衛に構えたサラリーマンが、スーツとネクタイを引きちぎって鍛え上げられた肉体をさらけ出す。後衛のサラリーマンの手にしたスーツケースが、音を立てて凶悪な兵器に変形した。
「影に潜み、影に生きる。我らのニンジャビジネススタイルの前に、散っていただきましょう。――さあ、最終学歴を言ってみろ」
 まるで一つの生き物のように、サラリーマンの集団が猟兵たちに襲いかかった。

 彼ら猟兵の背中に隠れながら、私は情けなくも足が竦んでしまっていた。
 何か一つでも、自分に出来ることはあるのだろうか。ここにいる意味はあるのだろうか。
 彼らと私の差が「力」だけではないような気がして、私は借り受けた武器を抱きしめる。
御門・アヤメ
彼女を庇い
「わたし達の後ろに下がっていて」
『イクリプスナイフ』を逆手に、もう片手には『スターリヴォア』を引き抜き敵へ【ダッシュ】
「敵対者に語る理由はない。戦闘を開始する」

狙われたらセンサーや【第六感】で感知して【カウンター】【スナイパー】【クイックドロウ】で『スターリヴォア』による正確な早撃ちで【鎧砕き】の一撃を放つ。
「視えた」
敵弾が多いなら【残像】で回避、近くの敵に腕部の『アンカーショット』を【突き刺し】【怪力】で鋼糸を巻き取り【敵を盾にする】
「遅い」
カラテによる攻撃は【視力】【聞き耳】で【見切り】【封印を解く】【シャッテンシュナイダー】で斬り裂く。
「高速戦闘モード、起動(イグニッション)」


雨咲・ケイ
随分仕事熱心なサラリーマンの方々のようですね。
ですが、オブリビオンとあらば全力でお相手しましょう。

【WIZ】で行動します。

【シールドバッシュ】に【目潰し】を交えた
変則的な予想しづらい攻撃で仕掛けていきましょう。
そして、敵に隙が生じたら【サイキックブラスト】を
撃ち込んでやります。

戦闘中は敵の布陣と動きをよく見て、
司令塔を見つける事ができれば
【スナイパー】で盾を【投擲】して
動きを止めてやりましょう。

「もう時間外ですよ。
骸の海で眠ってください」

一般人の彼女には後方に下がって頂きますが、
流れ弾が飛びそうな場合は【オーラ防御】を併用した
【盾受け】で私が引き受けましょう。

アドリブ、共闘歓迎です。



 陣形を展開する敵を前に、猟兵たちはまず少女のことを気に掛けた。
「わたしたちの後ろに下がっていて」
「いざというときは庇いますが、できるだけ頭を出さないように」
 御門・アヤメと雨咲・ケイが、少女を敵の視線から遮るように前に出る。
「さて、足手纏いを守ったまま、どこまでやれるか楽しみですねぇ」
 嫌らしく笑みを浮かべながら迫るサラリーマンの群れを前に、猟兵たちが武器を構える。
 いつでも飛びかかれるようにと双方が力を溜め――そして、ほぼ同時に動き出した。

「敵対者に語る理由はない。戦闘を開始する」
 アヤメがナイフを逆手に、もう片手で大型拳銃を引き抜きながら敵へと走った。アタッシュケースから突き出したいくつもの銃口が、アヤメへと向けられる。
 吐き出された銃弾が雨のように襲い来る中を、アヤメはセンサーや勘を駆使して潜り抜け――潜り抜け様に、大型拳銃『スターリヴォア』の引き金を引いた。
「視えた」
 正確無比な早撃ちで敵を狙う。
 サラリーマンは咄嗟にアタッシュケースを盾と構えて銃弾を防ぐ。しかし、突き刺さった銃弾が外装を貫いたことに気付くと、慌ててアタッシュケースを投げ捨てた。
「くっ、商売道具が……!」
 空中でケースが破裂して、暴発した弾丸がランダムに降り注ぐ。
「武器の心配とは、随分仕事熱心なサラリーマンの方々のようですね」
 その一瞬の混乱を利用して、ケイは一息に敵の群れに肉薄する。
 そのままの勢いで小盾を敵に叩きつけると、サラリーマンの頬が裂け細かい血飛沫が舞った。
「ふん、そんな動きなど!」
 サラリーマンが上半身の筋肉を見せつける。と同時に、ケイは敵の眼鏡が光った気がした。
 そう認識した瞬間に、ケイは目を狙って盾を振るう。
「オブリビオンであれば、全力でお相手しましょう」
 ケイはあえて攻めのリズムを崩しながら、変則的な動きで攻撃を繰り返した。光った眼鏡で動きを分析したにも関わらず、敵はその動きに対応しきれない。
 そして決定的な隙を見いだすと、ケイは突きつけるように両掌をサラリーマンの胸板に押しつけた。
 次の瞬間、掌から放たれた高圧電流がサラリーマンの体を突き抜けた。

 アヤメの姿が掻き消えんばかりに素早く動き、現れた残像を敵弾が突き抜けていく。
 しかし飽和攻撃とも言えるような銃弾の嵐を前に、徐々に躱すのが辛くなってくる。限界が訪れる前に終わらせるべく、アヤメは腕部のアンカーショットを敵へと向けた。
 攻撃が来たかと防御に入った腕を、強靱な鋼糸が絡め取る。アヤメはそのまま膂力で以て、敵を思い切り引き寄せた。
「ぬおおおお!」
 予想していなかった行動に判断の遅れたサラリーマンは、呆気なくアヤメの元へと飛んだ。
 アヤメの眼前へと移動したサラリーマンは、無数の銃弾をその身に浴びた。
 アヤメが大きく前に出る。敵の銃弾を『盾』で防ぎながら、前衛へと肉薄する。
「愚行ですねぇ!」
 カラテを構えたサラリーマンが、風を切る鋭い一撃を放つ。味方の体ごとアヤメを砕かんと叩きつけられた拳は、
「高速戦闘モード、起動」
 しかし『盾』のみを粉砕した。
 アヤメはすでに、その背後にはいなかった。圧倒的な速度はサラリーマンの認知を越えて、彼我の距離を詰めたことにすら気付かせなかった。
「遅い」
 神速のナイフが体を斬り裂いたことにも、まだ気付かない。

「お、思ったよりもやりますね! だがしかし!」
 血飛沫を上げて沈んだ味方の姿に、サラリーマンたちは驚きを隠せない。
 だが動揺しながらも、次の一手を繰り出してきた。
 多数の銃口が、背後に隠れた少女へと一斉に向けられる。
「おっと、危ないですね」
 ケイが咄嗟に割り込んだ。オーラを纏った盾を前に、銃弾を一手に引き受ける。オーラで防御の範囲を広げ、全ての弾丸を弾き返す。
「これだけの銃撃を……!」
 一分の隙もなく受け止めきった。その事実に敵の群れが、更に動揺の色を濃くする。
「さて、そろそろ時間外ですよ」
 その決定的な隙を、ケイは見逃さない。
 ――敵の中に、真っ先に声を上げる一人がいる。巧妙に隠蔽する動きで初めは分からなかったが、ケイの観察眼がそれを見抜いていた。
 狙撃の如く正確に、ケイは小盾を司令塔に向けて投げつけた。
 直撃。
 顔面に投擲を受け、敵が大きく怯む。そこへケイが飛び込んだ。
「骸の海で眠っていてください」
 空中で盾を受け止めて、そのまま全体重を掛けるように――ケイは司令塔へとトドメの一撃を叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

三条・姿見
POW/※アドリブ、連携可

厄介な武器を持ち出したものだな。
敵の数を減らし、全体の力を削ぐとしよう。

遮蔽物を活用しながら、クィックドロウによる
撃剣投擲、範囲攻撃で応戦する。
刃には【マヒ攻撃】の神経毒を仕込んでおき、
無力化も狙いたい。

アタッシュケースで防がれるかもしれんが
それも布石。
攻撃に混ぜ込んだ【大爆炎符】発破の号で
周囲もまとめて爆破する。

さて、奥園…スズだったか。
今の俺達にとって最大の弱点だ。
言わずとも避難し隠れていると思いたいが、
敵に悟られない程度に気にかけておこう。
俺も石を投げられた身だ。
彼女からの援護攻撃も想定内。
“新米ヒーロー”にはうってつけの局面だ。
…無論、フォローはこちらで行う。


御堂院・ねここ
最終学歴なし、御堂院・ねここだ
悪いが散るのはオマエ達だ社畜共
真の忍者の術、見せてやる

(背後にちらりと意識をやり)
本当なら致死毒でも適当に撒いてやる所だ、が…致し方ない
接近戦に付き合ってやるとするか

17の分身体を生み出して
それぞれ手にした得物で社畜共を斬り捨てる
行くぞ、忍法『五月雨』

分身の半数は地上を駆けて敵を盾にする事で射線を切りつつ戦う
もう半数は空中戦を挑む
残像が残る程の速度で急降下して一撃離脱だ

意識を上下左右に散らされては満足に攻撃もできないだろう?
そのまま私の影すら踏めずに散っていけ

アドリブ連携、歓迎する



 大きなダメージを群れに受けても、サラリーマンの強みはその数だ。
「我らは全体で一つ。多少の欠けなど問題ではない!」
 叫び、駆け出す。花開くように部隊が展開し、猟兵たちを迎え撃つ。銃弾が飛び交う。連なる風切り音に、大気が悲鳴を上げているようだった。
「最終学歴なし、御堂院・ねここだ」
 それを前に、ねここは極めて冷静だった。
 忍者など見慣れたものだ。むしろ、その練度の低さに呆れすら覚える。
「悪いが散るのはオマエたちだ社畜共。真の忍者の術、見せてやる」
 忍刀を手に、ねここは忍術を発動させた。

「行くぞ、忍法『五月雨』」
 ねここの姿がぐにゃりとぶれる。次の瞬間、弾けるように無数の分身が戦場に舞った。
 その数は十七。
 手に手に武器を構えたねここの群れが、銃弾の嵐の中に飛び込んでいく。
「本当なら、致死毒でも適当に撒いてやるところだ、が……致し方ない」
 半数の分身を地上から、もう半分を空中に飛び上がらせて、ねここはカラテを構えるサラリーマンとぶつかった。
 迫る拳をひらりと躱し、暑苦しい肉体を斬り付けながら、ねここはちらりと背後に意識をやる。
 キマイラとしての特性を活かせないのは面倒だが、問題はないだろう。現にねここはダメージを受けることもなく、目の前のサラリーマンを圧倒していた。
 分身たちも同様だ。地上の分身は銃器の射線を敵の体で遮るように立ち回って、奴らの強みを活かさせない。カラテの一撃は侮れないが、食らわなければいいだけだ。
 そうして前衛が体を張っている間に、空中部隊が壁を蹴り、敵陣の頭上へと躍り出た。
「上からか!」
 サラリーマンがそれに気付くも、目の前に迫るねここたちの対処に精一杯で、どちらに集中するべきか迷っているようだ。
「無様だな。そのまま私の影すら踏めずに散っていけ」
 上下左右からの波状攻撃。彼らの練度程度では、その全てに対応することなどできなかった。
 空中のねここによる急襲が、爆撃のように後衛のサラリーマンたちを襲った。無数の刃に斬り裂かれ、悲鳴と共に血飛沫が飛ぶ。それに耐えながら反撃をしようにも、一太刀のうちにねここはその場から離脱して、サラリーマンはまさしくねここの影すら踏めなかった。
「馬鹿な、こんな子供に……!」
「学歴などで人を見るからこうなるんだ。もっと鍛練を積むのだな……もう遅いが」
 残像の残るような速度での一撃離脱に、拳と銃弾が虚しく空を切る。
 開いた胴を逆袈裟に、ねここの刃が斬り裂いた。




「厄介な武器を持ち出したものだな」
 遮蔽を移動し、刀で弾を弾きながら、三条・姿見はサラリーマンたちの姿を見やる。
 猟兵たちだけであれば、如何な近代火器も何とかなる。しかし、いま背後に抱えているのは一般人だ。
 間違いなく、猟兵たちにとって最大の弱点だろう。
 姿見は、手裏剣を引き抜きながら少女に意識をやった。悟られない程度に、気に掛けておかなければ。

 ねここの集団による攻撃で、敵の陣形は大きく乱れた。姿見が遮蔽の奥から放った撃剣は気付かれることなく、サラリーマンへと突き刺さる。
「ぐ、貴様!」
 刺さってようやく姿見に気付いた敵が反撃を繰り出そうとするも、
「お、あ……?」
「神経毒だ。無理に動こうとすれば、余計に回るぞ」
 膝から崩れ落ちる。
 姿見は柱の陰から飛び出して、棚の背に滑り込む間に更に数本。襲い来る銃弾を遮蔽物で躱しながら攻撃を繰り返す。
「ちっ、こそこそと!」
 苛立ちの声が飛ぶ。――それと共に、敵の攻撃の一部が方向を変えた。
 銃口が猟兵たちの背後、少女を狙う。
 先の猟兵相手にも、敵が取った行動だ。分かっていたかのように割り込んだ姿見が、銃弾を叩き落とすと共に少女を抱えて別の遮蔽へと跳んだ。
「ここが正念場だぞ、”新米ヒーロー”」
 頑丈そうな棚の裏に少女を置いて、姿見は戦場へと舞い戻る。

 ――姿見の言葉に、奥園スズは息を呑んだ。
 忘れていた。自分がヒーローを目指していることを。本物の危険を前に、心が折れてしまっていた。
 拳を握る。何か、自分にもできることがあるはずだ。

 姿見は背中にその気配を感じ、咄嗟に脇に飛び退いた。
 こぶし大の石が飛ぶ。それは大した勢いではなかったが、完全に姿見に意識の行っていたサラリーマンはまともにそれを受けてしまう。
「っつ、どこから……?」
 あまりに想定外だったのだろう。ほんの一瞬、空白が生まれる。
 その一瞬に、姿見はいくつもの撃剣を放っていた。咄嗟に躱すこともできず、敵はアタッシュケースを盾にしてそれを防いだ。
 ――それはまさしく布石。
 注意が逸れていなければ、躱し様に銃撃を叩き込もうとしたはずだ。
「爆ぜろ劫火!」
 姿見が発破の号をかけると同時、撃剣に仕込まれていた起爆の術符が起動する。
 瞬間、閃光が迸り爆炎が生まれる。荒れ狂う炎が周囲を飲み込み、纏めて吹き飛ばしていった。
「なかなかのコントロールだった。しかしもう少し、肩を鍛えるべきだな」
「……うん、頑張ります」
 炎を背に振り返った姿見に、少女は小さく笑みを浮かべてそう言った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「受けた教育……修士相当、今は一介の研究者として博士課程相当ですね」

【WIZ】『奥園スズ』と敢えて合流せず、自分は自力のみで戦闘。

●UC
「餞別です、GEAR:DEUS EX MACHINA。機械仕掛けの神話は今此処に顕現する」

自身の装備武器、渡したパイルバンカーに【メカニック】UC発動。感覚で動かせる制御用AI・飛行用装備、これだけ揃えば彼女は自力で敵を突破出来るはず。

●WIZ対抗
「彼女の解析情報は強化により既に上書き済みです」

●戦闘
【迷彩】で潜伏しつつ【スナイパー】として【援護射撃】。
目立つ味方の裏から放たれる意表を突いた射撃であれば、予測回避はしづらいかと。



「GEAR:DEUS EX MACHINA。機械仕掛けの神話は今此処に顕現する」
 クネウス・ウィギンシティは自らの装備武器――今は少女の腕にあるパイルバンカーに向けて、ユーベルコードを発動する。
「わ、わっ」
 少女の手の中で、パイルバンカーに様々なパーツが搭載される。突如として装備が軽く、そして動かしやすくなったことにあたふたする少女を横目に、クネウスは素早く戦場へと駆け出した。

 散らばる機器の合間に身を滑り込ませるように、クネウスは戦場に身を隠す。
 前衛の猟兵たちが、サラリーマンの群れを相手取って立ち回る。その合間にできた僅かな隙を、クネウスは隠れながら狙い撃った。
 司令塔を失ったサラリーマンの群れは、一時的に統制を失っている。陣形が乱れ、個々の動きが目に見えて鈍っていた。
「く、卑怯な!」
「戦いに際して出る言葉とは思えませんね」
 慌て叫ぶサラリーマンに向け、更に一発。
 流石に敵も対応し、掲げたアタッシュケースで弾丸を受け止めるが、追って放たれた別の猟兵の刃がその足下を斬り裂き、痛みに防御の崩れた敵へ、クネウスはもう一度引き金を引いた。


 流れ弾に対し、AIの付与されたシールドが的確にそれを受け止めた。
 以外にも呆気ない銃撃の余韻に、少女はどこか現実味もなく立ち尽くす。
「で、でもこれなら……!」
 制御AIにより、ほんの僅かに力を込めるだけでそれは少女の意のままに動いた。
 ――これなら戦える。自分にも出来ることがある。
 そう思うだけで、恐怖が薄れた。正確には、押し殺すことができるようになった、というだけかもしれない。
 唾を飲み込み、視線を前に向け。少女は一歩を踏み出した。


「パターンは解析しましたよ!」
 サラリーマンのグラスがキラリと光り、その途端にクネウスの銃撃が躱される。
「さあ、お前の学歴を言ってみろぉ!」
 反撃にと機銃の掃射が、クネウスの隠れる装置を吹き飛ばした。クネウスは弾かれるように地面を蹴って、次々に遮蔽を経由しそれを躱していく。
「受けた教育……修士相当、今は一介の研究者として博士課程相当ですね」
「……戦いに学歴など、関係ありません!!」
 グラスによる解析を、地形利用と味方との連携で上回りながらクネウスは次々と敵を撃ち抜いていく。敵の数は減る一方で、司令塔を失った彼らに決定的な反撃の余地はないように思われた。
 しかし負けじと敵の弾幕は展開される。それを躱しながら――クネウスは、聞き慣れた音を耳にした。
 甲高い炸裂音。音の多い戦場においてもなお耳に届くそれは、液体火薬に火の付いた音だった。
 クネウスは振り返ることなく、正面の敵に銃口を向けた。
「そろそろ、終わりにしましょうか」
 引き金を引く。狙撃は過たず、敵の眉間を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

輓馬・桜
最終学歴が幼稚園の僕です。

【地形の利用】でサラリーマンの死体を盾としながら戦場を走り回り、壁や床に【催眠術】の効果を持つ【呪詛】を込めた血の紋様を描き殴っていきます。
紋様の正体を見抜こうと凝視したが最後、猛烈な睡魔に襲われて立っていることすらできなくなるのです。
そして僕の作業を見たサラリーマンが「こいつは何をしているんだ」と疑問に思ったなら、たちまちランドセルから【謎を喰らう触手の群れ】が飛び出して、彼らをなぎ倒してくれるでしょう。

JKのお姉さんと目が合ったら「僕たちはもう仲間です」という感情をサムズアップで伝えます。



「馬鹿な、我々が……!」
 猟兵たちに次々と撃破されながら、辛うじて立つサラリーマンの一人が叫ぶ。もはや戦場は、死屍累累の有様だった。
 無数の死体が転がる中を、輓馬・桜が駆ける。最後の足掻きにとアタッシュケースから放たれる弾丸の中を、付近の死体を持ち上げ蹴り上げ盾としながら。
 床や壁に、血を使って紋様を書き殴っていく。
「最終学歴が幼稚園の僕ですが……」
 流れるように図柄を刻み、飛び交う弾丸を躱していけば、やがてサラリーマンたちが桜の行動に疑問を持ち始めた。
「な、何をしている……?」
 いぶかしげに、彼らは少しの間だけ攻撃を止めてこちらを見る。
 その眼鏡の奥の瞳がじろりと動き――そして、すぐに瞼が落ち始めた。
「は……何が……」
「催眠の呪詛です、立っていることすらできないでしょう?」
 ぐらりとふらつき、サラリーマンたちは膝を付く。掌で目元を押さえ、必死に意識を保とうとしているようだが、それでも、攻撃の手は完全に止まっていた。
 そして、彼らの犯したもう一つのミスは。図柄を見て、それを疑問に思ったことだ。
 桜の背負ったランドセルの蓋が勢いよく開き、その中から、大量の触手が飛び出した。それは内容量を無視して大きく広がり、伸びて鞭のように周囲を薙ぎ払った。
 動きの止まったサラリーマンたちに、為す術はない。
 大きな打音を響かせて、大の大人が吹き飛ばされる。壁に叩きつけられて、カエルの潰れるような呻きを漏らし、そして永久に動きを止めた。
「何をやっている、さっさと叩きのめせ!」
 サラリーマンが叫ぶ。しかし、図柄の催眠に囚われたものたちは動くことができず、それを逃れた敵も、蠢く触手を前に右往左往するばかり。
 もはやカラテの型をとることもせずに、死した味方の遺したアタッシュケースに慌てるように手を伸ばした。
「彼らをなぎ倒してください!」
 桜の声に、触手が唸る。
 疑問を糧にする触手は、なおも顕現し続ける。サラリーマンたちは、今の現状に、何故こうなったかと思い続けているのだろうか。


 そして、最後の一人が恐怖に震えて踵を返し。
「やっちゃってください」
 その背中を、触手が貫いた。
 桜は周囲を見渡す。要保護対象である少女が無事かどうか、確認したかった。
 少し離れた場所で、少女はぺたりと床にへたり込んでいた。まるで魂の抜けたように、ぼうっとしている。
 少女の目がこちらを向いた。桜と目が合う。
 桜は言葉をかけなかった。ただ親指を立て、笑みを浮かべた。
 僕たちはもう仲間だと、そんな気持ちを込めて。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『キャプテンストライク』

POW   :    ボクシング
技能名「【ボクシング】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    S.T.R.I.K.E
【STRIKEと刻まれたメリケンサック】が命中した対象に対し、高威力高命中の【野望、主義、計画を語りながらの連続攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    グラップルガン
【グラップルガン】から【フック付きワイヤー】を放ち、【拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「さて、どうしたものか」
 ふと、サラリーマンたちが倒れ静寂の訪れた室内に、声が響いた。
 いつからいたのか、猟兵たちにも分からない。そこには、一人の男が立っていた。
 オレンジのマスクで顔を隠した男は、気怠げに辺りを見渡し、溜息をつく。
「計画は破綻か、よくやるものだ。大多数の人間など、貴様らと何の関わりもないだろうに」
 無造作に上着のポケットに手を突っ込んで、男は猟兵たちに目をやった。
 気力も覇気もない、淀んだ瞳が猟兵たちを見る。
「……キャプテン、ストライク」
 不意に少女が呟いた。それは、かつてあえなく命を落とした、一人のヒーローの名前だった。
「死んだはずじゃ――」
「ああ、死んださ。だからこそ、ここにいる」
 その口調は、まるで自虐するように。男は、ゆっくりと両手を広げる。
「拳一つじゃ何も救えない。それを知ったからこそ、ここにいる」
 闘気。
 鋭く研ぎ澄まされた力の気配が、男から放たれた。
「悪を追うだけじゃ、誰も救えない。救えないなら、いっそ苦しむ前に吹き飛ばそう。なんて、ない頭使って考えてみたんだけどな。結局、貴様らのような者に阻止されるわけだ」
 男が拳を握る。
「ヒーローに、猟兵に……全く、なんだって無駄なことを繰り返すんだろうな。こうして俺を相手にしている間にも、どこかで誰かが泣いてるぞ。俺がミサイルを落とそうが、悲劇の総数なんて、そんなに変わらないんじゃないか?」
 ぎりりと男の靴底が、地面に散らばった破片を噛んだ。
 片足を引いて、利き手を後ろに。腰を落として、重心を安定させる。
「とはいえ、見逃しちゃくれないだろうな……それじゃあ無駄な戦いを、始めようじゃないか」
 男は構えながら、ただ無感情に言い捨てた。
三条・姿見
SPD/※アドリブ、連携可

余程未練があるようだな…だが今回の件、同情はしかねる。
スズを退避させ抜刀。猟兵として任務を果たす

拳を刃でいなす真っ向勝負で臨む。
メリケンサックの一打は【残像】で間合いをずらし回避…そして、反撃の起点に。
刀身を翻し【封切】解放、斬撃での【2回攻撃】を狙う

英雄論とは無縁だが、俺にも判ることはある。
…例え奴が成し遂げられずに終わったことでも、
悪を追ったその道は、決して無駄にはなっていない。
必ず誰かが義を継ぎ、貫く。
ヒーローだった奴の名と、その死をも知る奥園スズが
それでも正義への道を目指すように。

全て消すには、まだ惜しい。
その先にある可能性を…お前に代わって守り、見届けよう



「スズ、下がっていろ」
 三条・姿見は、ゆっくりと足を踏み出した。
 静かに距離を詰めながら、抜刀する。目の前の男はそれを見て、メリケンサックをはめた両手を僅かに上げた。
「余程未練があるようだな……だが今回の件、同情はしかねる」
「悪に同情など必要ないさ」
 徐々に二人の距離が縮まっていく。
 姿見が刀を構える。男――キャプテンストライクが楽しげな笑みを浮かべる。
 互いの間合いがぶつかり合って食い合って、ひりつくような緊張感に満たされた。

 そして、
「シッ!」
 先に動いたのはキャプテンストライクだった。体勢を低く、潜り込むように地面を蹴る。
 雷撃のような拳が飛んだ。待ち構える姿見は――ほぼ同時に、残像を残す速度で、拳をいなしながら一歩後ろに下がっていた。
 間合いがずれた。拳が姿見の眼前で止まり、キャプテンストライクの腕が伸びきる。逆の腕は出ない。既に姿見は、拳の届かない距離にいる。
「――全てを賭けると決めている」
 僅かな距離。だがしかし、それは拳と刀の圧倒的な差だった。
 姿見は刀身を翻し、【封切】を解放。渦巻く黒煙を纏いながら高速の連撃を振るった。
 悪神と鬼武者の力が姿見の剣術の切れを数段押し上げ、連撃は神速に、キャプテンストライクを白刃が襲う。
 甲高い金属音と火花が、立て続けに弾けた。
「貴様らを倒した後は基地の再建だ。手始めに大都市を火の海にすれば、少しは貴様ら猟兵の目も覚めるだろうよ!」
 刃がメリケンサックと交錯する。互いに止まることない連撃が、無数にぶつかり合って衝撃波を撒き散らす。
「英雄論とは無縁だが、俺にも判ることはある」
 姿見は真っ向から刀を振るう。
 刀で拳をいなし、直撃を避けながら、針の穴のような糸口を狙って斬撃を繰り出していく。
「……例え成し遂げられずに終わったことでも、かつてお前が悪を追ったその道は、決して無駄にはなっていない」
 少女は目の前の男の名前を、その死をも、知っていた。
「必ず誰かが義を継ぎ、貫く」
 それでも彼女は、正義への道を目指したのだ。
 正義の挫かれた瞬間を知って尚、そこに見た希望の光を見失いはしなかった。
 姿見は刀を振るう。より速く、より鋭く。代償が身を蝕むのも厭わずに、徐々に、徐々にキャプテンストライクの速度を上回っていく。
「全て消すには、まだ惜しい。その先にある可能性を……お前に代わって守り、見届けよう」
 ――そして、刃が届いた。
 男の胸元から鮮血が迸る。咄嗟に飛び退ったその足下が、たたらを踏んだ。
「はっ、そんなこと、頼んじゃいねえがな」
 自虐的な笑みと共に息も荒く言い捨てて、キャプテンストライクは斬り裂かれたジャケットを脱ぎ捨てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂院・ねここ
うん、さっさとやろうか
猟兵だって暇じゃない、後がつかえているんだ
オマエみたいな奴から救うべき者が、まだまだ山程居るだろう?

相手は純然たる近距離型スタイルと見た
それなら少々間合いを開けて動きを縛らせて貰おうか
【咎力封じ】で彼奴の動きを封じに行く

背の翼で空を飛び
相手の間合いの外から高速での「空中戦」を仕掛けよう

手枷、猿轡、拘束ロープ…とりわけ手枷とロープは有効か
「ロープワーク」も駆使して雁字搦めにしてみせる
後は頼んだぞ、他の皆

「貴方」は救う事をもう諦めてしまったかもしれない
けれども、ねここ達は諦めない。絶対に



「うん、さっさとやろうか」
 胸元から血を流すキャプテンストライクへと、御堂院・ねここは冷たく言い放つ。
 諦めから染み出したような言葉を、聞いている時間も勿体ない。
「オマエみたいな奴から救うべき者が、まだまだ山ほど居るだろう?」
 ねここは背の翼を上下させ、一息に上空へと飛び立った。
 手にした武器、戦闘スタイルから見て、敵は純然たる近距離型だろう。ねここは間合いを少々開き、その動きを封じるべくロープを手繰る。
「山ほど居て、貴様はそれをどれだけ救える。そのうちの一割でも救えるのか!」
 羽ばたくねここに向け、キャプテンストライクは地面を蹴って、弾けるように駆け出した。
 速い。宙を行くねここに刹那で先回り、疾風の速度で壁や柱を蹴って敵は大きく跳ねた。
 二人が交錯する。
 雷撃のように走る拳をねここは急旋回で回避、すれ違うと共にロープを放つ。
 伸びきった敵の手首に、ロープが絡みついた。ねここはそれを強く引くが――
「重い」
「はっ、捉える手間が省けたな!」
 キャプテンストライクもまた、逆の手でロープを掴んだ。
 ロープを介して力を減衰させてなお残る、剛力がねここの体勢を崩す。そこに過たず、怒濤のようなジャブの連打が襲いかかった。
「全てを救えるならいい。だが救われなかった者はどうなる。不公平じゃないか!」
 ねここは刀を手に、メリケンサックの殴打を躱す。直撃は避けるも、強い衝撃が続けざまに体を揺らした。
「……『貴方』は救うことをもう諦めてしまったかもしれない。けれども、ねここたちは諦めない。絶対に」
 両翼を素早く動かして、衝撃を何とか受け流しながらねここは隙を見て再びロープを放った。
 今度は足首に、力を封じる枷が巻き付く。そのまま全身を拘束するようにロープがうねる。
「ちっ、こんなもので!」
 叫ぶ声を尻目に、ロープは蛇のようにその体に絡みついていく。そのたびに力を奪われて、ついには腕と胴体まで縛り付けられ、敵の体勢が空中で大きく傾いだ。
 ねここがロープから手を離すと、キャプテンストライクの放った最後の一撃が空を切る。そして――
「後は頼んだぞ、他の皆」
 キャプテンストライクは受け身も取れずに高所から、地面へと叩きつけられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御門・アヤメ
「詭弁、その結論は認められない」
【ブラッド・ガイスト】『天使の心臓』に擬似血液を送り込み『封印を解く』
「少なくともあなたを止めることで救える命がある」
鼓動に合わせ、12歳へと成長する
「亡霊よ、静かに眠れ」

相手の拳は【見切り】【カウンター】に【怪力】【鎧砕き】の拳を放つ。
「あなたの拳には諦観と絶望しかない」
避けきれないときは【残像】を囮に身長の低さを活かして真下に潜り込みアッパーを放つ。
「あなたの結論は間違っている」
相手がグラップルガンを構えたら、こちらも腕から『アンカーショット』を【クイックドロウ】【スナイパー】で早撃ちで相殺させて、絡ませて引っ張り合いへ。
「あなたを倒すことでそれを証明する」



 疑似血液を『天使の心臓』に送り込み、ブラックボックスの封印を解除する。そして始まる鼓動に合わせ――御門・アヤメの姿は変わっていった。
 幼い容姿から、数年を経た少女の姿へと。一時の成長を遂げたアヤメは拳を握り、キャプテンストライクへと肉薄する。
 速度を乗せた一撃が、ロープに拘束されたままのキャプテンストライクを吹き飛ばし、壁面へと叩きつけた。
「亡霊よ、静かに眠れ」
 巻き上げられた埃が、もうもうと立ちこめる。
 一瞬の間を置いて、薄灰色の靄をオレンジの閃光が引き裂いた。キャプテンストライクがロープを引きちぎりながら瞬く間に距離を詰め、拳を放つ。
 砲撃のようなストレートを、アヤメは上半身を反らして回避。合わせて擦り抜けるように、カウンターを叩き込んだ。
「あなたの拳には、諦観と絶望しかない」
「ああ、知ってるさ」
 しかし流れるようなスウェーに、アヤメの一撃は躱される。
 男の動きは、長年の研鑽を容易に想起させるものだった。そのボクシング技術は圧倒的だ。リミッターを解除したとはいえ、その点で言えばアヤメは大きく劣っている。
 しかし拳を見切ることなら、アヤメにも十分に可能だった。
「あなたの言葉は詭弁、その結論は認められない」
 攻撃を躱すと共に、アヤメは更にカウンターを合わせていく。
「詭弁か現実か、それが貴様に判断できるのか!」
「できる。あなたの結論は間違っている」
 続く拳の応酬に痺れを切らしたキャプテンストライクが、大きく後ろに跳んだ。そのまま空中で、腰に提げたグラップルガンを引き抜いた。
 アヤメは咄嗟に腕を前に突き出す。対象を掴む鉤爪を、敵の銃撃を相殺するように素早く射出した。
 互いに撃ち出した鉤爪が空中でぶつかり食らい合う。
「あなたを倒すことでそれを証明する」
「やれるものなら!」
 アヤメは思い切りアンカーを引いた。
 怪力同士の引っ張り合いに、ワイヤーがギリギリと悲鳴を上げた。
 ――そして。
 アヤメはパッと、ワイヤーを手放した。
 そのまま残像を残し、体勢を低く強く地面を蹴る。
 反動で僅かに体勢を崩したキャプテンストライクだったが、それでも瞬時に残像を看破――するも、しかし元々低い身長から更に低く構えたアヤメの姿を捉えるまでに僅かな隙が生まれ。
 顎先に強烈なアッパーを受けるその瞬間まで、瞬時に深く真下に潜り込んだアヤメを、知覚することはできなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「CODE:THE CREATOR」

【WIZ】

●戦闘
敵WIZ UCの【グラップルガン】にワザと捕まる狙いです。抵抗の必要など無いのですから。

UC詠唱は継続。
「自らの技術を形にし、魂を吹き込む」

拘束される前に、後方の『奥園スズ』にマシンガンを投げ渡す。
「技術者とは元来そういうものです」

UCで自らの【メカニック】としての創造物、『奥園スズ』の手に渡ったマシンガンとパイルバンカーに生命と知性(AI)を与えます。

「レンジャー向きの武器防具に素人でも扱える武装AI、後は本人の覚悟と名乗りがあれば完璧ですね」

『奥園スズ』へ
「後は任せましたよ」

念のため、援護にサーチドローンを出します。



 大きなダメージを受け、キャプテンストライクは小さく唸った。口元から流れる血を拭い、荒れた呼吸を整えている。
「CODE:THE CREATOR」
 対してクネウス・ウィギンシティは、距離を取った。強烈な踏み込みを以てしても、拳が届くまで数秒はかかる間合いを保つ。
 キャプテンストライクは腰の銃を引き抜いた。先の戦いで見せた、グラップルガンだ。
 引き金が引かれ、鉤爪が射出される。……しかし、クネウスはその場を動かなかった。
「自らの技術を形にし、魂を吹き込む」
 ただ詠唱を続けながら、後ろ手にマシンガンを掴んだ。
 鉤爪を躱す必要はない。捕まることが、そもそもの狙いだった。
「技術者とは元来そういうものです」
 そして鉤爪とワイヤーが胴を巻く寸前――クネウスは、マシンガンを背後に投げた。
「え……!」
 小さく声が上がる。マシンガンを投げた先には、瓦礫に潜むように、借りた盾を構え、うずくまる、『奥園スズ』の姿があった。
「後は任せましたよ」
 一言。それだけ残してクネウスは、グラップルガンの拘束を受け入れた。


 拾い上げた銃に、スズはどこか熱を感じた。
 まるで銃が、自分はただの金属の塊ではないと主張するかのように。そして同時に、今や慣れ親しんだパイルバンカーにもまた、同じくそれを感じ取る。
 ユーベルコードというものを正しく理解しない少女には、そこが認知の限界だった。
 だから少女はただ、銃口を目の前に向けた。見よう見まねで銃把を握り、照星の先に敵を見る。
 ――助けないと。
 それだけを胸に、少女は強く引き金を引いた。


 紫電の如く拳が迫る。ワイヤーに拘束されたクネウスに、それを躱す術はない。過たず頭蓋を打ち抜かれ、あえなく戦場に散る。
 その間際。
 銃撃が、キャプテンストライクを掠めていった。
「その人を離しなさい!」
 少女が叫んだ。クネウスの目の前で、拳が止まる。
「……全く、隠れていればいいものを」
「ヒーローというのはそういうものでしょう。後は、名乗りがあれば完璧ですね」
 覚束ない構えのまま、少女は更に銃撃を重ねる。AIの補正が掛かった、極めて正確な射撃だ。それは的確に隙を狙う。
「無駄だ!」
 全ての銃弾を拳で弾き飛ばし、キャプテンストライクは少女へと顔を向ける。
 その瞬間、
「ぐっ!」
 敵の背後から、ドローンの機銃が火を噴いた。
 大きなダメージにはならないが、それでも意識を逸らすには十分だ。
「今です!」
 クネウスの声に、少女が素早く駆け出した。
 手にしたパイルバンカーを振り上げて、叩きつける。液体加薬が炸裂し、射出された鋼鉄の杭が、強力にキャプテンストライクを打ち据えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨咲・ケイ
この世界にはヒーローがたくさんいます。
どこかで誰かが泣いていれば、
彼らが助けてくれると信じています。
何故なら『ヒーロー』なのですから。
その事を一番よく理解しているのは、
かつてヒーローだった貴方ではないのですか?

【POW】で行動します。
かつてのヒーローに敬意を払って戦いましょう。

まずは【シールドバッシュ】による【2回攻撃】で
牽制していきましょう。
ボクシング技能による猛攻は【盾受け】と
【オーラ防御】を併用して凌ぎます。
そして、敵の本命の攻撃に対して【第六感】で
反応して【光明流転】で反撃しましょう。

アドリブ・共闘歓迎です。



 メリケンサックが小盾を打つ。甲高い音を伴って、雨咲・ケイの腕に痺れが走った。さながら大槌でも受け止めたようだった。
 ケイは拳の圧力に逆らうことなく盾を振って、衝撃を受け流す。
 ――敵の足下から砂利を擦る音が聞こえた。
 次の瞬間、拳の雨が叩きつけられた。ひねり力を蓄えた骨盤を軸に、流れるような、そして嵐のような連打が放たれる。
 ケイは咄嗟に盾を体に引きつけて、オーラを纏った。
 拳がぶつかる。大槌なんて生ぬるい、それはまるで爆撃だった。
「流石ですね……!」
 それでも何とか全てを受けきり、距離を取ってケイは息をつく。
 キャプテンストライクの攻撃は、長年を戦い抜いてきた老練のそれだ。かつてのヒーロー、その摩耗した残滓が感じられた。
「……この世界にはヒーローがたくさんいます」
 志半ばで彼は倒れてしまった。心残りは多いだろう。オブリビオンになって尚、囚われてしまうほどに。
 何かを守ることができなかった。その思いが、根本にあるのかもしれない。
「どこかで誰かが泣いていれば、彼らが助けてくれると信じています」
 しかし、誰しも一人ではない。
 悲しみから人々を救う存在が『ヒーロー』であるなら、そこに差し伸べられる手が必ずあるはずだ。
 拳一つで全てを救うことはできない。だが決して、拳は一つじゃない。
「そのことを一番よく理解しているのは、かつてヒーローだった貴方ではないのですか?」
「……ああ、理解してるさ」
 キャプテンストライクは、更に深く拳を構える。深い絶望と悲しみが、滲んでいるようだった。
 今度はケイが先手を取った。大きく前に躍り出て、敵の拳が放たれる前にその懐へと。
 体を翻すように、小盾を素早く振るった。敵の側面を狙って叩きつける。
 対してキャプテンストライクはスウェーの動きでそれを回避。二度目のバッシュは片足を引いて上体を反らし――
「理解しているから、無駄だと悟ったのだ!」
 盾を振り切って空いたケイの胴を狙って、カウンターの一撃を繰り出した。
「それでも諦めないのが、『ヒーロー』なのではないですか」
 ケイには見えていた。倒れるように拳の軌道を潜り抜け、密着するほど肉薄し。
 盾による牽制で動きを抑制し、氣の流れを読み、そして後の先を取る。
 カウンターに合わせた大威力の返し技が、キャプテンストライクを強かに吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「私の出番ですかね」

【POW】真の姿に変身し更に強化

引き続き、グラップルガンで拘束されています。

「CODE:GEIST PANZER。装甲展開、ブースター点火」
私の真の姿は【メカニック】として自作した『強化外骨格(パワードスーツ)』です。
グラップガンのワイヤーごと強化外骨格に取り込み、更に追加装甲とブースターを纏います。

「ボクシングにはこのような戦い方は無いと思いますが……」
大質量体による【残像】を残す程のスピードの体当たり、そしてその後の【零距離射撃】。

「『ボクシング』は一対一ですが、戦場ではそうはいきませんよ」
こちらには『奥園スズ』がいるので、後は何とかしてくれるはず。



 そして、クネウス・ウィギンシティは真の姿を解放した。
 グラップルガンのワイヤーに囚われたままのクネウスを覆うように、強化外骨格がワイヤーを取り込みながら出現する。
「CODE:GEIST PANZER。装甲展開、ブースター点火」
 更に続けてユーベルコードを発動、分厚い追加装甲が次々と、音を立てて装着されていく。
 拘束が解けると共に、クネウスは地面を蹴った。その背にブースターが現れる。
 ブースターが火を噴くと共にクネウスは一気に加速、キャプテンストライクへと、残像を残すほどの速度で体当たりを仕掛けた。
「ボクシングにはこのような戦い方はないと思いますが……」
 他の猟兵たちの攻撃をその身に受けて、吹き飛ばされたキャプテンストライクはふらふらと立ち上がる。その目がクネウスを見る。
 もはや、拳を上げる動作さえ緩慢だった。だが、そこに油断できる要素は一切ないと判断し、クネウスは更に速度を増した。
 強化外骨格によって大質量の塊と化したクネウスが体を叩きつける。それを、
「――舐めるなぁっ!」
 鉄杭のようなストレートが迎え撃っていた。
 轟音と衝撃波が迸る。死に体とは思えない一撃に、クネウスの速度が僅かに相殺される。
 軌道がぶれた。キャプテンストライクは瞬時に、軸がずれて開いた隙間に体を潜り込ませる。
 クネウスもまたその動きを読み、敵の体が装甲を掠めると同時にブースターを制御し急速に旋回、攻撃を躱して見せた無防備な背中に銃口を突きつけた。
 零距離での射撃が敵の背を撃つ。
「ぐ、おおおお!」
 キャプテンストライクはそれに対し、目も向けずに拳を振るった。
 銃弾が弾かれて、遠く壁面に突き刺さる。しかし全てではなく、数発は間違いなくその体を貫いた。
「はっ、隙だらけだなぁ!」
 それでも血反吐を吐きながら、キャプテンストライクが叫ぶ。
 銃撃後の数瞬、次弾を装填する僅かな時間。瞬きの時間にも、彼の拳は数え切れないほどクネウスを叩くだろう。
「一対一なら、ですが」
 そのとき――マシンガンの銃火が、側面からキャプテンストライクを貫いた。
 彼はクネウスにしか意識を向けていなかった。クネウスの与えた武装を使う少女のことを、気に留めておかなかった。
 クネウスと自分のぶつかり合いの最中にまで、ちょっかいを出してくるとは思わなかったのだろうか。骸の海へと帰る短い時間、彼はそれを後悔し続ける。
「ここは戦場です、あらゆることを想定しておくべきでしたね」
 クネウスはブースターを噴かし、改めてキャプテンストライクへと突進を繰り出す。キャプテンストライクは抵抗することも出来ず、そのまま壁に叩きつけられた。
「ここまでです」
 再び零距離から、クネウスは銃口を突きつける。今度は決して、拳の間に合わない距離だった。
 キャプテンストライクは、血塗れのまま、ニヤリと笑って中指を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年06月10日
宿敵 『キャプテンストライク』 を撃破!


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ヒーローズアース


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠雷陣・通です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト