テレビウム・ロック!~どうぶつたちと桃色の鍵~
●テレビウム・ロック!
チカ、チカ。
幼いテレビウムの顔のテレビモニタが点滅する。
違和感を感じたのだろう。幼いテレビウムが不思議そうに自分の顔へと手を伸ばした。
「どうしたの、ペシェちゃん。おかお、へんなの?」
「うーん、よくわかんない」
一緒に居た電子の妖精が、どうしたのだろうとその顔を覗き込む。
「あ。ペシェちゃんのおかお、おかおじゃなくなってるの」
「フィユちゃん、ペシェのおかおはおかおよ」
「そうじゃなくてー……」
桃色のリボンを付けた幼いテレビウム――ペシェにどう説明すればいいのだろうか。幼いフィユは腕を組んで言葉を探した、その時。
まぁるい生き物がペシェへとなだれ込み、
「あっ、ペシェちゃん!」
押し流すようにペシェを連れ去ってしまったのだった。
●猫の語り
「やぁ、みんな。来てくれてありがとう」
既にこの一連の出来事は、ニュース等になって君たちの耳にも入っているかも知れないことだけどと、一言言い置いてからグィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)は現状の説明をした。
キマイラフューチャーのテレビウムたちの顔に、突如『鍵のような映像』が浮かび上がる事件が発生している。そのテレビウムたちには特に共通点が見つかっておらず、原因がよくわかっていない。
共通していることはひとつ。鍵の浮かんだテレビウムを怪人たちが狙って襲撃してくることだった。
怪人たちの目的は解らない。けれど、罪無き一般テレビウムを危険に合わせる訳にもいかない。
「君たちには遅い掛かってくる怪人たちをやっつけてもらい、奴等の魔の手からペシェちゃんって言う幼いテレビウムを護ってもらいたいんだ。ペシェちゃんは大きな可愛いピンクのリボンを付けているから、すぐに解ると思うよ」
現場で取り残されて泣いていた彼女の友達はこちらで保護しているから大丈夫だよと付け足して、グィーはグリモアを浮かび上がらせる。
「ペシュちゃんのすぐ近くへ飛ばすよ。どうか彼女を、護ってあげて」
壱花
お目に留めてくださってありがとうございます、壱花と申します。
皆様の物語を彩れるよう頑張らせて頂きます。
マスターページに受付や締切、お知らせ等が書かれている事があります。章が変わるごとに参照頂けますと、幸いです。
第1章、集団戦『アキクサさま』
第2章、集団戦
第3章、ボス戦
●
本シナリオは4/30朝までに終了を目指すので、ボス戦以外はサクサク返却していく予定です。
どの章からでも、ひとつの章だけでも、気軽にご参加いただけるとうれしいです。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『アキクサさま』
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POW : ぽかぽかの風
【召喚したヒーターの熱風】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : どっちが本物?
【もう一羽のアキクサさま】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 究極の平和主義
全身を【スーパーもふもふモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
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●もふもふピンク
ドドドドドドドドドドドド。
沢山のピンクの鳥たちがビルの合間を走り抜ける。
集った鳥たちの上に、桃色のボディにピンクのリボンを付けたテレビウムの姿があった。
「あなたたち、ペシェとおんなじね」
テレビウムの少女は、楽しげな声を上げる。
ピンクの鳥たちはふわふわでもふもふで、何より暖かい。
顔の違和感も気にならくなるくらい魅力的で、ペシェは危機感等ひとつも感じた様子も見せず、ひたすらそのふわふわを堪能していた。
リル・ルリ
■アドリブや絡み等歓迎
「柔らかい鳥……かわいい鳥がいる。抱っこしてもふもふ……違う、ペシェを助けにいかなきゃ」
とても、もふもふしたい
僕はかわいいのがすきだから
ペシェが鳥に!……あれ、楽しそうにしている?
けれどいつ、危ない目にあうかわからないはやく鳥包囲網から救い出すべくペシェの元へ
柔らかくてもふもふ……!僕もこうしていたい!じゃなくて
ペシェ、気持ちはわかるけど
熱くなったりしたら大変、ここから出よう
この鳥は怪人なんだ
優しく話し、【歌唱】活かして「魅惑の歌」を歌って鳥の動きを少しとめる
攻撃してきたら、「氷楔の歌」で反撃しなきゃ
鍵ってことは扉もあるのかな
とにかく今はペシェを助け出す
少し、もふもふして
クロト・ラトキエ
これは、何とまぁ!
まるっこフォルムにふわふわボディ、円らな瞳のもふもふピンク…
実に愛らしいというやつですね。分かります。やり難いのも道理というもの!
…まー、でもですね。
幼子を、護ってと。託されたなら応えてこそ兵。
おイタをする子はお仕置きです、という事で?
ペシェの近くに跳べたなら、鳥さん達の進路に鋼糸を張ってコケさせる…とか謀ってみましょう。
ペシェが落ちそうならキャッチも忘れず。寧ろ最優先?
可愛いリボンのお嬢さん。お友達が心配してましたよ?
ですから今日は帰りましょうね。
トリニティ・エンハンスで防御力強化。
ペシェを傷付けず、傷付けられない事に最大限配慮。
攻撃は鋼糸で脚を狙い、まず機動力を削ぎたい所
アリン・フェアフィールド
ピンクのテレビウムさんに、ピンクの鳥さん達…
そういえばグィーさんもピンクだったし!
ちょっと親近感湧いちゃうかも!
でも、ごめんねペシェちゃん、その子達悪い怪人だから倒さなきゃ
お友達も心配してるから、一緒に帰ろ!
【スクラップ・ジャイアント・ハンド】センジュ・ガトリングモード!
……。
うーーーん殴れない!
…ホントに怪人なのかなあ?
沢山のアームで一羽ずつ掴んでぽい!掴んでぽい!
ってやってペシェちゃんから引き剥がそう!
ちょっとUFOキャッチャーみたい!
わーヒーターあったか~い
けどそろそろ「季節ハズレ」なんじゃないかな?
…じゃなくて、どうしてもこの子を連れ去ろうとするなら許さないから!
で、デコピンするから!
●もふもふぴよぴよ
ぴよ、ぴよぴよ。
ぴよぴよぴよぴよぴよぴよ。
桃色のアキクサインコ型オブリビオン『アキクサさま』の前へ立ち塞がった猟兵たちは思わず足を止めた。テレビウムを助けるべく急行した猟兵たちだが、アキクサさまとテレビウムの幼子が戯れているようにしか見えなかったからだ。
そしてその光景は、何と言っても可愛いの一言に尽きた。
「柔らかい鳥……かわいい鳥がいる。抱っこしてもふもふ……」
「まるっこフォルムにふわふわボディ、円らな瞳のもふもふピンク……実に愛らしいというやつですね。分かります」
思わず欲求を口にしたリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)の隣で、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)も同意を示して頷いた。
可愛いものは愛でるもの。やり難いのも道理と考えるクロト。
可愛いものが好きだからこそ、もふもふしたくてうずうずしてしまうリル。
けれど、グリモア猟兵は護ってほしいと告げていた。今はアキクサさまにただ運ばれているだけの幼女だが、他の邪魔が及ばぬところまで連れて行ってから嘴を向けられる可能性だってある。いつペシェが危ない目に遭うかわからないのだ。――嘴、丸いけど。
リルとクロトは視線を交わし、そして同時に頷いた。
「ペシェ、こっちに来れる? おいで」
「その鳥さんは危ない鳥さんなのですよ」
「やぁよ。やわらかいしもふもふだし、あぶなくないもん。ねー?」
『きゅぴー!』
ペシェに頬ずりされたアキクサさまが、そうだそうだと甲高い鳴き声を上げる。
(柔らかくてもふもふ……!)
思わず反応してしまったリルはコホンと咳払いをし、
「ペシェ、気持ちはわかるけど、その鳥は熱くなったりして大変なんだよ」
リルがペシェに向かって優しく声を掛けている間に、クロトは《トリニティ・エンハンス》で自身の防御力を高め、地を蹴った。
『ぴよー!』
『ぴ、ぴよよー!?』
街路灯へ巻き付けたクロトの鋼糸に足を取られて転倒し、アキクサさまたちが悲鳴を上げる。後続のアキクサさまたちも転倒したアキクサさまに突っ掛えて、アキクサさま集団は完全にその歩みを止めた。
そこへ躍り出るのは、ペシェやアキクサさまたちと同じピンクの髪。
「『スクラップ・ジャイアント・ハンド』センジュ・ガトリングモード!」
ツインテールを踊らせて、《スクラップ・ジャイアントの手》を発動させたアリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)が倒れたアキクサさまたちを飛び越えてペシェの傍に迫る。
沢山巨大なスクラップハンドを振り上げて!
振り上げて……!
「……うーーーん殴れない!」
無害そうな瞳をきゅるんっと向けてくるアキクサさまへアームで握った拳を振り下ろすのが躊躇われ、仕方がなく周りのアキクサさまたちを次々に掴んでは投げていく。
ぽい! ぽい!
『きゅーーー』
『ぴっきゅーーー』
「あっ、とりさんっ」
放り投げられていくアキクサさまたちが悲鳴を上げ、ペシェは声を震わせて。
「ごめんねペシェちゃん、その子達悪い怪人だから倒さなきゃ」
「やだぁ、ママにかっていいかきくのー!」
アキクサさまの羽毛を毟らんばかりに鷲掴むペシェへアリンが声を掛ければ、ブンブンと頭を振って嫌がった。
「お友達も心配してるから、一緒に帰ろ!」
「そうですよ、可愛いリボンのお嬢さん。お友達が心配してましたよ?」
「……フィユちゃん? しんぱいしてる?」
「そう、フィユちゃん。ペシェちゃんは鳥さんとフィユちゃん、どっちと仲良しさん?」
「フィユちゃん!」
「でしたら今日は帰りましょうね」
「うん!」
アリンとクロトに優しく諭され、ペシェは大きく頭を振る。
チカ、チカ。
テレビモニタは依然鍵のまま。けれどペシェが笑顔を浮かべた事が猟兵たちには伝わった。
ペシェの手がアキクサさまの羽毛から離れ、ひらひらとアキクサさまたちに振られる。
「とりさん、ばいばい。ペシェ、フィユちゃんとこにもどるの」
アキクサさまたちは、標的に逃げられると思ったのだろう。その途端、傍らのアキクサさまがペシェへと襲いかかり――
(――させないよ)
甘く、響く。人魚の歌。
襲いかかろうとしていたアキクサさまは心を捕らわれ動きを止め、そこに絡むは鋼の糸。しゅるりと巻き付き、ぽんっと遠くへ投げ飛ばす。
「今だよ」
「今です」
「任せて!」
クロトとリルの声が重なり、アリンは手を伸ばす。
ぽかぽかとしたヒーターの風なんて、もう季節ハズレ。
ペシェを両腕で抱えたら、ペシェを乗せていたアキクサさまをアームでデコピン!
『ぴーーーーっ』
ふわふわ羽毛にいくらか吸収された気がしないでもないが、アキクサさまは涙を零して吹き飛ばされ――そして消滅した。
「ペシェちゃんをお願い!」
「はい、任されました」
敵のど真ん中で抱えていては、ペシェが怪我をしてしまう。そう判断したアリンは、ペシェの身体を仲間の猟兵へと放り投げる。すぐにクロトがそれに応じて鋼糸で絡め取り、そこを狙おうとするアキクサさまをリルの凍える歌がアキクサさまからぽかぽか成分を奪った。
「すごーい。ペシェ、とりさんみたいにとんじゃった」
無事に腕に収まったペシェの明るい声。ピンクのテレビウムに怪我がない事を確認したクロトは、リルの傍らまで下がる。
ペシェは取り戻した。後は倒し尽くすだけ。
ひらりと舞ったピンクの羽根が、地に付く前にさらりと消えていく。
「おねえちゃん、ペシェとおんなじね」
クロトの腕の中、ペシェがアリンを見上げて明るい声を上げる。アリンもツインテールの根本を両手で摘んで「一緒だねー」と笑ってみせた。
「強敵……だったね」
どこか満ち足りた顔で呟くリルに、仲間たちは優しい顔。
スーパーもふもふモードでもっふもっふにされたリルが幸せそうな顔をしていた事をその場に居た猟兵たちは知っていた。
「それにしても、なんでしょうね、これ」
「鍵ってことは扉もあるのかな」
「うーん、どうなんだろう」
「ペシェ、よくわかんない」
猟兵たちがペシェの顔に映る鍵に首を傾げると、ペシェも真似して首を傾げるのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『何も答えてくれないベルーガ』
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POW : おまえを消す方法
【全て消すモード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ベルーガに乗った中年
【ベルーガの調教師】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ベルーガがせめてきたぞ
戦闘用の、自身と同じ強さの【熱線銃装備の軍用ベルーガ】と【ガトリングガン装備の軍用ベルーガ】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑7
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●地図と鍵
チカ、チカ。
テレビウムの画面の鍵が明滅した。
「あれ?」
鍵のみが映っていた画面が切り替わる。
「これって……」
「この辺りの地図、でしょうか」
「なぁに? ペシェのおかお、どうなったの?」
表示されたのは簡易MAPなのだろう。そして、現在地と思われる場所に、小さな鍵のマークがあった。
一定方向を向いていた鍵が、くるりくるりと向きを変える。
「こっちに行けばいいってこと?」
「罠かもしれませんよ」
どうすべきかと猟兵たちが顔を突き合わせ、
「ペシェね、そこにいきたいかも。だって、ペシェ、おかおをおかおにもどしたいもの」
それに、えほんでよんだおひめさまみたい。
悲嘆にくれぬ明るい声。
不可解な現象の中、楽しむ声。
当事者の様子に顔を見合わせて頷き合った猟兵たちは、鍵の示す先へ向かう事を決めた。
鍵に従い道を進む、猟兵たちとピンクのテレビウム。
そこへ多くの気配が周囲から迫っていることに気付いた猟兵たちが足を止め、ペシェは不思議そうに彼らを見つめた。
「どうしたの、おにいちゃんた――」
『キュイー!』
『キュッキュイー!』
姿を現した白いイルカ――ベルーガたち。
ベルーガたちは行き先を知っているのだろう。
四方を囲まれてしまっているのがその証拠だ。
幼子の護衛のための戦闘はまだ暫く続くようだ――。
アリン・フェアフィールド
うふふ、ペシェ姫様はわたし達がナイトとしてしっかりお守りいたします!
今度もまたかわいい白イルカさん達だなあ…
あなた達、この鍵のコト知ってるの?一体何を企んでるわけ!
……。
そ、そう簡単には教えられないってことだね!
いいもん、教えて貰わなくたってわたし達で辿り着くもんね!
ねーペシェちゃん!
わたしイルカショーってまだアーカイブ映像でしか見たことないんだ。
ホンモノを見せてよ!
【Xクラスバースト・フレア】!
炎を纏ったジャンプで空中からアクロバティックに足技を仕掛けるよ!
上手くかわさないとコゲちゃうぞー!
あ、あんまりかわいくない感じのおじさん?が出てきた…!
くっ、負けない…!もっと速く、高く跳んでみせる!
クロト・ラトキエ
お姫様…なるほど~?
これはさては、目的地までエスコート出来ぬようでは男が廃る!というやつですね?
(自分には似合わないなあって気はしてるんですけども~)
とりあえず継続でペシェの安全を最優先。
背に庇うか、動かずいて貰うか…更に言えば、身を隠させる場所を確保したいところ。
というわけでトリニティ・エンハンス、今度は水の魔力を攻撃力に。
しかし何故でしょう。
あのイルカ、オブリビオンな事を差し引いても、妙に鬱陶しい気がするといいますか…
お前を消す方法?
そうですね。それとっても知りたいです。
敵の技はペシェに被害及ばない限りは見切りを試み。
早業で鋼糸をくるりと、破壊工作よろしく、
範囲攻撃でまずは突破口を開きたく
リル・ルリ
■アドリブや絡み等歓迎
うん、ペシェのお顔、元に戻そう
可愛いお顔、僕もみたい
べるーが!
白い、尾鰭
僕のと似ているけれどちょっと違うね
ぱたりと尾鰭を揺らして、ペシェが連れていかれないように抱え守る
ダメだよ
ペシェは連れていかせない
戦闘中ペシェを守れるよう傍についていよう
そんな覚悟も歌声にのせて【歌唱】を活かして歌う「氷楔の歌」
動き鈍らせベルーガ達を凍らせ怯ませ
道を作るんだ
逃げられる、道を
それができたら、「魅惑の歌」を歌う
足止めと他の皆が攻撃しやすくなるように
僕には僕のできることをするんだ
ペシェを安心させるよう声をかけて
地図の示す場所まで、進めるように邪魔が入る度に歌い動きをとめる
もう、しつこいってば!
メリー・メメリ
イルカ!イルカがいるよ!
ライオンライオン、イルカ!ともだち!
なかよしのふえをぴゅーっと吹いてともだちのライオンを呼ぶよ!
イルカ、イルカ、どこに行けばいい?あっち?
罠だってこわくないよ!
だってメリーにはともだちのライオンがついてるからね!
動物と話すをつかってライオンと話す!
イルカのいってる道にもし罠があったら
メリーたちがガオーって罠をけちらそうね!
罠があったら、いかりのしるしでうがー!っておこる!
イルカ!おこったぞ!
うそつきはどろぼうのはじまりってかかさまがいってた!
おこった!ガオーってけちらす!
●ビルの海を泳ぐ
吹き出しにコメントを表示させながら、キュイキュイと白いイルカたちが鳴く。
いつの間に、それもこんなにたくさん。
察知していた猟兵たちとは違うペシェは、怯えたように一歩足を曳いて。その背に触れる低めの体温と、ペシェに勇気をくれる言葉たち。見上げれば、背に手を添えてくれているリルが微笑んで、アリンとクロトは笑みをひとつ残してペシェへ背を向けた。
「うふふ、ペシェ姫様はわたし達がナイトとしてしっかりお守りいたします!」
「お姫様……なるほど~? これはさては、目的地までエスコート出来ぬようでは男が廃る! というやつですね?」
ナイトとしてと、ベルーガたちから庇うようにアリンはペシェの前に立つ。相手が可愛い白イルカだろうと、アリンのやる気は充分。拳を打ち鳴らして前方のベルーガたちを睨みつけた。
その隣に、クロトが並ぶ。姫を護る騎士だなんて、自分には似合わない気もする。けれど、小さな乙女の夢を壊さない順応性も兼ね備えている。
度の入っていない硝子の向こうへと、敵に悟られぬように青色が泳ぐ。テレビウムの少女が、戦闘終了まで身を隠させる場所を探して。ビルの海を、ベルーガの波の間を。
(――さてさて、お姫様が身を隠せる場所……もしくは、ペシェがこのまま動かずに居てくれてれば良いのですが)
さて、そのお姫様のご様子は、と。背後から聞こえた会話に耳を向けながら、水の魔力を操って攻撃力を上げた。
「イルカさん、こわい? ペシェのおかお、もどせる?」
「うん、大丈夫だよ。ペシェのお顔、元に戻そう。可愛いお顔、僕もみたい」
長身のクロトの黒い上着は、帳のように前方のベルーガたちから隠してくれている。けれど先程のアキクサさまよりも怖く感じたペシェは、声を小さくして。リルも同じように声を小さくして、二人だけの内緒話のようだと笑めば小さなお姫様は口元に両手を当てて笑う気配。
きゅっと身を寄せてくる体をリルが抱き上げれば、小さな手が拠り所を求めるようにしがみついてきた。
(ペシェは連れていかせない)
大丈夫だよと伝わるように一度力を込め、リルもまた、周囲を囲むベルーガたちへと意識を向ける。
「あなた達、この鍵のコト知ってるの? 一体何を企んでるわけ!」
『キュイー?』
アリンが問いかけても、何も答えてくれないベルーガたちは何も答えてくれない。
吹き出しに『質問の意味がわかりません』と表示された。
「……」
「……」
何とも言えぬ苛立ちを覚え、アリンとクロトは思わず微笑むがその瞳は笑っていない。オブリビオンな事を差し置いても、この白イルカたちは妙に鬱陶しい。そう思ったのはクロトだけではない筈だ。
「いいもん、教えて貰わなくたってわたし達で辿り着くもんね! ねーペシェちゃん!」
「そーよ、おねえちゃんとおにいちゃんたちはすごいし、ペシェもがんばるもの!」
「そうですね。答えて頂けないのなら、蹴散らすまでです」
ペシェの声援を背中に、アリンは地を蹴る。
炎を纏い、空を飛ぶ勢いさえ感じさせる大ジャンプ。
小さな歓声が背中に聞こえれば、口元に浮かぶのは笑み。
『キュイー!』
前方のベルーガへアリンが華麗な足技を掛ける中、クロトを中心として糸が舞う。目視しにくい其れは、鋼色。鋼糸を操ることに長けているクロトの攻撃範囲はとても広く、背後と側面の敵を寄せ付けさせない。
そこに、鮮やかな赤と、明るい声が響く。
「イルカ! イルカがいるよ!」
三人に遅れて転送されてきたメリー・メメリ(らいおん・f00061)が出現したのは、徴兵たちを囲むベルーガたちの後方。
イルカの群れに声を上げ、『なかよしのふえ』をぴゅーっと吹いた。
ぴゅ~ひょろろ~っとどこか気の抜けるような、それでいて優しい音色が響けば、メリーとなかよしのライオンが何処からともなく駆けてきてくれる。メリーに頭を擦り付けるライオンのふさふさの鬣にメリーは手を伸ばし、ぎゅうっと抱きついて力を貸してねとお願いを。ライオンはメリーのフードを咥えてポイと投げ、その背にメリーを乗せてその願いに応じる姿勢。
『キュイ?』
一番後方のベルーガが、新たに現れた猟兵に向き直る。
「イルカ、イルカ、どこに行けばいい? あっち? そっち?」
キュ、と短く鳴くベルーガ。答えてはくれない。
けれども、鋼糸で巻き取られて吹き飛ばされるベルーガと、炎を纏って跳躍するピンクの髪が見えたから。
「そっち、だね!」
ともだちのライオンに顔を寄せ、みんなのところに行こうと告げて。
大きなライオンが、赤い頭巾の少女を乗せて地を駆ける。
メリーたちに気付いて避けるベルーガも居た。けれど、それでも構わない。倒せなくても、蹴散らし仲間のところへ行けさえすればいいのだから。
「メリーたちがきたよ! ガオーってけちらすよ!」
後方のベルーガを蹴散らして現れた勇敢な援軍に、頼もしいと微笑むのはピンクのテレビウムを腕に抱きながら宙を游ぐ人魚。
秘色を揺らした人魚は、前方へと指を向け、
「メリー、僕が動きを止めさせるから、あっちに行くことはできる?」
「うん、大丈夫! メリーにはともだちのライオンがついているからね!」
前方で敵を倒していたアリンの耳にも、その元気な声は届く。アームで殴ったり、足技を掛けて敵を減らしているはずなのだが、次々と増援が来て一向に減っている気がしていなかった。
クロトも突破を考えに入れていた為、後方を振り向いて頷きを返す。
「くっ、負けない…! もっと速く、高く跳んでみせる!」
「おねえちゃん、すごーい!」
ペシェの歓声を背に、可愛くない中年おじさんを乗せたベルーガへアリンが蹴撃を食らわせる。
吹っ飛んで消える中年。そして調教師とともに光となって消えゆくベルーガの消滅を待たず、リルは喉を震わせる。
――さあ、行って。
視線でメリーへ合図を送り、声震わすは『氷楔の歌』。
熱を奪われ凍てついたベルーガを、背に赤い頭巾の少女を乗せた太陽色の獣が蹴散らして道を作る。
そこを一気に駆ける、猟兵たち。
メリーとライオンを先頭に駆け抜け、猟兵たちはベルーガの包囲網を突破したのだった。
しかし、何度もベルーガたちは道中で襲ってくる。
無差別攻撃で追撃しようとするベルーガ。
中年を乗せたベルーガ。
遠方からガトリングを撃ってくるベルーガ。
「もう、しつこいってば!」
「お前を消す方法? そうですね。それとっても知りたいです。今すぐ」
ペシェを安心させるように声を掛け続けていたリルも思わずそう口にする程、幾度となくベルーガたちは追撃してきた。
けれど罠らしい罠はなく、メリーはうがーっとせずに追撃が来る度ライオンで蹴散らし、リルが歌で心を縛ったベルーガをクロトが鋼糸で刻んだり放り投げ、アリンもまたアームや足技でそれを撃退した。
「イルカ、わるいイルカ、でなくなってきた!」
「イルカショーもおしまいだね!」
「ペシェの地図は、どうですか?」
「あとちょっとみたい……あっ、もう目の前だ」
そうして、追撃を振り切りながらペシェの地図に従って進んだ先。
そこは。
何の変哲もない広場だった。
大成功
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第3章 ボス戦
『銀木犀』
|
POW : 頂戴
【予告状】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : 手刀
【残像さえ残る格闘術】による素早い一撃を放つ。また、【下駄を飛ばす】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 巾着切り
【スリ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑7
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●ぺしぇふらっしゅ
桃色のテレビウムの鍵が指し示していた場所は、何の変哲もない広場だった。
大きな商業ビルの合間の、小さなオアシス。
程良い心地よさを生み出すべく植林された木々。計算された景観。
いくつかのベンチに、木々が影を落としている。
敵が居ないか確認しながら、猟兵たちは慎重に広場の中央へと向かう。
「……あっ、ペシェ!?」
リルが丁度中央へとふわりと泳いだところで、その腕の中のペシェが突然ピカピカと光り出した。
ピンク色の光に驚いてリルが声を上げ、そこに視線が集中する。
「わあ。ペシェ、ひかってる?」
「すごいすごい、ペシェ! メリーの角みたいにかっこいい!」
今なら遊園地のパレードに出られるかも。なんて燥ぐ二人の幼子。
「ペシェちゃん、大丈夫? 痛かったりはしていない?」
アリンが案じれば、ペシェは大丈夫と大きく頷いて。
その顔に表示される鍵が変化していることに、クロトが気付いた。
「……鍵の表示が変わっていますね。これは……何かを読み込んで……?」
地図を表示していたモニタからは地図が消え、この場を示すかのように鍵がピンと立ち上がって表示されている。
そして、その下には何かを読み込むような、四角いゲージ。プログレスバーが表示されていた。
電子機器で進捗状況を知らせる際に表示されるそれに見覚えのある猟兵たちが顔を見合わせあう。
ペシェの光も収まってはいない。このゲージが溜まるまで、暫くこの場に居たほうが良さそうだ。
●怪盗現る
桃色のテレビウムと猟兵たちの頭上を、何かの影がサッと横切る。
あれは、鳥か! 飛行機か!
「やいやいやいやい、お前たち! その子を俺に渡してもらおうじゃないか!」
いや、怪盗だ!!
銀鼠色の髪に、大きな鼠耳。手癖が非常に悪いオブリビオン、『銀木犀』の姿だった。
銀木犀は一番背の高い木に飛び乗り、猟兵たちを見下ろす。ゴーグル奥の目は見えないが、品定めでもしているのだろう。
「大人しく引き渡せば良し。反抗するってぇなら……ちょいと痛い目見てもらうことになるぜ?」
キラリとゴーグルを輝かせ、銀木犀はニヤリと口の端を上げるのだった。
アリン・フェアフィールド
また出た!もう、こんな時にー!
ペシェちゃんのお顔がどうなるのか凄く気になるのに…!
この子は渡さない!
痛い目見てもらうはこっちのセリフなんだからね!
おいで『ミーティア』!
【ゴッドスピードライド】で
小回りの効くミニ仕様の白バイに変形して騎乗するよ。
速さが売りみたいだしスピード勝負だよ!
仲間やペシェちゃんにはぶつからないように気をつけつつ
加速して銀木犀を追い回す!
ピピー!そこの怪盗、止まりなさい!速やかにお縄につきなさーい!
言う事聞かないならこの電子ビームガンで撃つよ!
まあ高い所に逃げられたら中々手が出せないんだけど…
ペシェちゃんに近づけさせないようにできればよし、かな?
わたしは一人じゃないからね!
クロト・ラトキエ
怪盗は、自称なんですかね?
僕が道義を説くとか如何なものかと思いますが…
そういうの、誘拐とか強盗って言うんですよ?
等々、お戯れは程々に。
では、ええ。
痛い目とやら、見せて頂きましょうか。
トリニティ・エンハンスで風の魔力励起。
防御力を底上げて、引き続きペシェと、その周辺の方へ累が及ぶ事の無いよう、
銀木犀と彼女らの射線を妨げるように立ち回り。
予告状は見切り避けるか、鋼糸で叩き落とし、そもそも命中させないように。
フェイントだってお手の物。守りに広げた鋼糸を、反撃よろしく引いてからの2回攻撃。
痛い目、見せ返さないなんて言ってませんし?
こちらとて、本日のお姫様の可愛いお顔、取り戻さぬわけには参りませんので。
メリー・メメリ
かいとう!?!?
かいとうがあらわれた
……!!!
かかさまから聞いたことがあるよ、かいとうはいいかいとうとわるいかいとうかいるって…!
ネズミはどっちのかいとうかなあ?
でもかんたんにはわたさないよ!
フードファイト!ワイルドモード!かかさまのお肉弁当でメリーも元気元気!
これで強くなったからメリーに任せて!
ライオンといっしょにきたえた足とととさまといっしょにおりゃーってしたから
メリーも強いんだよ!
こらー、大人しくしなさい!
追いかけっこだって負けないんだからね!
おりゃー!ごーごー!
みんなとのれんけいも忘れずに!
あっちに行ったよ!
ここはまかせて!
リル・ルリ
■アドリブ等歓迎
今度は、かいとう?
ダメ、ペシェは君には盗ませないよ
僕らで守るんだ
もう少し
もう少しでペシェのお顔も元に戻るはず
ペシェを守りながら
僕は皆を支援するよ
怪我をしても癒すから安心して
歌うことしかできなくても
いや、僕には歌があるんだ
【歌唱】を活かして紡ぐのは仲間たちを支援する歌
怪我をした人がいれば傷を癒す「癒しの歌」を【鼓舞】をのせて歌うよ
ちょこまか動きがはやい、なら
君達の刃が届くように「魅惑の歌」で動きを止めてみる
ペシェにだって近づかせないんだから
今のうちに、お願い
戦闘中もペシェが怖がらないように安心させるよう声をかけていこう
光がおさまったら
何がはじまるんだろう
わくわくと、胸騒ぎがするよ
●桃色の鍵、いただきます!
広場で一番高い木の天辺。そこへ猟兵たちの視線が集まる。
オレンジに反射するゴーグルに、赤いスカーフ。快活そうな姿の、銀木犀。
「その子を引き渡す気があるなら、さっさとこの場から立ち去りやがれい!」
高い木からぐるりと広場を見渡して。
猟兵たちを、オレンジに光るゴーグルに映して。
猟兵たちにその気が無いことを知ったのだろう。ゴーグルの向こうの瞳が細まった。
「かいとう
!?!?」
「怪盗、ですか。怪盗は、自称なんですかね?」
驚いた顔で見上げるメリーとは真逆に、クロトが落ち着いた声を零す。
自分が道理を説くのはどうかとも思うけど。苦笑を混ぜながら、度の入っていない眼鏡の位置を直し、
「そういうの、誘拐とか強盗って言うんですよ?」
「じゃあ、ネズミはわるいかいとう?」
メリーのかかさまは言っていた。怪盗には良い怪盗と悪い怪盗が居る、と。盗むこと自体は悪いことに違いは無いのだが、悪いことをする人から盗み、貧しい人へ配る怪盗はいい怪盗。そんな物語を、メリーの大好きなかかさまがお話してくれた。
悪い怪盗ならどうすればいい?
まずはご飯を食べて元気をつけなくちゃ!
何故だか突然お弁当を取り出して食べだしたメリーをチラとだけ見て、銀木犀はすぐに視線を外した。
「誘拐なんて、ダメ。ペシェは君には盗ませないよ」
「痛い目見てもらうはこっちのセリフなんだからね!」
「では、ええ。痛い目とやら、見せて頂きましょうか」
「……へえ、随分自信があるようじゃないかい。それなら、そうしてもらお――」
シュ。
僅かな空を切り裂く音とともに、鋼糸が銀木犀へと迫っていた。度の入っていない眼鏡の位置を直す必要のないクロトが、眼鏡の位置を直す振りをしてさり気なく仕掛けていた鋼糸。
「――っと、危ないじゃないか。コイツは返しだ、取っときな! ついでにその子も《頂戴》するぜ!」
懐から小さな文(ふみ)――予告状をふたつ取り出して、慣れた手付きで猟兵たちへ放つ。
鋼糸が絡め取ろうとするが、間に合わない。鋼の糸の間をかいくぐるように、真っ直ぐに標的へと飛んでいく。
ひとつはクロトへ届き、もうひとつはペシェへと向かい――ペシェを抱えたリルが、ぴかぴかと光を放ったままのペシェへと覆いかぶさるように抱きしめて庇おうとし、身を固くした。
覚悟を決めて、ぎゅっと目を閉じるリル。
しかし、予告状はペシェへ届くことはなかった。
「この子は渡さない!」
「おねえちゃんっ」
「アリン!」
アリンの拳が、横合いから予告状を叩き落とすべく、触れたから。
「受け取ったな。『お前たちは、跳べない』!」
銀木犀は、先の戦いでアリンが高く跳んでいたことを見ていたのだろう。身軽に木から木へと飛び移る銀木犀は、捕らわれぬようにと足を封じることを選んだ。
予告状に触れた相手は、差出人の告げるルールを破ればダメージを負うこととなる。しかし逆を言えば、ダメージ覚悟でルールを破ることも可能である。身軽な相手に足を封じられる事は痛手だ。しかし、跳べなくとも戦いようはいくらでもある。
「おいで、『ミーティア』!」
アリンは相棒の宇宙バイク『ミーティア』を変形させ、跨った。今日のミーティアは広場でも小回りの効くミニ仕様の白バイ姿。常ならばその赤銅色に煌めくボディだが、白いミーティアも可愛いとアリンは相棒の背を撫でた。
相手が怪盗ならば、追いかけるのは警察のお仕事。
ドゥルン! とアクセルを入れて、銀木犀へを木から落とすべく白バイミーティアを木へと突撃させた。
「おっと」
ヒョイと別の木へと飛び移る銀木犀。
ハンドルを切って方向転換をするアリン。
飛び移る際、銀木犀がアリンへと下駄を飛ばすが、風の加護を自身に付与したクロトが難なく鋼糸で巻き取って。
ヒョイヒョイ、ヒョイ。
電子ビームガンを撃ちながら白バイが追いかければ、銀木犀が逃げる捕物劇。
「ピピー! そこの怪盗、止まりなさい! 速やかにお縄につきなさーい!」
電子ビームガンをひらりと躱し、飛び退きながら鋼糸の追撃もくるりと躱す。
身軽に逃げるため、攻撃をなかなか当てる事が出来ない。しかし、銀木犀も標的たるペシェへ近付けなくされていた。
更に予告状を出すべく、銀木犀が懐に手を差し入れたその時――。
「ごちそうさまでした!」
かかさまの言いつけを守る良い子のメリーが、お弁当に手を合わせて片付けて。
「《フードファイト・ワイルドモード》! かかさまのお肉弁当でメリーも元気元気!」
メリーのかかさまのお肉弁当は、いつだって愛情たっぷりのメリーのための特別製。メリーの大好きなものをたくさんたくさんぎゅぎゅっと詰め込んで、メリーに元気と勇気をくれている。
「メリーに任せて! メリーも強いんだよ!」
ともだちのライオンといつもきたえているし、ととさまとだっていっしょにおりゃーってしてたんだからっ!
銀木犀が飛び乗っている木を、おりゃー! と揺らす。
懐へと手を入れいていた銀木犀は姿勢を崩し――
「っと、危ない危ない」
くるんと身軽に一回転。
シュタッと難なく着地をし、そのまま地を蹴って駆け出した。
「こらー、大人しくしなさい!」
追いかけっこだって負けないんだからね!
メリーが銀木犀を追いかける。おりゃー! ごーごー!
「挟み撃ちにしちゃうんだから!」
反対側から、銀木犀へと迫るアリンと白バイ。
メリーと白バイに挟まれる銀木犀。
白バイが間近で放つビームに銀木犀は咄嗟に顔を庇い、しかしその手でそのまま白バイへと手刀を繰り出し横転させた。
今の銀木犀は下駄を履いていない。更に加速をして、ペシェの居る方へと駆ける。
鋼糸が舞う。
銀木犀がすり抜ける。
メリーが追う。追っているのに、無慈悲にも、距離が開く。
銀木犀が、迫る。迫る。
地を蹴って、ペシェの前に居るクロトさえも飛び越して。
獲物は必ず奪ってみせると手を伸ばし――。
歌が、響いた。
澄み切ってきれいすぎる程の、甘い声。
何を見ているの。
どこを見ているの。
何を聴いているの。
蜜が蕩けて浸透するように、心へと響く人魚の歌声。
歌うことしかできない人魚。然れど、人魚には歌がある。
それだけしかないのだから、それだけを高めた歌。
愛しい君が望んでくれる、歌。
胸に愛しい姿を想い浮かべる声は、一層甘やかに。
愛されていると錯覚しそうな声が、僕を見てと心を縛る。
(――言ったでしょう? ペシェは君には盗ませないって)
ペシェを抱えた人魚の《魅惑の歌》が銀木犀を止めたその隙に。
メリーが追いつきおりゃーっと投げ飛ばし、飛んできた銀木犀をこれはミーティアの分! これはペシェちゃんに怖い思いをさせた分! とアリンが拳を幾度も叩き付けた。
それでも消滅しない銀木犀の頭部から、ポロリとゴーグルが外れて。
ビームから頭部を庇った事を思い出し、もしやと思ったクロトが鋼糸を巻き付け、それを破壊した。
――パリン。
ゴーグルの割れる乾いた音とともに、銀木犀の姿は光の粒となって消滅した。
ぴかぴかと光っていたペシェの光も、いつの間にか収まっていた。
戦いの最中もペシェを安心させるように優しく声を掛けていたリルが一番に気付き、ペシェの顔を覗き込む。
「あ、ペシェ。お顔、戻っているよ。可愛いね」
「わ。え。ほんと? ペシェのおかお、おかおになってる?」
「おや、本当。本日のお姫様の可愛いお顔、取り戻せましたね」
リルの言葉に、小さな手がペタペタと自身の顔に触れて。
モニタの中の少女の顔に表示された目は、パチパチと忙しなく瞬いていた。
ペシェを護るように背を向けていたクロトも振り返り、口の端を上げて眉を下げた。
「メリーにもおかお見せて!」
「わたしにも! わたしにも!」
ペシェちゃんのお顔がどうなるのか凄く気になってたんだ。
ペシェたちの様子に、猟兵たちがペシェの傍へ集まってくる。
と、そこへ。
「システム・フラワーズより緊急救援要請」
突然、どこからともなく『声』が響く。
けれど辺りには自分たち以外の姿はなかったはずだ。
周囲を警戒したクロトが鋼糸を舞わせると、他の猟兵たちもピンクのテレビウムを中心にして辺りを警戒する。
「全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり」
尚も、無機質で機械的な『声』が響く。
”まるで、周囲の建造物が喋ったかのように。”
「テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う」
――――――――――――――――――――
…………。
……………………。
息を潜め続く言葉を待っても、それ以上は聞こえてこない。
唐突に聞こえた『声』は、唐突に絶ち消えたのだった。
「……ふむ。終了したようですね」
「えっ、なに! 今の何!?」
落ち着いた様子でクロトが鋼糸を回収し、アリンは誰に問う訳では無いが思いをそのまま口にして。
「救援要請、って言っていたね」
「きゅうえん! だれかこまっている? メリー、たすけるよ!」
それぞれの顔に、疑問符が浮かんでいる。
けれど、
「ペシェ、フラワーってしっているの。おはななのよ」
ペシェが鍵の消えた顔に笑顔を浮かべれば、リルは小さく笑みを浮かべて。
「とりあえず、帰ろっか」
秘色を揺らして首を傾げたリルが猟兵たちへと視線を向ける。
静かな頷きと、明るい頷きと、元気な頷きがそれに応じた。
何故テレビウムに鍵が表示されたのか。
何故鍵が表示したテレビウムが狙われたのか。
あの声は何なのか。
何一つ、答えは出ていない。
けれど、猟兵たちは確りと幼いテレビウムを護りきった。
「おにいちゃん、おねえちゃん。ペシェをまもってくれてありがとう」
みんな、ペシェのすてきなナイトさまだったの。
テレビウムの幼子が、鍵の消えたモニタにとびきりの笑顔を映して笑う。
そのモニタに反射して映り込んだ猟兵たちの顔もまた、すてきな笑顔であった。
成功
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