ギヴ・ミー・ア・リーズン!
●ギヴ・ミー・ア・リーズン!
「ふん、ふふん、ふふふん〜」
その日、テレビウムのベルベットはご機嫌でした。なにせ、ずっとずっと、狙っていた限定プリンに出会えたのですから。
「限定20食。馬鹿言うなよって思ってたけどやっぱり……ありだよ20食。手にできた時の感動ったらない」
紙袋を掲げて、くるり、とターン。ベルベットはご機嫌なのですから、ちょっとやそっとじゃ転びません。
「あれ……、なんかおかしい?」
転びはしないのですが、少しばかりおかしなことに気がつきました。ショーウィンドウに映った自分の顔が、なんだかちょっと違う気がしたのです。
「へ……か、ぎ?」
なんということでしょう。
ご機嫌な顔文字はどこかに消えて、そこにあったのは『鍵のような映像』だったのです。
「鍵ー!? え、なんだよこれ鍵とかどうして」
「ぴっぴよ」
「ぴぴよ」
「ちょ、黙ってろってそんなにぴよぴよ言われたって今それどころじゃ……」
無いんだと、振り返った の前にあったのはそれはもふもふの桃色インコさんでした。しかもちょっと大きいのです。ぽふん、と飛べば、 より大きくて、当たり前のように頭上からやってきたのがーー。
「踏まれるー!!!」
わぁああっと飛び退いたベルベットの手から、プリンの入った紙袋がふわり浮き上がります。慌てて伸ばした手でキャッチして、代わりに尻餅をついてしまいましたが大丈夫です。なにせ、プリンの方が大切なのですから。
「ぴっぴよ!」
「なんで逃げるななんだよ逃げるに決まってんだろー!」
そうして、テレビウムのベルベットは路地裏は駆け出しました。
●とりあえずプリンはまだ無事らしい
「……なんていうか、カオス?」
ユラ・フリードゥルフ(灰の柩・f04657)はそう言って、一つ息を吐くと集まった猟兵たちに向き直った。
「来てくれてありがとう。おにーさん、おねーさん。なんか、キマイラフューチャーでちょっと事件が起きてるみたいなんだよね」
面倒なタイプの、とユラは言った。
「キマイラフューチャーのテレビウム達の顔に、『鍵のような映像』が浮かぶっていう事件。全員って訳じゃ無いみたいなんだ」
そして、この『鍵のような映像』がテレビウムが、怪人達に襲われることが分かったのだ。
「おかしな状況にプラスして、怪しい展開にまでなってきたとなれば、まぁ、何かはあるんだろうなってことで。おにーさんとおねーさんには現場に向かって貰いたいんだ」
そして、『鍵のような映像』が浮かんだテレビウムを守って欲しいのだと、ユラは告げた。
「名前はベルベット。青のうさ耳パーカーをつけたテレビウムで、路地裏を逃げ回ってるところ」
だが、何時迄も逃げ回れる訳では無い。
「手には期間限定先着20名のプリンの入った袋抱えているから、そんなに素早くも動けないしね」
プリン、と思わず返した猟兵にユラは、こくりと頷いた。
「まぁ、プリンの件がなくてもずっと逃げられるって訳でも無いしね。おにーさんとおねーさんには、ベルベットおにーさんを助けて貰いたいんだ」
鍵の映像が映ったテレビウム・ベルベットを追いかけているのはアキクサさまと呼ばれるオブリビオンだ。もふもふ桃色のアキクサインコ型のオブリビオンで、その大きさはどうやら大人ほどあるらしい。
「もふもふにむくむくふくれて? みたいだけど。まぁお陰で路地裏を上手く逃げ切れているのかもしれないけど、向こうも上手く道を通る術を見つけているみたいだから」
まずは現場に向かい、襲われているベルベットを助けることだ。
「すぐ傍に転送するよ。それから、鍵の謎を解き明かして欲しいんだ。襲撃も、多分一度じゃ終わらないと思うから、気をつけて」
そう言って、ユラは猟兵たちを見た。
「忙しない話になっちゃったけど、おにーさんとおねーさんなら、如何にかしてくれると思ったんだ」
信頼を込めて、ユラは微笑む。気をつけてね、と告げてグリモアの淡い光に触れた。
秋月諒
とりあえずプリンは無事らしいです。
秋月諒です。
そう言う訳で、鍵の謎を解き明かして行きましょう……!
初めてのキマイラフューチャー、どうぞよろしくお願い致します。
第一章:集団戦『アキクサさま』
第二章:集団戦。現時点では詳細は不明。
第三章:ボス戦。現時点では詳細は不明。
▼ベルベットについて。
突如「鍵のような映像」が浮かび上がったテレビウム。
限定プリンをやっとゲットできて今日はうっきうきだった。哀しい。
猟兵たちには友好的ですが、最初はびっくりすると思います。
助けに来たと告げれば落ち着きます。
▼リプレイについて。
転送先は、ベルベットの傍です。
また、このシナリオは早めの完結を目指して進行します。
成功ラインに達した時点で次の章に進みます。
各章の採用人数は少なめとなります(プレイング到着順ではありません)
予めご了承ください。
それでは皆様、ご武運を。
第1章 集団戦
『アキクサさま』
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POW : ぽかぽかの風
【召喚したヒーターの熱風】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : どっちが本物?
【もう一羽のアキクサさま】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 究極の平和主義
全身を【スーパーもふもふモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
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チコル・フワッフル
★アドリブ、他猟兵との絡みも歓迎!
限定プリン!それはとっても大切だね、私も甘いもの好きだから分かるよ〜。
プリンを台無しにしちゃう前に、助けてあげないとね!
現場に着いたら【聞き耳】と【野生の勘】を頼りに、ベルベットを【ダッシュ】で【追跡】しよう!
ベルベットが見えたら声を掛けるね。
大丈夫?助けに来たよ!
あの鳥達から、あなたを守ってあげる!
アキクサさま達に出くわしたら、即座に【橙の花嵐】で攻撃!
こっちの攻撃に反応してもふもふモードになったら……逃げよう!
このモードになると動けないはずだしね。
ベルベットを抱っこし、軽やかに【ジャンプ】と【踏みつけ】でアキクサさま達を飛び越え、安全な場所まで逃げるよっ。
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎!
ベルベット様ですね。救出に上がりました
私は猟兵のユーリと申します
オブリビオンを倒すのが任務です
さあ、お下がり下さい!
背に庇う形で布陣し
熱風は『属性攻撃』風、『範囲攻撃』で押し流し
【メギドフレイム】を放射状に放ち敵のみを焼き貫く
鍵か…ベルベット様をはじめターゲットになられた方々は、文字通り何らかの鍵を握っているのだろうか?
これから何か壮大な事件でも起こるのだろうか。武者震いがするな
あ、いえ、怯えている訳ではありませんので
…プリンの袋が破けぬよう、お気をつけ下さいね。燃やしたくはありませんので!
20個か…余程プリンがお好きなのだろうな
プリンも守ってみせる!と使命感にかられる
●プリンって偉大なのです
「限定プリン! それはとっても大切だね、私も甘いもの好きだから分かるよ〜」
うんうん、と頷きながら、チコル・フワッフル(もふもふウサキツネ・f09826)は路地裏を駆けていた。ぴよ、ぴぴよ、と小さく鳥の鳴くような声だけは聞こえる。後少しだ。
「プリンを台無しにしちゃう前に、助けてあげないとね!」
たん、と積み上がっていた荷箱を蹴り上げればチコルの耳はその声をーー捉えた。
「わぁあああ来るなよ! なんで来るんだよー!」
プリンはやらないからな! と叫ぶ青のうさ耳ローブのテレビウムだ。その後ろには桃色のもっふもふした鳥たち。走るベルベットの向かう先にも桃色の鳥ーーアキクサ様の姿が見える。だが、ベルベットは真っ直ぐにその先に向かっていく。
「もしかして気がついて、ない?」
だとしたら、危ない。
「急がないと」
たん、と着地から一気に身を弾いて、チコルは壁を蹴る。兎の耳をぴん、と立てて、わぁあと聞こえたベルベットに届くように告げた。
「そっちに行っちゃ駄目だよ!」
「へ?」
素っ頓狂な声を上げて、ベルベットが足を止める。声の主を探すように、顔を上げたテレビウムは「わぁあああ!」と声を上げた。
「あ、新手!?」
プリンは、と声を上げるベルベットにチコルは首を振った。
「プリン泥棒じゃないよ」
大丈夫? とベルベットのパーカーについた砂を払ってチコルは言った。
「助けに来たよ! あの鳥達から、あなたを守ってあげる!」
「助け、に!? ほ、ほんとうですか!? 良かった、これでプリンも無事に守れる!」
ぱぁあっと嬉しそうな顔文字が浮かびそうなベルベットが、ぺたぺたと自分の顔に触れる。鍵はこのまんまか、と呟く彼の憂いを引き裂くようにピヨー! と力強い鳴き声が響いた。
「わぁああ! 忘れてた!」
「ぴっぴよ!」
ていやーっと、勢いよく突撃してきたアキクサ様に、チコルはベルベットを庇うように飛び出した。
「させないよ!」
花よ、と少女は告げる。
「全てを切り刻め!」
「ぴっぴよー!」
ぶわり、と舞い踊るは無数の花びら。キツネノカミソリがもっふもふのボディを切り裂けば、力強い鳴き声と共にアキクサ様たちがぴしっと翼を広げた。
「ぴょぴょ!」
てぷん、と揺れたのはもっふもふの羽毛か。スーパーもふもふモードに変わったアキクサ様たちがすちゃり、とポーズをとったのだ。
「な、なんだよこのもっふもふ! 動かない、のか!?」
「うん。だから」
ついつい、と手を伸ばそうとしたベルベットの腕を引っ張って、チコルは抱き上げる。
「逃げよう! ベルベット!」
「へ? う、わぁああ
……!?」
ひょい、とベルベットを抱き上げて、軽やかにチコルは飛び上がる。スーパーもふもふモードのアキクサ様を踏みつけて、飛び越えればーー誰もいない通りが見えた。
「これなら……!」
「ぴっぴよぴよー!」
「ぴよー!」
だが、アキクサ様たちとて唯もっふもふモードでいるわけではないのだ。麗しのポーズをとった桃色の鳥の向こう、もふん、と路地裏に飛び込んできたアキクサ様の増援が二人を追いかけてきていた。
「わぁああ、なんか残りの奴らが追いかけてくるし!」
「このまま、振り切れれば……!」
たん、と床を蹴り、一気に駆け出すがーーさすがに、ベルベットを抱えたままではいつもの速度は出ない。
「ぴっよー!」
「ぴっぴよー!」
「わぁああ後ろ、後ろすごい一杯飛びかかって……!」
来る、と続く筈のベルベットの声は静かな、青年の声に受け止められた。
「内に眠りし竜の焔よ。我が剣となりて、敵を穿ち焼き尽くせ!」
炎、だ。炎の剣が幾つも青年の周りに具現化していた。
「ぴよ……」
「ぴぴよん……」
ぱふん、と迫ってきた二体のアキクサ様が光となって消える。振り返った二人の前にいたのは赤茶の髪を揺らした青年ーーユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)だ。ぱち、と瞬いたチコルに、小さく瞬きーー二人の無事を確認すると、ユーリはベルベットに一礼した。
「救出に上がりました。私は猟兵のユーリと申します。オブリビオンを倒すのが任務です」
お、おう? といきなりのことで驚いているベルベットに詳細を告げている時間は、今はない。背に迫る桃色の鳥たちは、何もあの数体では無かったのだから。
「ぴよー!」
「さあ、お下がり下さい!」
背に庇うようにして、大剣を構える。ごお、と唸る熱風が届いたのはその次の瞬間だった。
「届かせはしません」
熱風に、剣をーー抜く。振り上げは、ごう、と風を生んだ。熱風が空に舞い上がり、僅かにユーリの頬を焼く。
「……」
だが、それだけだ。真紅の大剣はその身に宿す力の告げるまま、アキクサ様の熱風を払ったのだ。
(「鍵か……ベルベット様をはじめターゲットになられた方々は、文字通り何らかの鍵を握っているのだろうか?」)
この先に続く何かが。
これから何か壮大な事件でも起こるのだろうか、とユーリは思う。武者震いに、あ、あのさ、とベルベットの声がした。
「あんた、だ、大丈夫か?」
「あ、いえ、怯えている訳ではありませんので
……プリンの袋が破けぬよう、お気をつけ下さいね。燃やしたくはありませんので!」
「も、燃えるのは勘弁だよ! しっかり持っておく!」
こくこくと頷いたベルベットに、ルークは小さく笑う。彼は余程プリンが好きなのだろう。そんな彼の好物も守ってみせる、とルークは強く武器を握った。
「ぴっぴよー!」
「ぴっぴー!」
アキクサ様たちの群れは、まだベルベットを追ってきているのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
藏重・力子
耳に聞こえしは誰かの悲鳴!放ってはおけぬ!
転送されたら敵との間に割って入り、
ベルベット殿に【コミュ力】で明るく声をかけよう
「君は無事か?持ち物も無事か!?
我は君を助けに参った!
もう安心だぞ。あれは我等がやっつける、のである!」
突撃して薙刀を振るう、が……恐るべしスーパーもふもふモード!
「なんと、全く歯が立たぬ!」
暫く敵の周囲をぐるぐる回り「これはお手上げか……」
と、見せかけて、敵の背後に護符をぺたり。『七星七縛符』で解除である
続けざまに薙刀で【2回攻撃】の【なぎ払い】
「必ず救う」と【気合い】を入れて倒し切る!
「油断大敵、であるぞ!」
鍵が映ると怪人達に……?一体どのような絡繰りなのであろうかな?
●だって放ってはおけないのですから
「ぴっぴよー!」
「ぴぴよ!」
もふん、と体を大きくしたアキクサさま
が器用に路地裏を抜けてくる。ぱふん、と聞こえる音はなんだかポップで、見える桃色のもっふもっふはあまりにもふもふで魅惑的なのだが。
「ぴっぴよぴよー!」
「ぴよー!」
如何せん『迫って』きているのですから。
「うわぁあああ! まだまだ出てくるのかよ!?」
猟兵たちの背に庇われながらも、ベルベットは慌てた声を上げていた。不思議もないだろう。なにせ、通りという通りからアキクサさまたちが入ってきているのだ。
もふっともちっと。
もきゅっときゅきゅっと。
「ぴよ!」
誇らしげな鳴き声とは別に、しゅぴん、と光った瞳に、わぁああ、とベルベットは声をあげた。
「また出たー!」
「とう……!」
しゅぽん、と通りを抜け、一気に突撃しきてきた桃色の鳥を払う妖狐の姿があった。薙刀の一撃に、ぴよ! とアキクサ様の軌道が逸れる。
「ぴっぴよー
……!!」
「君は無事か? 持ち物も無事か!? 」
そんな桃色の軌道を見送って、すちゃり、と降り立ったのは藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)だった。
「もう安心だぞ。あれは我等がやっつける、のである!」
てや、と力子は前に出た。ゆらり、地面に落下してきたアキクサさまが翼を広げていたのだ。
「ぴっぴよー!」
ぴしり、と翼を広げた瞬間、もふん、とその姿が膨らむ。それはもう、もっふもふに。ふっかふかに。そうして、振り下ろす一撃がもっふもふにーー沈んだ。
「もっふぴよー!」
「なんと、全く歯が立たぬ!」
恐るべしスーパーもふもふモード!
もふん、と切っ先は沈むのに、切れた感触がないのだ。
これこそ、アキクサさまのスーパーもふもふモード。
凡ゆる攻撃に対してほぼ無敵を誇る究極の平和主義モードーーただし、テレビウムくんは確保するつもりーーだ。
「これはお手上げか……」
「ぴっぴよ!」
アキクサさまの周囲をぐるぐると周り、息をつけばちょっとばかし誇らしげな鳴き声が聞こえる。なにせもっふもふなのです。ご自慢のもっふなのです。たとえ動けなくてもこのもっふもふがあれば問題ないのです。
「ぴっぴよ」
なかった筈ーーだったのですが。
「隙あり!」
「ぴっぴよー!?」
ぺたり、力子が貼った護符に、ぱふん、とアキクサさまのもっふもふが解除される。ふわりと広がったもっふもふの体が、縮んでいくではありませんか。
「ぴっぴぴよー!?」
「油断大敵、であるぞ!」
必ず救う、と気合を入れて、力子は薙刀を振るった。切り上げる一撃から、そのまま舞うように返す刃を突き立てれば、ぱふん、とアキクサさまが光となって消えていく。
「おおおお! すげぇー!」
ぱぁっと、目を輝かせてーーいるのだろうベルベットに、力子はふわり、微笑んだ。ひとまず、これ以上慌てる様子も無さそうだ。ぴっぴよ、という鳴き声はまだ少し、聞こえてきている。ベルベットの話ではないが、一体どこから、どれだけ出てくるというのか。
(「だが……」)
次の波が、最後になると力子は思った。追いかける猟兵たちの足音も聞こえている。後少しで、アキクサさまたちを追い払うことはできるだろう。だがそうなれば、残るのは『疑問』だ。
(「鍵が映ると怪人達に……? 一体どのような絡繰りなのであろうかな?」)
狙われているのは確か。
映った鍵が理由の可能性はーー高いだろう。
だが、それは何故なのか。
理由を知るためにも、次の波に力子は備えた。
大成功
🔵🔵🔵
ショコ・ライラ
よーしよくやったっ
《Jazzy Draw》──駆け付けざまに神速の【クイックドロウ】で鳥を射撃、注意をこちらに向ける
プリンを守り抜いてくれた嬉しさのあまり、普段ののんびりした笑顔より更に顔を綻ばせて登場
そのプリンは貴方のしあわせそのもの
それこそが私というヒーローが守りたいもの
嬉しい。それでこそ力の振るい甲斐があるってものさ
さあ──ここからは私の時間
インコの攻撃を【フェイント】をかけて【見切り】回避
即《Jazzy Draw》で【カウンター】
もう一羽現れようが、一息で二羽とも撃ち抜けばいい
無敵モードになられても、動いた瞬間を【見切り】即座に攻撃するだけさ
私はヒーロー
しあわせの味方、だよ
筧・清史郎
期間限定先着のプリン、か
それは、入手までもきっと努力をした事だろう
ベルベットは勿論、プリンも必ずや守らねば(超甘党
まずは、ベルベットを安心させねばだな
「突然の助太刀、失礼する。俺は筧・清史郎、ベルベットとプリンを助けるため馳せ参じた」
「俺も甘いものは好きだ。ベルベットもプリンも守ってみせよう」
甘いものは正義だ
同じ甘味好きであれば、きっと分かりあえるはず(微笑み
アキクサさま、か
もふもふで愛らしい見目ではあるが
「俺のひよこブレイドももふもふだ」
ベルベットを庇うよう位置取り
スーパーもふもふモードが解けた隙を窺い【空華乱墜】を
鍵の件も気になるな…
それに、もふもふモードの際、もふもふはできるだろうか…?
終夜・嵐吾
期間限定プリン…それはわしも気になるところ。
あ、欲しいとかは言わんぞ。そういうのは自分で並んでゲットしてこそ、じゃから!
それはさておき。
まずはそう、プリンもベルベットも助けるのが先決じゃな。
逃げる様を探して、追いついて。安心してほしいと一言声を。
落ち着いてプリンを食べられる場所まで行こ!
そこまでわしらが守ってみせるからの。
もふもふの…鳥……
いや、わしの尻尾のほうがもふもふじゃな!
しかし可愛い見た目、あんまりひどくするのもなぁと思ってしまう。
虚の主を花弁と変えて、相手をしてもらおう
……花弁と戯れる、もふもふ…!
くっ、この光景は……なかなか……!
だがわしは心折れぬ、もふもふよ覚悟せいよ!
●プリンってすごいのです
「ぴよー!」
「ぴっぴよー!」
路地裏は怒涛のもふタイムを迎えていた。桃色のもっふもふ魅惑のぼでぃことアキクサさまで溢れていたのだ。勿論、猟兵たちの活躍もあり当初よりはその数も減ってきている。通りにみっちみちなアキクサさまとか。ちょっと詰まって切なそうな顔をしているアキクサさまとか。勢いよく飛んでみたは良いけど、あ、どうしよ。みたいなアキクサさまたちの姿は見れなくなってはきたのだがーー。
「ぴっよもふぴよー!」
「ぴよぴよ言えば良いわけじゃないからなー!」
テレビウムのベルベットのメンタルが、ちょっと限界ぽかった。
「ぴっぴよぴぴよー!」
てや、と桃色の羽を広げたアキクサさまの後ろ姿と、ベルベットの声が耳に届いていた。絶対やらないからな、とベルベットが抱きしめているのは件のプリンが入った袋だろう。
(「期間限定先着のプリン、か。それは、入手までもきっと努力をした事だろう」)
瞳は、僅かに憂いを帯びていた。藍の髪を揺らし、考えるように唇に指先で触れた男は、はたと衣を揺らす。
「ベルベットは勿論、プリンも必ずや守らねば」
筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は超甘党であった。
「突然の助太刀、失礼する。俺は筧・清史郎、ベルベットとプリンを助けるため馳せ参じた」
抜き払いの一撃が、滑空するアキクサさまを両断した。きらきらと、淡い輝きと共に消えたもふもふインコの向こう、とん、と地に降り立った清史郎は、ベルベットと視線を合わせると微笑んで告げた。
「俺も甘いものは好きだ。ベルベットもプリンも守ってみせよう」
「……! あんたも甘いもの好きなのか。そっか、やっぱ、良いよな。甘いの。プリンもさ、ほんと美味しいやつで……!」
て、言っても俺も、限定のは食べたことないんだけど。と苦笑する。
「でも、やっぱあそこのプリンはほんと最高なんだ」
「期間限定プリン……」
そんなベルベットの熱弁に、そわ、と尻尾を動かす男の姿があった。
「プリン、だけど」
おずおずと告げたベルベットに、あ、と終夜・嵐吾(灰青・f05366)は、顔を上げる。ぱ、と明るくなった顔は、整っているのにどこか子供っぽさを見せる。
「欲しいとかは言わんぞ。そういうのは自分で並んでゲットしてこそ、じゃから!」
それに、安心してほしい、と嵐吾は言った。その安心がプリンにかかっていないことは、ベルベットも良く分かったのだろう。柔く落ちた一言に、清史郎の微笑と嵐吾の笑みにベルベットは、こくり、と頷いた。
「あぁ、分かったよ」
「ん。落ち着いてプリンを食べられる場所まで行こ!」
そこまでわしらが守ってみせるからの。
ーーそう、嵐吾が告げた瞬間、影が落ちた。見上げれば、もっふもふの塊ーー基、アキクサさまがご自慢の羽を広げて落ちて、来ていた。
「さすがの勢いじゃな」
よっと、と嵐吾が滑空を交わす。払う足でぺしょん、と転がったアキクサさまの着地がずれる。三体、続けてくるのか。ぴっぴよー! と力強い鳴き声とともにアキクサさまたちが狭い通路に並びーー。
「もっふぴよ!」
「もふぴよ!」
すーぱーもふもふモードを展開したのだ。
それは、ご自慢のもふもふふかふかを披露する形。風を溜め込んでか。もふっとふかっと大きくなったアキクサさまはもふもふでーー完璧、なのだ。
(「アキクサさま、か。もふもふで愛らしい見目ではあるが」)
ふむ、と清史郎は思う。隙が無い訳ではない。打ち込めはするだろう。だが、刃は届くまい。崩すべき線というものが見えては来ない。ならば、アキクサさまたちのポージング解除を待つのが良さそうだが……。
「もふもふ……」
触れるのだろうか、と思う。ぺたり、とちょっとした気持ちで手を伸ばせばーーそう、伸ばしてしまえばーー……。
「もふもふだな……」
「せーちゃんも、もふもふを堪能してるの」
もふもふの……鳥、と嵐吾は思う。
もっふもふでふかふかでぴよぴよ。
「いや、わしの尻尾のほうがもふもふじゃな!」
てしん、と妖狐の尻尾で地面を叩けば、もふぴよ! とアキクサさまの声が耳に届く。
「ぴっぴよぴよ!」
「ぴよ!」
必殺のもふもふポーズでなくても、可愛い見た目にあまりひどくするのも、ちょっとあれだ。
「――頽れよ」
右の目に触れて、嵐吾は囁く。ふわりと舞うのは嘗て慈しんだ季節の花々。虚の主が姿を変え、舞い上がった花弁たちがアキクサさまに触れた。
「ぴっぴよー」
「ぴっぴ!? ぴよよ?」
そうして出来上がったのは花弁と戯れるもふもふの図。時々、ぴひょ? とぱふん、と消えたりするけれど、やっぱりどこまでもーー。
「くっ、この光景は……なかなか……!」
かわいい、のだ。
「だがわしは心折れぬ、もふもふよ覚悟せいよ!」
てしっと、指差した男の横、もふもふターンを終えた清史郎も刃を抜いていた。
「俺のひよこブレイドももふもふだ」
「ひよこブレイド!?」
声をあげたのは背に庇われていたベルベットだ。まじだ! ツッコミ追いつかない! と叫ぶあたり、存外、彼も一周回って元気になってきたのかもしれない。
「舞い吹雪け、乱れ桜」
ぴぃぴぃぴよぴよ。
可愛いひよこさんの意匠と共に、舞い散る桜がアキクサさまたちを包みーー消していく。飛び上がるようにたーん、とジャンプしたアキクサさまが光となって消えれば奥に見えた二体がーー最後か。
「来るよ!」
「ーーえぇ」
そこに、応えたのは琥珀の髪を揺らす娘。
「よーしよくやったっ」
ショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)だった。
パーン、と神速のクイックドロウが、アキクサさまたちを撃ち抜く。ぴよ、と意識は、完全にショコへと向く。広がる翼を視界に、ふ、とショコはベルベットに笑みをみせた。それは、普段ののんびりとした笑顔より更に顔を綻ばせたもの。だって、ベルベットはプリンを守り抜いてくれたのだから。
「よく、やった……?」
「えぇ。そのプリンは貴方のしあわせそのもの。それこそが私というヒーローが守りたいもの」
嬉しい、とショコは微笑む。
「それでこそ力の振るい甲斐があるってものさ」
リボルバー型のビームキャノンを構えて、ショコは不敵な笑みを戦場へと向けた。
「さあ──ここからは私の時間」
「ぴっぴよー!」
「ぴよー!」
残るアキクサさまたちの突撃に、身を飛ばす。たん、と蹴り上げた先、間合いを詰めたのはフェイントのため、だ。足先で影に触れ、真横に身を振るった先で銃口を向ける。
「ふっふふーん?」
どんな体勢からでも、ショコは撃てるのだ。それこそ、彼女が彼女たる事実。一撃、撃ち込めば、ぱふん、と消える。続けざまに向けた先で、すちゃり、とアキクサさまが手を広げていた。
「ぴっぴよー」
「ぴよんー!」
数が、増えていた。
もう一羽のアキクサさまが、協力するように真横に立つ。だがその瞬間、迷うことなくショコは銃口を向けていた。踊るように踏み込んで、軽々と愛銃を持ち替えて撃ち抜けばーーぱふん、と光となって、アキクサさまが消える。
「すげぇ……」
思わず、ベルベットがそんな声をあげていた。ぽかん、と見上げる彼に、ショコはふ、と笑う。
「私はヒーロー。しあわせの味方、だよ」
そうして最後のアキクサさまを、光に変えた。
●そうしてこうしてどうなった
ひとまず、これ以上の追っ手は現れないようだ。耳を澄まし、音を探った猟兵たちが一先ずの平穏を告げれば、ベルベットは安心したように息をついた。
「よ、良かったぁぁああ……ほんともう、ダメだと思って。俺。あの、皆さん、ほんとにありがとうございます……!」
ぶん、と頭を下げたそこで、チカとベルベットの顔がーー光った。小さな明滅。へ、と落ちたベルベットの声が驚きに変わる。
「変な点滅始まったー!?」
テレビウム・ベルベットの顔に映る鍵が、何処かを指し示すように細い光を放ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『邪悪な仮面』
|
POW : 怪光線
レベル×5本の【闇】属性の【光線】を放つ。
SPD : 闇影の鎖
【自身の影】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ : 暗黒の力
予め【邪悪なオーラを纏う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
|
●行き先何処何処?
「え、え? なんだよこれ。どこかを指してるの……か?」
アキクサさまたちのもっふもふな猛攻を退けた後、一つの変化が起きていた。
テレビウム・ベルベットに顔に浮かんだ「鍵のような映像」が小さく点滅していたのだ。淡く溢れる光は細い線になりーーどこかを示すように、向く。
「この先に行けってことなのか……? ううう、こうなった何処にだって行ってやるよ! 平穏無事にプリンを食べる俺の日常を取り戻すために!」
あと、俺の顔! と叫ぶベルベットに頷いて、猟兵たちは路地裏を抜けた。大通りは分かりにくかったが「鍵のような映像」が指し示す方向は、大通りから一本、抜けた先にあるらしい。
「あそこのプリンがさ、さいっこうなんだよなぁ……」
少し前まで並んでいたというプリン屋の横を抜け、少しひらけた通りに辿り着けば、カチカチと明滅した鍵が、その先を示す。幅の広い十字路だが、示した先はーー……。
「このまま、えっと……左っぽいな。よし……」
行こう、と言いかけたその時、空間が歪んだ。陽炎にも似たそれに、来ると猟兵であれば告げただろう。ベルベットを庇うように立った猟兵たちの前に、ひとつ、またひとつと仮面が現れる。空間を歪ませ、そこから滲み、浮き上がるように。
「リィイイイイイ」
甲高く、奇怪な音と共に邪悪な仮面が通路を覆う。無理に突破はできない。倒し切らねばきっとーー守れない。
新たな追っ手を前に、再び、守るべき戦いが始まろうとしていた。
ショコ・ライラ
ふふふ。なんだか皆でプリンプリン言ってて面白いね
日常とその延長線上にある幸せ、それを守ることの大切さ
皆、同じ気持ちでいるんだなって分かって、嬉しくなるね
さて
いっぱい来るから、大事に守るんだよ、そのプリン
《エコー……》私の心の中に静かに広がる残響の波紋に五感を澄ませる
響くほどに研ぎ澄まされていく、そんなイメージで
…さあ、今の私に見切れないものはない
その影も、そもそも当たらなければ効果は発揮しないだろう
攻撃を【見切り】【残像】と共に回避しつつ、即座に【クイックドロウ】で【カウンター】
ベルベットくんを逃げ回らせることすらしない
只管に迎え撃ち、叩き落としていってやろう
…走り回るとプリン崩れちゃうからね
●幸せの先にあるもの
「ふふふ。なんだか皆でプリンプリン言ってて面白いね」
ショコ・ライラは吐息を零すように笑った。心に広がる柔らかな暖かさはーー嬉しいから。
(「日常とその延長線上にある幸せ、それを守ることの大切さ。皆、同じ気持ちでいるんだなって分かって、嬉しくなるね」)
ベルベットもーー彼の大切なプリンは無事だ。追いかけ回されるのも二度目になれば、困惑よりもツッコミの方が鋭い。
「なんだよ仮面って。半分とかカッコつけてんのかよ!」
びしぃっと指差しつつも、リィイイイ、と甲高く邪悪な仮面が音を響かせればプリンの袋を抱く。ひょこひょことウサミミフードを揺らしながらも、戦うのか、と声がした。
「えぇ」
「また、怪我するかもしれないじゃんか」
それは、ひどく純粋な心配だった。猟兵たちの腕を信じていない訳ではない。ただ、ベルベットというテレビウムが自分を助けてくれた猟兵たちを傷つけたくないという想い。
「俺の顔にこんなの出ちゃって。そりゃ、助けてくれるのはありがたいし、このままで終わるのも癪だから謎解きしたいけどさ。怪我、するのは……」
「ーーえぇ」
大丈夫、と告げる代わりにショコはそう言った。言ったでしょう? と少し前、彼に出会った時の言葉をなぞる。
「そのプリンは貴方のしあわせそのもの。それこそが私というヒーローが守りたいもの」
「あ……」
ぽつり、と落ちた声にショコは笑う。
「さて。いっぱい来るから、大事に守るんだよ、そのプリン」
腰の銃を抜いて、ショコは顔を上げる。
「感覚で、確かめて」
心の中に静かに広がる残響の波紋に、ショコは五感を澄ませる。響く程に研ぎ澄まされ、謳う仮面たちの音が、光が、ショコの目にーー見えた。
「……さあ、今の私に見切れないものはない」
「リィイイイイイ!」
宣言に、反論を告げるかのように邪悪な仮面が蠢いた。浮き上がった仮面そのものが、震えるように見えたのは空間に作用したのか。鈴の音に似たそれが、敵意を告げるのを理解してショコは笑った。
「その影も、そもそも当たらなければ効果は発揮しないだろう」
「リィイイイイ!」
ひゅん、と地面を影が走った。蛇のように畝り、だが穿つ一撃ほどの速さを持ってきたそれにショコは身を、逸らす。片足を引くだけの軽い躱し。『見えて』いるのだから、動きは最低限で済みーーそして、返す一撃に繋げられる。
「ーー」
「リィイイイギイイイ!」
ガウン、とカウンターからの一撃が、邪悪な仮面を撃ち抜く。ギィイイ、と軋む音を響かせ、ガシャンと仮面が崩れ落ちれば、その隙間を縫うように次の一体が近づいてくる。
「リィイイイ!」
「ーー」
その音に、敵意に満ちた視線にショコは敵の群れを正面に捉えた。ベルベットをにげまわらせることすらさせない。只管に迎え撃ち、叩き落とす心で敵の斜線を読む。
「……走り回るとプリン崩れちゃうからね」
ふ、と小さく、笑うようにショコは笑うように告げた。
大成功
🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と
進むには――目の前の敵は倒してしまわんといかんの
せーちゃん、共に参ろうか
全部終わったら、限定は無理じゃけどどっかにぷりんたべに行こ!
目の前に現れる仮面は――燃やしてしまお
狐火を掌の上で燻らせ狙いを付ける
仮面じゃから……燃えるじゃろ? 燃えんかの?
まぁ、ダメだとしても、せーちゃんが後詰めしてくれるじゃろう
そんなわけで狐火を手もとにいくつか作り上げ構える
数が多いなら、こちらも手数多くしていくべきじゃろ
いくつでも燃やしてあげよ、わしの炎は尽きんからの
今日もせーちゃんの一撃は冴えとるの
わしも負けんように、燃やしつくそう
数では決して圧することなどできんぞ
筧・清史郎
らんらん(f05366)と
示す先には、何があるのだろうか
だがそれを知るには、一筋縄ではいかぬようだな
行く手を阻むのであれば、斬るのみ
(らんらんの言葉に)プリン…あぁ、それは良い
いざ参ろう、らんらん
プリンのためにもな(超甘党
引き続きベルベットとプリンの守護を最優先に
戦闘開始時は、回数重視【桜華葬閃】で数を減そう
らんらんの炎で燃やせぬものあれば、討ち漏らさぬよう叩き斬る
数が減ってくれば、確実に倒すべく、命中率重視【桜華葬閃】で斬っていく
怪光線の気配あれば、残像を駆使し見切り躱すか、扇で薙ぎ払おう
らんらんの狐火も、今日も鮮やかで美しい
扇から巻き起こすこの桜吹雪で、更にその炎を激しく燃え上がらせようか
「リィイイイ」
「リィイイイイ」
ギィイイ、と鈴の音の中に、軋む音を筧・清史郎は聞く。鈍く響く音色は、鈴に似たりぃい、と歌う音色とは違う。あれが澱めばそうなるかと言われればそれもまた違うだろう。そうこれは……。
(「軋む鍵の音だろうか」)
錠前に差し込んだその時、軋む音。
音の主はあの仮面からだろうがーーさて、その理由がベルベットの顔に映る鍵に関係があるのかどうか。今、確実に分かっているのは、ベルベットの「鍵」が何処かを指し示しているという事実だけだ。
「示す先には、何があるのだろうか」
唇から零れ落ちた言の葉は、僅か、問いを滲ませていた。解を求めるとは少し違うそれを乗せ「だが」と清史郎は瞳を前へと向ける。
「それを知るには、一筋縄ではいかぬようだな」
「リィイイイ」
響くそれは警戒の印か。
ふわふわと浮くのではない。その空間を滑るように仮面は来る。腰の刀に手をかければ、風が抜けた。
「行く手を阻むのであれば、斬るのみ」
「進むには――目の前の敵は倒してしまわんといかんの」
静かに、ひどく静かに落ちた友の声に、柔く妖狐の声が落ちる。ゆるりと笑いーーだが琥珀の瞳は真っ直ぐにこちらを囲もうとする仮面たちを見据えていた。この手の戦いに、多少なりとも覚えがあるのかーーだが、匂わせることもないままに終夜・嵐吾は傍を見遣った。
「せーちゃん、共に参ろうか」
目があったそこで、ふ、と嵐吾は笑みを見せた。
「全部終わったら、限定は無理じゃけどどっかにぷりんたべに行こ!」
「プリン……あぁ、それは良い。いざ参ろう、らんらん」
プリンのためにもな。
美味しいプリンに美味しいお出かけ。
それが決まったのだからーーさぁ、あとは。
「斬る」
「りぃいいい!」
鈴の音が、響いた。
鈴など何処にも見えないというのに『あれ』はその音を零し、迫ってくる。
「――燃やしてしまお」
狐火を掌の上で燻らせ、ふ、と嵐吾は笑う。敵意、だ。殺意よりは敵意が強いのは、清史郎が背に庇ったテレビウムが狙いであるからか。
「仮面じゃから……燃えるじゃろ? 燃えんかの?」
まぁ、と嵐吾は息をつく。迫る仮面を前に、動揺ひとつ見せぬままに。
「ダメだとしても、せーちゃんが後詰めしてくれるじゃろう」
掌で揺れる狐火に、吐息で触れーーするり、と仮面へと向ける。払うような腕の動きに、迫る仮面の群れが炎に包まれた。
「リィイイイイ!」
ギィイ、と狐火の奥、焼け残った仮面が瞳の色を変じる。邪悪なオーラを纏い、気配を変えた仮面に、ゆらり、と身を揺らしーー前に、飛ぶ。
「リィイイ!?」
仮面の影が伸びる。嵐吾の腕を擦りーーだが、その先が、影の先が『消えていた』
燃え落ちて、いたのだ。
「リィイイギィイイイ
……!?」
軋む音を響かせ、邪悪な仮面が砕け散る。破砕の音を見送る間もなく、滑り込む仮面に嵐吾の手元で狐火が踊る。
「いくつでも燃やしてあげよ、わしの炎は尽きんからの」
揺らぐ炎の向こう、灰青の毛並みが見えた。指先が熱を操り、軽い身の振りで一撃を交わす。その背に一体、迫る仮面はあの炎を抜けてきたのか。
「首を狙うか」
ならば、と告げる声は無かった。ただ、清史郎は踏み込む。たん、と足音は短く、瞬発の加速からーー抜く。
「ーー」
「リィイイイギィイイ!?」
深く沈み込み、放つ居合の一撃が仮面を斬り裂いた。破砕音の向こう、ぴこん、と耳を揺らした嵐吾が笑みを見せた。
「おお、せーちゃん」
「なに、後ろに無粋ものがいてな」
閃き散れ、と抜き払ったままの刃に告げる。
桜の意匠が凝らされた蒼き刀。
淡く色づくのは、差し込む日の光にかそれとも清史郎の紡ぐ言の葉にか。
「黄泉桜」
ヤドリガミたる青年の紡ぐ言の葉は、ひとつの力を解放させる。蒼桜綴を握り直せば、邪悪な仮面が威嚇するように、高くーー鳴いた。
「リィイイイ!」
叫びに似たそれに、清史郎は踏み込む。空を滑る仮面とて、刃からは逃げられはしない。ぶつかるように伸びてきた黒はーー影か。た、と身を振る。残像が残りーーそこを射抜いた仮面が、瞬間、清史郎を見失う。一瞬だ。だがその瞬間を逃さない。真横から迫った清史郎の薙ぎ払いが、仮面を両断する。真っ二つに割った先、迫るもう一体に、手を返しーー切り上げる。
「リィイイイ!」
「ーー」
瞬間、感じたのは熱であった。友が操る狐火とはあまりに違う熱。来る、と感じたそれに、空いた手が、舞う。
「さすがは、せーちゃんじゃな」
怪光線を真横から受けた清史郎の手には扇があった。影ひとつ、払うように一撃を薙ぎ払い、散った光の向こうで赤の瞳が仮面を見据えーー払う。
「今日もせーちゃんの一撃は冴えとるの。わしも負けんように、燃やしつくそう」
狐火が、ぽぉ、と浮き上がる。ひとつ、ふたつ。手元に狐火を寄せて、迫る仮面へと嵐吾は向ける。
「数では決して圧することなどできんぞ」
「リィイ、ギィイ……!」
破砕の音が響く。熱の向こう、飛び込もうとする仮面を狐火が追う。
「らんらんの狐火も、今日も鮮やかで美しい」
楽しげに一つ笑い、清史郎は告げた。
「扇から巻き起こすこの桜吹雪で、更にその炎を激しく燃え上がらせようか」
ひらり、扇を揺らす。ひとさし、舞を見せるように。風が起きる。木々が揺れーーその力の奔流に嵐吾は笑い、狐火を呼ぶ。誘うように、灰青の妖狐は告げーー戦場は、桜花と狐火に包まれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動
アドリブ大歓迎
まさか偶然チコルと居合わせるとはな
やはり私たちは赤い糸で繋がって…いや、何でもない
時にベルベット様。そのプリンですが
焼きプリンにしても美味しいのでは?戦いの後に試してみませんか?
などと軽口を叩きながら炎霆(槍)を構え力強く振り回す
仮面が如何に群れようとも、全て叩き落とせば良いだけの事!
【メギドフレイム】!
怪光線を相殺するかの如く
真っ向から炎の剣をぶつけ、仮面の目の破壊を試みる
取りこぼした光線は『オーラ防御』を纏った腕で受け、弾き
接近する敵は、炎霆に『属性攻撃』炎を乗せ、『串刺し』にする
チコルのダガーも頼もしいな
死角を補い合いカバーし合って敵を撃ち落とす
チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡みも歓迎!
さっきはありがとね!
私もユーリが来てるの知らなかったから、ビックリしちゃった!
えっ、赤い糸くず?どこどこ?(自分の服を確認する)
……あっ、今のがプリンのお店!?覚えておこっと!
厄介そうな敵がいっぱい!
ベルベットのプリンと顔の為に、頑張るよ!
敵の攻撃は【野生の勘】と【聞き耳】で予測を立てながら、【ジャンプ】や【ダッシュ】を使って【見切り】、回避を試みる!
避けながらも【空中戦】を駆使してダガーを【投擲】したり、【シーブズ・ギャンビット】で斬りつけるよ!
もし敵の攻撃が当たって、攻撃が禁止されたら……ユーリの応援をする!
ユーリ、やっちゃえ〜!
●あかい いと
斯くして、話は、少しばかり前に遡る。
これはまだ、テレビウムのベルベットと一緒に街を捜索した頃の話だ。
「さっきはありがとね!」
偶然の再会、というものはこの世に存在するらしい。そうユーリ・ヴォルフが思い知ったのは、路地裏でほんの偶然、チコル・フワッフルと出会ってのことだった。別段、何をどう別れたという訳ではない。テレビウムの顔に「鍵」が出たという事件の依頼を受けたらーー出会ったのだ。ーー彼女に。
「まさか偶然チコルと居合わせるとはな」
ぴん、とたった兎の耳が揺れる。ふわりと柔らかな髪が風に揺れるのもそのままに、チコルは、ほんとに、と頷いてみせた。
「私もユーリが来てるの知らなかったから、ビックリしちゃった!」
偶然に出会う確率は、果たしてどれだけあるのだろうか。否、そこに見合いの言葉も一つ存在する。運命というそれ。
「やはり私たちは赤い糸で繋がって……」
「えっ、赤い糸くず? どこどこ?」
思わず、口をついて出た言葉に、ぱたぱたとチコルが自分の服を確認する。ほつれちゃったかな? とぱたぱたくるくるする姿は可愛いのだがーー。
「いや、何でもない」
ちょっとだけ、そうちょっとだけ切ないような気もした。
「……あっ、今のがプリンのお店!?覚えておこっと!」
「……お、おう! いや、おうなんだけどさ。すっげぇ上手いのは良いんだけどさ!」
これに戸惑ったーーというよりは八割ほどテンパったのがベルベットだ。いいのかよそれで、とは流石に言い切れずに。右に左に見上げて悩んだ先ーー「あ、向こうに光ったよ」というチコルの言葉で行く先が決まったのだった。
●斯くして時は戻る
「リィイイイイ!」
「わぁあ、なんで仮面が浮き上がって来るんだよ!」
しかも浮くとか! と叫ぶベルベットの前にユーリは出る。背に庇うように立ってくれている猟兵もいる。此処は前に出て数を減らすべきだろう。
(「最初の遭遇時に比べれば数は減ってきていますね」)
炎霆を手に、迫る仮面を見据える。
「時にベルベット様。そのプリンですが焼きプリンにしても美味しいのでは? 戦いの後に試してみませんか?」
「へ? え? い、いやだめだろ。これはこのプリンで最高の形なんだから……!」
「成る程」
ふ、とユーリが笑ったそこで、ベルベットが、は、と顔を上げる。
「その、なんか……ありがとな。落ち着いた」
「ーーさて」
ふ、と落ちる吐息は笑みを滲ませる。そんなユーリの姿を見ながら、チコルも笑みを零した。
「うん。大丈夫だよ」
何が、とは詳しくは言わない。でも、笑みを見せたチコルに、まだ自分の表情は戻らないままのベルベットが頷く。
「さぁ、厄介そうな敵がいっぱい! ベルベットのプリンと顔の為に、頑張るよ!」
いくね、とチコルは告げる。た、と飛び込む娘が、足裏で地面を捉えれば踏み込みは加速する。飛ぶように、前に出れば仮面も追いかけて来る。あちらには間合いなど関係ないのか。
「りぃいいいい」
鈴の音が高く響き、ひゅん、と影のような黒が飛ぶ。その軌道に、地を滑る音にチコルは身を横に飛ばす。瞬発の移動。ざ、と飛んだ先で足を止めたのは一撃のため。
ひゅん、と放つのは投擲用の短剣だ。仮面の額を破る一投に、ガシャン、と破砕の音が響く。
「リィイギィイイイ
……!?」
「わ、すごい音!」
兎の耳が拾い上げたのは、鈴の音とは遠いものだ。壊れたからか、それとも何かがあるのか。首筋、感じた気配に反射的に身を飛ばす。
「影……!」
ダガーで砕けきれなかった仮面か。這うように来る影に、チコルは身を空に飛ばす。高い跳躍。空でくるりと身を回す彼女が、再びダガーを構えるのを見ながら、ユーリは炎を呼ぶ。
「仮面が如何に群れようとも、全て叩き落とせば良いだけの事!」
追いすがるように上を向く仮面に、ユーリが切り込む。振り上げるその軌跡が熱をーー帯びた。それは、ユーリの炎から具現化し武装する槍。炎を纏いし巨大な魔槍。
「メギドフレイム!」
「リィイイイイイ!?」
穿つ、一撃が炎を生んだ。ごぉおお、と突き抜ける熱を帯びた一撃に、仮面が砕け落ちる。破砕の音だけが響くのは、熱の強さか。揺れる大気の向こうーー何かが、見えた。
「ユーリ!」
「あぁ」
警告は空から。続けざまにダガーを当確したチコルが、街路灯を蹴り上げて空中で弧を描く。着地の先、構えられたダガーを視界に、ユーリは紡ぐ。揺れる空気の向こう見えたのは光。仮面の光。ならばあればーー仮面の放つ、一撃だ。
「内に眠りし竜の焔よ。我が剣となりて、敵を穿ち焼き尽くせ!」
ぶわり、と立ち上がったのは無数の炎の剣。
炎霆の構えた先、放たれる一撃を相殺するように炎の剣がーー放たれた。
「リィイイイギィイイイ!」
「ーー」
流石に、全ては砕ききれずに、弾けた光をオーラで受ける。払う腕に浅い傷はあったがーーだがそれだけだ。破砕音と共に砕け散った仮面の向こう、飛び込んでくる仮面に炎を乗せた槍を向ける。
「ユーリ、すごいね」
「チコルのダガーも頼もしいな」
擽ったそうに笑い、頷いたチコルがあのね、とダガーは手にしたままで告げる。
「変な音がしたんだ。さっき、仮面を倒した時、鈴みたいな音でも、硝子が壊れる見たいのでもないやつ」
「あぁ、そういえば違っていたかもな……」
思い出すように頷いたユーリに、チコルは顔を上げる。
「あれ、多分。あの音がするともう、出てこないってことだよ思うんだ」
この仮面が、浮き上がってこない。
事実、チコルが倒した中であの音を聞いた仮面のいた場所からは追加の仮面が出て来てはいない。さっきまで路地裏で戦っていた鳥とは違うタイプの集団戦ではあったが、確かに、出て来ていない場所がある、とユーリは思う。
「あの音がしないときは、追加があると思っていた方が良さそうだな」
「うん。それでも、随分減って来てるし」
あとちょっとだね。とチコルは微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
藏重・力子
はて。ベルベット殿は、どこかへと導かれているのか?
一体全体どうなって……と、新手が来たか
退く気はない、負けるものかと己を【鼓舞】して、戦闘である!
「兎にも角にも倒すのみ! 藏重・力子、罷り通る!」
禍々しいものを感じる仮面であるな……
敵の攻撃は、動きをよく見つつ【第六感】を働かせて【見切り】、
回避をしながら『フォックスファイア』だ!
狐火を敵に向けて飛ばし、必要な分だけ数を増やして火力を上げてゆき、
【破魔】の気も込め、邪悪なオーラを塗り替えるが如く、
敵本体ごと我の紅色の炎で覆って、燃やし尽くすのである!
「浄化してくれよう!」
彼を守り、菓子を守り、謎も解けねば心が晴れぬ
この先に答えがあるのだろうか?
「リィイイイイ」
「リィイイイイ!」
ぎぃいい、と間に鈍い音を響かせ、仮面が崩れ落ちる。破砕の音を耳に、放たれる影を藏重・力子は避ける。術式を奪う影ではなくーーあれは、通常の攻撃にも使うのか。
そんなものが、どうしてベルベットを追って来たのだろうか。
(「はて。ベルベット殿は、どこかへと導かれているのか?」)
一体全体どうなって……、と考えているだけの時間は、どうやらくれないらしい。
「新手が来たか」
浮き上がる仮面が、追加で四体。残っている仮面もあるがーーだが、他の猟兵たちも順調に仮面の数を減らしてくれている。
(「退く気はない、負けるものか」)
己を鼓舞し、力子は拳を握る。
「兎にも角にも倒すのみ! 藏重・力子、罷り通る!」
その宣言に、リィイイイ、と仮面たちがーー叫んだ。
「リィイイイイイ!」
甲高く響く音と共に、浮かぶ仮面が滑り込んでくる。間合いなど気にしないのか。至近に迫る相手に、力子は身を飛ばす。伸びる影を逸らす身で良ければ、妙な冷えを感じた。
「冷気を帯びるのか……? 禍々しいものを感じる仮面であるな……」
影は隠か。
浮かぶ仮面の動きを読むよりは、攻撃方法を掴む方が早い。続けざまに来た影の波が、穿つ矢の雨を見せれば落ちるそこよりも先にーー力子は、いく。
「リィイイイ!?」
飛び込めば、放つ一撃の無い仮面の群れ。返す一撃が、追いすがる影が迫るのを視界に収めながら力子は狐火を呼ぶ。破魔の気を込め、邪悪なオーラを塗り替えるが如く。
「浄化してくれよう!」
紅色の炎が、ごぉおおお、と唸った。その熱に、勢いに、仮面が砕けていく。
「リィイイギィイイイ!?」
破砕の音を響かせ、鈍く落ちた音が抜ければ影さえ地面には残らない。
「リィイイ!」
「リィィイイイ!」
残る仮面は、最早数体。背後を桜と炎が散らし。先の仮面を迎撃の銃弾が撃ち抜く。続けざまに放たれるダガーと共に踊る炎の剣が、焼き尽くし砕き切ればーー最後の一体が見えた。
「これで終わりであろう。炎よ……!」
それは、力子の母直伝のピンクがかった紅色の狐火。燃やし尽くさぬ訳などーー無いのだから。
「リィイギィイイイ!?」
飛び込む、仮面が熱に耐え切れずに砕け散る。纏うオーラでは身を守り切れなかったのか。砕け散る姿を見送りーーふ、と力子は息をつく。
(「彼を守り、菓子を守り、謎も解けねば心が晴れぬ」)
この先に答えがあるのだろうか?
鍵に地図。
疑問ばかりが膨らむ道程の先には何が待つのか。
何が起きようとしているのか。
全てを見届けるため、猟兵たちはベルベットと共に進み出す。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ギヴ』
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POW : あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD : しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●テレビウム・ロック
アキクサさまの群れから始まり、邪悪な仮面の追撃を払いーーテレビウム・ベルベットの顔に映った『鍵』に導かれた猟兵たちがたどり着いたのは、何の変哲も無い貸し倉庫街だった。
「……お店の倉庫かな?」
「一般人も普通に使うようだが……」
ひどく『普通の』が似合う倉庫。どれもがシャッターが下りた状況で、だがよく見れば使われていない場所の方が多いだろうか。一般的にはもう少し使用されているべきなのか、それともーーこれくらいのものであるのか。深く考えようとすれば何処までも『それ』を『理由』にできそうで、猟兵たちは一度思考を止める。
そうして、気がついたのだ。
「ベルベット……?」
猟兵のひとりが名前を呼ぶ。
おしゃべりだった彼の声が、消えていたのだ。は、と振り返った瞬間、その「変化」は起きた。
「ーー」
光だ。突然、テレビウム・ベルベットが光りだしたのだ。
「あ、ああ」
声が漏れる。そこに意識は感じられずーーだが、違う気配を猟兵たちは感じ取る。
「……」
それは、人の姿をした『何か』であった。バレリーナのような風貌に、頭部にはメリーゴーランドめいたカラクリが乗る。カラカラと回る木馬に、ほんの一瞬遊園地を思い出したものがいるかもしれない。同時にそれが「引き込まれそうになった」と感じたものもいるだろう。
オブリビオン・ギヴ。
キラキラと、オルゴールの音を響かせ、くるりと回る。隔絶を告げるはさみを揺らし、空間と意識を歪ませるような敵こそがーー最後の相手か。
光りだしたベルベットは動けない。
ならばーーもう、ここで守るしか無いのだ。
*------------------------------------
秋月諒です。
ご参加いただきありがとうございます。
第三章のみ、補足の情報となります。
突然光りだしたテレビウム・ベルベットは、光りがおさまるまで15分程この場から動くことができません。
追いかけてきた敵のボス『ギヴ』とこの場での戦いとなります。
倉庫街の幅は広く、戦闘に支障はありません。
皆様、ご武運を。
*------------------------------------
ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと
アドリブ大歓迎!
ベルベット様を最後まで守り切るぞ。いくぞ、チコル!
敵はメリーゴーランドなのか?何をするつもりだ…うわー?!(遊園地に吸い込まれる)
これは楽しそうだが、チコルがいるから遊園地は楽しいのだ。味気なく1人で遊ぶつもりはない!
飛び出し【メギドフレイム】をぶつけてくれる!
チコルは無事か?…そのプレゼントは誰からもらった?くっ私というものがありながら…いや事情は後から伺おう。油断は禁物だ!(前に飛び出てチコルをかばう・オーラ防御・激痛耐性)
炎の槍を構え接近時は属性攻撃炎からの串刺しで薙ぎ払う!
チコルとベルベット様から離れろ!燃やしてくれる
また改めて遊園地に遊びに行こうな
ショコ・ライラ
醜悪だね
紛い物のしあわせを押し付けるオブリビオン…
しあわせはもう、ベルベットくんの手の中にあるってのに
私はベルベットくんの《呼び声に応じて》ここに来た
守るべき人が、守るべきしあわせが背にあるのなら
ヒーローは負けない
ベルベットくんを【かばう】ように位置
攻撃を【見切り】、【クイックドロウ】でベルベットくんに指一本触れさせないように弾き飛ばし
返す刀で、ギヴ自身にも【カウンター】を叩き込む
私に有効なしあわせって何だ…チョコ?
悪いけど自家製のを持ってきてるんでね
それ以外だとしたら、あとは
お前が倒れてくれることくらいかな
楽しかった思い出も
楽しみな未来には叶うものか
例えば
これから帰ってプリン食べるとか、ね
藏重・力子
何故、光が!?これは無事、なのか?
「どうしたのだ!?しっかり!」と声を掛けてみるが、
一先ず目の前の敵を倒さねばならぬな
「歯痒いな……力尽きてはくれるなよ!」
敵に向けて薙刀を振るい【衝撃波】を撃ち出し、
敵攻撃は【怪力】の【武器受け】で弾いて対処
基本はベルベット殿とその持ち物を守りながら戦うが、
もしベルベット殿が吸い込まれたら我も後に続き、救助だ!
この世界を【第六感】で偽物だと【見切り】、
ベルベット殿を優しく抱えて真っ直ぐ飛び出し現実へ戻ろう
このまますぐに攻撃に移りたいが我は手が離せぬ
と、なれば!「ぐどう殿!我が盟友よ!」『司鬼番来・元』!
碧色の巨腕、ぐどう殿を召喚し、敵に拳を叩き込んでくれるわ!
チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡みも歓迎!
ベルベットが光り出した!もうすぐ、アレが始まるね。
了解だよ、ユーリ!頑張ろうねっ。
……って、ユーリが吸い込まれちゃった!?
上着を脱ぎ捨て、【ダッシュ】で接近して【シーブズ・ギャンビット】で【先制攻撃】!
ちょっと!ユーリを返してっ!!
ユーリが帰ってこなかったら、どうしよう……。
不安に思っていると、敵からドラゴンのぬいぐるみのプレゼント。
可愛い……!ってそれどころじゃ、きゃあぁ!?
油断したっ!
ユーリが戻ってきて、ホッと安堵。
えっ、これは……何でもない!
ぬいぐるみは放り投げ、ユーリの攻撃に合わせてダガーを【投擲】!
もうユーリを吸い込ませないよ!
終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と
一難去ってまた、というやつじゃな。
顔、ぴかぴかしておるが大丈夫かの? 今のところは大丈夫そうじゃが……
さて、それはわしらがまもれたら、の話か。
バレリーナか、遊園地か。楽しそうな見目をしとるが、手出しはさせんよ。
なぁせーちゃん!
さぁどうやって相手をしよか。
じゃあわしは炎でいこうか。狐火はひとつふたつ、バレリーナは踊り子じゃろ?
ならばわしが躍らせてやろか
無数の炎でその足元から攻めていく
ほれそっちに向かえと誘導して攻撃をしやすいようにもっていこう
そうじゃな、ちゃんと守って、そして――プリン、食べに行こうの!
筧・清史郎
らんらん(f05366)と参ろう
ベルベットとプリンを助けると約束したからな
必ずや守ってみせよう
遊園地やバレリーナ…硯箱の俺には馴染みの薄いものだが
らんらんの言う通り、何人たりとも手出しはさせない
いざ参ろうか
らんらんが炎でいくならば、俺は扇でそれを援護しよう
扇を広げ舞をさす様に【百華桜乱の舞】の衝撃を放つ
楽しかった思い出ごとギヴを薙ぎ払おう
はさみ等の攻撃も、舞うように見切り躱し
避けられぬものは扇で防ぎカウンターを
光り出したベルベットは心配だが…無事を信じて
同じ甘味好きの同士、約束は必ず守る
敵はもう一歩もベルベットとプリンには近づけさせはしない
らんらんとプリンを食べる楽しみも待っているしな(微笑み
●ギヴ・ミー・ア・リーズン!
その光を形容するのであれば、恐らく、発光という言葉がひどくよく似あった。天から落ちる光でなく、日差しのそれとも違う。眩しさは確かにあれど、テレビウム・ベルベットという存在そのものが光を発していた。
彼の個というものを、奪い取ったまま。
「どうしたのだ!? しっかり!」
藏重・力子が声をかけても、ベルベットは反応しない。身動き一つ取らないまま、強く光を放つ彼に力子は唇を噛む。
「歯痒いな……力尽きてはくれるなよ!」
「一難去ってまた、というやつじゃな」
あ、ぁあ、と聞こえるベルベットの声は、紡ぐ言葉であるのか、それとも零れ落ちた音に過ぎないのか。終夜・嵐吾は僅かに眉を寄せた。
「顔、ぴかぴかしておるが大丈夫かの? 今のところは大丈夫そうじゃが……。さて、それはわしらがまもれたら、の話か」
「ーーあぁ」
赤の瞳が、きり、きりと回るギヴを見据えていた。あの音、と筧・清史郎は呟く。
「先の仮面が消滅した時の音と同種だな」
「せーちゃんもそう思うか」
ぴん、と嵐吾が狐の耳を立てる。覚えがある、と応えたのはユーリ・ヴォルフとチコル・フワッフルも同じだった。
「あの、仮面が壊れた時に聞こえたやつだよね」
「仮面が再び出てくることがなかった時に聞いたものか」
言って、ユーリは眉を寄せる。
「あの音は、この敵が絡んでいたから……か?」
「オルゴールっぽい音はするんだけど」
あれは多分、とチコルは耳を揺らす。声の代わりだ、と。
「ただ回るだけじゃ、あんな感じの音にはならないと思う」
「成る程、だから、あそこまで尖っていると」
あれは、殺意の類だと力子は言う。敵意デハなく殺意。瞳など見えぬというのに、見られているという感覚が強く感じる。
「来るな」
「ーーえぇ」
吐く息が、一度、心を切り替えるように落ちた。
「醜悪だね」
ショコ・ライラの瞳が、ギヴを見据える。バレリーナに似た姿。揺れる鋏。強く見続ければ、あれはきっと意識を歪ませるだけの力を持つ。
「紛い物のしあわせを押し付けるオブリビオン……。しあわせはもう、ベルベットくんの手の中にあるってのに」
手の中に抱えたプリン。
猟兵の無事を心配していた彼は、幸せというものを知っている。持っている。
「ベルベットとプリンを助けると約束したからな
必ずや守ってみせよう」
「そうじゃな」
清史郎の言葉に頷き、吐息を零すようにひとつ、嵐吾は笑う。琥珀の瞳がギヴを見据え、踊るような足先が、コン、と硬い足音を立てた。
「来るの」
「ーーあぁ」
一足、早く薙刀を振るったのは力子だった。振り下ろす間合いは浅いがーーだが、衝撃波であれば届く。
「リリ、キリリリリ」
「成る程、攻撃としても浅いか」
夕闇の紫を帯びた指先が、するり、と空を滑りーー斬撃が、来た。
「!」
腕を、振り上げたのは粗、反射だ。振り上げる薙刀の一撃がギヴの紡ぐ真空の刃を弾く。倉庫の一角に飛んだ斬撃が屋根を飛ばす。
「リ、リリリ」
「次は届かせるとでも?」
ちり、と腕に残る痛みは先の刃で受けた傷だ。流石に全ては散らしきれなかった。守って、いるからだ。カラカラと回るメリーゴーランドはベルベットを誘うように、軽快な音楽を響かせながら、とん、と身をこちらに飛ばした。
「触れさせはしない」
その軸線に、ユーリが飛び込む。
「ベルベット様を最後まで守り切るぞ。いくぞ、チコル!」
「了解だよ、ユーリ! 頑張ろうねっ」
行こう、と告げる言葉と、槍を構えた彼がギヴを見据える。
「リ、リリリリ」
その紫の手が、ユーリに伸びたのも同時であった。
「何をするつもりだ……うわー?!」
「ユーリ!?」
触れたのはギヴの手であったのか、ユーリの指先であったのか。淡い風が一瞬吹き抜けーーユーリの姿が、小さなメリーゴーランドの中に消えた。
●ギヴ
「ーー」
地を蹴る。上着を脱ぎ捨て、軽くなった身でチコルはギヴの懐へと飛び込んだ。
「ちょっと! ユーリを返してっ!!」
放つダガーが、ギヴの体に沈む。返す刃か、くる、と回るギヴの待とうハサミがチコルの肌を斬る。
「……ッ」
痛みはある。血だって流れた
でも、そうじゃない。
さっきまで普通に話をしていた彼が、ユーリが、いない。吸い込まれてしまっていない。からからと回る小さなメリーゴーランドが不気味な光を放つ。
「キリ、リリリ」
帰さないとでも、言うように。
「……っそんなの!」
回る体が、ひゅん、と速度をあげる。回し蹴りに、だがチコルはナイフを放つ。一撃はーー僅かに浅いか。
「ユーリが帰ってこなかったら、どうしよう……」
「リリ、キリリ」
不安に思っていれば、ぽふり、と何かがチコルの前に落ちてきた。ふんわりと柔らかなそれ。ドラゴンの、ぬいぐるみ。
「可愛い……! ってそれどころじゃ、きゃあぁ!?」
ガウン、と次の瞬間、爆発が生じた。
「チコルさん」
「だい、じょうぶ。油断したっ!」
ショコの言葉に、チコルは軽く頭を振るってーー立つ。こんなところで倒れる気など、一欠片もないのだ。
「キリリ、リリリリ」
くるくると、メリーゴーランドが回る。緩やかな周りが、やがて加速すれば怪しい煌めきが戦場に溢れていく。
「私はベルベットくんの《呼び声に応じて》ここに来た」
愛銃を構える。銃口を向ける。
「守るべき人が、守るべきしあわせが背にあるのなら、ヒーローは負けない」
「キリィイイイイ……!」
ショコの宣言に、とん、と足をついたギヴがひゅん、と回った。放つ真空の刃に、身を逸らす。チリ、と肩口の入る痛みをそのままにカウンターの一撃をーー放つ。
光が、行く。
撃ち抜く光線が、ギヴの体に沈む。周囲に展開していた光が僅かに歪む。
「……」
腕に残る痛みは、気にしてはいなかった。ベルベットを庇うように、此処に立ったのだ。それに、この程度の傷では照準はブレない。
「……」
光を放つ彼は動けぬまま、動かぬまま。
僅かに漏れる声だけが、あの光だけがベルベットというテレビウムの無事を猟兵たちに伝えていた。
「リリ、キリリリ」
「バレリーナか、遊園地か」
くるり、周り生み出される真空の刃はあのハサミが生んでいるのか。他の猟兵たちがベルベットの守りを担うのを視界に、嵐吾は戦場と敵を見据える。
「楽しそうな見目をしとるが、手出しはさせんよ。なぁせーちゃん!」
「遊園地やバレリーナ……硯箱の俺には馴染みの薄いものだが、らんらんの言う通り、何人たりとも手出しはさせない」
息を吸う。深く、ひとつ。
腰の刃に添えた指先は鯉口を切るか、扇に手を寄せるか。
「いざ参ろうか」
静かに告げる清史郎が、二人の合図となった。
「キリイィイイ!」
「よ、と」
放たれる斬撃に、嵐吾は身を横に飛ばす。着地の足で踏み込み、届く真空の刃を狐火で払う。
「じゃあわしは炎でいこうか」
狐火はひとつふたつ、と謳うように嵐吾は紡ぐ。
「バレリーナは踊り子じゃろ? ならばわしが躍らせてやろか」
「リィイイイイ……!」
狐火が、踊る。避けるように回るギヴの放つ斬撃が嵐吾の腕に届く。指先まで伝う赤を気にする様子も見せぬままに無数の炎がーー行く。
「らんらんが炎でいくならば、俺は扇で」
手にするを刀から扇に変えて、舞をさす様にひらり、清史郎は指先を滑らせる。退く足は一撃交わす為。それさえも舞のひとつ変えて、妖狐とヤドリガミの炎舞が加速する。
●与えるもの
剣戟の音が遠く、聞こえていた。破砕の音はなくーーだが、ほんの少し衝撃の様なものがやってくる。
その衝撃に、ふ、とユーリは目を覚ました。
から、からとメリーゴーランドが回る。賑やかな音楽。楽しげなマスコットたち。喝采は響くが笑い声は遠いーー幻想の遊園地がそこにはあった。
「これは……」
此処は、とユーリが告げることが無かったのは吸い込まれた、という自覚があったからだ。
ひどく楽しげな光景。
此処にはひとりか、と思えば幻のような彼女の姿が見える。
「偽物だろう」
告げてユーリは息を吸う。幻のチコルが揺らめいて消える。
「これは楽しそうだが、チコルがいるから遊園地は楽しいのだ。味気なく1人で遊ぶつもりはない!」
あの一瞬、望めば見えた彼女は幻でしかない。景色が歪み、永遠の遊園地がーー揺らぐ。
「内に眠りし竜の焔よ」
我が剣となりて、と竜騎士は告げる。炎竜の力を身に宿した青年の声に、願いに炎の剣はーー顕現する。
「敵を穿ち焼き尽くせ!」
一斉に、剣を打ち出せば空間が歪む。幻の向こう、光が、見えた。
ぐん、と押し出される様な感覚に従うまま、飛び出せば最初にユーリの目に見えたのは、目をパチクリとさせる彼女の姿だった。
「ユーリ!」
「チコルは無事か?」
よかった、と息をついたそこで、ぴたり、と固まる。安心した様に息をつく、彼女の腕の中にあるぬいぐるみ。あれは、そうあれはどうみても……どらごん、だ。
「……そのプレゼントは誰からもらった?」
「えっ、これは……何でもない!」
「くっ私というものがありながら……いや事情は後から伺おう」
ぬいぐるみを放り投げ、ほっと、安堵したチコルとユーリにショコは、ほう、と息をついた。
「あっちはひと段落ね。なら、後は……」
「あぁ。あいつだな」
「キリ、リリリ、ギ、キ……」
ユーリが中から飛び出してきた時に、メリーゴーランドの一部が、壊れたのだ。破砕の音は、あの仮面が壊れた時のそれに似ていると力子は思う。
「壊れたところで退く相手でもない、か」
殺意は、膨れ上がっている。
刻む幻想の地が無くなった分、ギヴが見せる回転が、回し蹴りめいた攻撃がーー加速する。
戦場は、宝石の煌めきと剣戟に彩られていた。ギヴが踊れば宝石めいた光が戦場に溢れ、歪む視界を振り払う様に一撃を猟兵たちは叩き込んでいく。熱を増す戦場に、あの遊園地に取り込める相手などまずいない。
「リリ、キリリリ……!」
「ぐどう殿! 我が盟友よ!」
力子やショコが十分に庇っていたお陰で、ベルベットがあの遊園地に攫われる様な状況は起きてはいない。
「彼方の眷属にして、我が瞳と同じ色を持つ盟友よ! 手を貸してくれ」
守る場に立ち続けているからこそ、力子は一対の碧色の巨腕を喚ぶ。巨腕は力子の見据える先へとーー向かう。
「リリ、キリリリ……!」
「いくぞ!」
がうん、と碧色の巨腕が行った。放つ一撃は、叩きつけるそれに近いか。光の弾ける音。だが、吹き飛び切らないのはーーギヴというオブリビオンの強さか。だが。
「甘いな。そこは……」
「うん、間合いだよ!」
ギヴが飛び退いた先。空けた距離。そこはまだーーチコルの領域。
「もうユーリを吸い込ませないよ!」
放つダガーが、ギヴの腕を切り裂く。キリリ、と溢れた音とともに、返す手が真空の刃を生む。
ーーだが。
「チコルとベルベット様から離れろ!」
そこに、踏み込む姿があった。軸線に、斬撃へと飛び込んだユーリの腕に一撃が走る。飛び散った血を、だが焼き尽くすほどの炎を槍が見せる。
「燃やしてくれる」
「ギ、キリィイイイイ……!」
軋み、歪み。
紡ぐ光さえ鈍くなり、放つ真空の刃が鋭さは変わらずともーー今であれば容易に、見切れる。
「ほれそっちに向かえ」
狐火を誘導させ、嵐吾は次の一撃を紡ぐ。吐息の触れた炎は真空の刃を飲み込み、残るメリーゴーランドを歪ませればーーぶわり、と視界が歪んだ。
「ほう」
それは、楽しかった思い出か。
鏡写しの様に同じ技を用いる思い出に嵐吾は狐火の火力を上げる。とん、と一撃、躱して足を引けばーー背が、触れた。
「せーちゃん」
「あぁ。らんらん」
背合わせで、ギヴの作り出した思い出の紡ぐ炎と桜吹雪を交わす。躱し、時に炎で巻き上げ、桜吹雪で散らし。ふ、と息をついた先、溢れた笑みはどちらのものであったか。
「躍り咲け、八重桜」
告げる清史郎の声とともに風が起きる。ひとさし、舞い踊る清史郎の藍色の髪が揺れる。僅かに伏せられた瞳、指先にさえ淡い光を帯びるのは彼が今、蒼き八重咲きの桜纏う神霊体であるから。
(「光り出したベルベットは心配だが……無事を信じよう」)
同じ甘味好きの同士、約束は必ず守る。
「敵はもう一歩もベルベットとプリンには近づけさせはしない」
舞い踊る清史郎の桜吹雪が、嵐吾の狐火と共に楽しかった思い出ごとギヴを、焼いた。
「キリィイイイイ
……!?」
ギ、ギギ、と軋む音が耳に届く。あれは鋼の軋む音か。
「らんらんとプリンを食べる楽しみも待っているしな」
微笑んだ清史郎に嵐吾も笑みを見せた。
「そうじゃな、ちゃんと守って、そして――プリン、食べに行こうの!」
キリキリ、ギリギリとギヴの纏う煌めきが落ちていく。オルゴールめいた音を奏でていたギヴの紡ぐ音が歪む。放つ一撃こそ、未だ威力は残しているが守るための戦いとはいえ、その全てを受ける程、最早猟兵たちは苦しんではいない。
「キ、リィイイイイ!」
「私に有効なしあわせって何だ……チョコ? 悪いけど自家製のを持ってきてるんでね」
ふわり、とショコはチョコレートの甘い香りを纏う。それは、ただ甘い香りを纏うのではない。ヒーローとしての矜持に比例した力を得るもの。呼び声に応えて、ショコは此処に来たのだから。
「それ以外だとしたら、あとはお前が倒れてくれることくらいかな」
リボルバーを向ける。詰める間合いはベルベットを守れる範囲内で。歪み、軋むギヴの核へとショコは銃口を向ける。
「楽しかった思い出もM、しみな未来には叶うものか」
たん、とギヴが踊る。真空の刃が来る。それを、わずか、躱す身だけで避ける。
「ギ、キリリリ!」
「例えばこれから帰ってプリン食べるとか、ね」
ガウン、と一撃がオブリビオン・ギヴに沈む。紫を帯びた肢体が光に撃ち抜かれーーやがてガシャン、と音がした。破砕の音に頭部のメリーゴーランドが止まりーーぐらり、とギヴは崩れ落ちた。破砕の音さえ残さずに、だが、纏う煌めきの全てを落とし、地に落ちる前に光となって、消えた。
●ベルベットとプリンと猟兵
「大丈夫か!? ベルベット殿」
「……ん? あ、あれ? そう、みたい……」
くら、くらと。右に二回、左に三回。目を回したかの様に揺れたベルベットが、ぱ、と目を覚ましたのはそれから少ししてのことだった。怪我はないのか、さっきまで出ていた強い光も収まりーーそして、ベルベットの顔も無事に戻ってきていた。
ギヴも倒し、ベルベットも守りきった。
無事の勝利だ。
「お、俺の顔だー!」
びっくり! と感謝な顔文字がくるくると周り、プリンの入った袋を抱きしめたまま、飛び跳ねそうになった自分を必死に抑えるベルベットに猟兵たちは、ふ、と笑った。
「これで、ひと段落じゃの」
「そうだな」
嵐吾と清史郎が笑い合う。
「プリンは無事だった?」
「あぁ! みんなが守ってくれたおかげだよ!」
ショコの言葉に、ベルベットは嬉しそうに頷いていた。
「また改めて遊園地に遊びに行こうな」
今回はこんなだったから、というユーリにチコルが頷いた時ーーそれは、聞こえてきた。
「システム・フラワーズより緊急救援要請」
「全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり」
「テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う」
空間一帯に反響するような声。
何処から放たれたか分からぬそれが、尋常ではない事態を猟兵たちに伝えてきていた。
この戦いはまだ始まりに過ぎないのだと。
大成功
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