5
ワン・ナイト・カーニバル

#キマイラフューチャー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー


0





「イェーイ! みんな、盛り上がってるゥー!?」
「「「イェーーーイ!」」」
 ナマズめいた頭部を持つ女怪人が、ステージの上でエレキギターをかき鳴らしている。冬のナマズは大人しい、とはよく言われるものの、冬のナマズならぬ冬のナマズ女怪人にはその法則が当てはまらないのだろうか。

「ナ・マ・ズ・の・心はァ~!?」
「「「泥心~~っ!!」」」
「イェーッ!! フゥーッ!!! オッケーブラザー&シスター、ノリノリじゃ~~~んッ!!!」
 熱に浮かされたようにしてコール&レスポンスに答えるオーディエンスの様子に、ナマズ女のテンションは最高潮に達する。
 さっきまでかき鳴らしていたギターを肩から外し、そのネックを両手で握ったかと思うと、彼女はギターを勢いよくスピーカーにへ叩きつけて粉々に破壊した。

「ダイブ行くわよォーッ! アタシの!! 愛を!!! 受け取めてェーーッ!!!!」
 波打つ観客の群れへ向け、彼女はクラウドサーフのパフォーマンスをするべくステージ上からジャンプをし──。

 ──ビタァン!

 ぬめぬめぬらぬらとした彼女の体をオーディエンスたちは受け止めきれず、哀れナマズ女怪人は地面へと叩きつけられてしまった。
 まるで水揚げされた直後のマグロのごとく、彼女は生気の無い目で痙攣するかのようにしてライブ会場の床をビタンビタンとのた打ち回り続ける──。


「あけましておめでとうー。みんなはどうやって年末過ごしてた? 年越しライブとか行った? あたしは24時の奴とか観て──あ、UDCアース、って言うか日本の人以外には伝わんないかなこれ。ごめんごめん」
 少しテンション高めにそんなことを話した後、誤魔化すようにマスク越しに軽く笑ってみせながら頭を下げたのは、UDCアース出身の探索者、一郷・亞衿(奇譚綴り・f00351)。グリモア猟兵だ。
 こほんと咳払いをし、世間話はこの辺にして、と前置きしてから、彼女は本題に入る。

「UDCアースじゃなくて、キマイラフューチャーでも年末年始にライブやってる所が結構あるみたいなんだけどね? そのうちのどれかは判んないけど、怪人が開催してるライブがあるらしいんだよ。何でそれが判明したかって言うと、そういう光景をあたしが予知した、って話でさ」
 ナマズのような頭部を持つ怪人らしきオブリビオンが、何処かのライブ会場でギターをかき鳴らしている姿を見た──と、彼女は言う。
「いやあ、何て言うか……風邪ひいた時に見る夢っぽい光景だったよね、うん。変な薬飲んで寝た覚えとかも無かったし、めちゃくちゃ焦ったわー!」
 反応し辛い冗談を飛ばし、案の定猟兵たちが微妙な反応を返すさまを見て苦笑いするようにした後、亞衿はおずおず、といった調子で用件を切り出した。

「えっと……今回の依頼をすごい端的に言うとね。そのナマズ女怪人がライブを開催している所に乗り込んで、ライブを乗っ取ってやった後、ヤツをぶっころしてくだちい、って感じです……」


「割とみんな知ってるかもだけど、一応言っておくとさ……怪人って、ただ単に倒すだけじゃダメな場合が多いんだよ。奴らの行動目的の多くは、怪人の──と言うより、“旧人類の凄さをアピールすること”だからね。単に怪人の一人を倒した所で、同じような奴が同じことしたら結局またみんな同じようにしてそれについていっちゃう。だから、“ライブを乗っ取って”、って所が結構重要。覚えておいてね」
 ナマズ女怪人が皆からの支持を集めているのを何とかするべく、オーディエンスの興味をこっちに引き付けた上で、倒す必要がある。倒した怪人が他の過去を元にしてまた復活してしまう可能性はあるにせよ、少なくとも今回のこの目論見については完全に潰さなければならない──と、亞衿は話す。

「と、言っても……現状、何処でライブやってるのかすらよく解んないんだよね。それっぽいライブのチケットが販売されてる様子も無くてさ。だからまあ、正直ちょっと諦めかけてたんだけど……」
 亞衿はタブレットデバイスを取り出すと、何やら操作をし始めた。少しして、質問投稿サイトのような画面を表示すると、彼女はそれを猟兵たちに示す。

『オンナマズさんの次のライブ開催はいつですか?』
『急募:WON-NAMAZOO次回チケット@2。何処の機械で手に入りますか?』
『昨日までナマズチケットを吐き出していた場所が動かなくなりました。故障でしょうか?』

「……といった感じで、普通ならコンコン叩くと食品が出てきたりするはずの場所から、ナマズ女怪人……オンナマズ、って名前で良いのかな? そのライブチケットが出現する現象が発生してるみたい」
 タブレットデバイスを仕舞い、彼女は猟兵たちの方へと向き直る。
「だから、まずはその……分かりやすくコンコン機械って呼んどこうか。そのチケットを出してるコンコン機械がある場所に行って、それへの対処をする所から始めた方が良いかも。既に何回かライブ開催してるっぽい雰囲気だし、割と早めに対応しないとまずそうだからね」
 幸い、その手の情報は検索すればすぐに出てくるらしい。猟兵たちは機械の存在する場所へ向かい、その修理をしたり住民への注意喚起を行った上で、コンコン機械にちょっかいを出した怪人の一派について調べる必要があるだろう──亞衿は概ねそのような説明をし、少し思案するようにしながらマスク越しに小さく溜息を吐いた。


「……とは言え。ふざけた見た目してたけど、それでも奴は怪人──オブリビオンなんだよね」
 先程までの調子とはうって変わって、少し真剣な目つきとなった亞衿が静かに言葉を続ける。
「噂によると、怪人の正体は絶滅した旧人類だ、って話らしいけど……それなら、何で奴はナマズみたいな姿になっちゃったんだろうね?」
 そういう姿になったからには、それ相応の理由がある。その理由の重さはどうあれ、因果というのものは何事にも付いて回るものだ。

「色々と気にはなるけど……重要なことは、厄介そうな見た目してるよね、ってこと。冗談みたいな話だけど、怪人ってモチーフになった生き物とか機械とかの能力受け継いでるみたいな辺りがあるからさ。ただの着ぐるみとかコスプレ野郎って訳じゃなくてフツーに危険存在だし、くれぐれも気をつけてね。最初はアーティストの文脈で比較的平和な勝負を仕掛けてくるとは思うけど……ああいうタイプっていざとなったらなりふり構わなくなったりしそうだし……」

 心配半分、嫌気半分、といった調子でそう告げると、彼女は軽く頭を下げる。
「……まあ、コンコン機械に関しての対応するくらいなら大ケガするようなことも無いだろうからさ。とりあえずそこから頑張ってみてよ」
 安心させるようにして軽く笑い、彼女は猟兵たちへ向けひらひらと手を振った。
「じゃ、よろしくね! 奴を冬のナマズのようにおとなしくさせるんだっ!」


生倉かたな
 はじめましての方ははじめまして。生倉かたなと申します。あと、新年おめでとうございます。
 平成最後の年始め、皆様はいかがお過ごしですか? 私はほぼずっと家に篭っています。気持ちだけでも開放的に行きたいところですね……という訳で、ライブの話です。
 調査→ライブ対決→戦闘という章立てとなっておりますので、手ごろな楽器やパフォーマンス、そんなこと知ったことかとただただ敵を撃滅せんとするユーベルコード等をご持参のうえ、ご参加頂ければ幸いです。ショウマストゴーオン、やっていきましょう。
41




第1章 冒険 『コンコン機械とイタズラ者』

POW   :    まずは行動!コンコン機械を使えなくしたり、地道に張り込み犯人を探したりする

SPD   :    素早く対処!コンコン機械を修理したり、機械に犯人探しの仕掛けをしたりする

WIZ   :    知恵を絞る!住民に注意を呼びかけたり、状況から犯人の推理をしたりする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グァンデ・アォ
【WIZで聞き込み】
ライブイベント?……面白そう!
ボクも見に行ってみたいな~。
さっそく、あちこち飛び回って、街の中でコンコンしてる人たちに聞いて回るよ。
ねーねー、オンナマズのライブチケットが出てくる場所知らない?

有益な情報を見つけたら、コンコン機械をアレコレしようとしてる猟兵の仲間に伝えてくるよ。





 キマイラフューチャーの街中、とある一角にて。

 年始の慌ただしさもほんの少しだけ落ち着いてきたものの、年がら年中騒がしいこの世界の街中は相も変わらず活気に溢れている。
 そんな賑わいを見せる街の上空に、一機のドローン──もとい、一人の猟兵の姿があった。うろちょろと空を飛び回る彼の名は、グァンデ・アォ(ヒーローマスクのスカイダンサー・f10200)という。
「ライブイベント……面白そう! ボクも見に行ってみたいな~」
 主催者が怪人ではあるものの、人気を博しているには違いない。楽しさ優先といった思考を持つ辺り、彼もキマイラフューチャー出身者といったところだろうか。

 ともあれ、彼は行き交う人々を空から眺めるようにした後、辺りをきょろきょろと見回して時折その辺をコンコンと叩いたりしていた一人の少年のもとへと舞い降り声を掛けた。
「ねーねー。キミ、ちょっといい?」
「えっ!? ……ぼ、僕ですか!?」
 突然空から声を掛けられるとは思ってもいなかったであろうそのキマイラの少年は、掛けていた眼鏡の位置を直すようにしながら見上げるようにし、頭上を飛ぶグァンデへと返答する。

「うん。キミさー、オンナマズのライブチケットが出てくる場所知らない?」
「ち、チケットですか?えっと、その……」
 グァンデのことを訝しんでいるのか、はたまた何か他に理由があるのか、キマイラの少年の返答はいまいち歯切れが悪い。自身の目線の高さに降りてきたグァンデを横目で見やるようにしつつ、彼は続ける。
「……いや、僕はあんまりそういうのに興味無いんですけど、いや本当に興味無いんですけどね? 知り合い……の知り合いが、ついこの前そんな人の名前が入ったチケットを吐き出してる機械がこの辺にあるって言ってたのを聞いた気がしますね」
「ふーん……ところでキミ、さっきまで何か探してたみたいだったね。何してたのかな?」
「えっ!? い、いや、偶然この辺に来たので、いや本当に偶然なんですけど、折角だから興味本意でナマズチケットの機械の実物を見てみようかなーと思って……ええと。あなたも……いえ、あなたはオンナマズさんのファンなんですか?」
 おずおず、と訊ねられ、グァンデは少し悩むようにして宙を漂う。
「うーん……今のところファンではない、かな~。興味はあるけど──」

「そ、それでしたら!」
 突然キマイラの少年が興奮したようにして、グァンデの前へとずい、と身を進めた。
「お、おぉ~……? 突然どうしたの?」
「何を隠そうボクはオンナマズさんのライブに全通させて貰ってる身でして! いや最初はホント偶然だったんですけどね! あの人ゲリラライブ的にしかやらないお方ですし! 自慢じゃ無いですけどボクは限定販売品のミニアルバムとかも全部持ってて──」

 先程までのおどおどとした調子は何処へやら、急に目を輝かせて流暢に語り出した少年の様子を見、グァンデは困惑半分に再び問いかける。
「………キミ、ホントはチケットの出てくる場所のこととか、もっと詳しかったりする?」
「ええそれはもう! とはいえ独占するのはギルティですからね、転売行為とかもってのほかですし──」
「いや、えっとね? ボクの友達にも、興味あるって人が何人かいるんだよね。その人たちにも教えてあげたいから、できれば教えて欲しいなって思ってね~」
「ホントですか!いいですよ!そうかーやっぱり最近人気出てきてるからなー、一ファンとして頑張らないとなー!」

 ……純粋にライブ通いを楽しんでいるらしきこの少年に対し、件のアーティストの正体は怪人であり、そして猟兵である自身たちは怪人の討伐を最終目標としている、と打ち明けられる人物がどれほど居ようか。
 罪悪感を感じたのか、それともあまりそういう深刻なことについては考えていなかったのか。その理由は定かでは無いものの、少なくともグァンデは少年へと細かい事情を説明することはしなかった。少年から聞き出した機械の所在地情報を他の猟兵たちと共有しつつ、彼は少年が熱心に語る様々な話に耳を傾け続ける──

 ──怪人の尻尾を掴むための調査は、そして熱狂的なファンの少年の長い話は、まだ始まったばかりだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ブランカ・パイン
オッケーオッケー、チケットを住人にわたさなきゃいいって事だね?そんならチケット出す機械をぶち壊せばいいじゃないか!
真面目な話、異常があればメンテとか入るでしょ?それなのにチケット出し続けてるって事は異常認識されてないって事だろうからね。わかりやすい異常を作ればキマイラの皆さんも『これは使用禁止ですわ』ってわかるし、正しい挙動に戻すの込みで修理入るでしょ。
……ってわけで、例のチケットが出るのを確認できた場所にブラスター銃で風穴開けるよ!誰かに見られたら異常なのはアタシの方だけど、これはのちの被害を減らす為だからね!(人目につく事への不安を無視することでジャスティス・ペインを発動し確実に壊す)


暁・アカネ
ナマズを大人しくさせれば良いのね!
冬のナマズのように!冬のナマズのように!

■UC
トリニティ・エンハンス

■戦闘
探偵の基本は足よ!足を使った地道な情報収集が重要なんだから!
まずは聞き込み!技能の【情報収集】と【コミュ力】を使って近隣住民からナマズ目撃情報を収集!
チケットを買った人が居たらコンコン機械の場所を教えて貰うのもいいわね!
コンコン機械を見つけたら近くで張り込み!柱の陰から【聞き耳】立てて調査よ!
…でもこれだけだとパンチが足りない世界かしら?
魔法剣に火属性付与!【炎の魔力】でコンコン機械を一刀両断!
ふふーん!これならびっくりして来るかも!

アドリブ歓迎よ!





 ほぼ同時刻、別の一角にて。
 他の仲間と並行して情報収集を行っていた二人の女猟兵──セーラー服に身を包んだ妖狐の暁・アカネ(五行剣士陰陽アカネ・f06756)と、宙を漂うヒーローマスクのブランカ・パイン(自称・外なる者・f11027)が、先程出逢ったオンナマズのファンらしき少女へ注意喚起を行っていた。

「……という訳で、あの怪人を冬のナマズのように大人しくさせるため、私たちは情報を集めているのよ!」
「え、えぇーっ!?」
「おっ、いい反応。いかにもパフォーマーって感じだねえ!」
 大声をあげた少女を少しからかうようにするブランカの方を見やり、少女は困惑した様子で言葉を返す。
「……いや、えっと。オンナマズさんって普通にキマイラの人なんだろうなって思ってたので、普通にショックというか何というか……」

「そんな訳だから、ライブに行くのはあんまりオススメしないわ! 何が起こるかわからないし! というか近いうちに私たちが何かを起こすから!」
 なおも困惑している様子の少女へ、えっへん、と胸を張るようにするアカネ。
「あ、ハイ。ファンの友達にも伝えておきますね。それじゃ、私はこれで……でも、特に危ないことしてる訳でも無いし、普通にパフォーマーとして人気ある人だしなあ。別に怪人でも普通に構わないんじゃ無いかなあ……」
 姿勢を正すようにしてお辞儀をした後、サイバーゴスファッションに身を包んだバーチャルキャラクターの少女はぶつぶつと何か呟くようにしながらその場から立ち去っていった。

「……冬のナマズ怪人、普通に流行ってるって感じの世界みたいね?」
「だねえ。聞いた感じ、特に悪いことしたりしてる訳でも無さそうってのが不気味っちゃ不気味な感じだよ……」
 そんなことを話し合いながら、彼女たちは路地裏の方へと歩を進めて行く。先程少女から聞き出した、そして他の猟兵から情報が送られてきた、チケットを吐き出している機械が数台あるらしきその場所へと。



 路地裏の壁面、矢印のグラフィティが描かれた辺りをコンコン、と叩くと、バシュッ、とチケットが排出される──そんな動作を数分おきに何度か繰り返して確認した後、彼女たちは思案する。
「機械はあったけど、これからどうするんだい?」
「当然! 『張り込み』だッ! ……と行きたいところだけれど、ちょっとパンチが足りないかしら? 怪人本人でもその手下でも何でもいいけれど、誰か来るとは限らないし……」
「どうにも間怠っこいね……」
 うーん、と唸るようにするアカネの周囲を、ブランカがひらひらと舞う。
「犯人探しはさておき、アタシたちが今やるべき事には“チケットを住人に渡さないようにする”ってのも含まれてるんじゃないのかい?」
「もちろんそれも重要だわ! さっきも女の子に危ないぞーって教えてあげたし!」
「だからさ。こうしちゃおうよ、これ」

 言うが早いか、ブランカは突然何処かから熱戦銃を取り出すと、それを目前のコンコン機械へと向けて何発か熱線を発射した。ばすばすと風穴が空き、当然の結果として機械は黒煙を上げて動かなくなる。
「ちょっ──えっ?」
 目前で突然起こった凶行に目をぱちくりさせるアカネへ、ブランカは説明を始める。

「真面目な話、異常があればメンテとか入るでしょ? それなのにチケット出し続けてるって事は、そもそも異常認識されてないって事だよ」
「……ふむふむ。一理あるわね」
「で、わかりやすい異常を作ればキマイラの皆さんも『あーこれは使用禁止ですわー』ってわかるし、正しい挙動に戻すの込みで修理入るでしょ」
 実際のところ、ここまで派手に壊す必要があるのかどうかは解らない──ブランカ自身、この光景を誰かに見られたら不審に思われるだろうな、と一抹の不安を抱えていなくは無かったのだが、ヒーローマスクたる彼女は自身の正義を貫くことを厭わない。その逆境をあえて無視することにより、ユーベルコードの秘蹟が彼女に力を与えるのだ。

 さておき、若干乱暴な論理ではあったものの、ブランカの言い分を聞いたアカネは納得したようにしてぽんと手を打つ。
「なるほど!」
 それじゃ早速、とばかりにアカネは武器を構え、『トリニティ・エンハンス』により愛用の魔法剣に魔力を纏わせると、先程ブランカが壊したコンコン機械の隣にあった別の機械へと斬撃を放った。
 火行の力を付与された強烈な一撃を受けたナマズチケット発券機は見事に一刀両断され、ばちばちと火花を散らす。

「ふふーん! これならびっくりして誰か来るかも!」
「おお、やるねぇ。これはアタシも負けてられないかな?」

 ……そんな調子で周囲にあった数台の機械を破壊し尽くした後、他の猟兵たちへその場の見張りを頼んだ彼女たちは、そのままの流れで破壊の行脚を開始した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

玖篠・迅
えっと、オンナマズ?とかそいつを慕ってるのとかがコンコン機械になんかしたような気もするけど…
とりあえず修理に挑戦!
【SPD】まずは電脳ゴーグルで「ハッキング」してみて「情報取集」だ
調べるのは、何時頃に何を変更されたかについて
そうすればどうやってチケットが出るようにしたのかわかりそう
あとは逆のことをすれば元に戻らないかな
うまく見つけられない時は……「第六感」と「野生の勘」で感じたままにやってみるか

犯人探しの仕掛けもなにかやっときたいよな。
仕掛けるのはチケットが出ないって噂になってる機械
犯人しか触らなさそうなとこに、触ったら絵具が飛び散るのとか、張込してる人が間に合う「時間稼ぎ」できそうなのとか


レッグ・ワート
【POW】いやあの、勝手に痙攣するなら放っといて良くないか。行くけど。
俺は前は券出してたのにって書き込みのあった機械の近くで張り込む。犯人一味が券仕様にしにくるかもしれないしな。来たら状況に合わせてこっそりか堂々と記録撮って、どんな格好してたのか仲間に知らせられたら良いかね。
とりま迷彩使って見つからないように隠れて探るパターンと、怪しい奴が近くにいたら機械叩いて「出なくなってる」とか言って惹けるか試すパターンとでいく。会場行く奴増やすのも何だし、叩く時は人が少ないタイミングでな。
俺軽く混乱してるんだけど、コンコン機械てこれコアマシンじゃ?こんなん無防備に街中にあるのおかしくない?警備は?





 再び場所は変わり、とある別の路地裏にて。
 景気よくナマズチケット発券機破壊の報が連続して入る最中、機械然とした容姿の巨大な男猟兵──レグことレッグ・ワート(其は脚・f02517)が、傍らでコンコン機械を弄っていたヤドリガミの少年──玖篠・迅(白龍爪花・f03758)へと向け、ぼやくようにして言葉を紡いだ。

「なあ……俺軽く混乱してるんだけど、コンコン機械ってコアマシンみたいなものなんじゃ?」
「あー、言われてみれば似てるかも?」
「こんなん街中に無防備にあるのおかしくない? 警備は? ……つーか、壊していいもんなのか?」
 それなりに物資に限りのあるスペースシップワールド出身というのもあるのか割と大きめのカルチャーショックを受けた様子のレグに対し、機械の修理がてらハッキングを試みていた迅が眼鏡型の電脳ゴーグル越しに視線を送る。
「キマイラさんとこは謎が多いからなー……壊していいもんなのかどうかは俺も知らない。ちょっとくらいの故障なら何とか出来るかもだけど、ぶっ壊されたやつの修理は請け負いたくないよなあ……っと、これで修理出来たかな?」

 機械へ接続していた物理コード類を外した後、迅は数分前までチケットを吐き出していた機械をコンコンと叩く。
 すると、ぽふん、と気の抜けたような音が鳴ると共に食品が出現した。いかにも写真映えしそうな──しかし食べるのには少し勇気の要りそうな、若干毒々しくも見えるカラフルな綿あめの姿を見やり、怪訝そうな声音でレグが問う。
「……それ、本当にちゃんと直ったのか?」
「半分くらい勘でやったけど、多分……それはそうと、修理する過程で変更ログみたいなものを見つけたんだけどさ。誰かはわかんないけど、割と頻繁に機械のチェックしてる奴がいるみたいだ」

 破壊班の報告とは別に送信されてきたオンナマズのライブ開催履歴──熱狂的なファンの少年から今もなお提供され続けている情報だ──と併せて見てみると、どうやらライブが一回終わるたびにチケットの表記内容に何かしらの変更が加えられ続けているらしい。日程や開催場所の情報周りをこまめに書き換えている辺り、本人が直接やっているにせよ誰かに指示を出してやらせているにせよ、何気に怪人はマメな性格をしているのだろうか。
「ふむ……なら、俺はここみたいにチケットが出なくなったっていう機械の近くでまた暫く張り込んでみるか。犯人一味が検証しに来るかも知れないしな」
 元々レグは張り込みをする心づもりでこの場にやって来ており、ここに来るまでにも他の故障中のコンコン機械の周囲で張り込み等を行っていた。だが、遭遇したのはチケット目当てだったらしき街の人々くらいのもので、現状その成果は芳しくない。彼は何度か張り込む場所を変更しており、機械の修理がてらに情報収集を試みていた迅とは先程偶然遭遇した形となる。

「あ、それならさっき丁度罠仕掛けておいた場所があるけど。案内しようか?」



 それから少し後、迅が事前に罠を仕掛けたという故障中のコンコン機械がある街の一角にて。
 破壊班に破壊されたりはしていなかったものの、その場所では一見しただけでも解るような異常が発生していた。

「……あれ、なんだと思う?」
「なんだも何も……少なくとも、無辜の民では無さそうだよな。確証は無いがね」
 迅の仕掛けた、時間稼ぎ用の簡素な括り罠。それに見事に引っかかり、びたんびたんと飛び跳ねるようにしているナマズのような頭部を持つ人型をした何者かの姿が、そこにはあった。
「ナマズ……の、怪人だよな、あれ。あれがオンナマズ?」
「流石にあれが怪人本人ってことはねえと思うが……とりま、記録しとくか」

 相手があんな状態ではあるものの、一応周囲を警戒した上でレグは怪人の一味と思しき謎のナマズ人の様子を録画し始める。
 戦闘員めいた格好をした性別不詳のナマズ人は、罠から逃れようと必死にもがいていた。が、運悪く鰓の辺りに括り罠が食い込んでしまっているらしく、もがけばもがく程罠の締め付けはきつくなっていく。若干痛々しい。
 レグはじたばたと暴れるナマズ人の頭辺りへフォーカスを当て、もっとよく観察するべくズームしていく──すると、ナマズ人の後頭部に何か文字らしきものが印字されていることに彼は気付いた。
「何だありゃ。数字か? 1、って書いてあるが」
「背番号か何かかな? あ、いや、もしかして──」
「……待った。ちょっと隠れた方が良さそうだ」

 迅の呟きを遮り、レグが都市迷彩を張る。
 直後、何処からともなくわらわらと同じような外見をしたナマズ人たちが数体現れた。ナマズたちは罠に掛かった仲間を助け──ようとはせず、何故かそれを取り囲むようにして円陣を組み始める。
「……何してんだ、あいつら」
「バトルゲーマー、だっけ? そんな風に呼ばれてる猟兵の人らが、似たようなユーベルコードを使うって聞いたことがあるけど……もしかすると、ちょっとやばいかもなー……あっ、光った」
 突如、円陣を組んでいたナマズたちの集団が謎の光に包まれた。
 時間にして数秒程の発光が収まると、そこにあったのは一人のうすらでかいナマズ人の姿。無論と言うべきか、罠からは抜け出している状態だ。
 原理はよく解らないものの合体を果たしたらしきナマズ人は、きょろきょろと辺りを見回した後、機敏な動きでその場を去って行こうとする。

「まずい、あいつ逃げるぞ!」
「逃がすか! さっき撮った映像、他の人に送っといて!」

 怪人の手下らしきナマズ人を追いかけ、猟兵たちは路地裏を飛び出していく──

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エミリィ・ジゼル
さて、捜査もとい冬のナマズ漁も佳境となってまいりました。
このまま一気に追いつめてやるとしましょう。

まずは他の方からの連絡を受け、現場へと急行。そして増えるメイドの術を使ってかじできないさんズを量産。数の利を生かして追跡を開始です。

追跡の目的は捕まえることではなく本体の潜伏先を確定させること
ですから不要な戦闘や接触は避け、常に一定の距離を保ちながら、逃げるナマズを追いかけていきます。

ついでにグッドナイス・ブレイヴァーを使って上空にドローンを展開。
空からの追跡も行うことで、決して見失わないようにしましょう。





 合体した分だけ身体能力が向上しているのか、ナマズ人は壁を蹴ったり狭い隙間を通り抜けたりと縦横無尽に街を飛び回っていた。
 付いていくだけならば事もないのだが、気付かれないよう追跡するとなるとそう容易にはいかない──そんな状況の中、とある小高い建物の屋上から街並みを眺める人物がいた。メイド服に身を包んだ彼女の名は、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)という。

「……さて、捜査もとい冬のナマズ漁も佳境となってまいりました。このまま一気に追いつめてやるとしましょう」

 彼女の後ろから、メイド服姿の人影が声を掛けた。エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)だ。
「とは言え、あくまでも追跡の目的は本体の潜伏先を確定させることですからね」
「その通りです。ここはやはり、数の利を活かしていきましょう」
 それに応じるようにして、メイド服を着た他の人物がそう言葉を返す──彼女もまた、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)。

 ……これは一体どうしたことか?
 よくよく見てみれば、メイドたちのおでこには件のナマズ人の後頭部と同じくして数字が記されていた。彼女たちは、ユーベルコード『増えるメイドの術』にて呼び出されたエミリィのコピー体である。

 然程広くない建物の屋上にわらわらと集いしメイドたちの後方で、屋上出入口の屋根の上に立った女猟兵──本物のエミリィが、腕を掲げるようにしてポーズを取りつつ声を上げる。
「いけ、かじできないさんズ!」
 それを合図として総勢18+1人の家事が出来ないメイドたちは一斉に散開し、ナマズ人の追跡を開始した。



 メイドたちと共にエミリィ本人が放ったドローンの映像を確認しつつ、額に数字が記された彼女のコピー体のうち数人が直接敵影を追う。
 ドローンの姿はそれなりに目立つものの、ここはキマイラフューチャー。彼女とは無関係のドローンやら何やらが他に何台か上空を飛び交っていたのもあり、ナマズ人はその存在に気付かない。

 程なくして、うすらでかいナマズ人は歓楽街の一角、ライブハウスらしき場所に辿り着いた。
 彼だか彼女だか判然としない戦闘員然とした格好のナマズはそのそこそこ大きい建物の裏手へ回り、“関係者出入口”と記された扉から中へと入って行く。建物を取り囲むようにしたエミリィたちはしばらくそのまま待っていたが、ナマズ人はそれきり出てこなかった。

「あれがあの女のハウス……という訳でも無いかも知れませんが、とりあえず現時点ではあの場所に怪人本体が居ると見て良さそうですね」
「今日はあそこで演奏をするんでしょうか。みんなにも教えてあげましょう──おや?」
 遠巻きに建物の様子を伺っていたエミリィたちの視界に、楽器等の搬入口らしき付近を行ったり来たりしている人物の姿が入る。
 コアラに似た容姿を持ちしゃんとした身なりをしたそのキマイラの男性は、何やら腕を組みながらしきりにうんうんと唸っていた。このライブハウスの関係者のように見えるが、何か困りごとでもあるのだろうか。

「怪人の手下という可能性も考えられなくはないですが、声を掛けるべきでしょうか……?」
 思案するようにして呟きつつ、彼女たちは他の猟兵と合流する。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 ナマズ人を追った先、それなりに大きなライブハウスの支配人をしているというキマイラの男性曰く、本日の夜にここで開催されるライブに出演する予定だったアーティストが一組を除き皆急に来られなくなってしまったとのこと。
 ……その遠因は支配人が言うところの“一組”のアーティスト(もちろん、それはオンナマズ一派のことだ)の正体が怪人だということを知らせて回っていた猟兵たちにあるのだが、それはさておき。早急の課題として彼はライブに急遽出演出来そうな人物を探すべく知人筋をあたっていたものの、目ぼしい人がおらず途方に暮れていたらしい。
 ちなみに、このライブハウスはメインとサブの二ステージが客席を挟むようにして配置されている構造をしており、今夜のライブは『メインステージをオンナマズが占有し、セット転換や機材準備等の合間にサブステージにて他のアーティストが演奏等をして間を繋ぐ』といった構成にて行われる予定だったそうだ。

 オンナマズを倒す前に“ライブを乗っ取る”必要がある猟兵たちにとって、これは渡りに船であった。だが、少々問題もある。

 現在オンナマズはリハーサルを行っている最中らしく、猟兵たちがここに居ることにはまだ気付いていない。しかし、オブリビオンである以上は皆の姿を見れば本能的にそれが敵たる猟兵であることを感知するだろう。今の時点でライブハウス内に猟兵たちが入っていった場合、その姿を怪人に目撃されれば逃げられてしまう可能性がある。そのため、大規模な事前準備等を行うのはほぼ無理な状態と言える。
 また、ライブの開演まではあと二、三時間程しか無く、実際の所準備する時間の余裕自体がほとんど無い──つまり、もし今夜のライブに参加するのであれば、猟兵たちは色々ぶっつけ本番でそれに挑まざるを得ない状態なのだ。

 とは言え、合法的にライブに参加するのであれば強引に乱入した場合よりかは聴衆の共感を得やすくなるであろうし、そして一度ライブが始まってしまえば最悪途中で怪人にライブを放棄されて逃げられてしまったとしても“アーティストとしてのオンナマズ”の地位は失墜する。
 ライブが始まった後であれば、猟兵たち自身が直接機材を搬入したりステージ内外でユーベルコードを使用したりすることについては何の制限もなく自由に行える。むしろ、ライブ中に積極的に身元を明かして『猟兵』対『怪人』の対立構造へと早々に持ち込んだ方が面倒が少なく済むかも知れない──このキマイラフューチャーという世界において、猟兵はヒーロー的な存在であるのだから。
 チケット発券機への対処をした直後である今ならば、怪人本人の警戒もまだ薄い。やるなら今しか無い。

 怪人側には秘密にするよう念押しした上で支配人に話をつけた猟兵たちは、各々が出来る最大限の準備を行い──そして、ライブの開演時間がやって来る。

レッグ・ワート
来たかライブ。そんじゃ俺は宇宙バイクに乗って曲芸パフォーマンスだ。先ずは大技で出て、観客が飽きたり余所見しないように音たてたり、技のタイミングや難易度の緩急つけてサブステージフルに使う。許可貰えたら、サブ側の通路も舞台にするか。最後はゴッドスピードライド使って大技決めてしめたいね。会場内傷めないように着地とか走行時の衝撃調整はする。猟兵スターライダーの操縦テクニックしっかり見てけ。

そんなこんなでもう開き直るしかないわな。何故なら今まで迷彩で普段と同じ見た目にしてたけど一部装甲を黒地髑髏とか蜘蛛の巣とか派手めに変えてるからだよ早く帰って戻したい。自分で使う為にアパレル船で買ったんじゃねえんだぞ。


玖篠・迅
場所見つけたし、ライブ勝負だ!…はいいけど、ライブって何すればいいんだ?
錬成カミヤドリで手毬いっぱい出して、種も仕掛けもないのにあちこち動かせるしか思いつかないな…
必要があったら勘と勢いに任せてそれやって、基本他の猟兵の手伝いに回ってみるか

手伝いとしては、皆準備の時間ないし電気とか映像とかいじって演出できる機械があったら、それに「ハッキング」かけて俺でも使えるようにしておくな
時間勝負だし「第六感」に「野生の勘」とか使えるものは全部使う
それで各猟兵からの演出の注文に応えたり、合いそうな映像だしたりしてみるな
最初から猟兵の名乗り上げて勝負の形にするなら、その時もそれっぽい派手目の演出やってみるかな


水梨・リッカ
リハーサル?事前準備?そんなの無くたって平気!
アイドルはいつだって、ぶっつけ本番なんだから!
ってことで、水梨・コトちゃんと2人でパフォーマンス!
グッドナイス・ブレイヴァーで、遠くのお客さんも見えるようにね☆

「みんなーっ、盛り上がってるー!?」
「ラ・プワールです☆」
「今日はメインステージのオンナマズちゃんに負けないくらい、熱いステージにするからねー!」
「『ハニカミ☆シンメトリカル』っ☆」

明るい笑顔とパワフルなダンスでアピールするよ!
コトちゃんとの息のあったパフォーマンス、楽しんでいってね☆


水梨・コト
リハーサルは無しか。でも、これまで努力してきたから大丈夫。
とりあえず音源は持ってきたから、スピーカーで流してもらおう。
水梨・リッカと2人で、ラ・プワールとしてライブをするよ。
グッドナイス・ブレイヴァーで、なるべく沢山のお客さんに見えるように。

「私たちー……」
「ラ・プワールです!」
「初めましての人も、知ってくれてる人も、声出して行こうね。それでは、聞いてください」
「『ハニカミ☆シンメトリカル』っ!」

正確なダンスと演奏テクニックでアピールするよ。
間奏のキーボードソロ、かなり練習したんだ。盛り上がってくれるといいな。





 ライブが開演してから少し後。メインステージの演奏がひと段落し聴衆の歓声が聞こえる最中、サブステージ側の舞台裏にて控えていた猟兵たちは動き始める。
 今の所、オンナマズ側に猟兵たちの存在は察知されていない。だが、ひとたびステージに誰かが立てば自分たちが猟兵であることはすぐに察知されてしまう──相手がどう出て来るかは解らない。だが、話によればあちらもそれなりに真っ当にアーティストをやっているらしき身。ならば、純粋にパフォーマンスでの勝負を挑む分にはあちらもいきなり事を荒立てるような真似はしないだろう。

 舞台袖から軽く客席の様子を見やっていたレグが、最終確認を行っていた他の猟兵たちへと向けて言葉を投げかける。
「そんじゃ、俺はぼちぼち出るとするか。まずはこっち側、サブステージの方に観客の視線向けさせないとだしな」
「演出の手伝いする用意は一応出来たけど……事前準備する時間、本当に全然無かったな……」
 宇宙バイクに跨るレグの後方にて各種機材類のチェックを行っていた迅はそう応じたものの、その表情は少し不安げだ。

「リハーサルは無し、か……」
 彼らのさらに後方、雰囲気のよく似た衣装に身を包んだ二人の少女──その片方、水梨・コト(ラプワのクール担当・f01016)が、気持ちを落ち着かせるようにして細く長い息を吐いた。
 そんな彼女の肩を軽く叩き、もう片方の少女──水梨・リッカ(ラプワの元気担当・f02794)が小さく腕を掲げるようにしながら鼓舞するように言う。
「リハーサル? 事前準備? そんなの無くたって平気! アイドルはいつだって、ぶっつけ本番なんだから!」
「……うん、そうだね。これまで努力してきたから大丈夫。私たちもそろそろスタンバイしないと──迅さん。合図したらさっき渡した音源の再生、よろしくね」
「あっ、映像の方もよろしく! 遠くのお客さんにも見えるようにね☆」

「わかった。二人とも頑張ってなー!」
 揃いのショートタイを揺らしながらライブハウスのスタッフ数人と共に所定の位置へと向かう彼女たち二人を見送った後、迅はレグと共にオンナマズのMCが終わるのを待つ……が、先程から迅はどうにも落ち着かない様子だ。
 自身の方へちらちらと視線を向ける迅の様子に気づいたレグが、少し険のある声音で背後の彼へ声を掛ける。
「……何だよ?」
「いや、その格好さあ──」
「言うな。俺だって好きでこんな格好してる訳じゃねえよ……」

 何処で売っていたのやら、ドクロやら蜘蛛の巣やらの柄がプリントされたパンキッシュな装甲を身につけたレグは、半ば自棄といった口調で言葉を返した。



「──それじゃみんなーッ! また後でねェーッ!!」
 MCを終え、オンナマズはバックバンドを務めていた配下のナマズ人たちと共にステージ袖へと捌けていく。

 客席からの歓声を背に受けつつ、オンナマズは思案する。
 急に来られなくなった対バン相手の代わりが見つかり、自身側のセットリストには大きく変更を加えずに済んだ……そのことは良い。ただ、その代理のアーティストだかパフォーマーだかから事前の挨拶が無かったというのは一体どういうことなのか。時間的に余裕は無かったにせよ、このライブの主催者は自分なのだから少し顔を見せるくらいのことはすべきなんじゃないのか。ただでさえ今日は別件で色々とあって腹立たしい気分だというのに、これ以上苛々する案件を抱えさせないで欲しい──そんなことを考え腹立たしげにしていた彼女の耳に、このライブハウスという場では少し聞き慣れない響きのある音が届いた。
「……何よこの音。エンジン音? 何でこんな場所で?」



 ライブハウス側が用意していた場繋ぎ用のジングルをBGMに、大型のバイクに乗ったレグが爆音を鳴らしながら曲乗りを披露する。
 ウィリー走行からの急激な切り返し、ステージを広く使ってのジャックナイフ。大きな体躯で愛用の宇宙バイクを器用に乗りこなし、狙い通り彼は観客の注目を集めていた──が、自身の派手派手しい格好にも注目が集まっているように感じ、彼は若干恥ずかしくなってきた。出来ることなら早く帰って元に戻したい気分だ。

「……なあ、もう戻って良いか?」
 バイクに乗ったままステージから飛び降り、客席通路を用いてストッピーのトリックを決めつつ通信機越しにそう尋ねながら、レグは最後の大技を繰り出すべくサブステージの方へと向き直る。
「こっちの準備は大丈夫! ステージ上に戻るなら気をつけてな!」
「了解。スターライダーの操縦テクニック、しっかり見てけ……!」

 迅の返答にそう応じると、レグはバイクのアクセルを全開にしてステージへと向かって疾走し──途中、『ゴッドスピードライド』の使用によりバイクを変形させた反動を用いて平地で飛び上がると、彼はそのまま勢いを活かしてくるり、と前宙をし、見事ステージの奥側に着地を果たした。

 わあっ、と客席から歓声が沸き起こったのを合図とし、今度はステージの下で待ち構えていた二人が飛び出していく。



 スタッフ数人の協力のもと勢いよく台が押し上げられたのに合わせ、リッカとコトは大きくジャンプするようにしながらステージ上へと躍り出た。
「みんなーっ、盛り上がってるー!?」
 登場と同時に間髪入れずにそう言いながらリッカが客席へとマイクを向けると、客席から沸き起こっていた歓喜の声はそのまま彼女たちへと向けられる歓声へと変換される。
 肩から下げたショルダーキーボードを構え直し、リッカと並び立つようにしながらコトが言葉を続けた。
「私たちー……」

「ラ・プワールです☆」
「ラ・プワールです!」

 左右対称になるようにしてポーズを取り、声を合わせて名乗る彼女たち──“ラ・プワール”の二人のアイドル然とした様子に、再び客席が大きな歓声をあげた。

「今日はメインステージのオンナマズちゃんに負けないくらい、熱いステージにするからねー!」
「初めましての人も、知ってくれてる人も、声出して行こうね。それでは、聞いてください──」

「『ハニカミ☆シンメトリカル』っ☆」
「『ハニカミ☆シンメトリカル』っ!」
 彼女たちが再び声を揃えてタイトルコールをしたのを合図に、ポップな曲調のアイドルソングの伴奏が巨大なスピーカーから流れ出した。

 それぞれが会場に飛ばしたドローンの映像を背後のモニターに大写しにしながら、ラ・プワールの二人は息のあったパフォーマンスを繰り広げる。
(みんなも応援してくれてるし、あとは情熱と勢いで押し切る……!)
(キーボードソロ、かなり練習したんだ。もっと盛り上げてみせる!)
 リッカが元気いっぱいにダンスを踊りながら笑顔を振りまき、コトが正確な演奏で客席を魅了する──お互いの思いを視線だけで伝え合うようにしながら、彼女たちは全力を尽くす。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




 同時刻、メインステージ側の楽屋裏にて。

 衣装を着替えつつ、オンナマズは客席にて大きく沸き上がった歓声を少し気にしていた。自分が演奏している時と同じくらいか、それともそれ以上に盛り上がっているように思えるが……一体、会場の方で何が起こっているのだろう。
 そう考えつつ、彼女は楽屋の片隅に備え付けられていた会場の様子を映す小さなモニターを何の気なしといった感じで見やり──サブステージの上で演奏している対バン相手の姿を視認した瞬間、彼女は気づく。
 先程考えていた“別件”──自身たちが手を加えたチケット機械を元の状態に直したり破壊したりして回っている謎の集団、その正体について。そして、何故代理のアーティストたちから事前挨拶が為されなかったのか、その理由についてを。

「……ああ、そういうこと。中々アジな真似してくれるじゃないの……!」
エミリィ・ジゼル
【SPD】
皆さんの頑張りを後押しすべく、わたくしもがんばりましょう。

というわけで引き続き【増えるメイドの術】で分裂しつつ
ライブ中のステージに乗り込んでライブのバックダンサーとして踊ります。

そう、今のわたくしたちはメイドではなく
かじできないさんwithかじできないさんダンサーズ。
総勢20名のかじできないたちによる息の合ったノリノリなブレイクダンスで
オーディエンスを沸かしてみせます。





(皆さんの頑張りを後押しすべく、わたくしもがんばりましょう──)

 そんなことを考えつつ、エミリィはラ・プワールの二人のバックダンサーを務めていた。
 勿論というべきか、バックダンサーを務めるのは彼女ただ一人だけでは無い。先程ナマズ人を追いかけたり色々しているうちに一つ上のメイドとなったらしきエミリィは、先程よりも一体多い19体の自身のコピーたちと共に、メイドの軍団──もとい、“かじできないさんwithかじできないさんダンサーズ”を即興で結成していた──ある意味彼女ただ一人とも言えるのだが、それはさて置き。
 元々が一人のコピーだからなのか、エミリィたちの踊るブレイクダンスの動きはほぼ完璧に同期している。アイドルの後ろで踊るものにしては少々派手な感じもしなくは無いが、このステージの主役たる二人、リッカとコトのそれぞれの見せ場ではしっかりと補佐に回るよう心掛けていた辺りは、家事はできなくとも流石にメイドの身といった所だろうか。

 ずらりと並んだ20人の同じ顔の少女たち、そして主役たるラ・プワールの二人が息のパフォーマンスを繰り広げるさまは圧巻で、迅がステージと客席上空に浮かべ念力で動かし続けている色とりどりの手毬の姿がそれと相まって幻想的な雰囲気を醸し出す。
 まるでコンピュータ・グラフィックスかと見紛うような、しかし現実として目前で繰り広げられるそんな光景に、客席の興奮は最高潮に達しつつあった──その歓声の中で、密かに噂話が囁かれる。

 曰く、あのサブステージで今パフォーマンスを行っている彼女たちは猟兵である。
 曰く、このライブの主催者たるオンナマズは怪人で、猟兵たちは怪人をやっつけるためにここにやって来ている。
 曰く、この“やっつける”というのは、アーティスト的な意味で、パフォーマンスの面で圧倒するという意味である……等々。

 舞台裏にて構えていた他の猟兵たちはともかくとして、ステージ上でパフォーマンスに尽力している彼女たちがそれに気づいたかどうかは判らない。

 ともあれ、一曲目であった『ハニカミ☆シンメトリカル』の演奏は無事に終了し、ステージ上の彼女たちは一際大きい喝采を浴びながら、可愛らしく、またはクールに、あるいは瀟洒に、観客へとお辞儀を送る。
 次の演目へ移る前に改めて挨拶をしようと、ラ・プワールの元気担当たるリッカが愛用のスタンドマイクを構え直し──その口を開こうとした、その瞬間。

 会場に、天を擘くような爆音が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怪人『オンナマズ』』

POW   :    ジャイアントナマズ
自身の身長の2倍の【巨大ナマズ怪人 】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    ナマズ人召喚
レベル×1体の、【後頭部 】に1と刻印された戦闘用【ナマズ人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    矢ナマズ発射!
レベル×5本の【雷 】属性の【刺さるデンキナマズ】を放つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳥渡・璃瑠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 サブステージ上でMCが始まろうとしていたのを遮るようにして、突然スピーカーからエレキギターをかき鳴らす音が鳴り響いた。
 その爆音の、大元の発生源──いつの間にかメインステージ中央に姿を現していた怪人オンナマズはそのまま数十秒程の間ギターをかき鳴らし続け、突然の事態に戸惑う観客達がある程度静まったのを確認した後、目前にあった自身のスタンドマイクに手を掛ける。

「そう、アンタ達だったのね……アタシの改造したチケット発券機をぶっ壊して回ってたっていう、ヤンチャな子達っていうのは」
 怒っているようにも挑発しているようにも聞こえるその大きく拡声された声は、しかし不思議と静かな調子であった。少し不気味ですらある。
「ナマズへの愛を歌い続けて苦節数週間、いつかアンタ達みたいなヤツらが来るんじゃないかって思ってた……でも、これもいい機会かも知れないわね。寧ろありがとう、って言いたい気分よ──」

 そこで一旦、彼女は溜めを作るようにしてマイクを口元から離す。小さくハウリング音が鳴った。
 すうっ、と息を吸い込み、対面のステージ上にて構える猟兵たちを睨みつけ──直後、激昂するようにして女怪人は大声をあげる。
「──アンタ達みたいな奴らをぶっ潰して、ナマズの力強さを見せつける絶好の機会を下さってありがとう、ってさァッ!」

 その大声と共にメインステージ両脇に備え付けられていた火炎放射器が炎を吹き、突然会場の床の一部がせり上がり始めた。この際割とどうでも良いことではあるのだが、火炎放射器含めこれらはライブ途中でオンナマズ側が用意していた演出のようだ。
 程なくして、ライブ会場の両端に一本ずつ、そして客席を両断するようにして中央に一本と、計三本の花道が姿を現した。メインステージとサブステージを繋ぐその小高い花道の上、そして各ステージの上で事を荒げるだけならば、未だ逃げる様子もなく立ち並んでいる観客たちへの被害はかなり抑えられそうだが──猟兵たち以外には危害を加える気は無い、という、怪人側の意思表明だろうか。

 猟兵たちがメインステージの方へと視線を向けなおすと、オンナマズはいつの間にやら呼び出したらしき配下のナマズ人たち数十名を、ずらり、とステージ上にて整列させていた。やる気満々といった調子で、女怪人は再びマイクを取る。
「ナマズの素晴らしさ、皆の目にしっかりと焼き付けさせてあげようじゃない! かかって来いやァーッ!!」

 それを鬨の声として、ナマズ戦闘員たちは一斉に花道伝いでサブステージへと突撃を始める──
明石・真多子
ラ・プワール!ラ・プワール!
ッハ!?キマイラとしての性に逆らえず、お祭り騒ぎに飲まれて普通にライブ観てた!!
観客席から直接ステージに殴り込もう!

よーし!今まで役に立てなかった分、露払いは任せて!
【カイトアッパー】で適当なナマズ人を打ちあげたら【ヒッパリダコ】で掴まえるよ!そのままグルグルっと回転して【オクトルネード】で周りのナマズ人も巻き込んじゃえ!

ヌルヌルしてようが吸盤でしっかりキャッチしてるから逃がさないよ!
攻撃も掴んだナマズ人を盾にして防いでおこう。

これだけ目立てば他の皆も準備しやすいかな?
グルグル回った後はふらふらになっちゃうから、残りは皆に任せたよ!


水梨・リッカ
おわー!?何かいっぱい来た!?
オンナマズちゃんの熱い想い、受け取ったよ!
現代アイドルの素晴らしさ、あなたに教えてあげるっ☆
戦う時だって全力全開!私の歌を聴いてってー!

「それじゃあいっくよー! ミュージックスタート☆」

メインステージで歌うのは『SpRush!!!』!魚心あれば水心、でもこの水圧できっとハートはブレイク☆
曲に合わせて、オンナマズちゃん目がけて発射!歌い終わるまで耐えきれるかなっ?
『パフォーマンス』も『歌唱』も、どっちも得意なんだからっ!



「おわー!? 何かいっぱい来た!?」
 数十メートル程向こう、客席を挟んで対岸のメインステージ側から花道伝いにわらわらとやってくるナマズ人たちの群れを見、サブステージ上で相手の出方を伺うようにしていた猟兵たちの一人──丁度サブステージの中央に立ちスタンドマイクを構えるようにしていたリッカが、マイク越しに可愛らしい驚きの声をあげた。
 しかし、そのまま大人しくナマズ人たちの到着を待っている道理は無い。共にパフォーマンスを行っていたコトや仲間の猟兵たちへと目配せし、リッカは前方へと視線を向け直す。
「オンナマズちゃんの熱い想い、受け取ったよ! そっちがその気なら──現代アイドルの素晴らしさ、あなたに教えてあげるっ☆」

 先程彼女の目前に出現した両ステージを繋ぐ花道の上には、後頭部に“1”と数字が印字された戦闘員然とした格好をしたナマズ人たちの姿。
 一列に隊列を組み今まさにサブステージに乗り込まんとしているナマズ人たちに応じるべく、リッカはスタンドマイクをくるりと回してから武器にするようにして構え──すると、その瞬間。メインステージでもサブステージでも、そして花道でも無い場所から、突然威勢のいい声が上がった。

「軟体忍法、タコ揚げの術(カイトアッパー)!」

 声と共にサブステージに程近い花道脇の客席から飛び出したのは、四肢に加えて四本の触手を生やした、タコに似た姿のキマイラの少女──明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)。
 隊列の先頭にいたナマズ人に強力なアッパーを見舞った彼女は、天井すれすれの高さまで打ち上げたそのナマズ人へと続けて触手を伸ばしつつ、仲間たちの方へと軽く視線を向ける。
「いやあ、お祭り騒ぎに飲まれて普通にライブ観ちゃってたよ! ごめんね!」
 照れ隠しのようにして笑みを浮かべつつ、じたばたと暴れるナマズ人をしっかりと吸盤で捕縛した真多子は、さらに続けて別の技を放つべく構えを取った。
「よーし! 今まで役に立てなかった分、露払いは任せて!」

 元気良くそう告げると共に、彼女はナマズ人を掴んだままその場でぐるぐると高速回転し始める──その猛然とした勢いによって発生した竜巻の姿を見、列に続いていた者たちのみならず両脇の花道を進んでいたナマズ人たちまでもがその歩みを止めた。
「軟体忍法、旋風大タコ巻きの術(オクトルネード)っ!!」
 真多子が回転を生かしてハンマー投げのようにして先程掴んだナマズ人を勢い良く投げ放つと、一列に並んだまま風圧に負けじと立ち止まっていたナマズ人たちはまるでボウリングのピンの如く弾き飛ばされ、空中で小爆発を起こすようにして消滅し──そして投げ放たれたナマズ人はその勢いを止めず、メインステージ中央に立っていたオンナマズの元まで飛んでいく。
「お、オアーーーッ!!??」
 まさか自分の元まで攻撃の余波が飛んでくるとは思いもよらなかったらしき女怪人は素っ頓狂な叫び声を上げつつ、飛んできた自身の配下に巻き込まれて派手に吹っ飛ばされた。どんがらがっしゃーん、とセットの崩れる音がスピーカーを経由して会場全体へと響く。

 中央の花道にいたナマズ人たちが一掃されたのを見、リッカは感嘆の声をあげた。
「わっ、すご~い☆ ……って、あれ?」
「め、目がまわる~……あとはみんなに任せたよ……」
 ふらふらと頭を揺らした後、きゅう、とサブステージ上に倒れこむ真多子。竜巻を生むほどの高速回転は彼女自身にとってもかなりの負担を強いるものであったようだ。
「大丈夫? と、とりあえずありがとね☆」
「あ、そうだー……あとで、ふたりのサイン……貰える、かな?」
 若干焦点が定まらない様子で視線を向けつつ、えへへ、と再び照れたように笑う真多子の様子を見、リッカもくすりと笑みを浮かべる。
「オッケー! また後でね☆」

 そう言葉を返すと、彼女はいまやがら空きとなった中央の花道の上を再び見やり、高らかに宣言する。
「よーし、それじゃあいっくよー!」
 リッカがメインステージへと向けて走り出すと、若干呆気に取られるようにしていた観客たちから大きな歓声が沸き起こった。他の世界出身の人からすれば、暢気なものだ、と呆れるような光景であったかも知れないが、ここはキマイラフューチャー。ノリと勢いこそ正義の世界である。
「戦う時だって全力全開! 私の歌を聴いてってー! ミュージック、スタート☆」
 全力疾走しながらリッカがそう言ったのに合わせ、メインステージ側の大型スピーカーか快活な音楽が流れ出した。ラ・プワールの楽曲、『SpRush!!!』──彼女がメインボーカルを務める曲だ。

 リッカは花道からメインステージの上へと躍り出つつ、メインステージの舞台袖の方へと視線を向ける。事前に渡していた音源を咄嗟に気を利かせて流してくれたらしき有能なスタッフの姿を認め、彼女は小さくサムズアップをしてみせた。
「魚心あれば水心、でもこの水圧できっとハートはブレイク☆ 『SpRush!!!』!」
 客席の方へと向き直りつつタイトルコールをし、リッカはメインステージ上でのパフォーマンスを開始する。



「う、うーん……ああッ!?」
 リッカにメインステージを乗っ取られたことに気付き、ステージ後方の崩れたセットの中から顔を出したオンナマズが再び素っ頓狂な声をあげた。
 こちら側にただ乗り込んでくるだけでは無く、一アーティストとしてステージに立つとは。しかし、怪人の方もそのまま大人しくそれを見ているようなタマでは無い。
「なかなか度胸のあるコじゃないの……! 負けてらんないわッ!!」
 わなわなと震えつつそう呟くと、オンナマズは楽曲へ耳を傾けつつ辺りに転がった機材の類を立て直し、何やら準備をし始める。



 最初のサビを終え、リッカは観客たちへと笑顔を振りまき──そこで突然、客席からどよめきが起こった。
 皆の視線が自身の背後の方へと向けられていることに気付き、リッカはそちらへと顔を向ける。その視線の先には、指差しの代わりとばかりにピックを翳し、首からギターを提げたオンナマズの姿があった。
「……即興だから皆には悪いかもだけど、セッション勝負よッ!」
 そう告げると共に、ぬめぬめとした女怪人はエレキギターの演奏を始める。『SpRush!!!』の本来の曲調にある程度合わせつつも自身の色で塗りつぶさんとするその激しい演奏は、凡そ即興で出来るような代物とは思えない。化物的なギターの腕前である──まあ実際、オンナマズは化物の身である訳だが。

「ただ演奏するだけじゃ終わらないわよ! シビれるナマズの魅力、その身を以って思い知りなさいッ!」
 オンナマズがそう宣言するや否や、ギターを掻き鳴らす彼女の周囲に酷く尖った形状をしたデンキナマズの群れが出現した。紫電を纏った空飛ぶナマズの群れはリッカの方へとその顔を向けると、まるで矢の如く一直線に突撃を開始する。

 ギターの音色に負けないよう歌唱を続け、サビの直前で少し呼吸を整えるようにしていたリッカは寸前でそれに気付き、慌てて回避を果たす。
「え、え~っ! そんなのアリなの!? ……ならこっちも☆」
 矢ナマズが飛び交うステージ上で踊るようにして回避をし続けつつ、リッカは片手をピストルのような形にすると、その指先をオンナマズの方へと向け、そして──

「♪弾け飛び散るこの想い 全部ゼンブ浴びせるから あなたの元へ押し寄せるの SpRush!!!」

 ──その歌声と共に、何処からか水鉄砲が発射された。

 突然水を浴びせかけられてびしょ濡れになり、オンナマズはリッカの方を睨む──暇も無く。
「アバァーーーッ!!??」
 周囲に浮かべていたデンキナマズのせいで感電し、オンナマズが叫び声をあげた。
 当然使用していた諸々の機材もぶっ壊れてしまい、哀れオンナマズは水鉄砲の水圧で舞台袖へと押し流されていく。あの様子ではしばらく立ち上がって来まい。

「……わざとじゃなかったけど、やりすぎたかな?」
 とは言え、先に手を出してきたのはあちらの方だ。観客も許してくれることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
ナマズへの愛を歌い続けて苦節数週間…意外と短い…。
まあ短かろうが長かろうがどうでもいいことです。
冬のナマズのようにおとなしくさせてくれるわー!

おそらくは向こうはナマズさんたちを増やして襲い掛かってくるでしょう。
戦いは数ですしね。
なのでこちらも【増えるメイドの術】で対抗です。

そして目からビーム撃ったり
チェーンソーをぶん回したり
一人芋煮会を開催したり
鬼ごっこを始めたり
予測のつかないムーブで敵を翻弄していきます。

ナマズが動揺してからが本番です。
【サメを呼ぶメイドの術】でサメの群れを召喚。
ナマズどもを血祭りにあげてやります。

あ、矢メイドは避けたいのでデンキナマズは【時を止めるメイドの術】で回避します。


水梨・コト
ふぅん、ロッカー気取りのナマズ怪人かと思ったら、結構やるじゃん。
それだけ熱くなれるんなら、私も相応の想いで返さないとね。
ファンがどっちを応援するか、はっきりさせようか。
猟兵として、アイドルとして、私はあんたに勝つ!

「全力で行くよ。ミュージックスタート!」

サブステージで歌うのは『Freezing Rain』だよ。冷たい雨に打たれて、冬のナマズのように大人しくなりな。
対象はナマズ戦闘員を指定。リッカとは曲調もテンポも違うけど、どちらも引き立ててみせるよ。
『パフォーマンス』も『楽器演奏』も、得意分野だからね。


玖篠・迅
苦節数週間でこの人気ってのも、よく考えるとすごいよなあ
ちょっと気になってただけど、ナマズの心は泥心ってどんな気分のことなんだ?

まずはスピーカーで、お客さんに安全のために離れて見てなーってお願いしとく
こっちに来るナマズ人は浮かせてた手毬をそのまま使って足元狙ってくな
横から思いっきりあててバランス崩したり、「目立たない」ように転がしといて踏ませて転がす「時間稼ぎ」を
後は霊符を弱そうな鰓のとこ狙ってたくさん投げて塞いでみるな
…鰓呼吸だったらちょっとごめん。そうじゃなかったら顔全部覆う勢いで霊符追加するな

合体された時は顎下とか、「野生の勘」と「第六感」で弱そうと感じたとこに手毬をおもいっきりぶつけるな





「ふぅん、ロッカー気取りのナマズ怪人かと思ったら……結構やるじゃん」
 半ばヒーローショーの様相を呈し始めたライブハウス内の様子をサブステージ上から眺めつつ、先程までリッカと熱い戦いを繰り広げていたオンナマズのことを思い出すようにしながらコトが呟く。
「ナマズへの愛を歌い続けて苦節数週間、と最初に聞いた時には、意外と短いような印象を受けましたが……」
「苦節数週間でこの人気ってのも、よく考えるとすごいよなあ」
 その近くに立っていたエミリィ(本体)と、舞台袖から姿を現した迅がそれに続く。

 そうやって猟兵たちが話している間にも、会場の両端に出現した花道からは続々とナマズ人たちがサブステージへ乗り込んで来ていた。だが目には目を、そして数には数を──とばかりに、先程かじできないさんダンサーズとしてダンスパフォーマンスを行っていたエミリィの群れがそれに襲い掛かる。
 目からビームを放ちナマズ人を黒焦げにしているものが居たかと思えば、その一方でチェーンソーを振り回し戦闘員を爆散させているもの、そして会場の片隅でナマズ人を含む数人で集まり芋煮会(毒属性)を開催しているものや何もかもをうっちゃって鬼ごっこやら凧揚げやら羽根突きやら独楽回しやらで遊んでいるもの──等々。先程までの連帯感は何処へ行ったのやら、エミリィのコピー体たちは各員好き勝手に活動していた。結果、サブステージ側はかなり混沌とした状態だ。
「……まあ、短かろうが長かろうがどうでもいいことです。冬のナマズのようにおとなしくさせてくれるわー!」
 うおー、と自身を奮い立たせるようにして雄叫びを上げながら、本体たるエミリィ自身もその輪へと加わっていく。

「みんなーっ! 危ないからステージとか花道の近くからはなるべく離れて見てくれなーっ!」
 マイク越しにそう注意を促しつつ、迅は場内に飛ばした手毬を操ってエミリィたちの支援を行う。
 混戦を脱して自身たちの方へと向かってきたナマズ人へと霊符を投げ放ち、その鰓の付近を抉りこむように攻めながら、彼はコトの方へと顔を向けた。
「さっき貰った音源、改めてこっち側のスタッフさんに渡しておいたからさ! 頑張って時間稼ぐから、あんたも頑張ってな!」

「うん、頑張るよ──準備、お願いします」
 背を向けた迅へとそう返した後、コトは襟元に隠すようにして装着していたピンマイクへと囁いた。
 メインステージ側、リッカの歌う『SpRush!!!』は最後のサビがそろそろ終了しようかという頃合だ。それに続けて演奏する予定をセットリスト上で組んでいた楽曲──自身がメインを張る『Freezing Rain』の演奏を開始するべく、コトは愛用のショルダーキーボードを構え直す。
「……あれだけ熱くなれるんなら、私も相応の想いで返さないとね」
 先程の女怪人の姿を再び想起しながらそう呟き、準備を終えた彼女は舞台袖の方へと視線を向けた。OKサインを送るスタッフたちへ小さく頷きを返した後、彼女はごくごく小さな声でカウントを開始する。



 メインステージ側の最前列にてリッカのパフォーマンスを半ば呆然としながら観覧していた眼鏡のキマイラの少年の耳に、後方から流れ出した別の音が届いた。
 前方から流れる快活なアイドルソングとはテンポも曲調も違う、しかし上手くお互いを引き立てあうようにアレンジが為された、そんな技巧の光るシンセサイザーの音。メインステージ上で後奏に合わせて踊るリッカが彼方のサブステージの方を示したのにつられるようにして、彼はそちらの方へと振り返る。

 今もなお舞台両脇にて乱闘が行われ続けている、しかし舞台上の機材やセット等は未だ死守され続けているらしきサブステージの中央に立つのは、先程“ラ・プワール”と名乗った二人組アイドルの、その片方。
 クールな雰囲気と堅実な演奏技術を併せ持つ彼女の名は、何といったか──確か先刻のキーボードソロパートの時、コトちゃん、と呼ばれていたような覚えがあるな。眼鏡の少年はそんなことを考えつつ、その腰に巻いたウェストポーチの中から半ば無意識的に新たなサイリュームを取り出して折ると、青白い光を放ち始めたそれを小さく掲げるようにした。



 オンナマズが水流に流され姿を消していったメインステージ舞台袖の方を指差しながら、前奏の終わり際にコトが叫ぶ。
「猟兵として、アイドルとして、私たちは──私は、彼女に勝つ! 全力で行くよ、『Freezing Rain』!」
 
 彼女が歌い始めたのを見、戦闘員然とした風貌のナマズ人たちはそれを止めようとするべく次々と合体をし始めた。
 2、3、4──後頭部の文字が段々と増えていくと共にその体躯を巨大なものにしていった合体ナマズ人は、合体の余波らしき光を放ちながらサブステージ中央へと向かって駆け出し──直前に迅が足元に放っていた手毬を思い切り踏んづけ、盛大にすっ転んでしまった。
 転がるナマズ人の上へどかどかと追い討ちをかけるようにして殺到する手毬の群れの姿は、遠方から見れば新手の演出のように見えなくも無いかも知れない。悪戯っぽく笑う迅へと小さく微笑みを投げかけつつ、コトはそのまま歌い続ける。

「♪私の声は届きましたか? あなたの胸に刺さりましたか? 砕け散り降り注ぐ冷たい雨──」

 彼女が手振りをしながら歌うのに合わせるようにして、サブステージ上に雨が降り始めた。
 これはライブハウス側に頼んで事前に用意して貰っていた演出──では無い。ユーベルコードの力により発生したその氷のように冷たい雨粒は、ステージ両端にて交戦を続けるナマズ人たちを頭上から攻撃する。

 予想外の方向から行われた突然の攻撃に、ナマズ人たちは動揺を隠せない様子ながらも防御姿勢を取った──その瞬間、エミリィの目が光る。
「おや、動揺しましたね? 召喚条件達成! サモン、シャーク!!」
 いつの間にやらサメの着ぐるみに身を包んでいたエミリィがぴこぴこと両手を上げ下げすると、巨大な古代サメに似た姿をした神聖存在──“すべてのサメの父”が彼女の背後に出現し、それに続くようにして周囲に空飛ぶサメが召喚された。『サメを呼ぶメイドの術』という名のその技は、サメマニアたる彼女のフェイバリットムーブの一つだ。
 ホホジロザメ、ヨシキリザメ、オオメジロザメにイタチザメ──次々に出現したサメの群れは周囲であたふたと右往左往するナマズ人たちの方へと顔を向けると、先程オンナマズが放った矢ナマズの如く一直線に突撃を開始する。

 飛び交うサメの姿を眺めて満足げにしていたエミリィ(コピー体)の一人が、ふと気付いたようにして声をあげた。
「……あ、このままでは一部ショッキングな映像が含まれてしまいますね。モザイクお願いします」
「いや、まあ──いいけどさあ!」
 迅は慌てて念力を飛ばし、複数個の鞠を遮蔽として浮かべることによってサメがナマズ人たちを食い荒らす様子を何とか目立たないよう隠す。
 この光景を怖がる子供も多かろう、と少し躍起になりながら、彼は他方に飛ばしていた手毬を集結させるべく場内へと視線を向け──その視界の端で、よろよろと立ち上がってきたオンナマズの姿を捉えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

レッグ・ワート
テンション上がるに任せた危ない演出もそこまでだ怪人。そも配るとか置くとか迷惑かからない手もあるのに勝手にコンコン機械の内容変えるの良くねえと思う。
仲間の演出を邪魔されないよう、しないように気をつけながら、宇宙バイクと鉄骨使って応戦だ。メインから攻撃飛んで来たら、多少耐性あるしタイミングと向き調整して打ち返してやるよ。客席巻き込みそうなナマズとかは糸で即席の網作って舞台わきに放ったり吊るしてく。とりあえず一つ所には固めてやらないし回収もさせたくないから妨害はするぜ。余裕が出てきて俺が舞台から消えてたら、たぶん舞台裏でナマズ伸してる。武器類で対処が間に合いそうになけりゃ、無敵城塞使って守るさ。





 感電により所々が焼け焦げた衣装を着替えないままにメインステージへと戻ってきたオンナマズは、気を取り直すようにして頭を振った。
 さっきこちら側で歌っていた奴は一体何処へ行ったのか、と、彼女は辺りを見回す──が、誰も居ない。サブステージ側で行われている演奏か、あるいは戦闘に参加するべく戻っていったのだろうか。
 適当な奴を捕まえて今どんな状況なのかを尋ねてみようかとも考えたものの、メインステージ付近にはスタッフの姿すら見当たらない。オールスタンディングの客席にいる群集もサブステージのパフォーマンスに引き寄せられるようにしてあちら側に段々片寄って行ってきつつあり、メインステージを標榜しているものの規模的には対面のステージと然程変わりのないこちら側の舞台付近には本当に誰も居なかった。再び注目を集めようにも、先程まで使っていた楽器は壊れてしまっている。代わりを探しに行くにせよ、戻ってきた頃には今よりも更に彼女の居場所はここに無くなってしまっていることだろう。

 ユーベルコードにより生み出した配下のナマズ人たちが駆逐されつつある様子を遠くから眺め、静かな声で女怪人は呟く。
「……もう良いわ、色々知ったこっちゃない。全部滅茶苦茶にしてあげる……!!」
 怒気と共に、彼女はメインステージ中央に体長4m程もあろうかという巨大ナマズ怪人を新たに召喚した。中央の花道伝いにサブステージへと向かわせるべく、オンナマズは自身の動きをトレースするようにして動くジャイアントナマズ人に構えを取らせ──

「……危ない演出もそこまでだ!」
「グワーーーッ!!??」

 ──いつの間にかステージ下手側から姿を現していた身長2m半程もある、バイクに乗ったウォーマシン──レグことレッグ・ワートの振るった鉄骨の一撃をまともに受け、彼女はもんどり打つようにして舞台上へと転がった。
 再び立ち上がったオンナマズは突然の襲撃に非難の声をあげつつ、バイクから降り戦闘態勢を取ったレグへとジャイアントナマズ人による攻撃を放つ。
「な……何よアンタ! いきなり襲いかかってくるなんて卑怯じゃない! 発券機のコトもそうだけど、ヒーローのやり口じゃないわよッ!! わかってんのッ!?」

 巨大ナマズ人から勢い任せに繰り出される連続パンチを『無敵城塞』を発動して無効化しつつ、レグが冷静に言葉を返した。
「いや、先に攻撃してきたのお前らの方だし、俺ら別にヒーローって自分の方から名乗った覚えもねえし……コンコン機械のことだって、配るとか置くとか迷惑かからない手もあるのに勝手に内容変えるの良くねえと思うよ?」
「そ、そこはホラ……アレよッ! そういうおもしろ要素があった方が話題になるじゃないッ! 目立つために努力するのはパフォーマーとして当然じゃないのッ!! 一種のサガよッ!!!」
「そっちの事情なんて知るかよ。マジでさあ、俺、早くこれ戻したくてさ……さっさと倒されてくんねえ?」
 半ばうんざりしたような口調で再び言葉を返しつつ、派手派手しい外装をその身に纏った彼はジャイアントナマズ人が距離を取ったのに合わせて超防御モードを解除し、愛用の強化鉄骨を再び構える。

「いやアタシだってアンタの都合なんか知らないわよッ! 感電なさい!!」
 巨大ナマズ人が矢ナマズ──オンナマズが先程放っていたものよりも大きなサイズのそれを、レグへと向けて発射した。しかしレグはそれに臆する様子も無く、鉄骨を振るって電撃を纏った矢ナマズをそのままオンナマズの方へと打ち返す。軽く紫電の残滓が舞うものの、彼は対外フィルムを変化させることにより耐電能力を得た装甲の表面でそれを受け流した。

 打ち返したデンキナマズを女怪人が慌てて避ける様子を見、レグが怪訝そうに声をあげる。
「……お前、そういう技使うくせに感電対策してないの?」
「してないわッ! 厚手の衣装だと動き辛いじゃないッ!!」
 当然じゃない、とばかりに返答する女怪人。こういう類の敵が考えてることはよく解らん、等と考えつつ、レグは対岸の様子を確認する。

 オンナマズが戦闘に注力していることもあってか、サブステージ側で猟兵たちと交戦していたナマズ人の群れは今や一掃されていた。
 あちらの方しか見ていない観客たちについてはともかくとして、仲間たちはこちらの様子に気づいているだろう。怪人の注意を引くために会話し続けるのにもいい加減疲れてきたし、早く誰か来てくれねえかな──内心でそう独りごちながら、彼は巨大ナマズ人と殴り合いを続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブランカ・パイン
さて、演出系はあんまり思いつかなかったから貢献できなかったけど……戦闘は一発決めておきたい所だね。
……観客はお仲間のステージ楽しんでるみたいだし、そこはあまり邪魔したくないね。マスク単体で行動してるのを活かして、極力観客の視界の邪魔にならないように床スレスレをすり抜けて戦闘域に近づくよ。

で、戦闘行動だけど……巨大ナマズは抑えておいてくれているみたいだし、オンナマズへの射線が通った瞬間にクイックドロウで一撃くれてやるよ!もちろんコンコン機械を壊す時のような単発じゃなくて、出力全開で焼き切ってやろうじゃないか!

「歌う事もやめた奴が舞台にいちゃ困るじゃないか。さ、ご退場願うよ!」


玖篠・迅
向こうにでっかいナマズ人が見えた時はちょっと焦ったけど、全然問題なさそうでよかったよかった。
むしろなんかオンナマズのが大変そうなのは…しょうがないよな、怪人だし

ナマズ人とかサメとかなんか色々すごいし、俺も負けてられないって事で考えてた新しいのがんばるぞ
まずは演出の邪魔しないように、目立たないようにサブステージ上から離れるな
お客さんがサブステージの演出に注目してるなら、目立ちすぎないように大きさ調整からの、式符・青黒で式神2体の召喚だ
龍のほうはオンナマズを動けないように捕まえといてもらったり、亀蛇には矢ナマズが飛んで来たとき弾いてもらう
うっかり解除とかならないように気をつけとくな



「まだ……まだよッ! まだ、アタシのステージは終わっちゃいないッ!!」

 目前に現れた猟兵と激しい攻防戦を繰り広げ、見るからに疲弊しつつある怪人オンナマズが、もはや楽器の体を成していないぼろぼろのエレキギターを眼前の怨敵へと叩きつけた。
 半ば執念に突き動かされるようにして、女怪人は目を血走らせながら壊れたギターを再び振りかぶる。
「まだ、アタシは終わってない! いいえ、こんな所で終わらせるモンですか──」

「……いいや、あんたの出番はこれで終わりだ!」
「──ッ!?」

 荒れ狂うオンナマズの両腕が、がしり、と、何かに掴まれた。大蛇のように絡みつき、長くうねる体躯を持つそれは、しかし蛇では無い。
 オンナマズ、そしてジャイアントナマズ人の姿を見、サブステージ上から密かに抜け出していた猟兵の少年──迅の使役する式の一柱であるその青い龍は、呪力による風を放ちながらオンナマズを中空へと浮かべるようにして拘束を続ける。

 苦しげに呻きつつ、女怪人は新たに現れた術師らしき少年猟兵へと向け半ば苦し紛れに電気矢ナマズを放つ──が、迅の使用したユーベルコード『式符・青黒』により青龍と共に出現していた亀蛇の黒々とした甲羅がそれを弾き、目論見は無駄な足掻きに終わった。
 首を絞められるようにして宙に浮かび、もはや威勢のいい台詞を吐くことすら叶わなくなった女怪人。その死んだ魚のような目に、もう一人の猟兵の姿が映る。

 観客の合間、足元を縫うようにして飛ぶ一枚の赤い布──もとい、一人のヒーローマスク。
 オンナマズ自身は知る由も無いことではあるが、この猟兵こそ女怪人が先程言及していた“チケット発券機をぶっ壊して回っていた”猟兵の一人。その名を、ブランカ・パインという。

(演出の面では貢献できなかったけど、ここいらで一発決めておきたい所だね……!)
 内心でそう呟きつつ、メインステージの下に辿り着いた彼女はその宙に浮かぶ体を急上昇させ、舞い上がるようにしてステージ上へと躍り出る。
「歌う事もやめた奴が舞台にいちゃ困るじゃないか! さ、ご退場願うよ!」
 そう高らかに宣言するや否や、彼女は何処かから取り出したブラスターの銃口をオンナマズへと向けた。瞬間的に抜き放たれたそれに、今のオンナマズが反応出来ようはずも無い。

 客席から上がる歓声に紛れ、ブラスターの銃声が鳴り響く。
 銃身を焼かんばかりの最大出力で放たれた熱線は、大人しくなりつつあった怪人の動きを完全に停止させた。

 だらり、と、全身が弛緩したことにより結果的に青龍の拘束から脱したオンナマズの躰は、そのまま舞台上へ落下し──いつの間にかその足元にぽっかりと空いていた大きな穴、舞台装置名でいう所の奈落へと落ち、そして──

 ──そして、奈落の底たる床面へ墜落すると同時に、怪人は爆発四散した。



 背後で鳴り響いたくぐもった音に、何かあったのか、とばかりに振り返った元メインステージ側最前列、兼、現サブステージ最後列付近の観客たち数名へ向け、気にしないで、と手振りを返しつつ、迅は少し疲れたのか何処と無くぼんやりとした表情で会場内を見やる。
 彼、そしてブランカが観客たちの盛り上がりに水を差さないよう極力注意を払って行動していたのもあり、ライブは混乱する様子も無く進行している。対面で歌唱やパフォーマンスを続ける仲間たちは流石に気づいているとは思うが、この会場内で今しがた怪人の討伐が為されたことを知っているのは、猟兵たちを除けば遠く離れて様子を伺っていたライブハウスのスタッフたちくらいのものだろう。

 先程サブステージの上から遠く眺めた、がむしゃらに暴れるオンナマズの姿を脳裏に思い浮かべ、彼は呟く。
「諸行無常、盛者必衰──って、こういう感じなのかな……」
「よし、お疲れー……何浸ってんのさ? アタシらは見事役目を果たし、怪人の野望は潰えた。めでたしめでたし! それで良いじゃないの」
「……まあしょうがないよな、怪人だし。そっちもお疲れさんな!」
 手を振るかのようにして布の端を揺らすブランカに軽く手を上げて応じ、迅は軽く息を吐いた。ともあれ、戦闘は終わったのだ。

 猟兵たちの戦いが終わろうとも、ライブは終わらない。それもそのはず、ライブが開演してからはまだ一時間と経っていないのだから。
 日暮れ方から夜半前頃までぶっ続けで行われるこのライブの本来予定していた行程を果たすことはもはや叶わないが、行われる内容がなんであれ、ただただ楽しく騒げさえすれば観客たちは満足するだろう。石を投げれば何かしらのアーティストに当たるこの世界、客席の人々も巻き込んで即興でイベントを組んだりしてみるのもいいかも知れない。
 夜は始まったばかり、ライブは終わらない──



 ──ステージにてパフォーマンスを続ける者、観客の輪に加わる者、あるいはさっさと帰路につく者。
 戦いを終えた猟兵たちは、各々思い思いにその後を過ごす。

 猟兵とオブリビオンとの戦いはまだ始まったばかり。ショウ・マスト・ゴー・オン、一度開いた幕が途中で降りることは無い。
 ただ、今この瞬間だけなら──自身たちが守ったこの世界の、このライブが終わるまでならば。きっと、何もかも忘れて楽しくはしゃいだりしたってばちは当たるまい。

 夜は始まったばかり。一夜限りの祭りは、まだまだ終わらない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日


挿絵イラスト