●たった1割の
今日も一人、殺した。朱に染まった手を見下ろす。震えているのは体か、腕か。
気のいい奴だった。闘技場に来た時からの相方で、この未来のない世界の、未来のない生活の中で唯一の光とも言える奴だった。
そいつを、殺した。ただともに居たのを見咎められたというだけで。
友誼を結んだ者同士の殺し合いを見たいと、闘技場の“オーナー”がそう呟いたとか言うせいで。
たったそれだけのことで奪われてしまう世界にいる。解っていたはずだった。知っていたはずだった。だが、それを今更実感した。
あぁ、今更だ。だが、それでも願う。想う。祈る。
こんなクソみたいな世界から抜け出したい。一人じゃない、ここで生きた者たち全てを連れて。どこか遠くで、闘争なんぞと縁のない世界で、悔いながらでも未来を想って生きたい。
「――ふぅん? 飽きる程見た願いだけど、今回は面白そうかしら」
少女の声が、聞こえて……。
そうして、闘奴の反乱は成功する。彼らがそれを知るかは不明だが、9割が鎮圧されている世界でのたった1割に食い込んだ強運に僅かに生き残った誰もが手に持つ武器を空に投げ、自由に沸いた。
これでもう仲間を手にかけることもない。
これでもう友を傷つけることもない。
これでもう明日に怯えることもない。
勝ったのだ。あぁ、勝ったのだ! これからの自由を地の先に思い、皆とこの勝利を祝おうと、振り返った先。
朱の海に立つ少女。そこに横たわるのは、転がるのは。地に落ちてなおこちらへと向けられている光のない瞳は、少女が手の中で弄んでいるのは。
それは、それは。
「えぇ、それよ。それが欲しかったのよ」
異端の神が笑う。その表情が、その感情こそが欲しかったのだ、と。
それが、彼らが得た1割の奇跡の結末。
●それを認められぬ者達へ
「紳士淑女の諸姉諸兄、どうか我が声に耳を傾けては頂けないだろうか」
猟兵達が訪れてはそれぞれの戦いに向かうグリモアベースに通る声が響く。それがグリモアを持つ猟兵の声であると気づいた者達が、声の聞こえたほうに向かう。
猟兵達がある程度集まるのを待ち、ルクス・ミレニアム(空言騙り・f09317)は再び口を開いた。
「我が言葉を聞き届けてくれたことに感謝を。しかし、私は貴君等に悲劇を伝えねばならぬ。これもグリモアの導き故に」
どこか芝居がかった口調ながら、けれどその言葉と表情にはふざけた色はない。まっすぐに猟兵たちを見据えたままに言葉を紡いでいく。
「世界はダークセイヴァー。オブリビオンに敗北し支配された世界ではあるが、されど反抗するものがいないわけではない。闘技場、支配者の享楽の為、戦闘に明け暮れ技術を身に着けた彼らが時に刃を支配者へと向けることがある」
少なくとも戦うことを強いられ、その中で生き残ってきた者達は確かに一般に生きるものよりは戦うことへの適性を持っているだろう。故に、その刃で己の生を切り開く選択をすることがある。
しかし、そもそもそんな余裕を支配者が与えるものだろうか?
「そう、その反乱もまた支配者にとっての享楽の一つに過ぎない。そうするように仕向けられ、起きるべくして起きた反乱はその9割が鎮圧される。闘奴の末路は、私をして語る口を閉ざしたくなるものとなるだろう」
沈痛な面持ちで口を閉ざすルクス。瞑目する猟兵達。だが、彼らの沈黙はすぐに破られる。
「……されど、その反乱が成功した。数多の犠牲を払い、闘奴達は己の自由を勝ち取ったのだ――とある異端の神の助力によって」
オブリビオンの思惑に打ち勝った者がいるのかと、顔を上げた猟兵達の表情が凍る。助力したのもまたオブリビオンであるならば、その勝利の結末は。
「かの異端の神は、闘奴の願い……反乱と脱走が成功し、闘技場よりの脱出が叶ったときに現れる。まずは闘奴達に協力し、叶う限り無事に彼らを闘技場より逃してほしい」
例えば、腕づくで牢をぶち破ってしまってもよいし、こっそりと脱出経路を調べ手誘導するのでもいい。あるいは脱走・反乱を封じようとする看守達の捜査網を口八丁や知恵を凝らして混乱させるのでもいい。
「何もしなくても成功するのに、とは思わないで欲しい。異端の神の力を借りる、それ自体が未来に影をもたらしかねない。異端の神の力を借りず、我らで成功させることに意味がある。とはいえ、脱走に対しての備えがないとは思わない。何かしら、支配者達による障害もあることだろう。……そして」
それらを退けた先に待つのは、闘奴を唆した異端の神との決戦である。
「……決して簡単な事ではないだろう。されど、それでも私は貴君等に掛かれば容易い仕事であろうと信じている」
言葉に頷くもの、任せろと応じるもの、それぞれの反応を受けようやくルクスは少し気を抜いたように吐息を零して、告げた。
「それでは、かの地へ向かう準備を。どうか、この予知を空言へと落とし、笑ってくれ」
天瀬
初めてのOP公開となります、天瀬です。
ひとまず初めは闘奴達の反乱……反乱? 脱走? 補助からとなります。
皆様のプレイングをお待ちしております。
なお注意事項といたしまして、判定で用いる能力値についてはプレイングから判断させていただきたいと思いますが、
例えば「牢をぶっ壊すけど頭を使うんだ!」という場合などはWIZのユーベルコードを用いるかプレイングに【能力値】を明記する等をしていただけると助かります。
それではどうか、お手柔らかにお願いいたします。
第1章 冒険
『闘奴の反乱に助太刀せよ!』
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POW : 襲撃だ!腕ずくで牢をぶちやぶれ!など
SPD : 忍び込み、脱出経路を案内したりカギあけたりすべし!など
WIZ : 看守達の捜査網を混乱させてしまえ!など
👑11
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転移された猟兵達が周囲を見回すと、そこは使用されていない部屋のようだった。倉庫だったか、あるいは部屋の主が全滅した闘奴用の部屋だったのか。
外を伺えば緊迫した空気を感じる。闘奴達による反乱はもう間もなくか、あるいはもうすでに始まっているのだろう。
行動の猶予はそう多くはない。
顔を見合わせた猟兵達は、頷きあい、行動を開始する。彼らの行動を支援し、この反乱を……脱走を支援すること。まずはそこから始まるのだから。
ジロリア・アンブッシュ
【亡霊諜報網】使用。
反乱した闘奴の「かつての仲間」の協力的な霊を呼び、霊である事を活用した物理的障壁をすり抜けての脱出経路先行調査、及び生前の縁を活かし闘奴への我々についての説明と、脱出経路先導を要請。
私自身は行動に適した中で一番手近な仲間に同行。
他の猟兵とは適時情報交換し協力。
(OPのように)霊と生前に仲の良かった者がいれば、闘奴は再会を喜んでくれるでしょうか。
「せめて、しばしの再会を」
それは、私には決して与えられないもの。
私の我儘であの人の眠りを妨げるなんて、あり得ない。
「ええ、大丈夫よ『あなた』。私が代わりに全部やってあげるから」
そう、あの人の望まぬ存在を、全テコノ世カラ消サネバナラヌ。
オリヴィア・ローゼンタール
POW
奪われ続けた彼らに宿る叛逆の灯火、決して潰えさせてはなりません
針よりもか細いそれは、いつか必ず吸血鬼の圧制を噛み砕く牙となるのです
【トリニティ・エンハンス】で槍に炎の魔力を宿し、攻撃力を強化
【属性攻撃】により更にその火力を増大させる
全力(【怪力】)で【なぎ払い】、牢の鉄格子を粉砕(【鎧砕き】)する
私たちは猟兵と呼ばれる者です
あなたたちと同じく、圧制者に叛逆する者
此度の大脱走の気配を察知し、助力に参りました
一人でも多く生き延びるために、どうか力を合わせましょう
●闘奴達への協力を
猟兵達が駆け出して少し。闘技場の一角に轟音が鳴る。
炎を纏う槍が火の粉を散らし、振るわれるたびに牢の鉄格子を溶解させ破壊し吹き飛ばしていく。
その内にいた闘奴達は何が起こっているのかと呆然としていた。確かに彼らは反乱を企み、反逆の機会を待ち、今日この時それを起こさんとしていた。そこに降って湧いたかのような開放。
何者だ。そう問いかけるのは、闘奴達のなかでもリーダーのような人物。今回の反乱と脱走を企てた本人であり、そうであるがゆえに応じた闘奴をある程度把握していたのだろう。
その彼らに、槍を持つ女性、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が応じて口を開く。
「私たちは猟兵と呼ばれる者、あなたたちと同じく圧制者に反逆する者です。此度の大脱走の気配を察知し、助力に参りました」
その言葉に偽りはない。奪われ続けた闘奴達、彼らが心に宿した反逆の灯こそが、吸血鬼達の圧政をかみ砕く牙の一つである。たとえ針よりかぼそくても、それを潰えさせる訳にはいかないと、そのために彼女はここに来たのだから。
だが、猟兵を知らぬ闘奴は疑惑を抱き、一歩を踏み出せない。応と、すぐに頷けずにいる。
そこに声をかけた影。その姿に闘奴の目は見開かれた。それは確かに自分が殺した――殺してしまった友の姿をしていたから。実態を持たぬ霊ではあれど、確かにそこにいたのだ。
ジロリア・アンブッシュ(燈狼の未亡人・f05791)の【亡霊諜報網】により呼ばれた彼は、望まれるままに猟兵達に協力する事を約束した。彼は己が知る情報を彼女達に伝え、そして何より優先するべき事項として闘奴のリーダーの説得を上げたのだ。
「せめて、しばしの再会を」
そう伝えたジロリアに彼は一つ頷いて、いま彼女たちの目の前で闘奴のリーダーと目される人物に声をかけている。時間はそうかかることなく。
解った、あんた達を信じる。どうか、俺たちを助けてほしい。
頭を下げた闘奴。前に立つ一人だけではなく、その後ろにいる者達まで含めた全員の行動を、彼女達は真摯に受け止めて頷いた。
「一人でも多く生き延びるために、力を合わせましょう」
かけた声に、力強く応の声が上がる。闘奴と猟兵との協力関係が結ばれた。
猟兵についてを知らせるため、闘奴のリーダーが指示を出し闘奴を走らせる。今後の連絡を彼らを通じて行える状況を整えたところで、ジロリアはふと虚空へ目を向けた。
「……ええ、大丈夫よ『あなた』。私が代わりに全部やってあげるから」
微笑む彼女の姿はせわしなく行動を始めた誰の目にも映らない。そこにあるモノはまだ、誰に触れられるものではなかった。
成功
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ハリッサ・ミシェル
このテのことは……経験がある。
とはいえ僕自身の時と今回とでは勝手が違うだろうから、油断しないようにいこう。
ひとまず、安全な脱出経路のプランニングだ。看守を襲って(技能『暗殺』)捕らえ、ソイツが地図の類を持ってれば回収。そして……『怪力』使って手足折るなどの拷問で、巡回ルートを無理矢理吐かす。地図なかったら間取りもだ。慈悲はない。
「闘奴の怒りを買うってことは、こういうことになるってことだ。覚えとけ」
したら同業者たちに情報を伝える。それを受けて彼らが活動する箇所と、普段の看守巡回箇所とを鑑みて安全だろう経路を割り出す。あとはソレを闘奴の皆に教えてやれば問題ないハズだ……!
【SPD】
リミティア・スカイクラッド
まずは敵の筋書きを乱すことから、ですね
偵察を開始。リムは影の追跡者を召喚します
五感を共有し、発見困難なこれは偵察には最適でしょう
闘奴たちの所在や看守の警備状況を確認し、脱走ルートの策定を行い、皆に伝えます
八幡・茜
囚われた人たちを自由に導けば良いのね!
おねーさんに任せておいて、自由のために戦うって素敵よね!
ふふふ、こんな美人なおねーさんに助けてもらえる闘奴は幸せものね!
助ける前にしろ、後にしろ、相手を混乱させるのが鉄板よね!
ありがちだけど、闘奴が●●に逃げたぞー! って叫んで看守たちを誘導するわ
叫ぶ前に自分が隠れる場所は確保、●●の部分は闘奴がいる場所から遠くなる方ね!
信じてくれればそれでよし、言葉を疑われたのなら犯人を捜しに来るだろうし、どっちにしても役割は果たせると思うの
あとは、闘奴が捕まってる場所に看守が行くのなら可能な限りこそっとつけるわ
何か罠とか見つけられるかもしれないし!
●看守達への対処
一体何が起きたのかと、看守達が闘奴の牢獄へと走って向かう。
彼らは人間ではあるが、しかし吸血鬼の下につくことを良しとし、闘奴達をいたぶり虐げて興を買っていた者達でもある。
ならば、そんな連中に対し与える慈悲などはなかった。
駆け出していた複数人の看守、その最後尾についていた一人の姿が不意に影に消えた。捕えたのはハリッサ・ミシェル(《呪われし者》にして“元”闘奴・f06367)。過去に元闘奴として自身も反逆を行った経験もある彼女は、最初に脱出経路を確立するための行動に出ていた。
すなわち、それをよく知っているであろう看守から手に入れる、ということ。
通路の影に引きずり込んだ看守の口を素早く塞ぎ、看守の懐に地図がないかを確認する。
その看守が持っていた牢獄の地図を手に、彼女は看守へと問う。
「巡回ルート……いや。こういう自体では看守はどう動く? 決められた確認ルートがあるだろう?」
へらり。問いかけに笑って知らぬと応じた看守が、床についている手、その指を。
容赦なく踏み抜いた。
「もう一度聞くよ、確認ルートを教えるんだ。今すぐ。……まだ指はあるんだよ」
激痛に悲鳴を上げようとする口をふさぎ、涙目になっている看守に問う。必死に頷く看守を確認し、手を下げて看守が吐く情報を素早くまとめていく。
なぜ俺が。そう呟く看守の膝を、後を追えない様に最後に踏み砕き。
「闘奴の怒りを買うってことは、こういうことになるってことだ。覚えとけ」
言い捨てて走り出す。向かう先は先ほど看守たちが走って行った先ではない。いま優先するべきは看守から得た情報を共有することであり、そちらの対処は仲間がやってくれると知っているから。
走る看守達は気づいていない。自分たちに追随する影があることを。召喚された【影の追跡者】は正確に看守の後を追い、そのルートを己を召喚したリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)へと伝えていた。
「看守はもう少ししたらこちらに来ます。注意を向ける先から考えて、ここならば問題はないでしょう」
「そうなの、リムちゃんありがとー! それじゃ、あとはおねーさんに任せておいて!」
猟兵達が通過がてらに壊していったのだろう、破壊された牢獄の影にいるのは、リミティアと八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)。追いかけてくる看守達を混乱させる為に控えていた彼女たちは、その役を果たすために短く打ち合わせを行う。
茜が声をかけて看守を誘導。うまく誘導できればよし、もし声を疑って探しに来た場合はやり過ごしてから他の面子と合流をする。
「それにしても、自由のために戦うって素敵よね……それも、こんな美人なおねーさんに助けてもらえる闘奴は幸せ者ね!」
「美人かどうか、幸せかどうかはともかく。リムは迅速な任務の遂行を提案します」
それは自身を奮い立たせるための軽口でもあったのかどうか。ふざけたような言葉へと返ってきたマジレスに反応しようと口を開き、けれど、その狐耳に届いた足音に茜は一度口を閉じた。
余計な事を言って失敗してしまっては元も子もない。リミティアのほうへと目を向ければ彼女は軽く目を閉じ、五感を共有する【影の追跡者】へと集中していた。
たった一声ではあるが、タイミングを損ねれば意味をなくす。足音と、ともにいるものの様子と。双方をしっかり気にかけていた茜。今と思った瞬間にリミティアが頷くのを見て。
「闘奴が逃げたぞー! 上層を固めろー!!」
聞き覚えはない、けれど無視できない言葉にとっさに従い走る先を変える看守達。だが一部はさすがに足を止め、胡乱げに周りを見回す。声を上げたのは誰か、どこからなのか。それを探るために破壊された牢獄に入らざるを得ず、【影の追跡者】による見張りで看守の行動を見張っていた彼女達は、見つかることなく素早くその場を去って合流に向かった。
成功
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ショコラッタ・ハロー
自分の命の使いみちを決めるのは、自分自身だ
他人の気まぐれで命を奪われていい道理はねえ
おれが助けてやる。逃げろ、生き延びろ
おまえたちの命懸けの決断に、おれは敬意を払う
<SPD>
中から外へ死体や汚物を運ぶための水路があるはずだ
闘技場に繋がっている水路や下水があれば、そこから潜って侵入を試みる
入り口に結んだロープを伸ばして、道標兼手すり代わりにしよう
侵入前に服を脱ぎ、動きやすいインナーだけの格好に
闘技場内に侵入したら、道標に壁にキズを付けていく
警備をやり過ごせないなら、シーブズ・ギャンビットで素早く始末する
動けない闘奴には手を貸して、全員で水路から脱出を図る
汚えけどガマンしろ、死ぬよりマシだろ?
●脱走への道筋
闘技場の中、明確に目標をもって駆けるショコラッタ・ハロー(盗賊姫・f02208)。盗賊団に所属していた経緯のある彼女は、この手の建物であれば外につながる水路があるだろうとあたりをつけていた。
汚水なり、あるいは死体の処理なり。内から外に出してしまわねばならないものはかなりある。ならば、それらを捨てる為の場所があり、そこから外に脱出できる筈である。
先に開放を優先している猟兵達が派手に動いているだろう音が聞こえる。看守たちも動き出していることだろう。闘奴達に近づけないように誘導されているはずだが、それだって一時的なものとなる。
外への道を急いで見つけなければならない。ショコラッタは走る。
他人の気まぐれで命を奪われていい道理はない。自分の命の使い道を決めるのは、自分自身でなければならないのだ。だから、そのために。
おまえたちの命がけの決断に敬意を払うから。
「おれが助けてやる」
自分の覚悟を確認するように零し、それらしき場所の扉を開けて中を確認し、すぐに駆け出すことを続けてしばし。
見つけた水路は、思っていたよりは奇麗ではあった。汚水に塗れることも覚悟をしていたが、死体の類が投げ込まれたりはしていないようだ。
では、その使い道は。浮かびかけた思考を今はいらぬと振り払う。外に出て、伝令の為に走っている闘奴を見つけ、猟兵であることを明かしてから脱出経路について告げる。
「奇麗じゃねぇけど、ガマンしろ。死ぬよりマシだろ?」
確かに、と笑う闘奴は仲間に連絡を伝えるために走り出し、彼女もまた走り出す。一人でも多くを救い出すために。
成功
🔵🔵🔴
イヴ・イルシオン
『POWルート』
「反乱……前の私を思い出しますね」
異端の神とやらがどういう形で存在してるかを【第六感1】で探ってくです
壊す牢を見つけたら【怪力11、鎧無視攻撃22、属性攻撃11、2回攻撃11】の技能を駆使した『蒸気駆動型軍刀《黒鈴》』で【弧月斬(POW140)】を放つです
「復讐も忘れてはいけませんね!!」
牢もいいですが看守達を狩るのも仕事です
【迷彩10、ダッシュ10】を駆使して近づけば牢を壊すのと同じ技で斬り捨てるです
「さぁお前ら、リベリオン(反逆)を開始するですよ!! 希望やら復讐やら色んな物が沸き上がってきやがるじゃねぇですか!! そいつを脳にぶち込んで走るのですよ!!」
河南・聖
【WIZ】
まずは早急に反乱してる人達の所在と脱走ルートを大まかにでも把握しましょう。
で、牢をぶっ壊しましょう。
なるべく脱走ルートとは別の場所で派手に暴れて看守たちの目を引き付けます。
あまり離れすぎると何かあった時に駆け付けられないですし、この後の戦いもあります。程ほどの距離を維持しておきましょう。
「さぁ、まだまだ行けますよ!次のお相手は誰です?!」
クオン・セルフィライト
「……気持ちはよくわからない。けれど」
それが悪しきことに繋がると言うのであるならば。
何をしてでも止めるべきが正しい行いではなかろうか?
けれど、難しい事は戦場生まれの私にはわからない。
自分に出来る事はただの力押し。
この腕で、ごリ押すことぐらいしかできやしない。
襲撃して牢破りを行う。
人狼の力ならば並の牢屋ならば普通に壊せるだろうから。
●足を止めた者すらも
「……気持ちはよくわからない、けれど」
クオン・セルフィライト(双剣双銃・f00566)が走りながら小さく零す。悪しきことに繋がるというのであれば、それは止めるべきではないだろうか。
この行いが、正しきことに繋がるのだろうか。
かすかな迷いを混ぜた言葉は、けれど。
「何か言いましたか?」
隣に走る河南・聖(人間のマジックナイト・f00831)の耳にも届かない。小さく首を横に振ったクオンは駆ける足を速め、聖もそれについていく。道中で見つけた闘奴が捕らえられた牢獄を単純な腕力で、或いは剣閃でもって破壊し、中にいる闘奴達を開放。自分達が駆けてきたのとは別の逃走ルートを指示しては次とばかりにかけていく。
先に駆けてきた闘奴から大まかな脱出ルートは既に聞いている。そちらへの誘導も開始していると聞いていた彼女達二人は別に隠形をしてはいない。
むしろ派手に暴れることで看守達の意識を引き付けることも考えて行動していたため、時に誰も捕らえられていない牢もついでとばかりに壊して駆ける。
基本は取り残された闘奴がいないかを確認し、居れば逃走ルートを説いて逃げてもらうだけだ。途中で不幸な看守と出会ったなら、剣と太刀が閃いてその悉くを斬り伏せてゆく。
そして横道から飛び出してきた相手にも同様に構え、同じように武器を構えていた相手と顔を見合わせてすぐに構えを解いた。
飛び出してきた相手はイヴ・イルシオン(狂気の殺戮人形・f01033)。同じ猟兵の仲間である。
「合流しちまいましたか。そちらはどうなってやがります?」
「聞いてた人の誘導は完了しています。あとはこの先にある牢獄だけですね」
イヴと聖が互いの状況を確認しあい、それから三人で駆けだす。残りわずかというならば下手にばらけるよりはまとまって行動するべきだと判断したようだ。
そうしてたどり着いた牢獄。そこには牢にいる闘奴に鞭を振り上げる看守と、諦めたように座り込む闘奴達がいる。
あぁ、そうだ。全ての闘奴が反乱に応の声を上げたわけではない。いつ死ぬかしれずとも、それでも今の生活のほうがまだましだと思った者たちがいる。そうして折れた者が、そこに残ってしまっているのだろう。
けれど。
そんなことは、少なくともイヴにとってはどうでもよかった。【第六感】にて異端の神を探っていた彼女は、それの詳細は把握できずとも、しかしここにいる者達もその影響を受けうる事を何となく感じていたから。
迷彩を纏い、一投足で切り込めば刹那の斬閃。【弧月斬】にて看守を両断し、思わずと目を見開く闘奴達へ。
「さぁお前ら、リベリオン(反逆)を開始するですよ!!」
どう見ても己達よりも幼い少女が上げた声と気迫に、闘奴達が眼を見開いたままに硬直する。
「運命は!! ねじ伏せられる為に存在しやがってるのですよ!!」
そうして生きてきたのだろう。闘奴として、死を前にしたものとして、それでもそれをねじ伏せてお前たちは生きてきたのだろう。
「今、希望やら復讐やら色んな物が沸き上がってきやがるじゃねぇですか!!」
彼女は叫び続ける。今の現状を。外から聞こえる声を。それはお前達にも無関係ではないのだと。忘れてはいないだろう、それらは今ここにあるのだと。
「そいつを脳にぶち込んで走るのですよ!!」
どうすればいい。問いかけ多のは、先ほどまで座り込んでいた闘奴の一人。見れば、顔を俯かせていた、諦めていた、折れていた者達が皆顔を上げている。
それは、幼き少女の叱咤への反骨か。あるいは、その言葉に何かしらの揺さぶられるものがあったのか。……どちらでもいい。生きるという選択を選べたのなら、そんなことはどうでもいい。
経路を説明するために前に出る聖。説明を受け、指示された脱出ルートへと駆け出す闘奴達。その様を見て、クオンは軽く己の頬を張った。
よくは解らない。難しいことは解らない。それでも、今ここで彼らを見捨てることが正しい事ではないのだと解っていた事だ。
闘奴達を率いるイヴを先に走らせ、後詰についた聖はクオンの様子を確認して小さく笑みをこぼし、けれど、その表情をすぐに引き締める。
偶然か、あるいはここに向かっていたのか。走ってきた看守を出会い頭に切り捨て、聖が気勢を上げた。
「さぁ、まだまだ行けますよ!次のお相手は誰です?!」
成功
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ムルヘルベル・アーキロギア
【WIZ:看守の捜査網を撹乱する】
転移完了したら、読みふけっていた分厚い大きな本を閉じて顔を上げる
「うむ、こういう時は火計が一番よな! この本にもそう書いておるし!」
本の題名は「サルでもできる火事場泥棒のやり方」
◆方法
大声で「火事だー!」などと叫び、闘奴の寝床や食堂のような火の手が上がりやすいところでユーベルコードを使用する
他に猟兵の手が借りられるなら一緒に声をあげてもらったりして騒ぎを大きくする
◆心情
闘技場の警備など火に怯える獣と同レベルであろう?
ならばワガハイの智慧の敵ではないとも!
……それにしてもだんだん楽しくなってきたな、大手を振って火遊び出来るとは最高ではないか!
四季乃・瑠璃
【オルタナティブ・ダブル】で緋瑪と瑠璃に分身して行動。
二人で連携して行動。闘技場の各所に遠隔起爆、または時限式で生成したジェノサイド・ボム(以下ボム)を設置。
反乱の開始と同時に各所で一斉起爆させ、看守達を混乱させる。
また、牢屋の鍵や逃走通路のショートカットの為に壁をボムと【鎧砕き】を活用して破壊して支援。
看守が出て来たら、【だまし討ち】なんかも活用しながらダガーで刺し殺したりボムの爆発に巻き込んで【範囲攻撃】で始末したりするよ♪
「この時点だと、殺しがいのある相手が出てきてないから、出て来るまでは看守の人達でガマンしないとねー♪ねっ、瑠璃♪」
「間違えて闘奴の人達は殺しちゃダメだよ、緋瑪」
●後始末、あるいは立鳥が濁した跡
「こういう時はやはり火計が一番よな」
転移完了後にそう言いだしたときは、お前は何を言っているんだ、とでも言いたげな反応をされたものだが。しかし、「サルでもできる火事場泥棒のやり方」と書かれた本を持つムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)は本気でそのための準備を整えていた。
既に作戦は伝えてある。あとは、合図を待って騒ぎ出し、実行すればよいだけだ。
一方、【オルタナティブ・ダブル】で別人格を呼び出し、初期からジェノサイド・ボムを生成し設置していた、最初の轟音の仕掛人である四季乃・瑠璃(瑠璃色の殺人姫・f09675)が、合流した自身の別人格である緋瑪と言葉を交わす。
「ちゃんと設置してきたよー。これで誘い込めば一網打尽だね♪」
「闘奴の人達が逃げるための路も作ったし……それじゃ、そろそろいいかな」
看守達が把握できない道……逃走経路のショートカットの為に壁を爆破したりして道を作ったのは彼女達である。騒ぎに気付居て出てきた看守も、通路に仕掛けている姿を見咎めた看守も刺殺・爆殺しきった彼女達は走ってきた闘奴から聞いた情報に頷きあい、彼を先に送りだして。
「さて、それじゃ殺しがいのある相手に出てきてもらおうかな」
「闘奴と味方は殺しちゃだめだからね?」
軽く掛け合ってから、息を吸い。挙げる声は大きく、強く。
「「せーの、火事だー!!」」
叫び声と共に爆発するジェノサイド・ボム。すでに闘奴が居ない一角が爆ぜ飛び、闘技場がその威力に揺れた。
そして、待ち望んでいた合図が……火事の声が聞こえたムルへルベルの行動は迅速だった。即座に炎属性を宿した【ウィザード・ミサイル】を放ち、用意していた火の手が上がりやすいもの……乾燥した布や、闘奴の食堂から取ってきた油等……に火をつけていく。
「闘技場の警備など火に怯える獣と同レベル、ならばワガハイの智慧の敵ではないとも!」
脱走に、爆発に、炎に。看守達はもはや阿鼻叫喚の地獄絵図にのまれている。彼らですらもうどちらに、どこに、どうやって逃げればいいのかわからず、瓦礫に埋もれるもの、炎に巻かれるもの、偶然遭遇した猟兵に命を絶たれるものと数を減らしていく。
もはやどちらが被害者かわからない状況となっていた。
「……それにしてもだんだん楽しくなってきたな、大手を振って火遊び出来るとは最高ではないか!」
テンションが上がってきたらしいムルへルベル。
彼が逃げることを忘れていなければいいと、願うばかりである。
成功
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第2章 集団戦
『闘奴牢看守』
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POW : ボディで悶絶させてからボッコボコにしてやるぜ!
【鉄製棍棒どてっ腹フルスイング 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鉄製棍棒による滅多打ち】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : チェーンデスマッチたこのやろう!
【フックと爆弾付きの鎖 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖についてるフックを肉に食い込ませること】で繋ぐ。
WIZ : 嗜虐衝動暴走
【えげつない嗜虐衝動 】に覚醒して【『暴走(バイオレンス)』の化身】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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●脱出のその前に
水路を歩んでいく猟兵と闘奴。あともう少しで出口だと、この暗い世界のなかでもわずかに差し込む光が先に見えた。
だが、先行した猟兵達はそこで待ち受ける姿を見つける。
闘技場内にいた看守達とは異なる、それは確かに猟兵とも渡り合えるほどの、オブリビオンの力を宿した巨漢。
「そうそう簡単に逃がすわけにはいかねぇんだなぁ……これがよぉ!! 闘技場からの出口なんざ、まっとうに外に出ねぇんならここしかねぇよなぁ!」
看守にして拷問官。騒ぎが起きた時、真っ先に出口を抑えに走った者達が猟兵の行く手を阻んでいる。
人の姿をしていれど、この者達はヴァンパイアの配下であり、オブリビオンに魂を売ったもの。容赦は不要。
邪魔するというならば、殲滅し押し通るのみ。
リミティア・スカイクラッド
成程、先回りされていたのですね
外見に反して意外と知性が……いえ、失礼しました
何にせよ立ち止まるわけにはいきません。リムは障害を排除します
水路では大規模な自然現象は起こしづらいですね
エレメンタル・ファンタジアで「水」属性の「鉄砲水」――つまりは鉄砲水ですが、それで敵陣を押し流し、道を切り開こうとします
制御が難しいのもあって乱戦では撃ち辛いので、なるべく先手を取って発動したいですね
乱戦に入ったら、後方から支援しつつ闘奴たちの護衛に回ります
彼らも戦えないわけはないでしょうが、オブリビオン相手にどの程度かは未知数ですので
何より、これはリム達の使命です
●初手を制したのは
実際のところ、看守達は自分たちの優位を欠片も疑ってはいなかった。こちらは待ち伏せをしていた身であり、向こうは脱走の為に駆けてきた状況。まず体力差がある。そして状況的にも己達のほうが圧倒的優位にいる。
逃げるため、あるいは対処するために飛び出してきたものを、その先頭からたたき伏せていけばいいだけなのだ。
ゆえに看守達はにやけた笑みをその口に浮かべていた。獲物がどれだけ自分たちの嗜虐嗜好を満たしてくれるのか。どれだけいい声で鳴いて楽しませてくれるのか。そう考える余裕すらあったのだ。
そうして水路を見た彼らの目に飛び込んできたのは、なぜか水路の中に起きるはずもない高波、さらにその後ろから迫ってくる色とりどりの雷撃。
「……は?」
彼らが瞬間、茫然としたのは致し方のないことだろう。それ故に、一切の対策行動に出れなかったこともまた仕方のないことだろう。水路のなかに突如として発生した鉄砲水と雷撃が出口を抑えていた看守達に襲い掛かる。
致命的とまではいかずとも、それは確かに出口に陣取っていた看守達を後退させ、追撃の雷撃が水をかぶっていた彼らを痺れさせる。
結果、彼らは待ち伏せという優位状況を得ていたはずにもかかわらず、猟兵達が飛び出し肉薄する猶予を生み出し、状況を五分以下にまで悪化させることになった。
さらに、ついでとばかりに鉄砲水に混ざっていた爆弾に一人吹っ飛ばされていたりする。
「では、あとはお任せいたします。リムは彼らの護衛と支援に回ります」
【エレメンタル・ファンタジア】により水路の水を用いて鉄砲水を生じさせた張本人、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)はなんでもなかったかのようにそう口にした。
しかし、と彼女は思う。確かに鉄砲水で押し流せばとは思ったが雷撃と爆撃の追撃は自分がやったわけではないはずだが。
大成功
🔵🔵🔵
河南・聖
【POW】
鉄製棍棒を持った人が相手なら、雷属性魔法を使わざるを得ない。
……というわけで即興で構築してみた彩電の試し撃ちと行きましょうか。
指定する対象は射程範囲内の看守全員で。
「さて、体も温まってきましたし、ちょっと本気で行っちゃいましょうか。」
とはいえ相手は多数。
囲まれないように注意して、極力距離を取って戦うようにしないとこっちが危ないですね。
後は呪文は【高速詠唱】で隙を極力減らすように。
攻撃されるような状況になった時は【カウンター】を狙うようにしましょう。
【残像】と【カウンター】で残像カウンターとかできるとカッコイイですよね!ちょっと狙ってみましょうか。
鉤山・瑠璃
うふふふ、壊し甲斐のありそうな方々が、選り取り見取り…。
こういった方々は正面から、より大きな力でねじ伏せたときに見せる表情がいいのですわ。
先陣を切って手頃な方を正面から【剣刃一閃】で斬り伏せますわ。
【恫喝】技能を利用して周囲の方々を威圧いたしましょう。
オリヴィア・ローゼンタール
POW
邪悪な吸血鬼に傅く異端者よ
その堕ち切った魂、我が聖槍にて焼き尽くす――!
【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏い攻撃力を強化
真の姿である吸血鬼化の片鱗として牙が鋭くなる
識るがいい、これがあなたが従う者の力、その一端であると……!
恐るべき【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、防御ごと粉砕する(【鎧砕き】)
強化された【視力】と【戦闘知識】で敵の狙いを【見切り】、【武器で受け】、反撃する(【カウンター】)
直撃されても耐え忍び(【激痛耐性】)、ガントレットで殴打(【怪力】【グラップル】)して距離を離す
●攻勢に出る者達
鉄砲水による初撃が収まるより早く、飛び出した影は鉤山・瑠璃(羅刹の剣豪・f05937)。出掛けの駄賃とばかりに目の前にいた硬直した看守の胴を【剣刃一閃】で薙ぎ払い、蹴り飛ばして地に足をつけ、周囲を睥睨する。
一息、間をおいて。まるでお嬢様のような出で立ちでありながら、今しがた切り裂いた看守の返り血を浴び口角を上げる様は、その種族の通りに羅刹か修羅か。
「あなた方のような方が、より大きな力でねじ伏せたときに見せる表情がよいのです」
意図的に声に気迫を孕ませて告げる言葉は確かに出口を、そして彼女を取り囲む看守達への恫喝として効果を発揮する。
だが、だからこそ。
「さぁ、壊し甲斐のある……っ」
恫喝により狂乱に陥ったらしき看守の一人が、駆け寄りざまにその腹部めがけて鉄棍棒を振るう。地面と水平に振るわれたそれをとっさに大太刀で受け流し、後方へと飛び退って続く滅多打ちを回避する。
お返しとばかりに大太刀が空を薙ぐより早く、彼女の横を色鮮やかな雷撃が駆け抜け、看守を打ち据えた。感電し白目をむいた看守を斬り伏せ、雷撃を放った河南・聖(人間のマジックナイト・f00831)へと瑠璃は振り返った。
「反撃するところでしたのに……ですが、ありがとうございます」
「どういたしまして。私は距離を取って戦うつもりですので、前衛を張っていただけると助かります」
【彩電】により初手に雷撃を絡めたのは聖であり、見方を巻き込まずに範囲攻撃ができる利点から彼女は一歩下がったところから的確に看守を打ち据える選択をしていた。
力よりの攻撃には反撃に近接攻撃を行おうとする看守達に対し、彼女の放つ雷撃は優位に立つ。一撃では沈められずとも、二撃、三撃と重ねることで確実に看守達の体力を削っていく。
再び前に駆け、大太刀を振るって看守を切り裂く瑠璃がその負けず嫌いが漏れたのか少しばかり機嫌を損ねかけるが、ゆるく首を振って目の前の脅威を打倒すことを優先する。
雷撃と斬撃。さらに炎の刺突が看守を貫き、燃やして灰にする。
戦場に駆け込んできた炎槍の持ち主であるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)へと目を向けた看守はその姿に動揺を見せた。
鋭くなった牙が見えた者もいる。その纏う空気を、力の圧を過去に感じたことがあるものもいる。それは、彼らを統べるものである吸血鬼を想起させるもの。
「……識るがいい、これがあなたが従う者の力、その一端であると……!」
戦慄の隙に、彼女は強く地を踏んでいた。力任せの……それこそ人外の怪力をもってして突き出されるのではなく、振るわれた炎槍が周囲にいた看守へと襲い掛かる。かろうじて鉄棍棒による防御が間に合おうと、その膂力にかなうものではない。こん棒ごとへし折られ、炎に焼かれ、槍に薙ぎ払われて飛ばされていく。
だが。その飛ばされた仲間の陰から振るわれた鉄が彼女の腹を強打する。見えてはいた、反応まではできたが槍を戻すまでには至らなかった。嗜虐の笑みを浮かべた看守が鉄棍棒を振り上げ、滅多打ちに振り下ろす。
数撃は槍で受け止め、衝撃は食いしばって受け流す。僅かに出が送れた一撃を見逃すことなく槍から離した片手で打ち払い、カウンター気味に殴りつける。ガントレットがきしむほどの一撃は、拳であれど巨漢一人を弾き飛ばすのに十分だった。
驚愕の表情を浮かべる看守は、離された己が槍の距離にいることに気付く暇すらなく。
貫くのではなく、振り下ろされた炎槍がその頭を爆ぜ飛ばした。
「邪悪な吸血鬼に傅く異端者よ。その堕ち切った魂、我が聖槍にて焼き尽くす――!」
炎の槍を構えるダンピールの気迫が看守達を貫く。その数は、確実に減っている。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
四季乃・瑠璃
「ようやく殺りがいがありそうなのが出てきたね、瑠璃♪」 「筋肉達磨で無駄にタフそうだね…。」
メインは緋瑪
近距離戦は得策じゃないと見て、中距離くらいで戦闘。
先制で敵の不意を衝く様に時限式のジェノサイドボム(以下ボム)を一発。
不意打ちと同時に爆弾を印象付け。
次に閃光ボムと煙幕ボム仕様を生成。攻撃と見せかけて敵の視界を封じる。
敵の視界を封じた後【オルタナティブ・ダブル】発動。分身の瑠璃が正面から無数の接触式ボムの雨を放ち(【範囲攻撃】で自身の視界不良もお構いなし)、敵を攻撃すると同時に気を引き、緋瑪が逆方向から回り込み同じくボム放って不意打ち。ボムと煙幕ボムで視界を封じ、一方的に爆殺するよ♪
八幡・茜
あらあら! 先回りをしているなんて見た目に反して頭脳派なのね! おねーさん頭のいい筋肉だるまは大好物よ、ふふふ。
赤い鈴なりをしゃんしゃん鳴らしつつフォックスファイア放って、四方八方から顔面に向けて飛ぶように操作するわね
もちろん当たれば良いけど、当たらなくても目の前に炎が来たら嫌だものね!
私の炎に気を取られている間に誰かが倒してくれるわよね!
あ、でも顔面で全部の炎を受けてとめて平然とされていたらおねーさんどきどきしちゃうかも!
こんな美人なおねーさんだもの、攻撃されそうになるかもしれないわね!
そんな時は相手の筋肉の動きから行動を先読みして懐に入るなり飛んで威力を相殺するなりしていなすようにするわね
ムルヘルベル・アーキロギア
【使用能力値:WIZ】
◆心情
いかんいかん、火遊びに夢中になって遅れてしまった……ってもう始まっておるし!
それにしても、また熱苦しくてやかましい輩が来たものだな……
だがま、やはりワガハイの敵ではない。智慧あるものの戦いぶりを見せてやろう!
◆戦術
基本的に後方支援
遅れて戦場に到着すると同時に、敵の機先を制するためにユーベルコードを乱発し、味方の先制攻撃をサポートする
「あの手の連中の採る戦術は大きく2つ。数で圧倒するか、さもなければ痛めつけて心を折るかだ」
「そらみろ、わかりやすく予備動作をとりおった。甘いわ!」
各UCの初動を冷静に見極め、そこにウィザード・ミサイルを打ち込むことで敵を妨害する
●翻弄する者達
真正面からの戦闘を繰り広げるのとは別の乱戦にて、一瞬戦場が閃光に満たされる。
視界を白く塗りつぶされ、思わず目を抑えた看守達は目前で【オルタナティブ・ダブル】により分かれた四季乃・瑠璃(瑠璃色の殺人姫・f09675)と緋瑪の行動を察知することなどできず。
本体である緋瑪が隠れるように背後に回る間、視界を奪った看守達へと瑠璃が……殺人姫の分身が接触式の爆弾をばらまく。触れた瞬間に爆ぜる爆弾の爆風にあおられながら、視界も効かないままに看守達が放った爆弾付きのフックは同士討ちを巻き起していた。
緋瑪達か、看守達か。もはや判別もつかぬ爆発と煙の中で緋瑪は冷静に、けれども楽し気に背後から看守達を爆殺していく。
「ようやく殺りがいのありそうなのが出てきたんだ、楽しませてよね♪」
少女の笑みはその内に残酷さを秘めて。強者を屠ることが楽しいと、右往左往する看守へと接触式のボムを投げつけては爆ぜ散らせ。
看守の視界を遮る煙幕の中から新たに生成した爆弾を投げようとした瞬間、爆風にあおられたフックが腕に絡まった。
「……っ」
それは偶然だ。けれど、偶然であろうと腕を取られたのは事実である。煙幕の向こうで、かかった、と声が聞こえる。引き寄せられる前にフックの紐を爆ぜ飛ばすか、看守を狙うか。思考は一瞬。
選択の結果を行動に起こす前に小さな悲鳴が耳に届いた。腕に絡まったフックを引く力が弱まり、その瞬間に投げた接触式爆弾が看守を吹き飛ばす。
「あらあら、当たっちゃったのね! さすが私、おねーさんえらい!」
戦場であるというのにどこか無邪気な声は煙の向こうの八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)のもの。ただし緋瑪の危機を察しての行動ではなく、看守達の顔を狙っていた【フォックスファイア】が運良く動きを止めた看守に当たっただけである。しかし、偶然の不幸があれば偶然の幸運が待っているものだ。
茜の軽い調子の言動とは裏腹に、鈴なりの音が響くたびに狐火は精密に軌道を変える。振り払おうとした手を避け、背けられた顔を追いかけ、あくまでも顔を焼かんと襲い掛かる、執拗な顔面攻撃。
看守の一人がキレたように咆哮を上げた。嗜虐衝動の暴走によりバイオレンスの化身へと変じたその看守は茜へと駆け出す。痛覚すらも鈍くなるのか、あるいは意地か。顔にぶつかる狐火すらものともしない。
「あれ、おねーさんちょっとピンチかも?」
もしかしたらそういうこともあるかも、程度に考えていた状況が今目の前にある。彼我の距離は逃げ出すには近く、止められないと認めた茜は踏み込むか、下がるかを見極めようとその筋肉の動きに注視して。
駆け込んできていた看守は横からの爆発に吹き飛ばされた。
「……あら?」
「ここまで無防備だとつい殺っちゃうよね♪」
接触式爆弾を投げつけた緋瑪が先ほど助けられた借りを返そうとしたのかは定かではない。言葉通りの意味かもしれない。ただ、どちらにせよ。
「やっぱり、おねーさん美人だからみんな助けたくなるものなのね!」
茜の言葉にツッコミの声はなかった。
「いかんいかん、火遊びに夢中になって遅れてしまった……ってもう始まっておるし!」
かなり温まってきた戦場に、遅刻してきた猟兵の名はムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)。現在炎上真っ盛りの状況に闘技場を追い込んだ犯人である。
闘奴の護衛についていたリミティアの視線をさらりと受け流しながら、ムルへルベルは乱戦に踏み込まない位置から状況を観察する。
「また熱苦しくてやかましい輩だな……だがま、やはりワガハイの敵ではない。智慧あるものの戦いぶりを見せてやろう!」
とりあえず放火を進言した先刻を知っているリミティアがやはり何か言いたげな視線を向けているがそれもさらりと無視した彼はさらに観察を進めていく。
この手の連中がとる戦術などしれている。大きく分けて二つ、数で圧倒するか、痛めつけて心を折るか。
それを念頭に置いてその行動を観察すれば、予備動作も目につくというものだろう。
「甘いわ!」
放つユーベルコードは闘技場に火をつけたのと同じ【ウィザード・ミサイル】。60本の炎を宿した魔法の矢は、今前衛への攻撃の為の初動を見せた看守を打ち据えて隙を生じさせた。
穿たれるその看守から目をそらし、次、と視線を巡らして彼は次の獲物を探し。
「リムは左方向を確認することを勧めます」
「何? 左だ……うわぁ!?」
嗜虐衝動の暴走により凄い形相で自分の方に向かっていた看守が視界に入ったムルヘルベルはありったけの炎の矢をその看守へと叩き込み、さらにリミティアの操る水が看守を外へと押し流す。
「……ふ、ふ。ワガハイにかかればこの程度の奇襲を裁くのも訳はない!」
リミティアは何も言わないことにした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ショコラッタ・ハロー
ここで止まるワケにはいかない
闘奴たちを盗み出す……それがおれの仕事だからな
<spd>
敵の間合いを殺すように、常に肉薄する立ち位置をとる
敵の横手~背後をキープし、攻撃はスウェーやステップで回避を試みる
周りでチョコマカされてりゃ、敵の意識もおれに向くだろう
その間に仲間が隙を突いてくれればめっけもんだ
反撃の隙があれば、纏っていたマントと上着を投げ捨てドレス姿に
シーブズ・ギャンビットで速攻を掛ける
首や心臓など、一突きで効果の高い部位を狙っていくぞ
攻撃を受けても戦い方は変えず、インファイトで立ち向かう
闘奴たちがそうしたように、決して退かない
おまえも戦士なら、自分の命は自分の手で掴み取れ、デカブツ
●怖れぬもの
戦場を駆け抜ける風がある。この闘技場へ、『闘奴』を盗みに来た盗賊、ショコラッタ・ハロー(盗賊姫・f02208)。
乱戦の中を駆け抜け、看守への妨害を行い味方の攻撃をフォローする。巨漢の側面へ、背後へと回り込み、その鉄棍棒を、あるいは爆弾のついたフックを放つのを誘発させながら、その足は一度タリとて止まることはない。
サイドステップ、バクステップ、スウェー。時にはより懐に踏み込んで看守からの攻撃を回避し、隙を生じさせる。
無論、味方に任せるばかりではない。鉄棍棒を外した看守が喉を、心臓を、人体急所を晒したならば即座にダガーで抉り裂く。ただ一撃が致命傷となるように、狙いすました一撃は素早く命を刈り落としていく。
無傷では、ない。隙をつく際に速度をさらに高めるため、身を隠すマントを外し、ドレス姿を晒しながら。暴走に、フックと爆弾に、鉄棍棒に。回避をすれどかすかにつけられていく傷を負いながら。
それでも彼女は止まらない。そんなことは、彼女を止めるには足りえない。闘奴達がそうであったように、自分が盗み出そうとしたものがそうであったがゆえに。
退かない。前へと歩む。より早く、より早く。それは己だけでなく、己以外の者の命すらも未来へと届けるための覚悟。
「おまえも戦士なら――」
今また放たれた爆弾付きフックをステップで側面に周り回避する。驚愕の表情で彼女の行動を追って顔を向けてきた看守の首を一刺しで貫く。
「――自分の命は自分の手で掴み取れ、デカブツ」
少女は再び戦場の風となり、駆け行く。
大成功
🔵🔵🔵
ハリッサ・ミシェル
全身から嫌な汗が噴き出し、脚がすくむ。
ああいった輩に、余興か何かとしていたぶられたことは一度や二度じゃない。
頭蓋を割られ、腹筋を砕かれて内臓をも潰され、四肢の骨を折られ……あの棍棒がトラウマになってる。
けど、同時に怒りもこみ上げてくる。怒りがトラウマを塗りつぶす。
僕はどうにか地獄から脱せた。けど他の人はまだ地獄の中だ。例えば、ここの民のように。
コイツらを殺し、ここの地獄を終わらせる……!
「ここの地獄も、貴様らの命も、もうここまでだ……!」
妖怪・悪鬼・幽鬼らを憑依させて苦痛と共に力を増す。
そして、怒りと決意を力に変えて脚を踏み出す。"元闘奴"怒りの拳脚を食らえ、キサマ等全員肉塊にしてやるッ!!
●そして、負けない者
――その姿を見た瞬間、足が竦んだ。嫌な汗と共に記憶が苦痛を伴ってせりあがる。
あの鉄棍棒は、幾度己を打ち据えたか。何度、奴らの嗜虐嗜好を満たすために甚振られたか。
頭蓋に振り下ろされた日を覚えている。
腹に振り下ろされた日を覚えている。
四肢へと振り下ろされた日を覚えている。
それは自身の意思を無視して身体に怯えの反応をさせてしまう程、強く心に刻まれてしまっていた。
とっさに飛び出すことができなかったのは、そのせいか。
けれど。けれど、そうだ。ハリッサ・ミシェル(《呪われし者》にして“元”闘奴・f06367)は顔を上げる。自分の後ろには、その『地獄』にいた者達がいる。この世界には、今なお地獄にいる者たちがいる。自分が脱した地獄の中に囚われている者達がいる。
込み上げてくるのは恐れだけではない。湧き上がる怒りを捉え、全身に行き渡らせる。
トラウマに怖れている場合ではない。そんなことを恐れていてはならない。地獄を終わらせるためにここに来たのだ、ここまで来たのだ。
ならば。怖れ戦えないなどととおして良い訳がない。
「ぉ」
声を出す。負けない為に、立ち向かうために。己の怒りをもって、自身のトラウマを塗りつぶすために。
「ぉ、おぉぉぉぉぉ!!」
咆哮と共にまとわりつく記憶を振り払い、代わりに宿すのは妖怪に悪鬼、幽鬼。【降魔化身法】により強化された肉体は同時に流血の苦痛を与えてくるが、もはや止まるものではない。
「ここの地獄も、貴様らの命も、もうここまでだ……!」
踏み出す一歩は強く。地を蹴れば身体は決意と共に疾く駆けて、こちらを見失った看守へと繰り出した蹴脚はその胴を抉り風穴を開ける。
倒れ伏す看守を放って戦場に、乱戦に向かいゆく。その身はまるで鬼神のように。
「キサマ等全員肉塊にしてやるッ!!」
――猟兵達の各々が戦場にてその本領を発揮したならば。
享楽にふける闘いともいえぬ闘いを生業としていた看守達では歯が立つはずもなく。
そう時間をかけることなく看守の群れを殲滅し、猟兵は闘奴達と共に闘技場の外、自由の地へと足を踏み出した。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『フロイデ・へクセ』
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POW : 精霊隷属呪法(エレメンタルスレイブ)
【隷属させた精霊】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【属性暴走状態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 想念記録宝珠(メモリーオーブ)
【絶望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【宝珠】から、高命中力の【想念を喰らう光芒】を飛ばす。
WIZ : 生贄面談(インタヴュー・ウィズ・ヴィクティム)
質問と共に【思念で操る宝珠】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●化身降臨
背後には、燃え落ちる闘技場がある。
見上げれば、それは縁どられた空ではない。暗いながらも、それでも広い空がそこにある。
闘奴達は。一人として欠けることなく外まで出てきたのだ。囚われていた闘技場から、出てきたのだ。
勝った。誰かが零した。
勝ったんだ。応じるように、誰かが零した。
歓喜の声が爆発する。誰もが武器を空に投げ、自由に沸いた。
闘奴のリーダーであった男も歓喜の表情を浮かべて猟兵に声をかける。
君たちのおかげで助かった、皆が助かった。ありがとう、あの声はあんた達だったんだな。
そう、願いがかなった男が告げたその瞬間に。
散開の指示を出したのは誰だったのか。とっさに猟兵達が闘奴達を吹き飛ばし、自身達も大きく飛び退る。
衝撃と破砕音。人体など容易く粉砕されたであろう威力をもって叩き付けられた宝珠が宙へと浮かび上がり、空から降り立つ少女の周囲へと戻る。
「うーん、余計な干渉されたけれど、いい感じに願いが叶いそうだから見逃してあげたのに。ここで邪魔するかぁ」
異端の神の化身、フロイデ・へクセ。願いを叶え、それが叶った瞬間に大事なものを奪い去ることを好むもの。倒すべき敵、オブリビオン。
「じゃぁ、仕方ないね」
『それ』が、笑う。
「皆殺して、絶望してもらわないと」
その言葉が、決戦の開幕の合図となった。
ショコラッタ・ハロー
人の運命を弄んで、神サマ気取りか
おまえのような悪党から盗むのがおれの流儀だ
命もろとも全てブン盗ってやる
敵攻撃の直撃を受けないよう、回り込むように駆けて距離を詰める
致命傷になりうる攻撃は前転などで避けるが、そうでなければ足を止めない
生贄面談には全てNOと答える。お前にくれてやるYESは一つもない
喰らったぶんは、きっちりおれのダガーでお返しをくれてやる
距離を大きく取られたら、「盗賊姫の宝石箱」を使う
生み出した蛇腹剣をブン回し、敵が怯んだところで再び間合いを殺す
仲間たちの動きに合わせて、波状攻撃で敵の攻め手を削いでいこう
闘奴たちの手前、ださい姿は見せられねえ
あいつらの勇気に、おれも報いてみせる
八幡・茜
闘奴たちの願いを真かなえるのはこの私よ
ふふふ、そして後でたっぷりいい子いい子して甘やかすんだから! 今までつらかった分が帳消しになるくらいに、この美人なおねーさんがね!
相手は強敵、油断ならないわ
生まれながらの光で仲間を癒すことを最優先に行動するとしましょう
危なかったらおねーさんのところに来てね、どーんと癒してあげるわ!
と声をかけつつ、癒している最中に攻撃されないように敵の視界の外にいるように心がけるわ
そんなことをしなくても他の人たちが隙を与えるとは思わないけどね、念のためよ!
どれだけ疲れても気にしないで癒すわ、ここが正念場だからね!
でも沢山疲れたら、誰かを甘やかしておねーさんも癒されたいわね!
ムルヘルベル・アーキロギア
「悪魔の辞典」に曰く、幸福とは他者の不幸を見て得るものだという。自ら蜜の味を求めるとは、随分卑しん坊な魔女もいたものよ
しかしわざわざUCを使ってまで喰らおうとするのだ、ならば望み通り絶望の表情を見せてやろう
「浮かれていたワガハイが愚かであった! 頼む、助けてくれ……」
彼奴がまんまと宝珠を放った瞬間【553ページの悪魔】を使い、それを逆に魔神に食らわせるのだ
開幕の一撃はしっかり観察済みゆえ、不足はない
「これがシャーデンフロイデか。たいしたものではないな」
「オヌシの業は語り継がれもせん。空言につられ、騙られるが似合いよ!」
そう言って彼奴を煽り、揺さぶって隙を作る。致命の一撃は仲間たちに任せよう
オリヴィア・ローゼンタール
現れたな、異端の神――!
貴様らの圧制の元で研ぎ澄まされた叛逆の牙、その身で味わうがいい!
【血統覚醒】で神殺しの全力を発揮する
【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏う
破邪の聖槍よ、今こそその役目を果たす時!
神速で駆け抜け(【ダッシュ】)、全身全霊を以って聖槍を振るう(【怪力】【鎧砕き】【なぎ払い】)
私たちこそが貴様の絶望、邪悪を狩り立てる猟兵が現れたと識れ!
敵の攻撃は強化された【視力】で【見切り】、【武器で受け】、的確に反撃(【カウンター】)を叩き込む
防ぐことも躱すこともできないなら根性(【激痛耐性】)で耐える
邪悪な炎では私を殺せはしない(【火炎耐性】)!
リミティア・スカイクラッド
ようやく本命のご登場ですか
世界が違っても、古い神にはロクなのがいませんね
早々にご退場願いましょう。リムは邪神殺しを遂行します
エレメンタル・ファンタジア使用
現出させるのは「雷」属性の「嵐」
「頭上と鼓膜にご注意を」
味方に注意喚起しつつ、無数の落雷を戦場に降り注がせ、敵を攻撃します
同時に、何重にも轟く雷鳴で、敵の言葉をかき消します
どのような問いかけも、心揺さぶる言葉も、聞こえなければ無意味です
「邪神の言葉に耳を傾けてはならない。魔女ならば誰もが知っていることです」
雷は古くより神の裁き、特に最高神かそれに匹敵する高位の神格の権能とされてきました
神を倒すに、より強き神の力を借りる。これも定石です
四季乃・瑠璃
瑠璃!神様出たよ!神様殺すのとっても楽しそう!
そうだね、緋瑪。翡翠もお願いね
本体は瑠璃。
先制でジェノサイドボム(以下ボム)を接触式、閃光、煙幕仕様を生成。様子見の一発と共に2章の看守戦同様、敵の視界を封じ、【ダブル】発動。今回は分身の緋瑪が正面から無数の接触式ボムで【範囲攻撃】の雨を放ち、瑠璃も回り込み同じく攻撃。
ただし、今回は2章での戦いを見られていると想定 。隠し玉として、別人格の一人、翡翠を憑依させた自立人形を起動。緋瑪と逆方向に翡翠。更に三角となる位置に瑠璃が配され、敵を中心に三角に包囲する様に囲み、3人で敵を爆殺するよ♪
また、敵の杖と宝珠が敵の攻撃の要と見て【鎧砕き】で武器破壊も狙う
河南・聖
【spd】
一度は過去へと捨てられた存在が未だに神様気取り
しかもやってる事は人の命を駒にしたお遊戯ですか?
そんなに『絶望』がお好きなら、どうぞご自身の絶望で満足してくださいな
全力でお手伝いしますよ?今、ここで。
そんな感じで【挑発】して、最初は普通に両手の剣で戦います
でも普段魔法ぶっぱが多いので普通に不利でしょう
けれどそうやって相手の油断を誘って
尚且つ真の姿1(見た目変わらず漆黒のオーラを纏う)の今なら
タイミングを見誤らなければ
【全力魔法】を剣に付与したこのユーベルコードだって当てられるはず!
むしろ外れたら絶体絶命なので何が何でも当てます!
「全力でお手伝いするって言いましたよ?私」
ジロリア・アンブッシュ
ええ、わかってるわ『あなた』。
ここからが本番ね。
「皆さん、散開して退避を!」
闘奴達に散開してこの場から離れるよう伝えつつ右の手袋を取り、火傷跡(聖痕)が残る右手の指先で敵を指し【怨霊轟天雷】。
豪雨による視界不良で敵の闘奴達への狙いを付け辛くし、落雷で「飛んだら落雷の的」という状況を作り、敵が猟兵との戦闘に集中せざるを得ない状況を作る。
他の猟兵の攻撃の邪魔にならぬよう、豪雨は闘奴達の退避が終わり次第止ませる。
(質問への返答)
私の願い?
勿論、あの人(亡夫)が安心して眠れるよう、あの人の代わりにあの人が望まぬ存在を、全テコノ世カラ消シ尽クス事デスヨ?
(目から光が消え、狂気を露わにした怖気を齎す笑顔)
ハリッサ・ミシェル
……嗚呼、すっかり忘れてた。今回の仕事は“助け出してからが本番だった”よ。
せっかく全員生きてるんだ、ここで最後の詰めを誤るわけにはいかない。
来い、相手になってやるよ「神様」。
けど理解しとくんだね、たとえ神であっても触れちゃならないタブーというのがあるのさ…‥!
それは罪もない人たちの命を、魂を踏みにじって、そこから染み出す汁を啜って喜ぶことだ。闘奴は、いや人間は、お前らみたいな奴等の嗜虐心を満たすための果実じゃあ無いッ!
先の戦闘とは打って変わって、的確に闘う。
未来を見ているかのように振る舞い、攻撃を避け、カウンター。それこそ、今まで皆がされてきたことを返すように。奴を踏みにじるように、戦うんだ。
●抗戦、雷鳴下りて
それは、確かに神であったのだろう。その威容、その威圧。神としてあったが故の傲慢なる瞳。
だが。たとえそうであったとしてもその存在はオブリビオン……過去よりの侵略者であり、それはつまり過去の遺物。
ならば、未来へと生きる彼らが何を恐れることがあろうか。
少女の姿をした異端の神が手に持つ杖を掲げようとした、その動作を遮るように投げ込まれる爆弾。とっさに打ちはらい目を向ければ、そこには【オルタナティブ・ダブル】で緋瑪を呼び出した四季乃・瑠璃(瑠璃色の殺人姫・f09675)が笑っている。
「瑠璃! 神様出たよ! 神様殺すのとっても楽しそう!」
「そうだね、緋瑪」
脅威である神すらも、己の殺人嗜好を満たすための玩具であると愉し気に訴える姉妹に、瑠璃はどこかおかしげな笑みを浮かべていた。何も変わらない姉妹は、先までと変わらぬ動作でその手に爆弾を生成する。
――翡翠もお願いね。
声にならぬ意志は、もう一人の“姉妹”へのもの。彼女達の陰に隠し玉は潜む。
「調子に……っ!」
苛立ちを含んだ表情で彼女達を睥睨し、宝珠へと差し伸べかけた手が再び杖に添えられる。斬りこんできた二閃の斬撃を杖で受け止め、異端の神は己を前にしてなお折れぬ光を持つ四つの瞳と視線を合わせた。
「人の運命を弄んで、神様気取りか」
ショコラッタ・ハロー(盗賊姫・f02208)はその燃える闘志のままに。
「お前のような悪党から盗むのが、おれの流儀だ。命もろともブン盗ってやる」
敵意をもって、神が持つ杖へとダガーを押し込み。
「一度は過去へと捨てられた存在が未だに神様気取り。しかもやってる事は人の命を駒にしたお遊戯ですか?」
河南・聖(人間のマジックナイト・f00831)は冷徹に嘲笑でもって。
「そんなに『絶望』がお好きなら、どうぞご自身の絶望で満足してくださいな。全力でお手伝いしますよ?今、ここで」
両手剣を振り切らんとその腕に力を込める。
鍔迫り合いは、しかしそれでも異端の神に軍配が上がった。両手剣と短剣を強引に受け止めた姿勢からでも、膂力でもって杖を振り切り二人を弾き飛ばす。
「人間風情が知ったように……! あんた達は、私を楽しませる玩具に過ぎないくせに!」
精霊の力が膨れ上がる。空が揺れるようなそれは苦鳴か、従属精霊を生贄にしてその力を杖に注ぎ込まんと構え。
直後、異端の神の周囲にあった宝珠が飛翔し拳打と炎槍の突撃を阻む。神が己が愉悦の為、虫を殺すかのように潰そうとした闘奴の肩書を過去に持つものと、この世界において異端の神と同じ支配者の地位にいる者の血を引くものの覚悟の一撃は、阻まれて尚障害を打ち砕かんと力がこもる。
「たとえ神であっても触れちゃいけないタブーというのがある……!」
ハリッサ・ミシェル(《呪われし者》にして“元”闘奴・f06367)は告げる。傲慢なる神にその拳を向けながら、弄ばれかけた者達と同じ立場を知る彼女は。
「罪もない人たちの命を、魂を踏みにじって、そこから染み出す汁を啜って喜ぶことだ。闘奴は、いや人間は、お前らみたいな奴等の嗜虐心を満たすための果実じゃあ無いッ!」
心は熱く。されど頭は冷静に。先の看守との戦いで見せた修羅のような闘志を内に溜めて吠え。
「――異端の神」
その瞳は真紅に。神殺しの全力を発揮したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の姿は、ヴァンパイアのそれと変わらぬ姿となりながら。
「貴様らの圧制の元で研ぎ澄まされた叛逆の牙、その身で味わうがいい!」
しかし確かに人の心を、この世界に住む虐げられる民を想う心を持って吠え。
二人の突撃は宝珠に罅を入れ、砕き、されどもその瞬間に生じた衝撃に足を止められた。
「所詮その程度の、それだけの力しかない人間。私を苛立たせないで、私を愉しませなさい。あんた達の命はそのためにあるのよ!」
贄とした精霊の力を宿し、属性暴走状態となった杖を振るう。そのまま魔力を操作して空へと浮き上がり、杖に宿した光を己に向かってきた猟兵達へ振り下ろさんと掲げ。
ぽつり、と。異端の神の頬に落ちる雫。思わず彼女が見上げれば空は暗雲に閉ざされ、なけなしの日の光すら閉ざされていた。
幸先の悪い、と人間たちならば思う状況。異端の神はにいと口を歪める。自分にとって都合のいい状況だと、そう思えたのだ。
――つい先ほどまで、弱々しくも日の光が射していたことを思い出すまでは。
「頭上と鼓膜にご注意を」
「皆さん、散開して退避を!」
【エレメンタル・ファンタジア】により嵐が呼ばれ、聖痕たる火傷痕を晒した手の指先は異端の神を指示している。
「属性展開完了。神の裁きを此処に顕現します」
「その怒りは、形と成って……」
リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)が選択した属性は雷。ジロリア・アンブッシュ(燈狼の未亡人・f05791)が用いたのは【怨霊轟天雷】。
それは、何処かの世界で最高神とも称された天神が持つ武器。神に対するにはより上位の神の力を頼るというのは、実に道理に従った選択だろう。
「あんた達……まさか……まさか! 今すぐそれをやめろぉ!!」
狙いを少し離れた二人に変えようとするも、間に合わない。否、気付かず間に合うこともないように猟兵達がこの状況を組み立てていた。
「「雷鳴よ、下れ」」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
唱和する声と共に雷霆が下る。二つ合わさったユーベルコードは、過去に神であったものを焼き焦がして地に叩き付けた。
●継戦、その機を知りて
「今のうちよ、皆巻き込まれないように離れてー!」
いきなり吹き飛ばされたかと思ったら、今度は次元の違う戦闘を見せられ呆然としていた闘奴達は八幡・茜(妖狐の戦巫女・f04526)に駆けられた声に意識を取り戻す。
彼らの行動は迅速だった。呆けていては猟兵達の邪魔にしかならない、下手に散らばるのも護りの手を割くことになる。終結し一丸となって、戦場から距離を取って退避していった。
「よーし、いい子ね。あとでこの美人なおねーさんがたっぷりいい子いい子してあげるからね!」
それは俺を? いや俺だろ。 馬鹿言うな俺に決まってる。
この状況だと言うのに一瞬欲望に素直になりかけた闘奴達に背を向けて、茜は戦場へと向き直る。
先制の一撃を奪い、さらにジロリアの思惑通り散発的に雷撃が降る状況とすることで制空権を与えないことには成功した。しかし、それでも戦況優位とはいいがたい。
攻勢に出ていたハリッサの足がほんの一瞬止まる。それを狙って宝珠から放たれた光芒を、動きを取り戻した身をねじって回避するが掠められるだけでも想念を持っていかれるのだろう、その息は決して軽くはない。送り込まれた絶望を振り払うことは容易いが、しかしその感情は一瞬足を止めるだけの効果は有していた。
庇うように前に出たオリヴィアへ杖が襲い掛かる。槍を振るい受け止めるが、そのたびに槍に纏う炎が吹き上がりオリヴィア自信を焦がす。火炎と激痛への耐性に任せて強引に身体を動かしカウンターで槍を叩き込むものの、被害自体はオリビアのほうが大きいか。
茜の手から零れ落ちた【生まれながらの光】が、二人へと飛んでその傷と想念を癒す。二人は怯むことなく戦闘を継続するが、癒しの力を用いた分だけ茜の体力が削られる。彼女の息は既に上がり始めていた。
「なかなか状況としては厳しいものとなっているか」
掛けられた声に振り替えればムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)が厳しい目を向けている。茜に対しても散発的に放たれる異端の神からの攻撃を迎撃しながら機を伺っていた彼だが、その目にも状況は五分ていどだろうと見えていた。
「『悪魔の辞典』に曰く、幸福とは他者の不幸を見て得るものだという。自ら蜜の味を求める卑しん坊な魔女だと思ったが、しかしなかなか粘るな」
「ええ、強敵ね、油断ならないわ。でもここが正念場、おねーさん頑張るわよ!」
ぐ、と拳を握る茜を横目にムルヘルベルは再び戦場へと目を向ける。機は来る。確かに一度技を見た、その起点さえ解れば手はあるのだ。故に、彼は状況を観察する。
他の猟兵の動きの邪魔にならぬよう、また直撃を受けぬよう回り込むような行動を意識するショコラッタ。聖の方へと意識を向けたらしき隙を狙い踏み込むが、首を返しねめつけてきた眼光が絶望を植え付けてくる。
とっさに前転、宝珠から放たれた光芒をやり過ごし湧きあがった感情を即座に振り払い、叩き付けたダガーがつけた傷は浅い。オブリビオンであるが故か、見た目は少女であってもその身体の頑丈性は人のそれとは異なっていた。
傷つけられたことに苛立ちの表情を浮かべた神が、さらに宝珠からの光芒をショコラッタに放とうとしたところで背後からの両手剣の斬撃。振るわれた杖から逃げるように即座に聖が下がり、同時にショコラッタも異端の神の制圧圏から逃れる。
直後に爆音と閃光。三方から投げ込まれた爆弾と閃光弾が神の目を灼くが、動きを止められる時間は数を重ねるごとに短くなっていた。もはや鬼の形相と化した眼で睨みつけようとして、既にその先に仕掛けた瑠璃……あるいは緋瑪か、翡翠を宿した自動人形がいないことに舌打ちをする。
「ちょこまかと……! あんた達、」
放とうとした言葉は雷鳴の轟音にかき消される。リミティアが問い自体を成立させぬようにと疎外の為の雷撃を落とし、そうして生じた隙に今度はハリッサとオリヴィアが踏み込む。
「――左からの薙ぎ払い、狙いは頭!」
「解りました!」
【絶望の福音】によるものだろう。とっさに振るう杖の軌道を予測しハリッサが声をかければ、諾の言葉と共にオリビアが身を下げる。杖は空振り、勢いづいた拳打と炎槍による連撃を受けた神の足が空に浮く。衝撃で飛ばされた彼女の体は、ジロリアの近くへ。リミティアと同じく落雷を攻撃の主体としていた彼女は即時、神を指さそうとし。
神の口角が持ち上がる。オリヴィアとハリッサによりリミティアから影になるタイミング。今ならば問いを阻害するものはない。
「ねぇ、あんた。あんたの願いは何?」
願いを叶える神の問い。とっさに偽りを吐けば、いや、真実以外を口にすれば宝珠が対象を撃ち抜くその仕掛けは、しかし、相手が悪かった。
「私の願い? えぇ、それは勿論、あの人が安心して眠れること」
ジロリアは笑顔で応じる。宝珠は動かない。
「その為に、あの人の代わりにあの人が望まぬ存在を。全テコノ世カラ消シ尽クス事デスヨ?」
言葉の内容それ自体は、猟兵であればよくあるものであったかもしれない。けれど、異端の神は彼女の表情を真正面から見てしまっていた。亡き夫を語る彼女の笑みを。そこに含まれてしまっていたものを。
「……っ、わけ解んない! あんた……駄目、じゃぁあんたでいいから答えなさい! 私が願いが欲しくないの!?」
「要らねぇよ!」
深淵から逃げるように問いかけた先にいたのはショコラッタ。即答した彼女だが、宝珠は反応した。異端の神に叶えてもらうような願いなど無いとしても、願いそのものがないということはない。故に真実ではない、そう判断されたのだろう。放たれた宝珠がショコラッタを打ち据える。
だが、初めからどんな問であろうとYESの答えを持たなかった彼女はその一撃を覚悟していた。痛みに歯を食いしばりながらでも、強引にダガーを叩き付けるように振るい。
そして、執筆者が嗤う。書きあがった筋書きの始まりは、もう間もなく。
●我ら猟兵、神を穿つ刃とならん
異端の神は、猟兵の一人が孤立したことに気付いた。今戦場にいる中で唯一の男。それぞれがそれぞれの役を果たすため、足を止めぬ中でほんの一瞬の空白のように浮き上がってきた存在。
邪魔をするリミティアへと杖を振るって氷を飛ばし、雷撃を迎撃に用いさせて神は駆けた。己に迫る姿に気付いたその男は、驚いた様子で地に尻をつく。その表に浮かぶのは絶望だろうか。そうだ、それでいいと神は笑う。
「ねぇ、助けてほしい?」
故に、問いと宝珠を放って。
「あぁ、浮かれていたワガハイが愚かであった! 頼む、助けてくれ……」
男は……ムルヘルベルは応え。
宝珠はムルヘルベルを撃ち抜かんと空を駆け。
「禁書「応報論概説」に曰く、"ヒトは自ら復讐するに能わず。ただ魔の威に任せよ"とある。さあ、いざや来たりて報え、復讐するは汝なり!」
ムルヘルベルの手に持つ禁書から飛び出した魔神がそれを相殺する。
「……え?」
「これがシャーデンフロイデか。たいしたものではないな。……皆、今だ! 畳みかけるがいい!」
意識の空白を突かれたこと。放った攻撃が相殺されたこと。それらが重なり合って、異端の神出会った少女は今、確かに無防備な隙を晒していた。
この好機を見逃す猟兵など、居るはずもない。。
「うん、殺っちゃうよ♪」
「私は武器を奪うね」
放たれたのは三つの接触式のジェノサイドボム。一つが神の頭を揺らし、一つはその手に持っていた杖を飛ばし、最後の一つは杖を爆砕させる。
「――お前の命を、盗ってやる」
ぐらり、揺れたその体に巻き付くのは蛇腹剣。【盗賊姫の宝石箱】により生じた幻影の武器が神を拘束し、駆け抜けるショコラッタの刃が首を割く。
「お前が踏みにじってきたもの。その痛み、思い知れ
……!!」
首を抑えた神の腹に拳がめり込む。地を踏みしめたハリッサの、怒号と共にその体を殴り飛ばす。地を跳ねて転がる神を追いかけるのは、銀の髪をなびかせる修道女。
「破邪の聖槍よ、今こそその役目を果たす時……貫け!」
炎槍が腹を穿ち、そのまま神であったものを地に縫い留める。
武器を奪われ、首を割かれ、打ち据えられて縫い留められ。それでもまだ『それ』は動いた。
「あんた達……殺してやる、絶対に、殺して……」
呪詛と共に手を持ち上げる。今使える武装、召喚できる宝珠をその手に呼びだそうとする『それ』の前で。
「さすがにこの状況なら外しようはないですよね」
全力を込めた魔法を纏う両手剣が持ち上がる。もし外せば後がない、完全に使い切りの全力攻撃だが、完全に縫い留められていては防ぎようも避けようもない。
閃く斬撃の数は猟兵達でもってしても数えることはできぬ、中断することもかなわぬ超高速の連続斬撃。いかに頑健な肉体を持つ神でも、再生力を持つ神でも、それに耐えきることは不可能。
「全力でお手伝いするって言いましたよ? 私」
躯となった『それ』に聖が声をかけるが、返答などあるはずもなく。ここに、神殺しは為った。異端の神出会ったオブリビオンは、猟兵の手により死したのである。
「……オヌシの業は語り継がれもせん。空言につられ、騙られるが似合いよ」
ムルヘルベルが呟くように零した通り、語り継がれる何事をも遺すことはなく。
●そして、明日へ
――異端の神。今回の標的を討滅し、猟兵達はその仕事を完遂した。なれば、後に待つのは別れのみ。
ありがとう、と。その言葉以外見つからない闘奴達の様子に笑いあってから、これからどうするのかと問いかける。
彼らはそれぞれ顔を見合し、そして笑った。どうとでもしてみせる、と。猟兵達の手により自由と依頼を手に入れたのだ。こんな世界でも、それでも抗って生き延びて見せてやる、と。
「……お前たちが立ち上がったから、あのオブリビオンを倒せた。おまえたちの勇気を尊敬するぜ」
ショコラッタの言葉に照れたように頭をかく闘奴がいる一方で、茜にいい子いい子される順番待ちの列ができていたりするのはご愛敬。
ひとしきり名残を惜しんだのち、彼らを見送った、一割の奇跡を本当の奇跡へと昇華した猟兵達。彼らが振り返れば、彼らが囚われていた闘技場は焼け落ちて残骸の姿をさらすばかりとなっていた。それを見上げてムルヘルベルがふと口を開く。
「……こちらに来た時の転移先があれあのようになっておるが、ワガハイ達はどこから帰るのだ?」
「……それは、闘技場を焼き払った張本人が言っていい言葉ではないと思います」
彼らを必死に探す迎えのグリモア猟兵と合流する前の一幕である。
成功
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最終結果:成功
完成日:2018年12月26日
宿敵
『フロイデ・へクセ』
を撃破!
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