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新世界へようこそ

#UDCアース


 憧れのVR。
 家事の手伝いをして、お小遣いを貯めて、やっと手の届いたVR。
 新品は買えなかったけれど、最新のとは言えないけれど、それでもやっと買えたのだ。
「えへへ、これで遊べるんだよね!」
 少女が箱を開き、取り出した際の重み。
 これから広がるであろう空想の世界への期待。
 説明書を読むことすらが楽しくて。
 全てが初めてで、胸がドキドキと高鳴っている。
「えっと、こうやって被るんだよね」
 今日は両親の不在日。
 だから、気兼ねなく、心行くまでVRの世界を堪能できる事だろう。
 装置の準備は万端。今は視界も塞がれて、何も見えないが、きっとこれから――。
「――え?」
 スタートアップを始めた画面。
 しかし、その画面に映るのは見覚えのない女学生の少女。
「装置を御購入頂き、誠にありがとうございます……と、言えば良いのかの?」
 慇懃に一礼をしたかと思えば、その女学生の顔に浮かぶのは嘲笑。
 今はVR装置に覆われ、外界よりは見えない少女の顔に困惑が浮かぶ。
「何、こんな始まり方なの? ソフトの選択を間違えたとか?」
 困惑のまま、少女はVR装置を外そうとするが――。
「――あれ?」
 それを外すことは叶わない。いや、いつの間にか巻き付いたコード類に手足を絡めとられ、身動きすら取れないのだ。
 困惑の次に浮かぶは混乱。
「――これより始まるは、汝という器の中身を零し、新たなる中身を注ぎ込む儀式」
 混乱に陥る少女をよそに、朗々と女学生は唄う。
 言葉の意味は分からないが、それが良くない事であろうことだけは、少女には理解出来た。
 故に、戒めを解こうと暴れるが、それが解ける様子はない。
 始まるのは極彩色の画面。
 視界から侵入し、頭の中身を洗い流すようなそれ。
「助けて……頭が、頭が割れそう。誰か、たすけ……」
 助けを求める声は誰の耳にも届かない。
 そして、抵抗は次第に弱く、儚く、消えていく。
「――それでは、これまでの汝に別れを。そして、新たなる汝に祝福を。ようこそ、こちら側へ」
 ゴトリと落ちた装置。その下の面貌に浮かぶは無。
 邪教の徒が世に忍ばせた罠は、1人の少女――その内面を新たなものと作り替えたのであった。

「なんてぇ、許しておくわけにはいきませんよねぇ」
 予知にて垣間見た情報を憤懣やる方なしと言わんばかりに告げるは、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 ぷんすこ、という擬音が聞こえてきそうな怒り方。また、間延びした声が故か、今一つ迫力と言うものには欠ける。
「――コホン、失礼致しましたぁ。ええとぉ、今回、皆さんにお願いしたい依頼はですねぇ」
 語られた世界はUDCアース。そのとある住宅街が一軒家での出来事。
 そこで1人の少女がVRゲームへと勤しんでいるだけの筈であった。
 だが、実際にはそれは邪教の徒が流した数多ある罠の1つ。
 それは装着者へと寄生し、乗っ取る事で新たなる邪教の徒を生み出すプログラム――通称、ジャガーノート。
「予知の通りに寄生が完了してしまえばぁ、もう手遅れですねぇ」
 そうなってしまえば、出来るのは介錯のみ。
 しかし、今回はそうではない。そうではないのだ。
 それがまだ完了しきる前に猟兵達は現場へと到着できる。
「時間的余裕がそう多くある訳ではありませんがぁ、それでもまだ助けることも可能な状況ではありますぅ」
 どうすれば助けられるのか。それは手探りで探していくしかないだろう。
 勿論、優先されるべきはジャガーノートの破壊であり、少女の命は可能ならばの範囲でしかない。
 どのように判断し、行動するかは猟兵達へと一任されるのだ。
「周辺の区画は組織の方が封鎖してくださっていますのでぇ、人払いは問題ありませんよぉ」
 戦場となる一軒家は庭に面したリビングであり、そこまで行動を阻害されることもないだろう。
「そしてぇ、ジャガーノートの破壊が出来ればぁ、恐らくは黒幕も現れるかとぉ」
 黒幕。恐らくは、予知の内容に出てきた女学生がそうなのであろう。
 戦闘方法の詳細は不明だが、女学生の姿だからと油断は出来ないことは想像に難くない。
「あ、それとぉ、戦闘が終われば多少帰還まで時間もありますよぉ」
 何やらレトロから最新機器までを扱ったゲームセンターがあるらしい。
 そこで一息入れ、心の洗濯というのも悪くはないだろう。
「皆さんが思う最善。それを選び取ることを願っていますね。それでは、ここまでの案内はハーバニー・キーテセラ。皆さんの良き旅路を祈って」
 ――いってらっしゃいませ。
 懐中時計から投影されたグリモアへ銀の鍵が差し込まれ、捻り、カチリと開錠音。
 そして、猟兵達の世界は切り替わる。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 1章、2章は戦闘、3章は日常という構成。
 1章の戦闘に関しては皆様の行動次第で、少女の命が繋がれるかどうかが決まります。
 少女存命の有無に関わらず、ジャガーノート撃破の目標達成で自動的に2章へと進みますので、どう扱うかは御随意に。
 3章に関してはハーバニーも居ますので、1人での参加はちょっと……という方はお気軽にご利用ください。

 また、2章、3章からの参加も歓迎致しますので、遠慮なくどうぞ。
 皆様のプレイングや活躍を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『『ジャガーノート』寄生未完了体』

POW   :    《Now Loading...》
戦闘力のない【電子データ】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【寄生完了を加速させるプログラム】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    助けて、誰か
【寄生された子供の生存願望を叫ぶ悲痛な声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    《緊急防衛モード、作動シマス》
【寄生対象者の生命力】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【自身を緊急防衛モード】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
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 猟兵達の突入した一軒家。
 庭に面した窓ガラスを踏み越え、見つめた先には装置囚われる10代半ばの少女。
 明滅繰り返す頭部覆うヘッドギアが、心臓のように脈打ちコード伸ばす基盤が、現在進行形で駆動していることを示す。
「たす……けて……」
 窓ガラスの割れる音へ反応したのか、それともただの偶然なのか。掠れ、消えそうな程の声量ではあるが、少女の口より確かに響いた助けを乞う声。
 それは、まだ少女が少女たる意識を残している証拠。
 だが、その弱弱しさから時間はそう残されていないことを猟兵達は感じ取る。
 故に、猟兵達は各々の信念に従い、それぞれの得物を握るのであった。
ニニニナ・ロイガー
VR機器を買えて好きなだけ楽しめる環境とか羨ま…
あ、なんでもないっす
真面目にお仕事するっす、はい

さて、プログラムで乗っ取りを試みるってことは…
視覚あるいは聴覚経由っぽいっすかね?
目と耳を塞げば、しばらく時間を稼げそうっすね~

てことで【見えざるモノ】で不可視の触手召喚っす
隙間からヘッドギアの内側に侵入させて
瞼を閉じさせる&触手を耳栓にして時間稼ぎっすよ~
ついでに内側からヘッドギアを剥がしたり壊したりできないか試してみるっす
さあドビーちゃん出番っすよ~

…はぁ~
しかし、子供の夢を壊しっぱなしで帰るわけにも行かないっすよね
仕方ないっす
同じ型番のVR機器を代替品として買ってくっすよ
なけなしの給料で!!!


トリテレイア・ゼロナイン
少女の救助を最優先で行動

まだ助かるというのなら、どんな危険を冒そうとも助け出してみせましょう
それが私の騎士道です

コードの攻撃を●見切り、●武器受け●盾受けで防ぎつつ接近
少女の傍にたどり着いたら、彼女と●手をつなぎ、励ましつつジャガーノートに●ハッキングを仕掛け、寄生プログラミングを解析、解除を試みます

握った手がわかりますか? もう、大丈夫です。私達がいまお助けします。

ハッキング中はジャガーノートの攻撃を甘んじて受けることになるでしょうが、少女の苦しみを想えばここで倒れる訳にはいきません

もし他に電子戦が得意な方が居れば解析データは全てお渡しします
取り外しの安全性が確保出来たら●怪力で慎重に破壊


ジョー・グラム
「呼んだかい、お嬢ちゃん」
呼ばれたんじゃ、来ないわけないはいかないだろうさ。

少女本体をなるべく傷つけないように、コード類を狙って攻撃する。
チャンスを伺い、接近出来たらヘッドギア目がけてガジェット叩き込む。
注射器型ウィルス投入ガジェット「処理落とし」で、敵の処理の進行を暮らせる。
「もう少しだ、今その頭のを叩き割ってやる」
「まだやりたいことがあるんだろう。踏ん張ってくれよ」
ヘッドギアの攻撃が緩んだら、少女から引きはがせるか、試してみる。
「いい加減に離れやがれ」


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略・アドリブOK
【バッドラックキャット】
うーん、可能なら助けたいけど先代様の力で可能性がありそうなのは10代目と11代目の力…どちらに絞るべきかにゃあ(悩)
ここは、11代目の運勢操作:不幸に賭けてみるのにゃ。
レフティは不吉なオーラを全身に纏った子猫に変身し、髭感知で敵の動きを見切り、敵の攻撃を肉球や爪で受け、肉球バッシュやねこぱんちで反撃していくにゃね。
そして受けや反撃の過程で全身の不吉なオーラに触れた敵(装置)を不幸にしていくのにゃあ。
少女は敵ではないから敵である寄生体の不幸をおびきよせるにゃね。
これで上手く寄生体にとっての不幸を、寄生失敗やドジ等のポンコツ化してくれると良いにゃあ。


婀鎖路・朔梛
助けられる可能性があるならあたしは諦めたくないよ。
それにみんなだってこのままこの子の命が敵に奪われるのは凄く癪でしょ?

あたしは他の仲間が戦っている間に戦闘に巻き込めれない所で敵に【ハッキング2】して寄生の邪魔をするよ。

敵を【情報収集2】で解析してハッキングしていくけど、相手とは【だまし討ち】や妨害のし合いになると思う・・でも電脳魔術士として機械に負けられないんだよね!

物理的な体のコードとかは仲間がどうかしてくれると思うし、あたしが【時間稼ぎ2】してる間にみんな頼んだよ?

さあ、ジャガーノート勝負といこうか。

※アドリブ&絡み歓迎



「だれ……か……」
 零れる声は掠れ掠れ。
 助けを求める手は伸ばそうにも戒められ、その手はどこへも伸ばせない。何も掴めない。
 少女にあるのは極彩色の光景と鑢掛けされるように削れていく自我だけ。

 ――その筈であった。

「呼んだかい、お嬢ちゃん」
 その耳朶に僅かと届いた、ある筈のない声は渋く。しかし、薄れゆく少女の意識の中へと確かに届いたそれ。
 その声の主、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)が紫煙燻らせ、飄々とした風体を世界へと晒す。
 だが、少女の耳へと齎される声はそれだけではない。
「ジョー様、紫煙は些か少女の身体には毒かと」
「おっと、こいつは失礼」
 次いで姿を見せたは勇壮なる白銀の騎士。
 咳払い一つと共にトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は折り目正しく、己の中の規律に従い、言葉を零す。
 そこにあるのは咎める色ではなく、純粋に少女の身体慮る色。
 勿論、ジョーもまた心得たもの。お道化たように咥えたシガレットを素早く携帯灰皿へ。
「VR機器を買えて好きなだけ楽しめる環境とか羨ま――」
「ニニニナ、ニニニナ、本音が漏れてるにゃあ」
「はははっ、面白いお姉さんだね」
「――むあ、なんでもないっす。真面目にお仕事するっす、はい」
 隈の浮いた顔にあるのはどこか疲れたような。それは今が原因か、はたまた過去か。
 思わずと零れた言葉も、どこまでが本音か。どこまでもが本音か。
 その肩にあるは小さき影。頭頂に獣の耳が如き装いあしらう妖精の子、レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)。
 頬にペタンと肉球ツッコミ。その柔らかな感触をニニニナへと伝える。
 その反対側には婀鎖路・朔梛(表裏一体の双子・f12701)。その瞳に一瞬煌いたのは別の光があったようにも見えたのは気のせいか。
 レフティの行動に合わせたのか、天真爛漫と真似をしてニニニナの頬を突く。
 視界塞がれ、聴覚は遠く、外界の刺激に対する反応が鈍っていた少女は、猟兵達の登場を正確に把握できていた訳ではない。だが、家にある筈のない紫煙の香りが、自分以外の誰かによって動かされる空気が、何者かの登場があったと少女へ知らしめるには十分なものとなっていた。
「おねが……たす……」
 だからこそ、少女は気力を振り絞り、その希望へと縋りつく。
 どうかお願い、助けて。と。
「ああ、勿論。呼ばれたんじゃ、来ないわけにはいかないだろうさ」
「助けを求める声に手を伸ばすが騎士の役目。そのために、私はここに」
「さて、ちゃちゃっと解決しちまいましょう。それがお仕事っすからね」
「にゃ、力を合わせればきっと大丈夫にゃ。だから、諦めちゃだめにゃよ」
「助けられる可能性があるなら、あたしは諦めない。ここに居るみんなだってきっとそう」
 数多の世界から集い、世界隔てる境界を越え、今、猟兵達が少女を救わんと動き出す。
 必ず、助け出して見せから。と。

 動き出した猟兵達。それへと合わせるかのように、少女絡みつくコードもまた蠢いた。
「あ……が……」
 それは少女をきつく、よりきつくと戒め、その意識を刈り取らんとするかのように。
 ならば、そのコードを断てばよい。
 そう判じた猟兵の動きは早く、そして、なにより的確。
 ジョーの刃模したガジェットが、子猫へと変じたレフティの爪が、少女を傷つけぬままにそれを断つ。
 だが――
「切っても切っても、端から繋がっていくにゃ?」
「それだけじゃないようだな。来るぜ」
 ――コードは切られた端から銅線同士が生き物のように再びより集まり、結び、また繋がっていく。
 それだけではない、ジョーが指摘すると同時、それは新たなるコードを生み出し、鞭のように振るい、猟兵達を狙う。

「こういう芸当もありっすか!?」
 思わずと転がる様に倒れた机の影へと避難するはニニニナ。
 鞭打の嵐が過ぎ去るを伏して待つ。
 しかし、そこには既に先客の姿。
「あら、いらっしゃい。丁度良かった。ちょっと手伝って!」
 はて、とニニニナが覗き込んだ朔梛の手元、腕時計型の小型PCが展開するは電脳世界。
 そこに流れる情報は読み込まれ、処理され、魔法のようにと式が打ち込まれ続ける。
「あんな奴に、あの子の命がこのまま奪われるのは凄く癪でしょ?」
 ――だから、邪魔してやるの。
 笑んだ顔は強く、強く。
「なら、あたしは時間稼ぎっすね。いいっすよ。そういうのなら問題ないっす」
 釣られたようにニニニナもまた笑う。不敵に笑い合う女性2人。剣用いるばかりが戦ではない。影で密やかに進む戦もまた、火花を散らせ始めるのだ。

「これだと、近づくのも一苦労しそうか」
 向かい来るを捌くは出来るが、猟兵達と言えどもその嵐の中を踏み進むには相応の覚悟が必要となる。
 攻撃へとリソースを割いているからか、はたまた別の事象にリソースを割いているからか、捌く際に断たれたコードの修復速度は先程に比べれば落ち、時間を掛ければ光明も見いだせるかもしれない。
「いえ、ここで時間をかける訳には。まだ助かるというのなら、どんな危険を冒そうとも、助け出してみせましょう」
 ――それが私の騎士道です。
 しかし、時間を掛けるとは即ち、少女の命を諦めるということ。それを認める者はここには居ない。
 特に、騎士道を胸に掲げるトリテレイアであれば、猶更であろう。
 だからこそ、彼は己の信じる道を進むべく、真っ直ぐな1歩を持って嵐の中へと踏み込むのだ。
 嵐が吹き荒れる。無数の痛みを持ってトリテレイアを迎え入れたそれ。
 だが、騎士の歩みは止まらない。止まる筈がない。
「御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことをここに誓わん!」
 嵐に負けじと吼えたそれは誓願。神ではなく、己の胸に宿る誇りと、想いと、始まりの物語への。それがある限り、止まりはしないのだと。
 1歩が力強さを増す。身体が前に進み出る。
 1歩が力強さを増す。身体が更に前へと進み出る。
 それを幾たびか繰り返し、トリテレイアの身は機械囚われし少女の面前。
 まさしく、物語の一頁たる光景。
 騎士は艱難辛苦を乗り越えて、守るべき者の前へと辿り着いたのだ。
 トリテレイアの手が戒められた少女の手に触れる。
 ピクリと動いたそれはただの反射か。はたまた、コード這いずる触角以外の感触に驚いたからか。
「握った手がわかりますか? もう、大丈夫です。私達がいまお助けします」
 後者であるならば、まだ少女の意識は残されている。
 だから、トリテレイアはそれを信じ、声を投げかけ続けるのだ。
 それが少女の意識を現世へと繋ぎとめるものだと信じ。
 トリテレイアが緑のカメラアイは瞬き光る。
 それは同時、寄生プログラムから少女の魂を保護せんと、プログラムの進行を遅延させんとする試みを実行するため。
 だが、数多と打たれ続けている身体は既に悲鳴をあげ始めている。それを続けるには余りにも無防備が過ぎた。
 だからこそ――
「せめて、前もって相談をだな」
「無茶のしすぎにゃ!」
 ――その傘とならんと、彼らは駆けつけるのだ。
 トリテレイアへと攻撃が集中したため、0と1との火花が激しく散っているため、他の猟兵達への攻撃の手が緩んだその隙を逃すことなどなく。
 ジョーの刃が閃き、レフティの爪牙は衰えるを知らず。それは嵐の中に生まれた台風の目の如くと迫りくる脅威を退け続けた。

 ――そして、その時は遂に訪れる。

 影潜むニニニナと朔梛の形なき刃がプログラムを仕留めんと中枢へと踏み込んだのだ。
 しかし、それを良しとするジャガーノートではない。
『Now Loading...』
 ヘッドギアのディスプレイに描かれた文字列。それは激しく瞬き、宿主の精神瓦解を早めんと更に強度のプログラムが開始されたを示すもの。
 極彩色の光は最早何を示しているのかも分からない程となり、トリテレイアの加護あるとは言え、それはただの少女に耐えきれるものではなく、中身なき人形に――
「おおっと、そうはさせねえっすし、させやしねえっすよ」
 ――する筈の光景は、ヘッドギアの隙間から入り込み、少女の瞳覆うナニカによって遮られていた。
 それはニニニナの使役する不可視の触手。
 当人に曰く、恥ずかしがり屋だから姿を見せないということだが、それが本当かどうかは分からない。もしかすれば、誰もが姿を認識することを無意識に拒否しているのか。
 何はともあれ、ニニニナが姿見えなきを利点として忍ばせたそれは、見事に目的を達したのだ。
 そして、それにより生まれた時間は値千金。
 ハッキング試みるが中枢へと刃を突き立てるには、十分な時間。
「さあ、ジャガーノート。勝負といこうか」
 ここに至るまで、コードの動きを阻害すると見せかけ、攻性プログラムを流し込み、時に防壁を突破し、時に防壁に防がれを幾度も。
 だが、それはこの本命へと繋げるための情報収集でもあったのだ。
 0と1との刃が、只人の眼では捉えられぬ世界で奔り、ジャガノートのプログラム相手に火花と散る。
「電脳魔術師として、機械に負けられないんだよね!」
 朔梛の見える世界では吼え猛るジャガーの形を取ったプログラムの姿。
 それに負けじと手を動かし、吼え、それを組み伏せんとプログラムコードが駆け抜けるのだ。
「――獲った!」
 朔梛形成したコードの刃がジャガーの身体を深く深くと抉り、電子の泡へと還しいく。
 それへと連動するかのように、ビクリ震える本体より零れ出るコードの群れ。その動きは未だ止まってはいない。だが、嵐とも思えたものは今や散発的な動きに留まるもの。
「皆、今なら――!」
「おっけ、任せておくっす。さあ、ドビーちゃん。出番っすよ~」
 その言葉へ、いの一と反応したのはニニニナ。身に秘めし友へと声を掛け、呼び覚ます。
 応え、現れ出でたのは無数の触手持つ球根のようなそれ。
 見えざるモノの開いた隙間を更に広げ、剥がしとるように触腕が少女のヘッドギアを剥がしとる。その動きは意外にして繊細であり、決して少女を傷つけるようなことはなかった。
 喝采を伝えんと朔梛が向いた先。ドビーちゃんと呼ぶ触手を使役するニニニナの瞳――エメラルドグリーンともターコイズブルーとも取れる瞳に浮かぶは怜悧なる光。
 だが、それも一瞬のこと。次に朔梛が見た時には、にへら。と力ない輝きが戻っていた。
 あれは気のせいだったのだろうか。
 だが、そのことを彼女に問いただしたとしても、きっと彼女は気の抜けたような笑みを浮かべながら答えることだろう。
「嫌っすねぇ。アタシはただのUDC職員っすよ~」
 と。

 ヘッドギア弾き飛ばされ、視界開かれた少女の瞳。輝きは未だ戻らず、力なく外界を見つめるだけの瞳。
 魂削られ続けた少女の頭はまだ外界を認識しきれていない。だが、心は理解した。そこに誰かが居て、助けの手を伸ばしてくれているのだと。
 未だ光なき瞳から零れる一滴。
「まだやりたいことがあるんだろう。踏ん張ってくれよ」
「もうちょっとにゃ! 頑張るにゃ!」
 衰えた嵐は最早護りの傘を抜くには至らない。
 故に、ジョーとレフティは今が攻める時と動きを切り替える。
 それを厭うかのように、ジャガーノートはコードを鞭の嵐から別のものへと切り替える。
 それはマリオネットの糸。少女の身体へ無数と絡みつかせたそれを介して、少女の身体を操る外法の糸。その代償は、少女の生命力。
 少女の全身に張り巡らせたコードが蠢き、その身を繰って猟兵達から距離を取らんと跳び退ろうと試みる。
 ――だが、忘れてはいけない。
「連れて行かせなど、しません!」
 その少女の手は、騎士が硬く、強く握っていたということを。
 猟兵達にとってそれは必然。ジャガーノートにとってはそれは不幸。飛び退くは出来ず、隙を晒すばかり。
「もう少しだ。今、その身体に這ってるのを、全部斬り落としてやる」
「にーっ。今が攻め時にゃ」
 嵐過ぎ去った後に来たるは銀閃の風。数多閃くそれは少女の身体戒め、繰るコードを片っ端から斬り落とし、ジャガーノートの思うをさせず。
 だからだろうか、遂にジャガーノートは少女の身体を放棄して、その本体たる心臓のような基盤のみを残されたコードを用いて離脱するのだ。
「ぐっ、あぁ!?」
 離れる間際、生命力を幾分か持っていかれたのだろう。少女の口から悲痛な叫びが木霊する。
 本来であれば、その悲痛なる叫びもまた、オブリビオン強化する叫びであったのだろう。だが、今は違う。解き放たれた際の少女のそれはユーベルコードとはなり得ず、ただ木霊するだけの叫びでしかない筈のもの。
 しかし、ここに来て不吉の影は常にジャガーノートへとつき纏う。
 少女の、守るべき者の悲痛なる叫びは、それを救わんとする猟兵達の心をより一層と奮起させ、その身を、心を、より強く強くと重ね高めるものなのだ。
 故に、猟兵達の怒涛たる勢いは増すばかりであり、その動きは止めるに能わず。
 ジャガーノートが残されたコードを、床へと落ちたヘッドギアをより集め、合わさり、不出来な人型を形作る。それは少女を模したつもりなのか。だが、不定形のそれはただ見る者に不快感を募らせるばかりのものであった。
「迎撃のつもりなのかにゃ? だけど、何もかもがもう遅いにゃ」
 レフティの指摘する通り、その形態は本来であれば少女の身体を駆使した上での迎撃態勢。だが、身体を放棄したが故に不完全な形としてしか、それは発揮できていなかったのである。
 それを見据える子猫の形したレフティは、少女救い終え、全てはもう終わったと言わんばかり。
 そこにあるのは小さき姿だけである筈なのに、ジャガーの名を冠する者が子猫の姿持つ者に気圧される筈がないのに、なのに、言い知れぬ不快感がジャガーを襲う。
 それは人に曰く、虫の知らせ。だが、プログラムでしかないジャガーノートには完全には理解しきれぬ領域の事柄。
 だから、ジャガーノートは目の前の障害を排除するため、コードの腕を伸ばし叩き伏せんと、その不快感を無視して行動するのだ。
「リドル、リドル。絡み絡んで綾のイト。気付けば貴方も私も、もう解けない。さて、それはなんだ」
 答えは――野放図にされたコードの束。
 鞭と放った筈のコードが、迫るうちにその複雑な動きに絡み合い、絡まり合い、レフティへとそれは届かず、自分から逸れていったかのようにその身を打ち据えることもない。
 機械であるが故、本来であれば計算の上で放たれたそれにそんなことが起きる筈もない。
 だが、今は数多の事柄にリソースを削られ、外に内にとノイズが奔る。
 緻密な計算の値を改竄されても、セルフチェックすらが追い付かない状況。そのために発生した事柄。不幸。
 この先ほどから続く不幸の連続。あり得る筈もない事柄の連続。
 これこそがレフティの宿す先代の力。その一端。
 嵐捌くうち、コード斬り落とす内、少しずつジャガーノートの身を蝕んでいった不幸招く子猫の力。
 それは寄生するプログラムへの当てつけか。不幸に寄生されたのはジャガーノート自身だという。
「ジャガーに猫が負ける道理はないにゃよ」
 最早、終幕の時は目前。
 絡まり、動けぬそれは脅威と言えるほどの脅威でもなし。
「そんなに慌てんなよ。ちゃんと始末は付けてやるから」
 コードのたうち、更に絡まりを見せる姿は滑稽。
 だからという訳でもなく、ただ淡々と、飄々と、ジョーはその面前へと立つのだ。嵐をやり過ごしたうち、着崩れたコートを丁寧に直しながら。
 その手に握られていたのは、さして大きくもない注射器。
 77マグナムも良かったが、大きな音は弱った少女の身に障るかもしれない。だからこそ選んだそれ。
 そして、そうやって選ばれたそれがただの注射器であろう筈もない。
 その中身は――「処理落とし」と呼ばれるウィルス。
 既にリソースを限界まで使い、落ちるを目前とするそれには駄目押しともなるもの。
 ジャガーノートが最後の悪足掻きとでも言わんばかりに、目の前のジョーへ寄生せんと絡みつく。
 それを躱すでもなく受け止めたジョーに、猟兵達のざわめきが届いた。
「あー、大丈夫だ」
 その中であっても、酒と煙とほんの少しの冒険を愛する男は余裕を失わない。
「いい加減に――」
 まだ動く腕には注射器。獲物は向こうから寄ってきてくれた。
 至近とも言える距離に基盤が見える。これならば、どうあがいても外すような距離ではない。逃げられる距離でもない。
「――しつこいんだよ」
 注射器が基盤へと突き刺さり、シリンジの中身が減っていく。
 大きく、大きく震えたジャガーノート。
 そして、それはまるで枯れた植物のようにジョーの身体から剥がれ、落ちていくのであった。

「……はぁ~。最後はドキドキしたっすけど、これで無事に終わりっすね」
 少女の身を救い出し、その身を蝕んでいた機械は葬られた。
 ならば、ここでお話はひとまず終わりの筈だ。
「いや、まだだ。居るんだろ、そこに」
 だが、それに待ったを掛けるはジョー。
 最後に敢えて身体の一部へジャガーノートを受け入れたが故に、それの存在へと気づいたのだ。
 その目線の先にあるのはヘッドギア。
 それへ近付き、踏みつぶさんと脚をあげ――ひとりでにヘッドギアが跳び、宙へと。
 そして、くすくすと、鈴転がすような笑い声が広がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『絶影ノ華』『リリナ・アルシエル』

POW   :    シャドウエンペラー
対象の攻撃を軽減する【神霊体】に変身しつつ、【衝撃波を放つなぎなた】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    マインドコントロール
レベル分の1秒で【熱線銃(ブラスター)】を発射できる。
WIZ   :    ダブルハッキング
対象のユーベルコードを防御すると、それを【頭部のテレビ画面に映し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
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 宙へと浮かび、くるりくるりと舞うヘッドギア。
 そこから零れる鈴鳴るがような笑い声。
 くるり、くるり。ぐるぐる。
 回る速度は次第に早まり、気付けばそこに広がる魔法陣。
 展開されたそれが光発した直後、ヘッドギアが床に落ちる音が響いた。
 視界圧する光収まったそこに猟兵達が見たのは、学生の衣に身を包んだ蝙蝠の羽持つ少女。
「よもや猟兵が出張ってくるとはの。まったく、不要な縁というものよ」
 尊大に喋る少女が片手で額を抑え、やれやれと言った仕草。そして、そのまま嘆くかのように顔をその片手で覆う。1つ1つの動作が大仰であった。
 少女の周りで宙に浮くタブレットが猟兵達に示すのは、舌突き出す拒絶の顔。
「だが、まあ、これも試練と言うものか。邪神様の障害ともなる猟兵、ここで見事討ち果たしてやろう」
 顔を抑えていた手を虚空なぎ払うかのように振りぬき、亜空間から取り出したるは身の程もある薙刀。
 瞳は怪しく輝き、解き放たれるを待つかのように魔力光を湛えている。
 小悪魔の少女――リリナ・アルシエルはこの事件の黒幕として、猟兵達へと相対するのだ。

----------※補足※------------

SPD:【熱戦銃(ブラスター)】⇒【瞳から心惑わす魔力光】
WIZ:【頭部のテレビ画面に映し】⇒【タブレットの画面に映し】
と、ユーベルコードの内容を一部変更します。
プレイングの際、留意して頂けると幸いです。

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トリテレイア・ゼロナイン
まさか再びこのオブリビオンと相対することになるとは
ですが幾度会おうと同じ事、今を生きる命を弄ぶ貴女には骸の海に戻って頂きます

UCの発振器を戦場にばら撒き、敵を逃さぬ「檻」を構築
助け出した少女を檻の外へ逃がすことで戦闘への巻き込みを防止します

しかし、魔力等の力に乏しい私にとって神霊体は相変わらず苦手ですね
有効な攻撃手段に乏しい……

ここはサポートに回ります
薙刀や光線、コピーUCを●盾受け●武器受け●怪力で防御、受け流して仲間を●かばうことに専念

攻撃を仕掛けてこないと敵の警戒が薄れたことを挙動で●見切ったら、ワイヤーアンカーで●だまし討ちし、UCの電磁波も併用し拘束
他の仲間の攻撃チャンスを作ります


ニニニナ・ロイガー
お、ボスキャラのご登場っすね~
探す手間が省けたっす
いや~助かるっすよ~
少ない手がかりから捜索するの、ほんと大変なんすよね~
…いやほんと、終わりの見えない探索って苦行なんすよ(遠い目)

さて、どうやらこいつも洗脳を使うみたいっすけど
【見えざるモノ】で召喚した不可視の触手なら
見えないしアタシの意思とは関係なく行動できるんで問題なしっすね
さ~て【ドビーちゃん】
相手はどうやら武器がないと全力で戦えないタイプっす
薙刀やらタブレットやら、隙を見て奪いとっちゃうっすよ~
ついでに拘束もできればなお良しっす
頼んだっすよ~


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略・アドリブOK
【猫風の陣】
にゃ?邪神様はロリコンなのかにゃ?にゃんか邪神様に愛でられるそういう世界かと…
それはともかく二代目様の武をみせる時にゃね、レフティは風を纏った子猫に変身し、髭感知で敵の動きを見切り、敵の攻撃を肉球や爪で受けるのにゃ。
攻撃の防御や回避に成功すれば、お返しとばかりに肉球やねこぱんち、尻尾等と全身を使って相手の薙刀と違わない衝撃波を放ったり、瞳から心惑わす魔力光で力を奪い封じていくのにゃあ。
ほら邪神なんかよりもただ子猫を愛でた方がきっと幸せにゃよ?。
初代様のUC「肉球で語る」の副作用で肉球中毒者にするとも迷ったけれど瞳のマインドコントロールで十分そうかにゃあ?。


ジョー・グラム
おいおい、お嬢ちゃんサボりはいけねぇな。学校に行かないと怖ーいおじさんに怒られるぜ?

鏡映しはおっかないからな、ユーベルコードの使用はギリギリまで抑える。
「スリリングなゲームは嫌いじゃない」
銃でけん制しながら、相手のタブレットがこちらを映さない位置を探る。
「可愛いお顔を傷つけるのは本意じゃないんだがな」
隙を見つけたら相手に接近してクイックドロウで、銃弾を叩きこむ。

「それじゃな、お嬢ちゃん。次があったらまた遊ぼうぜ」


婀鎖路・朔梛
…この子にあんな怖い思いさせたのは君だよね。
あいにくとあたしからしてみればこの子と君達邪教との縁の方がもっと不要だよ。
あたし達で返り討ちにしてあげるから覚悟するんだね。

ダブルハッキングはリリナが使いづらいように一応としてタブレットに【ハッキング2】はかけておくけど‥多分予防程度だと思う。

リリナからの攻撃は出来るかぎり回避。

あたしは後ろの方でみんなの援護をするよ。
【エレクトロレギオン】で【だまし討ち】も使って攻撃しながら、みんなとのタイミング見計らって【フェイント】かけて彼女の持ってるタブレットをUCで壊せないか試してみるね。

※アドリブ&絡み歓迎



 リリナ本人にとっては威風堂々たる立ち振る舞い。
 だが、見る者が見れば、それは過剰な演出としか見られない。
 まして、リリナ自身の姿の幼さがある故に、それは際立っていた。
「おいおい、お嬢ちゃんサボリはいけねぇな。学校に行かないと怖ーいおじさんに怒られるぜ?」
 その容姿、特に女学生の衣装纏うを揶揄するはジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)。
「学校などと、邪神様より頂いた我が叡智があれば、そのような所になど行く必要などないさ」
「へえ、不良少女ってかい。なら、遠慮なく叱れる訳だ」
「叱れるものならな」
 互いに零す言葉は軽口のよう。だが、その実、そこにあるのは火花散る言葉の刃。その応酬。
 空気が重みを持ったかのように張り詰めていく。
 ジョーの腕が静かに得物へと伸び、リリナも手にした薙刀を持ち直し――
「お、ボスキャラのご登場っすね~」
 ――その空気を打ち破ったのは、ニニニナ・ロイガー(一般UDC職員・f17135)の力抜けた口調。
「探す手間が省けたっす。いや~、助かるっすよ~」
 頭掻きつつ、浮かべるのは気の抜けたような笑み。
 それに緊張感が僅かと緩み、リリナも、ジョーも目を瞬かせる。だが、得物持つ手を放さぬは流石か。
「ほう、我を探すつもりであったか。ならば、もう目標も達したろう。疾くと帰るが良い」
 返される挑発の言を、にへらと笑顔で受け流し、ニニニナの瞳はリリナを捉え続ける。
 その瞳が一瞬だけ、ここではないどこか遠くを見た。
「少ない手がかりから捜索するの、ほんと大変なんすよね~……いやほんと、終わりの見えない探索って苦行なんすよ」
 それは過去の出来事を想ってのことか。はたまた、過去は未だ過去とならず、己を変えた者を探し続けているというのか。
 その瞳、言葉の真意はニニニナの胸の中にのみ。
 だが、そこにある瞳に、不思議な虹彩に、リリナは知らず呑まれていた。
 それを否定するかのように、リリナは視線をニニニナから切る。
 そして、それを向ける視線の先は猟兵達の手によって救い出された少女。今は、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の腕の中で意識なく眠るその少女。
 それを眺め見、少女がそうなるよう仕向けた下手人は己を取り戻したかのように嗤う。
「まったく、新たなる世界への旅立ちを邪魔するとは無粋なことよ」
「それが彼女の望むことだったのならでしょう」
 痛み発する身体のことなどおくびも出さず、騎士は正しきを発する。
 そして、腕に抱える少女をリリナの視線から外すように、そろり気遣うようにとトリテレイアは己が影に。
 そこにあるは不動の要塞。絶対の安全圏である。
「はっ。邪神様の僕となるが幸福であらずして、何が幸福か」
 だが、リリナはその正しきを、己の中の幸福でもって否定する。それが、他人にとっての不幸であるとは露とも思わずに。
 故に、婀鎖路・朔梛(表裏一体の双子・f12701)がそれへと反発を覚えるは当然の帰結。
「この子があんなに助けてって言って、怖い思いをしていたのは君のせいだよね」
 天真爛漫なる瞳に、今は燃える敵愾心。
 リリナと朔梛の視線が絡まり合い、互いが互いを敵だと認識し合う。
「かつての価値観を捨てるには勇気の居ることよ。それを後押ししただけではないか」
「生憎と、あたしからしてみれば、この子と君達邪教との縁の方が不要だよ」
 話は結び合わず、そこに相互理解が生まれることはない。生むつもりもない。
 何故なら、猟兵とオブリビオン。そこにあるのは、今は敵対の二文字のみなのだから。
 来るなら来いと言わんばかりの朔梛。返り討ちにしてやると、なによりもその表情が物語っていた。
「にゃ? にゃーの言う邪神様はロリコンなのかにゃ?」
「なんじゃと?」
「だって、そうじゃにゃいか。その姿に、今回のターゲットの姿……にゃんか、邪神様に愛でられるって、そういう世界かと……」
 レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)の指摘に片眉あげ、リリトは怪訝な顔。
 その指摘が意味する所――目覚めぬ少女と己の姿を交互に見る。
 偶然か必然か、確かに、その2人の姿は年若いものであるが。
「汝、愚弄するつもりか?」
 それはただの偶然であるのだが、崇拝すべき対象を貶されたとあれば、信奉する者として怒りを示さずにはいられない。
「にゃっ。そんなつもりはないにゃよ。ただ、邪神なんかよりも子猫を愛でた方がきっと幸せにゃよ」
「良かろう。愚弄であるな」
 ――であれば、死ぬが良い。
 再びに張り詰めた空気は今度こそ弾け、神霊体となったリリナの巻き起こす風が、開戦の時を猟兵達へと報せるのであった。

 吹き荒れる風は悪意の風。
 猟兵達であるならば耐えられるそれであるが、ただの少女にとってはそうではない。
 とは言え、元よりそれを許す猟兵ではない。
「貴女は知らぬことでしょうが、私が貴女と会ったのは2度目」
 トリテレイアより撃ち出された杭は風を貫き、リリナの身を穿つ。
「2度目と言うが、随分とお粗末ではないか?」
 だが、それは神霊体となったリリナには痛痒とすら至らず、身を抜けて部屋の彼方、床へ突き立つ。
 当然と言えば当然の帰結。敵意あるを軽減するが故の神霊体なのだから。
 2度目であるのに、それを知らぬか。と、嗤うリリナ。
「やはり、魔力等の乏しい私では有効打には遠いですか」
「ははっ、分かっていながらか!」
 その嘲笑を甘んじて受けるかの如く、トリテレイアは緑の光を瞬かせる。
 そう、有効打には程遠い。その通り。その通りだ。
 ――だがしかし、そうと分かっていながら何も対策を取っていない筈があるだろうか。
「――ならば、当初の通りに」
「なんだと?」
 緑の光芒は強く瞬き、それに呼応するかのように現れ出でるは光輝の盾。いや、猟兵達とリリナを囲うように形成されたそれは檻とでも言うべきか。
 そして、檻は内から外へ逃がすを許さず、檻の外に置かれた少女へと悪意を決して届かせることはない。
 これこそがトリテレイアが本来意図していたもの。巻き込まず、逃がさずを行うためのもの。
 攻撃としての利用など、本命を隠すためのついででしかなかったのだ。
 故にこその嘲笑の甘受。愚かと嗤う者こそ、騙すに容易いからこその。
「慢心しましたね」
「小賢しい! ならば、汝らの命を砕けばよいだけのこと!」
 その激情へと呼応するかのように、リリナの瞳が妖しき光を零し、放つ。
 それは人の心惑わす青白い光。人を危険なる道へ、死に至る道へと誘う幽鬼の光。
 しかし、それを祓うは尊き光。正しき道を照らし出す光明。
 朔梛が指し示す天より降り注ぐ白光は、カーテンのように幕を張り、彼方と此方を分け隔てる。
「破滅への道は、あたし達には必要ない!」
 宣告。力強く言い切る姿は凛として、光の中に立つ姿は現代の戦乙女か。
 なればこそ、彼女は彼女にとっての悪を討つべく、力を尽くすのだ。
 光と青白き光とが鬩ぎ合う。
「……ちっ、埒が明かぬわ」
 痺れを切らしたが故に、リリナは切り札の一つを切る。
 それは光飲み込む暗黒。
 顔文字の如くを映し出していたタブレットの画面が黒に染まり、それが宵闇のように滲み出、光を浸食していくのだ。
 均衡は崩れた。ならば、青白き光を遮るものはなく、その進行を止める術もまた。
 その確信に、口元歪め、愉悦と顔を染めるリリト。
 しかし、1人で戦う彼女にはない仲間が猟兵達にはある。
「1回じゃ足らないか。ごめん、フォローお願いね」
「大丈夫にゃ。防ぐを1度見れたのなら、レフティには十分にゃよ」
 腕時計型のPCが示す数値の変動をちらり見、フォローをと朔梛。それへと応えるように、風纏う子猫の影は奔る。仲間の作ってくれた時間、相手の技を見るための機会、それらを存分に活かすために。
 青白き光に相対するレフティの瞳に宿るは――迫るものと同種の光。
「これは、我が魔光と同種の!?」
「二代目が武の力、特別に見せてあげるにゃん!」
 言い放つと同時、瞳より放たれる幽鬼の光。
 同種の力同士がぶつかり合い、鬩ぎ合い、再びの均衡が生まれんとしていた。
 だが、千日手を繰り変えすリリナではない。そう言わんばかりに行うは、朔梛の光呑み込んだと同じ光景。
 しかし、同じを許さないは猟兵達とて同じこと。
「呑み込むって言っても、限界ってもんはあるでしょ!」
 闇が青白き光までもを呑み込まんとした時、再びに天より降り注ぐは白光。
 だが、それは1発ではない。
 2発。2発で足りないなら3発。3発で足りないなら……ありったけの力を降り注ぎ、朔梛は光喰らう闇目掛けて己の光を届け続ける。
「無駄な足掻きと言うものが分からぬか!」
「私には、そうとは思えないけどね!」
 闇がブラックホールかのように、降り注ぐ光を呑み込み続ける。
 そに合わせ、朔梛見るPCが示す数値――ハッキングにより垣間見る、光呑み込んだ際のタブレットのメモリ使用率は右肩上がり。
 本来、このユーベルコードは防いだものを1度だけ借用できるものにしか過ぎない。
 それを吐き出すこともなく、延々と呑み込み続ければ、待つのは膨れ上がった風船の末路と同じ。
「ええい、やめよ、やめよと言うに!」
 タブレットが処理しきれぬ情報を貯め込み続け、熱く熱くと過熱していく。
 朔梛にとっては想定内の、リリナにとっては訪れて欲しくはない未来はすぐそこに。
 呑み込み続けた光を解き放とうにも、その一瞬の間が己を焼くを想像し、踏み出すことが出来ないのだ。
「これで、駄目押し!」
 ――そして、遠くない時間の先、闇は弾け、タブレットは一時的な沈黙をし、数多の光がリリナを呑み込む。
 当然、その中にはレフティ放つ模倣の光も。
 その効果は誰が知る。リリナ自身が一番知るもの。
 リリナの視界が揺れる。頭が揺れる。心が揺れる。目の前に存在する子猫の尻尾がゆらゆら揺れる。
「う……あぁ……」
 己を確かと持たんとするが、その己があやふやになったかのよう。
 何を信じ、何を見ればよいかもわからない。
 その心へとスルリ入り込むように、レフティの言葉が入り込む。
「ほら、ただ子猫を愛でた方がきっと幸せにゃよ?」
 愛らしい瞳、触り心地の良さそうな肉球、毛並みも撫でればその手触りに恍惚を得られることであろう。
 思わずとリリナの手が伸びる。
 ――われはいったい、なにをして……。
「そのまま、邪神なんかより、子猫に溺れていくと」
 レフティの言葉は心地よかった。触れる手も、心地良かった。
 だが、邪神という言葉だけが心に引っかかり、そして――
「あ、あああああああ!!」
 裂帛の如き声が空気を裂く。
 リリナが心忍び寄る影を追い払い、憎悪の眼差しでもって舞い戻ったのだ。
「よくも、よくもよくも!」
「にゃー、やっぱりここまでが限度かにゃ」
 傷つけられたプライド。心。壊れたレコードのように憎悪を吐き出すリリナ。
 だが、それを受けても子猫はどこ吹く風。オブリビオンの憎悪に囚われる程に、猫の自由は安くはないのだ。
 なにより、リリナの忘我の時間は余りにも致命的だったのだから。
 風纏う刃が怒りに理性失ったままにレフティへと振るわれる。
 しかし、それは響いた銃声と、それが伝える刃への衝撃により逸れ、当たるを許さない。
 理性なき瞳が向けられた先にあったのはジョー。敢えてのユーベルコードを伴わない銃撃が故、先程までの撃ち合いには参加していなかったジョー。その一射であった。
「我慢合戦のスリリングなゲームも嫌いじゃない」
 今は咥えぬ煙草の代わりと、銃弾吐き出したマグナムが銃口から煙を吐く。
「――だが、お嬢ちゃん。もうゲームの時間は終わりさ」
「そうっすよ。ゲームは1日1時間って、昔から言われてるっす」
 ――それを守ったかどうか。守るかどうかは別としてっすけど。
 心中に続いた言葉は敢えて零さず、ニニニナがジョーの言葉を継ぐ。
 目立たず、機を窺い続けた2人。それが動き出すことの意味を、理性失い、怒り狂うのみのリリナには理解できない。
「だまれ、下郎共!」
 タブレットは未だ沈黙を続けたまま。故に、薙刀が風纏い、それを竜巻もかくやと室内荒らし、吹き荒れる。
 それは一撃一撃に絶対の殺意が乗った必殺の刃。
「ひゃー、ジョーさん。いや、先生、お願いするっす」
「先生って柄じゃあないがね」
 お道化たようにジョーの影へとニニニナは隠れ、ジョーは肩を竦め――音すら置き去りにしての3連射。
 それは的確に迫る刃のみを撃ち逸らし、猟兵の誰の身にも傷一つと作らない。
 ユーベルコード? 否、これはただの技術である。
 過ぎた科学や技術は魔法と変わらない。と、誰が言ったか。その体現がそこにはあった。
「何故届かぬ、邪神様の加護篤き我である筈なのに……!」
 怒りのままに振るう刃も届かなければ、感情が冷えた後に訪れるのは狼狽。
 薙刀持つ手が震え、瞳に宿る光は揺れる。自信満ち溢れていた最初の姿が嘘のよう。
 知らず、2、3歩と猟兵達から距離を取る様に、リリナの身体が揺れ――それ以上の後退は何かにぶつかり、許されなかった。
「……え?」
「恥ずかしがり屋っすけど、仲良くしてあげて欲しいっすねぇ」
 何もない空間なのに、ナニカが確かにそこにはあった。
 それは機を窺う内に移動させておいた、見えざるモノ。それが退路を塞ぎ、虚を穿ったのである。
「――さ~て、ドビーちゃんも、行っておいで~」
 生み出された空白を埋めるように、触手が雲霞の如くとリリナの身を捕らえ、拘束していく。
 薙刀が奪われ、ようやく再起動を始めたタブレットは飲み込まれ、そこにあるのは、まるで機械に拘束されていた少女と同じ姿の。
 カツリカツリと靴音が響き、リリナに近づく終幕の音。
「可愛いお顔を傷つけるのは本意じゃないんだがな」
 ――これでも、紳士なんだ。
 零す言葉が本気か冗談か。だが、飄々とした笑み浮かぶ顔の中で、瞳だけはどこまでも静か。
 リリナの額に冷たいモノが押し付けられる。
「――ひっ!?」
「だが、オイタが過ぎたら怖ーいおじさんに怒られるって言ったろ?」
 そして、銃声が鳴り響く。
「――それじゃな、お嬢ちゃん。次があったらまた遊ぼうぜ」

 少女が目を覚ます。
 何か、ひどい夢をみていたような、胸が未だにドキドキと高鳴っている。
 寝起きの頭はぼんやりしていて、まだ現実を認識しきれていないが、汗のじっとりとした気持ち悪さは伝え来る。
 視界を右に左に。
 夕焼け染まりつつあるリビングは自分だけで、とても静か。
 そして、自分が買ったVR機器が目に入る。
「あ、そうか。これで遊ぼうと思ってたのに……」
 なんで寝てたのだろう。と、少女は不思議を思う。
 ――何か、忘れているような。
 僅かと浮かんだ疑問は、鳴り響いたお腹の音に掻き消され、忘却の彼方。
「お腹すいちゃったし、汗を流して何か食べようかな」
 立ち上がり、ふと見たVR機器が入っていた箱に1枚の紙。
 それを手に取り、少女は笑みをこぼす。

 ――これを買ったあなたへ。 なけなしの給料で買ったっす。大切にしてあげて欲しいっす!

 きっと、かつての私と同じ人が居たのだろう。と。
 そして、少女は日常へと戻っていく。
 それは猟兵達が守り抜いた、かけがえのない少女の日常であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ゲームセンター』

POW   :    パンチングマシンや格闘ゲームで遊ぶ

SPD   :    シューティングゲームやレースゲーム、音ゲーで遊ぶ

WIZ   :    パズルゲームやクイズゲーム

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 流行りの流行歌が天井からBGMと鳴り響く。
 しかし、それを掻き消すかのように至る所から響く種々多様の音の波。
 ジャラジャラとコインが吐き出され、UFOキャッチャーはチープな音楽を鳴らし得物を筐体の中で落とす。ゲームの筐体は、そこに納められたそれぞれのゲームの音楽を奏で続ける。
 まさしくゲームセンターと言わんばかりの光景がそこには広がっていた。
 遊ぶ人も様々。高齢にも見える人や家族連れ、連れ立って遊ぶ学生など。中には、どこかで見たことのあるような少女も。
 レトロから最新まで揃えた、という店の謳い文句は嘘ではないのだろう。
 探せば、猟兵達の望むゲームもきっとそこに。
 遊んで息抜きをするもよし、遊ぶ人々の日常を見守るも良し、猟兵達に僅かと許された休息の時間。どう満喫するかは、それぞれの手に委ねられていた。


--------※補足※----------
・少女について

 少女は組織の働きかけもあって、事件の記憶を忘れており、話しかけても初対面の対応をされます。
 しかし、その心の奥底には、『初めて見る人だけれど、どこかで助けられたような』と、感謝の心も残っています。
 そのため、話しかても基本的には好意的な対応をされることでしょう。

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鴇沢・哉太
九泉(f11786)と

まずは格ゲーに臨む様を見学
どうぞ気兼ねなく
人の遊んでるのを見るの結構好きなんだ

ああ、成程そうやって連打するんだ
キャラごとに持ち味が変わるのはいいね
そう
共有のキャラクターだって
使い手にとってはたったひとりの特別だ

じゃあ俺も胸を借りても?
搦め手が得意そうなキャラを選ぶ
弱くたって技が嵌れば嬉しいし楽しい
同じものに熱中するっていいよな

次はあれかなと音ゲーの筐体示す
鍵盤叩くようなそれで遊ぼうか
同業でも曲提供してる人がいてね
俺もいつか使ってもらえたらいいんだけど
リズムをキープし軽やかに指先が躍る

ハーバニーへ話しかける様を見守り
ゆっくり吐息零す
ゲーセンの雑多なざわめきは好ましいね


九泉・伽
【哉太くんと】
90年代格ゲー
最初はCPU戦
棍使い少女をカウンター狙いでプレイ
忘れてること多くて失敗ばっか
でも楽しいや

ねぇ
ゲームキャラって操作する人が違ったら
もうそこにしかいないただ1人のキャラだよねぇ
…なんて事考えてたらほら負けた
(ひとりの特別には破顔)
そいつはねーえ小Pからつなぐと…動き格好いいっしょ?
対戦は大技狙いで楽しむ

音ゲーはギャラリー
踊ったりも流行ったっけ
凄いね喋りながらゲームの音は追えんだもの
いいねぇ
じゃあ哉太くん採用されたらプレイ見せてよ
自分の作ったもので遊ぶのってたーのしーんだから

ハーバニーちゃんへ
麻雀打ちっぷり羨ましく見ておりました
依頼解決ありがとね
今度良かったらと打つ手つき



 硬貨を1つ、2つと飲み込んで、目の前の大きな匣が画面と共に曲調を変える。
「一緒に来てくれたのに、悪いねぇ。ちょっと懐かしくてさ」
「どうぞ、気兼ねなく。人の遊んでるのを見るの、結構好きなんだ」
 大きな匣――かつては一世を風靡した、十数年前のアーケードゲーム。
 映す画面には数多のキャラクター。王道に美少女に、悪役風と、その顔ぶれは様々。
 だが、九泉・伽(Pray to my God・f11786)の手つきは淀みなく、決定を叩くボタンは軽やかに。
「へえ、手慣れてるね」
 それを興味深げと見つめる 鴇沢・哉太(ルルミナ・f02480)の声は甘く。
 その視線の先は伽の手つきか、はたまた、彼が動かす棍使いの少女の動きか。
 画面の中で、大柄な男が振り下ろした上段からの一撃を少女は華麗に棍で受け流す。
「いや、結構忘れてること多くて失敗ばっか」
 それでも昔取った杵柄なのか、今のところ画面の示す体力ゲージは優勢。
 だが、その経験は彼の物なのか、誰の物なのか。
「ああ、成程。そうやって連打するんだ」
 哉太見守る先で、少女が動く。ボタンの連打音が鳴り響く。
 手にした棍を手繰り、受け流しに姿勢崩れた大柄の男への連続突き。
「この子はさ、こうやってカウンター織り交ぜて、隙を突いて削っていくタイプ。CPUの方は、防御の高さに任せて距離を詰めて殴ってくタイプ」
「キャラごとに持ち味が変わるんだ。いいね」
 俺達と一緒だ。と笑い零す哉太はバーチャルキャラクター。
 かくあれかしと望まれ、世に生まれたは同じ。だが、確かに個としてこの世に確立している存在。
 それを横目で流し見て、伽は一つの想いをそろりと零す。
「ねぇ、ゲームキャラって操作する人が違ったら、もうそこにしかいないただ1人のキャラだよねぇ」
 多重人格者であり、己が2つ目の人格であると自覚している伽。そこから発せられた、その言葉の真意とは。
 主要なところは隠され、暗号めいたその言葉。
 だが、哉太はそこに一抹の感情を読み取ったのだろう。
「そう。共有のキャラクターだって、使い手にとってはたったひとりの特別だ」
 その嗅覚が齎す伽の想いを汲み上げ、己の中で形となった言葉を飾る事無く口に出すのだ。
 それへ虚をつかれたかのように伽の手が止まる。
 画面の中で連撃が止まり、あっ。と思った時にはもう遅い。あっという間に体力ゲージは逆転。
「……なんて事考えてたら、ほら負けた」
 だが、その顔にあるのは楽し気な笑み。
「――でも、楽しいや」
「なら、良かった。それじゃあ、次は俺が胸を借りても?」
「2人でゲーセンに来てるんだ。勿論だよ」
 筐体の向こうに哉太が消える。
 互いの姿は見えなくなったが、代わりと筐体が告げるのは新たな挑戦者の登場を告げるもの。
 視線の先、画面の中には棍使いの少女と鎖鎌使いの忍者とかが向き合っていた。

 ――そいつはねーえ、小Pからつなぐといいよ。
 ――こうやるのかな。ああ、動きが繋がると、なかなか面白いね……あ。
 ――動き格好いいっしょ? でも、油断大敵。
 ――初心者相手にやってくれるじゃないか。

 同じものを楽しみ、熱中のひと時。この思い出は誰彼のものではなく、彼らだけのもの。

 熱戦終わって一息ついて。
 設置されている長椅子で休む哉太の耳に、雑多な音に紛れて聞き知った音楽が流れ込む。
「何かあったかい?」
「ああ、ちょっとあれが気になってね」
 指し示す先にあるのは、俗に言う音ゲーの筐体。画面の前に鍵盤並び、振ってくるアイコンに合わせて手を動かすもの。
 そそくさと2人寄れば、聞こえる音楽はより鮮明に。
 そして、それは――。
「ああ、やっぱり。同業でも曲提供してる人がいてね」
「そうなんだねぇ。やってみる?」
 聞き知った曲に興味津々とする哉太の姿は、やはりシンガーソングライターか。
 やってみる? と、伽問えば、肯定の返事返るのは予想の範囲内。
「踊ったりも流行ったっけ。凄いよねぇ、喋りながらゲームの音を追えんだもの」
「それは九泉の格ゲーと同じ。慣れだろう」
 互いが互いの得意分野であるから出来ることだが、隣の芝生は青く見えるとはよく言ったものだ。
 格闘ゲームの際の拙い動きが嘘のように、鍵盤叩く哉太の指先。
「――俺のも、いつか使ってもらえたらいいんだけど」
 歌を届ける形は様々。今はまだ専用チャンネルがメインであるが、こうしてほかの媒体からも歌を、想いを届けられるようになったら、どれほど良いことか。
「いいねぇ。哉太くん、採用されたらプレイ見せてよ」
 それは近い将来かもしれないし、遠い未来かもしれない。
 だが、夢を見るというのはきっと悪くないこと。だから、2人はそれを語るのだ。
「――自分の作ったもので遊ぶのって、たーのしーんだから」
「なら、まずはそのステージに立てるようにならないとだな」
「うんうん、待ってるよ」

 哉太奏でる音楽は、一つとして途切れることなく流れ続ける。それを眺め見、伽は楽しむ。
 そんな空間に迷い込んだ兎が1人。それは伽見知った相手。かつて、こことは違う世界へ案内したことのある――。
「あ、ハーバニーちゃん」
「あらぁ、こんにちはぁ。楽しんで……いらっしゃるようですねぇ」
 交わす挨拶、会釈を1つ。2人の様子に、良かった。と零したハーバニー。
「あの時は依頼解決ありがとね。麻雀の打ちっぷり、羨ましく見ておりました」
 笑い織り交ぜ、伽はかつてを語る。その手つきは牌を倒すかのような。
「今度、良かったら」
 ――また、是非に。
「ふふふ~、その時にはまた是非ともぉ」
 下手な演技を思い出し、顔に朱交じりハーバニー。今度があるなら、ちゃんと打とうかと思案も。
 そんな会話を横にして、哉太の奏でる音楽はクライマックス。
 流れるアイコンを右に左にと捌いて奏で、数多な音流れるゲームセンターの一角を彩り添える。
「ゲーセンの雑多なざわめきは好ましいね」
 最後の一つを奏で終え、ゆっくり零すは吐息を一つ。
 抱えるモノは人様々。だが、その人々の生きる音が、そこには溢れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜奏・光花
ゲームセンターって楽しそうですよね。
わたしまだ入ったことが無いので行ってみたいです!
でも・・子どもだけで入って大丈夫なんでしょうか?

あの、ハーバニーさんがよろしかったらご一緒にいかがですか?
一緒に遊べたら嬉しいです。

それに少し、わたし一人だと不安です・・。



 鳴り響く音は小さき身体には洪水のよう。
 まして、慣れぬ場所であれば、そう感じるのは猶更というものであろう。
 その瞳に宿すヘテロクロミアは、出自の特殊性を垣間見せるもの。だが、小さくあどけなく、初めてに緊張し、頼りなくと周囲を見回す姿は年相応のものでもあった。
 胸に抱いた黒猫人形が、その緊張を表すかのように、ぐにゃりと歪む。
「こ、ここがゲームセンター」
 話に聞いたその世界。夜奏・光花(闇に咲く光・f13758)は勇気をもって、そこへと足を踏み入れたのだ。
 これを光花の両親が見たら、なんと言うことだろうか。
 心配の余りに過保護が増すか。はたまた、その勇気を称えるのか。
「そうですよぉ。ここが、ゲームセンターというやつですぅ」
 今は傍に居ない両親に代わって、隣にいつの間にやらと現れたのはハーバニー。
 事前の一緒にどうですか。というお誘いに応え、参上であった。
 見知った姿の発見に、光花はホッと安堵の息一つ。
「あ、良かった。こちらにいらっしゃったんですね」
 見知った顔が隣にあれば、1人の不安というものは多少でも軽減するもの。
 ここに来て、ようやく光花は周囲をきちんと見回す余裕を取り戻す。
 洪水のように感じていた音の瀑布は、きちんと捉えれば数多の音と理解できる。それはどれもが楽し気で、人の心誘うかのよう。
「ふふふ~、少しぃ、緊張されてましたぁ?」
「はい。わたし、ゲームセンターって初めてで。でも、楽しそうなところですね!」
 その素直さは光花の魅力の一つ。
 自身の緊張を自覚し、それが少し解けたことで、胸で潰れた黒猫にごめんね。と一言。
 しっかり者と言えども、年相応な面も垣間見えたことに、ハーバニーもにっこり。
「それで、あの、改めて、ハーバニーさん。よろしかったら、御一緒にいかがですか?」
「ええ、勿論ですよぉ。光花さんは初めてのご様子ですしぃ、案内役をさせてもらいましょ~」
 案内役は本業そのもの。ならば、そのお願いを断る道理などはなし。
「ではぁ、ひとまずですがぁ、身体動かすゲームにでも行ってみましょうかぁ~」
「は、はい! 御願いします!」
 ふふふ~、固くならなくて大丈夫ですよぉ。と笑うはハーバニー。
 力が再度籠った肩に手を置き、ポンポン、リラックスリラックス。
 それが少しだけ擽ったかったのだろう。光花の口元にも笑みがもどる。
 そして、始まるのはゲームセンターという、光花にとって未知なる世界の冒険譚。

 立ちはだかる兎の試練を乗り越え、時に協力し、手に納める得るは飴玉の宝玉に、この世界の金貨に銀貨。
 時に失敗し悔しがり、時に成功し喝采をあげる。
 気付けば、その手には収まり切らないぐらいの宝物が。
 それは物でもあり、思い出の数々。

「こんな世界も、あるんですね!」
 遊び疲れて一休み。
 光花の頬には紅が混じり、初めての世界を旅する感情の動きを物語っていた。
「さあ、次はどこにいきましょうか!」
 新たなる知見を得た小さき少女の冒険は、未来は、まだまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レフティ・リトルキャット
絡み・アドリブOK
にゃ、猟兵の力で皆気にしないだろうけど一応、子猫姿で過ごす方が無難かにゃあ。
なんとなく通じるかもしれないけど猫語で通すにゃよ。
もふもふされたり、暖かい場所でのんびり過ごすのにゃあ。
クレーンゲーム等で興味惹かれる景品を獲った人が居るのならすり寄ったりしてみるにゃね。
ゲームはそうにゃね、やるならタッチして楽しむ音ゲーあたりで子猫姿で跳び回ったりしてみるのにゃあ。一匹でやるよりもお助けの協力プレイの方が良いかにゃ?。



 人が多ければ、そこから生じる音もまた多い。
 しかし、ゲームセンターのとある一角。そこでは、また違った意味合いでのざわつきがあった。。
「お、おい。店員を呼んだ方がいいのかな?」
「いや、いいんじゃね? なんか、悪さしてる訳でもねえし」
「あら、可愛いわね。迷い込んだのかしら?」
 視線集め、その中を悠々と進むレフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)。
 元々はフェアリーであるが、UDCアースの世界にはその存在は御伽噺の中だけだ。そのため、念には念をということで、今は白い子猫の姿を取っていた。
 しかし、フェアリーの姿で訪れるよりも、そちらの姿の方が余計に視線を集めているような気もする。
 そんなレフティの現状であるが、当人はのんびりそのもの。
「にゃあ」
「お、なんだ。座りたいのか、いいぜ」
 空調とゲームセンターとの熱気が程よく混ざり、暑くもなく寒くもなくな長椅子の上を見事にゲットである。
 そこからレフティが眺めるのは人々の営みだ。
 ゲームに勤しむ者、それを傍目に見守る者、得た景品に喜ぶ者などなど。
 中には、レフティの存在に気付き、ひと撫でしていく者もいるが、レフティは鷹揚だ。毛並みが逆立たない程度にそれを受け入れ、来たる人々に癒しと和みを与えていく。
 戦いの時が嘘だったかのような、平和な時であった。

 ――そして、人々の営みを見守り、時に分け前を貰いながら過ごすこと暫し。

 レフティは長椅子を後にし、今はとあるリズムゲームの筐体の近く。
 そこには不器用そうにそれで遊ぶ少年1人。
 初めてなのだろうか、それとも経験が少ないのだろうか。手つきはたどたどしく、リズムに乗れているとはとてもとても。
 だからだろうか。少しだけ、ほんの少しだけ手伝いたくなってしまったのは。
「にゃ~お」
「え、何!? 子猫!?」
 跳んで、筐体の上へ華麗に着地。
 タッチパネル形式のそれはレフティであっても――肉球であっても――幸いにも稼働するようだ。乗った拍子にそれが反応したのを横目で確かめる。
 だが、少年からすれば青天の霹靂。
 いったい何が? なんでここに?と、疑問符を浮かべる間もなく、事態は進むのだ。
 手つきの止まった少年に代わり、レフティが小器用にパネルの上を左に右に。その動きは見事で、迫りくるアイコンを的確に捉え、画面上のスコアをあげていく。
「え、え、僕より上手い?」
「にゃあ? にゃんっ♪」
「自分も踊るから、手伝えっていうの?」
「にゃあ!」
 言葉ならずとも以心伝心。想いは見事に通じ合う。
 レフティは最初から自由気ままに。少年は恐る恐るから次第に遠慮なく。
 レフティが画面の一部をこなすためか、少年が処理する場所が少なくなったからか、画面に表示されるMissは先程に比べてその数を減らしている。
 先程まであまり感じられなかったリズムが、確かにそこには生まれていた。

「お、なんだ、あれ。すげえ」
「きゃー! なにあれ、かわいいんだけど!」
「動画撮ろうぜ、動画!」

 そんなレフティと少年との、突如として生じた協力プレイが人目を惹かない訳がない。
 気付けば、周囲には人だかり。
 だが、リズムを楽しむ2人には、今はそれは別世界のこと。
 楽しきリズムに身をまかせ、その顔に浮かぶは遊びの楽しさ。
 レフティの力が故か、はたまた、純粋なる楽しみがそこにあったが故か。遊ぶ者を、見る者を、心昂らせるものがそこにはあるのであった。

 なお、後日談。
 そんな様子を撮影された動画が、UDCアースのSNSでちょっとした話題になったのは、また別のお話。
「にゃん♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ゲームセンターで遊ぶ少女をゲームの筐体の陰からこっそりと見守り、彼女の様子を確認します

あのような事件に巻き込まれてしまい、記憶処理を受けてなお心に傷が残ってしまったのではないかと心配していましたが、遊んで日常を謳歌する様子を見て安堵します

これで騎士としての私の役目はお終い。彼女の健やかな成長と幸福な人生を祈りましょう

……警備の方からなにやら不審者を見るような目で見られているような……(特にゲームしていない大柄な男?だから)

怪しまれない様に何かゲームをしなくては…
あ、ハーバニー様、助けると思ってゲームにお付き合いお願いします(小声でちょっと必死)

(慣れていないので負けまくる)
ああ、また負けた!



 ゲームの筐体の影に巨体な影1つ。その影が見つめる先には1人の少女。
 事案であろうか? いいや、これは純粋なる気遣いであった。
「あのような事件に巻き込まれてしまい、その後がどうかと心配していましたが」
 その巨体な影――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、隠しても隠れきれない姿をそっと晒しつつ、胸をなでおろす。
 その視線の先にある少女というのは、先頃にトリテレイアが仲間の猟兵達と共に助け出した件の少女。
 その姿は友達と思しき他の少女と共に日常を謳歌し、非日常とは無縁なる姿。
 UFOキャッチャーでぬいぐるみを獲るのに失敗しては笑い合い、友達同士でデコった写真シールを見ては楽しんだり、かの事件での傷痕は見当たらない。
「――大丈夫そうですね」
 騎士兜の奥に宿る光は柔らかく、零れ出た言葉には微笑みの色。
 その言葉が聞こえた訳ではないだろう。
 視線の先、遠くにある少女がふと振り返る。
 それは偶然だったのか、はたまた必然だったのか。
 だが、確かに2人の視線は絡み合う。
 少女の顔には見知らぬ人に見つめられることへの不思議な彩。
 声を掛けるべきか、どうするべきか。
 トリテレイアが悩むうちに、少女の視線がふいと外れる。
 友達に呼ばれたのか、それとも、他の何かに気が向いたのか。
 それに少しばかりの残念さがトリテレイアの胸中を過る、その刹那――視線途切れるその最後に、はらりと花開いた笑顔の会釈が1つ。それを残して、今度こそ、少女の視線は完全にトリテレイアから外れたのであった。
「……これで騎士としての私の役目はお終い」
 ――彼女の健やかな成長と幸福な人生を祈りましょう。
 それを見送るトリテレイアの胸中に残るは温かな想い。0と1の織り成す冷たい数字が織りなすシステム、それに宿った0と1以外の大切な。
 少女は覚えず、知らぬことではあろうが、この時、トリテレイアは間違いなく少女の騎士であった。

 ――と、ここで終われば良いお話。だが、現実はちょっとだけしょっぱいものなのだ。
「ちょっと、君。何か怪しい素振りをする人が居るって聞いたんですが?」
「……え?」
 ゲームもせず、大きな体を筐体へと隠すようにし、その視線の先には女の子の集団。
 傍から見たら、さて、いったいどうだろうか。
 悲しいかな。その崇高なる心とは裏腹、その姿はまごうことなき、不審者であった。
「お話、聞かせて貰えます?」
「いや、私はそんな怪しい者では」
 これは困ったしくじった。と、助けを求めて、トリテレイアの視線が右左。そこに見つけたのは。
「――あ、ハーバニー様。こちらです!」
「はぁ~い?」
 ぴょんこぴょんこと跳ねる兎――ではなく、ハーバニーの姿。 
「あらぁ、トリテレイアさん。こんにちはぁ」
「知り合いの方?」
「はい、そうです。この方と、こちらで待ち合わせを」
 これを逃してはならないと、トリテレイアはその頭脳をフル回転。
 近寄ってきたハーバニーへと身を寄せ、そっと彼女に聞こえる程度の声で話を合わせるを要請するのだ。
 それに頷き、ハーバニー。話を合わせた2人によって、なんとかスタッフの疑念を晴らすには至る。
「そうですか。あまり、他のお客さんに迷惑はかけないようにお願いしますね」
 そう言って去っていくスタッフの背中。それを見送り、苦笑が漏れる猟兵2人。
「貸し1つということで」
「はいはぁ~い。いいですよぉ……と、言いたいところですがぁ、折角のゲームセンター。一緒に遊んで頂けたならぁ、貸しもチャラということでぇ」
 戦い終わって日常戻り、ならば、騎士もひと時の休息が必要というものだろう。
 わかりました。と、トリテレイアとハーバニーは連れ立って歩いていくのであった。
 だたし。
「ああ、また負けた!」
「ふふふ~、騎士さんも形無しですねぇ」
 戦場では倒れずの騎士も、慣れぬゲームという戦場では、そうはいかなったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

婀鎖路・朔梛
せっかくゲームセンターに来たし思いっきり楽しんじゃおう。
あ。でも一緒に遊ぶとお金が倍に…今はお財布にたくさん入ってなかったよね‥?
しょうがない。朔椰とはころころ変わればいっか。

『まずはそうだな~。
あたしはパズルゲームや音ゲーとかにようかな。
どうせなら高得点狙いだね!』

朔椰「次は・・僕の番。パンチングマシン、とか・・体動かすやつが、いい。大丈夫・・壊さないから。」(怪力2)

『あれ?あの子‥もしかして。(あたし達の事覚えてないだろうけど、声掛けてみようかな)』

どう?君は楽しんでる?

※アドリブ大歓迎



 心は2つあれども、その心収まる身体は1つ。
 それが婀鎖路・朔梛(表裏一体の双子・f12701)と朔椰の当たり前。
「せっかくゲームセンターに来たし、思いっきり楽しんじゃおう」
 目の前に広がる数々のゲーム。
 それぞれが得意分野とするところは違うけれど、ゲームの種類が数多とあれば、互いに楽しめるものもあろう。
 さて、どれにしようか。と思い、悩んだところではたと気づく重要事項。
 そう、それは――
「あ……でも、一緒に遊ぶとお金が倍に」
 身体が1つであるのと同じく、お財布もまた1つなのだ。
 中身を開いて数えてみれば、4桁のお札がひい、ふう、みい……。
「……しょうがない。朔椰とはころころ変わればいっか」
 思い切り遊ぼうかと思った途端の現実が目の前に。
 ならばならばと妥協案を考えて、朔梛はゲームの海へといざダイブするのである。

「まずはそうだな~。あたしはパズルゲームや音ゲーとかにしようかな」
『僕は……パンチングマシン、とか……体動かすやつが、いい』
「順番ね、順番」
 吹かすはお姉さん風。現在、表に出てきているというのもあって、最初はあたしの番とばかりにお目当てへ。
 そこにあったのは昔懐かしいパズルゲーム。
 一列揃えて消していくのがいいか、はたまた、同色揃えて消していくのがいいか。
 心の中で朔椰が朔梛だけに見えるイメージで無表情のままに早く早くとせっつくが、軍資金は限られているのだ。ならば、吟味というのは大切なものだ。大切なものなのだ!
「よし! こっちのに……あれ? あの子、もしかして」
『ああ……あの時の?』
 悩むこと暫く。ようやくと決めたのは、一列揃えて消していく方。
 よし、と腕まくりをして挑戦をする直前、朔梛の視界に飛び込んできたのは、いつかの少女。その時には表に出てこなかった朔椰も同意を返す。
『話……掛けるの?』
「あたし達の事、覚えてないだろうけどね」
 折角の再会なのだ。ならば、話しかけてみるのも一興というものだ。
 幸い、少女が友達と遊んでいるのは、先ほど候補にあげていたもう片方のパズルゲーム。ならば、好都合というもの。
 するりと隣の筐体に滑り込み。ゲームプレイのいざ開始。
 話しかけるにも切っ掛けというものが必要。これはそのための布石というものだ。
 落ちてくるモノ、次に予告されるモノ、既に配置しているモノ。それらを正確に把握して、計算して、あとは最後の一欠けら。
 婀鎖路姉妹の頭脳担当。特化している訳ではないと言っても、そこはやはり電脳魔術師。パズルゲームなど、お手の物。瞬く間に連鎖を告げる声がゲームの筐体から流れ出る。

「ねえねえ、あの人すごいよ!」
「えー、あんなに積み重なってたのに、あっという間になくなってく!」
「本当! 魔法みたいだね!」

 食いついた!
 鳴りやまぬ連鎖の声に、なんだなんだと朔梛の座る筐体の隣から興味津々の視線。
 今回の事件の原因となったVRに憧れを抱く少女だ。元よりゲーム好きであったのだろう。その友達と含めて、朔梛に向ける視線は熱い。
 最後の駄目押し連鎖を相手CPUにプレゼント。
 そして、朔梛は視線向ける少女達へと、にこり笑って向かい合う。
「声援ありがとう。どう? 君達は楽しんでる?」
 朔梛と少女との2度目の初めまして。
 そこから繋がれる縁の行方は、まだ誰にも分からない。
 だが、朔梛と少女達が明るい声を響かせ、共にゲームセンターを楽しんでいる光景が、その先の未来を物語っていたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョー・グラム
折角だから少しメダルゲームでもやっていくかな。
スロットマシーンで手持ちのコインを増やしたり減らしたり。
「へい、ハーバニー。幸運を一つ運んでくれないか?」
幸運のお守りに足を貰うわけにはいかないからな、スロットのボタンくらいは押してくれても良いだろうっと。

少しコインが増えたら、少女におすそ分けして行くかな。
「良かったら使ってくれ。そろそろ行かなきゃいけない時間でね」

煙草の吸える所までぶらぶら歩いていこう。
「やれやれ、一服つける所を探すのも一苦労だ。家でゲームする奴の気持が分かるぜ」



 チン、チン、チンと音が鳴り、絵柄揃えばじゃらりじゃらりとメダルが零れる。
 だが、往々にして運命の女神は微笑まず、絵柄は揃わず、多くの場合にメダルは機械の腹の中。
 そんな現実を見つめ、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)は懐の煙草へと手を伸ばす。
「あー、ここは禁煙だったか」
 それを取り出したまでは良かったが、ふと思い出すのは禁煙マーク。
 名残惜し気に愛すべき手元の煙草を眺め見て、仕方がないかと元へと戻す。
 煙なき世のなんと息苦しいことか。
 スロットマシンの筐体が、嘲笑うかのようにまたメダルを呑み込んだ。
 目の前の絵柄はBAR、BAR、ベル。
 ここが酒場なら、どれだけ良いことか。そうであったなら、酒に煙草にと、きっとジョーの好むものに溢れていたことだろう。
 とは言え、ここはゲームセンターだ。それを望むのは少々酷というもの。それに、スロットマシンと言えども、その代価たるメダルと言えども、ジョーの懐が痛む程のものではない。
 だが、だがしかしだ。やはり勝てないというのは頂けないものだ。
「この辺りが退き際かね」
 交換したメダルの数も残すところ、あと僅か。
 このままこの台で消費するか、それとも、他の良さそうな台に移動するべきか。
 悩んだジョーの瞳の先――スロットマシンのガラス板に反射した先に見知った影。
「へい、ハーバニー」
「あらぁ、ジョーさん。勝ててますかぁ?」
 呼び止める声に応えた兎の少女。さて、この出会いはジョーにとっての幸運かどうか。
「御覧の有り様さ」
「なんとも寂しい懐事情ですねぇ」
 ジョーの見せたコインの枚数は残すところ数プレイ分と言ったところ。それとジョーの言葉に、あ~。と察するハーバニー。
「という訳で、どうだい。俺に幸運を一つ運んでくれないか?」
 ――なに、スロットのボタンくらいは押してくれてもいいだろう。
 少ないコインが1つ、2つ……とスロットマシンの腹の中。
 ガチャリとレバーを引けば、ドラムがぐるぐる回り出す。
「幸運のお守りに足を貰うわけにはいかないからな」
「ふふふ~、キックならプレゼントできますけれどねぇ」
 交わし合う軽口をよそに、ハーバニーの瞳は真剣そのもの。
 ボタンを1つ。7。
 更にボタンを1つ。7。
「お、こいつは本当に幸運が来たか?」
「どうでしょうねぇ~?」
 最後のボタンを1つ。
 そして、スロットマシンが腹に溜め込んだメダルを軽快な音楽と共に吐きす、その数――10枚程度。
 7が2つ揃ったラインのその下に、3つ並んだチェリーが3つ。

 ――ま、こんなもんか。
 ――こんなもんですぅ。

「さて、それじゃあ、俺は行くかね」
 ほんの少しだけ増えた――最初から考えれば減った――メダルを手に遊ばせ、ジョーは席を立つ。
「そうですねぇ。そろそろ帰るお時間ですねぇ」
 猟兵それぞれに、それぞれの帰る場所、戻る場所というものがある。
 中にはUDCアースの世界に居を構えている者も居るだろうが、この地に足を運んだのは依頼があったからこそ。
 今は、それが終わった後の余暇に過ぎないのだ。
 だから、そろそろ時間切れ。
 私は他の皆さんにも声を掛けてきますねぇ。と別れたハーバニーを見送り、ジョーは最後に一服をと歩き出す。
 その最中――
「良かったら使ってくれ。そろそろ行かなきゃいけない時間でね」
 ほんの少しだけ見知った顔の少女に、ジョーは手の中のメダルを渡していく。
 突然のことに眼を白黒とさせていた少女だったが、その間にジョーの背中は視界の向こう。少女は頭を目一杯に下げてお礼をするのであった。
 もしかしたら、それは彼なりの餞だったのだろうか。

「やれやれ、一服つける所を探すのも一苦労だ」
 ――家でゲームする奴の気持が分かるぜ。
 肺を煙で満たし、ジョーはやっと呼吸が出来た思いとなるのであった。
 ゆらりゆらりと、紫煙が空へと昇って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月25日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はネラ・イッルジオーネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト